(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】基板をボンディングする方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20220215BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020184520
(22)【出願日】2020-11-04
(62)【分割の表示】P 2017517645の分割
【原出願日】2016-02-16
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100165940
【氏名又は名称】大谷 令子
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン クアツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴァーゲンライトナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス プラッハ
(72)【発明者】
【氏名】ユアゲン マークス ズュース
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-205074(JP,A)
【文献】特開2012-191037(JP,A)
【文献】特開2003-347385(JP,A)
【文献】特開2011-222809(JP,A)
【文献】特開2013-120901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/683
H01L 21/66
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板(2)と第2の基板(2’)とをボンディングするためのデバイスであって、
前記デバイスは、測定手段(9)を備え、前記測定手段(9)は、
前記第1および第2の基板(2、2’)のコンタクトの間、前記第1および第2の基板(2、2’)のボンディングされていない表面
または前記第1および第2の基板(2、2’)のボンディングされた表面のパーセンテージ量を検出し、
検出した前記パーセンテージ量を介して、前記第1および第2の基板(2、2’)の間のボンディングウェーブの進行を監視し、前記ボンディングウェーブの制御を可能に
し、
前記デバイスは、
第1の保持力F
H1
によって前記第1の基板(2)を保持するように構成される第1の試料ホルダ(1)と、
第2の保持力F
H2
によって前記第2の基板(2’)を保持するように構成される第2の試料ホルダ(1’)と、
をさらに備え、
前記第1の保持力F
H1
および前記第2の保持力F
H2
の少なくとも一方は、前記ボンディングウェーブを制御するために0まで減少し、
前記第1および第2の試料ホルダ(1、1’)は、前記第1および第2の試料ホルダ(1、1’)からそれぞれ適用される真空によって、前記第1および第2の基板(2、2’)をそれぞれ前記第1および第2の試料ホルダ(1、1’)に固定し、
前記第1および第2の試料ホルダ(1、1’)からそれぞれ適用される前記真空は、前記第1の保持力F
H1
および前記第2の保持力F
H2
を与え、前記第1および第2の基板(2、2’)をそれぞれ前記第1および第2の試料ホルダ(1、1’)に固定し、
前記真空は、減少され、前記第1の保持力F
H1
を減少し、前記第1の試料ホルダ(1)から前記第1の基板(2)の解離を制御する、および/または、前記第2の保持力F
H2
を減少し、前記第2の試料ホルダ(1’)から前記第2の基板(2’)の解離を制御し、
前記第2の試料ホルダ(1’)の表面の加熱温度T
H
は、ボンディング中に低減する、
デバイス。
【請求項2】
前記測定手段(9)は、前記ボンディングウェーブの状態を検出するようにさらに構成される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記測定手段(9)は、前記パーセンテージ量を検出し、前記進行を監視するように構成される導電率測定手段を備える、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記測定手段(9)は、前記ボンディングウェーブの位置および前記第1および第2の基板(2、2’)間のボンディングエリアのサイズの少なくとも1つを検出し、前記ボンディングウェーブの前記進行を監視するように構成される光学系およびカメラの少なくとも1つをさらに備える、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ボンディングウェーブの前記進行は、1秒より長い期間にわたって監視される、
請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ボンディングウェーブの前記進行は、前記第1および第2の基板(2、2’)のそれぞれの直径の少なくとも0.1倍に対応する前記ボンディングウェーブの半径方向位置を介して監視される、
請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ボンディングウェーブは、前記測定手段(9)によって得られた
値を考慮して制御される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ボンディングウェーブは、真空を連続的に解除することによって、固定手段を狙い通り解除することによって制御される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記測定手段(9)は、前記パーセンテージ量が1%より大きくなるまで、前記進行を監視するようにさらに構成される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記測定手段(9)は、前記パーセンテージ量が4%より大きくなるまで、前記進行を監視するようにさらに構成される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記測定手段(9)は、前記パーセンテージ量が9%より大きくなるまで、前記進行を監視するようにさらに構成される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記測定手段(9)は、前記パーセンテージ量が16%より大きくなるまで、前記進行を監視するようにさらに構成される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記測定手段(9)は、前記パーセンテージ量が25%より大きくなるまで、前記進行を監視するようにさらに構成される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
第1の基板(2)と第2の基板(2’)とを両基板(2、2’)のそれぞれのコンタクト面でボンディングするためのデバイスであって、前記デバイスは、第1の試料ホルダ(1)と、第2の試料ホルダ(1’)と、測定手段(9)と、を備え、
前記第1の試料ホルダ(1)は、前記第1の試料ホルダ(1)の第1の真空によって適用される
第1の保持力F
H1によって、前記第1の基板(2)を前記第1の試料ホルダ(1)の表面に保持するように構成され、
前記第2の試料ホルダ(1’)は、前記第2の試料ホルダ(1’)の第2の真空によって適用される
第2の保持力F
H2によって、前記第2の基板(2’)を前記第2の試料ホルダ(1’)の表面に保持するように構成され、
前記測定手段(9)は、
前記第1および第2の基板(2、2’)のコンタクトの間、前記第1および第2の基板(2、2’)のボンディングされていない表面
または前記第1および第2の基板(2、2’)のボンディングされた表面のパーセンテージ量を検出し、
検出した前記パーセンテージ量を介して、前記第1および第2の基板(2、2’)の間のボンディングウェーブの進行を監視し、前記ボンディングウェーブの制御を可能にする、
ように構成され
、
前記第1の保持力F
H1
および前記第2の保持力F
H2
の少なくとも一方は、前記ボンディングウェーブを制御するために0まで減少し、
前記第1の真空を減少し、前記第1の保持力F
H1
を減少し、前記第1の試料ホルダ(1)から前記第1の基板(2)の解離を制御する、および/または、前記第2の真空を減少し、前記第2の保持力F
H2
を減少し、前記第2の試料ホルダ(1’)から前記第2の基板(2’)の解離を制御し、
前記第2の試料ホルダ(1’)の表面の加熱温度T
H
は、ボンディング中に低減する、
デバイス。
【請求項15】
第1の基板(2)と第2の基板(2’)とをボンディングするための方法であって、前記方法は、
前記第1の基板(2)と前記第2の基板(2’)との間のコンタクトを開始するステップと、
コンタクトした前記第1および第2の基板(2、2’)のボンディングされていない表面
またはコンタクトした前記第1および第2の基板(2、2’)のボンディング表面のパーセンテージ量を検出するステップと、
検出した前記パーセンテージ量を介して、コンタクトした前記第1および第2の基板(2、2’)の間のボンディングウェーブの進行を監視し、前記ボンディングウェーブの制御を可能にするステップと、
第1の保持力F
H1
によって前記第1の基板(2)を第1の試料ホルダ(1)により保持するステップと、
第2の保持力F
H2
によって前記第2の基板(2’)を第2の試料ホルダ(1’)により保持するステップと、
前記第1の保持力F
H1
および前記第2の保持力F
H2
の少なくとも一方を、前記ボンディングウェーブを制御するために0まで減少するステップと、
前記第
1の試料ホルダ(
1)内
に含まれる第
1の真空を減少し、前記第
1の試料ホルダ(
1)によるコンタクトした前記第
1の基板(
2)の保持を減少し、
および/または、前記第2の試料ホルダ(1’)内に含まれる第2の真空を減少し、前記第2の試料ホルダ(1’)によるコンタクトした前記第2の基板(2’)の保持を減少し、その間の前記ボンディングウェーブを制御するステップと、
前記第2の試料ホルダ(1’)の表面の加熱温度T
H
を、ボンディング中に低減するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、第1の基板を第2の基板にボンディングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業においては長年、基板同士が互いに対してアライメントされ、互いに結合される。結合、いわゆるボンディング(接合)は、多層基板スタックを形成するために使用される。このような多層基板スタックでは、機能ユニット、とりわけメモリ、マイクロプロセッサ、MEMS等を、互いに結合させ、ひいては互いに組み合わせることが可能である。このような組み合わせ可能性により、多岐にわたる用途が実現可能となる。
