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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】電池制御システムおよび鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220215BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20220215BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220215BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220215BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20220215BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20220215BHJP
   B60L 50/16 20190101ALN20220215BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/04 L
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H01M10/48 301
B60L50/60 ZHV
B60L58/13
B60L50/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020505669
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2019004015
(87)【国際公開番号】W WO2019176377
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2018047483
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】山本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩二
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-227017(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108249(WO,A1)
【文献】特開2000-312404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/04
H01M 10/48
H01M 10/44
B60L 50/60
B60L 58/13
B60L 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧とSOC(State Of Charge)との関係においてヒステリシス特性を有するニッケル水素電池の充放電を制御する電池制御システムであって、
前記SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲に関する情報を記憶するメモリと、
前記複数のSOCの使用範囲のうちの1つを選択し、前記選択したSOCの使用範囲に応じて、前記ニッケル水素電池の充放電の制御を行う制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
温度センサが検出した前記ニッケル水素電池の温度に関する情報を受け取り、
前記ニッケル水素電池の温度に応じて、前記複数のSOCの使用範囲の中から選択するSOCの使用範囲を変更し、
前記複数のSOCの使用範囲は、第1の使用範囲および第2の使用範囲を含み、
前記第1の使用範囲のSOCの上限は、前記第2の使用範囲のSOCの上限よりも大きく、
前記第2の使用範囲のSOCの下限は、前記第1の使用範囲のSOCの下限よりも小さく、
前記制御回路は、
前記SOCの使用範囲を前記第1の使用範囲から前記第2の使用範囲に変更する場合、前記第2の使用範囲のSOCの下限まで前記ニッケル水素電池を放電させる制御を行い、
前記SOCの使用範囲を前記第2の使用範囲から前記第1の使用範囲に変更する場合、前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電する制御を行う、電池制御システム。
【請求項2】
電圧とSOC(State Of Charge)との関係においてヒステリシス特性を有するニッケル水素電池の充放電を制御する電池制御システムであって、
前記SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲に関する情報を記憶するメモリと、
前記複数のSOCの使用範囲のうちの1つを選択し、前記選択したSOCの使用範囲に応じて、前記ニッケル水素電池の充放電の制御を行う制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
温度センサが検出した前記ニッケル水素電池の温度に関する情報を受け取り、
前記ニッケル水素電池の温度に応じて、前記複数のSOCの使用範囲の中から選択するSOCの使用範囲を変更し、
前記複数のSOCの使用範囲は、第1の使用範囲、第2の使用範囲および第3の使用範囲を含み、
前記第1の使用範囲のSOCの上限は、前記第2の使用範囲のSOCの上限よりも大きく、
前記第2の使用範囲のSOCの下限は、前記第1の使用範囲のSOCの下限よりも小さく、
前記第3の使用範囲のSOCの上限は、前記第1の使用範囲のSOCの上限よりも小さく、且つ前記第2の使用範囲のSOCの上限よりも大きく、
前記第3の使用範囲のSOCの下限は、前記第1の使用範囲のSOCの下限よりも小さく、且つ前記第2の使用範囲のSOCの下限よりも大きく、
前記制御回路は、
前記SOCの使用範囲を前記第1の使用範囲から前記第3の使用範囲に変更する場合、前記第3の使用範囲のSOCの下限まで前記ニッケル水素電池を放電させる制御を行い、
前記SOCの使用範囲を前記第3の使用範囲から前記第2の使用範囲に変更する場合、前記第2の使用範囲のSOCの下限まで前記ニッケル水素電池を放電させる制御を行い、
前記SOCの使用範囲を前記第2の使用範囲から前記第3の使用範囲に変更する場合、前記第3の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電する制御を行い、
前記SOCの使用範囲を前記第3の使用範囲から前記第1の使用範囲に変更する場合、前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電する制御を行う電池制御システム。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記ニッケル水素電池の温度が第1の温度である場合は、前記第1の使用範囲に応じた充放電の制御を行い、
前記ニッケル水素電池の温度が前記第1の温度よりも高い第2の温度である場合は、前記第2の使用範囲に応じた充放電の制御を行う、請求項に記載の電池制御システム。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記ニッケル水素電池の温度が第1の温度である場合は、前記第1の使用範囲に応じた充放電の制御を行い、
前記ニッケル水素電池の温度が前記第1の温度よりも高い第2の温度である場合は、前記第2の使用範囲に応じた充放電の制御を行い、
前記ニッケル水素電池の温度が前記第1の温度よりも高く且つ前記第2の温度よりも低い第3の温度である場合は、前記第3の使用範囲に応じた充放電の制御を行う、請求項に記載の電池制御システム。
【請求項5】
前記ニッケル水素電池の初回の使用時において、前記制御回路は、前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電した後に、前記ニッケル水素電池の放電を開始する制御を行う、請求項からのいずれかに記載の電池制御システム。
【請求項6】
前記ニッケル水素電池の初回の使用時において、前記制御回路は、前記ニッケル水素電池の温度に関わらず、前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電した後に、前記ニッケル水素電池の放電を開始する制御を行う、請求項からのいずれかに記載の電池制御システム。
【請求項7】
前記ニッケル水素電池の初回の使用は、前記ニッケル水素電池の工場出荷後における最初の使用である、請求項またはに記載の電池制御システム。
【請求項8】
