(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】複合シェル粒子、生物学的材料、及び複合シェル粒子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/04 20060101AFI20220215BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220215BHJP
C12N 11/14 20060101ALI20220215BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220215BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20220215BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20220215BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220215BHJP
C01G 49/06 20060101ALI20220215BHJP
C01G 49/10 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
A61L27/04
C12N1/20 E
C12N11/14
A61L27/36 200
A61L27/40
A61L27/56
A61L27/20
C01G49/06
C01G49/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020029528
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2020-02-25
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520064997
【氏名又は名称】連展投資控股股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ACON-HOLDING INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】林 保宏
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-090582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/04
C12N 1/20
C12N 11/14
A61L 27/36
A61L 27/40
A61L 27/56
A61L 27/20
C01G 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Shewanella種のグラム陰性菌の細胞壁又は細胞膜を含む有機物質で構成される多孔質生物学的部と、
前記多孔質生物学的部で架橋され、複合シェル部を形成している金属部であって、
鉄並びに/又は鉄のキレート、鉄の酸化物、鉄の硫化物、鉄の塩化物、鉄のセレン化物、鉄の酸塩化合物、及び鉄の炭酸塩化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、金属部と、
を含む、中空のシェルである複合シェル粒子。
【請求項2】
前記多孔質生物学的部の前記細胞壁は、焼成セルロースを含み、前記焼成セルロースは互いに架橋されている、請求項1に記載の複合シェル粒子。
【請求項3】
前記多孔質生物学的部の重量百分率は、前記複合シェル部の5%~80%である、請求項1又は請求項2に記載の複合シェル粒子。
【請求項4】
前記複合シェル部中の前記多孔質生物学的部の前記重量百分率は、前記複合シェル部中の前記金属部の重量百分率より高い、請求項3に記載の複合シェル粒子。
【請求項5】
前記複合シェル粒子が焼結された後、前記複合シェル部における前記金属部の重量百分率は、前記複合シェル部における前記多孔質生物学的部の前記重量百分率よりも高い、請求項3に記載の複合シェル粒子。
【請求項6】
前記金属部は、EDTAと鉄のキレート、酸化鉄、クエン酸第二鉄、又は塩化鉄を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の複合シェル粒子。
【請求項7】
前記複合シェル部は、中空の球状シェルである、請求項1から
6のいずれか一項に記載の複合シェル粒子。
【請求項8】
前記複合シェル部は、0.2ミクロン~10ミクロンの直径を有する、請求項
7に記載の複合シェル粒子。
【請求項9】
前記複合シェル部は、中空の棒状シェルであり、
前記中空の棒状シェルは、
中間部と;
2つの端部であって、前記2つの端部は、どちらも半球状であり、それぞれ、前記中間部の2つの両端に接続されている、2つの端部と、を含み、
前記端部の厚さは、前記複合シェル部の幅の1/73以上であり、前記中間部の厚さは、前記複合シェル部の前記幅の1/37以上である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の複合シェル粒子。
【請求項10】
前記複合シェル部は、0.2ミクロン~10ミクロンの幅を有する、請求項
