(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】表示装置製造用フォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/32 20120101AFI20220215BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20220215BHJP
【FI】
G03F1/32
G03F1/80
(21)【出願番号】P 2020215221
(22)【出願日】2020-12-24
(62)【分割の表示】P 2017054052の分割
【原出願日】2017-03-21
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2016184151
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】金 台勲
(72)【発明者】
【氏名】李 錫薫
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-181722(JP,A)
【文献】特許第6817121(JP,B2)
【文献】特開2015-212720(JP,A)
【文献】特開2007-264516(JP,A)
【文献】特開2010-087333(JP,A)
【文献】特開2009-086681(JP,A)
【文献】特開2016-095533(JP,A)
【文献】特開2005-037933(JP,A)
【文献】特開2014-219693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0009745(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0082274(US,A1)
【文献】特開2016-224289(JP,A)
【文献】特開2014-081409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に第1光学膜と第2光学膜がそれぞれパターニングされて形成された転写用パターンを備え、前記転写用パターンは、前記透明基板の表面が露出する透光部、前記透光部と隣接する部分をもつ第1透過制御部、及び前記第1透過制御部と隣接する部分をもつ第2透過制御部とを含み、前記第1透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第1光学膜を有し、前記第2透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第2光学膜を有する、表示装置製造用フォトマスクの製造方法であって、
前記透明基板上に前記第1光学膜及び第1レジスト膜が形成されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト膜に対して第1描画を行い、第1レジストパターンを形成する、第1レジストパターン形成工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして、前記第1光学膜をエッチングし、第1光学膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、
前記第1光学膜パターンを含む前記透明基板上に成膜した前記第2光学膜上に第2レジスト膜を形成して第2描画を行い、第2レジストパターンを形成する、第2レジストパターン形成工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして、前記第2光学膜をエッチングし、第2光学膜パターンを形成する、第2パターニング工程と、を含み、
前記第1パターニング工程では、前記第1光学膜のみをエッチングし、
前記第2パターニング工程では、前記第2光学膜のみをエッチングし、かつ、
前記第2レジストパターンは、前記第2透過制御部の形成領域を覆うとともに、前記第2透過制御部のエッジにおいて隣接する前記第1透過制御部側に、所定幅のマージンを加えた寸法を有し、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する、前記第1光学膜の光透過率をT1(%)とし、位相シフト量をφ1(度)とするとき、
2≦T1≦40
150≦φ1≦210
であ
り、
前記代表波長光に対する、前記第2光学膜の光透過率をT2(%)とし、位相シフト量をφ2(度)とするとき、
10≦T2≦60
0<φ2≦90
であることを特徴とする、表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記第1光学膜は、Crを含み、
前記第2光学膜は、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含むことを特徴とする、請求項1に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記第1光学膜は、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含み、
前記第2光学膜は、Crを含むことを特徴とする、請求項1
または2に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記第1光学膜と前記第2光学膜は、互いのエッチング剤に対して耐性を有することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記代表波長光に対する前記第1光学膜の表面反射率をSR1
(%)とするとき、
2≦SR1≦20
であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【請求項6】
前記代表波長光に対する前記第1光学膜の裏面反射率をBR1
(%)とするとき、
2≦BR1≦20
であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【請求項7】
前記代表波長光に対する前記第2光学膜の裏面反射率をBR2
(%)とするとき、
2≦BR2≦20
であることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか1項に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【請求項8】
前記マージンの幅をM1(μm)とするとき、
0.2≦M1≦1.0
であることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか1項に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【請求項9】
前記代表波長光に対する、前記第1透過制御部のマージンの領域と前記第2透過制御部との位相差δ(度)が、
150≦δ≦210
であることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスを製造するためのフォトマスクであって、特に、液晶パネルや有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルに代表される表示装置(フラットパネルディスプレイ)の製造に有用なフォトマスク及びその製造方法、並びに、当該フォトマスクを用いた表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遮光部、半透光部、及び透光部を含む転写用パターンが透明基板上に形成された多階調フォトマスクであって、急峻な立ち上がりの形状を持つレジストパターンを被転写体上に形成可能な多階調フォトマスクに関する技術が記載されている。
【0003】
図6は特許文献1に記載された多階調フォトマスクの構成を示す側断面図である。
この多階調フォトマスク200は、遮光部110、半透光部115及び透光部120を含む転写用パターンを備える。遮光部110は、半透光膜101、位相シフト調整膜102、及び遮光膜103が透明基板100上にこの順に積層されてなる。半透光部115は、半透光膜101が透明基板100上に形成されてなる。透光部120は、透明基板100が露出してなる。遮光部110と透光部120との境界には、半透光膜101上の位相シフト調整膜102が部分的に露出してなる第1の位相シフタ部111が形成され、遮光部110と半透光部115との境界には、半透光膜101上の位相シフト調整膜102が部分的に露出してなる第2の位相シフタ部112が形成されている。
【0004】
上記の多階調フォトマスク200では、透光部120を透過した露光光と第1の位相シフタ部111を透過した露光光とが干渉するとともに、半透光部115を透過した露光光と第2の位相シフタ部112を透過した露光光とが干渉する。これにより、境界部分の露光光が互いに打ち消しあう。このため、被転写体上に形成されるレジストパターンの側壁を急峻な立ち上がり形状とすることができる。
【0005】
図7は特許文献1に記載された多階調フォトマスクの製造工程を示す側断面図である。
【0006】
(フォトマスクブランク準備工程)
まず、透明基板100上に半透光膜101、位相シフト調整膜102、遮光膜103がこの順に形成され、最上層に第1レジスト膜104が形成されたフォトマスクブランク20を準備する(
図7(a))。
【0007】
(第1レジストパターン形成工程)
次に、フォトマスクブランク20に対して、描画・現像を施し、遮光部110の形成領域を覆う第1レジストパターン104pを形成する。
【0008】
(第1エッチング工程)
次に、第1レジストパターン104pをマスクとして、遮光膜103をエッチングし、遮光膜パターン103pを形成する(
図7(b))。
【0009】
(第2レジスト膜形成工程)
次に、第1レジストパターン104pを除去した後、遮光膜パターン103p及び露出した位相シフト調整膜102を有するフォトマスクブランク20上の全面に、第2レジスト膜105を形成する。
【0010】
(第2レジストパターン形成工程)
