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特許7024065偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物、これの硬化物を含む偏光板及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物、これの硬化物を含む偏光板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20220215BHJP
   C08G 18/81 20060101ALI20220215BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20220215BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220215BHJP
   C08F 299/00 20060101ALN20220215BHJP
【FI】
C08L33/06
C08G18/81 016
C08K5/29
G02B5/30
C08F299/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020513511
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 KR2018011188
(87)【国際公開番号】W WO2019059693
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】10-2017-0122715
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521241281
【氏名又は名称】杉金光電(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ソ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ユンキョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】サンフン・ハン
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120363(JP,A)
【文献】特開2013-256552(JP,A)
【文献】特開2014-115542(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117045(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0226085(US,A1)
【文献】韓国特許第10-2013-0039240(KR,B1)
【文献】特開2014-012808(JP,A)
【文献】特開2010-277039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/06
C08G 18/81
C08K 5/29
G02B 5/30
C08F 299/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート系単量体を重合単位として含むアクリル系プレポリマー;及びイソシアネート系架橋剤を含み、
前記アクリル系プレポリマーは、炭素数1~14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートから選択される一種又は二種以上のアルキル(メタ)アクリレート系単量体及びヒドロキシ基を有する反応性単量体を含む単量体混合物の部分重合物であり、
前記単量体混合物は、前記単量体混合物の全体100重量部を基準に、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体70~99重量部及び前記反応性単量体1~30重量部を含み、
前記イソシアネート系架橋剤は、前記アクリル系プレポリマー100重量部に対して5~30重量部で含まれ、
前記アクリル系プレポリマーの重量平均分子量が、300,000以上2,000,000以下であり、
前記イソシアネート系架橋剤が、イソシアネート(-NCO)官能基とアクリレート官能基とを同時に有するイソシアネート系架橋剤であり、
25℃における粘度は、50cPs以上300cPs以下のものである、偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アクリル系プレポリマーは、(メタ)アクリレート系単量体を重合単位として含むアクリル系プレポリマー;及び単量体混合物を含み、前記単量体混合物は、(メタ)アクリレート系単量体及び反応性単量体を含むものである、請求項1に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレートからなる群より選択される1又は2以上のものである、請求項1または2に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシ基を有する反応性単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選択されるからなる群より選択される1又は2以上のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート系架橋剤は、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートである、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
光開始剤をさらに含むものである、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、染料、顔料、エポキシ樹脂、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤, 消泡剤、界面活性剤、光増粘剤及び可塑剤からなる群より選択される1以上の添加剤をさらに含むものである、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記アクリル系プレポリマーの重合度は、5%以上20%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
固形分の含量が99.7%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
偏光子;及び
前記偏光子の一面又は両面に備えられた保護層を含む偏光板であって、
前記保護層は、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物の硬化物である、偏光板。
【請求項11】
前記保護層の厚さが、4μm以上11μm以下である、請求項10に記載の偏光板。
【請求項12】
前記保護層は、偏光子の両面にそれぞれ備えられるものである、請求項10または11に記載の偏光板。
【請求項13】
請求項1012のいずれか一項に記載の偏光板を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年9月22日付にて韓国特許庁に提出された第10-2017-0122715号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物、これの硬化物を含む偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
既存の液晶表示装置用の偏光板は、一般的なポリビニルアルコール系偏光子を使用し、その偏光子の少なくとも一方面にTACなどの保護フィルムを貼り付ける構成となっている。
【0004】
最近、偏光板の市場においては、低光漏れ及び薄型化への要求が高くなっており、この物性を満たすために、既存の予め製膜した保護基材を適用する代わりに、偏光子上に直接保護膜を形成する方法が検討されている。
【0005】
但し、既存のポリビニルアルコール系延伸型のポリビニルアルコール系偏光子上に直接保護膜を形成する場合、既存のように両面に保護基材を適用する場合に比べて、高温で偏光子収縮により発生する応力によって偏光子割れ現象が発生する問題を解決することが難しかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の液晶表示装置用の偏光板は、一般的にポリビニルアルコール系偏光子を使用し、その偏光子の少なくとも一方面にTACなどの保護フィルムを貼り付ける構成となっている。
【0007】
最近、偏光板の市場においては、低光漏れ及び薄型化への要求が高くなっており、この物性を満たすために、既存の予め製膜した保護基材を適用する代わりに、偏光子の一面に直接保護膜を形成する方法が検討されている。
【0008】
但し、上記のように偏光子の一面に直接保護膜を形成する場合、偏光子収縮により発生する応力によって偏光子割れ現象が発生する問題を解決することが難しかった。
【0009】
本明細書が解決しようとする課題は、上記問題点を解決することができる偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物を提供することである。
【0010】
