(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】接触端子、検査治具、及び検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20220216BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 D
(21)【出願番号】P 2017178801
(22)【出願日】2017-09-19
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100143373
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲宏
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-024664(JP,A)
【文献】特開2015-141200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0239355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体と、
導電性を有する素材により棒状に形成された中心導体とを備え、
当該中心導体は、前記筒状体に挿入された状態で設置される棒状本体と、前記筒状体の外部に突出した状態で設置される先端側接続部とを有し、
前記棒状本体と前記先端側接続部との間には、
前記棒状本体の軸心と直交する幅方向に前記棒状本体の外径よりも大きな幅寸法を有
し、前記軸心及び前記幅方向と直交する厚み方向に前記棒状本体の外径よりも小さな厚みを有する板状形状の第一広幅部と第二広幅部とが形成され、
前記第一広幅部が筒状体内に圧入され、
前記中心導体の軸方から見て、前記第一広幅部の幅方向と前記第二広幅部の幅方向とが、80°~100°の角度で互いに交差するように配列されている接触端子。
【請求項2】
前記筒状体は、その軸方向に伸縮する螺旋状のばね部を有している請求項1記載の接触端子。
【請求項3】
前記第一広幅部の幅寸法が、前記筒状体の内径よりも大きく形成され、
前記第二広幅部の幅寸法が、前記第一広幅部の幅寸法よりも大きく形成されている請求項1または2記載の接触端子。
【請求項4】
前記第二広幅部の基端部が、前記筒状体の筒状体の一端面に当接した状態で係止されている請求項1~
3のいずれか1項に記載の接触端子。
【請求項5】
前記筒状体の一端部には、その軸方向に延びる左右一対のスリットが形成され、
当該スリット内に前記
第二広幅部の両側辺部が挿入されている請求項1~
3のいずれか1項に記載の接触端子。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の接触端子と、
前記接触端子を支持する支持部材とを備える検査治具。
【請求項7】
請求項
6記載の検査治具と、
前記接触端子を検査対象に設けられた被検査点に接触させることにより得られる電気信号に基づき、前記検査対象の検査を行う検査処理部とを備える検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の検査に使用される接触端子、この接触端子を検査対象に接触させるための検査治具、及びその検査治具を備えた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中間位置にばね部が形成された筒状体(円筒部材)に円柱状の中心導体(棒状部材)が挿通された検査装置用の接触端子、及びこの接触端子を用いた検査治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この接触端子は、筒状体から中心導体の先端部を突出させた状態で、筒状体の一端付近に中心導体の本体部が溶着、又はカシメ加工される等により固着されている。これにより、筒状体の他端部が電極部に接触し、中心導体の先端部が検査対象に当接した状態となると、ばね部の弾性復元力に応じて、筒状体の他端部が電極部側に付勢されるとともに、中心導体の先端部が検査対象側に付勢されて、電極部及び検査対象に対する接触端子の接触状態が安定化されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の検査治具には、極細径の接触端子が多数設置され、この接触端子を構成する中心導体(小径の導電部)が、ばね部を有する筒状体に溶着、又はカシメ加工される等により、固着されるように構成されているため、この固着作業が極めて煩雑である。