9に記載の前記複合シェル粒子。
【請求項11】
前記複合シェル部は、1ミクロン~10ミクロンの長さを有する、請求項
9に記載の複合シェル粒子。
【請求項12】
前記複合シェル部は、5nm~60nmの厚さを有する、請求項
9に記載の複合シェル粒子。
【請求項13】
前記複合シェル粒子は、6MPa超の圧縮強度を有する、請求項1から
12のいずれか一項に記載の複合シェル粒子。
【請求項14】
前記複合シェル粒子は、37MPa以上の圧縮強度を有する、請求項
12に記載の複合シェル粒子。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を含み、人工骨材料を含む、生物学的材料。
【請求項16】
複合シェル粒子を製造する方法であって、
Shewanella種のグラム陰性菌の細胞を、炭素源及び金属原料を含む培地と共に一定期間共培養し、前記培地中の前記金属原料を、前記グラム陰性菌の細胞によって誘発される酸化還元反応に供して複合シェル粒子を含有する湿潤粉末材料を生成することであって、前記金属原料は、金属化合物で構成され、前記金属化合物中の金属は、
鉄であり、前記金属化合物は、鉄のキレート、鉄の酸化物、鉄の硫化物、鉄の塩化物、鉄のセレン化物、鉄の酸塩化合物、及び鉄の炭酸塩化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、生成することと、
前記湿潤粉末材料を前記培地から分離することと、
前記湿潤粉末材料を乾燥させて、少なくとも前記複合シェル粒子を含む粉末材料を得ることと、
前記複合シェル粒子を含む前記粉末材料を溶液中又は真空下に置き、0℃~250℃で反応させて前記複合シェル粒子の圧縮強度を高めることと、を含む、方法。
【請求項17】
前記複合シェル粒子の前記圧縮強度を高めるために、前記複合シェル粒子を含む前記粉末材料を水溶液に入れ、水中で、0℃~100℃で、3日~7日間水和させて前記複合シェル粒子を互いに結合させる、請求項
16に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項18】
前記溶液は、有機溶液であり、
前記複合シェル粒子の前記圧縮強度を高めるために、前記複合シェル粒子を含む前記粉末材料を前記溶液に入れ、60℃~80℃に加熱し、次いで前記溶液を除去し、真空環境中で、150℃~250℃で、4時間~24時間反応を行って前記複合シェル粒子中の細胞壁のセルロースを焼成及び架橋させる、請求項
16に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項19】
前記培養する工程の後に、
前記培地の上
部に泡沫を形成させることと、
前記泡沫から懸濁液を分離して前記湿潤粉末材料を得ることと、を更に含む、請求項
16から19のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項20】
前記金属部は、EDTAと鉄のキレート、酸化鉄、クエン酸第二鉄、又は塩化鉄を含む、請求項
16から19のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項21】
前記共培養する工程において、前記グラム陰性菌の細胞壁又は細胞膜が中空のシェルを形成するように前記グラム陰性菌の細胞をストレス反応に供し、前記複合シェル粒子の前記複合シェル
部は、中空の球状シェル、又は2つの端部に半球形状を有する中空の棒状シェルを形成する、請求項
16から20のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項22】
前記金属原料は、前記培地中で0.01M~0.2Mの濃度を有する、請求項
16から21のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項23】
前記粉末材料は、420kg/m
3の密度を有する、請求項
16から22のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項24】
前記共培養する工程は、前記グラム陰性菌の細胞を前記培地に入れ、好気性環境下37℃で一定期間培養することを含む、請求項
16から23のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項25】
前記培地は、LB培地又はM9培地である、請求項
16から24のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項26】
前記共培養する工程は、3日~5日の培養時間を有する、請求項
16から25のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項27】
前記炭素源は、前記培地中で0.01M~0.2Mの濃度を有する、請求項
16から26のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項28】
前記分離する工程は、
前記培地を遠心分離して沈殿物を形成することと、
前記沈殿物を前記遠心分離した培地から分離して前記湿潤粉末材料を得ることと、を含む、請求項
16から27のいずれか一項に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項29】