本明細書が解決しようとする課題は、上述した技術的課題に制限されず、上述されていないまた別の技術的課題は、以下の記載から当業者に明確に理解されるのであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書は、(メタ)アクリレート系単量体を重合単位として含むアクリル系プレポリマー;及びイソシアネート系架橋剤を含み、上記アクリル系プレポリマーは、部分重合された状態であり、25℃における粘度は、50cPs以上300cPs以下である、偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0012】
また、本明細書は、偏光子;及び上記偏光子の一面又は両面に備えられた保護層を含む偏光板であって、上記保護層は、上述した偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物の硬化物である、偏光板を提供する。
【0013】
また、本明細書は、上述した偏光板を含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本明細書の一実施態様に係る偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、偏光子の一面又は両面にコーティングされたとき、外観が優れ、高温環境下で強度に優れるという長所がある。
【0015】
また、上記偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、透明性、柔軟性及びゲル分率が大きく改善した効果があり、破壊靭性(fracture roughness)が大きく改善して、偏光板に使用時に高温耐久性改善の効果がある。
【0016】
また、硬化時にも収縮が大きく発生しないため、偏光板の製造時にも偏光板の外観が優れる効果があり、悪臭が多く生じない長所がある。
【0017】
本明細書の一実施態様に係る偏光板は、接着剤を使用しなくても偏光子の一面又は両面に保護層を含むため、厚さが薄いながらも保護コーティング層の形成段階で硬化収縮の少ない偏光板を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本明細書の一実施態様に係る偏光板の構造を示すものである。
図2】本明細書の一実施態様に係る偏光板の構造を示すものである。
図3】本明細書の一実施態様に係る偏光板の構造を示すものである。
図4】本明細書の一実施態様に係る画像表示装置の構造を示すものである。
図5】本明細書の一実施態様に係る偏光板の高温促進評価後の外観イメージを示すものである。
図6】本明細書の一実施態様に係る偏光板の高温耐水評価後の外観イメージを示すものである。
図7】実験例3の結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本明細書について詳細に説明する。
【0020】
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」に位置しているというとき、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた別の部材が存在する場合も含む。
【0021】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0022】
偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物
本明細書は、(メタ)アクリレート系単量体を重合単位として含むアクリル系プレポリマー;及びイソシアネート系架橋剤を含み、
上記アクリル系プレポリマーは、部分重合された状態であり、
25℃における粘度は、50cPs以上300cPs以下である、偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物を提供する。上記偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリレート系単量体を重合単位として含むアクリル系プレポリマーを含むことにより、組成物の粘度調節が容易にできるという長所がある。具体的に、(メタ)アクリレート系単量体が部分重合されたアクリル系プレポリマーではなく、単に(メタ)アクリレート系単量体のみを混合した場合には、組成物の粘度が10cPs以下なので、粘度が低すぎるという問題がある(製造例4~6)。また、(メタ)アクリレート系単量体を完全に重合する場合、組成物の粘度が大きすぎるため、コーティング性が低下する問題がある。本明細書においては、(メタ)アクリレート系単量体の重合程度を調節して、組成物の粘度範囲を特定の範囲に調節することに特徴がある。これを通じて、組成物の偏光子に対するコーティング性を改善しようとする。
【0023】
本明細書において、ある単量体又は化合物の「重合単位」は、その単量体又は化合物が重合反応を経て高分子に単量体単位で含まれている形態を意味する。
【0024】
本明細書において、上記「無溶剤型」組成物とは、溶剤型組成物と区別されるものであって、上記組成物が有機溶剤又は水性溶剤などの溶剤を含まないことを意味する。組成物が溶剤を含まないので、偏光子上のコーティング効率を高めることができ、厚さのバラツキが実質的に存在しない均一なコーティング層の製造が可能である。また、溶剤を排除することで、溶剤の揮発工程などによって誘発される気泡の発生やレベリング(leveling)の低下を防止し、厚さが厚いながらも均一なフィルムを効果的に製造することができる。また、溶剤の揮発工程が要求されないので、工程中に汚染が誘発されない。
【0025】
本明細書において、偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、偏光板保護層を形成する時に使用されることができる。上記偏光板保護層は、偏光子のある一面又は両面に形成されるものであって、接着剤層を介することなく偏光子のある一面又は両面に直接接して形成されるものである。
【0026】
本明細書において、偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、上記(メタ)アクリレート系単量体を重合単位として含むアクリル系プレポリマーを含む。上記「プレポリマー」は、重合反応がより速く進行され得る中間状態のポリマーを意味する。また、上記アクリル系プレポリマーは、側鎖又は末端に光反応性基を有することができる。
【0027】
本明細書において、上記「プレポリマー」は、「塊状(bulk)重合したプレポリマー」と「ポリマー化していない(メタ)アクリレート系単量体」とを含む混合物である。このとき、塊状(bulk) 重合したプレポリマーは、側鎖又は末端に光反応性基を有することもできる。重合反応時、プレポリマーとポリマー化していない(メタ)アクリレート系単量体との含量比を調節して、部分重合されたプレポリマーの分子量及び粘度調節が容易にできるという長所がある。
【0028】
本明細書において、上記「重合体成分」は、2以上の単量体を重合された形態で含む高分子量の成分を総称する意味である。例えば、上記重合体成分とは、オリゴマー又はポリマーのような成分を意味することができる。また、単量体が部分重合された状態も含むものであって、未反応の単量体成分も含むものと理解されることができる。
【0029】
本明細書において、上記「単量体」は、化合物が重合反応によって高分子化合物に転換され得る単位化合物を意味する。
【0030】
本明細書において、上記「オリゴマー」は、比較的に繰り返し単位が小さい低分子量の重合体を意味し、重量平均分子量40,000以下又は数平均分子量15,000以下又は粘度平均分子量 15,000以下の繰り返し単位が数十~数千である重合体を意味する。
【0031】
本明細書において、上記「ポリマー」は、分子量がオリゴマーよりもさらに大きい化合物であって、単量体又はオリゴマーが複数重合されてなる化合物を意味する。
【0032】
本明細書において、上記「光硬化性樹脂組成物」とは、光の照射(光照射)によって硬化する組成物を意味する。
【0033】
本明細書において、「光照射」は、光開始剤又は重合性化合物に影響を与えて重合反応を誘発することができる電磁波の照射を意味する。上記電磁波は、マイクロ波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線などがある。
【0034】
本明細書において、上記「光反応性基」は、電磁波の照射によって重合又は架橋反応が誘導され得る官能基を総称する意味である。
【0035】
本明細書において、上記「電磁波」は、マイクロ波、赤外線、X線、ガンマ線、アルファ粒子線、プロトンビーム、ニュートロンビーム及び電子線のような粒子ビームを総称する意味であり、例えば、紫外線が挙げられる。光反応性基を有する重合体成分を含んで、本明細書の一実施態様に係る組成物は、光硬化性組成物から構成されることができる。
【0036】
本明細書において、上記「反応性単量体」は、上記(メタ)アクリレート系単量体と共重合されることができる単量体であって、重合後に重合体の側鎖又は末端に反応性基を提供することができる単量体を意味することができる。すなわち、上記「反応性単量体」は、上記(メタ)アクリレート系単量体と共重合が可能な極性単量体である。
【0037】
本明細書において、上記「ガラス転移温度」は、ガラス転移を起こす温度を意味する。
【0038】