前記ニッケル水素電池の初回の使用は、前記ニッケル水素電池を補充電した後における最初の使用である、請求項またはに記載の電池制御システム。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに記載の電池制御システムを備えた鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御システム、および当該電池制御システムを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以下「エンジン」と記述する。)を動力源とする車両には、一般に、エンジンの回転を利用して発電する回転電機が搭載されている。
【0003】
特許文献1および2は、発電する回転電機を、エンジンの始動時にはエンジンのクランク軸を駆動するスタータモータとして用い、さらに、走行時には必要に応じてエンジンの出力をアシストするアシスト用モータとして使用する鞍乗型車両を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-122925号公報
【文献】特開2008-24255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような回転電機用の二次電池として、ニッケル水素電池を用いることが考えられる。ニッケル水素電池は比較的安価に入手可能であり、車両のコストを低減させることができる。ニッケル水素電池から回転電機に電力を供給することで、回転電機を回転させることができる。また、発電時には、ニッケル水素電池は、回転電機が発電した電力を蓄えることができる。
【0006】
しかしながら、ニッケル水素電池は、温度が高いときは充電効率が低下するとともに、温度が低いときは出力が低下するという特性を有する。また、ニッケル水素電池は、その電圧とSOC(State Of Charge)との関係においてヒステリシスを有するため、充放電の制御が煩雑化するという課題がある。
【0007】
ニッケル水素電池の上記特性から、車載用ニッケル水素電池では、安定した充放電の制御を実現するために、SOCの狭い範囲(例えば、40-60%の範囲)においてのみ充放電を行うことが考えられる。SOCの使用範囲を狭い範囲に限定することにより、充電効率の低下および出力低下の影響を抑えた安定した制御を行うことができる。
【0008】
一方で、ニッケル水素電池が有する性能を有効に利用するためには、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことが望まれる。
【0009】
本発明は、SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池の充放電を行うことができる電池制御システム、および当該電池制御システムを備えた鞍乗型車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る電池制御システムは、電圧とSOCとの関係においてヒステリシス特性を有するニッケル水素電池の充放電を制御する電池制御システムであって、前記SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲に関する情報を記憶するメモリと、前記複数のSOCの使用範囲のうちの1つを選択し、前記選択したSOCの使用範囲に応じて、前記ニッケル水素電池の充放電の制御を行う制御回路とを備え、前記制御回路は、温度センサが検出した前記ニッケル水素電池の温度に関する情報を受け取り、前記ニッケル水素電池の温度に応じて、前記複数のSOCの使用範囲の中から選択するSOCの使用範囲を変更する。
【0011】
ニッケル水素電池の温度に応じてSOCの使用範囲を変更することにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。SOCの広い範囲に亘って充放電を行えることにより、ニッケル水素電池が有する性能を有効に利用することができる。
【0012】
ある実施形態において、前記複数のSOCの使用範囲は、第1の使用範囲および第2の使用範囲を含み、前記第1の使用範囲のSOCの上限は、前記第2の使用範囲のSOCの上限よりも大きく、前記第2の使用範囲のSOCの下限は、前記第1の使用範囲のSOCの下限よりも小さくてもよい。
【0013】
SOCの上限が大きい第1の使用範囲と、SOCの下限が小さい第2の使用範囲とを使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池の充放電を行うことができる。
【0014】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記ニッケル水素電池の温度が第1の温度である場合は、前記第1の使用範囲に応じた充放電の制御を行い、前記ニッケル水素電池の温度が前記第1の温度よりも高い第2の温度である場合は、前記第2の使用範囲に応じた充放電の制御を行ってもよい。
【0015】
ニッケル水素電池の温度が低い場合は、SOCが小さくなりすぎない使用範囲で充放電を行う。一方、ニッケル水素電池の温度が高い場合は、SOCが大きくなりすぎない使用範囲で充放電を行う。これにより、ニッケル水素電池の温度が低いことに起因する出力低下を抑制するとともに、温度が高いことに起因する充電効率の低下を抑制することができる。
【0016】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記SOCの使用範囲を前記第1の使用範囲から前記第2の使用範囲に変更する場合、前記第2の使用範囲のSOCの下限まで前記ニッケル水素電池を放電させる制御を行い、前記SOCの使用範囲を前記第2の使用範囲から前記第1の使用範囲に変更する場合、前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電する制御を行ってもよい。
【0017】
SOCの使用範囲を引き下げる場合は、目標とする使用範囲の下限までニッケル水素電池を放電させる。SOCの使用範囲を引き上げる場合は、目標とする使用範囲の上限までニッケル水素電池を充電する。これにより、SOCの使用範囲を変更することができる。
【0018】
ある実施形態において、前記複数のSOCの使用範囲は、第3の使用範囲をさらに含み、前記第3の使用範囲のSOCの上限は、前記第1の使用範囲のSOCの上限よりも小さく、且つ前記第2の使用範囲のSOCの上限よりも大きく、前記第3の使用範囲のSOCの下限は、前記第1の使用範囲のSOCの下限よりも小さく、且つ前記第2の使用範囲のSOCの下限よりも大きくてもよい。
【0019】
第1、第2、第3の使用範囲を使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池の充放電を行うことができる。
【0020】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記ニッケル水素電池の温度が第1の温度である場合は、前記第1の使用範囲に応じた充放電の制御を行い、前記ニッケル水素電池の温度が前記第1の温度よりも高い第2の温度である場合は、前記第2の使用範囲に応じた充放電の制御を行い、前記ニッケル水素電池の温度が前記第1の温度よりも高く且つ前記第2の温度よりも低い第3の温度である場合は、前記第3の使用範囲に応じた充放電の制御を行ってもよい。これにより、ニッケル水素電池の温度に適したSOCの使用範囲で充放電を行うことができる。
【0021】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記SOCの使用範囲を前記第1の使用範囲から前記第3の使用範囲に変更する場合、前記第3の使用範囲のSOCの下限まで前記ニッケル水素電池を放電させる制御を行い、前記SOCの使用範囲を前記第3の使用範囲から前記第2の使用範囲に変更する場合、前記第2の使用範囲のSOCの下限まで前記ニッケル水素電池を放電させる制御を行い、前記SOCの使用範囲を前記第2の使用範囲から前記第3の使用範囲に変更する場合、前記第3の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電する制御を行い、前記SOCの使用範囲を前記第3の使用範囲から前記第1の使用範囲に変更する場合、前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電する制御を行ってもよい。
【0022】
SOCの使用範囲を引き下げる場合は、目標とする使用範囲の下限までニッケル水素電池を放電させる。SOCの使用範囲を引き上げる場合は、目標とする使用範囲の上限までニッケル水素電池を充電する。これにより、SOCの使用範囲を変更することができる。
【0023】
ある実施形態において、前記ニッケル水素電池の初回の使用時、前記制御回路は、前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電した後に、前記ニッケル水素電池の放電を開始する制御を行ってもよい。
【0024】
第2の使用範囲のSOCの下限までの放電および第1の使用範囲のSOCの上限までの充電を行うと、第1の使用範囲のSOCの上限と第2の使用範囲のSOCの下限とを結ぶ放電曲線および充電曲線(基準となる放電曲線および充電曲線)が得られる。