【0003】
機能ユニットの密度は、年々増加している。技術開発の発展により、機能ユニットの大きさはますます小さくなってきている。したがって、密度の増加に伴い、基板1つに対する機能ユニットの個数が増加する。この個数の増加は、部品コストの低下に対して主な責任を負っている。
【0004】
ますます小型化する機能ユニットの欠点は、特に全ての機能ユニットの、両基板の接合界面に沿った誤差のない、とりわけ完全な重ね合わせを実現することがますます困難になるということにある。
【0005】
すなわち、今日のアライメント技術における最大の問題は、常に2つの基板、とりわけ2つのウェーハをアライメントマークに基づいて互いに対してアライメントする際にのみ存在するのではなく、第1の基板の各点と第2の基板の各点との相関を誤差なく、とりわけ完全に、ひいては基板の面全体にわたって形成する際にも存在する。経験上、ボンディング過程後における各基板の表面上の構造体は、一般に互いに合同にはならないということが判っている。したがって、2つの基板の一般的な、とりわけ全体的なアライメントと、それに後続するボンディングステップとは、基板表面のどの点においても任意の各点の誤差のない完全な合同性が得られるようにするためには必ずしも充分でない。
【0006】
公知先行技術では、簡単な全体的なアライメントと、それに後続するボンディング過程とを妨げる2つの根本的な問題が存在する。
【0007】
1つには、第1および/または第2の基板の構造体の位置が、一般に理論的な位置からずれてしまうことである。このずれには、複数の理由が存在し得る。
【0008】
たとえば、製造プロセスに誤差が存在していたか、または少なくとも許容誤差を有しているが故に、製造された実際の構造体がその理想的な位置からずれてしまったということが考えられる。この例としては、ステップアンドリピート(Step-And-Repeat)方式のプロセスによるリソグラフィの反復使用が挙げられよう。このようなステップアンドリピート方式のプロセスでは、スタンプを並進移動させる度に、位置に関して小さくとも重大な誤差がもたらされる。
【0009】
さらに別の、些細でない理由は、機械的な負荷、とりわけ熱的な負荷による基板の変形であろう。基板は、たとえば構造体を製造する時点に所定の温度を有する。この温度は一般に、基板のプロセスフロー全体にわたって維持されるわけではなく、変化する。温度変化に伴って熱膨張が発生し、これによって、最も理想的なケースでは直径が変化し、最も不利なケースでは複雑な熱変形が発生してしまう。
【0010】
2つには、コンタクティングの直前および本来のボンディング過程の直前において、全ての構造体が誤差なく、とりわけ完全に合同であるような、すなわち重なり合っているような2つの基板であっても、ボンディング過程の間にその合同性を失ってしまう可能性がある。したがって、構造体同士が誤差なく、したがって完全に合同である基板スタックを形成する際に、ボンディングプロセス自体が決定的な影響を与えるのである。
【0011】
3つには、基板上に載置される層および構造体が、基板内に応力を形成する可能性がある。層はたとえば絶縁層とすることができ、構造体はたとえばスルーシリコンビア(TSV)とすることができる。
【0012】
2つの基板をパーマネントボンディング(永久接合)する際の極めて大きな技術的問題のうちの1つが、個々の基板の間の機能ユニットのアライメント(位置合わせ)精度である。基板はアライメント設備によって互いに対して極めて正確にアライメントされ得るが、しかしボンディング過程自体の間に、基板の歪みが生じるおそれがある。こうして生じた歪みにより、機能ユニットは必ずしも全ての位置において互いに対して適正にアライメントされているとは限らない。基板の特定の点におけるアライメントの不正確性は、歪み、スケーリング誤差、レンズ欠陥(拡大誤差もしくは縮小誤差)等の結果となり得る。半導体産業においては、このような問題にかかわるテーマ領域は全て「オーバレイ(重ね合わせ)」という概念に包含される。このテーマに関する相応する概論は、たとえばMack, Chris著の『Fundamental Principles of Optical Lithography - The Science of Microfabrication』(出版社WILEY、2007年,再版2012年)に記載されている。
【0013】
各機能ユニットは、実際の製造プロセスの前にコンピュータでデザインされる。たとえば、導体路、マイクロチップ、MEMS、またはマイクロシステム技術を用いて製造可能なあらゆる別の構造体も、CAD(computer aided design)プログラムにおいてデザインされる。しかし、機能ユニットの製造中には、コンピュータにおいて構築された理想的な機能ユニットと、クリーンルーム内で製造された実際の機能ユニットとの間に必ず、ずれが存在することが判っている。相違点は、主としてハードウェアの制限、すなわちテクニカルエンジニアリング的な問題に起因し得るが、しかし、しばしば物理的な限界にも起因し得る。すなわち、フォトリソグラフィプロセスにより製造される構造体の解像精度は、フォトマスクのアパーチュアの大きさや、使用される光線の波長により制限される。マスク歪みは直接にフォトレジストに転写される。機械のリニアモータは、規定された許容誤差内で再現可能となる位置にしか到達し得ない。したがって、基板の機能ユニットが、コンピュータにおいて構築された構造体に正確に等しくなり得ないことは不思議ではない。したがって、全ての基板は、既にボンディングプロセスの前に、理想状態からの無視し得ないずれを有しているわけである。2つの基板の、互いに向かい合って位置する2つの機能ユニットの位置および/または形状を、両基板のいずれも結合過程によって歪められないと仮定して比較してみると、一般に既に、両機能ユニットの完全ではない整合が存在していることが判る。なぜならば、これらの機能ユニットは、上で説明した誤差により、理想的なコンピュータモデルから偏倚しているからである。極めて頻度の高い誤差は、
図8(http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Overlaytypical model terms DE.svg. 24.05.2013およびMack, Chris著の『Fundamental Principles of Optical Lithography- the Science of Microfabrication. Chichester』(出版社WILEY、第312頁、2007年、再版2012年)からの写し)に図示されている。図面に示したように、オーバレイ(重ね合わせ)誤差は、大ざっぱには、全体的なオーバレイ誤差と局所的なオーバレイ誤差、もしくは対称的なオーバレイ誤差と非対称的なオーバレイ誤差とに区別され得る。全体的なオーバレイ誤差は均一であり、したがって場所とは無関係である。全体的なオーバレイ誤差は、互いに向かい合って位置する2つの機能ユニットの間に、位置とは無関係に、同じ偏差を生ぜしめる。典型的な全体的なオーバレイ誤差は、両基板の互いに相対的な並進もしくは回転により生じる誤差I.およびII.である。両基板の並進もしくは回転は、それぞれ互いに向かい合って位置する全ての機能ユニットに関する、基板上での相応する並進的もしくは回転的な誤差を発生させる。局所的なオーバレイ誤差は、場所に関連して発生し、主として弾性問題および/または塑性問題および/またはプリプロセスにより発生し、この場合には特に、連続的に伝播するボンディングウェーブにより生ぜしめられる弾性問題および/または塑性問題および/またはプリプロセスにより発生する。図示のオーバレイ誤差のうち、とりわけ誤差III.およびIV.は「ランアウト(run-out)」誤差と呼ばれる。この「ランアウト」誤差は、特にボンディング過程中での少なくとも1つの基板の歪みにより生じる。少なくとも1つの基板の歪みにより、第1の基板の機能ユニットも、第2の基板の機能ユニットに関して歪められる。しかし、誤差I.およびII.は、同じくボンディングプロセスによって生じ得るが、しかしたいてい誤差III.およびIV.によって著しく重畳されるので、誤差I.およびII.は、極めて検知困難となるか、もしくは測定困難となる。このことは、x方向および/またはy方向および/または回転方向の補正を極めて精確に実施可能な最新式のボンダー、とりわけヒュージョンボンダーに当てはまる。
【0014】
公知先行技術においては、既に、局所的な歪みを少なくとも部分的に減少させることのできる設備が存在している。このことは、アクティブな制御エレメントの使用による局所的な歪み補正である(国際公開第2012/083978号(WO2012/083978A1))。
【0015】
公知先行技術においては、「ランアウト」誤差を補正するための第1の解決手段が存在する。米国特許出願公開第20120077329号明細書(US20120077329A1)には、下側の基板を位置固定しないことにより、ボンディングの間およびボンディングの後に2つの基板の機能ユニットの間の所望のアライメント精度を得るための方法が記載されている。これにより、下側の基板は境界条件下に置かれておらず、ボンディング過程の間、上側の基板に自由にボンディングされ得る。公知先行技術における重要な特徴は、とりわけ、たいていは真空装置を用いて1つの基板をフラットに位置固定することである。
【0016】
発生した「ランアウト」誤差は、たいていの場合、コンタクト個所を中心にして放射対称的に増幅しており、したがってコンタクト個所から周面に向かって増大している。このことは、たいていの場合、「ランアウト」誤差の線形に増大する増幅である。特別な条件下では、「ランアウト」誤差は非線形にも増大し得る。
【0017】
特に最適な条件下では、「ランアウト」誤差は、相応する測定器具(欧州特許第2463892号明細書(EP2463892))により検出され得るだけでなく、数学的な関数によっても記録され得る。「ランアウト」誤差は、明確に規定された点の間での並進および/または回転および/またはスケーリングであるので、「ランアウト」誤差は有利にはベクトル関数によって記述される。一般に、このようなベクトル関数は関数f:R2→R2であり、したがって位置座標の二次元の定義範囲を「ランアウト」ベクトルの二次元の値範囲へ写像する写像規則である。相応するベクトル場の正確な数学的解析はまだ行なわれていないが、しかし関数特性に関する推測は実行される。ベクトル関数は大きな確率を持って、少なくともCnn≧1関数であり、したがって少なくとも1回、連続的に微分可能である。「ランアウト」誤差はコンタクティング点から縁部へ向かって増大するので、ベクトル関数の発散は、恐らくゼロとは異なる。したがって、ベクトル場は、大きな確率で湧き出し場である。
【0018】
「ランアウト」誤差は、構造体に関連して最良に求められる。「構造体」とは、第2または第1の基板上の構造体と相関させるべき、第1または第2の基板のあらゆる任意の要素であると理解される。
