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特許7024015ビル機器制御システムおよびビル機器制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ビル機器制御システムおよびビル機器制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/18 20090101AFI20220215BHJP
   H04W 4/33 20180101ALI20220215BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20220215BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20220215BHJP
【FI】
H04W84/18
H04W4/33
H04W88/06
H04W4/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020120168
(22)【出願日】2020-07-13
(62)【分割の表示】P 2016107772の分割
【原出願日】2016-05-30
(65)【公開番号】P2020178362
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2020-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】田代 太一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 賢二
(72)【発明者】
【氏名】島立 敦
【審査官】玉木 宏治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/115317(WO,A1)
【文献】特表2015-508945(JP,A)
【文献】特開2008-015837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビル設備に係る機器の制御データを参加ノードの状態に応じて動的に構成される経路で宛先に転送可能な無線メッシュネットワークを構成する複数の無線通信装置と、
前記複数の無線通信装置のうちの第1の無線通信装置に接続された、前記ビル設備の機器の管理を行う上位制御装置と通信し、前記複数の無線通信装置のうちの前記第1の無線通信装置とは異なる第2の無線通信装置に接続され、前記ビル設備に係る機器の制御を行う制御装置と、
前記複数の無線通信装置のうちの前記第2の無線通信装置が所属する、前記上位制御装置からみて前記無線メッシュネットワークの下位の無線ネットワークに収容される前記ビル設備に係る機器であって、前記制御装置との間で前記制御データを通信する機器と、
を備えるビル機器制御システム。
【請求項2】
前記ビル設備に係る第1の機器と、前記ビル設備に係る第2の機器とは、前記第1の機器を終了する第2の無線通信装置と、前記第2の機器を収容する第2の無線通信装置とを介して通信可能である、
請求項1に記載のビル機器制御システム。
【請求項3】
前記複数の無線通信装置のそれぞれは、
前記複数の無線通信装置と前記機器との対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部と、
前記無線ネットワーク側で受信された制御データの宛先機器が他の無線通信装置の所属する無線ネットワークに存在する場合、前記制御データを前記対応情報に基づいて前記無線メッシュネットワーク側に中継する中継処理部と、
を備える、
請求項1または2に記載のビル機器制御システム。
【請求項4】
前記複数の無線通信装置のそれぞれは、
前記無線メッシュネットワークの他の無線通信装置から受信された制御データを転送先の無線通信装置に転送する転送処理部をさらに備える、
請求項に記載のビル機器制御システム。
【請求項5】
前記対応情報は、前記複数の無線通信装置の間におけるデータの転送経路を前記制御データの宛先機器ごとに示す情報であり、
前記転送処理部は、受信された制御データの宛先機器に対応づけられた転送経路上において自装置の次に位置する無線通信装置を前記対応情報に基づいて特定し、特定した前記無線通信装置を前記制御データの転送先として決定する、
請求項に記載のビル機器制御システム。
【請求項6】
前記複数の無線通信装置のそれぞれは、前記無線メッシュネットワークのプロトコル処理を実行することにより他の無線通信装置との間の通信経路を構成するプロトコル処理部をさらに備え、
前記複数の無線通信装置の一部又は全部は、前記他の無線通信装置との間の通信経路と、前記通信経路上の無線通信装置が収容する機器とを対応づけることにより前記対応情報を生成する対応情報生成部をさらに備える、
請求項3から5のいずれか一項に記載のビル機器制御システム。
【請求項7】
自装置と同じ無線ネットワークに収容される機器と通信するための通信部であって、
プロトコルの異なる通信処理を行う複数のプロトコル処理部と、
前記複数のプロトコル処理部から通信先の前記機器に応じたプロトコル処理部を選択するプロトコル選択部と、
を備える前記通信部をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載のビル機器制御システム。
【請求項8】
プロトコルの異なる複数の通信インタフェースを用いて自装置と同じ無線ネットワークに収容される機器と通信するための通信部をさらに備え、
前記中継処理部は、前記複数の通信インタフェースのうち通信先の機器のプロトコルに応じた通信インタフェースで前記機器宛ての制御データを送信する、
請求項3から6のいずれか一項に記載のビル機器制御システム。
【請求項9】
複数の無線通信装置により、ビル設備に係る機器の制御データを参加ノードの状態に応じて動的に構成される経路で宛先に転送可能な無線メッシュネットワークを構成し、
前記複数の無線通信装置のうちの第1の無線通信装置に接続された、前記ビル設備の機器の管理を行う上位制御装置と通信し、前記複数の無線通信装置のうちの前記第1の無線通信装置とは異なる第2の無線通信装置に接続された制御装置が前記ビル設備に係る機器の制御を行い、
前記複数の無線通信装置のうちの前記第2の無線通信装置が所属する、前記上位制御装置からみて前記無線メッシュネットワークの下位の無線ネットワークに収容される前記ビル設備に係る機器であって、前記制御装置との間で前記制御データを通信させる、
ビル機器制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ビル機器制御システムおよびビル機器制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル、ホテル、工場又は商業施設等の建物(以下、総称して「ビル」という。)の中の設備の統合的な管理(監視や制御等)を実現するためには、管理対象の設備に加え、ビル内外の状態を計測する各種センサや、管理対象設備を操作するための設定器等の機器から設備管理に必要な情報を収集する必要がある。例えば空調設備の管理には、居室内の温度や湿度等の情報や、設定器に入力される設定温度等の情報が必要となる。そのため、統合的なビル管理の実現には、設備管理に必要な情報を通信するためのネットワークが不可欠であり、この設備管理に関する通信は、従来有線通信で実現されるのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-15837号公報
【文献】特開平7-273770号公報
【文献】特開平7-307740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなビル管理に関連する通信機器は非常に多く、よって通信配線が煩雑となることから、配線工事や配線管理に多くの労力を要する可能性があった。一方、近年、ビルの建設や改築における機器制御システムの構築に対しては、より工期の短縮化が要求されてきており、この要求に対応できる制御システムが開発検討されてきた。
本発明は、上記課題を解決することができるビル機器制御システムおよびビル機器制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のビル機器制御システムは、複数の無線通信装置と、制御装置と、機器と、を持つ。複数の無線通信装置は、ビル設備に係る機器の制御データを参加ノードの状態に応じて動的に構成される経路で宛先に転送可能な無線メッシュネットワークを構成する。制御装置は、前記複数の無線通信装置のうちの第1の無線通信装置に接続された、前記ビル設備の機器の管理を行う上位制御装置と通信し、前記複数の無線通信装置のうちの前記第1の無線通信装置とは異なる第2の無線通信装置に接続され、前記ビル設備に係る機器の制御を行う。前記機器は、前記第2の無線通信装置が所属する、前記上位制御装置からみて前記無線メッシュネットワークの下位の無線ネットワークに収容される前記設備に係る機器であって、前記制御装置との間で前記制御データを通信する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の制御システム100のシステム構成の具体例を示す図。
図2】第1の実施形態におけるゲートウェイ装置1の機能構成の具体例を示す図。
図3】第1の実施形態における対応情報の具体例を示す図。
