(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CER
C08J3/20 CEZ
(21)【出願番号】P 2017172278
(22)【出願日】2017-09-07
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】齊田 靖治
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 啓太
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203896(JP,A)
【文献】特開2017-222734(JP,A)
【文献】特開昭63-202408(JP,A)
【文献】特開2012-166354(JP,A)
【文献】特開平04-332630(JP,A)
【文献】特開2010-132798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
B29B 7/00-11/14
B29B 13/00-15/06
B29B 17/00-17/04
B29C 48/00-48/96
C08J 11/00-11/28
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融混練機の吐出口から異なる距離にある複数の投入口の少なくともいずれかから、熱可塑性樹脂製の回収材料を投入して、再生された熱可塑性樹脂製の組成物を製造する方法であって、
前記回収材料の溶融粘度と、前記回収材料の金属含有量と、前記投入口の位置との関係を示すデータを準備する工程と、
前記再生された熱可塑性樹脂製の組成物を製造する工程と、
を有し、
前記再生された熱可塑性樹脂製の組成物を製造する工程は、
前記回収材料の溶融粘度を測定する工程と、
前記回収材料の金属含有量を測定する工程と、
測定した前記溶融粘度および前記金属含有量から求まる溶融混練時の溶融粘度の低下率と、再生品の所望の溶融粘度と
、前記データとに基づいて、前記回収材料を投入する前記投入口を選択する工程と、
選択された前記投入口に前記回収材料を投入して溶融混練する工程と、
を含
み、
前記データにおける前記溶融混練機の仕様および前記回収材料の形態は、前記再生された熱可塑性樹脂製の組成物を製造する工程における前記溶融混練機の仕様および前記回収材料の形態と同じである、
熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記再生された熱可塑性樹脂製の組成物を製造する工程は、前記回収材料に、前記金属含有量に応じた量の金属不活性化剤を添加する工程をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記回収材料および前記金属不活性化剤を、選択された1つの前記投入口に投入する、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタラートおよびポリブチレンテレフタラートからなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いる、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記回収材料として、熱可塑性樹脂の廃材を用いる、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記回収材料は、着色剤、難燃剤、滑剤、相溶化剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも一つの添加剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、添加物の添加によって種々の特性を付与することができ、様々な分野において有用な材料として利用されている。一方、近年では、環境保全の観点から、廃棄物の減量が求められており、そのための一手段として、熱可塑性樹脂製の使用済みの製品(以下、「廃材」とも言う)を回収し、それを熱可塑性樹脂製の新たな製品の原料として再利用することが知られている。
【0003】
廃材は、一般に、熱可塑性樹脂の種類ごとに回収され、個々の廃材は、元の用途に応じた特有の物性を有している。このため、廃材は、一般に、樹脂の種類は同じだが異なる物性を有する。よって、廃材を熱可塑性樹脂製の新たな製品の原料として再利用する場合には、廃材による物性のばらつきの影響を抑制する必要がある。
【0004】
廃材における物性のばらつきを抑制する技術として、溶融混練時間を調整する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、廃材の種類毎に時間を設定して、溶融混練することで、所望の溶融粘度を有する熱可塑性樹脂の原料を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
押出混練機を用いて、物性のばらつきのない廃材を溶融混練する場合には、前述した技術を採用して、溶融混練時間を設定し、バレルの長さを一度選択すれば、連続して所望の溶融粘度を有する熱可塑性樹脂製の新たな製品の原料として再利用できる。
【0007】
一方、前述したような物性がはらついた廃材を溶融混練する場合には、物性に応じて、溶融混練時間を設定し、バレルの長さを変更する必要がある。このように、バレルの長さを変更するためには、溶融混練を停止する必要があり、原料の生産性が著しく低下してしまうことがある。
【0008】
