(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】ノイズ判定器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/287 20210101AFI20220215BHJP
A61B 5/308 20210101ALI20220215BHJP
【FI】
A61B5/287
A61B5/308
(21)【出願番号】P 2020546521
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011043
(87)【国際公開番号】W WO2020188673
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 久生
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-157504(JP,A)
【文献】株式会社エヌエフ回路設計プロック,電子機器のノイズ間題と低周波の EMC技術,NFwinds,Vol.25,2008年
【文献】宮山貴大,環境発電を目的とした商用周波数帯における電界強度の測定,サレジオ工業高等専門学校特別研究・卒業研究概要集,2012年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の判定を行うノイズ判定器であって、
交流電源ライン上を伝播して心電位波形に混入する放射電界ノイズを測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記放射電界ノイズのノイズレベルが、閾値以上であるのか否かについて判定を行う判定部と、
前記判定部における前記判定の結果を、外部に通知する通知部と
を備え
、
前記ノイズ判定器とは異なる他の機器からの電力供給に基づいて、動作を行う機器であると共に、
前記他の機器からの電力が供給される前記交流電源ラインのうち、前記ノイズ判定器の内部に配置された部分が、非シールド線となっており、
前記測定部は、前記非シールド線上を伝播する前記放射電界ノイズを測定する
ノイズ判定器。
【請求項2】
前記判定部は、
前記放射電界ノイズの周波数が、前記心電位波形における所定の周波数範囲内である場合に、
前記ノイズレベルが前記閾値以上であるのか否かについての前記判定を行う
請求項
1に記載のノイズ判定器。
【請求項3】
前記閾値が、50~150[V/m]の範囲内の値である
請求項1
または請求項2に記載のノイズ判定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電位波形に混入するノイズの測定や所定の判定等を行う、ノイズ判定器に関する。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルや電源装置(高周波電源装置)、心電図表示装置などを備えたカテーテルシステムを使用する際に、ノイズ(例えば、交流電源ライン上を伝播する放射電界ノイズなど)が、心電位波形に混入してしまうケースがある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「カテーテルアブレーション関連秋季大会2018」ABSTRACT、MP-CP16(P.218),MP-CP26(P.221)
【発明の概要】
【0004】
そこで、このようなカテーテルシステムなどを使用する環境下での、ノイズの状況の測定や所定の判定等を行う機器(ノイズ判定器)を用いることが考えられる。したがって、使用の際の利便性を向上させることが可能な、ノイズ判定器を提供することが望ましい。
【0005】
本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器は、所定の判定を行う機器であって、交流電源ライン上を伝播して心電位波形に混入する放射電界ノイズを測定する測定部と、この測定部によって測定された放射電界ノイズのノイズレベルが、閾値以上であるのか否かについて判定を行う判定部と、この判定部における上記判定の結果を外部に通知する通知部と、を備えると共に、このノイズ判定器とは異なる他の機器からの電力供給に基づいて、動作を行う機器である。また、上記他の機器からの電力が供給される上記交流電源ラインのうち、このノイズ判定器の内部に配置された部分が、非シールド線となっており、上記測定部は、この非シールド線上を伝播する上記放射電界ノイズを、測定する。
【0006】