図4】第1の実施形態における対応情報の具体例を示す図。
図5】ゲートウェイ装置1が行う中継処理の流れを示すフローチャート。
図6】第1の実施形態の制御システム100の動作例を示す図。
図7図6の動作例において送受信されるフレームの具体例を示す図。
図8】第1の実施形態の制御システム100の動作例を示すシーケンス図。
図9】第1の実施形態の制御システム100の動作例を示すシーケンス図。
図10】第2の実施形態におけるゲートウェイ装置1aの機能構成の具体例を示す図。
図11】第2の実施形態における対応情報の具体例を示す図。
図12】第2の実施形態における対応情報の具体例を示す図。
図13】論理パスの具体例を示す図。
図14】論理パスの具体例を示す図。
図15】第2の実施形態の制御システム100の動作例を示す図。
図16図15の動作例において送受信されるフレームの具体例を示す図。
図17】第3の実施形態におけるゲートウェイ装置1bの機能構成の具体例を示す図。
図18】対応情報が生成される処理の流れを示すフローチャート。
図19】第4の実施形態におけるゲートウェイ装置1cの機能構成の具体例を示す図。
図20】第4の実施形態におけるゲートウェイ装置1cの機能構成の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のビル機器制御システムおよびビル機器制御方法を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の制御システム100のシステム構成の具体例を示す図である。第1の実施形態の制御システム100は、ビルの監視制御室に設置された上位制御装置10が、第1フロア~第Nフロアの各フロア及び機械室に設置された各種設備(以下、「管理対象設備」という。)を管理するシステムである。図1の例には、管理対象設備の一例として、空調設備21、照明設備31、熱源設備としての熱源用ポンプ41及び熱源用バルブ42が示されている。空調設備21及び照明設備31は第1フロア~第Nフロアの各フロアに設置され、熱源用ポンプ41及び熱源用バルブ42は機械室に設置される。なお、監視制御室に設置された管理端末101は制御システム100のオペレーションに用いられる端末であって、例えば制御システム100に関する情報の表示や、制御システム100に対する操作の入力に用いられる端末である。
【0009】
各フロア及び機械室には管理対象設備に加え、管理対象設備の管理に必要な各種機器が設置される。例えば、各フロアには空調設備21の管理に必要な機器として空調用設定器22、空調用センサ23及び空調制御装置24が設置される。空調用設定器22は、ユーザが空調設備21のON/OFFや温度設定等を入力するために用いられる機器である。空調用センサ23は、空調設備21の制御に必要な情報(例えば室温等)を取得するセンサである。空調制御装置24は、空調制御処理を行う装置である。
【0010】
空調制御処理は空調設備21の制御に関する処理である。例えば空調制御処理には、空調設備21の動作条件を決定する処理や決定した動作条件を通知する処理、動作条件の決定に必要な情報を送受信する処理などが含まれる。例えば、空調制御装置24は、空調用センサ23から取得される室温や湿度等のセンサ情報を上位制御装置10に送信する。上位制御装置10は、センサ情報に基づいて第1フロアの設定温度を決定し、空調制御装置24に通知する。空調制御装置24は、通知された設定温度に基づいて空調設備21の動作条件を決定する。以下では、空調設備21、空調用設定器22、空調用センサ23及び空調制御装置24を総称して空調系機器20と称する。
【0011】
また例えば、各フロアには照明設備31の管理に必要な機器として照明用設定器32、照明用センサ33及び照明制御装置34が設置される。照明用設定器32は、ユーザが照明設備31のON/OFFや調光率等を入力するために用いられる機器である。照明用センサ33は、照明設備31の制御に必要な情報(例えば部屋の明るさや人の分布、外光の入射状況等)を取得するセンサである。照明制御装置34は、照明制御処理を行う装置である。
【0012】
照明制御処理は照明設備31の制御に関する処理である。例えば照明制御処理には、照明設備31の動作条件を決定する処理や決定した動作条件を通知する処理、動作条件の決定に必要な情報を送受信する処理などが含まれる。例えば、照明制御装置34は、照明用センサ33から取得される明るさ等のセンサ情報を上位制御装置10に送信する。上位制御装置10は、センサ情報に基づいて第1フロアの設定照度を決定し、照明制御装置34に通知する。照明制御装置34は、通知された設定照度に基づいて照明設備31の動作条件を決定する。以下では、照明設備31、照明用設定器32、照明用センサ33及び照明制御装置34を総称して照明系機器30と称する。
【0013】
また例えば、機械室には熱源用ポンプ41及び熱源用バルブ42の管理に必要な機器としてポンプ用センサ43、バルブ用センサ44及び熱源制御装置45が設置される。熱源用ポンプ41は冷媒を圧縮する圧縮機であり、熱源用バルブ42は冷媒を減圧する膨張弁である場合、例えばポンプ用センサ43及びバルブ用センサ44は、熱源用ポンプ41や熱源用バルブ42の動作状態を示す電流や電圧、冷媒の温度等を計測するセンサである。熱源制御装置45は、熱源制御処理を行う装置である。
【0014】
熱源制御処理は熱源用ポンプ41及び熱源用バルブ42の制御に関する処理である。例えば熱源制御処理には、熱源用ポンプ41及び熱源用バルブ42の動作条件を決定する処理や決定した動作条件を通知する処理、動作条件の決定に必要な情報を送受信する処理などが含まれる。例えば、熱源制御装置45は、ポンプ用センサ43及びバルブ用センサ44から取得される熱源用ポンプ41及び熱源用バルブ42の動作情報を示すセンサ情報を上位制御装置10に送信する。上位制御装置10は、センサ情報に基づいて熱源用ポンプ41の出力強度や熱源用バルブ42の開度を決定し、熱源制御装置45に通知する。熱源制御装置45は、通知された出力強度や開度に基づいて熱源用ポンプ41及び熱源用バルブ42の動作条件を決定する。以下では、熱源用ポンプ41、熱源用バルブ42、ポンプ用センサ43、バルブ用センサ44及び熱源制御装置45を総称して熱源系機器40と称する。
【0015】
一般に、上記の管理対象設備及びその関連機器は、空調系や照明系、熱源系、制御系といった機器の種別ごとに通信プロトコルが異なる。そのため、従来の制御システムでは、各フロアや機械室に、各種機器の種別毎に中間処理を行うローカルサーバが設置されていた。ここでいう中間処理とは、上位制御装置と下位側の制御装置(例えば空調制御装置等)との間で、通信の中継(例えばプロトコル変換)や、送受信される情報の変換や集約等を行う処理である。各ローカルサーバは、上位のネットワークを介して上位制御装置と通信可能に構成され、下位のネットワークを介して下位側の制御装置と通信可能に構成される。
【0016】
なお、上位のネットワークを構成する通信媒体や通信プロトコルは任意であるが、現在ではイーサネット(登録商標)とBACnet(Building Automation and Control Networking protocol)プロトコルとを組み合わせた構成が広く普及している。このように、ローカルサーバが行う中間処理によって、上位制御装置が異なる種別の管理対象設備を統合的に管理することができる構成となっている。このような従来の制御システムは、上位制御装置や下位側の制御装置、各種センサ及び設定器等の通信が有線で構成されるのが一般的であった。このような従来の構成に対して、図1に示す実施形態の制御システム100は、各フロアや機械室ごとに第1無線ネットワーク63及び第2無線ネットワーク64を構成することによって、各種装置及び機器の通信の無線化を実現する。
【0017】
第1無線ネットワーク63は、無線メッシュネットワークである。無線メッシュネットワークは、アクセスポイントや基地局を必要とせず、ネットワークを構成するノードが他の複数のノードと直接接続することによって構成されるメッシュ状のネットワークのことである。このような無線メッシュネットワークでは、ネットワークに参加するノードの状態に応じて動的に通信経路が構築される。そのため、無線メッシュネットワークを用いることにより、物理的な配線を省略しつつ耐障害性の高い無線通信ネットワークを構築することができる。
【0018】
第1無線ネットワーク63は、ビル内の各制御エリアのそれぞれに1つずつ設けられる。制御エリアとは、ビル内において管理対象設備が設置される可能性のある空間が所定の基準で分割された各区域を意味する。図1は、第1フロア~第Nフロア及び機械室のそれぞれを1つの制御エリアとした場合の例である。この場合、第1フロア~第Nフロア及び機械室のそれぞれに1つの第1無線ネットワーク63が設けられる。図1では、第nフロア(1≦n≦N)のそれぞれに第1無線ネットワーク63-nが、機械室に第1無線ネットワーク63-Mが設けられている。各制御エリアの第1無線ネットワーク63には、無線メッシュネットワークのエッジを構成するゲートウェイ装置1が配置される。ゲートウェイ装置1(無線通信装置)は、自装置が直接的又は間接的に収容する他の装置やネットワークを第1無線ネットワーク63に接続する。
【0019】