すなわち、ユーザーが、例えば1mm以下の直径を有する極細径の筒状体内に中心導体の本体部を挿入した後、筒状体の軸部を圧縮してカシメ加工する等の煩雑な固着作業を行わなければならないため、接触端子を容易かつ適正に製造することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、容易かつ適正に製造することが可能な接触端子、検査治具、及び検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接触端子は、導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体と、導電性を有する素材により棒状に形成された中心導体とを備え、当該中心導体は、前記筒状体に挿入された状態で設置される棒状本体と、前記筒状体の外部に突出した状態で設置される先端側接続部とを有し、前記棒状本体の外径よりも大きな幅寸法を有する第一広幅部と、第二広幅部とが形成され、前記第一広幅部が筒状体内に圧入されている。
【0007】
この構成によれば、ユーザーが棒状本体を筒状体内に挿入するとともに、中心導体の第一広幅部を筒状体内に圧入するだけで、筒状体と中心導体とが一体に連結された接触端子を製造することができる。したがって、従来技術のように極細径の筒状体に中心導体を溶着、又はカシメ加工する等の煩雑な等の煩雑な固着作業を要することなく接触端子を容易かつ適正に製造することができる。
【0008】
また、前記筒状体は、その軸方向に伸縮する螺旋状のばね部を有していることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、前記接触端子を用いて基板等の検査を行う際に、筒状体のばね部を弾性変形させることにより、その復元力に応じて、接触端子の一端部を検査対象の被検査点に適正圧で圧接させることができる。また、接触端子の他端部を電極に適正圧で圧接させることができるという利点がある。
【0010】
また、前記第一広幅部の幅寸法が、前記筒状体の内径よりも大きく、かつ前記筒状体の外径よりも小さく形成され、前記第二広幅部の幅寸法が、前記筒状体の第一広幅部の幅寸法よりも大きく形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ユーザーが、筒状体内に棒状本体を挿入するとともに、第一広幅部を筒状体内に圧入することにより、筒状体と中心導体とが一体に連結された接触端子を容易に組み立てることができる。しかも、第二広幅部の基端部が筒状体の一端面に当接した時点で、筒状体と中心導体との連結が完了したことをユーザーに認識させることができる。
【0012】
また、前記中心導体の軸方から見て、前記第一広幅部の幅方向と第二広幅部の幅方向とが互いに直交するように配列されている構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、第一広幅部が筒状体に圧入されるのに応じ、第一広幅部の幅方向における筒状体の内径が第一広幅部により押し広げられるとともに、その反作用で第一広幅部の板厚方向における筒状体の内径が窄められる。このため、ユーザーが、第一広幅部を筒状体内に圧入した際に、第二広幅部の基端部が筒状体の一端面に当接して、筒状体と中心導体との連結が完了したことを確実に認識することができる。
【0014】
また、前記第二広幅部の基端部が、前記筒状体の一端面に当接した状態で係止されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、筒状体と中心導体との連結状態を安定して維持することができる。しかも、第二広幅部の基端部を基準として、筒状体の外方に突出した先端側接続部の突出量を一定値に規制できるという利点もある。
【0016】
また、前記筒状体の一端部には、その軸方向に延びる左右一対のスリットが形成され、当該スリットに前記広幅部の両側辺部が挿入されている構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、ユーザーが、棒状本体を筒状体内に挿入するとともに、中心導体の第一広幅部を筒状体内に圧入し、かつ筒状体のスリットに広幅部の両側辺部を挿入することにより、筒状体と中心導体とが一体に連結された接触端子を容易かつ適正に製造することができる。
【0018】
また、本発明に係る検査治具は、上述の接触端子と、これを支持する支持部材とを備える。
【0019】