【0025】
ニッケル水素電池の初期の使用時においては、第2の使用範囲に応じた充電時に得られる充電曲線の上部は、上記基準となる充電曲線から離れている。温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、第2の使用範囲における充電曲線は移動して、その上部は上記基準となる充電曲線に近づく。第2の使用範囲における充電曲線が移動するため、ニッケル水素電池の電圧からSOCを精度良く求めることは困難である。
【0026】
そこで、ニッケル水素電池の初回の使用時は、まず第1の使用範囲のSOCの上限まで充電する。これにより、第2の使用範囲における充電曲線の上部を基準となる充電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲における充電曲線は、その上部が基準となる充電曲線に沿った後は移動しない。第2の使用範囲における充電曲線の移動がなくなることにより、ニッケル水素電池の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0027】
ある実施形態において、前記ニッケル水素電池の初回の使用時において、前記制御回路は、前記ニッケル水素電池の温度に関わらず、前記第1の使用範囲のSOCの上限まで前記ニッケル水素電池を充電した後に、前記ニッケル水素電池の放電を開始する制御を行ってもよい。
【0028】
ニッケル水素電池の初回の使用時は、ニッケル水素電池の温度に関わらず、まず第1の使用範囲のSOCの上限まで充電する。これにより、第2の使用範囲における充電曲線の上部を基準となる充電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲における充電曲線は、その上部が基準となる充電曲線に沿った後は移動しない。第2の使用範囲における充電曲線の移動がなくなることにより、ニッケル水素電池の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0029】
ある実施形態において、前記ニッケル水素電池の初回の使用は、前記ニッケル水素電池の工場出荷後における最初の使用であってもよい。
【0030】
ニッケル水素電池を使用し始めてすぐに第2の使用範囲における充電曲線の上部を基準となる充電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲における充電曲線の移動がなくなることにより、ニッケル水素電池の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0031】
ある実施形態において、前記ニッケル水素電池の初回の使用は、前記ニッケル水素電池を補充電した後における最初の使用であってもよい。
【0032】
補充電を行った後、ニッケル水素電池を使用し始めてすぐに第2の使用範囲における充電曲線の上部を基準となる充電曲線に沿わせることができる。第2の使用範囲における充電曲線の移動がなくなることにより、ニッケル水素電池の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0033】
本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、前記電池制御システムを備える。SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池の充放電を行えることにより、鞍乗型車両の性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の例示的な実施形態に係る電池制御システムによれば、ニッケル水素電池の温度に応じてSOCの使用範囲を変更する。これにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。SOCの広い範囲に亘って充放電を行えることにより、ニッケル水素電池が有する性能を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るエンジンユニットを示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るエンジンユニットを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るエンジンシステムを示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の充放電特性を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の温度が低温である場合に用いるSOCの使用範囲を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の温度が中温である場合に用いるSOCの使用範囲を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の温度が高温である場合に用いるSOCの使用範囲を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の温度に応じてSOCの使用範囲を変更する処理を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係る低温用のSOCの使用範囲、中温用のSOCの使用範囲、高温用のSOCの使用範囲を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る工場出荷後のニッケル水素電池を使用し始めてから期間が経過していないときの充放電特性を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る充電曲線が移動する様子を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係るニッケル水素電池の初回の充放電制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。以下の説明において、前、後、上、下、左、右は、それぞれ鞍乗型車両のシートに着座した乗員から見たときの前、後、上、下、左、右を意味するものとする。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0037】
図1は、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両の一例である自動二輪車100を示す側面図である。図1に示す例では、鞍乗型車両はスクータ型の自動二輪車である。なお、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、ここで例示するスクータ型の自動二輪車に限定されない。本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、いわゆるオンロード型、オフロード型、モペット型等の他の型式の自動二輪車であってもよい。また、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、乗員が跨って乗車する任意の車両を意味し、二輪車に限定されない。本発明の実施形態に係る鞍乗型車両は、車体を傾けることによって進行方向を変える型式の三輪車(LMW)等であってもよく、ATV(All Terrain Vehicle)等の他の鞍乗型車両であってもよい。
【0038】
自動二輪車100は、始動兼発電機として機能する回転電機を有する。回転電機は、回転を利用して発電を行う。回転電機は、エンジンの始動時にはエンジンのクランク軸を駆動するスタータモータとして利用され、さらに、走行時にはエンジンの出力をアシストするアシスト用モータとしても利用される。アシスト用モータとして動作している回転電機を、本明細書では単に「モータ」と呼ぶことがある。
【0039】
図1に示す自動二輪車100は、ヘッドパイプ9を有する車体フレーム10と、ヘッドパイプ9に支持されるハンドル4と、ハンドル4の後方に設けられたシート5と、ハンドル4とシート5との間に設けられ、ライダーが足を置くためのレッグスペース8とを備える。
【0040】
ヘッドパイプ9は、フロントフォーク2を左右方向に揺動可能に支持する。フロントフォーク2の上端にハンドル4が取り付けられ、フロントフォーク2の下端に前輪3が回転可能に取り付けられる。
【0041】
車体1の略中央上部にシート5が設けられる。シート5の下方にECU(Engine Control Unit)6およびエンジンユニットEUが設けられる。ECU6およびエンジンユニットEUによりエンジンシステムESが構成される。車体1の後端下部には後輪7が回転可能に取り付けられる。エンジンユニットEUによって発生される動力により後輪7が回転駆動される。
【0042】