例えば、図1では、第1無線ネットワーク63-1にゲートウェイ装置1-1(第2のゲートウェイ装置)及びゲートウェイ装置1-11~1-14が配置されている。ゲートウェイ装置1-1は、上位ネットワーク61を第1無線ネットワーク63-1に接続する。ゲートウェイ装置1-11は、空調制御装置24を第1無線ネットワーク63-1に接続する。ゲートウェイ装置1-12は、第2無線ネットワーク64-1-1を第1無線ネットワーク63-1に接続する。ゲートウェイ装置1-13は、照明制御装置34を第1無線ネットワーク63-1に接続する。ゲートウェイ装置1-14は、第2無線ネットワーク64-1-2を第1無線ネットワーク63-1に接続する。
【0020】
第2無線ネットワーク64は、制御エリア内の各機器を無線収容するネットワークである。例えば、図1では、第2無線ネットワーク64-1-1は、空調用設定器22、空調用センサ23及び照明用センサ33を収容する。また、第2無線ネットワーク64-1-2は、空調設備21、照明設備31及び照明用設定器32を収容する。この場合、第2無線ネットワーク64を介して第1無線ネットワーク63に接続される各機器は、第2無線ネットワーク64に接続するための無線通信機能を備えている。
【0021】
第2無線ネットワーク64は、収容対象の各機器を無線収容するネットワークであればどのような構成のネットワークで実現されてもよい。例えば、第2無線ネットワーク64は、第1無線ネットワーク63と同様にメッシュネットワークとして構成されてもよいし、アクセスポイントや基地局によって構成されるネットワークのようにツリー状のネットワークとして構成されてもよい。なお、収容対象の機器が多い場合、メッシュネットワークのような通信制御の処理負荷が高いネットワークではなく、比較的に処理負荷の低いツリー状のネットワークが第2無線ネットワーク64に採用されてもよい。例えば、この場合、ゲートウェイ装置1-12がアクセスポイントとしての機能を備え、空調用設定器22、空調用センサ23及び照明用センサ33を収容する第2無線ネットワーク64-1-1を構成してもよい。
【0022】
ところで、第1の実施形態の制御システム100では、各制御エリアのいずれかのゲートウェイ装置1が、各制御エリアのローカルサーバとして機能するように構成される。例えば第1フロアにおいては、ゲートウェイ装置1-1及びゲートウェイ装置1-11~1-14のうちのいずれかのゲートウェイ装置1が中間処理を実行する機能を有する。この場合、例えば従来構成と同様に、上位ネットワーク61と第1無線ネットワーク63-1との接続点となるゲートウェイ装置1-1が空調用及び照明用の両方の中間処理を実行する機能を有してもよい。また、空調制御装置24が接続されるゲートウェイ装置1-11が空調用の中間処理を実行する機能を有し、照明制御装置34が接続されるゲートウェイ装置1-13が照明用の中間処理を実行する機能を有してもよい。なお、通信経路の長さにシステム上の制限がない場合には、ゲートウェイ装置1-12やゲートウェイ装置1-13が中間処理を実行する機能を有してもよい。
【0023】
また、ここでは簡単のため、第2フロア~第Nフロアについての機器構成の図示を省略しているが、第2フロア~第Nフロアも、基本的には第1フロアと同様の機器構成を有している。機械室についても、第2無線ネットワーク64の数や収容対象の機器の種別は異なるものの、基本的には第1フロアと同様の機器構成を有している。
【0024】
このような構成の制御システム100における制御通信の流れは、従来の制御システムと同様である。しかしながら、第1の実施形態の制御システム100は、制御エリア内の各機器が第1無線ネットワーク63又は第2無線ネットワーク64を介して他の機器と通信する点で従来の制御システムと異なる。例えば、空調制御装置24が空調設備21に対してデータを送信する場合、ゲートウェイ装置1-11は、宛先である空調設備21を収容するゲートウェイ装置1-14に受信データを転送する必要がある。この場合、ゲートウェイ装置1-11は、ゲートウェイ装置1-11~1-14の中から、宛先の空調設備21を収容しているゲートウェイ装置1を識別する必要がある。そこで、第1の実施形態におけるゲートウェイ装置1は、データ送信の宛先となる機器と、宛先の機器を収容するゲートウェイ装置1との対応関係を識別可能に構成される。
【0025】
図2は、第1の実施形態におけるゲートウェイ装置1の機能構成の具体例を示す図である。ゲートウェイ装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置等を備え、ゲートウェイ装置プログラムを実行する。ゲートウェイ装置1は、ゲートウェイ装置プログラムの実行によって、第1通信部11、第2通信部12、記憶部13、第1プロトコル処理部14、第2プロトコル処理部15及び中継処理部16を備える装置として機能する。なお、ゲートウェイ装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。ゲートウェイ装置プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。ゲートウェイ装置プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0026】
第1通信部11は、自装置を第1無線ネットワーク63に接続するための無線通信インタフェースを含んで構成される。また、第2通信部12は、自装置を第2ネットワークに接続するための通信インタフェースを含んで構成される。第2ネットワークは、ゲートウェイ装置1によって第1無線ネットワーク63に接続されるネットワークであって、第1無線ネットワーク63を第1のネットワークとした場合における第2のネットワークのことである。例えば、ゲートウェイ装置1-1では上位ネットワーク61が第2ネットワークとなり、ゲートウェイ装置1-11では空調制御装置24との間の有線ネットワークが第2ネットワークとなる。また、ゲートウェイ装置1-12では第2無線ネットワーク64が第2ネットワークとなる。
【0027】
なお、図2は、ゲートウェイ装置1の一例としてゲートウェイ装置1-12の機能構成を例示したものであるが、他のゲートウェイ装置1も基本的には図2と同様の機能構成を有している。そのため、第2通信部12が接続される第2無線ネットワーク64を他の第2ネットワークに置き換えることで、図2を他のゲートウェイ装置1の機能構成図として読み替えることができる。
【0028】
記憶部13は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部13は、通信の宛先となる機器と、宛先の機器が接続されたゲートウェイ装置1との対応関係を示す対応情報を予め記憶している。
【0029】
第1プロトコル処理部14は、第1無線ネットワーク63の通信プロトコル(以下、「第1プロトコル」という。)に応じた通信処理(以下、「第1プロトコル処理」という。)を実行する。この第1プロトコル処理の実行によって、第1無線ネットワーク63におけるフレームの送受信が実現される。
【0030】
第2プロトコル処理部15は、第2ネットワーク(図2の例では第2無線ネットワーク64に対応する)の通信プロトコル(以下、「第2プロトコル」という。)に応じた通信処理(以下、「第2プロトコル処理」という。)を実行する。この第2プロトコル処理の実行によって、第2ネットワークにおけるフレームの送受信が実現される。
【0031】
中継処理部16(送信部)は、第1無線ネットワーク63と第2無線ネットワーク64との間でフレームを中継する中継処理を行う。具体的には、中継処理部16は、第2無線ネットワーク64側の受信フレームを第1無線ネットワーク63側に中継するとともに、第1無線ネットワーク63側の受信フレームを第2無線ネットワーク64側に中継する。このとき、中継処理部16は、受信フレームに含まれる宛先情報に基づいて中継処理の要否を判断する。具体的には、宛先情報はフレームの宛先及び送信元を示す情報である。中継処理部16は、第2無線ネットワーク64側の受信フレームの宛先が他の第2ネットワークに存在する場合に中継処理を実行し、受信フレームを第1無線ネットワーク63側に中継する。
【0032】
このとき、中継処理部16は、第1無線ネットワーク63において受信フレームの転送先となるゲートウェイ装置1(以下、「転送先ゲートウェイ」という。)を対応情報に基づいて決定する。具体的には、受信フレームの宛先が所属する第2ネットワークに接続されたゲートウェイ装置1が転送先ゲートウェイとして決定される。中継処理部16は、受信フレームから取得されたデータ及び宛先情報と、転送先ゲートウェイとして決定されたゲートウェイ装置1を示す情報(以下、「転送情報」という。)と、を第1プロトコル処理部14に出力する。
【0033】
一方、第1無線ネットワーク63側から受信されたフレームの宛先が自装置の所属する第2無線ネットワーク64側に存在する場合、中継処理部16は、受信フレームを第2無線ネットワーク64側に中継する。具体的には、中継処理部16は、受信フレームから取得されたデータ及び宛先情報を第2プロトコル処理部15に出力する。
【0034】
図3及び図4は、第1の実施形態における対応情報の具体例を示す図である。第1の実施形態における対応情報は、例えば、図3及び図4に示す対応情報テーブル131として保持される。図3の対応情報テーブル131-1、対応情報テーブル131-11及び対応情報テーブル131-12は、それぞれゲートウェイ装置1-1、ゲートウェイ装置1-11及びゲートウェイ装置1-12によって保持される対応情報の例である。また、図4の対応情報テーブル131-M、対応情報テーブル131-M1及び対応情報テーブル131-M2は、それぞれゲートウェイ装置1-M、ゲートウェイ装置1-M1及びゲートウェイ装置1-M2によって保持される対応情報の例である。
