(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】フィルムロール収容ケース用のインナーケース
(51)【国際特許分類】
B65D 25/52 20060101AFI20220215BHJP
B65D 85/672 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B65D25/52 C
B65D85/672
(21)【出願番号】P 2021166703
(22)【出願日】2021-10-11
【審査請求日】2021-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519051171
【氏名又は名称】飛田 貴司
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【氏名又は名称】金山 義信
(74)【代理人】
【識別番号】100199842
【氏名又は名称】坂井 祥平
(72)【発明者】
【氏名】飛田 貴司
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-049152(JP,A)
【文献】特開2018-140821(JP,A)
【文献】登録実用新案第3136626(JP,U)
【文献】特開2005-088991(JP,A)
【文献】特開2000-238790(JP,A)
【文献】特開2003-182784(JP,A)
【文献】実開昭57-162797(JP,U)
【文献】実開平05-029937(JP,U)
【文献】実開昭61-111394(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/52
B65D 85/672
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装用フィルムがロール状に巻き回されたフィルムロールを、その一端より引き出し可能に収容するフィルムロール収容ケースに、前記フィルムロールに装着された状態で収容して用いられる、フィルムロール収容ケース用のインナーケースであって、
少なくとも一方端が開放された中空円筒状の基体と、前記基体の長手方向に沿って形成されたスリット状の引出口と、を備え、
前記引出口は、前記基体の内側に収容された前記フィルムロールから引き出される前記包装用フィルムを引き出し可能な幅を有し、
前記基体の内周面における前記フィルムロールとの接触面
が、前記基体の内周面に配設された前記フィルムロールを支持するガイド板の天面であり、
前記天面がマット加工されて、前記基体の外周面と比較して、前記天面の表面粗さを大きくして、前記フィルムロールとの接点を少なくすることで、前記接触面と前記フィルムロールの外周面との摩擦係数が、前記基体の外周面と前記フィルムロール収容ケースの内面との摩擦係数よりも小さ
くなるようにし、
前記ガイド板の断面が丸みを帯びた形状であり、
前記ガイド板が、前記内周面の周方向に沿って分割されており、
前記基体の展開した状態での平面視において、前記ガイド板が、周方向において互い違いに配設される、インナーケース。
【請求項2】
包装用フィルムがロール状に巻き回されたフィルムロールを、その一端より引き出し可能に収容するフィルムロール収容ケースに、前記フィルムロールに装着された状態で収容して用いられる、フィルムロール収容ケース用のインナーケースであって、
少なくとも一方端が開放された中空円筒状の基体と、前記基体の長手方向に沿って形成されたスリット状の引出口と、を備え、
前記引出口は、前記基体の内側に収容された前記フィルムロールから引き出される前記包装用フィルムを引き出し可能な幅を有し、
前記基体の内周面における前記フィルムロールとの接触面
がマット加工されて、前記基体の外周面と比較して、前記接触面の表面粗さを大きくして、前記フィルムロールとの接点を少なくすることで、前記接触面と前記フィルムロールの外周面との摩擦係数が、前記基体の外周面と前記フィルムロール収容ケースの内面との摩擦係数よりも小さ
くなるようにし、
前記引出口の端部に、長手方向に沿ってローラが配設され、
前記ローラが長手方向に沿って分割される、インナーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムロール収容ケース用のインナーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻き回されたラップフィルム等を収容し、必要な分だけ引き出して、切断して利用するためのフィルムロール収容ケースが知られている。