図2および図3は、エンジンユニットEUの模式図である。図2に示すように、エンジンユニットEUは、エンジン20および回転電機30を含む。回転電機30は、始動兼発電機として機能する。図2および図3は、エンジン20の一例として、4ストロークの単気筒エンジンを示している。エンジン20は、シリンダCY、ピストン11、コンロッド(コネクティングロッド)12、クランク軸13、吸気バルブ15、排気バルブ16、カム軸17、点火装置18およびインジェクタ19を備える。
【0043】
ピストン11は、シリンダCY内に往復動可能に設けられ、コンロッド12を介してクランク軸13に接続される。シリンダCYおよびピストン11により燃焼室25が区画される。燃焼室25は、吸気口21を介して吸気通路22に連通し、排気口23を介して排気通路24に連通する。吸気口21を開閉するように吸気バルブ15が設けられ、排気口23を開閉するように排気バルブ16が設けられる。吸気通路22には、燃焼室25に導かれる空気の流量を調整するためのスロットルバルブTLが設けられる。ハンドル4(図1)に設けられたアクセルグリップ(不図示)が操作されることにより、スロットルバルブTLの開度が調整される。
【0044】
インジェクタ19は、吸気通路22に燃料を噴射する。点火装置18は、燃焼室25内の混合気に点火する。インジェクタ19によって噴射された燃料が空気と混合されて燃焼室25に導かれ、点火装置18により燃焼室25内の混合気に点火される。混合気が燃焼することによりピストン11が駆動され、ピストン11の往復運動がクランク軸13の回転運動に変換される。クランク軸13の回転力が図1の後輪7に伝達されることにより後輪7が駆動される。
【0045】
カム軸17は、クランク軸13の回転に連動して回転するように設けられる。カム軸17に当接するように、ロッカーアームRA1,RA2が揺動可能に設けられる。カム軸17は、ロッカーアームRA1を介して吸気バルブ15を駆動し、ロッカーアームRA2を介して排気バルブ16を駆動する。
【0046】
図3に示すように、カム軸17の一端部には、カムスプロケットCSが設けられる。また、クランク軸13には、カム軸ドライブスプロケットDSが設けられる。カムスプロケットCSおよびカム軸ドライブスプロケットDSには、ベルトBLが巻き掛けられる。ベルトBLを介して、クランク軸13の回転力がカム軸17に伝達される。カム軸17の回転速度は、例えばクランク軸13の回転速度の2分の1である。
【0047】
カム軸17は、カムジャーナル17a、17b、吸気カムCA1および排気カムCA2を有する。カムジャーナル17aは、カムスプロケットCSと隣り合うように配置され、カムジャーナル17bは、カム軸17の他端部に配置される。カムジャーナル17a、17bは、それぞれ図示しない軸受け部により保持される。カムジャーナル17a、17bの間に吸気カムCA1および排気カムCA2が設けられる。吸気カムCA1は、カムジャーナル17bと隣り合うように設けられ、排気カムCA2は、カムジャーナル17aと隣り合うように設けられる。クランク角(クランク軸13の回転位置)が吸気工程に対応する角度範囲にあるときに、吸気カムCA1が図2のロッカーアームRA1を駆動する。また、クランク角が排気工程に対応する角度範囲にあるときに、排気カムCA2が図2のロッカーアームRA2を駆動する。
【0048】
カム軸17には、デコンプ機構DEが設けられる。デコンプ機構DEは、排気カムCA2とは別個に排気バルブ16をリフトさせることにより、シリンダCY内の圧力を低下させる。デコンプ機構は公知であるためその説明は省略する。
【0049】
回転電機30は、ステータ31およびロータ32を含む。ステータ31は図示しないクランクケースに固定され、U相、V相およびW相の複数のステータコイル31aを含む。複数のステータコイル31aは、クランク軸13の回転中心線を中心とする円に沿って並ぶように配置される。ロータ32は、ステータ31を囲むようにクランク軸13に固定される。ロータ32は複数の永久磁石32aを含む。複数の永久磁石32aは、クランク軸13の回転中心線を中心とする円に沿って並ぶように配置される。回転電機30は、後述のニッケル水素電池から供給される電力によりクランク軸13を駆動可能である。また、回転電機30は、クランク軸13から伝達される回転により発電することができる。発電により得られた電力によりニッケル水素電池を充電することができる。なお、回転電機30の代わりに、スタータモータおよび発電機が個別に設けられてもよい。
【0050】
図4は、エンジンシステムESを示すブロック図である。エンジンシステムESは、例えば、ニッケル水素電池40に蓄えられた電力および回転電機30が発電した電力を利用して動作する。エンジンシステムESは、ニッケル水素電池40とは別に動作用の電池を備えていてもよい。
【0051】
エンジンシステムESは、クランク角センサ53、スロットル開度センサ54および車速センサ55を含む。ECU6は、各センサからの出力を利用して、自動二輪車100の種々の状態を検出することができる。
【0052】
クランク角センサ53は、クランク角を検出するセンサである。クランク角を検出することにより、エンジン20の回転速度(例えば1分間当たりの回転数;rpm)を取得できる。スロットル開度センサ54は、図2のスロットルバルブTLの開度を検出する。車速センサ55は、自動二輪車100の走行速度(車速)を検出する。クランク角センサ53、スロットル開度センサ54および車速センサ55は、検出結果に応じた検出信号をECU6に出力する。
【0053】
メインスイッチ51およびスタータスイッチ52は、例えばハンドル4(図1)に設けられる。ライダーによるメインスイッチ51およびスタータスイッチ52の操作に応じた操作信号がECU6に出力される。
【0054】
ニッケル水素電池40には、温度センサ41、電圧センサ42、電流センサ43が設けられる。温度センサ41は、ニッケル水素電池40の温度を検出する。温度センサ41としては任意の温度センサを用いることができ、例えばサーミスタ、熱電対等を用いることができる。電圧センサ42は、ニッケル水素電池40の端子電圧を検出する。電流センサ43は、ニッケル水素電池40を流れる電流を検出する。温度センサ41、電圧センサ42、電流センサ43は、検出結果に応じた検出信号をECU6に出力する。
【0055】
ECU6は、例えばマイクロコントローラ61およびメモリ62を含む。マイクロコントローラ61は制御回路の一例である。ECU6は、与えられた検出信号および操作信号に基づいて、点火装置18、インジェクタ19、回転電機30およびニッケル水素電池40を制御する。
【0056】
例えば、メインスイッチ51がオンされ且つスタータスイッチ52がオンされると、ECU6は回転電機30を動作させてエンジン20のクランク軸13を駆動する。これにより、エンジン20が始動する。エンジン20の始動とは、インジェクタ19による燃料噴射および点火装置18による点火が開始されることによって混合気の燃焼が開始されることをいう。
【0057】
自動二輪車100が停止してメインスイッチ51がオフされると、エンジン20が停止される。エンジン20の停止とは、インジェクタ19による燃料噴射および点火装置18による点火の少なくとも一方が停止されることによって混合気の燃焼が停止されることをいう。
【0058】
本実施形態のECU6は、ニッケル水素電池40の充電および放電を制御する電池制御システムとしても動作する。以下、ニッケル水素電池40の温度に応じた充電および放電の制御を説明する。なお、以下で示す各種の数値は例であり、本発明はそれらの数値に限定されない。
【0059】
図5は、ニッケル水素電池40の充放電特性を示す図である。図5の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOC(State of Charge)を示している。
【0060】
縦軸に示すバッテリ電圧は、例えば開路電圧(Open Circuit Voltage(OCV))である。例えば、マイクロコントローラ61は、電圧センサ42および電流センサ43から得られる電圧値および電流値を用いて開路電圧を演算することができる。開路電圧の演算方法としては公知の種々の方法を用いることができ、ここではその詳細な説明は省略する。なお、開路電圧の代わりに閉路電圧(Closed Circuit Voltage(CCV))を用いても、本実施形態の制御処理を行うことができる。横軸に示すSOCは、電池の容量に対する現在充電されている電気量の割合をパーセンテージで表している。
【0061】
放電曲線113は、ニッケル水素電池40をSOCが100%の状態から0%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線114は、ニッケル水素電池40をSOCが0%の状態から100%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0062】