前記湿潤粉末材料を微粉化して予備粉末材料を形成することを更に含み、前記微粉化する工程は、前記湿潤粉末材料を超音波振動にかけることを含む、請求項
28に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項30】
前記微粉化する工程の後に、前記予備粉末材料を溶媒で少なくとも1回洗浄することを更に含む、請求項
29に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【請求項31】
前記乾燥する工程は、前記予備粉末材料を乾燥させて前記粉末材料を得ることを含む、請求項
30に記載の複合シェル粒子を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ材料の調製技術に関し、より詳細には、複合シェル粒子、生物学的材料、及び複合シェル粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物、植物、及び動物等の生命体は、いずれも自然界で鉱物を形成することがある。生きている生命体の中で無機鉱物が形成される現象は、生体鉱物形成と呼ばれることがある。生体鉱物形成のプロセスは、生命体の細胞の関与を意味し、その結果、環境中の無機元素が特定の有機物の上に選択的に沈殿して鉱物を形成することがある。生物学的に誘発される鉱物形成及び鉱物形成の生物学的制御は、学者によって何十年間も研究されてきた。しかしながら、こうした研究は、主に環境保護の分野において用いられている。現在、上記の2種類の鉱物形成に類似する微生物と金属との間の反応に関する研究、及び新規な材料の開発は、更なる検討及び研究に値する題目である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、生物学的材料の調製において使用することができる複合シェル粒子及び複合シェル粒子を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施の形態において、本発明の複合シェル粒子は、複合シェル層を含む。複合シェル層は、中空のシェルであり、複合シェル層は、多孔質生物学的層と、金属層と、を少なくとも含む。多孔質生物学的層は、細菌又は藻類の細胞壁又は細胞膜を含む有機物質で構成される。金属層は、多孔質生物学的層で架橋されて複合シェル層を形成し、金属層は、鉄、モリブデン、タングステン、マンガン、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、及びカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む、ならびに/又は金属キレート、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物、金属セレン化物、金属酸塩化合物、及び金属炭酸塩化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0005】
いくつかの実施の形態において、本発明の複合シェル粒子を製造する方法は、下記の工程を含む。細菌又は藻類の細胞を、炭素源と金属原料とを含む培地で一定期間共培養し、細菌又は藻類の細胞は、培地中の金属原料に酸化還元反応を起こさせて複合シェル粒子を含む湿潤粉末材料を生成し、金属原料は、金属化合物で構成され、金属化合物中の金属は、鉄、モリブデン、タングステン、マンガン、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、及びカルシウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、金属化合物は、金属キレート、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物、金属セレン化物、金属酸塩化合物、及び金属炭酸塩化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。湿潤粉末材料は、培地から分離される。湿潤粉末材料を乾燥させて粉末材料を取得し、粉末材料は、少なくとも1つの複合シェル粒子を含む。複合シェル粒子を含む粉末材料を溶液中又は真空下に置き、0℃~250℃で反応させて複合シェル粒子の圧縮強度を高める。
【0006】
いくつかの実施の形態において、本発明は、生物学的材料を提供し、生物学的材料は、複合シェル粒子を含んでよく、生物学的材料は、例えば、人工骨材料である。
【発明の効果】
【0007】
上記に基づき、本発明の実施の形態の複合シェル粒子、生物学的材料、及び複合シェル粒子を製造する方法は、新規な材料の製造に好適であり、得られる材料は、優れた機械的特性及び構造強度を有する。加えて、本発明の実施の形態の複合シェル粒子は、製造が簡単であり、低コストであり、工業生産に直接適用することができる。
【0008】
本開示の前述の特徴及び利点をより理解しやすいものとするため、図面共に、実施の形態を以下に詳細に説明する。
【0009】