【0003】
このようなフィルムロール収容ケースとして、特許文献1には、「シート状緩衝材の引き出し口と引き出し口から引き出したシート状緩衝材を任意の長さ位置で切断するカッターを備えた容器内に収容したことを特徴とするロール巻きシート状緩衝材。」が記載されている。
【0004】
上記のようなフィルムロール収容ケースに、例えば、食品包装用のラップフィルムがロール状に巻き回されたフィルムロールを収容し、これを引き出して使用することがある。
そのような場合、ラップフィルムを使用するに従ってフィルムロールの外径は小さくなっていくため、ラップフィルムを引き出す際に、フィルムロール収容ケースからフィルムロールが飛び出してしまったり、フィルムロールの巻き戻りが起こったりしてしまうことがあった。
【0005】
上記のような不具合を解消するために、フィルムロール収容ケースに、フィルムロールに装着された状態で収容して用いられる、フィルムロール収容ケース用のインナーケースが用いられることがある。
【0006】
このようなインナーケースとして、特許文献1には「ラップケース収納部にラップフィルムの外径より僅かに大きく、また、ラップケース収納部の内法サイズに適合させてある筒体と、それを据え置いて固定的に結合される台座とによって構成され、筒体は長手両サイドが全開放されており、筒面の長手方向に平行に端から端まで幅約15mm程度の切欠き開口部を有する切欠き円筒体として形成され、台座はラップケースの中に装着された時に、ラップケースの内側底面一杯に面接触しつつ両サイドからラップケース内壁よりも徐々に内側へ少し傾斜して約10mm前後程立ち上がる形で略コの字状を成し、この台座の内側に切欠き円筒体が、切欠き開口部の反対側において台座底面と固定的に結合され、その様に一体化された構成体の切欠き円筒体の中にラップフィルムを装着して使用されることを特徴とする食品用ラップ飛び出しや巻き付きや巻き戻りの防止補助器具。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された食品用ラップ飛び出しや巻き付きや巻き戻りの防止補助器具によれば、一定程度の巻き付きや巻き戻りの防止が期待できるものの、台座を有するため、フィルムロール収容ケースの形状が複雑となっていた。また、フィルムロール収容ケースの外径が円筒状であったりすると、台座がうまく収容できない等の問題があることを本発明者は知見している。
【0009】
そこで、本発明は、より簡便な構造の(具体的には台座を有しない)フィルムロール収容ケース用のインナーケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0011】
[1] 包装用フィルムがロール状に巻き回されたフィルムロールを、その一端より引き出し可能に収容するフィルムロール収容ケースに、上記フィルムロールに装着された状態で収容して用いられる、フィルムロール収容ケース用のインナーケースであって、少なくとも一方端が開放された中空円筒状の基体と、上記基体の長手方向に沿って形成されたスリット状の引出口と、を備え、
上記引出口は、上記基体の内側に収容された上記フィルムロールから引き出される上記包装用フィルムを引き出し可能な幅を有し、上記基体の内周面における上記フィルムロールとの接触面と上記フィルムロールの外周面との摩擦係数が、上記基体の外周面と上記フィルムロール収容ケースの内面との摩擦係数よりも小さい、インナーケース。
[2] 上記基体が異なる材質によって形成された2つ以上の層が積層されてなる積層体である、[1]に記載のインナーケース。
[3] 上記接触面が、基体の内周面に配設された上記フィルムロールを支持するガイド板の天面である、[1]又は[2]に記載のインナーケース。
[4] 上記ガイド板の断面が丸みを帯びた形状である、[3]又は[4]に記載のインナーケース。
[5] 上記ガイド板が、上記内周面の周方向に沿って分割されている、[3]に記載のインナーケース。
[6] 上記基体の展開した状態での平面視において、上記ガイド板が、周方向において互い違いに配設されている、[5]に記載のインナーケース。
[7] 上記フィルムロールのロール芯に挿入され、上記フィルムロールの回転を補助する芯棒を更に備える、[1]~[6]のいずれか1項に記載のインナーケース。
[8] 上記取出し口の端部に、長手方向に沿ってローラが配設されている、[1]~[7]のいずれか1項に記載のインナーケース。
[9] 上記ローラが長手方向に沿って分割されている、[8]に記載のインナーケース。