本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器では、交流電源ライン上を伝播して心電位波形に混入する放射電界ノイズが、測定される。そして、その測定された放射電界ノイズのノイズレベルが、閾値以上であるのか否かについての判定が行われ、その判定の結果が外部に通知される。これにより、例えば、測定機器での放射電界ノイズの測定結果を目視で読み取る必要などがなくなり、閾値(基準値)以上のノイズレベルを有する放射電界ノイズの発生が、瞬時に把握できるようになる。また、このノイズ判定器とは異なる他の機器からの電力供給に基づいて動作を行う機器であることから、そのような他の機器からの電源供給に基づいて動作を行うとともに、その電源供給ライン(交流電源ライン)上において、放射電界ノイズの測定ができるようになる。これにより、例えば、ノイズ測定の度ごとに、そのノイズ判定器を手に持って測定する必要がなくなることから、使用の際の利便性が更に向上する。更に、上記他の機器からの電力が供給される交流電源ラインのうち、上記ノイズ判定器の内部に配置された部分が、非シールド線(シールドされていない導線)となっていると共に、上記測定部が、この非シールド線上を伝播する放射電界ノイズを測定することから、以下のようになる。すなわち、ノイズ判定器の内部の非シールド線を対象として、放射電界ノイズの測定が行われることから、例えば、シールド線(シールドされた導線)を対象とした場合と異なり、放射電界ノイズが実際に測定できるようになる。その結果、上記した判定および外部への通知が実現されるようになり、使用の際の利便性が、より一層向上する。
【0009】
また、本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器では、放射電界ノイズの周波数が、上記心電位波形における所定の周波数範囲内である場合に、上記判定部が、ノイズレベルが上記閾値以上であるのか否かについての上記判定を行うようにしてもよい。このようにした場合、例えば、心電位波形に対する影響が特に大きい周波数帯域(上記周波数範囲内)の放射電界ノイズについて、上記判定が行われることになる。したがって、そのような影響が特に大きい放射電界ノイズについて、閾値以上のノイズレベルの発生が、瞬時に把握できることから、使用の際の利便性が更に向上する。
【0010】
なお、上記閾値としては、例えば、50~150[V/m]の範囲内の値が挙げられる。
【0011】
本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器によれば、測定した放射電界ノイズのノイズレベルが閾値以上であるのか否かについての判定を行うとともに、その判定の結果を外部に通知するようにしたので、閾値以上のノイズレベルを有する放射電界ノイズの発生を、瞬時に把握することができる。よって、使用の際の利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器が適用されるカテーテルシステムの概略構成例を模式的に表すブロック図である。
【
図2】
図1に示したノイズ判定器等の詳細構成例を表すブロック図である。
【
図3】
図2に示した放射電界ノイズの波形例を模式的に表すタイミング図である。
【
図4】心電位信号および放射電界ノイズの周波数特性例を表す模式図である。
【
図5】
図1に示したノイズ判定器の動作例を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(アイソレーショントランスから電力供給を受けるノイズ判定器の例)
2.変形例
【0014】
<1.実施の形態>
[概略構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るノイズ判定器(後述するノイズ判定器4)が適用されるカテーテルシステムの概略構成例を、模式的にブロック図で表したものである。このカテーテルシステムは、
図1に示した所定のカテーテル室内に設置されており、本実施の形態のノイズ判定器4は、このようなカテーテル室内の環境下でのノイズ(後述する放射電界ノイズNre)について、後述する測定や所定の判定等を行うようになっている。
【0015】
なお、
図1に示したカテーテル室における壁Wには、この例では、4つの壁コンセント(商用の交流電源)20a,20b,20c,20dがそれぞれ、互いに離れた位置にて設置されている。
【0016】
ここで、この
図1に示したカテーテルシステムは、電極カテーテル1と、3つのアイソレーショントランス2a,2b,2cと、心電図表示装置3と、ノイズ判定器4と、電源タップ50と、電源装置51(高周波電源装置)と、ポンプ52と、食道温度計53と、3Dマッピング装置6と、を含んで構成されている。
【0017】
電極カテーテル1は、
図1に示したように、所定のカテーテル台10上において使用されるようになっている。この電極カテーテル1は、例えば、患者の治療部位に対する焼灼(アブレーション)を行うためのアブレーションカテーテルや、患者の治療部位付近での所定の測定(例えば、後述する心電位信号Scの測定など)を行うための測定用カテーテルとして、機能するようになっている。また、この電極カテーテル1は、
