(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】画像形成方法、画像形成装置及びトナー像定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220216BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20220216BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G03G15/20 550
G03G15/20 510
G03G15/20 565
G03G15/01 K
G03G15/01 J
G03G9/08
(21)【出願番号】P 2017134685
(22)【出願日】2017-07-10
【審査請求日】2020-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聖二郎
(72)【発明者】
【氏名】堀口 治男
(72)【発明者】
【氏名】芝田 豊子
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-191077(JP,A)
【文献】特開2002-278359(JP,A)
【文献】特開2013-105129(JP,A)
【文献】特開2004-151312(JP,A)
【文献】特開2010-128157(JP,A)
【文献】特開2011-028055(JP,A)
【文献】特開平11-202548(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0111580(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/01
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成し、記録媒体へのトナー像の転写及び定着の各工程を有する画像形成方法であって、
前記記録媒体への前記トナー像の定着の工程が
、当該トナー像に対して、当該トナー像が含有する化合物が吸収可能な280~480nmの波長領域内の光を照射
し、当該化合物から熱エネルギーが放出させることにより当該トナー像を軟化・融解させる工程と、
加圧する工程と、を含み、
前記加圧する工程では、前記記録媒体上に転写されたトナー像を0.01~0.3MPaの範囲内で加圧し、
前記加圧する工程が、前記記録媒体上に転写されたトナー像を加圧しつつ、加熱する工程であり、かつ、
前記加圧しつつ、加熱する工程では、前記トナー像を形成するトナーのうち、ガラス転移温度の最も低い色のトナーのガラス転移温度をT
g-minとしたときに、前記トナー像の表面温度を、
(T
g-min
+20)℃以上(T
g-min+80)℃以下の温度
に加熱することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記記録媒体上に転写されたトナー像が、ブラックトナー像又は2色以上のトナーで形成されたカラートナー像であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記光を照射する工程では、280nm以上400nm未満の波長領域内の光を照射することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記光を照射する工程では、最大発光波長が
365nm以上
385nm
以下の光を照射することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記光を照射する工程では、発光ダイオード又はレーザー光源によって光を照射することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記光を照射する工程では、単一又は複数の光源を有し、かつ、前記記録媒体上に転写されたトナー像に対して、当該トナー像が含有するトナーの極大吸収波長に関わらず、全ての光源から光を照射することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記光を照射する工程では、前記トナーの極大吸収波長に関わらず一定の波長の光を照射することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記トナーが、前記280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物として、着色剤を含有することを特徴とする請求項8に記載の画像形成方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の画像形成方法を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像形成装置に用いるトナー像定着装置であって、
記録媒体上のトナー像に対する、280~480nmの波長領域内の光照射部と加圧部と、を含むことを特徴とするトナー像定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法、画像形成装置及びトナー像定着装置に関する。より詳しくは、本発明は、光定着システムにおいて、記録媒体上に定着されたトナー像が、良好な色再現性を有し、かつ、十分な定着性を有する画像形成方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスにおいて、操作性(Warming-Up Time: WUT)の短縮や省エネルギー化、記録媒体種の拡大等のため、光を利用した定着システム(以下、「光定着システム」ともいう。)が提案されていた。
現在報告されている光定着システムとして、光を熱に変換することでトナーを記録媒体に溶融定着させるシステムが数多く提案されている。そのほとんどは赤外域の範囲にある長波長領域の光を用いて溶融定着させるものである。一方、480nm以下の波長領域(以下、「短波長領域」ともいう。)の光は、エネルギーが大きく、従来用いられているトナーにも吸収される。このため、短波長領域の光は、光を照射する手段に好適に採用できると考えられている。特許文献1や特許文献2によれば、短波可視域から紫外域の範囲にある短波長領域の光をトナー像に照射することで、紙などの記録媒体に当該トナー像を定着させることが提案されている。
【0003】
しかしながら、短波長領域の光を照射することのみで定着させた場合、色再現性が低下し、かつ、十分な定着性が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-304082号公報
【文献】特開2010-128157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、光定着システムにおいて、記録媒体上に定着されたトナー像が、良好な色再現性を有し、かつ、十分な定着性を有する画像形成方法、それを用いる画像形成装置及び当該画像形成装置に用いられるトナー像定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、記録媒体上に形成されたトナー像に光を照射してトナーの定着を行う画像形成方法であって、記録媒体上に形成されたトナー像に対して、特定の波長領域の範囲にある光を照射する工程とトナー像を加圧する工程とにより、トナー像が軟化・溶融した状態で加圧されるので、トナー像内部の空気が押し出される。また、光が照射された化合物から放出される熱の伝達が促進される。この結果、定着後のトナー像は、良好な色再現性を有し、かつ、十分な定着性を有することを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0007】
1.少なくとも、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成し、記録媒体へのトナー像の転写及び定着の各工程を有する画像形成方法であって、
前記記録媒体への前記トナー像の定着の工程が、当該トナー像に対して、当該トナー像が含有する化合物が吸収可能な280~480nmの波長領域内の光を照射し、当該化合物から熱エネルギーが放出させることにより当該トナー像を軟化・融解させる工程と、
