(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】冷却装置及び冷却装置を操作するための方法
(51)【国際特許分類】
B21B 45/02 20060101AFI20220215BHJP
【FI】
B21B45/02 320T
B21B45/02 320F
B21B45/02 320C
(21)【出願番号】P 2020554491
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2019058452
(87)【国際公開番号】W WO2019197255
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】102018205685.4
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュプロック・アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】ハセル・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クラマー・ウルリヒ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-090313(JP,A)
【文献】特表2016-515474(JP,A)
【文献】特開2011-167754(JP,A)
【文献】特開2016-215263(JP,A)
【文献】特開2016-187822(JP,A)
【文献】特開2008-194712(JP,A)
【文献】特開2015-160240(JP,A)
【文献】特表2012-520770(JP,A)
【文献】特表2012-520769(JP,A)
【文献】国際公開第2015/113832(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105170662(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 45/02
C21D 1/00
C21D 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料(200)に冷却剤(300)を適用するための
第1及び平行に配置された第2の冷却バー(
110-n)を
少なくとも有
し、各冷却バー(110)が、
少なくとも、作用チューブ又はノズル(150)を有する第1及び第2の作用領域(I,II)を備え、これら作用領域が、冷却バーの縦方向(X)
、即ち金属材料の幅方向に相前後して配置され
た、少なくとも1つのグループ(G)と、
各作用領域(I,II
)内の冷却剤(300)の圧力及び/又は流量を個別に調整するための弁(130)を有する制御装置(120)を
備える、
金属材料(200)を冷却するための冷却装置(100)において、
第1の冷却バー(110-1)の第1の作用領域(I)は、同じグループ(G)内の隣接する第2の冷却バー(110-2)の第1の作用領域(I)とは、その輪郭及び/又は面が異なるように形成されていること、を特徴とする冷却装置(100)。
【請求項2】
第1の冷却バー(110-1)の第1と第2の作用領域(I-II
)の間の
仮想の境界線(140-1)と、第2の冷却バーの第1と第2の作用領域の間の
仮想の境界線(140-2)が、それぞれの冷却バーの縦軸に対して異なる角度αで傾斜していること、及び/又は、第1の冷却バー(110-1)の第1と第2の作用領域(I-II)の間の
仮想の境界線(140-1)と、第2の冷却バー(110-2)の第1と第2の作用領域(I-II)の間の
仮想の境界線(140-2)が、冷却バーの縦軸(x)に沿って異なるように位置決め(x1,x2...)されていること、を特徴とする請求項1に記載の冷却装置(100)。
【請求項3】
角度αが、
-90°≦α≦90°あること、を特徴とする請求項2に記載の冷却装置(100)。
【請求項4】
各冷却バーが、
金属材料の搬送方向で見て左側の第1の作用領域(I)及び
中央の第2の作用領域(II)の他に、
右側の第3の作用領域(III)を備えること、及び、
第1の冷却バー(110-1)の左側の作用領域(I)は、グループ(G)内の第2の冷却バー(110-2)の左側の作用領域(I)とは、その輪郭及び/又は面が異なるように形成されていること、及び/又は、第1の冷却バー(110-1)の中央の作用領域(II)は、グループ(G)内の第2の冷却バー(110-2)の中央の作用領域(II)とは、その輪郭及び/又は面が異なるように形成されていること、及び/又は、第1の冷却バー(110-1)の右側の作用領域(II
