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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-14
(45)【発行日】2022-02-22
(54)【発明の名称】RFタグ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220215BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20220215BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20220215BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 272
G06K19/077 284
H01Q1/38
H01Q13/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022502432
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2021041565
【審査請求日】2022-01-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591020445
【氏名又は名称】立山科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】本田 憲市
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 匠
(72)【発明者】
【氏名】仲俣 裕喜
【審査官】木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065957(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0106660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
H01Q 1/00- 1/10
H01Q 1/27- 1/52
H01Q 5/00-11/20
H01Q 13/00-13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波によりデータを送受信可能なRFタグであって、
誘電体により形成された板状基材と、
前記板状基材の上面に形成されたループ状の上面導電パターンと、
前記上面導電パターンの一端と他端との間に設けられており、前記データが記憶されており、前記データを電波により送受信する回路を有する半導体デバイスと、
前記板状基材の下面に形成された下面導電パターンと、
前記上面導電パターンと前記下面導電パターンとを接続する接続導電パターンと、
を有しており、
前記上面導電パターンが形成するループの内側の領域の短手方向の幅が、前記板状基材の短手方向の前記上面導電パターンの幅及び前記板状基材の長手方向の前記上面導電パターンの幅よりも小さい形状であるRFタグ。
【請求項2】
前記上面導電パターンは、
第1方向に延在する第1領域と、
前記第1領域と平行に延在する第2領域と、
前記第1方向と直交する第2方向に延在し、一端が前記第1領域に接続し、他端が前記第2領域に接続する第3領域と、
前記第3領域と平行に延在し、一端が前記第1領域における前記第3領域が接続する側と反対側に接続し、他端が前記第2領域における前記第3領域が接続する側と反対側に接続する第4領域と、を有し、
前記第1領域は、
一端が前記第3領域と接続し、他端が前記半導体デバイスと接続する第1サブ領域と、
一端が前記第4領域と接続し、他端が前記半導体デバイスと接続する第2サブ領域と、
を有し、
前記接続導電パターンは、前記第1サブ領域と、前記半導体デバイスと、前記第2サブ領域とを通る前記第1方向の直線上の位置で前記第1サブ領域に接続されており、前記第1方向に延在する領域を有する、
請求項1に記載のRFタグ。
【請求項3】
前記接続導電パターンは、
前記第1サブ領域と接続された位置から前記第1方向に延びる第1方向領域と、
前記第1方向領域と接続されており、前記第2方向に延びる第2方向領域と
を有する、
請求項2に記載のRFタグ。
【請求項4】
前記上面導電パターンを含む最小の四辺形の面積と前記下面導電パターンの面積との関係は、前記RFタグを非導体上に設けている状態の前記電波の強度が最大となる共振周波数と、前記RFタグを導体上に設けている状態の前記電波の強度が最大となる共振周波数との差が、前記RFタグに求められる通信距離を確保するために必要な周波数帯域幅よりも小さいという条件を満たす関係である、