本発明は、物性のばらつきを有する熱可塑性樹脂製の原料を用いて、原料の物性のばらつきによる製品の物性のばらつきを十分に低減可能な熱可塑性樹脂組成物を連続して製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するための一態様として、溶融混練機の吐出口から異なる距離にある複数の投入口の少なくともいずれかから、熱可塑性樹脂製の回収材料を投入して、再生された熱可塑性樹脂製の組成物を製造する方法であって、前記回収材料の溶融粘度を測定する工程と、前記回収材料の金属含有量を測定する工程と、測定した前記溶融粘度および前記金属含有量から求まる溶融混練時の溶融粘度の低下率と、再生品の所望の溶融粘度とに基づいて、前記回収材料を投入する前記投入口を選択する工程と、選択された前記投入口に前記回収材料を投入して溶融混練する工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱可塑性樹脂製の製品のばらつきが十分に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、投入口と吐出口との位置関係を示す押出混練機の模式図である。
【
図2】
図2は、吐出口および投入口の位置関係と、溶融粘度との関係を示す模式的なグラフである。
【
図3】
図3Aは、回収材料が金属を含む場合の選択工程を説明するための模式的なグラフであり、
図3Bは、回収材料が金属を含む場合の溶融粘度を補正する方法を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、溶融粘度と、金属含有量と、選択するべき投入口の位置との関係を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0013】
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本実施の一形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂を含む回収材料から再生品の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法である。熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、溶融粘度測定工程と、金属含有量測定工程と、選択工程と、溶融混練工程とを含む。
【0014】
溶融粘度測定工程は、回収材料の溶融粘度を測定する工程である。
【0015】
回収材料は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂の例には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)およびポリブチレンテレフタラート(PBT)が含まれる。熱可塑性樹脂は、単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0016】
熱可塑性樹脂は、市場から回収された使用済みの熱可塑性樹脂製品またはその破砕物である廃材や、市場に出回る前に回収された未使用の熱可塑性樹脂製品またはその破砕物である未使用品を含む。廃材および未使用品は、熱可塑性樹脂として用いられる場合には、通常、破砕物として樹脂の種類に応じて分類され、または分類品の混合品として用いられる。
【0017】
回収材料は、熱可塑性樹脂のみから構成されていてもよいし、他の添加剤をさらに含有していてもよい。添加剤の例には、着色剤、難燃剤、滑剤、相溶化剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤が含まれる。添加剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
着色剤の例には、無機顔料や有機顔料などの樹脂用着色剤が含まれる。難燃剤の例には、リン酸エステルなどのリン系化合物やブロモ化合物が含まれる。滑剤の例には、高級脂肪酸の金属塩類や高級脂肪酸アミド類が含まれる。相溶化剤の例には、ランダムコポリマー系、グラフトコポリマー系、ブロックポリマー系の相溶化剤が含まれる。酸化防止剤の例には、ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系の酸化防止剤が含まれる。紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系の紫外線吸収剤が含まれる。
【0019】
添加剤の含有量は、添加剤を添加することによる効果を発揮する観点から、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、添加剤の含有量は、溶融混練に影響をおよぼさない観点から、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
回収材料の溶融粘度の測定は、回収材料が溶融混練機に投入される前に行われる。本実施の形態では、回収材料は連続して混練押出機の投入口に投入されるため、溶融粘度は任意の間隔で測定すればよい。
【0021】
より具体的には、回収材料を投入口に搬送する途中で、回収材料の一部をサンプリングして、溶融粘度を測定すればよい。溶融粘度の測定は、回収材料が投入口に投入される前に終了すればよい。
【0022】
また、溶融粘度の指標としては、メルトフローレート(MFR)を使用すればよい。回収材料のMFR値は、JIS K7210で規定されている方法によって測定できる。また、MFR値は、公知(市販)の測定装置で測定できる。MFR値の測定値は、回収材料のMFR値を代表する値であればよく、例えば複数の測定値の平均値であってもよいし、最大値であってもよいし、最小値であってもよいし、これらの中間値であってもよい。
【0023】
金属含有量測定工程は、回収材料の金属含有量を測定する工程である。
【0024】