次に、第2レジスト膜105を描画・現像し、遮光部110の形成領域、遮光部110と透光部120との境界部分に位置する第1の位相シフタ部111の形成領域、及び遮光部110と半透光部115との境界部分に位置する第2の位相シフタ部112の形成領域をそれぞれ覆う第2レジストパターン105pを形成する(
図7(c))。
【0011】
(第2エッチング工程)
次に、第2レジストパターン105pをマスクとして、位相シフト調整膜102をエッチングして位相シフト調整膜パターン102pを形成するとともに、半透光部115と第1の位相シフタ部111と第2の位相シフタ部112とを形成する(
図7(d))。
【0012】
(第3レジスト膜形成工程)
次に、第2レジストパターン105pを除去した後、遮光膜パターン103p、位相シフト調整膜パターン102p、露出した半透光膜101を有するフォトマスクブランク20上の全面に、第3レジスト膜106を形成する。
【0013】
(第3レジストパターン形成工程)
次に、第3レジスト膜106を描画・現像し、透光部120の形成領域以外の領域を覆う第3レジストパターン106pを形成する(
図7(e))。
【0014】
(第3エッチング工程)
次に、第3レジストパターン106pをマスクとして半透光膜101をエッチングして半透光膜パターン101pを形成するとともに、透明基板100を部分的に露出させて透光部120を形成する(
図7(f))。
【0015】
(第3レジストパターン除去工程)
次に、第3レジストパターン106pを除去し、多階調フォトマスク200の製造を完了する(
図7(g))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
多階調フォトマスク(又はグレートーンマスク)の転写用パターンは、遮光部、透光部、及び半透光部といった、光透過率の異なる3つ以上の部分を有し、これによって複数の残膜厚を有するレジストパターンを被転写体上に形成しようとするものである。このレジストパターンは、被転写体上に形成された薄膜の加工に際して、エッチングマスクとして利用される。その場合、レジストパターンを用いて第1エッチングを行い、次いでレジストパターンを減膜すると、減膜後のレジストパターンは第1エッチング時とは異なる形状となる。このため、第1エッチング時と異なる形状のレジストパターンを用いて第2エッチングを行うことが可能となる。このように、多階調フォトマスクは、複数枚のフォトマスクに相当する機能をもつフォトマスクとも言えるものであり、主として表示装置の製造に必要なフォトマスクの枚数を低減できるものとして、生産効率の向上に寄与している。
【0018】
上記特許文献1に記載された多階調フォトマスクは、透明基板が露出した透光部、遮光膜を用いた遮光部のほかに、露光光を一部透過する半透光膜を用いた半透光部を備える転写用パターンを有する。したがって、例えば半透光部の光透過率を適宜制御することにより、被転写体上に形成されるレジストパターンの部分的な厚みを制御することができる。
更に、上記特許文献1の多階調フォトマスクは、位相シフト部を備えることにより、位相シフト部に隣接する透光部、又は半透光部との境界における光の干渉効果を利用して、被転写体上に形成される光強度分布を制御し、形成されるレジストパターンの側壁の傾斜を抑えることを意図している。このようなフォトマスクを用いれば、得ようとするデバイス(ディスプレイパネルなど)の製造工程において、上記生産効率の向上に加え、CD(Critical dimension)精度や、生産歩留の向上が期待でき、有利な製造条件を得ることができる。
【0019】
ところで、特許文献1に記載の多階調フォトマスク200は、位相シフタ部111、112を、半透光膜101と位相シフト調整膜102の積層によって形成している。この方法によると、半透光部115に要求される光透過率に従って半透光膜101の材料や膜厚が決定されるところ、更に、この半透光膜101上に積層する位相シフト調整膜102の素材や膜厚を適切に選択することにより、位相シフタ部111、112に求められる光透過率や位相シフト量を達成しなければならない。しかしながら、このようなフォトマスク材料の選択と設計は、必ずしも容易ではない。
【0020】
例えば、半透光部115に求められる光透過率に応じて、半透光膜101の素材と膜厚を決定した場合、この上に積層することによって適切な光学特性(光透過率、位相シフト量)を達成できるような位相シフト調整膜102を探索する必要がある。ただし、個々の膜の光透過率と位相シフト量は、いずれも膜厚に応じて変動するため、これら2つの光学特性をそれぞれ独立に制御することはできない。すなわち、単層の半透光膜101で所望の光透過率をもつ半透光部115を実現し、更に、この半透光膜101と位相シフト調整膜102の積層によって、所望の光透過率と位相シフト量を得る膜材料を用意することは、大きな開発負荷を要する。その上、半透光部115に求められる光透過率は、マスクユーザの適用するプロセスや得ようとする製品によって異なり、多くのバリエーションを用意する必要がある。このため、単膜と積層膜の併用によって、フォトマスクの各仕様を正確に得るための設計は、時には不可能となる場合が生じ得る。
【0021】
単膜と積層膜を併用することによって生じる上記不都合は、必ずしも位相シフトマスクに限らず、2つの半透光膜を用いて、光透過率の異なる第1、第2半透光部をもつ多階調フォトマスクにおいても同様に生じ得る問題である。
【0022】
本発明の目的は、個々の膜がもつ光学特性を、そのままフォトマスクの各部分の特性として生かすことができる表示装置製造用フォトマスクの製造方法、表示装置製造用フォトマスク、及び表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
透明基板上に第1光学膜と第2光学膜がそれぞれパターニングされて形成された転写用パターンを備え、前記転写用パターンは、前記透明基板の表面が露出する透光部、前記透光部と隣接する部分をもつ第1透過制御部、及び前記第1透過制御部と隣接する部分をもつ第2透過制御部とを含み、前記第1透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第1光学膜を有し、前記第2透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第2光学膜を有する、表示装置製造用フォトマスクの製造方法であって、
前記透明基板上に前記第1光学膜及び第1レジスト膜が形成されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト膜に対して第1描画を行い、第1レジストパターンを形成する、第1レジストパターン形成工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして、前記第1光学膜をエッチングし、第1光学
膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、
前記第1光学膜パターンを含む前記透明基板上に前記第2光学膜を形成する工程と、
前記第2光学膜上に第2レジスト膜を形成して第2描画を行い、第2レジストパターンを形成する、第2レジストパターン形成工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして、前記第2光学膜をエッチングし、第2光学膜パターンを形成する、第2パターニング工程と、を含み、
前記第1パターニング工程では、前記第1光学膜のみをエッチングし、
前記第2パターニング工程では、前記第2光学膜のみをエッチングし、かつ、
前記第2レジストパターンは、前記第2透過制御部の形成領域を覆うとともに、前記第2透過制御部のエッジにおいて隣接する前記第1透過制御部側に、所定幅のマージンを加えた寸法を有することを特徴とする、表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記第1光学膜は、Crを含み、
前記第2光学膜は、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含むことを特徴とする、上記第1の態様に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
透明基板上に第1光学膜と第2光学膜がそれぞれパターニングされて形成された転写用パターンを備え、前記転写用パターンは、前記透明基板の表面が露出する透光部、前記透光部と隣接する部分をもつ第1透過制御部、及び前記第1透過制御部と隣接する部分をもつ第2透過制御部とを含み、前記第1透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第1光学膜を有し、前記第2透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第2光学膜を有する、表示装置製造用フォトマスクの製造方法であって、
前記透明基板上に前記第1光学膜、エッチングマスク膜、及び、第1レジスト膜が形成された、フォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト膜に対して第1描画を行い、第1レジストパターンを形成する、第1レジストパターン形成工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして、前記エッチングマスク膜をエッチングし、エッチングマスク膜パターンを形成する工程と、
前記エッチングマスク膜パターンをマスクとして前記第1光学膜をエッチングし、第1光学膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、
前記エッチングマスク膜パターンを除去する工程と、
前記第1光学膜パターンを含む前記透明基板上に前記第2光学膜を形成する工程と、
前記第2光学膜上に第2レジスト膜を形成して第2描画を行い、第2レジストパターンを形成する、第2レジストパターン形成工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして、前記第2光学膜をエッチングし、第2光学膜パターンを形成する、第2パターニング工程と、を含み、
