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特許7024138改善されたロック構成を装備する、車両シートのための摺動デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】改善されたロック構成を装備する、車両シートのための摺動デバイス
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20220215BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
B60N2/08
B60N2/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021510985
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 IB2019056373
(87)【国際公開番号】W WO2020049377
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】102018000008367
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519234327
【氏名又は名称】マルトゥール・イタリー・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】スパニョーリ,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】ユステュンベルク,ジャン
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136541(JP,A)
【文献】特開2001-277912(JP,A)
【文献】特開平11-115562(JP,A)
【文献】特開2004-276670(JP,A)
【文献】特開2007-308109(JP,A)
【文献】特開2004-322692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0085330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側レール(30a、30b)および上側レール(40a、40b)を各々が備える一対の平行なトラック(20a、20b)を備える、車両シートのための摺動デバイス(10)であって、
前記上側レール(40a、40b)の各々がそれぞれの下側レールに対して拘束されるが前記下側レールを基準として摺動可能であり、
前記下側レール(30a、30b)が前記下側レールの長手方向軸に沿って配置される複数のアパーチャ(32a、32b)を備え、
前記摺動デバイスが2つのロック組立体を有するロック構成を装備し、
1つのロック組立体が前記トラック(20a、20b)の各々のためのものであり、
前記ロック組立体(1a、1b)の各々が、それぞれの前記上側レール(40a、40b)に固着される支持プレート(3a、3b)と、前記支持プレート(3a、3b)を通過してそれぞれの前記下側レール(30a、30b)の対応するアパーチャ(32a、32b)の中まで入るように構成される1つまたは複数のロックピン(5a、5b)と、を備え、
前記ロック構成が、ロック形態からアンロック形態まで前記ロックピン(5a、5b)を移動させるための解放組立体をさらに備え、
前記解放組立体が、解放部材(9)と、一対の接続部材(17a、17b)と、を備え、
1つの接続部材(17a、17b)が各々のロック組立体(1a、1b)のためのものであり、
各接続部材(17a、17b)が一方において前記解放部材(9)に力伝達可能に接続され、他方で前記ロック組立体の前記ロックピン(5a、5b)に力伝達可能に接続され、
前記解放組立体が、前記解放部材(9)の回転運動を前記ロックピン(5a、5b)の並進運動へと変換するように構成され、
前記解放部材が、中央グリップ部分(9c)と、それぞれのトラックの中まで各々が入
っている2つの実質的に平行なアーム(9a、9b)とを備える「U」形解放用ハンドル(9)として形成され、
前記解放用ハンドルの各アーム(9a、9b)が、それぞれの前記上側レール(40、40b)に固着されるブラケット(15a、15b)内に配置される腎臓形状のスロット(13a、13b)の中で受けられる横方向に突き出るピン(11a、11b)を備える、