加圧する工程と、を含み、
前記加圧する工程では、前記記録媒体上に転写されたトナー像を0.01~0.3MPaの範囲内で加圧し、
前記加圧する工程が、前記記録媒体上に転写されたトナー像を加圧しつつ、加熱する工程であり、かつ、
前記加圧しつつ、加熱する工程では、前記トナー像を形成するトナーのうち、ガラス転移温度の最も低い色のトナーのガラス転移温度をTg-minとしたときに、前記トナー像の表面温度を、(T
g-min
+20)℃以上(Tg-min+80)℃以下の温度に加熱することを特徴とする画像形成方法。
【0008】
2.前記記録媒体上に転写されたトナー像が、ブラックトナー像又は2色以上のトナーで形成されたカラートナー像であることを特徴とする第1項に記載の画像形成方法。
【0009】
3.前記光を照射する工程では、280nm以上400nm未満の波長領域内の光を照射することを特徴とする第1項又は第2項に記載の画像形成方法。
【0010】
4.前記光を照射する工程では、最大発光波長が365nm以上385nm以下の光を照射することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0011】
5.前記光を照射する工程では、発光ダイオード又はレーザー光源によって光を照射することを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0012】
6.前記光を照射する工程では、単一又は複数の光源を有し、かつ、前記記録媒体上に転写されたトナー像に対して、当該トナー像が含有するトナーの極大吸収波長に関わらず、全ての光源から光を照射することを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0013】
7.前記光を照射する工程では、前記トナーの極大吸収波長に関わらず一定の波長の光を照射することを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0015】
8.前記トナーが、前記280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物を含有することを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0016】
9.前記280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物として、着色剤を含有することを特徴とする第8項に記載の画像形成方法。
【0019】
10.第1項から第9項までのいずれか一項に記載の画像形成方法を用いることを特徴とする画像形成装置。
【0020】
11.第10項に記載の画像形成装置に用いるトナー像定着装置であって、
記録媒体上のトナー像に対する、280~480nmの波長領域内の光照射部と加圧部と、を含むことを特徴とするトナー像定着装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記手段により、光定着システムにおいて、記録媒体上に定着されたトナー像が、良好な色再現性を有し、かつ、十分な定着性を有する画像形成方法、それを用いる画像形成装置及び当該画像形成装置に用いられるトナー像定着装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように考えている。
【0022】
光を熱に変換することでトナーを記録媒体に溶融定着させる光定着システムにおける工程は、下記(1)~(3)のようにして行われる。
(1)トナー像が含有する化合物が吸収可能な波長領域の光を、当該トナー像に照射する。
(2)光が照射された前記化合物は、基底状態から励起状態に遷移した後、無輻射失活し、再び基底状態にもどる。この際、熱エネルギーが放出される。
(3)前記(2)で放出される熱エネルギーにより、周辺の樹脂が軟化・溶融し、トナー像が記録媒体上に定着する。
【0023】
放出される熱エネルギー量は、照射する光の波長に応じたエネルギーや光を吸収する化合物の吸光度及び当該化合物の光安定性に依存する。光は、その波長が小さいほどエネルギーが大きい。また、一般的に用いられる色素(着色剤)が添加されたトナーは、480nm以下という短波長領域の光も吸収可能である。このため、光定着システムにおいては、短波長領域の光を照射することが有効であると考えられる。
【0024】
しかし、実際には、短波長領域の光を照射することのみでトナー像を定着させた場合、色再現性が低下する。本発明者は、この原因を検証した結果、定着されたトナー像の内部には、空隙が存在していることをつきとめた。
【0025】
一般的に短波長領域の光は散乱しやすく、回折角も小さい。このため、積層したトナー像に光を照射した場合、各層の界面等で照射光が散乱しやすい。したがって、積層したトナー像の深部に与えられる光エネルギーは、当該トナー像の表面よりも、相対的に小さくなる。このため、トナー粒子間に存在する空隙をトナーの溶融によって埋めることができず、トナー像の内部に空気が閉じ込められてしまう。この結果、トナー像の内部に存在する空隙の量が多くなり、ひいては、定着後のトナー像は、色再現性が低下し、かつ十分な定着性が得られないという問題が生じると考えられる。
【0026】
そこで、本発明者は、上記問題を解決するために、トナー像の定着の工程において、光を照射する工程に加え、加圧する工程を設ければよいと考えた。すなわち、光照射で軟化・溶融した状態のトナー像を、加圧することで、トナー像内部の空気を押し出すことができ、色再現性の低下を抑制できると考えられる。さらには、加圧されることで、光が照射された化合物から放出される熱の伝達が促進されるため、十分な定着性を得られると考え本発明に至った。
【0027】
また、複数色のトナーが積層してなるトナー像を定着させる場合においても、光照射によって、色ごとに発生しうる熱エネルギーが異なるため、溶融ムラが生じ、定着性が低下してしまうため、改善の余地があった。
しかしながら、本発明の画像形成装置は、加圧により、熱の伝達が促進されるため、複数色のカラーを有する画像を出力する場合でも良好な定着性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す模式図
【
図2】
図1の画像形成装置のトナー像定着装置を拡大した模式図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の画像形成方法は、少なくとも、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成し、記録媒体へのトナー像の転写及び定着の各工程を有する画像形成方法であって、前記記録媒体への前記トナー像の定着の工程が、少なくとも、当該トナー像に対して、280~480nmの波長領域内の光を照射する工程と、加圧する工程と、を含むことを特徴とする。この特徴は下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。これにより、本発明は、光定着システムにおいて、記録媒体上に定着されたトナー像が、良好な色再現性を有し、かつ、十分な定着性を有するという効果を得られる。
【0030】
本発明の実施態様としては、前記記録媒体上に転写されたトナー像が、ブラックトナー像又は2色以上のトナーで形成されたカラートナー像であることが好ましい。本発明は、このようなブラックトナー像又は2色以上のトナーで形成されたカラートナー像であっても上記効果を好適に発現することができる。
【0031】
本発明の実施態様としては、前記光を照射する工程では、280nm以上400nm未満の波長領域内の光を照射することが好ましい。これにより、本発明の効果をより好適に発現できる。
【0032】
本発明の実施態様としては、前記光を照射する工程では、最大発光波長が280nm以上400nm未満の光を照射することが、本発明の効果をより好適に発現でき、さらには、消費電力を低減できることから好ましい。
【0033】
本発明の実施態様としては、前記光を照射する工程では、発光ダイオード又はレーザー光源によって光を照射することが好ましい。これにより、本発明の効果をより好適に発現でき、さらには、消費電力を低減できることから好ましい。
