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▶ シクパ ホルディング ソシエテ アノニムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】効果層を生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20220216BHJP
   B42D 25/369 20140101ALI20220216BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220216BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220216BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20220216BHJP
   G11B 5/86 20060101ALI20220216BHJP
   G11B 5/852 20060101ALI20220216BHJP
   G11B 5/702 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/369
B05D7/24 303D
B05D7/24 303A
B05D7/24 303J
B05D3/00 D
B05D5/06 Z
B05D3/00 G
G11B5/86 101
G11B5/852
G11B5/702
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018562217
(86)(22)【出願日】2017-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2017067564
(87)【国際公開番号】W WO2018019594
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-02-12
(31)【優先権主張番号】16181898.4
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ニクサーシュ ガネポー, ネダ
(72)【発明者】
【氏名】ロギノフ, エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】デスプランド, クロード-アラン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, エドガー
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/086257(WO,A1)
【文献】特表2010-526683(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0077485(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
B42D 25/369
B05D 7/24
B05D 3/00
B05D 5/06
G11B 5/86
G11B 5/852
G11B 5/702
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の印を示す光学効果層(OEL)を基板(x20)に生成するための方法であって、
a)基板(x20)表面に、i)小板状磁性顔料粒子又は小板状磁化可能顔料粒子とii)バインダ材料とを含む、第1の状態にあるコーティング組成物を塗布して、前記基板(x20)にコーティング層(x30)を形成するステップと、
b)前記コーティング層(x30)を有する前記基板(x20)、並びに窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印を有する軟磁性板(x10)を備えたアセンブリ(x00)を形成するステップであって、前記コーティング層(x30)を有する前記基板(x20)が前記軟磁性板(x10)の上に配置され、前記軟磁性板(x10)が、高透磁率の1つ又は複数の金属、合金、又は化合物から作られるか、非磁性材料に分散された25重量%~95重量%の軟磁性粒子を含む複合材料から作られ、重量パーセントが軟磁性板(x10)の総重量に基づく、ステップと、
c)前記コーティング層(x30)を有する前記基板(x20)及びステップb)により得られた前記軟磁性板(x10)を備えた前記アセンブリ(x00)を、静磁界発生装置(x40)の不均一磁界に通して移動させて、前記小板状磁性顔料粒子又は小板状磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップと、
d)前記コーティング組成物を第2の状態に固化させて、前記小板状磁性顔料粒子又は小板状磁化可能顔料粒子を採用された位置及び配向に固定するステップとを含み、
前記複合材料の前記非磁性材料が、
ポリアミド、コポリアミド、ポリフタルイミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルファイド、液晶ポリマー、ポリカーボネート、及びこれらの混合物から成る群から選択される熱可塑性材料、若しくは
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、及びこれらの混合物から成る群から選択される熱硬化性材料、
を含む、又はこれらから成るポリマー母材であり、
前記軟磁性粒子が、カルボニル鉄、カルボニルニッケル、コバルト、及びこれらの組合せから成る群から選択される、方法。
【請求項2】
前記軟磁性板(x10)が前記基板に面し、前記窪み及び/又は突起の形の前記1つ又は複数の印が前記基板(x20)に面し、前記コーティング層(x30)が前記アセンブリ(x00)の最上層である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記軟磁性粒子が0.5μm~100μmのd50を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記軟磁性板(x10)が、窪みの形の1つ又は複数の印を有し、前記複合材料から作られ、前記窪みの深さが、前記軟磁性板(x10)の厚さと比べて5%~99%である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記軟磁性板(x10)が、窪みの形の1つ又は複数の印を有し、高透磁率の1つ又は複数の金属、合金、又は化合物から作られ、前記窪みの深さが、前記軟磁性板(x10)の厚さと比べて20%~99%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティング組成物を固化する前記ステップd)が、前記ステップc)と一部同時に実行される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記磁界発生装置が線形永久磁石ハルバッハ配列である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記小板状磁性顔料粒子又は小板状磁化可能顔料粒子が、小板状磁性薄膜干渉顔料粒子、小板状磁性コレステリック液晶顔料粒子、磁性材料を含む小板状干渉被覆顔料粒子、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される小板状光学可変磁性顔料粒子又は小板状光学可変磁化可能顔料粒子である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板が、紙若しくはその他の繊維材料、紙含有材料、ガラス、金属、セラミック、プラスチック及びポリマー、金属化プラスチック若しくはポリマー、複合材料、及びこれらの混合物又は組合せから成る群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
a)セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体を用意するステップと、
b)請求項1~のいずれか一項に記載の方法による光学効果層を、前記セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体に含まれるように用意するステップとを含む、セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体を製造する方法。
【請求項11】
基板に塗布され、i)小板状磁性顔料粒子又は小板状磁化可能顔料粒子とii)未固化状態のバインダ材料とを含むコーティング層に、1つ又は複数の印を磁気転写するための、請求項1~のいずれか一項に記載の軟磁性板(x10)と請求項1~のいずれか一項に記載の磁界発生装置(x40)との使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[001]本発明は、磁気配向された小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含む光学効果層(OEL)を生成するための方法の分野に関する。特に、本発明は、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング層に1つ又は複数の印を磁気転写してOELを生成するための方法、及びセキュリティ文書又はセキュリティ物品の偽造防止手段として、且つ装飾目的としての前記OELの使用を提供する。
【0002】
[発明の背景]
[002]当技術分野においては、例えばセキュリティ文書の分野で、配向磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子、特に光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むインク、組成物、コーティング、又は層を用いてセキュリティ要素を生成することが公知である。配向磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング又は層は、例えば、米国特許第2,570,856号、米国特許第3,676,273号、米国特許第3,791,864号、米国特許第5,630,877号、及び米国特許第5,364,689号に開示されている。配向磁性変色顔料粒子を含むことによって光学効果を特に示し、セキュリティ文書の保護に有用なコーティング又は層が、国際公開第2002/090002A2号及び国際公開第2005/002866A1号に開示されている。
【0003】
[003]例えばセキュリティ文書のセキュリティ機能は一般に、一方では「秘密」のセキュリティ機能、他方では「公然」のセキュリティ機能に分類可能である。秘密のセキュリティ機能による保護は、そのような機能が検出困難であり、検出には通常、特殊な機器及び知識が必要である、という原理に依拠している。一方、「公然」のセキュリティ機能は、人間の感覚のみで容易に検出可能であり、例えばそのような機能の可視化及び/又は触覚による検出が可能でありながら、製造及び/又はコピーは依然として困難である、という概念に依拠している。但し、公然のセキュリティ機能の有効性は、そのセキュリティ機能としての容易な認識に大きく依存している。
【0004】
[004]印刷用インク又はコーティング中の磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子によれば、対応する構造の磁界を印加して、未固化の(すなわち湿潤)コーティング中で磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の局所配向を誘導した後に、コーティングを固化させることによって、磁気誘導画像、デザイン、及び/又はパターンを生成することができる。これにより、固定され安定した磁気誘導画像、デザイン、及び/又はパターンが得られる。コーティング組成物中の磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の材料及び配向技術は、例えば、米国特許第2,418,479号、米国特許第2,570,856号、米国特許第3,791,864号、独国特許出願公開第2006848号、米国特許第3,676,273号、米国特許第5,364,689号、米国特許第6,103,361号、欧州特許第0406667号、米国特許出願公開第2002/0160194号、米国特許出願公開第2004/0009308号、欧州特許出願公開第0710508号、国際公開第2002/09002A2号、国際公開第2003/000801A2号、国際公開第2005/002866A1号、国際公開第2006/061301A1号に開示されている。このようにして、極めて偽造されにくい磁気誘導パターンを生成することができる。対象とするセキュリティ要素は、磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子又は対応するインクと採用する特定の技術との両方を利用して、前記インクを印刷し、印刷されたインク中の前記顔料を配向させることによってのみ生成することができる。
【0005】
[005]欧州特許第1641624号、欧州特許第1937415号、及び欧州特許第2155498号は、磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含む未固化の(すなわち湿潤)コーティング組成物に印を磁気転写して、光学効果層(OEL)を形成するための装置及び方法を開示している。開示された方法は、顧客固有の磁気デザインを有するセキュリティ文書及び物品を生成できることが有利である。
【0006】
[006]欧州特許第1641624号は、磁性粒子若しくは磁化可能粒子を基板に含む湿潤コーティング組成物に、転写すべきデザインに対応する印を磁気転写するための装置を開示している。開示された装置は、永久磁性材料の本体を含み、この永久磁性材料は前記本体の表面に略垂直な方向に永久に磁化され、前記本体の表面が彫刻の形の印を有し、その磁界の摂動を生じさせる。開示された装置は、セキュリティ印刷の分野で使用されるような高速印刷プロセスにおいて高解像度パターンを転写するのに適している。しかしながら、欧州特許第1937415号に記載されているように、欧州特許第1641624号に開示された装置により、かなり暗い視覚的外観を有する、反射の弱い光学効果層が生じるおそれがある。欧州特許第1641624号の開示された欠点は、前記装置で必要とされる垂直磁化により生じるように、配向コーティング層の大部分にわたって磁性顔料粒子がプリント基板面に対して主に垂直に配向されていることによるものである。
【0007】
[007]欧州特許第1937415号は、磁性若しくは磁化可能顔料薄片を基板に含む湿潤コーティング組成物に、印を磁気転写するための改良された装置を開示している。開示された装置は、第1の磁界を有し、前記印を表す表面レリーフ、彫刻、又は切抜きをその表面に有する少なくとも1つの磁化磁性板と、第2の磁界を有する少なくとも1つの追加の磁石とを備え、この追加の磁石は磁性板に隣り合って固定して位置決めされて、磁界の実質的な重なりを生じさせる。少なくとも1つの追加の磁石が存在すると、少なくとも1つの磁化された永久磁性板により発生した磁力線を平坦化する効果を有するため、より魅力的な視覚的効果が得られる。開示された装置は先行技術と比べて磁力線を平坦化するが、磁力線は基本的には湾曲したままである。開示された装置では、依然として、特に磁力線が基板表面に略垂直なゾーンにおいて、磁気転写画像に大きな暗い領域があるという望ましくない外観が生じるおそれがある。欧州特許第1937415号は、特に顧客固有の印を有するのに適した強い反射のOELを生じさせる、顔料薄片配向の均一な分布を作り出す方法について教示していない。
【0008】
[008]上記の方法及び装置は、磁気アセンブリを使用して磁性顔料粒子を一軸配向させる。磁性顔料粒子の一軸配向により得られる隣り合う粒子は、長軸(第2の最長軸)が互いに且つ磁界に対して平行であるが、顔料粒子面の短軸は印加される磁界に拘束されないか、又ははるかに拘束される度合いが少ない。したがって、磁性顔料粒子の一軸配向のみでは、広範囲の方向、特に磁力線に略垂直な方向に光を反射させたときに、低反射性及び低輝度となり得る光学効果層が生じる。
【0009】
[009]欧州特許第2155498号は、磁性粒子若しくは磁化可能粒子を基板に含むコーティング組成物に印を磁気転写するための装置を開示している。開示された装置は、電磁手段又は永久磁石により発生する磁界を受ける本体を備え、この本体は、本体の表面に彫刻の形の決定された印を有する。開示された本体は、前記彫刻が形成された高透磁率の材料の少なくとも1つの層を備え、前記高透磁率の材料の層の非彫刻領域では、磁界の磁力線が、高透磁率の材料の層の内側で前記本体の表面に略平行に延びる。装置が、高透磁率の材料の層を支持する低透磁率の材料のベース板を備え、前記高透磁率の材料の層を、亜鉛めっきによりベース板に蒸着させることが好ましいことがさらに開示される。欧州特許第2155498号は、磁界を有利には360°回転させることにより、磁性粒子若しくは磁化可能粒子を含む層の曝露中に磁力線の主方向を変化させることができることをさらに開示している。特に、欧州特許第2155498号は、電磁石の代わりに永久磁石を使用し、前記永久磁石の回転を磁石自体の物理的回転によって実行することができる実施形態を開示している。開示された装置の欠点は、亜鉛めっきプロセスにある。これは、前記プロセスが煩雑で、特別な機器を必要とするからである。さらに、開示された発明の重要な欠点は、プロセスが、磁界の360°回転を実現するために、永久磁石の物理的回転に依拠していることである。これは、複雑な機械システムを必要とするため、産業的観点から特に煩雑である。さらに、単純な磁石を提示通りに回転させると、欧州特許第2155498号の対応する例に示すように、基本的に球形の顔料薄片配向が生じる。そのような配向は、球状効果を印に重ね合わせるので、人目を引くレリーフ/3D効果を有する印をはっきり示すのには適していない。説明から引き出すことのできる、比較的平坦な回転磁界を発生させるための唯一の方法は、非常に大きい磁石を回転させることであるが、これは実際的でない。欧州特許第2155498号は、魅力的な3D/レリーフの印象を印に与える回転磁界を発生させる実際的な産業プロセスを確立する方法を教示していない。
【0010】
[010]国際公開第2015/086257A1号は、基板に光学効果層(OEL)を生成するための改良された方法を開示しており、前記方法は2つの磁気配向ステップを含み、前記ステップは、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物を、第1の磁界発生装置の動的な、すなわち方向変化する磁界に曝露して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップと、ii)コーティング組成物を第2の磁界発生装置の静磁界に曝露することにより、前記第2の磁界発生装置により転写されたデザインに従って、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を1軸再配向させるステップとを含む。国際公開第2015/086257A1号は、第2の磁気配向ステップが、欧州特許第1937415号に記載されたような第2の磁界発生装置を使用する例を提示している。国際公開第2015/086257A1号に開示された方法により、先行技術と比べて輝度及びコントラストが改良された光学効果層の生成が可能になるが、そのようにして得られた光学効果層は、依然として反射の弱い視覚的外観となるおそれがあり、魅力的な3D/レリーフの印象を印に与える方法を教示していない。
