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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】トランスポンダ付空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20220215BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C19/00 J
B60C15/00 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020560181
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 IB2019053174
(87)【国際公開番号】W WO2019207422
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】102018000004925
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ペドリネッリ
(72)【発明者】
【氏名】エミリアーノ サベッティ
(72)【発明者】
【氏名】マウロ ミラビル
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエレ ロサ
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1312841(KR,B1)
【文献】特開2001-354013(JP,A)
【文献】特開2008-265750(JP,A)
【文献】特開2015-223918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0122757(US,A1)
【文献】特開2020-055450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤ(1)であって、
1枚のみのボディプライ(3)からなるトロイダルカーカス(2)であって、前記ボディプライ(3)は、部分的に折りたたまれているために2つの側面フラップを備え、各フラップにおいて、前記ボディプライ(3)の縁部は、前記ボディプライ(3)自体の中間部分に当接するトロイダウカーカス(2)と、
2つの環状ビード(4)であって、各環状ビード(4)は、前記ボディプライ(3)で囲まれ、ビードコア(5)およびビードフィラー(6)を備える環状ビード(4)と、
環状トレッド(7)と、
少なくとも1つのトレッドプライ(9)を備えるトレッドベルト(8)と、
前記トレッド(7)と前記ビード(4)との間で前記ボディプライ(3)の軸方向外側に配置された一対のサイドウォール(11)と、
前記ボディプライ(3)の軸方向外側で、前記サイドウォール(13)の径方向でより内側に、前記ビード(4)に配置された一対の摩耗ゴムストリップ(12)と、
トランスポンダ(13)であって、前記トランスポンダ(13)は、前記ボディプライ(3)のフラップに、前記ボディプライ(3)と接触して配置され、前記ボディプライ(3)の縁部(19)の径方向でより内側に配置されたトランスポンダ(13)と、を備え、
前記ボディプライ(3)の各フラップは、前記トレッドプライ(9)の下で径方向に終端し、前記ボディプライ(3)の各フラップにおいて、前記ボディプライ(3)の前記縁部(19)が前記トレッドプライ(9)と接触し、
前記トランスポンダ(13)が、径方向で前記ボディプライ(3)の前記縁部(19)と前記ビードフィラー(6)の径方向外側の縁部(20)との間に配置され、
10mmより大きい第1径方向距離(D4)は、前記トランスポンダ(13)の径方向外側の端部と、前記ボディプライ(3)の前記縁部(19)との間に設けられ、
10mmより大きい第2径方向距離(D5)は、前記トランスポンダ(13)の径方向内側の端部と、前記ビードフィラー(6)の径方向外側の前記縁部(20)との間に設けられていることを特徴とする、空気入りタイヤ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記トランスポンダ(13)の各端部は、前記空気入りタイヤ(1)の断面の高さ(H)の中間面(M)から10mm未満の第3径方向距離(D1、D2)に配置されている、空気入りタイヤ(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記トランスポンダ(13)は、バンド(21)内に含まれ、前記バンド(21)が、前記空気入りタイヤ(1)の前記断面の前記高さ(H)の前記中間面(M)上でセンタリングされ、16~24mmの間の、好適には20mmの径方向の振幅(A)を有する、空気入りタイヤ(1)。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記トランスポンダ(13)は、軸方向で前記ボディプライ(3)の前記フラップの内部に配置されている、空気入りタイヤ(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記トランスポンダ(13)は、軸方向に両側で前記ボディプライ(3)の対応する部分と接触する、空気入りタイヤ(1)。
