(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】クローディン18.2に対する抗体を含む薬物コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20220216BHJP
A61K 31/537 20060101ALI20220216BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220216BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220216BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220216BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220216BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220216BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20220216BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220216BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K31/537
A61K38/08
A61K39/395 M
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K47/65
A61P35/00
A61P43/00 105
C07K16/30 ZNA
C07K16/46
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2020195120
(22)【出願日】2020-11-25
(62)【分割の表示】P 2017552461の分割
【原出願日】2016-04-13
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/058206
(32)【優先日】2015-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513288447
【氏名又は名称】トロン-トランスラショナル・オンコロジー・アン・デア・ウニヴェルシテーツメディツィン・デア・ヨハネス・グーテンベルク-ウニヴェルシテート・マインツ・ゲマインニューツィゲ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウグール・サヒン
(72)【発明者】
【氏名】ウツレム・テューレチ
(72)【発明者】
【氏名】コルデン・ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】マリア・クロイツベルク
(72)【発明者】
【氏名】リタ・ミットナヒト-クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・ル・ギャル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ヤーコプス
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特許第6800883(JP,B2)
【文献】特表2010-528075(JP,A)
【文献】国際公開第2015/014870(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/146778(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/174404(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/68
A61K 31/537
A61K 38/08
A61K 39/395
A61K 47/65
A61P 35/00
A61P 43/00
C07K 16/30
C07K 16/46
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん患者におけるCLDN18.2発現がんを処置又は予防するための医薬の製造のための、少なくとも1つの治療部分に共有結合的に付着しているCLDN18.2に結合する能力を有する抗体を含む抗体コンジュゲートの使用であって、
前記抗体は、
(a)配列番号32によって表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体重鎖配列と、配列番号39によって表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体軽鎖配列とを含む、CLDN18.2に結合する抗体;並びに
(b)配列番号30によって表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体重鎖配列と、配列番号35によって表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体軽鎖配列とを含む、CLDN18.2に結合する抗体
から成る群から選択され
、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体が、一本鎖抗体である、使用。
【請求項2】
抗体コンジュゲートが、細胞内に内部移行される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体が、CLDN18.2に特異的に結合する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記(a)の抗体が、配列番号17に示される重鎖配列と、配列番号24に示される軽鎖配列とを含み、前記(b)の抗体が、配列番号15に示される重鎖配列と、配列番号20に示される軽鎖配列とを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記一本鎖抗体が、二重特異性一本鎖抗体である、請求項
1に記載の使用。
【請求項6】
前記抗体のVH及びVLドメインが、単一のポリペプチド鎖に発現される、請求項
1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
治療部分が、細胞膜透過性である毒素薬部分である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
治療部分が、細胞傷害性剤又は細胞増殖抑制剤である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
治療部分が、メイタンシノイド及びオーリスタチンから成る群から選択される毒素薬部分である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
メイタンシノイドが、DM1及びDM4からなる群から選択される、請求項
9に記載の使用。
【請求項11】
オーリスタチンが、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)及びモノメチルオーリスタチンF(MMAF)からなる群から選択される、請求項
9に記載の使用。
【請求項12】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体が、リンカーによって治療部分に共有結合的に付着している、請求項1から1
1のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
リンカーが、切断可能リンカーである、請求項1
2に記載の使用。
【請求項14】
リンカーが、細胞内条件下で切断可能である、請求項1
2又は1
3に記載の使用。
【請求項15】
リンカーが、5.5未満のpHで加水分解性である、請求項1
2から1
4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
リンカーが、細胞内プロテアーゼによって切断可能である、請求項1
2から1
5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
リンカーが、カテプシン切断可能リンカーである、請求項1
2から1
6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
リンカーが、ジペプチドを含む、請求項1
2から1
7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
ジペプチドが、val-cit又はphe-lysである、請求項1
8に記載の使用。
【請求項20】
抗体コンジュゲートが、CLDN18.2発現がんの処置又は予防に有効な量で投与される、請求項1から
19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
抗体コンジュゲートが、3~30mg/体重1kgの間の用量で投与される、請求項1から2
0のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
抗体コンジュゲートが、9~90mg/ヒト患者の体表1m
2の間の用量で投与される、請求項1から2
0のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
単回用量の抗体コンジュゲート又は2回以上の用量の抗体コンジュゲートが投与される、請求項1から2
2のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
抗体コンジュゲートが、静脈内注射によって投与される、請求項1から2
3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
手術、化学療法、及び/又は放射線療法を施す工程を更に含む、請求項1から2
4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
がんが、腺癌、特に、進行した腺癌である、請求項1から2
5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
がんが、胃がん、食道がん、膵がん、非小細胞肺がん(NSCLC)等の肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢のがん、並びにこれらの転移、クルーケンベルク腫瘍、腹膜転移、及び/又はリンパ節転移からなる群から選択される、請求項1から2
6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
がんが、胃のがん、食道、特に、下部食道のがん、食道胃接合部のがん、及び胃食道がんからなる群から選択される、請求項1から2
7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
患者が、HER2/neu陰性患者、又はHER2/neu陽性状態を有するがトラスツズマブ療法に適格でない患者である、請求項1から2
8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
CLDN18.2が、配列番号1によるアミノ酸配列を有する、請求項1から
29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
少なくとも1つの治療部分に共有結合的に付着しているCLDN18.2に結合する能力を有する抗体を含む抗体コンジュゲートであって、
前記抗体は、
(a)配列番号32によって表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体重鎖配列と、配列番号39によって表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体軽鎖配列とを含む、CLDN18.2に結合する抗体;並びに
(b)配列番号30によって表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体重鎖配列と、配列番号35によって表されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗体軽鎖配列とを含む、CLDN18.2に結合する抗体
から成る群から選択され
、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体が、一本鎖抗体である、抗体コンジュゲート。
【請求項32】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体が、CLDN18.2に特異的に結合する、請求項3
1に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項33】
前記(a)の抗体が、配列番号17に示される重鎖配列と、配列番号24に示される軽鎖配列とを含み、前記(b)の抗体が、配列番号15に示される重鎖配列と、配列番号20に示される軽鎖配列とを含む、請求項3
1または3
2に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項34】
前記一本鎖抗体が、二重特異性一本鎖抗体である、請求項3
1に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項35】
前記抗体のVH及びVLドメインが、単一のポリペプチド鎖に発現される、請求項3
1から34のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項36】
治療部分が、細胞膜透過性である毒素薬部分である、請求項3
1から3
5のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項37】
治療部分が、細胞傷害性剤又は細胞増殖抑制剤である、請求項3
1から3
6のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項38】
治療部分が、メイタンシノイド及びオーリスタチンから成る群から選択される毒素薬部分である、請求項3
1から3
7のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項39】
メイタンシノイドが、DM1及びDM4からなる群から選択される、請求項
38に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項40】
オーリスタチンが、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)及びモノメチルオーリスタチンF(MMAF)からなる群から選択される、請求項
38に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項41】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体が、リンカーによって治療部分に共有結合的に付着している、請求項3
1から4
0のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項42】
リンカーが、切断可能リンカーである、請求項4
1に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項43】
リンカーが、細胞内条件下で切断可能である、請求項4
1又は4
2に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項44】
リンカーが、5.5未満のpHで加水分解性である、請求項4
1から4
3のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項45】
リンカーが、細胞内プロテアーゼによって切断可能である、請求項4
1から4
4のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項46】
リンカーが、カテプシン切断可能リンカーである、請求項4
1から4
5のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項47】
リンカーが、ジペプチドを含む、請求項4
1から4
6のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項48】
ジペプチドが、val-cit又はphe-lysである、請求項4
7に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項49】
請求項3
1から
48のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート、及び薬学的に許容される希釈剤、担体、又は賦形剤を含む医薬製剤。
【請求項50】
請求項3
1から
48のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲートを含む医薬調製物。
【請求項51】
抗体コンジュゲートを含む容器を含むキットの形態で存在する、請求項5
0に記載の医薬調製物。
【請求項52】
CLDN18.2発現がんの処置又は予防における使用のための医薬の製造のための、請求項3
1から
48のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート、請求項
49に記載の医薬製剤、又は請求項5
0若しくは5
1に記載の医薬調製物の使用。
【請求項53】
前記医薬製剤が、CLDN18.2発現がんの処置又は予防における製剤の使用のための印刷された指示書を更に含む、請求項5
2に記載の使用。
【請求項54】
前記医薬製剤が、がんを処置又は予防するために製剤化される、請求項5
2若しくは5
3に記載の使用。
【請求項55】
前記抗体は、
(a)配列番号32によって表される重鎖可変領域(VH)と、配列番号39によって表される軽鎖可変領域(VL)とを含む;並びに
(b)配列番号30によって表される重鎖可変領域(VH)と、配列番号35によって表される軽鎖可変領域(VL)とを含む、
請求項1から30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項56】
前記抗体は、
(a)配列番号32によって表される重鎖可変領域(VH)と、配列番号39によって表される軽鎖可変領域(VL)とを含む;並びに
(b)配列番号30によって表される重鎖可変領域(VH)と、配列番号35によって表される軽鎖可変領域(VL)とを含む、
請求項31から48のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
モノクローナル抗体(mAB)は、過去20年にわたってがんの処置を激変させてきた(Sliwkowski, M. X.ら(2013)、Science 341(6151)、1192~1198)。mABの極めて重要な特徴は、これらの高い特異性、並びに腫瘍細胞を標的にし、免疫エフェクター媒介細胞殺傷(補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC))のために腫瘍細胞をマーキングし、且つ/又は増殖の低減及びアポトーシスをもたらすこれらの能力である(Kubota, T.ら(2009)Cancer Sci.100(9)、1566~1572)。細胞傷害性薬にコンジュゲートさせると、mABの有用性を拡大し、これらの効能及び有効度を改善することができる(Goldmacher, V. S.ら(2011) Ther. Deliv. 2(3)、397~416;Sievers, E. L.(2013) Annu. Rev. Med. 64、15~29)。
【0002】
歴史的に、がんを処置するための細胞傷害性薬の使用は、分裂中のがん細胞を標的にする化学療法に集中していた。これらの化合物は、がん細胞だけでなく、体内の他の分裂中の健康細胞も標的にし、処置を受けている患者は、重度の副作用を経験し、この副作用は用量を制限する。これらの薬物の治療指数(最大耐用量/最小有効用量)は低く、狭い治療ウインドウをもたらす(Ismael, G. F. V.ら(2008) Cancer Treat Rev.34(1)、81~91)。薬物開発におけるこの障害を回避し、治療指数を改善するために、抗体を使用して、腫瘍に特異的に細胞傷害性薬を送達することができる。抗体の独特の標的化能力を細胞傷害性薬のがん殺傷能力と組み合わせることによって、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、従来の化学療法剤と比較してより低い副作用を呈し、より広い治療ウインドウをもたらす(Gerber, H.-P.ら(2013) Nat. Prod. Rep.、30(5)、625~639)。
【0003】
ADCは、標的依存様式でがん細胞を殺傷するように設計されている。このプロセスの第1の工程は、抗体のその抗原への結合である。ADCが結合すると、抗原-ADC複合体全体が内部移行され、細胞傷害性ペイロードが腫瘍細胞内に放出され、細胞死をもたらす。ADCの治療指数に影響を与える因子としては、抗体、腫瘍標的抗原、細胞傷害性薬、及びリンカーがある(Panowksi, S.ら(2014) MAbs、6(1)、34~45)。
【0004】
ADCを開発するための基本必要条件として、腫瘍標的抗原は、細胞表面上に局在化され、循環抗体にアクセス可能でなければならない。更に、腫瘍選択性及び標的抗原の発現レベルは、安全で効果的なADCを設計するための極めて重要なパラメータである。現在、様々な腫瘍関連細胞表面抗原ががん療法のADC標的として評価されている(Trail, P. A.(2013) Antibodies、2(1)、113~129; Teicher, B. A.(2009) Curr. Cancer Drug Targets 9(8)、982~1004)。
【0005】
ADCの効率は、細胞傷害性薬にも依存する。腫瘍に局在化する抗体の量は、投与される用量と比較して非常に小さいので、ナノモル未満の効能を有する毒性化合物が要求される。オーリスタチン及びメイタンシノイドは、ADC開発において現在使用されている高度に強力な細胞毒の2つのクラスである(Trail, P. A.(2013) Antibodies、2(1)、113~129)。両方とも、チューブリンの重合を遮断し、G2/M期細胞周期停止によって細胞死を引き起こす抗有糸分裂剤である(Lopus, M.ら(2010) Mol. Cancer Ther. 9(10)、2689~2699; Francisco, J. Aら(2003) Blood、102(4)、1458~1465)。mABの特異性及び薬物の効能に加えて、リンカーは、ADC開発における重要なエレメントである。リンカーは、mABの薬物動態学的半減期を活用するために安定であるべきであり、抗原媒介内部移行まで細胞傷害性薬を放出するべきでない。リンカーは、これらの薬物放出の機構によって分類することができる:切断可能リンカーは、抗原特異的内部移行後の加水分解又は酵素的切断によって薬物を放出し、一方、切断不可能リンカーは、内部移行後のリソソーム内でのmABの分解を介して薬物を放出する(Dosio, F.ら(2011) Toxins (Basel)3(7)、S. 848~883)。
【0006】
リンカー設計によっては、標的陽性細胞内部で放出される膜透過性(親油性)毒素は、細胞膜を通過し、抗原発現を欠く隣接するがん細胞を含めた近接近している他の細胞を殺傷することができる(バイスタンダー効果)(Kovtun, Y. V.ら(2006) Cancer Res.、66(6)、3214~3221)。これらの細胞傷害性薬の局所的なバイスタンダー殺傷を媒介する能力は、腫瘍内で不均質に発現される抗原に向けられるADCの重要な選択基準である。
【0007】
タイトジャンクション分子クローディン18アイソタイプ2(CLDN18.2)は、クローディン18のがん関連スプライスバリアントである。CLDN18.2は、2つの小細胞外ループ(疎水性領域1及び疎水性領域2によって包含されたループ1;疎水性領域3及び4によって包含されたループ2)とともに4つの膜スパニングドメインを含む27.8kDaの膜貫通タンパク質である。CLDN18.2は、短命の分化した胃上皮細胞上でもっぱら発現され、任意の他の正常なヒト組織内で検出可能でない高度に選択的な胃の系統抗原である。抗原は、胃食道がん及び膵がんを含めた多様なヒトがんにおいてかなりのレベルで異所性に発現される(Sahin, U.ら.、Clin Cancer Res、2008.14(23):7624~34頁)。CLDN18.2タンパク質は、胃がんのリンパ節転移において、及び遠位転移においても頻繁に検出される。CLDN18.2は、CLDN18.2陽性腫瘍細胞の増殖に関与していると思われ、その理由は、siRNA技術によって標的を下方調節すると胃がん細胞の増殖が阻害されるためである。
【0008】
IMAB362は、CLDN18.2に向けられたIgG1サブタイプのキメラモノクローナル抗体である。IMAB362は、高い親和性及び特異性でCLDN18.2の第1の細胞外ドメインを認識し、クローディン18の密接に関係したスプライスバリアント1(CLDN18.1)を含めた任意の他のクローディンファミリーメンバーに結合しない。CLDN18.2を発現するヒト異種移植片では、生存利益及び腫瘍退縮が、IMAB362の投与後のマウスにおいて観察された。関連した動物種において静脈内に投与されたとき、標的エピトープがアクセス可能でないため、胃組織内の毒性は、観察されない。しかし、腫瘍標的は、悪性形質転換中にIMAB362にとってアクセス可能となる。IMAB362は、4つの独立した高度に強力な作用機序:(i)抗体依存性細胞傷害(ADCC)、(ii)補体依存性細胞傷害(CDC)、(iii)腫瘍表面で標的を架橋することによって誘導されるアポトーシスの誘導、及び(iv)増殖の直接阻害を束ねる。以前の第I相トライアルでは、後期胃食道がんを有する患者における単回用量での単剤療法としてのIMAB362が評価された。この試験は、用量群間のAEプロファイル及び他の安全性パラメータの関連した差異を認めることができないため、この抗体の単回投与が、最大で1000mg/m2の投与量において安全で耐容性良好であることを示す(AE=有害事象)。抗腫瘍活性に関する最良の結果は、300mg/m2及び600mg/m2群で得られた。第IIa相臨床トライアルが、組織診断によって証明された胃又は下部食道の進行した腺癌の転移性、難治性、又は再発性疾患を有する患者におけるIMAB362の反復用量の安全性、耐容性、及び抗腫瘍活性を判定するために行われた。
【0009】
上述の通り、CLDN18.2は、正常細胞内で制限された発現パターンを有し、したがってCLDN18.2を発現するがんの抗体介在療法にとって理想的な標的であるように思われる。したがって、特に、非CLDN18.2発現細胞に望ましくない効果を発揮することなく、CLDN18.2発現細胞に臨床的に有用な細胞傷害性又は細胞増殖抑制性効果を発揮することができるCLDN18.2発現がん細胞に向けられた療法の必要性が存在する。好ましくは、療法は、放射標識、及び化学療法との組合せ等の抗体の治療有効性を増大させるのに使用されてきた手法と一般に関連する不利点及び望ましくない副作用と関連しているべきでない。例えば、同位体療法は、骨髄抑制と関連し、抗体及び化学療法剤との併用療法は、免疫抑制と関連する。更に、同位体で標識された物質は、生成するのが困難であり、同位体で標識された物質を用いた最初の処置後に再発病を経験することが多い。
【0010】
本発明は、CLND18.2発現細胞上でCLND18.2に結合すると高度に効率的に内部移行され得、したがってADC開発に適している抗CLDN18.2モノクローナル抗体の存在を実証する。更に、それぞれ切断可能なSPDB又はVal-Cit(vc)リンカーを使用して薬物DM4及びMMAEにこのような抗体をコンジュゲートすることの成功も開示されている。in vitroで、抗体コンジュゲートは、CLDN18.2を発現する胃がん及び膵がん細胞の生存能を低減する。IMAB362-vcMMAE及びIMAB362-DM4は、CLDN18.2陰性細胞に結合せず、又はその生存能に影響を与えない。DM4及びvcMMAEコンジュゲートはともに、in vitroでCLDN18.2陽性がん細胞と共培養されたCLDN18.2陰性がん細胞にバイスタンダー殺傷効果を発揮する。更に、CLDN18.2陽性胃又は膵臓異種移植腫瘍を有するヌードマウスにおけるin vivoでの抗体コンジュゲートを静脈内投与は、用量依存的腫瘍増殖阻害、生存利益、並びに更には早期の及び進行した腫瘍の完全退縮がもたらす。有意な治療効果が約4~8mg/kgの単回用量静脈内適用で観察され、最適な治療効果は、15~16mg/kgで実現される。両コンジュゲートの最大耐単回用量は、15.2及び16mg/kgという最高の可能な試験用量が肝臓毒性又は他の毒性効果をもたらさなかったので、判定することができなかった。
【0011】
本明細書に提示されるデータから、本明細書に記載のもの等の抗CLDN18.2抗体-薬物コンジュゲートは、胃癌及び膵癌等のCLDN18.2陽性ヒト癌を処置するための高度に強力な薬物であると結論付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第4,151,042号
【文献】米国特許第4,137,230号
【文献】米国特許第4,248,870号
【文献】米国特許第4,256,746号
【文献】米国特許第4,260,608号
【文献】米国特許第4,265,814号
【文献】米国特許第4,294,757号
【文献】米国特許第4,307,016号
【文献】米国特許第4,308,268号
【文献】米国特許第4,308,269号
【文献】米国特許第4,309,428号
【文献】米国特許第4,313,946号
【文献】米国特許第4,315,929号
【文献】米国特許第4,317,821号
【文献】米国特許第4,322,348号
【文献】米国特許第4,331,598号
【文献】米国特許第4,361,650号
【文献】米国特許第4,364,866号
【文献】米国特許第4,424,219号
【文献】米国特許第4,362,663号
【文献】米国特許第4,371,533号
【文献】米国特許出願公開第2003/0118592号
【文献】米国特許出願公開第2003/0133939号
【文献】米国特許第5,635,483号
【文献】米国特許第5,780,588号
【文献】WO02/43478
【文献】WO2004 035607
【文献】WO87/04462
【文献】WO89/01036
【文献】EP338841
【非特許文献】
【0013】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は一般に、例えば、胃がん、食道がん、膵がん、非小細胞肺がん(NSCLC)等の肺がん、卵巣がん、大腸がん、肝がん、頭頸部がん、及び胆嚢のがん、並びにこれらの転移、特に、胃がん転移、例えば、クルーケンベルク腫瘍、腹膜転移、及びリンパ節転移を含めた、CLDN18.2を発現する細胞と関連したがんを有効に処置及び/又は予防するための療法を提供する。特に好適ながん疾患は、胃、食道、膵管、胆管、肺、及び卵巣の腺癌である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では、本発明は、CLDN18.2発現がんを処置又は予防する方法であって、がん患者に、少なくとも1つの毒素薬部分に共有結合的に付着しているCLDN18.2に結合する能力を有する抗体を含む抗体-薬物コンジュゲートを投与する工程を含む、方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、細胞によって発現されるCLDN18.2に結合した後、細胞内に内部移行される。
【0017】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2に特異的に結合する。一実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、CLDN18.2に特異的に結合する。
【0018】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、モノクローナル、キメラ、若しくはヒト化抗体、又は抗体の断片である。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、モノクローナル抗体である。
【0019】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、生細胞の表面上に存在するCLDN18.2の天然エピトープに結合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2の細胞外ドメインに結合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2の第1の細胞外ループに結合する。