したがって構造体は、たとえば、
●アライメントマーク
●角部または縁部、とりわけ機能ユニットの角部および縁部
●コンタクトパッド、とりわけスルーシリコンビア(TSV)またはスルーポリマービア(TPV)
●導体路、
●凹部、とりわけ穴部または窪部
である。
【0019】
「ランアウト」誤差は、一般に位置に関連しており、数学的な意味では、現実の点と理想的な点との間の変位ベクトルである。「ランアウト」誤差は、一般に位置に関連しているので、理想的にはベクトル場によって表される。以下の記載では、「ランアウト」誤差は、別段の言及がない場合、説明を容易にするためにただ単に点状であるとして見なすこととする。
【0020】
「ランアウト」誤差Rは、2つの成分から組み合わされる。
【0021】
第1の成分R1は、「ランアウト」誤差の本質的な部分、すなわち構造体の製造誤差または基板の歪みに起因する部分を記述する。つまり、第1の成分R1は基板に内在している。この場合、構造体が第1の温度で適切に製造されはしたが、ボンディングプロセスまでに第2の温度への温度変化を受けた場合に、基板が本質的な「ランアウト」誤差も有している可能性があり、これによって熱膨張が発生し、この熱膨張が基板全体、ひいては基板上に存在する構造体も歪ませることとなることに留意すべきである。このような歪みが発生するには、わずか数ケルビンの、それどころか10分の1ケルビンの温度差だけでもう充分である。
【0022】
第2の成分R2は、「ランアウト」誤差の外因性の部分、すなわちボンディングプロセスによって初めて引き起こされる部分を記述する。この外因性の部分は、ボンディングプロセスの前には存在しない。この外因性の部分には特に、基板同士の間に作用する力による、第1および/または第2の基板の局所的および/または全体的な歪みが含まれ、このような力によって、ナノメータ領域の変形が引き起こされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の課題は、基板のできるだけどの位置においてもボンディング精度が高められるような、2つの基板をボンディングする方法を提供することである。本発明のさらなる課題は、2つの基板の構造体同士の誤差のない、とりわけ完全な合同性を形成することが可能となるような方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この課題は、請求項1に記載の特徴により解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。明細書、特許請求の範囲、および/または図面に記載されている少なくとも2つの特徴からなる全ての組み合わせも、本発明の枠内にある。記載された値範囲では、挙げられた範囲内にある値自体も、限界値として開示されたものとみなされ、かつ任意の組み合わせの形で請求可能であることが望ましい。単一のまたは複数の方法ステップが複数の異なる機器または複数の異なるモジュールにおいて実施可能である場合には、これらの方法ステップはそれぞれ独立した方法として別個に開示される。
【0025】
本発明の根底をなす思想は、加熱温度THを既にボンディング中に低減させること、または、ボンディング中にヒータをスイッチオフすることにある。加熱温度THは、とりわけ基板のボンディング面において、ボンディングのために充分な温度を発生させるために使用される。本発明によるさらに別の実施形態の重要な特徴は、ボンディング中の基板スタックが自由に変形できるようにするために、基板の位置固定をとりわけボンディング中に解除することにある。本発明による第3の実施形態のさらなる重要な特徴は、ボンディング中に基板スタックに、とりわけ基板スタックの界面に換気を施すこと、または加圧することが可能であることある。
【0026】
第1および/または第2の基板として、とりわけウェーハが考慮の対象となる。
【0027】
ボンディング、特にパーマネントボンディング、好ましくはヒュージョン接合の際の、本発明において特徴的な過程は、両基板のできるだけ同心的な点状のコンタクティングである。とりわけ、両基板のコンタクティングは非同心的に行なわれる場合もある。非同心的なコンタクト点から伝播するボンディングウェーブは、互いに異なる時間に基板縁部の互いに異なる個所に到達してしまう。相応して、ボンディングウェーブ特性およびこれにより得られる「ランアウト」誤差補償の完全な数学的・物理的な説明が複雑になってしまう。とりわけ、コンタクティング点は基板の中心からそれほど大きく遠ざけられて位置しないので、このことから場合によっては生ぜしめられる効果は、少なくとも縁部においては、無視し得る。可能な非同心的なコンタクティング点と基板の中心との間の距離は、好ましくは100mmよりも小さく、好ましくは10mmよりも小さく、さらに好ましくは1mmよりも小さく、極めて好ましくは0.1mmよりも小さく、最も好ましくは0.01mmよりも小さい。以下において、「コンタクティング」とは、一般に同心的なコンタクティングを意味するものとする。「中心」とは、広義の意味において好ましくは、必要に応じて非対称性分だけ補償された、基本となる理想的な物体の幾何学的な中心点を意味する。すなわち、ノッチを有する工業的に汎用されているウェーハにおいて、中心は、ノッチを有しない理想的なウェーハを取り囲む円の円中心点である。フラット(平らに面取りされた面)を有する工業的に汎用のウェーハでは、中心は、フラットを有しない理想的なウェーハを取り囲む円の円中心点である。同様の考えは、任意に成形された基板にも適用される。しかし、特殊な構成では、「中心」が基板の重心を意味することが有益になり得る。正確な同心的な点状のコンタクティングを保証するためには、中心の孔部と、この孔部内で並進的に運動可能なピンとを備えた上側のマウント装置(基板ホルダ)に、放射対称的な位置固定部が装備される。ピンの代わりに流体、好ましくはガスを加圧のために使用するノズルを使用することも考えられる。さらに、それどころか、両基板のうちの少なくとも一方の基板、好ましくは上側の基板が、重力に基づいて他方の基板の方向に付与された湾曲を有し、したがって前記並進的な接近において、相応する第2の基板に対する十分に小さな間隔において自動的にコンタクティングするというさらに別の前提条件下に、両基板を並進運動によって互いに接近させることのできる装置が設けられると、このようなエレメントの使用を完全に不要にすることができる。
【0028】
放射対称的な位置固定部/保持部は、設けられた真空穴部、円形の真空リップまたは上側の基板を位置固定することのできる比較可能な真空エレメントである。静電気式のマウント装置の使用も考えられる。上側の基板ホルダに設けられた中心の孔部内のピンは、位置固定された上側の基板の制御可能な撓みのために用いられる。
【0029】
本発明によるさらに別の実施形態では、第1および/または第2の基板が、試料ホルダにおける過圧および/または負圧の生成によって凹面状および/または凸面状に湾曲されるように、マウント装置を構成することができる。このためにマウント装置には、好ましくは真空通路、および/または、流体流通可能または排気可能な中空空間が設けられている。ピンポイントに加圧するためのノズルの使用は、全体的に構築される圧力に有利になるように、とりわけ省略することが可能である。本発明によれば、基板を封止する実施形態、および/または、他の方法では基板のとりわけ縁部を位置固定する実施形態が考えられる。たとえばマウント装置が、外部雰囲気に対して負圧を形成するように構成されている場合には、基板縁部での密閉で充分である。基板を外側に向かって、すなわち凸面状に湾曲させるためにマウント装置の内部で過圧が形成される場合には、基板は、好ましくは縁部側でとりわけ機械的に位置固定される。基板に裏側から負圧または過圧を加えることによって、基板の湾曲を精確に設定することが可能である。
【0030】
両基板の中心同士のコンタクティングが行われた後に、上側の基板ホルダの位置固定が、とりわけ制御された状態で少しずつ解除される。上側の基板は、一方では重力により、他方ではボンディングウェーブに沿って両基板の間に作用するボンディング力により、下方へ落下する。上側の基板は、半径方向で中心から側縁部に向かって下側の基板に結合される。こうして、特に中心から側縁部に向かって延びる放射対称的なボンディングウェーブの本発明における形成が行われる。ボンディング過程の間、両基板は、両基板の間に存在するガス、特に空気を、ボンディングウェーブの前方から押し出し、これによってガス封入物なしのボンディング境界面を生ぜしめる。上側の基板は落下時に実質的に一種のガスクッション上に落下する。
【0031】
第1/上側の基板は、ボンディング開始個所におけるボンディングの開始後に付加的な位置固定を受けない、つまりボンディング開始個所における位置固定は別として、自由に運動し、かつ歪むこともできる。本発明において進行するボンディングウェーブ(波)と、ボンディングウェーブフロントに生じる応力状態と、存在するジオメトリ的(幾何学的)な境界条件とにより、その半径方向の厚さに関して無限小に小さい如何なる円セグメントも歪みを受ける。しかし、基板は剛性的な物体であるので、歪みは中心からの間隔の関数として合計される。このことは、本発明による方法および本発明による装置により取り除くべき「ランアウト」誤差を招く。
【0032】
したがって本発明は、ボンディングされた両基板の間の「ランアウト」誤差を、特に熱力学的および/または機械的な補償メカニズムによって、ボンディングの際に減少させるか、またはそれどころか完全に回避するための方法および装置にも関する。さらに、本発明は、本発明による装置および本発明による方法を用いて製造される、相応する製品を扱う。
【0033】
「ランアウト」誤差は、とりわけ基板表面に沿った基板における位置に関連している。とりわけ「ランアウト」誤差は、基板の中心から周辺部に向かって増大することが判っている。このような放射対称的なランアウトは、特に基板がヒュージョン接合される場合に生じ、これらの基板同士は、ピン(pin)によって中心でコンタクトされ、これらの基板のボンディングウェーブは、コンタクティングの後に自律的に、とりわけ放射状に伝播する。
【0034】
「ランアウト」誤差は、とりわけボンディングウェーブ速度に関連している。一般に、ボンディングウェーブ速度が速くなればなるほど「ランアウト」誤差は大きくなる。したがって本発明によれば、好ましくは100mm/秒よりも遅い、好ましくは50mm/秒よりも遅い、さらに好ましくは10mm/秒よりも遅い、極めて好ましくは1mm/秒よりも遅い、最も好ましくは0.1mm/秒よりも遅い、ボンディングウェーブ速度が設定される。本発明による特別な1つの実施形態では、ボンディングウェーブ速度が測定手段によって検出される。
【0035】