[10] 上記基体の内周面に、長手方向に沿って、上記フィルムロールの回転を補助するためのローラが更に配設されている、[1]~[9]のいずれか1項に記載のインナーケース。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より簡便な構造のフィルムロール収容ケースが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のインナーケースが収容されるフィルムロール収容ケースの一形態の斜視図である。
【
図3】フィルムロールが装着されたインナーケースと、それが収容されたフィルムロール収容ケースとからなるフィルムロール収容体の斜視図である。
【
図4】上記フィルムロール収容体の要部断面図である。
【
図6】(a)は、ガイド板の形態を図示するための基体の展開方法の説明図であり、(b)~(d)は、上記展開方法に基づき、基体を展開した状態での平面視における、ガイド板の他の形態を表す図である。
【
図7】本発明のインナーケースの第2の実施形態を含むフィルムロール収容体の要部断面図である。
【
図8】本発明のインナーケースの第3の実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
[用語の説明]
本明細書において、「フィルムロール」とは、包装用フィルムがロール状に巻き回されたものを意味し、典型的には、紙管等のロール芯に長尺の包装用フィルムが巻き回されて、ロール状とされたものである。
包装用フィルムの用途は特に制限されないが、食品包装用等が好ましい。
また、包装用フィルムの材質は特に制限されないが、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、及び、ポリメチルペンテン等が好ましい。
【0016】
本明細書において、「フィルムロール収容ケース」とは、上記フィルムロールを収容するケースであり、上記フィルムロールから、包装用フィルムの一端を引き出して用いることができるものを意味する。例えば、食品用ラップフィルム等は、フィルムロールと、これを収容するフィルムロール収容ケースとからなるフィルムロール収容体として流通している場合がある。
また、近年では、フィルムロールのみを購入し、フィルムロール収容ケースに詰め替えて使用されることも多い。
【0017】
フィルムロール収容ケースの材質としては特に制限されないが、紙、金属、及び、樹脂等が挙げられる。また、後述するように、フィルムロール収容ケースは、引き出された包装用フィルムを任意の長さに切断するための歯を有していてもよいが、この歯についても、上記と同様の材質とすることができる。
【0018】
本明細書において、「インナーケース」とは、フィルムロール収容ケースに収容して使用されるケースを意味する。インナーケースを使用する場合、フィルムロールはインナーケースに装着され、インナーケース付きフィルムロールとされ、このインナーケース付きフィルムロールが、フィルムロール収容体に収容されて、使用される。
【0019】
[インナーケース(第1の実施形態)]
本発明のインナーケース(以下、「本インナーケース」ともいう。)は、少なくとも一方端が開放された中空円筒状の基体と、基体の長手方向に沿って形成されたスリット状の引出口とを備える。本インナーケースは、フィルムロールに装着された後、フィルムロール収容ケースに収容されて使用される。
以下では、本発明のインナーケースについて、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本インナーケースが収容されるフィルムロール収容ケースの一形態の斜視図である。
フィルムロール収容ケース100は、フィルムロール(インナーケース付きフィルムロール)を収容するための本体と、本体に対して開閉可能な蓋体とを有する。
【0021】
本体は、底面板101と、底面板101の四方からそれぞれ立ち上げられた左側面板103と、右側面板104と、背面板105と、前面板102とを有する。
【0022】
蓋体は、本体に対して開閉可能とされ、閉じたときに本体の開口部上に被さる天面板106と、本体の前面板102の上部外面側に被さる前縁板107とを有する。前縁板107の先端には、長手方向に沿って歯108が設けられており、フィルムロールから引き出された包装用フィルムを必要な長さで切断できるようになっている。
【0023】
フィルムロール収容ケース100の本体内(内側)に収容されたフィルムロールからは、包装用フィルムの一端を前面板102と前縁板107との間から引き出すことができ、歯108を用いて任意の長さに切断することができる。
【0024】
本インナーケースは、上記フィルムロール収容ケース100に、フィルムロールに装着された状態で収容される。