この構成によれば、半導体素子等からなる検査対象の検査に使用する検査治具を容易かつ適正に製造することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る検査装置は、上述の検査治具と、前記接触端子を検査対象に設けられた被検査点に接触させることにより得られる電気信号に基づき、前記検査対象の検査を行う検査処理部とを備える。
【0021】
この構成によれば、検査対象の検査に使用する検査装置を容易かつ適正に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
このような構成の接触端子、検査治具及び検査装置は、これらを容易かつ適正に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る接触端子及び検査治具を備えた基板検査装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す検査装置に設けられた検査部の別の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1、
図2に示す検査治具の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図5】接触端子を筒状体と中心導体とに分解した構成を示す斜視図である。
【
図6】接触端子を筒状体と中心導体とに分解した構成を示す側面図である。
【
図7】接触端子に設けられた第一広幅部及び第二広幅部の具体的構造を示す平面図である。
【
図8】検査対象に接触端子の端部が圧接された検査状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る接触端子の構成を示す分解斜視図である。
【
図10】
図9に示す接触端子の組立状態を示す一部切欠き平面図である。
【
図12】本発明の第三実施形態に係る接触端子の構成を示す分解斜視図である。
【
図13】
図12に示す接触端子の組立状態を示す斜視図である。
【
図14】
図13に示す接触端子を支持部材に支持させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第一実施形態)
【0025】
図1は、本発明の第一実施形態に係る接触端子及び検査治具を備えた基板検査装置1の構成を概略的に示す概念図である。基板検査装置1は検査装置の一例に相当している。
図1に示す基板検査装置1は、検査対象の一例である基板101に形成された回路パターンを検査するための装置である。
【0026】
基板101は、例えばプリント配線基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、半導体基板、及び半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板であってもよい。なお、検査対象は、基板に限らず、例えば半導体素子(IC:Integrated Circuit)等の電子部品であってもよく、その他にも電気的な検査を行う対象となるものであればよい。
【0027】
図1に示す基板検査装置1は、検査部4U,4Dと、基板固定装置6と、検査処理部8とを備えている。基板固定装置6は、検査対象の基板101を所定の位置に固定するように構成されている。検査部4U,4Dは、検査治具3U,3Dを備えている。検査部4U,4Dは、図略の駆動機構によって、検査治具3U,3Dを、互いに直交するX,Y,Zの三軸方向に移動可能に支持し、さらに検査治具3U,3Dを、Z軸を中心に回動可能に支持している。
【0028】
検査部4Uは、基板固定装置6に固定された基板101の上方に位置する。検査部4Dは、基板固定装置6に固定された基板101の下方に位置する。検査部4U,4Dには、基板101に形成された回路パターンを検査するための検査治具3U,3Dが着脱可能に配設されている。検査部4U,4Dは、それぞれ、検査治具3U,3Dと接続されるコネクタ41を備えている。以下、検査部4U,4Dを総称して検査部4と称する。
【0029】
検査治具3U,3Dは、それぞれ、複数のプローブPr(接触端子)と、各プローブPrを支持する支持部材31と、ベースプレート321とを備えている。プローブPrは接触端子の一例に相当している。ベースプレート321には、各プローブPrの基端部と接触して導通する後述の電極が設けられている。検査部4U,4Dは、ベースプレート321に設けられた各電極を介して各プローブPrの後端を、検査処理部8と電気的に接続したり、その接続を切り替えたりする図略の接続回路を備えている。