【0020】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、受託番号DSM ACC2737、DSM ACC2738、DSM ACC2739、DSM ACC2740、DSM ACC2741、DSM ACC2742、DSM ACC2743、DSM ACC2745、DSM ACC2746、DSM ACC2747、DSM ACC2748、DSM ACC2808、DSM ACC2809、又はDSM ACC2810の下で寄託されたクローンによって産生され、且つ/又はそのクローンから得られる抗体、(ii)(i)に属する抗体のキメラ化形態又はヒト化形態である抗体、(iii)(i)に属する抗体の特異性を有する抗体、及び(iv)(i)に属し、且つ好ましくは(i)に属する抗体の特異性を有する抗体の抗原結合性部分又は抗原結合性部位、特に可変領域を含む抗体からなる群から選択される抗体である。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号32によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号39によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号17若しくは51によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号24によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号30によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号35によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号15によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号20によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号32によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号39によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含むCLDN18.2結合抗体と同じ又は本質的に同じエピトープを認識し、並びに/或いは前記CLDN18.2結合抗体とCLDN18.2への結合について競合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号17若しくは51によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号24によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含むCLDN18.2結合抗体と同じ又は本質的に同じエピトープを認識し、並びに/或いは前記CLDN18.2結合抗体とCLDN18.2への結合について競合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号30によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号35によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含むCLDN18.2結合抗体と同じ又は本質的に同じエピトープを認識し、並びに/或いは前記CLDN18.2結合抗体とCLDN18.2への結合について競合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号15によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号20によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含むCLDN18.2結合抗体と同じ又は本質的に同じエピトープを認識し、並びに/或いは前記CLDN18.2結合抗体とCLDN18.2への結合について競合する。第2の抗体と標的への結合について競合する抗体は、好ましくは前記第2の抗体に拮抗的である。
【0021】
一実施形態では、毒素薬部分は、細胞膜透過性である。一実施形態では、毒素薬部分は、細胞傷害性剤又は細胞増殖抑制剤である。一実施形態では、毒素薬部分は、メイタンシノイド又はオーリスタチンである。一実施形態では、メイタンシノイドは、DM1及びDM4からなる群から選択される。一実施形態では、オーリスタチンは、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)及びモノメチルオーリスタチンF(MMAF)からなる群から選択される。
【0022】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、リンカーによって毒素薬部分に共有結合的に付着している。一実施形態では、リンカーは、切断可能リンカーである。一実施形態では、リンカーは、細胞内条件下で切断可能である。一実施形態では、リンカーは、5.5未満のpHで加水分解性である。一実施形態では、リンカーは、細胞内プロテアーゼによって切断可能である。一実施形態では、リンカーは、カテプシン切断可能リンカーである。一実施形態では、リンカーは、ジペプチドを含む。一実施形態では、ジペプチドは、val-cit又はphe-lysである。一実施形態では、抗体は、抗体のシステインチオールを介してリンカーに付着している。一実施形態では、抗体は、アミン基、特に、抗体のリシン残基のアミン基を介してリンカーに付着している。
【0023】
一実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、CLDN18.2発現がんの処置又は予防に有効な量で投与される。一実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、3~30mg/体重1kgの間、例えば、4~25、5~20、10~18、又は15~16mg/体重1kgの間の用量で投与される。一実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、8~150、9~100、又は9~90mg/ヒト患者の体表1m2の間、例えば、12~75、15~60、30~54、又は45~48mg/ヒト患者の体表1m2の間の用量で投与される。一実施形態では、単回用量の抗体-薬物コンジュゲート、又は2回以上の用量の抗体-薬物コンジュゲートが投与される。一実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、静脈内注射によって投与される。
【0024】
一実施形態では、本発明の方法は、手術、化学療法、及び/又は放射線療法を施す工程を更に含む。
【0025】
一実施形態では、CLDN18.2の発現は、がん細胞の細胞表面におけるものである。一実施形態では、がんは、腺癌、特に、進行した腺癌である。一実施形態では、がんは、胃がん、食道がん、膵がん、非小細胞肺がん(NSCLC)等の肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢のがん、並びにこれらの転移、クルーケンベルク腫瘍、腹膜転移、及び/又はリンパ節転移からなる群から選択される。一実施形態では、がんは、胃のがん、食道、特に、下部食道のがん、食道胃(eso-gastric)接合部のがん、及び胃食道がんからなる群から選択される。一実施形態では、患者は、HER2/neu陰性患者、又はHER2/neu陽性状態を有するがトラスツズマブ療法に適格でない患者である。
【0026】
一実施形態では、CLDN18.2は、配列番号1によるアミノ酸配列を有する。
【0027】
更なる態様では、本発明は、少なくとも1つの毒素薬部分に共有結合的に付着しているCLDN18.2に結合する能力を有する抗体を含む抗体-薬物コンジュゲートを提供する。
【0028】
一実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、細胞によって発現されるCLDN18.2に結合した後、細胞内に内部移行される。
【0029】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2に特異的に結合する。一実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、CLDN18.2に特異的に結合する。
【0030】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、モノクローナル、キメラ、若しくはヒト化抗体、又は抗体の断片である。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、モノクローナル抗体である。
【0031】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、生細胞の表面上に存在するCLDN18.2の天然エピトープに結合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2の細胞外ドメインに結合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2の第1の細胞外ループに結合する。
【0032】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、受託番号DSM ACC2737、DSM ACC2738、DSM ACC2739、DSM ACC2740、DSM ACC2741、DSM ACC2742、DSM ACC2743、DSM ACC2745、DSM ACC2746、DSM ACC2747、DSM ACC2748、DSM ACC2808、DSM ACC2809、又はDSM ACC2810の下で寄託されたクローンによって産生され、且つ/又はそのクローンから得られる抗体、(ii)(i)に属する抗体のキメラ化形態又はヒト化形態である抗体、(iii)(i)に属する抗体の特異性を有する抗体、及び(iv)(i)に属し、且つ好ましくは(i)に属する抗体の特異性を有する抗体の抗原結合性部分又は抗原結合性部位、特に可変領域を含む抗体からなる群から選択される抗体である。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号32によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号39によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号17若しくは51によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号24によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号30によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号35によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号15によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号20によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号32によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号39によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含むCLDN18.2結合抗体と同じ又は本質的に同じエピトープを認識し、並びに/或いは前記CLDN18.2結合抗体とCLDN18.2への結合について競合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号17若しくは51によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号24によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含むCLDN18.2結合抗体と同じ又は本質的に同じエピトープを認識し、並びに/或いは前記CLDN18.2結合抗体とCLDN18.2への結合について競合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号30によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号35によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含むCLDN18.2結合抗体と同じ又は本質的に同じエピトープを認識し、並びに/或いは前記CLDN18.2結合抗体とCLDN18.2への結合について競合する。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号15によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号20によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含むCLDN18.2結合抗体と同じ又は本質的に同じエピトープを認識し、且つ/或いは前記CLDN18.2結合抗体とCLDN18.2への結合について競合する。第2の抗体と標的への結合について競合する抗体は、好ましくは前記第2の抗体に拮抗的である。
【0033】
一実施形態では、毒素薬部分は、細胞膜透過性である。一実施形態では、毒素薬部分は、細胞傷害性剤又は細胞増殖抑制剤である。一実施形態では、毒素薬部分は、メイタンシノイド又はオーリスタチンである。一実施形態では、メイタンシノイドは、DM1及びDM4からなる群から選択される。一実施形態では、オーリスタチンは、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)及びモノメチルオーリスタチンF(MMAF)からなる群から選択される。
【0034】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、リンカーによって毒素薬部分に共有結合的に付着している。一実施形態では、リンカーは、切断可能リンカーである。一実施形態では、リンカーは、細胞内条件下で切断可能である。一実施形態では、リンカーは、5.5未満のpHで加水分解性である。一実施形態では、リンカーは、細胞内プロテアーゼによって切断可能である。一実施形態では、リンカーは、カテプシン切断可能リンカーである。一実施形態では、リンカーは、ジペプチドを含む。一実施形態では、ジペプチドは、val-cit又はphe-lysである。一実施形態では、抗体は、抗体のシステインチオールを介してリンカーに付着している。一実施形態では、抗体は、アミン基、特に、抗体のリシン残基のアミン基を介してリンカーに付着している。
【0035】
一実施形態では、CLDN18.2は、配列番号1によるアミノ酸配列を有する。
【0036】
更なる態様では、本発明は、本発明の抗体-薬剤コンジュゲート、及び薬学的に許容される希釈剤、担体、又は賦形剤を含む医薬製剤を提供する。
【0037】
更なる態様では、本発明は、本発明の抗体-薬剤コンジュゲートを含む医薬製剤を提供する。一実施形態では、医薬製剤は、抗体-薬物コンジュゲートを含む容器を含むキットの形態で存在する。一実施形態では、医薬製剤は、がん、特に、CLDN18.2発現がんを処置又は予防する方法における製剤の使用のための印刷された指示書を更に含む。
【0038】
更なる態様では、本発明は、療法における使用のための、特に、がん、特に、CLDN18.2発現がんを処置又は予防する方法における使用のための本発明の抗体-薬剤コンジュゲート、本発明の医薬組成物、又は本発明の医薬製剤を提供する。一実施形態では、がんを処置又は予防する方法は、本発明のCLDN18.2発現がんを処置又は予防する方法である。
【0039】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】抗体薬物コンジュゲーションを示す図である。
【
図2】HEK293~CLDN18.2細胞のキメラ抗CLDN18.2 mAb及びFab-ZAPとの共インキュベーション後の生存能の低減を示すグラフである(内部移行の間接評価)。 HEK293~CLDN18.2細胞を、抗CLDN18.2特異的抗体及びサポリンコンジュゲート抗ヒトIgG Fab断片(Fab-ZAPヒト)とともに72時間インキュベートした。IMAB362、chim mAB294、chim mAB308、及びchim mAB359のエンドサイトーシスを、細胞生存能を測定することによって間接的に判定した。データ点(n=3反復)は、平均±SDとして表されている。
【
図3】HEK293~CLDN18.2細胞のマウス抗CLDN18.2抗体及びFab-ZAPとの共インキュベーション後の生存能の低減を示すグラフである(内部移行の間接評価)。 HEK293~CLDN18.2細胞を、抗CLDN18.2反応性マウス抗体及びサポリンコンジュゲート抗マウスIgG Fab断片(Fab-ZAPマウス)とともに72時間インキュベートした。異なる抗CLDN18.2反応性マウス抗体のエンドサイトーシスを、細胞生存能を測定することによって間接的に判定した。
【
図4】IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEのCLDN18.2陽性細胞への相対的結合親和性を示すグラフである。 非コンジュゲートIMAB362と比較したIMAB362-毒素コンジュゲートの相対的結合親和性を、最大で20μg/mlの抗体濃度でフローサイトメトリーによって、(A)NUGC-4 10cF7-5 sort3a、及び(B)CLDN18.2を内因的に発現するDAN-G 1C5F2細胞、(C)NCI-N87~CLDN18.2、及び(D)CLDN18.2を異所性に過剰発現するBxPC-3~CLDN18.2細胞について判定した。データ点(n=2反復)は平均±SDとして表されている。
【
図5】IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEのCLDN18.2媒介結合を示すグラフである。 IMAB362-毒素コンジュゲートのCLDN18.2媒介結合を、最大で20μg/mlの抗体濃度でフローサイトメトリーによって、(A)CLDN18.2を異所性に過剰発現するNCI-N87~CLDN18.2細胞及び(B)対応するCLDN18.2陰性ヒト腫瘍細胞株について分析した。データ点(n=2反復)は平均±SDとして表されている。
【
図6】IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの結合特異性を示すグラフである。 IMAB362-毒素コンジュゲートの結合特異性を、(A)HEK293~CLDN18.2、(B)HEK293~CLDN18.1、又は(C)陰性対照としてのHEK293~モック細胞について判定した。結合は、最大で20μg/mlの抗体濃度でフローサイトメトリーによって分析した。データ点(n=2反復)は平均±SDとして表されている。
【
図7】CLDN18.2発現ヒト癌細胞株の生存能に対するIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの効果を示すグラフである。 (A)NUGC-4 10cF7-5 sort 3a、(B)NCI-N87~CLDN18.2、及び(C)BxPC-3~CLDN18.2細胞生存能のIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAE媒介低減の用量応答曲線。IMAB362を陰性対照として使用した(これらの条件下の生存能アッセイにおいて効果無し)。細胞を最大で16875ng/mlの濃度の抗体の存在下で72時間インキュベートした。細胞生存能の低減は、XTTベース生存能アッセイを使用して測定した。データ点(n=3反復)は平均±SDとして表されている。
【
図8】腫瘍細胞生存能のIMAB362-vcMMAE媒介低減のCLDN18.2依存性を示すグラフである。 細胞生存能のIMAB362-vcMMAE媒介低減の標的依存性を、NCI-N87細胞(CLDN18.2陰性)及び標的を異所性に発現するNCI-N87~CLDN18.2細胞について判定した。細胞を、最大で16875ng/mlの濃度のIMAB362-vcMMAE又は非コンジュゲートIMAB362とともに72時間インキュベートした。IMAB362は、ここで使用される実験条件下で活性を有さないことが公知である。細胞生存能の低減は、XTTベース生存能アッセイを使用して測定した。データ点(n=3反復)は平均±SDとして表されている。
【
図9】細胞生存能のIMAB362-vcMMAE媒介低減の特異性を示すグラフである。 細胞生存能のIMAB362-vcMMAE媒介低減の標的特異性を、安定にトランスフェクトされたHEK293~CLDN18.2、HEK293~CLDN18.1、及びHEK293~モック細胞を用いて試験した。細胞を、最大で16875ng/mlの濃度のIMAB362-vcMMAEの存在下で72時間インキュベートした。細胞生存能の低減は、XTTベース生存能アッセイを使用して測定した。データ点(n=3反復)は平均±SDとして表されている。
【
図10】IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEのバイスタンダー活性を示すグラフである。 バイスタンダー効果のIMAB362-DM4-及びIMAB362-vcMMAE媒介誘導を、PA-1(Luc)細胞(CLDN18.2陰性/ルシフェラーゼ陽性)及びNUGC-4 10cE8細胞(CLDN18.2陽性/ルシフェラーゼ陰性)を使用して共培養実験において判定した。バックグラウンド対照として、PA-1(Luc)細胞をIMAB362-DM4-又はIMAB362-vcMMAEとともにインキュベートした。処置のために、細胞を、200ng/mlのIMAB362-DM4、800ng/mlのIMAB362-vcMMAE、又は800ng/mlのIMAB362の存在下で4日間培養した。ルシフェラーゼ活性を測定した。
【
図11】IMAB362-DM4による進行したBxPC-3~CLDN18.2異種移植腫瘍の腫瘍増殖阻害を示すグラフである。 CLDN18.2陽性BxPC-3~CLDN18.2細胞を雌胸腺欠損ヌードマウスの側腹部の皮下に移植した。14日目に、マウスを4群に組織化し、単回用量のビヒクル、7.5mg/kg、15mg/kgのIMAB362-DM4、又は反復用量の15mg/kgのIMAB362-DM4(14及び21日目)を静脈内注射した。皮下腫瘍のサイズを毎週2回測定した(平均+SEM)。群サイズn=5。SD:単回用量、RD:反復用量。
【
図12】IMAB362-DM4で処置したマウスの平均体重を示すグラフである。 それぞれ、単回用量のビヒクル対照、7.5mg/kg、若しくは15mg/kg、又は反復用量の15mg/kgのIMAB362-DM4で処置した担BxPC-3~CLDN18.2腫瘍ヌードマウスの体重をそれぞれ、週2回モニターした。4群の体重は、平均として表されている。群サイズn=5。
【
図13】異種移植片ヌードマウスにおけるIMAB362-DM4の単回及び反復用量投与からの臨床化学パラメータを示すグラフである。 単回用量のビヒクル、7.5mg/kg、15mg/kgのIMAB362-DM4、又は反復用量の15mg/kgのIMAB362-DM4で静脈内処置した担BxPC-3~CLDN18.2腫瘍雌ヌードマウスの臨床化学を、移植後49日目に分析した。A)アラニントランスアミナーゼ(GPT)、B)アスパラギン酸トランスアミナーゼ(GOT)、C)グルタミン酸脱水素酵素、D)アルカリホスファターゼ、E)α-アミラーゼ、F)コリンエステラーゼ、G)クレアチンキナーゼ(CK)、H)乳酸脱水素酵素(LDH)、I)リパーゼ、J)尿素、K)グルコース、L)総タンパク質、及びM)アルブミン。
【
図14】IMAB362-DM4及びビヒクル処置マウスからの胃切片の組織分析を示す写真である。 BxPC-3~CLDN18.2異種移植腫瘍を持つマウスをIMAB362-DM4で処置した。グラフト後49日目に、マウスを屠殺し、選択した臓器を解剖し、ホルマリンで固定した。これらのFFPE組織の切片をヘマトキシリン-エオシンで染色し、形態学的変化について顕微鏡で検査した。(A、C)最高のIMAB362-DM4曝露(グラフト後14日目及び21日目に15mg/kgのIMAB362-DM4)を伴った処置群からの代表的なマウスの胃組織。(B、D)ビヒクルのみで処置された対照群のマウスの胃組織。倍率:スケールバーを参照。
【
図15】進行したBxPC-3~CLDN18.2異種移植腫瘍IMAB362-vcMMAEの腫瘍増殖阻害を示すグラフである。 CLDN18.2陽性BxPC-3~CLDN18.2細胞を雌ヌードマウスの側腹部の皮下に移植した。14日目に、マウスを4群に組織化し、単回用量のビヒクル、8mg/kg、16mg/kgのIMAB362-vcMMAE、又は反復用量の16mg/kgのIMAB362-vcMMAE(14及び21日目)を静脈内注射した。皮下腫瘍のサイズを毎週2回測定した(平均+SEM)。群サイズn=5。
【
図16】IMAB362-vcMMAEで処置したマウスの平均体重を示すグラフである。 単回用量のビヒクル対照、8mg/kg、若しくは16mg/kg、又は反復用量の16mg/kgのIMAB362-vcMMAEで処置した担腫瘍雌ヌードマウスの体重を、週2回モニターした。4群の体重は、平均として提示されている。群サイズn=5。
【
図17】異種移植片ヌードマウスにおけるIMAB362-vcMMAEの単回及び反復用量投与からの臨床化学パラメータを示すグラフである。 単回用量のビヒクル、8mg/kg、16mg/kgのIMAB362-vcMMAE、又は反復用量の16mg/kgのIMAB362-vcMMAEで静脈内処置した担BxPC-3~CLDN18.2腫瘍雌ヌードマウスの臨床化学を、移植後37日目に分析した。A)アラニントランスアミナーゼ(GPT)、B)アスパラギン酸トランスアミナーゼ(GOT)、C)グルタミン酸脱水素酵素、D)アルカリホスファターゼ、E)α-アミラーゼ、F)コリンエステラーゼ、G)クレアチンキナーゼ(CK)、H)乳酸脱水素酵素(LDH)、I)リパーゼ、J)尿素、K)グルコース、L)総タンパク質、及びM)アルブミン。
【
図18】進行したヒトNCI-N87~CLDN18.2胃異種移植腫瘍モデルにおけるIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの用量依存的な抗腫瘍効力を示すグラフである。ヒトCLDN18.2を異所性に発現するNCI-N87~CLDN18.2細胞を雌ヌードマウスの側腹部の皮下に移植した。移植後10日目に、マウスを群に組織化し、13日目に、単回用量のビヒクル、3.8、7.6、若しくは15.2mg/kgのIMAB362-DM4、又は4、8、若しくは16mg/kgのIMAB362-vcMMAEを静脈内注射した。別の対照群は、反復用量の約8mg/kgのIMAB362をIV及びi.p.注射を交互することによって週2回受けた。腫瘍体積を週2回測定した。動物を、腫瘍体積が1400mm
3を超えたとき、又は腫瘍が潰瘍化したとき屠殺した。腫瘍増殖の統計分析は、クラスカル-ウォリス及び事後Dunn検定を使用して実施した。生存期間は、ビヒクル対照群をそれぞれIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEと比較してマンテルコックス検定を使用して分析した。ビヒクル対照、IMAB362、又はIMAB362-DM4、又はIMAB362-vcMMAEで処置したマウスの(A~H)腫瘍増殖曲線、(I、K)平均腫瘍増殖(±SEM)、及び(J、L)生存期間プロット。群サイズ:n=11;
*:p<0.05;
***p<0.001。矢印は、処置の開始を示す。
【
図19】早期ヒトNUGC-4 10cF7-5 sort3a胃異種移植腫瘍モデルにおけるIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの抗腫瘍効力を示すグラフである。 CLDN18.2を内因的に発現するNUGC-4 10cF7-5 sort3a細胞を雌ヌードマウスの側腹部の皮下に移植した。3日目に、マウスは、単回IV注射によってビヒクル、15.2mg/kgのIMAB362-DM4、又は16mg/kgのIMAB362-vcMMAEを受けた。腫瘍体積を週2回測定した。動物を、腫瘍体積が1400mm
3を超えたとき、又は腫瘍が潰瘍化したとき、又は120日の所定観察期間後に屠殺した。腫瘍増殖の統計分析は、クラスカル-ウォリス及び事後Dunn検定を使用して実施した。生存期間は、マンテルコックス検定を使用して分析した。ビヒクル対照、IMAB362-DM4、又はIMAB362-vcMMAEで処置したマウスの(A~C)腫瘍増殖曲線、(D)平均腫瘍増殖(±SEM)、及び(E、F)生存期間プロット。群サイズ:n=10;
***:p<0.001;
****:p<0.0001。矢印は、処置の時点を示す。
【
図20】進行したヒトBxPC-3~CLDN18.2膵臓異種移植腫瘍モデルにおけるIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの用量依存的な抗腫瘍効力を示すグラフである。 ヒトCLDN18.2を異所性に発現するBxPC-3~CLDN18.2細胞を雌ヌードマウスの側腹部の皮下に移植した。13日目に、マウスを群に組織化し、14日目に、単回用量のビヒクル、3.8、7.6、若しくは15.2mg/kgのIMAB362-DM4、又は4、8、若しくは16mg/kgのIMAB362-vcMMAEを静脈内注射した。抗体対照群からのマウスは、約8mg/kgの非コンジュゲートIMAB362をIV及びi.p.注射を交互することによって週2回受けた。腫瘍サイズを週2回測定した。動物を、腫瘍体積が1400mm
3を超えたとき、又は腫瘍が潰瘍化したとき屠殺した。腫瘍増殖の統計分析は、クラスカル-ウォリス及び事後Dunn検定を使用して実施した。生存期間は、ビヒクル対照群をそれぞれIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEと比較してマンテルコックス検定を使用して分析した。ビヒクル対照、IMAB362、IMAB362-DM4、又はIMAB362-vcMMAEで処置したマウスの(A~H)腫瘍増殖曲線、(I、K)平均腫瘍増殖(±SEM)、及び(J、L)生存期間プロット。群サイズ:n=11;p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001;
****:p<0.0001。矢印は、処置の時点を示す。
【
図21】早期ヒトDAN-G 1C5F2膵臓異種移植腫瘍モデルにおけるIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの抗腫瘍効力を示すグラフである。 CLDN18.2を内因的に発現するDAN-G 1C5F2細胞を雌ヌードマウスの側腹部の皮下に移植した。移植後3日目に、マウスを、ビヒクル対照、15.2mg/kgのIMAB362-DM4、又は16mg/kgのIMAB362-vcMMAEの単回IV注射で処置した。腫瘍体積を週2回測定した。動物を、マウスががん悪液質に起因して10%超の体重を失ったとき、腫瘍が潰瘍化したとき、又は120日の所定観察期間後に屠殺した。腫瘍増殖の統計分析は、クラスカル-ウォリス及び事後Dunn検定を使用して実施した。生存期間は、マンテルコックス検定を使用して分析した。ビヒクル対照、IMAB362-DM4、又はIMAB362-vcMMAEで処置したマウスの(A~C)腫瘍増殖曲線、(D)平均腫瘍増殖(±SEM)、及び(E、F)生存期間プロット。群サイズ:n=10;
**:p<0.01;
***:p<0.001。矢印は、処置の時点を示す。
【
図22】IMAB362-vcMMAE及びビヒクル処置マウスからの胃切片の組織分析を示す写真である。 BxPC-3~CLDN18.2異種移植腫瘍を持つマウスをIMAB362-vcMMAEで処置した。グラフト後37日目に、マウスを屠殺し、選択した臓器を解剖し、ホルマリンで固定した。これらのFFPE組織の切片をヘマトキシリン-エオシンで染色し、形態学的変化について顕微鏡で検査した。(A、C)最高のIMAB362-vcMMAE曝露(グラフト後14日目及び21日目に16mg/kgのIMAB362-vcMMAE)を伴った処置群からの代表的なマウスの胃組織。(B、D)ビヒクルのみで処置された対照群のマウスの胃組織。倍率:スケールバーを参照。
【
図23】IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEによるアポトーシスの誘導を示すグラフである。 アポトーシスのIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAE媒介誘導を、標的陽性NUGC-4 10cE8細胞を使用してカスパーゼ3/7活性を測定し、アネキシンVで染色することによって判定した。A)カスパーゼ3/7活性は、細胞を2.5μg/mlのIMAB362抗体の存在下で3日間インキュベートした後に分析した(n=3反復、平均±SD)。B)アネキシンV及びヨウ化プロピジウム(PI)で共染色した細胞のフローサイトメトリー分析は、2.5μg/mlのIMAB362抗体で処置して4日後に実施した(n=3反復)。未処置の細胞は、対照として機能を果たした。
【
図24】進行したヒトNUGC-4 10cF7-5 sort3a胃異種移植腫瘍モデルにおけるIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの抗腫瘍効力を示すグラフである。 CLDN18.2を内因的に発現するNUGC-4 10cF7-5 sort3a細胞を雌ヌードマウスの側腹部の皮下に移植した。10日目に、マウスは、単回IV注射によってビヒクル、15.2mg/kgのIMAB362-DM4、又は16mg/kgのIMAB362-vcMMAEを受けた。腫瘍体積を週2回測定した。動物を、腫瘍体積が1400mm
3を超えたとき、腫瘍が潰瘍化したとき、又は120日の所定観察期間後に屠殺した。腫瘍増殖の統計分析は、クラスカル-ウォリス及び事後Dunn検定を使用して実施した。生存期間は、マンテルコックス検定を使用して分析した。ビヒクル対照、IMAB362-DM4、又はIMAB362-vcMMAEで処置したマウスの(A~C)腫瘍増殖曲線、(D)平均腫瘍増殖(±SEM)、及び(E、F)生存期間プロット。群サイズ:n=10;
*:p<0.05;
***:p<0.001。矢印は、処置の時点を示す。
【