金属含有量の測定は、溶融粘度の測定と同様に、回収材料が溶融混練機に投入される前に行われる。本実施の形態では、回収材料は連続して混練押出機に投入されるため、金属含有量も任意の間隔で測定すればよい。
【0025】
より具体的には、回収材料を投入口に搬送する途中で、回収材料の一部をサンプリングして、回収材料に含まれる金属含有量を測定すればよい。金属含有量の測定時間は、サンプリングした後、当該回収材料が投入口に投入される前に終了すればよい。
【0026】
また、金属含有量は、熱可塑性樹脂の表面に付着している金属と、熱可塑性樹脂の内部に混入している金属量との合計量として求めればよい。
【0027】
熱可塑性樹脂の表面に付着している金属含有量は、まず、熱可塑性樹脂の表面を純水で洗浄して、熱可塑性樹脂表面に付着している金属塩などを純水に溶解させる。そして、金属塩などが溶解した溶液の電気伝導度を測定することで、溶液に含まれる金属塩の含有量を算出する。次いで、当該金属塩の含有量から熱可塑性樹脂の表面に付着している金属含有量を測定する。
【0028】
熱可塑性樹脂の内部に混入している金属量は、蛍光X線分析で、熱可塑性樹脂の内部に混入している金属の種類を定性し、かつ当該金属毎に定量する。最後に、熱可塑性樹脂の表面に付着している金属含有量と、熱可塑性樹脂の内部に混入している金属含有量とを合計して、回収材料の金属含有量とすればよい。
【0029】
また、回収材料の溶融粘度の測定と、回収材料の金属含有量の測定とは、同時期にサンプリングされた回収材料に対して行うことが好ましい。
【0030】
選択工程では、測定した溶融粘度および金属含有量から求まる溶融混練時の溶融粘度の低下率(MFR値の増加率)と、再生品の所望の溶融粘度とに基づいて、回収材料を投入する投入口を選択(制御)する。
【0031】
まず、測定工程に先立ち、溶融粘度と、金属含有量と、投入口の位置との関係を示すデータを準備する。溶融粘度と、金属含有量と、投入口の位置との関係を示すデータは、再生品の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度毎に熱可塑性樹脂毎であって、かつ含有されている金属の種類および当該金属含有量毎に準備する。具体的には、金属が含有されていない回収材料の場合には、各熱可塑性樹脂についてデータを準備する。また、各熱可塑性樹脂について、再生品の熱可塑性樹脂組成物の各溶融粘度にデータを準備する。
【0032】
さらに、金属が含有されている回収材料の場合には、含有されている金属の種類および金属の組み合わせ毎にデータを準備する。また、含有金属量毎にもデータを準備する。このように、データを予め準備しておくことにより、回収材料をどの投入口に投入すれば所望の溶融粘度を有する熱可塑性樹脂組成物を得ることができるかが分かる。
【0033】
金属が含まれていない回収材料の溶融粘度の減少率(MFR値の増加率)は、未使用品の溶融粘度の減少率(MFR値の増加率)と同である。一方、金属が含まれている回収材料の溶融粘度の減少率(MFR値の増加率)は、未使用品の溶融粘度の減少率(MFR値の増加率)より大きい。これは、金属が熱可塑性樹脂の劣化を促進するためである。
【0034】
まず、回収材料に金属が含有されていない場合について説明する。
図1は、投入口と吐出口との位置関係を示す押出混練機の模式図である。なお、
図1に示されるように、投入口は、吐出口から離れるにつれて、投入口A、投入口B、投入口Cおよび投入口Dの順番で並んでいる。
図2は、吐出口および投入口の位置関係と、溶融粘度との関係を示す模式的なグラフである。
図2の横軸は、投入口と吐出口との位置関係を示している。すなわち、横軸は、溶融混練する時間を示している。
図2の縦軸は、溶融粘度を示している。
【0035】
前述したように、回収材料の溶融粘度の低下率と、未使用品の溶融粘度の低下率とは同じである。この場合には、回収材料に含まれる熱可塑性樹脂の種類(例えば、PC)と、再生品の溶融粘度とを満たす1つのデータを選択する。そして、測定した回収材料の溶融粘度から、投入すべき投入口を選択する。
【0036】
具体的には、例えば、回収材料の溶融粘度が
図2に示す溶融粘度2であり、未使用品の溶融粘度が
図2に示す溶融粘度3であり、再生品の溶融粘度が
図2に示される溶融粘度1だった場合、投入口Aを投入口として選択する。このように、回収材料の溶融粘度(MFR値)が未使用品の溶融粘度より低い(MFR値より高い)場合には、投入口として吐出口の近くの投入口を選択することにより、溶融混練する時間を短くして、所望の溶融粘度を有する再生品の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
一方、回収材料の溶融粘度が
図2に示す溶融粘度4だった場合には、投入口Cを投入口として選択する。このように、回収材料の溶融粘度(MFR値)が未使用品の溶融粘度より高い(MFR値より低い)場合には、投入口としてより離れた投入口を選択することにより、溶融混練する時間を長くして、所望の溶融粘度を有する再生品の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
次に、含有金属量測定工程において、回収材料から金属が検出された場合、すなわち、回収材料に金属が含有されている場合について説明する。
図3Aは、回収材料が金属を含む場合の選択工程を説明するための模式的なグラフである。
図3Aの横軸は、投入口と吐出口との位置関係を示している。すなわち、横軸は、溶融混練する時間を示している。
図3Aの縦軸は、溶融粘度を示している。
図3AのL1は、金属を含有していない回収材料の溶融粘度の変動を示しており、
図3AのL2は、金属を含有した回収材料の溶融粘度の変動を示しており、