図1に示したように、後述する電源装置51から供給される交流電力(高周波電力)に基づいて焼灼を行ったり、この電源装置51との間で各種情報(例えば、所定の測定データや制御信号など)のやり取りを行うようになっている(配線経路P31参照)。
【0018】
アイソレーショントランス2aは、
図1に示したように、上記した壁コンセント20aと、後述する心電図表示装置3およびノイズ判定器4との間を接続する、交流電源ライン上に配置されている。同様に、アイソレーショントランス2bは、壁コンセント20bと後述する電源タップ50との間を接続する交流電源ライン上に配置され、アイソレーショントランス2cは、壁コンセント20cと後述する3Dマッピング装置との間を接続する交流電源ライン上に配置されている。
【0019】
これらのアイソレーショントランス2a,2b,2cはそれぞれ、このような交流電源ライン上を伝播するノイズ(後述する放射電界ノイズNre)を取り除く機能を有している。具体的には、
図1に示したように、アイソレーショントランス2aは、壁コンセント20a側(1次側)の交流電源ラインP1a上での上記ノイズを取り除き、交流電源ラインP2a1,P2a2側(2次側)に交流電力を出力する。同様に、アイソレーショントランス2bは、壁コンセント20b側(1次側)の交流電源ラインP1b上での上記ノイズを取り除き、交流電源ラインP2b側(2次側)に交流電力を出力する。また、アイソレーショントランス2cは、壁コンセント20c側(1次側)の交流電源ラインP1c上での上記ノイズを取り除き、交流電源ラインP2c側(2次側)に交流電力を出力する。
【0020】
なお、これらのアイソレーショントランス2a,2b,2cはいずれも、壁W側のできるだけ近い位置に配置されることで(
図1参照)、上記ノイズを含む交流電源ラインP1a,P1b,P1cの長さが、最小限に抑えられるようになっている。つまり、
図1に示したように、カテーテル室内で引き回される交流電源ラインとしては、基本的には、上記ノイズが取り除かれた後の交流電源ラインP2a1,P2a2,P2b,P2cが、用いられるようになっている。
【0021】
心電図表示装置3は、患者の心電位信号Scに基づいて、その患者の心電位波形(心電図)を表示する装置である。この心電図表示装置3には、上記した交流電源ラインP2a1から交流電力が供給されると共に、電極カテーテル1から後述する電源装置51および配線経路P32を介して、上記した心電位信号Scが入力されるようになっている(
図1参照)。
【0022】
ノイズ判定器4には、
図1に示した例では、前述した交流電源ラインP2a2から交流電力が供給されるようになっており、アイソレーショントランス2aの2次側では、2つの交流電源ラインP2a1,P2a2が、互いに並列配置されている。このノイズ判定器4は、このようなアイソレーショントランス2aの2次側(交流電源ラインP2a1,P2a2上)を伝播する、前述した放射電界ノイズNre(後述するノイズ信号Sn)の測定(検出)を行うと共に、後述する所定の判定等を行う機器である。これは、詳細は後述するが(
図3,
図4参照)、アイソレーショントランス2aの2次側においても、そのような放射電界ノイズNreが残存し、心電図表示装置3における心電位波形(心電位信号Sc)に混入してしまうおそれがあるためである。なお、このようなノイズ判定器4の詳細構成例については、後述する(
図2参照)。
【0023】
電源タップ50は、前述した交流電源ラインP2bから供給される交流電力を、複数の経路に分配するための機器である。具体的には、
図1に示した例では、この電源タップ50から、電源装置51、ポンプ52および食道温度計53にそれぞれ、そのような交流電力が並列的に分配されている。
【0024】
電源装置51は、所定の交流電力(高周波電力)を出力したり、各種情報(例えば、所定のデータや制御信号など)の入出力を行ったりする装置である。具体的には、
図1に示した例では、この電源装置51は、電極カテーテル1との間で前述した各種情報(例えば、所定の測定データや制御信号など)のやり取りを行う(配線経路P31参照)。また、電源装置51には、電極カテーテル1において測定された心電位信号Scが、この電極カテーテル1から入力されるようになっている(配線経路P31参照)。なお、このようにして電源装置51に入力された心電位信号Scは、
図1に示したように、心電図表示装置3へと出力されるようになっている(配線経路P32参照)。
【0025】
ポンプ52は、電極カテーテル1を用いて焼灼を行う際の灌注用の液体(例えば生理食塩水など)を、この電極カテーテル1に対して供給するための装置(液体供給装置)である。
【0026】