本明細書の一実施態様において、上記「アクリル系プレポリマー」は、塊状重合(bulk-polymerization)、特に、塊状重合による部分重合方式で形成されたものであってもよい。すなわち、塊状重合に含まれる単量体のうち一部が未反応の単量体状態で残っていることができる。例えば、上記アクリル系プレポリマーは、(メタ)アクリレート系単量体及び反応性単量体を含む単量体混合物の部分重合物;及び上記部分重合物内で上記反応性基と結合した状態で光反応性基を提供している化合物を含むものであってもよい。
【0039】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーは、(メタ)アクリレート系単量体及び反応性単量体を含む単量体混合物の部分重合物であってもよい。具体的に、上記アクリル系プレポリマーは、(メタ)アクリレート系単量体及び反応性単量体を含むことができる。
【0040】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーは、(メタ)アクリレート系単量体を重合単位として含むアクリル系プレポリマー;及び単量体混合物を含み、上記単量体混合物は、 (メタ)アクリレート系単量体及び反応性単量体を含むことができる。上記(メタ)アクリレート系単量体及び反応性単量体を含む単量体混合物を部分重合すれば、単量体混合物に含まれている一部の単量体は重合されて重合体成分を形成し、それ以外の単量体は、単量体成分として組成物内に含まれることができる。
【0041】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーは、部分重合樹脂であってもよい。
【0042】
本明細書の一実施態様において、上記単量体混合物に含まれる(メタ)アクリレート系単量体の種類は、特に制限されず、好ましくはアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体であってもよい。
【0043】
本明細書の一実施態様において、上記アルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、 メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートなどのような炭素数1~14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの一種又は二種以上を使用することができる。また、(メタ)アクリレート系単量体としてイソボルニルアクリレートなどのような高いガラス転移温度を有する単量体を含むこともできる。
【0044】
本明細書の一実施態様において、上記反応性単量体の例としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択された一つ以上の官能基を有する単量体が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基又はカルボキシル基を有する単量体であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0045】
本明細書の一実施態様において、上記ヒドロキシ基を有する反応性単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどを使用することができ、反応性基としてカルボキシル基を有する共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸又はマレイン酸無水物などが挙げられる。
【0046】
本明細書の一実施態様において、上記単量体混合物は、上記単量体混合物の全体100重量部を基準に(メタ)アクリレート系単量体70~99重量部及び反応性単量体1~30重量部を含むことができ、好ましくは(メタ)アクリレート系単量体90~99重量部及び反応性単量体1~10重量部を含むことができる。上記数値範囲を満たすとき、組成物の粘度がコーティングに適する程度に調節されることができる。
【0047】
本明細書において、単位「重量部」は、重量比率を意味する。単量体間の重量比率が上記の通りである場合、組成物の硬化性を優秀に維持し、また組成物内で相分離が起こるなどの理由で組成物又はその硬化物の透明性が低下する現象を防止することができる。
【0048】
本明細書の一実施態様において、上記単量体混合物は、上述した単量体以外にも機能性単量体をさらに含むことができる。
【0049】
本明細書の一実施態様において、上記のような単量体混合物を部分重合する場合、部分重合の程度は特に制限されず、目的に応じて調節されることができる。例えば、上記部分重合の程度は、上記組成物が後述する粘度の範囲を満たすことができる範囲内で調節されることができる。
【0050】
本明細書の一実施態様において、上記偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、イソシアネート系架橋剤を含む。偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物が架橋剤をさらに含む場合、組成物と偏光子との化学的結合が誘導されて、高温及び高湿環境で保護層と偏光子との密着力に優れるという長所がある。
【0051】
本明細書の一実施態様において、上記イソシアネート系架橋剤は、(メタ)アクリレート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α、α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート;ビニルイソシアネート;アリルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物を(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルと反応させて得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルを反応させて得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸;又は3-メタクリロキシプロピルジメチルクロロシランなどの一種又は二種以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。上記イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート官能基を含んでいて、偏光子の水酸基(-OH)とウレタン(Urethane)結合を形成することができ、これを通じて、高温高湿環境下で偏光子と保護層との密着性に優れる効果を奏する。
【0052】
本明細書の一実施態様において、上記イソシアネート系架橋剤の好ましい例としては、イソシアネート(-NCO)官能基とアクリレート官能基とを同時に有するイソシアネート系架橋剤が挙げられる。例えば、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート(AOI)が挙げられる。上記イソシアネート系架橋剤は、アクリレート官能基を含んでいて、光の照射によって保護層が硬化することができるので、工程の経済性が大きく改善する長所がある。
【0053】
本明細書の一実施態様において、上記イソシアネート系架橋剤は、上記アクリル系プレポリマー100重量部に対して5~30重量部で含まれることができ、好ましくは上記アクリル系プレポリマー100重量部に対して10~20重量部で含まれることができる。上記イソシアネート系架橋剤が上記数値範囲の重量部で含まれる場合、硬化物の凝集力が適切に制御されて接着信頼性が向上し、流動性に優れ、偏光子に対する接着力に優れる長所がある。
【0054】
本明細書の一実施態様において、上記偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、光開始剤をさらに含むことができる。
【0055】
上記光開始剤の例としては、α-ヒドロキシケトン系化合物(ex. IRGACURE 184, IRGACURE 500, IRGACURE 2959, DAROCUR 1173;Ciba Specialty Chemicals製);フェニルグリオキシレート (phenylglyoxylate)系化合物(ex. IRGACURE 754, DAROCUR MBF;Ciba Specialty Chemicals製);ベンジルジメチルケタール系化合物(ex. IRGACURE 651;Ciba Specialty Chemicals製);α-アミノケトン系化合物(ex. IRGACURE 369, IRGACURE 907, IRGACURE 1300;Ciba Specialty Chemicals製);モノアシルホスフィン系化合物(MAPO)(ex. DAROCUR TPO;Ciba Specialty Chemicals製);ビスアシルホスフェン系化合物(BAPO)(ex. IRGACURE 819, IRGACURE 819DW;Ciba Specialty Chemicals製);ホスフィンオキシド系化合物(ex. IRGACURE 2100;Ciba Specialty Chemicals製);メタロセン系化合物(ex. IRGACURE 784;Ciba Specialty Chemicals製);ヨードニウム塩(iodonium salt)(ex. IRGACURE 250;Ciba Specialty Chemicals製);及び上記のうち一つ以上の混合物(ex. DAROCUR 4265, IRGACURE 2022, IRGACURE 1300, IRGACURE 2005, IRGACURE 2010, IRGACURE 2020;Ciba Specialty Chemicals製)などが挙げられる。本明細書においては、上記のうち一種又は二種以上を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0056】