ことを特徴とする、摺動デバイス(10)。
【請求項2】
前記接続部材(17a、17b)がそれぞれの前記トラック(20a、20b)の中で完全に受けられ、
前記接続部材の各々がそれぞれの前記トラックの前記上側レールと前記下側レールとの間に配置される、
請求項1に記載の摺動デバイス(10)。
【請求項3】
前記接続部材(17a、17b)の各々が、
前記解放用ハンドルのそれぞれの前記アーム(9a、9b)の端部分に結合されるための結合部分(19a、19b)と、
前記ロック組立体(1a、1b)の前記ロックピン(5a、5b)に係合されるための係合部分(21a、21b)と、
を備える、請求項1に記載の摺動デバイス(10)。
【請求項4】
前記接続部材の前記係合部分が、前記ロック組立体の前記支持プレート(3a、3b)の上方に配置される係合プレート(21a、21b)として作られる、
請求項3に記載の摺動デバイス(10)。
【請求項5】
前記係合プレート(21a、21b)の各々が、4つの棒からなる連結部により、また好適には平行四辺形の連結部により、それぞれの前記支持プレート(3a、3b)に接続される、
請求項4に記載の摺動デバイス(10)。
【請求項6】
前記4つの棒からなる連結部が、第1の枢動ピン(25a、25b)により第1の端部のところで前記支持プレートに枢動可能に接続されて第2の枢動ピン(27a、27b)により反対の第2の端部のところで前記係合プレートに枢動可能に接続される第1の接合部(23a、23b)を備え、第3の枢動ピン(31a、31b)により第1の端部のところで前記支持プレートに枢動可能に接続されて第4の枢動ピン(33a、33b)により反対の第2の端部のところで前記係合プレートに枢動可能に接続される第2の接合部(29a、29b)をさらに備える、
請求項5に記載の摺動デバイス(10)。
【請求項7】
前記係合プレート(21a、21b)の各々が窓を装備し、
前記ロックピン(5a、5b)が前記窓を通過し、
前記ロックピンの各々が外側に延在する径方向カラー(39a、39b)を装備し、
前記係合プレートの前記窓の幅が前記ロックピンの幅より大きいが前記ロックピンの幅と前記径方向カラーの幅との合計より小さい、
請求項4に記載の摺動デバイス(10)。
【請求項8】
前記径方向カラー(39a、39b)が、前記下側レールの前記アパーチャの中に前記ロックピンを完全に挿入するときに前記係合プレート(21a、21b)に実質的に当接されることになるように、前記ロックピン(5a、5b)のボディ上に配置される、
請求項7に記載の摺動デバイス(10)。
【請求項9】
前記支持プレート(3a、3b)の各々がオービタルリベッティングによりそれぞれの前記上側レール(40a、40b)に接続される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の摺動デバイス(10)。
【請求項10】
前記ロックピン(5a、5b)が、ばね(7a、7b)により、前記下側レールの前記アパーチャ(32a、32b)の方に付勢される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の摺動デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、改善されたロック構成を装備する、車両シートのための摺動デバイスに関する。
[0002]より詳細には、本発明は、コンパクトな構成および改善された信頼性を有するロック構成を装備する、車両シートのための摺動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]車両シートは、一般に、シートクッションを前方方向および後ろ方向に押したりまたは引いたりするための摺動機能と、シートクッションの高さを調整するための高さ調整機能と、シートクッションを基準としてシートバックレストの傾きを調整するためのリクライニング機能とを有する。
【0003】
[0004]上記の摺動機能は、一般に、車両フロアに取り付けられる下側レールおよび車両シートに取り付けられる上側レールを各々が備える一対の平行なトラックを備える摺動デバイスによって実装され、ここでは上側レールが下側レールに対して拘束されるが上記下側レールを基準として摺動することができる。
【0004】