【0011】
[011]したがって、より良好に反射する視覚的外観を示す光学効果層(OEL)を生成するように印を磁気転写するための改良された方法が依然として必要である。前記方法は、確実で実施しやすく、高い生成速度で動作することができ、しかも人目を引くレリーフ及び/又は3D効果を示すだけでなく、明るく十分な解像度の外観を示すOELを生成可能でなければならない。
【0012】
[発明の概要]
[012]したがって、本発明の目的は、上記の先行技術の欠点を克服することである。これは、1つ又は複数の印を示す光学効果層(OEL)を基板(x20)に生成するための方法であって、a)好ましくは印刷プロセスにより、基板(x20)表面に、i)小板状磁性顔料粒子又は磁化可能顔料粒子とii)バインダ材料とを含む、第1の状態にあるコーティング組成物を塗布して、前記基板(x20)にコーティング層(x30)を形成するステップと、b)コーティング層(x30)を有する基板(x20)、並びに窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印を有する軟磁性板(x10)を備えたアセンブリを形成するステップであって、コーティング層(x30)を有する基板(x20)が軟磁性板(x10)の上に配置され、軟磁性板(x10)が、高透磁率の1つ又は複数の金属、合金、又は化合物から作られるか、非磁性材料に分散された約25重量%~約95重量%、好ましくは約50重量%~約90重量%の軟磁性粒子を含む複合材料から作られ、重量パーセントが軟磁性板(x10)の総重量に基づくステップと、c)コーティング層(x30)を有する基板(x20)及びステップb)により得られた軟磁性板(x10)を備えたアセンブリ(x00)を、静磁界発生装置(x40)の不均一磁界に通して移動させて、小板状磁性顔料粒子又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップと、d)好ましくは紫外・可視光の照射により、コーティング組成物を第2の状態に固化させて、小板状磁性顔料粒子又は磁化可能顔料粒子を採用された位置及び配向に固定するステップとを含む方法によって実現される。
【0013】
[013]好ましい一実施形態において、コーティング層(x30)を有する基板(x20)が軟磁性板(x10)の上に配置され、軟磁性板(x10)が基板に面し、コーティング層(x30)がアセンブリの最上層であり、好ましくは環境に晒され、すなわち他の層又は材料により覆われていない。
【0014】
[014]本明細書に記載の方法により生成される光学効果層(OEL)、並びに本明細書に記載の1つ又は複数の光学OELを備えたセキュリティ文書、並びに装飾要素及び物体も本明細書に記載される。
【0015】
[015]a)セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体を用意するステップと、b)特に本明細書に記載の方法により得られた本明細書に記載の光学効果層を、セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体に含まれるように用意するステップとを含む、セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体を製造する方法も本明細書に記載される。
【0016】
[016]本明細書に記載の基板に塗布され、i)小板状磁性顔料粒子又は磁化可能顔料粒子とii)本明細書に記載の未固化状態の本明細書に記載のバインダ材料とを含むコーティング層に、1つ又は複数の印を磁気転写するための、本明細書に記載の軟磁性板(x10)と本明細書に記載の静磁界発生装置(x40)との使用も本明細書に記載される。
【0017】
[017]本発明は、第1の状態、すなわち未固化(すなわち湿潤)状態のコーティング組成物から形成されたコーティング層に、1つ又は複数の印を磁気転写するための確実で実施が容易な方法であって、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子がバインダ材料中で自由に移動及び回転して、コーティング層を、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の配向及び位置が固定/停止した第2の状態に固化させた後に、人目を引くレリーフ及び/又は3D効果を有する光学効果層(OEL)を形成するための方法を提供する。小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を基板に含むコーティング層に1つ又は複数の印を磁気転写することは、コーティング層を有する基板及び軟磁性板を備えたアセンブリを形成することによって、特に、窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印を有する軟磁性板の上(すなわち上部)にコーティング層を有する基板を配置し、前記アセンブリを静磁界発生装置の不均一磁界に通して移動させることによって実行される。「不均一磁界」とは、コーティング層の個々の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子がたどる動きの経路に沿って、磁力線が、少なくとも移動中のアセンブリの基準枠に固定された平面内の方向で変化することを意味する。このようにして、コーティング層の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部は、前記平面内で整列する傾向があるため、前記小板状磁性粒子若しくは磁化可能粒子の二軸配向、すなわち前記小板状顔料粒子の2つの最大主軸が拘束される配向となる。この二軸配向中、1つ又は複数の窪み及び/又は突起が、静磁界発生装置により発生した磁界の方向及び/又は強度に影響を与えるため、前記1つ又は複数の印の真上又は真下に位置する小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の配向に影響を与えて、所望の人目を引くレリーフ及び/又は3D効果を生じさせる。好ましい実施形態において、本明細書に記載の平面は、前記1つ又は複数の印の真上又は真下にない1つ又は複数の領域でOELの平面に平行又は略平行であるため、OELを有する基板に平行又は略平行な、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部の配向が生じる。別の実施形態において、動きの経路に沿った磁界が、OELの平面に対して非ゼロ角度を形成する1つ又は複数の平面内で変化するため、OELを有する基板に基本的に平行でない小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部の配向が生じる。未固化(すなわち湿潤)コーティング層に所望の効果が作られると、コーティング組成物を部分的又は完全に固化させて、OEL中の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の相対位置及び配向を永久に固定/停止する。
【0018】
[018]さらに、本発明により提供される方法は、機械的に頑強であり、産業用高速印刷機器を用いて容易に実施でき、前記機器の煩雑で時間及び費用のかかる改良に頼ることがない。
【0019】
[019]以下で、本明細書に記載の光学効果層(OEL)及びその生成について、図面及び特定の実施形態を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】軟磁性板(110)を概略的に示す上面図(図1A)及び断面図(図1B)であり、軟磁性板は厚さ(T)を有し、深さ(D)を有する窪み(I)の形の印を備える。
図1B】軟磁性板(110)を概略的に示す上面図(図1A)及び断面図(図1B)であり、軟磁性板は厚さ(T)を有し、深さ(D)を有する窪み(I)の形の印を備える。
図2A】軟磁性板(210)を概略的に示す上面図(図2A)及び断面図(図2B)であり、軟磁性板(210)は厚さ(T)を有し、高さ(H)を有する突起(P)の形の印を備える。
図2B】軟磁性板(210)を概略的に示す上面図(図2A)及び断面図(図2B)であり、軟磁性板(210)は厚さ(T)を有し、高さ(H)を有する突起(P)の形の印を備える。
図3A】コーティング層(330)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(330)を有する基板(320)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(310)を備えたアセンブリ(300)と、ii)磁界発生装置(340)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図3B図3Aに示す方法を用いて得られる4つのOELの写真画像である。
図4A】コーティング層(430)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(430)を有する基板(420)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(410)を備えたアセンブリ(400)と、ii)磁界発生装置(440)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図4B図4Aに示す方法を用いて得られる3つのOELの写真画像である。
図5A】コーティング層(530)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための、先行技術による方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(530)を有する基板(520)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(510)を備えたアセンブリ(500)と、ii)磁界発生装置(540)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を一軸配向させるステップを含む。
図5B図5Aに示す方法を用いて得られるOELの写真画像である。
図6A】コーティング層(630)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(630)を有する基板(620)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(610)を備えたアセンブリ(600)と、ii)磁界発生装置(640)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図6B図6Aに示す方法を用いて得られるOELの写真画像である。
図7A】コーティング層(730)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(730)を有する基板(720)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(710)を備えたアセンブリ(700)と、ii)磁界発生装置(740)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図7B】コーティング層(730)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(730)を有する基板(720)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(710)を備えたアセンブリ(700)と、ii)磁界発生装置(740)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図7C図7A図7Bに示す方法を用いて得られるOELの写真画像である。
図8A】コーティング層(830)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(830)を有する基板(820)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(810)を備えたアセンブリ(800)と、ii)磁界発生装置(840)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図8B】コーティング層(830)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(830)を有する基板(820)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(810)を備えたアセンブリ(800)と、ii)磁界発生装置(840)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図8C図8A図8Bに示す方法を用いて得られるOELの写真画像である。
図9A】コーティング層(930)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(930)を有する基板(920)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(910)を備えたアセンブリ(900)と、ii)磁界発生装置(940)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図9B】コーティング層(930)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(930)を有する基板(920)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(910)を備えたアセンブリ(900)と、ii)磁界発生装置(940)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図9C図9A図9Bに示す方法を用いて得られるOELの写真画像である。
図10A】コーティング層(1030)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(1030)を有する基板(1020)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(1010)を備えたアセンブリ(1000)と、ii)磁界発生装置(1040)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図10B】コーティング層(1030)に1つ又は複数の印を磁気転写して光学効果層(OEL)を生成するための方法を概略的に示す図であり、前記方法は、i)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られたコーティング層(1030)を有する基板(1020)、及び1つ又は複数の印を有する軟磁性板(1010)を備えたアセンブリ(1000)と、ii)磁界発生装置(1040)とを使用して、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップを含む。
図10C図10A図10Bに示す方法を用いて得られるOELの写真画像である。
【0021】
[詳細な説明]
(定義)
[020]以下の定義を用いることによって、本明細書及び特許請求の範囲に記載の用語の意味を解釈するものとする。
【0022】
[021]本明細書で使用されるとき、不定冠詞「a」は、1つ及び2つ以上を示し、必ずしもその指示対象の名詞を単数に限定するものではない。
【0023】
[022]本明細書で使用されるとき、用語「少なくとも」は、1つ又は2つ以上、例えば1つ又は2つ又は3つを定義するものである。
【0024】
[023]本明細書で使用されるとき、用語「約」は、対象とする量又は値が指定された特定の値又はその近傍の他の値であってもよいことを意味する。一般に、ある値を示す用語「約」は、その値の±5%の範囲を示すことを意図している。一例として、表現「約100」は、100±5の範囲すなわち95~105の範囲を示す。一般に、用語「約」を使用する場合は、本発明による類似の結果又は効果が指定値の±5%の範囲で得られることが予想され得る。
【0025】
[024]本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」は、前記群の要素のすべて又は1つだけが存在していてもよいことを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両方」を意味するものとする。「Aのみ」の場合、この用語は、Bが存在しない可能性、すなわち「AのみであってBではない」という可能性も網羅している。
【0026】
[025]本明細書で使用されるとき、用語「備える(含む)」は、非排他的且つオープンエンドであることを意図している。したがって、例えば化合物Aを含むコーティング組成物は、A以外の化合物を含んでいてもよい。但し、用語「備える(含む)」は、特定の実施形態として、「~から本質的に成る」及び「~から成る」というより限定的な意味も網羅するため、例えば「A、B、及び任意選択でCを含む湿し水」は、A及びBから(本質的に)成っていてもよいし、A、B、及びCから(本質的に)成っていてもよい。
【0027】
[026]本明細書で使用されるとき、用語「光学効果層(OEL)」は、配向小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子とバインダとを含むコーティング又は層を示し、前記小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が磁界により配向され、配向小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の配向及び位置が固定/停止されて(すなわち固化/硬化後に)磁気誘導画像を形成する。
【0028】
[027]用語「コーティング組成物」は、光学効果層(OEL)を固体基板上に形成可能であるとともに、印刷法によって好ましく且つ非排他的に塗布可能な任意の組成物を表す。コーティング組成物は、本明細書に記載の小板状磁性粒子又は磁化可能粒子と本明細書に記載のバインダとを含む。
【0029】
[028]本明細書で使用されるとき、用語「湿潤」は、未固化のコーティング層、例えば、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が、それに作用する外力の影響により位置及び配向をまだ変更可能であるコーティングを表す。
【0030】