図2は、本発明のインナーケースの斜視図である。
【0025】
インナーケース200は、両端が開放された中空円筒状の基体201と、基体201の長手方向に沿って形成され、包装用フィルムを引き出し可能な幅を有するスリット状の引出口204とを備えている。基体201は、両端が開放されており、解放された端部から、フィルムロールをスライドして挿入し、装着することができる。
つまり、基体201の内径は、フィルムロールを収容可能な大きさであり、かつ、基体201の外径は、フィルムロール収容ケース100に収容可能な大きさである。
【0026】
なお、インナーケース200においては、基体201の両端が開放されているが、本発明のインナーケースとしては上記に制限されず、少なくとも一方端が開放されていればよい。一方端が開放されていれば、フィルムロールをスライドして挿入し、装着することができる。
【0027】
インナーケース200の内周面には、周方向に沿ってフィルムロールを(回転可能に)支持するためのガイド板202が配設されている。ガイド板202は周方向に沿って2つに分割されており、これを1組として、長手方向に沿って4組配設されている。
【0028】
なお、本発明のインナーケースが有するガイド板の形態は上記に制限されない。ガイド板は、フィルムロールを回転可能に支持できればよく、例えば、長手方向に2組配設されていてもよいし、5組以上配設されていてもよい。
また、各ガイド板が周方向に2分割されているが、これも分割されていなくてもよいし、3つ以上に分割されていてもよい。
【0029】
また、本発明のインナーケースはガイド板を有していなくてもよい。本発明のインナーケースがガイド板を有する場合、後述するフィルムロールの外周面に対するインナーケース側の接触面はガイド板の天面となる。一方、インナーケースがガイド板を有しない場合、フィルムロールの外周面に対するインナーケース側の接触面は、インナーケースの内周面となってもよい。
【0030】
図3は、フィルムロールが装着されたインナーケースと、それが収容されたフィルムロール収容ケースとからなるフィルムロール収容体の斜視図であり、
図4はその要部断面図である。
【0031】
フィルムロール収容体400において、基体201の内周面に配設されたガイド板202に回転自由に支持されたフィルムロール501からは、包装用フィルム502の一端が引出口204を経て引き出される。
【0032】
インナーケース200の引出口204の端部には、長手方向に沿ってローラ203が配設されている。包装用フィルム502は、引出口204から引き出される際に、このローラ203によってガイドされる。そのため、よりスムーズに引き出すことができる。
【0033】
インナーケース200において、ローラ203は長手方向に沿って3つに分割されているが、本発明のインナーケースが有するローラは分割されていなくてもよいし、4つ以上に分割されていてもよい。また、本発明のインナーケースは、上記ローラを有していなくてもよい。
【0034】
引出口204から引き出された包装用フィルム502は、フィルムロール収容ケース100の蓋が閉じた状態において、前面板102と前縁板107の間を経てフィルムロール収容ケース100の外へと引き出される。引き出された包装用フィルム502は、歯108によって任意の長さに切断することができる。
【0035】
本発明者は、SDGs(Sustainable Development Goals)において掲げられた「持続可能な消費と生産のパターン確保する」という目標に沿って、フィルムロールを詰め替えることで、繰り返し使用できるフィルムロール収容ケースの有用性に着目し、研究開発を続けてきた。
【0036】
その過程において、様々な形状や寸法を有するフィルムロール収容ケースに適用可能な、フィルムロール収容ケース用のインナーケースについて鋭意研究を続けた結果、特許文献1に記載されているような補助器具において、構造を複雑にし、製造を困難にしている要因の一つが、台座にあると考え、上記台座を廃し、よりシンプルな円筒状のインナーケースの開発に着手した。
【0037】
しかし、台座を廃するのみでは、包装用フィルムを引き出す際に、フィルムロールが回転するのに従って、インナーケースも回転してしまうことがあり、フィルムロール収容ケース内において、インナーケースの姿勢を維持することが難しく、スムーズに包装用フィルムを取り出せない場合があることを知見した。
【0038】