添付の図面は、本発明の更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本発明の実施の形態を例示し、説明と共に、本発明の原理を説明するために供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、本発明の一つの実施の形態に係る複合シェル粒子の断面図である。
【0011】
【
図1B】
図1Bは、本発明の一つの実施の形態に係る複合シェル粒子の平面図である。
【0012】
【
図1C】
図1Cは、本発明の一つの実施の形態に係る複合シェル粒子のSEM分析結果を示す図である。
【0013】
【
図2】
図2は、本発明の一つの実施の形態に係る複合シェル粒子を製造する方法のフローチャートである。
【0014】
【
図3】
図3は、本発明の別の実施の形態に係る複合シェル粒子を製造する方法のフローチャートである。
【0015】
【
図4A】
図4Aは、本発明の一つの実施の形態に係る複合シェル粒子のSEM分析結果を示す図である。
【0016】
【
図4B】
図4Bは、本発明の一つの実施の形態に係る複合シェル粒子のSEM分析結果を示す図である。
【0017】
【
図5】
図5は、本発明の一つの実施の形態に係る複合シェル粒子のEDS分析結果を示す図である。
【0018】
【
図6】
図6は、本発明の一つの実施の形態に係る複合シェル粒子のXRD分析結果を示す図である。
【0019】
【
図7】
図7は、本発明の1つの実施の形態に係る複合シェル粒子の圧力対変形の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、「重量百分率」という用語は、炭素源中の炭素のモル数に基づいて計算された重量百分率を指す。
【0021】
図1A及び
図1Bを参照すると、いくつかの実施の形態において、複合シェル粒子10は、複合シェル層100を含んでよい。複合シェル層100は、中空のシェルであり、シェルは、内側の収容空間を取り囲み、画定している。複合シェル層100は、多孔質生物学的層102と、多孔質生物学的層102で架橋された金属層104と、を含む。例えば、金属層104は、多孔質生物学的層102で架橋されて複合シェル層100を形成する。
図1Bに示すように、多孔質生物学的層102は、複数の細孔Vhを含み、細孔Vhは、多孔質生物学的層102上に不規則に分散していてもよいが、本発明はこれに限定されない。他の実施の形態において、細孔Vhは、多孔質生物学的層102上に規則的に分散してもよい。更に、金属層104は、多孔質生物学的層102の複数の細孔Vhを貫通して架橋構造を形成してよい。
【0022】
多孔質生物学的層102は、細菌又は藻類の細胞壁又は細胞膜を含む有機物質で構成されてよく、例えば、セルロースで構成される細胞壁である。例えば、有機物質は、特定の細菌又は藻類の細胞壁又は細胞膜のみを含んでもよく、少量の他の炭素含有有機物を含んでよい。多孔質生物学的層102の重量百分率は、複合シェル層100の5%~80%であってよく、複合シェル層100中の多孔質生物学的層102の重量百分率は、複合シェル層100中の金属層104の重量百分率より高くてよい。金属層104は、金属キレート、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物、金属セレン化物、金属酸塩化合物、及び金属炭酸塩化合物のうちの少なくとも1つ、又はそれらの組合せで構成されてよい。いくつかの実施の形態において、金属層104は、金属キレート、塩化物、又は酸塩化合物を含んでよく、上記のいずれか又はそれらの組合せによって形成されてよい。更に、金属層104に含有される金属元素の重量百分率は、複合シェル層100の3%~75%であってよい。
【0023】
いくつかの実施の形態において、多孔質生物学的層102は、グラム陰性菌の細胞壁若しくは細胞膜の有機物質、又は藻類の細胞壁若しくは細胞膜の有機物質によって形成されてよい。例えば、多孔質生物学的層102は、特定の細菌又は藻類の細胞壁又は細胞膜の有機物質によって形成されてよく、特定の細菌又は藻類としては、Shewanella種、Pantoea種、Pseudomonas aeruginosa、Bacillus subtilis、Crustose coralline algae等、又はそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施の形態において、金属層104は、鉄、モリブデン、タングステン、マンガン、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、若しくはカルシウムなどの少なくとも1つの金属、及び/若しくは上記金属の金属キレート、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物、金属セレン化物、金属酸塩化合物、若しくは金属炭酸塩化合物、又はそれらの任意の組合せによって形成されてよく、他の代替的な金属化合物によって形成されていてもよい。いくつかの実施の形態において、金属は鉄であり、金属層104は、EDTAと鉄のキレート(Fe-EDTA配位錯体)、酸化鉄、クエン酸第二鉄、又は塩化鉄を含む。いくつかの実施の形態において、金属層104は、マンガン酸塩化合物又は銅酸化物化合物等の塩化合物を含む、又は塩化銅、塩化亜鉛、酸化銅、又は酸化亜鉛等の化合物を含んでよい。
【0024】