【0035】
対応情報テーブル131は、宛先識別子ごとの対応情報レコードを有する。対応情報レコードは、宛先識別子、宛先アドレス及び宛先GWアドレスの各値を有する。宛先識別子は、データの宛先となる機器や装置等(以下、「宛先装置」という。)の識別情報である。宛先アドレスは、宛先識別子が示す宛先装置のネットワークアドレスを表す。宛先GW識別子は、宛先装置を第2ネットワーク側に収容する転送先ゲートウェイの識別情報である。宛先GWアドレスは、転送先ゲートウェイのネットワークアドレスを表す。
【0036】
図5は、ゲートウェイ装置1が行う中継処理の流れを示すフローチャートである。まず、ゲートウェイ装置1は、第2ネットワーク側から送信されたフレームを受信する(ステップS301)。ゲートウェイ装置1は対応情報を参照し、受信フレームが示す宛先装置に対応するゲートウェイ装置1を転送先ゲートウェイとして決定する(ステップS302)。ゲートウェイ装置1は、決定された転送先ゲートウェイを示す転送情報を受信データに付加する(ステップS303)。ゲートウェイ装置1は、転送情報が付加された受信データを、第1通信部11を介して第1無線ネットワーク63側に送出する(ステップS304)。第1無線ネットワーク63側に送出された受信データは無線メッシュネットワークによって転送先ゲートウェイまで転送される。
【0037】
図6は、第1の実施形態の制御システム100の動作例を示す図である。図6は、空調用センサ23が空調制御装置24に対してデータを送信する場合の例を示している。上述のとおり、第1無線ネットワーク63では2点間の通信経路がネットワークの状態に応じて動的に決定される。ここでの説明では、空調用センサ23から空調制御装置24へのデータ送信において、第1無線ネットワーク63上の転送経路がゲートウェイ装置1-12、ゲートウェイ装置1-13、ゲートウェイ装置1-14の順列に決定された場合を想定している。
【0038】
また、図7は、図6の動作例において送受信されるフレームの具体例を示す図である。図7のフレーム511は、空調用センサ23からゲートウェイ装置1-12に送信されるフレームを表す。フレーム512は、ゲートウェイ装置1-12からゲートウェイ装置1-13に送信されるフレームを表す。フレーム513は、ゲートウェイ装置1-13からゲートウェイ装置1-14に送信されるフレームを表す。フレーム514は、ゲートウェイ装置1-14から空調制御装置24に送信されるフレームを表す。
【0039】
各フレームはデータ部、宛先情報格納部及びプロトコル情報格納部を備える。データ部は送信データが格納される領域である。宛先情報格納部は、送信データの宛先情報が格納される領域である。プロトコル情報格納部は、使用するネットワークでの通信に必要な情報(以下、「プロトコル情報」という。)が格納される領域である。プロトコル情報には、少なくとも送信元及び宛先となる装置の識別情報が含まれる。プロトコル情報は使用されるプロトコルに応じた形式でプロトコル情報格納部に格納される。図7では、動作例の説明を簡単にするため、送信元及び宛先となる装置の識別情報のみをプロトコル情報として記載している。
【0040】
この場合、送信元である空調用センサ23は、例えば、データ送信部231、第2プロトコル処理部232及び無線通信部233を備える。まず、データ送信部231が送信データを生成(又は取得)する。ここで、データ送信部231は、生成された送信データの種別に応じて、送信データの送信先となる宛先装置(ここでは空調制御装置24)を識別可能に構成されている。例えば、データ送信部231は、送信データの種別と宛先装置との対応表を予め記憶していてもよい。データ送信部231は、生成された送信データと、当該送信データの宛先装置を示す情報とを第2プロトコル処理部232に出力する(ステップS401)。
【0041】
第2プロトコル処理部232は、第2プロトコル処理の実行によって、送信データを宛先装置宛てに送信するためのフレーム511を生成する。具体的には、第2プロトコル処理部232は、まず、送信データをデータ部に格納するとともに、送信元が自装置(“0x1043”)であって宛先が空調制御装置24(“0x1044”)であることを示す宛先情報を宛先情報格納部に格納する。続いて第2プロトコル処理部232は第2プロトコルのプロトコル情報(以下、「第2プロトコル情報」という。)を生成してプロトコル情報格納部に格納する。具体的には、第2プロトコル処理部232は、宛先情報に基づいて、宛先装置が第2無線ネットワーク64-1-1に所属する機器ではないことを識別する。この場合、第2プロトコル処理部232は、送信元が自装置(“0x1043”)であって、送信先がゲートウェイ装置1-12(“0x1002”)であることを示す第2プロトコル情報を生成する。第2プロトコル処理部232は、このように生成されたフレーム511を無線通信部233に出力する(ステップS402)。無線通信部233は、第2プロトコル処理部232から出力された送信フレーム511を無線電波に変調して第2無線ネットワーク64-1-1側に送出する(ステップS403)。
【0042】
空調用センサ23から送出されたフレーム511は、第2無線ネットワーク64-1-1を介してゲートウェイ装置1-12に受信される。ゲートウェイ装置1-12の第2通信部12は、受信フレームを第2プロトコル処理部15に出力する(ステップS404)。第2プロトコル処理部15は、第2プロトコル処理の実行により、受信フレーム511から第2プロトコル情報を除去し、中継処理部16に出力する(ステップS405)。具体的には、第2プロトコル処理部15は、受信フレーム511の第2プロトコル情報に基づいて当該フレームの送信先が自装置であるか否かを判定する。受信フレームの送信先が自装置でない場合、第2プロトコル処理部15は受信フレームを廃棄する。一方、受信フレームが自装置宛てである場合、第2プロトコル処理部15は、受信フレームから第2プロトコル情報を除去して、上位の機能部(ここでは中継処理部16)に出力する。
【0043】
中継処理部16は、第2プロトコル処理部15から出力されたフレーム511から宛先情報及び送信データを取得する。中継処理部16は、取得された宛先情報に基づいて中継処理を実行する。この中継処理の実行により、受信フレームの転送先となる転送先ゲートウェイが決定される。具体的には、中継処理部16は、対応情報テーブル131-12を参照し、宛先情報が示す宛先アドレスの値を持つ対応情報レコードを選択する。中継処理部16は、選択された対応情報レコードから宛先GWアドレスの値(“0x1004”)を取得する。中継処理部16は、取得された宛先GWアドレスの値が示すゲートウェイ装置1-14を転送先ゲートウェイとして決定する。中継処理部16は、このように決定された転送先ゲートウェイを示す転送情報を、送信データ及び宛先情報とともに第1プロトコル処理部14に出力する(ステップS406)。
【0044】
第1プロトコル処理部14は、第1プロトコル処理の実行によって、送信データを、転送先ゲートウェイに決定されたゲートウェイ装置1-14に転送するためのフレーム512を生成する。具体的には、第1プロトコル処理部14は、まず、送信データをデータ部に格納するとともに、宛先情報を宛先情報格納部に格納する。続いて第1プロトコル処理部14は第1プロトコルに関するプロトコル情報(以下、「第1プロトコル情報」という。)を生成してプロトコル情報格納部に格納する。具体的には、第1プロトコル処理部14は、送信元が自装置(“0x1002”)であって宛先が転送情報の示す転送先ゲートウェイ(“0x1004”)であることを示す第1プロトコル情報を生成する。このように転送先ゲートウェイを宛先とする第1プロトコル情報が付加されたフレームは、転送経路上の各ゲートウェイ装置1の第1プロトコル処理によって、転送経路の順に転送先ゲートウェイまで転送されていく。以下では、このように第1プロトコル処理部14が転送先ゲートウェイ宛てに受信フレームを転送する処理を転送処理という。第1プロトコル処理部14は、このように生成されたフレーム512を第1通信部11に出力する(ステップS407)。第1通信部11は、第1プロトコル処理部14から出力された送信フレーム512を無線電波に変調して第1無線ネットワーク63-1側に送出する(ステップS408)。
【0045】
ゲートウェイ装置1-12から送出されたフレーム512は、転送経路上でゲートウェイ装置1-12の次に位置するゲートウェイ装置1-13によって受信される。ゲートウェイ装置1-13の第1通信部11は、受信フレーム512を第1プロトコル処理部14に出力する(ステップS409)。第1プロトコル処理部14は、第1プロトコル処理の実行によって、送信データを、転送経路上で自装置の次に位置するゲートウェイ装置1に転送するためのフレーム513を生成する。具体的には、第1プロトコル処理部14は、受信フレーム512の第1プロトコル情報に基づいて転送先ゲートウェイがゲートウェイ装置1-14であることを識別する。この場合、第1プロトコル処理部14は、送信元が自装置(“0x1003”)であって宛先が転送経路上で自装置の次に位置するゲートウェイ装置1-14(“0x1004”)であることを示す第1プロトコル情報を生成する。第1プロトコル処理部14は、受信フレーム512の第1プロトコル情報を新たに生成した第1プロトコル情報で置き換えることにより、送信フレーム513を生成する。第1プロトコル処理部14は、このように生成されたフレーム513を第1通信部11に出力する(ステップS410)。第1通信部11は、第1プロトコル処理部14から出力された送信フレーム513を無線電波に変調して第1無線ネットワーク63-1側に送出する(ステップS411)。