【請求項6】
請求項1~3の何れか一項に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記トランスポンダ(13)は、軸方向で前記ボディプライ(3)の前記フラップの外部の上に配置され、軸方向内側で前記ボディプライ(3)の対応する部分と接触し、軸方向外側で前記サイドウォール(11)の対応する部分と接触する、空気入りタイヤ(1)。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記トランスポンダ(13)は、前記サイドウォール(11)が存在し、前記摩耗ゴムストリップ(12)が存在しないゾーンに配置されている、空気入りタイヤ(1)。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記トランスポンダ(13)はスリーブ(17)内に挿入され、前記スリーブ(17)は、重ね合わされて一方が他方に押し付けられた2つのゴムストリップ(18)からなる、空気入りタイヤ(1)。
【請求項9】
請求項8に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記スリーブ(17)の前記2つのゴムストリップ(18)は前記トランスポンダ(13)よりも1~2mm長い/幅広である、空気入りタイヤ(1)。
【請求項10】
請求項8または9に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記2つのゴムストリップ(18)は、前記トランスポンダ(13)の構成要素の周囲で変形される、空気入りタイヤ(1)。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の空気入りタイヤ(1)であって、前記トランスポンダ(13)は、周方向に配置され、直線形状を有し、したがって前記空気入りタイヤ(1)の内部において、前記空気入りタイヤ(1)の他のすべての構成要素の環状の進行に追従しない、空気入りタイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスポンダ付空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現代の車両の積極的な役割を担うことのできる、いわゆる「スマート」空気入りタイヤが出現した。「スマート」空気入りタイヤは、取り付けられている空気入りタイヤの種類に関する情報、空気入りタイヤの状態に関する情報、および周囲条件に関する情報をも提供する。
【0003】
「スマート」空気入りタイヤには、通常、トランスポンダ(すなわち、無線周波数で通信するのに適した電子装置)が装備される。このトランスポンダは、空気入りタイヤの識別、特性、および履歴のリモート通信を(すなわち、タイヤが取り付けられている車両と、空気入りタイヤのチェックまたは交換を実行しなければならないオペレータとの両方に対して)可能にする。
【0004】
最近では、トランスポンダの存在を利用したRFID(Radio Frequency Identification)技術と、TPMS(Tyre Pressure Monitoring Systems)技術との一体化が提案されている。TPMS技術は、有効なインフレーション圧力を記憶し、次いでトランスポンダ自体を使用してこの有効なインフレーション圧力をリモート通信するために、有効なインフレーション圧力を測定するものである。
【0005】
当初、トランスポンダを空気入りタイヤのサイドウォールの内面または外面上に接着することが提案された。この解決策は、設計の観点から極めて単純であり、既存の空気入りタイヤにも適用できる。しかしながら、これに反して、この解決策は、空気入りタイヤのサイドウォールが受ける周期的な変形を受けても、トランスポンダが空気入りタイヤから外れないこと(特に外面に接着されている場合)を保証するものではない。
【0006】
その後、空気入りタイヤの構造内、すなわち空気入りタイヤを構成する様々な層の内部にトランスポンダを統合することが提案された。
【0007】
