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特許7024145末梢血原料の採取/凍結融解工程における単球純化法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】末梢血原料の採取/凍結融解工程における単球純化法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0786 20100101AFI20220215BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20220215BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20220215BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220215BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220215BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220215BHJP
   G06F 9/44 20180101ALI20220215BHJP
【FI】
C12N5/0786
C12N5/0784
A61K35/15 A
A61K35/15 Z
A61P35/02
A61K35/17 A
A61K35/17 Z
C12M1/00 Z
G06F9/44
【請求項の数】 85
(21)【出願番号】P 2021547279
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006464
(87)【国際公開番号】W WO2021167094
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2020027595
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020081523
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520060944
【氏名又は名称】末廣 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】末廣 陽子
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-028369(JP,A)
【文献】伊藤誠,他,末梢血幹細胞採取におけるSpectra Optia MNCモードとCMNCモードの後方視的検討,日本輸血細胞治療学会誌,2018年12月20日,Vol. 64, No. 6,pp. 742-751,doi:10.3925/jjtc.64.742
【文献】末廣陽子,他,ATLに対するTax標的樹状細胞ワクチン療法:第I相臨床研究長期追跡結果,第2回日本HTLV-1学会学術集会,2016年10月14日,p. 45, O-44
【文献】末廣陽子,Tax抗原を標的にした成人T細胞白血病・リンパ腫に対する樹状細胞ワクチン療法,日本臨牀,2017年02月,Vol. 75, No. 2,pp. 295-300
【文献】末廣陽子,成人T細胞白血病/リンパ腫に対する新規治療アプローチ -Tax標的樹状細胞ワクチン療法(第I相試験),医学のあゆみ,2019年11月30日,Vol. 271, No. 9,pp. 923-928
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
被験者から得られた血液試料を、比重および細胞サイズに基づき単球を濃縮する工
を包含する方法であって、
該濃縮工程において、スピルオーバーさせることを包含する、方法。
【請求項2】
前記濃縮工程は、前記血液試料を、比重に基づき単球を濃縮し、次いで細胞サイズに基づき単球を濃縮する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
被験者から得られた、60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]の値が所定値より高い血液試料を、比重および/または細胞サイズに基づき単球を濃縮する工
を包含し、
該濃縮工程において、スピルオーバーさせることを包含し、
該所定値が30~50である、
方法。
【請求項4】
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
被験者から得られた、60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]の値が所定値より高い血液試料を、比重および/または細胞サイズに基づき単球を濃縮する工
を包含し、該血液試料の血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整され、
該所定値が30~50である、
方法。
【請求項5】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]より高い値に設定される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]+10~20に設定される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より10~30高く設定される、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より20~30高く設定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記採取プレファレンスは40~80に設定される、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記濃縮工程において、スピルオーバーさせることを包含する、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
被験者から得られた血液試料から比重および/または細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程であって、該濃縮工程において、リンパ球画分を取り除くように、リンパ球画分をスピルオーバーさせることを含む、工
を包含し、該スピルオーバーは、スピルオーバーとしてチャンバーから赤血球が継続的に溢れ出した時点での処理血液量(基準処理血液量)の値を1とした場合、該スピルオーバーは、処理血液量を基準処理血液量より大きい値に設定して実施される、方法。
【請求項12】
前記処理血液量は、前記基準処理血液量の少なくとも1.2倍である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記単球試料は、前記被験者から得られる血球試料から直接得るものであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記濃縮は、前記血液試料を前記被験者から得た後5時間以内に行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞サイズによる分離は、前記比重による分離の後3時間以内に行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記単球試料は、全有核細胞に対して約30%以上の濃度の単球を含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
被験者から得られた血液試料に凍結保護剤を添加する工程と、
)該凍結保護剤を加えた該血液試料を比重により分離し、リンパ球より重い画分を得る工程と
を包含する、方法。
【請求項18】
前記血液試料は、アフェレーシス分離を経たものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記凍結保護剤は、ヒドロキシエチルスターチ、スクロース、ラクトース、グルコース、マンニトール、トレハロース、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、およびデキストランからなる群より選択される成分を含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記濃縮は、凍結保存後になされることを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記比重による分離は、1.074~1.076の比重で遠心分離することを特徴とする、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記比重による分離は、以下の遠心分離条件によりなされる
遠心分離1回目 225mL遠沈管 300×g~400×g 5分 室温
遠心分離2~3回目 225mL遠沈管 250×g~350×g 5分 室温
請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記濃縮は、請求項1~16のいずれか一項に記載されるアフェレーシス処理がなされた後になされる、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)得られた血液試料から、凍結保護剤を含む単球試料を得る工程と
2)該単球試料を、クエン酸ナトリウム水和物を含有する血液保存液A液(ACD-A液)を10%以下で含む洗浄液で洗浄をする工程と
を包含する方法。
【請求項25】
前記ACD-A液は6%以下で存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ACD-A液は5.5%で存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記血液試料を、5.5%ACD-A液/1%ヒト血清アルブミン(HSA)/RPMI-1640の組成を有する洗浄液で洗浄することを包含する、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
死細胞除去処理を行うことをさらに包含する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記死細胞除去処理は、リンパ球および血小板をも除去することを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記死細胞除去処理は、比重遠心分離を含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記比重遠心分離は、密度媒体ヨージキサノール(Iodixanol)水溶液を用いて行うことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ヨージキサノール水溶液は60w/v%で提供される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記濃縮は、DNaseの添加なしまたはありで行われる、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記DNaseはプルモザイムを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項に記載の方法に従って、単球試料を得る工程と、
該単球試料から樹状細胞を誘導する工程と
を包含する、樹状細胞を生産する方法。
【請求項36】
前記樹状細胞をパルスする工程をさらに包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1~34のいずれか一項に記載の方法に従って、単球試料を得る工程と、
該単球試料から樹状細胞を誘導する工程と、
該誘導した樹状細胞に対してTax抗原ペプチドをパルスする工程と
を包含する、Tax特異的樹状細胞を生産する方法。
【請求項38】
請求項35~37のいずれか一項に記載の方法で前記樹状細胞を生産する工程と、該樹状細胞を、凍結保護液に懸濁したものをクライオチューブに充填し、再生医療等製品とする工程を包含する、再生医療等製品を生産する方法。
【請求項39】
成人T細胞白血病(ATL)患者の治療において使用する樹状細胞製剤の原料である単球試料を生産する方法であって、
該方法は、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法により血球試料を生産するものであり、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、
方法。
【請求項40】
成人T細胞白血病(ATL)患者の治療において使用する樹状細胞製剤を生産する方法であって、
該方法は、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法により樹状細胞製剤を生産するものであり、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、
方法。
【請求項41】
成人T細胞白血病(ATL)患者の治療において使用する再生医療等製品を生産する方法であって、
該方法は、請求項38に記載の方法により再生医療等製品を生産するものであり、
該患者は、該ATLを治療するための該再生医療等製品を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、
方法。
【請求項42】
成人T細胞白血病(ATL)患者を治療する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
1)該患者から血液試料を得る工程と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、
3)60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]の値が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程と
を含み、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者であ
該所定値が30~50である、
プログラム。
【請求項43】
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、請求項42に記載のプログラム。
【請求項44】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]より高い値に設定される、請求項43に記載のプログラム。
【請求項45】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]+10~30に設定される、請求項43または44に記載のプログラム。
【請求項46】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より10~30高く設定される、請求項43~45のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項47】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より20~30高く設定される、請求項46に記載のプログラム。
【請求項48】
前記採取プレファレンスは40~80に設定される、請求項43~47のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項49】
前記血液試料を得る工程は、単球を取り出す工程と、リンパ球を取り出す工程とを含む、請求項42~48のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項50】
前記リンパ球を取り出す工程を、単球を取り出す工程に引き続き実施する場合、少なくとも20分以上実施される、請求項49に記載のプログラム。
【請求項51】
前記リンパ球を取り出す工程は、30分以上実施される、請求項50に記載のプログラム。
【請求項52】
前記リンパ球を取り出す工程は、前記採取プレファレンスを30~50に設定して実施される、請求項49~51のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項53】
成人T細胞白血病(ATL)患者を治療する方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納する記録媒体であって、該方法は、
1)該患者から血液試料を得る工程と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、
3)60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]の値が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程と
を含み、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者であ
該所定値が30~50である、
記録媒体。
【請求項54】
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、請求項53に記載の記録媒体。
【請求項55】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]より高い値に設定される、請求項54に記載の記録媒体。
【請求項56】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]+10~30に設定される、請求項54または55に記載の記録媒体。
【請求項57】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より10~30高く設定される、請求項54~56のいずれか一項に記載の記録媒体。
【請求項58】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より20~30高く設定される、請求項57に記載の記録媒体。
【請求項59】
前記採取プレファレンスは40~80に設定される、請求項54~58のいずれか一項に記載の記録媒体。
【請求項60】
前記血液試料を得る工程は、単球を取り出す工程と、リンパ球を取り出す工程とを含む、請求項53~59のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項61】
前記リンパ球を取り出す工程を、単球を取り出す工程に引き続き実施する場合、少なくとも20分以上実施される、請求項60に記載の記録媒体。
【請求項62】
前記リンパ球を取り出す工程は、30分以上実施される、請求項60に記載の記録媒体。
【請求項63】
前記リンパ球を取り出す工程は、前記採取プレファレンスを30~50に設定して実施される、請求項60~62のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項64】
成人T細胞白血病(ATL)患者を治療するためのシステムであって、
1)該患者から血液試料を得る試料取得部と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する測定部と、
3)60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]の値が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る同等試料取得部と
を含み、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者であ
該所定値が30~50である、
システム。
【請求項65】
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、請求項64に記載のシステム。
【請求項66】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]より高い値に設定される、請求項65に記載のシステム。
【請求項67】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]+10~30に設定される、請求項65または66に記載のシステム。
【請求項68】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より10~30高く設定される、請求項65~67のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項69】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より20~30高く設定される、請求項68に記載のシステム。
【請求項70】
前記採取プレファレンスは40~80に設定される、請求項65~69のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項71】
前記血液試料を得る試料取得部は、単球を取り出す手段と、リンパ球を取り出す手段とを含む、請求項65~70のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項72】
前記リンパ球を取り出す手段単球を取り出す工程に引き続きリンパ球の取り出しを実施する場合、少なくとも20分以上リンパ球を取り出す工程を実施するように構成される、請求項71に記載のシステム。
【請求項73】
前記リンパ球を取り出す工程は、30分以上リンパ球を取り出す工程を実施するように構成される、請求項72に記載のシステム。
【請求項74】
前記リンパ球を取り出す手段は、前記採取プレファレンスを30~50に設定してリンパ球を取り出す工程を実施するように構成される、請求項71~73のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項75】
成人T細胞白血病(ATL)患者の治療において使用される血液試料を調製するシステムの作動方法であって、該システムは、
1)該患者から血液試料を得る試料取得部と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する測定部と、
3)60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]の値が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る同等試料取得部と
を含み、
該方法は、
該患者から得られた血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、
)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]の値が所定値と同等の血液試料を得るように、システムを作動する工程と
を含み、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者であ
該所定値が30~50である、
方法。
【請求項76】
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]より高い値に設定される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]+10~30に設定される、請求項76または77に記載の方法。
【請求項79】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より10~30高く設定される、請求項76~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記採取プレファレンスは、前記所定値より20~30高く設定される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記採取プレファレンスは40~80に設定される、請求項76~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記血液試料は、単球を取り出す工程と、リンパ球を取り出す工程とを含む工程により得られたものであることを特徴とする、請求項75~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記リンパ球を取り出す工程、単球を取り出す工程に引き続き実施する場合、少なくとも20分以上実施される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記リンパ球を取り出す工程は、30分以上実施される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記リンパ球を取り出す工程は、前記採取プレファレンスを30~50に設定して実施される、請求項82~84のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は新規単核球調製技術に関する。より特定すると、本開示は、末梢血原料の採取/凍結融解工程における単球純化法に関する。特に、本開示は、成人T細胞白血病(ATL)治療に適した樹状細胞製剤(特に、Tax抗原ペプチドをパルスした再生医療等製品)の
製造に最適な技術を提供する。
【背景技術】
【0002】
一般臨床において造血幹細胞移植で用いられているアフェレーシス原料の組成は、主に血球成分であるリンパ球、単球および採取に伴い混入する好中球、赤血球、血小板、血漿がある。
【0003】
アフェレーシス原料の凍結融解による影響は成分毎に異なり、特に好中球、リンパ球、赤血球は凍結ストレスによる脆弱性の問題、血小板は活性化に伴う凝固誘発による凝集塊形成により単球の損失につながる。したがってアフェレーシスによる原料採取では、可能な限りこれらの成分の混入を避け単球純度の高い原料を採取することが、その後の製品の収量、品質に大きく関わってくる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ATL治療製品である樹状細胞製品(例えば、ATL-DC-101)の製造に関するものであり、末梢血単核球採取工程および凍結原料融解後の比重遠心工程における単球純化法を含む。本開示の樹状細胞製品は、末梢血単核球成分(アフェレーシス原料)に含まれる単球から樹状細胞を誘導し、標的となるTax抗原ペプチドをパルスした再生医療等製品を含む。本開示の製品は自家の樹状細胞製品となるため、患者アフェレーシス原料を製造施設へ搬送する工程が生じるが、新鮮原料の場合、搬送による原料の品質変化、搬送中のリスク(交通事情、人的事故、自然災害等)による搬送時間延長に伴う品質劣化、原料内のHTLV-1ウイルス感染拡大が問題となる(ATL患者アフェレーシス検体にはHTLV-1感染細胞が含まれる)。そこで治療の普及には、患者アフェレーシス原料を凍結して製造施設へ搬送し、凍結原料から樹状細胞を調製する製造法の確立が必要となる。本開示により凍結原料からの単球の純化を図ることが可能となれば、製造施設から遠隔地の患者に対しても治療普及が可能となる。
【0005】
本開示は例えば、以下を提供する。
(項目1)血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)被験者から血液試料を得る工程と、
2)該血液試料を、比重および細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程と
を包含する方法。
(項目2)前記工程2)は、前記血液試料を、比重に基づき単球を濃縮し、次いで細胞サイズに基づき単球を濃縮する、上記項目に記載の方法。
(項目3)血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)被験者から血球濃度が所定値より低い血液試料を得る工程と、
2)該血液試料を、比重および/または細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程と
を包含する方法。
(項目4)前記所定値はバフィーコートをとるための値である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)前記採取プレファレンスは
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]より高い値に設定される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)前記採取プレファレンスは