前記第1パターニング工程では、前記第1光学膜のみをエッチングし、
前記第2パターニング工程では、前記第2光学膜のみをエッチングし、かつ、
前記第2レジストパターンは、前記第2透過制御部の形成領域を覆うとともに、前記第2透過制御部のエッジにおいて隣接する第1透過制御部側に、所定幅のマージンを加えた寸法を有することを特徴とする、表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記第1光学膜は、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含み、
前記第2光学膜は、Crを含むことを特徴とする、上記第3の態様に記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
前記第1光学膜と前記第2光学膜は、互いのエッチング剤に対して耐性を有することを特徴とする、上記第1~第4の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する、前記第1光学膜の光透過率をT1とし、位相シフト量をφ1(度)とするとき、
2≦T1≦40
150≦φ1≦210
であることを特徴とする、上記第1~第5の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する前記第1光学膜の表面反射率をSR1とするとき、
2≦SR1≦20
であることを特徴とする、上記第1~第6の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第8の態様)
本発明の第8の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する前記第1光学膜の裏面反射率をBR1とするとき、
2≦BR1≦20
であることを特徴とする、上記第1~第7の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第9の態様)
本発明の第9の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する、前記第2光学膜の光透過率をT2とし、位相シフト量をφ2(度)とするとき、
10≦T2≦60
0<φ2≦90
であることを特徴とする、上記第1~第8の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第10の態様)
本発明の第10の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する前記第2光学膜の表面反射率をSR2とするとき、
2≦SR2≦20
であることを特徴とする、上記第1~第9の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第11の態様)
本発明の第11の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する前記第2光学膜の裏面反射率をBR2とするとき、
2≦BR2≦20
であることを特徴とする、上記第1~第10の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第12の態様)
本発明の第12の態様は、
前記マージン領域の幅をM1(μm)とするとき、
0.2≦M1≦1.0
であることを特徴とする、上記第1~第11の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第13の態様)
本発明の第13の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する、前記第1透過制御部のマージン領域と前記第2透過制御部との位相差δ(度)が、
150≦δ≦210
であることを特徴とする、上記第1~第12の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第14の態様)
本発明の第14の態様は、
前記転写用パターンは、対向する二方向から前記第1透過制御部によって挟まれた第2透過制御部を含み、
前記第2レジストパターンは、前記第2透過制御部の形成領域を覆うとともに、前記第2透過制御部のエッジにおいて隣接する2つの第1透過制御部側に、所定幅のマージンを加えた寸法を有することを特徴とする、上記第1~第13の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第15の態様)
本発明の第15の態様は、
透明基板上に第1光学膜と第2光学膜がそれぞれパターニングされて形成された透光部、第1透過制御部及び第2透過制御部を含む転写用パターンを備えた表示装置製造用フォトマスクであって、
前記転写用パターンは、前記透光部、前記透光部と隣接する部分をもつ第1透過制御部、及び前記第1透過制御部と隣接する部分をもつ第2透過制御部を含み、
前記透光部は、前記透明基板の表面が露出してなり、
前記第1透過制御部においては、前記透明基板上に前記第1光学膜が形成され、
前記第2透過制御部においては、前記透明基板上に前記第2光学膜が形成され、
前記第1透過制御部は、前記第2透過制御部と隣接するエッジに沿った所定幅の部分に、前記第1光学膜と前記第2光学膜が積層する所定幅のマージン領域を有するとともに、前記マージン領域以外の部分に、前記第1光学膜のみが形成されたメイン領域を有する、表示装置製造用フォトマスクである。
(第16の態様)
本発明の第16の態様は、
前記第1光学膜は、Crを含み、
前記第2光学膜は、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含むことを特徴とする、上記第15の態様に記載の表示装置製造用フォトマスクである。
(第17の態様)
本発明の第17の態様は、
前記第1光学膜は、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含み、
前記第2光学膜は、Crを含むことを特徴とする、上記第15の態様に記載の表示装置製造用フォトマスクである。
(第18の態様)
本発明の第18の態様は、
前記第1光学膜と前記第2光学膜は、互いのエッチング剤に対して耐性を有することを特徴とする、上記第15~第17の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマ
スクである。
(第19の態様)
本発明の第19の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する、前記第1光学膜の光透過率をT1とし、位相シフト量をφ1(度)とするとき、
2≦T1≦40
150≦φ1≦210
であることを特徴とする、上記第15~第18の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクである。
(第20の態様)
本発明の第20の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する前記第1光学膜の表面反射率をSR1とするとき、
2≦SR1≦20
であることを特徴とする、上記第15~第19の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第21の態様)
本発明の第21の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する前記第1光学膜の裏面反射率をBR1とするとき、
2≦BR1≦20
であることを特徴とする、上記第15~第20の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第22の態様)
本発明の第22の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する、前記第2光学膜の光透過率をT2(%)とし、位相シフト量をφ2(度)とするとき、
10≦T2≦60
0<φ2≦90
であることを特徴とする、上記第15~第21の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクである。
(第23の態様)
本発明の第23の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する前記第2光学膜の表面反射率をSR2とするとき、
2≦SR2≦20
であることを特徴とする、上記第15~第22の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第24の態様)
本発明の第24の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する前記第2光学膜の裏面反射率をBR2とするとき、
2≦BR2≦20
であることを特徴とする、上記第15~第23の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクの製造方法である。
(第25の態様)
本発明の第25の態様は、
前記マージン領域の幅をM1(μm)とするとき、
0.2≦M1≦1.0
であることを特徴とする、上記第15~第24の態様のいずれか1つに記載の表示装置
製造用フォトマスクである。
(第26の態様)
本発明の第26の態様は、
前記表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長光に対する、前記第1透過制御部のマージン領域と前記第2透過制御部との位相差δ(度)が、
150≦δ≦210
であることを特徴とする、上記第15~第25の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクである。
(第27の態様)
本発明の第27の態様は、
前記転写用パターンは、対向する二方向から前記第1透過制御部によって挟まれた第2透過制御部を含み、前記第1透過制御部と前記第2透過制御部のそれぞれの隣接部分に、前記マージン領域が形成されていることを特徴とする、上記第15~第26の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクである。