特許出願US20080289736A1号は、トランスポンダがビードで空気入りタイヤの構造に組み込まれる空気入りタイヤを記載する。特に、トランスポンダは、ボディプライのフラップ上方でサイドウォールとビードフィラーとの間に配置される。
【0008】
特許出願EP2186658A1号は、トランスポンダがビードで空気入りタイヤの構造に組み込まれる空気入りタイヤを記載する。特に、トランスポンダは、ボディプライのフラップ上方で、サイドウォールとビードフィラーとの間に配置される。またはトランスポンダが、ビードフィラーとボディプライとの間(すなわち、ボディプライのフラップ内)に配置される空気入りタイヤを記載する。
【0009】
特許出願EP1366931A2号は、トランスポンダがビードで空気入りタイヤの構造に組み込まれる空気入りタイヤを記載する。特に、トランスポンダは、ビードフィラー内に沈められ、ボディプライのフラップの内部に配置される。またはトランスポンダが、ビードコアのより内側に配置されたゴム内に沈められる(したがって、ボディプライのフラップの外部に配置される)空気入りタイヤを記載する。
【0010】
特許出願US2010122757A1号は、トランスポンダが摩耗ゴムストリップの端部とビードフィラーの端部との間に配置されることが好適である空気入りタイヤを記載する。
【0011】
特許出願EP1978345A2号は、サイドウォールの一部に取り付けられた少なくとも7つのセンサーを利用して、空気入りタイヤが転動している間に空気入りタイヤに作用する力を推定する方法を記載する。
【0012】
特許出願US2011175778A1号は、トランスポンダがビードフィラーとサイドウォールとの間に配置される空気入りタイヤを記載する。
【0013】
特許出願EP1552968A1号は、トランスポンダがビードで、ボディプライの端部の径方向でより内側に配置される空気入りタイヤを記載する。
【0014】
それにもかかわらず、空気入りタイヤ内のトランスポンダの上述の配置は理想的ではない。というのは、これらの配置は、トランスポンダが(空気入りタイヤの製造中および空気入りタイヤの使用中の両方において)受ける応力および変形を最小限に抑え、また同時に、トランスポンダの無線周波通信の障害および干渉を最小限に抑えることができないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許出願公開2008/0289736号明細書
【文献】欧州特許出願公開2186658号明細書
【文献】欧州特許出願公開1366931号明細書
【文献】米国特許出願公開2010/122757号明細書
【文献】欧州特許出願公開1978345号明細書
【文献】米国特許出願公開2011/175778号明細書
【文献】欧州特許出願公開1552968号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、上述の欠点がない、すなわち、特に実施が容易で安価なトランスポンダ付空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載のトランスポンダ付空気入りタイヤが提供される。
【0018】
特許請求の範囲は、本明細書の必須部分を形成する本発明の好適な実施形態を記載する。
【0019】
次に、本発明を添付の図面を参照して説明する。図面は、いくつかの非限定的で例示的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に従って製造された空気入りタイヤの概略断面図である。明確にするために部品が取り除かれている。
図2図1の空気入りタイヤのトランスポンダの概略図である。
図3】切断線III-IIIによる図2のトランスポンダの断面図である。
図4】切断線IV-IVによる図2のトランスポンダの断面図である。
図5】代替実施形態による図1の細部の拡大図である。
図6】代替実施形態による図1の細部の拡大図である。
図7図1の空気入りタイヤのボディプライの縁部に対する、図2のトランスポンダの配置を示す概略図である。
図8】更なる実施形態による図1の細部の拡大図である。
図9】また更なる実施形態による図1の細部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1において、空気入りタイヤは全体として数1で示され、トロイダルカーカス2を備える。トロイダルカーカス2は、単一のボディプライ3を備える。ボディプライ3は、部分的に折りたたまれているために2つの側面フラップ(すなわち、2つの層が互いに重ね合わされ、まとめて「ターンアップ」と呼ばれる)を備える。ボディプライ3の各フラップにおいて、ボディプライ3の縁部(すなわち、終端部)は、ボディプライ自体の中間部分に対して支持される。換言すると、トロイダルカーカス2は、単一でユニークなボディプライ3のみを一意的に備え、したがってボディプライ3上に重ね合わされた他のボディプライ(フラップを形成するか否かにかかわらず)を備えない。