I)は、グループ(G)内の第2の冷却バー(110-2)の右側の作用領域(III)とは、その輪郭及び/又は面が異なるように形成されていること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
左側と右側の作用領域(I,III)がそれぞれ三角形に形成され、中央の作用領域(II)が台形に形成されていること、を特徴とする請求項4に記載の冷却装置(100)。
【請求項6】
左側、中央及び右側の作用領域が、それぞれ台形に形成されていること、を特徴とする請求項4に記載の冷却装置(100)。
【請求項7】
グループの冷却バーの少なくとも1つが、少なくとも2つの平行な列の作用チューブ又はノズル(150)を備え、
仮想の境界線(140)が、作用チューブ又はノズルの間に延在すること、を特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の冷却装置(100)。
【請求項8】
1つのグループ(G)の冷却バー(110)が、その縦方向(x)に対して横にそれぞれ直接的に隣接していること、を特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の冷却装置(100)。
【請求項9】
グループ(G)の少なくとも2つの冷却バー(110)が、同じ又は異なる数の作用領域(I,II,III)を備えること、を特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の冷却装置(100)。
【請求項10】
グループ(G)の第1及び平行な第2の冷却バー(110-1,110-2)における同じ作用領域(I-I,II-II,III-III)が、1つの同じ弁に接続されていること、を特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の冷却装置(100)。
【請求項11】
グループの第1及び平行な第2の冷却バーにおける左側と右側の作用領域(I,
III)が、1つの同じ弁(131)に接続されていること、を特徴とする請求項4に記載の冷却装置(100)。
【請求項12】
金属材料(200)を圧延するための少なくとも1つのロールスタンドと
、ロールスタンドの下流に配置された、請求項1~11のいずれか1項に記載の冷却装置(100)を有する圧延設備において、
少なくとも冷却バー(110)の第1のグループ(G)が、金属材料(200)の上側に冷却剤(300)を噴射するために配置され、少なくとも冷却バーの第2のグループが、金属材料の下側に冷却剤を噴射するために配置されていること、を特徴とする圧延設備。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の冷却装置(100)を操作するための方法において、
グループ(G)内の少なくとも1つの冷却バー(110)の個々の作用領域(I,II,III)内の冷却剤(300)の圧力又は流量が、金属材料の幅、冷却すべき金属材料のその幅にわたる温度分布、金属材料の化学組成のうちの少なくとも1つのパラメータに依存して調整されること、を特徴とする方法。
【請求項14】
金属材料の組成が化学的に分析されること、を特徴とする請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
パラメータが、冷却装置の入口及び/又は出口で測定及び/又は計算されること、を特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
金属材料(200)が冷却装置(100)を通過する間に、冷却バー(110)の長さにわたる冷却剤(300)の圧力又は流量の分布が、パラメータに依存して変更されること、を特徴とする請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料、特に金属ストリップを冷却するための冷却装置及び冷却装置を操作するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料に冷却剤を適用するための複数の平行に配置された冷却バーを有するこのような冷却装置は、従来技術で十分に、従って例えば欧州特許第0081132号明細書及び西独国特許出願公開第19854675号明細書から知られている。
【0003】
従って、前記欧州の特許文献には、冷却すべき金属材料の搬送方向もしくは縦方向に延在する複数の冷却バーを有する冷却装置が開示されている。しかしながら、同時に、これら冷却バーの複数は、金属材料の幅方向に配置されている。各冷却バーは、個別に冷却剤の流量を作用可能である。このようにして、冷却すべき金属材料の幅にわたる冷却剤の流量の異なる分布が実現可能である。
