IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピクセリジェント・テクノロジーズ,エルエルシーの特許一覧

特許7024006ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散
<>
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図1
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図2
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図3
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図4
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図5
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図6
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図7
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図8
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図9
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図10
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図11
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図12
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図13
  • 特許-ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/02 20060101AFI20220215BHJP
   C01G 27/02 20060101ALI20220215BHJP
   C01G 27/00 20060101ALI20220215BHJP
   C01G 9/02 20060101ALI20220215BHJP
   C01G 25/00 20060101ALI20220215BHJP
   C01F 17/218 20200101ALI20220215BHJP
   C09K 23/42 20220101ALI20220215BHJP
   C09K 23/38 20220101ALI20220215BHJP
   C09K 23/54 20220101ALI20220215BHJP
   C09K 23/00 20220101ALI20220215BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220215BHJP
【FI】
C01G25/02
C01G27/02
C01G27/00
C01G9/02 B
C01G25/00
C01F17/218
B01F17/42
B01F17/38
B01F17/54
B01F17/00
B82Y40/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020076586
(22)【出願日】2020-04-23
(62)【分割の表示】P 2017136074の分割
【原出願日】2011-04-25
(65)【公開番号】P2020142986
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】61/327,313
(32)【優先日】2010-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/407,063
(32)【優先日】2010-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512272281
【氏名又は名称】ピクセリジェント・テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ゴネン・ウィリアムズ,ゼーラ・サーピル
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,イジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウィアチェク,ロバート・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バイ,シア
(72)【発明者】
【氏名】ゴウ,リンフェン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,セリナ・アイ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ジュン
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-162848(JP,A)
【文献】特開2008-289985(JP,A)
【文献】特開2008-044835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00-25/06
C01G 27/00-27/06
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶の溶媒熱製造方法であって、
前記ナノ結晶の少なくとも1種の先駆物質を少なくとも1種の溶媒中に溶解または混合し、それにより溶液を生成すること、
前記溶液を250℃~350℃の範囲の温度に加熱し、それにより前記ナノ結晶を形成させることを含み、ここで、前記少なくとも1種の溶媒が追加的に水を含み、そして前記ナノ結晶が酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム・ジルコニウムおよび酸化チタン・ジルコニウムの少なくとも1種を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記ナノ結晶は少なくとも1種の作用剤でキャップされ、前記ナノ結晶の溶解性または分散性を増す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の作用剤は、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-トリメトキシシラン、メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、およびグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オレイルアルコール、ドデシルアルコール、オクタデカノール、およびトリエチレングリコールモノメチルエーテル、オクタン酸、酢酸、プロピオン酸、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、オレイン酸、安息香酸、またはこれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水が1:1から4:1までの範囲の水対先駆物質のモル比で前記溶液中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ結晶は1nm~5nmの平均のサイズ範囲のものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ結晶を精製および/または分離することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により形成した前記精製しおよび/または分離したナノ結晶を溶媒またはポリマー中に分散させることを含む、分散体製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の溶媒は、ベンジルアルコール、フェノール、オレイルアルコール、トルエン、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、環状ケトン、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、それぞれ2010年4月23日および2010年10月27日に提出された米国仮出願61/327313号および61/407063号の利益を請求し、それらの各々の内容の全てが参考文献として本明細書に取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
キャップされたコロイド状の半導体ナノ結晶の調製およびポリマー溶液とフィルムの中でのそれらの結晶の分散が、本明細書で記述される。このコロイド状の半導体ナノ結晶は、1~10nmの間のナノ結晶サイズを有する高度に単分散性のものである。これらのナノ結晶を用いて、高い添加密度の均一に分散されキャップされた半導体ナノ結晶が中に含まれるナノ複合材を形成することができる。ナノ結晶の懸濁液を様々な溶媒において形成することができて、その懸濁液から製造されるナノ複合材を、光学的に透過性で散乱がほとんど生じないか、全く生じないものにすることができる。
【0003】
連邦政府が後援する研究または開発についての陳述
この研究は一部が、商務省協同契約番号70NANB7H7014および70NANB10H012および米国国立科学財団認可番号0724417によって支援された。
【背景技術】
【0004】
ナノ結晶は物質の単結晶であって、結晶の少なくとも一つの寸法が1ミクロン未満のサイズのものである。ナノ結晶はそれらの塊状の相対物の光学的、機械的および物理的な性質を保持していてもよく、あるいは全く異なる性質を示してもよい。ナノ結晶は広範な方法によって製造することができて、そのうちの幾つかとしては、液体合成、溶媒熱合成、気相合成、エーロゾル合成、熱分解、火炎熱分解、レーザー熱分解、ボールミル粉砕、およびレーザーアブレーションがある。
【0005】
ナノ結晶は、(これらに限定するものではないが)液体、ゲル、ガラス、ポリマーおよび固体を含めた、様々な媒質(media)または媒質の組み合わせの中に分散させることが
できる。分散したナノ結晶は、ナノ結晶の全てまたは幾つかの性質を分散体に付与するか、あるいは個々の成分のいずれの性質とも異なる性質を分散体に付与するだろう。ナノ結晶と媒質との間で形成される分散の質は、最終的な分散体の性質に大きな影響を及ぼすかもしれない。媒質中のナノ結晶の分散の質は、(これらに限定するものではないが)ナノ結晶の表面(あるいは有効なナノ結晶表面)の化学的性質、ナノ結晶の大きさと形状、ナノ結晶の物理的性質、分散媒質の化学的性質、および分散媒質の物理的性質を含めた、ひと組のパラメーターの間の複合した相互作用によって支配されるものとして説明することができる。良好に分散したナノ結晶は、ナノ結晶の凝集体が最小限の量で存在する媒質中の全体にわたって均一に分布しているナノ結晶と定義することができる。ナノ結晶が媒質中に良好に分散していない場合、ナノ結晶の光学的、機械的および物理的な性質は変わるかもしれず、あるいは媒質の性質は悪影響を受けるかもしれない。
【0006】
ナノ複合材は、ポリマー、セラミックおよびガラスを含めたマトリックス中に分散したナノ結晶からなるナノ結晶分散体である。ナノ複合材は、粉末の形態のナノ結晶または別の媒質中にすでに分散されたナノ結晶のいずれかとマトリックスの先駆物質の成分とを混合することによって製造することができる。ナノ複合材を形成するのに用いるための可能性のあるマトリックス成分の非網羅的なリストとしては、モノマー、オリゴマー、ポリマー、プレポリマー樹脂、セラミック、プレセラミックおよびガラスがある。ナノ複合材は、周知の範囲の複合材料を拡張したものであって、複合材料において用いられるミクロン
サイズの充填材またはもっと大きな充填材がナノ結晶で置き換えられたものと考えることができる。複合材料とナノ複合材の両者において、ナノ複合材の光学的、機械的および物理的な性質を充填材料を用いて改変することができるかもしれないが、しかし、ナノ複合材において用いられる充填材のサイズが小さいために、マトリックス中に充填材を含めることによる有害な影響は、比較的小さいか、あるいは強くはないだろう。複合材料において生じるかもしれない、これらの可能性のある有害な影響のリストとしては、構造的結合性の低下、機械的強度の低下、機械的安定性の低下、可撓性の低下、光学的透過性の低下、および熱安定性の低下がある。ミクロンサイズの充填材またはもっと大きな充填材を代替するものとしてナノ結晶を用いる可能性をもっと十分に実現するために、ナノ結晶はマトリックス中で良好に分散し得るものである必要がある。これは、複合材料の中の凝集したナノ結晶は凝集体のサイズの充填材と同等に有害に作用するか、あるいはそれよりももっと悪い作用を及ぼす、という事実によるものである。従って、凝集体のサイズが全ての寸法において1ミクロンよりも大きいような、強く凝集した5nmの粒子で作られた複合材料は、ナノ複合材としては作用しないだろう。
【0007】
ナノ複合材を製造するための典型的な手段によれば、良好に分散しているとは言えないような、媒質中でのナノ結晶の分布が生じることがしばしばある。ナノ結晶の分布はしばしば不均一であり、大量の凝集体を含むことがある。良好に分散したナノ複合材を製造するための一つの重要なことは、マトリックスまたは媒質との混合を開始する前に凝集していないナノ結晶を用いることである。
【0008】
文献においてしばしば論じられる二つの主要なタイプの凝集体がある。硬質凝集体はナノ結晶のクラスターであり、これにおいてナノ結晶は互いに比較的強く結合している。硬質凝集体は、形成される間または形成後であって材料がまだ高温にあるときに粒子が接触する結果生じるだろう。他のタイプの凝集体である軟質凝集体は、通常は合成後に形成されるか、あるいは比較的低温で形成される。一般的な知見によれば、軟質凝集体は加工処理の間に容易に破壊して分離することができて、従って、良好に分散したものにすることができるが、一方、硬質凝集体は大きな困難なくしては破壊することができず、従って、良好に分散したナノ結晶の適当な源ではない。ナノ結晶が良好に分散した分散体を形成するためには、両方のタイプの凝集を避けるのが好ましい。
【0009】
ナノ結晶の凝集はナノ結晶の表面の化学的性質(または有効な表面の化学的性質)によって制御される。分散体においては、ナノ結晶の表面の間の粒子間力(例えば、静電力、ファンデルワールス力およびエントロピー力)により、凝集体が形成される傾向が生じる。これらの粒子間力は、これらの粒子についての体積に対する大きな表面の比率の故に、ナノ結晶において特に重要である。分散において凝集を避けるためには、ナノ結晶の表面が不動態化(または安定化)されていることが望ましい。ナノ結晶の表面を不動態化するために用いることのできる一つの方法には、配位子のイオンまたは分子を導入することが含まれる。これらの配位子(これらはキャッピング剤またはキャップとも呼ばれる)はナノ結晶の表面に付加され、それによりナノ結晶の新しい有効な表面が形成される。この有効な表面は、表面を配位子で完全に(または部分的に)覆うことによって作られるシェル(外殻)の表面である。この有効な表面の化学的性質は、ナノ結晶の実際の表面または最初の表面とは異なる化学的環境を作るために変えることができて、それにより凝集を避けるかまたは減少させて、分散が促進される。これらの不動態化配位子は、様々な手段で凝集を防ぐことを助けることができる。ナノ結晶を反発するような同じ電荷を利用する静電不動態化や、ナノ結晶の表面を物理的に離しておく塊状の分子を用いる立体不動態化は、表面不動態化方法の二つの例である。
