(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
F25B 47/02 20060101AFI20220216BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20220216BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
F25B47/02 550A
B60H1/00 101Z
B60H1/32 623A
F25B47/02 550Q
(21)【出願番号】P 2017202741
(22)【出願日】2017-10-19
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591150797
【氏名又は名称】株式会社デンソーエアクール
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】多田 均
(72)【発明者】
【氏名】有元 誠
(72)【発明者】
【氏名】富岡 史朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 大祐
【審査官】飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/168971(WO,A1)
【文献】特開2003-106712(JP,A)
【文献】特開2006-116981(JP,A)
【文献】特開平05-149604(JP,A)
【文献】特開2015-230115(JP,A)
【文献】特開2006-335117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00- 7/00,13/00,47/02
B60H 1/00- 3/06
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(5)に搭載されて、それぞれヒートポンプサイクル(10)を有して車室内(51)に対して空調空気を提供する複数の空調ユニット(2A,2B,2C,2D)と、
複数の前記空調ユニットのそれぞれについて冷房運転、暖房運転、および除霜運転を実施可能に制御する制御装置(3)と、
を備え、
前記制御装置は、前記除霜運転の実施中に、前記除霜運転を実施する前記空調ユニット以外の前記空調ユニットについては暖房運転を実施
し、
複数の前記空調ユニットには、
第1空調ユニット(2A)と、
前記車両の前後方向において前記第1空調ユニットに並べられた第2空調ユニット(2B)と、
前記車両の幅方向において前記第1空調ユニットに並べられた第3空調ユニット(2C)と、
前記前後方向において前記第3空調ユニットに並べられ且つ前記幅方向において前記第2空調ユニットに並べられた第4空調ユニット(2D)と、
が含まれており、
さらに、前記制御装置は、前記第1空調ユニット及び前記第4空調ユニットを第1セットとし、前記第2空調ユニット及び前記第3空調ユニットを第2セットとして、複数の前記空調ユニットが有する複数の圧縮機(11)のうち共振が発生し得る所定の回転数条件を満たす前記圧縮機がある場合に、前記第1セット及び前記第2セットのうち一方に含まれる各空調ユニットにおいて前記圧縮機の回転数が増加するように、且つ他方に含まれる各空調ユニットにおいて前記圧縮機の回転数が低減するように制御する車両用空調装置。
【請求項2】
複数の前記空調ユニットは、大型車両に搭載されている請求項
1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
複数の前記空調ユニットは、燃料電池車に搭載されている請求項
1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
複数の前記空調ユニットは、電気自動車に搭載されている請求項
1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
複数の前記空調ユニットは、ハイブリッド車両に搭載されている請求項
1に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記車両は、複数の前記空調ユニット、燃料電池(500)及び水素収容タンク(501)が前記車両の屋根に設けられた燃料電池車であり、
複数の前記空調ユニットは、前記車両の前後方向において前記燃料電池と前記水素収容タンクとの間に設けられている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
複数の前記空調ユニットは、各グループについて空調空気を互いに混合させてから前記車室内に提供するように設けられた2つ以上のグループ(4A,4B)に分類されており、
前記制御装置は、前記各グループにおいて前記除霜運転を実施中である前記空調ユニット以外の前記空調ユニットについては暖房運転を実施する請求項1
から請求項6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
2つ以上の前記グループは、それぞれ前記車室内において異なる場所に空調空気を提供するように設けられている請求項