【0004】
西独国特許出願公開第19854675号明細書には、それぞれ冷却すべき金属材料の縦方向に対して横に延在しかつ平行に配置された複数の冷却バーを有する冷却装置が開示されている。各冷却バーは、その長さにわたって分布されて、即ち金属材料の幅にわたって分布されて、複数の作用チューブ又はノズルを支持し、これら作用チューブ又はノズルは、さらにまた、適用すべき冷却剤流量に関して個別に制御され得る。このようにして、同時に、冷却すべき金属材料上の冷却剤流量の非常に個別的な分布が実現され得る。
【0005】
最後に、欧州特許第2986400号明細書には、請求項1の上位概念のすべての特徴を有する冷却装置が開示されている。部隊的には、そこに開示された冷却装置は、金属材料に冷却剤を適用するための少なくとも1つの冷却バーを備え、各冷却バーは、その縦方向に少なくとも1つの左側の、1つの中央の及び1つの右側の作用領域を備える。作用領域は、冷却バーの縦方向に対を成して隣接しており、その面及び/又は輪郭が異なるように形成されている。具体的には、この特許文献では、3つ全ての領域が三角形に形成されている。各作用領域には、個々の作用領域内の冷却剤流量を制御又は調整するための独自のポンプと弁が付設されている。
【0006】
公知の冷却装置は、確かに、圧延材の幅にわたる冷却剤流量の分布の限定的な調整を可能にするが、分布のための調整の可能性は限定的である。従って、これら限定的な調整の可能性では、異なる幅を有するストリップ又はシートに適切に反応し、ストリップ幅に応じて、ストリップ幅にわたる所定の冷却剤量分布を適用することが必ずしも可能でない。冷却バーのグループの内の冷却バーにおいて冷却剤量分布が同じである場合、非常に狭幅の金属材料は、ほとんどマスキングされず、広幅の金属材料のマスキングが非常に深くまで行なわれる。更に、冷却バー内の冷却剤用の出口開口の列状の配置と組み合わせた1つのグループの冷却バーにおける作用領域の類似性は、必然的に圧延材の幅にわたる段状の冷却剤作用を生じさせる。これにより、金属材料がストリップ状に冷却される危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第0081132号明細書
【文献】西独国特許出願公開第19854675号明細書
【文献】欧州特許第2986400号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底にある課題は、金属材料の幅にわたる冷却剤の所定の分布を設定するための可能性が改善されるように、公知の冷却装置、冷却装置を操作するための公知の方法及びそのような冷却装置を有する公知の圧延装置を発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の対象物によって解決される。それによれば、本発明による冷却装置は、第1の冷却バーの第1の作用領域は、同じグループ内の隣接する第2の冷却バーの第1の作用領域とは、その輪郭及び/又は面が異なるように形成されていること、を特徴とする。
【0010】
1つのグループ内の隣接する冷却バーにおける同じ作用領域の請求した異なる形態により、好ましくは、各作用領域内の冷却剤の圧力又は流量を調整するための付加的に請求した個別の可能性と組み合わせて、圧延材の幅にわたる冷却剤のほぼ任意の分布が実現され得る。個別の作用領域と、好ましくは付加的に作用領域毎に個別の冷却剤作用を有する複数の平行な冷却バーを1つのグループに付設することにより、金属材料の幅にわたる冷却剤の特に技術的に好ましい放物線状の分布が実現され得る。各作用領域内の個別の圧力もしくは流量は、異なる作用領域内の同じ圧力もしくは流量を排除しない。
【0011】
「面」との用語は、「面積」を意味する。
【0012】
「グループ」との用語は、本明細書において、平行に配置された複数の冷却バーを意味し、グループ毎の冷却バーの数は、圧延材にわたる冷却剤の最終的に所望されるもしくは所定の分布によって決定される。1つのグループに付設される構成要素もしくは冷却バーが多いほど、より細かくもしくはより正確に、所望の冷却剤の分布が実現され得る。
【0013】
「対を成して隣接する」との用語は、冷却バー毎に設けられた少なくとも3つの作用領域のうち、3つ全ての作用領域が同時に隣接しているわけではないことを意味する。作用領域は、典型的に、各冷却バーにおいて縦方向に相前後して配置されているので、典型的に常に2つだけの、即ち一対の作用領域が隣接している。
【0014】
「左側、中央及び右側」との用語は、図中の作用領域の図示に関係する。空間内に冷却バーが実際に任意に配置されている場合、これらの呼称は適切に変更すべきである。