【0010】
エーロゾル合成、熱分解、火炎熱分解、レーザー熱分解、ボールミル粉砕、およびレーザーアブレーションのような大部分の典型的なナノ結晶合成法によれば、ここで述べてい
るタイプの表面不動態化を伴わないナノ結晶が生成する。実際に、これらの方法の多くでは、硬質凝集体として密集したナノ結晶が生成する。合成によって凝集したナノ結晶が生じない場合であっても、表面不動態化を伴わない金属酸化物のナノ結晶は、粒子間力のために凝集する傾向がある。
【0011】
金属酸化物のコロイド状ナノ結晶の液体合成は、合成が行われる間に少なくとも部分的に表面が不動態化したナノ結晶を生成する方法である。液体合成は、キャッピング剤が存在するか、あるいは存在しない条件下で、溶媒中で行われる。ナノ結晶は、合成を行う間かまたはその後に、キャッピング剤によって少なくとも部分的に凝集に対して保護される。合成が配位溶媒中で行われる場合、溶媒の分子またはその生成物は、表面を不動態化するためのキャッピング剤として作用するかもしれない。液体合成の後、ナノ結晶は、溶媒、溶媒の生成物、添加されたキャッピング剤、および/またはこれらの組み合わせによりナノ結晶が部分的にまたは完全に覆われることによって、凝集体を形成することから保護される。
【0012】
液体合成によってナノ結晶が合成された後、不動態化されたままの表面を、キャップ交換反応または配位子交換反応として知られるプロセスによって変性することができ、この反応においては、一つの配位子またはキャッピング剤は別のものによって少なくとも部分的に置換される。このプロセスにおいて、ナノ結晶は通常、所望のキャッピング剤とともに溶媒中に分散される。ある場合には、懸濁液の温度は、交換プロセスをさらに進めるために高温にされる。キャップ交換の結果、ナノ結晶の表面のある部分に新たなキャッピング剤が付加されるか、あるいは前の表面不動態化剤の部分が新たなキャッピング剤によって置換されるか、あるいはこれらの何らかの組み合わせのいずれかが行われる。その新たなキャッピング剤は、有効なナノ結晶表面と最終的な分散体または用途のために選択される溶媒またはその他の媒質との間の化学的な適合性を得るために選択されてもよい。
【0013】
他の方法によって生成されて表面が不動態化されていない合成したままのナノ結晶を、キャッピング剤に曝露することもできる。これによりナノ結晶の表面のある部分がキャッピング剤によって覆われるかもしれないが、このプロセスによって前に形成された(硬質凝集体と軟質凝集体の両者を含めた)いかなる凝集体も破壊して分離することはできないだろう。酸化物のナノ結晶からなるこれらの凝集体は、不動態化剤がナノ結晶の間の多孔質のスペーサーを形成しているような、表面が不動態化されたナノ結晶からなる非常に弱く結合した凝集体とは異なるものである。弱く結合した凝集体においては、表面の不動態化によって付与されるナノ結晶間のスペーサー層は重要である。というのは、凝集を生じさせる表面と表面の間の力の多くは短い範囲の相互作用であり、これはナノ結晶の分離を増大させることによって低下させることができるからである。しかし、表面の不動態化が行われない場合、硬質凝集体が形成されるなどしてナノ結晶の表面が一度結合すると、短範囲の力が支配的となり、ナノ結晶を再び分離させるのは困難である。
【0014】
表面が不動態化されたナノ結晶の凝集体で、分解することのできるものは、粒子を洗浄する際や粉末を乾燥する際など、分散体の製造における様々な時点の際に形成されるかもしれない。コロイド状のナノ結晶を製造するために液体合成を用いることの利点の一つは、合成から合成後のプロセスまでのナノ結晶の加工処理の全ての段階において硬質凝集体と軟質凝集体の両者が形成されるのを防止または減少させるために、合成したままのナノ結晶の表面の不動態化を用い、それにより最終的に高品質の分散体を形成することができることである。
【発明の概要】
【0015】
高品質のナノ複合材を得るために、ナノ結晶の粒子のサイズは少なくとも一つの寸法(一つの次元)において10nm未満とするのが有利であり、好ましくは非常に狭い粒子サ
イズ分布とし、そしてさらに特定の粒子形状(棒状、球状、その他)のものとする。さらに、ナノ結晶の表面の化学的性質としては十分に不動態化されているのが有利であり、それにより凝集が防止されるかまたは減少し、そして溶媒および/またはマトリックス材料との相溶性が増大または向上し、従って、ナノ複合材またはその他のナノ結晶を含む基材へのナノ結晶の分散が可能になるか、あるいは向上する。
【0016】
また、ここで開示されるナノ結晶は、例えばナノ粒子、量子ドットおよびコロイド粒子を含むものとして当分野で認識され、そして数百ナノメートルから1nm未満までの範囲のサイズを有する結晶質および/または非晶質の粒子を含んでいてもよい。それらの小さなサイズのために、ナノ結晶は、同様の材料の塊状の形態のものと比較して劇的に異なる物理的性質を備えることができて、それは例えば、量子効果および/または大きな面積対体積比によるものである。ここで開示されるナノ結晶は、例えば冶金から化学センサーまでの範囲の用途や、医薬品から塗料および化粧品の生地までの範囲の産業において有用であろう。マイクロエレクトロニクスや光学の用途も考えられる。
【0017】
コロイド状の半導体のナノ結晶がナノメートルのスケールで化学的に合成され、これはナノ結晶の表面に配位子またはキャッピング剤を有していて、それにより溶液中での分散性と安定性の両方が付与される。基本的な化学合成の方法において、半導体ナノ結晶の先駆物質は安定化有機キャッピング剤または溶媒の存在下で反応または分解する。ナノ結晶のサイズを変化させることは、反応時間または温度のプロフィールの変更、先駆物質を添加する順序の調整、または化合的先駆物質の濃度の変更、あるいは化合的先駆物質の濃度比率の変更、および/またはキャッピング剤の変更によって達成することができる。
【0018】
キャッピング剤の化学的性質はナノ結晶および/またはナノ複合材の製造における系の幾つかのパラメーターに影響し、および/または、それらを制御し、そのようなパラメーターとしては例えば、様々な溶媒と固体の中でのナノ結晶の成長速度、形状および分散性、さらにはナノ結晶中の電荷のキャリヤーの励起状態の寿命がある。この化学合成で生じる効果の適応性は、一つのキャッピング剤がその成長を制御する性質の故にしばしば選択され、そのキャッピング剤が、別のキャッピング剤のための合成が行われた後に、部分的または完全に置換される、という事実によって証明される。この置換は様々な理由から行われてもよく、そのような理由としては例えば、(これらに限定するものではないが)ナノ結晶と媒質の界面を所定の用途に対してより適したものにするためか、あるいはナノ結晶の光学的な性質を改変するためである。
【0019】
酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ハフニウム(HfO)、および酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウム・ジルコニウム(HfO:ZrO)および酸化チタニウム・ジルコニウム(TiO:ZrO)のコロイド状の半導体ナノ結晶を製造するための合成方法、さらにはこれらのナノ結晶のキャッピング(キャップ形成)とキャップ交換、および溶媒とポリマー中でのこれらの物質の分散、およびナノ複合材の生成について以下で説明する。
【0020】
官能化オルガノシランは、ナノ結晶質の酸化物物質の表面をキャッピング剤として存在させるために用いられる一般的な種類の有機化合物である。これらのオルガノシランは典型的には頭部成分と尾部成分からなる。官能化オルガノシランの頭部は典型的にはトリアルコキシシラン基とトリクロロシラン基のいずれかであるが、しかし二置換および一置換されたアルコキシシランとクロロシランも可能である。頭部は、表面に存在するヒドロキシル基(-OH)または-OR基(Rはアルキル基またはアリール基)との共有結合によって酸化物の表面に固着するが、これによりアルコール、アルキルクロリド、水またはHClは副生物として脱離する。官能化オルガノシランの尾部は、様々な長さのアルキル鎖、アリール基、またはエーテル基、アミン、チオール、またはカルボン酸のうちの一つ以
上を含み得る。
【0021】
図1はアルコール脱離反応によるナノ結晶の表面へのオルガノシランの典型的な付加を示す。この反応において、-OH基(101)を含む極性表面を有するナノ結晶はオルガノシラン(102)と反応して、オルガノシランでキャップされたナノ結晶(103)が形成される。
【0022】
酸化物物質の表面を不動態化するためのキャッピング剤として用いられる他の種類の有機化合物としては、オルガノカルボン酸およびオルガノアルコールがある。オルガノカルボン酸の頭部はカルボン酸(-COOH)基であり、オルガノアルコールは-OH基である。頭部は、表面に存在するヒドロキシル基(-OH)または-OR基(Rはアルキルまたはアリール)との共有結合によって酸化物の表面に固着するが、これによりアルコールまたは水は副生物として脱離する。官能化オルガノカルボン酸およびオルガノアルコールの尾部は、様々な長さのアルキル鎖、アリール基、エーテル基、アミン、チオール、またはカルボン酸からなり得る。
【0023】
コロイド状のナノ結晶への官能化オルガノシラン、アルコールまたはカルボン酸などのキャッピング剤を用いることによって、例えば極性媒質や非極性媒質のような様々な分散性溶媒へのナノ結晶の相溶性の制御などの幾つかの所望の特性が付与され、それによりナノ結晶の凝集を低減させることができる。
【0024】
この開示はさらに、オルガノシラン、オルガノアルコールおよび/またはオルガノカルボン酸を用いてナノ結晶の表面を変性するための方法を含む。その方法は、ナノ結晶を合成する間にキャッピング剤を付着させること、あるいは、合成後に、ナノ結晶の上に最初に存在するキャッピング剤の少なくとも一部を第二のキャッピング剤で配位子交換することによってキャッピング剤を付着させること、を含む。これらの反応は、周囲条件、加熱条件、および/または高温高圧条件の下で行うことができる。
【0025】
この開示はさらに、マトリックスとナノ結晶を含むナノ複合材料を含み、ナノ結晶は、例えばマトリックスと混合されるか、攪拌されるか、またはその中に分散している。本開示に係るナノ複合材は、例えばナノ結晶とマトリックス材料またはそのマトリックスの先駆物質の溶融混合、現場(in situ)重合、および/または溶媒混合によって製造するこ
とができる。
【0026】
溶融混合においては、ナノ結晶は溶融状態にあるポリマーと機械的な力を用いて混合される。現場重合において、ナノ結晶はモノマーと混合され、次いでこれらが重合して複合材料を形成する。溶媒混合においては、ナノ結晶とポリマーの両者を分散させるための溶媒が用いられ、そして溶媒を除去することによってポリマーとナノ結晶の均一な分散が達成される。
【0027】
この開示は、ナノ複合材料のための調製方法を含み、この方法は、ポリマーまたはポリマーの先駆物質と官能化オルガノシラン、有機酸またはオルガノアルコールでキャップされたナノ結晶との溶媒混合、およびキャップされたナノ結晶とポリマーのモノマーとの現場重合を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1はアルコールの脱離によるナノ結晶の表面へのオルガノシランの付加を説明している。
図2図2は本明細書で記述されるナノ複合材料を形成するための本開示の加工処理工程をブロック線図で示している。
図3図3は、ポリマーフィルム中の、シランでキャップされたコロイド状半導体ナノ結晶を例示する。
図4図4はジルコニウムブトキシドから合成されたナノ結晶のTEM画像を示す。
図5図5は、1-プロパノールを除去することによってジルコニウムプロポキシドから合成されたZrOナノ結晶の、反応前、反応中または反応後のXRDパターンを示す。
図6図6は、1-プロパノールをa)反応前およびb)反応後に除去することによってジルコニウムプロポキシドから合成されたZrOナノ結晶のTEM画像を示す。
図7図7は様々なサイズを有するZrOナノ結晶のTEM画像を示す。
図8図8は米状の形態を有する合成したままのHfOナノ結晶のTEM画像を示す。
図9図9は2~5nmのHfOナノ結晶のTEM画像を示す。
図10図10はZnOナノ結晶のTEM画像を示す。
図11図11はZnO/SOGナノ複合材を回転塗布したフィルムの紫外線~可視スペクトルを示す。
図12図12はZnO/PMMAナノ複合材のTEM画像を示す。
図13図13はHfO/SOGナノ複合材のTEM画像を示す。
図14図14はAFMによって測定されたZrOフィルムの表面の粗さを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで説明される高品質の半導体金属酸化物のナノ結晶を調製するための合成方法は、金属酸化物の先駆物質を少なくとも1種の溶媒中に混合または溶解し、そして一定の時間にわたって反応させる合成方法を含む。ある場合には、圧力または加熱の使用が必要かもしれない。
【0030】
少なくともZrOとHfOのナノ結晶の合成の場合、驚くべきことに、実施例で説明しているように、溶媒に水を添加することによって、水を添加しないで実施する反応よりも小さな粒子が生じる。溶媒に添加する水の量を制御することによって、ナノ結晶の平均の粒子サイズを制御することができる。
【0031】
金属酸化物の先駆物質は、次のようなアルコキシドのうちの1種以上とすることができる:ジルコニウムエトキシド(Zr(OCHCH))、ジルコニウムn-プロポキシド(Zr(OCHCHCH))、ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(OCH(CH)))、ジルコニウムn-ブトキシド(Zr(OCHCHCHCH))、ジルコニウムt-ブトキシド(Zr(OC(CH)))、ハフニウムエトキシド(Hf(OCHCH))、ハフニウムn-プロポキシド(Hf(OCHCHCH))、ハフニウムイソプロポキシド(Hf(OCH(CH)))、ハフニウムブトキシド(Hf(OCHCHCHCH))、ハフニウムt-ブトキシド(Hf(OC(CH)))、チタニウムエトキシド(Ti(OCHCH))、チタニウムn-プロポキシド(Ti(OCHCHCH))、チタニウムイソプロポキシド(Ti(OCH(CH)))、チタニウムt-ブトキシド(Ti(OC(CH)))、チタニウムn-ブトキシド(Ti(OCHCHCHCH))、亜鉛エトキシド(Zn(OCH
CH))、亜鉛n-プロポキシド(Zn(OCHCHCH))、亜鉛イソプロ
ポキシド(Zn(OCH(CH)))、亜鉛ブトキシド(Zn(OCHCHCH
CH));アセテートまたはアセチルアセトネート、例えば、ジルコニウムアセテー
ト(Zr(OOCCH))、ジルコニウムアセチルアセトネート(Zr(CHCOC
HCOCH))、亜鉛アセテート(Zn(OOCCH))、亜鉛アセチルアセトネ
ート(Zn(CHCOCHCOCH))、ハフニウムアセテート(Hf(OOCCH
));ハリド(ハロゲン化物)、例えば、ジルコニウムクロリド(ZrCl)、ジ