[029]本明細書で使用されるとき、用語「印」は、記号、英数字記号、モチーフ、文字、単語、数字、ロゴ、及び図形を含むがこれらに限定されないパターン等の不連続層を意味する。
【0031】
[030]用語「固化」は、未固化(すなわち湿潤)の第1の物理的状態にあるコーティング組成物の粘性が高くなり、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が現在の位置及び配向で固定/停止されて、移動も回転もできなくなる第2の物理的状態、すなわち固化又は固体状態に変換されるプロセスを示すのに使用される。
【0032】
[031]用語「セキュリティ文書」は、通常、少なくとも1つのセキュリティ機能により偽造又は不正から保護される文書を表す。セキュリティ文書の例として、有価文書及び有価商品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
[032]用語「セキュリティ機能」は、認証目的で使用可能な画像、パターン、又は図形要素を示すために使用される。
【0034】
[033]本説明が「好ましい」実施形態/特徴に言及する場合、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組合せも、この「好ましい」実施形態/特徴の組合せが技術的に有意であれば開示されるものと考えられる。
【0035】
[034]本発明は、基板に小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物から作られた未固化の(すなわち湿潤)コーティング層に、前記顔料粒子の磁気配向によって1つ又は複数の印を磁気転写するための方法であって、この磁気配向が、コーティング層を有する基板、並びに窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印を有する軟磁性板を備えたアセンブリを静磁界発生装置の不均一磁界に通して移動させて、コーティング層の磁界の少なくとも方向を経時的に変化させることにより、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させることにより行われる方法を提供する。コーティング組成物を固化させることにより小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の磁気配向及び位置を固定/停止して、人目を引く3D光学効果をさらに示す、明るく十分な解像度の光学効果層(OEL)を得る。1つ又は複数の印が、軟磁性板から小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含む未固化のコーティング層に転写される。本発明は、印刷文書又は物品において人目を引く3D外観を示す顧客固定の明るく十分な解像度の光学効果層(OEL)を、容易に実施でき非常に確実な方法で得るために、前記方法を提供する。
【0036】
[035]本発明による方法は、
a)基板表面に、i)本明細書に記載の小板状磁性顔料粒子又は磁化可能顔料粒子とii)本明細書に記載のバインダ材料とを含む、第1の状態にあるコーティング組成物を塗布して、前記基板にコーティング層を形成するステップと、
b)コーティング層を有する基板、並びに窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印を有する軟磁性板を備えたアセンブリを形成するステップであって、コーティング層を有する基板が軟磁性板の上に配置され、コーティング層が、好ましくはアセンブリの最上層であり、好ましくは環境に晒されるステップと、
c)コーティング層を有する基板及びステップb)により得られた軟磁性板を備えたアセンブリを、本明細書に記載の静磁界発生装置の不均一磁界に通して移動させて、小板状磁性顔料粒子又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるステップと、
d)コーティング組成物を第2の状態に固化させて、小板状磁性顔料粒子又は磁化可能顔料粒子を採用された位置及び配向に固定するステップとを含む。
【0037】
[036]「コーティング層を有する基板が軟磁性板の上に配置される」と特定することにより、軟磁性板及び基板が、コーティング層を有する基板が軟磁性板の真上に配置される、すなわち、軟磁性板及び基板の互いに対する配置の方向が基本的に上下方向であるように配置される好ましい場合が包含される。
【0038】
[037]本明細書に記載の方法は、a)本明細書に記載の基板表面に、本明細書に記載の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物を塗布して、コーティング層を形成するステップを含み、前記コーティング組成物が、層としての塗布が可能であり、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子がバインダ材料中で移動及び回転することのできる未固化(すなわち湿潤)状態にある第1の物理的状態にある。本明細書に記載のコーティング組成物は基板表面に設けられるため、少なくとも本明細書に記載のバインダ材料及び小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物が、所望の印刷又は被覆機器で加工できる形であることが必要である。前記ステップa)は、好ましくはスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、及び凹版印刷(当技術分野において銅版凹版印刷及び鋼製金型凹版印刷とも称する)から成る群から選択され、より好ましくはスクリーン印刷、グラビア印刷、及びフレキソ印刷から成る群から選択される印刷プロセスにより実行されることが好ましい。
【0039】
[038]スクリーン印刷(当技術分野においてシルクスクリーン印刷とも称する)はステンシルプロセスであり、このプロセスでは、例えば木材又は金属(例えばアルミニウム若しくはステンレス鋼)から作られた枠にきつく張った、絹、ポリアミド若しくはポリエステル等の合成繊維から作られたモノフィラメント又はマルチフィラメント、或いは金属糸の細目のメッシュにより支持されるステンシルを通してインクが表面に転写される。或いは、スクリーン印刷のメッシュは、化学エッチングされた、レーザエッチングされた、又はガルバーニ電気により形成された多孔金属箔、例えばステンレス鋼箔であってもよい。メッシュの細孔は、非画像領域では塞がれ、画像領域では開いたままであり、この画像担体をスクリーンと称する。スクリーン印刷は、平台式であっても回転式であってもよい。スクリーン印刷は、例えば、The Printing ink manual、R.H.Leach及びR.J.Pierce、Springer Edition、第5版、58~62ページ、及びPrinting Technology、J.M.Adams及びP.A.Dolin、Delmar Thomson Learning、第5版、293~328ページにさらに記載されている。
【0040】
[039]輪転グラビア印刷(当技術分野においてグラビア印刷とも称する)は、画像要素がシリンダの表面に彫刻される印刷プロセスである。非画像領域は、一定の当初のレベルにある。印刷前に、印刷版全体(非印刷要素及び印刷要素)にインクを付け、インクで満たす。印刷前にワイパ又はブレードを用いてインクを非画像から除去して、インクがセルのみに残るようにする。通常2~4バールの範囲の圧力により、且つ基板とインクとの接着力により、画像をセルから基板に転写させる。用語「グラビア」は、例えば異なる種類のインクに依拠する凹版印刷プロセス(当技術分野において鋼製金型凹版印刷プロセス又は銅版凹版印刷プロセスとも称する)を包含しない。さらなる詳細が、「Handbook of print media」、Helmut Kipphan、Springer Edition、48ページ、及びThe Printing ink manual、R.H.Leach及びR.J.Pierce、Springer Edition、第5版、42~51ページに示される。
【0041】
[040]フレキソ印刷は、ドクタブレード、好ましくはチャンバ付きドクタブレード、アニロックスローラ、及び版胴を有するユニットを使用することが好ましい。アニロックスローラは、容積及び/又は密度がインク塗布速度を決定する小さいセルを有することが有利である。ドクタブレードはアニロックスローラに当てた状態で配置され、同時に余分なインクを掻き落とす。アニロックスローラは、インクを版胴に転写し、この版胴が最終的にインクを基板に転写する。デザイン付きフォトポリマー版を使用することにより、特定のデザインを実現することができる。版胴をポリマー材料又はエラストマー材料から作ることができる。ポリマーは主に、版内のフォトポリマーとして、場合により、スリーブのシームレスコーティングとして使用される。フォトポリマー版は、紫外(UV)光により固化する感光性ポリマーから作られる。フォトポリマー版を必要なサイズに切断し、UV露光ユニットに配置する。版の片面はUV光に完全に曝露されて、版のベースを固化又は硬化させる。その後、版を裏返し、ジョブの陰画を未硬化の面上に取り付け、版をさらにUV光に曝露する。これにより、画像領域の版を固化させる。次いで版を加工して、未固化のフォトポリマーを非画像領域から除去し、これらの非画像領域で版面を低下させる。加工後、版を乾燥させ、UV光の後露光線量を与えて版全体を硬化させる。フレキソ印刷用の版胴の作製は、Printing Technology、J.M.Adams及びP.A.Dolin、Delmar Thomson Learning、第5版、359~360ページ、及びThe Printing ink manual、R.H.Leach及びR.J.Pierce、Springer Edition、第5版、33~42ページに記載されている。
【0042】
[041]本明細書に記載のコーティング組成物及び本明細書に記載のコーティング層は、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含む。本明細書に記載の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子は、約5重量%~約40重量%の量だけ存在することが好ましく、約10重量%~約30重量%の量だけ存在することがより好ましい。この重量パーセントは、コーティング組成物の総重量に基づく。
【0043】
[042]準1次元粒子と考えられる針状顔料粒子とは対照的に、小板状顔料粒子は、その寸法のアスペクト比が大きいため準2次元粒子である。小板状顔料粒子は、寸法X及びYが寸法Zよりも実質的に大きい2次元構造であると考えられる。小板状顔料粒子は、当技術分野において偏球粒子又は薄片とも称する。そのような顔料粒子を、顔料粒子を横切る最長寸法に対応する主軸Xと、Xに垂直で、顔料粒子を横切る第2の最長寸法に対応する第2の軸Yとを用いて説明することができる。言い換えると、XY平面は、顔料粒子の第1及び第2の最長寸法により形成された平面を大まかに規定し、Z寸法は無視される。
【0044】
[043]本明細書に記載の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子は、その形状が非球状であることから、入射電磁放射線に対して非等方的な反射性を有し、固化/硬化したバインダ材料の少なくとも一部がこの入射電磁放射線に対して透明である。本明細書で使用されるとき、用語「非等方的な反射性」は、第1の角度からの入射放射線が粒子によってある(観察)方向(第2の角度)に反射される割合が粒子の配向の関数であること、すなわち、第1の角度に対する粒子の配向の変化に応じて観察方向への反射の大きさが異なり得ることを示す。
【0045】
[044]本明細書に記載のOELにおいて、本明細書に記載の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子は、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の配向を固定する固化したバインダ材料を含むコーティング組成物に分散されている。バインダ材料は、少なくとも固化又は固体状態(本明細書で第2の状態とも称する)において、200nm~2500nmの波長範囲、すなわち通常「光学スペクトル」と称し、電磁スペクトルの赤外、可視、及び紫外部分を含む波長範囲の電磁放射線に対して少なくとも一部が透明である。したがって、固化又は固体状態にあるバインダ材料に含まれる粒子及びその配向に応じた反射性は、この範囲内のいくつかの波長で、バインダ材料を通して知覚可能である。固化バインダ材料は、好ましくは200nm~800nm、より好ましくは400nm~700nmの波長範囲の電磁放射線に対して少なくとも一部が透明である。本明細書において、用語「透明」は、OEL(小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子は含まないが、OELのその他の任意選択的な成分があれば、それらをすべて含む)に存在する固化バインダ材料の20μmの層に対する電磁放射線の透過率が、該当する(1つ又は複数の)波長において少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%であることを示す。これは、例えばDIN5036-3(1979-11)等の確立した試験方法に従って固化バインダ材料(小板状磁性粒子若しくは磁化可能粒子は含まず)の試験片の透過率を測定することによって決定可能である。OELが秘密のセキュリティ機能として機能する場合には、通常、選択された非可視波長を含むそれぞれの照明条件下でOELにより生じる(完全な)光学効果を検出するための技術的手段が必要であり、前記検出には、入射放射線の波長を可視領域の外側、例えば近紫外領域で選択することが必要である。この場合、OELが、入射放射線に含まれる可視スペクトルの外側で選択された波長に応答する発光を示す発光顔料粒子を含むことが好ましい。電磁スペクトルの赤外、可視、及び紫外部分は、700~2500nm、400~700nm、及び200~400nmの波長範囲にそれぞれ略対応する。
【0046】
[045]本明細書に記載の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の適切な例としては、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)から成る群から選択される磁性金属;鉄、マンガン、コバルト、ニッケル若しくはこれらの2つ以上の混合物の磁性合金;クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、若しくはこれらの2つ以上の混合物の磁性酸化物;又はこれらの2つ以上の混合物、を含む顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。金属、合金、及び酸化物に関する用語「磁性」は、強磁性又はフェリ磁性金属、合金、及び酸化物を示す。クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、又はこれらの2つ以上の混合物の磁性酸化物は、純粋又は混合酸化物であってもよい。磁性酸化物の例としては、赤鉄鉱(Fe)、磁鉄鉱(Fe)、二酸化クロム(CrO)、磁性フェライト(MFe)、磁性スピネル(MR)、磁性ヘキサフェライト(MFe1219)、磁性オルソフェライト(RFeO)、磁性ガーネット(M(AO)等の鉄酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、Mは2価、Rは3価、Aは4価の金属を表す。
【0047】
[046]本明細書に記載の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の例としては、コバルト(Co)、鉄(Fe)、若しくはニッケル(Ni)等の磁性金属;及び鉄、コバルト、若しくはニッケルの磁性合金、のうちの1つ又は複数から作られた磁気層Mを含む顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。前記磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が、1つ又は複数の追加の層を含む多層構造であってもよい。1つ又は複数の追加の層が、フッ化マグネシウム(MgF)等の金属フッ化物、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)から成る群から選択される1つ又は複数、より好ましくは二酸化ケイ素(SiO)から独立して作られた層A;或いは金属及び金属合金から成る群から選択される、好ましくは反射性金属及び反射性金属合金から成る群から選択される、より好ましくはアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、及びニッケル(Ni)から成る群から選択される1つ又は複数、さらに好ましくはアルミニウム(Al)、から独立して作られた層B;或いは前述したような1つ又は複数の層Aと前述したような1つ又は複数の層Bとの組合せであることが好ましい。前述の多層構造である小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の一般的な例としては、A/M多層構造、A/M/A多層構造、A/M/B多層構造、A/B/M/A多層構造、A/B/M/B多層構造、A/B/M/B/A/多層構造、B/M多層構造、B/M/B多層構造、B/A/M/A多層構造、B/A/M/B多層構造、B/A/M/B/A/多層構造が挙げられるがこれらに限定されず、ここで層A、磁気層M、及び層Bは前述した層から選択される。
【0048】
[047]本明細書に記載のコーティング組成物は、小板状光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子、及び/又は光学可変特性を持たない小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むことができる。本明細書に記載の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部が、小板状光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子により構成されることが好ましい。光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の変色特性によってもたらされる公然のセキュリティは、本明細書に記載の光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含むインク、コーティング組成物、又はコーティング層を有する物品又はセキュリティ文書を、人間の感覚のみを使用して容易に検出、認識及び/又はその考え得る偽造品から識別可能であるが、これに加えて、光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の光学特性をOEL認識用の機械可読ツールとして使用してもよい。したがって、顔料粒子の光学(例えば、スペクトル)特性を解析する認証プロセスにおいて、秘密又は準秘密のセキュリティ機能として、光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の光学特性を同時に使用してもよい。