【0015】
用語「第1」及び「第2」の冷却バーは、冷却バーを物理的に区別するためにのみ使用され;これらは、グループ内の冷却バーの順番又は順位を示すものではない。
【0016】
第1の冷却バーの第1の作用領域と第2の冷却バーの第1の作用領域は、これら両方が、違いがあるにもかかわらず、実質的に材料の同じもしくは共通の第1の幅部分に冷却剤を噴射するように配置及び形成されている。この意味で、第1の冷却バーの第1の作用領域と第2の冷却バーの第1の作用領域は、本明細書の意味で同じ又は同様である。
【0017】
同様に、この陳述は、別の全ての作用領域及び別の全ての幅部分についても当て嵌まる。第1の幅部分と別の幅部分は、互いに区別すべきである。
【0018】
「同じ作用領域」との用語からは、異なる冷却バーにおいてそれぞれ材料の他の幅領域に噴射する作用領域の混合型の組合せは、例えば異なる冷却バーにおける第1と第3の作用領域又は第2と第3の作用領域は、除外されている。
【0019】
1つの冷却バーの隣接する2つの作用領域の間の境界は、それぞれ1つの境界線で示されている。境界線は、決して直線的に延在する必要はなく、それぞれの冷却バーの個々の作用チューブ又はノズルの間に湾曲して又は段状に延在してもよい。以下の説明で、境界線がそれぞれの冷却バーの縦軸に対して角度αで傾斜していると述べられている場合は、実際の又は仮想の直線的な境界線が仮定される。境界線は、実際には直線的でなく、段状又は波状に形成されている場合は、角度αを定義するために、実際に非直線的な境界線を通る仮想の直線的な境界線が仮定される。仮想の直線的な境界線は、実際に非直線的な境界線を通る表現又は中心線として使用される。
【0020】
本発明による冷却装置の第1の実施例によれば、同じグループの隣接する2つの冷却バーにおける同じ作用領域の間の異なる形態は、比較すべき両冷却バーにおける境界線がそれぞれの冷却バーの縦軸に対して異なる角度αで傾斜していること、及び/又は、冷却バーの縦軸に沿った境界線がx方向に異なるように位置決めされていること、即ちx方向に互いに相対的に変位していることによって達成され得る。どちらの選択肢も、実際に、金属材料の幅にわたる冷却剤の所望の分布を設定するための可能性の拡大を生じさせる。
【0021】
本発明の前記課題は、更に、金属材料を圧延するための少なくとも1つのロールスタンドと、典型的にロールスタンドの下流に配置された、本発明による冷却装置を有する圧延設備によって解決される。この場合、冷却バーの本発明による第1のグループは、金属材料の上側に冷却剤を作用させるために配置することができ、少なくとも冷却バーの第2のグループは、金属材料の下側に冷却剤を作用させるために設けることができる。
【0022】
最後に、本発明の前記課題は、本発明による冷却装置を操作するための方法によっても解決される。この方法によれば、グループ内の少なくとも1つの冷却バーの個々の作用領域内の冷却剤の圧力又は流量が、それぞれ、金属材料の幅、冷却すべき圧延材のその幅にわたる温度分布及び/又はその化学組成のうちの少なくとも1つのパラメータに依存して調整される。前記パラメータは、冷却装置の入口又は出口で測定又は計算することができ、これはパイロット制御または閉ループ制御と呼ばれる。
【0023】
請求した圧延設備及び請求した方法の利点は、請求した冷却装置に関して述べた利点に一致する。
【0024】
最後に、金属材料が冷却装置を通過する間に、個々の冷却バーの長さにわたる冷却剤の圧力又は流量の分布を、パラメータに依存して個別に変更することも可能である。
【0025】
本発明による装置及び本発明による方法の別の有利な形態は、従属請求項の対象である。
【0026】
明細書には、5つの図が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】冷却バーの作用領域が、第1のパターン又は第1の実施例の形態で形成されている、模範的に5つの冷却バーのグループを有する本発明による冷却装置
【
図2】グループ内に作用領域を配置するための第2のパターン又は実施例
【
図3】グループ内に作用領域を配置するための第3のパターン又は実施例
【
図4】本発明により金属材料の幅にわたり冷却剤の流量を分布させるための例
【
図5】金属材料の端部領域内の冷却剤の流量の変化による
図4による分布の変化
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を、以下で、前記の図を参照して実施例の形態で詳細に説明する。全ての実施例で同じ技術的要素が、同じ符号で指示されている。
【0029】