請求項1に記載のRFタグ。
【請求項5】
前記上面導電パターンを含む最小の長方形の4つの辺のうち、前記接続導電パターンが接続されている辺以外の3つの辺の位置が、前記下面導電パターンの4つの辺のうち前記接続導電パターンが接続されている辺以外の3つの辺の位置に対応しており、
前記長方形の4つの辺の方向のうち第1方向における、前記長方形の4つの辺のうち前記第1方向と直交する第2方向の辺の位置と、前記下面導電パターンの4つの辺のうち前記第2方向の辺の位置との差は、前記第1方向の長さに対して±10%以内であり、前記第2方向における、前記長方形の4つの辺のうち前記第1方向の辺の位置と、前記下面導電パターンの4つの辺のうち前記第1方向の辺の位置との差は、前記第2方向の長さに対して±10%以内である、
請求項4に記載のRFタグ。
【請求項6】
前記上面導電パターンは、
第1方向に延在する第1領域と、
前記第1領域と平行に延在する第2領域と、
前記第1方向と直交する第2方向に延在し、一端が前記第1領域に接続し、他端が前記第2領域に接続する第3領域と、
前記第3領域と平行に延在し、一端が前記第1領域における前記第3領域が接続する側と反対側に接続し、他端が前記第2領域における前記第3領域が接続する側と反対側に接続する第4領域と、を有し、
前記第1領域は、
一端が前記第3領域と接続し、他端が前記半導体デバイスと接続する第1サブ領域と、
一端が前記第4領域と接続し、他端が前記半導体デバイスと接続する第2サブ領域と、
を有し、
前記第1領域の短手方向における前記第1領域の幅、前記第2領域の短手方向における前記第2領域の幅、前記第3領域の短手方向における前記第3領域の幅、及び前記第4領域の短手方向における前記第4領域の幅のうち最も小さい幅と最も大きい幅との比が2以下である、
請求項1に記載のRFタグ。
【請求項7】
前記上面導電パターンの面積は、前記下面導電パターンの面積の50%以上である、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のRFタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFタグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体に取り付けられた状態で使用されることが想定されたRFタグが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-61275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、RFタグが受信する電波の周波数に応じてキャパシタンスを自動的に調整する機能を有する自動調整用デバイスが使用されている。特許文献1に記載されたRFタグは、導体に取り付けられた状態で使用されることが想定されており、逆F型アンテナにより構成されているのでリアクタンスが小さく、電極の面積を大きくすることによりキャパシタンスを大きくしている。その結果、自動調整用デバイスがキャパシタンスを自動的に調整したとしても、RFタグの周波数特性の調整可能な範囲が狭く、RFタグがデータを送受信可能な周波数帯域の幅が小さいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、RFタグがデータを送受信可能な周波数帯域の幅を大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のRFタグは、電波によりデータを送受信可能なRFタグであって、誘電体により形成された板状基材と、前記板状基材の上面に形成されたループ状の上面導電パターンと、前記上面導電パターンの一端と他端との間に設けられており、前記データが記憶されており、前記データを電波により送受信する回路を有する半導体デバイスと、前記板状基材の下面に形成された下面導電パターンと、前記上面導電パターンと前記下面導電パターンとを接続する接続導電パターンと、を有しており、前記上面導電パターンが形成するループの内側の領域の短手方向の幅が、前記板状基材の短手方向の前記上面導電パターンの幅及び前記板状基材の長手方向の前記上面導電パターンの幅よりも小さい形状である。
【0007】