図25】CLDN18.2発現ヒトがん細胞に対するIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAE媒介ADCCを示すグラフである。 A)内因的にCLDN18.2を発現するNUGC-4 10cF7_5 sort3a p3151#10ヒト胃癌細胞に対するIMAB362-DM4(中実黒色円)、IMAB362-vcMMAE(中実黒色三角形)、及びIMAB362(開放黒色正方形)媒介ADCCの用量応答曲線。実験は、約40:1のエフェクターの標的に対する比を使用して実施した。データ点(n=4反復)は、平均±SDとして表されている。B)NUGC-4 10cF7_5 sort3a p3151#10細胞上のCLDN18.2発現のフローサイトメトリー分析。灰色塗りのヒストグラム:抗CLDN18.2(IMAB362、50μg/ml)。黒色点線:アイソタイプ対照。
【
図26】CLDN18.2発現ヒトがん細胞に対するIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAE媒介CDCを示すグラフである。A)内因的にCLDN18.2を発現するKATO-III FGF BP#12 adM p3151#25(左)及びNUGC-4 10cF7_5 sort3a p3151#10ヒト胃癌細胞(右)に対するIMAB362-DM4(中実黒色円)、IMAB362-vcMMAE(中実黒色三角形)、及びIMAB362(開放黒色正方形)媒介CDCの用量応答曲線。ルシフェラーゼ発現標的細胞を、20%のヒト血清(健康なヒトドナーからのプール)及び示された濃度のそれぞれの抗体とともに90分間インキュベートした。データ点(n=3反復)は、平均±SDとして表されている。B)KATO-III FGF BP#12 adM p3151#25(左)及びNUGC-4 10cF7_5 sort3a p3151#10細胞(右)上のCLDN18.2発現のフローサイトメトリー分析。灰色塗りのヒストグラム:抗CLDN18.2(IMAB362、50μg/ml)。黒色点線:アイソタイプ対照。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明を以下で詳細に記載するが、本発明は、本発明に記載の特定の方法論、プロトコール、及び試薬が多様であり得るので、これらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためだけであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる本発明の範囲を限定するように意図されていないことも理解されるべきである。別段に定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0042】
以下において、本発明の要素を記載する。これらの要素は、特定の実施形態とともに列挙されているが、これらは、追加の実施形態を作るために任意の様式で、且つ任意の数で組み合わせることができることが理解されるべきである。様々に記載される実施例及び好適な実施形態は、明示的に記載される実施形態のみに本発明を限定するように解釈されるべきでない。本記載は、明示的に記載される実施形態を、開示され、且つ/又は好適な要素の任意の数と組み合わせる実施形態を支持及び包含することが理解されるべきである。更に、本願におけるすべての記載される要素の任意の並び換え及び組合せは、脈絡により別段に示されていない限り、本願の記載によって開示されているとみなされるべきである。
【0043】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)」、H.G.W. Leuenberger、B. Nagel、及びH. Kolbl編、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、Switzerland、(1995)に記載されているように定義される。
【0044】
本発明の実行には、別段に示されてない限り、本分野の文献(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2版、J. Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor 1989を参照)に説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、及び組換えDNA技法の従来法を使用する。
【0045】
本明細書、及び以下に続く特許請求の範囲全体にわたって、脈絡により別段に要求されない限り、単語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形は、述べたメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群を含めることを暗示するが、任意の他のメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群を除外せず、とはいえ、いくつかの実施形態では、このような他のメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群が除外される場合があり、即ち、主題は、述べたメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群を含めることにあることが理解される。本発明を記載することとの関連で(特に、特許請求の範囲との関連で)使用される用語「a」及び「an」及び「the」、並びに同様の言及は、本明細書で別段に示されていない限り、又は脈絡によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方に及ぶと解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の記述は、その範囲内に入る各別個の値を個々に指す簡便な方法として機能を果たすように単に意図されている。本明細書で別段に示されていない限り、各個々の値は、それが本明細書で個々に列挙されているように明細書に組み込まれている。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書で別段に示されていない限り、又は脈絡により別段に明らかに矛盾しない限り、任意の適当な順序で実施することができる。本明細書に提供される任意且つすべての例、又は例示的な言い回し(例えば、「等」)の使用は、本発明をより良好に例示するように単に意図されており、別段に主張される本発明の範囲を限定しない。本明細書中の言い回しは、本発明の実行に本質的な任意の主張されていない要素を示すものとして解釈されるべきでない。
【0046】
いくつかの文献が、本明細書の本文全体にわたって引用されている。本明細書で引用される文献(すべての特許、特許出願、科学刊行物、製造者の仕様書、指示書等を含む)のそれぞれは、上記のものであれ、以下のものであれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。本明細書中のいずれも、先行発明によって本発明がそのような開示に先行する権利がないことを承認するものとして解釈されるべきでない。
【0047】
クローディンは、タイトジャンクションの最も重要な成分であるタンパク質のファミリーであり、タイトジャンクションでは、これらは、上皮の細胞同士間の細胞間隙内で分子の流れを制御する傍細胞障壁を確立する。クローディンは、膜の内外に4回またがる膜貫通タンパク質であり、N末端及びC末端はともに細胞質内に位置する。第1の細胞外ループ又はドメインは、平均で53アミノ酸からなり、第2の細胞外ループ又はドメインは、約24アミノ酸からなる。CLDN18.2等のクローディンファミリーの細胞表面タンパク質は、様々な起源の腫瘍内で発現され、これらの選択的発現(毒性関連正常組織内で発現無し)及び形質膜への局在化に起因して、抗体媒介がん免疫療法に関連した標的構造として特に適している。
【0048】
用語「CLDN」は、本明細書で使用する場合、クローディンを意味し、CLDN18.2を含む。好ましくは、クローディンは、ヒトクローディンである。
【0049】
用語「CLDN18」は、クローディン18を指し、クローディン18スプライスバリアント1(クローディン18.1(CLDN18.1))及びクローディン18スプライスバリアント2(クローディン18.2(CLDN18.2))を含めた任意のバリアントを含む。
【0050】
用語「CLDN18.2」は、好ましくは、ヒトCLDN18.2、特に、配列表の配列番号1によるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列のバリアントを含み、好ましくはそれからなるタンパク質を指す。CLDN18.2の第1の細胞外ループ又はドメインは、好ましくは、配列番号1に示したアミノ酸配列のアミノ酸27~81、より好ましくはアミノ酸29~78を含む。CLDN18.2の第2の細胞外ループ又はドメインは、好ましくは、配列番号1に示したアミノ酸配列のアミノ酸140~180を含む。前記第1及び第2の細胞外ループ又はドメインは、好ましくは、CLDN18.2の細胞外部分又はドメインを形成する。
【0051】
CLDN18.2は、胃粘膜の分化上皮細胞内の正常組織中で選択的に発現される。CLDN18.2は、様々な起源のがん、例えば、膵癌、食道癌、胃癌、気管支癌、乳癌、及びENT腫瘍等において発現される。CLDN18.2は、原発性腫瘍、例えば、胃がん、食道がん、膵がん、非小細胞肺がん(NSCLC)等の肺がん、卵巣がん、大腸がん、肝がん、頭頸部がん、及び胆嚢のがん、並びにこれらの転移、特にクルーケンベルク腫瘍等の胃がん転移、腹膜転移、及びリンパ節転移の予防及び/又は処置のための貴重な標的である。
【0052】
用語「CLDN18.1」は、好ましくは、ヒトCLDN18.1、特に、配列表の配列番号2によるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列のバリアントを含み、好ましくはそれからなるタンパク質を指す。
【0053】
本発明による用語「バリアント」は、特に、突然変異体、スプライスバリアント、コンホメーション、アイソフォーム、対立遺伝子バリアント、種バリアント、及び種同族体、特に、天然に存在するものを指す。対立遺伝子バリアントは、遺伝子の正常な配列の変化に関し、その重要性は、不明確であることが多い。完全な遺伝子配列決定は、多くの場合、所与の遺伝子に対して多数の対立遺伝子バリアントを同定する。種同族体は、所与の核酸又はアミノ酸配列のものと異なる起源の種に対する核酸又はアミノ酸配列である。用語「バリアント」は、任意の翻訳後修飾されたバリアント及びコンホメーションバリアントを包含するものとする。
【0054】
本発明によれば、用語「CLDN18.2発現がん」又は「CLDN18.2陽性がん」は、がん細胞であって、好ましくは前記がん細胞の表面上で、CLDN18.2を発現するがん細胞を伴うがんを意味する。
【0055】
「細胞表面」は、当技術分野でその通常の意味に従って使用され、したがって、タンパク質及び他の分子による結合にアクセス可能である細胞の外側を含む。
【0056】
CLDN18.2は、それが細胞の表面に位置している場合、前記細胞の表面上で発現され、細胞に添加されるCLDN18.2特異的抗体による結合にアクセス可能である。
【0057】
用語「細胞外部分」又は「細胞外ドメイン」は、本発明との関連で、細胞の細胞外空間に面しており、好ましくは、例えば、細胞の外側に位置した抗体等の抗原結合分子によって前記細胞の外側からアクセス可能であるタンパク質等の分子の一部を指す。好ましくは、この用語は、1つ又は複数の細胞外ループ若しくはドメイン又はこれらの断片を指す
【0058】
本発明によれば、CLDN18.2は、発現のレベルが胃細胞又は胃組織内の発現と比較してより低い場合、細胞内で実質的に発現されない。好ましくは、発現のレベルは、胃細胞又は胃組織内の発現の10%未満、好ましくは、5%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、若しくは0.05%未満、又は更により低い。好ましくは、CLDN18.2は、発現のレベルが、2倍以下、好ましくは1.5倍以下で胃以外の非がん性組織内の発現のレベルを超え、好ましくは、前記非がん性組織内の発現のレベルを超えない場合、細胞内で実質的に発現されない。好ましくは、CLDN18.2は、発現のレベルが検出限界未満であり、且つ/又は発現のレベルが低すぎて細胞に添加されるCLDN18.2特異的抗体による結合を可能にすることができない場合、細胞内で実質的に発現されない。
【0059】
本発明によれば、CLDN18.2は、発現のレベルが、2倍超、好ましくは、10倍超、100倍超、1000超倍、又は10000倍超、胃以外の非がん性組織内の発現のレベルを超える場合、細胞内で発現される。好ましくは、CLDN18.2は、発現のレベルが検出限界を超える場合、且つ/又は発現のレベルが細胞に添加されるCLDN18.2特異的抗体による結合を可能にするのに十分高い場合、細胞内で発現される。好ましくは、細胞内で発現されるCLDN18.2は、前記細胞の表面上で発現され、又は曝露される。
【0060】
用語「疾患」は、個体の体に影響する異常な状態を指す。疾患は、特異的な症状及び徴候に関連した医学的状態と解釈されることが多い。疾患は、感染疾患等、元来外部源からの要因によって引き起こされる場合があり、又は疾患は、自己免疫疾患等、体内の機能不全によって引き起こされる場合がある。ヒトにおいて、「疾患」は、それを患う個体に疼痛、機能不全、苦痛、社会的問題、若しくは死を引き起こす任意の状態、又は個体と接触している者に対する同様の問題を指すのにより広く使用されることが多い。このより広い意味では、疾患は、傷害、身体障害、障害、症候群、感染症、孤立症状、逸脱した挙動、並びに構造及び機能の非定型の変形を時に含み、一方、他の脈絡では、且つ他の目的に関して、これらは、区別可能なカテゴリーとみなされ得る。疾患は通常、身体的にだけでなく情緒的にも個体に影響し、その理由は、多くの疾患に罹り、これらとともに生活することは、人生観及び人格を変化させ得るためである。本発明によれば、用語「疾患」は、がん、特に、本明細書に記載のがんの形態を含めた、任意の病理状態を含む。がん、又はがんの特定の形態への本明細書での任意の言及は、そのがん転移も含む。好適な実施形態では、本願によって処置される疾患は、CLDN18.2を発現する細胞を伴う。
【0061】
「CLDN18.2を発現する細胞を伴う疾患」若しくは「CLDN18.2を発現する細胞と関連する疾患」、又は同様の表現は、本発明によれば、CLDN18.2が病変組織又は臓器の細胞内で発現されることを意味する。一実施形態では、患部組織又は患部臓器の細胞内のCLDN18.2の発現は、対応する健康な組織又は臓器内の状態と比較して増大している。増大は、少なくとも10%、特に、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%、又はそれ以上の増大を指す。一実施形態では、発現は、患部組織内でのみ見つかり、一方、対応する健康な組織内の発現は抑圧されている。本発明によれば、CLDN18.2を発現する細胞に関連した疾患は、がん疾患を含む。更に、本発明によれば、がん疾患は、好ましくは、がん細胞がCLDN18.2を発現するものである。
【0062】
用語「がん疾患」又は「がん」は、典型的には未調節の細胞増殖によって特徴付けられる個体における生理的状態を指し、又は記述する。がんの例としては、それだけに限らないが、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病がある。より特定すれば、このようながんの例としては、骨がん、血液がん、肺がん、肝がん、膵がん、皮膚がん、頭部又は頸部のがん、皮膚又は眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、性器及び生殖器の癌、ホジキン病、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、膀胱のがん、腎臓のがん、腎細胞癌、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉性がん、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、及び下垂体腺腫がある。用語「がん」は、本発明によれば、がん転移も含む。好ましくは、「がん疾患」は、CLDN18.2を発現する細胞によって特徴付けられ、がん細胞は、CLDN18.2を発現する。CLDN18.2を発現する細胞は、好ましくはがん細胞であり、好ましくは本明細書に記載のがんのがん細胞である。
【0063】
本発明によれば、用語「腫瘍」又は「腫瘍疾患」は、好ましくは腫大又は病変部を形成する細胞(新生物細胞、腫瘍原性細胞(tumorigenous cell)、又は腫瘍細胞と呼ばれる)の異常増殖を指す。「腫瘍細胞」とは、急速な、制御されない細胞増殖(cellular proliferation)によって増殖し、新しい増殖(growth)を開始した刺激が終わった後、増殖し続ける異常細胞を意味する。腫瘍は、構造的機構、及び正常組織との機能的協調の部分的又は完全な欠如を示し、良性、前悪性、又は悪性であり得る、組織の別個の塊を通常形成する。本発明によれば、「がん疾患」は、好ましくは「腫瘍疾患」である。しかし一般に、用語「がん」及び「腫瘍」は、本明細書で互換的に使用される。
【0064】
一実施形態では、本発明によるがんは、CLDN18.2を発現するがん細胞を伴う。一実施形態では、がんは、CLDN18.2陽性である。一実施形態では、CLDN18.2の発現は、細胞の表面におけるものである。一実施形態では、がん細胞の少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%、若しくは90%は、CLDN18.2陽性であり、且つ/又はがん細胞の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%は、CLDN18.2の表面発現について陽性である。一実施形態では、がん細胞の少なくとも95%又は少なくとも98%は、CLDN18.2陽性である。一実施形態では、がん細胞の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%は、CLDN18.2の表面発現について陽性である。
【0065】
一実施形態では、CLDN18.2発現がん、CLDN18.2を発現するがん細胞を伴うがん、又はCLDN18.2陽性がんは、胃がん、食道がん、膵がん、非小細胞肺がん(NSCLC)等の肺がん、卵巣がん、大腸がん、肝がん、頭頸部がん、及び胆嚢のがん、並びにこれらの転移、特にクルーケンベルク腫瘍等の胃がん転移、腹膜転移、及びリンパ節転移からなる群から選択される。一実施形態では、がんは、腺癌、特に、進行した腺癌である。特に好適ながん疾患は、胃、食道、膵管、胆管、肺、及び卵巣の腺癌である。一実施形態では、がんは、胃のがん、食道、特に、下部食道のがん、食道胃接合部のがん、及び胃食道がんからなる群から選択される。特に好適な実施形態では、がんは、転移性、難治性、又は再発性進行胃食道がん等の胃食道がんである。
【0066】
本発明によれば、「癌」は、上皮細胞に由来する悪性腫瘍である。この群は、乳房、前立腺、肺、及び大腸がんの一般的な形態を含む最も一般的ながんを代表する。
【0067】
「腺癌」は、腺組織に由来するがんである。この組織は、上皮組織として知られるより大きい組織カテゴリーの一部でもある。上皮組織は、皮膚、腺、及び体の腔及び臓器を裏打ちする様々な他の組織を含む。上皮は、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉に発生学的に由来する。腺癌として分類されるために、細胞は、分泌性を有する限り、必ずしも腺の一部である必要はない。この形態の癌は、ヒトを含めたいくつかの高等哺乳動物において起こり得る。十分に分化した腺癌は、これらが由来する腺組織に類似する傾向がある一方、不十分に分化した腺癌は、類似しない場合がある。生検からの細胞を染色することによって、病理学者は、腫瘍が腺癌であるか、又はいくつかの他のタイプのがんであるかを判定する。腺癌は、体内の腺のユビキタスな性質に起因して、体の多くの組織内で生じ得る。各腺は、同じ物質を分泌しない場合があるが、細胞への外分泌機能がある限り、それは、腺とみなされ、したがってその悪性形態は、腺癌と呼ばれる。悪性腺癌は、他の組織に浸入し、転移する十分な時間が与えられると転移することが多い。卵巣腺癌は、卵巣癌の最も一般的なタイプである。これには、漿液性腺癌及び粘液腺癌、明細胞腺癌、並びに類内膜腺癌が含まれる。
【0068】
「転移」とは、その元の部位から体の別の部分へのがん細胞の拡散を意味する。転移の形成は、非常に複雑なプロセスであり、原発性腫瘍からの悪性細胞の脱離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔及び血管に入るための内皮基底膜の浸透、並びに次いで、血液によって輸送された後、標的臓器の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新しい腫瘍の増殖は、血管新生に依存する。腫瘍細胞又は腫瘍成分が残存し、転移能を発生させる場合があるので、腫瘍転移は、原発性腫瘍が除去された後でさえ起こることが多い。一実施形態では、本発明による用語「転移」は、「遠隔転移」に関し、これは、原発性腫瘍及び局所リンパ節系から離れた転移に関する。一実施形態では、本発明による用語「転移」は、リンパ節転移に関する。本発明の療法を使用して処置可能である転移の一特定の形態は、主要な部位として胃がんに由来する転移である。好適な実施形態では、このような胃がん転移は、クルーケンベルク腫瘍、腹膜転移、及び/又はリンパ節転移である。
【0069】
クルーケンベルク腫瘍は、すべての卵巣腫瘍の1%~2%を占める卵巣の珍しい転移性腫瘍である。クルーケンベルク腫瘍の予後は、依然として非常に芳しくなく、クルーケンベルク腫瘍の確立された処置はまったくない。クルーケンベルク腫瘍は、卵巣の転移性印環細胞腺癌である。胃は、ほとんどのクルーケンベルク腫瘍症例(70%)における原発部位である。大腸、虫垂、及び乳房(主に侵襲性小葉癌)の癌は、次に最も一般的な原発部位である。胆嚢、胆道、膵臓、小腸、ファーター膨大部、子宮頸、及び膀胱/尿膜管の癌に由来するクルーケンベルク腫瘍の稀有な症例が報告されている。原発癌の診断と引き続く卵巣関与の発見との間隔は、通常6カ月以下であるが、より長い期間が報告されている。多くの場合では、原発性腫瘍は、非常に小さく、検出を逃れ得る。胃又は別の臓器の従前の癌の履歴は、症例の20%~30%のみで得ることができる。
【0070】
クルーケンベルク腫瘍を有する患者は、著しく高い全体的な死亡率を有する。ほとんどの患者は、2年以内に死亡する(生存時間中央値、14カ月)。いくつかの研究により、予後は、卵巣への転移が発見された後に原発性腫瘍が同定されるとき、芳しくなく、予後は、原発性腫瘍が隠れたままである場合悪化することが示されている。
【0071】
クルーケンベルク腫瘍の最適な処置ストラテジーは、まったく文献において明らかに確立されていない。外科的切除が実施されるべきか否かは、十分に対処されていない。化学療法又は放射線療法は、クルーケンベルク腫瘍を有する患者の予後に対して有意な効果がまったくない。
【0072】
特に、がんの処置に関連した用語「(治療的)処置」は、本明細書で使用する場合、健康状態を改善すること及び/又は患者の寿命を延長すること(増大させること)を目的とする任意の処置を指す。前記処置は、がんを排除し、患者における腫瘍のサイズ若しくは数を低減し、患者におけるがんの発生を停止若しくは減速し、患者における新しいがんの発生を阻害若しくは減速し、患者における症状の頻度若しくは重症度を減少させ、且つ/又は現在がんを有する、若しくは以前にがんを有していたことがある患者における再発を減少させることができる。がんの(治療的)処置は、手術、化学療法、放射線療法、及び標的療法からなる群から選択され得る。
【0073】
用語「手術」は、本明細書で使用する場合、オペレーションにおける腫瘍の除去を含む。これは、がんの一般的な処置である。外科医は、局所的な切除を使用して腫瘍を除去することができる。
【0074】
用語「化学療法」は、本明細書で使用する場合、好ましくは、細胞を殺傷し、又は細胞が分裂するのを停止することによってがん細胞の増殖を停止するための化学療法剤又は化学療法剤の組合せの使用を指す。化学療法が口によって服用され、又は静脈若しくは筋肉内に注射される場合、薬物は、血流に入り、体全体にわたってがん細胞に到達することができる(全身化学療法)。化学療法が脳脊髄液、臓器、又は腹部等の体腔内に直接配置される場合、薬物は、これらのエリア内のがん細胞に主に影響する(局所化学療法)。
【0075】
本発明による化学療法剤には、細胞増殖抑制性化合物及び細胞傷害性化合物が含まれる。従来の化学療法剤は、ほとんどのがん細胞の主な性質の1つである急速に分裂する細胞を殺傷することによって作用する。これは、化学療法は、骨髄、消化管、及び毛嚢内の細胞等の正常環境下で急速に分裂する細胞にも危害を与えることを意味する。これは、化学療法の最も一般的な副作用をもたらす。本発明によれば、用語「化学療法」は、好ましくは、がん細胞内で異常に発現されるタンパク質(CLDN18.2等の腫瘍抗原)を標的にし、患者の免疫系を動員して腫瘍細胞を破壊することによって作用する抗体を含まない。しかし、がん細胞内で異常に発現されるタンパク質(CLDN18.2等の腫瘍抗原)を標的にし、抗体にコンジュゲートした治療部分又は作用物質によって作用する抗体は、化学療法の一形態としてとらえることができる。しかし、厳密な意味において、用語「化学療法」は、本発明によれば、標的療法を含まない。
【0076】
本発明によれば、用語「標的療法」は、がん細胞等の疾患細胞を優先的に標的にするのに使用することができる一方、非疾患細胞は、標的にされず、又はより少ない程度に標的にされる任意の療法を指す。疾患細胞の標的化は、好ましくは、疾患細胞の殺傷及び/又は疾患細胞の増殖若しくは生存能の障害をもたらす。このような療法は、i)裸であるか、若しくは腫瘍抗原、例えば、CLDN18.2等の疾患細胞上のある特定の細胞表面標的を標的にする治療部分にコンジュゲートされた抗体、抗体断片、及びタンパク質(例えば、本明細書に記載のCLDN18.2に対する抗体若しくは抗体コンジュゲート)、又はii)疾患細胞の増殖又は生存能を損なう低分子を含む。具体的な実施形態では、作用物質は、正常な幹細胞より疾患細胞上で大きいレベルで発現される抗原に結合する。具体的な実施形態では、作用物質は、腫瘍抗原に特異的に結合する。従来の化学療法又は放射線療法は、それが腫瘍に向けられていることが多いにもかかわらず、「標的療法」とみなされない。更に、用語「抗体療法」は、本発明によれば、治療部分にコンジュゲートされている抗体、これらの断片又は誘導体を用いた療法を含まないが、単に、患者の免疫系を動員して腫瘍細胞を破壊することによって作用する抗体、これらの断片又は誘導体を用いた療法に関する。
【0077】
本発明との関連で、「保護する」、「予防する(prevent)」、又は「予防的な(prophylactic)」等の用語は、対象における疾患の出現及び/又は伝播の予防、特に、対象が疾患を発生させる公算を最小限にし、又は疾患の発生を遅延させることを指す。例えば、がんのリスクにある対象は、がんを予防する療法の候補であるはずである。
【0078】
「リスクにある」とは、一般的な集団と比較して、疾患、特にがんを発生させる通常より高い公算を有すると同定されている対象を意味する。更に、疾患、特に、がんを有していたことがある、又は現在有する対象は、疾患を発生させるリスクが増大している対象であり、その理由は、このような対象は、疾患を発生させ続け得るためである。がんを現在有する、又は有していたことがある対象はまた、がん転移のリスクが増大している。
【0079】
用語「個体」及び「対象」は、互換的に本明細書で使用される。これらは、疾患又は障害(例えば、がん)を患い得る、又はそれに感受性であるが、疾患又は障害を有していてもよく、又は有さなくてもよいヒト、非ヒト霊長類、又は他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類)を指す。多くの実施形態では、個体は、ヒトである。別段の記載のない限り、用語「個体」及び「対象」は、特定の年齢を表さず、したがって成人、高齢者、小児、及び新生児を包含する。本発明の好適な実施形態では、「個体」又は「対象」は、「患者」である。用語「患者」は、本発明によれば、処置の対象、特に罹病対象を意味する。
【0080】
用語「抗原」は、免疫応答が向けられている、且つ/又は向けられるエピトープを含むタンパク質又はペプチド等の作用物質に関する。好適な実施形態では、抗原は、CLDN18.2等の腫瘍関連抗原、即ち、細胞質、細胞表面、及び細胞核に由来し得るがん細胞の構成要素、特に、細胞内で、又はがん細胞の表面抗原として、好ましくは大量に産生される抗原である。
【0081】
本発明との関連で、用語「腫瘍関連抗原」又は「腫瘍抗原」は、好ましくは、正常状態下で、限られた数の組織及び/若しくは臓器において、又は特定の発生段階において特異的に発現され、1つ又は複数の腫瘍組織又はがん組織において発現又は異常に発現されるタンパク質に関する。本発明との関連で、腫瘍関連抗原は、好ましくはがん細胞の細胞表面に関連し、好ましくは、正常組織内で発現されないか、又はまれにしか発現されない。
【0082】
用語「エピトープ」は、分子内の抗原決定基、即ち、免疫系によって認識される、例えば、抗体によって認識される分子の一部を指す。例えば、エピトープは、免疫系によって認識される、抗原上の別個の3次元の部位である。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の3次元の構造的特徴、及び特定の帯電特性を有する。立体構造エピトープ及び非立体構造エピトープは、後者へではなく前者への結合が、変性溶媒の存在下で失われる点で区別される。CLDN18.2等のタンパク質のエピトープは、好ましくは、前記タンパク質の連続部分又は不連続部分を含み、好ましくは5から100の間、好ましくは5から50の間、より好ましくは8から30の間、最も好ましくは、10から25の間のアミノ酸長であり、例えば、エピトープは、好ましくは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25アミノ酸長であり得る。
【0083】
用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質、並びにこのような糖タンパク質の抗原結合性部分を含む任意の分子を含む。用語「抗体」は、限定することなく、単鎖抗体、例えば、scFv、並びに抗原結合抗体断片、例えば、Fab及びFab'断片を含めたモノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗体の結合断片又は誘導体を含む分子を含み、抗体のすべての組換え型、例えば、原核生物において発現される抗体、非グリコシル化抗体、並びに本明細書に記載の任意の抗原結合抗体断片及び誘導体も含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VHと本明細書で省略する)及び重鎖定常領域で構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VLと本明細書で省略する)及び軽鎖定常領域で構成されている。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域とともに散在した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、以下の順序、即ち、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDR及び4つのFRから構成されている。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、効果細胞)、及び古典的補体系の第1の成分(Clq)を含めた、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0084】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用する場合、単一分子組成の抗体分子の製剤を指す。モノクローナル抗体は、単一の結合特異性及び親和性を示す。一実施形態では、モノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された非ヒト動物、例えば、マウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって生成される。
【0085】
用語「組換え抗体」は、本明細書において使用する場合、組換え手段によって調製、発現、創製、又は単離されるすべての抗体、例えば、(a)自己から調製される免疫グロブリン遺伝子又はハイブリドーマに関してトランスジェニック又はトランスクロモソーマル(transchromosomal)である動物(例えば、マウス)から単離される抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えば、トランスフェクトーマから単離される抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離される抗体、及び(d)他のDNA配列に免疫グロブリン遺伝子配列をスプライシングする任意の他の手段によって調製、発現、創製、又は単離される抗体等を含む。
【0086】
用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用する場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むように意図されている。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム若しくは部位特異的な突然変異誘発によって、又はin vivoでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。
【0087】