「ランアウト」誤差は、とりわけ(プレ)ボンディングプロセスの開始直前における両基板の間の間隔(gap)に関連している。とりわけ上側の第1の基板が変形手段によって第1の力F1で変形される限り、基板同士の間の間隔は、位置の関数である。とりわけ基板同士の間の間隔は、縁部において最も大きい。最も小さい間隔は、変形された基板の凸面状の最大値の領域に位置している。したがって、変形された基板の形状も「ランアウト」誤差に対して影響を与える。縁部における基板同士の間の間隔(基板縁部間隔D)は、ボンディング直前にはとりわけ5mmよりも小さく、好ましくは2mmよりも小さく、さらに好ましくは1mmよりも小さく、極めて好ましくは0.5mmよりも小さく、最も好ましくは0.1mmよりも小さく設定される。凸面状の最大値の下側における基板同士の間の間隔は、ボンディング直前にはとりわけ1mmよりも小さく、好ましくは100μmよりも小さく、さらに好ましくは10μmよりも小さく、極めて好ましくは1μmよりも小さく、最も好ましくは100nmよりも小さく設定される。「ランアウト」誤差は、とりわけ試料ホルダの形式と、これにより得られる各基板の位置固定部/保持部の形式とに関連している。国際公開第2014/191033号(WO2014/191033A1)は、好ましい試料ホルダの複数の実施形態を開示しており、この点に関してこの文献が参照される。本開示のプロセスでは、位置固定の解除後、とりわけ真空固定の解除後に、基板を試料ホルダから解離することが極めて重要である。試料ホルダの表面粗さは、そのうねりができるだけ小さくなるようにできるだけ大きく選択される。大きな表面粗さは、試料ホルダ表面と基板との間のコンタクト個所をできるだけ少なくする。したがって、試料ホルダからの基板の分離が最小限のエネルギコストで実施される。うねりは、好ましくは試料ホルダ表面によって「ランアウト」のための新たな供給源が形成されないようにするために最小限に抑えられる。この点に関して、うねりに関する記述は、試料ホルダ表面が全体としても湾曲してはならないということを意味するわけではないことを述べておく。
【0036】
粗さは、平均粗さ、二乗粗さ、または平均粗さ深さのいずれかとして表される。平均粗さの算出値、二乗粗さの算出値、および平均粗さ深さの算出値は、一般に、測定経路または測定面が同一でもそれぞれ異なっているが、同じ桁数範囲内にある。したがって、粗さに関する以下の数値範囲は、平均粗さ、二乗粗さ、または平均粗さ深さのいずれかの値であるとして理解すべきである。粗さは、とりわけ10nmよりも大きく、好ましくは100nmよりも大きく、さらに好ましくは1μmよりも大きく、極めて好ましくは10μmよりも大きく、最も好ましくは100μmよりも大きく設定される。「ランアウト」誤差は、とりわけ時間的な側面に関連している。ボンディングウェーブは非常に迅速に伝播するので、ボンディングウェーブの直後および/または最中および/または直前に、基板の材料が互いに最適に結合するための充分な時間は与えられない。したがって、ボンディングウェーブを時間に関連して制御することも極めて重要であり得る。
【0037】
「ランアウト」誤差は、とりわけ試料ホルダの上に基板を装填する過程に関連している。基板の装填時および位置固定時には基板が歪むおそれがあり、この歪みは、位置固定によって維持され、(プレ)ボンディング中に基板スタックの中に一緒に取り込まれる。したがって基板は、エンドエフェクタによってできるだけ歪みなしに試料ホルダの上に運ばれる。
【0038】
「ランアウト」誤差は、とりわけ両基板の間の温度差および/または温度変動に関連している。各基板は、それぞれ異なるプロセスステップまたはそれぞれ異なるプロセスモジュールからボンディングモジュールに供給される。これらのプロセスモジュールでは、それぞれ異なる処理がそれぞれ異なる温度で実施されていた可能性がある。さらには、上側の試料ホルダと下側の試料ホルダとは、それぞれ異なる構造、それぞれ異なる構成、ひいてはそれぞれ異なる物理的特性、とりわけそれぞれ異なる熱的特性を有し得る。たとえば、各試料ホルダの熱質量および/または熱伝導率が互いに異なっていることが考えられる。これにより、装填温度がそれぞれ異なってしまうか、または(プレ)ボンディングの時点の温度がそれぞれ異なってしまう。したがって、本発明によるプロセスを実施するための試料ホルダには、少なくとも一方の(好ましくは両方の)基板の温度を精確に設定できるようにするために、加熱および/または冷却システムが装備される。とりわけ、両基板の温度をそれぞれ異なる値に適合させて、両基板の少なくとも一方に熱を加えることで、基板を全体的に熱によって歪ませることが考えられる。こうして、とりわけ「ランアウト」誤差の成分R1を補償するために、基板を所望の初期状態に適合させることができる。
【0039】
「ランアウト」誤差は、とりわけ周囲圧力に関連している。周囲圧力の作用については、国際公開第2014/191033号(WO2014/191033A1)に詳細に説明および開示されている。この点に関してこの文献が参照される。
【0040】
「ランアウト」誤差は、とりわけシステムの対称性に関連しており、したがって、好ましくはできるだけ多くの(さらに好ましくは少なくとも大多数の)構成要素が、対称的に構成および/または配置される。とりわけ、各基板の厚さはそれぞれ異なっている。さらには、各基板上には、それぞれ異なる機械的特性を有するそれぞれ異なる材料の層をそれぞれ異なる順序で設けることができ、またこのことを考慮するべきであろう。さらには、基板の一方は好ましくは変形され、その一方で他方の基板は試料ホルダの上にフラットに載置される。非対称性をもたらす全ての特性、パラメータ、および実施形態が、とりわけ「ランアウト」誤差に対して作用を及ぼす。これらの非対称性の中には、回避することができないものもある。たとえば基板の厚さ、基板上の層、および機能ユニットは、プロセスおよび顧客仕様によって決められている。本発明によれば、とりわけそれ以外の変更可能なパラメータを変化させることによって「ランアウト」を大幅に最小化すること、とりわけ完全に除去することが試みられる。
【0041】
「ランアウト」誤差は、とりわけ位置に関連している。本発明による手段の目標は、とりわけどの位置においても、10μmよりも小さく、好ましくは1μmよりも小さく、さらに好ましくは100nmよりも小さく、極めて好ましくは10nmよりも小さく、最も好ましくは1nmよりも小さい「ランアウト」誤差を維持することである。
【0042】
試料ホルダ
本発明による実施形態のために使用することが好ましい試料ホルダは、位置固定部を使用する。位置固定部は、位置固定力または対応する位置固定圧力を用いて基板を保持するために使用される。位置固定部は、とりわけ:
●機械式の位置固定部、とりわけクランプ、もしくは、
●真空固定部、とりわけ
○個々に制御可能な真空通路、または、
○互いに接続された真空通路
を備える真空固定部、もしくは、
●電気式の位置固定部、とりわけ静電気式の位置固定部、もしくは、
●磁気式の位置固定部、もしくは、
●接着式の位置固定部、とりわけ
○ゲルパック位置固定部、または、
○とりわけ制御可能な接着表面を備える位置固定部
とすることができる。
【0043】
位置固定部は、とりわけ電子的に制御可能である。真空固定部は、好ましい位置固定部の形式である。真空固定部は、好ましくは複数の真空通路からなり、これらの真空通路は、試料ホルダの表面にて現れ出る。真空通路は、好ましくは個々に制御可能である。技術的に好ましい適用例では、いくつかの真空通路が、各真空通路セグメントに統合されており、各真空通路セグメントは、個々に制御可能であり、すなわち個別に排気可能または注気可能である。各真空セグメントは、好ましくは他の真空セグメントから独立している。これにより、個々に制御可能な真空セグメントを構成する手段が得られる。真空セグメントは、好ましくはリング状に構成されている。これによって基板を、放射対称的に、とりわけ内側から外側に向かって狙い通りに位置固定すること、および/または、試料ホルダから解離させることが可能となり、またはその逆も可能となる。
【0044】
可能な試料ホルダは、国際公開第2014/191033号(WO2014/191033A1)、国際公開第2013/023708号(WO2013/023708A1)、国際公開第2012/079597号(WO2012/079597A1)、および国際公開第2012/083978号(WO2012/083978A1)に開示されている。この点に関してはこれらの文献が参照される。
【0045】
ボンディングウェーブの監視
本発明による少なくとも1つの、好ましくは全てのプロセスステップの間、ボンディングウェーブの進行状況またはボンディングウェーブの少なくとも1つの状態を検出し、これによって、所定の時点におけるボンディングウェーブの進行状況またはボンディングウェーブの少なくとも1つの状態を求めることが有利である。このために、とりわけカメラを有する測定手段を設けることが好ましい。監視は、好ましくは:
●カメラ、とりわけ視覚カメラまたは赤外線カメラ、および/または
●導電率測定器具
を用いて実施される。
【0046】
カメラを用いてボンディングウェーブの特定を実施する場合には、どの時点においてもボンディングウェーブの位置、とりわけボンディングウェーブの進行状況を検出することが可能である。カメラは、好ましくはデータをデジタル化してコンピュータに送信する赤外線カメラである。これに基づいて、コンピュータは、デジタルデータの評価、とりわけボンディングウェーブの位置、ボンディングされた面の大きさ、またはさらに別のパラメータの特定を可能にする。
【0047】
ボンディングウェーブの進行状況を監視するさらに別の手段は、ボンディングウェーブが進行するにつれて変化する表面導電率を測定することである。このためには、このような測定に対する必要条件が与えられていなければならない。表面導電率の測定は、とりわけ基板の、互いに向かい合っている2つの位置における2つの電極のコンタクティングによって実施される。本発明による特別な1つの実施形態では、電極は、基板の縁部とコンタクティングし、但し、縁部における基板のボンディングを妨げない。あまり好ましくない本発明による第2の実施形態では、ボンディングウェーブが基板の側縁部に到達する前に、基板から電極が引き戻される。
【0048】
以下ではプロセスについて説明する。これらのプロセスは、好ましくは記載された順序で、とりわけ別個のステップとして進行する。別段の言及がない限り、プロセスステップおよび開示内容は、それが当業者にとって技術的に実施可能である場合には、それぞれある1つの実施形態から他の実施形態へと転用することが可能である。
【0049】
本発明の第1の実施形態によるプロセス