【0046】
ゲートウェイ装置1-13から送出されたフレーム513は、転送経路上でゲートウェイ装置1-13の次に位置するゲートウェイ装置1-14によって受信される。ゲートウェイ装置1-14の第1通信部11は、受信フレーム513を第1プロトコル処理部14に出力する(ステップS412)。第1プロトコル処理部14は、第1プロトコル処理の実行により、受信フレーム513から第1プロトコル情報を除去し、中継処理部16に出力する(ステップS413)。具体的には、第1プロトコル処理部14は、受信フレーム513の第1プロトコル情報に基づいて当該フレームが自装置宛てであるか否かを判定する。受信フレームが自装置宛てでない場合、第1プロトコル処理部14は受信フレームを廃棄する。一方、受信フレームが自装置宛てである場合、第1プロトコル処理部14は、受信フレームから第1プロトコル情報を除去して、上位の機能部(ここでは中継処理部16)に出力する。
【0047】
中継処理部16は、第1プロトコル処理部14から出力されたフレーム513から宛先情報及び送信データを取得する。中継処理部16は、取得された宛先情報に基づいて中継処理を実行する。具体的には、中継処理部16は、宛先情報に基づいて受信フレームの宛先装置が自装置の収容する空調制御装置24であることを識別する。中継処理部16は、取得された宛先情報及び送信データを第2プロトコル処理部15に出力する(ステップS414)。
【0048】
第2プロトコル処理部15は、第2プロトコル処理の実行によって、送信データを宛先装置宛てに送信するためのフレーム514を生成する。具体的には、第2プロトコル処理部15は、まず、送信データをデータ部に格納するとともに、宛先情報を宛先情報格納部に格納する。続いて第2プロトコル処理部15は第2プロトコル情報を生成してプロトコル情報格納部に格納する。具体的には、第2プロトコル処理部15は、送信元が自装置(“0x1004”)であって宛先が空調制御装置24(“0x1044”)であることを示す第2プロトコル情報を生成する。第2プロトコル処理部15は、このように生成されたフレーム514を第2通信部12に出力する(ステップS415)。第2通信部12は、第2プロトコル処理部15から出力された送信フレーム514を第2ネットワーク側に送出する(ステップS416)。
【0049】
ゲートウェイ装置1-14から送出されたフレーム514は、有線の第2ネットワークを介して空調制御装置24に受信される。この場合、宛先である空調制御装置24は、例えば、通信部241、第2プロトコル処理部242及びデータ受信部243を備える。通信部241は、受信フレームを第2プロトコル処理部242に出力する(ステップS417)。第2プロトコル処理部242は、第2プロトコル処理の実行により、受信フレーム514から第2プロトコル情報を除去し、データ受信部243に出力する(ステップS418)。具体的には、第2プロトコル処理部242は、受信フレーム514の第2プロトコル情報に基づいて当該フレームが自装置宛てであるか否かを判定する。受信フレームが自装置宛てでない場合、第2プロトコル処理部242は受信フレームを廃棄する。一方、受信フレームが自装置宛てである場合、第2プロトコル処理部242は、受信フレームから第2プロトコル情報を除去して、上位の機能部(ここではデータ受信部243)に出力する。データ受信部243は、第2プロトコル処理部242から出力されたフレーム514から送信データを取得する。
【0050】
図8及び図9は、第1の実施形態の制御システム100の動作例を示すシーケンス図である。図8及び図9に示す動作例は、各機器間の通信が第1無線ネットワーク63又は第2ネットワークを介して行われる点で従来の制御システムと異なる。また、第1の実施形態の制御システム100では、第1無線ネットワーク63に接続されたいずれかのゲートウェイ装置1がローカルサーバの役割を担う点で従来の制御システムと異なる。
【0051】
図8では、上位制御装置10の制御指示に応じて空調制御装置24が空調設備21を制御する例について説明する。まず、上位制御装置10が第1フロアの設定温度を指示するための第1制御情報を生成する(ステップS101)。上位制御装置10は生成した第1制御情報を、第2ネットワーク側に空調制御装置24が接続されているゲートウェイ装置1-11に送信する(ステップS102)。図8の動作例では、このゲートウェイ装置1-11が空調用のローカルサーバとしての役割を担う。この場合、上位制御装置10から送信される第1制御情報は、ゲートウェイ装置1-1の転送処理及び中継処理によってゲートウェイ装置1-11に転送される(ステップS103)。
【0052】
ゲートウェイ装置1-11は、上位制御装置10から送信された第1制御情報を受信する(ステップS104)。ゲートウェイ装置1-11は、受信された第1制御情報に基づいて中間処理を実行する(ステップS105)。この中間処理の実行により、受信された第1制御情報が空調制御装置24向けの制御情報である第2制御情報に変換される。ゲートウェイ装置1-11は、生成された第2制御情報を空調制御装置24に送信する(ステップS106)。空調制御装置24は、ゲートウェイ装置1-11から送信された第2制御情報を受信する(ステップS107)。空調制御装置24は、受信された第2制御情報に基づいて空調制御処理を実行する(ステップS108)。
【0053】
具体的には、空調制御装置24は、第2制御情報によって示される制御条件を実現するために必要な空調設備21の動作条件を決定する。例えば、空調制御装置24は、空調用センサ23の計測値に基づいて第1フロアの状態を把握し、空調設備21の動作条件(例えば出力される空気の温度や強度、動作時間等)をフロアの状態に応じて決定する。空調制御装置24は、決定した動作条件で空調設備21を動作させるための第3制御情報を生成して空調設備21に送信する。空調設備21は、空調制御装置24から送信された第3制御情報を受信し、第3制御情報によって示される動作条件に基づいて自装置を動作させる。このような空調制御処理が実行されることにより、第1フロアの温度が上位制御装置10によって指示された設定温度に調整される。
【0054】
続いて、空調制御装置24は、空調設備21に対して行った制御に関する情報を空調用設定器22に反映させるための第4制御情報を生成する。例えば、第4制御情報は、空調設備21に対して設定された設定温度を示す情報である。空調制御装置24は、生成された第4制御情報を空調用設定器22に送信する(ステップS109)。この場合、空調制御装置24から送信される第4制御情報は、ゲートウェイ装置1-11及びゲートウェイ装置1-12の転送処理及び中継処理によって空調用設定器22に転送される(ステップS110)。
【0055】
空調用設定器22は、空調制御装置24から送信された第4制御情報を受信する(ステップS111)。空調用設定器22が第1フロアの室温や設定温度を表示する表示部を備える場合、空調用設定器22は、空調制御処理の実行結果に応じてこれらの表示を更新する必要がある。そのため、空調用設定器22は、受信された第4制御情報に基づいて、例えば設定温度の表示を更新する(ステップS112)。
【0056】
続いて図9では、上位制御装置10が、空調用センサ23の計測値に基づいて行われた空調制御処理の処理結果を取得して、自装置が把握している第1フロアの状態を更新する例について説明する。上位制御装置10は、以下に説明するような処理を行うことによって各フロアの最新状態を把握することができる。このように把握される各フロアの状態は、フロア状態に応じた空調設備21の制御に必要な情報である。
【0057】
まず、空調用センサ23が第1フロアの室温を計測し、計測された室温を示す第5制御情報を生成する。空調用センサ23は、生成された第5制御情報を空調制御装置24に送信する(ステップS201)。この場合、空調用センサ23から送信される第5制御情報は、ゲートウェイ装置1-11及びゲートウェイ装置1-12の転送処理及び中継処理によって空調制御装置24に転送される(ステップS202)。空調制御装置24は、空調用センサ23から送信された第5制御情報を受信する(ステップS203)。空調制御装置24は、受信された第5制御情報に基づいて空調制御処理を実行する(ステップS204)。
【0058】
具体的には、空調制御装置24は、室温が設定温度より高い場合には室温を低下させるように空調設備21を制御し、室温が設定温度より低い場合には室温を上昇させるように空調設備21を制御する。このように、空調制御処理は上位制御装置10の指示に応じて実行されるだけでなく、各フロアの室温等の変化に応じて適応的に実行される場合もある。空調制御装置24は、空調設備21に対して行った制御に関する情報を上位制御装置10に通知するための第6制御情報を生成する。空調制御装置24は、生成された第6制御情報を、空調用のローカルサーバとしての役割を担うゲートウェイ装置1-11に送信する(ステップS205)。例えば、第6制御情報は、空調制御処理によって変化した第1フロアの室温を示す情報である。
