(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】空気入りタイヤのトレッドおよび空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20220215BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 C
B60C11/12 C
(21)【出願番号】P 2020551885
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 IB2019052387
(87)【国際公開番号】W WO2019186353
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】102018000003994
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ ロドリケズ
(72)【発明者】
【氏名】ベアトリス メラーラ
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-151913(JP,A)
【文献】国際公開第2013/079303(WO,A1)
【文献】特開2012-006444(JP,A)
【文献】特開2017-030531(JP,A)
【文献】特開2010-274719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がそれぞれの接触面(21)を有する複数のトレッド構成要素(20)を有し、当該構成要素(20)の少なくとも1つが、サイプ長さ(L)と、前記接触面(21)
に直交する摩耗方向(U)に沿ったサイプ深さ(P)と、を有するサイプ(100)を備えた、空気入りタイヤ(1)のトレッド(10)であり、
前記サイプ(100)が、前記摩耗方向(U)に沿って、それぞれが異なる構造を有する少なくとも2つのセクション(S1,S2)を有し、当該サイプ(100)と前記トレッドの接触面(21)に平行な面(T1,T2)との間の交差プロファイル(P1,P2)が、前記少なくとも2つのセクション(S1,S2)の各々で異なるようになっており、当該少なくとも2つのセクション(S1,S2)の少なくとも1つの表面セクション(S1)が、前記サイプ長さ(L)に沿って変化する深さ(PS)を有し、
前記少なくとも2つのセクション(S1,S2)が、遷移セクション(S3)によって接続され、当該遷移セクション(S3)は、前記表面セクション(S1)と該遷移セクション(S3)との間に遷移線(TL)を画定しており、
前記表面セクション(21)の前記変化する深さ(PS)が、最大深さ(PSMAX)および最小深さ(PSMIN)を呈し、当該変化する深さ(PS)は、前記最大深さ(PSMAX)と前記最小深さ(PSMIN)との間で、前記サイプ長さ(L)に沿って、前記遷移線(TL)に対して連続的に変化する、空気入りタイヤ(1)のトレッド(10)であって、
前記表面セクション(S1)は、前記トレッドの接触面(21)に平行な面が、深さの関数として当該トレッドの長手方向延在線に対して向きが異なる直線に沿って常に
前記表面セクション(S1)と交差するように配置された
、ねじれた構造を有することを特徴とする、空気入りタイヤ(1)のトレッド(10)。
【請求項2】
前記表面セクション(21)の前記変化する深さ(PS)が、前記サイプ長さ(L)のそれぞれの端で前記最大深さ(PSMAX)および前記最小深さ(PSMIN)を呈する、請求項1に記載のトレッド(1)
【請求項3】
前記表面セクション(S1)は、前記トレッドの接触面(21)に平行な面が、前記サイプ長さ(L)
に平行な直線に沿ってそれと常に交差するように配置された
、2次元構造を有する、請求項1または2に記載のトレッド(1)。
【請求項4】
前記少なくとも2つのセクション(S1,S2)は、前記トレッドの接触面に平行な面が、曲線に沿って
深部セクション(S2)と常に交差するように配置された
、2次元構造を有する
前記深部セクション(S2)を備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載のトレッド(1)。
【請求項5】
前記遷移セクション(S3)が、前記表面セクション(S1)と前記深部セクション(S2)との連続的な接続を提供している、請求項
4に記載のトレッド(1)。
【請求項6】
前記サイプ長さ(L)が、前記トレッドの長手方向延在線にしたがっ
て方向付けられたサイプ方向に沿って延びる、請求項1~
5のいずれか一項に記載のトレッド(1)。
【請求項7】
前記サイプ(100)が、そのすべてのセクションに沿って一定であるサイプ厚さを有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載のトレッド(1)。
【請求項8】