用語「ヒト化抗体」は、非ヒト種からの免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合性部位を有する分子であって、分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造及び/又は配列に基づく、分子を指す。抗原結合性部位は、定常ドメイン上に融合した完全な可変ドメインを含み、又は可変ドメイン中の適切なフレームワーク領域上にグラフトされた相補性決定領域(CDR)のみを含むことができる。抗原結合性部位は、野生型であっても、1つ又は複数のアミノ酸置換によって修飾されていても、例えば、ヒト免疫グロブリンにより密接に類似するように修飾されていてもよい。ヒト化抗体のいくつかの形態は、すべてのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体由来の6つすべてのCDRを含有するヒト化マウス抗体)。他の形態は、元の抗体に対して変更された1つ又は複数のCDRを有する。
【0088】
用語「キメラ抗体」は、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列のそれぞれの1つの部分が、特定の種に由来する、又は特定のクラスに属する抗体中の対応する配列と相同であり、一方、鎖の残りのセグメントは、別のものにおける対応する配列と相同である抗体を指す。一般に、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、哺乳動物の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣し、一方、定常部分は、別の種に由来する抗体の配列と相同である。このようなキメラ形態の1つの明らかな利点は、可変領域を、好都合なことには、例えば、ヒト細胞標本に由来する定常領域と組み合わせて、非ヒト宿主生物体からの容易に入手可能なB細胞又はハイブリドーマを使用して現在分かっている源から導出することができることである。可変領域は、調製の容易さという利点を有し、特異性は、源によって影響されないが、ヒトである定常領域は、非ヒト源由来の定常領域が誘発するより、抗体が注射される場合、ヒト対象から免疫応答を誘発しにくい。しかし、定義は、この特定の例に限定されない。
【0089】
用語の抗体の「抗原結合性部分」(若しくは単に「結合性部分」)、又は抗体の「抗原結合性断片」(若しくは単に「結合性断片」)、又は同様の用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1種又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合性機能は、全長抗体の断片によって遂行され得ることが示されている。用語の抗体の「抗原結合性部分」の中に包含される結合性断片の例としては、(i)Fab断片、VL、VH、CL、及びCHのドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab')2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHドメイン及びCHドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989) Nature、341: 544~546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(vii)合成リンカーによって任意選択で接合され得る2つ以上の単離されたCDRの組合せがある。更に、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコートされるが、これらは、VL領域及びVH領域が対になって一価の分子を形成する単一タンパク質鎖としてこれらが作製されることを可能にする合成リンカーによって、組換え法を使用して接合することができる(単鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら、(1988) Science、242: 423~426;及びHustonら、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85: 5879~5883を参照)。このような単鎖抗体も、用語の抗体の「抗原結合性断片」の中に包含されることが意図されている。さらなる例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合されている結合性ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む結合性ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。結合性ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域であり得る。結合性ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、米国特許出願公開第2003/0118592号及び米国特許出願公開第2003/0133939号に更に開示されている。これらの抗体断片は、当業者に公知の慣例的な技法を使用して得られ、断片は、インタクト抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。
【0090】
天然に存在する抗体は、一般に単一特異性であり、即ち、これらは、単一抗原に結合する。本発明は、標的細胞(腫瘍抗原と係合することによって)及び細胞傷害性細胞等の第2のエンティティ(例えば、CD3受容体と係合することによって)に結合している抗体を含む。本発明の抗体は、二重特異性又は多重特異性、例えば、三重特異性、四重特異性等であり得る。
【0091】
用語「二重特異性分子」は、2つの異なる結合特異性を有する作用物質を含むように意図されている。例えば、分子は、(a)CLDN18.2等の細胞表面抗原、及び(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体等の受容体に結合し、又はこれらと相互作用することができる。用語「多重特異性分子」は、2つを超える異なる結合特異性を有する作用物質を含むように意図されている。例えば、この分子は、(a) CLDN18.2等の細胞表面抗原、(b)効果細胞の表面上のFc受容体等の受容体、及び(c)少なくとも1種の他の成分に結合し、又はこれらと相互作用することができる。したがって、用語「抗体」は、それだけに限らないが、腫瘍抗原、及び効果細胞上のFc受容体等の他の標的に向けられた、二重特異性、三重特異性、四重特異性、及び他の多重特異性分子を含む。用語「二重特異性抗体」は、ダイアボディも含む。ダイアボディは、VHドメイン及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上であるが、リンカーを使用して発現され、リンカーは、短すぎて同じ鎖上の2つのドメインの間で対形成を可能にすることができず、それによってこれらのドメインを別の鎖の相補的等メインと強制的に対を形成させ、2つの抗原結合性部位を作る二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger, P.ら、(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90: 6444~6448; Poljak, R. J.ら、(1994) Structure、2: 1121~1123を参照)。
【0092】
抗体は、それだけに限らないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、及びヒトを含めた様々な種に由来し得る。
【0093】
本明細書において使用する場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0094】
本明細書において使用する場合、「アイソタイプスイッチング」は、抗体のクラス又はアイソタイプが、1つのIgクラスから他のIgクラスの1つに変化する現象を指す。
【0095】
本明細書に記載の抗体としては、IgA、例えば、IgA1又はIgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgM、及びIgDの抗体がある。様々な実施形態では、抗体は、IgG1抗体、より具体的には、IgG1、カッパ、若しくはIgG1、ラムダアイソタイプ(即ち、IgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えば、IgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えば、IgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えば、IgG3、κ、λ)、又はIgG4抗体(例えば、IgG4、κ、λ)である。
【0096】
本明細書において使用する場合、「異種抗体」は、このような抗体を産生するトランスジェニック生物に関して定義される。この用語は、トランスジェニック生物からならない生物において見つかるものに対応するアミノ酸配列又はコード核酸配列を有し、一般にトランスジェニック生物以外の種に由来する抗体を指す。
【0097】
本明細書において使用する場合、「ヘテロハイブリッド抗体」は、異なる生物起源の軽鎖及び重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス軽鎖に付随したヒト重鎖を有する抗体は、ヘテロハイブリッド抗体である。
【0098】
本明細書に記載の抗体は、好ましくは単離されている。「単離抗体」は、本明細書において使用する場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体(例えば、腫瘍抗原に特異的に結合する単離抗体は、腫瘍抗原以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)を指すことが意図されている。しかし、ヒト腫瘍抗原のエピトープ、アイソフォーム、又はバリアントに特異的に結合する単離抗体は、例えば、他の種からの他の関連抗原(例えば、腫瘍抗原種同族体)と交差反応性を有する場合がある。更に、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。本発明の一実施形態では、「単離」モノクローナル抗体の組合せは、異なる特異性を有し、特定の組成物又は混合物中に組み合わされた抗体に関する。
【0099】
本発明との関連で、抗体が、特に、疾患細胞上の腫瘍抗原等のその標的に結合しているとき、本明細書に記載の免疫エフェクター機能を誘発する場合、抗体は、患者の免疫系を動員して腫瘍細胞を破壊することによって作用することができる。好ましくは、前記免疫エフェクター機能は、その表面にCLDN18.2等の腫瘍抗原を担持しているがん細胞等の細胞に向けられる。
【0100】
用語「免疫エフェクター機能」は、本発明との関連で、例えば、腫瘍蔓延及び転移の阻害を含めた腫瘍増殖の阻害及び/又は腫瘍発生の阻害をもたらす免疫系の成分によって媒介される任意の機能を含む。好ましくは、免疫エフェクター機能は、がん細胞の殺傷をもたらす。このような機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介食作用(ADCP)、腫瘍抗原を担持する細胞内のアポトーシスの誘導、腫瘍抗原を担持する細胞の細胞溶解、及び/又は腫瘍抗原を担持する細胞の増殖の阻害を含む。
【0101】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害
ADCCは、抗体によってマークされている標的細胞を好ましくは必要とする効果細胞、特にリンパ球の細胞殺傷能力を記述するものである。
【0102】
ADCCは、好ましくは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫効果細胞の表面上のFc受容体(FcR)と係合するとき起こる。Fc受容体のいくつかのファミリーが同定されており、特定の細胞集団は、規定されたFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、抗原提示をし、腫瘍指向性T-細胞応答を誘導する多様な程度の即時の腫瘍破壊を直接誘導する機構として見ることができる。好ましくは、ADCCをin vivoで誘導すると、腫瘍指向性T-細胞応答及び宿主由来抗体応答に至ることになる。
【0103】
補体依存性細胞傷害
CDCは、抗体によって向けることができる別の細胞殺傷方法である。IgMは、補体活性化の最も有効なアイソタイプである。IgG1及びIgG3もともに、古典的な補体活性化経路を介してCDCを向けることに非常に有効である。好ましくは、このカスケードにおいて、抗原抗体複合体の形成が、IgG分子等の参加抗体分子のCH2ドメイン上で近接近している複数のClq結合性部位のクローク解除(uncloaking)をもたらす(C1qは、補体C1の3つの小成分の1つである)。好ましくは、これらのクローク解除されたC1q結合性部位は、以前は低親和性であったC1q-IgG相互作用を、高い結合活性の1つに変換し、それは、一連の他の補体タンパク質を伴うイベントのカスケードを誘因し、効果細胞走化性物質/活性化剤C3a及びC5aのタンパク質分解放出をもたらす。好ましくは、補体カスケードは、細胞膜傷害複合体の形成で終わり、それにより細胞膜内に孔が作られ、孔は、細胞内外への水及び溶質の自由通過を促進する。
【0104】
本明細書に記載の抗体-薬物コンジュゲートは、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介溶解及び/又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介溶解を誘導することによって、細胞、特にがん細胞等のCLDN18.2を発現する細胞の殺傷を媒介することができることが意外にも判明した。したがって、一実施形態では、本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介溶解及び/又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介溶解を誘導することによって、好ましくは、CDC媒介溶解及びADCC媒介溶解を誘導することによって細胞の殺傷を媒介する。
【0105】
本明細書において使用する場合、抗体が、動物を免疫することによって、又は免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって1つの系から得られ、選択された抗体が、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは、少なくとも96%、97%、98%、又は99%同一である場合、抗体は、特定の生殖系列配列に「由来する」。一般に、特定の生殖系列配列に由来する抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10以下のアミノ酸差異、より好ましくは5以下、又は更により好ましくは、4、3、2、若しくは1以下のアミノ酸差異を示すことになる。
【0106】
本明細書において使用する場合、用語「ヘテロ抗体」は、2種以上の抗体、それらの誘導体、又は一緒に連結された抗原結合性領域であって、これらのうちの少なくとも2種が異なる特異性を有するものを指す。これらの異なる特異性は、効果細胞上のFc受容体に対する結合特異性、及び標的細胞、例えば、腫瘍細胞上の抗原又はエピトープに対する結合特異性を含む。
【0107】
用語「トランスフェクトーマ」は、本明細書において使用する場合、抗体を発現する組換え真核生物宿主細胞、例えば、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、植物細胞、又は酵母細胞を含めた真菌等を含む。
【0108】
本発明は、本発明の目的に関して、用語「抗体」によって包含される、本明細書に記載のすべての抗体及び抗体の誘導体を含む。用語「抗体誘導体」は、抗体の任意の修飾体、例えば、抗体と別の作用物質若しくは抗体とのコンジュゲート、又は抗体断片を指す。
【0109】
用語「腫瘍抗原に対する抗体」又は同様の用語は、腫瘍抗原に向けられた、又はそれに結合する能力を有する抗体を指す。本発明による用語「結合性」は、好ましくは、特異的結合性に関する。
【0110】
本発明によれば、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、これが所定の標的に対して有意な親和性を有し、標準的なアッセイで前記所定の標的に結合する場合、前記所定の標的に結合することができる。「親和性」又は「結合親和性」は、平衡解離定数(KD)によって測定されることが多い。好ましくは、用語「有意な親和性」は、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、又は10-12M以下の解離定数(KD)で所定の標的に結合することを指す。
【0111】
抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、それが標的に対して有意な親和性を有さず、標準アッセイにおいて前記標的に有意に結合しない、特に、検出可能に結合しない場合、前記標的に(実質的に)結合することができない。好ましくは、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、最大2、好ましくは10、より好ましくは20、特に、50、若しくは100μg/ml、又はそれ以上の濃度で存在する場合、前記標的に検出可能な程度に結合しない。好ましくは、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、これが、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートが結合することができる所定の標的への結合性についてのKDより、少なくとも10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、又は106倍高いKDで一標的に結合する場合、前記標的に対して有意な親和性をまったく有さない。例えば、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートの、該抗体又は抗体-薬物コンジュゲートが結合することができる標的への結合性についてのKDが10-7Mである場合、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートが有意な親和性をまったく有さない一標的への結合性についてのKDは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2M、又は10-1Mである。
【0112】
抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、これが、所定の標的に結合することができる一方、他の標的に結合することができず、即ち、他の標的に対して有意な親和性を有さず、標準的なアッセイで他の標的に有意に結合しない場合、前記所定の標的に特異的である。本発明によれば、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、これが、腫瘍抗原に結合することができるが、他の標的に(実質的に)結合することができない場合、腫瘍抗原に特異的である。好ましくは、このような他の標的に対する親和性及びこれらへの結合性が、腫瘍抗原無関係のタンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ヒト血清アルブミン(HSA)、又はMHC分子若しくはトランスフェリン受容体等の非腫瘍抗原膜貫通タンパク質、又は任意の他の指定されたポリペプチド等に対する親和性又はこれらへの結合性を有意に超えない場合、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、腫瘍抗原に特異的である。好ましくは、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートは、これが、特異的でない標的への結合性についてのKDより、少なくとも10分の1、100分の1、103分の1、104分の1、105分の1、又は106分の1低いKDで所定の前記標的に結合する場合、所定の標的に特異的である。例えば、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートの、これが特異的である標的への結合性についてのKDが10-7Mである場合、これが特異的でない標的への結合性についてのKDは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2M、又は10-1Mであるはずである。
【0113】
抗体の標的への結合性は、任意の適当な方法を使用して実験的に判定することができ、例えば、Berzofskyら「Antibody-Antigen Interactions」、Fundamental Immunology、Paul, W. E.編、Raven Press New York、N Y (1984)、Kuby、Janis Immunology、W. H. Freeman and Company New York、N Y (1992)、及び本明細書に記載の方法を参照。親和性は、平衡透析によって;製造者が概説した一般的な手順を使用してBIAcore 2000計測器を使用することによって;放射標識された標的抗原を使用するラジオイムノアッセイによって;又は当業者に公知の別の方法によって等、慣例的な技法を使用して容易に判定することができる。親和性データは、例えば、Scatchardら、Ann N.Y. Acad. ScL、51:660 (1949)の方法によって分析することができる。特定の抗体-抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件、例えば、塩濃度、pH下で測定される場合、変動し得る。したがって、親和性並びに他の抗原結合性パラメータ、例えば、KD、IC50の測定は、抗体及び抗原の標準化された溶液、並びに標準化された緩衝液を用いて行われることが好ましい。
【0114】
用語「天然に存在する」は、本明細書において使用する場合、物体に適用する場合、物体が自然において見つかり得る事実を指す。例えば、天然源から単離することができ、実験室で人によって意図的に改変されていない、生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0115】
用語「再配列された」は、本明細書において使用する場合、Vセグメントが、それぞれ完全なVHドメイン又はVLドメインを本質的にコードするコンホメーション内でD-Jセグメント又はJセグメントに直接隣接して位置している重鎖又は軽鎖の免疫グロブリン座位の構成を指す。再配列された免疫グロブリン(抗体)遺伝子座は、生殖系列DNAと比較することによって同定することができ、再配列された遺伝子座は、少なくとも1つの組換えられた七量体/九量体相同性エレメントを有することになる。
【0116】
用語「再配列されていない」又は「生殖系列構成」は、Vセグメントを参照して本明細書で使用する場合、VセグメントがDセグメント又はJセグメントに直接隣接しているように組換えられていない構成を指す。
【0117】
本発明によれば、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2中に存在するエピトープ、好ましくは、CLDN18.2の細胞外ドメイン、特に、第1の細胞外ドメイン、好ましくは、CLDN18.2のアミノ酸29位~78位内に位置したエピトープに結合することができる抗体である。特定の実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、(i)CLDN18.1上に存在しないCLDN18.2上のエピトープ、好ましくは配列番号3、4、及び5、(ii)CLDN18.2-ループ1上に局在化したエピトープ、好ましくは配列番号8、(iii)CLDN18.2-ループ2上に局在化したエピトープ、好ましくは配列番号10、(iv)CLDN18.2-ループD3上に局在化したエピトープ、好ましくは配列番号11、(v)CLDN18.2-ループ1及びCLDN18.2-ループD3を包含するエピトープ、又は(vi)CLDN18.2-ループD3上に局在化した非グリコシル化エピトープ、好ましくは、配列番号9に結合することができる抗体である。
【0118】
本発明によれば、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、好ましくはCLDN18.2に結合する能力を有するが、CLDN18.1に結合する能力を有さない抗体である。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2に特異的である。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、好ましくは細胞表面上で発現されるCLDN18.2に結合する能力を有する抗体である。特定の好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、生細胞の表面上に存在するCLDN18.2の天然エピトープに結合する。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号1、3~11、44、46、及び48~50からなる群から選択される1種又は複数のペプチドに結合する。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、上述のタンパク質、ペプチド、又はこれらの免疫原性断片若しくは誘導体に特異的である。CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号1、3~11、44、46、及び48~50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質若しくはペプチド、又は前記タンパク質若しくはペプチドを発現する核酸若しくは宿主細胞で動物を免疫する工程を含む方法によって得ることができる。好ましくは、抗体は、がん細胞、特に、上述したがんタイプの細胞に結合し、好ましくは、非がん性細胞に結合しない。
【0119】
特に好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、DSMZ(Mascheroder Weg 1b、31824 Braunschweig、ドイツ;新規住所: Inhoffenstr. 7B、31824 Braunschweig、ドイツ)で寄託され、以下の名称及び受託番号を有するハイブリドーマによって生成される:
a.182-D1106-055、受託番号DSM ACC2737、2005年10月19日に寄託
b.182-D1106-056、受託番号DSM ACC2738、2005年10月19日に寄託
c.182-D1106-057、受託番号DSM ACC2739、2005年10月19日に寄託
d.182-D1106-058、受託番号DSM ACC2740、2005年10月19日に寄託
e.182-D1106-059、受託番号DSM ACC2741、2005年10月19日に寄託
f.182-D1106-062、受託番号DSM ACC2742、2005年10月19日に寄託、
g.182-D1106-067、受託番号DSM ACC2743、2005年10月19日に寄託
h.182-D758-035、受託番号DSM ACC2745、2005年11月17日に寄託
i.182-D758-036、受託番号DSM ACC2746、2005年11月17日に寄託
j.182-D758-040、受託番号DSM ACC2747、2005年11月17日に寄託
k.182-D1106-061、受託番号DSM ACC2748、2005年11月17日に寄託
l.182-D1106-279、受託番号DSM ACC2808、2006年10月26日に寄託
m.182-D1106-294、受託番号DSM ACC2809、2006年10月26日に寄託、
n.182-D1106-362、受託番号DSM ACC2810、2006年10月26日に寄託。
【0120】
本発明による好適な抗体は、上述したハイブリドーマ、即ち、182-D1106-055の場合では37G11、182-D1106-056の場合では37H8、182-D1106-057の場合では38G5、182-D1106-058の場合では38H3、182-D1106-059の場合では39F11、182-D1106-062の場合では43A11、182-D1106-067の場合では61C2、182-D758-035の場合では26B5、182-D758-036の場合では26D12、182-D758-040の場合では28D10、182-D1106-061の場合では42E12、182-D1106-279の場合では125E1、182-D1106-294の場合では163E12、及び182-D1106-362の場合では175D10;によって生成されるもの、及びこれらから得られるもの、並びにそれらのキメラ化形態及びヒト化形態である。
【0121】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、受託番号DSM ACC2737、DSM ACC2738、DSM ACC2739、DSM ACC2740、DSM ACC2741、DSM ACC2742、DSM ACC2743、DSM ACC2745、DSM ACC2746、DSM ACC2747、DSM ACC2748、DSM ACC2808、DSM ACC2809、又はDSM ACC2810の下で寄託されたクローンによって産生され、且つ/又はそのクローンから得られる抗体、(ii)(i)に属する抗体のキメラ化形態又はヒト化形態である抗体、(iii)(i)に属する抗体の特異性を有する抗体、及び(iv)(i)に属し、且つ好ましくは(i)に属する抗体の特異性を有する抗体の抗原結合性部分又は抗原結合性部位、特に可変領域を含む抗体からなる群から選択される抗体である。
【0122】
好適な抗体、特にキメラ化抗体及びこれらの配列を、以下の表に示す。
【0123】
【0124】
好適な実施形態では、抗体、特に、本発明による抗体のキメラ化形態は、配列番号13によって表されるアミノ酸配列又はその断片等のヒト重鎖定常領域に由来するアミノ酸配列を含む重鎖定常領域(CH)を含む抗体を含む。さらなる好適な実施形態では、抗体、特に、本発明による抗体のキメラ化形態は、配列番号12によって表されるアミノ酸配列又はその断片等のヒト軽鎖定常領域に由来するアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域(CL)を含む抗体を含む。特定の好適な実施形態では、抗体、特に、本発明による抗体のキメラ化形態は、配列番号13によって表されるアミノ酸配列又はその断片等のヒトCHに由来するアミノ酸配列を含むCHを含み、配列番号12によって表されるアミノ酸配列又はその断片等のヒトCLに由来するアミノ酸配列を含むCLを含む抗体を含む。
【0125】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、カッパマウス可変軽鎖、ヒトカッパ軽鎖定常領域アロタイプKm(3)、マウス重鎖可変領域、ヒトIgG1定常領域アロタイプG1m(3)を含む、キメラマウス/ヒトIgG1モノクローナル抗体である。
【0126】
ある特定の好適な実施形態では、抗体のキメラ化形態は、配列番号14、15、16、17、18、19、51からなる群から選択されるアミノ酸配列、及びその断片を含む重鎖を含み、且つ/又は配列番号20、21、22、23、24、25、26、27、28からなる群から選択されるアミノ酸配列、及びその断片を含む軽鎖を含む抗体を含む。
【0127】
ある特定の好適な実施形態では、抗体のキメラ化形態は、以下の可能性(i)~(ix)から選択される重鎖と軽鎖の組合せを含む抗体を含む:
(i)配列番号14によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号21によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖、
(ii)配列番号15によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号20によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖、
(iii)配列番号16によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号22によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖、
(iv)配列番号18によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号25によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖、
(v)配列番号17によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号24によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖、
(vi)配列番号19によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号23によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖、
(vii)配列番号19によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号26によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖、
(viii)配列番号19によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号27によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖、