(第28の態様)
本発明の第28の態様は、
上記第1~第14の態様のいずれか1つに記載の製造方法による表示装置製造用フォトマスク、又は上記第15~第27の態様のいずれか1つに記載の表示装置製造用フォトマスクを用意する工程と、
露光装置により、前記表示装置製造用フォトマスクのもつ転写用パターンを露光する工程と
を含むことを特徴とする、表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、個々の膜がもつ光学特性を、そのままフォトマスクの各部分の特性として生かすことができるため、設計の自由度が大きい上、設計どおりの特性を忠実に発揮する表示装置製造用フォトマスクを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)~(e)は本発明の第1実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造工程を示す側断面図(その1)である。
【
図2】(f)~(i)は本発明の第1実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造工程を示す側断面図(その2)である。
【
図3】本発明の実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの構成を示す側断面図である。
【
図4】(a)~(f)は本発明の第2実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造工程を示す側断面図(その1)である。
【
図5】(g)~(k)は本発明の第2実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造工程を示す側断面図(その2)である。
【
図6】特許文献1に記載された多階調フォトマスクの構成を示す側断面図である。
【
図7】(a)~(g)は特許文献1に記載された多階調フォトマスクの製造工程を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
<第1実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造方法>
本発明の第1実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造方法は、以下のとおりである。
透明基板上に第1光学膜と第2光学膜がそれぞれパターニングされて形成された転写用
パターンを備え、前記転写用パターンは、前記透明基板の表面が露出する透光部、前記透光部と隣接する部分をもつ第1透過制御部、及び前記第1透過制御部と隣接する部分をもつ第2透過制御部とを含み、前記第1透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第1光学膜を有し、前記第2透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第2光学膜を有する、表示装置製造用フォトマスクの製造方法であって、
前記透明基板上に前記第1光学膜及び第1レジスト膜が形成されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト膜に対して第1描画を行い、第1レジストパターンを形成する、第1レジストパターン形成工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして、前記第1光学膜をエッチングし、第1光学膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、
前記第1光学膜パターンを含む前記透明基板上に前記第2光学膜を形成する工程と、
前記第2光学膜上に第2レジスト膜を形成して第2描画を行い、第2レジストパターンを形成する、第2レジストパターン形成工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして、前記第2光学膜をエッチングし、第2光学膜パターンを形成する、第2パターニング工程と、を含み、
前記第1パターニング工程では、前記第1光学膜のみをエッチングし、
前記第2パターニング工程では、前記第2光学膜のみをエッチングし、かつ、
前記第2レジストパターンは、前記第2透過制御部の形成領域を覆うとともに、前記第2透過制御部のエッジにおいて隣接する前記第1透過制御部側に、所定幅のマージンを加えた寸法を有することを特徴とする、表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【0028】
図1及び
図2は本発明の第1実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造工程を示す側断面図である。
なお、図中のA領域は透光部に対応する領域、B領域は第1透過制御部に対応する領域、C領域は第2透過制御部に対応する領域である。言い換えると、A領域は透光部の形成が予定されている領域、B領域は第1透過制御部の形成が予定されている領域、C領域は第2透過制御部の形成が予定されている領域である。
【0029】
(フォトマスクブランク準備工程)
まず、
図1(a)に示すフォトマスクブランク1を用意する。このフォトマスクブランク1は、透明基板2上に第1光学膜3を形成し、更にその第1光学膜3上に第1レジスト膜4を積層して形成したものである。
【0030】
透明基板2は、石英ガラスなどの透明材料を用いて構成することができる。透明基板2の大きさや厚さに制限はない。フォトマスクブランク1が表示装置の製造に用いられるものであれば、一辺の長さが300~1800mm、厚さが5~16mm程度の四角形の主面をもつ透明基板2を用いることができる。
【0031】
第1光学膜3は、表示装置製造用フォトマスクの露光に用いる露光光(以下、単に「露光光」ともいう。)に対して所定の光透過率を有する半透光膜とすることができる。また、第1光学膜3は、露光光に対して所定の光透過率を有するとともに、透過時に露光光の位相を実質的に反転する位相シフト膜とすることができる。本実施形態においては、第1光学膜3を位相シフト作用のある位相シフト膜とする。
【0032】
位相シフト膜としての第1光学膜3は、露光光に含まれる光の代表波長(例えば、i線、h線、g線のいずれかであって、ここではi線とする。)に対する光透過率T1(%)と、位相シフト量φ1(度)を有するものとする。その場合、露光光の代表波長光に対する第1光学膜3の光透過率T1(%)と位相シフト量φ1(度)は、好ましくは、
2≦T1≦40、
150≦φ1≦210
である。
光透過率T1(%)のより好ましい範囲は、
2≦T1≦10、
更に好ましくは、
3≦T1≦8、
であり、又は、
30≦T1≦40
であってもよい。
また、位相シフト量φ1(度)については、より好ましくは、
165≦φ1≦195
である。
本明細書で記述する膜の光透過率は、透明基板2の光透過率を100%としたときの値である。
また、位相シフト膜としての第1光学膜3は、i線、h線、g線の光に対する位相シフト量の偏差が40度以下であることが好ましい。
【0033】
第1光学膜3の材料は、例えば、Cr、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含有する膜とすることができ、これらの化合物(例えば、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物、酸化窒化炭化物など)から適切なものを選択することができる。特に、Crの化合物を好適に使用することができる。具体的には、Crを含有する膜の場合、Crの酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物のうち、1種又は複数種を含有するものが好ましい。本第1実施形態では、第1光学膜3がCrを含む膜材料、例えば、Cr化合物を含む膜材料で形成されているものとする。また、第1光学膜3は、Siを含有しない膜とすることができる。第1光学膜3を、Siを含有しない膜にすると、第1光学膜3と第1レジスト膜4との密着性が高くなる点で有利になる。
【0034】
第1光学膜3のその他の膜材料としては、Siの化合物(SiONなど)、又は遷移金属シリサイド(MoSiなど)や、その化合物を用いることができる。遷移金属シリサイドの化合物としては、酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物などが挙げられ、好ましくは、MoSiの酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物などが例示される。
第1光学膜3の成膜方法には、例えばスパッタ法など、公知の方法を用いることができる。
更に、第1光学膜3は、フォトマスク露光に用いる露光光の代表波長光に対して、表面反射率SR1の値が、
2≦SR1≦20
であることが好ましい。
また、第1光学膜3の裏面反射率BR1の値が、
2≦BR1≦20
であることが好ましい。
第1光学膜3の表面、及び裏面の光学的な反射率は、第1光学膜3の組成及び膜厚により調整することができる。例えば、上記材料によって第1光学膜3を成膜する際に、第1光学膜3の厚み方向に、連続的又は不連続的に組成が変化する積層構造を採用することよって、表面反射率SR1、及び裏面反射率BR1を上記所望範囲とすることができる。方法としては、例えばスパッタ法あるいはスパッタ装置において、添加するガスの種類や流量を、変化させることにより、厚み方向に組成変化のある膜を形成することが可能である。
これによって、組成変化による屈折率の変化、光吸収の制御、及び薄膜干渉を生じさせ、表面反射率SR1の値、又は裏面反射率BR1を制御することができる。
また、第1光学膜3の表面反射率SR1と裏面反射率BR1は、
2≦SR1/BR1≦10
の関係を満たすことが、より好ましい。
ここで、第1光学膜3の表面とは、第1光学膜3が露出する側の面である。よって、上記表面反射率SR1は、第1光学膜3が第2光学膜5と積層せずに単膜として形成されている部分の反射率である。