【0022】
カーカス2の両側には、2つの環状ビード4が配置されている。各環状ビード4は、ボディプライ3で囲まれており(すなわち、ボディプライ3のフラップで囲まれており)、金属線のいくつかの巻線で補強されたビードコア5およびビードフィラー6を備える。
【0023】
カーカス2は環状トレッド7を支持する。カーカス2とトレッド7との間には、2つのトレッドプライ9を備えるトレッドベルト8が挿入されている。各トレッドプライ9はいくつかのコード(図示せず)を備える。これらのコードは、ゴムベルト内に埋め込まれ、所与のピッチで相互に並んで配置され、空気入りタイヤ1の赤道面に対して決定された傾斜角度を形成する。
【0024】
インナーライナー10は、ボディプライ3内に配置されている。インナーライナー10は、同一の空気入りタイヤ1のインフレーション圧力を経時的に維持するために、気密であり、インナーライニングを構成し、空気入りタイヤ1内の空気を保持する機能を有する。
【0025】
ボディプライ3は、トレッド7とビード4との間でボディプライ3の外側に配置された一対のサイドウォール11を支持する。
【0026】
最後に、ボディプライ3は、一対の摩耗ゴムストリップ12を支持する。摩耗ゴムストリップ12は、サイドウォール13の下方外側で、ビード4に配置されている。
【0027】
空気入りタイヤ1は「エンベロープ」と呼ばれる構造様式に従って製造されている。ボディプライ3の各フラップは、トレッドプライ9の下で径方向に(したがって、最も内部のトレッドプライ9と接触するトレッド7の下で径方向に)終端する。すなわち、各フラップにおいて、ボディプライ3自体の中間部分に対して支持されるボディプライ3の縁部(すなわち、終端部)は、トレッドプライ9の径方向下(したがって、最も内部のトレッドプライ9と接触するトレッド7の径方向下)にある。換言すれば、各フラップにおいて、ボディプライ3の縁部(すなわち、終端部)が、最も内部のトレッドプライ9と接触している。
【0028】
図1に示すものによれば、空気入りタイヤ1の横断面は全高H(厚さ、すなわち、空気入りタイヤの回転軸に垂直に測定された径方向寸法)を有する。図1で識別されるのは、空気入りタイヤ1の横断面の高さHの中間面Mである(換言すると、平面Mは、空気入りタイヤ1の断面の高さHを二等分し、空気入りタイヤ1の断面の高さHを、各々がH/2の高さを有する2つの同一の半分に細分化する)。
【0029】
トランスポンダ13、すなわち、情報を記憶することができ、無線周波数によって通信することができる電子装置(通常は受動的である、すなわち、その電力供給はない)が、空気入りタイヤ1の内部、特にサイドウォール11において(例えば外側サイドウォール11において、すなわち、空気入りタイヤ1がリムに取り付けられていると、車両の外部を向くサイドウォール)に組み込まれている(沈められている)。言い換えれば、トランスポンダ13は、空気入りタイヤ1の内部に組み込まれ、リーダ(そうでなければポーリング装置)と呼ばれる特定の固定型装置またはポータブル装置によるリモートポーリングに応答するのに適した小寸法の「スマートラベル」である。リーダは、無線周波数でトランスポンダ13自体と通信しながら、ポーリングしているトランスポンダ13内に含まれる情報を読み取り、および/または変更することができる。したがって、トランスポンダ13は、いわゆるRFID(Radio Frequency Identification)技術に従って作動する読み取りおよび/または書き込み無線システムの一部である。
【0030】
図2に示すように、トランスポンダ13は、不揮発性メモリ(典型的にはEEPROMまたはFRAM、後者はより高価であるが技術的により進歩したもの)を装備した電子回路14(すなわち、マイクロチップ)と、電子回路14に接続されたアンテナ15と、電子回路14およびアンテナ15の両方を担持し、しばしば「基板」(典型的には、マイラー、PETまたはPVCのようなプラスチック、または他の同様の材料の薄層で作られる)として定義される支持体16と、を備える。図2に示す実施形態では、アンテナ15がダイポールアンテナ(または単にダイポール)であり、電磁場を遠隔的に照射する電流が流れる直線状の導電体で構成された2つの等しい開放アームからできている。
【0031】
使用中、アンテナ15は、電磁誘導によってアンテナ15に電位差を誘起する電磁信号を受信する。この電磁信号は、電子回路14自体に電力を供給するために、電子回路14において電流の循環を発生させる。このようにして起動された電子回路14は、そのメモリ内に含まれるデータをアンテナ15によって送信し、適切な場合にはそのメモリ内に含まれるデータを変更もする。