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]+10~20に設定される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)前記採取プレファレンスの所定値は、30~50(例えば、30、40、50)である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)前記採取プレファレンスは、所定値より10~20高く設定される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)前記採取プレファランスは40~70(例えば、40、50、60、70)に設定される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)前記濃縮工程において、スピルオーバーさせることを包含する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)被験者から血液試料を得る工程と、
2)該血液試料から比重および/または細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程であって、該濃縮工程において、リンパ球画分を取り除くように、リンパ球画分をスピルオーバーさせることを含む、工程と
を包含する、方法。
(項目13)前記スピルオーバーは、スピルオーバーとしてチャンバーから赤血球が継続的に溢れ出した時点での処理血液量(基準処理血液量)の値を1とした場合、前記スピルオーバーは、処理血液量を基準処理血液量より大きい値に設定して実施される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)前記処理血液量は、前記基準処理血液量の少なくとも1.2倍である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)前記単球試料は、前記被験者から得られる血球試料から直接得るものであることを特徴とする、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)前記濃縮は、前記血液試料を前記被験者から得た後5時間以内に行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)前記細胞サイズによる分離は、前記比重による分離の後3時間以内に行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)前記単球試料は、全有核細胞に対して約30%以上の濃度の単球を含むことを特徴とする、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)血液試料から単球試料を生産する方法であって、1)被験者から血液試料を得る工程と、2)該血液試料に凍結保護剤を添加する工程と、3)該凍結保護剤を加えた該血液試料を比重により分離し、リンパ球より重い画分を得る工程とを包含する、方法。(項目20)前記血液試料は、アフェレーシス分離を経たものである、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)前記凍結保護剤は、ヒドロキシエチルスターチ、スクロース、ラクトース、グルコース、マンニトール、トレハロース、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、およびデキストランからなる群より選択される成分を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)前記濃縮は、凍結保存後になされることを特徴とする、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)前記比重による分離は、1.074~1.076、好ましくは1.075の比重で遠心分離することを特徴とする、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)前記比重による分離は、以下の遠心分離条件によりなされる
遠心分離1回目 225mL遠沈管 300×g~400×g(例えば、350×g) 5分 室温
遠心分離2~3回目 225mL遠沈管 250×g~350×g(例えば、300×g)5分 室温
項目19~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)前記濃縮は、上記項目のいずれか一項に記載されるアフェレーシス処理がなされた後になされる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)得られた血液試料から、凍結保護剤を含む単球試料を得る工程と
2)該単球試料を、クエン酸ナトリウム水和物を含有する血液保存液A液ACD-A液を10%以下で含む洗浄液で洗浄をする工程とを包含する方法。
(項目27)前記ACD-A液は6%以下で存在する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)前記ACD-A液は5.5%で存在する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)前記血液試料を、5.5%ACD-A液/1%ヒト血清アルブミン(HSA)/RPMI-1640の組成を有する洗浄液で洗浄することを包含する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)死細胞除去処理を行うことをさらに包含する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)前記死細胞除去処理は、リンパ球および血小板をも除去することを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)前記死細胞除去処理は、比重遠心分離を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)前記比重遠心分離は、密度媒体ヨージキサノール(Iodixanol)水溶液を用いて行うことを特徴とする、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)前記ヨージキサノール水溶液は60w/v%で提供される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)前記濃縮は、DNaseの添加なしまたはありで行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)前記DNaseはプルモザイムを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)上記項目のいずれか一項に記載の方法で得られた単球試料から樹状細胞を誘導する工程と、該誘導した樹状細胞に対してTax抗原ペプチドをパルスする工程と
を包含する、Tax特異的樹状細胞を生産する方法。
(項目38)上記項目のいずれか一項に記載の方法で生産された前記Tax特異的樹状細胞を、凍結保護液に懸濁したものを容器(クライオチューブまたはクライオバッグ等)に充填し、再生医療等製品とする工程を包含する、再生医療等製品を生産する方法。
(項目39)上記項目のいずれか一項に記載される方法で生産される、再生医療等製品。
(項目40)血球濃度を調整する機能を有するアフェレーシス装置と、
スピルオーバーを実現する手段と、
細胞をサイズ分離するサイズ分離部と、
凍結保護剤を投入する凍結保護剤投入部と、
比重により単球の分離を行う単球分離部と、
死細胞除去手段と
のうち、少なくとも1つを含む、単球含有物を生産するシステム。
(項目41)上記項目のいずれか一項または複数の項に記載される少なくとも一つの特徴をさらに含む、項目40に記載のシステム。
(項目42)
比重による分離部と、細胞を凍結・保存する凍結保存部と、解凍洗浄を行う解凍洗浄部と、比重遠心分離を行う比重遠心分離部とのうち、少なくとも1つをさらに含む、項目40または41に記載のシステム。
さらに、本開示は、以下の項目も提供する。
(項目A1)
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)被験者から血液試料を得る工程と、
2)該血液試料を、比重および細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程と
を包含する方法。
(項目A2)
前記工程2)は、前記血液試料を、比重に基づき単球を濃縮し、次いで細胞サイズに基づき単球を濃縮する、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A3)
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)被験者から血球濃度が所定値より低い血液試料を得る工程と、
2)該血液試料を、比重および/または細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程と
を包含する方法。
(項目A4)
前記所定値はバフィーコートをとるための値である、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A5)
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A6)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]より高い値に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A7)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/
μl)]+10~20に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A8)
前記採取プレファレンスの所定値は、30~50である、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A9)
前記採取プレファレンスは、所定値より10~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A10)
前記採取プレファレンスは、所定値より20~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A11)
前記採取プレファレンスは40~80(40、50、60、70、80)に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A12)
前記濃縮工程において、スピルオーバーさせることを包含する、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A13)
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)被験者から血液試料を得る工程と、
2)該血液試料から比重および/または細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程であって、該濃縮工程において、リンパ球画分を取り除くように、リンパ球画分をスピルオーバーさせることを含む、工程と
を包含する、方法。
(項目A14)
前記スピルオーバーは、スピルオーバーとしてチャンバーから赤血球が継続的に溢れ出した時点での処理血液量(基準処理血液量)の値を1とした場合、前記スピルオーバーは、処理血液量を基準処理血液量より大きい値に設定して実施される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A15)
前記処理血液量は、前記基準処理血液量の少なくとも1.2倍である、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A16)
前記単球試料は、前記被験者から得られる血球試料から直接得るものであることを特徴とする、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A17)
前記濃縮は、前記血液試料を前記被験者から得た後5時間以内に行われる、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A18)
前記細胞サイズによる分離は、前記比重による分離の後3時間以内に行われる、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A19)
前記単球試料は、全有核細胞に対して約30%以上の濃度の単球を含むことを特徴とする、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A20)
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)被験者から血液試料を得る工程と、
2)該血液試料に凍結保護剤を添加する工程と、
3)該凍結保護剤を加えた該血液試料を比重により分離し、リンパ球より重い画分を得る工程と
を包含する、方法。
(項目A21)
前記血液試料は、アフェレーシス分離を経たものである、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A22)
前記凍結保護剤は、ヒドロキシエチルスターチ、スクロース、ラクトース、グルコース、マンニトール、トレハロース、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、およびデキストランからなる群より選択される成分を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A23)
前記濃縮は、凍結保存後になされることを特徴とする、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A24)
前記比重による分離は、1.074~1.076の比重で遠心分離することを特徴とする、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A25)
前記比重による分離は、以下の遠心分離条件によりなされる
遠心分離1回目 225mL遠沈管 300×g~400×g 5分 室温
遠心分離2~3回目 225mL遠沈管 250×g~350×g 5分 室温
上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A26)
前記濃縮は、上記項目のいずれか1項に記載されるアフェレーシス処理がなされた後になされる、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A27)
血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)得られた血液試料から、凍結保護剤を含む単球試料を得る工程と
2)該単球試料を、クエン酸ナトリウム水和物を含有する血液保存液A液(ACD-A液)を10%以下で含む洗浄液で洗浄をする工程と
を包含する方法。
(項目A28)
前記ACD-A液は6%以下で存在する、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A29)
前記ACD-A液は5.5%で存在する、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A30)
前記血液試料を、5.5%ACD-A液/1%ヒト血清アルブミン(HSA)/RPMI-1640の組成を有する洗浄液で洗浄することを包含する、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A31)
死細胞除去処理を行うことをさらに包含する、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A32)
前記死細胞除去処理は、リンパ球および血小板をも除去することを含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A33)
前記死細胞除去処理は、比重遠心分離を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A34)
前記比重遠心分離は、密度媒体ヨージキサノール(Iodixanol)水溶液を用いて行うことを特徴とする、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A35)
前記ヨージキサノール水溶液は60w/v%で提供される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A36)
前記濃縮は、DNaseの添加なしまたはありで行われる、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A37)
前記DNaseはプルモザイムを含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A38)
上記項目のいずれか1項に記載の方法で得られた単球試料から樹状細胞を誘導する工程と、
該誘導した樹状細胞に対してTax抗原ペプチドをパルスする工程と
を包含する、Tax特異的樹状細胞を生産する方法。
(項目A39)
項目A38に記載の方法で生産された前記Tax特異的樹状細胞を、凍結保護液に懸濁したものをクライオチューブに充填し、再生医療等製品とする工程を包含する、再生医療等製品を生産する方法。
(項目A40)
項目A39に記載される方法で生産される、再生医療等製品。
(項目A41)
血球濃度を調整する機能を有するアフェレーシス装置と、
スピルオーバーを実現する手段と、
細胞をサイズ分離するサイズ分離部と、
凍結保護剤を投入する凍結保護剤投入部と、
比重により単球の分離を行う単球分離部と、
死細胞除去手段と
のうち、少なくとも1つを含む、
単球含有物を生産するシステム。
(項目A42)
比重による分離部と、細胞を凍結・保存する凍結保存部と、解凍洗浄を行う解凍洗浄部と、比重遠心分離を行う比重遠心分離部とのうち、少なくとも1つをさらに含む、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A43)
成人T細胞白血病(ATL)患者を治療する方法であって、
1)該患者から血液試料を得る工程と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、
3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程と
を含む、方法であって、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、
方法。
(項目A44)
前記所定値はバフィーコートをとるための値である、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A45)
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A46)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]より高い値に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A47)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]+10~30に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A48)
前記採取プレファレンスの所定値は、30~50である、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A49)
前記採取プレファレンスは、所定値より10~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A50)
前記採取プレファレンスは、所定値より20~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A51)
前記採取プレファレンスは40~80(40、50、60、70、80)に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A52)
前記血液試料を得る工程は、単球を取り出す工程と、リンパ球を取り出す工程とを含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A53)
前記単球を取り出す工程は、項目A1~36のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A54)
前記リンパ球を取り出す工程は、項目A43~51のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含み、単球を取り出す工程に引き続き実施する場合、少なくとも20分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A55)
前記リンパ球を取り出す工程は、30分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A56)
前記リンパ球を取り出す工程は、前記採取プレファレンスを30~50に設定して実施される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A57)
成人T細胞白血病(ATL)患者を治療する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、
1)該患者から血液試料を得る工程と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、
3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程と
を含み、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、
プログラム。
(項目A58)
前記所定値はバフィーコートをとるための値である、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A59)
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A60)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]より高い値に設定される、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A61)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]+10~30に設定される、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A62)
前記採取プレファレンスの所定値は、30~50である、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A63)
前記採取プレファレンスは、所定値より10~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A64)
前記採取プレファレンスは、所定値より20~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A65)
前記採取プレファレンスは40~80(40、50、60、70、80)に設定される、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A66)
前記血液試料を得る工程は、単球を取り出す工程と、リンパ球を取り出す工程とを含む、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A67)
前記単球を取り出す工程は、項目A1~36のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含む、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A68)
前記リンパ球を取り出す工程は、項目A43~51のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含み、単球を取り出す工程に引き続き実施する場合、少なくとも20分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A69)
前記リンパ球を取り出す工程は、30分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A70)
前記リンパ球を取り出す工程は、前記採取プレファレンスを30~50に設定して実施される、上記項目のいずれか1項に記載のプログラム。
(項目A71)
成人T細胞白血病(ATL)患者を治療する方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納する記録媒体であって、該方法は、
1)該患者から血液試料を得る工程と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、
3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程と
を含み、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、
記録媒体。
(項目A72)
前記所定値はバフィーコートをとるための値である、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A73)
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A74)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]より高い値に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A75)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]+10~30に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A76)
前記採取プレファレンスの所定値は、30~50である、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A77)
前記採取プレファレンスは、所定値より10~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A78)
前記採取プレファレンスは、所定値より20~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A79)
前記採取プレファレンスは40~80(40、50、60、70、80)に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A80)
前記血液試料を得る工程は、単球を取り出す工程と、リンパ球を取り出す工程とを含む、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A81)
前記単球を取り出す工程は、項目A1~36のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含む、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A82)
前記リンパ球を取り出す工程は、項目A43~51のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含み、単球を取り出す工程に引き続き実施する場合、少なくとも20分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A83)
前記リンパ球を取り出す工程は、30分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A84)
前記リンパ球を取り出す工程は、前記採取プレファレンスを30~50に設定して実施される、上記項目のいずれか1項に記載の記録媒体。
(項目A85)
成人T細胞白血病(ATL)患者を治療するためのシステムであって、
1)該患者から血液試料を得る試料取得部と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する測定部と、