前記サイプ(100)が、少なくとも1つのセクションにおいて、深さの関数として変化するサイプ厚さを有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載のトレッド(1)。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のトレッド(10)を備える、空気入りタイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤのトレッドに関する。特に、トレッドの摩耗状態を容易に確認することを可能にし、それによって濡れた表面および/または雪で覆われた表面における空気入りタイヤの性能を維持および/または改善する特定の構造を組み込んだトレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの耐用年数中に、該空気入りタイヤのトレッドの摩耗状態を簡単かつ効果的な方法で確認できることへの課題が強く感じられる。一方で、望ましい結果は、空気入りタイヤの技術的性能を変えることなく、または該性能をさらに改善し、特に、濡れた表面および/または雪で覆われた表面での使用を含む特定の使用条件下でそのような効果を得ることである。
【0003】
この目的を達成するために、トレッドが空気入りタイヤの交換を必要とするほどの摩耗限界に達した、という事実を示すことを目的とする解決策について、多くの提案がなされてきた。これらの解決策のいくつかには、接地面に対して特定の深さでトレッド材料にもともと組み込まれていた異なる性質の要素をトレッドから出現させるものがある。
【0004】
しかしながら、今日までに知られているこれらの解決策は、摩耗の程度がタイヤ交換を示唆するようなものである場合にのみユーザーに警告することができる。
【0005】
対照的に、空気入りタイヤのライフサイクルのあらゆる瞬間における摩耗のレベルを、定量的かつ継続的に示すことができる既知の解決策はない。
【0006】
この解決策によれば、ユーザーは、トレッドの実際の摩耗状態をより認識し、空気入りタイヤのメンテナンスおよび/または交換のスケジュールをより効率的に立てることができる。残存寿命、したがって比例して、空気入りタイヤがまだ有効に走行できるキロメータ数が実際の摩耗と比較される限り、トレッドの実際の摩耗をいつでも推定できることも重要である。
【0007】
さらに、この摩耗インジケータが時間内に継続的に監視され、現在の現実的な表示をいつでも得られれば特に便利である。
【0008】
その一方で、これらの課題の解決を目的とする解決策は、様々な表面条件下での安全性および性能に対処する空気入りタイヤの技術設計および構造要件と組み合わせられたものでなければならない。
【0009】
本発明の目的のために、「トレッド要素」という用語は、トレッドの全長に沿って、それ自体と同一に繰り返されるトレッドパターンの一部を意味する。
【0010】
「トレッド構成要素」または単に「構成要素」という用語は、その形態および/または配置に関係なく、任意のトレッドブロック、またはトレッドのリブを意味する。
【0011】
「接触面」という用語は、空気入りタイヤの回転中に、地面と接触する構成要素の表面の一部を意味する。
【0012】
「サイプ」という用語は、空気入りタイヤの成形によって得られ、特に、濡れた表面および/または雪で覆われた表面における空気入りタイヤの性能を向上させることを目的とする、トレッド構成要素上の一般に狭い溝を意味する。
【0013】
特許文献1は、ブロックに形成され、溝の深さ方向に、該溝の接地面側に形成された幅狭溝部と、該溝の底側に幅狭溝部よりも幅広に形成された幅広溝部と、によって構成される溝を示している。
【0014】
特許文献2は、トレッドブロックを備える空気入りタイヤであって、それぞれのトレッドブロックが、少なくとも1つの中央切込み部を有し、該切込み部の基部に、半径方向に延び、平坦な滑り面によって境界付けられるセクションを有し、サイプの断面全体における滑り面の割合が選択したピッチ長比によって決まり、ピッチ長比が比較的大きい場合、当該割合は大きくなるが、一方で、プロファイルブロック(2)の他のサイプでは、波またはジグザグ形状がサイプの基部まで延びている空気入りタイヤを示している。
【0015】
特許文献3は、空気入りタイヤのトレッドのショルダー領域のブロックに延びる切込み部を示している。該切込み部は、空気入りタイヤの赤道側に、切込み部の長さ方向に内側領域を有し、サイプの深さ方向全体にわたって真っ直ぐな切込み部がある。
【0016】
特許文献4は、多次元溝のある少なくとも1つのトレッド要素を備えたトレッドを有する空気入りタイヤを示している。溝は、幅W、深さDs、および有効長さLeを有する。溝は、一定の有効長さLeを有する第1の半径方向最外部分と、徐々に増加する有効長さLeを有する第2の移行部分と、第1の部分の有効長さよりも長い一定の有効長さLeを有する第3の半径方向最内部分と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許第0917970号