【0030】
プローブPrは、全体として略棒状の形状を有し、その具体的な構成の詳細については後述する。支持部材31には、各プローブPrを支持する複数の貫通孔が形成されている。各貫通孔は、検査対象となる基板101の配線パターン上に設定された被検査点の位置と対応するように配置されることにより、各プローブPrの先端部が基板101の被検査点に接触するように構成されている。例えば、複数のプローブPrは、格子の交点位置に対応するように配設されている。当該格子の桟に相当する方向が、互いに直交するX軸方向及びY軸方向と一致するように向けられている。被検査点は、例えば基板101のはんだバンプ、配線パターン、接続端子等からなっている。
【0031】
検査治具3U,3Dは、プローブPrの配置が異なる点と、検査部4U,4Dへの取り付け方向が上下逆である点を除き、互いに同様に構成されている。以下、検査治具3U,3Dを総称して検査治具3と称する。検査治具3は、検査対象となる基板101の種類に応じて取り替え可能に構成されている。
【0032】
検査処理部8は、例えば電源回路、電圧計、電流計、及びマイクロコンピュータ等を備えている。検査処理部8は、図略の駆動機構を制御して検査部4U,4Dを移動、位置決めし、基板101の各被検査点に、各プローブPrを接触させる。これにより、各被検査点と、検査処理部8とが電気的に接続される。
【0033】
この状態で、検査処理部8は、検査治具3の各プローブPrを介して基板101の各被検査点に検査用の電流又は電圧を供給し、各プローブPrから得られた電圧信号又は電流信号に基づき、例えば回路パターンの断線や短絡等の基板101の検査を実行する。あるいは、検査処理部8は、交流の電流又は電圧を各被検査点に供給することによって各プローブPrから得られた電圧信号又は電流信号に基づき、検査対象のインピーダンスを測定するものであってもよい。
【0034】
図2は、
図1に示す基板検査装置1に設けられた検査部4の別の一例を示す斜視図である。
図2に示す検査部4aは、いわゆるICソケット35に検査治具3が組み込まれて構成されている。検査部4aは、検査部4のような駆動機構を備えず、ICソケット35に取り付けられたICのピン、バンプ、あるいは電極等にプローブPrが接触する構成とされている。
図1に示す検査部4U,4Dの代わりに検査部4aを設けることで、検査対象を、例えば半導体素子(IC)とし、検査装置をIC検査装置として構成することができる。
【0035】
図3は、
図1に示す支持部材31及びベースプレート321を備えた検査治具3の構成の一例を示す断面図である。
図3に示す支持部材31は、例えば板状の支持プレート31a,31b,31cが積層されることにより構成されている。
図3の上方側に位置する支持プレート31aが支持部材31の前端側となり、
図3の下方側に位置する支持プレート31cが支持部材31の後端側となるように配設されている。そして、支持プレート31a,31b,31cを貫通するように、複数の貫通孔Hが形成されている。
【0036】
支持プレート31b及び支持プレート31cには、所定径の開口孔からなる挿通孔部Haがそれぞれ形成されている。また、支持プレート31aには、挿通孔部Haよりも小径の貫通孔からなる小径部Hbが、検査対象である基板101の被検査点と対向する部位に形成されている。そして、支持プレート31aの小径部Hbと、支持プレート31b及び支持プレート31cの挿通孔部Haとが連通されることにより、プローブPrの設置部となる貫通孔Hが形成されている。
【0037】
なお、支持部材31は、板状の支持プレート31a,31b,31cが積層されて構成される例に限らず、例えば一体の部材に、小径部Hb及び挿通孔部Haからなる貫通孔Hが設けられた構成としてもよい。また、支持部材31の支持プレート31b,31cを互いに積層した例に代え、支持プレート31bと支持プレート31cとを互いに離間させた状態で、例えば支柱等により連結した構成としてもよい。
【0038】
支持プレート31cの後端側には、例えば絶縁性の樹脂材料により構成されたベースプレート321が取り付けられ、このベースプレート321により貫通孔Hの後端側開口部、つまり挿通孔部Haの後端面が閉塞されている。ベースプレート321には、貫通孔Hの後端側開口部に対向する位置において、ベースプレート321を貫通するように配線34が取り付けられている。支持プレート31cに対向するベースプレート321の前面と、配線34の端面とが面一になるように設定されている。この配線34の端面が、電極34aとされている。
【0039】