本明細書の一実施態様において、上記光開始剤は、上記アクリル系プレポリマー100重量部に対して0.01重量部~5重量部で含まれることができる。光開始剤が上記数値範囲の含量で含まれる場合、紫外線が保護層の内部まで到逹し、重合率に優れ、生成する重合体の分子量が小さくなることを防止することができる。これにより、形成される保護層の凝集力に優れ、偏光子に対する接着力に優れる長所がある。
【0057】
本明細書の一実施態様において、上記無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、染料、顔料、エポキシ樹脂、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤、光増粘剤及び可塑剤からなる群より選択される1以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0058】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーの分子量は、300,000以上 2,000,000以下、好ましくは300,000以上1,000,000以下、より好ましくは300,000以上500,000である。上記範囲を満たす場合、光硬化反応時に高い転換率を有する効果があり、高い転換率によって硬化速度が上昇する長所がある。
【0059】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーの重量平均分子量(Mw)は、30万~200万以下である。上記重量平均分子量(Mw)は、分子の重量分布に関係する平均分子量を意味し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって換算して求めることができる。
【0060】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーの数平均分子量(Mn)は、100,000~1,000,000以下である。上記数平均分子量(Mn)は、分子量分布を有する高分子化合物の成分分子種の分子量を数分率あるいはモル分率で平均して得られる平均分子量であって、膜浸透圧法で測定されることができる。
【0061】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーの分子量分布指数(PDI)は、2以上10以下であり、好ましくは3以上5以下である。上記分子量分布指数(PDI)は、高分子物質内の分子量の分布を示す概念で、重量平均分子量の数平均分子量に対する比を意味する。この値が1に近いほど、分布が少なくなっていることを意味する。
【0062】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーの25℃における粘度は、50cPs以上500cPs以下、好ましくは100cPs以上450cPs以下、より好ましくは200cPs以上450cPs以下である。25℃における粘度が上記範囲を満たす場合、偏光子上に均一な厚さのコーティング層の形成が容易であり、上記アクリル系プレポリマーを含む組成物をコーティングする工程を行うとき、別途の追加工程なしにも偏光子上に組成物が均一に塗布されて、工程が簡単になる長所がある。
【0063】
本明細書の「粘度」は、この技術分野で使用される通常の方法によって測定されることができる。 例えば、常温(25℃)及び18番スピンドル(Spindle)でブルックフィールド(Brookfield) 粘度計を利用して5分間粘度を測定することができる。このとき測定されるプレポリマー又は組成物の量は、6.5mL以上10mL以下であってもよい。
【0064】
本明細書の一実施態様において、上記偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物の粘度は、50cPs以上300cPs以下、好ましくは50cPs以上250cPs以下、より好ましくは50cPs以上200cPs以下である。上記数値範囲を満たす場合、組成物の凝集力が適切に調節されて組成物の偏光子に対する接着力が大きく、偏光子に対するコーティング性に優れて保護層が均一に形成できる長所がある。
【0065】
本明細書において、上記のような単量体混合物を部分重合する場合、部分重合の程度は「プレポリマーの重合度」と表現されることができる。上記重合度は、重合反応に使用される単量体のうち高分子に重合された単量体の重量比率を意味する。
【0066】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーの重合度は、5%以上20%以下、好ましくは5%以上15%、より好ましくは5%以上10%以下であってもよい。上記数値範囲を満たす場合、組成物の粘度が適正範囲に維持されてコーティング性に優れ、加工性が高い長所がある。また、ガラス転移温度を高く維持することができ、高温環境下で耐水性及び耐久性に優れた偏光板保護層を形成できるという長所がある。
【0067】
本明細書において、上記アクリル系プレポリマーの重合度は、全体重合されていない(メタ)アクリレート単量体の固形分重量に対する重合された(メタ)アクリレート単量体の固形分重量を意味する。
【0068】
本明細書の一実施態様において、上記偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物の固形分含量は、99.7%以上、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上であってもよい。
【0069】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系プレポリマーのガラス転移温度は、80℃以上100℃以下、好ましくは80℃以上95℃以下、より好ましくは80℃以上90℃以下である。本明細書の一実施態様に係る無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、アクリル系プレポリマーとしてガラス転移温度の高い(メタ)アクリレート系単量体を使用し、反応性単量体を使用して偏光子との接着が容易である。アクリル系プレポリマーのガラス転移温度が高い場合、偏光子との接着力確保のために反応性単量体の含量比を増加させる場合にも、無溶剤型光硬化性樹脂組成物のガラス転移温度が高く維持されて、高温での耐久性に優れる長所がある。
【0070】
本明細書の一実施態様において、上記無溶剤型光硬化性樹脂組成物のガラス転移温度は、80℃ 以上120℃以下であり、好ましくは85℃以上120℃以下、より好ましくは90℃以上120℃以下である。無溶剤型光硬化性樹脂組成物のガラス転移温度が上記範囲を満たすとき、偏光板の高温耐久性が確保されることができる。具体的に、本明細書の一実施態様に係る無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、イソシアネート系架橋剤を含んで, 硬化時に鎖(chain)と偏光子(PVA)間の架橋を通じて長い高分子を形成するので、弾性率が高く、ガラス転移温度が高くて高温での耐久性に優れている。
【0071】
本明細書において、上記ガラス転移温度は、この技術分野で通常使用される方法によって測定されることができる。例えば、アクリル系プレポリマー又は無溶剤型光硬化性樹脂組成物を離型フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム) の間に厚さ2~3μmで塗布し、光量1000mJ/cm以上の条件で紫外線を照射して硬化させた後、離型フィルムを除去して試験片を作製する。そして、この試験サンプルをアルミニウム製のオープンセルで約1~10mg秤量し、温度変調DSCを利用して50ml/minの窒素雰囲気下で昇温速度10℃/minで組成物のリバーシングヒートフロー(Reversing Heat Flow)(比熱成分)の挙動を得る。上記リバーシングヒートフローの低温側のベースラインと高温側のベースラインを延ばした直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交差する点の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
【0072】
偏光板
以下、本明細書の偏光板について説明する。
【0073】
本明細書は、偏光子;及び上記偏光子の一面又は両面に備えられた保護層を含む偏光板であって、上記保護層は、上述した偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物の硬化物である、偏光板を提供する。本明細書の偏光板は、従来の偏光板のような別途の接着剤層なしに偏光子の一面又は両面に直接保護層を備えることで、高温で偏光子収縮により発生する応力によって偏光子が割れることを防止できる長所がある。
【0074】
本明細書の一実施態様において、上記偏光板は、偏光子;上記偏光子の一面に備えられた保護層;上記偏光子の他面に備えられた保護フィルム;及び上記偏光子の他面及び保護フィルムの間に備えられた接着剤層を含み、上記保護層は、上述した偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物の硬化物であってもよい。