7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
複数の前記空調ユニットは、空調空気を互いに混合させてから前記車室内の一方側領域に提供する第1グループ(4A)と、空調空気を互いに混合させてから前記車室内の他方側領域に提供する第2グループ(4B)とに分類されており、
前記制御装置は、前記第1グループと前記第2グループのそれぞれにおいて前記除霜運転を実施中である前記空調ユニット以外の前記空調ユニットについては暖房運転を実施する請求項
7に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記制御装置は、複数の前記空調ユニットが有する熱交換器のうち着霜条件が成立した前記熱交換器がある場合に、前記着霜条件が成立した前記熱交換器を備える前記空調ユニットについて前記除霜運転を実施するとともに、前記除霜運転を実施する前記空調ユニットと同じ前記グループに属する他の前記空調ユニットについては圧縮機(11)による冷媒吐出量を増加させて前記暖房運転を実施する請求項
7または請求項
8に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記制御装置は、複数の前記空調ユニットが有する熱交換器のうち着霜条件が成立した前記熱交換器がある場合に、前記暖房運転を継続し、所定の遅延時間が経過後、前記暖房運転から前記除霜運転に切り換える請求項
7から請求項
9のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記制御装置は、複数の前記空調ユニットが有する複数の圧縮機(11)のうち共振が発生し得る所定の回転数条件を満たす前記圧縮機がある場合に、前記回転数条件を満たす前記圧縮機の回転数と、前記回転数条件を満たす前記圧縮機と同じ前記グループに属する他の前記圧縮機の回転数とをずらすように制御する請求項
7から請求項
11のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、ヒートポンプサイクルを有する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内の冷暖房を行う装置として、バス等の車両の屋根に設置する屋根搭載ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載する装置の場合には、冷媒の流れを逆転して室内熱交換器をコンデンサとして機能させることで暖房運転を可能にしている。この暖房運転中に室外熱交換器に着霜した場合に霜を除去する除霜運転を実施することに関して特許文献1には記載されていない。除霜運転を行う場合、車室内に提供する暖房出力が大きく低下することが懸念される。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、車両用空調装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
この明細書における開示の目的は、熱交換器の除霜を行いつつ暖房出力低下の抑制を図る車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された車両用空調装置のひとつは、車両(5)に搭載されて、それぞれヒートポンプサイクル(10)を有して車室内(51)に対して空調空気を提供する複数の空調ユニット(2A,2B,2C,2D)と、複数の空調ユニットのそれぞれについて冷房運転、暖房運転、および除霜運転を実施可能に制御する制御装置(3)とを備え、制御装置は、除霜運転の実施中に、除霜運転を実施する空調ユニット以外の空調ユニットについては暖房運転を実施し、
複数の空調ユニットとして、
第1空調ユニット(2A)と、
車両の前後方向において第1空調ユニットに並べられた第2空調ユニット(2B)と、
車両の幅方向において第1空調ユニットに並べられた第3空調ユニット(2C)と、
前後方向において第3空調ユニットに並べられ且つ幅方向において第2空調ユニットに並べられた第4空調ユニット(2D)と、
が設けられており、
さらに、制御装置は、第1空調ユニット及び第4空調ユニットを第1セットとし、第2空調ユニット及び第3空調ユニットを第2セットとして、複数の空調ユニットが有する複数の圧縮機(11)のうち共振が発生し得る所定の回転数条件を満たす圧縮機がある場合に、第1セット及び第2セットのうち一方に含まれる各空調ユニットにおいて圧縮機の回転数が増加するように、且つ他方に含まれる各空調ユニットにおいて圧縮機の回転数が低減するように制御する。
【0008】
この車両用空調装置によれば、複数の空調ユニットのうち、除霜を行う必要のある空調ユニットに対して除霜を実施できるとともに、他の空調ユニットについて暖房運転を実施することで除霜運転による車室内への空調温度の低下を抑えた空調を提供できる。したがって、この車両用空調装置によれば、熱交換器の除霜を実施でき、かつ暖房出力低下の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の車両用空調装置が備えるヒートポンプサイクルにおける冷房運転時の冷媒流れを示した図である。
【
図2】第1実施形態のヒートポンプサイクルにおける暖房運転時の冷媒流れを示した図である。