いくつかの実施の形態において、多孔質生物学的層102及び金属層104は、適用の要件に従い、かつ材料の性質に基づいて、好適に併用できる。例えば、多孔質生物学的層102がShewanella種の細胞壁又は細胞膜の有機物質によって形成される場合、金属層104は、EDTAと鉄のキレート、クエン酸第二鉄、塩化鉄、酸化鉄、マンガン酸塩化合物、又は銅酸化物化合物によって形成されてよい。あるいは、多孔質生物学的層102がPantoea種の細胞壁又は細胞膜によって形成される場合、金属層104は、EDTAと鉄のキレート又は塩化鉄又は酸化鉄によって形成されてよい。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0025】
いくつかの実施の形態において、複合シェル層100の内部は中空であり、特定の厚さを有する。ここで言及する「厚さ」は、複合シェル層の内表面上の任意の点とその外表面上の任意の点との間の最小距離を指す。いくつかの実施の形態において、複合シェル層100は、5nm~60nmの厚さを有してよい。いくつかの実施の形態において、複合シェル層100は、20nm~40nmの厚さを有していてもよい。更に、いくつかの他の実施の形態において、複合シェル層100は、中空のシェルであってよい。
【0026】
いくつかの実施の形態において、複合シェル層100は、中空の球状シェルであってよい。この球状の複合シェル層100は、特定の直径を有する。球状の複合シェル層100の内表面と外表面の間の同心球に関して、ここでの「直径」は、球状の複合シェル層100の内表面と外表面の間に位置する同心球の直径を指す。また、複合シェル層100の内表面上の任意の点と複合シェル層100の外表面上の任意の点から上記同心球の表面上の任意の点までの最短距離は同じである。いくつかの実施の形態において、中空の球状複合シェル層100は、0.2ミクロン(μm)~2ミクロンの直径を有していてよい。いくつかの実施の形態において、中空の球状複合シェル層100は、約1ミクロンの直径を有してよい。
【0027】
図1Cは、本発明の実施の形態の複合シェル粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)分析結果である。
図1CのSEM分析結果を参照すると、本発明の実施の形態の複合シェル粒子は球状であり、約0.5ミクロン~0.6ミクロンの直径を有し、複合シェル層の厚さは、約38.9nmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0028】
上記の実施の形態において、複合シェル層100は、球状として例示されているが、本発明はこれに限定されない。いくつかの他の実施の形態において、複合シェル層100は、中空の棒状シェルであってよい。棒状複合シェル層100は、中間部と、中間部にそれぞれ接続された2つの端部を含んでよい。具体的には、端部は、半球状であってよい。より具体的には、2つの端部の内周と外周は、それぞれ、中間部の2つの端の内周と外周に接続されていてよい。2つの半球状端の最大面積の部分の場合、ここでの「幅」は、その部分の内周上に位置する任意の点と外周上に位置する任意の点の間の最小距離の中間点によって接続された線の任意の2点間の最大距離(即ち、中間部の幅)を指す。例えば、2つの端部の最大面積の部分が円形である場合、幅は、内周と外周の間に位置する同心円の直径である。更に、端部の内周上の任意の点と、外周上の任意の点から同心円の周上の任意の点までの最短距離とは、同じである。いくつかの実施の形態において、各端部の厚さは、複合シェル層100の幅の1/73以上であり、中間部の厚さは、複合シェル層100の幅の1/37以上である。いくつかの実施の形態において、棒状複合シェル層100は、0.2ミクロン~2ミクロンの幅を有してよい。いくつかの実施の形態において、棒状複合シェル層100は、1ミクロンの幅を有してよい。加えて、棒状複合シェル層の「長さ」は、2つの半球状端部の外表面の頂部と内表面の頂部との間にそれぞれ形成された最小距離の中心点間の最大距離を指す。いくつかの実施の形態において、棒状複合シェル層100は、1ミクロン~10ミクロンの長さを有してよい。
【0029】
図2を参照すると、いくつかの実施の形態において、複合シェル粒子を製造する方法は、下記のプロセスを含んでもよい(細菌細胞を例として挙げる)。まず、細菌細胞を培地で一定期間培養する(S10)。具体的に、培地は、炭素源と金属原料とを含んでよい。培養プロセス中、細菌細胞は、金属原料の酸化還元反応を誘発して複合シェル粒子を含有する湿潤粉末材料を生成する。次に、湿潤粉末材料を培地から分離する(S20)。最後に、湿潤粉末材料を乾燥させて、粉末材料を得る(S30)。得られた粉末は、実質的に分散粉末の形態であってよく、固体に凝集していてよい。具体的に、粉末材料は、複合シェル粒子10を含んでよい。更に、工程S20のいくつかの実施の形態において、培地の上層は発泡していてよく、懸濁液を泡沫から分離して湿潤粉末材料を得てよい。
【0030】
いくつかの実施の形態において、粉末材料を得た後、複合シェル粒子10を含む粉末材料を特定の溶液中又は真空中に置き、0℃~250℃で反応を行って複合シェル粒子10の圧縮強度を高める。例えば、一つの実施の形態において、複合シェル粒子10は、0℃~100℃の水溶液に入れられ、3日~7日間水和反応が起き、複合シェル粒子10は、水和反応により互いに結合してより大きな構造を形成する。例えば、複数の複合シェル粒子10が互いに結合してセンチメートル級の構造を形成する。