インナーケースの台座を廃したことにより生じた上記の新たな課題を解決するため、本発明のインナーケースは、基体の内周面におけるフィルムロールとの接触面とフィルムロールの外周面との摩擦係数(以下、「内周面の摩擦」ともいう。)が、基体の外周面とフィルムロール収容ケースの内周面との摩擦係数(以下、「外周面の摩擦」ともいう。)よりも小さくなるように構成されている。
【0039】
上記特徴点によって、包装用フィルムを引き出す際において、フィルムロールが回転する場合でも、内周面の摩擦が外周面の摩擦に比べて小さいため、フィルムロールは回転しやすいものの、インナーケースはフィルムロール収容ケースとの摩擦により姿勢を維持しやすいという効果が得られたのである。
【0040】
インナーケース200において、上記接触面は、ガイド板202の天面である。従って、上記インナーケース200においては、内周面の摩擦は、フィルムロール501の外周面とガイド板202の天面との摩擦、外周面の摩擦は、フィルムロール収容ケース100の内面と基体の外周面との摩擦に基づいて、材質・表面処理等が選択される。
【0041】
内周面の摩擦を外周面の摩擦よりも小さくする方法は、特に制限されないが、一形態として、インナーケース200において、基体201、及び、ガイド板202の材質が同じである場合、ガイド板202の天面をマット加工する方法が挙げられる。ガイド板202の天面をマット加工することにより、基体201の外周面と比較して、ガイド板202の天面の表面粗さが大きくなるため、結果として、フィルムロール501との接点が少なくなり、内周面の摩擦がより小さくなる結果、フィルムロール501がより回転しやすくなる。
【0042】
なお、マット加工は、表面を粗くするための方法の例示であり、上記以外にも、例えば、一般的なヤスリ等で内周面を削る等の方法で実施することもできる。
【0043】
また、上記以外の方法として、例えば、基体201と、ガイド板202とを異なる材質とする方法、すなわち、基体201上に異なる材質のガイド板202を積層する方法が挙げられる。
【0044】
この場合、フィルムロール収容ケース100の内面の材質と、フィルムロール501の外周面との材質とが考慮され、インナーケース200の材質が選択される。
【0045】
例えば、フィルムロールの包装用フィルムが、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、及び、ポリメチルペンテン等;ポリエチレン、及び、ポリプロピレンを含む複合樹脂、ナイロン、及び、ポリエチレンを含むからなる複合樹脂等;であって、フィルムロール収容ケース100がアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、及び、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン等である場合、フィルムロールの外周面(フィルムロールの基体)を、シリコーン樹脂、及び、ポリ塩化ビニル等により形成し、ゴム系接着剤等を用いて、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、及び、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素樹脂を積層させたものを用いることができる。
【0046】
上記は、インナーケースがガイド板を有しない場合についても同様である。
インナーケースがガイド板を有しない場合、インナーケースの内周側における、フィルムロールの外周面との接触面は、インナーケースの内周面そのものとなる。
【0047】
この場合、内周面の摩擦を外周面の摩擦より小さくする方法としては、インナーケースの内周面をマット加工(表面粗さを大きくする)する方法が挙げられる。
また、他の形態として、基体を異なる材質からなる2種以上の層の積層体とする方法が挙げられる。
【0048】
図5は、積層体である基体の断面図である。基体201は、内周側から、第1層301、及び、第2層302の2層から構成されている。このうち第1層301の材質を例えば、上述のフッ素樹脂とし、第2層の材質を例えば、上述のシリコーン樹脂等とすればよい。
なお、
図5において、基体201は2つの層の積層体であるが、3つ以上の層を有していてもよい。例えば、第1層301と、第2層302との間に、接着剤層を更に有する形態等が挙げられる。
【0049】
(ガイド板の他の形態)
次に、本インナーケースが有するガイド板の他の形態について説明する。
図6(a)は、ガイド板の形態を図示するための、概念的な基体の展開方法の説明図であり、(b)~(d)は、上記展開方法に基づき、基体を展開した状態での平面視における、ガイド板の他の形態を表している。
【0050】
まず、基体の展開方法について説明する。