【0049】
[048]コーティング層に小板状光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を使用してOELを生成すると、セキュリティ文書用途におけるセキュリティ機能としてのOELの意義が高まる。そのような材料はセキュリティ文書印刷業界用のものであって、一般には市販されていないからである。
【0050】
[049]前述したように、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部が小板状光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子により構成されていることが好ましい。これらは、磁性薄膜干渉顔料粒子、磁性コレステリック液晶顔料粒子、磁性材料を含む干渉被覆顔料粒子、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選択されることがより好ましい。
【0051】
[050]磁性薄膜干渉顔料粒子は、当業者に公知であり、例えば、米国特許第4,838,648号、国際公開第2002/073250A2号、欧州特許第0686675号、国際公開第2003/000801A2号、米国特許第6,838,166号、国際公開第2007/131833A1号、欧州特許出願公開第2402401号、及びこれらに引用された文献に開示されている。磁性薄膜干渉顔料粒子は、5層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子及び/又は6層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子及び/又は7層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子を含むことが好ましい。
【0052】
[051]好ましい5層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造から成り、反射体及び/又は吸収体が磁気層でもある。反射体及び/又は吸収体が、ニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁気層、並びに/又はニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物であることが好ましい。
【0053】
[052]好ましい6層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/磁性体/誘電体/吸収体の多層構造から成る。
【0054】
[053]好ましい7層ファブリペロー多層構造は、米国特許第4,838,648号等に開示されている吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造から成る。
【0055】
[054]本明細書に記載の反射体層は、金属及び金属合金から成る群から選択され、好ましくは反射性金属及び反射性金属合金から成る群から選択され、より好ましくはアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの合金から成る群から選択され、さらに好ましくはアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの合金から成る群から選択される1つ又は複数から、さらに好ましくはアルミニウム(Al)から独立して作られることが好ましい。誘電体層は、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化セリウム(CeF)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化ナトリウムアルミニウム(例えばNaAlF)、フッ化ネオジム(NdF)、フッ化サマリウム(SmF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化リチウム(LiF)等の金属フッ化物、及び酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)等の金属酸化物から成る群から選択され、より好ましくはフッ化マグネシウム(MgF)及び二酸化ケイ素(SiO)から成る群から選択される1つ又は複数から、さらに好ましくはフッ化マグネシウム(MgF)から独立して作られることが好ましい。吸収体層は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、これらの金属酸化物、これらの金属硫化物、これらの金属炭化物、及びこれらの金属合金から成る群から選択され、より好ましくはクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、これらの金属酸化物、及びこれらの金属合金から成る群から選択され、さらに好ましくはクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの金属合金から成る群から選択される1つ又は複数から独立して作られることが好ましい。磁気層は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co);並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性合金;並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物、を含むことが好ましい。7層ファブリペロー構造を含む磁性薄膜干渉顔料粒子が好ましい場合、磁性薄膜干渉顔料粒子が、Cr/MgF/Al/Ni/Al/MgF/Cr多層構造から成る吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の7層ファブリペロー多層構造を含むことが特に好ましい。
【0056】
[055]本明細書に記載の磁性薄膜干渉顔料粒子は、人間の健康及び環境に安全であると考えられ、例えば5層ファブリペロー多層構造、6層ファブリペロー多層構造、及び7層ファブリペロー多層構造に基づく多層顔料粒子であってもよく、前記顔料粒子は、約40重量%~約90重量%の鉄、約10重量%~約50重量%のクロム、及び約0重量%~約30重量%のアルミニウムを含む、実質的にニッケルを含まない組成の磁性合金を含む1つ又は複数の磁気層を含む。人間の健康及び環境に安全であると考えられる多層顔料粒子の一般的な例は、参照により本明細書に完全に組み込まれている欧州特許出願公開第2402401号に見られる。
【0057】
[056]本明細書に記載の磁性薄膜干渉顔料粒子は通常、従来のウェブ上への異なる所要層の蒸着法によって製造される。例えば物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、又は電界析出法によって所望数の層を蒸着した後、適切な溶媒中での剥離層の溶解又はウェブからの材料の剥離によって層スタックをウェブから除去する。そして、このように得られた材料を粉砕して薄片にし、この薄片を、研削、ミル加工(例えばジェットミル加工プロセス等)、又は任意の適切な方法でさらに加工して、所要の大きさの顔料粒子を得る必要がある。得られる製品は、縁部が破砕され、形状が不規則で、アスペクト比が異なる平らな薄片から成る。磁性薄膜干渉顔料粒子の作製に関するさらなる情報が、例えば、参照により本明細書に組み込まれている欧州特許出願公開第1710756号及び欧州特許出願公開第1666546号に見られる。
【0058】
[057]光学可変特性を示す適切な磁性コレステリック液晶顔料粒子としては、磁性単層コレステリック液晶顔料粒子及び磁性多層コレステリック液晶顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。そのような顔料粒子は、例えば国際公開第2006/063926A1号、米国特許第6,582,781号、及び米国特許第6,531,221号に開示されている。国際公開第2006/063926A1号は、高い輝度及び変色特性の他、磁化可能性等の特定の特性を有する単層及び前記単層から得られた顔料粒子を開示している。開示された単層及び前記単層の微粉砕により得られた顔料粒子は、3次元架橋したコレステリック液晶混合物及び磁性ナノ粒子を含む。米国特許第6,582,781号及び米国特許第6,410,130号は、配列がA/B/Aの小板状コレステリック多層顔料粒子を開示している。ここで、A及びAは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ少なくとも1つのコレステリック層を含む。Bは、層A及びAから送られた光の全部又は一部を吸収するとともに磁気特性を自身に付与する中間層である。米国特許第6,531,221号は、配列がA/Bであり、任意選択でCを含む小板状コレステリック多層顔料粒子を開示している。ここで、A及びCは、磁気特性を付与する顔料粒子を含む吸収層であり、Bはコレステリック層である。
【0059】
[058]1つ又は複数の磁性材料を含む適切な干渉被覆顔料としては、1つ又は複数の層で被覆されたコアから成る群から選択される基板から成る構造が挙げられるが、これに限定されない。ここで、コア又は1つ又は複数の層の少なくとも一方が磁性特性を有する。例えば、適切な干渉被覆顔料は、前述したような磁性材料から作られ、1つ又は複数の金属酸化物から作られた1つ又は複数の層で被覆されたコアを含むか、又は合成若しくは天然マイカ、層状ケイ酸塩(例えばタルク、カオリン、及びセリサイト)、ガラス(例えばホウケイ酸塩)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、グラファイト、及びこれらの2つ以上の混合物から作られたコアから成る構造を有する。さらに、着色層等の1つ又は複数の追加の層が存在してもよい。本明細書に記載の磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を表面処理して、コーティング組成物及びコーティング層に生じ得る劣化から保護する、並びに/又は磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の前記コーティング組成物及びコーティング層への取込みを容易にすることができる。通常、腐食防止材料及び/又は湿潤剤を用いることができる。
【0060】
[059]さらに、本明細書に記載のコーティング組成物を本明細書に記載の基板表面に塗布してコーティング層を形成する(ステップa))のに続いて、コーティング層を有する基板及び本明細書に記載の軟磁性板を備えたアセンブリが形成され、コーティング層を有する基板が軟磁性板の上に配置され、軟磁性板が基板に面し、窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印が基板に面し、コーティング層がアセンブリの最上層であり、環境に晒されることが好ましい。
【0061】
[060]コーティング層を有する基板及び軟磁性板を備えたアセンブリの形成に続いて、前記アセンブリを本明細書に記載の静磁界発生装置の不均一磁界に通して移動させることにより、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を配向させて(ステップc))、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させる。
【0062】
[061]アセンブリを本明細書に記載の静磁界発生装置の不均一磁界に通して移動させることにより、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を配向させるステップ(ステップc))に続いて、又は一部同時に、好ましくは一部同時に、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の配向を固定又は停止する(ステップd))。このように、特筆すべきこととして、コーティング組成物は第1の状態、すなわち液体又はペースト状態を有していなければならず、この状態ではコーティング組成物が未固化で湿潤又は十分に柔軟であるため、コーティング組成物中に分散した小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が、磁界への曝露により自由に可動、回転可能、及び配向可能である。また第2の固化(例えば固体又は固体様)状態も有していなければならず、この状態では、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子がそれぞれの位置及び配向で固定又は停止されている。
【0063】
[062]そのような第1及び第2の状態は、ある種のコーティング組成物を用いることによってもたらされることが好ましい。例えば、コーティング組成物の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子以外の成分は、セキュリティ用途、例えば紙幣印刷に用いられるようなインク又はコーティング組成物の形態であってもよい。前述した第1及び第2の状態は、例えば温度変化又は電磁放射線への曝露等の刺激に反応して粘度が高くなる材料を用いてもたらすことができる。すなわち、流体のバインダ材料は、固化又は凝固されると、第2の状態すなわち固化又は固体状態に変換され、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が現在の位置及び配向に固定されて、バインダ材料内で移動も回転もできなくなる。当業者に公知の通り、基板等の表面上に塗布するインク又はコーティング組成物に含まれる成分及び前記インク又はコーティング組成物の物理的特性は、インク又はコーティング組成物を基板表面に転写するのに使用されるプロセスの要件を満たさなければならない。したがって、本明細書に記載のコーティング組成物に含まれるバインダ材料は、通常、当技術分野において公知の材料から選択され、インク又はコーティング組成物の塗布に使用される被覆又は印刷プロセス及び選択された固化プロセスによって決まる。
【0064】
[063]本明細書に記載のOELは、その形状から非等方的な反射性を有する小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含む。小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子はバインダ材料中に分散され、バインダ材料は、200nm~2500nmの範囲の1つ又は複数の波長範囲の電磁放射線に対して少なくとも一部が透明である。
【0065】
[064]本明細書に記載の固化ステップ(ステップd))は、例えばコーティング組成物がポリマーバインダ材料及び溶媒を含み、高温で塗布される場合の純粋な物理的性質とすることができる。そして、磁界の印加により高温で小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を配向させ、溶媒を蒸発させた後、コーティング組成物を冷却する。したがって、コーティング組成物が固化するとともに、顔料粒子の配向が固定される。
【0066】
[065]或いは、コーティング組成物の「固化」は、例えばセキュリティ文書の通常の使用中に起こり得る単純な温度上昇(例えば、最大80℃)では不可逆の硬化による化学反応を伴うことが好ましい。用語「硬化」又は「硬化性」は、塗布したコーティング組成物中の少なくとも1つの成分が化学反応、架橋、又は重合によって開始材料よりも大きな分子量を有するポリマー材料に変化するためのプロセスを表す。硬化によって、安定した3次元ポリマーネットワークが形成されることが好ましい。そのような硬化は一般に、(i)基板上への塗布(ステップa))後、及び(ii)小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部の二軸配向(ステップc))に続いて又は一部同時に、コーティング組成物に外部刺激を加えることによって引き起こされる。本明細書に記載のコーティング組成物の固化(ステップd))が、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部の配向(ステップc))と一部同時に実行されることが有利である。したがって、コーティング組成物は、放射線硬化性組成物、熱乾燥組成物、酸化乾燥組成物、及びこれらの組合せから成る群から選択されることが好ましい。特に、放射線硬化性組成物から成る群から選択されるコーティング組成物が好ましい。放射線硬化、特に紫外・可視光硬化は照射後にコーティング組成物の粘性を瞬時に高め、これにより、磁気配向ステップ後の顔料粒子のさらなる移動及びその結果としての情報の損失を防止するため有利である。固化ステップ(ステップd))は、紫外・可視光の照射(すなわち紫外・可視放射線硬化)又は電子ビーム(すなわち電子ビーム放射線硬化)により実行されることが好ましく、紫外・可視光の照射により実行されることがより好ましい。
【0067】
[066]したがって、本発明に適したコーティング組成物としては、紫外・可視光放射線(以下、紫外・可視光硬化性と称する)又は電子ビーム放射線(以下、EBと称する)によって硬化可能な放射線硬化性組成物が挙げられる。本発明の特に好ましい一実施形態によれば、本明細書に記載のコーティング組成物は、紫外・可視硬化性コーティング組成物である。紫外・可視硬化は、硬化プロセスを非常に高速化できるため、本明細書に記載のOEL、文書及び物品及び前記OELを含む文書の作製時間が劇的に短縮されて有利である。
【0068】
[067]紫外・可視光硬化性コーティング組成物は、ラジカル硬化性化合物及びカチオン硬化性化合物から成る群から選択される1つ又は複数の化合物を含むことが好ましい。本明細書に記載の紫外・可視硬化性コーティング組成物はハイブリッド系であって、1つ又は複数のカチオン硬化性化合物と1つ又は複数のラジカル硬化性化合物との混合物を含んでいてもよい。カチオン硬化性化合物は、酸等のカチオン種を遊離させて硬化を開始することにより、モノマー及び/又はオリゴマーの反応及び/又は架橋によってコーティング組成物を固化させる1つ又は複数の光開始剤の放射による活性化を通常含むカチオン機構によって硬化する。ラジカル硬化性化合物は、1つ又は複数の光開始剤の放射によってラジカルを生成することにより重合を開始してコーティング組成物を固化させる活性化を通常含むフリーラジカル機構によって硬化する。本明細書に記載の紫外・可視硬化性コーティング組成物に含まれるバインダを作製するために用いるモノマー、オリゴマー、又はプレポリマーに応じて、異なる光開始剤を使用することができる。フリーラジカル光開始剤の適切な例が当業者に公知であり、この例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、α-アミノケトン、α-ヒドロキシケトン、ホスフィンオキシド、及びホスフィンオキシド誘導体、並びにこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。カチオン光開始剤の適切な例が当業者に公知であり、この例としては、有機ヨードニウム塩(例えばジアリールヨードニウム塩)、オキソニウム(例えばトリアリールオキソニウム塩)、及びスルホニウム塩(例えばトリアリールスルホニウム塩)等のオニウム塩、並びにこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な光開始剤の他の例は、標準的な教科書に見られる。効率的な硬化を実現するために、1つ又は複数の光開始剤と併せて増感剤を含むことも有利となり得る。適切な光増感剤の一般的な例としては、イソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-2-プロポキシ-チオキサントン(CPTX)、2-クロロ-チオキサントン(CTX)及び2,4-ジエチル-チオキサントン(DETX)、並びにこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。紫外・可視硬化性コーティング組成物中の1つ又は複数の光開始剤の総量は、約0.1重量%~約20重量%であることが好ましく、約1重量%~約15重量%であることがより好ましい。重量パーセントは紫外・可視光硬化性コーティング組成物の総重量に基づく。