3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る同等試料取得部と
を含み、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、
システム。
(項目A86)
前記所定値はバフィーコートをとるための値である、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A87)
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A88)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]より高い値に設定される、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A89)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]+10~30に設定される、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A90)
前記採取プレファレンスの所定値は、30~50である、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A91)
前記採取プレファレンスは、所定値より10~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A92)
前記採取プレファレンスは、所定値より20~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A93)
前記採取プレファレンスは40~80(40、50、60、70、80)に設定される、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A94)
前記血液試料を得る工程は、単球を取り出す工程と、リンパ球を取り出す工程とを含む、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A95)
前記単球を取り出す工程は、項目A1~36のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含む、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A96)
前記リンパ球を取り出す工程は、項目A43~51のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含み、単球を取り出す工程に引き続き実施する場合、少なくとも20分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A97)
前記リンパ球を取り出す工程は、30分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A98)
前記リンパ球を取り出す工程は、前記採取プレファレンスを30~50に設定して実施される、上記項目のいずれか1項に記載のシステム。
(項目A99)
成人T細胞白血病(ATL)患者を治療するためのシステムの作動方法であって、該システムは、
1)該患者から血液試料を得る試料取得部と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する測定部と、
3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る同等試料取得部と
を含み、
該方法は、
1)該患者から血液試料を得る工程と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、
3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程と
を含み、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、
方法。
(項目A100)
前記所定値はバフィーコートをとるための値である、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A101)
前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A102)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]より高い値に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A103)
前記採取プレファレンスは、
60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]+10~30に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A104)
前記採取プレファレンスの所定値は、30~50である、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A105)
前記採取プレファレンスは、所定値より10~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A106)
前記採取プレファレンスは、所定値より20~30高く設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A107)
前記採取プレファレンスは40~80(40、50、60、70、80)に設定される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A108)
前記血液試料を得る工程は、単球を取り出す工程と、リンパ球を取り出す工程とを含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A109)
前記単球を取り出す工程は、項目A1~36のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含む、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A110)
前記リンパ球を取り出す工程は、項目A43~51のいずれか1項または複数の項に記載される少なくとも1つの特徴を含み、単球を取り出す工程に引き続き実施する場合、少なくとも20分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A111)
前記リンパ球を取り出す工程は、30分以上実施される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目A112)
前記リンパ球を取り出す工程は、前記採取プレファレンスを30~50に設定して実施される、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
【0006】
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、再生医療等製品として顕著な治療効果が期待される成人T細胞白血病(ATL)治療を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施例5のプルモザイム処理ありの、融解洗浄後試料のフローサイトメトリー結果を示す。
図2図2は実施例5のプルモザイム処理ありのOptiPrep処理後の単球の質および純度を示す結果である。
図3図3は実施例5のプルモザイム処理なしの、融解洗浄後試料のフローサイトメトリー結果を示す。
図4図4は実施例5のプルモザイム処理なしのOptiPrep処理後の単球の質および純度を示す結果である。
図5図5は、実施例6で得られた樹状細胞(プルモザイムあり)の特性を確認したものである。図5は、各々のマーカーに対する抗体を用いたFCMを示す。図5では、示されるように、FSC-H、FSC-A、SSC-A(生存細胞とダブレットフリー)、DCゲートでのCD11c、CD14、HLA-DR、リンパゲートでのCD11c、CD14およびHLA-DRを示す。
図6図6は、実施例6で得られた樹状細胞(プルモザイムあり)の特性を確認したものである。図6は、各々のマーカーに対する抗体を用いたFCMを示す。図6では、示されるように、FSC-H、FSC-A、SSC-A(生存細胞とダブレットフリー)、DCゲートでのCD11c、CD40、CD83、リンパゲートでのCD11c、CD40、CD83を示す。
図7図7は、実施例6で得られた樹状細胞(プルモザイムあり)の特性を確認したものである。図7は、各々のマーカーに対する抗体を用いたFCMを示す。図7では、示されるように、FSC-H、FSC-A、SSC-A(生存細胞とダブレットフリー)、DCゲートでのCD11c、CD80、CD86、リンパゲートでのCD11c、CD80、CD86を示す。
図8図8は、実施例6で得られた樹状細胞(プルモザイムなし)の特性を確認したものである。図8は、各々のマーカーに対する抗体を用いたFCMを示す。図8では、示されるように、FSC-H、FSC-A、SSC-A(生存細胞とダブレットフリー)、DCゲートでのCD11c、CD14、HLA-DR、リンパゲートでのCD11c、CD14およびHLA-DRを示す。
図9図9は、実施例6で得られた樹状細胞(プルモザイムなし)の特性を確認したものである。図9は、各々のマーカーに対する抗体を用いたFCMを示す。図9では、示されるように、FSC-H、FSC-A、SSC-A(生存細胞とダブレットフリー)、DCゲートでのCD11c、CD40、CD83、リンパゲートでのCD11c、CD40、CD83を示す。
図10図10は、実施例6で得られた樹状細胞(プルモザイムなし)の特性を確認したものである。図10は、各々のマーカーに対する抗体を用いたFCMを示す。図10では、示されるように、FSC-H、FSC-A、SSC-A(生存細胞とダブレットフリー)、DCゲートでのCD11c、CD80、CD86、リンパゲートでのCD11c、CD80、CD86を示す。
図11図11は実施例8のMLRの結果を示す。CFSEで標識したCD4細胞(CFSE-CD4)と樹状細胞(DC)とを、それぞれ、CFSE-CD4:DC=1:0、1:0.1、1:0.01、1:0.001の比率で混合し単独培養または共培養した後に、抗CD3抗体及び抗CD4抗体で標識した試料のフローサイトメトリー結果(特に、CD4)である。P2Exp14、P2Exp21-S、P2Exp21-Pはそれぞれ、従来法を用いた工程で得られた樹状細胞(DC)、本開示の方法を用いてDNase処理無しの工程で得られたDC、本開示の方法を用いてDNase処理有りの工程で得られたDCを使用した。
図12図12は、実施例4のプロトコール模式図を示す。
図13図13は、実施例5の抗体染色の抗体表を示す。
図14図14は、本開示の製造法の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示をさらに詳細に説明する。
【0010】
本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a
」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理
解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0011】
(定義)
最初に本開示において使用される用語および一般的な技術を説明する。
【0012】
(ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)について)
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)は、ヒトの成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の原因として公知であるレトロウイルスである。ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)に起因する疾患としては、ATLが代表的であるが、その他にHTLV-1関連ミエロパチー、HTVL-1ブドウ膜炎を引き起こす場合もある。HTLVには、HTLV-1、HTLV-2、HTLV-3などの複数の型が挙げられる。このうちHTLV-1は、長さ約9kbのプロウイルス遺伝子を有する。HTLV-1のプロウイルス遺伝子は、Tax、Rex、gag、pol、env等の種々のタンパク質をコードする。このうちTaxタンパク質は、完全長として約353アミノ酸残基を有し、宿主細胞内でNF-κB、SRF、CREBなどの宿主の転写因子の活性化、p53等のタンパク質の機能抑制など、多数の機能を有する。
【0013】
HTLV-1の生体内の感染対象細胞として具体的には、CD4+T細胞、CD8+T細胞、単球、樹状細胞が挙げられる。これら細胞は、HTLV-1に感染すると、HTLV-1がコードするTax等のタンパク質の部分ペプチド(例えばTax部分ペプチド)を、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を介して提示する。そこで、このHTLV-1特異的な部分ペプチドを提示する細胞(すなわちHTLV-1感染細胞)を標的とする細胞であって、生体内で免疫応答を惹起できるCD4+T細胞、CD8+T細胞(CD8+細胞傷害性T細胞、CD8+CTLともいう)を用いる免疫療法が、HTLV-1関連疾患、例えばATLの有用な免疫療法として報告されている(特開2008-22702、特開2014-133712、Miyazaki et al., Blood 2013 121:4894-4901など)。
【0014】
本開示の単球は、樹状細胞を誘導するために用いられ、そのような樹状細胞は、HTLV-I特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導活性ペプチドなどでパルス刺激されることができる。このようなペプチドとしては、HTLV-Iに特異的なCTLを誘導する活性を有するペプチドである限り特に制限されず、中でも、Tax特異的なCTL誘導活性ペプチドを好適に例示することができ、中でも、HLA-A24:02拘束性CTLエピトープであるTax301-309(国際公開第2004/092373号パンフレット参照)などを特に好適に例示することができる。ここで、例えば、HLA-A11:01に対するTaxペプチドは、本樹状細胞療法の標的になるペプチドの一つであり、なお樹状細胞自体は、標的を変えれば各種がんや、免疫制御目的で使用することも可能である。TCR改変型T細胞は、HLA-A24に対するペプチドのみを標的にしているものであり、本開示では、Tax 301-309を標的とすることも含まれる。例えば、本開示では、HLA-A24:01, HLA-A02:01,HLA-A02:07,HLA-A11:01を対象にすることができ、樹状細胞が体内で標的に対して攻撃可能なT細胞をHLA拘束性に刺激し活性化させたものを利用することができる。
【0015】
近年、ヘルパーT細胞であるCD4+T細胞に対する癌抗原エピトープと、CTLであるCD8+T細胞に対する癌抗原エピトープを結合させた融合ペプチド(Helper/Killer-Hybrid Epitope Long peptide)を被験対象に投与することによって、被験対象の癌細胞に対する免疫を効果的に高めることが知られている(例えばCancer Science(2012)103,150-153など)。本開示においても、適切なアミノ酸配列のペプチドを用いることによって、HTLV-I特異的CD4+T細胞と共に、HTLV-I特異的CTLを誘導し、HTLV-Iに対する免疫を効果的に高めることができる。また、Taxに対応する適切なアミノ酸配列のペプチドをパルスとして用いてTaxパルス樹状細胞を製造することができると考えられる。
【0016】
(樹状細胞および単球)
樹状細胞(DC)は、ヒトにおいて細胞性免疫応答の開始および制御のため強力な抗原提示細胞であることが知られる。樹状細胞は、T細胞の応答性特異的クローンとの相互作用時にその潜在的特性のどちらのセットを発現するかに依存して、免疫賦活性または免疫抑制性のいずれになる場合もあることから、T細胞媒介性免疫反応における非常に重要な中心的役割を果たすと考えられている。広義だが広く支持された一般論として、未成熟樹状細胞はそれらのより成熟した対応物よりも「免疫寛容原性」であり、一方成熟樹状細胞はそれらの未成熟前駆体よりも「免疫原性」であると考えられている。樹状細胞は、単球からex vivoで生成され、特定の抗原を有し、いずれの免疫学的方向においても有効に機能する樹状細胞の能力は、患者に戻された後のそれらの生存率および活力に依存する。対抗的な免疫賦活と免疫抑制樹状細胞との間の均衡が、樹状細胞依存性治療用免疫応答の方向および強度の両方の主な決定要因であるとされている。
【0017】
正常なヒトの血液は、一般に、最も多数あり、かつ最も密度の高い細胞である赤血球(「RBC」)と、最も数が少なく、かつ最小密度の細胞である血小板(「PLT」)と、最大細胞であり、RBCとPLTとの間の密度を有する白血球(「WBC」)と、血漿と、を含む。これらの3つの細胞画分は、遠心中に別個の集団に分離する。平均して、RBCは個体の全血球の約99.9%を構成し、個体内の全血量の約45%を占めるが、これは個体間で異なり、また同一個体内で時間の経過共に異なることが周知である。RBCは身体組織に酸素を運ぶ主要手段として重要な機能を果たすが、癌などの特定の病気に対抗するための組織の再生または免疫系の増強には有用ではない。固体の血液量の残りのほぼ全てが全血量の約55%を占める非細胞性液体である血漿から構成され、その中で、全ての血液細胞が懸濁されている。したがって、通常の血液量の99%以上が血漿および赤血球で構成されている。
【0018】
残りの約<0.6%の正常血液量は、WBCおよび血小板(PLT)から構成されている。PLTは、WBCより数が約30倍多い、不規則な形状の小さい核細胞である。PLTは、出血を止め、損傷組織を修復および再生する多数の成長因子を放出することによって、止血および治癒において基本的な役割を果たす。しかし、それらの接着性により、希少であり、臨床的に重要な標的細胞の効率的な富化および精製が妨げられる。最も広く行き渡っていない血液細胞はWBCであり、典型的な血液サンプル中の全細胞のわずか約10分の1%のみを占める。WBCは、身体の免疫系に不可欠であり、感染症、異物および血液学的および固形腫瘍癌に対する身体の防衛に関与している。免疫療法または再生医療において臨床的に利用されている細胞のほとんど全てが、WBC画分内に存在する。WBCはサブグループに更に分けられてもよい。最大であり、かつ最も密度の高いサブグループは、顆粒球(GRN)であり、全WBCの約60%を占める。より小さく、かつより密度の低いサブグループは単核細胞(MNC)であり、残りの約40%を構成する。MNCは、リンパ球および単球に更に分離され得るが、それらは、単一で円形の核の各細胞内に存在するため、集合的にMNCと称される。MNCは、免疫系の重要な構成要素であり、T細胞、B細胞、および身体組織の感染部位に移動し、免疫応答を誘発するためにマクロファージおよび樹状細胞に分割し、分化するNK細胞を含む。臨床試験で現在検討されている多くの細胞療法は、MNC画分に存在する細胞を利用する。本開示では、さらに、このなかの単球を分離して、樹状細胞誘導の原料とすることが好ましい。
【0019】
本明細書では「血液試料」は、被験者から得られる任意の血液を対象とすることができる。アフェレーシスの場合は、全血を分画することが通常であることから、血液試料としては全血が包含されるがこれに限定されない。すでに単球を含む画分として調製されたもの(例えば、成分献血後の単球含有試料)も本開示において血液試料として使用することができる。
【0020】
本明細書において「血球濃度」とは、ある試料において、血球の占める濃度をいう。血球濃度は、本明細書で使用される採取プレファレンスによって表現することもでき、採取プレファレンスが高い場合血球濃度が低く、採取プレファレンスが低い場合血球濃度が高いと表現することができる。
【0021】
本明細書において「採取プレファレンス」は、アフェレーシス装置において、採取ポート内を流れる血球濃度に影響を与える、血漿ポンプ流量を調整するために使用される参照値のことをいい、採取する血液試料の、特に血球の占める濃度に着目してラベル付けするための指標である。血球が効率的にチャネルからポンプで送り込まれるように、患者の白血球数および血小板数と相関している必要がある。採取プレファレンスが高い場合血球濃度が低く、採取プレファレンスが低い場合血球濃度が高いと表現することができる。通常、患者の血球数が多い場合は、採取プリファレンスを小さくする必要がある(色が濃くなる)。また、患者の血球数が少ない場合は、採取プリファレンスを大きくする必要がある(色が薄くなる)。代表的には、採取プレファレンス=60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]
で設定することができる。
【0022】
本明細書において、「単球(Monocyte)」は、白血球の一種で、最も大きなタイプの白血球である。マクロファージや、樹状細胞に分化することができる細胞をいう。単球は、脊椎動物の自然免疫の一部としても、また、適応免疫の過程にも影響をもつ。ヒトの血液には少なくとも3種類の単球が存在するといわれている。
【0023】
本明細書において「バフィーコート」とは、血液の密度勾配遠心分離後の白血球と血小板のほとんどを含む抗凝固処理された血液サンプルの一部をいう。
【0024】
本明細書では、単球を含む試料は「単球試料」と称され得る。このような単球試料の品質の指標として有核細胞中の単球の割合を利用することができる。従来使用されるアフェレーシスでは、単球試料の割合は10%程度であることが多いとされている。
【0025】
本明細書において「濃縮」(enrich、enrichment)とは、特定の細胞(例えば、単球)のある集団(例えば、有核細胞)における割合を高めることを言い、純化(purify、purification)とも言われる。例えば、操作前の特定細胞の集団に占める割合が10%であった場合に操作後に30%に高められる場合、濃縮または純化の概念に該当する。
【0026】
(Tax抗原ペプチドパルス樹状細胞)
本開示は、アフェレーシス原料に含まれる単球から樹状細胞を誘導し、標的となるTax抗原ペプチドをパルスした再生医療等製品を製造するための原料を提供することが一つの特徴である。現在、ATLに対するHTLV-1 Taxを標的とした樹状細胞ワクチンの開発を行っており、高い評価が得られているが、本開示によって提供される単球を用いることでさらに質の良いTax抗原ペプチドパルス樹状細胞を提供することができる。
【0027】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
【0028】
(単球純化および樹状細胞製造)
本開示は、凍結原料から樹状細胞製造を実施するにあたり、アフェレーシス法の改良(リンパ球、好中球、赤血球、血小板混入の低減)および凍結融解後の比重遠心法における単球純化工程を用いた樹状細胞製造法を提供する。本製造法は以下の工程を含む。
自家末梢血単核球採取法(アフェレーシス改良法)
アフェレーシス原料の凍結保存・搬送
原料融解・洗浄・遠心分離法
比重遠心分離法(単球純化)
接着法 接着処理後の上清、浮遊細胞の除去法
樹状細胞誘導
樹状細胞成熟化・活性化
まず最初に、アフェレーシスにおける工夫により、単球の純度を飛躍的に伸ばすことができる。また凍結したアフェレーシス原料は融解直後の血球サイズ、比重、生存率が凍結前原料と変化する。特に細胞内に貯留した比重の重い凍結保護剤の影響により細胞質の広い単球の比重は重くなる。凍結保護剤を加えると、単球とリンパ球の比重が変動するため、遠心分離などの比重を指標とした分離により分離することができる。この性質を利用して遠心分離による単球の純化を図ることが可能となる。
【0029】
さらに工程の簡略化、作業時間短縮に伴い作業者に起因する調製ミスが軽減し、製品の均一性を保つことが可能となる。作業者人員削減および作業時間短縮は、上市後の製品製造の人件費削減に結びつき、十分な経済的効果が得られると考えられる。
【0030】
本開示の原料採取および凍結融解による単球純化法を用いた樹状細胞製造法によれば、製造販売および治療の全国規模での普及の一助となることができる。そのためには、以下の観点から患者アフェレーシス検体の原料凍結、製造施設への搬送システム整備および凍結原料からの製造法の確立が必要となる。
1) 原料内HTLV-1感染細胞から他の非感染細胞へのウイルス感染拡大防止
2) 搬送による原料の品質劣化防止
3) 搬送時間延長によるリスク軽減:交通事情、人的事故、自然災害
4) 患者アフェレーシス、搬送および製造開始日の計画的調整
5) 人件費・製造費用の削減いずれの点でも、本開示は、改善をみることができる。
【0031】
(アフェレーシス)
本開示は、単球に関するアフェレーシス改良法を提供し、代表的には、自家末梢血単核球採取法を提供する。ここではアフェレーシスの改良において、比重による分離と、サイズによる分離とを組み合わせることで、単球の純度を上げることを見出すことができた。
【0032】
ここでは、アフェレーシスの改良のために、例示的な装置としてTerumoから提供されるSpectra Optiaなどの、比重とサイズとの組み合わせにより血球を分離する装置を利用することができる。Spectra Optiaを用いたアフェレーシスは、末梢血幹細胞(CD34陽性細胞)採取の成分採血装置として使用されており、ほとんどの場合、2次チャンバーを使用しないCMNCモードで採取がされている。これらの2次チャンバーは、より赤血球、血小板の混入を減らす目的で使用され得る。
【0033】
一つの実施形態では、遠心型血液成分分離装置(Spectra Optia:テルモBCT)を用いた末梢血単核球採取または単球採取が例示される。
【0034】
1つの代表的な例では、血小板、赤血球の混入を軽減し純度の高い単球分画を採取するため、遠心型血液成分分離装置(例えば、Spectra Optia(Terumo))の2次チャンバー分離方式(MNC)プログラムにより、比重に応じた血球分離と細胞サイズに応じた分離の2段階の分離工程を採用する。採取プリファレンスはドナー末梢血情報により装置が自動計算で設定するが、採取プリファレンスを自動設定値より+10~20高く設定することで好中球、赤血球の混入を軽減することが可能である。またチャンバー分離工程時の処理血液量および採取ポンプスピードの調整により血小板混入を軽減する。さらにこの工程ではリンパ球をスピルオーバー(spillover)することにより、リンパ球採取率を制御し、より純度の高い単球を採取することが可能となる。より好ましくは、採取プリファレンスを自動設定値より+20~30高く設定してもよい。理論に束縛されることを望まないが、この設定により、リンパ球除去をさらにすることが必要となる場合があり、そのような場合は、単球採取後にリンパ球除去モードとして、プリファレンス自動設定値でアフェレーシスを行うか、または、プリファレンス値を30~50に設定してアフェレーシスを行うことを追加してもよい。一例として、用いる機器において、単球採取後にプリファレンスを自動設定値に戻し採取を行った。本工程を追加することで、従来の採取時に除去できていたリンパ球数と同等のリンパ球除去が可能である。
【0035】
本明細書において「スピルオーバー」とは、チャンバーから赤血球が継続的に溢れ出している状態をいう。
【0036】
一つの実施形態では、スピルオーバーは、スピルオーバーとしてチャンバーから赤血球が継続的に溢れ出した時点での処理血液量(基準処理血液量)の値を1とした場合、前記スピルオーバーは、処理血液量を基準処理血液量より大きい値に設定して実施してもよい。
【0037】
1つの実施形態では、記処理血液量は、基準処理血液量の少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍等に設定することができるがこれらに限定されない。
【0038】
スピルオーバーは適宜条件を設定することができるが、処理血液量設定のために、血小板の混入を下げ好中球の混入を抑えるように設定されることが好ましい。理論に束縛されることを望まないが、通常の処理より上の層を採ることになるため採取回数は1~2回になると考えられる。2回に分けることにした場合、全体の処理血液量を採血流量40ml/min×180分で7200mlとして計算し、それを2回の採取で行うように計算すると1回目が約6割で4300ml、2回目が残り4割で2900mlくらいが例示されるがそれに限定されない。
【0039】
比重で分離するアフェレーシスと、比重及びサイズによる分離を組み合わせる点が特徴である。これにより、高純度の単球を単離することができる。