前記上面導電パターンは、第1方向に延在する第1領域と、前記第1領域と平行に延在する第2領域と、前記第1方向と直交する第2方向に延在し、一端が前記第1領域に接続し、他端が前記第2領域に接続する第3領域と、前記第3領域と平行に延在し、一端が前記第1領域における前記第3領域が接続する側と反対側に接続し、他端が前記第2領域における前記第3領域が接続する側と反対側に接続する第4領域と、を有し、前記第1領域は、一端が前記第3領域と接続し、他端が前記半導体デバイスと接続する第1サブ領域と、一端が前記第4領域と接続し、他端が前記半導体デバイスと接続する第2サブ領域と、を有し、前記接続導電パターンは、前記第1サブ領域と、前記半導体デバイスと、前記第2サブ領域とを通る前記第1方向の直線上の位置で前記第1サブ領域に接続されており、前記第1方向に延在する領域を有してもよい。
【0008】
前記接続導電パターンは、前記第1サブ領域と接続された位置から前記第1方向に延びる第1方向領域と、前記第1方向領域と接続されており、前記第2方向に延びる第2方向領域とを有してもよい。
【0009】
前記上面導電パターンを含む最小の四辺形の面積と前記下面導電パターンの面積との関係は、前記RFタグを非導体上に設けている状態の前記電波の強度が最大となる共振周波数と、前記RFタグを導体上に設けている状態の前記電波の強度が最大となる共振周波数との差が、前記RFタグに求められる通信距離を確保するために必要な周波数帯域幅よりも小さいという条件を満たす関係であってもよい。
【0010】
前記上面導電パターンを含む最小の長方形の4つの辺のうち、前記接続導電パターンが接続されている辺以外の3つの辺の位置が、前記下面導電パターンの4つの辺のうち前記接続導電パターンが接続されている辺以外の3つの辺の位置に対応しており、前記長方形の4つの辺の方向のうち第1方向における、前記長方形の4つの辺のうち前記第1方向と直交する第2方向の辺の位置と、前記下面導電パターンの4つの辺のうち前記第2方向の辺の位置との差は、前記第1方向の長さに対して±10%以内であり、前記第2方向における、前記長方形の4つの辺のうち前記第1方向の辺の位置と、前記下面導電パターンの4つの辺のうち前記第1方向の辺の位置との差は、前記第2方向の長さに対して±10%以内であってもよい。
【0011】
前記上面導電パターンは、第1方向に延在する第1領域と、前記第1領域と平行に延在する第2領域と、前記第1方向と直交する第2方向に延在し、一端が前記第1領域に接続し、他端が前記第2領域に接続する第3領域と、前記第3領域と平行に延在し、一端が前記第1領域における前記第3領域が接続する側と反対側に接続し、他端が前記第2領域における前記第3領域が接続する側と反対側に接続する第4領域と、を有し、前記第1領域は、一端が前記第3領域と接続し、他端が前記半導体デバイスと接続する第1サブ領域と、一端が前記第4領域と接続し、他端が前記半導体デバイスと接続する第2サブ領域と、を有し、前記第1領域の短手方向における前記第1領域の幅、前記第2領域の短手方向における前記第2領域の幅、前記第3領域の短手方向における前記第3領域の幅、及び前記第4領域の短手方向における前記第4領域の幅のうち最も小さい幅と最も大きい幅との比が2以下であってもよい。
【0012】
前記上面導電パターンの面積は、前記下面導電パターンの面積の50%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、RFタグがデータを送受信可能な周波数帯域の幅を大きくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】RFタグ1の概要を説明するための図である。
図2】RFタグ1の構成を示す図である。
図3】上面導電パターン12の幅について説明するための図である。
図4】接続導電パターン14の位置について説明するための図である。
図5】上面導電パターン12の形状と下面導電パターン13の形状との関係について説明するための図である。
図6】接続導電パターン14の構成について説明するための図である。
図7】RFタグ1の他の構成例を示す図である。
図8】本実施形態に係る板状基材11と比較例の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[RFタグ1の概要]
図1は、RFタグ1の概要を説明するための図である。RFタグ1は、電波によりデータを送受信可能なデバイスである。RFタグ1は、導体2に取り付けられた状態で、リーダライタ3から送信された電波W1を受信することにより発生した電力により動作する。RFタグ1は、内蔵する半導体デバイスに記憶されたデータが重畳された電波W2を放射する。
【0016】