図6(a)に示されたとおり、基体201における引出口204の両端を、それぞれ矢印の方向(互いに離れる方向)に広げ、断面視でC字型である基体201を、平面状に展開する(概念的に)。この際、紙面手前側に基体201の内周面側が見えるように展開されている。
【0051】
上記のような方法によって展開された基体の略平面視である
図6(b)において、基体201の長手方向に沿って3つ並んでいるガイド板601のそれぞれは、断面が略台形の、上下の両端にわたる一本の筋状となっている。基体201が展開された状態において、上下の両端にわたる一本の筋状となっているため、ガイド板601は、基体201の周方向にわたって、分割されていない。
【0052】
なお、このとき、ガイド板の天面602はマット加工されている。
略平面視としているのは、ガイドの断面形状を図示するために、基体の直上よりも紙面下側にずれた視点からの図面となっているためである。
【0053】
ガイド板601の断面は台形であるが、ガイド板の形状は上記に制限されない。ガイド板の断面が丸みを帯びた形状であると、フィルムロールを傷つけにくい点で好ましい。
【0054】
図6(c)において、基体201の長手方向に沿って3つ並んでいるガイド板603は、周方向に沿って3つに分割されている。
【0055】
また、
図6(d)において、ガイド板604は、周方向に沿って互い違いに配列されている。このように配列することによって、フィルムロールがよりスムーズに回転しやすい。
上記のように、ガイド板の本数、分割数、及び、配列は、本発明の効果を奏する範囲内において、自由に変更可能である。
【0056】
(インナーケースの第2の実施形態)
図7は、本発明のインナーケースの第2の実施形態を含むフィルムロール収容体の要部断面図である。
本インナーケースは、ガイド板に代えて、底部ローラ702を有している点以外は、第1の実施形態と同様であるので、上記相違点について説明する。
【0057】
フィルムロール収容体700において、インナーケース701は、ガイド板に代えて、底部ローラ702を有している。底部ローラは、フィルムロール501を回転自由に支持するとともに、ローラの回転によってフィルムロール501の回転を補助する。本インナーケースを含むフィルムロール収容体によれば、よりスムーズに包装用フィルムを取り出すことができる。
【0058】
本実施形態において、基体の内周面におけるフィルムロールとの接触面は底部ローラ702のローラ面であり、内面の摩擦は、上記ローラ面を基準に調整される。
【0059】
(インナーケースの第3の実施形態)
図8は、本発明のインナーケースの第3の実施形態の説明図である。
インナーケース800は、フィルムロール501のロール芯503に挿入され、フィルムロール501の回転を補助する芯棒802と、その芯棒802を支持する支持棒801とを有する。上記によってフィルムロール501が安定する結果、よりスムーズに回転するため、包装用フィルムがより取り出しやすくなる。
なお、芯棒802、及び、支持棒801の材質としては特に制限されず、フィルムロール収容ケースと同様の材質とすることができる。
【符号の説明】
【0060】
100:フィルムロール収容ケース、101:底面板、102:前面板、103:左側面板、104:右側面板、105:背面板、106:天面板、107:前縁板、108:歯、200:インナーケース、201:基体、202:ガイド板、203:ローラ、204:引出口、301:第1層、302:第2層、400:フィルムロール収容体、501:フィルムロール、502:包装用フィルム、503:ロール芯、601:ガイド板、602:天面、603:ガイド板、604:ガイド板、700、フィルムロール収容体、701:インナーケース、702:底部ローラ、800:インナーケース、801:支持棒、802:芯棒、
【要約】
【課題】 より簡便な構造のフィルムロール収容ケース用のインナーケースの提供。
【解決手段】 包装用フィルムがロール状に巻き回されたフィルムロールを、その一端より引き出し可能に収容するフィルムロール収容ケースに、フィルムロールに装着された状態で収容して用いられる、フィルムロール収容ケース用のインナーケースであって、少なくとも一方端が開放された中空円筒状の基体と、基体の長手方向に沿って形成されたスリット状の引出口と、を備え、引出口は、基体の内側に収容されたフィルムロールから引き出される包装用フィルムを引き出し可能な幅を有し、基体の内周面におけるフィルムロールとの接触面とフィルムロールの外周面との摩擦係数が、基体の外周面とフィルムロール収容ケースの内面との摩擦係数よりも小さい、インナーケース。
【選択図】
図2