ルコニウムフルオリド(ZrF)、ジルコニウムヨージド(ZrI)、ジルコニウムブロミド(ZrBr)、ハフニウムブロミド(HfBr)、ハフニウムクロリド(HfCl)、ハフニウムヨージド(HfI)、チタニウムクロリド(TiCl)、チタニウムブロミド(TiBr)、チタニウムヨージド(TiI)、チタニウムフルオリド(TiF)、亜鉛クロリド(ZnCl)、亜鉛ブロミド(ZnBr)、亜鉛ヨージド(ZnI)、亜鉛フルオリド(ZnF)、またはその他の有機金属化合物。
【0032】
本開示において有用な溶媒としては、ベンジルアルコール、フェノール、オレイルアルコール、トルエン、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、水、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトン、テトラヒドロフラン、環状ケトン、およびこれらの混合物がある。
【0033】
場合により、本開示のナノ結晶の表面はオルガノシラン、オルガノアルコールまたはオルガノカルボン酸のような少なくとも1種のキャッピング剤でキャップされる。本開示のオルガノシランの例としては、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-トリメトキシシラン、メトキシ(トリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリロ
イルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラ
ン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、およびグリシドキシプロピルトリメトキシシランがある。
【0034】
本開示のオルガノアルコールの例としては、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オレイルアルコール、ドデシルアルコール、オクタデカノール、およびトリエチレングリコールモノメチルエーテルがある。
【0035】
本開示のオルガノカルボン酸の例としては、オクタン酸、酢酸、プロピオン酸、2-[
2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、オレイン酸、安息香酸がある。
本開示のキャップされたコロイド状半導体ナノ結晶は、場合により、水、テトラヒドロフラン、エタノール、メタノール、アセトニトリル、PGMEA、PGPE、PGME、環状ケトン、エチルラクテート、アセトン、ナフサ、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、またはこれらの混合物のような溶媒から除去され、そしてこのような溶媒の中に再分散される。
【0036】
半導体ナノ結晶をマトリックスの中に添加して、ナノ複合材を形成することができる。本開示のマトリックス材料としては、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、セルロイド、セルロースアセテート、ポリ(エチレン-ビニルアセテート)(EVA)、ポリ(エチレン-ビニルアルコール)(EVOH)、フルオロプラスチック、ポリアクリレート(Acrylic)、ポリアクリロニ
トリル(PAN)、ポリアミド(PAまたはNylon)、ポリアミド-イミド(PAI)、
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリカーボネート(PC)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)、ポリケトン(PK)、ポリエステル、ポ
リエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンクロリネート(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリウレタン(PU)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)(SAN)、スピンオンガラス(SOG)ポリマー(例えば、エタノール中のシロキサンスピンオンポリマー)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコール、またはこれらの溶媒の混合物であるJSRミクロトップコート(4-メチル-2-ペンタノール中のNFCTCX014)、JSRミクロフォトレジスト(ARF1682J-19)、およびシリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)およびポリメチルフェニルシロキサン)がある。
【0037】
ナノ結晶の例としては、(これらに限定するものではないが)CuCl、CuBr、CuI、AgCl、AgBr、AgI、AgS、AgTe、Al、Ga、In、FeO、Fe、Fe、TiO、MgO、Eu、CrO、CaO、MgO、ZnO、MgZn1-xO、SiO、CuO、Zr、ZrO、SnO、ZnS、HgS、FeS、CuS、CuIn、MoS、In、Bi、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InGa1-xAs、SiC、Si1-xGe、CaF、YF、YSi、GaInP、Cd、CuInSe、InSe、HgI、PbI、ZnSe、CdS、CdSe、CdTe、HgTe、CdHgTe、PbS、BN、AlN、GaN、InN、AlGa1-xN、Si、ZrN、Y、HfO、Sc、およびこれらの混合物または合金があり、ここでxは0.01~0.99の間の値とすることができる。
【0038】
本開示はナノ結晶を製造する方法を提供し、この方法は、前記ナノ結晶の先駆物質を少なくとも1種の溶媒中に溶解し、それにより溶液を生成することと、場合により、前記溶液の加熱および圧力の増大のうちの少なくとも一つを行うこと、および前記先駆物質を反応させるか、または先駆物質と溶液の少なくとも1種の溶媒とを反応させ、それによりナノ結晶を形成させること、を含む。
【0039】
ナノ結晶は少なくとも1種の作用剤でキャップされてもよく、それにより少なくとも1種の溶媒またはその他の媒質、または溶媒とその他の媒質との何らかの組み合わせの中でのナノ結晶の溶解性または分散性を増大させる。
【0040】
本開示の方法において、ナノ結晶は、少なくとも1種のオルガノシラン、オルガノアルコールまたはオルガノカルボン酸を含むことのできる少なくとも1種の作用剤でキャップされてもよい。これらのキャッピング剤は、尾部の基が媒質と適合する極性を有するキャッピング剤からなる全体を覆うシェルまたは部分的なシェルによって形成される有効なナノ結晶表面を生成することによって、疎水性または親水性の媒質のような様々な媒質中でのナノ結晶の均一な分散をもたらすだろう。
【0041】
本開示のキャッピング方法は、先駆物質の前記反応が行われる前か、その最中またはその後に、溶液中の少なくとも1種のキャッピング剤でナノ結晶をキャップすることを含むだろう。本開示の方法はさらに、本開示のキャッピング方法を実施する前か、またはその後に、ナノ結晶を精製および/または分離することを含む。
【0042】
本開示の方法は、合成したままのナノ結晶、精製されたナノ結晶、および/または分離されたナノ結晶を少なくとも1種のキャッピング剤でキャップして、それにより少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶を製造することを含む。少なくとも部分的に精製された、キャップされたナノ結晶を、本開示の方法に従ってさらに精製および/または分離してもよい。ナノ結晶およびキャップされたナノ結晶は、本開示の方法において、溶媒、ポリマー、またはこれらの何らかの組み合わせのものを含めた物質の中に分散されるだろう。図2はコロイド状の懸濁液を形成することを例示するブロック線図である。この例示される方法において、ナノ結晶が合成され(101)、少なくとも1種のキャッピング剤でキャップまたはキャップ交換され(102)、精製され(103)、そして溶媒またはポリマー溶液と混合される(104)。
【0043】
本開示はさらに、ナノ結晶の合成またはその他の前に行われたキャップ交換反応から生じたナノ結晶の表面にすでに存在する有機成分またはその他のキャッピング剤を、キャップ交換反応において官能化オルガノシラン、オルガノアルコールおよびオルガノカルボン酸を用いて完全に、または部分的に交換する方法を含む。
【0044】
官能化したキャッピング剤は、コロイド状の半導体ナノ結晶を合成する間に、本開示の態様に従ってコロイド状の半導体ナノ結晶に共有結合する。
場合により、半導体ナノ結晶の表面から予め存在する有機成分を酸を用いて除去し、次いで、官能化したキャッピング剤を半導体ナノ結晶の表面に共有結合させることによって、官能化したキャッピング剤は本開示における半導体に共有結合する。予め存在する有機成分を除去するための酸の例としては、例えば、強酸(例えばHCl、HNO、および/またはHSO)、弱酸(例えばHPO)、および/または有機酸(例えば酢酸)がある。
【0045】
あるいは、ナノ結晶は、共有結合を形成することなくキャッピング剤で官能化される。
本開示は、ここで説明される方法によって製造されたナノ結晶および少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶を含む。
【0046】
本開示の方法はさらに、フィルムまたはコーティングを形成する方法を含み、この方法は、本開示のナノ結晶または少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶を別の物質中に分散させることによって分散液を形成し、そしてこの分散液を表面に塗布することを含む。塗布の方法としては、回転塗布、噴霧、浸漬、スクリーン印刷、ロール塗り、塗装、印刷、インクジェット印刷、蒸発による堆積、および/または蒸着がある。
【0047】
本開示の方法はナノ複合材を形成することを含み、この方法は、本開示のナノ結晶または少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶を別の物質と組み合わせ、それによりナノ複合材を形成することを含む。図3はキャッピング剤(101)でキャップされ、ポリマーマトリックス(103)中に分散したナノ結晶(102)を例示する描写である。
【0048】
本開示の方法はナノ複合材を形成することを含み、この方法は、例えば、硬化、重合、積層、押出し、射出成形、型注入成形、回転塗布、浸漬被覆、はけ塗り、噴霧、および/または印刷によって行われる。
【0049】
本開示はさらに、ナノ複合材の構成要素の均質な混合物を様々な異なる方法を用いて形成する方法を含み、次いで、その構成要素は所望の用途のために適した最終的な複合材料に組み付けられる。
【0050】
本開示のナノ結晶または少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶は、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム・ジルコニウム、酸化ハフニウム・ジ
ルコニウム、酸化イットリウム、またはその他の半導体材料から形成することができる。
【実施例
【0051】
本開示の生成物と方法を、以下の非限定的な実施例によって例証する。
実施例1
ナノ結晶の合成とキャップ形成
酸化ジルコニウム(ZrO )ナノ結晶の合成
1~10nmの範囲のサイズを有する酸化ジルコニウムのナノ結晶は、ジルコニウム(IV)n-ブトキシド、ジルコニウムn-プロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノールまたはジルコニウムエトキシドのような先駆物質から調製することができる。所望の最終生成物によっては、ジルコニウムn-ブトキシドまたはジルコニウムn-プロポキシドは先駆物質として有利に用いられるだろう。
【0052】
典型的な方法において、ジルコニウムアルコキシド先駆物質、例えば(これらに限定するものではないが)ジルコニウムn-ブトキシド、ジルコニウムn-プロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノールまたはジルコニウムエトキシドを、ベンジルアルコール、フェノール、オレイルアルコール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、水、テトラヒドロフラン、エタノール、メタノール、アセトニトリル、トルエン、PGMEA、PGPE、PGME、2-メチル-1-プロパノール、またはトリエチレングリコールモノメチルエーテルを含む溶媒または溶媒の混合物と混合し、そしてオートクレーブの中に密閉する。反応混合物を250~350℃の間の温度まで加熱する。反応混合物が設定温度に達したら、一部は溶媒または溶媒の混合物および/または反応の温度に応じて、20分から24時間までの範囲の時間にわたってその温度を維持する。合成したままの酸化ジルコニウムのナノ結晶を乳白色の懸濁液として回収する。
【0053】
さらなる実施例において、オートクレーブの中に密閉された不活性雰囲気中で、30ミリモルのジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノールまたはジルコニウムエトキシドと300ミリリットルのベンジルアルコールの混合物から酸化ジルコニウムのナノ結晶を製造した。反応混合物を10℃/分の加熱速度で350℃まで加熱した。反応混合物が350℃に達したときに、その温度を20~60分間維持した。オートクレーブが室温まで冷却した後、合成したままのZrOのナノ結晶の乳白色の溶液を回収した。
【0054】
さらなる実施例において、45ミリモルのジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノールまたはジルコニウムエトキシドと300ミリリットルのベンジルアルコールを混合し、これをオートクレーブに移し、不活性雰囲気中で酸化ジルコニウムのナノ結晶を調製した。反応混合物を10℃/分の加熱速度で300~350℃まで1~2時間にわたって加熱した。反応の圧力は100~500psiに達する。反応が完了して反応器を室温まで戻した後、合成したままの酸化ジルコニウムのナノ結晶の乳白色の溶液を回収した。
【0055】
先駆物質としてジルコニウムn-ブトキシドを用いる典型的な合成方法は次の通りである:1-ブタノール溶液中の21.58gの80%(w/w)ジルコニウム(IV)n-ブ
トキシド(これは17.26gすなわち45ミリモルのジルコニウム(IV)n-ブトキシドを含有する)をグローブボックスの中で300mlのベンジルアルコールと混合し、次いで、これをガラスの内張りを有するオートクレーブの中に移した。このように構成したものを、酸素と水分による汚染を防ぐためにアルゴン雰囲気の下で密閉した。次いで、オートクレーブを325℃まで加熱し、この温度で1時間保持し、次いで、室温まで冷却した。合成したままの酸化ジルコニウムのナノ結晶の乳白色の溶液を回収した。
【0056】
ジルコニウムn-ブトキシドは1-ブタノール中の溶液(80%w/w)として用意す
る。1-ブタノールは、真空下での合成および/または(30~50℃での)加熱下での
合成を行う前に、または温度が約100℃に達したときにオートクレーブの圧力を解放することによって合成を行う間に、あるいは反応が完了した後に、先駆物質から除去することができる。図4は1-ブタノールの除去を行わずに実施した反応から得られたナノ結晶のTEM画像である。ナノ結晶は球形であり、直径が約5nmである。