図3AのL3は、L2において再生品の溶融粘度を、金属を含有していない回収材料の溶融粘度に合わせた場合の、金属を含有した回収材料の溶融粘度の変動を示している。
【0039】
金属が含有されている回収材料の溶融粘度の低下率(MFR値の増加率)は、金属が含有されていない回収材料の溶融粘度の低下率(MFR値の増加率)よりも大きい。これは、前述したように、金属が熱可塑性樹脂の劣化を促進してしまうためである。この場合には、回収材料に含まれる熱可塑性樹脂の種類と、含有している金属の種類、各金属の濃度と、再生品の溶融粘度とを満たす1つのデータを選択する。そして、測定した回収材料の溶融粘度から、投入すべき投入口を選択する。
【0040】
より具体的には、たとえば回収材料の溶融粘度が
図2に示す溶融粘度4だった場合において、金属が含有されている回収材料(L2)の溶融粘度の低下率は、金属が含有されていない回収材料(L1)の溶融粘度の低下率よりも、大きい。このように、金属を含有している回収材料(L2)は、金属を含有していない回収材料(L1)と比較して、劣化の速度が速い。よって、金属を含有していない回収材料と同様に、金属を含む回収材料を溶融混練すると、吐出口から吐出された再生品の熱可塑性樹脂は、所望の溶融粘度より低くなってしまう。そこで、金属が含有された回収材料を溶融混練した場合の再生品の溶融粘度を、金属を含有していない熱可塑性樹脂の再生品の溶融粘度に合わせたデータ(L3)を選択する。最後に、当該データに基づいて、投入すべき投入口を選択する。すなわち、この例では、投入口Aを投入口として選択する。
【0041】
次に、回収材料から金属が検出された場合、すなわち、回収材料に金属が含有されている場合における溶融粘度の補正方法について説明する。
図3Bは、回収材料が金属を含む場合の溶融粘度を補正する方法を説明するための模式図なグラフである。
図3Bの横軸は、投入口と吐出口との位置関係を示している。すなわち、横軸は、溶融混練する時間を示している。
図3Bの縦軸は、溶融粘度を示している。
図3BのL1は、金属および金属不活性化剤を含有させた場合の回収材料の溶融粘度の変動を示しており、
図3BのL2は、金属を含有し、金属不活性化剤を含有しない場合の回収材料の溶融粘度の変動を示しており、
図3BのL3は、L2において回収材料の溶融粘度を補正した場合の、回収材料の溶融粘度の変動を示している。
【0042】
前述したように、金属を含有する回収材料の溶融粘度の低下率は、金属を含有していない回収材料の溶融粘度の低下率よりも大きい。この場合、金属不活性化剤を回収材料に含有させることで、金属の熱可塑性樹脂に対する劣化の促進を抑制させることが効果的である。しかしながら、金属を含有している回収材料の溶融粘度(MFR値)は、金属を含有していない未使用の回収材料の溶融粘度より低く(MFR値より高く)測定される傾向がある。そこで、金属が回収材料に含まれている場合には、測定した溶融粘度(MFR値)を補正する必要がある。なお、金属不活性化剤を含有させる工程についての詳細は、後述する。
【0043】
図3Bに示されるように、金属を含まない回収材料の溶融粘度が溶融粘度5だと仮定し、金属を含む回収材料の溶融粘度が溶融粘度4だと仮定する。また、再生品の溶融粘度を溶融粘度1と仮定する。
【0044】
図3Bに示されるように、金属を含有した回収材料の溶融粘度の低下率(L2)は、金属を含有していない回収材料の溶融粘度の低率(L1)よりも大きい。そこで、金属を含有した回収材料に金属不活性化剤を添加して、金属を含有した回収材料の低下率を、金属を含有していない回収材料の溶融粘度の低下率(L1)に補正する。しかしながら、実際の回収材料の溶融粘度は、溶融粘度4ではなく溶融粘度5である。
【0045】
そこで、本実施の形態では、金属が含有された回収材料の溶融粘度が低く測定されてしまうことにより、再生品の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高くなることに考慮して、選択工程において溶融粘度を補正している(L3)。
【0046】
具体的には、回収材料に含有されている金属の種類と、各金属の含有量との組み合わせ毎に、予め溶融粘度の減少値が求められている。そして、当該減少値を相殺するように、測定工程で測定した回収材料の溶融粘度に、減少値を加えることで、金属および金属不活性化剤の影響を抑制している。そして、補正された溶融粘度に基づいて、データを選び、投入口を選択する。前述の例では、投入口Dを投入口として選択する。
【0047】
図4は、回収材料に含まれる金属含有量に応じて金属不活性化剤を添加した場合の、回収材料の溶融粘度と、金属含有量と、選択するべき投入口の位置との関係を模式的に示す図である。
【0048】
図4に示されるように、選択工程では、回収材料に金属が含有され、その金属含有量が高いほど、(金属が含まれていないものよりも)吐出口から遠い投入口を選択する。回収材料に金属が含有されている場合、その回収材料は、溶融粘度測定工程において金属が含有されていない場合に比べて溶融粘度が低く測定されてしまう。しかし、混練工程で金属不活性化剤を添加する場合は、回収材料の溶融混練機への投入時の溶融粘度が溶融粘度測定時よりも高くなるため、選択工程では、吐出口から遠い近い投入口を選択する。また、溶融粘度が高い場合、回収材料の溶融粘度と、製造すべき熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度との差は、大きい。そこで、選択工程では、溶融混練時間を長くする必要があるため、吐出口から遠い投入口を選択する。
【0049】