[0005]摺動デバイスが、下側レールを基準として上側レールが移動するのを可能にする/防止するためのロック構成をさらに備える。このようなロック構成が通常はロック形態にあり、ロック形態ではロック構成が下側レールを基準として上側レールが摺動するのを防止し、それにより車両フロアを基準としてシートが誤って変位させられるのを回避する。
【0005】
[0006]このようなロック構成は、通常、一対のロック組立体を備え、1つのロック組立体が各々のトラックのためのものである。
[0007]摺動デバイスが、下側レールを基準として上側レールが自由に移動することができるようなアンロック形態までロック構成のロック組立体を移動させる場合に使用者によって使用され得る解放部材をさらに装備し、その結果、車両フロアを基準としたシートの位置が調整され得る。このような解放部材が、例えば、2つの実質的に平行なアームを有する「U」形ハンドルまたはタオルバーとして作られ得、平行なアームを有する「U」形ハンドルまたはタオルバーの端部分がそれぞれのロック組立体をそれらのアンロック形態まで移動させるためにそれぞれのロック組立体に同時に作用するように構成される。
【0006】
[0008]上側レールと下側レールと間での積極的な係合を実現することを目的とするような摺動デバイスが当技術分野から知られており、各トラックの下側レールが、上記下側レールの長手方向軸に沿って位置合わせされて好適には互いから均等に離間される一連のアパーチャを装備し、各ロック組立体がそれぞれの上側レールに接続され、下側レールのそれぞれのアパーチャの中に入って上記アパーチャの縁部に係合されるように構成される1つまたは複数のロックピンを備える。
【0007】
[0009]好適には、複数のロックピンが設けられ、上記ロックピンのサイズ、上記ロックピンの間の距離、下側レール内のアパーチャのサイズ、および上記アパーチャの間の距離が、少なくとも1つのロックピンを対応するアパーチャに常に位置合わせするように、選択され、その結果、この少なくとも1つのロックピンが上記アパーチャの中まで入って上記アパーチャの縁部に係合され得るようになる。
【0008】
[0010]最も好適には、上記ロックピンのサイズ、上記ロックピンの間の距離、下側レール内のアパーチャのサイズ、および上記アパーチャの間の距離が、少なくとも第1のロックピンを対応するアパーチャの中まで入れてその対応するアパーチャの縁部の前方側に係合させるように位置決めするように、および少なくとも第2のロックピンを対応するアパーチャの中まで入れてその対応するアパーチャの縁部の後方側に係合させるように位置決めするように、選択され、それにより「チャックレス」の係合が実現される。
【0009】
[0011]このようなロックピンが、通常では、例えばばねにより、ロック形態まで付勢されており、ロック形態ではロックピンの少なくとも一部が下側レールのそれぞれのアパーチャに係合される。
【0010】
[0012]車両フロアを基準として車両シートの位置を調整することを目的としてロック組立体をそれらのアンロック形態まで移動させるために、解放部材(解放用タオルバーまたはハンドルなど)が設けられ、この解放部材がそれぞれの接続部材に作用し、1つの接続部材が各々のロック組立体のためのものであり、上記接続部材がさらに、ロックピンをアンロック形態まで移動させるためにそれぞれのロック組立体のロックピンに作用し、アンロック形態ではロックピンがそれぞれの下側レールのアパーチャから外される。
【0011】
[0013]この目的のために、ロックピンが一般に拡大ヘッドを装備し、接続部材が、下側レールのアパーチャから上記ピンを引き抜くためにピンヘッドに係合されるように適合されるフォーク形状の要素を装備する。
【0012】
[0014]車両シートのための摺動デバイスのためのこのようなロック構成は、例えば、文献、米国特許出願公開第2003/006355号、米国特許第7980525号、および米国特許第6637712号に開示されている。
【0013】
[0015]しかし、上記の文献で開示される種類のロック構成は複数の欠陥を有する。
[0016]一つには、既知のロック構成では、解放部材をロック組立体に接続する接続部材が、部分的にまたは完全に、摺動デバイスのトラックの外側に配置される、ということがある。
【0014】
[0017]これにより、摺動デバイスを設計するときに上記接続部材を受けるための十分な空間を提供することが必要となる。