導体2は、電流を流すことができる物体であり、例えば金属である。導体2は金属に限定されるものではなく、電流を流すことができる物質を含む木又は樹脂であってもよい。さらに、導体2におけるRFタグ1の取り付け方向の厚みは任意であり、電流を流すことができる金属箔であってもよい。
【0017】
RFタグ1と導体2とは静電容量的に結合しているため、RFタグ1が発生した電波W2は、導体2を介しても放射される。その結果、RFタグ1が放射した電波W2を受信しにくい位置にリーダライタ3が存在していても、リーダライタ3は導体2を介して電波W2を受信することで、RFタグ1に記憶されたデータを取得することができる。
【0018】
図2は、RFタグ1の構成を示す図である。図2(a)はRFタグ1の斜視図である。図2(b)はRFタグ1の上面図である。図2(c)はRFタグ1の下面図である。
【0019】
RFタグ1は、板状基材11と、上面導電パターン12と、下面導電パターン13と、接続導電パターン14と、半導体デバイス15と、を有する。
板状基材11は、誘電体により形成されている。図2に示す例では板状基材11の上面及び下面が長方形であるが、板状基材11の上面及び下面の形状は長方形以外の多角形、長円形又は楕円形であってもよい。
【0020】
また、板状基材11を構成する誘電体は、複数の種類の部材により構成されていてもよい。板状基材11は、板状の誘電体に、上面導電パターン12と、下面導電パターン13と、接続導電パターン14と、半導体デバイス15とが設けられたシート状の誘電体部材が接合されていてもよい。
【0021】
上面導電パターン12は、板状基材11の上面に形成されたループ状の導電性のパターンである。上面導電パターン12が形成するループの内側においては板状基材11が露出している。上面導電パターン12により形成されるループの一部には、導電性のパターンが形成されていない領域があり、当該領域に半導体デバイス15が設けられている。
【0022】
下面導電パターン13は、板状基材11の下面に形成された導電性のパターンである。下面導電パターン13は、例えば長方形状である。下面導電パターン13の面積は上面導電パターン12の面積よりも大きく、板状基材11の下面の面積よりも小さい。
【0023】
接続導電パターン14は、上面導電パターン12と下面導電パターン13とを接続する導電性のパターンである。接続導電パターン14は、上面導電パターン12の一部の領域を起点として、板状基材11の側面を経由して下面導電パターン13の一部の領域を終点とするように構成されている。図2に示す例において、接続導電パターン14は、上面導電パターン12の一端と、半導体デバイス15と、上面導電パターン12の他端と、を通り、板状基材11の長手方向に平行な直線上の位置で上面導電パターン12と接続されている。
【0024】
図4は、接続導電パターン14の位置について説明するための図である。図4(a)は、RFタグ1に半導体デバイス15が設けられていない状態の上面導電パターン12を示す図である。図4(a)においては、上面導電パターン12における一端T1と他端T2とが示されている。図4(a)に示す例における一端T1及び他端T2には、凸部が形成されているが、一端T1及び他端T2に凸部が形成されていなくてもよい。
【0025】
接続導電パターン14は、図4(b)の太線で示すように、半導体デバイス15が含まれる長方形を通り、板状基材11の長手方向に平行な直線Lを含む位置において上面導電パターン12に接続されている。接続導電パターン14と上面導電パターン12とが接続されている範囲に直線Lが含まれている限りにおいて、接続導電パターン14の幅は、太線で示される領域の短手方向の幅よりも大きくてもよく小さくてもよい。なお、図4(b)においては、太線で示す領域の中央付近に直線Lが描かれているが、直線Lの位置は、太線で示す領域の短手方向の任意の位置であってよい。
【0026】
半導体デバイス15は、リーダライタ3に送信するデータを記憶するメモリを有する。半導体デバイス15は、上面導電パターン12の一端と他端との間に設けられている。具体的には、半導体デバイス15は、上面導電パターン12における板状基材11の長手方向に延びる領域における一端と他端との間に設けられている。
【0027】
また、半導体デバイス15は、メモリに記憶しているデータを電波により送受信する回路を有する。半導体デバイス15は、複数のキャパシタを内蔵しており、上面導電パターン12の一端と他端との間に接続する一以上のキャパシタを切り替えることで、上面導電パターン12の一端と他端との間のキャパシタンスを調整することができる。半導体デバイス15は、例えば、受信した電波の強度が最大になるようにキャパシタンスを調整する。
【0028】