【0069】
[068]或いは、ポリマー熱可塑性バインダ材料又は熱硬化性樹脂を採用してもよい。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂とは異なり、加熱及び冷却によって、特性に重大な変化を来すことなく、繰り返し溶融及び凝固可能である。熱可塑性樹脂又はポリマーの一般的な例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレン系樹脂(例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレン酸化物、ポリフェニレン硫化物)、ポリスルホン、及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
[069]本明細書に記載のコーティング組成物は、有機顔料粒子、無機顔料粒子、及び有機色素から成る群から選択される1つ又は複数の着色成分並びに/又は1つ又は複数の添加剤をさらに含んでいてもよい。後者としては、粘度(例えば、溶媒、増粘剤、及び界面活性剤)、稠度(例えば、硬化防止剤、充填剤、及び可塑剤)、起泡性(例えば、消泡剤)、潤滑性(ワックス、オイル)、紫外線安定性(光安定剤)、密着性、帯電防止特性、保存性(重合防止剤)等のコーティング組成物の物理的、流動学的、及び化学的パラメータの調整に用いられる化合物及び材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の添加剤は、その添加剤の寸法のうちの少なくとも1つが1~1000nmの範囲である、いわゆるナノ材料を含む、当技術分野において公知の量及び形態でコーティング組成物中に存在していてもよい。
【0071】
[070]本明細書に記載のコーティング組成物は、粘度(例えば、溶媒及び界面活性剤)、稠度(例えば、硬化防止剤、充填剤、及び可塑剤)、起泡性(例えば、消泡剤)、潤滑性(ワックス)、紫外線反応性及び安定性(光増感剤及び光安定剤)、及び密着性等の組成物の物理的、流動学的、及び化学的パラメータの調整に用いられる化合物及び材料が挙げられるがこれらに限定されない1つ又は複数の添加剤、をさらに含んでいてもよい。本明細書に記載の添加剤は、粒子の寸法のうちの少なくとも1つが1~1000nmの範囲である、いわゆるナノ材料の形態を含む、当技術分野において公知の量及び形態でコーティング組成物中に存在していてもよい。
【0072】
[071]本明細書に記載のコーティング組成物は、1つ又は複数のマーカ物質若しくは追跡用添加物並びに/又は磁性材料(本明細書に記載の磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子とは異なる)、発光材料、導電材料、及び赤外線吸収材料から成る群から選択される1つ又は複数の機械可読材料をさらに含むことができる。本明細書で使用されるとき、用語「機械可読材料」は、装置又は機械により検出可能な少なくとも1つの特有の特性を示し、コーティングに含まれることによって、検出及び/又は認証用の特定の機器の使用により前記コーティング又は前記コーティングを含む物品を認証する方法を提供する材料を表す。
【0073】
[072]本明細書に記載のコーティング組成物を、本明細書に記載の磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を分散させることにより、且つ本明細書に記載のバインダ材料がある場合に存在すれば又は1つ又は複数の添加剤と混合することにより作製して、液体組成物を形成することができる。1つ又は複数の光開始剤が存在する場合、これを分散又は他のすべての成分の混合ステップ中に組成物に添加しても、後の段階で、すなわち液体コーティング組成物の形成後に添加してもよい。
【0074】
[073]本明細書に記載されるように、アセンブリは、コーティング層を有する基板並びに窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印を有する軟磁性板を備え、コーティング層を有する基板が軟磁性板の上に配置され、コーティング層がアセンブリの最上層であり、環境に晒されることが好ましい。
【0075】
[074]軟磁性板とコーティング層を有する基板との距離は、人目を引く3Dの外観を示す所望の明るく十分な解像度の光学効果層を得るように調節及び選択される。軟磁性板と基板との距離がゼロに近い、又はゼロであることが特に好ましい。
【0076】
[075]一実施形態によれば、アセンブリは、コーティング層を有する基板並びに窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印を有する軟磁性板を備え、コーティング層を有する基板は軟磁性板の上に配置され(コーティング層がアセンブリの最上層であることが好ましく、環境に晒されることが好ましい)、窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印が環境、すなわち基板と反対側を向く。アセンブリは、コーティング層を有する基板並びに窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印を有する軟磁性板を備え、コーティング層を有する基板が軟磁性板の上に配置され、窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印が基板に面することが好ましい。1つ又は複数の軟磁性板が窪み又は突起を一面に有する場合、その面が基板に面して配置されることが好ましい。
【0077】
[076]本明細書に記載の軟磁性板は、窪み及び/又は突起の形の1つ又は複数の印を有する。表現「窪み」は表面の凹部を表し、表現「突起」は、表面から延びる凸のレリーフを表す。窪み及び突起は、材料を軟磁性板の表面に追加することによって、又は材料を表面から取り除くことによって作成することができる。図1A図1Bは、窪み(I)の形の印を備える軟磁性板(110)を概略的に示す上面図(図1A)及び断面図(図1B)であり、前記軟磁性板は厚さ(T)を有し、前記窪み(I)は深さ(D)を有する。図1Bに示すように、1つ又は複数の窪み(I)を備える軟磁性板(110)の厚さ(T)とは、1つ又は複数の窪みのない軟磁性板の領域(S)の厚さ(すなわち、軟磁性板の非窪み領域の厚さ)を表す。図2A図2Bは、突起(P)の形の印を備える軟磁性板(210)を概略的に示す上面図(図2A)及び断面図(図2B)であり、前記軟磁性板(210)は厚さ(T)を有し、前記突起(P)は高さ(H)を有する。図2Bに示すように、1つ又は複数の突起(P)を備える軟磁性板(210)の厚さ(T)とは、1つ又は複数の突起が突出する軟磁性板(S)の厚さを表す。この場合、厚さ(T)は軟磁性板の総厚ではなく、1つ又は複数の突起(P)が突出するレベルを表す。
【0078】
[077]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板は、窪みの形の1つ又は複数の印を有する。別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板は、突起の形の1つ又は複数の印を有する。別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板は、窪みの形の1つ又は複数の印及び突起の形の1つ又は複数の印を有する。
【0079】
[078]本明細書に記載の軟磁性板をさらに表面処理して、コーティング組成物を有する基板及び本明細書に記載の軟磁性板を備えたアセンブリとの接触を容易にすることにより、高速印刷用途における摩擦及び/又は摩耗及び/又は静電帯電を低減させることができる。
【0080】
[079]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板は、窪みの形の1つ又は複数の印を含み、前記窪みに、前述したようなポリマーバインダ及び任意選択で充填剤を含む非磁性材料を充填してもよい。
【0081】
[080]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板は、突起の形の1つ又は複数の印を有し、1つ又は複数の突起のない1つ又は複数の領域に、前述したようなポリマーバインダ及び任意選択で充填剤を含む非磁性材料を充填してもよい。
【0082】
[081]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板は平坦又は平面であってよい。別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板は、印刷アセンブリの回転シリンダに適応可能であるように湾曲している。回転シリンダは、印刷又は被覆機器で使用されるか、印刷又は被覆機器と併用されるか、印刷又は被覆機器の一部であり、且つ本明細書に記載の1つ又は複数の軟磁性板を支えるようになっている。実施形態において、回転シリンダは、高い印刷速度で連続して動作する回転式の枚葉又は巻取産業用印刷機の一部である。
【0083】
[082]本明細書に記載の軟磁性板は、1つ又は複数の軟磁性材料、すなわち低保磁力及び高透磁率μを有する材料を含む。この保磁力は、IEC60404-1:2000に従って測定された1000Am-1より低く、高速磁化及び減磁を可能にする。適切な軟磁性材料の最大相対透磁率μRmaxは少なくとも5であり、相対透磁率μは、自由空間μの透磁率に対する材料μの透磁率である(μ=μ/μ)(Magnetic Materials、Fundamentals and Applications、第2版、Nicola A.Spaldin、16~17ページ、Cambridge University Press、2011)。軟磁性材料については、例えば、以下のハンドブック:(1)Handbook of Condensed Matter and Materials Data、第4.3.2章、Soft Magnetic Materials、758~793ページ、第4.3.4章、Magnetic Oxides、811~813ページ、Springer 2005;(2)Ferromagnetic Materials、第1巻、Iron,Cobalt and Nickel、1~70ページ、Elsevier 1999;(3)Ferromagnetic Materials、第2巻、第2章、Soft Magnetic Metallic Materials、55~188ページ、及び第3章、Ferrites for non-microwave Applications、189~241ページ、Elsevier 1999;(4)Electric and Magnetic Properties of Metals、C.Moosbrugger、第8章、Magnetically Soft Materials、196~209ページ、ASM International、2000;(5)Handbook of modern Ferromagnetic Materials、第9章、High-permeability High-frequency Metal Strip、155~182ページ、Kluwer Academic Publishers、2002;並びに(6)Smithells Metals Reference Book、第20.3章、Magnetically Soft Materials、20-9~20-16ページ、Butterworth-Heinemann Ltd、1992に記載されている。
【0084】
[083]本明細書に記載の軟磁性板は、1つ又は複数の高透磁率の金属、合金、若しくは化合物から作られた板(以下「軟磁性金属板」と称する)、又は非磁性材料に分散された軟磁性粒子を含む複合材料から作られた板(以下「軟磁性複合材料板」と称する)であってよい。
【0085】
[084]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性金属板は、シート又は糸として容易に加工可能な1つ又は複数の軟磁性金属又は合金から作られる。本明細書に記載の軟磁性金属板は、鉄、コバルト、ニッケル、ニッケル-モリブデン合金、ニッケル-鉄合金(パーマロイ又はスーパーマロイ型材料)、コバルト-鉄合金、コバルト-ニッケル合金、鉄-ニッケル-コバルト合金(フェルニコ型材料)、ホイスラ型合金(CuMnSn又はNiMnAl等)、低ケイ素鋼、低炭素鋼、ケイ素鉄(電磁鋼)、鉄-アルミニウム合金、鉄-アルミニウム-ケイ素合金、アモルファス金属合金(例えば、Metglas(登録商標)等の合金、鉄-ボロン合金)、ナノ結晶軟磁性材料(例えばビトロパーム(Vitroperm)(登録商標))、及びこれらの組合せから成る群から選択される1つ又は複数の材料から作られることが好ましく、鉄、コバルト、ニッケル、低炭素鋼、シリコン鉄、ニッケル-鉄合金、コバルト-鉄合金、及びこれらの組合せから成る群から選択される1つ又は複数の材料から作られることがより好ましい。
【0086】
[085]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性金属板は、1つ又は複数の窪み(I、図1B参照)を備え、この窪みの深さ(D、図1B参照)は、軟磁性金属板の厚さと比べて約20%~約99%であることが好ましく、軟磁性金属板の厚さ(T、図1B参照)と比べて約30%~約95%であることがより好ましく、軟磁性金属板の厚さと比べて約50%~約90%であることがさらに好ましい。本明細書に記載の1つ又は複数の窪みを備える軟磁性金属板の厚さ(T、図1B参照)は、約10μm~約1000μmであることが好ましく、約50μm~約500μmであることがより好ましく、約50μm~約250μmであることがさらに好ましく、約50μm~約150μmであることがさらに好ましい。
【0087】
[086]別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性金属板は、1つ又は複数の突起(P、図2B参照)を備え、この突起の高さ(H、図2B参照)は、軟磁性金属板の厚さ(T、図2B参照)と比べて約20%~約10000%であることが好ましく、軟磁性金属板の厚さと比べて約30%~約2000%であることがより好ましく、軟磁性金属板の厚さと比べて約50%~約1000%であることがさらに好ましい。但し、1つ又は複数の突起の高さ(H、図2B参照)と軟磁性金属板の厚さ(T、図2B参照)との合計は、約10μm~約1000μmであることが好ましく、約50μm~約500μmであることがより好ましく、約50μm~約250μmであることがさらに好ましく、約50μm~約150μmであることがさらに好ましい。軟磁性金属板の厚さの100%よりも大きい突起の高さとは、突起の実際の高さが、突起が突出する軟磁性板の厚さよりも大きいことを意味する。例えば、10000%の高さとは、突起の高さが、突起が突出する軟磁性金属板の厚さの100倍であることを意味する。別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性金属板は、前述した深さを有する1つ又は複数の窪みと前述した高さを有する1つ又は複数の突起とを備える。
【0088】
[087]1つ又は複数の軟磁性金属板の1つ又は複数の印を、当業者に公知の切断又は彫刻方法により作成することができ、この方法としては、鋳造、成形、手彫り、又は機械アブレーションツール、化学エッチング、電気化学エッチングによる気体若しくは液体ジェットアブレーションツール、及びレーザアブレーションツール(例えばCO、Nd-YAG、若しくはエキシマレーザ)から成る群から選択されるアブレーションツールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
[088]別の実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数の軟磁性板は、非磁性材料に分散された約25重量%~約95重量%の軟磁性粒子を含む複合材料から作られ、重量パーセントは1つ又は複数の軟磁性板の総重量に基づく。1つ又は複数の軟磁性複合材料板の複合材料は、約50重量%~約90重量%の軟磁性粒子を含むことが好ましく、重量パーセントは1つ又は複数の軟磁性複合材料板の総重量に基づく。本明細書に記載の軟磁性粒子は、好ましくは鉄(特に鉄ペンタカルボニル、カルボニル鉄とも称する)、ニッケル(特にニッケルテトラカルボニル、カルボニルニッケルとも称する)、コバルト、軟磁性フェライト(例えばマンガン-亜鉛フェライト及びニッケル-亜鉛フェライト)、軟磁性酸化物(例えば、マンガン、鉄、コバルト、及びニッケルの酸化物)、並びにこれらの組合せから成る群から選択され、より好ましくはカルボニル鉄、カルボニルニッケル、コバルト、及びこれらの組合せから成る群から選択される1つ又は複数の軟磁性材料から作られる。
【0090】
[089]軟磁性粒子は、針状、小板状、又は球状であってもよい。軟磁性粒子は、軟磁性複合材料板の飽和を最大化するように球状であり、軟磁性複合材料板の凝集性を損なうことなく最高の濃度を有することが好ましい。軟磁性粒子は球状であり、その平均粒子径(d50)は、約0.1μm~約1000μmであることが好ましく、約0.5μm~約100μmであることがより好ましく、約1μm~約20μmであることがさらに好ましく、約2μm~約10μmであることがさらに好ましい。d50は、例えばマイクロトラックX100レーザ粒子径分析装置を使用してレーザ回折により測定される。
【0091】