【0075】
本明細書の一実施態様において、上記偏光板は、偏光子;及び上記偏光子の両面にそれぞれ備えられた保護層を含む偏光板であって、上記保護層は、上述した偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物の硬化物であってもよい。
【0076】
偏光子
本明細書において、上記「偏光子」は、保護層(又は保護フィルム)を含まない状態を意味し、 上記「偏光板」は、偏光子と保護層(又は保護フィルム)とを含む状態を意味する。
【0077】
本明細書の一実施態様において、上記偏光子は、当該技術分野でよく知られている偏光子、例えばヨウ素又は二色性染料を含むポリビニルアルコール系フィルムを使用することができる。上記偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を染着させて製造されることができるが、これの製造方法は特に限定されない。
【0078】
本明細書の一実施態様において、上記ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂又はその誘導体を含むものであれば、特に制限なく使用可能である。このとき、上記ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、これに限定されるものではないが、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。又は、上記ポリビニルアルコール系フィルムは、当該技術分野において偏光子の製造に一般的に使用される市販のポリビニルアルコール系フィルム、例えば、クラレ社のP30、PE30、PE60、日本合成社のM2000、M3000、M6000などを使用することもできる。
【0079】
本明細書の一実施態様において、上記ポリビニルアルコール系フィルムの重合度が1,000以上10,000以下、好ましくは1,500以上5,000以下であることが好ましい。重合度が上記範囲を満たすとき、分子の動きが自由で、ヨウ素又は二色性染料などと柔軟に混合されることができるからである。
【0080】
本明細書の一実施態様において、上記偏光子の厚さが、12μm以上40μm以下、好ましくは12μm以上25μmであってもよい。偏光子の厚さが上記範囲より薄ければ、光学特性が低下することがあり、上記範囲より厚ければ、低温(-30℃程度)での偏光子収縮量が大きくなって、偏光板の熱に関する耐久性に問題が生じ得る。
【0081】
保護フィルム
本明細書において、上記保護フィルムは、偏光子を支持及び保護するためのものであって、当該技術分野で一般的に知られている多様な材質の保護フィルム、例えば、セルロース系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET, polyethylene terephthalate)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP, cycloolefin polymer)フィルム、アクリル系フィルムなどが制限なく使用されることができる。この中でも光学特性、耐久性、経済性などを考慮するとき、アクリル系フィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することが特に好ましい。
【0082】
本明細書の一実施態様において、上記アクリル系フィルムは、アクリル系樹脂を主成分として含む成形材料を押出成形によって成形して得ることができる。このとき、上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリレート系単位を含む樹脂を主成分とするものであって、(メタ)アクリレート系単位からなるホモポリマー樹脂だけでなく、(メタ)アクリレート系単位以外に他の単量体単位が共重合された共重合体樹脂及び上記のような(メタ)アクリレート系樹脂に他の樹脂がブレンドされたブレンド樹脂も含む概念である。
【0083】
本明細書において、上記(メタ)アクリレート系単位は、例えば、アルキル(メタ)アクリレート系単位であってもよい。ここで、上記アルキル(メタ)アクリレート系単位は、アルキルアクリレート系単位及びアルキルメタクリレート系単位をいずれも意味するものであって、上記アルキル(メタ)アクリレート系単位のアルキル基は、炭素数1~10であることが好ましく、炭素数1~4であることがより好ましい。
【0084】
本明細書において、上記(メタ)アクリレート系単位と共重合が可能な単量体単位としては、スチレン系単位、マレイン酸無水物系単位、マレイミド系単位などが挙げられる。このとき、上記スチレン系単位としては、これに限定されるものではないが、スチレン、α-メチルスチレンなどがその例として挙げられ;上記マレイン酸無水物系単量体としては、これに限定されるものではないが、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸無水物、プロピルマレイン酸無水物、イソプロピルマレイン酸無水物、シクロヘキシルマレイン酸無水物、フェニルマレイン酸無水物などがその例として挙げられ;上記マレイミド系単量体としては、これに限定されるものではないが、マレイミド、N-メチルマレイミド、 N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどがその例として挙げられ、これらは単独で又は混合して使用されることができる。
【0085】
本明細書において、上記アクリル系樹脂は、芳香族環を有するアクリル系樹脂であってもよく、芳香族環を有するアクリル系樹脂としては、韓国公開特許第10-2009-0115040号に記載された樹脂組成物が挙げられる。
【0086】
本明細書において、上記アクリル系樹脂は、ラクトン環構造を有するアクリル系樹脂であってもよく、ラクトン環構造を有するアクリル系樹脂の具体的な例としては、例えば日本国特開2000-230016号公報、日本国特開2001-151814号公報、日本国特開2002-120326号公報などに記載されたラクトン環構造を有するアクリル系樹脂が挙げられる。
【0087】
本明細書において、上記アクリル系フィルムの製造方法は、特に限定されず、例えばアクリル系樹脂とその他の重合体、添加剤などを任意の適切な混合方法によって十分に混合して熱可塑性樹脂組成物を製造した後、これをフィルム成形して製造するか、又はアクリル系樹脂と、その他の重合体、添加剤などを別途の溶液に製造した後、混合して均一な混合液を形成した後、これをフィルム成形することもできる。上記フィルム成形の方法としては、例えば溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など任意の適切なフィルム成形法が挙げられる。
【0088】
本明細書において、上記アクリル系フィルムの場合、スリップ性付与及びラジカル硬化型組成物との接着力改善のために、一面にプライマー層を含むこともできる。このとき、上記プライマー層は、水分散性高分子樹脂、水分散性微粒子及び水を含むコーティング液をバーコーティング法、グラビアコーティング法などを利用してアクリル系フィルム上に塗布して乾燥する方法によって形成されることができる。上記水分散性高分子樹脂は、例えば、水分散ポリウレタン系樹脂、水分散アクリル系樹脂、水分散ポリエステル系樹脂又はこれらの組み合わせなどであってもよく、水分散性微粒子は、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニアなどの無機系微粒子や、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、架橋ポリビニルアルコール及びメラミン系樹脂からなる有機系微粒子又はこれらの組み合わせを利用することができるが、これに限定されるものではない。
【0089】
本明細書において、上記アクリル系フィルムには、必要な場合、接着力向上のための表面処理が施されることができ、例えば上記光学フィルムの少なくとも一面にアルカリ処理、コロナ処理、及びプラズマ処理からなる群より選択される少なくとも一つの表面処理を施すことができる。
【0090】
本明細書において、上記偏光子と保護フィルムとの貼付は、ロールコーター、グラビアコーター、バーコーター、ナイフコーター又はキャピラリーコーターなどを使用して偏光子又は保護フィルムの表面に接着剤をコーティングした後、これらを貼り合わせロールで加熱貼り合わせするか、常温圧着して貼り合わせる方法、又は、貼り合わせ後、UV照射する方法などによって行われることができる。一方、上記接着剤としては、当該技術分野で使用される多様な偏光板用接着剤、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、カチオン系又はラジカル系接着剤などが制限なく使用されることができる。
【0091】
本明細書の一実施態様において、上記保護フィルムの厚さが30μm以上100μm以下、より好ましくは40μm以上80μm以下である。保護フィルムの厚さが上記範囲より薄い場合には、偏光子の収縮による応力がそのまま伝達されて熱衝撃によるクラックが発生することがあり、上記範囲より厚い場合には、偏光板の薄型化が難しいことがある。
【0092】
保護層
本明細書の一実施態様において、上記偏光板は、偏光子;及び上記偏光子の一面又は両面に備えられた保護層を含む偏光板であって、上記保護層は、上述した偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物(以下、保護層組成物)の硬化物である。