(ix)配列番号19によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号28によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖、及び
(x)配列番号51によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む重鎖、及び配列番号24によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含む軽鎖。
【0128】
(ii)、(v)、又は(x)による抗体が、「CLDN18.2に結合する能力を有する抗体」の好適な実施形態である。(v)又は(x)による抗体が特に好適である。
【0129】
上記で使用した「断片」又は「アミノ酸配列の断片」は、抗体配列の一部、即ち、N末端及び/又はC末端で短縮された抗体配列を表し、それが抗体中で前記抗体配列と入れ替わるとき、前記抗体のCLDN18.2への結合性に関する。好ましくは、アミノ酸配列の断片は、前記アミノ酸配列に由来するアミノ酸残基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を含む。配列番号14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、及び51からなる群から選択されるアミノ酸配列の断片は、好ましくはN末端の17、18、19、20、21、22、又は23アミノ酸が除去されている前記配列に関する。
【0130】
好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号29、30、31、32、33、34からなる群から選択されるアミノ酸配列、及びその断片を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0131】
好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号35、36、37、38、39、40、41、42、43からなる群から選択されるアミノ酸配列、及びその断片を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0132】
ある特定の好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、以下の可能性(i)~(ix)から選択される重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)の組合せを含む:
(i)配列番号29によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVH、及び配列番号36によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVL、
(ii)配列番号30によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVH、及び配列番号35によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVL、
(iii)配列番号31によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVH、及び配列番号37によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVL、
(iv)配列番号33によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVH、及び配列番号40によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVL、
(v)配列番号32によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVH、及び配列番号39によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVL、
(vi)配列番号34によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVH、及び配列番号38によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVL、
(vii)配列番号34によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVH、及び配列番号41によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVL、
(viii)配列番号34によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVH、及び配列番号42によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVL、
(ix)配列番号34によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVH、及び配列番号43によって表されるアミノ酸配列又はその断片を含むVL。
【0133】
(ii)又は(v)による抗体が、「CLDN18.2に結合する能力を有する抗体」の好適な実施形態である。(v)による抗体が特に好適である。
【0134】
本発明によれば、用語「断片」は、特に、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)の1つ又は複数、好ましくは少なくともCDR3可変領域を指す。一実施形態では、前記相補性決定領域(CDR)の1つ又は複数は、一連の相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3から選択される。特に好適な実施形態では、用語「断片」は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3を指す。
【0135】
好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、以下の実施形態(i)~(vi)から選択される相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3のセットを含むVHを含む:
(i)CDR1:配列番号14の45位~52位、CDR2:配列番号14の70位~77位、CDR3:配列番号14の116位~125位、
(ii)CDR1:配列番号15の45位~52位、CDR2:配列番号15の70位~77位、CDR3:配列番号15の116位~126位、
(iii)CDR1:配列番号16の45位~52位、CDR2:配列番号16の70位~77位、CDR3:配列番号16の116位~124位、
(iv)CDR1:配列番号17の45位~52位、CDR2:配列番号17の70位~77位、CDR3:配列番号17の116位~126位、
(v)CDR1:配列番号18の44位~51位、CDR2:配列番号18の69位~76位、CDR3:配列番号18の115位~125位、及び
(vi)CDR1:配列番号19の45位~53位、CDR2:配列番号19の71位~78位、CDR3:配列番号19の117位~128位。
【0136】
好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、以下の実施形態(i)~(ix)から選択される相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3のセットを含むVLを含む:
(i)CDR1:配列番号20の47位~58位、CDR2:配列番号20の76位~78位、CDR3:配列番号20の115位~123位、
(ii)CDR1:配列番号21の49位~53位、CDR2:配列番号21の71位~73位、CDR3:配列番号21の110位~118位、
(iii)CDR1:配列番号22の47位~52位、CDR2:配列番号22の70位~72位、CDR3:配列番号22の109位~117位、
(iv)CDR1:配列番号23の47位~58位、CDR2:配列番号23の76位~78位、CDR3:配列番号23の115位~123位、
(v)CDR1:配列番号24の47位~58位、CDR2:配列番号24の76位~78位、CDR3:配列番号24の115位~123位、
(vi)CDR1:配列番号25の47位~58位、CDR2:配列番号25の76位~78位、CDR3:配列番号25の115位~122位、
(vii)CDR1:配列番号26の47位~58位、CDR2:配列番号26の76位~78位、CDR3:配列番号26の115位~123位、
(viii)CDR1:配列番号27の47位~58位、CDR2:配列番号27の76位~78位、CDR3:配列番号27の115位~123位、及び
(ix)CDR1:配列番号28の47位~52位、CDR2:配列番号28の70位~72位、CDR3:配列番号28の109位~117位。
【0137】
好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、以下の実施形態(i)~(ix)から選択される相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3のセットをそれぞれ含むVHとVLの組合せを含む:
(i)VH:CDR1:配列番号14の45位~52位、CDR2:配列番号14の70位~77位、CDR3:配列番号14の116位~125位、VL: CDR1:配列番号21の49位~53位、CDR2:配列番号21の71位~73位、CDR3: 配列番号21の110位~118位、
(ii)VH:CDR1:配列番号15の45位~52位、CDR2:配列番号15の70位~77位、CDR3:配列番号15の116位~126位、VL:CDR1:配列番号20の47位~58位、CDR2:配列番号20の76位~78位、CDR3:配列番号20の115位~123位、
(iii)VH:CDR1:配列番号16の45位~52位、CDR2:配列番号16の70位~77位、CDR3:配列番号16の116位~124位、VL:CDR1:配列番号22の47位~52位、CDR2:配列番号22の70位~72位、CDR3:配列番号22の109位~117位、
(iv)VH:CDR1:配列番号18の44位~51位、CDR2:配列番号18の69位~76位、CDR3:配列番号18の115位~125位、VL:CDR1:配列番号25の47位~58位、CDR2:配列番号25の76位~78位、CDR3:配列番号25の115位~122位、
(v)VH:CDR1:配列番号17の45位~52位、CDR2:配列番号17の70位~77位、CDR3:配列番号17の116位~126位、VL:CDR1:配列番号24の47位~58位、CDR2:配列番号24の76位~78位、CDR3:配列番号24の115位~123位、
(vi)VH:CDR1:配列番号19の45位~53位、CDR2:配列番号19の71位~78位、CDR3:配列番号19の117位~128位、VL:CDR1:配列番号23の47位~58位、CDR2:配列番号23の76位~78位、CDR3:配列番号23の115位~123位、
(vii)VH:CDR1:配列番号19の45位~53位、CDR2:配列番号19の71位~78位、CDR3:配列番号19の117位~128位、VL:CDR1:配列番号26の47位~58位、CDR2:配列番号26の76位~78位、CDR3:配列番号26の115位~123位、
(viii)VH:CDR1:配列番号19の45位~53位、CDR2:配列番号19の71位~78位、CDR3:配列番号19の117位~128位、VL:CDR1:配列番号27の47位~58位、CDR2:配列番号27の76位~78位、CDR3: 配列番号27の115位~123位、及び
(ix)VH:CDR1:配列番号19の45位~53位、CDR2:配列番号19の71位~78位、CDR3:配列番号19の117位~128位、VL:CDR1:配列番号28の47位~52位、CDR2:配列番号28の70位~72位、CDR3:配列番号28の109位~117位。
【0138】
(ii)又は(v)による抗体が、「CLDN18.2に結合する能力を有する抗体」の好適な実施形態である。(v)による抗体が特に好適である。
【0139】
さらなる好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、好ましくは、CLDN18.2に対するモノクローナル抗体の、好ましくは本明細書に記載のCLDN18.2に対するモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)の1つ又は複数、好ましくは少なくともCDR3可変領域を含み、好ましくは本明細書に記載の重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)の1つ又は複数、好ましくは少なくともCDR3可変領域を含む。一実施形態では、相補性決定領域(CDR)の前記1つ又は複数は、本明細書に記載の相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3のセットから選択される。特に好適な実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、好ましくは、CLDN18.2に対するモノクローナル抗体の、好ましくは本明細書に記載のCLDN18.2に対するモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3を含み、好ましくは本明細書に記載の重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0140】
一実施形態では、本明細書に記載の1つ又は複数のCDR、CDRのセット、又はCDRのセットの組合せを含む抗体は、これらの介在性のフレームワーク領域と一緒に前記CDRを含む。好ましくは、この部分は、第1及び第4のフレームワーク領域のいずれか又は両方の少なくとも約50%も含み、この50%は、第1のフレームワーク領域のC末端の50%、及び第4のフレームワーク領域のN末端の50%である。組換えDNA技法によって作製される抗体を構築すると、免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えば、ダイアボディの生成における)、又はタンパク質標識を含めたさらなるタンパク質配列に本発明の可変領域を接合するリンカーの導入を含めた、クローニング又は他の操作工程を促進するために導入されるリンカーによってコードされる可変領域に残基N末端又はC末端を導入することができる。
【0141】
一実施形態では、本明細書に記載の1つ又は複数のCDR、CDRのセット、又はCDRのセットの組合せを含む抗体は、ヒト抗体フレームワーク内に前記CDRを含む。
【0142】
自己の重鎖に関して、特定の鎖、又は特定の領域若しくは配列を含む抗体への本明細書での言及は、好ましくは、前記抗体のすべての重鎖が前記特定の鎖、領域、又は配列を含む状況に関する。このことは、抗体の軽鎖に対応して当てはまる。
【0143】
一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、本発明によれば、本明細書に記載のCLDN18.2結合抗体と同じ、若しくは本質的に同じエピトープを認識し、即ちそれに結合し、且つ/又は前記CLDN18.2-結合抗体とCLDN18.2への結合について競合する抗体を指す。
【0144】
本発明によれば、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、特に、抗体-薬物コンジュゲート中に存在する場合、好ましくは、抗体及び/又は抗体-薬物コンジュゲートのエンドサイトーシスを可能にするのに適切なCLDN18.2に対する親和性及び/又は特異性を有する。
【0145】
用語「エンドサイトーシス」は、真核細胞が形質膜のセグメント、細胞-表面受容体、及び細胞外液由来の成分を内部移行するプロセスを指す。エンドサイトーシス機構は、受容体媒介エンドサイトーシスを含む。用語「受容体媒介エンドサイトーシス」は、リガンドが、その標的に結合すると、膜が陥入しくびり切れることを誘因し、細胞質ゾル内に内部移行及び送達され、又は適切な細胞内コンパートメントに移される生物学的機構を指す。
【0146】
本発明は、「CLDN18.2に結合する能力を有する抗体」が、任意の「CLDN18.2への結合剤」を包含する意味を有する実施形態も想定する。本発明によれば、「CLDN18.2への結合剤」は、CLDN18.2への結合能力を有する任意の化合物を含む。好ましくは、このような結合剤は、CLDN18.2に対する少なくとも1つの結合ドメインを含む。用語は、それだけに限らないが、ナノボディ、アフィボディ、アンチカリン、DARPin、モノボディ、アビマー、及びマイクロボディを含めた、CLDN18.2への結合能力を有するすべての人工結合分子(足場)を含む。一実施形態では、前記結合剤は、CLDN18.2の細胞外ドメインに結合する。一実施形態では、前記結合剤は、生細胞の表面上に存在するCLDN18.2の天然エピトープに結合する。一実施形態では、前記結合剤は、CLDN18.2の第1の細胞外ループに結合する。一実施形態では、CLDN18.2への前記結合は、特異的結合である。
【0147】
用語「結合ドメイン」は、所与の標的構造/抗原/エピトープに結合し/それと相互作用する例えば抗体の構造を本発明に関連して特徴付ける。したがって、本発明による結合ドメインは、「抗原相互作用部位」を指定する。
【0148】
がん細胞に治療効果を発揮する任意の作用物質を、抗CLDN18.2抗体又はその誘導体へのコンジュゲーションのための薬物として使用することができる。好ましくは、薬物のコンジュゲーションは、本明細書に論じられる通り、抗体の結合特性、特に、特異性を変更せず、又は有意に変更しない。したがって、本発明による抗体-薬物コンジュゲートは、好ましくは、コンジュゲーションに使用される抗体と同じ、又は本質的に同じ結合特性、特に特異性を有する。したがって、ある特定の結合特性が、コンジュゲーションに使用される抗体について本明細書に記載されている場合、抗体-薬物コンジュゲートもそのような結合特性を有することが好適である。例えば、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体が、CLDN18.2の細胞外ドメインに結合し、且つ/又はCLDN18.2の第1の細胞外ループに結合すると記載されている場合、抗体-薬物コンジュゲートもCLDN18.2の細胞外ドメインに結合し、且つ/又はCLDN18.2の第1の細胞外ループに結合することが好適である。
【0149】
典型的には、薬物は、細胞傷害性剤又は細胞増殖抑制剤である。細胞毒又は細胞傷害性剤は、細胞に有害である、特に細胞を殺傷する任意の作用物質を含む。
【0150】
細胞傷害性剤の有用なクラスとしては、例えば、抗チューブリン剤、DNA副溝結合剤(例えば、エンジイン及びレキシトロプシン)、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、白金錯体、例えば、シスプラチン、単(白金)、二(白金)、及び三核白金錯体、並びにカルボプラチン)、アントラサイクリン、抗生物質、葉酸代謝拮抗薬、代謝拮抗剤、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ化ピリミジン、イオノフォア、ニトロソ尿素、プラチノール、プレフォーミング化合物、プリン代謝拮抗剤、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド等がある。
【0151】
個々の細胞傷害性剤としては、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5-アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシイミン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC-1065、クロランブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(以前にアクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エストロゲン、5-フルオロデオキシウリジン(5-fluordeoxyuridine)、5-フルオロウラシル、グラミシジンD、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、プリカマイシン、プロカルビジン、ストレプトゾトシン、テノポシド、6-チオグアニン、thioTEPA、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP-16、及びVM-26がある。
【0152】
抗チューブリン剤の例としては、それだけに限らないが、ドラスタチン(例えば、オーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)、メイタンシノイド、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル)、T67(Tularik社)、ビンカアルカロイド(vinca alkyloid)(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例えば、エポチロンA及びB)、ノコダゾール、コルヒチン及びコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン(cryptophysins)、セマドチン、コンブレタスタチン、ジスコデルモリド、並びにエロイテロビンがある。
【0153】
具体的な実施形態では、細胞傷害性剤又は細胞増殖抑制剤は、オーリスタチンE(ドラスタチン-10としても当技術分野で公知)又はその誘導体である。典型的には、オーリスタチンE誘導体は、例えば、オーリスタチンEとケト酸との間で形成されたエステルである。例えば、オーリスタチンEは、パラアセチル安息香酸又はベンゾイル吉草酸と反応して、それぞれAEB及びAEVBを生成することができる。他の典型的なオーリスタチン誘導体としては、AFP、MMAF、及びMMAEがある。
【0154】
ある特定の実施形態では、細胞傷害性剤又は細胞増殖抑制剤は、メイタンシノイド、抗チューブリン剤の別の群である。例えば、具体的な実施形態では、メイタンシノイドは、メイタンシン、DM-1、又はDM-4である。
【0155】
メイタンシノイドは、有糸分裂において細胞の増殖を阻害する強力な微小管標的化合物である。メイタンシノイドは、塩素化ベンゼン環に付着した19員アンサマクロライド構造であるメイタンシンの誘導体である。メイタンシンは、以下の式を有する:
【0156】
【0157】
ある特定の微生物もメイタンシノイド、例えば、メイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを産生することが発見された(米国特許第4,151,042号)。合成メイタンシノール及びメイタンシノール類似体は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,137,230号;同第4,248,870号;同第4,256,746号;同第4,260,608号;同第4,265,814号;同第4,294,757号;同第4,307,016号;同第4,308,268号;同第4,308,269号;同第4,309,428号;同第4,313,946号;同第4,315,929号;同第4,317,821号;同第4,322,348号;同第4,331,598号;同第4,361,650号;同第4,364,866号;同第4,424,219号;同第4,362,663号;及び同第4,371,533号、並びにKawaiら(1984) Chem. Pharm. Bull.、3441~3451に報告されている。
【0158】
メイタンシノイドは、当技術分野で周知であり、公知の技法によって合成し、又は天然源から単離することができる。本発明による特に好適なメイタンシノイドは、メイタンシンのチオール含有誘導体、例えば、DM1及びDM4である。このようなメイタンシンのチオール含有誘導体としては、カルボニル基に結合したメチル基が、-R-SH基(式中、Rは、アルキレン基又は原子の他の炭素含有基を表す)等の遊離スルフヒドリル基を含有する基によって置き換えられている化合物がある。
【0159】
DM1は、メルタンシンとしても公知であり、以下の式を有するメイタンシノイドである:
【0160】
【0161】
特に、用語「メルタンシン」又は「DM1」は、化合物N2'-デアセチル-N2'-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシンを指す。
【0162】
「DM4」は、化合物N2'-デアセチル-N2'-(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-メイタンシンを指す。
【0163】
抗CLDN18.2抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子の生物活性を有意に減らすことなく、抗CLDN18.2抗体をメイタンシノイド分子に化学的に連結することによって調製することができる。平均で3~4個のメイタンシノイド分子が抗体分子1個当たりにコンジュゲートされ得るが、毒素/抗体の1個の分子でも、裸の抗体の使用に対して細胞傷害性を増強することが予期される。
【0164】
この点において、用語「少なくとも1つの毒素薬部分に共有結合的に付着している抗体」は、同じ薬物の1個又は複数の分子が抗体分子に共有結合的に付着している状況、及び異なる薬物が抗体分子に共有結合的に付着している状況を含む。後者の状況では、異なる薬物のそれぞれの1個若しくは複数の分子が抗体分子に付着されている場合があり、又はその組合せの場合がある(例えば、1種の薬物の1個の分子が付着されている一方、別の薬物のいくつかの分子が付着されている)。
【0165】
本発明の一部の実施形態では、抗体は、ドラスタチン又はドラスタチン(dolostatin)ペプチド類似体及び誘導体、オーリスタチンにコンジュゲートされている(参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,635,483号;同第5,780,588号)。オーリスタチンは、ドラスタチン10、海洋軟体動物、タツナミガイ(Dolabela auricularia)に由来する天然産物の合成類似体である。メイタンシノイドのように、オーリスタチンは、微小管ディスラプターである。ドラスタチン又はオーリスタチン薬物部分は、ペプチド性薬物部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端を通じて抗体に付着させることができる。
【0166】
例示的なオーリスタチン実施形態は、好ましくはN末端連結されているMMAE及びMMAF等のモノメチルオーリスタチン薬物部分を含む。
【0167】
MMAEは、モノメチルオーリスタチンEとしても公知であり、以下の式を有する:
【0168】
【0169】
特に、用語「MMAE」は、化合物(S)-N-((3R,4S,5S)-1-((S)-2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル)-N,3-ジメチル-2-((S)-3-メチル-2-(メチルアミノ)ブタンアミド)ブタンアミドを指す。MMAEは、実際にはデスメチル-オーリスタチンEであり、即ち、N末端アミノ基は、オーリスタチンE自体のように2個の代わりに1個のみのメチル置換基を有する。
【0170】
抗体-vcMMAEコンジュゲート等の抗体-vcオーリスタチンコンジュゲートが、本発明によれば特に好適である。本発明によれば、用語「抗体-vcオーリスタチン」又は「vcMMAE」は、リソソーム切断可能ジペプチド、バリン-シトルリン(vc)を含むリンカーを介して、抗体に連結されたMMAE等のオーリスタチンを含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を指す。
【0171】
MMAFは、モノメチルオーリスタチンFとしても公知であり、化合物(S)-2-((2R,3R)-3-((S)-1-((3R,4S,5S)-4-((S)-N,3-ジメチル-2-((S)-3-メチル-2-(メチルアミノ)ブタンアミド)ブタンアミド)-3-メトキシ-5-メチルヘプタノイル)ピロリジン-2-イル)-3-メトキシ-2-メチルプロパンアミド)-3-フェニルプロパン酸を指す。
【0172】
抗体-薬物コンジュゲートの生成は、当業者に公知の任意の技法によって達成することができる。抗体-薬物コンジュゲートは、慣例的な技法に従って薬物を抗体に結合させることによって調製され得る。抗体及び薬物は、これらの自己のリンカー基を介して互いに直接的に、又はリンカー若しくは他の物質を介して間接的に結合され得る。
【0173】
いくつかの異なる反応が、薬物の抗体への共有結合的付着に利用可能である。これは、リシンのアミン基、グルタミン酸及びアスパラギン酸の遊離カルボン酸基、システインのスルフヒドリル基、並びに芳香族アミノ酸の様々な部分を含めた抗体分子のアミノ酸残基の反応によって達成されることが多い。共有結合的付着の最も一般に使用される非特異的方法の1つは、化合物のカルボキシ(又はアミノ)基を抗体のアミノ(又はカルボキシ)基に連結するためのカルボジイミド反応である。更に、ジアルデヒド又はイミドエステル等の二官能性剤が、化合物のアミノ基を抗体分子のアミノ基に連結するのに使用されている。シッフ塩基反応も、薬物を抗体に付着させるのに利用可能である。この方法は、グリコール又はヒドロキシ基を含有する薬物の過ヨウ素酸酸化を伴い、したがってアルデヒドを形成し、次いでこれは抗体分子と反応させられる。付着は、抗体分子のアミノ基とのシッフ塩基の形成を介して起こる。イソチオシアネートも、薬物を抗体に共有結合的に付着させるためのカップリング剤として使用することができる。他の技法は、当業者に公知であり、本発明の範囲内である。
【0174】
抗体-薬物コンジュゲートを作製するための当技術分野で公知の多くの連結基が存在する。リンカーは、好ましくは、抗体及び薬物のいずれか又は両方と反応する1種又は複数の官能基を含む。官能基の例としては、アミノ、カルボキシル、メルカプト、マレイミド、及びピリジニル基がある。
【0175】
本発明の一実施形態では、抗体は、二官能性架橋試薬を介して薬物と連結される。本明細書で使用する場合、「二官能性架橋試薬」は、2つの反応基を有する試薬を指し、この反応基の一方は、抗体と反応することができ、一方、他方は、薬物と反応して抗体を薬物と連結し、それによってコンジュゲートを形成することができる。リンカー試薬が、薬物が保持しているもの、例えば、細胞傷害性、及び抗体の標的化特性をもたらす限り、任意の適当な二官能性架橋試薬を本発明に関連して使用することができる。好ましくは、リンカー分子は、化学結合によって薬物を抗体に接合し、その結果、薬物及び抗体は、互いに化学的にカップリングされている(例えば、共有結合的に結合している)。
【0176】
一実施形態では、二官能性架橋試薬は、切断不可能リンカーを含む。切断不可能リンカーは、メイタンシノイド等の薬物を安定な共有結合性様式で抗体に連結することができる任意の化学部分である。好ましくは、切断不可能リンカーは、生理的条件下で、特に、細胞内部で切断可能でない。したがって、切断不可能リンカーは、薬物又は抗体が活性なままである条件で、酸誘起切断、光誘起切断、ペプチダーゼ誘起切断、エステラーゼ誘起切断、及びジスルフィド結合切断に対して実質的に耐性である。薬物と抗体との間で切断不可能リンカーを形成する適当な架橋試薬は、当技術分野で周知である。一実施形態では、薬物は、チオエーテル結合によって抗体に連結される。
【0177】
特に好適な一実施形態では、連結試薬は、切断可能リンカーである。好ましくは、切断可能リンカーは、生理的条件下で、特に、細胞内部で切断可能である。適当な切断可能リンカーの例としては、ジスルフィドリンカー、酸に不安定なリンカー、光解離性リンカー、ペプチダーゼに不安定なリンカー、及びエステラーゼに不安定なリンカーがある。
【0178】
リンカーの例としては、それだけに限らないが、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)、N-スクシンイミジル-4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、N-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(LC-SMCC)、4-マレイミドブチル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(GMBS)、3-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N-(α-マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル-6-(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N-スクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)-ブチレート(SMPB)、N-(p-マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、及びN-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)がある。バリン-シトルリン(Val-Cit)又はアラニン-フェニルアラニン(ala-phe)等のペプチドリンカーも使用することができ、上述のリンカーのいずれも、適切な組合せで使用することができる。
【0179】
ジスルフィド含有リンカーは、生理的条件下で起こり得るジスルフィド交換によって切断可能なリンカーである。更に他の実施形態では、リンカーは、還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N-スクシンイミジル-5-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)、及びSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)を使用して形成され得るものを含めて、様々なジスルフィドリンカーが当技術分野で公知である。