本発明による方法の第1の実施形態の第1のプロセスステップでは、2つの基板のうちの一方の基板が、第1の/上側の試料ホルダの上に、そして第2の基板が、第2の/下側の試料ホルダの上に位置決めされ、位置固定される。この場合、基板の供給は手動で実施してもよいが、好ましくはロボットによって、すなわち自動で実施することができる。上側の試料ホルダは、好ましくは、上側の第1の基板を第1の力F1によって狙い通りに、とりわけ制御可能に変形させるための変形手段を使用する。上側の試料ホルダは、とりわけ少なくとも1つの開口部を有し、変形手段、とりわけピン(pin)は、この開口部を通して上側の第1の基板を機械的に変形させることが可能である。このような試料ホルダは、好ましくは国際公開第2013/023708号(WO2013/023708A1)に開示されている。
【0050】
第2のプロセスステップでは、変形手段、とりわけピンが、上側の第1の基板の裏側にコンタクトして、若干の変形、とりわけ変形手段の側から(すなわち上から)凹面と呼ばれる撓みを形成する。変形手段は、とりわけ1mNよりも大きく、好ましくは10mNよりも大きく、さらに好ましくは50mNよりも大きく、極めて好ましくは100mNよりも大きく、とりわけ5000mNよりも大きい第1の力F1を第1の基板に加える。この力は、上側の第1の基板を試料ホルダから解離させるためには弱すぎるが、本発明による撓みを形成するためには充分な強さである。力は、基板に対して好ましくはできるだけ点状に作用する。点状の作用は実際には存在しないので、力は、好ましくは非常に小さい面積に作用する。この面積は、とりわけ1cm2よりも小さく、好ましくは0.1cm2よりも小さく、さらに好ましくは0.01cm2よりも小さく、最も好ましくは0.001cm2よりも小さい。0.001cm2の面積に作用する場合には、作用する力は、本発明によればとりわけ1MPaよりも大きく、好ましくは10MPaよりも大きく、さらに好ましくは50MPaよりも大きく、極めて好ましくは100MPaよりも大きく、最も好ましくは1000MPaよりも大きい。開示したこれらの圧力範囲は、上で開示したさらに別の面にも適用される。
【0051】
第3のプロセスステップでは、とりわけ試料ホルダ同士を相対的に接近させることによって、両基板の相対的な接近が実施される。好ましくは下側の試料ホルダが持ち上げられ、これによって下側の第2の基板が、上側の第1の基板に向かって能動的に接近される。しかし、上側の試料ホルダを下側の試料ホルダに向かって能動的に接近させることも、または、2つの試料ホルダを互いに向かって同時に接近させることも考えられる。両基板の接近は、とりわけ1μm~2000μm、好ましくは10μm~1000μm、さらに好ましくは20μm~500μm、極めて好ましくは40μm~200μmの間の間隔になるまで実施される。この間隔は、2つの基板の各表面点の間の最も小さい垂直方向距離として定義されている。
【0052】
第1および/または第2の基板は、ボンディングまたはプレボンディング、もしくはコンタクティングの前に加熱手段によって加熱され、および/または、冷却手段によって冷却され、すなわち温度調節される。
【0053】
第4のプロセスステップでは、上側の第1の基板にさらに別の力が加えられる。本発明による第1の実施態様では、とりわけ100mNよりも大きく、好ましくは500mNよりも大きく、さらに好ましくは1500mNよりも大きく、極めて好ましくは2000mNよりも大きく、最も好ましくは3000mNよりも大きい、変形手段の第2の力F2が、第1の基板に加えられる。こうすることにより、上側の第1の基板と下側の第2の基板との第1のコンタクティングが引き起こされるか、または少なくとも支援される。発生させることが好ましい圧力の計算は、仮定される最も小さい面積である0.001cm2で力を除算することによって改めて実施される。第5のプロセスステップでは、加熱手段、とりわけ下側の試料ホルダ内に組み込み配置された、下側の試料ホルダのヒータがスイッチオフされる。
【0054】
第6のプロセスステップでは、とりわけ進行中のボンディングウェーブの伝播が監視される(上記の「ボンディングウェーブの監視」も参照のこと)。この監視は、ボンディングウェーブの進行状況を追跡し、ひいてはボンディング過程の進行状況を、とりわけ1秒より長く、好ましくは2秒より長く、さらに好ましくは3秒より長く、極めて好ましくは4秒より長く、最も好ましくは5秒より長い期間にわたって追跡する。所定の時間間隔にわたってボンディング過程を追跡/制御する代わりに、ボンディングウェーブの追跡を、ボンディングウェーブの位置、とりわけ半径方向位置に関して定めることも可能である。ボンディング過程の追跡は、とりわけボンディングウェーブが、基板の直径の少なくとも0.1倍、好ましくは少なくとも0.2倍、さらに好ましくは少なくとも0.3倍、極めて好ましくは少なくとも0.4倍、最も好ましくは0.5倍に相当する半径方向位置に存在する間、実施される。ボンディングの進行状況の追跡を、表面導電率の測定によって測定することが望ましい場合には、ボンディングの進行を、ボンディングされた表面またはボンディングされていない表面のパーセンテージの割合によって実施することも可能である。その場合、本発明によるボンディングの進行状況の監視は、とりわけ面積の1%より多く、好ましくは4%より多く、さらに好ましくは9%より多く、極めて好ましくは16%より多く、最も好ましくは25%より多くがボンディングされるまでの間、実施される。これに代わる形態では、監視が連続的に実施される。
【0055】
プロセスシーケンスの制御は、好ましくは上記の値の範囲内における監視から、規定/設定された値または設定可能な値に基づいて実施される。ここから、ボンディングウェーブの進行のための、次のプロセスステップの開始までの第1の待機時間が判明する。
【0056】
第7のプロセスステップでは、とりわけ上側の第1の試料ホルダの位置固定部がスイッチオフされる。位置固定を狙い通りに解除することによって上側の第1の基板を解離させることも考えられる。とりわけ個々に制御可能な複数の真空通路からなる真空固定部の場合には、とりわけ中心から縁部に向かって連続的に真空を解除していくことによって、位置固定の狙い通りの解除が実施される。第7のプロセスステップは、とりわけ、測定手段のパラメータの1つが規定/設定された値または設定可能な値に到達した時点t1に開始される(とりわけ第6のプロセスステップを参照のこと)。
【0057】
一般的に言えばまたは言い換えれば、ボンディング中の時点t1には、とりわけ第1の基板が第1の試料ホルダから解離されるまで、保持力FH1が低減される。
【0058】
第8のプロセスステップでは、とりわけ進行中のボンディングウェーブの伝播が、測定手段によって改めてまたは引き続き監視される。この監視は、ボンディングウェーブの進行状況を追跡し、ひいてはボンディング過程の進行状況を、とりわけ5秒より長く、好ましくは10秒より長く、さらに好ましくは50秒より長く、極めて好ましくは75秒より長く、最も好ましくは90秒より長い期間にわたって追跡する。所定の時間間隔にわたってボンディング過程を追跡する代わりに、ボンディングウェーブの追跡を、ボンディングウェーブの位置、とりわけ半径方向位置に関して測定することも可能である。この場合、ボンディング過程の追跡は、とりわけボンディングウェーブが、基板の直径の少なくとも0.3倍、好ましくは少なくとも0.4倍、さらに好ましくは少なくとも0.5倍、極めて好ましくは少なくとも0.6倍、最も好ましくは0.7倍に相当する半径方向位置に存在する間、実施される。ボンディングの進行状況の追跡が、表面導電率の測定によって実施可能であることが望ましい場合には、ボンディングの進行を、ボンディングされた表面またはボンディングされていない表面のパーセンテージの割合によって実施することも可能である。その場合、本発明によるボンディングの進行状況の監視は、とりわけ面積の9%より多く、好ましくは16%より多く、さらに好ましくは25%より多く、極めて好ましくは36%より多く、最も好ましくは49%より多くがボンディングされるまでの間、実施される。これに代わる形態では、監視が連続的に実施される。
【0059】
プロセスシーケンスの制御は、好ましくは上記の値の範囲内における監視から、規定/設定された値または設定可能な値に基づいて実施される。ここから、ボンディングウェーブの進行のための、次のプロセスステップの開始までの第2の待機時間が判明する。
【0060】
第9のプロセスステップでは、変形手段の使用が停止される。変形手段がピンである場合には、ピンが引き戻される。変形手段が1つまたは複数のノズルである場合には、流体の流れが遮断される。変形手段が電場および/または磁場である場合には、電場および/または磁場がスイッチオフされる。第9のプロセスステップは、とりわけ、測定手段のパラメータの1つが規定/設定された値または設定可能な値に到達した時点に開始される(とりわけ第8のプロセスステップを参照のこと)。
【0061】
第10のプロセスステップでは、とりわけ進行中のボンディングウェーブの伝播が改めてまたは引き続き監視される。この監視は、ボンディングウェーブの進行状況を追跡し、ひいてはボンディング過程の進行状況を、とりわけ5秒より長く、好ましくは10秒より長く、さらに好ましくは50秒より長く、極めて好ましくは75秒より長く、最も好ましくは90秒より長い期間にわたって追跡する。所定の時間間隔にわたってボンディング過程を追跡する代わりに、ボンディングウェーブの追跡を、ボンディングウェーブの位置、とりわけ半径方向位置に関して定めることも可能である。この場合、ボンディング過程の追跡は、とりわけボンディングウェーブが、基板の直径の少なくとも0.6倍、好ましくは少なくとも0.7倍、さらに好ましくは少なくとも0.8倍、極めて好ましくは少なくとも0.9倍に相当する半径方向位置に存在する間、実施される。基板が縁部断面形状部を有する場合には、最も外側の縁部までボンディング過程を追跡することはできない。なぜならば、縁部断面形状部に基づき、約3~5mmはボンディングされないからである。ボンディングの進行状況の追跡が、表面導電率の測定によって実施可能であることが望ましい場合には、ボンディングの進行を、ボンディングされた表面またはボンディングされていない表面のパーセンテージの割合によって実施することも可能である。その場合、本発明によるボンディングの進行状況の監視は、とりわけ面積の36%より多く、好ましくは49%より多く、さらに好ましくは64%より多く、極めて好ましくは81%より多く、最も好ましくは100%(より多く)がボンディングされるまでの間、実施される。これに代わる形態では、監視が連続的に実施される。
【0062】
プロセスシーケンスの制御は、好ましくは上記の値の範囲内における監視から、規定/設定された値または設定可能な値に基づいて実施される。ここから、ボンディングウェーブの進行のための、次のプロセスステップの開始までの第3の待機時間が判明する。
【0063】
第1の実施形態のプロセスシーケンスの例を、以下に挙げる:
●基板を装填する
●ボンディングを開始することなく、ピンをウェーハにコンタクトさせる(ウェーハに100mNの力)
●2つのウェーハを互いに向かって相対的に接近させる(間隔40~200μm)