[090]本明細書に記載の軟磁性複合材料板は、複合材料から作られ、前記複合材料は、非磁性材料に分散された本明細書に記載の軟磁性粒子を含む。適切な非磁性材料としては、分散された軟磁性粒子の母材を形成するポリマー材料が挙げられるが、これに限定されない。ポリマー母材形成材料は、1つ若しくは複数の熱可塑性材料又は1つ若しくは複数の熱硬化性材料であってもよく、或いは1つ若しくは複数の熱可塑性材料又は1つ若しくは複数の熱硬化性材料を含んでいてもよい。適切な熱可塑性材料としては、ポリアミド、コポリアミド、ポリフタルイミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(例えばPMMA)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルファイド、液晶ポリマー、ポリカーボネート、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適切な熱硬化性材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の軟磁性板は、本明細書に記載の約5重量%~約75重量%の非磁性材料を含む複合材料から作られ、重量パーセントは軟磁性板の総重量に基づく。
【0092】
[091]本明細書に記載の複合材料は、例えば硬化剤、分散剤、可塑剤、充填剤/増量剤、及び脱泡剤等のうちの1つ又は複数の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0093】
[092]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性複合材料板は、1つ又は複数の窪み(I、図1B参照)を含み、この窪みの深さ(D、図1B参照)は、軟磁性複合材料板の厚さ(T、図1B参照)と比べて約5%~約99%であることが好ましく、軟磁性複合材料板の厚さと比べて約10%~約95%であることがより好ましく、軟磁性複合材料板の厚さと比べて約50%~約90%であることがさらに好ましい。本明細書に記載の1つ又は複数の窪みを含む軟磁性複合材料板の厚さ(T、図1B参照)は、少なくとも約0.5mmであることが好ましく、少なくとも約1mmであることがより好ましく、約1mm~約5mmであることがさらに好ましい。
【0094】
[093]別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性複合材料板は、1つ又は複数の突起(P、図2B参照)を備え、この突起の高さ(H、図2B参照)は、軟磁性複合材料板の厚さ(T、図2B参照)と比べて約5%~約10000%であることが好ましく、軟磁性複合材料板の厚さと比べて約10%~約2000%であることがより好ましく、軟磁性複合材料板の厚さと比べて約50%~約1000%であることがさらに好ましい。但し、1つ又は複数の突起の高さ(H、図2B参照)と軟磁性複合材料板の厚さ(T、図2B参照)との合計は、少なくとも約0.5mmであることが好ましく、少なくとも約1mmであることがより好ましく、約1mm~約5mmであることがさらに好ましい。軟磁性複合材料板の厚さの100%よりも大きい突起の高さとは、突起の実際の高さが、突起が突出する軟磁性板の厚さよりも大きいことを意味する。例えば、10000%の高さとは、突起の高さが、突起が突出する軟磁性板の厚さの100倍であることを意味する。
【0095】
[094]別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性複合材料板は、前述した深さを有する1つ又は複数の窪みと前述した高さを有する1つ又は複数の突起とを備える。
【0096】
[095]本発明は、本明細書に記載の軟磁性複合材料板を使用することが有利である。前記板は他のポリマー材料のように容易に作成及び処理できるからである。3D印刷、積層成形、圧縮成形、樹脂トランスファ成形、又は射出成形を含む当技術分野で周知の技法を使用してもよい。成形後、冷却(熱可塑性ポリマーを使用する場合)又は高温若しくは低温での硬化(熱硬化性ポリマーを使用する場合)等の標準的な硬化手順を適用することができる。本明細書に記載の軟磁性複合材料板を得るための別の方法は、軟磁性複合材料板の一部を除去して、プラスチック部品を加工するための標準的なツールを使用して必要な窪み又は突起を得ることである。特に、機械アブレーションツールを使用することが有利である。
【0097】
[096]コーティング組成物を有する基板及び本明細書に記載の軟磁性板を備えたアセンブリを、本明細書に記載の静磁界発生装置の不均一磁界に通して移動させて、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が、少なくとも方向が経時的に変化する磁界に曝露されるようにすることにより、コーティング組成物が湿潤(すなわち未固化)状態のままで、前記小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させる。静磁界発生装置の磁界内での前記アセンブリの移動によって、基板の基準枠に記載されるような磁界ベクトルが、基板の個々の位置において基本的に単一の平面内で変化できるようにする必要がある。これは、回転振動により、アセンブリの完全な回転(360°以上)により、好ましくは経路に沿った前後の並進運動により、より好ましくは経路に沿った単一方向への並進運動により実現することができる。線形又は円筒形経路に従う単一の並進運動が特に好ましい。本明細書に記載の軟磁性板は、外部の静磁界発生装置の磁界に入ると、コーティング組成物に非常に接近した磁界ガイドとして作用することにより、磁界をその当初の方向から逸らす。窪み又は突起の位置で磁力線の方向及び強度が局所的に修正されて、前記窪み又は突起から離れた顔料粒子の配向と比べて小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の配向を局所的に変化させる。これにより、所望の人目を引くレリーフ及び3D効果が生じる。
【0098】
[097]小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を主軸(長軸)の一方のみが磁界ベクトルにより拘束されるように配向させる一軸配向とは異なり、二軸配向を実行することは、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を2つの主軸の両方が拘束されるように配向させることを意味する。本発明によるそのような二軸配向は、コーティング層を有する基板及び軟磁性板を備えたアセンブリを、静磁界発生装置の不均一磁界に曝露し、不均一磁界に通して移動させることによって実現される。したがって、前記静磁界発生装置を、コーティング層の個々の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子がたどる動きの経路に沿って、磁力線の少なくとも方向が、移動中のアセンブリの基準枠で固定される平面内で変化するように構成する必要がある。二軸配向により小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の平面が整列されるため、前記平面が局所的に互いに略平行に配向される。
【0099】
[098]一実施形態によれば、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の二軸配向を実行するステップにより、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が、窪み又は突起を有する領域を除いて基板表面に略平行な2つの主軸を有する磁気配向が生じる。そのような整列の場合、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子は基板のコーティング層中で平坦化され、より広範囲の角度を含む1つ又は複数の窪み又は突起を有する領域を除いて、それらの両方の軸が基板表面に平行な状態で配向される。これは、動きの経路に沿って見て、磁界発生装置の磁界が、コーティング層、基板、及び軟磁性板を備えたアセンブリの表面に接線方向である平面に平行なままであるときに実現される。
【0100】
[099]別の実施形態によれば、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の少なくとも一部の二軸配向を実行するステップにより、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が、より広範囲の角度を含む窪み又は突起を有する領域を除いて、基板表面に略平行な第1の主軸及び基板表面に対して略非ゼロの仰角で前記第1の軸に垂直な第2の主軸を有する磁気配向が生じる。或いは、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子は、広範囲の角度を含む窪み又は突起を有する領域を除いて、基板表面に対して略非ゼロの仰角の2つの主軸X、Yを有する。これは、動きの経路に沿って見て、磁界発生装置の磁力線間の角度が、コーティング層、基板、及び軟磁性板を備えたアセンブリの表面に接線方向である平面に対して非ゼロ角度を形成する平面内で変化するときに実現される。
【0101】
[0100]小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の二軸配向は、コーティング層を有する基板及び軟磁性板を備えたアセンブリを、欧州特許出願公開第2157141号に記載されたような磁界発生装置を通して適切な速度で移動させることによって実行することができる。そのような装置は、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が前記装置を通って移動する間に方向が変化する磁界をもたらし、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を、両方の主軸、すなわちX軸及びY軸が基板表面に平行になるまで急速に振動させる。すなわち、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子は、X軸及びY軸が基板表面に平行な安定したシート状構成となり、前記2次元に平坦化されるまで振動する。欧州特許出願公開第2157141号の図5に示すように、本明細書に記載の磁界発生装置は、千鳥状又はジグザグ構成に位置決めされた少なくとも3つの磁石の線形配置を含み、前記少なくとも3つの磁石は供給経路の両側に位置する。供給経路の同じ側の磁石は同じ極性を有し、千鳥状の供給経路の反対側の(1つ又は複数の)磁石の極性とは反対である。少なくとも3つの磁石の配置により、コーティング組成物中の小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子が磁石を通り過ぎる(移動方向:矢印)ときに磁界方向の所定の変化をもたらす。一実施形態によれば、磁界発生装置は、a)供給経路の第1の側にある第1の磁石及び第3の磁石と、b)供給経路の第2の反対側にある、第1の磁石と第3の磁石との間の第2の磁石とを備え、第1の磁石と第3の磁石とは同じ極性を有し、第2の磁石は第1の磁石及び第3の磁石と相補的な極性を有する。別の実施形態によれば、磁界発生装置は、供給経路の第2の磁石と同じ側に第4の磁石をさらに備え、この第4の磁石は、第2の磁石の極性を有し、第3の磁石の極性に対して相補的である。欧州特許出願公開第2157141号に開示されているように、磁界発生装置は、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子を含む層の下にあっても、上及び下にあってもよい。
【0102】
[0101]小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の二軸配向は、コーティング層を有する基板及び軟磁性板を備えたアセンブリを、線形永久磁石ハルバッハ配列に沿って、又は適切な配置に置かれた2つ以上のハルバッハ配列の配置を通して適切な速度で移動させることによって実行することができる。線形永久ハルバッハ配列は、異なる磁化方向を有する複数の磁石を備えたアセンブリから構成される。ハルバッハ永久磁石の詳細な説明が、Z.Q.Zhu及びD.Howe(Halbach permanent magnet machines and applications:a review、IEE.Proc.Electric Power Appl.、2001、148、299~308ページ)により示される。そのような線形永久磁石ハルバッハ配列により発生する磁界は、一側に集中し、他側で略ゼロにまで弱まるという特性を有する。通常、線形永久磁石ハルバッハ配列は、例えば、木材又はプラスチック、特に、ポリアセタール(ポリオキシメチレン(POM)とも称する)樹脂等の良好な自己潤滑性及び耐摩耗性を示すものとして知られるプラスチックから作られた1つ又は複数の非磁性ブロックと、ネオジム-鉄-ボロン(NdFeB)等の高保磁力磁性材料から作られた磁石とを備える。
【0103】
[0102]小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子の二軸配向は、コーティング層を有する基板及び軟磁性板を備えたアセンブリを、欧州特許第1519794号に記載された磁界発生装置を通して適切な速度で移動させることによって実行することができる。適切な装置は永久磁石を備え、この永久磁石はアセンブリ表面の各側、すなわち上又は下に配置されて、磁力線がアセンブリ表面に略平行になるようにする。
【0104】
[0103]本明細書に記載のOELを生成するための方法は、ステップc)と一部同時に、又はステップc)に続いて、好ましくは一部同時に、コーティング組成物を固化するステップ(ステップd))を含む。コーティング組成物を固化するステップにより、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子をそれらの採用された位置及び配向に所望のパターンで固定してOELを形成することができ、以てコーティング組成物を第2の状態に変換する。しかしながら、脱配向及び情報の損失を避けるために、ステップc)の終了からステップd)の開始までの時間が比較的短いことが好ましい。通常、ステップc)の終了とステップd)の開始との間の時間は1分未満であり、20秒未満であることが好ましく、5秒未満であることがさらに好ましい。配向ステップc)の終了と硬化ステップd)の開始との間に基本的に時間差がなく、すなわちステップd)がステップc)の直後に続くか、ステップc)の進行中にすでに開始している(一部同時)ことが特に好ましい。「一部同時」とは、両方のステップが一部同時に実行されること、すなわちステップの各々を実行する時間が一部重なることを意味する。本明細書に記載の文脈においては、固化がステップc)と一部同時に実行されるとき、固化が配向後に有効になるため、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子はOELの完全固化又は一部固化の前に配向することを理解する必要がある。本明細書に記載したように、固化ステップ(ステップd))は、小板状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子も含むコーティング組成物に含まれるバインダ材料に応じて、異なる手段又はプロセスを用いて実行することができる。
【0105】
[0104]固化ステップは一般に、基板に密着する実質的に固体の材料が形成されるように、コーティング組成物の粘度を高くする任意のステップであってもよい。また、固化ステップは、溶媒等の揮発性成分の蒸発及び/又は水の蒸発に基づく物理的プロセス(すなわち、物理的乾燥)を伴っていてもよい。本明細書においては、高温空気、赤外線、又は高温空気と赤外線との組合せを使用してもよい。或いは、固化プロセスは、コーティング組成物に含まれるバインダ並びに任意選択的な開始剤化合物及び/又は任意選択的な架橋化合物の硬化、重合、又は架橋等の化学反応を含んでいてもよい。そのような化学反応は、物理的固化プロセスに関する上記概説の通り、加熱又は赤外線照射によって開始してもよいが、放射機構による化学反応の開始を含んでいることが好ましい。放射機構としては、紫外・可視光放射線硬化(以下、紫外・可視光硬化と称する)及び電子ビーム放射線硬化(電子ビーム硬化)、酸化重合(通常、酸素と、好ましくはコバルト含有触媒、バナジウム含有触媒、ジルコニウム含有触媒、ビスマス含有触媒、及びマンガン含有触媒から成る群から選択される1つ又は複数の触媒との協調作用により引き起こされる酸化細網化)、架橋反応、又はこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
[0105]放射線硬化が特に好ましく、紫外・可視光放射線硬化がさらに好ましい。これらの技術によれば、硬化プロセスが非常に高速となって、本明細書に記載のOELを備えた任意の物品の作製時間が劇的に短縮されて有利であるからである。さらに、放射線硬化には、硬化放射線への曝露後にコーティング組成物の粘度を瞬時に高くすることによって、粒子のさらなる移動を最小限に抑えられるという利点がある。その結果、磁気的配向ステップ後のいかなる配向の損失も本質的に避けることができる。特に、電磁スペクトルの紫外又は青色部分の波長成分(通常、200nm~650nm、より好ましくは200nm~420nm)を有する化学光の影響下での光重合による放射線硬化が好ましい。紫外・可視光硬化用機器は、化学線源として、高出力発光ダイオード(LED)ランプ又は中圧水銀アーク(MPMA)若しくは金属蒸気アークランプ等のアーク放電ランプを備えていてもよい。
【0107】
[0106]本明細書に記載のOELを生成するための方法は、そのようにして得られたOELを有する基板を軟磁性板から解放又は分離するステップe)をさらに含むことができる。
【0108】
[0107]本発明は、基板に光学効果層(OEL)を生成するための方法を提供する。本明細書に記載の基板は、紙若しくはセルロース等のその他の繊維材料(織り繊維材料及び不織繊維材料を含む)、紙含有材料、ガラス、金属、セラミック、プラスチック及びポリマー、金属化プラスチック若しくはポリマー、複合材料、並びにこれらの2つ以上の混合物又は組合せから成る群から選択されることが好ましい。一般的な紙、紙状、又はその他の繊維材料は、アバカ、綿、麻、木材パルプ、及びこれらの混合を含む様々な繊維から作られるが、これらに限定されない。当業者に周知の通り、紙幣には綿及び綿/麻混合物が好ましく、紙幣以外のセキュリティ文書には、一般に木材パルプが用いられている。プラスチック及びポリマーの一般的な例としては、ポリエチレン(PE)及び二軸配向ポリプロピレン(BOPP)を含むポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン2,6-ナフトエート)(PEN)等のポリエステル、及びポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。基板としては、タイベック(Tyvek)(登録商標)という商標で販売されているようなスパンボンドオレフィン繊維も使用可能である。金属化プラスチック又はポリマーの一般的な例としては、金属が表面に連続的又は不連続的に配置された前述のプラスチック又はポリマー材料が挙げられる。金属の一般的な例としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、これらの合金、及び前記金属の2つ以上の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。前述したプラスチック又はポリマー材料の金属化は、電着プロセス、高真空被覆プロセス、又はスパッタリングプロセスによって行うことができる。複合材料の一般的な例としては、紙及び前述したような少なくとも1つのプラスチック若しくはポリマー材料の多層構造又は積層、並びに前述したような紙状又は繊維材料に組み込まれたプラスチック及び/若しくはポリマー繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。当然、基板は、充填剤、サイジング剤、漂白剤、加工助剤、補強又は湿潤増強剤等、当業者に公知のさらなる添加剤を含んでいてもよい。本発明により生成されたOELを、例えばネイルラッカを含む装飾又は化粧目的で使用する場合、前記OELを爪、人工爪、又は動物若しくは人間のその他の部位を含むその他の種類の基板に生成することができる。