【0057】
先駆物質としてジルコニウムn-プロポキシドを用いる典型的な合成方法は次の通りである:1-プロパノール溶液中の21.06gの70%(w/w)ジルコニウム(IV)n
-プロポキシド(これは14.74gすなわち45ミリモルのジルコニウム(IV)n-プロポキシドを含有する)をグローブボックスの中で300mlのベンジルアルコールと混合し、次いで、これをオートクレーブの中に移した。このように構成したものを、酸素と水分による汚染を防ぐためにアルゴン雰囲気の下で密閉した。次いで、オートクレーブを325℃まで加熱し、この温度で1時間保持し、次いで、室温まで冷却した。合成したままの酸化ジルコニウムのナノ結晶の乳白色の溶液を回収した。
【0058】
ジルコニウムn-プロポキシドは1-プロパノール中の溶液(70%w/w)として用
意する。1-プロパノールは、真空下での合成および/または(30~60℃で)加熱しながらの合成を行う前に、先駆物質から除去することができる。またそれは、温度が約100℃に達したときにオートクレーブの圧力を解放することによって合成を行う間に除去することができ、あるいは合成を行った後に除去することができる。反応の前、反応の間、または反応の後に1-プロパノールを先駆物質から除去する反応から得られたナノ結晶は、約5nmのZrOナノ結晶となった。これらのナノ結晶は、図5に示すそれぞれのナノ結晶のXRDパターンによって示されるように、同じ結晶構造を有している。反応の前に除去を行って得られたナノ結晶についての図6aと1-プロパノールの除去を行っていないものについての図6bに示すTEM画像の比較に基づくと、1-プロパノールを反応の前または反応の間に除去することによって得られたナノ結晶は、より球形であり、また単分散性が高い。
【0059】
ナノ結晶の質に影響を及ぼすことなく反応の収率を高めるために、用いられる溶媒の量を変えることなく、ジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノール、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムn-プロポキシドまたはジルコニウムn-ブトキシドのような先駆物質の濃度を5~20倍増大させることができる。
【0060】
ZrOナノ結晶を様々な溶媒および溶媒の混合物の中で合成することができる。合成方法において用いられる溶媒を変化させることによって、ナノ結晶の表面の性質を変化させることができて、そしてある場合には、散乱が最小限になる分散体を得るためのさらなる表面の改質が不必要なほど十分に良好にナノ結晶をキャップすることができる。代替的な溶媒として挙げられるものは、(これらに限定するものではないが)1-ヘキサノール、オレイルアルコール、オレイルアミン、トリオクチルアミン、およびメチルトリエチレングリコールがある。代替的な溶媒混合物として挙げられるものは、(これらに限定するものではないが)ベンジルアルコールと1-ヘキサノール、オレイルアルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテルおよびトリオクチルアミンとの混合物がある。
【0061】
疎水性の表面の化学的性質を有するナノ結晶を調製するために、ZrOを様々な方法で合成してもよい。これは、ナノ結晶の分散体を生成するために疎水性の溶媒を使用することによって利益が得られるような用途のために有用であろう。疎水性の表面を有するZrOナノ結晶を製造するための合成方法の例は次の通りである:ZrOナノ結晶を合成するための溶媒は、様々な容積比のオレイルアルコールとベンジルアルコールの混合物を含有している。反応を行うためのオレイルアルコール対ベンジルアルコールの容積比は、次のような非限定的な比率の例から選択することができる:1:3、1:1、あるいは純オレイルアルコール。典型的な反応において、3ミリモルのジルコニウムイソプロポキ
シドイソプロパノールを、10mlの無水ベンジルアルコールと10mlのオレイルアルコールを含む20mlの混合物に不活性雰囲気中で添加する。この混合物を約1時間攪拌する。次いで、反応混合物を不活性雰囲気の下でオートクレーブ反応器に添加する。次いで、反応器を325℃まで加熱し、そして攪拌しながら1時間にわたって325℃に維持する。冷却した後、エタノールを用いて溶液からナノ結晶を沈殿させる。
【0062】
ここで説明している典型的な合成方法はオートクレーブ中で行われ、そのときの温度は用いられる溶媒の幾つかのものの沸点よりも高くてもよい。これは100~900psiの範囲の圧力、典型的には約250psiの圧力で行うことができる。ZrOナノ結晶の合成において通常存在するであろう高い圧力を排除するために、より高い沸点を有する溶媒または溶媒の混合物を用いてもよい。高い沸点を有する溶媒の非限定的な一つの例は、アルキル化芳香族化合物の混合物であるDowtherm MX(Dow Chemicals社製)である。Dowtherm MXは単独で、またはベンジルアルコールのような他の溶媒と組み合わせて用いることができる。ZrOナノ結晶の合成のために単独で用いる場合、オートクレーブ反応器中の圧力は100psi未満、そして典型的には20psi未満とする。
【0063】
ベンジルアルコールとDowtherm MXの混合物中で行われるZrOナノ結晶の合成の典型的な例は次の通りである:100mlのDowtherm MX、8.13ミリモルのジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノールおよび30mlの無水ベンジルアルコールを、グローブボックス中で250mlのフラスコの中で30分にわたって電磁攪拌機を用いて500rpmで混合する。次いで、混合物を600mlのガラス内張りParrオートクレーブ反応器の中に装填する。次いで、反応器をグローブボックスの中に密閉した。反応混合物を攪拌しながら10℃/分の加熱速度で325℃まで加熱し、攪拌しながら1時間にわたってこの温度で維持する。室温まで冷却した後、ZrOナノ結晶の乳白色の懸濁液を得る。
【0064】
溶媒としてDowtherm MXだけを用いる、ZrOナノ結晶の合成のための手順の典型的な例は次の通りである:100mlのDowtherm MXと3.15gのジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノールを、グローブボックス中で250mlのフラスコの中で30分にわたって電磁攪拌機を用いて500rpmで混合する。次いで、混合物を600mlのガラス内張りParr反応器の中に装填する。次いで、反応に移行する前に、反応器をグローブボックスの中に密閉した。反応混合物を攪拌しながら10℃/分の加熱速度で325℃まで加熱し、攪拌しながら1時間にわたってこの温度で維持する。室温まで冷却した後、ZrOナノ結晶の乳白色の懸濁液を得る。
【0065】
あるいは、反応温度よりも高い沸点を有する溶媒の中で、あるいはこれらの溶媒とベンジルアルコールとの混合物の中でZrOナノ結晶を合成するために、ジルコニウム(IV)イソプロポキシドイソプロパノール以外の先駆物質を用いてもよい。これらの代替の先駆物質としては、(これらに限定するものではないが)ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)n-プロポキシド、およびジルコニウム(IV)n-ブトキシドがある。
【0066】
1~5nmのZrO ナノ結晶の合成
溶媒熱合成を行う間に反応混合物中の水の量を制御することによって、1~5nm、好ましくは1~3nmの平均直径を有するZrOナノ結晶を合成することができる。これらの(1~5nmの)小さなサイズのナノ結晶は、(6~10nmの)大きなナノ結晶よりも増大した比表面積を得たい場合、あるいは、より小さな物理的寸法が有益であるような用途に用いる場合に望ましいかもしれない。これらのナノ結晶を合成するための実験手順の典型的な例は次の通りである:バイアルの中で、30mlのベンジルアルコールと0
.08mlの水(4.44ミリモル)を1時間攪拌し、そしてグローブボックスの中へ移した。グローブボックスの中で、4.49ミリモルのジルコニウム(IV)イソプロポキシドイソプロパノール(Zr(OPr)(HOPr))-、(~1:1の水対先駆物質の比率)をベンジルアルコール溶液とともに4時間攪拌した。先駆物質は溶媒の中に完全に溶解し、そして透明な溶液が得られた。次いで、反応混合物をオートクレーブに移し、その容器の中に密閉した。次いで、反応混合物を攪拌しながら1時間にわたって325℃に加熱した(15分で250℃まで上昇、3分で265℃まで上昇、3分で280℃まで上昇、3分で295℃まで上昇、3分で310℃まで上昇、3分で325℃まで上昇)。室温まで冷却した後、白いスラリーとかすかに黄色い溶液を得た。固体のXRDパターンはZrOのものに適合し、ナノ結晶のTEM画像は粒子のサイズが約3nmであることを示した。図7a、b、cおよびdは、反応混合物中の先駆物質対水のモル比を1:1、1:2、1:3および1:4とした場合のそれぞれから得られたナノ結晶のTEM画像を示す。図7は、水対先駆物質の比率が大きくなると粒子のサイズはいっそう小さくなり、典型的な比率である1:1、1:2、1:3および1:4の中で、1:4の水対先駆物質の比率のときに最も小さな平均粒子サイズ(~2nm)となることを示している。
【0067】
あるいは、ジルコニウム(IV)イソプロポキシドイソプロパノール以外の先駆物質を用いて、1~5nm、好ましくは1~3nmの平均直径を有するZrOナノ結晶を合成することができる。これらの代替の先駆物質には、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)n-プロポキシド、およびジルコニウム(IV)n-ブトキシドが含まれるだろう。
【0068】
ZrOナノ結晶を合成するための、ここで説明している典型的な合成方法の加熱温度と時間については、反応温度を250~350℃で変化させ、反応時間を20分~24時間で変化させるように調節することができる。合成を完了させるためには、温度範囲の下限で行われる反応においては比較的長い加熱時間を要し、そしてこの温度範囲の上限で行われる反応においては比較的短い時間を要するだろう。
【0069】
酸化チタニウム・ジルコニウム(TiO -ZrO )ナノ結晶の合成
ZrOナノ結晶を得るための合成方法を修正することによって、ジルコニウム原子とチタニウム原子の両者を含む金属酸化物ナノ結晶を合成することができる。これらのTiO-ZrO金属酸化物のナノ結晶は、ZrOとTiOの化学的性質、物理的性質
、または光学的性質の合同(またはこれらの何らかの組み合わせ)を必要とする様々な用途において用いることができる。このTiO-ZrOの合成のひと組の比限定的な例
には、ベンジルアルコール中でのジルコニウム先駆物質をチタニウム先駆物質とジルコニウム先駆物質の両者を含む混合物で置き換えることが含まれる。様々なTi/Zr原子比を有するナノ結晶は、チタニウムとジルコニウムの先駆物質の濃度を互いに相対的に調整し、それと同時に金属先駆物質の全体の濃度を一定に維持することによって製造することができる。このやり方で、Ti:Zrの比率を比限定的な例である1:3、1:2、および1:1の値にして、TiO-ZrOナノ結晶を合成することができる。
【0070】
Ti:Zrの比率を1:1としてTiO-ZrOナノ結晶を合成するための典型的
な手順は次の通りである:15ミリモルのジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノールと15ミリモルのチタニウムイソプロポキシドを、不活性雰囲気の下で30mlの無水ベンジルアルコール中に溶解した。次いで、反応混合物を不活性雰囲気の下でオートクレーブ反応器に装填した。反応器を300℃まで加熱し、そして攪拌しながら1時間にわたって300℃で維持した。生じたナノ結晶を、エタノールを用いて溶液から沈殿させた。TEM画像によれば、このTiO-ZrOナノ結晶は約5nmのサイズを有する。元
素分析の結果、サンプル中のTi/Zr原子比は二つの先駆物質の原子比と概ね一致することが確認された。
【0071】
Ti:Zrの比率を1:2としてTiO-ZrOナノ結晶を合成するための典型的
な手順は次の通りである:20ミリモルのジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノールと10ミリモルのチタニウムイソプロポキシドを、不活性雰囲気の下で30mlの無水ベンジルアルコール中に溶解した。次いで、反応混合物を不活性雰囲気の下でオートクレーブ反応器に装填した。反応器を300℃まで加熱し、そして攪拌しながら1時間にわたって300℃で維持した。生じたナノ結晶を、エタノールを用いて溶液から沈殿させた。
【0072】
あるいは、ジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノールとチタニウムイソプロポキシドの混合物ではないチタニウムとジルコニウムの混合物を用いて、様々な値のxを有するTiO-ZrOナノ結晶の合成を行ってもよい。ジルコニウムとチタニウムの先駆
物質の混合物は次のものを含んでいてもよい:非限定的なジルコニウム先駆物質の例としてジルコニウムエトキシド、ジルコニウムn-プロポキシド、およびジルコニウムn-ブトキシド、およびチタニウム先駆物質としてチタニウムエトキシド、チタニウムn-プロポキシド、およびチタニウムn-ブトキシド。
【0073】
酸化ハフニウム・ジルコニウム(HfO -ZrO )ナノ結晶の合成
一つのナノ結晶の中にジルコニウム原子とハフニウム原子の両者を含む金属酸化物ナノ結晶を合成することができる。2ミリモルのハフニウムイソプロポキシドイソプロパノールと2ミリモルのジルコニウムクロリドを10グラムのトリオクチルホスフィンオキシドと混合することによって、ハフニウム対ジルコニウムの原子比が1:1のHfO-Zr
酸化物のナノ結晶を不活性雰囲気中で製造することができる。次いで、反応混合物を、不活性雰囲気の下で激しく攪拌しながら10℃/分の加熱速度で100℃まで加熱する。100℃で1時間攪拌した後、トリオクチルホスフィンオキシドが溶融し、そして溶融したトリオクチルホスフィンオキシドにハフニウムとジルコニウムの先駆物質が溶解する。次いで、溶液を10℃/分の加熱速度で350℃まで急速に加熱し、そして2時間にわたって350℃で維持する。白い粉末が生じ、そして溶液は乳白色になった。2時間後、反応混合物を冷却させる。反応混合物が70℃に達したとき、アセトンを添加してナノ結晶を沈殿させる。生じた酸化ハフニウム・ジルコニウムのナノ物質は形が棒状である(すなわち「ナノロッド」)。
【0074】
さらなる実施例において、ハフニウム対ジルコニウムの原子比についてある範囲の値を有する酸化ハフニウム・ジルコニウムのナノ結晶を調製することができる。例えば、1:4のHf:Zr比を有するナノ結晶を次のようにして調製することができる:0.8ミリモルのハフニウムイソプロポキシドイソプロパノール、1.2ミリモルのジルコニウムイソプロポキシドイソプロパノール、2ミリモルのジルコニウムクロリド、および10グラムのトリオクチルホスフィンオキシドを不活性雰囲気中で混合する。供給する順序は任意である。反応混合物を、不活性雰囲気の下で激しく攪拌しながら10℃/分の加熱速度で100℃まで加熱する。次いで、溶液を10℃/分の加熱速度で350℃まで急速に加熱し、そして2時間にわたって350℃で維持する。白い粉末が形成され、そして溶液は乳白色になる。2時間後、反応混合物を冷却させる。反応混合物が70℃に達したとき、アセトンを添加してHfO-ZrOナノ結晶を沈殿させる。沈殿物を遠心分離によって