●両基板の間のヒュージョン接合を開始するために、ウェーハに力を加える(1500~2800mNの力)
●ヒータを停止する
●ボンディングウェーブが充分に伝播するまで待機する(典型的には1~5秒)-第1の待機時間
●ウェーハ表面の真空吸着をスイッチオフ(排気)する(とりわけ両ゾーンを同時に)
●ボンディングウェーブがさらに伝播するまで待機する(とりわけ2~15秒)-第3の待機時間
●ピンを引き戻す
●ボンディングウェーブが完全に伝播するまで待機する(とりわけ5~90秒)-第4の待機時間。
【0064】
個々の方法ステップは、上記の一般的な技術的教示によって一般化することが可能である。
【0065】
本発明の第2の実施形態によるプロセス
第2の実施形態によるプロセスは、第1の実施形態の第1~第7のプロセスステップに相当する。
【0066】
第8のプロセスステップでは、とりわけ下側の第2の試料ホルダの保持力が低減されるか、または位置固定部がスイッチオフされる。位置固定を狙い通りに解除することによって下側の第2の基板を解離させることも考えられる。とりわけ個々に制御可能な複数の真空通路からなる真空固定部の場合には、とりわけ中心から縁部に向かって連続的に真空を解除していくことによって、位置固定の狙い通りの解除が実施される。本発明による第8のプロセスステップは、「ランアウト」誤差を低減させるための重要な過程である。本発明によれば、下側の第2の試料ホルダの保持力を低減させることによって、または位置固定部をスイッチオフすることによって、下側/第2の基板を上側の第1の基板に適合させることが可能となる。位置固定の解除によって、ボンディング過程を制限し得る追加的な(数学的・機械的)境界条件がいわば除去される。
【0067】
一般的に言えばまたは言い換えれば、ボンディング中の時点t2には、とりわけ第2の試料ホルダの上の第2の基板が変形可能となるまで、保持力FH2が低減される。
【0068】
第9のプロセスステップは、第1の実施形態の第8のプロセスステップに相当する。
【0069】
本発明による第10のプロセスステップでは、とりわけ既に部分的にボンディングされた第2の基板が、下側の第2の試料ホルダに再び位置固定される。本発明による第10のプロセスステップも、「ランアウト」誤差を低減させるための重要な過程である。改めて位置固定することにより、とりわけ真空吸着を改めてスイッチオンすることにより、ボンディングの進行が再び(数学的・機械的)境界条件によって制限される。
【0070】
一般的に言えばまたは言い換えれば、時点t4に、とりわけボンディング後に、保持力FH2が増加される。
【0071】
第11のプロセスステップは、第1の実施形態による第9のプロセスステップに相当し、第12のプロセスステップは、第1の実施形態による第10のプロセスステップに相当する。
【0072】
本発明による非常に特別な1つの実施形態では、第8のプロセスステップによる位置固定部のスイッチオフと、第10のプロセスステップによる位置固定部の改めてのスイッチオンとを、ボンディング過程の終了前に複数回繰り返すことができる。とりわけそれどころか、スイッチオフと改めての位置固定とを空間分解的に実施することも可能である。本発明によれば、このことは特に、既に本開示において説明した個々に制御可能な真空通路または真空セグメントと共に機能する。すなわち理想的なケースでは、下側/第2の基板の解除または位置固定が、位置分解的および/または時間分解的に実施される。
【0073】
第2の実施形態のプロセスシーケンスの例を、以下に挙げる:
●基板を装填する
●ボンディングを開始することなく、ピン(変形手段)をウェーハにコンタクトさせる(とりわけウェーハに100mNの力)-ピンの第1の力
●2つのウェーハを互いに向かって相対的に接近させる(とりわけ間隔40~200μm)-第1の間隔
●両基板の間のヒュージョン接合を開始するために、ウェーハを押圧する(とりわけ1500~2800mNの力)-ピンの第2の力
●ヒータを停止する
●ボンディングウェーブが充分に伝播するまで待機する(とりわけ1~5秒)-第1の待機時間
●上側のウェーハのための真空吸着をスイッチオフ(排気)する(とりわけ両ゾーンを同時に)
●下側のウェーハのための真空吸着をスイッチオフ(排気)する
●ボンディングウェーブがさらに伝播するまで待機する(とりわけ2~15秒)-第3の待機時間
●下側のウェーハのための真空吸着をスイッチオンする-第1の真空
●ピンを引き戻す
●ボンディングウェーブが完全に伝播するまで待機する(とりわけ5~90秒)-第4の待機時間。
【0074】
個々の方法ステップは、上記の一般的な技術的教示によって一般化することが可能である。
【0075】
本発明の第3の実施形態によるプロセス
第3の実施形態によるプロセスは、第2の実施形態の第1~第9のプロセスステップに相当する。第9のプロセスステップでは、各パラメータが、好ましくは第2の実施形態よりも10~40%だけ小さく設定される。こうすることにより、第10のプロセスステップまでの待機時間が短縮され、第3の実施形態では、追加的な待機時間が導入されるか、または第2の待機時間が分割される。
【0076】
本発明による第10のプロセスステップでは、下側の第2の試料ホルダと、その上に実際には位置固定されていない状態で載置されている下側/第2の基板との間の空間が、所定の圧力で換気される。この場合における「圧力」とは、絶対圧力であると理解すべきである。この場合、1バールの絶対圧力は、雰囲気圧力に相当する。すなわち、本発明による過程を実施するためには、チャンバを事前に真空状態にしておき、その後、雰囲気に開放する、すなわち換気する必要がある。こうすることによって、基板の自由な運動性を促進することができ、これによって、第1の基板に対する歪みがさらに最小化される。圧力は、とりわけ1ミリバール~1000ミリバール、好ましくは2.5ミリバール~800ミリバール、さらに好ましくは5ミリバール~600ミリバール、極めて好ましくは7.5ミリバール~400ミリバール、最も好ましくは10ミリバール~200ミリバールの間である。本発明によるさらに別の実施形態では、本発明による実施形態を、当該第10のプロセスステップまでは雰囲気圧力下で実施し、その後、コンプレッサによってチャンバ内に過圧を形成することが考えられる。このケースでは、圧力は、とりわけ1バール~3バール、好ましくは1バール~2.5バール、さらに好ましくは1バール~2バール、極めて好ましくは1バール~1.5バール、最も好ましくは1バール~1.2バールの間にある。
【0077】
第11のプロセスステップでは、とりわけ進行中のボンディングウェーブの伝播が、測定手段によって改めてまたは引き続き監視される。この監視は、ボンディングウェーブの進行状況を追跡し、ひいてはボンディング過程の進行状況を、とりわけ1秒より長く、好ましくは2秒より長く、さらに好ましくは5秒より長く、極めて好ましくは10秒より長く、最も好ましくは15秒より長い期間にわたって追跡する。所定の時間間隔にわたってボンディング過程を追跡する代わりに、ボンディングウェーブの追跡を、ボンディングウェーブの位置、とりわけ半径方向位置に関して定めることも可能である。この場合、ボンディング過程の追跡は、とりわけボンディングウェーブが、基板の直径の少なくとも0.3倍、好ましくは少なくとも0.4倍、さらに好ましくは少なくとも0.5倍、極めて好ましくは少なくとも0.6倍、最も好ましくは0.7倍に相当する半径方向位置に存在する間、実施される。ボンディングの進行状況の追跡が、表面導電率の測定によって測定可能であることが望ましい場合には、ボンディングの進行を、ボンディングされた表面またはボンディングされていない表面のパーセンテージの割合によって実施することも可能である。その場合、本発明によるボンディングの進行状況の監視は、とりわけ面積の9%より多く、好ましくは16%より多く、さらに好ましくは25%より多く、極めて好ましくは36%より多く、最も好ましくは49%より多くがボンディングされるまでの間、実施される。これに代わる形態では、監視が連続的に実施される。
【0078】
プロセスシーケンスの制御は、好ましくは上記の値の範囲内における監視から、規定/設定された値または設定可能な値に基づいて実施される。ここから、ボンディングウェーブの進行のための、次のプロセスステップの開始までの第1の待機時間が判明する。
【0079】
本発明による第12のプロセスステップでは、とりわけ既に部分的にボンディングされた第2の基板が、下側の第2の試料ホルダに再び位置固定される。
【0080】
一般的に言えばまたは言い換えれば、時点t4に、とりわけボンディング後に、保持力FH2が増加される。
【0081】
第13のプロセスステップは、第1の実施形態による第9のプロセスステップに相当し、第14のプロセスステップは、第1の実施形態による第10のプロセスステップに相当する。
【0082】
第3の実施形態のプロセスシーケンスの例を、以下に挙げる:
●基板を装填する
●ボンディングを開始することなく、ピンをウェーハにコンタクトさせる(とりわけウェーハに100mNの力)-ピンの第1の力
●2つのウェーハを互いに向かって相対的に接近させる(とりわけ間隔40~200μm)-第1の間隔
●両基板の間のヒュージョン接合を開始するために、ウェーハを押圧する(とりわけ1500~2800mNの力)-ピンの第2の力
●ヒータを停止する
●ボンディングウェーブが充分に伝播するまで待機する(とりわけ1~5秒)-第1の待機時間
●上側のウェーハのための真空吸着をスイッチオフ(排気)する(とりわけ両ゾーンを同時に)
●下側のウェーハのための真空吸着をスイッチオフ(排気)する
●ボンディングウェーブがさらに伝播するまで待機する(とりわけ1~10秒)-第2の待機時間
●下側のウェーハとチャック(下側の試料ホルダ)との間の空間を、所定の期間、所定の圧力(とりわけ10~200ミリバール)で換気する-第1の圧力
●ボンディングウェーブがさらに伝播するまで待機する(とりわけ2~15秒)-第3の待機時間
●下側のウェーハのための真空吸着をスイッチオンする-第1の真空
●ピンを引き戻す
●ボンディングウェーブが完全に伝播するまで待機する(とりわけ5~90秒)-第4の待機時間。
【0083】
個々の方法ステップは、上記の一般的な技術的教示によって一般化することが可能である。
【0084】
後処理
記載されたプロセスは、とりわけさらなるプロセスモジュールにおいて継続することができる。
【0085】
考えられる第1の継続過程では、形成された基板スタックが、とりわけ計測モジュールにおいて検査される。この検査は、特に:
●アライメント誤差、とりわけ
○全体的なアライメント誤差、および/または、
○ランアウト誤差、ならびに/もしくは、
●欠陥、とりわけ
○空隙、および/または、
○気泡(bubbles)、および/または、
○亀裂、
を確認するための接合界面の測定を含む。
【0086】