【0034】
本発明の実施態様としては、前記光を照射する工程では、単一又は複数の光源を有し、かつ、前記記録媒体上に転写されたトナー像に対して、当該トナー像が含有するトナーの極大吸収波長に関わらず、全ての光源から光を照射することが好ましい。本発明は、このような構成であっても好適に効果を発現できるため、より簡素な制御でも効果を発現することができる。
【0035】
本発明の実施態様としては、前記光を照射する工程では、前記トナーの極大吸収波長に関わらず一定の波長の光を照射することが好ましい。一定の波長の光を照射することにより、画像形成装置内のスペースを取りすぎることを抑制でき、制御が煩雑となることを回避できる。
【0036】
本発明の実施態様としては、前記加圧する工程では、前記記録媒体上に転写されたトナー像を0.01~1.0MPaの範囲内で加圧することが好ましい。これにより、より好適に内部の空気を押しだすことができ、かつ、伝熱を好適に促進することができるため好ましい。さらには、画像の光沢が大きくなりすぎることを回避でき好ましい。
【0037】
本発明の実施態様としては、前記トナーが、前記280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物を含有することが好ましい。これにより、本発明の効果を好適に奏することができる。
【0038】
本発明の実施態様としては、前記280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物として、着色剤を含有することが好ましい。このような構成であっても、本発明の効果を好適に奏することができる。
【0039】
本発明の実施態様としては、前記加圧する工程が、前記記録媒体上に転写されたトナー像を加圧しつつ、加熱する工程であることが好ましい。これにより、トナー像の定着性がより向上する。
【0040】
本発明の実施態様としては、前記加圧しつつ、加熱する工程では、前記トナー像を形成するトナーのうち、ガラス転移温度の最も低い色のトナーのガラス転移温度をTg-minとしたときに、前記トナー像の表面温度を、(Tg-min+20)℃以上の温度まで加熱することが好ましい。これにより、ホットオフセットを回避でき、より好適に本発明の効果を奏することができる。
【0041】
本発明の画像形成方法は、画像形成装置に好適に用いることができる。当該画像形成装置には、記録媒体上のトナー像に対する、280~480nmの波長領域内の光照射部と加圧部と、を含むトナー像定着装置を好適に用いることができる。
これにより、色再現性の低下が抑制され、十分な定着性を有する画像を形成することができる。
【0042】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0043】
≪画像形成方法の概要≫
本発明の画像形成方法は、少なくとも、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成し、記録媒体へのトナー像の転写及び定着の各工程を有する画像形成方法であって、前記記録媒体への前記トナー像の定着の工程が、少なくとも、当該トナー像に対して、280~480nmの波長領域内の光を照射する工程と、加圧する工程と、を含むことを特徴とする。
【0044】
[各工程について]
上記各工程としては、記録媒体へのトナー像の定着の工程(以下、単に「定着する工程」ともいう。)以外に、例えば、帯電する工程、静電潜像を形成する工程、現像する工程、転写する工程、クリーニングする工程など、一般的な電子写真画像形成方法で使用される工程が挙げられる。これらの工程の詳細は後述するが、本発明の画像形成方法においては、記録媒体への前記トナー像の定着の工程が、少なくとも、当該トナー像に対して、280~480nmの波長領域内の光を照射する工程と、加圧する工程と、を含む方法であれば、その他の工程は特に限定されず、本発明の効果発現を阻害しない範囲内で公知の工程を経て画像を形成することとすればよい。
なお、記録媒体としては、特に限定されず、公知のものを使用でき、具体的には、例えば、普通紙や塗工紙といった用紙のほか、布帛又はシート状の樹脂等、表面に付着した色材を定着させることが可能な種々の媒体が挙げられる。
【0045】
[定着する工程]
本発明に係る定着する工程は、少なくとも、当該トナー像に対して、280~480nmの波長領域内の光を照射する工程と、加圧する工程と、を含む。
【0046】
[光を照射する工程]
本工程では、280~480nmの波長領域内の光を、記録媒体上に転写されたトナー像に対して照射する。
特に、光を照射する工程では、280nm以上400nm未満の波長領域内の光を照射することが好ましい。短波長の光であるほど、1光子あたりのエネルギーは大きいが、散乱は大きくなる。しかしながら、本発明の場合、トナー像の定着の工程が、加圧する工程を有するため、散乱による不具合を解消できる。このため、400nm未満(紫外線領域)の波長領域内の光を照射した場合であっても散乱に起因する問題が生じず、ひいては、本発明の効果をより好適に発現できる。また、照射する光の波長が280nm以上であれば、トナー像が含有する樹脂の開裂が起きない。
さらに、光を照射する工程では、最大発光波長が280nm以上400nm未満の光を照射することが好ましい。これは、本発明に係る光を照射する工程では、280~480nmの波長領域内の光を照射することで本発明の効果を奏するため、最大発光波長が280nm以上400nm未満の光であることが、その効果をより効率よく発現でき、さらには、消費電力を低減できることから好ましい。
【0047】
また、光を照射する工程では、前記トナーの極大吸収波長に関わらず一定の波長の光を照射することが好ましい。一定の波長の光を照射することにより、画像形成装置内のスペースを取りすぎることを抑制でき、制御が煩雑となることを回避できる。
【0048】
なお、光源の「最大発光波長」とは、光源の発光スペクトルにおいて、発光ピーク(発光帯)の極大値のうち、発光強度が最大となる発光波長をいう。
また、トナーの「極大吸収波長」とは、トナーの吸収スペクトルにおいて、吸収ピーク(吸収帯)の極大値のうち、吸収強度が最大となる吸収波長をいう。
【0049】
<光の照射方法>
また、光を照射する工程において、光を照射する方法は特に限定されず、280~480nmの波長領域内の光を照射できる光源を使用する方法であればよく、例えば、光源を光ファイバーで導光する方法など公知の光源・方法を用いることができるが、特に、発光ダイオード又はレーザー光源などの光源によって光を照射する方法が好ましい。発光ダイオード又はレーザー光源を使用することで、280~480nmの波長領域内の光のみに起因する光熱変換作用を発現させることができる。この結果、本発明の効果を好適に発現でき、さらには、消費電力を低減できることから好ましい。
また、光を照射する工程では、光源の数は特に限定されない。特に、本工程では、単一又は複数の光源を有し、かつ、記録媒体上に転写されたトナー像に対して、当該トナー像が含有するトナーの極大吸収波長に関わらず、全ての光源から光を照射することが好ましい。本発明に係る280~480nmの波長領域内の光は、トナーに通常使用される着色剤(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトなど。)が吸収する。このため、光源の数や波長領域の違いに関わらず一斉に光を照射しても、問題なく本発明の効果を発現できる。したがって、複数の光源を有していても、全ての光源から光を照射することができ、ひいては、光源ごとのON/OFF制御を必要としないような簡素な制御でも効果を発現することができる。
【0050】
[加圧する工程]
加圧する工程では、記録媒体上に転写されたトナー像を加圧する。
なお、加圧する工程は光を照射する工程の前に行っても良いが、光を照射した後に行ったほうが、あらかじめ軟化した状態のトナーに加圧することができ、この結果、より好適にトナー像中の空気を押しだすことができるため好ましい。
【0051】
<加圧方法>