図4に示されるように、選択工程では、回収材料に金属が含有され、その金属含有量が高いほど、(金属が含まれていないものよりも)吐出口から遠い投入口を選択する。回収材料に金属が含有されている場合、その回収材料は、溶融粘度測定工程において金属が含有されていない場合に比べて溶融粘度が低く測定されてしまう。しかし、混練工程で金属不活性化剤を添加する場合は、回収材料の溶融混練機への投入時の溶融粘度が溶融粘度測定時よりも高くなるため、選択工程では、吐出口から遠い近い投入口を選択する。また、溶融粘度が高い場合、回収材料の溶融粘度と、製造すべき熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度との差は、大きい。そこで、選択工程では、溶融混練時間を長くする必要があるため、吐出口から遠い投入口を選択する。
【0050】
なお、吐出される熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、一定の範囲内に収まるように制御されればよいため、測定工程における溶融粘度および金属含有量と完全に一致するデータがない場合には、一番近いデータを使用する。
【0051】
溶融混練工程では、選択された投入口に回収材料を投入して溶融混練する。なお、前述したように、測定工程は、所定の間隔で行われるため、投入口の選択も所定の間隔で行われる。このように、溶融混練は、投入口を所定の間隔で切り替えることで、回収材料を連続して投入することができるとともに、連続して熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0052】
溶融混練時のシリンダー温度は、回収材料の種類に応じて適宜選択できる。例えば、回収材料に含まれる熱可塑性樹脂がPCの場合のシリンダーの温度は、160~240℃の範囲内である。また、例えば、回収材料に含まれる熱可塑性樹脂がABS樹脂の場合のシリンダーの温度は、140~220℃の範囲内である。
【0053】
また、例えば、
図1に示されるような二軸押出混練機の場合、投入口Dから投入してから吐出口から吐出されるまでの時間は例えば5分間程度であり、投入口Cから投入して吐出口から吐出されるまでの時間は例えば4分30秒間程度であり、投入口Bから投入して吐出口から吐出されるまでの時間は例えば4分間程度であり、投入口Aから投入して吐出口から吐出されるまでの時間は例えば3分30秒間程度である。
【0054】
このようにして、所望の溶融粘度(MFR値)を示す熱可塑性樹脂組成物を連続して得ることができる。
【0055】
また、本実施の一形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、任意の工程として、金属不活性化剤を添加する工程と、添加剤を添加する工程と、冷却工程と、粉砕工程と、成形工程とをさらに含んでいてもよい。
【0056】
金属不活性化剤を添加する工程では、測定工程で測定された金属含有量に応じた量の金属不活性化剤を添加する。なお、金属不活性化剤を投入する投入口は、適宜選択できる。
回収材料および金属不活性化剤は、金属不活性化剤を効率よく作用させる観点から、選択工程で選択された1つの投入口に投入することが好ましい。
【0057】
金属不活性化剤の例には、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドラジド誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体が含まれる。
【0058】
シュウ酸誘導体の例には、オキザロ-ビス-1,2-ヒドロキシベンジリデンヒドラジド(イーストマンインヒビター OABH;Eastman Kodak社)、2,2’-オキサミドビス(エチル3-(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(Naugard XL-1;白石カルシウム株式会社、「Naugard」は同社の登録商標)が含まれる。
【0059】
サリチル酸誘導体の例には、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール(アデカスタブCDA-1;株式会社ADEKA、「アデカスタブ」は同社の登録商標)、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(アデカスタブCDA-6;株式会社ADEKA)、サリチリデンサリチロイルヒドラジン(Chel-180;BASF社)が含まれる。
【0060】
ヒドラジド誘導体の例には、N,N’-ビス((3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル))プロピオノヒドラジド(CDA-10;株式会社ADEKA、Qunox;三井東圧ファイン株式会社、「Qunox」は同社の登録商標)が含まれる。
【0061】
トリアゾール誘導体の例には、ベンゾトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、2-メルカプトベンゾトリアゾール、2,5-ジメルカプトベンゾトリアゾール、4-アルキルベンゾトリアゾール、5-アルキルベンゾトリアゾール、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾトリアゾール、5,5’-メチレンビスベンゾトリアゾール、1-[ジ(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-1,2,4-トリアゾール、1-(1-ブトキシエチル)-1,2,4-トリアゾール、アシル化3-アミノ-1,2,4-トリアゾールが含まれる。
【0062】
イミダゾール誘導体の例には4,4’-メチレンビス(2-ウンデシル-5-メチルイミダゾール、ビス[(N-メチル)イミダゾール-2-イル]カルビノールオクチルエーテルが含まれる。
【0063】