比重:血小板<単球<リンパ球<好中球<赤血球
サイズ:血小板<赤血球<単核球(リンパ球<単球)
【0040】
本開示の方法は、代表的に以下を含む
・Spectra Optiaのチャンバーを使用して、サイズ分離を行う。
・Spectra Optiaは、造血幹細胞移植用の細胞採取に使用されることがほとんどであり、チャンバーを用いて分離することはなされていない。
・本発明者らが従来行っているアフェレーシス(比重のみの分離)の場合は、試料中の単球の割合は10~15%程度であるのに対し、Spectra Optiaのチャンバーを用いて比重分離に加えサイズ分離も行うと、30%程度まで上昇する(採取バッグ中の濃度。Mo(%)=単球数/有核細胞数×100)。
【0041】
また、血小板および赤血球の割合も少なくなり、製剤にする際に有利となる。
・採取プリファレンスを、自動設定値(バフィーコートを採取ための設定値)より10~20高い値にすることで、単球が多く好中球や赤血球の混入が少ない層をとることが可能である。自動設定値の具体的な算出方法は60-[(0.2×白血球数)+(0.08×血小板数)]で決定され、光の透過度により決定されている。ここで、白血球数は被験者の白血球数(×1000/μL)を意味し、血小板数は被験者の血小板数(×1000/μL)を意味する。採取プリファレンスが低ければ比重が高い層、採取プリファレンスが高ければ比重が低い層を採取することとなる。
・サイズの小さい細胞を採取しないために、チャンバーをスピルオーバー(spillover)
させてもよい。代表的な例では、スピルオーバーとしてチャンバーから赤血球が継続的に溢れ出した時点での血液処理量の1.2倍の血液を処理することでスピルオーバー(spillover)させることが望ましくあり得る。
【0042】
このように、本開示は、血液試料から単球試料を生産する方法であって、
1)被験者から血液試料を得る工程と、
2)該血液試料を、比重および細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程と
を包含する方法を提供する。ここで、好ましくは、採取プレファレンスを通常よりも高めに設定することで血球濃度が通常より低い部分の該血液試料を濃縮工程に供することが特徴である。
【0043】
好ましい実施形態の一つは、前記工程2)は、該血液試料について、比重に基づき単球を濃縮し、次いで細胞サイズに基づき単球を濃縮する。これらを実現する装置として、Spectra Optia(登録)が挙げられる。
【0044】
別の局面において、本開示は、血液試料から単球試料を生産する方法であって、1)被験者から血液試料を得る工程と、2)該血液試料中の血球濃度が所定値より低い部分から比重および/または細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程とを包含する方法を提供する。
【0045】
好ましくは、前記血球濃度は採取プレファランスを参照して調整される。前記採取プレファランスは60-[(0.2x白血球数)+(0.08x 血小板数)]で設定される(白血球数および血小板数は、×1000/μl)。好ましくは、実際の設定採取プレファランスは、この値より高いことが好ましい。
【0046】
前記採取プレファレンスは、所定値より10~20高く設定される。前記所定値はバフィーコートをとるための値(例えば、デフォルト30~50)であり、前記採取プレファレンスは60-[(0.2×白血球数)+(0.08×血小板数)]+10~20に設定される。前記採取プレファレンスは40~70に設定されてもよい。
【0047】
1つの実施形態では、濃縮工程において、スピルオーバーさせることを包含する。スピ
ルオーバーによって余分な血小板およびリンパ球が除去され得る。例示的な実施形態では、スピルオーバーは、例えば、スピルオーバーとしてチャンバーから赤血球が継続的に溢れ出した時点での処理血液量(基準処理血液量)の値を1とした場合、前記スピルオーバーは、処理血液量を基準処理血液量より大きい値に設定して実施される。一部の実施形態では、前記処理血液量は、前記基準処理血液量の少なくとも1.2倍である。
【0048】
1つの実施形態において、スピルオーバーは、サイズが小さい細胞が優先的にあふれ出す条件下で行われる。特定の実施形態では、スピルオーバーは、スピルオーバーを実現する手段にて行われる。一部の実施形態において、スピルオーバーを実現する手段は、赤血球検出器を有する。
【0049】
1つの局面において、本開示は、血液試料から単球試料を生産する方法であって、1)被験者から血球濃度が所定値より低い血液試料を得る工程と、2)該血液試料を、比重および/または細胞サイズに基づき単球を濃縮する工程とを含む、方法を提供する。
【0050】
1つの実施形態では、前記単球試料は、前記被験者から得られる血球試料から直接得るものであることを特徴とし、前記濃縮は、前記血液試料を前記被験者から得た後7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、好ましくは3時間以内に行われる。
【0051】
別の特徴としては、細胞サイズによる分離は、前記比重による分離の後5時間以内、4時間以内、あるいは3時間以内、2時間以内、1時間以内に行われることが好ましい。
【0052】
前記単球試料は、約10%以上、約20%以上、あるいは約30%以上の純度(有核細胞に対する比率)で単球を含み得る。約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上の純度で単球を含み得ることも本開示の特徴の一つであり得る。
【0053】
(凍結保護剤)
1つの局面において、本開示は、血液試料から単球試料を生産する方法であって、1)被験者から血液試料を得る工程と、2)該血液試料に凍結保護剤を添加する工程と、3)凍結保護剤を加えた該血液試料を比重により分離し、リンパ球より重い画分を得る工程とを包含する、方法を提供する。1つの実施形態では、前記血液試料は、アフェレーシス分
離を経たものである。
【0054】
代表的には、凍結保護剤は、ヒドロキシエチルスターチ、スクロース、ラクトース、グルコース、マンニトール、トレハロース、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、デキストラン等の成分を含むもの、例えば、ReproCryo DMSO Free RM(ReproCELL)、STEM-CELLBANKER(登録商標) DMSO Free GMP Grade (Clontech)等を挙げることができる。特にDMSOを含むもののほか、DMSOを含まないものも好ましく使用されうる。
【0055】
1つの局面において、本開示は、血液試料から単球試料を生産する方法であって、1)
得られた血液試料から、凍結保護剤を含む単球試料を得る工程と2)該単球試料を、クエン酸ナトリウム水和物等を含有する血液保護剤A((ACD-A液))を通常(15%程度)より低い濃度、例えば、10%以下で含む洗浄液で洗浄をする工程とを包含する方法を提供する。通常濃度のACD-Aで使用すると単球試料が劣化することが予想外に見いだされたからであり、これを解決することが通常(15%程度)より低い濃度、例えば、10%以下でACD-Aを含むことで達成し得た。好ましくは、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下で含むことが望ましく、一つの好ましい実施例では、約5.5%でACD-Aを含むことが望ましくあり得る。
【0056】
別の局面において、本開示は、血液試料から単球試料を生産する方法であって、1)得られた血液試料から単球試料を得る工程と2)該単球試料に凍結保護剤を添加した後に、ACD-Aを通常(15%程度)より低い濃度、例えば、10%以下で含む洗浄液で洗浄をする工程とを包含する方法を手供する。
【0057】
他の局面において、本開示は、血液試料から単球試料を生産する方法であって、1)得られた血液試料から単球試料を得る工程と2)該単球試料に凍結保存後に、ACD-Aを通常(15%程度)より低い濃度、例えば、10%以下で含む洗浄液で融解洗浄をする工程とを包含する方法を提供する。
【0058】
好ましい実施形態では、濃縮は、凍結保存後になされる。凍結保存を行うことで、生存率が有意に改善されるからである。特に一例としては、血液試料は、前記凍結保護剤の添加後に、5.5%ACD-A/1%HSA/RPMI-1640の組成を有する洗浄液で洗浄される。別の一例として、血液試料は、前記凍結保存後に、5.5%ACD-A/1%HSA/RPMI-1640の組成を有する洗浄液で融解洗浄される。ACD-Aは6%以下で存在することが好ましく、さらに好ましくは、ACD-Aは5.5%で存在する。
【0059】
比重による単球の分離は、比重の違いにより、単球を分離し得る機能を有する限りどのようなものであってもよい。例えば、細胞の洗浄を目的として遠心分離により洗浄をする場合、比重液を用いて比重分離を行う場合等が考えられ、これらが包含される。1つの特定の実施形態では、本開示の比重による濃縮工程は、比重遠心分離法による工程を含み得る。比重遠心分離法では、1.074~1.076、好ましくは1.075の比重液で遠心分離することが好ましい。通常の1.070~1.073ではなく少し高い比重になるのは凍結保護剤による予想外の影響による。なお、1.077以上ではリンパ球の混入がみられるためあまり好ましくはない。
【0060】
別の実施形態では、比重による分離は、以下の遠心分離条件によりなされる。
遠心分離1回目 225mL遠沈管 300×g~400×g、例えば350×g 5min RT
遠心分離2-3回目 225mL遠沈管 250×g~350×g、例えば300×g
5min RT
1つの好ましい実施形態では、濃縮は、本開示のアフェレーシス処理がなされた後になされる。
【0061】
凍結原料の融解洗浄工程の1)洗浄液組成、2)遠心条件が重要な条件の一つである。1) 洗浄液組成 5.5%ACD-A/1%HSA/RPMI-1640
2) 遠心条件:
遠心1回目 225mL遠沈管 350g 5min RT
遠心2-3回目 225mL遠沈管 300g 5min RT。
1回目と2回目のこれらの条件は、予想外にリンパ球を除去したり他の血液成分を効率よく除くために有利な条件であり得る。通常は、これより高い重力加速度で遠心分離をする(例えば、500×g、700×g)が、そのような高い重力加速度では、十分に除去できない。
【0062】
(死細胞等除去)
本開示では、リンパ球、血小板および死細胞除去などをさらに除去する工程を包含してもよい。死細胞除去処理のみあるいは、死細胞、リンパ球および血小板を除去してもよい。このような細胞の除去は、比重遠心分離によってなされ得、比重遠心分離は、密度媒体ヨージキサノール(Iodixanol)水溶液を用いて行うことが好ましく、さらに好ましくは、ヨージキサノール(Iodixanol)水溶液は60w/v%で提供され、OptiPrepTMを用いることができる。1つの特定の実施形態では、本開示の死細胞等除去は、比重遠心分離法による工程を含み得る。比重遠心分離法では、1.074~1.076、好ましくは1.075の比重液で遠心分離することが好ましい。通常の1.070~1.073ではなく少し高い比重になるのは凍結保護剤による予想外の影響による。なお、1.077以上ではリンパ球の混入がみられるためあまり好ましくはない。
【0063】
(DNaseの有無)
濃縮は、DNaseの添加なしまたはありで行われる。DNaseはプルモザイムを含む。DNase処理がなくても単球の質および純度を確保できたことから、実際の臨床現場では、ない場合でも応用可能であることが証明された。もちろん、種々の側面でDNaseの好ましい局面もあることから、本開示では両者を否定するものではないことが理解される。
【0064】
(システム)
1つの局面において、本開示は、血球濃度を調整する機能を有するアフェレーシス装置
と、細胞をサイズ分離するサイズ分離部と、スピルオーバーを実現する手段と、凍結保護剤を投入する凍結保護剤投入部と、比重により単球の分離を行う単球分離部と、死細胞除去手段とのうち、少なくとも1つを含む、単球含有物を生産するシステムを提供する。本
開示のシステムは、これらの2つ、3つ、4つまたはすべてを含む。
【0065】
本開示のシステムのアフェレーシス装置は、好ましくは、比重分離のほか、細胞サイズ分離の機能を有することが好ましいがこれに限定されない。サイズ分離の機能は別に提供されてもよいことが理解される。そのような例としては、Spectra Optia(Terumo)が挙げられるがこれに限定されない。また、アフェレーシス装置は、それ自らが血球濃度を調整する機能を有していてもよく、追加で血球濃度を調整する機能を有する機能を発揮する部分を備えてもよい。
【0066】
スピルオーバーを実現する手段は、液量をコントロールすることができるものである限りどのようなものであってもよい。
【0067】
細胞をサイズ分離するサイズ分離部は、細胞をサイズにより分離することが可能である限りどのようなものであってもよい。
【0068】
凍結保護剤を投入する凍結保護剤投入部は、凍結保護剤を保管し、適宜試料に投入することができる機能を有する限りどのようなものであってもよい。
比重により単球を分離する単球分離部は、比重の違いにより、単球を分離し得る機能を有する限りどのようなものであってもよい。例えば、細胞の洗浄を目的として遠心分離により洗浄をする場合、比重液を用いて比重分離を行う場合等が考えられ、これらが包含される。凍結保護剤により比重が変更される場合単球の分離には通常の洗浄を目的として遠心分離により洗浄をすることでも目的が達成されることから、この場合遠心分離部装置であってもよい。比重液を用いて比重分離を行う場合は、遠心分離機に加え、比重液もこの単球分離部に備えられ得る。