【文献】独国特許出願公開第102011055913号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/315289号明細書
【文献】欧州特許第1859962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明によって対処し、かつ解決する技術的問題は、任意の使用条件下で所望のレベルの性能を維持しながら、特に、濡れた表面および/または雪で覆われた表面における空気入りタイヤの性能を維持および/または改善しながら、トレッドの実際の摩耗状態をいつでも検証できるような設計を有するトレッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これは、請求項1に定義するトレッドによって達成される。
【0020】
本発明のさらなる目的は、請求項11に定義する空気入りタイヤである。
【0021】
本発明のさらなる特徴は、対応する従属請求項に定義されている。
【0022】
本発明によるトレッドの構造により、その構成要素の剛性を最適化して、特にその表面部分(路面との接触に最も近い部分)でそれをより柔軟にすることができる。このことは、本質的に濡れた表面および/または雪で覆われた表面における性能の利益につながり、トレッドの構造がサイプのより大きな開口を可能にするようなものである限り、それによって、構成要素の剛性を損なうことなく、湿潤時のワイピング効果および雪の捕捉効果を向上させることができる。
【0023】
他の利点は、本発明の特徴および使用法とともに、純粋に非限定的な例として与えられたその好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0024】
添付図面の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によるトレッドを備えた、本発明による空気入りタイヤである。
【
図2】本発明による空気入りタイヤの例示的な斜視図である。
【
図3】CL線に沿った
図1のブロックの断面図である。
【
図4A】本発明の可能な実施形態による(
図2のOL線に沿った)トレッドブロックの断面図である。
【
図5A】本発明の別の可能な実施形態による(
図2のOL線に沿った)トレッドブロックの断面図である。
【
図6】本発明のさらに別の可能な実施形態によるサイプの3次元図である。
【
図7】本発明によるブロックのCL線に沿った断面図である。
【
図8A】断面T1に対応する、
図7のブロックの上方からの断面図である。
【
図8B】断面T2に対応する、
図7のブロックの上方からの断面図である。
【
図8C】断面T3に対応する、
図7のブロックの上方からの断面図である。
【
図9A】本発明のさらに別の可能な実施形態によるサイプの3次元図である。
【
図9C】
図9のサイプが組み込まれた(OL線に沿った)ブロックの断面図である。
【
図10A】断面T1に対応する、
図9Cのブロックの上方からの断面図である。
【
図10B】断面T2に対応する、
図9Cのブロックの上方からの断面図である。
【
図10C】断面T3に対応する、
図9Cのブロックの上方からの断面図である。
【
図10D】断面T4に対応する、
図9Cのブロックの上方からの断面図である。
【
図11】さらに別の可能な実施形態による(OL線に沿った)ブロックの断面図である。
【
図11A】断面T1に対応する、
図11のブロックの上方からの断面図である。
【
図11B】断面T2に対応する、
図11のブロックの上方からの断面図である。
【
図11C】断面T3に対応する、
図11のブロックの上方からの断面図である。
【
図11D】断面T4に対応する、
図11のブロックの上方からの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上記の図面を参照して、本発明のいくつかの可能な実施形態を以下に説明する。
【0027】
説明を簡潔にするために、以下では一般的なトレッドブロックを参照する。しかしながら、既に説明したように、本発明の基礎となる原理は、ブロック、リブ、またはその他のあらゆるトレッド構成要素に適用可能であることを理解されたい。
【0028】
はじめに
図1を参照すると、
図1は、本発明によるトレッド10を組み込んだ、本発明による空気入りタイヤ1の例示的な斜視図を示している。
【0029】
一般的に言えば、空気入りタイヤ1のトレッド10は、ブロック、リブ、またはその他である複数のトレッド構成要素20を含む。
【0030】
特に、
図2は、本発明によるトレッドブロック20を示している。
【0031】