支持部材31の各貫通孔Hに挿入されて支持されるプローブPrは、導電性を有する素材により円筒状等に形成された筒状体Paと、導電性を有する素材により断面円形の棒状に形成された中心導体Pbとを備えている。
【0040】
図4は、プローブPrからなる接触端子の具体的構成を示す斜視図であり、
図5は、プローブPrを筒状体Paと中心導体Pbとに分解した状態を示す斜視図であり、
図6は、プローブPrを筒状体Paと中心導体Pbとに分解した状態を示す平面図、
図7は、中心導体Pbに設けられた第一広幅部Pc1及び第二広幅部Pc2の具体的構造を示す平面図である。
【0041】
筒状体Paとしては、例えば約25~300μmの外径と、約10~250μmの内径とを有するニッケルあるいはニッケル合金のチューブを用いて形成することができる。例えば、筒状体Paの外径Dを約120μm、内径を約100μm、全長を約1700μmとすることができる。また、筒状体Paの内周には、金メッキ等のメッキ層を施し、かつ筒状体Paの周面を、必要に応じて絶縁被覆した構造としてもよい。
【0042】
筒状体Paの両端部を除く軸方向の中央部分には、筒状体Paの軸方向に伸縮する螺旋状のばね部Pa3が所定長さに亘って形成されている。例えば、図示を省略したレーザ加工機から筒状体Paの周壁にレーザ光が照射されて、螺旋溝Pa4が形成されることにより、筒状体Paの周面に沿って螺旋状に延びる螺旋状体からなるばね部Pa3が構成される。
【0043】
なお、筒状体Paの周壁を例えばエッチングして螺旋溝Pa4を形成することにより、螺旋状体からなるばね部Pa3を設けてもよい。また、例えば電鋳により筒状体Paの周壁に螺旋溝Pa4を形成することによっても、ばね部Pa3を設けることができる。
【0044】
図4~
図7に示すように、中心導体Pbは、筒状体Pa内に挿入された状態で設置される断面円形の棒状本体Pb1と、筒状体Paの外部に突出した状態で設置される断面円形の先端側接続部Pb2とを有している。棒状本体Pb1は、その外径が筒状体Paの内径よりもやや小さい値に設定されることにより、筒状体Pa内に挿入可能に構成されている。
【0045】
棒状本体Pb1と先端側接続部Pb2との間には、棒状本体Pb1よりも大きな幅寸法を有する第一広幅部Pc1と第二広幅部Pc2とが形成されている。これらの第一広幅部Pc1及び第二広幅部Pc2は、例えば中心導体Pbを構成する棒状体が、
図6の左右方向、つまり
図7の紙面と直交する方向に鍛圧される等により、棒状本体Pb1よりも薄肉かつ幅広に形成されている。
【0046】
第一広幅部Pc1と第二広幅部Pc2とは、その幅方向が中心導体Pbの軸方から見て同方向に配列されている。また、第一広幅部Pc1及び第二広幅部Pc2間には、棒状本体Pb1と同一の直径を有する断面円形の連結部Pdが配設されている。
【0047】
第一広幅部Pc1の軸方向の両端部には、第一広幅部Pc1に近づくのに従って板厚が徐々に小さくなるとともに、幅寸法が徐々に大きくなるように形状が変化するテーパ状部Pc11,Pc12がそれぞれ設けられている。また、第二広幅部Pc2の軸方向の両端部には、第二広幅部Pc2に近づくのに従って板厚が徐々に小さくなるとともに、幅寸法が徐々に大きくなるように形状が変化するテーパ状部Pc21,Pc22がそれぞれ設けられている。
【0048】
図7に示すように、中心導体Pbに設けられた第一広幅部Pc1及び第二広幅部Pc2のうち、棒状本体Pb1側に位置する第一広幅部Pc1は、その幅寸法w1が筒状体Paの内径dよりもやや大きく、かつ筒状体Paの外径Dよりも小さく形成されている。これにより、棒状本体Pb1を筒状体Pa内に挿入してプローブPrを組み立てる際に、第一広幅部Pc1が筒状体Paの一端部内に圧入されるように構成されている。
【0049】
一方、先端側接続部Pb2に位置する第二広幅部Pc2は、その幅寸法w2が、第一広幅部Pc1の幅寸法w1よりも大きい値、当実施形態では筒状体Paの外径Dよりもやや大きい値に設定されている。そして、棒状本体Pb1を筒状体Pa内に挿入してプローブPrを組み立てる際に、第二広幅部Pc2の基端部、つまり第一広幅部Pc1側に位置するテーパ状部Pc21が筒状体Paの一端面に当接した状態で係止されるようになっている。
【0050】
図6に示すように、筒状体Paに対する中心導体Pbの挿入長さつまり、棒状本体Pb1の全長L1と、第一広幅部Pc1の軸方向長さL2と、連結部Pdの軸方向長さL3との合計長さ(L1+L2+L3)は、筒状体Paの自然長α1よりも短い値に設定されている。これにより、中心導体Pbの棒状本体Pb1及び第一広幅部Pc1が筒状体Pa内に挿入された際に、棒状本体Pb1の基端面が筒状体Pa内に位置するようになっている。