【0180】
酸に不安定なリンカーは、酸性pHで切断可能なリンカーである。例えば、ある特定の細胞内コンパートメント、例えば、エンドソーム及びリソソームは、酸性pH(pH4~5)を有し、酸に不安定なリンカーを切断するのに適した条件を提供する。酸に不安定なリンカーは、血液中の条件等の中性pH条件下で相対的に安定であるが、pH5.5又は5.0未満で不安定である。例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケタール等を使用することができる。
【0181】
光解離性リンカーは、光にアクセス可能である体表及び多くの体腔において有用である。更に、赤外光は、組織を貫通することができる。
【0182】
ペプチダーゼに不安定なリンカーは、細胞の内側又は外側のある特定のペプチドを切断するのに使用され得る。一実施形態では、切断可能リンカーは、穏やかな条件、即ち、細胞傷害性剤の活性が影響されない細胞内の条件下で切断される。
【0183】
リンカーは、例えば、それだけに限らないが、リソソーム又はエンドソームプロテアーゼを含めた細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素によって切断されるペプチジルリンカーであり得、又はそれを含み得る。典型的には、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長又は少なくとも3アミノ酸長である。切断剤は、カテプシンB及びD並びにプラスミンを含むことができ、これらのすべては、ジペプチド薬誘導体を加水分解し、標的細胞内部で活性薬物を放出することが公知である。例えば、がん組織内で高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼカテプシン-Bによって切断可能であるペプチジルリンカーを使用することができる(例えば、Phe-Leu又はGly-Phe-Leu-Glyリンカー)。具体的な実施形態では、細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチジルリンカーは、バリン-シトルリン(Val-Cit;vc)リンカー又はフェニルアラニン-リシン(Phe-Lys)リンカーである。治療剤の細胞内タンパク質分解放出を使用する1つの利点は、作用物質は、コンジュゲートされているとき典型的には減弱されており、コンジュゲートの血清安定性は、典型的には高いことである。
【0184】
特に好適な一実施形態では、本発明によるリンカーは、ジペプチドバリン(Val)-シトルリン(Cit)(vc)を含み、又はそれからなり、それは、腫瘍細胞内部でカテプシンによって切断される。
【0185】
一実施形態では、薬物は、アミノ及びスルフヒドリル反応性ヘテロ二官能性タンパク質架橋剤を介してCLDN18.2に結合する能力を有する抗体にカップリングされたDM4等のメイタンシノイドであり、この架橋剤は、抗体の一級アミン(タンパク質のリシン側鎖又はN末端において見つかる)及びメイタンシノイドのスルフヒドリル(sulhydryl)基と反応して可逆性ジスルフィド結合を生じる。一実施形態では、アミノ及びスルフヒドリル反応性ヘテロ二官能性タンパク質架橋剤は、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)であり、これは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを介して抗体の一級アミン(タンパク質のリシン側鎖又はN末端に見つかる)と及びピリジニルジスルフィド基を介してDM4のスルフヒドリル基と反応して可逆性ジスルフィド結合を生じる(
図1)。
【0186】
一実施形態では、薬物は、カテプシン切断可能ペプチドリンカー、特に、Val-Cit(vc)等のペプチドリンカーを介してCLDN18.2に結合する能力を有する抗体にカップリングされたMMAE等のオーリスタチンである。一実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、例えば、リシン残基の遊離アミンと反応するヘテロ二官能性リンカー2-IT(2-イミノチオラン)でチオール化されている。
【0187】
特に好適な一実施形態では、本発明による抗体-薬物コンジュゲートは、DM4(好ましくはそのスルフヒドリル基によって)にカップリングされた(好ましくはそのアミノ基よって)、配列番号32によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号39によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む抗体を含む。一実施形態では、抗体は、SPDBリンカーによってDM4にカップリングされている。
【0188】
一実施形態では、本発明による抗体-薬物コンジュゲートは、DM4(好ましくはそのスルフヒドリル基によって)にカップリングされた(好ましくはそのアミノ基よって)、配列番号17若しくは51によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号24によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む抗体を含む。一実施形態では、抗体は、SPDBリンカーによってDM4にカップリングされている。
【0189】
特に好適な一実施形態では、本発明による抗体-薬物コンジュゲートは、MMAE(好ましくはそのN末端アミノ基によって)にカップリングされた(好ましくはそのアミノ基よって)、配列番号32によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号39によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む抗体を含む。一実施形態では、抗体は、ジペプチドvcを含むリンカーによってMMAEにカップリングされている。
【0190】
特に好適な一実施形態では、本発明による抗体-薬物コンジュゲートは、MMAE(好ましくはそのN末端アミノ基によって)にカップリングされた(好ましくはそのアミノ基よって)、配列番号17若しくは51によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む重鎖、及び配列番号24によって表されるアミノ酸配列若しくはその断片、又は前記アミノ酸配列若しくは断片のバリアントを含む軽鎖を含む抗体を含む。一実施形態では、抗体は、ジペプチドvcを含むリンカーによってMMAEにカップリングされている。
【0191】
用語「核酸」は、本明細書において使用する場合、DNA及びRNAを含むことが意図されている。核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0192】
本発明によれば、用語「発現」は、その最も一般的な意味で使用され、RNAの、又はRNA及びタンパク質/ペプチドの生成を含む。これは、核酸の部分的な発現も含む。更に、発現は、一過性に、又は安定に実施され得る。
【0193】
特定のアミノ酸配列、例えば、配列表に示したもの、特に、配列番号を示すことによって本明細書に言及されたものに関して本明細書に与えた教示は、前記特定の配列のバリアントも指すように解釈されるべきである。このようなバリアント配列は、前記特定の配列と機能的に等価であり得、例えば、特定のアミノ酸配列のものと同一又は同様の性質を呈するアミノ酸配列であり得る。1つの重要な性質は、抗体のその標的への結合性を保持することである。好ましくは、特異的配列に関してバリアントである配列は、それが抗体中で特異的配列と入れ替わるとき、前記抗体のCLDN18.2への結合性を保持する。
【0194】
特に、CDR、超可変領域及び可変領域の配列は、CLDN18.2に結合する能力を失うことなく修飾され得ることが当業者によって理解される。例えば、CDR領域は、本明細書で指定される抗体の領域と同一又は高度に相同になる。「高度に相同の」によって、1~5、好ましくは1~4、例えば、1~3又は1若しくは2等の置換が、CDR中で行われ得ることが企図されている。更に、超可変領域及び可変領域は、これらが本明細書に具体的に開示されている抗体の領域と実質的な相同性を示すように修飾することができる。
【0195】
本発明による用語「バリアント」は、特に、突然変異体、スプライスバリアント、コンホメーション、アイソフォーム、対立遺伝子バリアント、種バリアント、及び種同族体、特に、天然に存在するものを指す。対立遺伝子バリアントは、遺伝子の正常な配列の変化に関し、その重要性は、不明確であることが多い。完全な遺伝子配列決定は、多くの場合、所与の遺伝子に対して多数の対立遺伝子バリアントを同定する。種同族体は、所与の核酸又はアミノ酸配列のものと異なる起源の種に対する核酸又はアミノ酸配列である。用語「バリアント」は、任意の翻訳後修飾されたバリアント及びコンホメーションバリアントを包含するものとする。
【0196】
本発明の目的に関して、アミノ酸配列の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアント、及び/又はアミノ酸置換バリアントを含む。タンパク質のN末端及び/又はC末端で欠失を含むアミノ酸欠失バリアントは、N末端及び/又はC末端トランケーションバリアントとも呼ばれる。
【0197】
アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列中に単一又は2つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合では、1つ又は複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列中の特定の部位内に挿入されるが、得られる産物の適切なスクリーニングを用いてランダムに挿入することも可能である。
【0198】
アミノ酸付加バリアントは、1つ又は複数のアミノ酸、例えば、1、2、3、5、10、20、30、50、又はそれ以上のアミノ酸等のアミノ及び/又はカルボキシ末端融合を含む。
【0199】
アミノ酸欠失バリアントは、配列からの1つ又は複数のアミノ酸の除去によって、例えば、1、2、3、5、10、20、30、50、又はそれ以上アミノ酸の除去等によって特徴付けられる。欠失は、タンパク質の任意の位置内とすることができる。
【0200】
アミノ酸置換バリアントは、配列中の少なくとも1種の残基が除去され、別の残基がその場所に挿入されることによって特徴付けられる。相同タンパク質又はペプチド同士間で保存されていないアミノ酸配列中の位置内にある修飾、及び/又はアミノ酸を同様の性質を有する他のアミノ酸と置き換えることが好ましい。好ましくは、タンパク質バリアント中のアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、即ち、同様に帯電したアミノ酸又は無荷電のアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、自己の側鎖に関係しているアミノ酸のファミリーの1つの置換を伴う。天然に存在するアミノ酸は一般に、4つのファミリー、即ち、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び無荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)のアミノ酸に分類される。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは時折、芳香族アミノ酸として合同で分類される。
【0201】
好ましくは、配列番号を示すことによって本明細書に言及したアミノ酸配列等の所与のアミノ酸と、前記所与のアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%となる。類似性又は同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%であるアミノ酸領域について好ましくは与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200アミノ酸からなる場合、類似性又は同一性の程度は、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200のアミノ酸、好ましくは連続アミノ酸について好ましくは与えられる。好適な実施形態では、類似性又は同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するための整列は、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良配列整列を使用して、例えば、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix: Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignを使用して行うことができる。
【0202】
「配列類似性」は、同一であるか、又は保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列同士間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。
【0203】
用語「パーセンテージ同一性」は、最良整列をした後に得られる、比較される2つの配列間で同一であるアミノ酸残基のパーセンテージを表すように意図されており、このパーセンテージは、純粋に統計的であり、2つの配列間の差異は、ランダムに、且つこれらの全長にわたって分布している。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、これらの配列を最適に整列した後にこれらを比較することによって慣例的に実施され、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定及び比較するために、セグメントによって、又は「比較のウインドウ」によって実施される。比較のための配列の最適な整列は、手作業に加えて、Smith及びWaterman、1981、Ads App. Math.、2、482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman及びWunsch、1970、J. Mol. Biol.、48、443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson及びLipman、1988、Proc. Natl Acad. Sci. USA、85、2444の類似性検索法によって、又はコンピュータープログラムであって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group社、575 Science Drive、Madison、Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、及びTFASTA)を使用する、プログラムによって、生成することができる。
【0204】
パーセンテージ同一性は、比較されている2つの配列間の同一の位置の数を判定し、この数を比較された位置の数で除し、得られた結果に100を乗じ、その結果、これらの2つの配列間のパーセンテージ同一性を得ることによって計算される。
【0205】
用語「トランスジェニック動物」は、1つ又は複数の導入遺伝子、好ましくは重鎖導入遺伝子及び/若しくは軽鎖導入遺伝子、又はトランス染色体(動物の天然ゲノムDNA中に組み込まれた、若しくは組み込まれていない)を含むゲノムを有し、好ましくは導入遺伝子を発現することができる動物を指す。例えば、トランスジェニックマウスは、ヒト軽鎖導入遺伝子、及びヒト重鎖導入遺伝子又はヒト重鎖トランス染色体を有することができ、その結果このマウスは、CLDN18.2抗原及び/又はCLDN18.2を発現する細胞で免疫されたとき、ヒト抗CLDN18.2抗体を産生する。ヒト重鎖導入遺伝子を、トランスジェニックマウス、例えば、HuMAbマウス、例えば、HCo7マウス若しくはHCol2マウス等の場合と同様に、マウスの染色体DNA中に組み込むことができ、又はヒト重鎖導入遺伝子を、WO02/43478に記載のトランスクロモソーマル(例えば、KM)マウスの場合と同様に染色体外で維持することができる。このようなトランスジェニックマウス及びトランスクロモソーマルマウスは、V-D-J組換え及びアイソタイプスイッチングを経ることによって、CLDN18.2に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプ(例えば、IgG、IgA、及び/又はIgE)を産生することができる。
【0206】
「低減する」、「減少する」、又は「阻害する」は、本明細書において使用する場合、レベルの、例えば、発現のレベルの、又は細胞の増殖のレベルの、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上の全体的な減少、又は全体的な減少を引き起こす能力を意味する。
【0207】
「増大させる」又は「増強する」等の用語は、好ましくは、約少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%、又は、更にそれ以上の増大又は増強に関する。
【0208】
本明細書に記載の抗体は、慣例的なモノクローナル抗体の方法、例えば、Kohler及びMilstein、Nature、256: 495 (1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技法を含めた、様々な技法によって生成することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好適であるが、原理上は、モノクローナル抗体を生成するための他の技法、例えば、B-リンパ球のウイルス形質転換若しくは癌化、又は抗体遺伝子のライブラリーを使用するファージディスプレイ技法も使用することができる。
【0209】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための好適な動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ生成は、非常によく確立された手順である。融合のために免疫された脾細胞を単離するための免疫化プロトコール及び技法は、当技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)、及び融合手順も公知である。
【0210】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための他の好適な動物系は、ラット系及びウサギ系である(例えば、Spieker-Poletら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、92:9348 (1995)に記載されており、Rossiら、Am. J. Clin. Pathol.、124: 295 (2005)も参照)。
【0211】
更に別の好適な実施形態では、ヒトモノクローナル抗体を、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を担持するトランスジェニックマウス又はトランスクロモソーマルマウスを使用して生成することができる。これらのトランスジェニックマウス及びトランス染色体マウスは、それぞれ、HuMAbマウス及びKMマウスとして公知のマウスを含み、「トランスジェニックマウス」と本明細書で総称される。このようなトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体の生成は、WO2004 035607でCD20について詳細に記載されているように実施することができる。
【0212】
モノクローナル抗体を生成するための更に別のストラテジーは、明確な特異性の抗体を産生するリンパ球から抗体をコードする遺伝子を直接単離することであり、例えば、Babcockら、1996; A novel strategy for generating monoclonal antibodies from single, isolated lymphocytes producing antibodies of defined specificitiesを参照。組換え抗体操作の詳細については、Welschof及びKraus、Recombinant antibodes for cancer therapy、ISBN-0-89603-918-8、並びにBenny K.C. Lo、Antibody Engineering、ISBN 1-58829-092-1も参照。
【0213】
抗体を生成するために、記載したように、マウスを、抗原配列、即ち、抗体が向けられる配列に由来する担体コンジュゲートペプチド、組換えで発現された抗原若しくはその断片の濃縮製剤、及び/又は抗原を発現する細胞で免疫することができる。代わりに、マウスを、抗原又はその断片をコードするDNAで免疫することができる。抗原の精製又は濃縮された製剤を使用して免疫化しても、抗体がもたらされない場合には、マウスを、抗原を発現する細胞、例えば、細胞株で免疫して、免疫応答を促進することもできる。
【0214】
免疫応答は、尾静脈採血又は眼窩後方採血によって得られる血漿試料及び血清試料を用いて免疫化プロトコールの過程にわたって監視することができる。十分な力価の免疫グロブリンを有するマウスを、融合に使用することができる。特異的抗体分泌ハイブリドーマの割合を増大させるために、マウスを、屠殺及び脾臓の取り出しの3日前に、抗原発現細胞で腹腔内又は静脈内に追加免疫することができる。
【0215】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫化マウスからの脾細胞及びリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株等の適切な不死化細胞株に融合することができる。次いで得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体を生成するためにスクリーニングすることができる。次いで個々のウェルを、抗体分泌ハイブリドーマについてELISAによってスクリーニングすることができる。抗原発現細胞を使用する免疫蛍光及びFACS分析によって、抗原に対して特異性を有する抗体が同定され得る。抗体分泌ハイブリドーマを再び蒔き、再びスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体について依然として陽性である場合、希釈を制限することによってサブクローニングすることができる。次いで安定なサブクローンをin vitroで培養して組織培養基中で抗体を生成し、特徴付けることができる。
【0216】
抗体は、当技術分野で周知であるように、例えば、組換えDNA技法と遺伝子トランスフェクション法の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマ内で生成することもできる(Morrison, S. (1985) Science、229: 1202)。
【0217】
例えば、一実施形態では、対象の遺伝子(複数可)、例えば、抗体遺伝子を、WO87/04462、WO89/01036、及びEP338841に開示されたGS遺伝子発現系、又は当技術分野で周知の他の発現系によって使用されているもの等の真核生物発現プラスミド等の発現ベクター内にライゲーションすることができる。クローン化抗体遺伝子を含む精製プラスミドを、真核生物宿主細胞、例えば、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293T細胞、又はHEK293細胞等、又は代わりに他の真核細胞様植物由来細胞、真菌細胞又は酵母細胞内に導入することができる。これらの遺伝子を導入するのに使用される方法は、当技術分野で記載されている方法、例えば、電気穿孔、リポフェクチン(lipofectine)、リポフェクタミン等であり得る。宿主細胞内にこれらの抗体遺伝子を導入した後、抗体を発現する細胞を同定及び選択することができる。これらの細胞は、トランスフェクトーマを代表し、次いでこれらを、その発現レベルのために増幅し、抗体を生成するためにアップスケールすることができる。組換え抗体は、これらの培養上清及び/又は細胞から単離及び精製することができる。
【0218】
代わりに、クローン化抗体遺伝子を、微生物、例えば、大腸菌(E. coli)等の原核細胞を含めた他の発現系内で発現させることができる。更に、抗体を、トランスジェニック非ヒト動物内、例えば、ヒツジ及びウサギ由来の乳内、雌鶏由来の卵子内、又はトランスジェニック植物内等で生成することができる。例えば、Verma, R.ら、(1998) J. Immunol. Meth.、216: 165~181; Pollockら、(1999) J. Immunol. Meth.、231: 147~157;及びFischer, R.ら、(1999) Biol. Chem.、380: 825~839を参照。
【0219】
キメラ化
人におけるマウス抗体の免疫原性は、それぞれの抗体がキメラ化又はヒト化されている場合、低減又は完全に回避され得る。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する抗体、例えば、マウス抗体に由来する可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有するもの等である。抗体のキメラ化は、マウス抗体重鎖及び軽鎖の可変領域を、ヒト重鎖及び軽鎖の定常領域と接合することによって実現される(例えば、Krausら、Methods in Molecular Biology series, Recombinant antibodies for cancer therapy、ISBN-0-89603-918-8によって記載されているように)。好適な実施形態では、キメラ抗体は、ヒトカッパ-軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に接合することによって生成される。やはり好適な実施形態では、キメラ抗体は、ヒトラムダ-軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に接合することによって生成され得る。キメラ抗体を生成するのに好適な重鎖定常領域は、IgG1、IgG3、及びIgG4である。キメラ抗体を生成するための他の好適な重鎖定常領域は、IgG2、IgA、IgD、及びIgMである。
【0220】
ヒト化
抗体は、主に6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)内に位置したアミノ酸残基によって標的抗原と相互作用する。この理由で、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列より、個々の抗体同士間で多様である。CDR配列は、ほとんどの抗体-抗原相互作用に関与するので、異なる性質を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列上にグラフトされた特定の天然に存在する抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に存在する抗体の性質を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann, L.ら、(1998) Nature、332: 323~327; Jones, P.ら、(1986) Nature、321: 522~525;及びQueen, C.ら、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、86: 10029~10033を参照)。このようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースから得ることができる。これらの生殖系列配列は、B細胞成熟の間のV(D)J接合によって形成される完全にアセンブルされた可変遺伝子を含まないので、成熟抗体遺伝子配列と異なることになる。生殖系列遺伝子配列は、可変領域に均等にわたる個々の場所で高親和性二次レパートリー抗体の配列とも異なることになる。
【0221】
抗原に結合する抗体の能力は、標準的な結合アッセイ(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、免疫蛍光、及びフローサイトメトリー分析)を使用して判定することができる。
【0222】
抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製用2リットルスピナーフラスコ内で増殖させることができる。代わりに、抗体を透析ベースバイオリアクター内で生成することができる。プロテインG-セファロース又はプロテインA-セファロースを用いた親和性クロマトグラフィーの前に、上清を濾過し、必要であれば濃縮することができる。溶出したIgGをゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィーによって確認して純度を保証することができる。緩衝液をPBSに交換することができ、濃度は、1.43の吸光係数を使用してOD280によって決定され得る。モノクローナル抗体は、アリコートし、-80℃で貯蔵することができる。
【0223】
選択されたモノクローナル抗体が独特のエピトープに結合するか否かを判定するために、部位特異的又は多部位特異的突然変異誘発を使用することができる。
【0224】
抗体のアイソタイプを判定するために、様々な市販のキット(例えば、Zymed社、Roche Diagnostics社)を用いたアイソタイプELISAを実施することができる。マイクロタイタープレートのウェルを、抗マウスIgでコーティングすることができる。遮断した後、プレートをモノクローナル抗体又は精製されたアイソタイプ対照と、周囲温度で2時間反応させる。次いでウェルを、マウスIgG1、IgG2a、IgG2b、若しくはIgG3、IgA、又はマウスIgM特異的ペルオキシダーゼコンジュゲートプローブと反応させることができる。洗浄後、プレートをABTS基質(1mg/ml)で展開し、405~650のODで分析することができる。代わりに、IsoStrip Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(Roche社、カタログ番号1493027)を、製造者によって説明されているように使用してもよい。
【0225】
免疫化マウスの血清中の抗体の存在、又は抗原を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を実証するために、フローサイトメトリーを使用することができる。天然に、又はトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株、及び抗原発現を欠く陰性対照(標準的な増殖条件下で増殖させた)を、ハイブリドーマ上清中、又は1%のFBSを含有するPBS中で様々な濃度のモノクローナル抗体と混合することができ、4℃で30分間インキュベートすることができる。洗浄後、APC又はアレクサ647標識抗IgG抗体を、一次抗体染色と同じ条件下で、抗原結合モノクローナル抗体に結合させることができる。単一の生細胞をゲートするために光特性及び側方散乱特性を使用して、FACS計測器を用いてフローサイトメトリーによって試料を分析することができる。単回測定で抗原特異的モノクローナル抗体を非特異的バインダーと区別するために、同時トランスフェクションの方法を使用することができる。抗原をコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトした細胞、及び蛍光マーカーを、上述したように染色することができる。トランスフェクション細胞は、抗体染色された細胞と異なる蛍光チャネルで検出することができる。トランスフェクション細胞の大部分は、両方の導入遺伝子を発現するので、抗原特異的モノクローナル抗体は、蛍光マーカー発現細胞に優先的に結合し、一方、非特異的な抗体は、非トランスフェクション細胞に同等の比で結合する。フローサイトメトリーアッセイに加えて、又はその代わりに、蛍光顕微鏡観察を使用する代替のアッセイを使用してもよい。細胞を上述したように正確に染色し、蛍光顕微鏡観察によって検査することができる。
【0226】
免疫化マウスの血清中の抗体の存在、又は抗原を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を実証するために、免疫蛍光顕微鏡観察分析を使用することができる。例えば、自発的に、又はトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株、及び抗原発現を欠く陰性対照を、10%のウシ胎児血清(FCS)、2mMのL-グルタミン、100IU/mlのペニシリン、及びl00μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEM/F12培地中で、標準的な増殖条件下で、チャンバースライド内で増殖させる。次いで細胞を、メタノール又はパラホルムアルデヒドで固定し、又は未処理で放置することができる。次いで細胞を、25℃で30分間、抗原に対するモノクローナル抗体と反応させることができる。洗浄後、細胞を、同じ条件下でアレクサ555標識抗マウスIgG二次抗体(Molecular Probes社)と反応させることができる。次いで細胞を、蛍光顕微鏡観察によって検査することができる。
【0227】
抗原を発現する細胞及び適切な陰性対照から細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけることできる。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、遮断し、試験されるモノクローナル抗体でプローブする。IgG結合は、抗マウスIgGペルオキシダーゼを使用して検出し、ECL基質で展開することができる。