トレッド10の各ブロック20は、トレッドとともに、地面と接触するトレッド表面を画定するそれぞれの接触面21を有する。
【0032】
本発明によれば、
図3でよく分かるように、トレッド10のブロック20の少なくとも1つは、サイプ長さLと、接触面21に実質的に直交する摩耗方向Uに沿ったサイプ深さPと、を有するサイプ100を含む。
【0033】
好ましくは、これは限定的な特徴と見なされるべきではないが、サイプ長さLは、トレッドの長手方向延長線CLに従って実質的に方向付けられるサイプ方向に沿って延びている。
【0034】
サイプ100は、摩耗方向Uに沿って深さ方向に延びる少なくとも2つのセクションS1,S2を有する。さらに、本発明によれば、少なくとも2つのセクションS1,S2の少なくとも1つの表面セクションS1は、サイプ長さLに沿って変化する深さPSを有する。
【0035】
本発明によれば、2つのセクションS1,S2は、それぞれ異なる構造を有し、遷移セクションS3によって有利に接続され、当該遷移セクションS3は、表面セクションS1と遷移セクションS3との間に遷移線TLを定義している。
【0036】
好ましくは、遷移セクションS3は、サイプ深さに沿って、表面セクションS1の深さおよび/または深部セクションS2の深さに対して無視できる深さを有する。
【0037】
有利には、変化する深さPSは、最大深さPSMAXと最小深さPSMINとの間で、サイプ長さLに沿って、遷移線TLに対して連続的に変化するように作られている。本発明の文脈において、「連続的に変化する」とは、遷移線TLに勾配の急激な変化がないため、段差または段差に似た進行がないことを意味する。対照的に、遷移線の勾配は徐々に変化する。
【0038】
特に、いくつかの実施形態によれば、表面セクションS2の可変深さPSは、サイプ長さLのそれぞれの端でその最大深さPSMAXおよびその最小深さPSMINを呈することが期待され得る。
【0039】
本発明によれば、サイプ100とブロック20の接触面21に平行な面T1,T2との間の交差プロファイルP1,P2が2つのセクションS1,S2の各々で異なる、という意味で、セクションS1,S2はそれぞれ異なる構造を有している。
【0040】
これは、可能な実施形態を示す
図4A,4B,4C、および別の可能な実施形態を示す
図5A,5B,5Cでよく分かる。
【0041】
より具体的には、
図4Aおよび5Aは、ブロック内におけるサイプ100の可能な進行を示す、本発明によるブロックの断面図をそれぞれ示している。簡潔にするため、
図4Aおよび5Aでは、サイプ100の正確な形状ではなく、サイプ100の断面輪郭を概略的に区画した形態を表している。
【0042】
図4Bおよび5Bは、接触面21に平行な第1の面T1に対応する交差プロファイルP1を強調したブロックのそれぞれの断面を示し、一方で、
図4Cおよび5Cは、接触面21に平行な第2の面T2に対応する異なる交差プロファイルP2を示すブロックのそれぞれの断面を示している。
【0043】
原則として、ブロック20の2つのセクションS1,S2のそれぞれについて上記の図に示される構造は、必ずしも限定的であると考えられるべきではないことが理解される。これらのセクションは、上記の一般的な原則を満たしていれば、異なる形状にすることができる。
【0044】
図6を参照すると、本発明の好ましい実施形態によるサイプ100が示されている。
【0045】
この場合、表面セクションS1は、トレッドの接触面に平行な面T1が、サイプ長さLに実質的に平行な直線に沿ってそれと常に交差するように配置された、実質的な2次元構造を有している。好ましくは、この場合における表面セクションS1は平面構造を有する。
【0046】
また、好ましい実施形態によれば、サイプ100は、深部セクションS2が実質的な2次元構造を有するが、トレッド20の接触面21に平行な面T2が、曲線に沿ってそれと常に交差するように配置されている。
【0047】
したがって、遷移セクションS3は、表面セクションS1と深部セクションS2との連続的な接続を有利に提供する。
【0048】
この構成は、ブロック20を最適化して、表面部分(路面との接触に最も近い部分)のみでより柔軟にすることができる。この理由から、実質的に平面状の進行を有する表面セクションが好ましい。このことは、本質的に濡れた表面および/または雪で覆われた表面における性能の利益につながり、表面セクションS1の構造がサイプのより大きな開口を可能にするようなものである限り、湿潤時のワイピング効果および雪の捕捉効果を向上させることができる。
【0049】
つぎに、
図7は、本発明によるトレッド10のブロック20の断面図であり、接触面21に平行なそれぞれの面を識別する断面線A,B,Cがトレースされている。断面線A,B,Cは、異なる深さでサイプ100と関わるようにとられている。特に、断面線A,B,Cは、トレッドの摩耗レベルの増加にも対応している。
【0050】
図8A,8B,8Cはそれぞれ、断面線A,B,Cにおける
