(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】バイポーラプレート、燃料電池および自動車
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0267 20160101AFI20220215BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220215BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20220215BHJP
H01M 8/026 20160101ALI20220215BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20220215BHJP
【FI】
H01M8/0267
H01M8/00 Z
H01M8/0258
H01M8/026
H01M8/2483
(21)【出願番号】P 2020539228
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019050668
(87)【国際公開番号】W WO2019141601
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】102018200673.3
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ディックソン,ブライアン ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】ディソウザ,アンドリュー
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-268151(JP,A)
【文献】特開2006-196426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0025690(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107394228(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0267
H01M 8/00
H01M 8/0258
H01M 8/026
H01M 8/2483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ活性領域(AA)および2つの不活性領域(IA)を含む、アノード板(10)と、カソード板(11)と、を備えた燃料電池用のバイポーラプレートであって、各不活性領域(IA)は、反応ガスを供給および除去するための2つのメインガスポート(12,13)および冷却剤を供給および除去するための冷却剤メインポート(14)を有する供給領域(SA)と、2つのメインガスポート(12,13)および冷却剤メインポート(14)を活性領域(AA)に接続するための分配領域(DA)と、を有しており、アノード板(10)が、カソード板(11)とは反対側の面(15)に開放されたアノードガス通路(16)を有し、カソード板(11)が、アノード板(10)とは反対側の面(17)に開放されたカソードガス通路(18)を有し、かつ、アノード板(10)とカソード板(11)とが互いに向かい合う側の面(19,20)に閉鎖された冷却剤通路(21)を形成するように、アノード板(10)およびカソード板(11)が形成されるとともに互いに重ねて配置され、
アノードガス通路(16)およびカソードガス通路(18)は、それぞれ、メインガスポート(12,13)から分配領域(DA)を通して互いに重なり合うことなく案内されて、バイポーラプレートの両側で活性領域(AA)に合流し、活性領域(AA)内で方向転換されて、活性領域(AA)の幅全体に亘って分配され、
アノードガス通路(16)およびカソードガス通路(18)は、それぞれ、活性領域(AA)の幅全体に亘る分配に続いて、その反対側にある分配領域(DA)に向かって方向転換され、
冷却剤通路(21)は、分配領域(DA)内で分岐し、分岐に続いてアノードガス通路(16)およびカソードガス通路(18)に向かって方向転換されて、アノードガス通路(16)およびカソードガス通路(18)と重なり合う領域内において重なり合い、次いで冷却剤通路の各々は、一緒に方向転換されて、冷却剤通路(21)が、アノードガス通路(16)およびカソードガス通路(18)と重なり合うことなく、それらの通路と互い違いになるように活性領域(AA)へと合流して、活性領域(AA)を通して走り、かつ、アノードガス通路(16)およびカソードガス通路(18)と活性領域(AA)を通して平行に走る、燃料電池用のバイポーラプレート。
【請求項2】
バイポーラプレート(100)および/または活性領域(AA)が直角に形成されることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項3】