【0069】
死細胞除去手段は死細胞を除去し得る任意の手段が適切であり、比重遠心分離によるものが通常であり、例えば、密度媒体ヨージキサノール(Iodixanol)水溶液を用いたものが用いられる。ヨージキサノール(Iodixanol)水溶液は60w/v%で提供されることが好ましい。
【0070】
このシステムは、さらに、比重による分離部と、細胞を凍結・保存する凍結保存部、解凍洗浄を行う解凍洗浄部または凍結した細胞を融解する細胞融解部、上述した比重遠心分離を行う比重遠心分離部、樹状細胞を誘導する手段、パルス刺激する手段、再生医療等製品を調製する手段などを1または複数あるいは全部備えていてもよい。
【0071】
これらのシステムは、コンピュータによる自動制御あるいは手動で制御されてもよい。
【0072】
システムは、本明細書に記載される方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを備えていてよく、例えば、そのようなプログラムを格納した記録媒体を備え得る。また、プログラムによって指示される命令を実行するための計算装置(例えば、コンピュータ)を備えていてよい。計算装置は、物理的に一体としていても、あるいは、物理的に分離した複数の構成要素からなっていてもよい。これらの計算装置の内部において、学習部、計算部および取得部等に対応する機能が必要に応じて備えられ得る。
【0073】
本開示のシステムは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIとして実現することができ、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムであり得る。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0074】
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0075】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0076】
本明細書において「プログラム」は、当該分野で使用される通常の意味で用いられ、コンピュータが行うべき処理を順序立てて記述したものであり、法律上「物」として扱われるものである。すべてのコンピュータはプログラムに従って動作している。現代のコンピュータではプログラムはデータとして表現され、記録媒体または記憶装置に格納される。
【0077】
本明細書において「記録媒体」は、本開示を実行させるプログラムを格納した記録媒体であり、記録媒体は、プログラムを記録できる限り、どのようなものであってもよい。例えば、内部に格納され得るROMやHDD、磁気ディスク、USBメモリ等のフラッシュメモリなどの外部記憶装置でありうるがこれらに限定されない。
【0078】
本明細書において「システム」とは、本発明の方法またはプログラムを実行する構成をいい、本来的には、目的を遂行するための体系や組織を意味し、複数の要素が体系的に構成され、相互に影響するものであり、コンピュータの分野では、ハードウェア、ソフトウェア、OS、ネットワークなどの、全体の構成をいう。
【0079】
(Tax抗原ペプチドパルス樹状細胞の製造)
本開示は、本開示の工程により調製された単球試料から樹状細胞を誘導する工程と、該誘導した樹状細胞に対してTax抗原ペプチドをパルスする工程とを含む、Tax特異的樹状細胞を生産する方法を提供する。
【0080】
本開示はまた、Tax特異的樹状細胞を、凍結保護液に懸濁したものをクライオチューブ
、クライオバッグ等の容器に充填し再生医療等製品とする工程を包含する、再生医療等製品を生産する方法を提供する。
【0081】
また、本開示は、本開示の方法によって製造される再生医療等製品を提供する。
【0082】
(治療)
本開示の再生医療等製品は、有効成分量換算で、適宜の位置に治療で投与することができ、非経口的、局所的または経粘膜的、例えば経鼻、経直腸または経皮的に、あるいは局所的に投与される場合も同様に換算することができる。本開示の方法で投与される医薬組成物の量は、治療される対象、障害または障害の症状の重症度、投与法、投与頻度および医師の判断に応じて決まる。投与頻度は、ほぼ毎時間の投与から毎月の投与までの範囲内である。具体的実施態様において、投与は、例えば、1×10~1×10、好ましくは、5×10細胞でなされ得、投与回数は、代表的に1~5回(好ましくは、3回)投与され得、投与間隔としては、例えば、1~4週間おき、好ましくは2週間おきに投与され得る。代表的には、5×10細胞で2週毎3回投与され得る。この治療は予防にも使用されうる。
好ましい実施形態では、本開示は、被験体から単球を採取した後の、アフェレーシスによるリンパ球除去を含みうる。本開示のリンパ球除去は、アフェレーシスによる単球採取後等に、自動設定値でアフェレーシスを行うことにより被験体内のリンパ球を除去し、抗腫瘍免疫の賦活を誘導する。類似技術として、遠心分離法によるリンパ球除去療法と吸着法による白血球除去療法、顆粒球除去療法などが挙げられる治療サイタフェレ―シス(Therapeutic cytapheresis)があり、これらはいずれも採用することができる。この技術は、炎症抑制を目的とする、主に細胞障害性の活性化好中球成分除去の側面もある。活性化好中球を除去した結果、炎症性サイトカインの低下を得ることができる。加えて、本開示の原料採取時のアフェレーシスおよびその後のリンパ球除去用アフェレーシスは、遠心分離法によって樹状細胞の原料である単球を採取する際に、同時に109細胞レベルのリンパ球を除去することができる。この結果、がん患者の免疫寛容状態を構成するTregなどのリンパ球を除去し、抗腫瘍免疫の賦活を誘導することができる。このようなある意味での併用を狙った療法も本開示の範囲内にある。
【0083】
一局面において、本開示は、成人T細胞白血病(ATL)患者を治療する方法であって、
1)被験者から血液試料を得る工程と
2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、
3)該血球濃度が所定値より低い場合、被験者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程と
を含む、方法であって、
該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、
方法を提供する。この治療は予防にも使用されうる。
【0084】
一部の実施形態において、前記所定値はバフィーコートをとるための値であってもよい。一部の実施形態において、前記血球濃度は採取プレファレンスを参照して調整されてもよい。一部の実施形態において、前記採取プレファレンスは、60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]より高い値に設定される。一部の実施形態において、前記採取プレファレンスは、60-[(0.2×白血球数(1000/μl))+(0.08×血小板数(1000/μl)]+10~20に設定される。一部の実施形態において、前記採取プレファレンスの所定値は、30~50である。一部の実施形態において、前記採取プレファレンスは、所定値より10~30高く設定される。好ましい実施形態において、前記採取プレファレンスは、所定値より20~30高く設定される。一部の実施形態において、前記採取プレファレンスは40~80(あるいは、下限は50、60等の中間の値でよく、上限も60または70等の中間の値でもよい。)に設定される。
【0085】
別の実施形態では、本開示の方法では、血液試料を得る工程は、単球を取り出す工程と、リンパ球を取り出す工程とを含む。リンパ球を取り出す工程は任意の時間継続し得るが、好ましくは20分以上、さらに好ましくは30分以上行うことが有利である。一部の実施形態では、リンパ球を取り出す工程は、前記採取プレファレンスを30~50に設定して実施されてもよい。
【0086】
あるいは、別の実施形態では、本開示の方法では、単球を取り出す工程は、本明細書に記載された単球の処理に関する任意の特徴またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0087】
別の局面において、本開示は、成人T細胞白血病(ATL)患者を治療する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該方法は、1)該患者から血液試料を得る工程と2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程とを含み、該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、プログラムを提供する。ここで使用される方法は、本明細書の他の個所に記載される任意の更なる特徴またはその組み合わせを含みうる。
【0088】
さらに別の局面において、本開示は、成人T細胞白血病(ATL)患者を治療する方法をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体であって、該方法は、1)該患者から血液試料を得る工程と2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程とを含み、該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、記録媒体を提供する。ここで使用される方法は、本明細書の他の個所に記載される任意の更なる特徴またはその組み合わせを含みうる。
【0089】
さらに別の局面において、本開示は、成人T細胞白血病(ATL)患者を治療するためのシステムであって、1)該患者から血液試料を得る試料取得部と2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する測定部と、3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る同等試料取得部とを含み、該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、システムを提供する。ここで採用される各種部分または構成要素は、本明細書の他の個所に記載される任意の更なる特徴またはその組み合わせを含みうる。
【0090】
さらに別の局面において、本開示は、成人T細胞白血病(ATL)患者を治療するためのシステムの作動方法であって、該システムは、1)該患者から血液試料を得る試料取得部と2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する測定部と、3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る同等試料取得部とを含み、該方法は、1)該患者から血液試料を得る工程と2)該血液試料おいて、血球濃度を測定する工程と、3)該血球濃度が所定値より低い場合、該患者から血球濃度が所定値と同等の血液試料を得る工程とを含み、該患者は、該ATLを治療するための樹状細胞製剤を取得するために、アフェレーシスを受ける患者である、方法を提供する。ここで採用される各種部分、構成要素または方法は、本明細書の他の個所に記載される任意の更なる特徴またはその組み合わせを含みうる
【0091】
(他の実施の形態)
本開示の1つまたは複数の態様に係る判定方法および解析方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0092】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上
」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0093】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0094】
本実施例では、本開示の単球の純化の方法およびその後樹状細胞の誘導、Taxペプチドパルスを行って製剤化する一連の実験を説明し、その中で、特徴的である単球の純化について詳述する。以下の実施例では、ヘルシンキ宣言などの医療的な倫理規定、GCPなどの規則、ならびに、国立病院機構その他で規定される規定を遵守し、発明者が所属する組織に関係する倫理委員会の承認のもとで行った。必要なインフォームドコンセントを取得した上で以下の実験を行った。
図14に、本実施例で検討した代表的な単球純化の方法の模式図を示す。このうち、いくつか(例えば、凍結、融解、比重遠心分離)は任意工程であり、割愛してもよいことが理解される。
【0095】
(実施例1:アフェレーシスの実施)
本実施例では、アフェレーシスの改良を試みた。以下に手順を示す。
【0096】
(プロトコール)
・アフェレーシスの実施に際しては、ドナーの健康状態を第一に考え、一般臨床医療と同様の医学的対応を行った。
・事前にドナーより採血を行い、血算および機械分類を測定しておいた。
・機器はSpectra Optia (テルモBCT)を使用した。
・プログラムはMNCプログラムとした。
・脱血用および返血用に末梢静脈路を2ルート確保した。
・採取条件は以下のとおりとした。
採血流量 40ml/h以下
血漿量 最終検体が約200mlとなるように調整
採血量:ACD-A液量比 12:1
採取プリファレンス 自動設定値+10~20
※自動設定値=60-(0.2x白血球数[10^3/μl])-(0.08x血小板数[10^3/μl])≒30