加圧する方法としては、記録媒体上に転写されたトナー像を加圧できる構成であればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、後述の加圧部9が有する加圧部材91及び92などのローラーによって加圧することとしてもよい。
【0052】
本工程では、記録媒体上に転写されたトナー像を加圧する。トナー像を加圧する力は特に限定されないが、本発明の加圧する工程では、記録媒体上に転写されたトナー像を0.01~1.0MPaの範囲内で加圧することが好ましい。当該加圧する工程では、好ましくは0.01~1.0MPaの範囲内、より好ましくは0.05~0.8MPaの範囲内で記録媒体上に転写されたトナー像を加圧する。前記範囲で加圧することで、より好適に内部の空気を押し出すことができ、かつ、伝熱を好適に促進することができる。具体的には、0.01MPa以上であれば、トナーの変形量を十分にでき、より好適に内部の空気を押しだすことができる。また、1.0MPa以下であれば、画像の光沢が大きくなりすぎることを回避できる。
【0053】
<加圧しつつ、加熱する工程>
本発明に係る加圧する工程は、前記記録媒体上に転写されたトナー像を加圧しつつ、加熱する工程であることが好ましい。光照射によって軟化したトナー像は、この加熱によりさらに軟化され、その結果、トナー像の記録媒体への定着性がより向上する。
なお、加圧しつつ、加熱する方法は、記録媒体上に転写されたトナー像を加圧しつつ、加熱することができるものであればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、後述の加圧部材91及び92のような加熱可能なローラーを使用することで、トナー像を加圧しつつ、加熱することとしてもよい。
【0054】
(加熱温度)
本発明に係る加圧しつつ、加熱する工程では、前記トナー像を形成するトナーのうち、ガラス転移温度の最も低い色のトナーのガラス転移温度をTg-minとしたときに、前記トナー像の表面温度を、(Tg-min+20)℃以上の温度まで加熱することが好ましく、より好ましくはガラス転移温度(Tg-min+20)~(Tg-min+100)℃の範囲内であり、更に好ましくは(Tg-min+25)~(Tg-min+80)℃の範囲内である。前記範囲で加熱することで、より確実に効果を発現することができる。なお、(Tg-min+20)℃以上であれば、加圧による効果を十分に得ることができ、(Tg-min+100)℃以下であれば、ホットオフセットを回避できる。なお、ホットオフセットとは、定着する工程において、ローラー等の加圧部材にトナーの一部が転移してしまい、トナー層が分断してしまう現象をいう。
【0055】
なお、トナーのガラス転移温度については、後述する示差走査熱量測定装置「DSC 8500」(パーキンエルマー社製)を用いて測定することができる。
【0056】
また、トナー像の表面温度は、非接触温度センサーにて測定することができる。具体的には、例えば、加熱部材からの記録媒体が排出される位置に前記非接触温度センサーを設置して、記録媒体上のトナー像の表面温度を測定すればよい。
【0057】
[トナー像]
トナー像とは、静電潜像をトナーにより現像させて形成された像をいう。
本発明においては、記録媒体上に転写されたトナー像が、ブラックトナー像又は2色以上のトナーで形成されたカラートナー像であることが好ましい。なお、カラートナー像のバリエーションとしては、特に限定されず、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのうち少なくとも2色以上のトナーを含有するものであってもよいし、ブラックとホワイトとの2色のトナーからなるトナー像であってもよいし、その他の複数色のトナーを含有するトナー像であってもよい。
本発明によれば、このようなブラックトナー像又は2色以上のトナーで形成されたカラートナーであっても上記効果を好適に発現することができる。
【0058】
[トナー]
本発明に係るトナーは、静電潜像現像用のトナーであり、少なくともトナー粒子を含んで構成される。
なお、本発明において、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
【0059】
<280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物>
本発明に係るトナーは、前記280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物を含有することが好ましい。特に、本発明に係るトナーは、280~480nmの波長領域内に極大吸収波長を有する化合物を含有していることが好ましい。このような化合物はトナーの色相に与える影響が比較的小さく、大きな熱エネルギーを取り出すことができる。すなわち、本発明においては、トナー像が当該化合物を含有していることで、色相及び光熱変換をより好適にでき、この結果、本発明の効果をより好適に奏することができ好ましい。
なお、このような化合物は、特に限定されず、例えば、本発明に係るトナーは、280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物として、後述の着色剤をトナー母体粒子に含有していてもよい。このような構成であっても、本発明の画像形成方法によれば効果を好適に奏することができる。
【0060】
<トナー粒子>
本発明に係るトナー粒子は、トナー母体粒子に少なくとも熱可塑性樹脂を含む結着樹脂及び280~480nmの波長領域の光を吸収する化合物を含有することが好ましく、所望により離型剤が含有されてもよい。
【0061】
ここで、本発明に係る「トナー母体粒子」とは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有してなる粒子のことである。トナー母体粒子は、そのままでもトナー粒子として使用することができるが、通常、外添剤を添加したものをトナー粒子として使用することが好ましい。
【0062】
また、本発明に係るトナー母体粒子を製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
【0063】
<着色剤>
本発明に係るトナー母体粒子には、着色剤として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色素は公知の材料を用いることができる。また、二酸化チタン等の無機粒子を用いた着色剤(白色)も使用することができる。
着色剤の具体例は以下のとおりである。なお、以下の着色剤は、280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物である。
【0064】
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどが挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
【0065】
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などの顔料が挙げられる。
【0066】
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122などの染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などの顔料が挙げられる。
【0067】
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などの染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76、同15:3などの顔料が挙げられる。
【0068】
白色の着色剤としては、具体的には、例えば、無機顔料(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、チタンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノケイ酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト等)、有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホルマリン樹脂粒子等)が挙げられる。また中空構造を有する顔料、例えば、中空樹脂粒子、中空シリカ等も挙げられる。