図1は、金属材料200、特に金属ストリップを冷却するための冷却装置100を示す。冷却装置は、金属材料200に冷却剤300を適用するための、n=1...nの、ここでは模範的にn=5の平行に配置された複数の冷却バー110-nから成る。冷却剤は、ポンプ160及び弁130によりタンクから冷却バー110内に圧送される。各冷却バー110-nは、その縦方向に、それぞれ作用チューブ又はノズル150を有する少なくとも1つの左側の、1つの中央の及び1つの右側の作用領域I,II,IIIに分割されている。この場合、それぞれ2つの作用領域が隣接しているため、明細書では対を成して隣接しているとも記述される。1つの冷却バーの各作用領域I,II,IIIには、独自の弁130が付設されているので、個々の領域が、冷却剤の圧力又は流量の作用を個別に受け得る。
図1で、全ての左側の作用領域Iが、模範的に同じ弁130-Iに接続されており、従って、並列に接続されている。同様に、N=1~5の冷却バー110-nの全ての中央の作用領域IIが同じ弁130-IIに接続されており、従って、同様に並列に接続されている。同様に、全ての右側の作用領域IIIが第3の弁130-IIIに接続されている。
【0030】
より詳細な変形例では、それぞれ類似した作用領域I,II,IIIは、冷却剤の供給に関して並列に接続されているのではなく、選択的に、各冷却バーの各作用領域に独自の弁が付設され得る。
図1に示した実施例の場合-そこでは、グループGが、それぞれ3つの作用領域を有する5つの冷却バー110-1...-5を備える-は、例えば3*5=15の制御弁をこのグループのために設けるべきである。基本的に、全てのサブケースも考えられ、その場合、個々の類似した作用領域がそれぞれ部分的にのみ並列に接続されている。
【0031】
このようにして、特に、個々の作用領域I,II,III内の冷却剤の圧力又は流量は、少なくともグループで、ここでは示した1つのグループGに対して個別に調整可能である。
【0032】
全ての弁130及び全てのポンプ160は、制御装置120に接続され、この制御装置によって個別に制御される。
【0033】
図1に示した第1の実施例の場合、冷却バー110-1...-5の作用領域I,II,IIIは、それぞれその面の大きさの点で、即ちその面積に関して異なる。具体的には、個々の冷却バーにおけるn=1...-5の境界線140-nは、冷却バーの縦方向にそれぞれ異なるように位置決めされていることが認められる。
図1に示した実施例内の全ての境界線140の勾配は確かに全て同じであるため、角度α1及びα2はどこでも同じであるが、ここでは模範的にグループGの全ての冷却バー110-1...-5におけるx=1...5の始点xn,xn’がそれぞれ異なる。具体的には、これにより、台形の中央の作用領域IIの面は、冷却バー110-1から冷却バー110-5まで次第に大きくなるが、同時に、左側と右側の作用領域I,IIIの面は、漸次的に次第に小さくなる。これは、個々の各冷却バーの噴射面全体が、境界線140をずらしても常に同じであることに根拠がある。
【0034】
更に、冷却バー110-1...-4の場合は全ての作用領域が常に台形に形成されているが、第5の冷却バー110-5の場合は外側の両作用領域I及びIIIがそれぞれ三角形であり、中央の冷却領域IIのみが台形に形成されていることが認められる。
【0035】
各冷却バーは、各作用領域内に少なくとも1つの、しかしながら典型的には複数の作用チューブ又はノズル150を備え、これら作用チューブ又はノズルは、単に冷却バー内の単純な開口の形態でも形成され得る。冷却バー110-nは、その縦軸が圧延材200の搬送方向Tに対して横に延在する。
【0036】
図1に示したものとは違って、グループGの個々の冷却バー110は、基本的に少なくとも部分的に異なる数の作用領域も備え得る。
【0037】
冷却バー110-nのグループGは、金属材料200の幅にわたる冷却剤300の所望の分布を介して定義される。所望の分布関数は、グループG内の個々の冷却バーの個々の分布関数の重ね合わせにより得られる。冷却バーがグループ内の異なるように形成された作用領域I,II,IIIと多く結合されているほど、冷却剤用の所望の全体分布関数がより正確に実現され得る。その場合、特に、金属材料200への冷却剤300の技術的に好ましい微細な放物線状の作用が実現され得る。
【0038】
図2は、それぞれその面積及びその輪郭が冷却バーから冷却バーへ異なる作用領域を形成するための第2の実施例を示す。第2の実施例の場合、外側の両作用領域、即ち左側と右側の作用領域I,IIIは、それぞれ三角形に形成され、中央の領域は、台形に形成されている。面及び輪郭が異なる形成は、第2の実施例の場合、境界線140が、冷却バーから冷却バーへ冷却バーの縦方向に対してそれぞれ異なるように傾斜していることによって実現される。傾斜角α1...-α5は、グループGの最初の冷却ビーム110-1から最後の冷却ビーム110-5までの次第に大きくなる。これにより、台形の中央の作用領域は常に拡大されるが、それぞれの外側の作用領域I及びIIIは、比例して縮小される。