放電曲線123は、ニッケル水素電池40をSOCが90%の状態から20%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線124は、ニッケル水素電池40をSOCが20%の状態から90%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0063】
メモリ62には、放電曲線、充電曲線、SOCの使用範囲が記憶されている。マイクロコントローラ61は、メモリ62から読みだした放電曲線および充電曲線を用いて、バッテリ電圧からSOCを求めることができる。
【0064】
図5は、SOCの使用範囲120を示している。図示する例では、SOCの使用範囲120の上限121のSOCは90%、下限122は20%である。ニッケル水素電池40をSOCが90%になるまで充電を行った後に放電を行うと、放電曲線123に沿ったバッテリ電圧とSOCとの関係で放電が行われる。放電時は、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の出力をエンジンシステムESの各構成要素の動作のために用いる。例えば、車両の走行時にエンジン20をアシストする出力を回転電機30に発生させる制御を行うことで、ニッケル水素電池40に蓄えられた電力が消費される。
【0065】
ニッケル水素電池40をSOCが20%になるまで放電を行った後に充電を行うと、充電曲線124に沿ったバッテリ電圧とSOCとの関係で充電が行われる。充電時は、マイクロコントローラ61は、回転電機30が発電することにより得られた電力をニッケル水素電池40に供給する制御を行う。これにより、ニッケル水素電池40の充電を行うことができる。
【0066】
図5に示すように、ニッケル水素電池40は、放電曲線と充電曲線とが大きく異なるヒステリシス特性を有する。ニッケル水素電池40がヒステリシス特性を有することにより、充放電の制御は煩雑化する。また、ニッケル水素電池40は、温度が高い場合は充電効率が低下するとともに、温度が低い場合は出力が低下するという特性を有する。このため、広いSOCの使用範囲(例えばSOCが20%から90%の範囲)において、安定した充放電を実現することは容易ではない。
【0067】
そこで、本実施形態のニッケル水素電池40の充放電制御においては、SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲を、ニッケル水素電池40の温度に応じて使い分ける。
【0068】
図6は、ニッケル水素電池40の温度が低温である場合に用いるSOCの使用範囲130を示す図である。図6の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。ニッケル水素電池40が低温であるとは、例えば、ニッケル水素電池40の温度が10℃未満であることを指す。
【0069】
図6に示す例では、SOCの使用範囲130の上限131のSOCは90%、下限132は40%である。ニッケル水素電池40は、温度が低い場合は出力が低下するという特性を有する。このため、ニッケル水素電池40の温度が低い場合は、SOCが小さくなりすぎない使用範囲で充放電を行う。温度が低い場合は、マイクロコントローラ61は、高い値の範囲であるSOCの使用範囲130において充放電を制御する。これにより、ニッケル水素電池40の温度が低いことに起因する出力低下を抑制し、安定した充放電を実現することができる。放電曲線133は、ニッケル水素電池40をSOCが90%の状態から40%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線134は、ニッケル水素電池40をSOCが40%の状態から90%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0070】
なお、低温の下限は、例えばニッケル水素電池40が使用可能な温度の下限となる。例えば、ニッケル水素電池40が使用可能な温度の下限が-20℃である場合は、低温の下限は-20℃である。
【0071】
図7は、ニッケル水素電池40の温度が中温である場合に用いるSOCの使用範囲140を示す図である。図7の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。ニッケル水素電池40が中温であるとは、例えば、ニッケル水素電池40の温度が10℃以上40℃未満であることを指す。
【0072】
図7に示すSOCの使用範囲140の下限142は、図6に示すSOCの使用範囲130のSOCの下限132よりも小さい。また、図6に示すSOCの使用範囲130の上限131は、図7に示すSOCの使用範囲140の上限141よりも大きい。
【0073】
図7に示す例では、SOCの使用範囲140の上限141のSOCは80%、下限142は30%である。温度が中温のときは、マイクロコントローラ61は、SOCの使用範囲140において充放電を制御する。放電曲線143は、ニッケル水素電池40をSOCが80%の状態から30%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線144は、ニッケル水素電池40をSOCが30%の状態から80%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0074】
図8は、ニッケル水素電池40の温度が高温である場合に用いるSOCの使用範囲150を示す図である。図8の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。ニッケル水素電池40が高温であるとは、例えば、ニッケル水素電池40の温度が40℃以上であることを指す。
【0075】
図8に示すSOCの使用範囲150の下限152は、図7に示すSOCの使用範囲140のSOCの下限142よりも小さい。また、図7に示すSOCの使用範囲140の上限141は、図8に示すSOCの使用範囲150の上限151よりも大きい。
【0076】
図8に示す例では、SOCの使用範囲150の上限151のSOCは60%、下限152は20%である。ニッケル水素電池40は、温度が高い場合は充電効率が低下するという特性を有する。言い換えると、温度が高い場合は、SOCが高い値になるまで充電することが難しくなる。このため、ニッケル水素電池40の温度が高い場合は、SOCが大きくなりすぎない使用範囲で充放電を行う。温度が高い場合は、マイクロコントローラ61は、低い値の範囲であるSOCの使用範囲150において充放電を制御する。温度が高いことに起因する充電効率の低下を抑制することで、安定した充放電を実現することができる。放電曲線153は、ニッケル水素電池40をSOCが60%の状態から20%の状態まで放電させたときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。充電曲線154は、ニッケル水素電池40をSOCが20%の状態から60%の状態まで充電したときのバッテリ電圧とSOCとの関係を示している。
【0077】
なお、高温の上限は、例えばニッケル水素電池40が使用可能な温度の上限となる。例えば、ニッケル水素電池40が使用可能な温度の上限が60℃である場合は、高温の上限は60℃である。
【0078】
メモリ62(図4)は、上記のようなSOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲に関する情報を予め記憶している。マイクロコントローラ61は、メモリ62からSOCの使用範囲に関する情報を読み出し、所望のSOCの使用範囲を設定する。
【0079】
図9は、ニッケル水素電池40の温度に応じてSOCの使用範囲を変更する処理を示すフローチャートである。
【0080】
ステップS101において、マイクロコントローラ61は、温度センサ41の出力信号からニッケル水素電池40の温度を検出する。ステップS102において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が所定の温度未満か判定する。所定の温度は、例えば10℃である。ニッケル水素電池40の温度が所定の温度未満であると判定した場合、マイクロコントローラ61は、低温用のSOCの使用範囲130を選択する(ステップS106)。マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲130内でニッケル水素電池40の充放電の制御を行う。
【0081】
ステップS102において、ニッケル水素電池40の温度は所定の温度未満でないと判定した場合は、ステップS103の処理に進む。ステップS103において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が所定の温度範囲にあるか判定する。所定の温度範囲は、例えば10℃以上40℃未満である。ニッケル水素電池40の温度が所定の温度範囲にあると判定した場合、マイクロコントローラ61は、中温用のSOCの使用範囲140を選択する(ステップS105)。マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲140内でニッケル水素電池40の充放電の制御を行う。