【0109】
[0108]本発明により生成されたOELをセキュリティ文書に設ける場合、前記セキュリティ文書の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに高くすることを目的として、基板は、印刷、被覆、又はレーザマーク印若しくはレーザ穿孔印、透かし、セキュリティスレッド、繊維、プランシェット、発光化合物、窓、箔、デカール、及びこれらの2つ以上の組合せを含んでいてもよい。セキュリティ文書の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに高くするという同じ目的で、基板は、1つ又は複数のマーカ物質若しくは追跡用添加物及び/又は機械可読物質(例えば、発光物質、紫外/可視/赤外線吸収物質、磁性物質、及びこれらの組合せ)を含んでいてもよい。
【0110】
[0109]ステップa)の前に、必要に応じて下塗層を基板に塗布してもよい。これにより、本明細書に記載の光学効果層(OEL)の品質が向上するか、又は密着性が促進する可能性がある。そのような下塗層の例は、国際公開第2010/058026A2号に見られる。
【0111】
[0110]本明細書に記載の方法により得られる光学効果層(OEL)を含む物品、セキュリティ文書、又は装飾要素若しくは物体の汚染耐性又は耐化学性及び清浄度ひいては物品の流通寿命を向上させる目的で、又はその美的外観(例えば、光沢)を改良する目的で、光学効果層(OEL)上には、1つ又は複数の保護層を塗布してもよい。1つ又は複数の保護層が存在する場合、この層は通常、保護ワニスから作られる。これらは、透明であっても、わずかに着色又は染色されていてもよく、光沢度が高くても低くてもよい。保護ワニスは、放射線硬化性組成物、熱乾燥組成物、又はこれらの任意の組合せであってもよい。1つ又は複数の保護層は、放射線硬化性組成物であることが好ましく、紫外・可視光硬化性組成物であることがより好ましい。保護層は、通常、光学効果層(OEL)の形成後に塗布される。
【0112】
[0111]本発明は、本発明による方法によって生成された光学効果層(OEL)をさらに提供する。
【0113】
[0112]本明細書に記載の光学効果層(OEL)を基板に直接設けることができ、光学効果層(OEL)が基板に永久に残るようにしてもよい(紙幣用途の場合等)。或いは、生成目的で一時的な基板に光学効果層(OEL)を設け、後でOELを取り外すようにしてもよい。これにより、特にバインダ材料が流体状態のままである場合に、例えば光学効果層(OEL)の生成が容易になり得る。その後、コーティング組成物を固化させて光学効果層(OEL)を生成したら、一時的な基板をOELから取り外すことができる。
【0114】
[0113]或いは、別の実施形態において、接着層が光学効果層(OEL)に存在しても、OELを備える基板に存在してもよい。前記接着層は、OELを設ける側と反対側の基板の面に設けても、OELと同じ側でOEL上に設けてもよい。したがって、接着層を光学効果層(OEL)又は基板に塗布することができ、前記接着層は硬化ステップの完了後に塗布される。そのような物品を、機械類やかなり大きな労力を伴う印刷又はその他のプロセスなしであらゆる種類の文書又はその他の物品若しくは商品に取り付けることができる。或いは、本明細書に記載の光学効果層(OEL)を備える本明細書に記載の基板は、別個の転写ステップにおいて文書又は物品に適用可能な転写箔の形態であってもよい。この目的のため、基板に剥離コーティングを設け、その上に、本明細書に記載の通り、光学効果層(OEL)が生成される。このように生成されたOEL上に、1つ又は複数の接着層を塗布してもよい。
【0115】
[0114]また、本明細書に記載の方法により得られた2つ以上、すなわち2つ、3つ、4つ等の光学効果層(OEL)を備える基板も本明細書に記載される。
【0116】
[0115]また、本発明により生成された光学効果層(OEL)を備える物品、特にセキュリティ文書、装飾要素又は物体も本明細書に記載される。物品、特にセキュリティ文書、装飾要素又は物体は、本発明により生成された2つ以上(例えば2つ、3つ等)のOELを備えることができる。
【0117】
[0116]前述したように、本発明により生成された光学効果層(OEL)は、装飾目的並びにセキュリティ文書の保護及び認証に使用してもよい。
【0118】
[0117]装飾要素又は物体の一般的な例としては、高級品、化粧品パッケージ、自動車部品、電子/家電製品、家具、ネイル用品等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
[0118]セキュリティ文書としては、有価文書及び有価商品が挙げられるが、これらに限定されない。有価文書の一般的な例としては、紙幣、証書、チケット、小切手、証票、収入印紙及び納税印紙、契約書等、パスポート等の身分証明書類、身分証明カード、ビザ、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、取引カード、アクセス書類又はカード、入場券、公共交通乗車券又は証書等が挙げられ、紙幣、身分証明書類、権利付与書類、運転免許証、及びクレジットカードが好ましいが、これらに限定されない。用語「有価商品」は、特に化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール、タバコ製品、飲料又は食料品、電気/電子物品、織物、又は宝飾品、すなわち、偽造及び/又は違法複製に対する保護により、例えば本物の薬等のパッケージの内容物を保証すべきパッケージ材料を表す。これらパッケージ材料の例としては、認証ブランドラベル、不正防止ラベル等のラベル及びシールが挙げられるが、これらに限定されない。開示された基板、有価文書、及び有価商品は、例示の目的のみで挙げたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0120】
[0119]或いは、光学効果層(OEL)を、例えばセキュリティスレッド、セキュリティストライプ、箔、デカール、窓、又はラベル等の補助基板上に生成し、その結果、別個のステップにおいてセキュリティ文書に転写されるようにしてもよい。
【0121】
[0120]当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、前述した特定の実施形態について、いくつかの修正を想到し得る。このような修正は、本発明に包含される。
【0122】
[0121]さらに、本明細書中で言及したすべての文献は、参照により完全に本明細書に組み込まれている。
【実施例
【0123】
[0122]以下に記載の例について、黒い市販の紙(Gascogne Laminates M-cote120)を基板(x20)として使用した。
【0124】
[0123]表1に記載の紫外線硬化性スクリーン印刷インクを、小板状光学可変磁性顔料粒子を含むコーティング組成物として使用して、コーティング層(x30)を形成した。コーティング組成物を基板(x20)に塗布した。T90スクリーンを用いたハンドスクリーン印刷により前記塗布を行い、厚さ約20mのコーティング層(x30)を形成した。
【0125】
【表1】
【0126】
[0124]図3A図6Aに示す装置を使用して、表1に記載の紫外線硬化性スクリーン印刷インクから作られたコーティング層(x30)中の小板状光学可変磁性顔料粒子を配向させ、図4B図6Bの光学効果層(OEL)を生成した。
【0127】
[0125]コーティング層(x30)を有する基板(x20)及び軟磁性板(x10)を備えたアセンブリ(x00)を静磁界発生装置(x40)の不均一磁界へ移動させることにより印を磁気転写した後、磁気配向ステップと一部同時に、Phoseonの紫外線LEDランプ(型:FireFlex 50×75mm、395nm、8W/cm)を使用してコーティング層(x30)を紫外線硬化させることにより、磁気配向された小板状光学可変顔料粒子を固定/停止した。
【0128】
[0126]そのようにして得られたOELの画像を、以下の設定を用いて撮影した。
光源:OELの各側から45°に位置決めされた2つの白色LEDアレイ光源(THORLAB LIU004)
カメラ:USBインターフェースを有し、解像度2590画素×1942画素のBaslerのカラーカメラ(acA2500-14uc)
対物レンズ:テレセントリックレンズ
フリーソフトウェア(Fiji)を用いてカラー画像を白黒画像に変換した。
【0129】
(実施例E1、E2及び比較例C1、C2(図3A図3B))
[0127]カルボニル鉄を軟磁性粒子として含む組成物から作られた軟磁性板(310)を使用して、円形の印を磁気転写した。軟磁性板(310)中の4つの異なる軟磁性粒子濃度を用いた。以下の表2は、E1、E2及びC1、C2のOELを生成するのに使用した軟磁性板(310)の組成を示す。
【0130】
【表2】
【0131】
[0128]表2の成分をスピードミキサ(Flack Tek Inc DAC 150 SP)において2500rpmで3分間完全に混合することにより、軟磁性板(310)を独立して作製した。その後、混合物をシリコン型に注ぎ、3日間放置して完全に固化させた。そのようにして得られた軟磁性板(310)の寸法は、図3Aに示すように、A1=A2=40mm及びA3=1mmであった。
【0132】
[0129]そのようにして得られた軟磁性板(310)に、直径0.5mmのメッシュ(コンピュータ制御された機械彫刻機、GravographのIS500)を使用して、直径20mmの円を機械的に彫刻して窪みを作成した。窪みの深さ(彫刻深さ)は、軟磁性板(310)の総厚の80%(すなわち絶対深さ0.8mm)であった。
【0133】
[0130]コーティング層(330)(A4=35mm及びA5=35mm)を有する基板(320)を軟磁性板(310)の各々の上に独立して配置し、コーティング層(330)が環境に面し、彫刻された印が基板(320)に面するようにしてアセンブリ(300)を形成した。そのようにして得られたアセンブリ(300)は、軟磁性板(310)と基板(320)との間に間隙がないため、単に例示目的で図3Aの分解図に示される。
【0134】
[0131]前述したアセンブリ(300)を線形永久磁石ハルバッハ配列(340)である静磁界発生装置の不均一磁界へ独立して移動させることにより、小板状光学可変磁性顔料粒子を磁気配向させて、前記顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させた。
【0135】
[0132]図3Aに示すように、ハルバッハ配列(340)は5つのNdFeB N42永久磁石(Webcraft AG)を備えていた。或いは、5つの永久磁石(L1=15mm、L2=15mm、及びL3=10mm)は、その長さ又は幅に沿って磁化された。5つの永久磁石は、POM(ポリオキシメチレン)から作られたホルダ(明確にするために図示せず)の凹部に固定された。2つの永久磁石間の距離(L4)は2mmであった。
【0136】
[0133]図3Aに示すように、アセンブリ(300)を、ハルバッハ配列(340)から距離L5=11mmのところで、前記ハルバッハ配列の高さの中央(すなわち、前記ハルバッハ配列の下部から距離L6=1/2・L3=5mm)に独立して配置した。
【0137】
[0134]アセンブリ(300)を、ハルバッハ配列(340)により発生した磁界において前記配列(340)に平行な方向で、10cm/秒の線速度で2回、独立して前後に移動させた。アセンブリ(300)の移動をハルバッハ配列(340)内に限定して、印を未固化のコーティング組成物に磁気転写した。
【0138】
[0135]そのようにして得られた小板状光学可変顔料粒子の磁気配向パターンにより、円形の印を示すOELが生じた。そのようにして得られた磁気配向パターンは、前述したように磁気配向と一部同時に紫外線硬化により独立して固定された。これは、第2の経路の端で2秒間、紫外線LEDランプのスイッチを入れることによって実現された。その間、アセンブリ(300)は、ハルバッハ配列(340)により発生した磁界をまだ受けていた。
【0139】
[0136]図3Bは、前述の通り得られたC1(図3B-1)、C2(図3B-2)、E1(図3B-3)、及びE2(図3B-4)の画像を示す。図3B-1に示すように、9.7重量%のカルボニル鉄粉末(C1)を含む組成物から作られた軟磁性板を使用した場合、印の磁気転写はほとんど行われなかった。図3B-2に示すように、19.4重量%のカルボニル鉄粉末(C2)を含む組成物から作られた軟磁性板を使用した場合、印の磁気転写が不完全なだけでなく、3D効果もほとんど見えなかった。29.1重量%のカルボニル鉄粉末(E1)を含む組成物から作られた軟磁性板を使用した場合、3D効果はより明らかになり、82重量%のカルボニル鉄粉末(E2)を含む組成物から作られた軟磁性板を使用した場合、前記3D効果はかなり向上した。
【0140】
(実施例E3~E5及び(図4A図4B))
[0137]E2の組成物から作られた軟磁性板(410)を使用して円形の印を磁気転写した。軟磁性板(410)の3つの異なる深さの窪みを使用した。
【0141】
[0138]E2(表2参照)の成分をスピードミキサ(Flack Tek Inc DAC 150 SP)において2500rpmで3分間完全に混合することにより、軟磁性板(410)を独立して作製した。その後、混合物をシリコン型に注ぎ、3日間放置して完全に固化させた。そのようにして得られた軟磁性板(410)の寸法は、図4Aに示すように、A1=A2=40mm及びA3=1.4mmであった。
【0142】
[0139]そのようにして得られた軟磁性板(410)に、直径0.5mmのメッシュ(コンピュータ制御された機械彫刻機、GravographのIS500)を使用して、直径20mmの円を独立して機械的に彫刻して窪みを作成した。窪みの深さ(彫刻深さ)は、E3の総厚の5%(すなわち絶対彫刻深さ70μm)、E4の総厚の10%(すなわち絶対彫刻深さ140μm)、及びE5の総厚の50%(すなわち絶対彫刻深さ700μm)であった。
【0143】
[0140]コーティング層(430)(A4=35mm及びA5=35mm)を有する基板(420)を軟磁性板(410)の各々の上に独立して配置し、コーティング層(430)が環境に面し、彫刻された印が基板(420)に面するようにしてアセンブリ(400)を形成した。
【0144】
[0141]前述したアセンブリ(400)を線形永久磁石ハルバッハ配列(440)である静磁界発生装置の不均一磁界へ独立して移動させることにより、小板状光学可変磁性顔料粒子を磁気配向させて、前記顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させた。ハルバッハ配列(440)は、C1、C2及びE1、E2について前述したものと同じである。
【0145】
[0142]図4Aに示すように、アセンブリ(400)を、ハルバッハ配列(440)から距離L5=11mmのところで、前記ハルバッハ配列の高さの中央(すなわち、前記ハルバッハ配列の下部から距離L6=1/2・L3=5mm)に独立して配置した。
【0146】
[0143]アセンブリ(400)を、ハルバッハ配列(440)により発生した磁界において前記配列(440)に平行な方向で、10cm/秒の線速度で2回、独立して前後に移動させた。アセンブリ(400)の移動を線形永久磁石ハルバッハ配列(440)内に限定して、印を未固化のコーティング組成物に磁気転写した。
【0147】
[0144]そのようにして得られた小板状光学可変顔料粒子の磁気配向パターンにより、円形の印を示すOELが生じた。そのようにして得られた前記磁気配向パターンは、前述したように磁気配向と一部同時に紫外線硬化により独立して固定された。これは、第2の経路の端で2秒間、紫外線LEDランプのスイッチを入れることによって実現された。その間、アセンブリ(400)は、ハルバッハ配列(440)により発生した磁界をまだ受けていた。
【0148】
[0145]図4Bは、前述の通り得られたE3(図4B-1)、E4(図4B-2)、及びE5(図4B-3)の画像を示す。
【0149】
(比較例C3(図5A図5B))
[0146]E2の組成物から作られた軟磁性板(510)を使用して、「ABC」の文字の形の印を磁気転写した。E2(表2参照)の成分をスピードミキサ(Flack Tek Inc DAC 150 SP)において2500rpmで3分間完全に混合することにより、軟磁性板(510)を作製した。その後、混合物をシリコン型に注ぎ、3日間放置して完全に固化させた。そのようにして得られた軟磁性板(510)の寸法は、図5Aに示すように、A1=A2=40mm及びA3=1.6mmであった。
【0150】
[0147]そのようにして得られた軟磁性板(510)に、直径0.5mmのメッシュ(コンピュータ制御された機械彫刻機、GravographのIS500)を使用して、「ABC」の文字の形の印を機械的に彫刻して窪みを作成した。窪みの深さ(彫刻深さ)は、軟磁性板(510)の厚さの80%(すなわち絶対深さ1.28mm)であった。
【0151】
[0148]コーティング層(530)(A4=35mm及びA5=35mm)を有する基板(520)を軟磁性板(510)の上に独立して配置し、コーティング層(530)が環境に面し、彫刻された印が基板(520)に面するようにしてアセンブリ(500)を形成した。
【0152】
[0149]前述したアセンブリ(500)を欧州特許第2155498号の図5に記載されたものと類似の磁界発生装置(540)に独立して曝露することにより、小板状光学可変磁性顔料粒子を磁気配向させて、前記顔料粒子の少なくとも一部を一軸配向させた。
【0153】
[0150]図5Aに示すように、磁界発生装置(540)は2つのNdFeB N42永久磁石(Webcraft AG、A6=40mm、A7=10mm、及びA8=10mm)から構成され、これらの磁石を、高さ(A8)に沿って磁化し、POMから作られた板(A9=64mm、A6=40mm、及びA10=1mm)に互いに44mmの距離だけ離れて接着して、一方の磁石のS極と他方の磁石のN極とが、POMから作られた板の方を向くようにした。図5Aに示すように、アセンブリ(500)を、前記磁界発生装置(540)の上面から距離A11=5mmのところに配置して、アセンブリ(500)の中央が磁界発生装置(540)の中央に一致し、印の左側及び右側がNdFeB永久磁石の長さ(A6)に面するようにした。アセンブリ(500)は静止したままであった。