【0059】
ゲートウェイ装置1-11は、空調制御装置24から送信された第6制御情報を受信する(ステップS206)。ゲートウェイ装置1-11は、受信された第6制御情報を自装置に記録する(ステップS207)とともに、自装置に蓄積された第6制御情報に基づいて第1フロアの状態変化を示す第7制御情報を生成する(ステップS208)。なお、第7制御情報は、空調制御処理の結果として得られる第1フロアの状態を示す情報であればどのような情報であってもよい。例えば、第7制御情報は室温の変化を示す情報であってもよいし、空調用センサ23によって計測された室温そのものを示す情報であってもよい。ゲートウェイ装置1-11は、生成された第7制御情報を上位制御装置10に送信する(ステップS209)。この場合、空調用のローカルサーバとしての役割を担うゲートウェイ装置1-11から送信される第7制御情報は、ゲートウェイ装置1-1の中継処理によって上位制御装置10に転送される(ステップS210)。
【0060】
上位制御装置10は、ゲートウェイ装置1-11から送信された第7制御情報を受信する(ステップS211)。上位制御装置10は、受信された第7制御情報を自装置に記録する(ステップS212)。上位制御装置10は、このようにして自装置に蓄積される第7制御情報に基づいて各フロアの制御目標(例えば設定温度等)を決定し、決定された制御目標を各ゲートウェイ装置1(ローカルサーバ)に通知することによって、管理対象設備の制御を指示する。
【0061】
このように構成された第1の実施形態の制御システム100は、制御エリア内の各機器を無線通信又は有線通信で収容し、各機器間の情報の送受信を、第1無線ネットワーク63を介して実現するゲートウェイ装置1を備える。具体的には、ゲートウェイ装置1は、対応情報に基づく第1無線ネットワーク63及び第2ネットワークの間の中継処理と、転送情報に基づく第1無線ネットワーク63での転送処理とによって各機器間の送受信を実現する。このような構成を備えることにより、制御システム100では、システム内の通信の大部分を無線化することができ、システムの管理負荷を低減することが可能となる。
【0062】
以下、第1の実施形態の制御システム100の変形例について説明する。
【0063】
一般に無線通信において、ある端末は無線通信範囲内に存在する他の端末から送信された自装置を宛先としないフレームも受信可能である。端末は、受信フレームの宛先に基づいてフレームを取捨選択することによってデータを受信する。そのため、ゲートウェイ装置1は、自装置宛てでないフレームが受信された場合に、当該フレームを他のゲートウェイ装置1に中継するように構成されてもよい。例えばこの中継機能は、ゲートウェイ装置1の中継処理部16に備えられても良い。
【0064】
例えば、ゲートウェイ装置1-11からゲートウェイ装置1-14を宛先とするフレームが送信され、このフレームの転送経路がゲートウェイ装置1-11、ゲートウェイ装置1-12、ゲートウェイ装置1-14の順列に決定されたと仮定する。この場合、ゲートウェイ装置1-11が送信したフレームをゲートウェイ装置1-13が受信した場合、ゲートウェイ装置1-13が受信フレームをゲートウェイ装置1-14に中継してもよい。また例えば、空調用設定器22から空調設備21を宛先とするフレームが送信され、そのフレームがゲートウェイ装置1-1によって受信された場合、ゲートウェイ装置1-1が受信フレームを転送先ゲートウェイであるゲートウェイ装置1-14に中継してもよい。このような中継機能によれば、制御システム100に係る制御通信の耐障害性を向上させることが可能となる。
【0065】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の制御システム100は、ゲートウェイ装置1に代えてゲートウェイ装置1aを備える点で第1の実施形態の制御システム100と異なる。第2の実施形態の制御システム100のシステム構成は、図1に示した第1の実施形態の制御システム100と同様である。
【0066】
図10は、第2の実施形態におけるゲートウェイ装置1aの機能構成の具体例を示す図である。ゲートウェイ装置1aは、記憶部13に代えて記憶部13aを備える点、転送処理部17をさらに備える点で第1の実施形態におけるゲートウェイ装置1と異なる。他の機能部は、第1の実施形態におけるゲートウェイ装置1と同様である。そのため、第1の実施形態におけるゲートウェイ装置1と同様の機能部については、図2と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0067】
記憶部13aは、第1の実施形態と異なる態様の対応情報を記憶する。具体的には、第2の実施形態における対応情報は、ゲートウェイ装置1aと、ゲートウェイ装置1aに収容される機器との対応関係が、ゲートウェイ装置1a間の転送経路で表される。
【0068】
図11及び図12は、第2の実施形態における対応情報の具体例を示す図である。第2の実施形態における対応情報は、例えば、図11に示す対応情報テーブル132として保持される。図11の対応情報テーブル132-1、対応情報テーブル132-11及び対応情報テーブル132-12は、それぞれゲートウェイ装置1a-1、ゲートウェイ装置1a-11及びゲートウェイ装置1a-12によって保持される対応情報の例である。また、図12の対応情報テーブル132-M、対応情報テーブル132-M1及び対応情報テーブル132-M2は、それぞれゲートウェイ装置1-M、ゲートウェイ装置1-M1及びゲートウェイ装置1-M2によって保持される対応情報の例である。
【0069】
対応情報テーブル132は、宛先識別子ごとの対応情報レコードが、宛先GWアドレスに代えて論理パス識別子の値を有する点で対応情報テーブル131と異なる。論理パス識別子は、論理パスの識別情報である。ここでいう論理パスとは、第1無線ネットワーク63において、送信データが転送元のゲートウェイ装置1aから転送先ゲートウェイに転送されるまでの転送経路のことである。
【0070】
図13は、論理パスの具体例を示す図である。論理パスは、論理パス識別子と転送経路情報とで表される。論理パス識別子は、論理パスの識別情報である。転送経路情報は、転送経路を構成するゲートウェイ装置1aの順列を表す情報である。例えば、図13において、“0x12”の論理パス識別子で識別される論理パスは、ゲートウェイ装置1-1(“0x100F”)を始点として、ゲートウェイ装置1a-14(“0x1004”)を終点とする転送経路を表している。このような論理パスは、ユーザによって任意に設定されてもよいし、無線メッシュネットワークのプロトコルによって決定される経路情報に基づいて設定されてもよい。経路情報に基づく論理パスの設定方法は第3の実施形態にて後述する。
【0071】
図10の説明に戻る。転送処理部17は、対応情報に基づいて受信データの宛先に応じた論理パスで受信データの転送処理を行う。具体的には、転送処理部17が行う転送処理は、第1プロトコル処理部14が行う転送処理の上位レイヤで行われる。以下では、これらの転送処理を区別するため、第1プロトコル処理部14が行う転送処理を第1転送処理と称し、転送処理部17が行う転送処理を第2転送処理と称する。上述のとおり、第1転送処理は、無線メッシュネットワークのプロトコルに基づいて決定された転送経路で受信フレームを転送先ゲートウェイに転送する処理である。これに対して、第2転送処理は、経路の一部又は全部が予め論理パスとして設定された転送経路で受信データを転送する処理である。なお、第2転送処理において論理パスとして設定されていない経路の転送は第1転送処理によって行われる。
【0072】
図14は、論理パスの具体例を示す図である。図14には、論理パス701~707の7つの論理パスが示されている。各論理パスを示す矢印の始点は論理パスの始点を表し、矢印の終点は論理パスの終点を表している。図14には、第1無線ネットワーク63を構成するゲートウェイ装置1aとして、ゲートウェイ装置1a-1及びゲートウェイ装置1a-11~1a-14が示されているが、実際には第1無線ネットワーク63は、エッジを構成するゲートウェイ装置1a以外の通信装置を含んで構成される。そのため、各論理パスの始点及び終点となるゲートウェイ装置1aの間にはこれらの通信装置や他のゲートウェイ装置1aが介在する場合がある。論理パスには、介在する全ての通信装置やゲートウェイ装置1aが設定されてもよいし、その一部のみが設定されてもよい。
【0073】
例えば、図14の論理パス701の経路上に、A、B及びCの3つの通信装置が介在する場合“ゲートウェイ装置1a-1→通信装置A→通信装置B→通信装置C→ゲートウェイ装置1a-11”のように介在する全ての装置が論理パスに設定されてもよいし、“ゲートウェイ装置1a-1→通信装置B→ゲートウェイ装置1a-11”のように介在する一部の装置のみが設定されてもよい。前者の場合、第1転送処理による転送経路と、第2転送処理による転送経路とは同じ経路となる。これに対して後者の場合は、ゲートウェイ装置1a-1及びゲートウェイ装置1a-11と通信装置Bとの間の転送経路に、通信装置A及びCが介在しない経路が選択される可能性がある。いずれの場合であっても、転送経路が予め論理パスとして設定されることによって、ある程度転送経路を固定することができる。