アノードガス通路(16)およびカソードガス通路(18)がそれぞれ直角に方向転換され、任意選択的に、冷却剤通路(21)が直角に分岐、方向転換されることを特徴とする請求項1または2に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項4】
供給領域(SA)内で、冷却剤メインポート(14)が、2つのメインガスポート(12,13)の間に配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項5】
冷却剤メインポート(14)から延在し、分配領域(DA)内で行き止まりになって終端する第1の冷却剤通路(21a)と、活性領域(AA)から延在し、分配領域(DA)内で行き止まりになって終端する第2の冷却剤通路(21b)とが、分岐した冷却剤通路(21)を形成するようにアノード板(10)の両方の分配領域(DA)に設けられ、
冷却剤メインポート(14)から延在し、分配領域(DA)内で行き止まりになって終端する第1の冷却剤通路(21a)と、活性領域(AA)から延在し、分配領域(DA)内で行き止まりになって終端する第2の冷却剤通路(21b)とが、カソード板(11)の両方の分配領域(DA)に設けられ、
アノード板(10)の第1の冷却剤通路(21a)は、カソード板(11)の第2の冷却剤通路(21b)に接続され、カソード板(11)の第1の冷却剤通路(21a)は、アノード板(10)の第2の冷却剤通路(21b)に流体的に連結されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項6】
分配領域(DA)内で、冷却剤通路(21,21a,21b)が、異なる領域において異なる流れ面積および/または高さを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のバイポーラプレート(100)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の少なくとも2つのバイポーラプレート(100)と、それらの間に配置された膜電極ユニットと、を備えた、燃料電池。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池を備えた自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ活性領域および2つの不活性領域を含むアノード板およびカソード板を含む燃料電池用のバイポーラプレートであって、各不活性領域は、それらの間で反応ガスを供給および除去するための2つのメインガスポート、および冷却剤を供給および除去するための冷却剤メインポートを含む供給領域と、2つのメインガスポートおよび冷却剤メインポートを活性領域に接続するための分配領域と、を有しており、アノード板とカソード板が形成されるとともに互いに重ねて配置され、アノード板が、カソード板とは反対側の面に開放されたアノードガス通路を有し、カソード板が、アノード板とは反対側の面に開放されたカソードガス通路を有し、かつアノード板とカソード板とが互いに向かい合う側の面に閉鎖された冷却剤通路を形成するように、アノード板およびカソード板が形成されるとともに互いに重ねて配置された、バイポーラプレート、燃料電池および自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料と酸素の化学反応を利用して、電気エネルギーが生成される過程で水を形成する。この目的のために、燃料電池は、コア構成要素として、いわゆる膜電極アセンブリ(MEA)を含み、このアセンブリは、それぞれ、プロトン伝導膜と、その膜の両側に配置された電極(アノードとカソード)で構成される組分けである。燃料電池の動作中、燃料、特に水素H2または水素含有ガス混合物がアノードに供給され、そこで電子の供与により電気化学的酸化が生じる(H2→2H++2e-)。
【0003】
電気的に絶縁されたアノードコンパートメントからカソードコンパートメントへのプロトンH+の(水性のまたは水なしの)移動が発生する。アノードで提供された電子は、電線を介してカソードに供給される。酸素または酸素含有ガス混合物がカソードに供給され、電子の受け入れにより酸素の還元が生じる(1/2O2+2e-→O2-)。同時に、カソードコンパートメント内のこれらの酸素アニオンは、膜を介して伝達されたプロトンと反応して水(2H++O2-→H2O)を形成する。化学物質を直接電気エネルギーに変換することにより、燃料電池は、カルノー因子をバイパスすることで、他の発電機と比較して効率を向上させる。とりわけ水素と比較して酸素の拡散速度が低いため、カソード反応は燃料電池反応の律速部分である。
【0004】
燃料電池は、一般に、スタックに配置された複数の膜電極アセンブリによって形成され、その電力量が加算される。バイポーラプレートは、燃料電池スタックの2つの膜電極アセンブリのそれぞれの間に配置され、バイポーラプレートは、隣接する膜電極アセンブリのアノードおよびカソードにそれぞれプロセスガスを供給するための通路と、熱を除去するための冷却チャネルと、を含む。バイポーラプレートは、電気的接続を確立するための導電性材料で構成される。したがって、それらは、膜電極アセンブリへのプロセスガスの供給、冷却、および電気的接続の三重機能を有する。