【0082】
ステップS103において、ニッケル水素電池40の温度は所定の温度範囲にないと判定した場合、マイクロコントローラ61は、高温用のSOCの使用範囲150を選択する(ステップS104)。マイクロコントローラ61は、選択したSOCの使用範囲150内でニッケル水素電池40の充放電の制御を行う。
【0083】
車両の電源がオンの間(ステップS107においてNO)は、温度の検出を継続する。ニッケル水素電池40の温度範囲に変更がない場合は、現在選択中のSOCの使用範囲を維持する。ステップS102またはS103の処理において、温度範囲に変更が生じた場合は、最新の温度に応じたSOCの使用範囲に変更する。例えば、低温用のSOCの使用範囲130を用いた制御中に、ニッケル水素電池40の温度が10℃以上40℃未満に変化した場合は、マイクロコントローラ61は、低温用のSOCの使用範囲130から中温用のSOCの使用範囲140に変更する。例えば、中温用のSOCの使用範囲140を用いた制御中に、ニッケル水素電池40の温度が40℃以上に変化した場合は、マイクロコントローラ61は、中温用のSOCの使用範囲140から高温用のSOCの使用範囲150に変更する。
【0084】
車両の電源がオフになった場合(ステップS107においてYES)は、処理を終了する。
【0085】
このように、本実施形態では、ニッケル水素電池40の温度に応じて、複数のSOCの使用範囲の中から選択するSOCの使用範囲を変更する。
【0086】
図10は、低温用のSOCの使用範囲130、中温用のSOCの使用範囲140、高温用のSOCの使用範囲150を示す図である。図10の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。ニッケル水素電池40の温度に応じてSOCの使用範囲を変更することにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。例えば、広いSOCの使用範囲120に相当する20%から90%の範囲に亘って充放電を行うことができる。SOCの広い範囲に亘って充放電を行えることにより、ニッケル水素電池40が有する性能を有効に利用することができる。
【0087】
ここで、SOCの使用範囲を変更する方法を説明する。SOCの使用範囲を低温用のSOCの使用範囲130から中温用のSOCの使用範囲140に変更する場合、マイクロコントローラ61は、中温用のSOCの使用範囲140の下限142までニッケル水素電池40を放電させる制御を行う。下限142に達した後にニッケル水素電池40の充電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を低温用のSOCの使用範囲130から中温用のSOCの使用範囲140に変更することができる。
【0088】
SOCの使用範囲を中温用のSOCの使用範囲140から高温用のSOCの使用範囲150に変更する場合、マイクロコントローラ61は、高温用のSOCの使用範囲150の下限152までニッケル水素電池40を放電させる制御を行う。下限152に達した後にニッケル水素電池40の充電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を中温用のSOCの使用範囲140から高温用のSOCの使用範囲150に変更することができる。
【0089】
このように、SOCの使用範囲を引き下げる場合は、目標とする使用範囲の下限までニッケル水素電池40を放電させる。これにより、SOCの使用範囲を変更することができる。
【0090】
同様に、SOCの使用範囲を低温用のSOCの使用範囲130から高温用のSOCの使用範囲150に変更する場合、マイクロコントローラ61は、高温用のSOCの使用範囲150の下限152までニッケル水素電池40を放電させる制御を行う。下限152に達した後にニッケル水素電池40の充電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を低温用のSOCの使用範囲130から高温用のSOCの使用範囲150に変更することができる。
【0091】
SOCの使用範囲を高温用のSOCの使用範囲150から中温用のSOCの使用範囲140に変更する場合、マイクロコントローラ61は、中温用のSOCの使用範囲140の上限141までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。上限141に達した後にニッケル水素電池40の放電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を高温用のSOCの使用範囲150から中温用のSOCの使用範囲140に変更することができる。
【0092】
SOCの使用範囲を中温用のSOCの使用範囲140から低温用のSOCの使用範囲130に変更する場合、マイクロコントローラ61は、低温用のSOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。上限131に達した後にニッケル水素電池40の放電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を中温用のSOCの使用範囲140から低温用のSOCの使用範囲130に変更することができる。
【0093】
このように、SOCの使用範囲を引き上げる場合は、目標とする使用範囲の上限までニッケル水素電池40を充電する。これにより、SOCの使用範囲を変更することができる。
【0094】
同様に、SOCの使用範囲を高温用のSOCの使用範囲150から低温用のSOCの使用範囲130に変更する場合、マイクロコントローラ61は、低温用のSOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。上限131に達した後にニッケル水素電池40の放電を開始する。これにより、SOCの使用範囲を高温用のSOCの使用範囲150から低温用のSOCの使用範囲130に変更することができる。
【0095】
次に、ニッケル水素電池40の初回の放電を行うときの処理を説明する。ニッケル水素電池40の初回の放電とは、例えば、ニッケル水素電池40の工場出荷後における最初の放電である。
【0096】
上述した図10は、工場出荷後のニッケル水素電池40を使用し始めてから一定以上の期間が経過した後の充放電特性を示している。例えば、温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返した後に得られる充放電特性を示している。図10に示す例では、SOCの使用範囲150の上限151におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、充電曲線124に沿っている。また、SOCの使用範囲140の上限141におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、充電曲線124に沿っている。
【0097】
充電曲線124は、SOCの使用範囲150の下限152からSOCの使用範囲130の上限131までの充電を行うことで得られる充電曲線である。SOCの使用範囲150の下限152までの放電およびSOCの使用範囲130の上限131までの充電を行うと、SOCの使用範囲130の上限131とSOCの使用範囲150の下限152とを結ぶ放電曲線123および充電曲線124(基準となる放電曲線および充電曲線)が得られる。
【0098】
図11は、工場出荷後のニッケル水素電池40を使用し始めてから期間が経過していないときの充放電特性を示す図である。図11の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。
【0099】
図11に示す例では、SOCの使用範囲150の上限151におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、充電曲線124から離れている。また、SOCの使用範囲140の上限141におけるバッテリ電圧とSOCとの関係は、充電曲線124から離れている。温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、SOCの使用範囲140、150における充電曲線144、154は移動する。
【0100】
図12は、SOCの使用範囲140、150における充電曲線144、154が移動する様子を示す図である。図12の左側のグラフは、工場出荷直後のニッケル水素電池40の充放電特性を示している。図12の右側のグラフは、充電曲線144、154が移動した後の充放電特性を示している。図12の縦軸はバッテリ電圧を示し、横軸はSOCを示している。
【0101】