[0018]さらに、接続部材が少なくとも部分的に摺動デバイスのトラックの外側に配置されることを理由として、このような接続部材がダストおよび土に対して露出され、ダストおよび土がこれらの接続部材の可動部品の間に蓄積する可能性があり、それにより接続部材の異常を発生させる可能性がある。また、このようなダストおよび土は摺動デバイスのトラックの中まで入る可能性があり、ロックピンのそれらのロック形態からそれらのアンロック形態までのおよびその逆の移動に干渉する可能性がある。通常の異常の問題には、解放の労力の増大、摺動の労力の増大、および騒音問題が含まれ、それにより使用者の不満につながる可能性がある。
【0015】
[0019]2つ目として、既知のロック構成では、解放部材が、ロック形態からアンロック形態までロックピンを移動させることを目的として枢動軸を中心として接続部材を回転させるように設計され:接続部材を回転させるとき、上記接続部材のフォーク形状の要素が円弧形状の経路に沿って上方に移動してそれによりロックピンのヘッドに係合されて上記ロックピンを持ち上げ、それにより対応する下側レールのアパーチャから上記ロックピンを外す、ということがある。接続部材のフォーク形状の要素が円弧形状の経路に沿って移動するとき、ロックピンがやはり円弧形状の経路に沿って移動することになり、これが大きい問題を伴う可能性がある。
【0016】
[0020]その結果、ロックピンの移動中、ロックピンが下側レールのそれぞれのアパーチャの縁部に接触して動かなくなる可能性があり、それによりそれぞれのロック組立体が動きをとれなくなる。
【0017】
[0021]また、円弧形状の経路に沿って移動することにより、ロックピンのストロークの長さが制限され、それにより、解放組立体の接続部材によって作動されるときにロックピンが下側レールのアパーチャから出るように正確に移動するのを保証するためのマージンがわずかにしか与えられないことになる。
【0018】
[0022]また、ロック構成を設計するとき、接続部材のおよびロックピンの回転運動のための十分な空間が提供される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
[0023]したがって、本発明の主要な目的は、上で言及した欠陥を克服するのを可能にする、車両シートのための摺動デバイスを提供することである。
[0024]より具体的には、本発明の主要な目的は、コンパクトな構造を有するおよび高い信頼性を呈する改善されたロック構成を装備する、車両シートのための摺動デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
[0025]これらのおよび他の目的が、添付の特許請求の範囲で特許請求される摺動デバイスによって達成される。
[0026]本発明は、車両フロアに取り付けられることを意図される下側レールと、車両シートに取り付けられて上記下側レールに摺動可能に設置されることを意図される上側レールとを各々が有する一対の平行なトラックを備える、車両シートのための摺動デバイスに関連し、各下側レールが複数のアパーチャを備え、複数のアパーチャが上記下側レールの長手方向軸に沿って互いに位置合わせされて互いから等間隔に離間される。
【0021】
[0027]摺動デバイスが、上記下側レールを基準とした上記上側レールの移動を選択的に可能にする/防止するための、各トラックに付随するロック組立体を備えるロック構成をさらに備える。各ロック組立体がそれぞれの上側レールに接続され、それぞれの下側レールの対応するアパーチャの中まで入るようにおよび上記アパーチャの縁部に係合されるように構成される1つまたは複数のロックピンを備え、上記ロックピンが例えばばね手段によりロック形態まで付勢されている。
【0022】
[0028]本発明の好適な実施形態によると、各ロック組立体が複数のロックピンを備える。本発明の特に好適な実施形態によると、このようなロックピンが、下側レールを基準とする上側レールの任意の位置において、それぞれの下側レールの対応するアパーチャに対して少なくとも1つのロックピンを位置合わせして少なくとも1つのロックピンを上記アパーチャの中に入れて上記アパーチャの縁部に係合させるのを可能にするように、サイズ決定および配置される。
【0023】
[0029]ロック構成が、それぞれの下側レールを基準としたトラックの上側レールの移動を防止するロック形態から、それぞれの下側レールを基準とした上記上側レールの移動を可能にするアンロック形態へと、上記ロック組立体を同時に切り替えるための解放組立体をさらに装備する。
【0024】