【0228】
抗体は、当業者に周知の様式で、例えば、慣例的な外科手術の間に患者から、又は自発的に、又はトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株を接種した異種移植腫瘍を担持するマウスから得られる非がん組織又はがん組織試料に由来するパラホルムアルデヒド若しくはアセトン固定凍結切片、又はパラホルムアルデヒドで固定したパラフィン包埋組織切片を使用して、免疫組織化学検査によって抗原との反応性について更に試験することができる。免疫染色するために、抗原に対して反応性の抗体を、供給業者の指示に従って、インキュベートし、その後、西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウス又はヤギ抗ウサギ抗体(DAKO)をインキュベートすることができる。
【0229】
CLDN18.2に結合する抗体コンジュゲートはまた、CLDN18.2発現腫瘍細胞の増殖の制御におけるこれらの効力を判定するために、in vivoモデルで(例えば、CLDN18.2を発現する細胞株、例えば、DAN-G、SNU-16、若しくはKATO-III、又はトランスフェクション後にCLDN18.2を発現する細胞株、例えば、HEK293が接種された異種移植腫瘍を担持する免疫欠損マウスで)試験することができる。
【0230】
抗体コンジュゲートを無腫瘍マウスに投与し、その後腫瘍細胞を注射して、腫瘍の形成又は腫瘍関連症状を予防する抗体コンジュゲートの効果を測定することができる。抗体コンジュゲートを担腫瘍マウスに投与して、腫瘍増殖、転移、又は腫瘍関連症状を低減する、それぞれの抗体コンジュゲートの治療有効性を判定することができる。抗体コンジュゲート適用を、他の物質、例えば、細胞増殖抑制薬(cystostatic drug)、増殖因子阻害剤、細胞周期遮断薬、血管新生阻害剤、又は他の抗体コンジュゲートの適用と組み合わせて、組合せの相乗的効力及び潜在的毒性を判定することができる。抗体コンジュゲートによって媒介される有毒な副作用を分析するために、動物に抗体コンジュゲート又は対照試薬を接種し、CLDN18.2-抗体コンジュゲート療法におそらく関連した症状を完全に調査することができる。CLDN18.2抗体のin vivo適用の可能性がある副作用として、特に、胃を含めたCLDN18.2発現組織における毒性が挙げられる。
【0231】
抗体が認識するエピトープのマッピングは、「Epitope Mapping Protocols」(Methods in Molecular Biology)、Glenn E. Morris、ISBN-089603-375-9、及び「Epitope Mapping: A Practical Approach」Practical Approach Series、248、Olwyn M. R. Westwood、Frank C. Hay.に詳細に記載されているように実施することができる。
【0232】
本明細書に記載の化合物及び作用物質は、任意の適当な医薬組成物の形態で投与され得る。
【0233】
医薬組成物は、好ましくは滅菌したものであり、所望の反応又は所望の効果を生じさせるために有効量の本明細書に記載の抗体及び任意選択で本明細書に論じた更なる作用物質を含有する。
【0234】
医薬組成物は通常、均一な剤形で提供され、それ自体は公知の様式で調製することができる。医薬組成物は、例えば、溶液又は懸濁液の形態であり得る。
【0235】
医薬組成物は、塩、緩衝物質、防腐剤、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含むことができ、これらのすべては、好ましくは薬学的に許容される。用語「薬学的に許容される」は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない材料の無毒性を指す。
【0236】
薬学的に許容されない塩は、薬学的に許容される塩を調製するのに使用してもよく、本発明の中に含まれる。この種類の薬学的に許容される塩は、非制限的な様式で、以下の酸から調製されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等。薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩等としても調製することができる。
【0237】
医薬組成物中に使用するのに適した緩衝物質としては、塩での酢酸、塩でのクエン酸、塩でのホウ酸、及び塩でのリン酸がある。
【0238】
医薬組成物中に使用するのに適した防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、及びチメロサールがある。
【0239】
注射製剤は、リンガー乳酸塩等の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0240】
用語「担体」は、適用を促進し、増強し、又は可能にするために活性成分が組み合わされる、天然又は合成の性質の有機又は無機成分を指す。本発明によれば、用語「担体」は、患者への投与に適している1種又は複数の適合性の固体フィラー若しくは液体フィラー、希釈剤、又は封入物質も含む。
【0241】
非経口投与に可能な担体物質は、例えば、滅菌水、リンガー、リンガー乳酸塩、滅菌塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。
【0242】
用語「賦形剤」は、本明細書で使用する場合、医薬組成物中に存在することができ、活性成分でないすべての物質、例えば、担体、バインダー、滑剤、増粘剤、表面活性剤、防腐剤、乳化剤、緩衝液、香味剤、又は着色剤等を示すことが意図されている。
【0243】
本明細書に記載の作用物質及び組成物は、任意の慣例的な経路を介して、例えば、注射又は注入によるものを含めた非経口投与等によって投与され得る。投与は、好ましくは非経口的、例えば、静脈内、動脈内、皮下、皮内、又は筋肉内である。
【0244】
非経口投与に適した組成物は通常、好ましくはレシピエントの血液に対して等張性である、活性化合物の滅菌した水性又は非水性製剤を含む。適合性の担体及び溶媒の例は、リンガー液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。更に、通常、滅菌固定油が溶液又は懸濁培地として使用される。
【0245】
本明細書に記載の作用物質及び組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、単独で、又はさらなる用量と一緒に所望の反応又は所望の効果を実現する量を指す。特定の疾患又は特定の状態の処置の場合では、所望の反応は、好ましくは疾患の過程の阻害に関する。これは、疾患の進行の減速、及び特に、疾患の進行の中断又は逆転を含む。疾患又は状態の処置における所望の反応は、前記疾患又は前記状態の発病の遅延又は発病の予防でもあり得る。
【0246】
本明細書に記載の作用物質又は組成物の有効量は、処置される状態、疾患の重症度、年齢、生理的条件、サイズ、及び体重を含めた患者の個々のパラメータ、処置の継続時間、付随療法のタイプ(存在する場合)、特定の投与経路、並びに同様の要因に依存することになる。したがって、本明細書に記載の作用物質の投与される用量は、様々なこのようなパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量で不十分である場合には、より高い用量(又は異なるより局在的な投与経路によって実現される有効により高い用量)を使用することができる。
【0247】
本明細書に提供される作用物質及び組成物は、単独で、又は慣例的な治療レジメン、例えば、手術、照射、化学療法、及び/若しくは骨髄移植(自己、同系、同種間、若しくは無関係)と組み合わせて使用することができる。
【0248】
がんの処置は、組合せストラテジーが特に望ましい分野を代表し、その理由は、しばしば2、3、4、又は更にはそれ以上のがん薬/療法の組合せ作用が単剤療法手法の影響より相当に強い相乗効果を生じるためである。したがって、本発明の別の実施形態では、がん処置は、様々な他の薬物と有効に組み合わせることができる。これらの中では、例えば、慣例的な腫瘍療法、マルチエピトープストラテジー、追加の免疫療法、及び血管新生又はアポトーシスを標的にする処置手法との組合せである(総説については、例えば、Andersenら、2008: Cancer treatment: the combination of vaccination with other therapies.Cancer Immunology Immunotherapy、57(11):1735~1743を参照)。異なる作用物質の逐次投与は、異なるチェックポイントでがん細胞増殖を阻害することができ、一方、他の作用物質は、例えば、潜在的にがんを慢性疾患に変換する新血管新生、悪性細胞の生存、又は転移を阻害することができる。
【0249】
本明細書に記載の作用物質及び組成物は、本明細書に記載したもの等の様々な障害を処置又は予防するために、例えば、in vivoで患者に投与することができる。好適な患者には、本明細書に記載の作用物質及び組成物を投与することによって矯正又は改善され得る障害を有するヒト患者が含まれる。これは、CLDN18.2の発現パターンの変更によって特徴付けられる細胞を伴う障害を含む。
【0250】
例えば、一実施形態では、本明細書に記載の作用物質及び組成物は、がん疾患、例えば、CLDN18.2を発現するがん細胞の存在によって特徴付けられる本明細書に記載のもの等のがん疾患を有する患者を処置するのに使用することができる。
【0251】
本発明によって記載された医薬組成物及び処置の方法は、本明細書に記載の疾患を予防するための免疫化又はワクチン接種にも使用され得る。
【0252】
本発明を、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない以下の実施例によって更に例示する。
【実施例】
【0253】
(実施例1)
材料及び方法
1.エンドサイトーシス
CLDN18.2結合IMAB362のエンドサイトーシスは、標的結合抗体及びサポリンコンジュゲート抗ヒト又は抗マウスIgG Fab断片(Fab-ZAPヒト、Advanced Targeting Systems社、IT-51、ロット番号93-23;Fab-ZAPマウス、Advanced Targeting Systems社、IT-48、ロット番号93-21)の共内部移行を利用する細胞傷害性ベースエンドサイトーシスアッセイを使用して判定した。サポリンは、リボソーム不活化タンパク質であり、これは、内部移行するとタンパク質生合成を阻害し、したがって、細胞死をもたらす。最適な細胞溶解を保証するために、Fab-ZAP抗体は、標的抗体と比較して少なくとも6倍のモル濃度で適用した。
【0254】
安定にトランスフェクトしたHEK293~CLDN18.2細胞を、0.05%トリプシン/EDTA(Gibco社、25300-054)を用いて回収し、2.5×103細胞/ウェルを、96ウェル細胞培養プレートの増殖培地50μl中に播種した。24時間後に、細胞培養基中に希釈したFab-ZAP 25μl、及び抗CLDN18.2 mAB 25μl、又はアイソタイプ対照抗体を細胞に添加した(Table 1(表2))。細胞を追加の72時間培養した。
【0255】
【0256】
細胞生存能は、6.に記載したように分析した。Fab-ZAPの存在下で抗体を用いずにインキュベートした細胞を対照として使用した。
【0257】
2.エピトープマッピング
CLDN18.2特異性に関与する抗原エピトープを、CLDN18.2突然変異体を一過性に過剰発現するHEK293T細胞に対してフローサイトメトリー(5を参照)によって分析した。第1の細胞外ドメイン内に単一アミノ酸置換を有する合計8種のCLDN18.2突然変異体をPCRによって生成した。したがって、CLDN18.2のアミノ酸を、対応する位置で相同タンパク質CLDN18.1のアミノ酸と置換した。HEK293T細胞に、特定のCLDN18.2突然変異体をコードするプラスミド及びレポーター遺伝子としてのEGFPをコトランスフェクトした。精製抗体は、5μg/mlの濃度で試験し、一方、ハイブリドーマ上清に由来する抗体は、最大で1:4に希釈した後試験した。抗体結合が特定のアミノ酸置換によって影響を受けたか否かを判定するために、トランスフェクトした(EGFP陽性)細胞集団内で測定した平均蛍光強度(MFI)を、最高のMFI値を呈する突然変異体と対象とする突然変異体との間で比較した。対象とする突然変異体のMFIが50%未満であった場合、アミノ酸残基を、抗体結合及びCLDN18.2特異性に本質的であると特徴付けた。
【0258】
3.抗体薬物コンジュゲート
DM4及びvcMMAEのモノクローナル抗体IMAB362(バッチ番号p412118)へのコンジュゲーション並びに分析的特徴付けを、Piramal Healthcare社(Grangemouth、UK)で実施した。方法は、次のセクションで簡単に記載されている:
DM4を、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)を介してIMAB362にカップリングさせた。SPDB試薬は、アミノ及びスルフヒドリル反応性ヘテロ二官能性タンパク質架橋剤であり、これは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを介して抗体の一級アミン(タンパク質のリシン側鎖又はN末端に見つかる)と、及びピリジニルジスルフィド基を介してDM4のスルフヒドリル基と反応して可逆性ジスルフィド結合を生じる(
図1)。簡単に説明すると、DM4コンジュゲーションについて、IMAB362を、超遠心濾過機を使用してPBS緩衝液(pH7.2)中に透析濾過し、SPDBに1:6(IMAB362:SPDB)のモル比で、RTで1時間カップリングさせた。修飾抗体を35mMのクエン酸塩緩衝液(pH5.5)に対して透析し、リンカーの抗体に対する比を判定した。DM4をIMAB362-SPDBに1:6(IMAB362-SPDB:DM4)のモル比で、2~8℃で19時間コンジュゲートさせた。コンジュゲート抗体を貯蔵緩衝液(20mMのHis、85mg/mlのスクロース、pH5.8)に適合させ、-80℃で貯蔵した。薬物抗体比をUV分光分析によって分析し、モノマー含有量をSEC-HPLCによって分析し、遊離薬物含有量をRP-HPLCによって分析した。
【0259】
vcMMAEをチオール化IMAB362にカップリングさせた。したがって、IMAB362を、リシン残基の遊離アミンと反応するヘテロ二官能性リンカー2-IT(2-イミノチオラン)で最初にチオール化した。次いで、カテプシン切断可能ペプチドリンカーVal-Cit(vc)を含有するvcMMAEを、バリンを介してチオール化した抗体のスルフヒドリル基にコンジュゲートさせた(
図1)。簡単に説明すると、IMAB362を、超遠心濾過機を使用してPBS緩衝液(pH7.2)中に透析濾過し、1:20(IMAB362:2-IT)のモル比で、RTで2時間、2-ITとともにインキュベートした。修飾抗体を35mMのクエン酸塩緩衝液(pH5.5)中に透析し、リンカーの抗体に対する比を判定した。その後、vcMMAEを、チオール化IMAB362に1:6(IMAB362-SH:vcMMAE)のモル比で、2~8℃で20時間インキュベートすることによってコンジュゲートさせた。コンジュゲート抗体を貯蔵緩衝液(20mMのHis、85mg/mLのスクロース、pH5.8)中に透析し、-80℃で貯蔵した。薬物抗体比をUV分光分析によって分析し、モノマー含有量をSEC-HPLCによって分析し、遊離薬物含有量をRP-HPLCによって分析した。
【0260】
4.細胞培養
細胞株を、5%又は7.5%のCO2を含む加湿したインキュベーター内で、37℃で、供給業者の指示及びGanymed社の細胞株データシートに従って培養した(Table 2(表3))。細胞培養基及びサプリメントは、Invitrogen社、Gibco社、及びSigma社から得た。
【0261】
【0262】
5.フローサイトメトリー
抗CLDN18.2裸抗体及び抗体薬物コンジュゲートの相対的結合親和性及び特異性を、CLDN18.2陽性及び陰性細胞株を使用してフローサイトメトリーによって判定した。
【0263】
指数関数的増殖培養からの細胞を、0.05%のトリプシン/EDTA(Gibco社、25300-054)を用いて回収し、Neubauerカウンティングチャンバーを使用してカウントした。細胞を1,500rpm(468×g)で5分遠心分離し、上清を廃棄し、細胞を、FACS緩衝液(毒素コンジュゲート抗体を用いた分析のための2%のFCSを含有するPBS(Gibco社、10270-106)、CLDN18.2反応性裸抗体をスクリーニングするための2%のFCS及び2mMのEDTAを含有するPBS)中に、2×106細胞/mlで再懸濁させた。1ウェル当たり細胞懸濁液100μl(2×105細胞/ウェルに対応する)を丸底96ウェルマイクロタイタープレートに移した。1500rpmで1分間遠心分離した後、上清を廃棄し、細胞を、適切な濃度(相対的親和性測定について最大で20μg/ml、又は発現対照について50μg/ml)で毒素コンジュゲート抗体又は裸抗体を含有するFACS緩衝液中に再懸濁させ、4℃で30~45分間インキュベートした(Table 3(表4))。細胞を1500rpmで1分間遠心分離し、上清を廃棄した。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄した後、これらを、APCコンジュゲート抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research社、109-136-170)、又はAPCコンジュゲートヤギ-抗マウスIgG(Jackson Immuno Research社、115-136-146)、又はタンパク質L-FITC(1μg/ml、chim mAB294の分析)を含有するFACS緩衝液中に再懸濁させ、4℃で30間インキュベートした(Table 3(表4))。インキュベーション後、FACS緩衝液100μlを各試料に添加し、細胞を1500rpmで1分間遠心分離し、上清を廃棄した。FACS緩衝液を用いた洗浄工程を2回繰り返した。最後に、細胞をFACS緩衝液100μl中に再懸濁させ、結合を、BD FACS Array Bioanalyzerを使用して判定した。
【0264】
毒素コンジュゲート抗体及び裸抗体は、等濃度で適用したことに留意されるべきである。抗体の分子量間の差異は無視した。
【0265】
【0266】
6.生存能アッセイ
細胞生存能に対するIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの効果を、細胞代謝活性を検出する比色アッセイを使用して判定した。アッセイは、代謝活性細胞の、黄色XTT(2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキサニリド)を分光光度法によって検出され得る橙色ホルマザン化合物に還元する能力に基づく。色素の強度は、生細胞の数に比例する。
【0267】
細胞を、0.05%のトリプシン/EDTA(Gibco社、25300-054)を用いて回収し、細胞培養基中に再懸濁させ(Table 2(表3))、対応する量の細胞を含む細胞懸濁液50μlを、96ウェル細胞培養プレートのウェル毎に播種した(Table 4(表5))。24時間後に、適切な濃度で培地50μl中に希釈した毒素コンジュゲートIMAB362又は対照抗体を添加し、細胞を別の72時間培養した。
【0268】
【0269】
細胞生存能は、製造者の指示に従ってAppliChem Cell proliferation Kit II(AppliChem社、A8088、1000)を使用して分析した。XTT試薬とともに3~5時間インキュベートした後、480nmの吸光度を、分光光度計(Tecan社)を使用して測定した(参照630nm)。生存能の低減は、以下の式を使用して計算した:
【0270】
【0271】
ブランク:培地対照
対照:抗体を含まない細胞
試料:抗体を含む細胞
【0272】
EC50値は、非線形回帰を使用してGraphPad Prism 6を用いて判定した。
【0273】
7.バイスタンダーアッセイ
標的陰性細胞に対する毒素コンジュゲートIMAB362抗体のバイスタンダー活性を、CLDN18.2陽性細胞株NUGC-4 10cE8の存在又は非存在下でCLDN18.2陰性ルシフェラーゼ発現細胞株PA-1(Luc)を共培養することによってin vitroで分析した。したがって、1ウェル当たり1.5×103 PA-1(Luc)細胞を、10%のFCS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたRPMI培地中に、単一培養のために、又は共培養のために1ウェル当たり1.5×103NUGC-4 10cE8細胞と一緒に播種した。24時間後に、IMAB362-DM4、IMAB362-vcMMAE、又は陰性対照としての非コンジュゲートIMAB362を添加し、細胞を別の72時間培養した。細胞生存能を、6に記載した通りに分析した。標的陰性細胞の溶解を、ルシフェラーゼ発現PA-1(Luc)細胞の生物発光を測定することによって判定した。したがって、ルシフェリンミックス(ddH2O中の1.92mg/mlのD-ルシフェリン(Sigma社、50227)及び160mMのHEPES)50μlをウェル毎に添加した。プレートを暗所で、RTで90分間インキュベートし、生物発光をルミノメーター(Infinite M200、TECAN社)を使用して測定した。結果を積分デジタル(integrated digital)相対光単位(RLU)として表現する。生存能の低減は、6に記載した通りに計算した。
【0274】
8.動物実験
すべての異種移植片試験は、実験動物試験のための国家規制と倫理ガイドライン(national regulations and ethical guidelines for experimental animal studies)に従って実施した。すべての動物は、個々の換気ケージ内で特定病原体フリー条件下で、且つ12時間人工明暗サイクル下で維持した。食物及び水は、自由に提供した。試験の開始前に、マウスを最低限6日間順応させた。
【0275】
8.1.最大耐用量(MTD)試験
異種移植腫瘍を、雌Hsd:Athymic Nude-Foxn1nuマウスの側腹部内にPBS 200μl中の8.5×106 BxPC-3~CLDN18.2ヒト膵臓腫瘍細胞を皮下注射することによって接種した。抗CLDN18.2抗体薬物コンジュゲートのMTD及び効力を判定するために、担腫瘍マウスは、異なる用量のIMAB362-DM4又はIMAB362-vcMMAEを受けた。最大適用可能用量は、抗体濃度、及びマウスにおける静脈内注射についてGV-SOLAS社から推奨された注射量(約200μl)によって制限された。両抗体は、単回及び反復用量として最大濃度(即ち、それぞれ15及び16mg/kg)並びにこの濃度の半分(即ち、それぞれ7.5及び8mg/kg)、又はビヒクル対照(群サイズ:n=5)で適用した。抗体は、グラフト後14日目に、且つ反復用量について更にグラフト後の21日目に静脈内注射した。体重、動物の健康、挙動、及び腫瘍サイズをキャリパーで週2回モニターし、腫瘍体積を以下の式:[長さ×幅×(幅/2)]に従って計算した。すべての動物は、ビヒクル群の第1の腫瘍が1400mm3の最大に到達したとき、又は腫瘍が潰瘍性となったとき(IMAB362-DM4についてグラフト後49日目、IMAB362-vcMMAEについてグラフト後37日目)解剖した。臨床化学のために血液試料は、ケタミン1.25ml、キシラジン(2%)1ml、及びH2O 7.75mlからなる混合物の250μl i.p.で開始した全身麻酔下で収集した。引き続いて、マウスを、全身麻酔下で、PBSで灌流し、その後4%のホルマリンで灌流した。選択した臓器及び組織(胃、食道、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、脾臓、十二指腸、回腸、結腸、子宮、及び卵巣)を解剖し、4%のホルマリン中に固定し、4℃で貯蔵し、最後にパラフィン包埋した。3マイクロメートルの組織切片を各FFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)試料からカットし、接着スライド(SuperFrost Ultra Plus、Thermo Fisher Scientific社)にマウントした。58℃で60分間ベーキングした後、FFPE組織切片を、キシレンを使用して脱パラフィン化し、段階的なエタノールシリーズ(それぞれ3分にわたって2×100%、2×96%、2×70%のエタノール)によって再水和した。核を、マイヤーヘマトキシリン(Mayer's hematoxyline)を用いてRTで5分間染色し、その後水道H2O中でブルーイングした。引き続いて、細胞質を、0.5%エオシン水溶液を用いてRTで2分間対比染色した。段階的エタノールシリーズ及びキシレンによって脱水した後、切片を非水性マウンティング培地X-TRAキットを使用してマウントした。
【0276】
8.2.臨床生化学
可能性がある臓器毒性について試験するために、膵毒性、ネフロン毒性、及び肝毒性の関連したマーカーを血清試料中で分析した。
【0277】
アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(ガンマ-GT)、アルカリホスファターゼ(AP)、グルタミン酸脱水素酵素(GLDH)、クレアチニン、クレアチニンキナーゼ(CK)、尿素、コリンエステラーゼ、ビリルビン、リパーゼ、アルファ-アミラーゼ、乳酸脱水素酵素(LDH)、アルブミン、及び総タンパク質のレベルを、Universitatsmedizin der Johannes Gutenberg Universitat(Mainz、ドイツ)で判定した。血清試料は、最終の採血後に得た血液から調製した。血液は、マウスをケタミン/キシラジンで麻酔した後に眼球後静脈穿刺(retrobulbar venipuncture)によって収集した。
【0278】
8.3.効力試験
ヒト異種移植腫瘍を確立するために、適切な数の細胞をPBS 200μlの体積中に懸濁させ、雌Hsd:Athymic Nude-Foxn1nuマウスの側腹部の皮下に注射した。担腫瘍マウスを、MTDを超えない用量でIMAB362-DM4又はIMAB362-vcMMAEの単回静脈内注射で処置した。裸抗体対照は、約8mg/kgのIMAB362の交互するIV/i.p.注射によって週2回投与した。早期の処置試験では、処置は、グラフトの3日後に開始した。進行した処置試験では、腫瘍を50から200mm3の間の体積に増殖させ、マウスを、処置前に均質な腫瘍平均体積を有する対照群及び抗体群に再分配した。体重、動物の健康、挙動、及び腫瘍サイズをキャリパーで週2回モニターした。腫瘍体積を以下の式:[長さ×幅×(幅/2)]によって計算した。中止基準は、長さ若しくは幅が16mm超の、又は1400mm3超の計算体積の腫瘍サイズであった。更なる中止基準は、潰瘍性腫瘍、又は動物が10%超の体重を失ったときであった。完全な腫瘍増殖阻害の場合では、マウスを、処置後120日間観察した。持続性の腫瘍を、後続のIHC試験のために準備し、4%のホルマリン中に固定させた。
【0279】
9.抗体依存性細胞傷害(ADCC)
抗体依存性細胞傷害(ADCC)を、IMAB362毒素-コンジュゲートの存在下で標的細胞にヒトPBMCを添加した後に非溶解細胞内の細胞内ATPの含有量を測定することによって判定した。ルシフェラーゼ生成生物発光をATPの定量化に使用した。
【0280】
NUGC-4 10cF7_5 sort3a p3151#10標的細胞を、アッセイの2日前に規定された細胞数(8×106細胞)で播種して再現可能なコンフルエンスを得た。
【0281】
標的細胞を、0.05%のトリプシン/EDTA(Gibco社、25300-054)を用いて回収し、20mMのHEPESを含有する増殖培地(Gibco社、15630-056)中、1.6×105細胞/mlの濃度に調整した。1ウェル当たり8×103細胞を、白色96ウェルPP-プレート内に播種し、37℃及び5%のCO2で約5時間インキュベートした。
【0282】
PBMCは、健康なドナーから得た新鮮なバフィーコートから準備した。血液約20~25mlを、3本のFalconチューブ内でPBSで希釈し(1:2)、4本の50mlのFalconチューブ内でFicol-Paque Plus(GE Healthcare社、17144003)15ml上に慎重に層状化した。勾配を遠心分離した(25分、700×g、w/oブレーキ)。遠心分離後、PBMCを中間相から収集し、PBS/2mM EDTA 50ml中で洗浄し、遠心分離し、(5分、468×g)、PBS/2mMのEDTA 50ml中に再び再懸濁させ、再び遠心分離して(10分、208×g)血小板を除去した。ペレットをPBS/2mMのEDTA 50ml中に再懸濁させ、細胞をカウントした。引き続いてPBMCを遠心分離し(5分、468×g)、5%のヒト血清を含有するX-Vivo-15培養基(Lonza社、BE04-418Q)中に再懸濁させ、37℃、5%のCO2で1.5時間培養した。PBMCを回収し、遠心分離し(5分、468×g)、細胞濃度を調整して(40:1のE:T比について)1.28×107細胞/mlにして、X-Vivo-15培養基(Lonza社、BE04-418Q)中に再懸濁させた。IMAB362-DM4、IMAB362-vcMMAE、及びIMAB362を11回連続希釈し(4.5倍希釈工程)、160μg/mlから0.05ng/mlの間の濃度範囲(40μg/ml~0.01ng/mlの最終濃度)をもたらした。各希釈液25μlを標的細胞に添加し、各条件について四つ組を使用した。抗体を含まないPBSを培地及び全溶解対照ウェルに添加した。引き続いて、準備したPBMC(3.2×105細胞)25μlを各ウェルに添加して40:1のE:T比を実現し、プレートを37℃、5%のCO2で15時間±1時間インキュベートした。一晩インキュベートした後、8%のトリトンX-100/PBS溶液10μlを最大溶解対照ウェルに添加し、PBS 10μlを他のウェルに添加した。最後に、新たに調製したルシフェリン原液50μlを各ウェルに添加し(160mMのHEPES、1×PBS、3.84mg/mlのD-ルシフェリン(Sigma Aldrich社、50227))、プレートを暗所で、RTで90分間インキュベートした。生物発光を、ルミノメーター(Infinite M200、TECAN社)を使用して測定した。結果を積分デジタル相対光単位(RLU)として表現する。
【0283】
特異的溶解を:
【0284】
【0285】
(最大生存細胞:抗体を含まないPBS 10μl;全溶解:抗体を含まないPBS中8%(v/v)のトリトンX-100 10μl)として計算する。
【0286】
すべてのADCCデータを、「log(agonist) vs response - find EC anything」関数を使用してGraphPad Prism 6を用いて処理した。最大溶解は、用量応答曲線のスパン(上から下の差異)として定義したが、最大100%であった。
【0287】
10.補体依存性細胞傷害(CDC)
補体依存性細胞傷害(CDC)を、IMAB362毒素-コンジュゲートの存在下で標的細胞にヒト補体を添加した後に非溶解細胞内の細胞内のATPの含有量を測定することによって判定した。読み取りとして、ルシフェラーゼによって生成されるATP依存性生物発光を測定した。
【0288】
NUGC-4 10cF7_5 sort3a p3151#10又はKATO-III FGF-BP#12 adM p3151#25標的細胞を、アッセイの2日前に規定された細胞数(それぞれ8×106及び9×106細胞)で播種して再現可能なコンフルエンスを得た。
【0289】
標的細胞を、0.05%のトリプシン/EDTAを用いて回収し、10%(v/v)のFCSを含有するこれらのそれぞれの培養基中で1.6×105細胞/mlの濃度に調整した。8×103細胞を、白色96ウェルプレート内に播種し、37℃及び5%のCO2でインキュベートした。24時間後に、アッセイ培地(20mMのHEPESを含有する60%のRPMI;何人かの健康なドナーからプールした40%のヒト血清)中で連続希釈した抗体50μlを添加し(最終濃度80μg/ml~78.13ng/ml)、細胞を37℃及び5%のCO2で80分間インキュベートした。引き続いて、PBS中の8%(v/v)のトリトンX-100 10μlを全溶解対照に添加し、一方、PBS 10μlをすべての他のウェル(最大生存細胞対照及び実際の試料)に添加した。ルシフェラーゼ反応は、1ウェル当たりルシフェリンミックス(ddH2O中、3.84mg/mlのD-ルシフェリン、160mMのHEPES)50μlを添加することによって開始した。プレートを暗所で、RTで90分間保ち、生物発光を、ルミノメーター(Infinite M200、TECAN社)を使用して測定した。結果を、積分デジタル相対光単位(RLU)として表現する。
【0290】
特異的溶解を、
【0291】
【0292】
(最大生存細胞:抗体を含まないPBS 10μl;全溶解:抗体を含まないPBS中8%(v/v)のトリトンX-100 10μl)として計算する。
【0293】
すべてのCDCデータを、「log(agonist) vs response - find EC anything」関数を使用してGraphPad Prism 6を用いて処理した。最大溶解は、用量応答曲線のスパン(上から下の差異)として定義したが、最大100%であった。
【0294】
(実施例2)
抗CLDN18.2特異的抗体のエンドサイトーシススクリーニング
裸抗体を用いる腫瘍療法において、標的結合抗体の内部移行は、主要な作用機序、例えば、ADCC及びCDCにアクセス可能な膜結合型抗体の数を低減し得るが、エンドサイトーシスが抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の開発に本質的な特徴である。ADCの1つの重要な性質は、標的-ADC複合体のエンドサイトーシスである。したがって、裸抗体のエンドサイトーシス率は、毒素-コンジュゲート抗体の開発の本質的な重要な要因の1つである。