【0069】
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
着色剤の含有割合は、トナー中0.5~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。
【0071】
<結着樹脂>
本発明に係るトナーは、結着樹脂を含むことができる。トナーの製造方法として乳化凝集法を利用することにより、略均一な粒子径及び形状を有するトナー粒子を作製できることが一般的に知られている。
本発明にかかるトナーには、結着樹脂として、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられている樹脂を、本発明の効果発現を阻害しない範囲内で使用することができる。このような樹脂として、熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられる。これら結着樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0072】
これらの中でも、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有するという観点から、結着樹脂は、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0073】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、定着性や耐熱保管性などの観点から、30~70℃の範囲が好ましく、35~60℃の範囲がより好ましい。Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
【0074】
<離型剤>
本発明に係るトナーは、離型剤を含有してもよい。使用される離型剤は、特に限定されるものではなく、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン又は酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、パラフィン、合成エステルワックスなどが挙げられ、特に、低融点及び低粘度であることから、合成エステルワックスを用いることが好ましく、合成エステルワックスとしてベヘン酸ベヘニル、グリセリントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネートなどを用いることが特に好ましい。
離型剤の含有割合は、トナー中1~30質量%の範囲内であることが好ましく、3~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0075】
<荷電制御剤>
本発明に係るトナーは、荷電制御剤を含有してもよい。使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤及び負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
【0076】
荷電制御剤の含有割合は、トナー中0.01~30質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0077】
<外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0078】
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、表面が修飾されていてもよい。
【0079】
これら外添剤の添加量は、トナー中0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。
【0080】
<トナーの粒径>
トナーの粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で4~10μmであることが好ましく、4~7μmであることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなりハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
本発明において、トナーの体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター(株)製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター(株)製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
【0081】
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター(株)製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定する粒子の数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
【0082】
[その他の工程]
以下に、帯電する工程、静電潜像を形成する工程、現像する工程、定着工程、クリーニングする工程など、一般的な電子写真画像形成方法で使用される工程について説明する。
【0083】
<帯電する工程>
本工程では、電子写真感光体を帯電させる。帯電させる方法は、特に限定されず、例えば、帯電ローラーによって電子写真感光体の帯電が行われる帯電ローラー方式など、公知の方法でよい。
【0084】
<静電潜像を形成する工程>
本工程では、電子写真感光体(静電潜像担持体)上に静電潜像を形成する。
電子写真感光体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリシラン又はフタロポリメチンなどの有機感光体よりなるドラム状のものが挙げられる。
静電潜像の形成は、例えば、電子写真感光体の表面を帯電手段により一様に帯電させ、露光手段により電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行われる。なお、静電潜像とは、このような帯電手段によって電子写真感光体の表面に形成される像である。
帯電手段及び露光手段としては、特に限定されず、電子写真方式において一般的に使用されているものを用いることができる。
【0085】
<現像する工程>
現像する工程は、静電潜像を、トナー(一般的には、トナーを含む乾式現像剤)により現像してトナー像を形成する工程である。
トナー像の形成は、例えば、トナーを含む乾式現像剤を用いて、トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、回転可能なマグネットローラーとからなる現像手段を用いて行われる。
具体的には、現像手段においては、例えば、トナーとキャリアとが混合撹拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラーの表面に保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラーは、電子写真感光体近傍に配置されているため、マグネットローラーの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって電子写真感光体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて電子写真感光体の表面にトナー像が形成される。
【0086】
<転写する工程>
本工程では、記録媒体へのトナー像の転写をする。
トナー像の記録媒体への転写は、トナー像を記録媒体に剥離帯電することにより行われる。
転写手段としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラーなどを用いることができる。
また、転写する工程は、例えば、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を記録媒体上に二次転写する態様の他、電子写真感光体上に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する態様などによって行うこともできる。