[0030]上記解放組立体が、解放部材と、一対の接続部材とを備え、1つの接続部材が各々のロック組立体のためのものであり、上記接続部材の各々が一方において解放部材に力伝達可能に接続され、他方でそれぞれのロック組立体のロックピンに力伝達可能に接続される。
【0025】
[0031]したがって、使用者が解放部材に力を加えるとき、この力が解放部材から接続部材に伝達され、さらに上記接続部材からそれぞれのロック組立体のロックピンに伝達され、それにより上記ロックピンをそれらのロック形態からそれらのアンロック形態へと移動させる。
【0026】
[0032]本発明によると、このような接続部材がそれぞれのトラックの中で完全に受けられ、解放組立体が、解放部材の回転運動をロック組立体のロックピンの線形運動へと変換するように構成される。
【0027】
[0033]この構成によりコンパクトな構造を得ることが可能となり、それにより、解放組立体の接続部材が少なくとも部分的にそれぞれのトラックの外側に配置されるような従来の解決策で提案される外部にある解放システムと比較して、摺動デバイスを実装することにおいてより有利になる。
【0028】
[0034]さらに、ロックピンの概略の並進運動により、ロックピンが下側レールのアパーチャの縁部に接触して動かなくなる危険が回避され、それによりロック組立体が動きをとれなくなる危険が回避される。
【0029】
[0035]また、従来のロック構成と比較してロックピンのストロークの長さが増大され得、下側レールのアパーチャからロックピンが正確に外れることが保証される。
[0036]本発明の好適な実施形態によると、解放部材が、中央グリップ部分と、それぞれのトラックの中まで各々が入っている2つの実質的に平行なアームとを有する「U」形ハンドルとして作られる。
【0030】
[0037]この好適な実施形態によると、解放用ハンドルの各アームが腎臓形状のスロットの中で受けられる横方向に突き出るピンを装備し、その結果、解放用ハンドルのグリップ部分の回転運動が、上記解放用ハンドルのアームの端部分の並進運動、つまり上記解放用ハンドルの上記アームの端部分の垂直方向の並進運動へと変換される。
【0031】
[0038]この好適な実施形態によると、各接続部材が、解放用ハンドルのそれぞれのアームの端部分に結合されるための結合部分と、それぞれのロック組立体のロックピンに係合されるための係合部分とを備える。
【0032】
[0039]特に好適な実施形態によると、各ロック組立体が、それぞれのトラックの上側レールに固着される支持プレートを備え、ロックピンがこの支持プレートを通過するように配置され、各接続部材の係合部分が、ロックピンがそこを通過するように配置されるところのプレートとして成形され、各接続部材のプレート形状の係合部分が、4つの棒からなる連結部により、また好適には平行四辺形の連結部により、対応するロック組立体の支持プレートに接続される。
【0033】
[0040]本発明の好適な実施形態によると、ロックピンが横方向に突出するペグを装備し、接続部材のプレート形状の係合部分が、ロックピンの幅(直径)より大きいがロックピンの幅と突出ペグの長さとの合計より小さい幅を有する窓を備え、その結果、ばねプレートの駆動部分の窓の縁部が、ロックピンをそれらのアンロック形態まで移動させるためにこれらのペグに係合され得る。
【0034】
[0041]本発明の代替の好適な実施形態によると、横方向の突出するペグが、ロックピンのボディ上に設けられる外側に延在する径方向カラーに置き換えられる。
[0042]添付図を参照する非限定の例として与えられる本発明の好適な実施形態の詳細な説明から、本発明の別の特徴および利点がより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】[0043]本発明による摺動デバイスを示す斜視図である。
図2a】[0044]第1のロック形態で示される、線II-IIに沿う、図1の摺動デバイスを示す断面図である。
図2b】[0045]第2のアンロック形態の図2aの摺動デバイスを示す図である。
図3a】[0046]第1のロック形態で示される、反対側の視点の、線II-IIに沿う、図1の摺動デバイスを示す断面図である。
図3b】[0047]第2のアンロック形態の図3aの摺動デバイスを示す図である。
図4a】[0048]第1のロック形態で示される、図1の摺動デバイスの接続部材を示す斜視切欠図である。
図4b】[0049]第2のアンロック形態の図4aの接続部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[0050]図1を参照すると、本発明による摺動デバイス10が示されている。