金属不活性化剤は、回収材料中に含まれる金属を不活性化させる観点から、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、金属不活性化剤は、回収材料中に含まれる金属を不活性化させる効果が飽和する観点から、1質量%以下であることが好ましい。
【0064】
添加剤を添加する工程では、測定工程で測定された金属含有量に応じた量の添加剤を添加する。なお、添加剤を投入する投入口は、適宜選択できる。回収材料および添加剤は、添加剤を効率よく作用させる観点から、選択工程で選択された1つの投入口に投入することが好ましい。
【0065】
冷却工程は、吐出口から吐出した熱可塑性樹脂組成物を冷却する工程である。熱可塑性樹脂組成物の冷却方法は、空冷してもよいし、放冷してもよいし、水冷であってもよい。熱可塑性樹脂組成物の冷却方法は、冷却効率の観点から、水冷が好ましい。また、冷却温度後の熱可塑性樹脂組成物の温度も適宜設定できる。例えば、熱可塑性樹脂組成物の冷却温度は、30℃である。
【0066】
粉砕工程は、冷却工程により固化した熱可塑性樹脂組成物を粉砕する工程である。粉砕された熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成形品の原材料に用いることができる。よって、熱可塑性樹脂組成物は、例えば、射出成形の原材料に用いられるように粉砕工程にて粉砕され、適当な大きさのペレットとなる。
【0067】
成形工程は、熱可塑性樹脂組成物を成形型に圧入する工程である。このように、熱可塑性樹脂組成物は、吐出口から吐出されたあと、そのまま成形されてもよい。
【0068】
なお、溶融混練機は、
図1に示されるように、複数の投入口と、一つの吐出口とが1つのバレルで接続された溶融混練機であってもよい。また、一つの投入口と、一つの吐出口とが一つのバレルで接続されており、当該バレルの長さが異なる溶融混練機を複数台使用してもよい。この場合、選択工程において、いずれの溶融練機の投入口かを選択する。なお、バレルの長さをLとする。
【0069】
以下、添付した図面を参照して、熱可塑性樹脂組成物の製造方法についてより具体的に説明する。
図5は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法を模式的に示す図である。本実施の形態では、溶融粘度としてMFR値を測定する場合について説明する。
【0070】
図5に示されるように、回収材料は、熱可塑性樹脂の種類毎に湿式比重選別などによって選別される。次いで、選別された回収材料は、洗浄された後、乾燥される。
【0071】
乾燥された回収材料は、混合器100に送られる。また、乾燥された回収材料の一部は、金属含有量測定装置200およびMFR測定装置300に送られる。
【0072】
金属含有量測定装置200では、回収材料に含まれる金属含有量を測定する。金属含有量測定装置200は、測定された金属含有量に基づいて、金属不活性化剤を添加するか否かを判断し、金属不活性化剤が必要な場合には、金属不活性化剤の添加量に対応した電気信号を金属不活性化剤添加装置400に送信する。
【0073】
金属不活性化剤添加装置400は、受信した電気信号に基づいて、混合器100に金属不活性化剤を添加する。また、必要に応じて、添加剤添加装置500は、各種添加剤を混合器100に添加する。また、金属含有量測定装置200は、投入口切換機600に金属不活性化剤の添加量に対応する電気信号を送信する。一方、金属不活性化剤が不要な場合には、金属不活性化剤が不要の旨に対応した電気信号を投入口切換機600に送信する。
【0074】
また、MFR測定装置300では、回収材料のMFR値を測定する。MFR測定装置300は、投入口切換機600にMFR値に対応する電気信号を送信する。
【0075】
投入口切換機600は、金属含有量測定装置200から受信した電気信号と、MFR測定装置300から受信した電気信号に基づいて、溶融混練時の回収材料に対する溶融粘度および金属含有量による影響を考慮した、溶融粘度および複数の投入口の関係を示すデータを選び出す。そして、投入口切換機600は、当該選び出したデータに基づいて、最適な投入口を選択する。
【0076】
投入口切換機600は、溶融粘度および金属含有量を測定した回収材料が混合器に送られるタイミングで、必要に応じて、金属不活性化剤および添加剤を回収材料に混合する。そして、投入口切換機600は、溶融粘度および金属含有量を測定した回収材料が投入口に送られるタイミングで、投入する投入口を切り替える。
【0077】
選択された投入口に投入された回収材料は、溶融混練機により溶融混練され、吐出口から熱可塑性樹脂組成物として、吐出される。
【0078】
以上の説明から明らかなように、溶融混練機の吐出口から異なる距離にある複数の投入口の少なくともいずれかから、熱可塑性樹脂製の回収材料を投入して、再生された熱可塑性樹脂製の組成物を製造する方法であって、前記回収材料の溶融粘度を測定する工程と、前記回収材料の金属含有量を測定する工程と、測定した前記溶融粘度および前記金属含有量から求まる溶融混練時の溶融粘度の低下率と、再生品の所望の溶融粘度とに基づいて、前記回収材料を投入する前記投入口を選択する工程と、選択された前記投入口に前記回収材料を投入して溶融混練する工程とを含む。よって、上記製造方法によれば、熱可塑性樹脂製品の材料として回収材料を再利用可能な程度に、回収材料の物性のばらつきを十分に低減することができる。
【0079】
また、回収材料に、金属含有量に応じた量の金属不活性化剤を添加する工程をさらに含むことは、金属による熱可塑性樹脂の劣化を抑制する観点からより一層効果的である。
【0080】
また、回収材料および金属不活性化剤を、選択された1つの投入口に投入することは、金属不活性化剤を効果的に作用させる観点からより一層効果的である。