【0093】
本明細書において、上記保護層は、偏光子を支持及び保護するためのものであって、当該技術分野でよく知られている方法によって形成されることができる。
【0094】
本明細書において、上記保護層は、上記保護層組成物を偏光子の一面又は両面にコーティングした後、これを硬化させる方法によって形成される。
【0095】
本明細書の一実施態様において、上記保護層組成物をコーティングする方法としては、例えば、コーターを利用したコーティング方法がある。上記コーターとしては、例えば、リバースロールコーター、正回転ロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スロットダイコーター、スロットオリフィスコーター、カーテンコーター、ファウンテンコーター、エアドクターコーター、キスコーター、ディップコーター、ビードコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スプレーコーター、スピンコーター、バーコーター、押出コーター、ホットメルトコーターなどが挙げられる。上記コーターは、好ましくは、リバースロールコーター、正回転ロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、スロットダイコーター、スロットオリフィスコーター、カーテンコーター、及びファウンテンコーターである。上記コーターを利用した塗工方法であれば、厚さのバラツキの小さい、すなわち均一な厚さの硬化樹脂層を得ることができるので、好ましい。
【0096】
本明細書の一実施態様において、上記偏光子の一面又は両面にコーティングされた組成物を硬化させる方法としては、紫外線を照射する方法によるものであってもよい。
【0097】
本明細書の一実施態様において、上記紫外線照射手段は、光源、照射器、冷却装置及び電源装置を含むことができる。
【0098】
本明細書の一実施態様において、上記紫外線の光源としては、高圧水銀ランプ、オゾンレス水銀ランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ、メタルハライドランプなどがある。
【0099】
本明細書の一実施態様において、上記紫外線の波長の範囲は、100nm以上400nm以下、好ましくは320nm以上400nm以下である。
【0100】
本明細書の一実施態様において、上記照射光の光量は、100mJ/cm以上1,000mJ/cm以下、好ましくは500mJ/cm以上1,000mJ/cm以下である。照射光の光量が上記の通りである場合、所望の範囲の分子量及び転換率の調節が可能である。
【0101】
本明細書の一実施態様において、上記照射光の照射時間は、1秒以上10分以下、好ましくは2秒以上30秒以下である。照射光の照射時間が上記の通りである場合、光源から発生する熱を少なく受けて偏光子の工程中に発生し得る走行シワを最小限に抑えることができる。
【0102】
本明細書の一実施態様において、上記保護層の厚さは、4μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下であり、より好ましくは6μm以上8μm以下である。保護層の厚さが上記範囲より小さい場合には、保護層の強度や高温耐久性が低下する恐れがあり、上記範囲を超過する場合には、偏光板の薄型化の面で好適でない。
【0103】
本明細書の一実施態様において、上記保護層の弾性率は、常温(25℃)で1,500Mpa以上3,000Mpa以下であり、高温(80℃)で1,000Mpa以上2,500Mpa以下である。好ましくは、常温(25℃)で2,000Mpa以上3,000Mpa以下であり、高温(80℃)で1,500Mpa以上2,500Mpa以下である。上記保護層の弾性率は、30μm 以上50μm以下の厚さを有する単独の保護層を作製した後、DMA(Dynamic Mechanical Analysis)を使用してMulti-Frequency-Strainモード、昇温速度5℃/分の条件で-30℃から160℃に温度を上昇させながら測定することができる。
【0104】
粘着層
本明細書の一実施態様において、上記偏光板は、上記保護層の上部に粘着層をさらに含む。これは表示装置パネル又は位相差フィルムのような光学フィルムとの貼付のためのものである。
【0105】
本明細書の一実施態様において、上記粘着層は、当該技術分野でよく知られている多様な粘着剤を使用して形成されることができ、その種類が特に制限されるものではない。例えば、上記粘着層は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤などを利用して形成されることができる。この中でも透明性及び耐熱性などを考慮するとき、アクリル系粘着剤を使用することが特に好ましい。
【0106】
本明細書の一実施態様において、上記粘着層は、保護層の上部に粘着剤を塗布する方法で形成されることもでき、離型シート上に粘着剤を塗布した後、乾燥させて製造される粘着シートを保護層の上部に貼り付ける方法で形成されることもできる。
【0107】
画像表示装置
本明細書は、上述した偏光板を含む画像表示装置を提供する。
【0108】
本明細書の一実施態様において、上記偏光板は、液晶表示装置などのような画像表示装置に有用に適用されることができる。
【0109】
本明細書の一実施態様において、上記画像表示装置は、液晶パネル;上記液晶パネルの上面に備えられる上部偏光板;及び上記液晶パネルの下面に備えられる下部偏光板を含む。
【0110】
本明細書の一実施態様において、上記上部偏光板は、上述した偏光板である。
【0111】
本明細書の一実施態様において、上記下部偏光板は、上述した偏光板である。
【0112】
本明細書の一実施態様において、上記上部偏光板及び上記下部偏光板は、上述した偏光板である。
【0113】
本明細書の一実施態様において、上記液晶パネルの種類は特に限定されない。例えば、TN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、F(ferroelectic)型又はPD(polymer dispersed)型のようなパッシブマトリクス方式のパネル;2端子型(two terminal) 又は3端子型(three terminal)のようなアクティブマトリクス方式のパネル;横電界型(IPS;In Plane Switching)パネル及び垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルがいずれも適用されることができる。また、液晶表示装置を構成するその他の構成、例えば、上部及び下部基板(ex. カラーフィルタ基板又はアレイ基板)などの種類も特に制限されず、この分野で公知されている構成が制限なく採用されることができる。
【実施例
【0114】
以下、本発明の実施例について比較例と共に説明する。また、下記実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものであって、実施例によって本発明の範囲が制限されるものではない。
【0115】
[実施例]
(製造例A:アクリル系プレポリマーの製造)
窒素ガスが還流され、温度調節が容易に冷却装置を設けた反応器に、(メタ)アクリレート系単量体はイソボルニルアクリレート(iso-bornyl acrylate:IBOA)98重量部;及び架橋性単量体は4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-hydroxybutyl acrylate)2重量部を投入して部分重合させることで、粘度が400cPs~450cPsであり、重量平均分子量が300,000~360,000であり、PDIが3であるアクリル系プレポリマーを製造した。
【0116】
(製造例1:無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の製造)
上記製造例Aで製造されたアクリル系プレポリマー;上記アクリル系プレポリマー100重量部を基準に架橋剤として2-イソシアナトエチルアクリレート(2-isocyanatoethyl acrylate)20重量部;及び光開始剤としてIRG 819プレポリマー100重量部を基準に3重量部が含まれた無溶剤型光硬化性樹脂組成物1を製造した。上記無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の25℃における粘度は130cPsであった。
【0117】
(製造例2:無溶剤型光硬化性樹脂組成物2の製造)
上記架橋剤の含量が上記アクリル系プレポリマー100重量部を基準に10重量部であることを除き、製造例1と同じ方法で無溶剤型光硬化性樹脂組成物2を製造した。上記無溶剤型光硬化性樹脂組成物2の25℃における粘度は200cPsであった。
【0118】
(製造例3:無溶剤型光硬化性樹脂組成物3の製造)
上記架橋剤が含まれないことを除き、製造例1と同じ方法で無溶剤型光硬化性樹脂組成物3を製造した。上記無溶剤型光硬化性樹脂組成物3の25℃における粘度は300cPs以上であった。
【0119】
(製造例4:光硬化性樹脂組成物4の製造)