【0031】
別の実施の形態において、複合シェル粒子10を有機溶液(例えば、アルコール)に入れ、60℃~80℃に加熱し、有機溶液を除去し、次いで真空環境において150℃~250℃で4時間~24時間反応させて複合シェル粒子中の細胞壁のセルロースを焼成し架橋させて(例えば、焼成炭素層を形成して)複合シェル粒子の圧縮強度を高める。いくつかの他の実施の形態において、複合シェル粒子10を鉱油又は植物油に入れ、150℃~250℃に4時間~24時間加熱し、複合シェル粒子中の細胞壁のセルロースを焼成し架橋させて複合シェル粒子の圧縮強度を高めることもできる。上記の方法により、複合シェル粒子10の圧縮強度を更に高めてよい。例えば、上記の方法により調製される複合シェル粒子10は、6MPa超又は10MPa超の圧縮強度を有し得る。いくつかの実施の形態において、複合シェル粒子10は、37MPa以上の圧縮強度を有し得る。
【0032】
いくつかの実施の形態において、細菌は、Shewanella種、Pantoea種、Pseudomonas aeruginosa、Bacillus subtilis等のグラム陰性菌、他の代替的なグラム陰性菌、又はそれらの任意の組合せであってよい。より好ましくは、細菌は、Shewanella種、Pantoea種、Pseudomonas aeruginosa、又はBacillus subtilisであってよい。培養する工程で使用される細菌又は藻類は、複合シェル粒子の複合シェル層中の多孔質生物学的層の成分の源である。いくつかの実施の形態において、金属原料は、金属化合物であってよい。例えば、金属原料は、鉄、モリブデン、タングステン、マンガン、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、若しくはカルシウム等の金属のキレート、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物、金属セレン化物、金属酸塩化合物、金属炭酸塩化合物、又は他の代替的な金属化合物であってよい。金属原料は、複合シェル層の金属層の成分の源として使用されてよい。例えば、複合シェル層の金属層は、金属原料、又は金属原料の酸化還元反応によって形成される生成物によって形成されてよい。
【0033】
いくつかの実施の形態において、好適な細菌及び金属原料は、生成要件に従う所望の粉末材料を生成するように選択されてよい。例えば、培地中の細菌は、Shewanella種であってよく、金属原料は、EDTAと鉄のキレート又は塩化鉄又は酸化鉄であってよい。更に、いくつかの実施の形態において、培地中の金属原料と炭素源の濃度は、それぞれ、0.01M~0.25Mであってよい。より好ましくは、培地中の金属原料の濃度は、0.1M~0.25Mであってよい。
【0034】
いくつかの実施の形態において、「炭素源」は、細菌の成長と繁殖のために培地に必要なエネルギーの源及び細胞を合成するのに必要な炭素成分の源を提供する任意の炭水化物系物質を指す。二酸化炭素、炭酸塩、糖及び糖誘導体、アルコール、有機酸、脂質、炭化水素、芳香族化合物等の、微生物が利用できる任意の無機又は有機炭素含有化合物を炭素源としてよい。例えば、グルコース、スクロース、デンプン、フルクトース、ラクトース、乳酸塩、ギ酸塩、ピルビン酸、及び/又はアミノ酸を炭素源として利用してよい。いくつかの実施の形態において、培地中の炭素源の濃度は、0.01M~0.25Mであってよい。更に、いくつかの実施の形態において、培地は、ルリアブロス(LB)培地、M9培地、他の代替的な培地、又はそれらの任意の組合せ等の任意の好適な市販の培地調合物を使用して調製してよい。
【0035】
温度は、細菌の成長に重大な影響を与え、従って、細菌培養は、細菌の成長に好適な温度で行ってよい。工程S10の実施の形態において、細菌を培地に入れ、好気的環境下37℃で培養してよい。培養時間が成長する細菌の量に影響する。培養時間が短すぎると、細菌の成長は不十分となり、複合シェル粒子の収率が低下する。工程S10の実施の形態において、細菌は、培地で、少なくとも3日間、より好ましくは7日~10日間培養されてよい。
【0036】
いくつかの実施の形態において、工程S20は、培地から沈殿物を分離するために、培地を遠心分離すること、又は他の代替的な手段を更に含んでよい。いくつかの実施の形態において、沈殿物を培地から分離した後、沈殿物を超音波振動等の高周波振動に供して沈殿物を微粉化してよい。更に、いくつかの実施の形態において、沈殿物を、溶媒で1回又は2回以上繰り返して洗浄してよい。水、エタノール、他の代替的な溶媒、又はそれらの任意の組合せ等の様々な一般的溶媒を沈殿物の洗浄に使用してよい。例えば、RO水、脱イオン水、又はエタノールを使用して沈殿物を洗浄してよい。
【0037】
図3を参照すると、いくつかの実施の形態において、工程S10の後、培地を遠心分離して沈殿物(即ち、湿潤粉末材料)を形成する(S200)。次に、沈殿物を微粉化して予備粉末材料を形成し(S300)、予備粉末材料を溶媒で少なくとも1回洗浄する(S400)。最後に、沈殿物を通風又は適切な温度での加熱により乾燥させ(S500)、沈殿物中の溶媒を除去し、粉末材料を得る。更に、いくつかの実施の形態において、粉末材料の密度は、420kg/m