食道温度計53は、電極カテーテル1を用いて焼灼を行う際の、患者の食道付近の温度を測定する温度計である。
【0027】
3Dマッピング装置6には、前述した交流電源ラインP2cから交流電力が供給されるようになっている。この3Dマッピング装置6は、例えば、患者において測定された心腔内電位等を、3D(3次元)表示する装置である。
【0028】
[ノイズ判定器4の詳細構成]
ここで、
図2を参照して、上記したノイズ判定器4の詳細構成例について説明する。
図2は、このノイズ判定器4等の詳細構成例を、ブロック図で表したものである。ノイズ判定器4は、電源回路(電源部)41、電界センサ42、判定部43および通知部44を備えている。
【0029】
また、ノイズ判定器4は、
図2に示したように、このノイズ判定器4とは異なる他の機器(この例では、アイソレーショントランス2a)からの電力供給に基づいて、以下説明する各種の動作を行う機器となっている。言い換えると、このノイズ判定器4は、他の機器に接続可能な、コンセント型の機器となっている。具体的には、この例では
図2に示したように、他の機器としてのアイソレーショントランス2aから、電源プラグ71(交流電源入力部)と、前述した交流電源ラインP2a2の一部を構成する非シールド線72とを介して、ノイズ判定器4に対して電力供給がなされるようになっている。なお、この例では
図2に示したように、そのような電力供給がなされる交流電源ラインP2a2のうち、ノイズ判定器4の内部に配置された部分(ノイズ判定器4に内蔵された部分)が、非シールド線72(シールドされていない導線)となっている。
【0030】
電源回路41は、上記した電源プラグ71および交流電源ラインP2a2(非シールド線72)を介して、アイソレーショントランス2aから電力供給を受ける回路である。また、この電源回路41は、このようなアイソレーショントランス2aからの電力供給に基づき、後述する判定部43および通知部44に対してそれぞれ、これらの動作用の電力を供給するようになっている(
図2参照)。
【0031】
電界センサ42は、交流電源ラインP2a2上を伝播する放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)を、測定(検出)するセンサである。具体的には、
図2に示した例では、この電界センサ42は、この交流電源ラインP2a2のうち、ノイズ判定器4の内部の非シールド線72の部分について、放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)を測定する。つまり、電界センサ42は、このような非シールド線72上を伝播する放射電界ノイズNreを対象として、放射電界ノイズNreの測定を行うようになっている。
このような電界センサ42は、本発明における「測定部」の一具体例に対応している。ただし、電界センサ42以外の他のセンサ等を用いて、本発明における「測定部」を構成するようにしてもよい。
【0032】
判定部43は、電界センサ42によって測定された放射電界ノイズNreについて、後述する所定の判定を行うものである。具体的には、判定部43は、この放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)におけるノイズレベルLnが、後述する所定の閾値Lth以上(Ln≧Lth)であるのか否か等について、判定を行うようになっている。また、判定部43は、このような判定の結果を、判定結果Rjとして通知部44へと出力するようになっている(
図2参照)。なお、このような判定部43における判定手法の詳細については、後述する(
図5参照)。このような判定部43は、例えば、そのような各種の判定を行う判定回路の他、所定の増幅回路(アンプ)や、所定のフィルタ回路(後述するバンドパスフィルタなど)等を、含んで構成されている。
【0033】
通知部44は、判定部43における判定の結果(上記した判定結果Rj)を、ノイズ判定器4の外部へと(ユーザへ向けて)通知するものである。具体的には、詳細は後述するが、通知部44は、例えば、所定の色などを利用した表示(例えば、LED(Light Emitting Diode)等による点灯表示)や、所定の音声出力などを用いて、そのような判定結果Rjに基づく通知を行うようになっている。
【0034】
[動作および作用・効果]
(A.放射電界ノイズについて)
最初に、心電位波形(心電位信号Sc)に混入する、前述した放射電界ノイズNreについて、詳細に説明する。
【0035】
図3は、このような放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)の波形例を、模式的にタイミング図で表したものである。また、
図4は、前述した心電位信号Scおよび放射電界ノイズNreの周波数特性例をそれぞれ、模式的に表したものである。なお、