図2に示した第2の実施例の場合、境界線140は、それぞれ左下隅と右下隅から始まる。これは、第2の実施例における異なる作用領域が、冷却バーの縦軸に対する境界線の角度αの変更だけにより得られるが、境界線140がx軸に沿って異なるように位置決めされることはないことを意味する。
【0039】
図3は、5つの冷却バーのグループGにおける作用領域I,II及びIIIを形成するための第3の実施例を示す。第3の例の場合、冷却バーから冷却バーへの個々の作用領域の違いは、冷却ビームの縦軸に対する傾斜角α1...-α5と、冷却バー110-1から冷却バー110-5への冷却バーのx軸もしくは縦軸に沿った境界線の位置x1...-x5の両方がそれぞれ変化させられることによって実現される。
【0040】
図4は、金属材料200の幅にわたる冷却剤300の平均の流量の分布関数を模範的に示す。図示した分布関数は、
図1から
図3に図示したような、グループG内のそれぞれ異なる作用領域I,II,IIIを有する複数の冷却バー110-1...-5の組み合わせにより、特に金属材料の幅にわたる連続した放物線状の分布が実現可能であるための例である。ここでの強調は、「連続した」との言葉にある。これは、分布関数の個々の直線部分の間の移行部がジャンプを備えるのではなく、その代わりに比較的滑らかに経過することを意味する。移行部は、グループ内の冷却バーが多くなるほど、及び、グループ内の作用領域の重なりが多くなるほど、滑らかに形成され得る。
図4に示した対称の分布とは違って、左側と右側を非対称に調整することも可能である。
【0041】
図5は、まず、
図4と同じ分布関数を示す(
図5の中央の関数を参照のこと)。更に、
図5は、中央の関数に対して端部領域がより湾曲したもしくは弱まった関数を示すが、これは、端部ゾーン内の水量の低減によって実現される。最後に、
図4による関数の上に、異なるように変化した分布関数が認められるが、これは、端部ゾーン内の水量の相応の増大によって実現される。その際にグループ内の全ての類似した端部ゾーンが冷却剤の作用に関して並列に接続されてはいない場合、即ち、冷却剤に対して同じ流量又は同じ圧力の作用を受けるのではなく、これら調整パラメータが、個々の作用領域のために個別に設けられた制御弁によって冷却バー毎に調整可能である場合が特に有利である。
【0042】
全体として、
図5は、グループの個々の作用領域内の冷却剤の量もしくは圧力を同時に変化させつつ、グループの冷却バー内の異なる作用領域を利用する場合の可能性を示す。
【0043】
本発明による冷却装置100は、典型的に、圧延設備の最後のロールスタンドの下流に配置されている。冷却装置内には、冷却バー110の少なくとも1つの第1のグループGが、金属材料の上側に冷却剤を適用するために配置され、及び/又は、少なくとも1つの第2のグループが、金属材料の下側に冷却剤を適用するために配置されている。
【0044】
グループG内の少なくとも1つの冷却バー110の個々の作用領域I,II及びIII内の冷却剤300の圧力又は流量は、それぞれ、金属材料の幅、冷却すべき金属材料のその幅にわたる温度分布、又は、化学組成もしくは材料又は金属材料の材料特性のうちの少なくとも1つのパラメータに依存して調整され得る。
【0045】
前記パラメータは、冷却装置の入口及び/又は出口のいずれかで測定及び/又は計算され得る。冷却装置の入口でその検出が行なわれる場合はパイロット制御と呼ばれ、冷却装置の出口でのパラメータの検出が行なわれる場合は閉ループ制御であり得る。
【0046】
本発明による各冷却装置における個々の作用領域I,II及びIIIの模範的に
図1から
図3に図示した形成は、それぞれ不動に設けられているが、金属材料200が冷却装置100を通過する間に、冷却バー100の長さにわたるもしくは個々の作用領域I,II及びIII内の冷却剤300の圧力又は流量の分布は、前記パラメータに依存して変更され得る。
【符号の説明】
【0047】
100 冷却装置
110-n 冷却バー
110-1 第1の冷却バー
110-2 第2の冷却バー
120 制御装置
130 弁
140 1つの冷却バーの隣接する2つの冷却バーの間の境界線
150 作用チューブ又はノズル
200 金属材料、特に圧延材
300 冷却剤
G グループ
T 圧延材の搬送方向
X 縦方向
I 左側の作用領域
II 中央の作用領域
III 右側の作用領域
α 角度