【0081】
また、上記製造方法は、具体的には、PE、PP、PS、ABS樹脂、PC、PETおよびPBTからなる群から選ばれる少なくとも一つの樹脂に好ましく適用することが可能であり、また、回収材料に好ましく適用することが可能である。
【0082】
また、着色剤、難燃剤、滑剤、相溶化剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる一つ以上の添加剤をさらに含有する上記原料樹脂組成物を上記溶融混練機に投入することは、製品の機能性または汎用性を高める観点からより一層効果的である。
【実施例】
【0083】
[熱可塑性樹脂の準備]
熱可塑性樹脂1として、回収されたPCの破砕物を湿式比重選別により選別し、選別した粉砕物を洗浄および乾燥させた粉砕物を準備した。熱可塑性樹脂2として、回収されたABS樹脂の破砕物を湿式比重選別により選別し、選別した粉砕物を洗浄および乾燥させた粉砕物を準備した。
【0084】
[二軸押出混練機の準備]
溶融混練機として、二軸押出混練機(株式会社神戸製鋼所)を準備した。二軸押出混練機は、バレルと、バレルに連結した4つの投入口と、を有している。最も離れた投入口の中心間距離は、バレルの長さの30%の長さとした。
【0085】
[実施例1]
真空乾燥機を用いて熱可塑性樹脂1を80℃、4時間乾燥させた。次いで、二軸押出混練機(HYPERKTX 30;株式会社神戸製鋼所)の投入口から連続して10時間、10kg/時の量で投入して溶融混練した。溶融混練時のシリンダー温度は、270℃とした。
【0086】
一方、5分間隔で投入口に供給すべき熱可塑性樹脂1をサンプリングして、熱可塑性樹脂1のMFR値および金属含有量を測定した。
【0087】
MFRの測定は、JIS-K7210に準拠して行った。より具体的には、MFR値の測定は、メルトインデクサーG-01(株式会社東洋精機製作所)を用いて、測定温度300℃、荷重1.2kg、または荷重1.0kgとして行った。また、MFR値の測定時間は、6分間であった。なお、本実施例では、熱可塑性樹脂1のサンプリング間隔より、MFR値の測定時間が長いため、複数のメルトインデクサーを使用した。
【0088】
熱可塑性樹脂の表面に付着している金属含有量は、まず、熱可塑性樹脂10gを100gの純水に漬けて3分間撹拌し、熱可塑性樹脂表面に付着している金属塩などを純水に溶解させた。そして、金属塩などが溶解した溶液の電気伝導度を電気伝導度計(AS710;アズワン株式会社)で測定することで、溶液に含まれる金属塩の含有量を算出した。そして、当該金属塩の含有量から熱可塑性樹脂の表面に付着している金属含有量を測定した。また、熱可塑性樹脂表面に付着している金属含有量の測定時間は、4分間であった。また、熱可塑性樹脂の内部に混入している金属量は、蛍光X線分析で、熱可塑性樹脂の内部に混入している金属の種類を定性し、かつ当該金属毎に定量した。
【0089】
次いで、サンプリングされた熱可塑性樹脂1のMFR値および金属含有量に基づいて、投入口を制御した。投入口の設定は、予め求めておいた、溶融粘度および金属含有量に応じて選択されたデータに基づいて、投入口を制御した。
【0090】
溶融混練された熱可塑性樹脂1は、吐出口から押し出された後、30℃の水に浸漬されて急冷された。そして、急冷された樹脂組成物1は、ペレタイザーによりペレット状に粉砕された。こうして、ペレット状の樹脂組成物1を得た。なお、熱可塑性樹脂1が二軸押出混練機の投入口から吐出口に到達するまでの所要時間は、約5分間であった。
【0091】
[実施例2]
金属不活性化剤を添加し、当該金属不活性化剤を熱可塑性樹脂と異なる投入口から投入し、MFR値による溶融粘度の補正をしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物2を得た。
【0092】
[実施例3]
当該金属不活性化剤を樹脂組成物と同じ投入口から投入した以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物3を得た。
【0093】
[実施例4]
5質量%の熱可塑性樹脂1を5質量%の顔料(NUBIANBLACK PC-5857;オリヱント化学工業株式会社)に変更した以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物4を得た。
【0094】
[実施例5]
10質量%の熱可塑性樹脂1を10質量%の難燃剤(SPS-100;大塚化学株式会社)に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物5を得た。
【0095】
[実施例6]
熱可塑性樹脂1を熱可塑性樹脂2に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物6を得た。
【0096】
[実施例7]
最も離れた投入口の中心間距離をバレルの長さの10%の長さとした以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物7を得た。
【0097】
[実施例8]
投入口を制御しなかったこと以外は、実施例8と同様にして樹脂組成物8を得た。
【0098】
[実施例9]
投入口を制御せず、MFR値による溶融粘度の補正をしなかったこと以外は、実施例8と同様にして樹脂組成物9を得た。
【0099】
[実施例10]
50質量%の熱可塑性樹脂1を50質量%のバージンPCに変更し、投入口を制御せず、MFR値による溶融粘度を補正せず、金属不活性化剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物10を得た。
【0100】
[実施例11]