【0295】
結合性質、即ち、CLDN18.2に対する相対的親和性、CLDN18.1に対する交差反応性、及びCLDN18.2特異性を媒介する抗原エピトープを、フローサイトメトリー分析によって異なるマウス及びキメラ抗CLDN18.2抗体について判定した(Table 5(表6)及びTable 6(表7))。CLDN18.2への高い結合を示す抗体を、更なるエンドサイトーシススクリーニングのために選択した。
【0296】
異なるCLDN18.2特異的及びCLDN18.2/CLDN18.1反応性抗体のエンドサイトーシスの効率を、CLDN18.2発現HEK293~CLDN18.2細胞と一緒に、サポリンコンジュゲートFab断片(Fab-ZAP)とともに抗体をコインキュベートすることによってin vitroで試験した。標的結合抗体とともに共内部移行すると、サポリンが細胞のタンパク質生合成を阻害し、細胞死をもたらし、それは、細胞生存能アッセイによってモニターすることができる。この方法は、標的-抗体複合体のエンドサイトーシスを評価するための間接的な様式である。抗体は、利用可能である場合、キメラ抗体として試験し、さもなければエンドサイトーシススクリーニングは、マウス抗体を用いて実施した。
【0297】
chim mAb362(IMAB362)及びchim mAB294は、CLDN18.2に結合すると効率的に内部移行することができ、非常に低い抗体濃度(IMAB362:EC50=11ng/ml;chim mAB294:EC50=10ng/ml)でさえ、HEK293~CLDN18.2細胞生存能を低減する。対照的に、chim mAB308及びchim mAB359は、細胞生存能を低減しなかった(
図2)。同様の相対的結合親和性を呈するchim mAB294及びchim mAB359は、内部移行において相当な不一致を示すので(chim mAB294:EC50=10ng/ml;chim mAB359:エンドサイトーシス無し)、エンドサイトーシスの効率は、抗体結合親和性と相関するだけでなく、結合エピトープにも依存すると思われる。
【0298】
mu mAB362の内部移行でさえ、Fab-Zapアッセイにおいて実質的なエンドサイトーシスを見せなかったすべての他の試験したマウスCLDN18.2反応性抗体より優れていた(
図3)。
【0299】
要約すると、CLDN18.2特異的抗体IMAB362及びchim mAB294は、CLDN18.2に結合すると効率的に内部移行したので、抗体薬物コンジュゲートとして更なる評価に適している。
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
(実施例3)
IMAB362の毒素コンジュゲーション
Piramal Healthcare社は、最終緩衝液交換を含む毒素コンジュゲーションを実施した。安定性試験を実施して、ADCは、規定された貯蔵条件下で貯蔵した場合、ある特定の期間の間仕様内に留まることを示した。IMAB362を、切断可能なバリン-シトルリンリンカー(vcリンカー)を介してMMAEに、又は切断可能なN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)ブチレートリンカー(SPDBリンカー)を介してDM4にコンジュゲートさせた。IMAB362毒素コンジュゲートを、2~8℃で貯蔵緩衝液(20mMのヒスチジン及び85mg/mlのスクロース、pH5.8)中に貯蔵した。
【0304】
【0305】
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEはともに、95%以上の高いモノマー含有量及びほんの少量の遊離薬物(1%以下)を示す。2~8℃の貯蔵温度での毒素コンジュゲートIMAB362抗体の28日安定性試験は、両ADCについてモノマー含有量のほんの小さい減少及び遊離薬物の低い増加を示す。両抗体は、効率的にコンジュゲートされ、IMAB362-DM4について3.2及びIMAB362-vcMMAEについて4.5という薬物の抗体に対する比を呈する(Table 7(表8))。
【0306】
(実施例4)
IMAB362-ADCの結合
IMAB362の結合性質は、以前に詳細に試験されている:
・ IMAB362は、クローディン18スプライスバリアント2(CLDN18.2)の第1の細胞外ループに結合する。
・ CLDN18.2に対する親和性は、低ナノモル範囲内である。
・ いずれのCLDN18.2陰性細胞又は組織型との交差反応性も観察されなかった。
・ 最も近縁なファミリーメンバークローディン18スプライスバリアント-1(CLDN18.1)との交差反応性無し。
【0307】
DM4及びMMAEコンジュゲートIMAB362抗体の相対的結合親和性を、CLDN18.2を内因的及び異所性に発現する細胞株を使用してフローサイトメトリーによって非コンジュゲートIMAB362と比較した。結合性質を、0.1~20μg/mlの範囲内の異なる抗体濃度で試験した(
図4、Table 8(表9))。
【0308】
【0309】
非コンジュゲートIMAB362と比較して、DM4及びMMAEコンジュゲートIMAB362は、CLDN18.2を内因的及び異所性に発現する細胞についてわずかに低減された相対的結合親和性を示した(
図4、Table 8(表9))。両毒素コンジュゲート抗体は、非常に同様のEC50値を有したが、わずかに異なる最大結合値を有し、IMAB362-DM4がより高い最大結合を呈した(Table 8(表9))。
【0310】
IMAB362-毒素コンジュゲート抗体のCLDN18.2媒介結合を、異所性にCLDN18.2を過剰発現する細胞及び対応するCLDN18.2陰性親細胞株に対して試験した(
図5、Table 8(表9))。
【0311】
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの結合は、標的分子CLDN18.2の存在に厳密に依存する(
図5)。結合特異性は、ヒトCLDN18.2又は高度に相同のタンパク質ヒトCLDN18.1を過剰発現するように操作されたHEK293トランスフェクタントを使用してフローサイトメトリーによって分析した。HEK293~モック細胞を陰性対照として使用した(
図6、Table 8(表9))。
【0312】
IMAB362並びに毒素-コンジュゲート抗体IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、ヒトCLDN18.2を異所性に発現するHEK293~CLDN18.2細胞に同様の相対的親和性で結合した(Table 8(表9))。更に、IMAB362、DM4及びMMAEコンジュゲートIMAB362は、ヒトCLDN18.1又はモックトランスフェクション細胞に対する交差反応性を示さなかった(
図6B及びC)。
【0313】
(実施例5)
in vitroでのIMAB362-ADCの効力及び特異性
1.細胞生存能に対する影響
細胞生存能に対するIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの影響を、代謝活性細胞の分光光度定量化のために比色XTTベースアッセイを使用して、CLDN18.2を内因的及び異所性に発現するいくつかのヒト胃がん及び膵がん細胞株を用いて試験した。抗腫瘍活性を、3~16875ng/mlの範囲内の異なる抗体濃度で試験した(
図7、Table 9(表10))。
【0314】
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、in vitroで胃がん細胞株NUGC-4、NCI-N87~CLDN18.2、及び膵細胞株BxPC-3~CLDN18.2の生存能を効率的に阻害した(
図7)。両IMAB362-毒素コンジュゲートは、同様の濃度で、内因的にCLDN18.2を発現するNUGC-4細胞(EC50値:155~631ng/ml、生存能の最大低減:≧85%)、及び異所性にCLDN18.2を発現するBxPC-3~CLDN18.2細胞(EC50値:43~54ng/ml、生存能の最大低減:≧83%)、及びNCI-N87~CLDN18.2細胞(EC50値:75~180ng/ml、生存能の最大低減:45~61%)の細胞生存能を阻害した(
図7、Table 9(表10))。
【0315】
【0316】
更に、IMAB362-毒素コンジュゲートの標的媒介抗腫瘍活性を、NCI-N87 CLDN18.2陰性細胞株及び安定にトランスフェクトされたNCI-N87~CLDN18.2細胞株を使用してin vitroで試験した(
図8)。IMAB362-vcMMAEは、CLDN18.2陽性細胞に対してのみ細胞生存能を阻害したが、CLDN18.2陰性細胞に対して阻害しなかった。したがって、IMAB362-vcMMAEの活性は、CLDN18.2発現に厳密に依存する(
図8)。
【0317】
毒素コンジュゲートIMAB362抗体の特異性を、ヒトCLDN18.2を過剰発現するHEK293トランスフェクタント又は高度に相同のタンパク質ヒトCLDN18.1を使用して分析した。空ベクターを安定にトランスフェクトしたHEK293細胞を、陰性対照として使用した(
図9)。IMAB362-vcMMAEは、CLDN18.2陽性細胞に対してのみ細胞生存能を低減するが、CLDN18.2陰性細胞に対して低減しない。細胞増殖の阻害は、相同タンパク質18.1を発現する細胞について観察することができなかったので、効果は厳密にCLDN18.2特異的である(
図9)。
【0318】
要約すると、IMAB362-vcMMAE及びIMAB362-DM4は、in vitroで同様の効力を示し、両ADCは、いくつかのヒト胃がん及び膵がん細胞株の細胞生存能を高度に効率的に阻害した。効果は、標的発現に厳密に依存する。
【0319】
2.バイスタンダー効果
in vitroでのIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEのバイスタンダー活性を、CLDN18.2陽性及び陰性細胞株からなる混合腫瘍細胞培養を使用して判定した。ホタルルシフェラーゼを安定に発現する標的陰性PA-1(Luc)細胞をレポーター細胞として使用して細胞溶解を測定した。
【0320】
ルシフェラーゼ発現PA-1(Luc)及びルシフェラーゼ陰性NUGC-4細胞の共培養物のルシフェラーゼ活性は、IMAB362-DM4又はIMAB362-vcMMAEで処置すると、標的陽性NUGC-4細胞の存在下で非常に有効に標的陰性PA-1(Luc)細胞が排除されることを示した。更に、PA-1(Luc)細胞は、CLDN18.2発現細胞の非存在下で無影響であった(
図10)。
【0321】
要約すると、IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAE ADCは、隣接するCLDN18.2-陰性腫瘍細胞に対してバイスタンダー効果を誘導することができた。両毒素は、CLDN18.2陽性がん細胞内のIMAB362から効率的に放出されたので、これらの膜透過性に起因して、バイスタンダー細胞に対して細胞傷害活性を発揮することができる。
【0322】
(実施例6)
in vivoでのIMAB362-ADCの抗腫瘍効力
1.最大耐用量試験
第1のin vivo実験では、IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの最大耐用量(MTD)を、進行したヒトBxPC-3~CLDN18.2膵臓異種移植腫瘍を有するヌードマウスにおいて判定した。MTDは、容認できない毒性を伴うことなく所望の効果を生じさせる、処置における最高用量を指す。
【0323】
1.1.IMAB362-DM4のMTD
ヒトCLDN18.2を異所性に発現するBxPC-3~CLDN8.2細胞を、雌Hsd:Athymic Nude-Foxn1nuマウスの側腹部の皮下に注射した。腫瘍が13日目に75±13mm3(平均±SD)の平均サイズに到達した後、マウスを対照群及び抗体群にグループ分けした。マウスは、14日目にIV大量注射による7.5若しくは15mg/kgのIMAB362-DM4の単回用量、又はそれぞれ14日目及び21日目にIV大量注射による15mg/kgのIMAB362-DM4の反復用量を受けた。対照群のマウスは、14日目にビヒクルを受け取った。移植後49日目に、動物を屠殺した。毒性を試験するために、血液試料を収集し、臓器を、更なる病理組織学的試験のために準備及び貯蔵した。
【0324】
腫瘍増殖:
IMAB362-DM4は、進行したヒトBxPC-3~CLDN8.2異種移植腫瘍を有するマウスにおいて腫瘍増殖を阻害した。IMAB362-DM4単回又は反復処置は、用量とは独立に、試験の観察期間中(49日)、すべての処置したマウスにおいてほぼ完全な腫瘍退縮をもたらした。したがって、7.5mg/kgのIMAB362-DM4の単回用量は、完全な腫瘍緩解に十分であり得る(
図11)。
【0325】
健康状態:
体重、動物の挙動及び全体的な健康状態を週2回モニターした。すべての動物は、実験全体にわたって正常な体重を示した(
図12)。行動異常は観察されなかった。しかし、1匹の動物は、未知の理由で15mg/kgのIMAB362-DM4の第2の用量を静脈内に適用した後死亡した。
【0326】
臨床化学:
本発明者らは、アラニントランスアミナーゼ(GPT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸脱水素酵素(GLDH)、アルカリホスファターゼ(AP)、α-アミラーゼ、コリンエステラーゼ、クレアチニンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素(LDH)、リパーゼ、尿素、グルコース、総タンパク質、及びアルブミンの血清レベルを判定した。ビヒクル群とIMAB362-DM4群との間の差異は、検出されなかった(
図13)。クレアチニン及びガンマ-グルタミルトランスフェラーゼは、すべての群において検出限界未満であった(データを示さず)。すべての群におけるすべての動物が、15mg/kgのIMAB362-DM4の反復用量後でも、肝毒性、ネフロン毒性、又は膵毒性についての試験したサロゲートマーカーの正常血清レベルを示した。
【0327】
要約すると、単回投与としての15mg/kgのIMAB362-DM4(ヒトにおける45mg/m2に等価)は、マウスにおいて耐容性良好であり、CLDN18.2陽性異種移植片の処置における高い抗腫瘍効力を示した。濃度及び注射量の制限に起因して、より高い用量の静脈内注射は、実現可能でなく、最大耐単回用量を判定することができなかった。
【0328】
組織分析:
組織分析のために、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、脾臓、及び胃からのパラフィン切片をヘマトキシリン-エオシン染色し、IMAB362-vcMMAE媒介形態学的変化について顕微鏡で検査した。形態学的変化は、ビヒクル処置マウスと比較してIMAB362-DM4処置動物からの組織切片において観察することはできなかった。特に、胃、マウスCldn18.2を発現する唯一の組織は、抗体療法媒介組織損傷を示さなかった(
図14)。
【0329】
1.2.IMAB362-vcMMAEのMTD
IMAB362-vcMMAEのMTDを、IMAB362-DM4と同じマウスモデル(1.1)を使用して試験した。マウスを、腫瘍が、13日目に111±27mm3(平均±SD)の平均サイズに到達した後グループ分けし、14日目に8若しくは16mg/kgのIMAB362-vcMMAE(ヒトにおける24及び48mg/m2に等価)の単回IV大量注射、又は14及び21日目に16mg/kgのIMAB362-vcMMAEの反復用量IV大量注射で処置した。対照群のマウスは、14日目にビヒクル対照を受けた。動物を37日目に屠殺した。臨床生化学を判定し、臓器を収集し、更なる病理組織学的試験のために貯蔵した。
【0330】
腫瘍増殖:
IMAB362-vcMMAE処置は、進行したヒトBxPC-3~CLDN8.2異種移植腫瘍を有するマウスにおいて腫瘍退縮を誘導し、腫瘍増殖を更に阻害した。試験の最後で(37日)、IMAB362-vcMMAE単回又は反復処置は、用量とは独立に、すべての処置したマウスにおいてほぼ完全な腫瘍退縮をもたらした。したがって、8mg/kgのIMAB362-vcMMAEの単回用量は、完全な腫瘍緩解に十分であり得る(
図15)。
【0331】
健康状態:
体重、動物の挙動及び全体的な健康状態を週2回モニターした。すべての動物は、実験全体にわたって正常な体重を示した(
図16)。2匹の動物(SD群及びRD群からの1匹のマウス)は、16mg/kgのIMAB362-vcMMAEの第1の注射直後に短時間無欲性であった。しかし、この異常な挙動は、任意の他の動物において、又はIMAB362-vcMMAEの第2の適用後に観察されなかった。
【0332】
臨床化学:
本発明者らは、肝毒性、ネフロン毒性、又は膵毒性のサロゲートマーカー(アラニントランスアミナーゼ(GPT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸脱水素酵素(GLDH)、アルカリホスファターゼ(AP)、アルファ-アミラーゼ、コリンエステラーゼ、クレアチニンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素(LDH)、リパーゼ、尿素、グルコース、総タンパク質、及びアルブミン)の血清レベルを判定した。ビヒクル対照群と比較して、血清サロゲートマーカーの主要な偏差は、IMAB362-vcMMAEで処置した動物において観察されなかった(
図17)。クレアチニン及びガンマ-グルタミルトランスフェラーゼは、すべての群において検出限界未満であった。したがって、肝毒性、膵毒性、又は腎毒性の徴候は、評価した用量範囲内で、臨床生化学において観察されなかった。
【0333】
組織分析:
組織分析のために、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、脾臓、及び胃からのパラフィン切片をヘマトキシリン-エオシン染色し、IMAB362-vcMMAE媒介形態学的変化について顕微鏡で検査した。
【0334】
IMAB362-vcMMAE関連形態学的変化は、ビヒクル処置マウスと比較して、IMAB362-vcMMAE処置動物からの組織切片において観察することはできず、IMAB362-vcMMAEは、組織損傷も炎症も誘導しないことを示した。特に、胃、マウスCldn18.2を発現する唯一の組織は、抗体療法媒介組織損傷を示さなかった(
図22)。
【0335】
2.効力試験
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの抗腫瘍効果を、内因的又は異所性にCLDN18.2を発現するヒト癌細胞を皮下移植した胸腺欠損Nude-Foxn1
nuマウスにおいてin vivoで更に分析した。動物腫瘍モデルにおけるIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの最適治療用量を、用量範囲発見試験で判定した(それぞれ
図18及び
図20)。ヒト異種移植腫瘍に対する更なる効力試験を、IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの最適用量で実施した(それぞれ
図19及び
図21)。
【0336】
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、異なる早期の異種移植片モデル(腫瘍移植の3日後に療法開始)及び進行した固形腫瘍の処置(約100mm3の腫瘍サイズで療法開始)において担腫瘍マウスの腫瘍増殖を高度に有意に阻害し、生存期間を改善する。
【0337】
進行したヒトNCI-N87~CLDN18.2胃異種移植腫瘍の処置:
用量範囲発見試験において、IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの抗腫瘍効力を、進行したCLDN18.2陽性NCI-N87~CLDN18.2異種移植腫瘍を有するマウスにおいて分析した。移植して13日後に、動物を、15.2、7.6、若しくは3.8mg/kgのIMAB362-DM4、又は16、8、若しくは4mg/kgのIMAB362-vcMMAE、又はビヒクル対照を単回IV大量注射として適用して処置した。対照群からの動物は、8mg/kgの非コンジュゲートIMAB362を受けた(週2回、IV/i.p.).
【0338】
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、用量依存様式で担腫瘍マウスの腫瘍増殖を高度に有意に阻害し、腫瘍退縮を媒介し、生存期間を延長した一方、この先進の処置モデルにおけるIMAB362裸抗体は、統計的に有意な抗腫瘍効果を呈さなかった(
図18)。両IMAB362毒素コンジュゲート抗体は、担腫瘍マウスの生存期間を延長した(生存期間中央値:IMAB362-vcMMAE 16mg/kgにおける143日及びIMAB362-DM4 15.2mg/kg群おける136日と比較してビヒクル群において73日)(
図18)。
【0339】
早期ヒトNUGC-4 10cF7-5 sort3a胃異種移植腫瘍の処置:
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの抗腫瘍効力を、CLDN18.2を内因的に発現するNUGC-4 10cF7-5 sort3a胃癌細胞を皮下移植したマウスにおいて分析した。動物を、15.2mg/kgのIMAB362-DM4、16mg/kgのIMAB362-vcMMAE、又はビヒクル対照の単回用量IV注射によって移植後3日目に処置した。
【0340】
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、処置動物において腫瘍増殖を防止し、一方、対照群のすべてのマウスは、腫瘍を発達させた(p<0.0001)(
図19)。120日の所定観察時間後に、IMAB362-DM4又はIMAB362-vcMMAEを受けた10匹のうち9匹は、生きており、腫瘍が無く、一方、ビヒクル対照群からのすべての動物は、移植後41日目の最も遅い中止基準に起因して安楽死させなければならなかった(生存期間中央値34日、p<0.0003)(
図19)。
【0341】
進行したヒトBxPC-3~CLDN18.2膵臓異種移植腫瘍の処置:
in vivoでのIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの用量依存的抗腫瘍活性を、進行したヒトBxPC-3~CLDN18.2膵臓異種移植腫瘍を有するマウスにおける用量範囲発見試験で分析した。動物を、単回大量IV注射として投与した15.2、7.6、若しくは3.8mg/kgのIMAB362-DM4、16、8、若しくは4mg/kgのIMAB362-vcMMAE、ビヒクルで、又は8mg/kgのIMAB362の反復用量(週2回、IV/i.p.)で14日目に処置した。
【0342】
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、用量依存様式で担腫瘍マウスの腫瘍増殖を高度に有意に阻害し、腫瘍退縮を媒介し、生存期間を延長した。対照的に、非コンジュゲートIMAB362は、この進行した腫瘍モデルにおいて統計的に有意な抗腫瘍活性を呈さなかった(
図20)。両IMAB362毒素コンジュゲート抗体は、担腫瘍マウスの生存期間を高度に有意に延長した(生存期間中央値:IMAB362-vcMMAE 16mg/kg群における98.5日及びIMAB362-DM4 15.2mg/kg群における81日と比較してビヒクル群において48日)(
図20)。
【0343】
早期ヒトDAN-G 1C5F2膵臓異種移植腫瘍の処置:
in vivoでのIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの抗腫瘍活性を、CLDN18.2を内因的に発現するDAN-G 1C5F2膵癌細胞を皮下移植したマウスにおいて試験した。DAN-G 1C5F2細胞は、細胞表面上で極めて少量のCLDN18.2を有するが、相当な量のタンパク質又はRNAを免疫ブロット又はqRT-PCRによって検出することができる。DAN-G 1C5F2異種移植腫瘍のIHC分析は、腫瘍細胞の亜集団のみが中等度~強い膜関連CLDN18.2染色を示すことを実証した。したがって、DAN-G 1C5F2異種移植腫瘍は、バイスタンダー殺傷を呈する抗体薬物コンジュゲートを用いた処置に適している場合がある。動物を、15.2mg/kgのIMAB362-DM4、16mg/kgのIMAB362-vcMMAE、又はビヒクル対照の単回用量IV注射によって、移植後3日目に処置した。
【0344】
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、ビヒクル対照と比較して担腫瘍マウスの腫瘍増殖を高度に有意に阻害し、生存期間を延長した(
図21)。マウスの大部分において(>50%)、腫瘍増殖は、完全に防止された。120日の観察期間後に、IMAB362-DM4における7匹の動物のうちの2匹(生存期間中央値87日、p=0.0002)及びIMAB362-vcMMAE処置群における7匹の動物のうちの4匹は、依然として生きており(未確定の生存期間、p=0.0006)、一方、ビヒクル群のすべての動物は、がん悪液質等の中止基準に起因して31日以内に安楽死させなければならなかった(生存期間中央値24日)(
図21)。IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは両方、腫瘍増殖を有意に阻害し、異種移植腫瘍を有するマウスの生存期間を延長し、異種CLDN18.2発現を呈する。
【0345】
要約すると、CLDN18.2の低及び/又は異種発現を有する腫瘍(例えば、NUGC-4及びDAN-G異種移植腫瘍)は、IMAB362-DM4又はIMAB362-vcMMAEを用いて効率的に処置され得、担腫瘍動物の大部分は治癒した。両ADCの抗腫瘍活性は、バイスタンダー効果に基づいて説明することができる:細胞プロセシング後のDM4及びMMAEの細胞膜透過性形態の放出は、隣接する腫瘍細胞の殺傷を、これらが標的陰性であっても促進する。したがって、両ADCは、一部のみのCLDN18.2陽性細胞を含有する腫瘍を根絶するのに高度に有効である。
【0346】
(実施例7)
アポトーシスの誘導
毒素コンジュゲートIMAB362の細胞傷害性を、カスパーゼ3/7活性及びホスファチジルセリンの外在化を測定してアポトーシスアッセイによって評価した。カスパーゼ活性化は、プログラム細胞死の開始に重要であるアポトーシスの最も早期の測定可能マーカーの1つを代表する(Henkart、1996)。カスパーゼ3/7活性は、カスパーゼ3/7特異的プロルミノジェニック(pro-luminogenic)基質の切断によってルシフェラーゼベースアッセイにおいて判定した。アポトーシスにおける別の早期の事象を、蛍光共役アネキシンVを使用してフローサイトメトリーによってモニターした(Vermesら、1995)。アネキシンVは、アポトーシスの誘導直後に形質膜の内側小葉から外側小葉に転位置させられるホスファチジルセリンに特異的に結合する。生細胞と死細胞を識別するために、細胞をDNA色素ヨウ化プロピジウム(PI)で共染色する。
【0347】
アポトーシスの誘導を分析するために、CLDN18.2陽性NUGC4細胞を、単回用量のIMAB362-毒素コンジュゲートで数日間処置した。未処置細胞及び非コンジュゲートIMAB362で処置した細胞は、対照として機能を果たした(
図23)。3日後に、IMAB362-DM4又はIMAB362-vcMMAEで処置した細胞は、カスパーゼ3/7活性の増大を示し、一方、裸抗体とのインキュベーションは、カスパーゼ活性に影響を及ぼさなかった(
図23A)。アネキシンV及びPIを用いた共染色を独立したパラメータとして使用して、毒素コンジュゲートIMAB362抗体によるアポトーシスの誘導を検証した。処置して4日後に、IMAB362-DM4又はIMAB362-vcMMAEで処置した細胞の約50%がアネキシンV又はアネキシンV/PI陽性であることが判明し、細胞死がアポトーシスの誘導を介して起こることを示した。対照的に、架橋を伴わない裸のIMAB362は、適用した濃度範囲内でアポトーシスを誘導しない(
図23B)。
【0348】
要約すると、DM4又はvcMMAEにコンジュゲートしたIMAB362でCLDN18.2陽性腫瘍細胞を処置すると、アポトーシスが誘導される。
【0349】
(実施例8)
進行したヒトNUGC-4 10cF7-5 sort3a胃異種移植腫瘍の処置
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの抗腫瘍効力を、CLDN18.2を内因的に発現するNUGC-4 10cF7-5 sort3a胃癌細胞を皮下移植したマウスにおいて分析した。進行した腫瘍(約200mm3の腫瘍サイズ)を有する動物を、15.2mg/kgのIMAB362-DM4、16mg/kgのIMAB362-vcMMAE、又はビヒクル対照のIV注射によって移植後10日目に、且つIMAB362コンジュゲート処置群において腫瘍が再発した後、それぞれの薬物の第2の注射によって(38日目)処置した。
【0350】
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、すべての処置動物において腫瘍増殖を有意に阻害し、腫瘍退縮を媒介し(52日目)、一方、対照群のすべてのマウスは、腫瘍を発達させた(IMAB362-DM4:p<0.05;IMAB362-vcMMAE:p<0.001)(
図24)。療法の28日後(移植後38日目)、再発性腫瘍増殖(腫瘍サイズ≧約100mm
3)がIMAB362-DM4処置群の動物の50%において観察された。再びそれぞれのIMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEの第2の注射を行うと、腫瘍が部分的又は完全に緩解した。再発性腫瘍増殖は最終的に、IMAB362-DM4群の8匹の動物のうちの7匹及びIMAB362-vcMMAE群の8匹の動物のうちの4匹において観察された。処置終了の所定の時点後(グラフト後108日目)、IMAB362-vcMMAE群における8匹の動物のうちの4匹並びにIMAB362-DM4及びIMAB362群における1匹の動物が生きており、一方、ビヒクル群のすべての動物は、最も遅くて移植後52日目に死亡した(ビヒクルについて生存期間中央値32.5日、IMAB362-DM4について90日(ビヒクルに対してp<0.0003)、及びIMAB362-vcMMAEについて未確定(ビヒクルに対してp<0.0003))(
図24)。
【0351】
(実施例9)
抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の誘導
抗体依存性細胞傷害(ADCC):
DM4及びMMAEコンジュゲートIMAB362抗体のADCC活性を、CLDN18.2を内因的に発現するNUGC-4 10cF7_5 sort3a p3151#10ヒト胃癌細胞を使用して、非コンジュゲートIMAB262と比較した(
図25、Table 10(表11))。
【0352】
【0353】
両毒素コンジュゲート抗体、IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、非コンジュゲート抗体IMAB362と比較して同様のEC50及び最大溶解値を呈し、ADCC活性は、薬物コンジュゲーション後に保持されることを示した。
【0354】
補体依存性細胞傷害(CDC):
IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEのCDC活性を、内因的にCLDN18.2を発現するNUGC-4 10cF7_5 sort3A p3151#10及びKATO-III FGF-BP#12 adM p3151#25ヒト胃癌細胞について分析した(
図26、Table 11(表12))。
【0355】
【0356】
CDC活性は、毒素の抗体IMAB362へのコンジュゲーションによって影響されなかった。両毒素コンジュゲート抗体、IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、非コンジュゲート抗体IMAB362と比較して少なくとも同様のEC50及び最大溶解値を呈した。
【0357】
したがって、IMAB362-DM4及びIMAB362-vcMMAEは、毒素媒介細胞傷害性を非コンジュゲートIMAB362の主要作用機序である抗体依存性細胞傷害及び補体依存性細胞傷害と組み合わせ、それによって全体的な治療活性を改善する。
【0358】
【0359】
新規国際特許出願
Ganymed Pharmaceuticals AGら
「クローディン18.2に対する抗体を含む併用療法」
当社のリファレンス: 342-84 PCT
生体物質についての追加のシート
さらなる寄託の識別:
1)寄託物(DSM ACC2738、DSM ACC2739、DSM ACC2740、DSM ACC2741、DSM ACC2742、DSM ACC2743、DSM ACC2745、DSM ACC2746、DSM ACC2747、DSM ACC2748)の寄託機関の名称及び住所:
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH
Mascheroder Weg 1b
38124 Braunschweig
DE
2)寄託物(DSM ACC2808、DSM ACC2809、DSM ACC2810)の受託機関の名称及び住所:
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH
Inhoffenstr. 7 B
38124 Braunschweig
DE
【0360】
【0361】
すべての上述した寄託物についての追加の表示:
- マウス(Mus musculus)脾細胞に融合したマウス(Mus musculus)骨髄腫P3X63Ag8U.1
- ヒトクローディン-18A2に対するハイブリドーマ分泌抗体
3)寄託者:
すべての上述した寄託は下記によって行われた。
Ganymed Pharmaceuticals AG
Freiligrathstrasse 12
55131 Mainz
DE
【0362】
【配列表】