[0051]それ自体が既知である手法で、摺動デバイス10が一対の平行なトラック20a、20bを備え、各トラックが、車両フロアに取り付けられることを意図される下側レール30a、30bと、車両シートのフレームに取り付けられることを意図される上側レール40a、40bとを備える。
【0037】
[0052]各上側レール40a、40bがそれぞれの下側レール30a、30bに対して拘束されるが、上記下側レールを基準として摺動することができる。
[0053]トラック20a、20bの下側レールを基準とした上側レールの摺動運動を選択的に可能にする/防止するために、ロック構成が提供される。上記ロック構成が2つのロック組立体を備え、1つのロック組立体が各々のトラック20a、20bのためのものである。
【0038】
[0054]上記ロック組立体のうちの1つのロック組立体を例えば図4a~4bで詳細に見ることができる。他のロック組立体が図4a~4bに示されるロック組立体と等しいことを意図される。
【0039】
[0055]各ロック組立体1a、1bが、それぞれの上側レール40a、40bに固着される支持プレート3a、3bを備える。
[0056]支持プレートが、例えば、それぞれの上側レール40a、40bに溶接および/またはステーキング(stake)され得る。しかし、示される実施形態では、支持プレート3a、3bが、有利には、オービタルリベッティングによりそれぞれの上側レールに固着される。この目的のため、支持プレートの中央部分が下側レールおよび上側レールに実質的に平行であり、対して上記支持プレートの側方部分が下側レールおよび上側レールに対して垂直に延在するように湾曲しており、上側レール40a、40bに係合されるオービタルリベット25a、25bのところで終端する。
【0040】
[0057]支持プレート3a、3bがオービタルリベッティングによりそれぞれの上側レールに固着されることを理由として、溶接が必要ではなく、摺動デバイスの構成要素が、ダメージまたは変形の原因となる可能性がある高温加工プロセスを一切受けない。
【0041】
[0058]各ロック組立体1a、1bが、下側レールに対して上側レールをロックするためにおよび上記下側レールを基準とした上記上側レールのいかなる移動も防止するために、それぞれの上側レール40a、40b内に設けられるアパーチャ42a、42bを通過して支持プレート3a、3b内に設けられる貫通孔37a、37bを通過してそれぞれの下側レール30a、30b内に設けられるアパーチャ32a、32bの中に入るように構成される1つまたは複数のロックピン5a、5b(示される実施形態では、3つ)をさらに備える。
【0042】
[0059]ロックピン5a、5bが、ロックピンを下側レールの上記アパーチャの中に挿入するのを容易にするために、円錐形先端部または円錐台形先端部のところで終端する概略円筒形ボディを有する。
【0043】
[0060]ロックピン5a、5bがそれらのロック形態まで付勢されており、このロック形態ではロックピン5a、5bのうちの少なくとも一部がそれぞれの下側レールの対応するアパーチャの中に入っている。この目的のために、螺旋ばね7a、7bが各ロックピン5a、5bのボディの周りに巻き付けられ、それによりこれらのロックピンを下側レールの方へと下方に付勢する。
【0044】
[0061]それ自体が既知である手法で、ロックピン5a、5bおよび下側レール内に設けられる対応するアパーチャ32a、32bが、下側レールを基準とする上側レールの任意の位置において、それぞれの下側レールの対応するアパーチャに対して上記ロックピンのうちの少なくとも1つのロックピン(好適には、ロックピンのうちの2つのロックピン)を位置合わせしてこれらのアパーチャの中に入れることになるように、サイズ決定および配置される。
【0045】
[0062]車両フロアを基準としてシートの位置を調整するのを使用者が行うのを可能にするために、本発明による摺動デバイスのロック構成が、上記ロック形態からアンロック形態までロックピン5a、5bを移動させるための解放組立体をさらに備え、アンロック形態では、すべてのロックピンがそれぞれの下側レールのアパーチャから引き抜かれており、それにより上側レールが下側レールを基準として摺動することが可能となる。
【0046】