全血処理量 赤血球検出の処理量 約7200ml
・採取終了後は、採取検体より約1mlのサンプルを採取し、血算および機械分類を測定した。
【0097】
(凍結処理)
<準備物品>
検体(PBMC採取バッグ)
ダブル分離バッグ(カワスミ血液分離用バッグ KBP-66DC) 1個
コッヘル、チューブシーラー、ローラベンチ
無菌接合機(TSCD)
ACD-A液 500mL(使用量は少量)
献血アルブミン20%静注10g/50mL(JB) 1個
CP-1 40ml 1個(正晃)
フリーズバッグ(ニプロフローズバッグ F-100) 1個
エタノールスプレー
黄色ガウン、帽子
PBMC凍結工程記録書。
【0098】
(1.移し替え)
(1)ダブルバッグへの移し替え
1.ビニール袋を開ける前に、ダブル分離バッグの針部分を袋の上からコッヘルで止め、ビニール袋を開けて、チューブシーラーで針に近い部分で切り離した。
【0099】
2.ダブル分離バッグの親バッグと子バッグの間をクレンメで止めた。
【0100】
3.コッヘルで止めたPBMC採取バッグとダブル分離バッグをTSCDで接合した。
【0101】
4.採取バッグ内のPBMC液をダブル分離バッグに移した。
【0102】
5.チューブシーラーでシールして(チューブは長めに残しておく)採取バッグを切り離した。
【0103】
いつでもPBMCの入ったバッグはチューブ類をクレンメで止めておくよう留意した。
【0104】
(2)ACD-A液の添加(凝集の発生を予防するため)
(i)PBMCのバッグ込み重量を測定した。
【0105】
(ii)ACD-A液の添加量を計算する(PBMC内容量に対して2%w/w)。
【0106】
(iii)ダブル分離バッグとACD-A液バッグをTSCDで接続した。バッグ根元にはクレンメを配置した。
【0107】
(iv)秤で重量を確認しながら、計算量のACD-A液を添加した。
【0108】
(v)セグメント5本分の位置において、チューブシーラーでシールしてACD-A液バッグを切り離した。
【0109】
(vi)ACD-A液をよく混和した後に、ダブル分離バッグのチューブをローラベンチで数回ローリングし、CBC用にセグメント1個分を切り離した。
【0110】
(vii)セグメントを切り離したのち重量を測定し、実際のACD-A液添加量を記録した。
【0111】
(2.血算)
(1)セグメント内の血液をサンプルチューブに移した。
【0112】
(2)CBCおよび機械分類を測定した。
【0113】
(3.凍結バッグ数の決定・容量の調整)
(1)凍結バッグ数
凍結バッグ数=2
容量調整後のバッグ込みの重量(目標)=50g+35g=85g
(2)容量の調整
(i)容量が多い場合は遠心する。1200rpm (370G)、12min、10℃、Acce19、Dece16。バッグごとエアクッションで保護して、バッグがねじれないように遠心機へセットした。
【0114】
(ii)遠心分離後、PBMCバッグを分離スタンドに挟み、上清部(PRP)を子バッグに移注する。
【0115】
沈殿部分の有核細胞が入らないように注意。
【0116】
バッグはシール側が裏になるようにセットしないと内容が見えない。
【0117】
(iii)PBMCバッグを秤に載せ、重量を測定しながらPRPを戻し、目的の重量に調整した。
【0118】
(4.必要物品の消毒)
(i)ACD-A液、分離バッグ(ビニール袋の上からクランプ2か所を閉めておく)、CP-1、アルブミン、分離バッグ(カワスミKBP-66DC)、凍結バッグ(ニプロF-100)、連結管(カワスミT-8)、20mlシリンジ、アルコール綿と、先ほど調整したPBMCバッグをエタノールスプレーで1度消毒を実施した(安全キャビネットには入れない)。
【0119】
(ii)黄色ガウンと帽子を着用
清潔操作となるので黄色ガウンと帽子を着用し、清潔を保つため、その姿では調整室から出ないよう注意した。
【0120】
(iii)再度必要物品の消毒
上記で消毒した必要物品はすべて乾いてから、再度エタノールスプレーで消毒しながら、安全キャビネットに入れるよう注意した。
【0121】
(iv)滅菌手袋の装着
滅菌手袋を装着し、安全キャビネットの中に手を入れて作業した。
【0122】
1度手を出すと滅菌では無くなるので作業が終了するまでは手を出さないよう注意した。
【0123】
(5.安全キャビネット内での操作)
(1) 凍害保護液の準備
(i)CP-1とアルブミンは、プラキャップをはずして上部をアルコール綿で消毒した後、エア針を刺した。
【0124】
(ii)20%アルブミンを16mlシリンジにとった。
【0125】
(iii)50ml用CP-1 (34mL) に20%アルブミン16mlを添加した。
【0126】
(iv)泡立たないように転倒混和した。
【0127】
*CP-1とアルブミンを混和した際の発熱に備えて、保冷剤で冷却しながら行った。
【0128】
(2)凍害保護液の添加
(i)連結管を袋から出し、クランプを閉じた。
【0129】
(ii)凍結管の輸血口用プラスティック針(薄黄色)をPBMCバッグにスパイクした。
【0130】
(iii)連結管のゴム専用プラスティック針(白色)をボトルホルダーにセットした凍害保護液のゴムキャップにスパイクした。
【0131】
(iv)凍害保護液のボトルホルダーを安全キャビネットのフックにかけ、連結管のクランプを開けた。ローラベンチで流出を促す。ボトルホルダーを捨てないように注意した。
【0132】
バッグは保冷剤で挟み、冷却混和しながら、凍害保護液を規定量ゆっくり入れた(総量200mLで10分、100mLで5分を目安とした)。
【0133】
後の作業でチューブ内の液を押し出すためのエアーも少し入れておいた。
【0134】
凍害保護液を入れた後は、作業は冷却下で迅速に行わないと細胞が死滅してしまうため留意した。
【0135】
(3)フリージングバッグへの移注
(i)2つのフリージングバッグにそれぞれ原料番号+「(1)」、原料番号+「(2)」と記入した。
【0136】
(ii)2つのフリージングバッグのチューブの端をチューブシーラーで切った。
【0137】
PBMCバッグと2つのフリージングバッグをTSCDで接続した。
【0138】
(iii)フリージングバッグのクレンメを開け、PBMCをフリージングバッグへ移注した。
【0139】
(iv)フリージングバッグのエアを元のバッグに移してエア抜きを実施した。エア混入はバッグ破損の原因となるので、できる限りエアは抜いた。
【0140】
バッグが2-3個の場合は、できるだけ等量になるように工夫するが、時間がかからないようにした。
【0141】
(v)セグメント2個分PBMCをチューブに戻し、チューブシーラーでPBMC本体は、黒ラインの間で留め、CBC用と保存用にセグメント2本作った。
【0142】
(vi)CBC測定した。
【0143】
(vii)フリージングバッグの重量を測定した。
【0144】
(viii)1バッグずつアルミプロテクターに入れ、原料番号を記載したシールで封をする。解凍時に剥がしやすくするために、シール端は折り返しをつけた。
【0145】
(6.凍結)
(1)プログラムフリーザー(CRYOMED Freezer[Thermo SCIENTIFIC])で以下のプログラムにて凍結処理を行った。
1 Sample=4℃までchamber=2℃で待機
2 Sample=-4℃まで1℃/minで調整
3 Chamber=-70℃まで60℃/minで調整
4 Chamber=-15℃まで20℃/minで調整
5 Sample=-40℃まで1℃ずつ冷却
6 Sample=-80℃まで1℃ずつ冷却
7 End
【0146】
(2)凍結検体の保存
プログラムフリーザーでの凍結が終了したら、チャンバーから凍結バッグ入りプロテクターを取り出し、液体窒素タンクに入れて保存した。
【0147】
液体窒素タンクに掛けている「細胞治療科保存検体リスト(臨床研究)」に情報を記入した。
【0148】
(結果)
以下に試料中の単球純化の程度などを示す表を提示する(表中、Moは単球、Lyはリンパ球、PBMCは末梢血単核球、Neutは好中球、Htはヘマトクリット値、Pltは血小板、Ptは患者を示す。)。
【0149】
以下の表に記載されるデータのうち、以下の表示はそれぞれ、右の説明に記載されるものに該当する。
ComTec:従来法によって原料採取および凍結保存を実施したデータ
Optia:本開示の方法によって原料採取および凍結保存を実施したデータ
HD23:実施例1のデータ
HD24:実施例2のデータ
apheresis採取検体:原料採取工程にて採取した検体
凍結保存検体:凍結保存工程における凍結直前の検体([0133]の(3)(v)に該当)
【表1-1】
【0150】
【表1-2】
【0151】
上記のように、実施例1(HD23)では、本開示の方法を用いて単球純度が30%程度になった。また、Ht(ヘマトクリット値)及びPlt(血小板)が従来法よりも減少した。
【0152】
実施例1では、採取プレファレンスは通常通りの値から始めた。(下記表2、ACはACD-Aを示し、Hctはヘマトクリット値、TBVは循環血液量を示す。)
【0153】
【表2】
【0154】
本実施例の結果から、アフェレーシス(比重分離のみ)実施した場合に比べ、比重およびサイズによる分離を組み合わせたところ、10%程度であった単球純度が、約30%にまで上昇することが確認された。
【0155】
なお、スピルオーバー処理を行うと純度が上昇する傾向がみられた。
【0156】
下記に示すように、凍結保護剤処理、死細胞処理、リンパ球および血小板除去(OptiPrep)処理も行うと、純度はさらに上昇した。
【0157】
(実施例2:アフェレーシスの更なる改良)
【0158】
実施例1と同様にアフェレーシスを行った。
【0159】
実施例2では、実施例1と同様のプロトコールを用いたが、採取プレファレンス値を自動設定値より20高く設定した。
【0160】
(結果)
本開示の方法(採取プレファレンスを通常値より高く設定すること、比重及びサイズによる分離を実施すること)によって単球の純度が顕著に上昇することが分かった(約40%)(表1)。
【0161】
(実施例3:DNaseの処理)
本実施例では、実施例1において凍結保存した凍結保存原料を用いてTax特異的樹状
細胞の試験製造を実施したが、DNaseの処理を行ったものと行わないものとを用意した。
【0162】
(プロトコール)
(目的)
・製造工程初日(Day0)に発生する凝集塊によって単球回収率や単球純度が低下している可能性がある。本実施例では、DNase(プルモザイム)添加有りと添加無しの2群に分けて実施し、ATL-DCの回収率や品質を比較検証した。
【0163】
(使用原料)
内容量は約50mL、通常製造のハーフスケール
<採取、凍結日> 2020年1月27日
<アフェレーシス機器> Spectra Optia (テルモBCT)
<ドナー> 健常人(HD23)
<採取条件>
・単核球採取(MNC collection)プロトコルを用いた。
・ACD-A液の使用量は、血液処理量:ACD-A液=12:1とした。
・1サイクル当たりの処理血液量は、チャンバー内への血球の充填量によってサイクルごとに決定した。
・サイクル間に全血算測定を行い、単球としてlxl0^9個を目標に全血液処理量を決定した。採取検体には血漿を加えて約200mLに調製した。
<凍結条件>
・日常診療における造血幹細胞移植の患者およびドナーの末梢血造血幹細胞の凍結保存方法に準じて実施した。(ACD-A液を2%(W/W)添加した。遠心分離を行って上清を除去し、容量を50mLに調製した。50mLのCP-1/HSA混合液を添加し、2個のフローズバッグに分注した。プログラムフリーザーを用いて-80℃以下まで冷却後に、液体窒素タンクにて保存した。)
<採取・凍結時の全血算データ>
【0164】
【表3】
【0165】
(方法)
原料の解凍洗浄工程を以下のようにDNase添加ありと添加なしの2群に分け、その
後2群の細胞を別々にTax特異的樹状細胞の試験製造工程にかけた。本実施例における
製造工程の一部(原料の解凍洗浄工程)を図12に示す。方法の詳細は実施例4に記載した通り。
【0166】
なお本実施例では、解凍洗浄工程に使用する培地のpH調整(大気下でのガス交換による酸の中和)を実施せず。Opti-Prep重層前、フラスコ播種前に細胞を十分に懸濁するために10mLピペットを用いてピペッティングを行った。
【0167】
(結果)
結果(表4及び表5)より、DNase処理の有無の両条件にて得られたそれぞれのDCの収量、生細胞率及び表面形質には顕著な差を認めず、投与可能なDCを製造することが可能と考えられた。
【0168】
(実施例4:凍結保護剤を用いた単球純化の改善)
本実施例では、凍結保護剤を用いた場合の単球の純化の改善を調べた。
【0169】
(材料および方法)
(試薬の調製)
以下に従って、試薬を調製した。
【0170】
Day 0
((0)試薬の準備)
必要量
RPMI1640:500mlボトル 5本
PBS :500mlボトル 1本、OptiPrep希釈用 106.5ml
25%HSA :90ml
ACD-A液 :60ml
OptiPrep:30ml
【0171】
(試薬の調製)
以下のように、工程(1)解凍・洗浄(2)分離と培養に必要な試薬を調整した。
※以下の試薬は、クリーンベンチ内で無菌的に調整するよう留意した。
【0172】
(Medium(1)(洗浄用)の調製)
Medium(1)(洗浄用):5.5%ACD-A/1%HSA/RPMI1640
RPMI1640 500mlのボトルにACD-A液30mlを添加した後、25%HSA20mlを添加した。
【0173】
ACD-A液 30ml
RPMI1640 500ml/Total 530ml×2本