また、第1光学膜3の裏面とは、透明基板2が存在する側の面である。よって、上記裏面反射率BR1とは、第1光学膜3が第2光学膜5と積層せずに単膜として形成されている部分について、透明基板2の裏面側から光を入射した場合の反射率である。尚、透明基板2の表面による反射光はここでは除外して考える。
上記のように、第1光学膜3の表面反射率SR1、裏面反射率BR1が抑えられている場合は、描画時の定在波が生じにくく、また、露光時に露光装置内で生じる迷光、フレアを抑制することができる。このため、パターンのCD精度を高く維持することができる。
【0035】
第1レジスト膜4は、EB(electron beam)レジスト、フォトレジストなどを用いて形成することが可能である。ここでは一例としてフォトレジストを用いることとする。第1レジスト膜4は、第1光学膜3上にフォトレジストを塗布することによって形成することができる。フォトレジストはポジ型、ネガ型のいずれでもよいが、ここではポジ型のフォトレジストを用いることとする。第1レジスト膜4の膜厚は、5000~10000Å程度とすることができる。
【0036】
(第1レジストパターン形成工程)
次に、
図1(b)に示すように、第1レジスト膜4をパターニングすることにより、第1レジストパターン4aを形成する。この工程では上記のフォトマスクブランク1に対し、描画装置を用いて所望のパターンを描画(第1描画)する。描画のためのエネルギー線には、電子ビームやレーザビームなどが用いられるが、ここではレーザビーム(波長410~420nm)を用いることとする。フォトマスクブランク1に対し描画を行った後、第1レジスト膜4を現像することにより、第1レジストパターン4aが形成される。第1レジストパターン4aは、第1透過制御部の形成領域(B領域)を覆い、その他の領域(A領域、C領域)に開口をもつ形状とする。
【0037】
(第1パターニング工程)
次に、
図1(c)に示すように、第1レジストパターン4aをマスクとして第1光学膜3をエッチングすることにより、第1光学膜パターン3aを形成する。このとき、第1レジストパターン4aの開口部に露出している第1光学膜3がエッチングによって除去される。第1光学膜3のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。上記のフォトマスクブランク1ではCr化合物からなる膜で遮光膜3を形成しているため、Cr用のエッチング液を用いたウェットエッチングを好適に適用することができる。これにより、透明基板2上の第1光学膜3がパターニングされて第1光学膜パターン3aが形成される。
【0038】
第1パターニング工程でエッチングの対象となるのは第1光学膜3のみである。また、第1パターニング工程より後の工程には、第1光学膜3をエッチングする工程が存在しない。このため、第1光学膜パターン3aの形状はこの段階で画定する。したがって、本実施形態の製造方法によって得られる表示装置製造用フォトマスクの、第1透過制御部の領域は、第1パターニング工程で画定する。
【0039】
なお、ウェットエッチングは、膜断面にわずかなサイドエッチングを生じさせる場合があるが、図面ではその点を省略している。このわずかなサイドエッチングがCD精度に与える影響を考慮する必要がある場合は、上記の描画装置を用いて描画する際に予め描画データにデータ加工を施しておくとよい。具体的には、サイドエッチングによるパターン寸
法の減少分を相殺するように、第1レジストパターン4aの開口寸法を小さくしておけばよい。
【0040】
(第1レジスト剥離工程)
次に、
図1(d)に示すように、第1レジストパターン4aを剥離する。これにより、第1光学膜パターン3a付きの透明基板2が得られる。
【0041】
(第2光学膜形成工程)
次に、
図1(e)に示すように、第1光学膜パターン3aを含む透明基板2上に第2光学膜5を形成する。第2光学膜5は、透明基板2の転写用パターン形成領域全体に所定の成膜方法により形成する。第2光学膜5の成膜方法としては、上記の第1光学膜3と同様に、スパッタ法などの公知の方法を適用することができる。
【0042】
第2光学膜5は、露光光に対して所定の光透過率を有する半透光膜とすることができる。また、第2光学膜5は、露光光に対して所定の光透過率を有するとともに、透過時に露光光の位相を実質的に反転する位相シフト膜とすることができる。更にまた、第2光学膜5は、露光光に対する位相シフト量が低い、低位相半透光膜とすることができる。なお、本明細書では低位相半透光膜を、単に半透光膜ともいう。第2光学膜5は、これを位相シフト膜とするか、或いは低位相半透光膜とするかによって、好ましい光学特性が以下のとおり異なる。
【0043】
すなわち、位相シフト膜としての第2光学膜5は、露光光に含まれる光の代表波長(例えば、i線、h線、g線のいずれかであって、ここではi線とする。)に対する光透過率T2(%)と、位相シフト量φ2(度)を有するものとする。その場合、露光光の代表波長光に対する第2光学膜5の光透過率T2(%)と位相シフト量(度)は、好ましくは、2≦T2≦10、150≦φ2≦210であり、より好ましくは、3≦T2≦8、165≦φ2≦195である。
また、位相シフト膜としての第2光学膜5は、上記第1光学膜3と同様に、i線、h線、g線の光に対する位相シフト量の偏差が40度以下であることが好ましい。
【0044】
これに対して、低位相半透光膜としての第2光学膜5は、露光光の代表波長光に対する、第2光学膜5の光透過率をT2とし、位相シフト量をφ2(度)とするとき、好ましくは、10≦T2≦60、0<φ2≦90であり、より好ましくは、20≦T2≦50、5<φ2≦60である。
【0045】
また、低位相半透光膜としての第2光学膜5は、i線~g線の波長領域における光透過率の偏差が0~8%であることが好ましい。ここで記述する第2光学膜5の光透過率の偏差は、i線に対する透過率をTi(%)、g線に対する透過率をTg(%)とするときの、TiとTgの差の絶対値である。
【0046】
したがって、これらの条件を満たすように、第2光学膜5の膜質及び膜厚を調整することが好ましい。第2光学膜5の膜厚は、所望する光透過率によって変化し、概ね50~500Åの範囲とすることができる。本第1実施形態では、第2光学膜5を低位相半透光膜とする。
【0047】
第2光学膜5の材料は、例えば、Cr、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含有する膜とすることができ、これらの化合物(例えば、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物、酸化窒化炭化物など)から適切なものを選択することができる。
第2光学膜5のその他の膜材料としては、Siの化合物(SiONなど)、又は遷移金
属シリサイド(MoSiなど)や、その化合物を用いることができる。遷移金属シリサイドの化合物としては、酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物などが挙げられ、好ましくは、MoSiの酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物などが例示される。
【0048】
第1光学膜3と第2光学膜5は、互いのエッチング剤に対して耐性を有する材料とすることが好ましい。すなわち、第1光学膜3と第2光学膜5は、互いにエッチング選択性をもつ材料とすることが望ましい。例えば、第1光学膜3がCrを含む膜である場合は、第2光学膜5膜はSi、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含む膜とする。
例えば、第1光学膜3と第2光学膜5は、一方をCr含有材料、他方をSi含有材料とする組み合わせが好適である。具体的には、第1光学膜3にCr含有材料を用いた場合は、第2光学膜5にSi含有材料を用いることが好ましく、第1光学膜3にSi含有材料を用いた場合は、第2光学膜5にCr含有材料を用いることが好ましい。本第1実施形態では、第1光学膜3にCr化合物を用いているため、第2光学膜5にMoSi化合物を用いることとする。
第2光学膜5についても、第1光学膜3と同様に、フォトマスク露光に用いる露光光の代表波長光に対して、表面反射率SR2の値が、
2≦SR2≦20
であることが好ましい。
また、第2光学膜5の裏面反射率BR2の値が、
2≦BR2≦20
であることが好ましい。
第2光学膜5の表面反射率SR2、裏面反射率BR2を調整する手段は、第1光学膜3の場合と同様である。
また、第2光学膜5の表面反射率SR2と裏面反射率BR2は、
2≦SR2/BR2≦10
の関係を満たすことが、より好ましい。
ここで、第2光学膜5の表面とは、第2光学膜5が露出する側の面である。よって、上記表面反射率SR2は、第2光学膜5が第1光学膜3と積層せずに単膜として形成されている部分の反射率である。
また、第2光学膜5の裏面とは、透明基板2が存在する側の面である。よって、上記裏面反射率BR2とは、第2光学膜5が第1光学膜3と積層せずに単膜として形成されている部分について、透明基板2の裏面側から光を入射した場合の反射率である。尚、透明基板2の表面による反射光はここでは除外して考える。
第2光学膜5についても、第1光学膜3と同様に、表面反射率SR2、裏面反射率BR2が抑えられている場合は、描画時の定在波が生じにくく、また、露光時に露光装置内で生じる迷光、フレアを抑制することができる。このため、パターンのCD精度を高く維持することができる。
【0049】
(第2レジスト膜形成工程)
次に、
図2(f)に示すように、第2光学膜5上に第2レジスト膜6を積層して形成する。第2レジスト膜6は、上記第1レジスト膜4と同様に、フォトレジストを塗布することによって形成することができる。
【0050】
(第2レジストパターン形成工程)
次に、
図2(g)に示すように、第2レジスト膜6をパターニングすることにより、第2レジストパターン6aを形成する。この工程ではフォトマスクブランク1に対し、上記第1描画と同様に、描画装置を用いて所望のパターンを描画(第2描画)した後、第2レジスト膜6を現像することにより、第2レジストパターン6aを形成する。
【0051】