し、そして上澄みをデカントして廃棄する。この再分散-沈殿の手順を4回繰り返す。酸化ハフニウム・ジルコニウムのナノ物質の形状は、球状から棒状までに及ぶ(すなわち「ナノロッド」)。
【0075】
酸化ハフニウム(HfO )ナノ結晶の合成
1~10nmの範囲のサイズを有する酸化ハフニウムのナノ結晶は、溶媒熱合成法を用いて不活性雰囲気中で合成される。その合成方法の例は次の通りである:ハフニウムアルコキシド先駆物質(例えば、(これらに限定するものではないが)ハフニウムイソプロポ
キシドイソプロパノールまたはハフニウムエトキシド)のサンプルを有機アルコール(例えば、(これらに限定するものではないが)ベンジルアルコールまたは2-メチル-1-プロパノール)と混合し、そしてオートクレーブの中に密閉した。反応混合物を250~350℃まで加熱した。反応混合物が設定温度に達した後、その温度を設定時間にわたって維持した。設定時間は20分から24時間までの範囲とすることができる。合成したままの酸化ハフニウムのナノ結晶を乳白色の懸濁液としてした。図8は合成されたHfOナノ結晶のTEM画像を示し、これは米状の形を有し、サイズが10nm未満である。
【0076】
本開示の6gの酸化ハフニウムのナノ結晶を製造する方法においては、不活性雰囲気中でハフニウムエトキシドまたはハフニウムイソプロポキシドイソプロパノールの30ミリモルのサンプルを300ミリリットルのベンジルアルコールと混合し、次いで、これをオートクレーブに移す。反応混合物を10℃/分の加熱速度で300~350℃まで1~2時間にわたって加熱する。反応の間、オートクレーブ内の圧力を500psi未満(~35気圧)とする。反応時間が経過して反応器を室温まで戻した後、合成したままの酸化ハフニウムのナノ結晶の乳白色の溶液をした。
【0077】
あるいは、反応温度よりも高い沸点を有する溶媒の中で、あるいはこれらの溶媒とベンジルアルコールとの混合物の中でHfOナノ結晶を合成するために、ハフニウム(IV)イソプロポキシドイソプロパノールまたはハフニウムエトキシド以外の先駆物質を用いてもよい。これらの代替の先駆物質としては、(これらに限定するものではないが)ハフニウム(IV)n-プロポキシド、およびハフニウム(IV)n-ブトキシドがある。
【0078】
1~5nmのHfO ナノ結晶の合成
溶媒熱合成を行う間に反応混合物中の水の量を制御することによって、1~5nm、好ましくは1~3nmの直径を有するHfOナノ結晶を合成することができる。これらの小さなサイズのナノ結晶は、大きなナノ結晶よりも増大した比表面積を得たい場合、あるいは、より小さな物理的寸法が有益であるような用途に用いる場合に望ましいかもしれない。1~5nmのサイズ範囲の酸化ハフニウムのナノ結晶を製造するために水を添加する実験手順の典型的な例は、次の通りである:バイアルの中で30mlのベンジルアルコールと0.1mlの水を3時間攪拌し、次いで、これをドライボックスの中へ移す。ドライボックスの中で、4.45ミリモルのHf(OPr)(HOPr)(2.113g)を水とベンジルアルコールの溶液の中で一晩攪拌し、このとき水対ハフニウムイソプロポキシドのモル比を1:1とする。先駆物質は溶媒混合物の中に完全に溶解する。反応混合物をオートクレーブに移し、その容器の中に密閉する。次いで、反応混合物を攪拌しながら1時間にわたって加熱マントルを用いて325℃に加熱する。室温まで冷却した後、白いスラリーとかすかに黄色い溶液を得る。図9はサイズが2~5nmのナノ結晶のTEM画像を示す。
【0079】
あるいは、ハフニウムイソプロポキシドイソプロパノール以外の先駆物質から出発して、1~5nm、好ましくは1~3nmの直径を有するHfOナノ結晶を合成することができる。これらの代替の先駆物質には、(これらに限定するものではないが)ハフニウムエトキシド、ハフニウムn-プロポキシド、およびハフニウムn-ブトキシドが含まれるだろう。
【0080】
ハフニウムアルコキシド対水の比率は1:1から1:4までの範囲とすることができる。
HfOナノ結晶を合成するための、ここで説明している典型的な合成方法の加熱温度と時間については、反応温度を250~350℃で変化させ、反応時間を20分~24時間で変化させるように調節することができる。温度範囲の下限で行われる反応においては比較的長い加熱時間を要し、そしてこの温度範囲の上限で行われる反応においては比較的
短い時間を要するだろう。
【0081】
酸化亜鉛(ZnO)ナノ結晶の合成
オルガノシランでキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶を次のようにして製造した。2.7グラムの酢酸亜鉛二水和物を140mlのエタノール中に溶解させ、そして攪拌しながら80℃まで加熱した。酢酸亜鉛が完全に溶解し、そして溶液が透明になった後、反応混合物を氷水浴の中で冷却した。別のフラスコの中で、水酸化リチウム一水和物の0.72グラムのサンプルを60ミリリットルのエタノールと混合し、そして30分にわたって超音波処理した。この水酸化リチウムとエタノールの溶液を、氷水浴中の酢酸亜鉛二水和物とエタノールの溶液に1秒当り3滴の速度で滴状に添加した。水酸化リチウムとエタノールの溶液の全てを添加した後、反応混合物を室温まで温め、そして1時間攪拌した。メトキシ(トリエチレンオキシプロピル)トリメトキシシランの0.25グラムのサンプルを5ミリリットルのエタノールと混合し、次いで、反応混合物に注入した。反応混合物の全体を室温で12時間にわたって攪拌し、これによりオルガノシランでキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶が合成した。これらのナノ結晶は球形で、3~6nmの範囲の直径を有していた。
【0082】
さらなる実施例において、大きなサイズ(5nm以上で10nm未満)の、オルガノシランでキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶を次のようにして製造した。2.7グラムの酢酸亜鉛二水和物を140mlのエタノール中に溶解させ、そして攪拌しながら80℃まで加熱した。酢酸亜鉛が完全に溶解し、そして溶液が透明になった後、反応混合物を氷水浴の中で冷却した。別のフラスコの中で、水酸化リチウム一水和物の0.72グラムのサンプルを60ミリリットルのエタノールと混合し、そして30分にわたって超音波処理した。この溶液を、氷水浴中の酢酸亜鉛二水和物とエタノールの溶液に1秒当り3滴の速度で滴状に添加した。水酸化リチウムとエタノールの溶液の全てを添加した後、反応混合物を60℃の湯浴の中に置き、そして1時間攪拌した。メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランの0.25グラムのサンプルを5ミリリットルのエタノールと混合し、次いで、反応混合物に注入した。反応混合物の全体を60℃で12時間にわたって攪拌し、これにより5nm以上で10nm未満の直径を有する、オルガノシランでキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶が合成した。
【0083】
オルガノシランでキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶を製造する方法が提供される。酢酸亜鉛二水和物の21.28グラムのサンプルを1080mlのエタノール中に溶解させ、そして攪拌しながら80℃まで加熱する。酢酸亜鉛が完全に溶解し、そして溶液が透明になった後、反応混合物を氷水浴の中で冷却する。別のフラスコの中で、水酸化リチウム一水和物の5.76グラムのサンプルを480mlのエタノールと混合し、そして30分にわたって超音波処理する。この溶液を、氷水浴中の酢酸亜鉛二水和物とエタノールの溶液に滴状に添加する。水酸化リチウムとエタノールの溶液の全てを添加した後、反応混合物を室温まで温め、そして0.5時間攪拌する。メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランの2.0グラムのサンプルを15ミリリットルのエタノールと混合し、次いで、反応混合物に注入する。反応混合物の全体を室温で16時間にわたって攪拌し、これによりオルガノシランでキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶が合成する。これらのナノ結晶は球形で、3~6nmの直径を有する。
【0084】
あるいは、エタノールに対して4倍濃縮したメトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランを、3~6nmおよび5~10nmのZnOナノ結晶を合成する間に反応混合物に添加し、それにより極性溶媒中でのナノ結晶のキャップ形成度と分散性が増大した。
【0085】
ZnOのナノ結晶を別の液体合成法によって合成することができる。典型的な合成は次
の通りである:50ミリモルの酢酸亜鉛二水和物を、フラスコの中の500mlの無水エタノールに添加した。フラスコを水浴の中で80℃に加熱することによって、酢酸亜鉛は完全に溶解した。これとは別に、200ミリモルの水酸化リチウム一水和物を、125mlのメタノール(またはエタノール)中に室温において激しく攪拌することによって溶解させた。次いで、このLiOH溶液を、環流するZn(Ac)溶液の中に注いだ。添加の後、加熱を止めて、反応混合物を空気中で20分にわたって冷却した。透明な溶液が生じた。次いで、この溶液を30分にわたって80℃に再加熱し、それにより白い沈殿物が形成した。4℃で20分間、4500rpmで遠心分離機にかけることによって沈殿物を溶液から分離し、そしてTHFで洗浄する。生成物のTEM画像を図10に示す。
【0086】
あるいは、ZnOのナノ結晶を製造するために用いられる上の反応において、水酸化リチウム対亜鉛の塩のモル比を1:1.4から1:4までの範囲で変えることができる。
あるいは、ZnOのナノ結晶を製造するために用いられる上の反応において、水酸化リチウムの代替物としてKOHまたはNaOHを用いることができる。
【0087】
酸化イットリウム(Y )ナノ結晶の合成
酸化イットリウムのナノ結晶が、1グラムのオレイン酸イットリウムと5.96グラムのドデシルアミンから製造された。これらを混合し、そして不活性ガスで10分間パージした。次いで、不活性雰囲気の下で攪拌しながら反応混合物を20分で70℃まで加熱し、70℃で20分間維持し、次いで、さらに20分で259℃まで加熱し、そして259℃で2時間維持した。次いで、反応混合物を冷却した。70℃において、反応混合物に20mlのエタノールを添加し、それにより酸化イットリウムのナノ結晶が沈殿した。
【0088】
別の実施例において、20ナノメートルの直径を有する酸化イットリウムのナノディスク(ディスク形状のナノ結晶)が、1グラムのオレイン酸イットリウムと5mlのオレイルアミンの混合物から製造された。これらを混合し、そしてアルゴンなどの不活性ガスで10分間パージした。次いで、不活性ガスの雰囲気下で攪拌しながら反応混合物を20分で70℃まで加熱し、70℃で20分間維持し、20分で250℃まで加熱し、そして最後に250℃で2時間維持した。次いで、反応混合物を冷却した。70℃において、反応混合物に20ミリリットルのエタノールを添加し、それにより酸化イットリウムのナノディスクが沈殿した。
【0089】
別の実施例において、10ナノメートルの直径を有する酸化イットリウムのナノディスクが、2グラムのオレイン酸イットリウムと25mlのオレイルアミンから製造された。これらを混合し、そしてアルゴンで10分間パージした。次いで、アルゴンの保護の下で攪拌しながら反応混合物を20分で70℃まで加熱し、70℃で20分間維持し、20分で280℃まで加熱し、そして最後に280℃で2時間維持した。次いで、反応混合物を冷却した。70℃において、反応混合物に20ミリリットルのエタノールを添加し、それにより酸化イットリウムのナノディスクが沈殿した。
【0090】
さらなる実施例において、10ナノメートルの直径を有する酸化イットリウムのナノディスクが、2グラムのオレイン酸イットリウムと25mlのオレイルアミンから製造された。これらを混合し、そしてアルゴンで10分間パージした。次いで、アルゴンの保護の下で攪拌しながら反応混合物を20分で70℃まで加熱し、70℃で20分間維持し、20分で230℃まで加熱し、そして最後に230℃で2時間維持した。次いで、反応混合物を冷却した。70℃において、反応混合物に20ミリリットルのエタノールを添加し、それにより酸化イットリウムのナノディスクが沈殿した。
【0091】
さらなる実施例において、酸化イットリウムのナノ結晶が、2.15グラムのオレイン酸イットリウムと23グラムのドデシルアミンから製造された。これらを混合し、そして
不活性ガスで10分間パージした。次いで、不活性雰囲気の下で攪拌しながら反応混合物を20分で70℃まで加熱し、70℃で20分間維持し、次いで20分で259℃まで加熱し、そして259℃で2時間維持した。次いで、反応混合物を冷却した。70℃において、反応混合物に20ミリリットルのエタノールを添加し、それにより酸化イットリウムのナノ結晶が沈殿した。生成物はフレーク(薄片)状の形を有し、そのフレークは2nmの厚さを有する。
【0092】
実施例2
ナノ結晶の表面からの配位子の除去
何らかのさらなる変性を可能にする前にナノ結晶の表面にある有機成分またはキャッピング剤を除去するために、合成したままのHfOおよびZrOのナノ結晶の表面の塩酸処理が必要であるかもしれない。典型的な方法には、合成したままのナノ結晶または精製されたナノ結晶を水中で攪拌することによって浮遊させること、および、この懸濁液を1Mの塩酸溶液を用いて1のpHに調節することが含まれる。塩酸を添加すると、溶液は乳白色の懸濁液から透明な溶液に変化する。反応をさらに進行させるために、溶液を室温において一晩攪拌してもよい。溶液をテトラヒドロフランに添加すると、白い固形物が沈殿する。遠心分離を行った後、沈殿物を回収することができる。粒子をテトラヒドロフラン中に再浮遊させ、次いで混合物を遠心分離して、そして沈殿物を回収するプロセスは、上澄みのpHが5~7の範囲になるまで繰り返してもよい。
【0093】
実施例3
ナノ結晶のキャップ交換
ZrO 、HfO およびTiO -ZrO ナノ結晶のキャップ交換
ZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶を合成した後、キャップ交換を
行うために、合成したままのナノ結晶を丸底フラスコの中へ移す。生成したままのナノ結晶を溶媒によって、または合成の間に存在する反応副生物によってキャップすることができる。ナノ結晶のキャップ形成分子を交換することは、様々な理由から望ましいだろう。そのような理由としては、(これらに限定するものではないが)溶媒または何らかのその他のマトリックスの中での分散性の増大、様々な光学的性質の付与、あるいはナノ結晶の表面での様々な化学的性質の付与がある。キャップ交換のプロセスには、合成したままのナノ結晶を溶媒または反応混合物の中で特定の量のキャッピング剤とともに分散または浮遊させることが含まれてもよい。この反応は、キャップ交換を促進するために、高温において、そして特定の長さの時間にわたって実施されてもよい。合成したままのZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶の上でキャップ交換を行うためのキャッピン