[0063]図2a、2bおよび3a、3bに示されるように、解放組立体が、概して、解放部材9と、一対の接続部材17a、17bとを備え、1つの接続部材が各々のロック組立体1a、1bのためのものであり、各接続部材が一方において解放部材9に力伝達可能に接続され、他方でそれぞれのロック組立体のロックピン5a、5bに力伝達可能に接続される。
【0047】
[0064]本発明によると、解放組立体が、解放部材の回転運動をロックピンの垂直方向の並進運動へと変換することになるように、構成される。
[0065]示される実施形態では、解放部材が「U」形解放用ハンドルまたはタオルバー9として作られており、中央グリップ部分9cおよび2つの実質的に平行なアーム9a、9bを備え、2つの実質的に平行なアーム9a、9bの各々がそれぞれのトラック20a、20bの中まで入っている。
【0048】
[0066]解放用ハンドルの各アーム9a、9bが、それぞれの上側レール40a、40bに固着されるブラケット15a、15b内に配置される腎臓形状のスロット13a、13bの中で受けられる横方向に突き出るピン11a、11bを装備する。
【0049】
[0067]上記ピン11a、11bが上記腎臓形状のスロット13a、13bに係合されることにより、使用者が解放用ハンドルのグリップ部分9cを作動させるとき、上記グリップ部分9cの回転運動が上記解放用ハンドルのアーム9a、9bの端部分の並進運動つまり上記解放用ハンドルのアーム9a、9bの上記端部分の垂直上向き方向の並進運動へと変換される。
【0050】
[0068]示される実施形態では、各接続部材17a、17bが、解放用ハンドルのそれぞれのアーム9a、9bの端部分に結合されるための結合部分19a、19bを備える。示される実施形態では、接続部材の結合部分19a、19bが中空部分として作られ、解放用ハンドルの対応するアームの端部分がこの中空部分を通る形で嵌め込まれる。
【0051】
[0069]各接続部材17a、17bが、それぞれのロック組立体1a、1bのロックピン5a、5bに係合されてロックピン5a、5bをロック位置からアンロック位置まで移動させるための係合部分21a、21bをさらに備える。
【0052】
[0070]示される実施形態では、係合部分が、ロック組立体の支持プレート3a、3bの上方に配置される係合プレート21a、21bとして作られる。
[0071]好適には、係合プレートが、実質的に、上記支持プレートの後方端部から延在して上記支持プレートの前方端部を越えて突出し、上記支持プレートが、これに対応する形で、上記係合プレートを通過させるためのチャンネルを装備する。
【0053】
[0072]係合プレート21a、21bが窓を装備し、ロックピン5a、5bがこの窓を通過し、その結果、ロックピン5a、5bが下側レール30a、30bのアパーチャ32a、32bに到達することができる。
【0054】
[0073]係合プレート21a、21bが4つの棒からなる連結部により下にある支持プレート3a、3bに接続される。より具体的には、係合プレート21a、21bが、好適には、平行四辺形の連結部により、下にある支持プレート3a、3bに接続される。
【0055】
[0074]このような平行四辺形の連結部が、第1の枢動ピン25a、25bにより第1の端部のところで上記支持プレートに枢動可能に接続されて第2の枢動ピン27a、27bにより反対の第2の端部のところで上記係合プレートに枢動可能に接続される第1の接合部23a、23bを備え、第3の枢動ピン31a、31bにより第1の端部のところで上記支持プレートに枢動可能に接続されて第4の枢動ピン33a、33bにより反対の第2の端部のところで上記係合プレートに枢動可能に接続される第2の接合部29a、29bをさらに備える。第1の接合部23a、23bおよび第2の接合部29a、29bが実質的に等しい長さを有し、支持プレート3a、3b上での上記第1および第2の接合部の接続点の間の距離が、係合プレート21a、21b上での上記第1および第2の接合部の接続点の間の距離と実質的に等しく、その結果、平行四辺形が形成される。
【0056】
[0075]図4aおよび4bでより良好に見ることができるように、係合プレート21a、21bによりロックピン5a、5bを移動させるのを可能にするために、このようなロックピンが外側に延在する径方向カラー39a、39bを装備する。
【0057】
[0076]係合プレート21a、21b内の窓が、その幅を、ロックピン5a、5bの幅(直径)より大きくするが、上記ロックピンの幅と径方向カラー39a、39bの幅との合計より小さくするように、設計される。
【0058】