第2レジストパターン6aは、表示装置製造用フォトマスクの透光部を形成するためのレジストパターンであって、透光部に対応する領域(A領域)に開口を有する。また、第2レジストパターン6aは、第2透過制御部の形成領域(C領域)を覆うとともに、第2透過制御部のエッジにおいて隣接する2つの第1透過制御部(B領域)側に、所定幅のマージンを加えた寸法を有する。この所定幅のマージンの部分をマージン領域とし、このマージン領域の幅をM1(μm)とすると、好ましくは、0.2≦M1≦1.0であり、より好ましくは、0.2≦M1≦0.8である。
【0052】
マージン領域の幅M1の寸法は、第1レジストパターン3aと第2レジストパターン6aの間で生じ得るアライメントずれ量を考慮して決定することができる。すなわち、FPD(Flat Panel Display)用などの描画装置を用いて、同じ透明基板を対象に、2回以上の描画を施す場合、各回の基板の位置合わせはアライメントマークを用いて正確に行うが、各回で基板の位置を完全に一致させることは困難であり、相対的なアライメントずれがある程度は生じることは避けられない。これに対し、製造工程で生じ得るアライメントずれ量を考慮してマージンの幅M1を設定しておくことにより、パターン精度が維持される。なお、上記のマージンについては後段で更に述べる。
【0053】
(第2パターニング工程)
次に、
図2(h)に示すように、第2レジストパターン6aをマスクとして、第2レジストパターン6aの開口部に露出している第2光学膜5をエッチングすることにより、第2光学膜パターン5aを形成する。このとき、エッチングの対象となるのは第2光学膜5のみである。これにより、透光部に対応する領域(A領域)には、透明基板2上の第2光学膜5がエッチングによって除去されることで、透明基板2の表面を露出してなる透光部が形成される。また、第1透過制御部に対応する領域(B領域)においては、マージン領域以外の領域(メイン領域)で第2光学膜5がエッチングによって除去される。この工程でもエッチング液を用いたウェットエッチングを好適に適用することができる。この場合、露光光の代表波長光に対する、第1透過制御部のマージン領域と、第2透過制御部(C領域)との位相差δ(度)が、150≦δ≦210であることが好ましい。
【0054】
(第2レジスト剥離工程)
次に、
図2(i)に示すように、第2レジストパターン6aを剥離する。
【0055】
以上の工程により、表示装置製造用フォトマスク9が完成する。
【0056】
上述した表示装置製造用フォトマスクの製造工程には2回のエッチング工程が含まれるが、いずれのエッチング工程でもエッチングの対象となるのは一つの膜のみである。すなわち、本実施形態においては、第1光学膜3と第2光学膜5を積層した状態で、これら2つの膜を同一のエッチング剤によって連続的にエッチングすることはない。
仮に、積層構造をなす2つの膜を同一のエッチング剤によって連続的にウェットエッチングすると、エッチング時間が相対的に長くなり、サイドエッチングの量も多くなりやすい。サイドエッチングは、形成されるパターンのCD(Critical dimension)に影響を及ぼす。サイドエッチングに関しては、予め描画データにサイジングを施すなどの対応をとることにより、CDの細りを軽減することができる。ただし、その場合でも、サイドエッチングの量が多くなることに伴って生じる、面内のCDばらつきを解消することは難しい。この点、本実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造方法では、第1光学膜3と第2光学膜5の積層部分を連続的にエッチングする工程をもたないため、最終的に形成される転写用パターンのCD精度を高く維持できるメリットがある。
【0057】
<実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの構成>
続いて、本発明の実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの構成について、
図3を
用いて説明する。
図示した表示装置製造用フォトマスク9は、透明基板2上に第1光学膜3と第2光学膜5がそれぞれパターニングされて形成された透光部10、第1透過制御部11及び第2透過制御部12を含む転写用パターンを備える。この転写用パターンは、透光部10、透光部10と隣接する部分をもつ第1透過制御部11、及び第1透過制御部11と隣接する部分をもつ第2透過制御部12を含む。透光部10は、透明基板2の表面が露出した部分になっている。第1透過制御部11においては、透明基板2上に第1光学膜3が形成されている。第2透過制御部12においては、透明基板2上に第2光学膜5が形成されている。また、第1透過制御部11は、第2透過制御部12と隣接するエッジに沿った所定幅の部分に、第1光学膜3と第2光学膜5が積層する所定幅のマージン領域13を有するとともに、マージン領域13以外の部分に、第1光学膜3のみが形成されたメイン領域14を有する。
【0058】
ここで、本実施形態に係る表示装置製造用フォトマスク9において、第1透過制御部11のマージン領域13の幅をM1(μm)とすると、好ましくは、0.2≦M1≦1.0であり、より好ましくは、0.2≦M1≦0.8である。第1透過制御部11において、マージン領域13には、第1光学膜3上に第2光学膜5が積層して形成され、マージン領域13以外の領域であるメイン領域14では、透明基板2上に第1光学膜3のみが形成されている。
第2透過制御部12には、透明基板2上に第2光学膜5のみが形成されている。
【0059】
表示装置製造用フォトマスク9の転写用パターンは、対向する二方向から第1透過制御部11によって挟まれた第2透過制御部12を含んでいる。そして、上記のマージン領域13は、第1透過制御部11と第2透過制御部12のそれぞれの隣接部分に形成されている。
【0060】
本実施形態においては、上述のとおり、第1光学膜3が位相シフト膜、第2光学膜5が低位相半透光膜になっている。この場合、露光光の代表波長光に対する第1透過制御部11の光透過率T1は、好ましくは、
2≦T1≦40
であり、
より好ましくは、
2≦T1≦10、
更に好ましくは、3≦T1≦8、
又は、30≦T1≦40
である。
【0061】
第1透過制御部11を透過した露光光は、被転写体上に形成されたレジスト膜を実質的に感光しないことが好ましい。すなわち、第1透過制御部11は、フォトマスクにおいて遮光部に類似する機能を奏することが好ましい。
【0062】
更にその場合、露光光の代表波長光に対する第1光学膜3の位相シフト量φ1(度)は、好ましくは150≦φ1≦210である。これにより、第1透過制御部11と透光部10との隣接部分(
図3のPの部分)では、双方を透過する露光光の位相がほぼ反転する関係となり、この反対位相の光が互いに干渉することで、透過光の強度が低下する。その結果、パターンのコントラストを向上させることが可能となる、いわゆる位相シフト効果を得ることができる。したがって、被転写体上に形成されるレジストパターンの側面形状の傾斜(倒れ)を低減し、被転写体の表面に対して垂直に近い側面形状をもつレジストパターンとすることができる。
更に、上記で述べたとおり、第1光学膜3は、フォトマスク露光に用いる露光光の代表
波長光に対して、表面反射率SR1の値が、
2≦SR1≦20
であることが好ましい。
また、第1光学膜3の裏面反射率BR1の値が、
2≦BR1≦20
であることが好ましい。
また、第1光学膜3の表面反射率SR1と裏面反射率BR1は、
2≦SR1/BR1≦10
の関係を満たすことが、より好ましい。
【0063】
また、第2光学膜5が低位相半透光膜である場合、露光光の代表波長光に対する、第2光学膜5の光透過率T2(%)と位相シフト量φ2(度)は、好ましくは、10≦T2≦60、0<φ2≦90である。
【0064】
一方、第1透過制御部11と第2透過制御部12の隣接部分(
図3のQの部分)でも、双方を透過する露光光の位相は、ほぼ反転する関係となる。なお、Qの部分では第1光学膜3上に第2光学膜5が積層し、それらの膜どうしが接触する界面の部分では、膜材料によって、そこを透過する光の位相にずれが生じることがあり得る。このため、第1透過制御部11においては、マージン領域13と第2透過制御部12の相互の位相差を正確に予測することは難しい。しかしながら、マージン領域13と第2透過制御部12の露光光に対する位相差を略180度とすることは可能であり、この位相差δを、好ましくは150≦δ≦210とし、ここでも光の干渉を生じさせ、コントラスト向上の効果を得ることができる。
【0065】
上述した第1光学膜3による位相シフト効果は、いずれも、本実施形態に係る表示装置製造用フォトマスク9を用いて、その転写用パターンを被転写体に転写することにより得ようとするデバイスの精度や歩留を高く維持することに寄与する。
【0066】
したがって、マージン領域13の幅M1は、アライメントずれを吸収する寸法とする以外に、第1光学膜3によって得られる位相シフト効果を勘案して設計することが好ましい。マージン領域13の幅M1は、好ましくは0.5≦M1≦1.0とすることができる。
【0067】
また、第2光学膜5を低位相半透光膜とし、これによって第2透過制御部12を低位相半透光部とした場合、本実施形態の表示装置製造用フォトマスク9は、多階調フォトマスクとして機能することができる。すなわち、被転写体上に形成されたレジスト膜(ここではポジ型レジストと仮定する)に対して、本実施形態の表示装置製造用フォトマスク9が備える転写用パターンの透過光は、透光部10、第1透過制御部11、第2透過制御部12でそれぞれ異なる強度となる。このため、表示装置製造用フォトマスク9を用いて被転写体上のレジスト膜を露光した後、現像すると、レジスト残膜のない部分と、レジスト残膜が所定量ある部分と、レジスト残膜が該所定量より薄い部分とを有するレジストパターンを形成することができる。更に、第1光学膜3の位相シフト作用により、側面形状の傾斜が少ない、有利な形状のレジストパターンとすることができる。
第2光学膜5についても、第1光学膜3と同様に、フォトマスク露光に用いる露光光の代表波長光に対して、表面反射率SR2の値が、
2≦SR2≦20