【0154】
[0151]そのようにして得られた小板状光学可変顔料粒子の磁気配向パターンにより、「ABC」文字の形の印を示すOELが生じた。そのようにして得られた前記磁気配向パターンは、前述したように磁気装置(540)への曝露と一部同時に紫外線硬化により固定された。これは、2秒間、紫外線LEDランプのスイッチを入れることによって実現された。その間、アセンブリ(500)は、磁界発生装置(540)により発生した磁界をまだ受けていた。
【0155】
[0152]図5Bは、前述の通り得られた画像を2つの観察方向(90°の角度)で示す。C3の「ABC」の文字の形の印は、3次元物体のように見えた。しかしながら、そのようにして得られたOELは、特に窪みが磁力線に略平行な方向をたどる位置において印の一部が欠けていたため、低品質であった。
【0156】
(実施例E6(図6A図6B))
[0153]E2の組成物から作られた軟磁性板(610)を使用して、「ABC」の文字の形の印を磁気転写した。E2(表2参照)の成分をスピードミキサ(Flack Tek Inc DAC 150 SP)において2500rpmで3分間完全に混合することにより、軟磁性板(610)を作製した。その後、混合物をシリコン型に注ぎ、3日間放置して完全に固化させた。そのようにして得られた軟磁性板(610)の寸法は、図6Aに示すように、A1=A2=40mm及びA3=1.6mmであった。
【0157】
[0154]そのようにして得られた軟磁性板(610)に、直径0.5mmのメッシュ(コンピュータ制御された機械彫刻機、GravographのIS500)を使用して、「ABC」の文字の形の印を機械的に彫刻して窪みを作成した。窪みの深さ(彫刻深さ)は、軟磁性板(610)の厚さの80%(すなわち絶対深さ1.28mm)であった。
【0158】
[0155]コーティング層(630)(A4=35mm及びA5=35mm)を有する基板(620)を軟磁性板(610)の上に独立して配置し、コーティング層(630)が環境に面し、彫刻された印が基板(620)に面するようにしてアセンブリ(600)を形成した。
【0159】
[0156]前述したアセンブリ(600)を線形永久磁石ハルバッハ配列(640)である静磁界発生装置の不均一磁界へ移動させることにより、小板状光学可変磁性顔料粒子を磁気配向させて、前記顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させた。ハルバッハ配列(640)は、C1~C3及びE1~E5について前述したものと同じである。
【0160】
[0157]図6Aに示すように、アセンブリ(600)を、ハルバッハ配列(640)から距離L5=13mmのところで、前記ハルバッハ配列の高さの中央(すなわち、前記ハルバッハ配列の下部から距離L6=1/2・L3=5mm)に配置した。
【0161】
[0158]アセンブリ(600)を、ハルバッハ配列(640)により発生した磁界において前記配列(640)に平行な方向で、10cm/秒の線速度で2回、前後に移動させた。アセンブリ(600)の移動をハルバッハ配列(640)内に限定して、印を未固化のコーティング組成物に磁気転写した。
【0162】
[0159]そのようにして得られた小板状光学可変顔料粒子の磁気配向パターンにより、「ABC」の文字の形の印を示すOELが生じた。そのようにして得られた前記磁気配向パターンは、前述したように磁気配向と一部同時に紫外線硬化により固定された。これは、2秒間、紫外線LEDランプのスイッチを入れることによって実現された。その間、アセンブリ(600)は、磁界発生装置(640)により発生した磁界をまだ受けていた。
【0163】
[0160]図6Bは、前述の通り得られた画像を2つの観察方向(90°の角度)で示す。「ABC」の文字の形の印は完全で十分な解像度の3次元物体のように見えた。知覚された3D効果は人目を引くだけでなく、2つの観察方向から同一でもある。
【0164】
(実施例E7(図7A図7C))
[0161]E2の組成物から作られた軟磁性板(710)を使用して、「ABC」の文字の形の印を磁気転写した。E2(表2参照)の成分をスピードミキサ(Flack Tek Inc DAC 150 SP)において2500rpmで3分間完全に混合することにより、軟磁性板(710)を作製した。その後、混合物をシリコン型に注ぎ、3日間放置して完全に固化させた。そのようにして得られた軟磁性板(710)の寸法は、図7Aに示すように、A1=34mm、A2=20mm、及びA3=2mmであった。
【0165】
[0162]そのようにして得られた軟磁性板(710)に、直径0.5mmのメッシュ(コンピュータ制御された機械彫刻機、GravographのIS500)を使用して、「ABC」の文字の形の印を機械的に彫刻して窪みを作成した。窪みの深さ(彫刻深さ)は、軟磁性板(710)の厚さの80%(すなわち絶対深さ1.6mm)であった。
【0166】
[0163]コーティング層(730)(A4=34mm及びA5=20mm)を有する基板(720)を軟磁性板(710)の上に独立して配置し、コーティング層(730)が環境に面し、彫刻された印が基板(720)に面するようにしてアセンブリ(700)を形成した。
【0167】
[0164]前述したアセンブリ(700)を、NdFeB N45(Webcraft AG)から作られ、20mm(L1)×50mm(L2)×10mm(L3)の寸法を有する2つの永久磁石(741a及び741b)を備えた静磁界発生装置(740)の不均一磁界へ移動させることにより、小板状光学可変磁性顔料粒子を磁気配向させた。前記2つの永久磁石(741a及び741b)の各々の磁気軸は、基板(720)表面の平面に平行で、この平面にあり、前記2つの永久磁石(741a及び741b)は同じ磁気方向を有していた。2つの永久磁石(741a及び741b)間の距離(L4)は45mmであった。
【0168】
[0165]図7A図7Bに示すように、アセンブリ(700)を、2つの永久磁石(741a及び741b)の間の空間で、前記2つの永久磁石(741a及び741b)の底面から垂直距離L6=5mm、第1の永久磁石(741a)から水平距離L5=18mmのところに配置し、印の上側及び下側は2つの永久磁石(741a及び741b)の距離L1に面するようにした。
【0169】
[0166]アセンブリ(700)を、磁界発生装置(740)の前記2つの永久磁石により発生した磁界において前記2つの永久磁石(741a及び741b)の寸法L1に平行な方向で、10cm/秒の線速度で8回、前後に移動させた(矢印参照)。移動(L9)の全範囲は約100mmであった。
【0170】
[0167]そのようにして得られた小板状光学可変顔料粒子の磁気配向パターンにより、「ABC」の文字の形の印を示すOELが生じた。そのようにして得られた前記磁気誘導配向パターンは、前述したように磁気配向と一部同時に紫外線硬化により固定された。これは、最後の通路の端で2秒間、アセンブリ(700)を紫外線LEDランプに曝露することによって実現された。その後、前記アセンブリ(700)を、磁界発生装置(740)により発生した磁界から取り出した。
【0171】
[0168]図7Cは、前述の通り得られた画像を2つの観察方向(90°の角度)で示す。「ABC」の文字の形の印は完全で十分な解像度の3次元物体のように見えた。知覚された3D効果は人目を引くだけでなく、2つの観察方向から同一でもある。
【0172】
(実施例E8(図8A図8C))
[0169]E2の組成物から作られた軟磁性板(810)を使用して、「ABC」の文字の形の印を磁気転写した。E2(表2参照)の成分をスピードミキサ(Flack Tek Inc DAC 150 SP)において2500rpmで3分間完全に混合することにより、軟磁性板(810)を作製した。その後、混合物をシリコン型に注ぎ、3日間放置して完全に固化させた。そのようにして得られた軟磁性板(810)の寸法は、図8Aに示すように、A1=34mm、A2=20mm、及びA3=2mmであった。
【0173】
[0170]そのようにして得られた軟磁性板(810)に、直径0.5mmのメッシュ(コンピュータ制御された機械彫刻機、GravographのIS500)を使用して、「ABC」の文字の形の印を機械的に彫刻して窪みを作成した。窪みの深さ(彫刻深さ)は、軟磁性板(810)の厚さの80%(すなわち絶対深さ1.6mm)であった。
【0174】
[0171]コーティング層(830)(A4=34mm及びA5=20mm)を有する基板(820)を軟磁性板(810)の上に独立して配置し、コーティング層(830)が環境に面し、彫刻された印が基板(820)に面するようにしてアセンブリ(800)を形成した。
【0175】
[0172]前述したアセンブリ(800)を、NdFeB N45(Webcraft AG)から作られ、20mm(L1)×10mm(L2)×50mm(L3)の寸法を有する2つの永久磁石(841a及び841b)を備えた静磁界発生装置(840)の不均一磁界へ移動させることにより、小板状光学可変磁性顔料粒子を磁気配向させた。前記2つの永久磁石の各々の磁気軸は基板(820)表面に垂直であり、前記2つの永久磁石(841a及び841b)は反対の磁気方向を有していた(N極を有する前記磁石の一方が基板(820)表面側を向き、S極を有する他方が基板(820)表面側を向く)。2つの永久磁石(841a及び841b)間の距離(L4)は47mmであった。
【0176】
[0173]図8A図8Bに示すように、アセンブリ(800)を、2つの永久磁石(841a及び841b)の間の空間で、前記2つの永久磁石(841a及び841b)の底面から垂直距離L6=3mm、第1の永久磁石(841a)から水平距離L5=5mmのところに配置し、印の上側及び下側は2つの永久磁石(841a及び841b)の距離L1に面するようにした。
【0177】
[0174]アセンブリ(800)を、磁界発生装置(840)の前記2つの永久磁石(841a及び841b)により発生した磁界において前記2つの永久磁石(841a及び841b)の寸法L1に平行な方向で、10cm/秒の線速度で8回、前後に移動させた(矢印参照)。移動(L9)の全範囲は約100mmであった。
【0178】
[0175]そのようにして得られた小板状光学可変顔料粒子の磁気配向パターンにより、「ABC」の文字の形の印を示すOELが生じた。そのようにして得られた前記磁気誘導配向パターンは、前述したように磁気配向と一部同時に紫外線硬化により固定された。これは、最後の通路の端で2秒間、アセンブリ(800)を紫外線LEDランプに曝露することによって実現された。その後、前記アセンブリ(800)を、磁界発生装置(840)により発生した磁界から取り出した。
【0179】
[0176]図8Cは、前述の通り得られた画像を2つの観察方向(90°の角度)で示す。「ABC」の文字の形の印は完全で十分な解像度の3次元物体のように見えた。知覚された3D効果は人目を引くだけでなく、2つの観察方向から同一である。
【0180】
(実施例E9(図9A図9C))
[0177]E2の組成物から作られた軟磁性板(910)を使用して、「ABC」の文字の形の印を磁気転写した。E2(表2参照)の成分をスピードミキサ(Flack Tek Inc DAC 150 SP)において2500rpmで3分間完全に混合することにより、軟磁性板(910)を作製した。その後、混合物をシリコン型に注ぎ、3日間放置して完全に固化させた。そのようにして得られた軟磁性板(910)の寸法は、図9Aに示すように、A1=34mm、A2=20mm、及びA3=2mmであった。
【0181】
[0178]そのようにして得られた軟磁性板(910)に、直径0.5mmのメッシュ(コンピュータ制御された機械彫刻機、GravographのIS500)を使用して、「ABC」の文字の形の印を機械的に彫刻して窪みを作成した。窪みの深さ(彫刻深さ)は、軟磁性板(910)の厚さの80%(すなわち絶対深さ1.6mm)であった。
【0182】
[0179]コーティング層(930)(A4=34mm及びA5=20mm)を有する基板(920)を軟磁性板(910)の上に独立して配置し、コーティング層(930)が環境に面し、彫刻された印が基板(920)に面するようにしてアセンブリ(900)を形成した。
【0183】
[0180]前述したアセンブリ(900)を、NdFeB N45(Webcraft AG)から作られ、50mm(L1)×20mm(L2)×10mm(L3)の寸法を有する2つの永久磁石(941a及び941b)を備えた静磁界発生装置(940)の不均一磁界へ移動させることにより、小板状光学可変磁性顔料粒子を磁気配向させた。前記2つの永久磁石(941a及び941b)の各々の磁気軸は基板(920)表面に平行であり、前記2つの永久磁石(941a及び941b)は反対の磁気方向を有していた。2つの永久磁石(941a及び941b)間の距離(L4)は50mmであった。
【0184】
[0181]図9A図9Bに示すように、アセンブリ(900)を、2つの永久磁石(941a及び941b)の間の空間で、前記2つの永久磁石(941a及び941b)の底面から垂直距離L6=2mm、第1の永久磁石(941a)から水平距離L5=10mmのところに配置し、印の上側及び下側は2つの永久磁石(941a及び941b)の距離L1に面するようにした。
【0185】
[0182]アセンブリ(900)を、磁界発生装置(940)の前記2つの永久磁石(941a及び941b)により発生した磁界において前記2つの永久磁石(941a及び941b)の寸法L1に平行な方向で、10cm/秒の線速度で8回、前後に移動させた(矢印参照)。印を未固化のコーティング組成物に磁気転写するように、移動(L9)の全範囲は約130mmであった。
【0186】
[0183]そのようにして得られた小板状光学可変顔料粒子の磁気配向パターンにより、「ABC」の文字の形の印を示すOELが生じた。そのようにして得られた前記磁気誘導配向パターンは、前述したように磁気配向と一部同時に紫外線硬化により固定された。これは、最後の通路の端で2秒間、アセンブリ(900)を紫外線LEDランプに曝露することによって実現された。その後、前記アセンブリ(900)を、磁界発生装置(940)により発生した磁界から取り出した。
【0187】
[0184]図9Cは、前述の通り得られた画像を2つの観察方向(90°の角度)で示す。「ABC」の文字の形の印は完全で十分な解像度の3次元物体のように見えた。知覚された3D効果は人目を引くだけでなく、2つの観察方向から同一でもある。
【0188】
(実施例E10(図10A図10C))
[0185]E2の組成物から作られた軟磁性板(1010)を使用して、「ABC」の文字の形の印を磁気転写した。E2(表2参照)の成分をスピードミキサ(Flack Tek Inc DAC 150 SP)において2500rpmで3分間完全に混合することにより、軟磁性板(1010)を作製した。その後、混合物をシリコン型に注ぎ、3日間放置して完全に固化させた。そのようにして得られた軟磁性板(1010)の寸法は、図10Aに示すように、A1=34mm、A2=20mm、及びA3=2mmであった。
【0189】
[0186]そのようにして得られた軟磁性板(1010)に、直径0.5mmのメッシュ(コンピュータ制御された機械彫刻機、GravographのIS500)を使用して、「ABC」の文字の形の印を機械的に彫刻して窪みを作成した。窪みの深さ(彫刻深さ)は、軟磁性板(1010)の厚さの80%(すなわち絶対深さ1.6mm)であった。
【0190】
[0187]コーティング層(1030)(A4=34mm及びA5=20mm)を有する基板(1020)を軟磁性板(1010)の上に独立して配置し、コーティング層(1030)が環境に面し、彫刻された印が基板(1020)に面するようにしてアセンブリ(1000)を形成した。
【0191】
[0188]前述したアセンブリ(1000)を、NdFeB N45(Webcraft AG)から作られ、20mm(L1)×20mm(L2)×10mm(L3)の寸法を有する4つの永久磁石(1041a、1041b、1041c、及び1041d)を備えた静磁界発生装置(1040)の不均一磁界へ移動させることにより、小板状光学可変磁性顔料粒子を磁気配向させた。前記4つの永久磁石(1041a、1041b、1041c、及び1041d)の各々の磁気軸は基板(1020)に垂直であった。4つの永久磁石(1041a、1041b、1041c、及び1041d)は千鳥構成に配置され、第3の永久磁石(1041c)及び第4の永久磁石(1041d)により形成された列は、第1の永久磁石(1041a)及び第2の永久磁石(1041b)により形成された列と比べて、L1の寸法に沿った距離L8=20mmだけずれており、永久磁石の前記2つの列間の距離(L4)は48mm、各列における永久磁石間の距離(L7)は20mmであった。図10Aに示すように、第1の永久磁石(1041a)及び第2の永久磁石(1041b)の磁気方向は、第3の永久磁石(1041c)及び第4の永久磁石(1041d)の磁気方向とは反対を向いていた。
【0192】
[0189]図10A図10Bに示すように、アセンブリ(1000)を、4つの永久磁石(1041a、1041b、1041c、及び1041d)の間の空間で、前記4つの永久磁石(1041a、1041b、1041c、及び1041d)の底面から垂直距離L6=10mm、第1の永久磁石(1041a)及び第2の永久磁石(1041b)により形成された列から水平距離L5=23mmのところに配置し、印の上側及び下側は4つの永久磁石(1041a、1041b、1041c、及び1041d)の距離L1に面するようにした。
【0193】
[0190]アセンブリ(1000)を、磁界発生装置(1040)により発生した磁界において前記4つの永久磁石(1041a、1041b、1041c、及び1041d)の寸法L1に平行な方向で、10cm/秒の線速度で8回、前後に移動させた(矢印参照)。印を未固化のコーティング組成物に磁気転写するように、移動(L9)の全範囲は約160mmであった。
【0194】
[0191]そのようにして得られた小板状光学可変顔料粒子の磁気配向パターンにより、「ABC」の文字の形の印を示すOELが生じた。そのようにして得られた前記磁気誘導配向パターンは、前述したように磁気配向と一部同時に紫外線硬化により固定された。これは、最後の通路の端で2秒間、アセンブリ(1000)を紫外線LEDランプに曝露することによって実現された。その後、前記アセンブリ(1000)を、磁界発生装置(1040)により発生した磁界から取り出した。
【0195】
[0192]図10Cは、前述の通り得られた画像を2つの観察方向(90°の角度)で示す。「ABC」の文字の形の印は完全で十分な解像度の3次元物体のように見えた。知覚された3D効果は人目を引くだけでなく、2つの観察方向から同一でもある。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B-1】
図3B-2】
図3B-3】
図3B-4】
図4A
図4B-1】
図4B-2】
図4B-3】
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C