[0077]上記径方向カラー39a、39bが、下側レール30a、30bのアパーチャ32a、32bの中にロックピンを完全に挿入する(ロック形態)ときに係合プレート21a、21bに実質的に当接されることになるように、ロックピン5a、5bのボディ上に配置される。
【0059】
[0078]代替的実施形態では、径方向カラーが、ロックピンのボディから横方向に延在する1つまたは複数のペグに置き換えられてよい。
[0079]本発明による摺動デバイスのロック構成の動作は以下のように概説され得る。
【0060】
[0080]休止状態では、ばね7a、7bが、ロック組立体1a、1bのロックピン5a、5bを下側レール30a、30bのアパーチャ32a、32bの方に付勢し、上記ロックピンの少なくとも一部がそれぞれの下側レールの対応するアパーチャの中まで入る(図2a、3a、4aを参照)。このようなロック形態では、上側レール40a、40bが下側レール30a、30bを基準として摺動することができない。
【0061】
[0081]使用者が車両フロアを基準とした車両シートの位置を調整することを望む場合、使用者が解放用ハンドル9の中央グリップ部分9cを上方に回転させることにより解放用ハンドル9に力を加える。
【0062】
[0082]グリップ部分9cが回転させられると、解放用ハンドルのアーム9a、9bのピン11a、11bがそれぞれの腎臓形状のスロット13a、13bに沿って摺動し、上記接続部材の結合部分19a、19bを通して、上記解放用ハンドルの上記アームの端部分から接続部材17a、17bに運動が伝達される。
【0063】
[0083]その結果、接続部材の係合部分(係合プレート)21a、21bが上方に移動し、上記係合部分21a、21bの窓の縁部がそれぞれのロック組立体のロックピン5a、5bの径方向カラー39a、39bに係合される。
【0064】
[0084]ばね7a、7bの弾性抵抗に打ち勝つことにより、接続部材の係合部分21a、21bがロックピン5a、5bを持ち上げ、その結果、ロックピン5a、5bが、それぞれの下側レール30a、30bのアパーチャ32a、32bから外されるまで上方に移動する(それぞれの上側レールのアパーチャ42a、42bによって誘導される)(図2b、3b、4bを参照)。このようなアンロック形態では、上側レール40a、40bが下側レール30a、30bを基準として摺動することができ、車両シートの位置が調整され得る。
【0065】
[0085]接続部材の係合部分21a、21bとそれぞれの支持プレート3a、3bとの間に4つの棒からなる連結部(平行四辺形の連結部)を提供することにより、ロックピンのストロークが保証され、接続部材のスティフネスつまり接続部材の係合部分のスティフネスに左右されない、ことに留意されたい。
【0066】
[0086]使用者が解放用ハンドル9を解放するとき、ばね7a、7bがロックピン5a、5bをそれぞれの下側レール30a、30bの方へと後方に付勢し、上記ロックピンの少なくとも一部が上記下側レールの対応するアパーチャの中まで入り、それにより下側レールを基準とした新たな所望の位置で上側レールをロックする。
【0067】
[0087]本発明による摺動デバイスの複数の利点が当業者には明らかとなろう:
[0088] - 解放部材をロック組立体に接続する接続部材が、上側レールと下側レールとの間で摺動デバイスのトラックの内部に完全に配置され、それにより非常にコンパクトなデザインが得られる;
[0089] - 接続部材が摺動デバイスのトラックの内部に完全に配置されることにより、接続部材がダストおよび土に対して露出されない;
[0090] - ロックピンをそのロック形態からそのアンロック形態へとおよびその逆で切り替えるときにロックピンが実質的に直線の経路に沿って移動することを理由として、動きをとれなくなる危険が回避される;
[0091] - 実質的に直線の経路に沿ってロックピンが移動することが非常にコンパクトなデザインを得るのに寄与する;
[0092] - 4つの棒からなる連結部を使用する場合、ロックピンのストロークが保証され、接続部材のスティフネスに左右されない。
【0068】
[0093]本発明の好適な実施形態の上記の説明は単に例として与えられるものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者の理解可能な範囲内にある複数の変形形態および修正形態が考えられる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b