RFタグ1のリアクタンスをL、キャパシタンスをCとすると、共振周波数fは1/(2π√(LC))により表される。半導体デバイス15のキャパシタンスを調整することにより共振周波数をできるだけ大きく変化させるには、半導体デバイス15が設けられていない状態でのRFタグのキャパシタンスをできるだけ小さくすることが望ましい。
【0029】
ただし、RFタグ1がリーダライタ3と通信可能な電波の周波数帯域は所定の範囲内に定められているので、RFタグ1のキャパシタンスを小さくするためには、RFタグ1のリアクタンスを大きくする必要がある。そこで、RFタグ1は、リアクタンスを大きくするために各種の特徴を有している。以下、RFタグ1の特徴を説明する。
【0030】
[RFタグ1の特徴]
図3は、上面導電パターン12の幅について説明するための図である。上面導電パターン12は、第1方向に延在する第1領域(図3における12a)と、第1領域と平行に延在する第2領域(図3における12b)とを有する。また、上面導電パターン12は、第1方向と直交する第2方向に延在し、一端が第1領域に接続し、他端が第2領域に接続する第3領域(図3における12c)を有する。さらに、上面導電パターン12は、第3領域と平行に延在し、一端が第1領域における第3領域が接続する側と反対側に接続し、他端が第2領域における第3領域が接続する側と反対側に接続する第4領域(図3における12d)を有する。換言すると、上面導電パターン12は、板状基材11の長手方向に平行な第1領域及び第2領域と、板状基材11の短手方向に平行な第3領域及び第4領域と、を有する。
【0031】
第1領域は、一端が第3領域と接続し、他端が半導体デバイス15と接続する第1サブ領域12a’と、一端が第4領域と接続し、他端が半導体デバイス15と接続する第2サブ領域12a’’と、を有する。接続導電パターン14は、第1サブ領域と、半導体デバイス15と、第2サブ領域とを通る第1方向の直線上の位置で第1サブ領域に接続されており、第1方向に延在する領域を有する。
【0032】
上面導電パターン12が形成するループの内側の領域の短手方向の幅(図3におけるE)は、板状基材11の長手方向の上面導電パターン12の幅(図3におけるA及びB)及び板状基材11の短手方向の上面導電パターン12の幅(図3におけるC及びD)よりも小さい。
【0033】
上面導電パターン12がこのような形状を有することで、上面導電パターン12のリアクタンスが十分に大きくなるので、共振周波数におけるキャパシタンスを小さくすることができる。その結果、半導体デバイス15のキャパシタンスの調整可能範囲で半導体デバイス15のキャパシタンスが変化することにより、上面導電パターン12のリアクタンスが小さい場合に比べて広い周波数範囲で共振周波数を調整可能になる。その結果、RFタグ1は、従来のRFタグに比べて、データを送受信可能な周波数帯域の幅を大きくすることができる。なお、当該周波数帯域は、RFタグ1がリーダライタ3との間でデータを送受信することが必要とされる距離でデータを送受信可能な周波数の帯域であり、例えば当該周波数帯域の幅は40MHzである。
【0034】
第1領域12aの短手方向における第1領域12aの幅(図3におけるA)、第2領域12bの短手方向における第2領域12bの幅(図3におけるB)、第3領域12cの短手方向における第3領域12cの幅(図3におけるC)、及び第4領域12dの短手方向における第4領域12dの幅(図3におけるD)のうち最も小さい幅と最も大きい幅との比が2以下である。上面導電パターン12における最も小さい幅と最も大きい幅との比が2以下である場合には、幅が大きい領域の電流密度が小さくなることに起因するキャパシタンスの増加を抑制することができ、上面導電パターン12の実効ループ面積が大きくなる。
【0035】
図5は、上面導電パターン12の形状と下面導電パターン13の形状との関係について説明するための図である。図5(a)は、RFタグ1の上面図である。図5(a)における太線は、上面導電パターン12を含む最小の四辺形の輪郭線を示している。図5(b)はRFタグ1の下面図である。
【0036】
上面導電パターン12を含む最小の四辺形の4つの辺のうち、接続導電パターン14が接続されている辺以外の3つの辺(図5(a)における121a,121b,121c)の位置は、下面導電パターン13の4つの辺のうち接続導電パターン14が接続されている辺以外の3つの辺(図5(b)における131a,131b,131c)の位置に対応している。
【0037】