基板スタックの検査が許容できない程の誤差を有している場合には、この基板スタックは、好ましくは再び分離される。この場合、分離は、好ましくは欧州特許第2697823号明細書(EP2697823B1)および国際公開第2013/091714号(WO2013/091714A1)で開示された方法および装置によって実施される。この点に関してはこれらの文献が参照される。接合界面の検査は、とりわけ後続の熱処理の前に実施される。
【0087】
考えられる第2の後続過程では、形成された基板スタックが熱処理される。熱処理により、とりわけ基板スタックの基板同士の間に形成されたボンディングが強化される。熱処理は、とりわけ25℃より高い温度、好ましくは100℃より高い温度、さらに好ましくは250℃より高い温度、極めて好ましくは500℃より高い温度、最も好ましくは750℃より高い温度で実施される。この温度は、実質的に加熱温度THに相当する。形成されたボンディング強度は、とりわけ1.0J/m2よりも大きく、好ましくは1.5J/m2よりも大きく、さらに好ましくは2.0J/m2よりも大きく、最も好ましくは2.5J/m2よりも大きい。熱処理は、好ましくは真空下で実施される。真空圧力は、とりわけ1バールよりも小さく、好ましくは800ミリバールよりも小さく、さらに好ましくは10-3ミリバールよりも小さく、極めて好ましくは10-5ミリバールよりも小さく、最も好ましくは10-8ミリバールよりも小さい。
【0088】
しかし、熱処理を保護ガス雰囲気中で実施することも考えられる。このことは、とりわけ使用される保護ガスが熱伝達を容易にする場合には有利である。保護ガスの熱伝導率は、とりわけ0W/(m・K)よりも高く、好ましくは0.01W/(m・K)よりも高く、さらに好ましくは0.1W/(m・K)よりも高く、極めて好ましくは1W/(m・K)よりも高い。ヘリウムの熱伝導率は、たとえば約0.15W/(m・K)~0.16W/(m・K)の間にある。保護ガスは、とりわけ:
●希ガス、とりわけヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、および/またはキセノン
●分子ガス、とりわけ二酸化炭素および/または窒素
●上記のガスからの任意の組み合わせ
である。
【0089】
好ましくは、基板は、ほぼ同一の直径D1,D2を有する。直径D1,D2は、とりわけ5mmよりも少ないだけ、好ましくは3mmよりも少ないだけ、さらに好ましくは1mmよりも少ないだけ、互いに異なる。
【0090】
本発明のさらに別の、とりわけ独立した構成では、変形が、機械的な作動手段および/または第1および/または第2のマウント装置の温度制御により行われる。
【0091】
第1および/または第2の基板が、側壁の範囲においてのみ第1のマウント面および/または第2のマウント面の位置固定されることにより、本発明における変形は一層容易に実現可能となる。
【0092】
本発明によるプロセスの結果は、基板または周囲環境と直接対応付けることができる多数の物理的パラメータに関連している。本開示の以下の記載では、最も重要ないくつかのパラメータと、これらのパラメータが「ランアウト」誤差に与える影響とについて説明される。パラメータは、大ざっぱには、シングルパラメータとペアパラメータとに区別される。シングルパラメータは、対称側に、とりわけ基板に対応付けることができない。ペアパラメータは、一方の対称側、とりわけ第1の基板において、それぞれ向かい合って位置する対称側、とりわけ第2の基板における値とは異なる値を有することができる。第1の上側の対称側と、第2の下側の対称側とが存在する。シングルパラメータの例は、ボンディングウェーブ速度vまたはガス(混合物)圧力pである。ペアパラメータの例は、基板の厚さd1およびd2である。
【0093】
以下の記載において、ペアパラメータがボンディング結果に与える影響について説明される場合には、別段の言及がない限り、各ペアパラメータの他の全ての値は好ましくは同じであることが前提にされる。以下の例を例示的に挙げておく。2つのそれぞれ異なる基板の厚さd1およびd2がボンディング結果に与える影響について説明される場合には、両基板の両弾性率E1およびE2は同じであることが前提にされる。
【0094】
目標は、計算されたおよび/または実験により求められた、とりわけ時間に関連した最適な湾曲線によって、「ランアウト」誤差を最小化すること、または完全に除去することである。この場合の「湾曲線」とは、基板の表面位置、すなわち基板表面を、位置座標、とりわけ動径座標の関数としてマッピングする一次元の関数の、対称性を低くした表現であると理解される。「対称性を低くした」とは、両基板の放射対称的な対称性に基づき、「ランアウト」誤差を上述したように最小化するまたは完全に除去するような、基板同士の二次元のコンタクティングを帰納的に推測するためには、一次元の湾曲線を計算すれば充分であるということを意味している。簡単に言うと、基板の湾曲線は、とりわけ接合界面に面した基板表面であると説明することができる。好ましくは、第1の基板に関する湾曲線の説明は、第2の基板にも適用される。
【0095】
湾曲線、すなわち基板表面は、本発明によれば、とりわけ以下の1つまたは複数のパラメータによって主な影響を受ける。
【0096】
基板の厚さd1,d2は、体積V1,V2および密度p1,p2によって、両基板の質量m1,m2と、ひいては重力G1,G2と結び付けられる。第1の基板の重力G1は、第1の上側の基板の、第2の下側の基板の方向への加速挙動に対して直接的な影響を与える。下側の位置固定部がスイッチオフされている場合には、重力G2は、第2の下側の基板の慣性力に対する尺度であり、ひいては、第2の下側の基板がボンディングウェーブに沿って第1の上側の基板とは反対方向に移動しようとする力、または耐久しようとする力、または留まろうとする力に値する尺度である。
【0097】
弾性率E1,E2は、基板の剛性に対する尺度である。弾性率E1,E2は、湾曲線に決定的な影響を与えるものであり、したがって、基板同士が互いに向かってどのように移動するのかを記述可能にするための関数を共に定義する。
【0098】
力F1およびF2は、両基板がとりわけ中心において互いに結合される面積に対して影響を与える。点状のコンタクティングは理想的なケースでしか存在しないので、両基板のコンタクティングは、中心において面状に実施されるということを常に前提にしなければならない。面の大きさは、主に力F1およびF2によって設定される。コンタクト面の大きさは、境界条件に対して決定的である。
【0099】
両基板の温度T1,T2によって、基板の全体的な熱膨張状態に影響を与えることができる。これによって本発明によれば、基板が基準温度に対して熱膨張によってどれくらい強く歪むかを設定することができる。したがって、上側および/または下側の基板の正確な温度調節は、「ランアウト」をできるだけ精確に完全に補償するための重要な特徴である。好ましくは、両基板の温度をそれぞれ異なるように設定することができる。とりわけ基板が、互いにボンディングされるべき構造体同士が互いに合同である膨張状態になるように、すなわち「ランアウト」誤差が消滅している膨張状態(ボンディング時に、上に既に挙げたパラメータによって追加的な「ランアウト」誤差が構築されないことを仮定した場合)になるように、温度が設定される。このために必要な温度は、測定手段によっておよび/または実験によって求めることができる。
【0100】
ガス(混合物)圧力pは、互いに向かって移動する基板に対して雰囲気が与える抵抗に影響を与える。ガス(混合物)圧力により、ボンディングウェーブ速度vに対して直接的な影響を与えることができる。この点に関しては、国際公開第2014/191033号(WO2014191033A1)が参照される。
【0101】
保持力FH1,FH2は、特に本来のボンディング過程の前に基板を位置固定するために使用される。保持力FH1は、第1~第6のプロセスステップのための境界条件であるが、位置固定部のスイッチオフ後には、湾曲線を決定する境界条件の影響を失う。同様にして、保持力FH2は、下側の位置固定が作動中の時点にのみ境界条件として利用される。したがって、弾性理論に基づいて計算するために、遅くとも第7のプロセスステップからは、相応にして新しい境界条件を作成する必要がある。
【0102】
初期曲率半径r10,r20は、本発明によるプロセスを実施する前における基板の初期半径である。初期曲率半径r10,r20は、位置の関数であるが、とりわけ位置に関して一定である。本発明による特別な第1の実施形態では、第2の下側の基板の初期曲率半径r10は、無限大である。なぜならば、第2の下側の基板は、本発明によるプロセスの開始時にはフラットに載置されているからである。本発明によるさらに別の特別な第2の実施形態では、第2の下側の基板の初期曲率半径r10は、一定の凸面状または凹面状の湾曲に応じた有限の正または負の定数である。このケースでは、第2の下側の基板は、本発明によるプロセスの開始時には凸面状または凹面状に湾曲した形状で存在している。このような試料ホルダは、国際公開第2014/191033号(WO2014191033A1)に記載されており、この点に関してこの文献が参照される。とりわけ、少なくとも第2の下側の基板の初期曲率半径r10は、第2の基板が載置される第2の下側の試料ホルダの表面と一致する。
【0103】
ボンディングウェーブに沿った両基板の基板曲率半径r1,r2は、弾性理論に基づく方程式を、上記のパラメータを考慮して解いた結果である。基板曲率半径r1,r2は、とりわけ位置および時間の関数である。
【0104】
ボンディングウェーブ速度は、上記のパラメータの結果である。
【0105】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、好ましい実施例に関する以下の記載から、図面に基づいて明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1a】本発明による方法の第1の実施形態の第1のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図1b】第2のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図1c】第3のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図1d】第4のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図1e】第5のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図1f】第6のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図1g】第7のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図1h】第8のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図1i】第9のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図1j】第10のプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図2】本発明による方法の第3の実施形態の追加的なプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図3】任意選択の追加的なプロセスステップの、縮尺通りでない概略横断面図である。