投入口を制御せず、金属不活性化剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物11を得た。
【0101】
樹脂組成物の材料と、溶融混練の条件を表1に示す。
【0102】
【0103】
[評価]
(1)MFR測定
得られたペレット状の樹脂組成物1~11のそれぞれのMFR値を、「JIS K7210」に準拠して、サンプリングした回収材料のMFR値と同様に測定した。そして、下記式に基づいて樹脂組成物1~11のそれぞれのMFR値のばらつきXMFR(%)を下記式より求め、下記評価基準により評価した。
(式)XMFR(%)=(MRmax-MRmin)/{(MOmax+MOmin)/2}×100
【0104】
上記式中、「MRmax」は樹脂組成物のMFRの最大値(g/10分)を表し、「MRmin」は樹脂組成物のMFRの最小値(g/10分)を表し、「MOmax」はサンプリングした回収材料のMFRの最大値(g/10分)を表し、「MOmin」はサンプリングした回収材料のMFRの最小値(g/10分)を表す。
【0105】
(評価基準)
◎:XMFRが3.0%未満
○:XMFRが3.0%以上7.5%未満
△:XMFRが7.5%以上10.0%未満
×:XMFRが10.0%以上
「◎」、「○」および「△」であれば実用上問題ないと判断できる。
【0106】
(2)引張り試験
ペレット状の樹脂組成物1~11のそれぞれを80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J55ELII)によって、シリンダー設定温度を230℃とし、金型温度を50℃として成形し、「JIS K7161」で規定されている所定の形状を有する(ダンベル型の)試験片を得た。
【0107】
樹脂組成物1~11のそれぞれの試験片を用いて、「JIS K7161」に準拠して引張り試験を実施した。そして、樹脂組成物1~11のそれぞれの引張り強度のばらつき具合XTS(%)を下記式より求め、下記評価基準により評価した。
(式)XTS(%)=(TRmax-TRmin)/{(TOmax+TOmin)/2}×100
【0108】
上記式中、「TRmax」は樹脂組成物の引張り強度の最大値(MPa)を表し、「TRmin」は樹脂組成物の引張り強度の最小値(MPa)を表し、「TOmax」はサンプリングした回収材料の引張り強度の最大値(MPa)を表し、「TOmin」はサンプリングした廃材の引張り強度の最小値(MPa)を表す。
【0109】
(評価基準)
◎:XTSが5.0%未満
○:XTSが5.0%以上10.0%未満
△:XTSが10.0%以上15.0%未満
×:XTSが15.0%以上
「◎」、「○」および「△」であれば実用上問題ないと判断できる。
【0110】
(3)衝撃試験
樹脂組成物1~11のそれぞれの試験片を用いて、「JIS K7110」に準拠して衝撃試験を実施した。そして、樹脂組成物1~11のそれぞれの衝撃強度ばらつき具合XIS(%)を下記式より求め、下記評価基準により評価した。
(式)XIS(%)=(IRmax-IRmin)/{(IOmax+IOmin)/2}×100
【0111】
上記式中、「IRmax」は樹脂組成物の衝撃強度の最大値(kJ/m2)を表し、「IRmin」は樹脂組成物の衝撃強度の最小値(kJ/m2)を表し、「IOmax」は回収材料の衝撃強度の最大値(kJ/m2)を表し、「IOmin」は廃材の衝撃強度の最小値(kJ/m2)を表す。
【0112】
(評価基準)
◎:XISが5.0%未満
○:XISが5.0%以上10.0%未満
△:XISが10.0%以上15.0%未満
×:XTSが15.0%以上
「◎」、「○」および「△」であれば実用上問題ないと判断できる。
【0113】
結果を表2に示す。
【0114】
【0115】
表2に示されるように、測定した回収材料の溶融粘度および金属含有量に基づいて投入口を制御して、溶融混練を行った、樹脂組成物1~11では、溶融粘度、引張り試験および衝撃試験のいずれの結果も優れていた。これは、測定した回収材料の溶融粘度および金属含有量に基づいて投入口を制御したため、適切に溶融混練できたことによると考えられる。特に、添加剤を添加していない樹脂組成物1~3、6は、溶融粘度、引張り試験および衝撃試験のいずれの結果がよりばらつきが少なかった。これは、添加剤が含有されていないため、データと熱可塑性樹脂の溶融混練時の挙動が近いためだったと考えられる。
【0116】
一方、金属不活性化剤を添加し、投入口を制御しなかった樹脂組成物8と、金属不活性化剤を添加し、投入口を制御したが、粘度補正を行わなかった樹脂組成物9とは、MFR値および衝撃性試験の結果がばらついていた。これらは、投入口を適切に制御しなかったため、MFR値が高くなってしまったためと考えられる。また、金属不活性化剤を含有させず、投入口を制御しなかった樹脂組成物10では、衝撃試験の結果のみがばらついていた。これは、樹脂組成物の半分がバージンPCだったためと考えられる。さらに、金属不活性化剤を含有させず、投入口を制御しなかった樹脂組成物11では、溶融粘度、引張り試験および衝撃試験のいずれの結果もばらついていた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
前述の製造方法によれば、回収材料の再利用や、所期の物性から外れた物性を有する新規樹脂材料の有効活用など、樹脂材料の有効活用の拡充が期待される。よって、当該製造方法によれば、樹脂組成物およびそれを材料とする製品における生産性のさらなる向上と、当該樹脂組成物および製品の製造に伴う環境への負荷のさらなる低減との両立が期待される。
【符号の説明】
【0118】
100 混合器
200 金属含有量測定装置
300 MFR測定装置
400 金属不活性化剤添加装置
500 添加剤添加装置
600 投入口切換機