すなわち、辺121aは辺131aと平行であり、かつ板状基材11の長手方向の辺111aから辺121aまでの距離は、辺111aから辺131aまでの距離とほぼ等しい。また、辺121bは辺131bと平行であり、かつ板状基材11の短手方向の辺111bから辺121bまでの距離は、辺111bから辺131bまでの距離とほぼ等しい。また、辺121cは辺131cと平行であり、かつ板状基材11の長手方向の辺111cから辺121cまでの距離は、辺111cから辺131cまでの距離とほぼ等しい。
【0038】
ところで、上面導電パターン12と下面導電パターン13との間にはキャパシタンスが発生するので、下面導電パターン13が設けられていることで、導体2の影響によりキャパシタンスが変動することが抑制される。ただし、上面導電パターン12が下面導電パターン13に対して大きくはみ出した状態で導体2に貼り付けられてしまうと、はみ出した領域と導体2との間に生じるキャパシタンスにより、共振周波数が低い方向に変動してしまう。
【0039】
共振周波数の変動量が大きいと、RFタグ1が設けられている導体2の特性によっては、RFタグ1に求められる通信距離を確保することができる周波数でRFタグ1が共振せず、RFタグ1が当該通信距離でデータを送受信できないという問題が生じ得る。そこで、上面導電パターン12を含む最小の四辺形の面積と下面導電パターン13の面積との関係は、RFタグ1の共振周波数が最も高くなる場合の共振周波数f1と、RFタグ1の共振周波数が最も低くなる場合の共振周波数f2との差が、RFタグ1に求められる通信距離を確保するために必要な周波数帯域幅よりも小さいという条件を満たす関係であることが望ましい。
【0040】
一例として、上面導電パターン12を含む最小の四辺形の面積と下面導電パターン13の面積との関係は、RFタグ1を非導体(例えば樹脂)上に設けている状態におけるRFタグ1の電波の強度が最大となる共振周波数f1と、RFタグ1を導体(例えば金属)上に設けている状態におけるRFタグ1の電波の強度が最大となる共振周波数f2との差が、RFタグ1に求められる通信距離を確保するために必要な周波数帯域幅よりも小さいという条件を満たす関係であることが望ましい。上面導電パターン12を含む最小の四辺形の面積と下面導電パターン13の面積との関係がこのようになっていることで、RFタグ1が使用される環境によらず、必要な通信可能距離を確保することができる。
【0041】
具体的には、板状基材11の短手方向における、上面導電パターン12を含む最小の四辺形の4つの辺のうち板状基材11の長手方向の辺121aの位置と、下面導電パターン13の4つの辺のうち板状基材11の長手方向の辺131aの位置との差は、板状基材11の短手方向の長さに対して±10%以内であることが望ましい。同様に、辺121cの位置と辺131cの位置との差は、板状基材11の短手方向の長さに対して±10%以内であることが望ましい。また、板状基材11の長手方向における、上記の四辺形の4つの辺のうち板状基材11の短手方向の辺121bの位置と、下面導電パターン13の4つの辺のうち板状基材11の短手方向の辺131cの位置との差は、板状基材11の長手方向の長さに対して±10%以内であることが望ましい。
【0042】
また、上面導電パターン12の面積は、下面導電パターン13の面積の50%以上であることが望ましい。上面導電パターン12の面積が、このように下面導電パターン13の面積に対して50%以上であることにより、上面導電パターン12のリアクタンスを十分に大きくすることができる。
【0043】
図6は、接続導電パターン14の構成について説明するための図である。図6(a)は、図2(b)に示した板状基材11と同じ形状を示しており、図6(b)は接続導電パターン14の変形例を示している。
【0044】
図6(a)及び図6(b)に示すように、接続導電パターン14は、第1サブ領域12a’と接続された位置から第1方向に延びる第1方向領域14aと、第1方向領域14aと接続されており、第2方向に延びる第2方向領域14bとを有する。すなわち、接続導電パターン14は、上面導電パターン12と接続された位置から板状基材11の長手方向に延びる第1方向領域(図6における14a)と、長手方向領域と接続されており、板状基材11の短手方向に延びる第2方向領域(図6における14b又は14d)とを有する。このように、接続導電パターン14は、パターンの方向が変わる屈曲部を少なくとも1つ有しているが、接続導電パターン14が有する屈曲部の数は任意である。
【0045】
図6(a)に示すように、接続導電パターン14は、第2方向領域14bに接続された第1方向領域14cをさらに有することで2個の屈曲部を有してもよく、それ以上の数の屈曲部を有してもよい。このように接続導電パターン14に屈曲部を設けることで、屈曲部の前後の領域の長さを変えることにより、RFタグ1に搭載される半導体デバイス15の特性に応じてリアクタンス及びキャパシタンスが異なる複数種類の板状基材11を容易に設計することができる。