図3において、横軸は時間tを示し、縦軸は、信号の振幅Am(放射電界ノイズNreのノイズレベルLn)を示している。また、
図4において、横軸は周波数fを示し、縦軸は、信号の振幅Amを示している。
【0036】
まず、例えば
図3に示したように、放射電界ノイズNreのノイズ信号Snは、周期Δt(=約20ms程度)を有する波形となっており、交流電源(壁コンセント20a~20d)の帯域(50Hz,60Hz程度)の周波数fnを有している。このような放射電界ノイズNreは、いわゆる「ハムノイズ」と呼ばれるノイズであり、
図1に示した例では、カテーテル室内での環境起因のノイズのほとんどが、このような交流電源由来の放射電界ノイズNreとなっている。したがって、この放射電界ノイズNreを抑えるだけでも、カテーテル室内での環境起因のノイズの出現率は、大幅に低下することになる。
【0037】
また、このような放射電界ノイズNreは、一般に、配線ケーブル等を構成する導線が拾うケースが多い。したがって、例えば、前述した交流電源ラインや配線経路等の導線は、放射電界ノイズNreのノイズ源から離して配置することが望ましいと言える。また、
図1の例では、破線で示した配線経路P31,P32(電極カテーテル1から電源装置51を介して、心電図表示装置3まで至る配線経路)が、特に、放射電界ノイズNreの影響を受け易い部分となっている。したがって、特にこれらの配線経路P31,P32の周辺箇所について、ノイズ判定器4を用いて、後述する放射電界ノイズNreの測定等を行うのが望ましいと言える。
【0038】
また、例えば
図4に示したように、心電位信号Scおよび放射電界ノイズNreの周波数特性は、以下のようになっている。まず、心電位信号Scにおける低域側の周波数帯域ΔfLでは、例えばHPF(High Pass Filter)を用いて、その振幅Amが低減されている。同様に、心電位信号Scにおける高域側の周波数帯域ΔfHでは、例えばLPF(Low Pass Filter)を用いて、その振幅Amが低減されている。
【0039】
一方、心電位信号Scにおける中域側の周波数帯域ΔfMについては、例えばノッチフィルタを用いることで、その振幅Amを低減させることが考えられる。しかしながら、この周波数帯域ΔfM内では、例えば
図4に示したように、所定の周波数範囲Δfn内に、放射電界ノイズNreの周波数(周波数fn)が含まれるケースがある。つまり、この周波数帯域ΔfMにおいては、心電位波形を構成する心電位信号Scにおける周波数と、放射電界ノイズNreの周波数fnとが、重なってしまうことから、そのようなフィルタによって振幅Amを低減させるのは、望ましくないと言える。なお、上記した周波数範囲Δfnとしては、例えば、50Hz~60Hz程度の範囲が挙げられ、心電位信号Scの周波数帯域としては、例えば、30Hz~500Hz程度の帯域が挙げられる。
【0040】
ところで、このような放射電界ノイズNreは、前述したアイソレーショントランス2a,2b,2cの2次側(交流電源ラインP2a1,P2a2,P2b,P2c)においては、基本的には取り除かれているはずである。しかしながら、例えば、アイソレーショントランス2aの2次側のように、複数の機器が並列して接続されていると、ある機器が接続されることで、低ノイズ状態のはずの交流電源ラインが、一斉に高ノイズ状態になってしまうケースがある。また、これらのアイソレーショントランス2a,2b,2cを用いたとしても、放射電界ノイズNreを完全に取り除くことは難しく、実際には、ある程度の放射電界ノイズNreが取り除かれずに、2次側に残存してしまうケースがある。そして、これらの要因によって、心電位波形(心電位信号Sc)に放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)が混入してしまうと、心電図表示装置3における心電位波形(心電図)の読み取りが、困難となってしまうおそれがある。
【0041】
そこで、本実施の形態では、
図1,
図2に示したノイズ判定器4を用いて、このような放射電界ノイズNreの測定や、所定の判定等を行うようにしている。以下、このノイズ判定器4における動作例について、詳細に説明する。
【0042】
(B.ノイズ判定器4の動作)
図5は、このようなノイズ判定器4の動作例を、流れ図で表したものである。
【0043】
この
図5に示した動作例では、まず、電界センサ42が、交流電源ラインP2a1,P2a2上を伝播する放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)を測定(検出)する(ステップS11)。具体的には、例えば
図2に示したように、本実施の形態では、電界センサ42は、交流電源ラインP2a2のうちの、前述した非シールド線72上を伝播する放射電界ノイズNreを、測定する。
【0044】