であることが好ましい。
また、第2光学膜5の裏面反射率BR2の値が、
2≦BR2≦20
であることが好ましい。
また、第2光学膜5の表面反射率SR2と裏面反射率BR2は、
2≦SR2/BR2≦10
の関係を満たすことが、より好ましい。
【0068】
表示装置製造用フォトマスク9の転写用パターンにおいて、パターン線幅(CD)は、1.5μm以上の場合が多い。そこで、例えば第1透過制御部11の寸法をCD1(μm)とし、CD1≧3であるとすると、マージン領域13の幅M1は、メイン領域14の寸法2に比べて十分に小さいものとなり、好ましい。
【0069】
本実施形態の表示装置製造用フォトマスク9において、第1透過制御部11の寸法CD1は、好ましくは、CD1≧5である。すなわち、表示装置製造用フォトマスク9の第1透過制御部11は、大半の部分(メイン領域14)が、透明基板2上に形成された第1光学膜3のみにより形成され、第2透過制御部12は、透明基板2上に形成された第2光学膜5のみによって形成される。したがって、表示装置製造用フォトマスク9となったときに、各膜の備える光学特性(透過率、位相シフト量)をそのまま発揮させることができる。すなわち、第1光学膜3、第2光学膜5といった、個々の膜がもつ光学特性を、そのままフォトマスクの各部分の特性として生かすことができる。このため、設計の自由度が大きい上、設計どおりの特性を忠実に発揮する表示装置製造用フォトマスク9を実現することができる。
【0070】
<第2実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造方法>
本発明の第2実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造方法は、以下のとおりである。
透明基板上に第1光学膜と第2光学膜がそれぞれパターニングされて形成された転写用パターンを備え、前記転写用パターンは、前記透明基板の表面が露出する透光部、前記透光部と隣接する部分をもつ第1透過制御部、及び前記第1透過制御部と隣接する部分をもつ第2透過制御部とを含み、前記第1透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第1光学膜を有し、前記第2透過制御部には、前記透明基板上に形成された前記第2光学膜を有する、表示装置製造用フォトマスクの製造方法であって、
前記透明基板上に前記第1光学膜、エッチングマスク膜、及び、第1レジスト膜が形成された、フォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト膜に対して第1描画を行い、第1レジストパターンを形成する、第1レジストパターン形成工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして、前記エッチングマスク膜をエッチングし、エッチングマスク膜パターンを形成する工程と、
前記エッチングマスク膜パターンをマスクとして前記第1光学膜をエッチングし、第1光学膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、
前記エッチングマスク膜パターンを除去する工程と、
前記第1光学膜パターンを含む前記透明基板上に前記第2光学膜を形成する工程と、
前記第2光学膜上に第2レジスト膜を形成して第2描画を行い、第2レジストパターンを形成する、第2レジストパターン形成工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして、前記第2光学膜をエッチングし、第2光学膜パターンを形成する、第2パターニング工程と、を含み、
前記第1パターニング工程では、前記第1光学膜のみをエッチングし、
前記第2パターニング工程では、前記第2光学膜のみをエッチングし、かつ、
前記第2レジストパターンは、前記第2透過制御部の形成領域を覆うとともに、前記第2透過制御部のエッジにおいて隣接する第1透過制御部側に、所定幅のマージンを加えた寸法を有することを特徴とする、表示装置製造用フォトマスクの製造方法。
【0071】
図4及び
図5は本発明の第2実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造工程を示す側断面図である。
この第2実施形態においては、上記第1実施形態と相対応する部分に同じ符号を付して説明する。
【0072】
(フォトマスクブランク準備工程)
まず、
図4(a)に示すフォトマスクブランク1を用意する。このフォトマスクブランク1は、透明基板2上に第1光学膜3及びエッチングマスク膜7を順に積層して形成し、更にそのエッチングマスク膜7の上に第1レジスト膜4を積層して形成したものである。第1実施形態との違いは、エッチングマスク膜7が形成されている点である。
【0073】
第2実施形態のフォトマスクブランク1に適用する透明基板2は、第1実施形態1と同様である。
第1光学膜3は、第1実施形態と同様に、露光光に対して所定の光透過率を有する半透光膜とすることができる。また、第1光学膜3は、露光光に対して所定の光透過率を有するとともに、透過時に露光光の位相を実質的に反転する位相シフト膜とすることができる。
本第2実施形態においても、第1光学膜3を位相シフト作用のある位相シフト膜とする。また、第1光学膜3の表面反射率SR1、裏面反射率BR1については、第1実施形態と同様である。
【0074】
第1光学膜3は、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含有する膜とすることができ、これらの化合物(例えば、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物、酸化窒化炭化物など)から適切なものを選択することができる。
特に、第1光学膜3の好ましい材料として、Siの化合物(SiONなど)、又は遷移金属シリサイド(MoSiなど)や、その化合物を用いることができる。遷移金属シリサイドの化合物としては、酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物などが挙げられ、好ましくは、MoSiの酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物などが例示される。本第2実施形態においては、第1光学膜3がSiを含む膜材料、例えば、MoSiを含む膜材料で形成されているものとする。
【0075】
エッチングマスク膜7は、第1光学膜3との間で、互いのエッチング剤に対して耐性を有する材料で形成することが好ましい。すなわち、エッチングマスク膜7と第1光学膜3は、互いにエッチング選択性のある材料で形成することが好ましい。
【0076】
本第2実施形態では、Siを含む膜で第1光学膜3を形成しているため、これとエッチング選択性のある材料として、例えばCrを含む膜材料でエッチングマスク膜7を形成することができる。具体的には、エッチングマスク膜7は、Crの化合物、例えば、Crの酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物のうち、1種又は複数種を含有するものが好ましい。この場合、エッチングマスク膜7は、Siを含有しない膜とすることができる。エッチングマスク膜7を、Siを含有しない膜にすると、Siを含有する場合に比べて、第1レジスト膜4との密着性が高くなる点で有利になる。すなわち、エッチングマスク膜とレジスト膜との密着性は、第1光学膜3とレジスト膜との密着性よりも大きいことが好ましい。
【0077】
第1レジスト膜4については、上記第1実施形態と同様である。
【0078】
(第1レジストパターン形成工程)
次に、
図4(b)に示すように、第1レジスト膜4をパターニングすることにより、第1レジストパターン4aを形成する。この工程では上記のフォトマスクブランク1に対し、描画装置を用いて所望のパターンを描画(第1描画)する。描画に用いるエネルギー線は、上記第1実施形態と同様である。フォトマスクブランク1に対し描画を行った後、現
像することにより、第1レジストパターン4aが形成される。第1レジストパターン4aは、第1透過制御部の形成領域(B領域)を覆い、その他の領域(A領域、C領域)に開口をもつ形状とする。
【0079】
(エッチングマスク膜パターン形成工程)
次に、
図4(c)に示すように、第1レジストパターン4aをマスクとしてエッチングマスク膜7をエッチングすることにより、エッチングマスク膜パターン7aを形成する。このとき、第1レジストパターン4aの開口部に露出しているエッチングマスク膜7がエッチングによって除去される。エッチングマスク膜7のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。本実施形態では、Crを含有する膜でエッチングマスク膜7を形成しているため、Cr用のエッチング液を用いたウェットエッチングを好適に適用することができる。
【0080】
(第1パターニング工程)
次に、先の工程とはエッチング剤を替えて、
図4(d)に示すように、エッチングマスク膜パターン7aをマスクとして第1光学膜3をエッチングすることにより、第1光学膜パターン3aを形成する。このとき、エッチングマスク膜パターン7aの開口部に露出している第1光学膜3がエッチングによって除去される。本実施形態では、Siを含有する膜(例えば、MoSi含有膜)で第1光学膜3を形成しているため、フッ酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングを好適に適用することができる。
第1パターニング工程では、上記第1実施形態と同様に、第1光学膜3のみをエッチングの対象とするため、第1光学膜パターン3aの形状や第1透過制御部の領域はこの段階で画定する。
【0081】
(第1レジスト剥離工程)
次に、
図4(e)に示すように、第1レジストパターン4aを剥離する。第1レジストパターン4aの剥離は、エッチングマスク膜パターン7aを形成した後で、かつ、第1光学膜3のエッチングを行う前に行ってもよい。
【0082】
(エッチングマスク膜パターン除去工程)
次に、