【0032】
図2および図3に示すように、トランスポンダ13はスリーブ17に挿入されている。スリーブ17は、重ね合わされて一方が他方に押し付けられた2つのグリーンゴムのストリップ18からなる(明らかに、2つのゴムストリップ18のゴムは、最初は未加工であり、空気入りタイヤ1自体の最終的な加硫中に、空気入りタイヤ1の残りの部分と共に加硫される)。一般に、スリーブ17のグリーンゴムの2つのストリップ18は、トランスポンダ13(すなわち、電子回路14およびアンテナ15)よりも1~2mm長い/幅広である。グリーンゴムの2つのストリップ18は、最初は平行六面体である。トランスポンダ13自体の周囲で一方が他方に押し付けられると、2つのストリップ18が、トランスポンダ13の構成要素の周囲で変形する。代替実施形態によれば、スリーブ17の2つのゴムストリップ18は、最初から加硫される(すなわち、2つのゴムストリップ18のゴムが直ちに加硫される)。
【0033】
異なる実施形態(図示せず)によれば、支持体16は存在しない。その機能はスリーブ17のゴムストリップ18によって果たされる。
【0034】
好適な実施形態によれば、スリーブ17(その内部にトランスポンダ13を含む)の厚さTは、全体で0.6と2mmの間である。スリーブ17の幅Wは約8~12mmである。スリーブ17の長さLは、約60~80mmである。
【0035】
トランスポンダ13は、周方向に、すなわち、空気入りタイヤの回転軸を中心とする円周に沿って配置されている。トランスポンダ13(スリーブ17内に含まれている)が、直方体形状を有し、したがって空気入りタイヤ1の内部において、空気入りタイヤ1の他のすべての構成要素の環状の進行に追従しないようにすることが重要である。
【0036】
図5および図6に示す実施形態によれば、トランスポンダ13(スリーブ17内に含まれている)は、ボディプライ3の縁部19(すなわち、終端部)(これは、トレッドプライ9の下に、したがって最も内部のトレッドプライ9と接触するトレッド7の下に配置され、ボディプライ3自体の中間部分に対して支持されている)から(ゼロでない)径方向距離に配置されている。すなわち、トランスポンダ13の上縁部(端部)は、ボディプライ3の縁部19から(ゼロでない)径方向距離に配置されている。さらに、トランスポンダ13(スリーブ17内に含まれている)は、ビード4の縁部(すなわち、終端部)(特に、ビードフィラー6が終端するビードフィラー6の縁部)から(ゼロでない)径方向距離に配置されている。すなわち、トランスポンダ13の下縁部(端部)は、縁部20から(ゼロでない)径方向距離で、径方向でよりビードフィラー6の外側に配置されている。
【0037】
図5および図6に示す実施形態によれば、トランスポンダ13(スリーブ17内に含まれている)は、完全にバンド21内に含まれている。バンド21は、空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面M上でセンタリングされ、16と24mmとの間の全体振幅Aを有する(すなわち、振幅Aが、16と24mmとの間で変化可能であり、通常は20mmに等しい)。換言すると、バンド21の2つの端部は、空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面から同一の距離(全体で8と12mmとの間であり、通常は10mmに等しい)で対称的に配置されている。そのため、バンド21は、空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面M上でセンタリングされ、16と24mmとの間の全体振幅Aを有する。トランスポンダ13は完全にバンド21内に含まれている。トランスポンダ13の各端部は、空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面Mから8~12mm未満の距離D1又はD2に配置されている。
【0038】
トランスポンダ13が完全にバンド内に含まれねばならないことが重要である。図5および図6に示す実施形態では、バンド21は、空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面M上でセンタリングされている。しかしながら、トランスポンダ13は、中間面M上でセンタリングされる必要はない(すなわち、トランスポンダ13は、完全にバンド21内に含まれるという制約が満たされていれば、バンド21の最大値または最小値に向かって容易に移動できる)。その結果、図5及び図6に示す実施形態では、トランスポンダ13が、空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面Mで(その近傍で)、ボディプライ3と接触するように配置されている。トランスポンダ13は、空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面Mに対して(必ずしも)センタリングされていない。