次いで、判定部43が、このようにして測定された放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)の周波数fnが、前述した所定の周波数範囲Δfn内(
図4参照)であるのか否かについて、判定を行う(ステップS12)。
【0045】
ここで、放射電界ノイズNreの周波数fnが、上記した周波数範囲Δfn内ではないと判定された場合には(ステップS12:N)、以下のようになる。すなわち、この場合には、そのような周波数fnの放射電界ノイズNreが心電位波形(心電位信号Sc)に混入したとしても、心電位波形への影響が小さい(もしくは、ほとんど無い)と言える(
図4参照)。したがって、次に通知部44は、判定部43における判定結果Rj(低ノイズ状態であるとの判定結果)を、ノイズ判定器4の外部へと通知する(ステップS13)。具体的には、この場合には通知部44は、例えば、緑色による点灯表示を行うことで、そのような低ノイズ状態であるとの判定結果を通知する。
【0046】
なお、このようなステップS13の後は、上記したステップS11へと再び戻ることになる。
【0047】
一方、放射電界ノイズNreの周波数fnが、上記した周波数範囲Δfn内であると判定された場合には(ステップS12:Y)、以下のようになる。すなわち、この場合には、そのような周波数fnの放射電界ノイズNreが心電位波形(心電位信号Sc)に混入した場合、そのノイズレベルLnによっては、心電位波形への影響が大きくなってしまうと言える(
図4参照)。したがって、次に判定部43は、その放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)のノイズレベルLnが、所定の閾値Lth以上(Ln≧Lth)であるのか否かについて、判定を行う(ステップS14)。なお、この閾値Lthとしては、例えば、50~150[V/m]の範囲内の値(一例として、100[V/m])が挙げられる。
(ステップS14)
【0048】
ここで、ノイズレベルLnが閾値Lth未満(Ln<Lth)であると判定された場合には(ステップS14:N)、以下のようになる。すなわち、この場合には、そのようなノイズレベルLnの放射電界ノイズNreが心電位波形(心電位信号Sc)に混入したとしても、心電位波形への影響が小さい(もしくは、ほとんど無い)と言える。したがって、この場合にも、上記したステップS13へと進むことになる。つまり、この場合にも通知部44は、例えば上記した通知手法を用いて、低ノイズ状態であるとの判定結果を、外部へと通知する。
【0049】
なお、この場合においても、このステップS13の後は、上記したステップS11へと再び戻ることになる。
【0050】
一方、ノイズレベルLnが閾値Lth以上(Ln≧Lth)であると判定された場合には(ステップS14:Y)、以下のようになる。すなわち、この場合には、そのようなノイズレベルLnの放射電界ノイズNreが心電位波形(心電位信号Sc)に混入した場合、心電位波形への影響が大きくなってしまうと言える。したがって、次に通知部44は、判定部43における判定結果Rj(高ノイズ状態であるとの判定結果)を、ノイズ判定器4の外部へと通知する(ステップS15)。具体的には、この場合には通知部44は、例えば、赤色による点灯表示を行ったり、所定のメッセージ音を出力したり、このような赤色の点灯表示とメッセージ音の出力とを併用したりすることで、そのような高ノイズ状態であるとの判定結果を通知する。
【0051】
なお、このようなステップS15の後は、上記したステップS11へと再び戻ることになる。
【0052】
【0053】
(C.作用・効果)
このようにして、本実施の形態のノイズ判定器4では、交流電源ラインP2a1,P2a2上を伝播して心電位波形(心電位信号Sc)に混入する放射電界ノイズNre(ノイズ信号Sn)が、測定される。そして、その測定された放射電界ノイズNreのノイズレベルLnが、閾値Lth以上であるのか否かについての判定が行われ、その判定結果Rjが、ノイズ判定器4の外部に通知される。
【0054】
これにより本実施の形態では、閾値Lth(基準値)以上のノイズレベルLnを有する放射電界ノイズNreの発生が、瞬時に把握できるようになる。つまり、例えば、ノイズ測定を行う度に、測定機器を放射電界ノイズNreの発生源に近づけて、その測定機器での放射電界ノイズNreの測定結果(数値)を、目視で読み取る必要などがなくなる。よって、本実施の形態のノイズ判定器4では、使用する際の利便性を向上させることが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態では、ノイズ判定器4とは異なる他の機器からの電力供給に基づいて動作を行う機器としたので、以下のようになる。すなわち、上記した他の機器からの電源供給に基づいて動作を行うとともに、その電源供給ライン(交流電源ラインP2a2)上において、放射電界ノイズNreの測定ができるようになる。したがって、例えば、ノイズ測定の度ごとに、そのノイズ判定器4を手に持って測定する必要がなくなることから、ノイズ判定器4を使用する際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0056】