【0087】
<クリーニングする工程>
本工程では、感光体、中間転写体などの現像剤担持体上には、画像形成に使用されなかった又は転写されずに残った現像剤を現像剤担持体上から除去する。
クリーニングの方法は、特に限定されないが、先端が感光体等のクリーニング対象に当接して設けられた、感光体表面を擦過するブレードが用いられる方法であることが好ましい。
【0088】
≪画像形成装置≫
本発明の画像形成装置は、上記本発明の画像形成方法を用いるほかは、一般的な画像形成装置を使用できる。
以下に、本発明の画像形成装置の一例を説明する。
【0089】
図1は、本発明の画像形成装置の構成の一例示す断面図である。
図1に示す画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるものであり、4組の画像形成部(プロセスカートリッジ)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状の中間転写体ユニット7と、給紙搬送部21と、トナー像定着装置24とを備える。装置本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0090】
画像形成部10Yは、イエロー色の画像を形成するものである。画像形成部10Yは、ドラム状の電子写真感光体1Yの周囲に帯電部2Yと露光部3Yと現像部4Yとクリーニング部6Yとが配置されて構成され、一次転写ローラー5Yをさらに有する。
【0091】
画像形成部10Mは、マゼンタ色の画像を形成するものである。画像形成部10Mは、ドラム状の電子写真感光体1Mの周囲に帯電部2Mと露光部3Mと現像部4Mとクリーニング部6Mとが配置されて構成され、一次転写ローラー5Mをさらに有する。
【0092】
画像形成部10Cは、シアン色の画像を形成するものである。画像形成部10Cは、ドラム状の電子写真感光体1Cの周囲に帯電部2Cと露光部3Cと現像部4Cとクリーニング部6Cとが配置されて構成され、一次転写ローラー5Cをさらに有する。
【0093】
画像形成部10Bkは、黒色画像を形成するものである。画像形成部10Bkは、ドラム状の電子写真感光体1Bkの周囲に帯電部2Bkと露光部3Bkと現像部4Bkとクリーニング部6Bkとが配置されて構成され、一次転写ローラー5Bkをさらに有する。
【0094】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkに形成されるトナー像の色が異なることを除いては同様に構成されている。そのため、以下では、画像形成部10Yを例に挙げて説明する。
【0095】
本実施形態では、画像形成部10Yにおいて、少なくとも、電子写真感光体1Yと帯電部2Yと現像部4Yとクリーニング部6Yとが一体化されている。
【0096】
帯電部2Yは、電子写真感光体1Yに対して一様な電位を与えて電子写真感光体1Yの表面を帯電(例えば負に帯電)させる。帯電部2Yは、非接触帯電方式によって電子写真感光体1Yの表面を帯電させても良い。
【0097】
露光部3Yは、帯電部2Yにより一様な電位が与えられた電子写真感光体1Yの表面に対して、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、これにより、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する。露光部3Yとしては、電子写真感光体1Yの軸方向に発光素子がアレイ状に配列されて構成されたLEDと結像素子(商品名;セルフォック(登録商標)レンズ)とを備えたもの、又は、レーザー光学系などを用いることができる。
【0098】
現像部4Yは、露光部3Yにより形成された静電潜像を静電潜像現像剤により現像してトナー像を形成する。用いる静電潜像現像剤は特に限定されないが、乾式現像剤であることが好ましい。
【0099】
図1の画像形成装置では、電子写真感光体1Yと帯電部2Yと露光部3Yと現像部4Yとクリーニング部6Yなどがプロセスカートリッジとして一体化されて構成され、このプロセスカートリッジが装置本体Aに対して着脱可能に装着されても良い。また、帯電部2Y、露光部3Y、現像部4Y、転写又は分離器、及び、クリーニング部6Yのうちの少なくとも一つが電子写真感光体1Yとともに一体に支持されてプロセスカートリッジが構成され、そのプロセスカートリッジが装置本体Aに対して着脱可能な単一画像形成ユニット(画像形成部)に構成され、その単一画像形成ユニットが装置本体Aのレールなどの案内手段を用いて装置本体Aに対して着脱可能に装着されても良い。
【0100】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと無端ベルト状の中間転写体ユニット7とを有する筐体8は、支持レール82L、82Rにより、装置本体Aから引き出し可能に構成されている。筐体8では、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。無端ベルト状の中間転写体ユニット7は、
図2において感光体1Y、1M、1C、1Bkの左側方に配置されており、ローラー71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状の中間転写体70と、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkと、クリーニング部6bとを有する。
【0101】
以下では、
図1に示す画像形成装置を用いた画像形成方法について示す。画像形成部10Y、10M、10C、10Bkにより形成された各色の画像は、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状の中間転写体70上に逐次転写される。これにより、合成されたカラー画像が形成される。
【0102】
給紙カセット20に収容された記録媒体(例えば、普通紙、透明シートなど。)Pは、給紙搬送部21により供給され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22Dとレジストローラー23とを経て、二次転写ローラー5bに搬送される。二次転写ローラー5bでは、合成されたカラー画像が記録媒体Pに二次転写され、よって、カラー画像が記録媒体Pに一括に転写される。合成されたカラー画像が記録媒体Pに二次転写されると、無端ベルト状の中間転写体70はその記録媒体Pを曲率分離する。この記録媒体Pは、トナー像定着装置(以下、単に「定着装置」ともいう。)24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26に載置される。一方、中間転写体70に付着した静電潜像現像剤はクリーニング部6bにより除去される。
【0103】
画像形成中、一次転写ローラー5Bkは、常時、電子写真感光体1Bkの表面に当接している。一方、一次転写ローラー5Y、5M、5Cは、カラー画像形成時にのみ、対応する電子写真感光体1Y、1M、1Cの表面に当接する。また、二次転写ローラー5bは、二次転写ローラー5bを記録媒体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状の中間転写体70の表面に当接する。
【0104】
≪トナー像定着装置≫
本発明のトナー像定着装置は、画像形成装置に用いるトナー像定着装置であって、記録媒体上のトナー像に対する、280~480nmの波長領域内の光照射部と加圧部と、を含む。
図2は、
図1に示す画像形成装置に記載のトナー像定着装置24を拡大した図である。
図2に示す例において、光照射部101は、記録媒体Pのトナー像Tに対し、光を照射する。光照射部は、280~480nmの波長領域内の光を照射できるものであれば、特に限定されず、公知のものを使用でき、例えば、発光ダイオード又はレーザー光源を好適に使用できる。
光照射部101は、記録媒体Pを搬送する方向Iにおいて、加圧部9の上流側又は下流側に設置されるが、好ましくは、
図2に示すように、加圧部9の上流側に設置される。