図7のブロック20の平面図を示している。
【0051】
3つの図を順に観察すると、摩耗レベルが低い場合(
図8A)、交差プロファイルPAは、表面セクションS1の平面構造の関数として実質的に直線状であることが分かる。
【0052】
中間の摩耗レベルに相応する場合(
図8B)、断面線Bが、図に示す矢印F1の方向に、深部セクションS3と部分的に、遷移セクションS2と部分的に、かつ表面セクションS1と部分的に交差する、という事実により、交差プロファイルPBは、直線部分で終端する曲線状の構造を呈し始める。
【0053】
最後に、深い摩耗レベルの場合(8C)、交差プロファイルPCは、サイプ100の単一の深部セクションS3の構造の関数として完全に曲線状の進行を呈する。
【0054】
そのすべての構成セクションにおけるサイプの全体的な構造は、トレッドの摩耗が増加するにつれて、サイプのプロファイルがその形状を連続的に変化させるようなものであることは明らかであり、(本実施形態の場合は)直線から始まり、摩耗が増加するにつれて徐々に変化し、サイプの全長にわたって曲線構造を呈するまで連続的に変化している。
【0055】
既に示したように、サイプの少なくとも2つのセクションがそれらの間に異なる構造を示し、トレッドの摩耗レベルが増加するにつれて連続的に変化する効果が得られるようになっている限り、異なるセクションの進行を説明したものに対して逆にすることもできる、という意味で、異なるセクションの特定の構造は特に関係ない。
【0056】
この意味で、
図9A,9B,9Cは、断面領域S1などの少なくとも1つのサイプセクションが、接触面21と実質的に直交する軸Rの周りでねじれた実質的なねじれ構造を有する、さらに別の実施形態を示している。
【0057】
簡潔にするために、
図9Cでは、サイプ100の正確な形状ではなく、サイプ100の断面の輪郭を概略的に区画する形態が表されている。
【0058】
これは、面T1,T2,T3およびT4における、
図9Cのブロックのそれぞれの断面を示す
図10A,10B,10Cおよび10Dに示すように、摩耗レベルが増加するにつれて異なる視覚効果を生み出す。摩耗の増加に伴い、摩耗が深部セクションS2に関与するまで、ブロックの長手方向に対して向きが異なる直線P1およびP2として、交差プロファイルがどのように見えるかが分かる。この時点で、交差プロファイルP3は、遷移領域の関与により変化し始め、深部セクションの構造に完全に起因する構造P4を呈するまで変化する。
【0059】
当然のことながら、ねじれ構造は、サイプの任意のセクション、ならびに本明細書に例示されているような表面セクションおよび深部セクションに課すことができることを理解されたい。さらに、らせん構造は、セクションが実質的に平面の構造を有する場合、およびより複雑な構造を有する場合の両方に適用可能である。
【0060】
また、
図11,11A,11B,11Cおよび11Dは、断面領域S1などの少なくとも1つのサイプセクションが、サイプの厚さが当該セクションの深さ全体にわたって一定ではない構造を有する、さらに別の実施形態を示している。
【0061】
例えば、図には、断面領域S1が示されているが、サイプは、接触面に対する深さが増加するにつれて増加する厚さを有する。もちろん、サイプの厚さは、反対の意味で、および/または異なって変化していてもよい。
【0062】
簡潔にするために、
図11では、サイプ100の正確な形状ではなく、サイプ100の断面の輪郭を概略的に定義する形態が表されている。
【0063】
この場合も、これは、面T1,T2,T3およびT4における、
図11のブロックのそれぞれの断面を示す
図11A,11B,11Cおよび11Dに示すように、摩耗レベルが増加するにつれて異なる視覚効果を生み出す。摩耗の増加に伴い、摩耗が深部セクションS2に関与しないようになるまで、異なる厚さの直線P1およびP2として、交差プロファイルがどのように見えるかが分かる。この時点で、交差プロファイルP3は、遷移領域の関与により変化し始め、深部セクションの構造に完全に起因する構造P4を呈するまで変化する。
【0064】
当然のことながら、厚さが可変である構造は、サイプの任意のセクション、ならびに本明細書に例示されているような表面セクションおよび深部セクションに課すことができることを理解されたい。さらに、厚さが可変である構造は、セクションが実質的に平面の構造を有する場合、およびより複雑な構造を有する場合の両方に適用可能である。
【0065】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明を説明した。同じ発明の核に属し、すべてが以下に列挙される特許請求の範囲によって提供される保護の範囲内にある他の実施形態に形を与えるために、例として本明細書に記載された好ましい実施形態で実施される技術的解決策のそれぞれは、それらの間で異なる方法で有利に組み合わせることができる。