25%HSA 20ml/Total 550ml×2本

RPMI1640が入っていた500mlボトルに以下のように移し、密閉して運搬した。
(1)560ml→38℃用
(2)540ml→室温用
【0174】
(Medium(2)(洗浄・培養用)の調製)
Medium(2)(洗浄・培養用):1%HSA/RPMI1640
RPMI1640 500mlのボトルに25%HSA 20mlを添加した。
【0175】
25%HSA 20ml
RPMI1640 500ml/Total 520ml×2本

洗浄用として1本は室温のまま、もう一本は分離用として4℃で保冷しておいた。
【0176】
(分離液(比重:1.075)の調製)
OptiPrep比重液を以下のように225ml遠沈管に調整した。
【0177】
※調整前に、OptiPrepは室温に戻しておいた。
【0178】
比重:1.075→PBS 106.5ml+OptiPrep 30ml
※OptiPrepは粘度が高いので、分取する際は注意して正確に行うこと
※ピペット内部にOptiPrepが残らないようにピペッティングすること

穏やかに転倒混和し、50ml遠沈管8本に15mlずつ分注した。
【0179】
(洗浄用PBSの調製)
洗浄用PBS:0.5%HSA/PBS(4℃で保冷しておく)
PBS 500mlのボトルに25%HSA 10mlを添加した。
25%HSA 10ml
PBS 500ml/Total 510ml×1本
【0180】
(フラスコ洗浄用RPMI1640)
フラスコのインキュベート開始時にRPMI1640 500mlのボトルをそのまま37℃(インキュベーター内)で温めておいた。
【0181】
((1)凍結検体の解凍・洗浄工程:プルモザイム処理あり)
以下に凍結保護剤を用いた処理方法を記載する。
【0182】
Day 0
(1.機器の準備)
Water bathを38℃に温めた。
遠心機の設定(遠心特性設定を確認)を行った(バランスの作成も行う)。
セルカウンターの設置
(2.遠沈管の準備)
225ml遠沈管5本に「A」「B」「C」「(9)S」「(9)P」、50mL遠沈管1本に「D」とラベルを付けて準備した。
別に廃液用ボトルも準備した。
【0183】
(3.試薬の準備)
上記工程で調製したMedium(1)(560mlボトル)を以下のように分注した。
【0184】
Medium(1):5.5%ACD-A/1%HSA/RPMI1640
225ml遠沈管2本(A、B)に180mlずつ
225ml遠沈管1本(C) に160ml
50ml遠沈管1本(D) に40ml(共洗い用)
分注し、Water bath温めておいた。
【0185】
ボトル残り1本(540ml)は室温のままおいておいた。
【0186】
Medium(2):1%HSA/RPMI1640
洗浄用として1本は室温のまま、もう一本は分離用として4℃で保冷しておいた。
【0187】
(4.サンプルチューブ準備)
サンプリング、カウントに使用するエッペンチューブを準備した。
【0188】
(5.Mediumの準備 5.5% ACD-A)
温めておいたMedium(1)(A、B、C、D)を全て取り出した。
【0189】
(6.凍結検体の準備)
フローズバッグ(凍結アフェレーシス検体)を液体窒素から取り出した。
【0190】
(7.凍結検体の解凍)
フローズバッグを38℃Water bathで速やかに解凍した(約2分)。
【0191】
(8.細胞の回収1回目)
フローズバッグをクリーンベンチに入れて、接続部が不潔にならないよう(宙に浮くようにして)バッグスパイクと50mlシリンジを接続して回収した。(1回目)
【0192】
(9.細胞の分注、Wash 1回目)
1回目の回収液量を測定し、225ml遠沈管(A、B、C:Medium(1))に3等分して分注した。
【0193】
1回目の回収液量:40ml(約13mlずつ)
【0194】
(10.細胞の分注、Wash 1回目)
50mLシリンジに18G針を接続して、50ml遠沈管(D)よりMedium(1)を22ml分取した。
【0195】
(11.細胞の回収、2回目)
再度フローズバッグへ接続し、バッグ内に残った細胞を洗い回収した。(2回目)
【0196】
(12.細胞の回収、2回目)
2回目の回収液量を測定し、225ml遠沈管(C)に添加した。
【0197】
2回目の回収液量:24ml(遠沈管Cには原料が約15ml添加された計算となる)
【0198】
(13.細胞の回収、2回目)
遠沈管に蓋をして、数回転倒混和した。
【0199】
(14.検体の遠心分離、1回目)
遠心分離(20℃,350×g,5分, ブレーキ2)を行った。
【0200】
(15.上清の除去)
上清を除去した(50mlピペット)。廃液は廃液ボトルに廃棄した。
【0201】
この時、細胞のロスを減らすために上清を約10ml程度残しておくことに留意した。
【0202】
(16.細胞の懸濁)
遠沈管の底をチューブ立てに当て、横に滑らせてペレットをほぐした。
【0203】
これ以降の作業は、以下のように条件を分けて別々に作業を行った。
【0204】
225ml遠沈管A →プルモザイム処理あり
225ml遠沈管B、C →プルモザイム処理なし
【0205】
(プルモザイム処理あり)
以下、プルモザイム処理ありの工程を引き続き行った。
【0206】
(17.225ml遠沈管A)(プルモザイム処理あり)
室温Medium(1)を20ml(25mlピペット)加えてsuspendした。
【0207】
(18.wash2回目 5.5%ACD-A)(プルモザイム処理あり)
室温Medium (1)で200mlまでメスアップ(50mlピペット)して3回程度、転倒混和した。
【0208】
ここで凝集塊の有無を確認し、凝集塊がないことを確認した。
【0209】
(凝集塊の有無に関わらず、工程21以降の遠心・上清除去後細胞懸濁液のプルモザイム処理を行う。)
【0210】
(19.検体の遠心分離、2回目)(プルモザイム処理あり)
遠心分離(20℃,300×g,5分, ブレーキ2)を行った。
【0211】
(20.上清の除去)(プルモザイム処理あり)
残液が約5mlとなるように上清を除去した(50mlピペット)。
【0212】
廃液は廃液ボトルに廃棄した。
【0213】
(21.細胞の懸濁)(プルモザイム処理あり)
遠沈管の底をチューブ立てに当て、横に滑らせてペレットをほぐした。
【0214】
(21.1.プルモザイム処理)(プルモザイム処理あり)
残液で細胞を懸濁し(10mlピペット)、懸濁液量を計測した。
【0215】
懸濁液量:2.5ml
→5ml-懸濁液量:2.5ml=添加量:2.5ml
(足りない場合はMedium(1)を添加量分加える)
【0216】
(21.2.プルモザイム処理)(プルモザイム処理あり)
プルモザイム(2.5mg/2.5ml)を1ml添加した。
【0217】
(21.3.プルモザイム処理)(プルモザイム処理あり)
チューブを揺らしながら、15分間反応させた。
【0218】
(22.wash3回目、1%HSA/RPMI)(プルモザイム処理あり)
室温Medium(2)を20ml(25mlピペット)加えてsuspendした。
【0219】
室温Medium(2)を175ml加えて200mlまでメスアップ(50mlピペット)し、3回程度、転倒混和した。
【0220】
(23.サンプリング)(プルモザイム処理あり)
懸濁液をサンプリングした(サンプル(8)P)(細胞数カウントのみ)。
【0221】
→エッペンチューブ(×5希釈用)に10μl分取。
【0222】
(24.検体の遠心分離、3回目)(プルモザイム処理あり)
遠心分離(20℃、300×g、5分、ブレーキ2)を行った。
【0223】
(25.1.細胞のカウント)(プルモザイム処理あり)
遠心分離中にサンプル(8)Pの細胞数のカウントを行った。
【0224】
結果は、細胞数記録表に記録して細胞数を計算した。
【0225】
サンプル(8)Pの生細胞数:3.0×10個…[A]
【0226】
(25.2.試薬・機器の準備)(プルモザイム処理あり)
工程24の遠心終了後、遠心機のブレーキの設定をOFFに変更し、4℃に設定して冷やした。
【0227】
(25.3.Medium準備、1%HSA/RPMI)(プルモザイム処理あり)
4℃で冷やしておいた冷Medium(2)(500mlボトル)を準備した。
【0228】
(26.上清の除去、サンプリング)(プルモザイム処理あり)
上清を除去した(50mlピペット)。
【0229】
(ここでは、1回目のwashよりも上清を除去して良い(約5ml程度))
→上清は225ml遠沈管((9)P)に回収した(FCMのみ)。
【0230】
(27.細胞の懸濁)(プルモザイム処理あり)
遠沈管の底をチューブ立てに当て、横に滑らせてペレットをほぐした。
【0231】
残液で細胞を懸濁し(10mlピペット)、懸濁液量を計測した。
【0232】
懸濁液量:4.0ml…[B]
【0233】
(28.懸濁液量の計算)(プルモザイム処理あり)
カウント結果より、細胞の懸濁液量を以下の式より算出し、細胞濃度を調整した。
【0234】
(1)(8)Pの細胞数が4x10^8個未満であるため、懸濁液量は20mlとした。
【0235】
(2)[C:20ml]-[B:4.0ml]=添加量:16.0ml…[E]
【0236】
(29.懸濁液の調製)(プルモザイム処理あり)
工程27(細胞の懸濁)の細胞懸濁液に冷Medium(2)を添加量16.0ml加え、10mlピペットを用いてピペッティングした。
【0237】
(30.サンプリング)(プルモザイム処理あり)
細胞懸濁液をサンプリングした(サンプル(10)P)(細胞数カウント、FCM用)。
【0238】
→15ml遠沈管(×20希釈用)に0.5ml分取
Optiprepでの分離に必要な50ml遠沈管の本数を確認した(分離本数:1本)

「(2)未熟樹状細胞の調整」の工程へ進む
重層するまでの間、細胞懸濁液は4℃で静置した。
【0239】
(プルモザイム処理なし)
工程17以降は以下のようにしてプルモザイム処理なしの工程を引き続き行う。
【0240】
(17.225ml遠沈管B、C)(プルモザイム処理なし)
室温Medium(1)を20ml(25mlピペット)加えてsuspendした。
【0241】
2本の遠沈管(B、C)の懸濁液を225ml遠沈管(C)1本にまとめた。この際、室温Medium(1)を20ml用いて遠沈管を共洗いした。
【0242】
(18.Wash2回目、5.5%ACD-A)(プルモザイム処理なし)
室温Medium(1)で200mlまでメスアップ(50mlピペット)して3回程度、転倒混和した。
【0243】
(19.検体の遠心分離、2回目)(プルモザイム処理なし)
遠心分離(20℃,300×g,5分, ブレーキ2)を行う。
【0244】
(20.上清の除去)(プルモザイム処理なし)
上清を除去した(50mlピペット)。廃液は廃液ボトルに廃棄した。
【0245】
残液が約5mlとなるように上清を除去したる(50mlピペット)。
【0246】
(21.1.細胞の懸濁、1%HSA/RPMI)(プルモザイム処理なし)
遠沈管の底をチューブ立てに当て、横に滑らせてペレットをほぐした。
【0247】
(21.2.細胞の懸濁、1%HSA/RPMI)(プルモザイム処理なし)
室温Medium(2)を20ml(25mlピペット)加えてsuspendした。
【0248】
懸濁液量を計測した。懸濁液量:27.5ml
【0249】
(21.3.細胞の懸濁、1%HSA/RPMI)(プルモザイム処理なし)
室温Medium(2)を120ml添加(50mlピペット)して凝集塊の有無を確認した。(凝集塊:なし)
【0250】
(22.Wash3回目、1%HSA/RPMI)(プルモザイム処理なし)
室温Medium(2)を52.5ml加えて200mlまでメスアップ(50mlピペット)して、ピペッティングにて細胞を懸濁した。
【0251】
(23.サンプリング)(プルモザイム処理なし)
懸濁液をサンプリングした(サンプル(8)S)(細胞数カウントのみ)。
【0252】
→エッペンチューブ(×5希釈用)に10μl分取
【0253】
(24.検体の遠心分離 3回目)(プルモザイム処理なし)
遠心分離(20℃、300×g、5分、ブレーキ2)を行った。
【0254】
(25.1.細胞のカウント)(プルモザイム処理なし)
遠心分離中にサンプル(8)Sの細胞数のカウントを行った。
【0255】
結果は、細胞数記録表に記録して細胞数を計算した。
【0256】
サンプル(8)Sの生細胞数:5.0×10個…[8S]
【0257】
(25.2.試薬・機器の準備)(プルモザイム処理なし)
工程24の遠心終了後、遠心機のブレーキの設定をOFFに変更し、4℃に設定して冷やした。
【0258】
(25.3.Medium準備、1%HSA/RPMI)(プルモザイム処理なし)
4℃で冷やしておいた冷Medium(2)(500mlボトル)を準備した。
【0259】
(26.上清の除去、サンプリング)(プルモザイム処理なし)
残液が約5mlとなるように上清を除去した(50mlピペット)。
【0260】
→上清は225ml遠沈管((9)S-1)に回収した(FCM)。
【0261】
(27.細胞の懸濁)(プルモザイム処理なし)
冷Medium(2)を20ml(25mlピペット)加えてsuspendした。
【0262】
懸濁液量を計測した。
【0263】
懸濁液量:28ml…[B]
【0264】
(28.懸濁液量の計算) (プルモザイム処理なし)
カウント結果より、細胞の懸濁液量を以下の式より算出し、細胞濃度を調整した。(「プルモザイム処理あり」と同じ細胞濃度となるように調整した)
(1)[8S:50×10^7個]/[1.5×10^7個/ml]=33ml…[C:細胞懸濁液総量]
(2)[C:33ml]-[B:28ml]=添加量:5ml…[E]
【0265】
(29.懸濁液の調製)(プルモザイム処理なし)
工程27(細胞の懸濁)の細胞懸濁液に冷Medium(2)を添加量5ml加え、10mlピペットを用いてピペッティングを行った。
【0266】
(凝集塊の処理)
工程29において、大きな凝集塊を認めたため、以下の作業を行った。
【0267】
50ml遠沈管に室温Medium(2)を20ml加えておいた。
10mlピペットで凝集塊のみを採取して50ml遠沈管に移し、凝集塊をsuspendしてほぐした。
【0268】
30秒程静置して、残った凝集塊が自然に沈むのを待った。
【0269】
大きな凝集塊が入らないように上清を回収し、工程29の細胞懸濁液へ戻した。
【0270】
(30.サンプリング)(プルモザイム処理なし)
細胞懸濁液をサンプリングした(サンプル(10))(細胞数カウント、FCM用)。
【0271】
→15ml遠沈管(×20希釈用)に0.5ml分取
Optiprepでの分離に必要な50ml遠沈管の本数を計算した。
【0272】
[C:33ml]/20ml=分離本数:2本
(1本目に20mlを重層後、残液を20mlにメスアップしてから2本目に重層した)

「(2)未熟樹状細胞の調整」の工程へ進む
【0273】
(結果)
本実施例において、凍結保護剤(CP-1)を利用することによって、アフェレーシス直後で約30%であった単球純度が、解凍洗浄工程後に約50%に上昇した。さらに、比重遠心分離工程後に、単球純度が約70%まで上昇した(表4)。
【0274】
【表4】

【0275】
*解凍洗浄およびOptiPrep後のサンプルは、5~22μmにゲーティングし、Taxパルス前および最終凍結前のサンプルは7~22μmにゲーティングした。
【0276】
DNase添加無し群では、Day0の製造工程において凝集塊が発生したが、DNase添加有り群では、添加処理後には凝集塊が発生しなかった。また両群において、Day0の単球のフラスコへの接着、Day7に回収したDCの純度・表面形質に明らかな差を認めなかった。
【0277】
今回のSpectra Optiaを用いた採取条件では、目的の細胞である単球を十分に採取可能であり、リンパ球、赤血球、血小板などの混入を軽減することができた。これらの目的外の細胞の混入を減らすことでATL-DC回収率や品質の向上につながると考えられる。
【0278】
今回の検証では、解凍洗浄工程に用いる洗浄液のpH調整を実施しなかったが、フルスケール製造に換算した場合に投与可能となるDCの収率が得られ、DCの純度も良好であった(表5)。
【0279】
【表5】
【0280】
(実施例5:Day0単球・リンパ球解析)
本実施例は、以下の通り行った。
【0281】
(染色)
1.1%FBS/PBSにて懸濁し、1x10^7/mL程度に調整した。
2.FACS Tubeに抗体を分注し、細胞懸濁液を100μLずつ添加した。
3.20min、氷上で遮光にてインキュベートした。
4.冷PBSを4mLずつ添加し、440g、6min、4℃で遠心した
5.デカントにて上清除去し、1%FBS/PBS適量(250μL以上)にて細胞を懸濁した。
6.測定まで、氷上、遮光で保管後、フローサイトメトリーに供した。
抗体による染色は図13に示す通り行った。
【0282】
(結果)
結果を図1~4に示す。図1~2はプルモザイム処理あり、図3~4はプルモザイム処理なしの試料のDay0の単球・リンパ球解析の結果である。図1および3は、OptiPrep前の試料、図2および4はOptiPrep後の試料である。
【0283】
(実施例6:最終凍結前検体のDC解析)
本実施例は、以下の通り行った。
【0284】
(抗体分注)
1)染色用のFCMチューブを18本に、「P、S」(2通り)-「1~9」(9通り)のラベルを作成して貼った。
2)抗体mix作成用のFCMチューブ9本「Ab1~9」に、各Stainの抗体mixを作成した。
3)軽くボルテックスして混和した。
4)各Stainの抗体を各チューブに分注した。
5)使用するまで、遮光して4℃にて保管した。
【0285】
(染色)
1)回収した細胞懸濁液(2x10^6cells程度)を受け取った。
2)1% FBS/PBSを添加し全量を10mlにして混和した。
3)遠心分離(4℃, 400g, 5分)した。
4)上清を除去した。
5)1% FBS/PBSを700μl添加し、ピペッティングしてペレットを懸濁した。
6)ボルテックスにて混和した。
7)抗体を分注したFCMチューブに細胞懸濁液を50μlずつ分注した。
8)ボルテックスにて混和した。
9)4℃、遮光にて30分間インキュベートした。(15分の時点で軽くボルテックスした。)
10)1% FBS/PBS2mlを加えて、ボルテックスにて混和した。
11)遠心分離(4℃、400g、5分)した。
12)デカンテーションにて上清を除去した。
13)1% FBS/PBSを400μlずつ添加して、ボルテックスにて混和した。
14)測定まで4℃、遮光にて保管した。
【0286】
(結果)
図5~7は、プルモザイム処理ありの種々の抗体を用いて得られた樹状細胞の特性を確認したものである。図5~7は、各々のマーカーに対する抗体を用いたFCMを示す。
【0287】
図8~10は、プルモザイム処理なしの種々の抗体を用いて得られた樹状細胞の特性を確認したものである。図8~10は、各々のマーカーに対する抗体を用いたFCMを示す。
【0288】
(実施例7:パルス細胞の製造までのフロー)
ATL-DC製造工程フローを以下に示す。
【0289】
以下のフローの一部は上述したものであり、樹状細胞の分化以降については、簡潔に示す。
【0290】
(プロトコール)
Day0
(1)解凍洗浄工程
・38℃恒温槽で凍結保存検体を解凍する。
・ACD-A/HSA含有RPMI-1640を用いる洗浄工程(2~3回)
・HSA含有RPMI-1640を用いる洗浄工程(0~1回)
・洗浄工程におけるプルモザイムによる凝集塊の懸濁
・HSA含有RPMI-1640 を用いた細胞懸濁液の作製工程

(2)比重遠心分離工程
・OptiPrepを用いた単球/リンパ球分離工程
・HSA含有RPMI-1640を用いた単球懸濁液の作製工程

(3)接着処理工程、培養開始
・T-175フラスコにて、AZT存在下で120分間静置
・非接着細胞の回収と接着細胞の洗浄工程
・樹状細胞への分化工程:GM-CSF、IL-4、AZTを添加したHSA含有RPMI-1640を用いて5日間培養

Day5
・KLHパルス工程
・KLH、TNF-α、GM-CSF、AZT、HSAを含有したRPMI-1640を添加して1日間培養
Day6
・OK432()処理工程:
・ピシバニール/抗悪性腫瘍溶連菌製剤であるOK432を培養液中に添加し、更に1日間培養