【0005】
バイポーラプレートには、プロセスガスの主な流れ方向に連続して配置されたさまざまな領域が含まれる。具体的には、最初に、反応物および/または冷却剤が供給される主要な通路または流体ポートが存在する。次に、流入領域が続き、分配構造へとつながる。分配構造は、流体を分配し、次に、流体は、上記の化学反応が起こる流れ場に供給される。
【0006】
例えば、反応ガス通路および冷却剤通路を形成するように、外側および互いに面する側に溝形状の凹部を含む2部品のバイポーラプレートが、特許文献1、特許文献2、および特許文献3から知られている。
【0007】
一般的には、すべての作動媒体は、例えば、このようにして形成された基本形状が三角形である分配構造の領域において、次々に案内される。この三角形の形状では、媒体は方向付けられた通路を介して案内され、その流れ場の幅全体に亘って作動媒体を供給する。
【0008】
これらの分配構造は、通常、多くのスペースが必要であり、バイポーラプレート内の異なる流れ領域を有する3つの媒体すべてを相互に誘導することにより、とりわけ、同じ圧力で問題が発生する可能性があるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第10330832号明細書
【文献】独国特許出願公開第102010039276号明細書
【文献】独国特許出願公開第102010004160号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に回避するバイポーラプレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載のバイポーラプレート、請求項7に記載の燃料電池、または請求項8に記載の自動車によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の対象物である。
【0012】
アノード板およびカソード板を有する燃料電池用の1つの好ましくは長方形のバイポーラプレートが提供され、好ましくは長方形の活性領域および2つの不活性領域のそれぞれが提供され、それらの不活性領域は好ましくは活性領域の両側に配置される。
【0013】
長方形の活性領域を有する長方形のバイポーラプレートは、本発明による設計により、電力密度が増加し、特に、MEAの材料利用の改善を可能にするという利点を提供する。
【0014】
この文脈において、2つの不活性領域は必ずしも2つの不活性領域のみが存在し得ることを意味するのではなく、バイポーラプレートの特定の実施形態では3つ以上の不活性領域が提供され得る。
【0015】
反応ガス、特に、アノードガスおよびカソードガスを供給および除去するための2つのメインガスポートと、冷却剤を供給および除去するための冷却剤メインポートと、を含む供給領域、ならびに、それらのメインガスポートおよび冷却剤メインポートを反応領域に接続するための分配領域の各々が、両方の不活性領域に配置される。
【0016】
アノード板がカソード板とは反対側の面に開放された(open)アノードガス通路を有し、カソード板がアノード板とは反対側の面に開放されたカソードガス通路を有し、かつ、アノード板とカソード板とが互いに向かい合う側に閉鎖された(closed)冷却剤通路を形成するように、アノード板およびカソード板が形成されるとともに互いの上に配置される。
【0017】
閉鎖された(closed)冷却剤通路とは、アノード板とカソード板とが互いの上に配置された状態で冷却剤通路が閉じられ、それ以外はアノード板およびカソード板内で開放された構造になっていることを意味する。
【0018】
本発明によるバイポーラプレートで構成された燃料電池では、反応ガス通路は、MEAによって覆われている。
【0019】
本発明によれば、アノードガス通路およびカソードガス通路は、重なり合うことなく、それぞれのメインガスポートから分配領域を介して活性領域に導かれる。
【0020】
重なり合わないということは、アノード板およびカソード板の両方の分配領域において、アノードガス通路およびカソードガス通路が互いの上に導かれていないことを意味する。
【0021】
アノードガス通路は、一方の側で活性領域と合流し、カソードガス領域は、他方の側で活性領域と合流して、以下に説明するように反応ガス通路の分配を容易にするように、それらは互いにできるだけ離れていることが好ましい。
【0022】
次に、それらの通路は活性領域内で方向転換(diverted)され、活性領域の幅全体に亘って分配され、活性領域の幅全体の分配に続いて、それぞれ反対側の分配領域に向かって方向転換される。
【0023】
アノードガス通路とカソードガス通路も互いに重なり合うことなく走るので、活性領域の幅全体にわたる分配はスペースを必要とする。以下、この空間を活性分配領域とも呼ぶ。
【0024】