2である。
【0038】
いくつかの実施の形態において、培養する工程で使用する培地又は金属原料の量は、複合シェル粒子の複合シェル層が中空の球状シェル又は中空の棒状シェルを形成するように調整してよい。例えば、培地に添加する糖(即ち、炭素源)又は金属原料の濃度は、一般的な細菌培養プロセスと比較して、細菌がストレス反応及び外観の変化を受けるように調整してよい。いくつかの実施の形態において、高濃度金属原料(例えば、0.1M~0.2M)の使用は、ストレス反応の発生を促進し培地中の細菌の外観を変化させ得る。いくつかの実施の形態において、細菌の外観の変化により、その細胞壁は、球形のシェルを形成する、又は2つの半球形状を有する棒状のシェルになり得る。したがって、得られる複合シェル層は、中空の球状シェル又は中空の棒状シェルとなり得る。
【0039】
いくつかの実施の形態において、複合シェル粒子の複合シェル層を、更に、酸化、加硫、塩素化、又はセレン化等の処理に供してよい。例えば、金属層は、高温(例えば、300℃~1000℃)の環境及び/又は富酸素環境において酸素と反応させた後に金属酸化物を形成してよく、複合シェル層は、主に金属酸化物にされる金属層によって形成されている。金属酸化物は、一般に、通常は金属元素と酸素原子のみを有する金属酸化物を指し、酸性塩イオン又は酸素原子を含有する金属の化合物は含まれない。あるいは、例えば、金属層中の金属酸化物の酸素原子が置換反応によって硫黄原子によって置換されるように、酸化された複合シェル層を機械的ストリッピング又は化学蒸着により加硫してよい。ここで、複合シェル層は、主に、金属硫化物にされた金属層によって形成されている。同様に、金属層中の金属酸化物の酸素原子が置換反応によって塩素原子又はセレン原子によって置換されるように、金属層の酸素原子を機械的ストリッピング又は化学蒸着により塩素化又はセレン化してよく、その結果、複合シェル層は、主に、金属塩化物又はセレン化物にされた金属層によって形成される。加えて、上記の酸化、加硫、塩素化、セレン化等の処理後の複合シェル層の特性の変化を、例えばラマンスペクトル、フォトルミネッセンススペクトル、電子顕微鏡等の一般的な検出方法によって測定してよい。例えば、フォトルミネッセンス分光法を使用して、複合シェル層の金属層のエネルギーギャップが1.2eV~1.8eVであると測定してよい。
【0040】
いくつかの実施の形態において、結果として得られる粉末材料を、反応器に入れることもできる。更に、反応炉において、粉末材料を、それぞれ、真空、酸素、硫黄蒸気(例えば硫化水素)、塩素蒸気(例えば塩化水素)、又はセレン蒸気(例えばセレン化水素)中で、300℃~1000℃又は適切な温度で、一定期間加熱(即ち、焼結)する。そうすることで、粉末材料中の複合シェル粒子の複合シェル層が酸化、加硫、塩素化、又はセレン化され、複合シェル層の金属層が、主に、金属酸化物、金属硫化物、又は金属セレン化物になる。いくつかの実施の形態において、複合シェル層を酸化、加硫、又はセレン化した後、複合シェル層中の金属層の重量百分率は、複合シェル層中の多孔質生物学的層の重量百分率よりも高い。
【0041】
本発明のいくつかの実施の形態において、複合シェル粒子を含む生物学的材料が提供される。複合シェル粒子は、優れた機械的特性及び構造強度を有する生物学的材料を提供できる。いくつかの実施の形態において、生物学的材料は、例えば、人工骨材料であるが、本発明はこれに限定されない。他の実施の形態において、複合シェル粒子は、特定の機械的特性及び構造強度を必要とする任意の生物学的な材料に使用してよい。一つの実施の形態において、人工骨材料は、結果として得られる複合シェル粒子粉末を乾燥させ、その後、加熱し、真空環境に一定期間維持して、複合シェル粒子中のセルロースを架橋及び硬化させて強化型複合シェル粒子を得ることによって調製される。強化型複合シェル粒子は、次いで、粉末へと粉砕され、既存の3D印刷法によって印刷されて人工骨材料となる。
【実施例】
【0042】
下記の実施例において、EDTA-鉄キレート中空ナノ球状複合シェル粒子を一例として調製する。
【0043】
本発明の実施例において、複合シェル粒子を下記の手順により生成した。まず、Shewanella種をバナメイエビ(Litopenaeus vannamei)から採取した。次に、Shewanella種を、37℃の環境においてLB培地で16時間培養した。次に、約0.2Mの炭素源(グルコース)及び約0.2MのEDTA-鉄キレートを培地に添加し、Shewanella種を同じ環境下で更に5日間培養した。培養プロセスの完了後、培地を遠心分離し、上清を除去して沈殿物を得た。沈殿物を超音波振動にかけて沈殿物を微粉化した。微粉化した沈殿物(即ち、予備粉末材料)を脱イオン水で洗浄を数回繰り返して、粉末状の非粘着質生成物を得た。粉末材料をエタノールに再懸濁させ、40℃で乾燥させて複合シェル粒子を含む粉末材料を得た。
【0044】