図12に示すように、ニッケル水素電池40は充電状況により異なる充放電特性を示す。例えば、SOCの使用範囲150の上限151まで充電されたニッケル水素電池40は、上限151を基準とした充電曲線154を有する。また、例えば、SOCの使用範囲140の上限141まで充電されたニッケル水素電池40は、上限141を基準とした充電曲線144を有する。温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、充電曲線144、154は移動して、上限131を基準とした充電曲線124に近づく。このように、使用過程で充電曲線144、154が移動すると、ニッケル水素電池40の電圧からSOCを精度良く求めることは困難となる。
【0102】
そこで、本実施形態では、ニッケル水素電池40の初回充放電時にSOCの使用範囲130の上限131まで充電を行う。上限131は上限121と同じ大きさである。また、初回充放電時にニッケル水素電池40が自己放電している場合は、その自己放電している状態から、ニッケル水素電池40の初回充放電時にSOCの使用範囲130の上限131まで充電を行う。その後、温度に応じてSOCの使用範囲を変更する。初回充放電時に、このような制御をまず行うことで、充電曲線144、154を充電曲線124に一気に沿わせることができる。充電曲線144、154は、充電曲線124に沿った後は移動しない。充電曲線144、154の移動がなくなることにより、ニッケル水素電池40の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0103】
上記の制御は、電池メーカから納入された時点のニッケル水素電池40のSOCが使用範囲130の上限131よりも低い状態であることが条件となる。このため、SOCが使用範囲130の上限131よりも高い状態でニッケル水素電池40が納入された場合は、電池単体でSOCが0%になるまで放電を行い、その後、使用範囲130の上限131よりもSOCが低くなるように充電した上で製品への組み付けを行う。
【0104】
図13は、ニッケル水素電池40の初回の充放電制御を示すフローチャートである。
【0105】
ステップS201において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40を使用しようとする場合、それがニッケル水素電池40の初回の使用であるか判定する。例えば、メモリ62には充放電の履歴が記憶されている。マイクロコントローラ61はその履歴を読み出すことで、初回の使用であるか判定することができる。初回の使用であると判定した場合、ニッケル水素電池40の充電を開始する(ステップS202)。SOCの使用範囲130の上限131に到達するまで充電を継続する(ステップS203)。SOCの使用範囲130の上限131に到達するまでは放電は行わない。また、ニッケル水素電池40の温度に関わらず、SOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電するまでは放電を行わない。SOCの使用範囲130の上限131に到達すると、充電曲線144、154は充電曲線124に沿うように変化している。
【0106】
このように、ニッケル水素電池40を使用し始めてすぐに充電曲線144、154を充電曲線124に沿わせることができる。このような初回の充電を行った後、図9に示した温度に応じてSOCの使用範囲を変更する処理を実行する。充電曲線144、154が移動しないことにより、ニッケル水素電池40の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0107】
ステップS201において、初回の使用でないと判定した場合は、図9に示した温度に応じてSOCの使用範囲を変更する処理を実行する。
【0108】
上記の例では、ニッケル水素電池40の初回の使用は、ニッケル水素電池40の工場出荷後における最初の使用であったが、初回の使用は、ニッケル水素電池40を補充電した後における最初の使用であってもよい。補充電を行った後、ニッケル水素電池40を使用し始めてすぐに充電曲線144、154を充電曲線124に沿わせることができる。充電曲線144、154が移動しないことにより、補充電後も、ニッケル水素電池40の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0109】
なお、上記の説明では、バッテリ電圧および放電曲線を用いてSOCを求めていたが、本発明はそれに限定されない。ニッケル水素電池40から出力された電流の積算値を用いてSOCを求めてもよい。ニッケル水素電池40の制御においては、ヒステリシス特性およびメモリ効果の影響があるため、電圧からSOCを求める処理を随時行う場合は、制御が煩雑化し得る。電流積算値を用いてSOCを推定することにより演算負荷を低減することができる。電流積算値を用いる場合はSOCの誤差が大きくなる場合があり得るが、選択中のSOCの使用範囲の上限まで充電した段階でそのような誤差をリセットすることができる。これは、SOCの使用範囲の上限まで充電した状態では電圧とSOCとの関係の精度が高くなるためである。SOCの使用範囲の上限まで充電した段階でリセットを行うことで、精度を維持することができる。
【0110】
また、上記の説明では、3つのSOCの使用範囲を温度に応じて使い分けていたが、本発明はそれに限定されない。温度に応じて使い分けるSOCの使用範囲の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0111】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0112】
上述したように、本発明の実施形態に係る電池制御システム6は、電圧とSOCとの関係においてヒステリシス特性を有するニッケル水素電池40の充放電を制御する。電池制御システム6は、マイクロコントローラ61と、メモリ62とを備える。メモリ62は、SOCの上限および下限が互いに異なる複数のSOCの使用範囲130、140、150に関する情報を記憶する。マイクロコントローラ61は、複数のSOCの使用範囲130、140、150のうちの1つを選択し、選択したSOCの使用範囲に応じて、ニッケル水素電池40の充放電の制御を行う。マイクロコントローラ61は、温度センサ41が検出したニッケル水素電池40の温度に関する情報を受け取る。マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度に応じて、複数のSOCの使用範囲130、140、150の中から選択するSOCの使用範囲を変更する。
【0113】
ニッケル水素電池40の温度に応じてSOCの使用範囲を変更することにより、SOCの広い範囲に亘って充放電を行うことができる。SOCの広い範囲に亘って充放電を行えることにより、ニッケル水素電池40が有する性能を有効に利用することができる。
【0114】
ある実施形態において、SOCの使用範囲130の上限131は、SOCの使用範囲140の上限141よりも大きく、SOCの使用範囲140の下限142は、SOCの使用範囲130の下限132よりも小さい。SOCの使用範囲140の上限141は、SOCの使用範囲150の上限151よりも大きく、SOCの使用範囲150の下限152は、SOCの使用範囲140の下限142よりも小さい。
【0115】
SOCの上限が大きいSOCの使用範囲と、SOCの下限が小さいSOCの使用範囲とを使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池40の充放電を行うことができる。
【0116】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が第1の温度である場合は、SOCの使用範囲130に応じた充放電の制御を行う。マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が第1の温度よりも高い第2の温度である場合は、SOCの使用範囲150に応じた充放電の制御を行う。
【0117】
ニッケル水素電池40の温度が低い場合は、SOCが小さくなりすぎない使用範囲で充放電を行う。一方、ニッケル水素電池40の温度が高い場合は、SOCが大きくなりすぎない使用範囲で充放電を行う。これにより、ニッケル水素電池40の温度が低いことに起因する出力低下を抑制するとともに、温度が高いことに起因する充電効率の低下を抑制することができる。
【0118】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、SOCの使用範囲をSOCの使用範囲130からSOCの使用範囲150に変更する場合、SOCの使用範囲150の下限152までニッケル水素電池40を放電させる制御を行う。マイクロコントローラ61は、SOCの使用範囲をSOCの使用範囲150からSOCの使用範囲130に変更する場合、SOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。
【0119】