図4(f)に示すように、エッチングマスク膜パターン7aを除去する。これにより、第1光学膜パターン3a付きの透明基板2が得られる。
【0083】
(第2光学膜形成工程)
次に、
図5(g)に示すように、第1光学膜パターン3aを含む透明基板2上に第2光学膜5を形成する。第2光学膜5は、上記第1実施形態と同様、スパッタ法などの公知の方法を適用して、透明基板2上の、転写用パターン形成領域全体に形成する。
【0084】
本第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様に、第2光学膜5を低位相半透光膜とする。また、第2光学膜5の表面反射率SR2、裏面反射率BR2については、第1実施形態と同様である。
【0085】
第2光学膜5は、例えば、Cr、Si、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含有する膜とすることができ、これらの化合物(例えば、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物、酸化窒化炭化物など)から適切なものを選択することができる。
ただし、第1光学膜3と第2光学膜5は、互いのエッチング剤に対して耐性を有する材料で形成することが好ましい。すなわち、第1光学膜3と第2光学膜5は、互いにエッチング選択性をもつ材料とすることが望ましい。例えば、第1光学膜3がSi、Mo、Ni、Ta、Zr、Al、Ti、Nb、Hfのいずれかを含む膜である場合は、第2光学膜5
はそれと異なる材料であるCrを含む膜とする。
したがって、例えば第1光学膜3にSi含有材料を用いた場合は、第2光学膜5にCr含有材料を用いることが好ましい。具体例を挙げると、第1光学膜3にMoSi含有材料を用いた場合は、第2光学膜5にCr化合物を用いることが好ましい。
【0086】
以降は、上記第1実施形態と同様に、第2レジスト膜形成工程(
図5(h))、第2レジストパターン形成工程(
図5(i))、第2パターニング工程(
図5(j))、第2レジスト剥離工程(
図5(k))を順に行うことにより、表示装置製造用フォトマスク9が完成する。
【0087】
本記第2実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造方法においては、第1レジスト剥離工程(
図4(e))後のエッチングマスク膜パターン除去工程(
図4(f))でエッチングマスク膜パターン7aを除去しているが、これに限らない。例えば、第1レジスト剥離工程(
図4(e))の後にフォトリソグラフィ工程を追加することにより、エッチングマスク膜パターン7aの一部を残し、それをパターニングに用いても良い。具体的には、例えば、エッチングマスク膜7を遮光膜とし、これを上記フォトリソグラフィ工程でパターニングすることにより、転写用パターン以外の領域(フォトマスクの外縁近傍など)に、マークパターンなどを形成してもよい。もちろん、転写用パターン内の特定部分に、エッチングマスク膜パターン7aの一部を残留させてもよい。
【0088】
また、本第2実施形態に係る表示装置製造用フォトマスクの製造方法では、上記第1実施形態と重複する説明を省略している。したがって、第1実施形態に係る製造方法で記述した内容のうち、特に支障がないものについては、第2実施形態にも同様に適用されるものとする。
また、本発明の実施形態に係る表示装置製造用フォトマスク9(
図3)は、上記第1実施形態に係る製造方法、又は上記第2実施形態に係る製造方法のいずれによって製造してもよい。
【0089】
本発明の実施形態に係る表示装置製造用フォトマスク9において、第1透過制御部11は、マージン領域13を除き、透明基板2上に第1光学膜3のみが形成され、第2透過制御部12は、透明基板2上に第2光学膜5のみが形成されている。このため、第1透過制御部11のメイン領域14では、第1光学膜3のもつ光学特性が発揮され、第2透過制御部12では、第2光学膜5のもつ光学特性が発揮される。
【0090】
また、第1透過制御部11と第2透過制御部12とが隣接する部分において、第1透過制御部11側のエッジ部分となるマージン領域13には、第1光学膜3と第2光学膜5による細幅の積層部分が存在する。ただし、この積層部分は実質的に遮光部として機能する部分であるため、積層による光透過率の低下は問題にならず、上述した位相シフト効果によって光強度分布のシャープな変化が得られるメリットがある。
【0091】
また、表示装置製造用フォトマスク9を得るためのフォトマスクブランク1は、第1実施形態では透明基板2上に第1光学膜3及び第1レジスト膜4が形成され、第2実施形態では透明基板2上に第1光学膜3、エッチングマスク膜7及び第1レジスト膜4が形成された構成となっている。ただし、いずれの実施形態においても、最終的に転写用パターンを形成する光学膜となるのは、透明基板2上に形成された第1光学膜3のみである。したがって、上記実施形態で述べたように、第1光学膜3を位相シフト膜とすることが有利である。その理由は次のとおりである。一般に、半透光膜(低位相半透光膜)は、様々な光透過率のものが市場の要求としてあり得るため、予め製造しておくことができない。これに対して、位相シフト膜は、市場で要求される仕様がほぼ一定している。このため、本発明の実施形態のように、第1光学膜3を位相シフト膜として透明基板2上に形成したフォ
トマスクブランク1を予め用意しておくことにより、生産効率が高くなり、短納期でマスクユーザの需要に応えることができる。
【0092】
また、本発明の実施形態に係る表示装置製造用フォトマスク9の製造方法によれば、第1光学膜3と第2光学膜5が、それぞれ単一の膜をエッチングする工程によってパターニングされる。つまり、第1光学膜3と第2光学膜5とを積層した2つの膜を同一のエッチング剤で連続的にエッチングする工程がない。このため、CD精度が十分に高い転写用パターンを形成することができる。
【0093】
更に、本発明の実施形態に係る製造方法によって得られる表示装置製造用フォトマスク9は、第2透過制御部12に隣接する第1透過制御部11のエッジにおいて、位相シフト効果によるコントラスト向上が得られる一方、エッジ以外の部分においては、単一の膜について設計された光学特性がそれぞれ正確に発揮されるメリットがある。
【0094】
本発明の実施形態に係る表示装置製造用フォトマスク9は、表示装置などの製造において、使用するフォトマスクの枚数を少なくする多階調フォトマスクとして有用である上に、被転写体上に形成されるレジストパターンの形状が、上記位相シフト効果によって側面傾斜の少ない形状になるという利点がある。このため、表示装置のTFT(Thin Film Transistor)レイヤなどに有用である。
こうした用途においては、対向する二方向から第1透過制御部11によって第2透過制御部12を挟む形の転写用パターンが利用される。このような転写用パターンにおいては、特に、位相シフト効果により高いコントラストでレジストパターンの側面形状を形成することができるため、有効である。また、第1透過制御部11によって、第2透過制御部12を囲む形の転写パターンに、本発明を適用することもできる。
もちろん、カラーフィルタ等に使用される、感光性樹脂による立体形状を形成する(フォトスペーサなど)用途に供しても構わない。
【0095】
また本発明は、上記第1実施形態又は第2実施形態の製造方法による表示装置製造用フォトマスク9、又は上記実施形態の表示装置製造用フォトマスク9を用意する工程と、露光装置により、表示装置製造用フォトマスク9のもつ転写用パターンを露光する工程と、を含む、表示装置の製造方法として実現してもよい。表示装置の製造方法では、表示装置製造用フォトマスク9を多階調フォトマスクとして使用することが好ましい。その場合は、露光装置に取り付けた表示装置製造用フォトマスク9を通して、被転写体上のフォトレジスト膜を露光することにより、表示装置製造用フォトマスク9の転写用パターンを被転写体に転写する。これにより、被転写体上には、透光部10、第1透過制御部11及び第2透過制御部12の光透過率の違いにより、複数の残膜厚をもつ立体形状のレジストパターンを形成することができる。このような工程を含む表示装置の製造方法に、表示装置製造用フォトマスク9は有利に用いられる。
【0096】
本発明の表示装置製造用フォトマスクは、LCD(Liquid Crystal Display)用、或いはFPD(Flat Panel Display)用として知られる露光装置を用いた露光に好適に使用することができる。この種の露光装置としては、例えば、i線、h線、g線のいずれかを露光光とし、また、好ましくはi線、h線、g線のすべてを含む露光光を用い、開口数(NA)が0.08~0.15、コヒーレントファクタ(σ)が0.7~0.9程度の等倍光学系をもつ、プロジェクション露光装置が用いられる。もちろん、本発明の表示装置製造用フォトマスクは、プロキシミティ露光用のフォトマスクとしても使用可能である。
【0097】
本発明の表示装置製造用フォトマスクは特に、液晶表示装置、有機EL表示装置などを含む表示装置の製造用として好適である。また、本発明の表示装置製造用フォトマスクは、これら表示装置の様々な部位(コンタクトホール、薄膜トランジスタのS(Source)/
D(Drain)レイヤ、カラーフィルタのフォトスペーサ用レイヤなど)の形成に使用可能である。
【0098】
また、本発明の表示装置製造用フォトマスクは、本発明の作用効果を奏する範囲で、第1光学膜3や第2光学膜5のほかに、追加の膜や膜パターンを有するものでもよい。例えば、透明基板2の表面(転写用パターン面)側、又は裏面側に、光学フィルタ膜、導電膜、絶縁膜、反射防止膜などを配置してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…フォトマスクブランク
2…透明基板
3…第1光学膜
3a…第1光学膜パターン
4…第1レジスト膜
4a…第1レジストパターン
5…第2光学膜
5a…第2光学膜パターン
6…第2レジスト膜
6a…第2レジストパターン
7…エッチングマスク膜
7a…エッチングマスク膜パターン
9…表示装置製造用フォトマスク
10…透光部
11…第1透過制御部
12…第2透過制御部
13…マージン領域
14…メイン領域