【0051】
上述の構成において、
図4に示すように、棒状本体Pb1が筒状体Pa内に挿入されるとともに、第一広幅部Pc1が筒状体Pa内に圧入され、かつ第二広幅部Pc2のテーパ状部Pc21が筒状体Paの一端面に当接した状態で係止されることにより、筒状体Paと中心導体Pbとが一体に連結されたプローブPrが組み立てられることになる。
【0052】
また、第二広幅部Pc2の幅寸法w2は、支持部材31に形成された挿通孔部Haの内径よりも小さく形成され、
図3に示すように、プローブPrの筒状体Pa及び第二広幅部Pc2が挿通孔部Ha内に配設されて、支持部材31に支持されるように構成されている。さらに、第二広幅部Pc2の幅寸法w2が、支持プレート31aに形成された小径部Hbの内径よりも大きく形成されることにより、プローブPrを支持部材31に支持させた際に、中心導体Pbが支持部材31から抜け落ちることが防止されるようになっている。
【0053】
中心導体Pbの先端側接続部Pb2は、その直径が支持プレート31aに設けられた小径部Hbの内径よりも小さく形成されることより、小径部Hbに挿通可能に構成されている。また、プローブPrを支持部材31に支持させた状態で、先端側接続部Pb2の先端面が支持プレート31aの小径部Hbから支持部材31の外方に突出した状態となるように、先端側接続部Pb2の全長が、支持プレート31aの板厚よりも大きく形成されている。そして、後述する基板101等の検査時に、先端側接続部Pb2の先端面が、はんだバンプBP等からなる検査対象の被検査点に当接するように構成されている。
【0054】
支持プレート31b,31cの合計厚さ、すなわち
図3に示す支持プレート31aの後端側面と、ベースプレート321の前端側面との間隔βは、筒状体Paを圧縮させる負荷が作用していないときの
図6に示す自然長α1と、第二広幅部Pc2の軸方向長さα2との合計値(α1+α2)よりわずかに短くされている。
【0055】
これにより、挿通孔部Ha内に配設された筒状体Pa及び第二広幅部Pc2は、支持プレート31cとベースプレート321とで挟まれてやや圧縮された状態となる。そして、筒状体Paに設けられたばね部Pa3の復元力により、筒状体Paの一端部が支持プレート31aに当接し、筒状体Paの他端部が電極34aに当接した状態となるように構成されている。
【0056】
この結果、筒状体Paと電極34aとが導通接触した状態となり、筒状体Paが配線34を介して基板検査装置1の検査回路に電気的に接続される。また、筒状体Paと中心導体Pbとが導通接続されることにより、プローブPrの一端面、つまり中心導体Pbの先端面が、検査対象の基板101の被検査点に当接して、この被検査点を検査回路に電気的に接続することが可能となる。
【0057】
図8は、プローブPrの一端面が基板101の被検査点に圧接された状態を示す説明図である。被検査点は、例えばはんだバンプBP、配線パターン、接続端子等である。検査部4が基板101に対して位置決めされ、検査治具3が基板101に対して圧接されると、プローブPrの一端面が被検査点に圧接される。そうすると、プローブPrの先端部が他端部側に押圧され、筒状体Paのばね部Pa3が圧縮されて変形することにより、筒状体Paの一端部が支持部材31の後端側に押し込まれる。これに応じて発生したばね部Pa3の復元力により、プローブPrの一端面が被検査点に弾性的に圧接された状態となって、プローブPrと被検査点との接触安定性が向上する。
【0058】
このように、本発明に係る接触端子(プローブPr)は、導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体Paと、導電性を有する素材により棒状に形成された中心導体Pbとを備え、中心導体Pbが、筒状体Paに挿入された状態で設置される棒状本体Pb1と、筒状体Paの外部に突出した状態で設置される先端側接続部Pb2とを有している。そして、棒状本体Pb1と先端側接続部Pb2との間には、棒状本体Pb1の外径よりも大きな幅寸法を有する第一広幅部Pc1と第二広幅部Pc2とが形成され、第一広幅部Pc1が筒状体Pa内に圧入されるように構成されているため、基板101等の検査に使用するプローブPr、このプローブPrを用いた検査治具、及び検査装置を容易かつ適正に製造することができる。
【0059】