【0074】
図15は、第2の実施形態の制御システム100の動作例を示す図である。図15は、図6と同様に、空調用センサ23が空調制御装置24に対してデータを送信する場合の例を示している。なおここでは、図6と同様の処理には図6と同じ符号を付すことにより説明を省略する。またこの場合の論理パスには、転送元(始点)であるゲートウェイ装置1a-12と、転送先(終点)であるゲートウェイ装置1a-14との間の転送経路としてゲートウェイ装置1a-13が設定されているものと仮定する。
【0075】
また、図16は、図15の動作例において送受信されるフレームの具体例を示す図である。図16のフレーム521は、空調用センサ23からゲートウェイ装置1a-12に送信されるフレームを表す。フレーム522は、ゲートウェイ装置1a-12からゲートウェイ装置1a-13に送信されるフレームを表す。フレーム523は、ゲートウェイ装置1a-13からゲートウェイ装置1a-14に送信されるフレームを表す。フレーム524は、ゲートウェイ装置1a-14から空調制御装置24に送信されるフレームを表す。
【0076】
この場合、ゲートウェイ装置1-12の中継処理部16は、第2プロトコル処理部15から出力された宛先情報に基づいて中継処理を実行する。この中継処理の実行により、受信フレームの転送に用いられる論理パスが決定される。具体的には、中継処理部16は、対応情報テーブル132-12を参照し、宛先情報が示す宛先アドレスの値を持つ対応情報レコードを選択する。中継処理部16は、選択された対応情報レコードから論理パス識別子の値(“0x19”)を取得する。中継処理部16は、取得された論理パス識別子の値を送信データ及び宛先情報とともに第1プロトコル処理部14に出力する(ステップS501)。
【0077】
第1プロトコル処理部14は、第1プロトコル処理の実行によって、送信データを、指定された論理パスの終点のゲートウェイ装置1-14に転送するためのフレーム522を生成する。具体的には、第1プロトコル処理部14は、まず、送信データ、宛先情報及び論理パス識別子を、それぞれデータ部、宛先情報格納部及び論理パス格納部に格納する。続いて第1プロトコル処理部14は第1プロトコル情報を生成してプロトコル情報格納部に格納する。具体的には、第1プロトコル処理部14は、送信元が自装置(“0x1002”)であって、宛先が論理パス上で自装置の次に位置するゲートウェイ装置1-13(“0x1003”)であることを示す第1プロトコル情報を生成する。第1プロトコル処理部14は、このように生成されたフレーム523を第1通信部11に出力する(ステップS502)。
【0078】
ゲートウェイ装置1-13の第1プロトコル処理部14は、第1プロトコル処理の実行によって、受信フレーム522から第1プロトコル情報を除去し、転送処理部17に出力する(ステップS503)。具体的には、第1プロトコル処理部14は、受信フレーム522の第1プロトコル情報に基づいて当該フレームが自装置宛てであるか否かを判定する。受信フレームが自装置宛てでない場合、第1プロトコル処理部14は受信フレームを廃棄する。一方、受信フレームが自装置宛てである場合、第1プロトコル処理部14は、受信フレームから第1プロトコル情報を除去して、上位の機能部(ここでは転送処理部17)に出力する。
【0079】
転送処理部17は、第1プロトコル処理部14から出力されたフレーム522から宛先情報、送信データ及び論理パス識別子を取得する。転送処理部17は、取得された論理パス識別子が示す論理パスにおいて、自装置が論理パスの終点であるか否かを判定する。自装置が論理パスの終点である場合、転送処理部17は、宛先情報及び送信データを上位の機能部(例えば、中継処理部16など)に出力する。一方、自装置が論理パスの終点でない場合、転送処理部17は、論理パス識別子に基づいて第2転送処理を実行する。この第2転送処理の実行により、転送処理部17は、論理パス上で自装置の次に位置するゲートウェイ装置1a-14を送信データの次の転送先として決定する。転送処理部17は、このように決定された次の転送先となるゲートウェイ装置1aを示す転送情報を、送信データ、宛先情報及び論理パス識別子とともに第1プロトコル処理部14に出力する(ステップS504)。
【0080】
第1プロトコル処理部14は、第1プロトコル処理の実行によって、送信データを、次の転送先に決定されたゲートウェイ装置1a-14に転送するためのフレーム524を生成する。具体的には、第1プロトコル処理部14は、まず、送信データ、宛先情報及び論理パス識別子を、それぞれデータ部、宛先情報格納部及び論理パス格納部に格納する。続いて第1プロトコル処理部14は、第1プロトコル情報を生成してプロトコル情報格納部に格納する。具体的には、第1プロトコル処理部14は、送信元が自装置(“0x1003”)であって宛先が転送情報の示すゲートウェイ装置1a-14(“0x1004”)であることを示す第1プロトコル情報を生成する。第1プロトコル処理部14は、このように生成されたフレーム524を第1通信部11に出力する(ステップS505)。
【0081】
このように構成された第2の実施形態の制御システム100は、論理パスに基づいて第2転送処理を行うゲートウェイ装置1aを備える。このような構成を備えることにより、制御システム100では、システム内の通信の大部分を無線化することができ、システムの管理負荷を低減することが可能となる。さらに、第2の実施形態の制御システム100では、論理パスを予め設定しておくことにより、送信データの転送経路をある程度事前に設計しておくことが可能となる。このような設計が可能となれば、第1無線ネットワーク63において障害が発生した場合に、障害部位をより容易に特定することが可能となる。また、障害の影響範囲を予め設計した範囲内に局所化することも可能となる。また、送信データの転送経路をある程度事前に設計しておくことで、ゲートウェイ装置1aの通信負荷を通信の状況や負荷に応じて複数のゲートウェイ装置1aに分散させることも可能となる。
【0082】
なお、一の宛先識別子に対する論理パスは複数設定されてもよい。この場合、中継処理部16aは、複数の論理パスから一の論理パスを選択してデータを送信してもよいし、複数の論理パスを選択し、選択された論理パスの全てに対して同じデータを送信してもよい。
【0083】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の制御システム100は、ゲートウェイ装置1aに代えてゲートウェイ装置1bを備える点で第2の実施形態の制御システム100と異なる。第3の実施形態の制御システム100のシステム構成は、図1に示した第2の実施形態の制御システム100と同様である。
【0084】
図17は、第3の実施形態におけるゲートウェイ装置1bの機能構成の具体例を示す図である。第3の実施形態におけるゲートウェイ装置1bは、対応情報生成部18をさらに備える点で第2の実施形態のゲートウェイ装置1aと異なる。対応情報生成部18は、他のゲートウェイ装置1bの対応情報生成部18と通信することにより、対応情報を生成する。
【0085】
図18は、対応情報が生成される処理の流れを示すフローチャートである。まず、ゲートウェイ装置1bの第1プロトコル処理部14が他のゲートウェイ装置1bの第1プロトコル処理部14と通信することによって第1無線ネットワーク63を構成する(ステップS601)。具体的には、第1無線ネットワーク63が構成されることにより、各ゲートウェイ装置1bにおいて、他のゲートウェイ装置1bを宛先とする通信の経路情報が生成される。対応情報生成部18は、生成された経路情報によって示される全ての経路に論理パス識別子を付与する(ステップS602)。この論理パス識別子の付与により、例えば図13に示されるような論理パスが形成される。
【0086】
なお、第1プロトコル処理部14によって生成される経路情報には、第1無線ネットワーク63のエッジを構成するゲートウェイ装置1b以外の通信装置も含まれる可能性がある。一方で、中継処理又は転送処理に必要となる論理パスは端点がゲートウェイ装置1bである経路を示す経路情報によって示される。そのため、対応情報生成部18は、経路情報によって示される経路から端点がゲートウェイ装置1である経路を選択して論理パス識別子を付与してもよい。
【0087】
続いて、対応情報生成部18は、論理パス識別子ごとの各経路(すなわち論理パス)について、各論理パスの端点となっているゲートウェイ装置1bから、当該ゲートウェイ装置1bの第2通信部12側に接続されている機器(以下、「収容機器」という。)のアドレス情報を取得する(ステップS603)。対応情報生成部18は、論理パス情報と、自装置以外のゲートウェイ装置1bから取得された収容機器のアドレス情報とに基づいて、図11及び図12に示されるような対応情報を生成する(ステップS604)。
【0088】
このように構成された第3の実施形態の制御システム100は、自装置が所属する論理パスの終点に位置するゲートウェイ装置1bから収容機器のアドレス情報を収取して対応情報を生成する対応情報生成部18を備える。このような機能を備えることにより、制御システム100では、それぞれのゲートウェイ装置1bに予め対応情報を設定しておく必要がなくなるため、制御システムに係る管理負荷を低減することが可能となる。