SOCの使用範囲を引き下げる場合は、目標とする使用範囲の下限までニッケル水素電池40を放電させる。SOCの使用範囲を引き上げる場合は、目標とする使用範囲の上限までニッケル水素電池40を充電する。これにより、SOCの使用範囲を変更することができる。
【0120】
ある実施形態において、SOCの使用範囲140の上限141は、SOCの使用範囲130の上限131よりも小さく、且つSOCの使用範囲150の上限151よりも大きい。SOCの使用範囲140の下限142は、SOCの使用範囲130の下限132よりも小さく、且つSOCの使用範囲150の下限152よりも大きい。
【0121】
SOCの使用範囲130、140、150を使い分けることにより、SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池40の充放電を行うことができる。
【0122】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が第1の温度である場合は、SOCの使用範囲130に応じた充放電の制御を行う。マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が第1の温度よりも高い第2の温度である場合は、SOCの使用範囲150に応じた充放電の制御を行う。マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度が第1の温度よりも高く且つ第2の温度よりも低い第3の温度である場合は、SOCの使用範囲140に応じた充放電の制御を行う。これにより、ニッケル水素電池40の温度に適したSOCの使用範囲で充放電を行うことができる。
【0123】
ある実施形態において、マイクロコントローラ61は、SOCの使用範囲をSOCの使用範囲130からSOCの使用範囲140に変更する場合、SOCの使用範囲140の下限142までニッケル水素電池40を放電させる制御を行う。SOCの使用範囲をSOCの使用範囲140からSOCの使用範囲150に変更する場合、SOCの使用範囲150の下限152までニッケル水素電池40を放電させる制御を行う。SOCの使用範囲をSOCの使用範囲150からSOCの使用範囲140に変更する場合、SOCの使用範囲140の上限141までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。SOCの使用範囲をSOCの使用範囲140からSOCの使用範囲130に変更する場合、SOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電する制御を行う。
【0124】
SOCの使用範囲を引き下げる場合は、目標とする使用範囲の下限までニッケル水素電池40を放電させる。SOCの使用範囲を引き上げる場合は、目標とする使用範囲の上限までニッケル水素電池40を充電する。これにより、SOCの使用範囲を変更することができる。
【0125】
ある実施形態において、ニッケル水素電池40の初回の使用時、マイクロコントローラ61は、SOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電した後に、ニッケル水素電池40の放電を開始する制御を行う。
【0126】
SOCの使用範囲150の下限152までの放電およびSOCの使用範囲130の上限131までの充電を行うと、SOCの使用範囲130の上限131とSOCの使用範囲150の下限152とを結ぶ放電曲線123および充電曲線124(基準となる放電曲線および充電曲線)が得られる。
【0127】
ニッケル水素電池40の初期の使用時においては、SOCの使用範囲140、150に応じた充電時に得られる充電曲線144、154の上部は、上記基準となる充電曲線124から離れている。温度に応じてSOCの使用範囲を変更する制御を繰り返す過程において、充電曲線144、154は移動して、それらの上部は上記基準となる充電曲線124に近づく。充電曲線144、154が移動するため、ニッケル水素電池40の電圧からSOCを精度良く求めることは困難である。
【0128】
そこで、ニッケル水素電池40の初回の使用時は、まずSOCの使用範囲130の上限131まで充電する。これにより、充電曲線144、154の上部を基準となる充電曲線124に沿わせることができる。充電曲線144、154は、それらの上部が基準となる充電曲線124に沿った後は移動しない。充電曲線144、154の移動がなくなることにより、ニッケル水素電池40の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0129】
ある実施形態において、ニッケル水素電池40の初回の使用時において、マイクロコントローラ61は、ニッケル水素電池40の温度に関わらず、SOCの使用範囲130の上限131までニッケル水素電池40を充電した後に、ニッケル水素電池40の放電を開始する制御を行う。
【0130】
ニッケル水素電池40の初回の使用時は、ニッケル水素電池40の温度に関わらず、まずSOCの使用範囲130の上限131まで充電する。これにより、充電曲線144、154の上部を基準となる充電曲線124に沿わせることができる。充電曲線144、154は、それらの上部が基準となる充電曲線124に沿った後は移動しない。充電曲線144、154の移動がなくなることにより、ニッケル水素電池40の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0131】
ある実施形態において、ニッケル水素電池40の初回の使用は、ニッケル水素電池40の工場出荷後における最初の使用である。
【0132】
ニッケル水素電池40を使用し始めてすぐに充電曲線144、154の上部を基準となる充電曲線124に沿わせることができる。充電曲線144、154の移動がなくなることにより、ニッケル水素電池40の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0133】
ある実施形態において、ニッケル水素電池40の初回の使用は、ニッケル水素電池40を補充電した後における最初の使用である。
【0134】
補充電を行った後、ニッケル水素電池40を使用し始めてすぐに充電曲線144、154の上部を基準となる充電曲線124に沿わせることができる。充電曲線144、154の移動がなくなることにより、ニッケル水素電池40の電圧からSOCを精度良く求めることができる。
【0135】
実施形態に係る鞍乗型車両100は、上記の電池制御システム6を備える。SOCの広い範囲に亘ってニッケル水素電池40の充放電を行えることにより、鞍乗型車両100の性能を向上させることができる。
【0136】
以上、本発明の実施形態を説明した。上述の実施形態の説明は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。また、上述の実施形態で説明した各構成要素を適宜組み合わせた実施形態も可能である。本発明は、請求の範囲またはその均等の範囲において、改変、置き換え、付加および省略などが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、ニッケル水素電池の充放電を行う技術分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0138】
1:車体、 2:フロントフォーク、 3:前輪、 4:ハンドル、 5:シート、 6:ECU(電池制御システム)、 7:後輪、 8:レッグスペース、 9:ヘッドパイプ、 10:車体フレーム、 11:ピストン、 12:コンロッド、 13:クランク軸、 15:吸気バルブ、 16:排気バルブ、 17:カム軸、 17a:カムジャーナル、 17b:カムジャーナル、 18:点火装置、 19:インジェクタ、 20:エンジン、 21:吸気口、 22:吸気通路、 23:排気口、 24:排気通路、 25:燃焼室、 30:回転電機、 31:ステータ、 31a:ステータコイル、 32:ロータ、 32a:磁石、 40:ニッケル水素電池、 41:温度センサ、 42:電圧センサ、 43:電流センサ、 61:マイクロコントローラ、 62:メモリ、 100:自動二輪車(鞍乗型車両)、 113:放電曲線、 114:充電曲線、 120:SOCの使用範囲、 121:SOCの使用範囲の上限、 122:SOCの使用範囲の下限、 123:放電曲線、 124:充電曲線、 130:低温用のSOCの使用範囲、 131:低温用のSOCの使用範囲の上限、 132:低温用のSOCの使用範囲の下限、 133:放電曲線、 134:充電曲線、 140:中温用のSOCの使用範囲、 141:中温用のSOCの使用範囲の上限、 142:中温用のSOCの使用範囲の下限、 143:放電曲線、 144:充電曲線、 150:高温用のSOCの使用範囲、 151:高温用のSOCの使用範囲の上限、 152:高温用のSOCの使用範囲の下限、 153:放電曲線、 154:充電曲線
図1
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