すなわち、上述の第一実施形態では、第一広幅部Pc1の幅寸法w1が、筒状体Paの内径dよりも大きく、筒状体Paの外径Dよりも小さく形成されることにより、ユーザーが棒状本体Pb1を筒状体Pa内に挿入する際に、第一広幅部Pc1が筒状体Pa内に圧入されるようになっている。このため、ユーザーが、筒状体Pa内に棒状本体Pb1を挿入するとともに、第一広幅部Pc1を筒状体Pa内に圧入するだけで、筒状体Paと中心導体Pbとが一体に連結されたプローブPrを容易に組み立てることができる。したがって、特許文献1に開示された従来技術のように、極細径の筒状体に中心導体を溶着、又はカシメ加工する等の煩雑な等の煩雑な固着作業を要することなく、筒状体Paと中心導体PbとからなるプローブPrを容易かつ適正に製造することができる。
【0060】
一方、第二広幅部Pc2の幅寸法w2は、第一広幅部Pc1の幅寸法w1よりも大きい寸法、上述の第一実施形態では、筒状体Paの外径よりも大きい寸法に形成されている。このため、ユーザーがさらに大きな力を加えないと、第二広幅部Pc2を筒状体Pa内に押し込むことができない。したがって、第二広幅部Pc2の基端部が筒状体Paの一端面に当接した時点で、筒状体Paと中心導体Pbとの連結が完了したことをユーザーが認識することができる。
【0061】
また、第二広幅部Pcの基端部が、筒状体Paの一端面に当接した状態で係止されるように構成した場合には、筒状体Paと中心導体Pbとの連結状態を安定して維持することができる。しかも、第二広幅部Pc2の基端部を基準として、筒状体Paの外方に突出した先端側接続部Pb2の突出量を一定値に規制できるという利点がある。
【0062】
なお、上述の実施形態では、第一広幅部Pc1の幅寸法w1が、筒状体Paの内径dよりも大きく、筒状体Paの外径Dよりも小さく形成された例について説明したが、第一広幅部Pc1の幅寸法w1と筒状体Paの内径dとが略同一の値に設定されることにより、第一広幅部Pc1が筒状体Pa内に圧入されるようにしてもよい。
【0063】
第一広幅部Pc1の幅寸法w1は、筒状体Paの外径Dよりもやや大きい値であってもよい。そして、ユーザーが、第一広幅部Pc1を筒状体Pa内に圧入する際に、筒状体Paの一端部が所定の大きさに広げられることにより、第一広幅部Pc1が筒状体Pa内に圧入されるようにしてもよい。
【0064】
また、第二広幅部Pc2の幅寸法w2は、筒状体Paの外径Dよりも大きい寸法である必要はなく、第一広幅部Pc1の幅寸法w1よりも大きい寸法で、かつ筒状体Paの外径Dよりもやや小さい寸法であってもよい。
【0065】
上述の実施形態に示すように、筒状体Paが、その軸方向に伸縮する螺旋状のばね部Pa3を有する構成とした場合には、基板101等の検査を行う際に、筒状体Paのばね部Pa3を弾性変形させることにより、その復元力に応じて、先端側接続部Pb2の先端面からなるプローブPrの一端面を検査対象の被検査点に適正圧で圧接させることができる。しかも、筒状体Paの他端部、及び中心導体Pbの基端部等からなるプローブPrの他端面を電極34aに適正圧で圧接させることができるという利点がある。
【0066】
なお、上述の第一実施形態に代え、それぞれが第一広幅部Pc1及び第二広幅部Pc2を有する二本の中心導体を備え、その一方が筒状体Paの一端部側に連結されるとともに、両中心導体の他方が筒状体Paの他端部側に連結された構成とすることもできる。そして、両中心導体の一方を、はんだバンプBP等からなる検査対象の被検査点に圧接させるとともに、両中心導体の他方を電極34aに圧接させた状態で検査対象の検査を行うように構成してもよい。
(第二実施形態)
【0067】
図9は、本発明の第二実施形態に係るプローブPr2からなる接触端子の構成を示す分解斜視図であり、
図10は、第一広幅部Pc10を筒状体Pa内に圧入した状態を示す部分断面図、
図11は、
図10のXI-XI線断面図である。
【0068】
第二実施形態に係るプローブPr2では、中心導体Pbの軸方から見て、第一広幅部Pc10の幅方向と第二広幅部Pc20の幅方向とが互いに直交するように配列されている点で、第一広幅部Pc1の幅方向と第二広幅部Pc2の幅方向とが同方向に配列された第一実施形態と異なっている。
【0069】
第一広幅部Pc10の幅寸法が、筒状体Paの内径よりも大きく、かつ筒状体Paの外径よりも小さく形成される等により、ユーザーが、棒状本体Pb1を筒状体Pa内に挿入してプローブPr2を組み立てる際に、第一広幅部Pc10が筒状体Pa内に圧入されるように構成されている。そして、第一広幅部Pc10が筒状体Pa内に圧入されるのに応じ、