したがって、バイポーラプレートの縁部に向かって配置された反応ガス通路は、反対側の分配領域に直接導かれ、バイポーラプレートの中心の最も近くに配置された反応ガス通路は、第1の反応ガス通路として方向転換される。それらの間に位置する反応ガス通路は、それらが重なり合わない限り、方向転換される。反対側の分配領域へと向かう反応ガス通路の第2の方向転換は、同様の方法で行われる。
【0025】
冷却剤のメインポートを出ると、冷却剤通路は分配領域内で分岐し、アノードガス通路およびカソードガス通路に向かって方向転換する。ここで、冷却剤通路と、アノードガス通路およびカソードガス通路と、の重複領域では、冷却剤通路が、アノードガス通路およびカソードガス通路と重なり合うことなく、これらと互い違いになる(alternating with)ように活性領域に合流し、活性領域を通って流れるように、それらの通路は方向転換される。冷却剤通路は、活性領域内で反応ガス通路とも平行に走り、それらと一緒に方向転換されるため、セル反応が可能となる。
【0026】
好ましくは、反応ガス通路は、互いに対して直角に方向転換され、それにより、長方形のバイポーラプレートの使用によって提供される有利な効果が有利に増加する。
【0027】
活性領域の合流領域内では、上記の設計により、活性領域の幅全体にわたって、アノードガス通路およびカソードガス通路がそれぞれ冷却剤通路と組み合わされて分配される活性分配領域が得られる。
【0028】
分配領域の設計との組み合わせは、一方では、比較的薄いバイポーラプレートを達成することができるので、従来技術のバイポーラプレートと比較して、本発明によるバイポーラプレートの有意な電力密度増加を有利に生み出し、他方では、活性領域内での媒体の部分的な分配により、分配領域を犠牲にして活性領域を増やすことができる。
【0029】
本発明の最も好ましい実施形態によれば、分配領域への冷却剤メインポートは、アノードガスおよびカソードガス用の2つのメインガスポートの間に配置され、それにより分配領域内の反応ガス通路および冷却剤通路の本発明の配置は、幾何学的に単純な方法で実行することができる。
【0030】
本発明によるバイポーラプレートの好ましい実施形態によれば、冷却剤メインポートから延在し、分配領域内で行き止まりになって終端する(blindly terminating)第1の冷却剤通路と、活性領域から延在し、分配領域内で行き止まりになって終端する第2の冷却剤通路とが、分岐した冷却剤通路を形成するようにアノード板の両方の分配領域に設けられる。また、冷却剤メインポートから延在し、分配領域内で行き止まりになって終端する第1の冷却剤通路と、活性領域から延在し、分配領域内で行き止まりになって終端する第2の冷却剤通路とが、カソード板の両方の分配領域に設けられる。アノード板の第1の冷却剤通路は、カソード板の第2の冷却剤通路に接続され、カソード板の第1の冷却剤通路は、アノード板の第2の冷却剤通路に流体的に連結される。
【0031】
この設計は、有利には、非常に簡単な方法で、作動媒体の異なる通路の方向付けを実現することを可能にする。
【0032】
冷却剤通路の分岐はまた、分配領域の空間要件を最小化するために、直角に行われることが好ましい。
【0033】
好ましくは、アノード板の第1の冷却剤通路の、カソード板の第2の冷却剤通路への流体連結と、カソード板の第1の冷却剤通路の、アノード板の第2の冷却剤通路への流体連結は、第1の冷却剤通路および第2の冷却剤通路が行き止まりになって終端する分配領域の領域内にある。この有利な設計は、冷却剤通路内に死空間(dead volume)が存在しないことを保証し、代わりに、冷却剤は、単に行き止まりでアノード板からカソード板へと、およびその逆へと方向転換されるだけである。
【0034】
最も好ましくは、アノード板およびカソード板の第1の冷却剤通路は、それらが共通の第1の冷却剤通路を形成するように部分的に配置される。好ましくは、それらの共通に形成される冷却剤通路は、冷却剤メインポートに直接配置され、アノード板のアノードガス通路から離れ、かつカソード板のカソードガス通路から離れるように方向転換するまで、冷却剤メインポートから活性領域に向かって延びる。この部分には共通の第1の冷却剤通路は形成されておらず、代わりに、別個の第1の冷却剤通路がアノード板とカソード板に形成されている。第1の冷却剤通路のこの部分は、それぞれの反応性ガス通路から方向転換され、第1の冷却剤通路は、活性領域から離間され、行き止まりになって終端する。上面図では、バイポーラプレートの冷却剤通路は、それぞれの分配領域でT字型の構造を有する。
【0035】
両方の分配領域において、第2の冷却剤通路は、好ましくは、反応ガス通路が活性領域からそれぞれのメインポートまで延びる領域内で、好ましくは反応ガス通路と平行に走り、それにより、スペースをできるだけ少なくしながら個々の通路の方向付けを行うことができる。冷却剤通路を反応ガス通路からオフセットして配置することも好ましく、それにより、好ましくはより大きな流れ断面積を選択することができる。
【0036】
最も好ましくは、アノード板の第2の冷却剤通路は、アノードガス通路の領域で行き止まりになって終端し、カソード板の第2の冷却剤通路は、カソードガス通路の領域で行き止まりになって終端し、それにより、分配領域内でこれらの構造に要求されるスペースが最小化される。