次に、複合シェル粒子を含む粉末材料をアルコールに入れ、予備反応のために70℃に加熱し、乾燥させてアルコールを除去した後、複合シェル粒子を真空環境中で、180℃で約6時間反応させ、複合シェル粒子中の細胞壁のセルロースを焼成及び架橋させて複合シェル粒子の圧縮強度が高まるようにした。反応が完了した後、同様に乾燥を行って粉末材料を得た。
【0045】
強化された粉末材料を、10MPaの圧力で圧縮して錠剤にし、その後のシート状粉末材料の定性的測定を行った。まず、シート状粉末材料の体積と重を測定し、その密度が420kg/m
2であることを発見した。大気中で、JEOL JSM-6500F型電界放射走査型電子顕微鏡(FESEM)を使用して粉末材料のSEM画像分析を行い、エネルギー分散型X線分光(EDS)分析及びX線回折(XRD)分析を行った。実験結果を
図4、
図5、及び
図6に示す。
【0046】
図4A及び
図4Bは、本発明の実施の形態に係る複合シェル粒子のSEM分析結果の図である。
図4A及び
図4Bを参照すると、SEM分析の画像から、粉末材料は、主に粒子状の複合シェル層を有する複合シェル粒子(
図4A)と、棒状の複合シェル層を有する複合シェル粒子(
図4B)とを有することが観察できる。各複合シェル層は、約1ミクロンの直径と、約20nm~40nmの粒子シェル厚さを有する。従って、複合シェル層の内側の空間のほとんどを空気が占めていることがわかる。加えて、10MPaの圧力で粉末をシートに圧縮しても、複合シェル層は、亀裂や破壊等の構造的損傷を引き起こすことなくこの圧力に耐えることができる。したがって、その圧縮強度は10MPaより高いことが推定される。
【0047】
図5は、本発明の実施の形態に係る複合シェル粒子のEDS分析結果である。EDS分析の結果は、複合シェル粒子の複合シェル層において検出される元素は、主として、炭素、酸素、及び鉄を含むことを示している。この実験結果から、強化された複合シェル層の金属層は、EDTAと鉄のキレートを含み、炭素が主な原子組成であることが確認される。
図6は、本発明の実施の形態に係る複合シェル粒子のXRD分析結果である。複合シェル粒子のXRD分析結果は、鋭いピークが2θ=33.2°と2θ=35.8°に存在していることを示しており、これは、酸化第二鉄に対応するミラー指数であり、従って、その結晶構造は、主に酸化第二鉄の酸化鉄であることが確認される。
【0048】
本発明の一つの実施の形態において、複合シェル粒子は、人工骨材料等の生物学的材料の調製に適合させることができる。人工骨用の材料の1つとして使用される場合、その機械的強度は、この中空のナノシェル粒子の適用範囲に影響する非常に重要な特性である。本発明の実施の形態の複合シェル粒子の構造強度を確認するために、0.5gの強化されたEDTA-鉄キレート中空ナノシェル粒子粉末を直径20mm及び断面積3.14cm
2の錠剤型に入れた。圧縮後、その大きさは約3mmであり、次いで、その変形をミクロン測長器で測定し、
図7に示す圧力対変形の図を得た。
【0049】
図7は、本発明の実施の形態に係る複合シェル粒子の圧力対変形の図である。
図7を参照すると、水平軸は変形の量(mm)であり、垂直軸は圧力(メートルトン)である。一般に、圧力対変形の図の曲線は、3つの領域、即ち、直線域、平坦域、及び密集域に分割できる。この実験では、直線域の上限は1.2メートルトンであり、従って、その換算終点圧力は、約37.4MPaである。柱状骨の圧縮強度(2MPa~10MPa)に比べ、本実験例のEDTA-鉄キレート中空ナノシェル粒子の複合シェル粒子圧縮強度は、37MPaに達し得る。従って、EDTA-鉄キレート中空ナノシェル粒子の複合シェル粒子は、人工骨用の良好な材料として使用できる。加えて、未強化の複合シェル粒子の終点圧力は、同じ実験により、約10MPaであることが確認された。従って、複合シェル粒子の圧縮強度は、本発明の強化処理工程により(例えば、水和反応を行うこと、又は架橋のためにセルロースを焼成することにより)更に向上させられることがわかる。
【0050】
上記に基づいて、本発明の実施の形態の複合シェル粒子及びその製造方法は、新規な材料の製造に好適である。微生物の鉱物形成の原理により、材料の体積占有率が低く、優れた機械的特性及び構造強度を有する複合シェル粒子を得ることができ、従って、複合シェル粒子は、生物学的材料として使用できる。更に、この複合シェル粒子を製造するプロセスは簡単であり、安価であり、大量生産が容易である。加えて、複合シェル粒子は、10MPaの圧力で圧縮された後も、その半球状構造の完全性を依然として維持し、その圧縮強度は、37MPaに達し得る。従って、本発明の実施の形態の複合シェル粒子は、新規な材料、生物学的材料、及び優れた機械的特性及び構造強度の両方を有する関連する生成物の開発に適用できる。
【0051】
上記の実施の形態を参照して本発明を説明したが、記載した実施の形態に対する変更が、発明の精神から逸脱することなく可能であることは当業者には明らかである。従って、本発明の範囲は、上記の詳細な説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の複合シェル粒子及びその複合シェル粒子を形成する方法は、人工骨材料等の生物学的材料の調製に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10:複合シェル粒子
100:複合シェル層
102:多孔質生物学的層
104:金属層
Vh:細孔