【0089】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の制御システム100は、ゲートウェイ装置1に代えてゲートウェイ装置1cを備える点で第1の実施形態の制御システム100と異なる。第4の実施形態の制御システム100のシステム構成は、図1に示した第1の実施形態の制御システム100と同様である。
【0090】
図19は、第4の実施形態におけるゲートウェイ装置1cの機能構成の具体例を示す図である。第4の実施形態におけるゲートウェイ装置1cは、第2プロトコル処理部15に代えて第2プロトコル処理部15cを備える点、プロトコル選択部19をさらに備える点で第1の実施形態のゲートウェイ装置1と異なる。第2プロトコル処理部15cは、異なるプロトコルで第2プロトコル処理を実行する複数のプロトコル処理部を備える。図19の例の第2プロトコル処理部15cは、異なるプロトコルで第2プロトコル処理を実行する複数のプロトコル処理部として第3プロトコル処理部151及び第4プロトコル処理部152を備えている。第2プロトコル処理部15cは、フレームが第2無線ネットワーク64側から受信された場合には、自身が備える全てのプロトコル処理部に対して第2プロトコル処理を実行させ、フレームを第2無線ネットワーク64側に送信する場合には、プロトコル選択部19によって指定されたプロトコル処理部に第2プロトコル処理を実行させる。
【0091】
プロトコル選択部19は、受信フレーム又は送信フレームに対して第2プロトコル処理を実行するプロトコル処理部を、第2プロトコル処理部15cが備える複数のプロトコル処理部から選択する。具体的には、フレームが第2無線ネットワーク64側から受信された場合、プロトコル選択部19は同じ受信フレームに対する複数のプロトコル処理部の処理結果から、受信データの種別に応じた第2プロトコル処理が実行された処理結果を選択して上位層に提供する。この場合、受信データの種別はどのような方法で識別されてもよい。例えば、各プロトコル処理部が想定外の受信フレームに対してエラーを出力するような場合には、各プロトコル処理におけるエラーの有無に基づいて受信データの種別が識別されてもよい。また、例えば、受信フレームに予めデータの種別を示す情報(以下、「種別情報」という。)が含められる場合には、受信フレームの内容に基づいてデータの種別が識別されてもよい。この場合、種別情報はデータを送信する機器側で受信フレームに含められてもよい。一方、フレームを第2無線ネットワーク64側に送信する場合、データ送信部(図示せず)は、データの種別を示す情報を付加した送信データを第2プロトコル処理部15cに出力する。
【0092】
一般に、第2プロトコルは、通信相手となる機器の種別に応じて異なる場合が多い。例えば、空調関連の機器は空調用の第2プロトコルで通信し、照明関連の機器は照明用の第2プロトコルで通信する。このように機器の種別に応じて通信プロトコルが異なる場合、通信相手の機器の種別ごとに第2通信部12を設け、各第2通信部12に対してそれぞれが通信する機器の種別に応じた第2プロトコル処理部を1対1に対応させる必要がある。しかしながら、物理層の通信方式が同じであれば、通信相手の機器の種別ごとに第2通信部12を設けることは機器のハードウェア構成を複雑化させ、種々のコスト増を生じる要因となりうる。
【0093】
第4の実施形態におけるゲートウェイ装置1cは、第2通信部12が送受信するフレームについて通信相手となる機器の種別に応じた第2プロトコル処理を選択するプロトコル選択部19を備えることにより、種別の異なる複数の機器との通信を同一の無線通信インタフェースで行うことができる。
【0094】
また、第4の実施形態におけるゲートウェイ装置1では、異なる全ての第2プロトコル処理の結果の中から機器やデータの種別に応じた1つの処理結果が選択される。このような受信処理によれば、フレームの受信処理を優先して第2プロトコル処理を実行することができる。具体的には、第2通信部12と第2プロトコル処理部15cとの間で、実行すべき第2プロトコル処理の種別を判定する必要がない。このような構成を備えることにより、無線通信インタフェースの共用による受信処理性能の低下を抑制することができる。
【0095】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の制御システム100は、ゲートウェイ装置1に代えてゲートウェイ装置1dを備える点で第1の実施形態の制御システム100と異なる。第4の実施形態の制御システム100のシステム構成は、図1に示した第1の実施形態の制御システム100と同様である。
【0096】
図20は、第5の実施形態におけるゲートウェイ装置1dの機能構成の具体例を示す図である。第5の実施形態におけるゲートウェイ装置1dは、第2通信部12に代えて第2通信部12dを備える点、第2プロトコル処理部15に代えて第2プロトコル処理部15dを備える点、IF通知部1Aをさらに備える点で第1の実施形態におけるゲートウェイ装置1と異なる。
【0097】
第2通信部12dは、第2通信部12が単一の無線通信部を備えたのに対して、複数の無線通信部を備える点で第2通信部12と異なる。図20の例では、第2通信部12dは、複数の無線通信部の一例として無線通信部121-1及び無線通信部121-2を備えている。各無線通信部121は、無線IF部122及び方式情報記憶部123を含んで構成される。各無線通信部121が備える無線IF部122は、それぞれ異なる無線周波数帯域で通信するものであってもよいし、それぞれ異なるプロトコルで通信するものであってもよい。
【0098】
無線IF部122は、自装置を第2無線ネットワーク64に接続するための無線通信インタフェースを含んで構成される。方式情報記憶部123は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成され、方式情報を予め記憶している。方式情報は、同じ無線通信部121に備えられた無線IF部122の無線通信方式を示す情報である。
【0099】
IF通知部1Aは、第2通信部12dが備える無線通信部121ごとに設けられ、対応する無線通信部121の方式情報記憶部123から方式情報を取得する。IF通知部1Aは、取得された方式情報を第2プロトコル処理部15dに出力する。
【0100】
第2プロトコル処理部15dは、複数のIF通知部1Aから通知される方式情報に基づいて第2プロトコル処理を実行する。具体的には、第2プロトコル処理部15dは、各無線通信部121から出力される受信フレームに対して、その無線通信部121の通信方式に応じた第2プロトコル処理を選択して実行する。例えば、無線通信部121-1が照明関連の機器と通信し、無線通信部121-2が空調関連の機器と通信する場合、第2プロトコル処理部15dは、受信フレームに対して実行すべき第2プロトコル処理が照明用の第2プロトコル処理であるか、又は空調用の第2プロトコル処理であるかを方式情報に基づいて判断する。このように、第2プロトコル処理部15dは、受信フレームに対して、各無線通信部121と通信する機器に応じた第2プロトコル処理を選択して実行する。
【0101】
このように構成された第5の実施形態の制御システム100は、通信相手の機器に応じた第2プロトコル処理を選択して実行可能なゲートウェイ装置1dを備える。このような構成を備えることにより、1台のゲートウェイ装置1dで種別の異なる複数の機器を無線収容することが可能となる。
【0102】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ゲートウェイ装置と収容機器との対応関係を示す対応情報に基づいて、受信データを宛先の機器を収容するゲートウェイ装置に転送する転送処理部と、受信データの宛先に応じて、第2のネットワークと第1の無線ネットワークとの間で受信データを中継する中継処理部と、を持つことにより、制御システムの管理負荷を低減することができる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
100…制御システム、1,1a,1b,1c,1d…ゲートウェイ装置、11…第1通信部、12,12d…第2通信部、121…無線通信部、122…無線IF部、123…方式情報記憶部、13,13a…記憶部、131,132…対応情報テーブル、14…第1プロトコル処理部、15,15c,15d…第2プロトコル処理部、151…第3プロトコル処理部、152…第4プロトコル処理部、16,16a…中継処理部、17…転送処理部、18…対応情報生成部、19…プロトコル選択部、1A…通知部、63…第1無線ネットワーク、64…第2無線ネットワーク、101…管理端末、511~514…フレーム、521~524…フレーム、701~707…論理パス、10…上位制御装置、20…空調系機器、21…空調設備、22…空調用設定器、23…空調用センサ、231…データ送信部、232…第2プロトコル処理部、233…無線通信部、24…空調制御装置、241…通信部、242…第2プロトコル処理部、243…データ受信部、30…照明系機器、31…照明設備、32…照明用設定器、33…照明用センサ、34…照明制御装置、40…熱源系機器、41…熱源用ポンプ、42…熱源用バルブ、43…ポンプ用センサ、44…バルブ用センサ、45…熱源制御装置
図1
図2
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