【0037】
バイポーラプレートの分配領域、というよりは寧ろ、アノード板とカソード板とが互いに接合されてバイポーラプレートを形成する本発明の設計は、有利には、2つの作動媒体すなわちそれぞれ反応性ガスおよび冷却剤のみを、省スペースの方法で、バイポーラプレート内で互いに案内することを可能にし、冷却剤通路は、異なる部分で異なる流れ面積および/または高さを有することができる。
【0038】
このようにして、不活性領域に必要な領域は、本発明によるバイポーラプレートを使用することにより全体的に低減され、それにより活性領域は、より大きなサイズで設計され、したがって、対応する燃料電池の出力の増加を提供する。
【0039】
本発明によるバイポーラプレートの活性領域は、様々な方法で設計することができる。その中で、線形の反応性ガス通路および冷却剤通路が好ましい。しかしながら、方向転換およびその他の設計を有する通路もまた利用可能である。
【0040】
好ましくは、分配領域内で、冷却剤通路は、可能な限り薄型のバイポーラプレートを形成するために、異なる流れ面積および/または高さを有する異なる領域に形成される。
【0041】
本発明によるバイポーラプレートは、好ましくはバイポーラプレートの両端に配置された不活性領域と好ましくは直角に形成され、好ましくは長方形の活性領域がそれらの不活性領域の間に形成される。
【0042】
本発明の別の目的は、それらの間に膜電極ユニットが配置された上記の少なくとも2つのバイポーラプレートを含む燃料電池、およびそのような燃料電池が内部に配置された自動車である。
【0043】
個々の場合に別段の記載がない限り、本明細書で述べた本発明の様々な実施形態は、互いに有利に組み合わせることができる。
【0044】
以下において、本発明は、添付の図面を参照しながら例示的な実施形態によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明によるバイポーラプレートを示す概略図である。
【
図2】本発明によるバイポーラプレートのアノード板を示す概略図である。
【
図3】本発明によるバイポーラプレートのカソード板を示す概略図である。
【
図4】本発明によるバイポーラプレートを示す線A-Aに沿った断面図である。
【
図5】本発明によるバイポーラプレートを示す線B-Bに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図示されていない燃料電池用の、
図1による長方形のバイポーラプレート100は、バイポーラプレート100を形成するために交互に配置されたアノード板10(
図2)およびカソード板11(
図3)を含む。配置されたものから独立して、
図1~3に示される構造は、アノード板10およびカソード板11の特定の側の面に見ることができる。
【0047】
アノード板10およびカソード板11、したがってバイポーラプレート100は、中央に配置されるとともに燃料電池内でセル反応が進行する直角に形成された活性領域AAを含む。この活性領域AAは、流れ場とも呼ばれる。バイポーラプレート100の2つの反対側、したがって活性領域AAの両側に、それぞれ不活性領域IAが設けられ、不活性領域は、反応ガス(アノードガスおよびカソードガス)を供給および除去するための2つのメインガスポート12,13、および、冷却剤を供給および除去するための冷却剤メインポート14を含む供給領域SAと、メインガスポート12,13および冷却剤メインポート14を活性領域AAに接続するための分配領域DAと、に細分される。
【0048】
以下の実施形態は、それらの単数形が説明に記載されている場合でも、常に両方の不活性領域IA、特に両方の分配領域DAを指す。
【0049】
メインガスポート12,13および冷却剤メインポート14は、それぞれここに示されていない燃料電池スタック内で実質的に整列し、燃料電池スタック内の主供給通路を形成するように配置される。
【0050】
不活性領域IAおよび分配領域DA内で利用可能な空間を最適に利用するために、冷却剤メインポート14は、アノードガス用のメインポート12とカソードガス用のメインポート13との間に配置される。
【0051】
さらに、アノード板10およびカソード板11は、アノード板10が、カソード板11とは反対を向く側15に開放されたアノードガス通路16を有し、カソード板11が、アノード板とは反対を向く側17に開放されたカソードガス通路18を有するように形成されるとともに互いの上に配置される。
【0052】
アノードガス通路16およびカソードガス通路18は、重なり合うことなく、メインガスポート12,13から分配領域DAを通って導かれる。そして、アノードガス流路16とカソードガス流路18とが活性領域AAに合流する。これは、バイポーラプレート100の両側で生じる。活性領域AA内では、アノードガス通路16およびカソードガス通路18は、直角に方向転換され、活性領域AAの幅全体に亘って分配される。活性領域AAの幅に亘る分配に続いて、それぞれの反対側の分配領域DAに向かって直角に第2の方向転換(diversion)がある。アノードガス通路16およびカソードガス通路18の方向転換は2回行われ、これらが反対の分配領域DAに直接延びるように、スペースを必要とするため、活性分配領域ADAが活性領域AA内に形成される。セル反応はまた、活性分配領域ADA内、ならびに残りの活性領域AA内で生じる。