イソボルニルアクリレート(iso-bornyl acrylate:IBOA)98重量部;及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-hydroxybutyl acrylate)2重量部を混合して組成物を製造した。この組成物100重量部に対して架橋剤として2-イソシアナトエチルアクリレート(2-isocyanatoethyl acrylate)20重量部;及び光開始剤としてIRG 819 3重量部が含まれた光硬化性樹脂組成物4を製造した。すなわち、アクリレート系単量体が部分重合されていない単量体状態で混合された組成物を製造した。上記光硬化性樹脂組成物4の25℃における粘度は5.7cPsであった。
【0120】
(製造例5:光硬化性樹脂組成物5の製造)
上記架橋剤の含量が組成物100重量部に対して10重量部であることを除き、上記製造例4と同じ方法で光硬化性樹脂組成物5を製造し、25℃における粘度は6cPsであった。
【0121】
(製造例6:光硬化性樹脂組成物6の製造)
上記架橋剤がさらに含まれないことを除き、上記製造例5と同じ方法で光硬化性樹脂組成物6を製造し、25℃における粘度は8cPsであった。
【0122】
(製造例7:光硬化性樹脂組成物7の製造)
上記架橋剤として2-イソシアナトエチルアクリレート(2-isocyanatoethyl acrylate)の代わりにヘキサメチレンジイソシアネート(Hexamethylene diisocyanate)(HDI)イソシアヌレートトリマー(Isocyanurate Trimer)(商品名 TUL-100)を使用したこと以外には、上記製造例1と同じ方法で光硬化性樹脂組成物7を製造した。
【0123】
(製造例8:光硬化性樹脂組成物8の製造)
上記架橋剤の含量が組成物100重量部に対して10重量部であることを除き、上記製造例7と同じ方法で光硬化性樹脂組成物8を製造した。
【0124】
(製造例9:光硬化性樹脂組成物9の製造)
上記架橋剤として2-イソシアナトエチルアクリレート(2-isocyanatoethyl acrylate)の代わりにヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(hexamethylene diisocyanate-based polyisocyanate)(商品名 E402-100)を使用したこと以外には、上記製造例1と同じ方法で光硬化性樹脂組成物9を製造した。
【0125】
(製造例10:光硬化性樹脂組成物10の製造)
上記架橋剤の含量が組成物100重量部に対して10重量部であることを除き、上記製造例9と同じ方法で光硬化性樹脂組成物10を製造した。
【0126】
(製造例11:光硬化性樹脂組成物11の製造)
上記架橋剤として2-イソシアナトエチルアクリレート(2-isocyanatoethyl acrylate)の代わりにチタン系架橋剤であるチタンカップリング剤(Titanate Coupling Agent)(商品名 KR-44)を使用したこと以外には、上記製造例1と同じ方法で光硬化性樹脂組成物11を製造した。
【0127】
(製造例12:光硬化性樹脂組成物12の製造)
上記架橋剤の含量が組成物100重量部に対して10重量部であることを除き、上記製造例11と同じ方法で光硬化性樹脂組成物10を製造した。
【0128】
上記光硬化性樹脂組成物1~12の組成を比較して、下記表1及び表2に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
*IBOA:イソボルニルアクリレート
*4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
*AOI:アクリロイルオキシエチルアクリレート
*TUL-100:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)イソシアヌレートトリマー
*E402-100:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート
*KR-44:チタンカップリング剤
*IRG819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド)
*上記組成比はアクリル系プレポリマー100重量部基準である。
【0132】
<偏光板の製造>
【0133】
(実施例1)
ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムに二色性染料を染着させた後、一定の方向に延伸して架橋させる方法で偏光子を製造した。上記製造した偏光子の一面に厚さが2μm~3μmである接着剤層を介して保護フィルムを貼り付けた。具体的に、上記偏光子の反対面に接着剤組成物を塗布した後、保護フィルムを積層して、これを貼り合わせロールで加熱貼り合わせした後、紫外線を照射して接着剤組成物を硬化させた。上記保護フィルムとしては、PETフィルムが使用された。
【0134】
上記偏光子の保護フィルムが備えられた面の反対面には厚さが6μmの保護層を形成した。具体的に、上記偏光子の保護フィルムが備えられた面の反対面に、上記製造例1で製造された無溶剤型光硬化性樹脂組成物をバーコーター又はロールコーターを利用して塗布した後、波長範囲320nm~400nmの紫外線を500mJ/cm~1000mJ/cmの強さで2秒~30秒で照射して、無溶剤型光硬化性樹脂組成物を硬化させて保護層を形成した。
【0135】
(実施例2)
上記実施例1において、無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに無溶剤型光硬化性樹脂組成物 2を使用したことと、保護層の厚さが8μmであることを除き、上記実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0136】
(実施例3)
上記実施例2においてコーティング層の厚さが10μmであることを除き、実施例2と同じ方法で偏光板を製造した。
【0137】
(比較例1)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに無溶剤型光硬化性樹脂組成物3を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0138】
(比較例2)
保護層の厚さが8μmであることを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0139】
(比較例3)
保護層の厚さが10μmであることを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0140】
(比較例4)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに光硬化性樹脂組成物4を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で組成物をPVA偏光子にコーティングしたが、粘度が低くすぎてコーティング層が形成されなかった。
【0141】
(比較例5)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに光硬化性樹脂組成物5を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で組成物をPVA偏光子にコーティングしたが、粘度が低くすぎてコーティング層が形成されなかった。
【0142】
(比較例6)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに光硬化性樹脂組成物6を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0143】
(比較例7)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに無溶剤型光硬化性樹脂組成物7を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0144】
(比較例8)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに無溶剤型光硬化性樹脂組成物8を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0145】
(比較例9)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに無溶剤型光硬化性樹脂組成物9を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0146】
(比較例10)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに無溶剤型光硬化性樹脂組成物10を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0147】
(比較例11)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに無溶剤型光硬化性樹脂組成物11を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0148】
(比較例12)
無溶剤型光硬化性樹脂組成物1の代わりに無溶剤型光硬化性樹脂組成物12を使用したことを除き、上記実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0149】
<実験例>
実験例1:高温促進評価