グ剤についての非限定的な選択肢としては、メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、3-(メタクリロイ
ルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、およびその他のシラン、カルボン酸およびアル
コールがある。キャップ交換は、ベンジルアルコールまたはその他の溶媒または溶媒の混合物の中で行うことができる。
【0094】
合成したままのZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶のキャップ交換
は、キャッピング剤としてメトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランを用いて行うことができる。メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランは、合成したままのナノ結晶反応混合物を収容した反応容器(典型的には丸底フラスコ)の中に注入してもよい。メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン対合成したままのナノ結晶の重量比は1:5から3:2までの範囲としてよい。次いで、混合物は、短くて10分、長くて3時間の間、80~150℃まで加熱される。合成したままのナノ結晶の上でのメトキシ(トリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランのキャップ交換のための典型的な手順は次の通りである:5gの合成したままのZrO、HfOまたはTiO-ZrOナノ結晶を含む反応混合物が入った丸底フラスコに、1gのメ
トキシ(トリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランキャッピング剤を添加した。キャッピング剤の添加を行う間、混合物を連続して攪拌した。懸濁液を80~150℃まで加熱し、10分~1時間にわたって攪拌し続ける間、この温度に維持した。その後、反応混合物を室温まで冷却した。
【0095】
あるいは、キャッピング剤としてメトキシ(トリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランを用いるZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶のキャップ交換は
、合成したままの反応混合物以外のナノ結晶の懸濁液について行ってもよい。同様の反応は、(これらに限定するものではないが)前もってキャップ交換されたナノ結晶を含む懸濁液、前もって精製された合成したままのナノ結晶を含む懸濁液、酸処理によってキャッピング剤が除去されたナノ結晶を含む懸濁液、および別の溶媒に移されたナノ結晶を含む懸濁液、を含めたナノ結晶の懸濁液について行うことができる。キャップ交換のための代替の溶媒は、(これらに限定するものではないが)次のものから選択することができる:ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトン、テトラヒドロフラン、フェノール、オレイルアルコール、トルエン、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、水、およびこれらの混合物。
【0096】
合成したままのZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶のキャップ交換
は、キャッピング剤として2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸を用いて行うことができる。2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸は、合成したままのナノ結晶反応混合物を収容した反応容器(典型的には丸底フラスコ)の中に注入してもよい。2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸の量は、合成したままのZrO、HfOまたはTiO-ZrOナノ結晶の1グラム当り、少なくて0.4g、多くて1.
5gとしてよい。次いで、混合物は20℃程度の低い温度に維持されるか、あるいは50℃程度に加熱されてもよく、その時間は短くて30分、長くて3時間の間である。合成したままのナノ結晶の上で行われる2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸のキャップ交換反応のための典型的な手順は次の通りである:5gの合成したままのナノ結晶を含む反応混合物が入った丸底フラスコに、2gの2-[2-(2-メトキシエトキシ)エト
キシ]酢酸を添加する。添加を行う間、混合物を連続して攪拌する。懸濁液を1時間にわ
たって攪拌し続ける間、室温に維持する。
【0097】
あるいは、キャッピング剤として2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸を用いるZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶のキャップ交換は、合成した
ままの反応混合物以外のナノ結晶の懸濁液について行ってもよい。同様の反応は、(これらに限定するものではないが)前もってキャップ交換されたナノ結晶を含む懸濁液、前もって精製された合成したままのナノ結晶を含む懸濁液、酸処理によってキャッピング剤が除去されたナノ結晶を含む懸濁液、および別の溶媒に移されたナノ結晶を含む懸濁液、を含めたZrO、HfOまたはTiO-ZrOナノ結晶の懸濁液について行うこと
ができる。キャップ交換反応のための代替の溶媒は、(これらに限定するものではないが)次のものから選択することができる:ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトン、テトラヒドロフラン、フェノール、オレイルアルコール、トルエン、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、水、環状ケトン、およびこれらの混合物。
【0098】
合成したままのZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶のキャップ交換
は、キャッピング剤として3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを用
いて行うことができる。3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランは、合成したままのナノ結晶反応混合物を収容した反応容器(典型的には丸底フラスコ)の中に注入してもよい。3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランの量は、合成したままのナノ結晶の1グラム当り、少なくて0.8g、多くて1.5gとしてよい。次いで、混合物は、短くて30分、長くて1時間の間、120℃まで加熱される。合成したままのナノ結晶の上で行われる3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランのキャップ交換のための典型的な手順は次の通りである:5gの合成したままのZrO、HfOまたはTiO-ZrOナノ結晶を含む反応混合物が入った丸底フラスコに
、4gの3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを添加する。キャッピング剤の添加を行う間、混合物を連続して攪拌する。懸濁液を120℃まで加熱し、1時間にわたって攪拌し続ける間、この温度に維持する。その後、反応混合物を室温まで冷却する。
【0099】
あるいは、キャッピング剤として3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを用いるZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶のキャップ交換は、
合成したままの反応混合物以外のナノ結晶の懸濁液について行ってもよい。同様の反応は、(これらに限定するものではないが)前もってキャップ交換されたナノ結晶を含む懸濁液、前もって精製された合成したままのナノ結晶を含む懸濁液、酸処理によってキャッピング剤が除去されたナノ結晶を含む懸濁液、および別の溶媒に移されたナノ結晶を含む懸濁液、を含めたナノ結晶の懸濁液について行うことができる。キャップ交換反応を行う間にナノ結晶を分散させるための代替の溶媒は、(これらに限定するものではないが)次のものから選択することができる:ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトン、テトラヒドロフラン、フェノール、オレイルアルコール、トルエン、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、水、環状ケトン、およびこれらの混合物。
【0100】
合成したままのZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶のキャップ交換
は、キャッピング剤として3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランとメトキシ(トリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランを用いて行うことができる。ZrOナノ結晶の典型的なキャップ交換反応は次の通りである:500mgの合成したままのZrOを5mlのPGMEAの中で25mgの3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランと100℃において1時間にわたって混合した。次いで、この懸濁液に150mgのメトキシ(トリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランを添加し、そして混合物を100℃においてさらに1時間にわたって攪拌した。生成した混合物をヘプタンで洗浄し、そして白い沈殿物を回収した。
【0101】
ZrO、HfOおよびTiO-ZrOの合成したままのナノ結晶は、疎水性の
溶媒とマトリックス中での分散を促進するためにキャップされてもよい。このキャップ交換プロセスは、合成したままのナノ結晶を、特定の量のキャッピング剤とともに、または比較的疎水性の溶媒中のキャッピング剤とともに分散または浮遊させることを含んでいてもよく、このとき疎水性の溶媒は、(これらに限定するものではないが)ナフサ、トルエン、ヘプタン、ペンタン、デカン、クロロホルムを含めた溶媒から選択される。このキャップ交換反応は、キャップ交換を促進するために、室温または高温において数分から数日の範囲の時間にわたって行ってもよい。合成したままのZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶の表面を疎水性の溶媒および媒質とより適合性にするキャッピング
剤として選択するものとしては、(これらに限定するものではないが)ステアリン酸、オレイン酸、およびオクタデシルトリメトキシシランがある。典型的な反応において、2gのオレイン酸を20mlのトルエンの中の2gの合成したままのナノ結晶を含む懸濁液に添加する。キャッピング剤を添加する間、および添加した後、混合物を連続的に攪拌する
。反応混合物を数分から数時間の間にわたって反応させ、次いで、精製を行う。
【0102】
合成したままのZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶のキャップ交換
は、キャッピング剤としてメトキシポリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランを用いて行ってもよい。あるいは、キャッピング剤としてメトキシポリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランを用いるZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結
晶のキャップ交換は、合成したままの反応混合物以外のナノ結晶の懸濁液について行ってもよい。同様の反応は、(これらに限定するものではないが)前もってキャップ交換されたナノ結晶を含む懸濁液、前もって精製された合成したままのナノ結晶を含む懸濁液、酸処理によってキャッピング剤が除去されたナノ結晶を含む懸濁液、および別の溶媒に移されたナノ結晶を含む懸濁液、を含めたナノ結晶の懸濁液について行うことができる。キャップ交換反応を行う間にナノ結晶を分散させるための代替の溶媒は、(これらに限定するものではないが)次のものから選択することができる:ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトン、テトラヒドロフラン、フェノール、オレイルアルコール、トルエン、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、水、環状ケトン、およびこれらの混合物。
【0103】
酸化イットリウムのナノ結晶のキャップ交換
オルガノシランでキャップされた酸化イットリウムのナノ結晶を、合成したままの酸化イットリウムのナノ結晶およびメトキシ(トリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランを用いるキャップ交換プロセスによって製造することができる。製造したままの酸化イットリウムのナノ結晶とメトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランをテトラヒドロフランの中で混合した。次いで、この混合物をオートクレーブの中で2~4時間にわたって200℃まで加熱した。反応時間が経過した後、混合物を室温まで冷却した。
【0104】
あるいは、このキャップ交換プロセスを、他のオルガノシラン、オルガノカルボン酸およびオルガノアルコールについて行ってもよい。同様の反応は、(これらに限定するものではないが)前もってキャップ交換されたナノ結晶を含む懸濁液、前もって精製された合成したままのナノ結晶を含む懸濁液、酸処理によってキャッピング剤が除去されたナノ結晶を含む懸濁液、および別の溶媒に移されたナノ結晶を含む懸濁液、を含めたナノ結晶の懸濁液について行うことができる。キャップ交換反応を行う間にナノ結晶を分散させるための代替の溶媒は、(これらに限定するものではないが)次のものから選択することができる:ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトン、フェノール、オレイルアルコール、トルエン、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、水、環状ケトン、およびこれらの混合物。
【0105】
ZnOナノ結晶のキャップ交換
合成を行う間にキャッピング剤を添加することなくZnOナノ結晶が合成される場合、合成が完了した後に、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン、2,2,2-メチオキシエチオキシエチオキシ酢酸、またはこれらの物質の組み合わせを用いてナノ結晶をキャップすることができる。2,2,2-メチオキシエチオキシエチオキシ酢酸を用いるキャップ形成は、室温において、または超音波処理の補助を用いて、または懸濁液を80℃まで加熱して、または加熱と超音波処理の両者の組み合わせを用いて、実施することができる。典型的な方法は次の通りである:合成を行った後、4gの合成したままの沈殿物を、丸底フラスコの