更に、本実施の形態では、上記した他の機器(アイソレーショントランス2a)からの電力が供給される交流電源ラインP2a2のうち、ノイズ判定器4の内部に配置された部分が非シールド線72となっていると共に、電界センサ42がこの非シールド線72上を伝播する放射電界ノイズNreを測定するようにしたので、以下のようになる。すなわち、ノイズ判定器4の内部の非シールド線72を対象として、放射電界ノイズNreの測定が行われることから、例えば、シールド線(シールドされた導線)を対象とした場合と異なり、放射電界ノイズNreが実際に測定できるようになる。その結果、上記した判定および外部への通知が実現されるようになり、ノイズ判定器4を使用する際の利便性を、より一層向上させることが可能となる。なお、これに対して上記したように、例えばシールド線を対象とした場合、放射電界ノイズNreを測定することは、できないことになる。
【0057】
加えて、本実施の形態では、上記した他の機器が、交流電源としての壁コンセント20aと心電図表示装置3との間を接続する、交流電源ラインP1a,P2a1上に配置された、アイソレーショントランス2aであることから、以下のようになる。すなわち、このアイソレーショントランス2aから心電図表示装置3までに至る経路(交流電源ラインP2a1)上において、そのアイソレーショントランス2aによって取り除ききれなかった放射電界ノイズNreが、測定できるようになる。その結果、ノイズ判定器4を使用する際の利便性を、より一層向上させることが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態では、放射電界ノイズNreの周波数fnが、心電位波形(心電位信号Sc)における所定の周波数範囲Δfn内である場合に、ノイズレベルLnが閾値Lth以上であるのか否かについての判定を行うようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば、心電位波形に対する影響が特に大きい周波数帯域(周波数範囲Δfn内)の放射電界ノイズNreについて、そのような判定が行われることになる。したがって、そのような影響が特に大きい放射電界ノイズNreについて、閾値Lth以上のノイズレベルLnの発生が瞬時に把握できることから、ノイズ判定器4を使用する際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0059】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、上記実施の形態において説明した各部材の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等としてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態では、ノイズ判定器4内の判定部43における判定手法や、通知部44における通知手法等について、具体例を挙げて詳細に説明したが、これらの判定手法や通知手法等には限られず、他の手法を用いるようにしてもよい。具体的には、例えば場合によっては、
図5中のステップS12(ノイズ信号Snの周波数fnが所定の周波数範囲Δfn内であるのか否かの判定)を、行わないようにしてもよい。また、例えば、上記実施の形態で説明した、色などを利用した表示や、所定の音声出力などには限られず、他の手法を用いて、通知部44における通知を行うようにしてもよい。
【0062】
更に、上記実施の形態では、ノイズ判定器4が、他の機器としてのアイソレーショントランスからの電力供給に基づいて、動作を行う場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、このような「他の機器」が、アイソレーショントランス以外の別の機器であってもよい。また、例えば、ノイズ判定器4が、自身に内蔵されたバッテリなどからの電力供給に基づいて、動作を行うようにしてもよい。
【0063】
加えて、上記実施の形態では、
図1に示したカテーテルシステムを使用する環境下で適用されるノイズ判定器4を、例に挙げて説明したが、本発明のノイズ判定器は、このようなカテーテルシステム以外の他のシステムや、他の機器についても、適用することが可能である。つまり、場合によっては、心電位波形以外の他の波形に混入する放射電界ノイズを対象としても、本発明のノイズ判定器を適用するようにしてもよい。