【0039】
上述のように、トランスポンダ13は、ビード4の径方向でより外側に、したがってビードフィラー6の径方向でより外側に配置されている。さらに、トランスポンダ13は、サイドウォール11のより内側で、摩耗ゴムストリップ12の径方向でより外側に配置されている。その結果、トランスポンダ13が、サイドウォール11が存在し、摩耗ゴムストリップ12が存在しないゾーンに配置されている。
【0040】
図5に示す実施形態で、トランスポンダ13(スリーブ17内に含まれている)は、軸方向でボディプライ3のフラップの内側に配置されているため、両側で横方向に(換言すると、軸方向に、すなわち、空気入りタイヤ1の回転軸に平行して)ボディプライ3に隣接する。換言すると、トランスポンダ13は、両側で(換言すると、右側および左側で、すなわち、内側および外側の両方で)ボディプライ3の対応する部分と接触する。
【0041】
図6に示す実施形態で、トランスポンダ13(スリーブ17内に含まれている)は、軸方向でボディプライ3のフラップの外部に配置されているため、横方向に(換言すると、軸方向に、すなわち、空気入りタイヤ1の回転軸に平行して)一方の側(内側)でボディプライ3に隣接し、反対側(外側)でサイドウォール11に隣接する。換言すると、トランスポンダ13は、ボディプライ3の対応する部分と内側で接触し、サイドウォール11の対応する部分と外側で接触する。
【0042】
前述したように、トランスポンダ13は周方向に配置され、直方体形状を有し、空気入りタイヤ1の内部で空気入りタイヤ1の他のすべての構成要素の環状の進行に追従しない。その結果、図7に示すように、トランスポンダ13の各縁部と空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面Mとの間の径方向距離D1またはD2は、トランスポンダ13が矩形の進行を有し、一方空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面Mが環状の進行を有するため、トランスポンダ13の全範囲にそって連続的に可変である(たとえ最大で1~3mmであっても)。この点に関して、トランスポンダ13の各縁部と空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面Mとの間の最大(すなわち、可能な限り最大の)径方向距離D1またはD2は、常に8~12mm未満であることが重要である。
【0043】
図8および図9に示す代替実施形態では、バンド21は、もはや空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面Mに対して画定されていない。しかしながら、バンド21が、ボディプライ3の縁部19に対して、また縁部20に対して、ビードフィラー6の径方向でより外側に画定されている。特に、バンド21の径方向外側の端部は、ボディプライ3の縁部19から10mmに等しい径方向距離D3に配置されている。一方、バンド21の径方向内側の端部は、縁部20から10mmに等しい距離D3で、ビードフィラー6の径方向でより外側に配置されている。その結果、トランスポンダ13(および特にトランスポンダ13の径方向外側の縁部)は、ボディプライ3の縁部19から10mmよりも大きい径方向距離D4に位置する。同時に、トランスポンダ13(および特にトランスポンダ13の径方向内側の縁部)は、縁部20から10mmよりも大きい径方向距離D5で、ビードフィラー6の径方向でより外側に位置する。
【0044】
図8および図9の実施形態のバンド21(その内部にトランスポンダ13が完全に含まれている)は、通常、図5および図6の実施形態のバンド21よりも膨張性が高い。さらに、図8および図9の実施形態のバンド21(その内部にトランスポンダ13が完全に含まれている)は、図5および図6の実施形態のバンド21とは異なり、通常、空気入りタイヤ1の断面の高さHの中間面Mに対してセンタリングされていない。
【0045】
図8に示す実施形態では(図5に示す実施形態と類似して)、トランスポンダ13(スリーブ17内に含まれている)は、軸方向でボディプライ3の内側に配置されているため、両側で横方向に(換言すると、軸方向に、すなわち空気入りタイヤ1の回転軸に平行して)ボディプライ3に隣接する。換言すると、トランスポンダ13は、両側で(換言すると、右側および左側で、すなわち、内側および外側の両方で)ボディプライ3の対応する部分と接触する。