【0053】
アノード板10とカソード板11の互いに向かい合う側19,20には、閉鎖された冷却剤通路21,21a,21bが形成されており、これらは、アノード板10およびカソード板11では開放された冷却剤通路21,21a,21bとして存在しており、互いに配置されたときにのみ閉鎖された冷却剤通路21,21a,21bになる。バイポーラプレート100では、冷却剤通路21,21a,21bは、それらの冷却剤通路21,21a,21bが冷却剤メインポート14を出た後、分配領域DA内でT字形に分岐し、分岐に続いて、それぞれアノードガス通路16およびカソードガス通路18へと分流されるようになっている。
【0054】
次に、分岐した冷却剤通路21,21a,21bは、アノードガス通路16およびカソードガス通路18とそれぞれ重なり合う領域を形成し、冷却剤通路21,21a,21bは、重なり合う領域内で方向転換されて、冷却剤通路が、それぞれのアノードガス通路16およびカソードガス通路18と同じ方向に走る。
【0055】
上記の冷却剤通路21,21a,21bを形成するように、アノード板10およびカソード板11の分配領域DA内に、それぞれ、第1の冷却剤通路21aおよび第2の冷却剤通路21bが配置される。第1の冷却剤通路21aは、冷却剤メインポート14から分配領域DAへと通じ、それらの流路は、アノード板10のアノードガス用のメインガスポート12から離れ、かつカソード板11のカソードガス用のメインガスポート13から離れるように活性領域AAの手前で方向転換されて、活性領域AAと平行に走る。アノード板10の第1の冷却剤通路21aは、カソードガスのメインガスポート13と活性領域AAとの間で行き止まりになって終端し、カソード板の第1の冷却剤通路21aは、アノードガスのメインガスポート12と活性領域AAとの間で行き止まりになって終端する。
【0056】
第2の冷却剤通路21bは、活性領域AAから2つのメインガスポート12,13へと通じており、それぞれ、アノードガス通路16およびカソードガス通路とオフセットするように互いに重なって配置されている。第2の冷却剤通路21bは、分配領域DA内で行き止まりになって終端する。アノード板10とカソード板11とを重ねて配置すると、アノード板10の第1の冷却剤通路21aとカソード板11の第2の冷却剤通路21bとの間、およびカソード板11の第1の冷却剤通路21aとアノード板10の第2の冷却剤通路21bとの間に接続が形成される。
【0057】
第1の冷却剤通路21aと、第2の冷却剤通路21bとの流体連結は、線A-Aに沿ったバイポーラプレート100の断面を示す
図4に示されている。図示のように、アノード板10およびカソード板11の第1の冷却剤通路21aは、中央に配置され、共通の第1の冷却剤通路21aに組み合わされる。これらは断面図で示される。アノード板10およびカソード板11の第1の冷却剤通路21aの、反対方向への方向転換は、長手方向に切断された第1の冷却剤通路21aによって示されている。次に、これらは、それぞれの他方のプレート10,11内で、断面で示される第2の冷却剤通路21bに出会う。この流体連結の領域では、アノードガス通路16およびカソードガス通路18の各々が、平行に配置されるとともに第2の冷却剤通路21bの上と下においてそれぞれオフセットされる。
【0058】
アノードガス通路16およびカソードガス通路18が、それぞれ第2の冷却剤通路21bに結合された活性領域AAの両側に入ると、それらの流入に続いて活性領域AAの幅全体に亘って分配が行われる。そこから生じる冷却剤の流れは、矢印22で示される。
【0059】
作動媒体を分配するために活性領域AAの幅全体に亘って提供される構造は、バイポーラプレート100を通る断面B-Bを示す
図5に表される。中央には、長手方向に切断されたアノードガス通路16およびカソードガス通路18が示されるとともに、その両端には断面形状のアノードガス通路16およびカソードガス通路18が示されており、それらの通路の間に冷却剤通路21を有する。これを
図1と一緒に見ると、作動媒体の横方向の分配の詳細が分かるが、これは単なる例示であり、非限定的である。
【符号の説明】
【0060】
100…バイポーラプレート
10…アノード板
11…カソード板
12…アノードガス用メインガスポート
13…カソードガス用メインガスポート
14…冷却剤メインポート
15…アノード板のカソード板と反対側
16…アノードガス通路
17…カソード板のアノード板と反対側
18…カソードガス通路
19…アノード板のカソード板と向かい合う側
20…カソード板のアノード板と向かい合う側
21…冷却剤通路
21a…第1の冷却剤通路
21b…第2の冷却剤通路
22…矢印
AA…活性領域(反応領域)
IA…不活性領域
SA…供給領域
DA…分配領域(distribution area)
ADA…活性分配領域