光照射部101における光の照射量は、好ましくは0.1~200J/cm
2、より好ましくは0.5~100J/cm
2、さらに好ましくは、1.0~50J/cm
2である。
【0105】
<加圧部>
加圧部9は、加圧部材91及び92のようなローラーによって、記録媒体上のトナー像を上下から加圧しつつ、搬送する構成であることが好ましい。なお、加圧する方法は、トナー像に対して加圧できる方法であれば特に限定されず、例えば、加圧部材91及び92のいずれか一方を固定し、他方によって、記録媒体上のトナー像を加圧する構成であってもよい。
また、加圧部材91又は92は、記録媒体が当該加圧部材91及び92の間を通過する際に、記録媒体P上のトナー像を加熱できることが好ましい。加熱する方法は特に限定されず、例えば、加圧部材91又は92に、ランプ式又は誘導加熱式のヒーターを内蔵させてもよい。この場合、定着装置は、さらに、加圧部材91又は92の温度を検出する温度計などを備え、当該温度計に基づいて加熱温度を制御するような態様であってもよい。
このような加圧部材91又は92とすることで、記録媒体上に転写されたトナー像を加圧しつつ、加熱する工程を実現できる。なお、加熱は、トナー像を形成するトナーのうち、ガラス転移温度の最も低い色のトナーのガラス転移温度をTg-minとしたときに、トナー像の表面温度を、(Tg-min+20)℃以上の温度まで加熱することが好ましい。
定着装置に搬送された記録媒体Pは、光照射部101による光照射及び加圧部9による加圧等されたのち、排紙トレイ26まで搬送される。
【0106】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0108】
≪ブラック現像剤の作製≫
[ブラックトナーの作製]
<スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の調製>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃となるよう加熱した。加熱されたこの溶液に、スチレン480質量部、n-ブチルアクリレート250質量部、メタクリル酸68.0質量部及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート16.0質量部よりなる重合性モノマー溶液を1時間かけて滴下した。その後、重合性モノマー溶液が滴下された溶液を、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行った。これにより、スチレン・アクリル樹脂粒子1aを含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1Aを調製した。
【0109】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱する。この加熱された溶液に、上記のスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1Aを260質量部、スチレンを245質量部、n-ブチルアクリレートを120質量部、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネートを1.5質量部、離型剤としてパラフィンワックス「HNP-11」(日本精蝋社製)67質量部を90℃にて溶解させた重合性モノマー溶液を添加した。当該重合性モノマー溶液が添加された溶液を、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により1時間混合分散処理した。これにより、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行い、スチレン・アクリル樹脂粒子1bを含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1Bを調製した。
【0110】
(第3段重合)
上記のスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1Bに過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加した後、液温を82℃とし、スチレン435質量部、n-ブチルアクリレート130質量部、メタクリル酸33質量部及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート8質量部からなる重合性モノマー溶液を1時間かけて滴下した。なお、滴下中は、滴下される溶液の液温を82℃に維持した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った。重合後、液温が28℃となるまで冷却し、スチレン・アクリル樹脂1を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1を得た。上記スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1中のスチレン・アクリル樹脂粒子の粒径を「マイクロトラックUPA-150」(日機装(株)製)を用いて動的光散乱法によって測定したところ、体積基準のメジアン径で120nmであった。また、このスチレン・アクリル樹脂1のガラス転移温度Tgを測定したところ、45℃であった。
なお、スチレン・アクリル樹脂1のガラス転移温度の測定方法は、後述のガラス転移温度の測定方法において、測定試料をスチレン・アクリル樹脂1として測定した。
【0111】
<カーボンブラック分散液の調製>
n-ドデシル硫酸ナトリウムを11.5質量部、1600質量部の純水に溶解し、カーボンブラック「モーガルL(キャボット社製)」25質量部を徐々に添加し、次いで、「クレアミックス(登録商標)CLM-0.8S(エム・テクニック(株)製)」を用い、カーボンブラック分散液を調製した。分散液中のカーボンブラック粒子の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子(株)製)を用いて測定したところ、個数基準のメジアン径で118nmであった。
なお、紫外可視分光光度計「V-530」(日本分光(株)製)を用いて吸収スペクトルを測定したところ、着色剤であるモーガルLは、280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物であった。
【0112】
<凝集・融着>
上記で作製したスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1を固形分換算で504質量部、イオン交換水900質量部及びカーボンブラック分散液を固形分換算で70質量部を、撹拌装置、温度センサー及び冷却管を装着した反応装置が有する容器に投入した。この容器内の温度を30℃に保持した状態で、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を当該容器内に添加してpHを10に調整した。
次に、イオン交換水1000質量部に、2質量部の塩化マグネシウム・六水和物を溶解させた水溶液を調製した。前記容器内の液体に対し、この水溶液を10分間かけて滴下した。なお、滴下は、前記容器内の液体を撹拌しながら行った。前記水溶液の滴下後、昇温を開始し、この容器内の液体を60分間かけて70℃まで昇温させた。容器内の液体の温度を、70℃を保持させたまま、粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50)が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。次に、容器内の液体の温度を70℃で維持した状態で1時間撹拌した。その後、容器内の液体の温度が75℃となるまでさらに昇温を行った。次に、容器内の液体の温度を75℃で維持した状態で撹拌することにより、粒子の融着を進行させた。その後、容器内の液体の温度を30℃まで冷却し、トナー粒子の分散液を得た。
【0113】
上記で得られたトナー粒子の分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄した。その後「フラッシュジェットドライヤー((株)セイシン企業製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥して、ブラックトナーの母体粒子を作製した。