【
図4】2つの基板の、縮尺通りでない概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
図面中、同一の構成部分および同一機能を有する構成部分は、同じ符号で示されている。
【0108】
図1aは、第1のプロセスステップを示す。第1のプロセスステップでは、第1の、とりわけ上側の基板2を、第1の、とりわけ上側の試料ホルダ1の試料ホルダ表面1oに位置固定されている。位置固定は、位置固定手段3を介して保持力F
H1によって実施される。
【0109】
第1の試料ホルダ1は、とりわけ中心にある貫通開口部、とりわけ孔部4を有する。貫通開口部は、第1の基板2を変形させるための変形手段6(
図1b)を貫通挿入するために使用される。
【0110】
ここに示されていない有利な1つの実施形態では、第1の試料ホルダ1は、複数の穴部5を有しており、これらの穴部5を通して測定手段によってボンディングの進行状況を観察することができる。穴部5は、好ましくは縦長の切欠部である。
【0111】
第2の、とりわけ下側の試料ホルダ1’の上に、第2の基板2’が装填され、位置固定される。位置固定は、位置固定手段3’を介して保持力FH2によって実施される。
【0112】
位置固定手段3,3’は、好ましくは真空固定部である。
【0113】
試料ホルダ1,1’は、とりわけヒータ11(加熱手段)を有する。図面では見易くするために、ヒータ11を第2の下側の試料ホルダ1’にのみ概略的に図示するものとする。
【0114】
基板2,2’の特性を記述する、または基板2,2’に影響を与える、上に挙げた全てのパラメータまたは力は、一般に位置および/または時間の関数である。パラメータの例として、両基板2,2’の温度T1およびT2が挙げられる。温度T1またはT2は、一般に位置に関連し得るので、温度勾配が存在する。この場合には温度を、位置および/または時間の陽関数として表すことが有利である。力の例としては、2つの重力G1およびG2が挙げられる。これら2つの重力G1およびG2は、図面では、基板2,2’に作用する全重力を表している。しかし、両基板2,2’を無限小の(質量)部分dmに分解できること、および、重力の影響をこれらの質量部分dmのそれぞれに適用できることは、当業者には自明である。したがって重力は、一般に位置および/または時間の関数として表すべきであろう。
【0115】
同様の考えは、その他の全てのパラメータおよび/または力に関しても適用される。
【0116】
図1bは、本発明による第2のプロセスステップを示す。第2のプロセスステップでは、変形手段6、とりわけピンが、第1の基板2の裏側2iに圧力を加えて、第1の基板2の変形を引き起こす。この場合、第1の基板2の変形は、第1の力F
1によって実施される。
【0117】
図1cのプロセスステップでは、所定の間隔が得られるまで両試料ホルダ1,1’、ひいては両基板2,2’が相対的に接近される。この接近は、第2のプロセスステップ中に実施することも、または第2のプロセスステップ前に実施することも可能である。
【0118】
図1dのプロセスステップでは、第2の力F
2によってボンディング(接合)、とりわけプレボンディングが開始される。第2の力F
2は、さらなる、とりわけ無限小に小さい撓みをもたらし、両基板2,2’をさらに接近させ、最終的にはコンタクト点7においてコンタクティングを行う。
【0119】
ボンディングウェーブ、より詳細にはボンディングウェーブフロント8は、コンタクト点7からボンディングウェーブ速度vで、とりわけ放射対称的に、好ましくは同心状に伝播を開始する。ボンディングウェーブ速度vは、さらなるプロセスステップの経過中に変化させることができ、したがってこのボンディングウェーブ速度vを、位置(または時間)の関数として定義することができる。ボンディングウェーブ速度vには、種々の手段によって影響を与えることができる。
【0120】
図1eのさらなるプロセスステップでは、第1および/または第2の試料ホルダ1,1’のヒータ11がスイッチオフされ、これにより、第1および/または第2の基板2,2’の以後の加熱が中断される。
図1fのさらなるプロセスステップでは、ボンディングウェーブフロント8が、測定手段9によって、とりわけ光学系、好ましくは赤外線光学系によって監視される。測定手段9は、(少なくとも1つの、好ましくは光学系の個数と一致した個数の)穴部5を通して、第1の基板2の基板裏側2i、さらに好ましくは両基板2,2’の間の接合界面、ひいてはボンディングウェーブフロント8を検出する。接合界面の検出は、とりわけ電磁放射に対して感受性を有する測定手段9において実施される。なお、この電磁放射は、大幅に減衰されることなく両基板2,2’を貫通することができるものである。好ましくは、試料ホルダ1’の上側および/または下側および/または内部に光源12が配置される。光源12の電磁放射は、試料ホルダ1’および/または基板2,2’を照射および/または透過し、これを測定手段9によって検出することができる。このようにして撮影された画像は、好ましくは白黒画像である。輝度の違いにより、ボンディングされている領域とボンディングされていない領域とを一義的に識別することが可能である。2つの領域の移行領域が、ボンディングウェーブである。このような測定によって、とりわけボンディングウェーブフロント8の位置を特定することが可能であり、ひいては、とりわけこのような位置を複数の特定する場合には、ボンディングウェーブ速度vを求めることも可能である。
【0121】
図1gは、さらなる第7のプロセスステップを示す。第7のプロセスステップでは、保持力F
H1を少なくとも低減させることによって、第1の試料ホルダ1の位置固定3が解除される。位置固定部3が真空固定部である場合、さらに好ましくは別個に制御可能な複数の真空セグメントを有する(複数の保持力F
H1による)真空固定部である場合には、とりわけ内側から外側に向かって複数の真空セグメントを狙い通りにスイッチオフしていく(もしくは1つまたは複数の保持力F
H1を狙い通りに低減させていく)ことによって解離が実施される。
【0122】
図1hは、さらなるプロセスステップを示す。このプロセスステップでは、第1の基板ホルダ1から解離された後のボンディングウェーブフロント8が、測定手段9によって監視される。
【0123】
図1iは、さらなるプロセスステップを示す。このプロセスステップでは、変形手段6が第1の基板2に与えている作用が中断される。変形手段6が機械的な変形手段である場合、とりわけピンである場合には、これを引き戻すことによって中断が実施される。ノズルを使用する場合には、流体の流れを遮断することによって中断が実施される。電場および/または磁場の場合には、電場および/または磁場をスイッチオフすることによって中断が実施される。
【0124】
図1jは、さらなるプロセスステップを示す。このプロセスステップの後には、両基板2,2’は互いに完全にボンディングされた状態となっている。とりわけこのプロセスステップでは、ボンディングが終了するまで、測定手段9によってボンディングウェーブフロント8(この過程状態ではボンディングは既に終了したのでもはや図示されていない)が引き続き監視され、ボンディングの終了時には、第1および第2の基板2,2’から形成された基板スタック10が完成された状態となっている。
【0125】
図2は、任意選択のプロセスステップを示す。とりわけ
図1gのプロセスステップの後に位置するこのプロセスステップでは、第2の下側の試料ホルダ1’の第2の下側の位置固定部3’の保持力F
H2が低減される。とりわけ保持力F
H2は、0まで低減される。すなわち位置固定が解除される。これによってとりわけ第2の基板2’は、妨げられることなく移動可能となり、とりわけ下側の試料ホルダ表面1o’に沿って横方向に移動可能となる。
【0126】
さらに別の有利な実施形態では、第2の基板2’が、第2の下側の試料ホルダ1’からとりわけ局所的に浮き上がるまで持ち上げられる。このことは、とりわけ第2の試料ホルダ1’から第2の基板2’に圧力を加えることによって引き起こされる。
【0127】
重力G2は、ボンディングプロセスの全期間にわたって第2の基板2’の持ち上がりに対抗し、ひいては両基板2,2’のコンタクティング、ひいては「ランアウト(run-out)」にも影響を与える。
【0128】
図3は、本発明による任意選択のプロセスステップを示す。このプロセスステップでは、完全にボンディングされた基板スタック10が形成される前に、本発明による過程が進められているチャンバが換気される。この換気は、とりわけボンディングウェーブフロント8の進行を制御するために使用される。影響を与える手段についての詳細な説明は、国際公開第2014/191033号(WO2014/191033A1)に開示されており、この点に関してこの文献が参照される。換気は、ガスまたはガス混合物によって実施される。とりわけ換気は、弁を周囲雰囲気に開放することによって実施され、これによってチャンバは、周囲ガス(混合物)によって換気される。周囲雰囲気に対して換気する代わりに、ガスまたはガス混合物によってチャンバに過圧を加えることも考えられる。
【0129】
図4は、2つの基板2,2’の、縮尺通りでない概略横断面図であり、これら2つの基板2,2’は、多数のパラメータによって定義される。基板表面2o,2o’は、所定の時点における、第1の上側の基板2または第2の下側の基板2’の湾曲線に相当する。基板表面2o,2o’は、主に上記のパラメータによって定義される。基板表面2o,2o’の形状は、本発明によるボンディング過程の間、時間の関数として変化する。
【符号の説明】
【0130】
1,1’ 試料ホルダ
1o,1o’ 試料ホルダ表面
2,2’ 基板
2o,2o’ 基板表面
2i 基板裏側
3,3’ 位置固定部
4 孔部
5 穴部
6 変形手段
7 コンタクト点
8 ボンディングウェーブフロント
9 測定手段
10 基板スタック
11 ヒータ
12 光源
F1,F2 力
FH1,FH2 保持力
v ボンディングウェーブ速度
TH 加熱温度
T1,T2 基板の温度
E1,E2 基板の弾性率
d1,d2 基板の厚さ
V1,V2 基板の体積
m1,m2 基板の質量
p1,p2 基板の密度
G1,G2 基板の重力
r1,r2 基板の曲率半径
r10,r20 基板の初期曲率半径
D 基板縁部間隔