【0046】
図9に示す実施形態では(図6に示す実施形態と類似して)、トランスポンダ13(スリーブ内に含まれている)は、軸方向でボディプライ3のフラップの外部に配置されているため、横方向に(換言すると、軸方向に、すなわち、空気入りタイヤ1の回転軸に平行して)一方の側(内側)でボディプライ3に隣接し、反対側(外側)でサイドウォール11に隣接する。換言すると、トランスポンダ13は、ボディプライ3の対応する部分と内側で接触し、サイドウォール11の対応する部分と外側で接触する。
【0047】
ボディプライ3には、ボディプライ3の限定された部分に適用される局所的な補強要素を設けることができることが重要である。例えば、ボディプライ3には、ビード4近傍に適用される布製補強材、および/または、同様にビード4近傍に適用されるカレンダー加工された「スキージ」を設けることができる。この場合、このような補強要素はボディプライ3の一体部分となる。そのため、トランスポンダ13を、このような補強要素においても、ボディプライ3と接触して配置することができる。
【0048】
空気入りタイヤ1は、「標準」タイプまたは「非標準」タイプであってよい。例えば、空気入りタイヤ1は、「ランフラット」タイプ、「スポンジ」タイプ(すなわち、音響効果を有するスポンジ体を内部に備える)、または「シーラント」タイプ(すなわち、任意の穴を塞ぐことができるシール剤を備える)であってよい。
【0049】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の保護範囲から逸脱することなく、相互に組み合わせることができる。
【0050】
上述の空気入りタイヤ1は、多くの利点を有する。
【0051】
何よりもまず、前述の空気入りタイヤ1において、トランスポンダ13の位置は、トランスポンダ13が(空気入りタイヤ1の製造中および空気入りタイヤ1の使用中の両方において)受ける応力および変形を最小限に抑えることを可能とし、また同時にトランスポンダ13の無線周波通信の障害および干渉を最小限に抑えることができる(このように、空気入りタイヤ1が金属リム上に取り付けられていない場合には3メートルを超える距離でトランスポンダを読み取り可能であり、空気入りタイヤ1が金属リム上に取り付けられている場合には2メートルを超える距離でトランスポンダ13を読み取り可能である)。
【0052】
さらに、上述の空気入りタイヤ1において、(トランスポンダ13が空気入りタイヤ1内に沈められた「異物」であるにもかかわらず)トランスポンダ13の存在は、空気入りタイヤ1自体の性能および耐久性(または動作寿命)に悪影響を及ぼすことはない。
【0053】
図5および図8に示す実施形態で、トランスポンダ13は、ボディプライ3の層のより内側に位置する限り外部からより良好に保護される。図6および図9に示す実施形態では、ボディプライ3の局所的な変形が回避される。トランスポンダ13を収容するための空間は、完全に、サイドウォール11(これは、ゴムの厚い層で作られているために大きな変形能力を有する)のみを局所的に変形させることで形成されている。そのため、トランスポンダ13においてボディプライ3の内部に空気を取り込むリスクは、完全に回避される。
【0054】
最後に、ボディプライ3がまだ完全に平坦な状態であるときに(すなわち、ボディプライ3を形成ドラムの周囲に巻き付ける前に)、トランスポンダ1をボディプライ3に接着させて製造することができるため、またはサイドウォール自体を取り付ける前に、トランスポンダ1をサイドウォール11に接着させて製造することができるため、上述の空気入りタイヤ1の構造は単純である。明らかに、トランスポンダ1は、図6および9に示す実施形態においてのみサイドウォール11に接着させることができる。一方、トランスポンダ1は、全ての実施形態においてボディプライ3に接着させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 空気入りタイヤ
2 カーカス
3 ボディプライ
4 ビード
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 トレッド
8 トレッドベルト
9 トレッドプライ
10 インナーライナー
11 サイドウォール
12 摩耗ゴムストリップ
13 トランスポンダ
14 電子回路
15 アンテナ
16 支持体
17 スリーブ
18 ストリップ
19 縁部
20 縁部
21 バンド
H 高さ
L 長さ
W 幅
T 厚さ
A 振幅
D1 距離
D2 距離
D3 距離
D4 距離
D5 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9