中でPGMEAの中に再分散させる。この懸濁液に、2gの2,2,2-メチオキシエチオキシエチオキシ酢酸を攪拌しながら添加する。次いで、キャッピング反応を補助するために、懸濁液を短時間(1分未満)の超音波処理にかける。次いで、キャップされたナノ結晶をTHFとヘプタンを用いて沈殿させる(このとき、ナノ結晶:THF:ヘプタンの容積比を1:1:3とする)。6500rpmの遠心分離によって沈殿物を回収する。
【0106】
実施例4
ナノ結晶の精製
合成したままのZrO 、HfO およびTiO -ZrO ナノ結晶
ZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶のオートクレーブ合成の後に回
収された、合成したままの乳白色のナノ結晶の懸濁液を精製することができる。典型的な方法においては、ナノ結晶の懸濁液をエタノールと混合し、そして遠心分離(8000rpm、30分)を行って、ナノ結晶を分離する。上澄みをデカントして廃棄した後、白い沈殿物を回収する。湿ったナノ結晶を、超音波処理にかけるか、攪拌するか、または振り動かすことによって、追加のエタノール中に浮遊させ、そして懸濁液を再び遠心分離する。エタノールの添加、遠心分離および生じる粉末の回収からなるこれらの再懸濁工程を、さらに4回程度繰り返し、それにより精製されたナノ結晶を得る。
【0107】
疎水性の表面を有するZrO ナノ結晶
ナノ結晶を精製するために、それらをヘキサン中に分散し、次いで、貧溶媒(antisolvent)としてエタノールを用いて沈殿させる。次いで、生じた混合物を遠心分離にかけ、
そしてナノ結晶を回収する。この精製プロセスを3回繰り返し、それによりナフサやヘプタンのような疎水性の溶媒の中で容易に分散するナノ結晶を得る。
【0108】
ZrO 、HfO およびTiO -ZrO ナノ結晶
合成、キャップ形成および/またはキャップ交換の後に、ZrO、HfOおよびTiO-ZrOナノ結晶を精製するか、またはさらなる精製を行ってもよい。ベンジル
アルコールまたはベンジルアルコールとその他の溶媒との混合物の中で合成された後の、ナノ結晶の一つの典型的な精製は次の通りである:THFを反応混合物に、THF対反応混合物の容積比を2:1として添加し、次いで、ヘプタンを、ヘプタン対反応混合物の容積比を7~9対1として添加する。THFとヘプタンに対するナノ結晶懸濁物の反応は、懸濁液中のナノ結晶の濃度に基づいて調節してもよい。これによりナノ結晶が沈殿し、次いで、これを遠心分離にかける。遠心分離と上澄みのデカントを行った後、追加の量のTHFまたはPGMEAを添加してナノ結晶を分散させ、次いで、ヘプタンを添加する。ヘプタン対THFまたはPGMEAの比率は2:1または3:1としてよい。超音波処理、遠心分離およびデカンテーションのサイクルを2~5回繰り返し、それによりナノ結晶は精製される。
【0109】
ZnOナノ結晶
合成したままの、キャップおよび/またはキャップ交換された酸化亜鉛のナノ結晶を精製し、あるいはさらに精製することによって、極性溶媒中で光学的に透明な懸濁液を得ることができる。このプロセスにより、合成反応またはキャップ交換反応の副生物の少なくとも一部が除去される。ZnOナノ結晶を精製するための典型的な方法は次の通りである:エタノール中に酸化亜鉛ナノ結晶が存在する200mlの懸濁液(~1gのZnO)を400~500ミリリットルのヘプタンと混合して白い沈殿物を形成させ、これを遠心分離によって回収し、次いで、上澄みをデカントして廃棄する。次いで、20~60ミリリットルのエタノールのサンプルを用い、5分間の超音波処理を行って溶液中に白い沈殿物を再分散させ、そして40~50ミリリットルのヘプタンのサンプルを再び用いて生成物を沈殿させた。白い沈殿物を遠心分離によって回収した後、上澄みの二回目のデカンテーションと廃棄を行った。エタノールによる再分散とヘプタンによる沈殿の手順をさらに二
回繰り返し、それにより精製されたナノ結晶が得られた。
【0110】
さらなる実施例において、キャップされた酸化亜鉛のナノ結晶を精製することによって、再分散可能な乾燥粉末を得た。エタノール中にオルガノシランでキャップされた酸化亜鉛ナノ結晶が存在する200mlの懸濁液(~1gのZnO)を400~500ミリリットルのヘプタンと混合して、白い沈殿物を形成させた。この白い沈殿物を遠心分離によって回収し、次いで、上澄みをデカントして廃棄した。次いで、20mlのエタノールのサンプルを用い、5分間の超音波処理による補助を行って白い固形物を再分散させた。40~50mlのヘプタンを再び用いて生成物を沈殿させた。白い沈殿物を遠心分離によって回収し、そして上澄みの二回目のデカンテーションと廃棄を行った後、エタノールによる再分散とヘプタンによる沈殿の手順を(好ましくは)さらに二回繰り返した。次いで、この洗浄されたオルガノシランでキャップされたZnOナノ結晶に5mlのペンタンのサンプルを添加し、そして5分にわたって超音波処理を行った。次いで、得られた混合物を再び遠心分離にかけ、沈殿物を再び回収した。上澄みを廃棄した後、固形物を空気中または真空下で乾燥させ、それによりZnOナノ結晶の粉末である乾燥した白い沈殿物を得た。
【0111】
極性溶媒中で光学的に透明な懸濁液を得るために、合成したままの、オルガノシランでキャップされた酸化亜鉛ナノ結晶を精製する別の方法が提供される。調製された、エタノール中にオルガノシランでキャップされた酸化亜鉛ナノ結晶が存在する1.6Lの懸濁液(8gを超えるZnOを含有)を3.2~4.0Lのヘプタンと混合させると、白い沈殿物が形成する。この白い沈殿物を遠心分離によって回収し、次いで、上澄みをデカントして廃棄する。次いで、60mlのエタノールのサンプルを用い、5分間の超音波処理による補助を行って白い沈殿物を再分散させる。120~150mlのヘプタンを再び用いて生成物を沈殿させる。白い沈殿物を遠心分離によって回収し、そして上澄みの二回目のデカンテーションと廃棄を行った後、8g以下のオルガノシランでキャップされたZnOナノ結晶を得る。さらに高い純度を達成するために、エタノールによる再分散とヘプタンによる沈殿の手順をさらに二回繰り返すと、白い沈殿物が得られる。
【0112】
ナノ結晶
合成したままのYナノ結晶の精製は次の通りである:反応混合物に4:1の容量の割合でエタノールを添加して、合成したままの反応混合物を沈殿させた。懸濁液を9000rpmで20分にわたって遠心分離し、その後、上澄みをデカントし廃棄して、沈殿物を回収した。次いで、この沈殿物を2mlのクロロホルム中に(1分を超える)超音波処理によって浮遊させ、そして2mlのエタノールを添加することによって再沈殿させた。懸濁液を9000rpmで30分にわたって遠心分離し、その後、上澄みを再びデカントし廃棄して、沈殿物を回収した。沈殿物を3mlのヘキサン中に(2分を超える)超音波処理によって分散させ、そして2mlのエタノールを用いて再沈殿させ、上澄みをデカントし廃棄して、沈殿物を回収した。ヘキサンとエタノールを用いるこの再分散と沈殿の手順をもう一度繰り返した。この精製の手順の後に、酸化イットリウムのナノ結晶をクロロホルム、ヘキサン、トルエンおよびテトラヒドロフランのような幾つかの溶媒の中に分散させることができる。
【0113】
キャップ交換反応の後のYナノ結晶の精製は次の通りである:ペンタンを用いてナノ結晶を沈殿させ、そして9000rpmで20分にわたって遠心分離した。沈殿物をテトラヒドロフランの中に再分散させ、ヘキサンを用いて沈殿させ、そして9000rpmで20分にわたって遠心分離し、それにより過剰なキャッピング剤と副生物を除去した。この沈殿物は、テトラヒドロフラン、クロロホルムおよびトルエンのような様々な溶媒、およびヘキサンとエタノールのような溶媒の混合物の中に分散させることができる。
【0114】
実施例5
ナノ複合材の形成
キャップされたZnOナノ結晶とポリマーからのナノ複合材の懸濁液とナノ複合材層の形成
白色の沈殿物またはナノ結晶の粉末の形態の、キャップされて精製されたZnOナノ結晶を、例えば(これらに限定するものではないが)テトラヒドロフラン、エタノール、メタノール、アセトニトリル、PGMEA、PGME、PGPE、エチルラクテート、環状ケトン、およびアセトンを含めた、多くの極性溶媒の中に分散させ、それにより光学的に透過性の懸濁液を形成することができる。これらの光学的に透過性の懸濁液を様々なポリマー溶液と混合して、溶媒の混合を用いて、均一に分散したZnO/ポリマーのナノ複合材を形成することができる。ナノ結晶のための分散溶媒は、キャッピング剤とポリマーの化学的適合性に基づいて選択してもよい。ナノ結晶とポリマーの両者を分散させるのに適した溶媒系が好ましい。所望のナノ結晶対ポリマーの比率の複合溶液を形成するために、選択された溶媒の中に分散されるナノ結晶は、別個に調製されるポリマーの溶液であって、好ましくは同じ溶媒または異なる溶媒、または選択された溶媒と相溶する溶媒を組み合わせたものの中にポリマーが存在するような溶液と混合される。これらのポリマーとしては、(これらに限定するものではないが)PMMA、JSRトップコート、JSR Micro(
カリフォルニア州)の銘柄のアクリレートをベースとするフォトレジスト、Honeywellス
ピンオンガラスポリマー(Honeywell Electronic Materials社(カリフォルニア州)のシリコンをベースとするポリマー)、PEO(ポリエチレンオキシド)、エポキシ樹脂、シリコーン(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)およびポリメチルフェニルシロキサン)、およびエポキシ樹脂がある。
【0115】
ナノ複合材の懸濁液を形成するための典型的な方法は、精製されてキャップされたZnOナノ結晶の粉末の38ミリグラムのサンプルを、0.5グラムのHoneywell Electronic
Material(HEM)社製のスピンオンガラス(SOG)ポリマーとエタノールの溶液(
HWSOG、固体含有量は1~5重量%)と混合することである。この混合物を30分にわたって超音波処理することによって、光学的に透過性の懸濁液が得られた。
【0116】
同様に、エポキシポリマーまたはアクリルポリマーまたはスピンオンガラスと5nmの平均サイズを有するZrOナノ結晶とを用いて、高度に透過性のフィルムが得られた。ナノ結晶の重量での添加量は0.01パーセントから90パーセントまで変えることができ、それにより光学的に透過性の懸濁液とフィルムが得られる。
【0117】
3~4nmの平均の粒子サイズを有するキャップされたZnOナノ結晶をエタノール中のSOGと混合させた懸濁液を用い、得られるナノ複合材のフィルムの均一性を確認するために、懸濁液を2インチの石英ディスクの上に500rpmの回転速度で回転塗布することによって、ナノ複合材のフィルムを調製した。紫外線~可視光分光分析を用いて、三つの半径方向に沿う様々な点において、フィルムの光学濃度(OD)(吸光度)を測定した。ディスクの中心を0mmとして、その中心から0、3、5、8、12、16、および20mmの点において測定を行った。励起子ピークは330nmにおいて最大を示し、330nmにおけるODの偏差は全ての測定について2.0%未満であった。
【0118】
エタノール中でSOGと混合させた、キャップされたZnOナノ結晶の懸濁液も用いて、三つの1インチの石英ディスクの上にそれぞれ300、500および700rpmでフィルムを回転塗布した。残留するエタノールを除去するために、これらのフィルムを80℃で1分にわたって空気中で焼成した。得られたフィルムは目視的に透明であり、明白な霞またはくすみはなかった。SOGポリマーナノ複合材中のZnOナノ結晶の公称の含有量は、ナノ複合材の組成から計算して、72.0重量%と測定された。図11は得られたフィルムの紫外線~可視光スペクトルを示す。これらのナノ複合材フィルムは全て、最大で約330nmの波長のバンドギャップを有し、これはZnOの励起子ピークに相当する
。フィルムを塗布するときの回転速度を300rpmから700rpmに増大させると、フィルムの厚さが減少するために、フィルムの光学濃度(OD)(吸光度)は低下した。ナノ複合材フィルムは可視光の波長において高度に透過性であり、このことは350nm以上で散乱が無いことと、紫外線~可視光スペクトルにおける先鋭な励起子ピークの存在によって示される。
【0119】
ナノ複合材を形成する方法は、本開示の精製されてキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶をテトラヒドロフランの中でPMMAと溶媒混合することを含む。精製されてキャップされたZnOナノ結晶をテトラヒドロフランの中に分散させ、次いで、PMMAとTHFの溶液と混合させた。図12は、CuTEMグリッドの上に回転塗布したナノ複合材のTEMを示す。TEM画像上のスケールバーは10nmであり、4~5nmのキャップされたZnOナノ結晶は、何らの凝集物も形成することなくPMMAのマトリックスの中に均一に分散している。挿入写真は、ナノ複合材の中の単一のナノ結晶の接近写真を示す。
【0120】
PMMAとTHFの溶液の中に分散させた、オルガノシランでキャップされたZnOナノ結晶を用いて、2インチのシリコンウェハの上に500rpmの回転速度で回転塗布することによって、ナノ複合材のフィルムを調製した。フィルムの厚さの測定をDektak側面計によって行った。この測定において、フィルムの厚さを判定するためにフィルム上に間欠的な引掻き傷を作った。1mmの距離を測定し、それにより300nm以下の均一なフィルム厚さと、この範囲での3%未満の厚さの変動が示された。
【0121】
本開示のナノ複合材を形成する方法の別の例は、本開示の精製されてキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶をテトラヒドロフランの中でエポキシポリマーとともに分散させることを含む。500mgの、精製されてオルガノシランでキャップされたZnOナノ結晶を、2mlのテトラヒドロフランの中に分散させ、そして1.5gのエポキシであるEPON(登録商標)樹脂862(ビスフェノールFのジグリシジルエーテル)(これは低粘度の液体エポキシ樹脂である)および0.3gのEpikure(登録商標)W硬化剤(EpikureWはエポキシ樹脂のための芳香族ジアミン硬化剤である)と混合させた。混合物を型の中に移し、12時間硬化させ、次いで、150℃で3時間にわたって後硬化させた。
【0122】
本開示のナノ複合材を形成する方法の別の例は、EPON862樹脂を硬化剤W(または硬化剤3295)と、5:1の重量比で手作業で混合させることを含む。次いで、この混合物に、メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランでキャップされたZnOまたはZrOを添加する。ナノ結晶対エポキシ混合物の重量比は1:1000から10:1までの範囲とすることができる。ナノ結晶とエポキシ樹脂の混合物の粘度を低下させるために、少量の(複合材混合物の200重量%以下の)THFを添加した。次いで、混合物を、超音波浴の中で、またはHielscher UP200S超音波処理プローブを用いて、5分未満にわたって超音波処理する。超音波処理の後、次いで、(2グラム~4グラムの)複合材混合物をアルミニウムの皿(直径4cm、これは成形型として機能する)の中に注いだ。次いで、この皿を真空オーブンの中に置いた。THFと気泡を除去するために真空を適用した。次いで、オーブンを真空下で80℃まで一晩(10時間未満)加熱した。得られた複合材を、さらに3時間にわたって150℃で後硬化させ、そして真空オーブンから取り出した。