【0046】
図7は、RFタグ1の他の構成例を示す図である。図2に示したRFタグ1における上面導電パターン12においては、第1領域12aの中央位置に半導体デバイス15が設けられていたが、図7に示すRFタグ1における上面導電パターン12においては、第1領域12aの中央位置に対して接続導電パターン14から遠い側の位置に半導体デバイス15が設けられている。このように、半導体デバイス15が設けられる第1領域12aの長手方向における位置は任意である。
【0047】
[周波数特性の比較]
図8は、本実施形態に係る板状基材11と比較例の周波数特性を示す図である。図8(a)は、図2に示した板状基材11の周波数特性を示しており、図8(b)は、比較例のRFタグの周波数特性を示している。図8の横軸は周波数を示しており、縦軸は読取可能距離を示している。
【0048】
図8(a)に対応する板状基材11は、外形寸法が10mm×51mm×4.3mmであり、上面及び下面の面積が918mmであった。また、半導体デバイス15を設けていない状態における板状基材11のキャパシタンス(静電容量)は2.95pFであり、インダクタンスは10.2nHであった。
【0049】
半導体デバイス15は、0.16pFの範囲でキャパシタンスを調整可能であり、半導体デバイス15のキャパシタンスが最大の場合の共振周波数は、半導体デバイス15のキャパシタンスが最小の場合の共振周波数に比べて24.7MHz低くなった。すなわち、共振周波数の調整可能幅は24.7MHzであった。その結果、図8(a)に示すように、読取可能距離が10m以上となる帯域幅が約40MHzとなっている。
【0050】
一方、図8(b)に対応する比較例のRFタグは、外形寸法が14mm×55mm×2mmであり、上面及び下面の面積が770mmであった。また、RFタグのキャパシタンスは6.86pFであり、インダクタンスは4.36nHであった。
【0051】
比較例のRFタグは、本実施形態に係る板状基材11に比べてインダクタンスが小さくキャパシタンスが大きいため、キャパシタンスを調整可能なICデバイスが0.18pFの範囲でキャパシタンスを調整可能であるにもかかわらず、共振周波数の調整可能幅は12.0MHzであった。その結果、図8(b)に示すように、読取可能距離が10m以上となる帯域幅が約15MHzとなっている。
【0052】
以上のとおり、本実施形態に係る板状基材11は、インダクタンスが5nH以上であり、キャパシタンスが6pF以下であることにより、比較例のRFタグに比べて、リーダライタ3が所定の距離においてRFタグからデータを読み取ることができる電波の周波数帯域を大きくすることができることを確認できた。
【0053】
[RFタグ1による効果]
以上説明した通り、RFタグ1においては、上面導電パターン12が形成するループの内側の領域の短手方向の幅が、板状基材11の短手方向の上面導電パターン12の幅及び板状基材11の長手方向の上面導電パターン12の幅よりも小さい形状である。RFタグ1が、このような形状の上面導電パターン12を有していることで、RFタグ1のリアクタンスが大きくなるので、半導体デバイス15のキャパシタンスを調整することで、リーダライタ3との間でデータを送受信できる周波数帯域の幅を大きくすることが可能になる。
【0054】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0055】
1 RFタグ
2 導体
3 リーダライタ
11 板状基材
12 上面導電パターン
13 下面導電パターン
14 接続導電パターン
15 半導体デバイス
【要約】
RFタグ1は、誘電体により形成された板状基材11と、板状基材11の上面に形成されたループ状の上面導電パターン12と、上面導電パターン12の一端と他端との間に設けられており、メモリに記憶されたデータを電波により送受信する回路を有する半導体デバイス15と、板状基材11の下面に形成された下面導電パターン13と、上面導電パターン12と下面導電パターン13とを接続する接続導電パターン14と、を有する。上面導電パターン12が形成するループの内側の領域の短手方向の幅は、板状基材11の短手方向の上面導電パターン12の幅及び板状基材11の長手方向の上面導電パターン12の幅よりも小さい形状である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8