Day7
・成熟樹状細胞の回収工程
・Taxペプチドパルス工程(室温22±3℃, 90分間)
・遠心による洗浄工程(2回)

これにより、Taxペプチドパルス樹状細胞が得られる。
・最終製剤化工程:
・細胞密度の調製(1x10cells/mL)
・細胞凍結保存液との混合(5x10cells/mL)
・クライオチューブ等への充填(2.5x10cells/0.5mL/tube)
・クライオチューブ(凍結保存細胞)および添付融解剤(生理食塩水)のアンプルへのラベリング
・製剤の保存:凍結保存細胞(≦-80℃)
生理食塩水(室温)

最終製剤(凍結保存細胞+添付融解剤)が得られる。
【0291】
出荷時は以下を行う。
【0292】
規格試験(製造機関):
生細胞数、生細胞率、表面形質解析(FCM)、無菌試験、エンドトキシン、マイコプラズマ(PCR法)
(結果)
以上のようにしてTaxペプチドパルス樹状細胞が製造されることを確認した。
【0293】
(実施例8:得られた細胞の特性分析およびMLR)
上記実施例で得られた樹状細胞(P2Exp21のDC製品(S/P=プルモザイムなし/あり)の機能を確認するため、混合リンパ球反応(MLR)解析を行った。MLR解析では、同種CD4陽性細胞と共培養しリンパ球刺激能を評価した。
【0294】
MLRの手順は以下の通りである。
【0295】
(材料および方法)
[必要物品]
15mL コニカルチューブ
キャップ付きFACSチューブ
ブルーチューブ
2/5/10mL ピペット
PBS
PBS/FBS:PBS/2%FBS、PBS/1%FBS
RPMI
R10:RPMI/10%FBS
96well U bottom plate(Nunc Cat#163320)
BD IMag Human CD4 T Lymphocyte Enrichment Set-DM(BD Biosciences、Cat#557939)
CFSE(Sigma Aldrich、Cat#150347594)
※1mMに調整分注して-20℃で凍結保存。凍結融解は4回したら破棄する(フタに正の字を記入)
V450-Anti CD3 Ab(BD Horizon、Cat#560365)
APC Cy7-Anti CD4 Ab(BioLegend、Cat#300517)
Lymphoprep
CELLBANKER1
マイクロピペット(2、10、20、100、200、1000μL)
フィルター付きチップ(10、20、100、200、1000μL)
ピペットエイド
[必要機器]
品質の保証された遠心機
血球計算盤カウンター
倒立顕微鏡
【0296】
(Allogeneic CD4細胞の分離)
<PBMCの分離>
1)ヘパリン採血した健常人末梢血10mLを、Lymphoprepを用いた比重遠心分離法にてPBMCに分離した。
【0297】
<CD4細胞の分離>
1)1%FBS/2mM EDTA/PBS・・・[A]を以下の通り調製した。
PBS 16mL+BSA 160μL+EDTA 64μL(0.5M)
2)PBMCに10x10^6個/mLとなるように[A]を加えて、P1000でSuspendして蓋付きFACSチューブへ移した。
3)Biotinylated Human T Lymphocyte Enrichment Cocktailを5μL/1x10^6個添加してP1000でピペッティングし、15min、RTでincubateした。
4)[A]を添加して4mLにメスアップして、遠心(700g、5min、ブレーキ1)し、上清除去した(P1000チップ使用)。
5)P1000で[A]を1mL添加してsuspendし、さらに[A]を3mL添加した。
6)遠心(700g、5min、ブレーキ1)し、上清除去した(P1000チップ使用)。
7)Step5)~6)をもう一度実施した。
8)BD IMag Streptavidin Particle Plus-DMをボルテックス後、5μL/1x10^6個添加した。
9)P1000でSuspend(ほぐれなければP200を使用)して、30min、RTでインキュベートした
以下、特に泡立てないように注意して行った。
10)[A]を1.6mL添加した(2mLに調整、20~80x10^6個/mLの範囲となるように)(チューブ[1])。
11)チューブ[1]をMagnetへ6min静置。
12)2mLピペットでチューブ[1]の奥に接触しないように上清を新たなチューブ[2]に回収した。
13)チューブ[1]に[A]を2mL添加してsuspendし、チューブ[1]および[2]をMagnetへ6min静置した。
14)2mLピペットでチューブ[2]→15mLチューブに上清回収後、チューブ[1]の上清→チューブ[2]へ回収した。
15)チューブ[2]をMagnetへ6min静置、15mLチューブはon iceで静置した。
16)2mLピペットでチューブ[2]から15mLチューブに上清をまとめた。
17)R10(RPMI/10%FBS)で14mLにメスアップした。
18)遠心(700g、5min)後に、上清を除去した。
17)RPMI 10mLにSuspendして細胞数をカウントした。
18)遠心(700g、5min)後、上清を除去した。
19)MLRセットアップの前日以前に分離し、すべての細胞を凍結。CELLBANKER1で5x10^6個/mLに調整して、5x10^6個/tubeずつ分注し、バイセルに入れて-80℃で保存する。
【0298】
(MLR1日目)
<DC製剤の解凍>
1)DC製剤の解凍、樹状細胞数のカウントはATL-DC-101最終投与製剤の調製に準じて行った(ただし生理食塩水の代わりにPBSを使用)。
2)カウントした樹状細胞数に基づき、R10(RPMI/10%FBS)を用いて0.3mL程度の2x10^5個/mL DC細胞懸濁液(A)を調整した。残りのDCは細胞表面抗原の染色に使用した。
以下、細胞懸濁液をゆるくVortexをかけてから分取を行った。
3)DC細胞懸濁液(A)から0.5mLの2x10^4個/mL DC細胞懸濁液(B)を調製した。
4)DC細胞懸濁液(B)から0.5mLの2x10^3個/mL DC細胞懸濁液(C)を調製した。
5)**下図のように、96 well U bottom plateのF-7、8、E-7、8、D-7、8へDC細胞懸濁液(A)、(B)、(C)をそれぞれ100μLずつ入れた。また、C-5、7、8、D-5、E-5、F-5にR10を100μL入れた。
【0299】
【化1】

【0300】
6)蒸発防止のため、96well plateの最も外側のwell(36well)にMilli-Q水を200μLずつ加えた。
7)plateを4℃で冷やした。(以後、取り出す際には、ふたの水滴がBufferにつかないように注意した)
**鏡検用に同様のplateをもう1set作成。Doubletやcompensation用は必要ない。
【0301】
<CD4細胞の解凍とCFSE標識>
1)15mLコニカルチューブにR10を14mL入れ、37℃water bath内で温めた。
2)R10が温まった後、CD4細胞凍結チューブを37℃water bath内で急速に溶かした。
3)解凍後すぐにチューブ内の細胞液を、温まったR10に移し、キャップをしっかり閉めて転倒攪拌した。
4)遠心(700g、5min、RT)
5)アスピレーションピペットで上清を吸引した後、13mLのR10で細胞をsuspendした。
6)遠心(700g、5min、RT)。
7)アスピレーションピペットで上清を吸引した後、10mLのR10で細胞をsuspendした。
8)細胞数をカウントした。(cell suspension: trypan blue=1:1)
9)遠心(700g、5min、RT)
10)ピペットで上清を吸引した後、R10で細胞を2x10^6 個/mLに調整した。
11)plateのC-5、E-5、F-5に細胞懸濁液を100μLずつ加え、再びplateを4℃で冷やした。
12)残った細胞をキャップ付きFACSチューブに全て移した。
13)遠心(700g、5min、RT)
14)ピペットで上清を吸引した。
15)4mLのPBSで細胞をsuspendした。
16)Step13)-15)をさらに2回繰り返した。(新たなキャップ付きFACSチューブに移さなくてよい)
17)遠心(700g、5min、RT)
18)P1000チップで上清を吸引した
19)0.5~1x10^7cells/mLとなるように、0.4mLのPBSで細胞をsuspendした。
20)クリーンベンチの電気を消した。
21)CFSE(1mM)を2μL加えて、チューブを振ってよく混ぜた(final conc 5μM)
21)細胞をincubatorで温めた(37℃、15min)。
22)細胞を簡単にvortexし、R10を3.6mL加え、計4mLとした。
23)遠心(700g、5min、RT)
24)P1000チップで上清を吸引した。
25)簡単にvortexし、4mLのR10を加えた。
26)Step23)-25)をさらに2回繰り返した。
27)遠心(700g、5min、RT)
28)P1000チップで上清を吸引した。
29)細胞をR10で2x10^6個/mLに調整した。
30)plateのD-5、C-7、8、D-7、8、E-7、8、F-7、8に細胞を100μLずつ加えた(ピペッティングは不要)。
31)plateをアルミホイルで遮光した(密閉しない)。
31)37℃で4日間incubateした。
【0302】
(MLR5日目)
<回収・洗浄、FCM解析>
1)ブルーチューブ7本に1%FBS/PBSを3mLずつ分注した。
2)96well plateよりそれぞれの細胞をブルーチューブに回収した。Doubletは1本にまとめた。(P200を使用してしっかりSuspendして回収する。泡立てないように注意した。)
3)遠心(700g、5min、RT)した後、デカントにて上清除去し、ボルテックスした。
4)1%FBS/PBSを4mLずつ添加した。
5)Step3)および4)をもう一度繰り返した。
6)遠心(700g、5min、RT)した後、デカントにて上清除去し、ボルテックスした。
7)1%FBS/PBS 100μLずつ添加した。
8)それぞれに抗体を添加し、ボルテックスした。
(抗体添加量:V450-CD3 Ab 5μL、APC Cy7-CD4 Ab 1μL)
9)20min、4℃で遮光した(ice上にチューブスタンドを置いた)。
10)1%FBS/PBS4mL添加し、440g、5min、4℃で遠心した。
11)デカントにて上清除去し、ボルテックスした。
12)Step9)および10)をもう一度繰り返した。
13)1%FBS/PBS 450μLでサスペンドしてボルテックスした。
14)FCM解析を実施した。
【0303】
(使用検体)
DC:
P2Exp14 CE-DC190625(2.5×10^6個/本×1本)
P2Exp21-S-DC200129(2.5×10^6個/本×1本)
P2Exp21-P-DC200129(2.5×10^6個/本×1本)
CD4 cells:HD-CD4-200124(4.8x10^6個/本×2本)
(結果)
・P2EXP21のDC製品(S/P)はいずれもMLR反応陽性であった。また、反応強度はSのほうがやや高い傾向を認めたが、明らかな差ではなかった。
【0304】
【表6】
【0305】
(結果)
結果を図11に示す。
【0306】
示されるように、DNase処理の有無にかかわらず、本開示の方法で得られたDCにおいて、CFSEが減衰したCD4陽性細胞が認められたことから、CD4陽性細胞刺激能を有することが示された。
【0307】
図11では、以下の試料の樹状細胞製品の機能試験結果を示す。
1)P2Exp14 CE-DC190625(従来法によるアフェレーシス原料)(陽性コントロールとして使用:従来法を使用したアフェレーシス原料から製造した樹状細胞製品で以前に機能試験を合格している製品)
2)P2Exp21-S-DC200129(Optia(本開示の方法)によるアフェレーシス原料、DNase処理なし)
3)P2Exp21-P-DC200129(Optia(本開示の方法)によるアフェレーシス原料、DNase処理あり)
図11から、1)2)3)いずれの樹状細胞製品も樹状細胞濃度依存性にCD4+T細胞刺激能を有することがわかった。DNaseの有無により樹状細胞の機能に明らかな差を認めなかった。
【0308】
以上から、本開示の方法で得られた単球で製造したTaxペプチドパルス樹状細胞は、機能性であることが証明された。
【0309】
(実施例9:P1 ATL-DC最終製剤から投与までの調製フロー)
最終製剤(凍結保存細胞+添付融解液)は、出荷判定試験:生細胞数、無菌試験、エンドトキシン、マイコプラズマ(PCR法)を行ったうえで、患者に投与を行う。
【0310】
投与時には、細胞融解し、皮下投与用細胞懸濁液を調製し、1回あたり5X10cells投与
2週間毎に3回投与する。
【0311】
工程内試験(CPC):(最終遠心上清)
無菌試験、エンドトキシン
を行う。
【0312】
(実施例10:単球回収及びリンパ球除去)
実施例10では、実施例1と同様のプロトコールを用いたが、採取プレファレンス値を以下のように変更した。
アフェレーシス開始後0~1時間:採取プレファレンス値+30
アフェレーシス開始後1~3時間:採取プレファレンス値+20
この条件で採取したところ、高純度の単球を得られた(表7)。高純度の単球が得られたことにより、被験体のリンパ球除去率が低下したため、単球採取後に2次チャンバー分離方式(MNC)プログラムのプリファレンス自動設定値でのアフェレーシス(リンパ球除去モード(プリファレンス自動設定値(30~50))を追加することを試みた。具体的には、単球採取後にプリファレンスを自動設定値に戻し採取を行った。
【表7】
(結果)
本工程を追加することで、従来の採取時に除去できていたリンパ球数と同等のリンパ球除去が可能となった。
【0313】
(実施例11:治療)
実施例10で採用した条件を用いると、樹状細胞の原料採取時のアフェレーシスとして使用しており、遠心分離法によって樹状細胞の原料である単球を採取することが目的であるが、治療用途(Therapeutic cytapheresis)でもある。
そこで、この条件を利用して、Treg等の抗腫瘍免疫を負に制御する免疫細胞を除去する。その後に投与された樹状細胞は、恒常性維持のために産生されるサイトカイン環境下で新たに増殖したナイーブTリンパ球に抗原提示ができる。
本実施例では、リンパ球除去モード(プリファレンス自動設定値(30~50))を併用することにより、原料採取時のアフェレーシスは、遠心分離法によって樹状細胞の原料である高純度の単球を採取することができ、通常の治療アフェレーシスで達成されるようレベルである109レベルのリンパ球の除去が可能となった(表8)。
【表8】

なお、表8リンパ球除去は、単球採取工程によりリンパ球除去は含まず、単球採取工程とリンパ球除去工程のリンパ球数を加算した数は以下の通りである。
HD10:29.3X10^8
HD25: 19.8X10^8
HD04: 21.8X10^8
自動設定値より高値に設定すると単球分画、血小板分画が増加し、低値に設定すると好中球、赤血球分画が増加することにより、リンパ球除去率が低下すると考えられる。また単球採取工程後のリンパ球除去は、密度勾配遠心分離層が安定した後の採取となるため20分以上(可能であれば30分以上)の実施が好ましいと考えられる。
以下、単球分画(取り出す)工程およびリンパ球分画(取り出す)工程における比較を示したデータを以下に示す。
【表9】

この結果、がん患者の免疫寛容状態を構成するTregなどの抑制系の免疫細胞を除去し、さらに生体の恒常性維持により新たに産生されるリンパ球やサイトカインによる抗腫瘍免疫の賦活を誘導することが期待できる。
【0314】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本出願は、2020年2月20日に出願された特願2020-27595および2020年5月1日に出願された特願2020-81523に対して優先権主張を伴うものであり、それらの内容は全体が参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0315】
本開示で提供される技術は、成人T細胞白血病などの治療薬の製造業において利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14