【0123】
本開示のナノ複合材を形成する方法の別の例は次の通りである:エポキシ樹脂のEPON862と硬化剤3274を、10:4の重量比で手作業で予備混合した。次いで、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランでキャップされたZrOナノ結晶をエポキシ樹脂に0.01~99.99重量%の添加量で添加する。ナノ結晶とエポキシ樹脂の混合物の粘度を低下させるために、少量の(複合材混合物の200重量%以下の)
アセトンを添加した。次いで、混合物を、超音波処理浴の中で、またはHielscher UP200S超音波処理プローブを用いて、5分未満にわたって超音波処理する。次いで、(2グラム~4グラムの)この混合した複合材混合物をアルミニウムの皿(直径4cm、これは成形型として機能する)の中に注いだ。次いで、この皿を真空オーブンの中に置いた。アセトンと気泡を除去するために真空を適用した。得られた複合材を24時間にわたって室温で硬化させ、そして真空オーブンから取り出した。
【0124】
3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランでキャップされたナノ粒子とエポキシの複合材フィルムを回転塗布するための典型的な手順は次の通りである:エポキシ樹脂のEPON862と硬化剤3274を、10:4の重量比で手作業で予備混合した。次いで、所望の量のキャップされたナノ結晶をエポキシ樹脂に1~99.99重量%の添加量で添加する。アセトンを添加し、それにより適当な固形分含有量(10重量%から50重量%までの範囲)を有する回転塗布溶液を調製した。次いで、混合物を超音波処理浴の中で5分にわたって超音波処理する。次いで、この溶液を回転塗布のために直接用いることができる。回転速度を変えることによって、数百ナノメートルから数マイクロメートルまでの範囲の様々なフィルム厚さを得ることができる。
【0125】
本開示のナノ複合材を形成する別の例は、本開示の精製されてキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶をJSR Micro Inc. からのフォトレジストと溶媒混合することを含む。精製さ
れてキャップされたZnOナノ結晶をPGMEAの中に分散させて、透明な懸濁液を形成し、そしてこの懸濁液とJSRフォトレジスト溶液を混合した。表面上に回転塗布した後に、得られる懸濁液はナノ複合材フィルムを形成する。
【0126】
さらなる実施例において、本開示のナノ複合材は、本開示の精製されてキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶をJSR Micro Inc. からのトップコートポリマーと溶媒混合すること
によって形成される。精製したままの、オルガノシランでキャップされたZnOナノ結晶を、JSRトップコートポリマー溶液中の溶媒でもある4-メチル-2-ペンタノール中に分散させた。ナノ結晶の懸濁液をそのトップコート溶液と混合することによって分散液を形成した。その分散液は、表面上への回転塗布によってナノ複合材フィルムを形成するために用いることができる。
【0127】
本開示の方法は、精製されてキャップされた酸化亜鉛のナノ結晶を水中で分散させることを含む。精製した後のZnOの湿潤した沈殿物を水と混合することによって、精製されてキャップされたZnOナノ結晶を水中で分散させ、超音波処理することによって透明な懸濁液を形成した。この懸濁液をJSR水性トップコート溶液と混合した(NFC545-34)。
【0128】
さらなる実施例において、メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランでキャップされたHfOナノ結晶をエタノール中に分散させて懸濁液を形成し、そしてこの懸濁液をSOGとエタノールの溶液と混合することによって、本開示のナノ複合材を形成する。図13は、CuTEMグリッドの上に懸濁液を回転塗布することによって調製されたナノ複合材のTEM画像を示す。この図の挿入図はナノ結晶の接近写真を示す。これらの画像は、4~5nmの米の形状のHfOナノ結晶がSOGマトリックスの中に均一に分散していて、目視できる凝集物は形成されていないことを示す。
【0129】
本開示のナノ複合材を形成するためのさらなる実施例は、本開示のメトキシトリ(エチ
レンオキシ)プロピルトリメトキシシランでキャップされたZrOナノ結晶およびアク
リレートをベースとするポリマーを、PGMEAとPGMEの混合物の中で分散させ、それによりナノ複合材の懸濁液を形成することを含む。この懸濁液のフィルムは、石英ディスクとシリコンウェハの上に回転塗布することによって製造される。ポリマーマトリック
ス中のナノ結晶の含有量は80重量%以下である。フィルムは、ナノ複合材の懸濁液を200nmのフィルターに通してろ過した後に製造される。図14は、懸濁液を石英ディスクの上に回転塗布することによって調製されたナノ複合材フィルムの表面粗さを示すAFM画像を示す。このフィルムについての二乗平均平方根(RMS)の粗さの値は0.521nmであった。
【0130】
現場(in-situ)重合
メチルメタクリレート(MMA)と3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランで少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶の現場重合によって、ZrOナノ結晶とポリメチルメタクリレートのナノ複合材を調製することができる。このナノ複合材の典型的な合成手順は次の通りである:500mgのMMAと2mgのAlBNを9gのトルエン中に溶解させ、その溶液を100℃まで加熱する。3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランとメトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランの両者の混合物でキャップされた0.5gのZrOナノ結晶を1gのTHFの中に分散させる。この分散液をMMAとトルエンの溶液の中に滴状に添加する。混合物を16時間にわたって100℃に維持する。反応混合物はわずかに不透明である。得られる沈殿物をメタノールを用いて貧溶媒沈殿法によって回収する。次いで、沈殿物をTHFの中に再分散させ、それにより12重量%の分散液を形成する。生成物の熱重量分析(TGA)によれば、この分散液の固形物含有量の約38重量%はキャッピング剤とPMMAからのものである。
【0131】
ZrOナノ結晶とポリメチルメタクリレートの現場重合によって形成されるナノ複合材の別の例は次の通りである:9gのトルエンを100℃まで加熱する。3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランとメトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシランでキャップされた0.5gのZrOナノ結晶、0.5gのMMAおよび2mgのAlBNを1gのTHFに添加する。この混合物を熱くしたトルエンの中に滴状に添加する。混合物を16時間にわたって100℃に維持すると、反応混合物はわずかに不透明となる。得られるナノ複合材をメタノールを用いて貧溶媒沈殿法によって回収する。次いで、沈殿物をTHFの中に再分散させ、それにより5重量%の分散液を形成する。生成物のTGAによれば、この分散液の固形物含有量の約31重量%はキャッピング剤とPMMAによるものである。

[発明の態様]
[1]
ナノ結晶を製造する方法であって、
前記ナノ結晶の先駆物質を少なくとも1種の溶媒中に溶解または混合し、それにより溶液を生成すること、
場合により、前記溶液の加熱および圧力の増大のうちの少なくとも一つを行うこと、および
前記先駆物質を反応させるか、または前記先駆物質と前記溶液の前記少なくとも1種の溶媒とを反応させ、それにより前記ナノ結晶を形成させること、
を含む前記方法。
[2]
前記ナノ結晶は少なくとも1種の作用剤でキャップされ、それにより前記少なくとも1種の溶媒またはその他の物質の中での前記ナノ結晶の溶解性または分散性を増大させる、前記1に記載の方法。
[3]
前記少なくとも1種の作用剤は、少なくとも1種のオルガノシラン、オルガノカルボン酸またはオルガノアルコールを含む、請求項2に記載の方法。
[4]
前記ナノ結晶をキャップするための前記少なくとも1種の作用剤は溶液の中に含まれる、前記2に記載の方法。
[5]
前記ナノ結晶をキャップするための前記少なくとも1種の作用剤を、前記反応が行われる前か、その最中またはその後に、前記溶液と接触させる、前記4に記載の方法。
[6]
前記ナノ結晶を精製および/または分離することをさらに含む、前記1に記載の方法。
[7]
前記精製および/または分離されたナノ結晶を少なくとも1種のキャッピング剤でキャップして、それにより少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶を製造することをさらに含む、前記6に記載の方法。
[8]
前記少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶を精製および/または分離することをさらに含む、前記7に記載の方法。
[9]
前記ナノ結晶をさらなる溶媒と接触させることをさらに含む、前記6に記載の方法。
[10]
前記少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶をさらなる溶媒と接触させることをさらに含む、前記8に記載の方法。
[11]
前記さらなる溶媒は請求項1の少なくとも1種の溶媒を含む、前記9に記載の方法。
[12]
前記さらなる溶媒は請求項1の少なくとも1種の溶媒を含む、前記10に記載の方法。
[13]
前記ナノ結晶または少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶は、さらなる物質の中に分散される、前記6~12のいずれかに記載の方法。
[14]
前記さらなる物質はポリマーである、前記13に記載の方法。
[15]
前記1~14のいずれかに記載の方法によって形成されたナノ結晶または少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶。
[16]
フィルムまたはコーティングを形成する方法であって、前記15に記載のナノ結晶または少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶をさらなる物質中に分散させることによって分散液を形成し、そして前記分散液を表面に塗布することを含む方法。
[17]
前記の塗布することは、回転塗布、噴霧、浸漬、スクリーン印刷、ロール塗り、塗装、印刷、インクジェット印刷、蒸発による堆積、および/または蒸着を含む、前記16に記載の方法。
[18]
ナノ複合材を形成する方法であって、前記15に記載のナノ結晶または少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶をさらなる物質と組み合わせて、それによりナノ複合材を形成することを含む方法。
[19]
前記ナノ結晶または前記少なくとも部分的にキャップされたナノ結晶は、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム・ジルコニウム、酸化チタニウム・ジルコニウムおよび/または酸化イットリウムまたはその他の半導体材料から成る、前記1~14または16~18に記載の方法。
[20]
前記少なくとも1種の溶媒は、ベンジルアルコール、フェノール、オレイルアルコール、トルエン、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、水、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、環状ケトン、およびこれらの混合物を含む、前記1~14または16~18に記載の方法。
[21]
前記少なくとも1種の作用剤は、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-トリメトキシシラン、メトキシトリ(エチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、およびグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オレイルアルコール、ドデシルアルコール、オクタデカノール、およびトリエチレングリコールモノメチルエーテル、オクタン酸、酢酸、プロピオン酸、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、オレイン酸、安息香酸、またはこれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む、前記2~5、7、8、10、12~14または16~20のいずれかに記載の方法。
[22]
前記さらなる物質は、ポリマーであるポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、セルロイド、セルロースアセテート、ポリ(エチレン-ビニルアセテート)(EVA)、ポリ(エチレン-ビニルアルコール)(EVOH)、フルオロプラスチック、ポリアクリレート(Acrylic)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PAまたはNylon)、ポリアミド-イミド(PAI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリカーボネート(PC)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)、ポリケトン(PK)、ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンクロリネート(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリウレタン(PU)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)(SAN)、スピンオンガラス(SOG)ポリマー、エタノール中のシロキサンスピンオンポリマー、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコール、またはこれらの溶媒の混合物であるJSRミクロトップコート(4-メチル-2-ペンタノール中のNFC TCX014)、JSRミクロフォトレジスト(ARF1682J-19)、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリメチルフェニルシロキサン、またはこれらの混合物のようなマトリックス材料を含む、前記13~21のいずれかに記載の方法。
[23]
前記少なくとも1種の溶媒はさらに水を含む、前記1に記載の方法。
[24]
前記水は1:1から4:1までの範囲の水対先駆物質のモル比で存在する、前記23に記載の方法。
[25]
前記ナノ結晶は1nm~5nmの平均のサイズ範囲のものである、前記24に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14