図11の上下方向における筒状体Paの内径が第一広幅部Pc10により押し広げられるとともに、その反作用で
図11の左右方向における筒状体Paの内径が窄められるようになっている。
【0070】
このため、第一広幅部Pc10の幅寸法w2と筒状体Paの内径との差が大きくなり、第一広幅部Pc10の基端部が筒状体Paに一端面に係止され易くなる。したがって、必ずしも第二広幅部Pc20の幅寸法w2を、第一広幅部Pc10の幅寸法w2よりも大きく形成する必要はなく、第一広幅部Pc10の幅寸法w1と、第二広幅部Pc20の幅寸法w2とを同一の値に設定した場合においても、第一広幅部Pc10を筒状体Pa内に圧入した際に、第二広幅部Pc20の基端部を筒状体Paの一端面に当接させた状態で係止させることができる。
【0071】
上述のように第一広幅部Pc10の幅寸法w1と、第二広幅部Pc20の幅寸法w2とを同一の値に設定した場合には、例えば中心導体Pbを鍛圧する等により第一広幅部Pc10及び第二広幅部Pc20を形成する際に、中心導体Pbの鍛圧量を変化させることなく、その鍛圧方向を変化させるだけで、第一広幅部Pc10及び第二広幅部Pc20を容易に形成することができる。
【0072】
なお、第一広幅部Pc10の幅方向と第二広幅部Pc20の幅方向とは、中心導体Pbの軸方から見て、正確に直交するように配列されている必要はなく、例えば直角から10°程度ずれた角度で配列されていてもよい。また、第一広幅部Pc10と第二広幅部Pc20との間に、必ずしも連結部Pdを設け必要はなく、これを省略して、第一広幅部Pc10と第二広幅部Pc20とが連設された構造としてもよい。
(第三実施形態)
【0073】
図12は、本発明の第三実施形態に係る接触端子(プローブPr3)を筒状体Paと中心導体Pbとに分解した構成を示す斜視図、
図13は、
図12に示すプローブPr3の組立状態を示す斜視図、
図14は、
図13に示すプローブPr3を支持部材31に支持させた状態を示す断面図である。
【0074】
第三実施形態に係るプローブPr3では、筒状体Paの軸方向に延びる左右一対のスリットPaSが筒状体Paの一端部に形成され、このスリットPaSに第二広幅部Pc2の両側辺部が挿入されるように構成されている点で、第一実施形態及び第二実施形態と異なっている。
【0075】
スリットPaSのスリット幅は、第二広幅部Pc2の板厚と同一か、あるいは第二広幅部Pc2に板厚よりもやや大きい値に設定されことにより、第二広幅部Pc2の両側辺部がスリットPaSに対して容易に挿入されるようになっている。
【0076】
また、テーパ状部Pc21,Pc22を含む第二広幅部Pc2の全長lは、スリットPaSの軸方向長さLよりも短く形成されている。このため、第二広幅部Pc2は、その長さ方向の全体がスリットPaS内に挿入されることになる。
【0077】
上述の構成において、ユーザーが、棒状本体Pa1を筒状体Pa内に挿入するとともに、第一広幅部Pc2を筒状体Pa内に圧入する際に、筒状体PaのスリットPaSに第二広幅部Pc2の両側辺部を挿入することにより、筒状体Paと中心導体Pbとが一体に連結されたプローブPr3を製造することができる。
【0078】
そして、
図14に示すように、プローブPr3が支持部材31の貫通孔H内に設置された場合には、支持プレート31aの後端面(
図14では下方側の面)に筒状体Paの一端部が当接した状態となる。このため、第二広幅部Pcの先端部側に位置するテーパ状部Pc22が支持プレート31aの小径部Hb内に食い込んだ状態となることが防止され、小径部Hbが変形するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0079】
なお、当第三実施形態においても、第二実施形態のプローブPr2と同様に、中心導体Pbの軸方から見て、第一広幅部Pc1の幅方向と第二広幅部Pc2の幅方向とが互いに直交するように配列された構成としてもよい。また、筒状体Paの他端部側にも、同様の構成を有するスリットPaSを設けた構造として、筒状体Paを上下対称に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 基板検査装置
3,3U,4D 検査治具
8 検査処理部
31 支持部材
34 配線
34a 電極
101 基板(検査対象)
BP はんだバンプ(被検査点)
Pa 筒状体
Pa3 ばね部
Pa4 螺旋溝
PaS スリット
Pb 中心導体
Pb1 棒状本体
Pb2 先端側接続部
Pc1,Pc10 第一広幅部
Pc2,Pc20 第二広幅部
Pr プローブ(接触端子)