上記実施例及び比較例で製造された偏光板でコーティング層を形成するための組成物がコーティングされる前に、先が鋭くないペンシル(pensil)を利用して500gの荷重でPVAフィルムの延伸方向に対して直角に掻いてクラックを発生させた。その後、バーコーティング(BAR COATING) 方式でコーティング層を形成した。その後、積層体を80℃の温度、大気(air)雰囲気及び湿度30%以下のチャンバーに300時間~500時間投入して、偏光子のクラック(Crack)部位でPVA収縮によってクラックが開いて光が漏れるかを観察して、全体クラックのうち光が漏れるクラックの数(以下、クラック比率)を計算し高温輝線変化を観察して、耐久性を下記基準で評価して表3に示す。
【0150】
高温促進評価の実験過程及び光学顕微鏡を通じて観察した輝線イメージを図5に示す。
【0151】
<高温促進評価基準>
〇:クラック比率が5%未満
△:クラック比率が20%以上30%未満
×:クラック比率が95%以上
【0152】
【表3】
【0153】
上記表3の結果から分かるように、保護層の材料として、アクリル系プレポリマーが部分重合されたものであって、イソシアネート系架橋剤を含む組成物を使用した実施例1~3の場合、クラック比率がほとんどないか、少ないことが示されているが、架橋剤を含んでいない比較例1~3の場合、クラック比率が100%であって、高温環境下で耐久性が非常に低下することが分かった。
【0154】
一方、アクリル系単量体が部分重合されていない比較例4~6の場合、粘度が下がって保護層形成自体が不可能であった。
【0155】
また、架橋剤としてAOIを使用していない比較例7~12の場合、高温環境下で耐久性が非常に低下することが分かった。
【0156】
すなわち、アクリル系プレポリマーが部分重合されたものであって、イソシアネート系架橋剤を含む組成物を使用して保護層を形成する場合には、高温環境下でも偏光子が収縮することを効果的に抑制して、光漏れ現象が防止できることが分かった。
【0157】
実験例2:高温耐水性評価
上記実施例及び比較例で製造された偏光板を60℃の水に24時間放置した後、偏光子の脱色有無及び偏光子と保護層との剥離有無を評価して、下記表4に示す。
【0158】
高温耐水性評価後、実施例1及び比較例1の偏光板の外観イメージを図6に示す。
【0159】
【表4】
【0160】
上記表4の結果から分かるように、保護層が実施例1~3の場合、偏光子の脱色現象が発生しなかったし、偏光子と保護層とが剥離されなかったが、比較例1~3の場合、偏光子と保護層とが剥離され、これにより偏光子が脱色する現象が発生したので、高温高湿環境下で耐久性が非常に低下することが分かった。
【0161】
一方、アクリル系単量体が部分重合されていない比較例4~6の場合、粘度が下がって保護層形成自体が不可能であった。
【0162】
また、架橋剤としてAOI架橋剤を使用していない場合、偏光子と保護層とが剥離され、偏光子が脱色する現象が発生する問題があることが分かった。
【0163】
すなわち、本発明に係る無溶剤型光硬化性樹脂組成物及び架橋剤を使用した実施例の場合、偏光子に直接塗布されて保護層を形成する場合、高温高湿環境下でも偏光子と保護層とが剥離されないため、偏光子の偏光素子が脱色することを防止できることが分かった。
【0164】
実験例3:コーティング性評価
本発明の保護層組成物は無溶剤型で且つ粘度が一定範囲に維持されているから、別途の溶媒乾燥過程が不要であり、コーティング性に優れる長所を有する。
【0165】
しかし、組成物の粘度が大きすぎる場合、コーティング性が顕著に低下する問題がある。特に、溶剤型の組成物を無溶剤の形態で製造する場合、パウダー(power)又はペレット(pellet)状になるため、基材や偏光子などにコーティングすることが難しいという問題がある。
【0166】
これを確認するために、溶剤型のアクリル系重合体組成物(商品名:EX18-1293、製造社:SAM YOUNGインキ)を準備した。上記溶剤型の組成物は、ポリメチルメタクリレート(Poly methylmethacrylate:PMMA)を主成分とし、溶媒はトルエン(toluene)溶媒を使用し、固形分が33%であり、25℃における粘度が9,000cPsであり、重量平均分子量(Mw)が150,000であった。
【0167】
上記溶剤型のアクリル系重合体組成物の溶媒を揮発させて、99%以上の固形分含量を有する組成物を製造する場合、図7から確認できるように、ペレット(pellet)状に変わるため、偏光子などにコーティングするのが非常に難しいということを確認した。
(付記)
(付記1)
(メタ)アクリレート系単量体を重合単位として含むアクリル系プレポリマー;及びイソシアネート系架橋剤を含み、
前記アクリル系プレポリマーは、部分重合された状態であり、
25℃における粘度は、50cPs以上300cPs以下のものである、偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記2)
前記アクリル系プレポリマーは、(メタ)アクリレート系単量体及び反応性単量体を含む単量体混合物の部分重合物である、付記1に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記3)
前記アクリル系プレポリマーは、(メタ)アクリレート系単量体を重合単位として含むアクリル系プレポリマー;及び単量体混合物を含み、前記単量体混合物は、(メタ)アクリレート系単量体及び反応性単量体を含むものである、付記1または2に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記4)
前記(メタ)アクリレート系単量体は、アルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体である、付記1~3のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記5)
前記アルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレートからなる群より選択される1又は2以上のものである、付記4に記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記6)
前記反応性単量体は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択された一つ以上の官能基を有する単量体である、付記2~4のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記7)
前記単量体混合物は、前記単量体混合物の全体100重量部を基準に、前記(メタ)アクリレート系単量体70~99重量部及び前記反応性単量体1~30重量部を含むものである、付記2~5のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記8)
前記イソシアネート系架橋剤は、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートである、付記1~7のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記9)
前記イソシアネート系架橋剤は、前記アクリル系プレポリマー100重量部に対して5~30重量部で含まれるものである、付記1~8のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記10)
光開始剤をさらに含むものである、付記1~9のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記11)
前記無溶剤型光硬化性樹脂組成物は、染料、顔料、エポキシ樹脂、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤, 消泡剤、界面活性剤、光増粘剤及び可塑剤からなる群より選択される1以上の添加剤をさらに含むものである、付記1~10のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記12)
前記アクリル系プレポリマーの分子量が、300,000以上2,000,000以下である、付記1~11のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記13)
前記アクリル系プレポリマーの重合度は、5%以上20%以下である、付記1~12のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記14)
固形分の含量が99.7%以上である、付記1~13のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物。
(付記15)
偏光子;及び
前記偏光子の一面又は両面に備えられた保護層を含む偏光板であって、
前記保護層は、付記1~14のいずれか一つに記載の偏光板保護層用の無溶剤型光硬化性樹脂組成物の硬化物である、偏光板。
(付記16)
前記保護層の厚さが、4μm以上11μm以下である、付記15に記載の偏光板。
(付記17)
前記保護層は、偏光子の両面にそれぞれ備えられるものである、付記15または16に記載の偏光板。
(付記18)
付記15~17のいずれか一つに記載の偏光板を含む画像表示装置。
【符号の説明】
【0168】
10:偏光子
20:保護層
30:保護フィルム
40:粘着層
100:偏光板
200:液晶パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7