乾燥させたブラックトナーの母体粒子に、外添剤として疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合することにより、ガラス転移温度が45℃、体積基準におけるメジアン径6.4μmのブラックトナーを作製した。
【0114】
(ガラス転移温度の測定方法)
ガラス転移温度については、示差走査熱量測定装置「DSC 8500」(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。具体的には、測定試料(例えば、トナー。)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、DSC-7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0~200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、Heat-Cool-Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行った。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移温度とした。
【0115】
[ブラック現像剤の作製]
上記のようにして作製したブラックトナーについて、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合樹脂(モノマー質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、ブラックトナーの濃度が6質量%となるようにして混合し、現像剤を作製し、以下のトナーの評価に使用した。混合機は、V型混合機を用いて、30分間混合した。
【0116】
≪イエロートナー及びイエロー現像剤の作製≫
ブラックトナーの作製において、着色剤をカーボンブラックの代わりにC.I.ピグメントイエロー74を用いた以外は同様にして、ガラス転移温度が47℃、体積基準におけるメジアン径6.2μmのイエロートナーを作製した。得られたイエロートナーをブラック現像剤の作製と同様にしてイエロー現像剤を作製した。
なお、C.I.ピグメントイエロー74について、ブラックトナーが含有する着色剤「モーガルL」と同様に吸光スペクトルを測定したところ、C.I.ピグメントイエロー74は、280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物であった。
【0117】
≪マゼンタトナー及びマゼンタ現像剤の作製≫
ブラックトナーの作製において、着色剤をカーボンブラックの代わりにC.I.ピグメントレッド122を用いた以外は同様にして、ガラス転移温度が45℃、体積基準におけるメジアン径6.1μmのマゼンタトナーを作製した。得られたマゼンタトナーをブラック現像剤の作製と同様にしてマゼンタ現像剤を作製した。
なお、C.I.ピグメントレッド122について、ブラックトナーが含有する着色剤「モーガルL」と同様に吸光スペクトルを測定したところ、C.I.ピグメントレッド122は、280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物であった。
【0118】
≪シアントナー及びシアン現像剤の作製≫
ブラックトナーの作製において、着色剤をカーボンブラックの代わりにC.I.ピグメントブルー15:3を用いた以外は同様にして、ガラス転移温度が46℃、体積基準におけるメジアン径6.3μmのシアントナーを作製した。得られたシアントナーをブラック現像剤の作製と同様にしてシアン現像剤を作製した。
なお、C.I.ピグメントブルー15:3について、ブラックトナーが含有する着色剤「モーガルL」と同様に吸光スペクトルを測定したところ、C.I.ピグメントブルー15:3は、280~480nmの波長領域内の光を吸収する化合物であった。
【0119】
【0120】
[評価方法]
下記の各評価は、複写機「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタ(株)製)において、定着装置を改造したものに上記で得られた現像剤を用い、常温常湿環境下(温度20℃、湿度50%RH)で行った。
なお、実施例1~16及び比較例1において、記録媒体へのトナー像の定着の条件(照射する光の最大発光波長、加圧する工程の有無及び記録媒体上に転写されたトナー像を加圧する力の大きさ並びに加熱する工程の有無及びトナー像の表面温度。)は、表1に記載のとおりとし、下記評価をした。また、各実施例及び比較例において、照射する光は、表1に記載の最大発光波長±20nmの波長領域内の光を照射するLED光源を使用し、10J/cm
2となるように照射した。
加圧部、加熱部としては、
図1及び
図2に記載の加圧部9を使用し、加圧する力及び加熱する温度は、表1に記載のとおりとした。なお、加圧部9においては、加圧部材92を固定し、加圧部材91によって、記録媒体P上のトナー像Tを押圧した。
【0121】
(トナー表面温度の測定)
トナー表面温度は全面ベタ画像(トナー付着量4g/m
2)の表面を非接触温度センサー(センサーヘッド:FT-H10、アンプユニット:FT-50A ともにキーエンス(株)製)にて測定した。なお、加圧する工程において、加熱しない場合(すなわち、記録媒体上に転写されたトナー像を加圧しつつ、加熱する工程ではない場合。)は、加圧部9の上流に位置241aに前記非接触温度センサーを設置し、記録媒体上に転写されたトナー像を加圧しつつ、加熱する工程を有する場合は、加圧部9よりも下流の位置241bに前記非接触温度センサーを設置し測定した(
図2参照。)。
【0122】
<色再現性>
普通紙(坪量:64g/m2)上に、トナー付着量4g/m2となる条件で静電潜像を現像させた。紙の表面に形成されたトナー層を有するベタ画像(トナー像)を、各定着装置にて定着した印刷物を用いて行った。
【0123】
(ブラック画像:実施例1~9及び実施例13~16、比較例1)
得られた各ベタパッチ定着画像について、画像濃度を蛍光分光濃度計「FD-7」(コニカミノルタ(株)製)を用いて任意の3か所で測定し、その平均濃度(画像濃度)を求めた。下記基準により評価し、○以上であれば実用上問題ない。
【0124】
(評価基準)
◎:画像濃度が1.5以上
○:画像濃度が1.3以上1.5未満
×:画像濃度が1.3未満
【0125】
(カラー画像:実施例10~12)
得られた各ベタパッチ定着画像と各トナー構成で光照射をせず、トナー表面温度(241b)が125℃となるように加熱加圧して定着した各ベタパッチ定着画像を比較するため、各々におけるベタ部の色を蛍光分光濃度計「FD-7」(コニカミノルタ(株)製)で測定し、CMC(2:1)色差式を用いて色差を算出した。下記基準により評価し、○以上であれば実用上問題ない。
【0126】
(評価基準)
◎:色差2未満
○:色差2以上3.5未満
×:色差3.5以上
【0127】
<定着性>
普通紙(坪量:64g/m2)上に、トナー付着量4g/m2となる条件で静電潜像を現像させた。紙の表面に形成されたトナー層を有するベタ画像(トナー像)を、各定着装置にて定着した印刷物を用いて行った。この印刷物の1cm角の画像を、「JKワイパー(登録商標)」(日本製紙クレシア(株)製)で10kPaの圧力をかけて10回こすり、画像の定着率で評価した。定着率80%以上を合格とした。
なお、画像の定着率とは、プリント後の画像及びこすった後の画像の濃度を蛍光分光濃度計「FD-7」(コニカミノルタ(株)製)で測定し、こすった後のベタ画像の反射濃度を、プリント後のベタ画像の反射濃度で除した値を百分率で表した数値である。
【0128】
表Iによれば、本願発明の構成であれば、短波長領域の光を使用しても、記録媒体上に定着されたトナー像が、良好な色再現性を有し、かつ、十分な定着性を有する画像形成方法を提供できることが分かる。
【符号の説明】
【0129】
24 トナー像定着装置
9 加圧部
91、92 加圧部材
101 光照射部
P 記録媒体
T トナー像