【
図3】第1実施形態のヒートポンプサイクルにおける除霜運転時の冷媒流れを示した図である。
【
図4】第1実施形態のヒートポンプサイクルに関する制御構成図である。
【
図5】第1実施形態の車両用空調装置が備える複数の空調ユニットに関する制御構成図である。
【
図6】複数の空調ユニットを車両の屋根に設置した状態を示した図である。
【
図7】複数の空調ユニットについてカバーを取り外した状態を示した図である。
【
図8】車両用空調装置、送風ダクトおよび車両を示した側面図である。
【
図9】カバーを取り外した状態の複数の空調ユニット、送風ダクトおよび車両の屋根を示した図である。
【
図10】第1実施形態の車両用空調装置が実行する制御を示したフローチャートである。
【
図11】第2実施形態の車両用空調装置が実行する制御を示したフローチャートである。
【
図12】車両における車両用空調装置と送風ダクトの位置について、他の形態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態の車両用空調装置4について、
図1~
図10を参照して説明する。車両用空調装置4は、複数の空調ユニットを有し、車両の車室内を空調する装置である。車両用空調装置4を搭載する車両は、新幹線電車、特急電車等の各種の鉄道車両、バス等の大型車両、特殊車両等の各種の道路通行車両に適用することができる。大型車両は人や動物を運搬可能な車両である。これらの車両は、電気エネルギを走行用の駆動力に変換する車両、ガソリン、軽油、天然ガス等の化石燃料やバイオマス燃料を走行用の駆動力に変換する車両を含んでいる。例えば、この車両は電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド自動車、ガソリン車、ディーゼル車、天然ガス車等に適用することができる。明細書に開示の目的を達成する車両用空調装置の一例として第1実施形態では、燃料電池を備えたバス車両に搭載する複数の空調ユニットを有する車両用空調装置4について説明する。
【0012】
車両用空調装置4は複数の空調ユニットを有し、各空調ユニットで発生した空調風を車室内に提供する。複数の空調ユニットのそれぞれは、同様の構成である。各空調ユニットは、
図1~
図3に示すようなヒートポンプサイクル10を備えている。ヒートポンプサイクル10は冷暖房可能な冷媒回路を有している。ヒートポンプサイクル10は、圧縮機11と四方弁12と室外熱交換器13と固定絞り装置14と室内熱交換器15とアキュムレータ16とを備え、これらを順次、配管により接続して構成される閉サイクルの冷媒回路18を備えている。
【0013】
ヒートポンプサイクル10は、室外熱交換器13と固定絞り装置14とを連結する通路から分岐してアキュムレータ16の流入部に至るバイパス通路180と、バイパス通路180を開閉可能な電磁弁17とを備えている。電磁弁17は、除霜運転を行う流路に切り換え可能な第2流路切換装置の一例である。バイパス通路180は、冷媒回路18において固定絞り装置14に接続されている通路に対して、非常に大きい通路断面積となるように設定されている。この構成により、電磁弁17が開状態であるときには、室外熱交換器13を流出した冷媒はバイパス通路180を流れてアキュムレータ16に流入し、室内熱交換器15にはほとんど流れない。
【0014】
圧縮機11は、モータに通電されることにより、冷媒を圧縮する圧縮機構部を駆動する電動式の圧縮機である。圧縮機11は、吸入部がアキュムレータ16の流出部に連結されており、流出部が四方弁12に連結されている。圧縮機11と四方弁12を連結する通路を形成する配管には、冷媒の圧力を検出する圧力センサ181が設置されている。アキュムレータ16は、ヒートポンプサイクル10における、気相冷媒と液相冷媒とを分離する気液分離装置の一例である。アキュムレータ16は、例えば室内熱交換器15でガス化しきれなかった冷媒が液状のまま圧縮機11に吸入されることを防ぐ機能を果たしている。
【0015】
四方弁12は、冷媒が流れる流路を、冷房運転を実施する冷媒流路と暖房運転を実施する冷媒流路と除霜運転を実施する冷媒流路とにわたって切り換えることができる第1流路切換装置に含まれる一形態である。四方弁12は、圧縮機11の流出部に連結される圧縮機側通路と、室外熱交換器13、室内熱交換器15およびアキュムレータ16の流入部のそれぞれが連結される通路と、これらの通路のうち連通関係となる通路を選択可能に切り換え可能な切換部とを備えている。四方弁12を形成するハウジングにおいて、圧縮機側通路は一方側部に設けられており、室外熱交換器13、室内熱交換器15およびアキュムレータ16の流入部のそれぞれが連結される通路は一方側部とは反対側に位置する他方側部に設けられている。切換部はハウジングの内部に設置されている。四方弁12と室外熱交換器13を連結する通路を形成する配管には、冷媒の温度を検出する配管温度センサ182が設置されている。四方弁12と電磁弁17とは、冷媒流路を切り換えて、暖房運転と冷房運転と除霜運転とにわたって切り換えることができる流路切換装置の一形態である。
【0016】
室外熱交換器13には、外気を通風する室外ファン131が付設されている。室外ファン131によって送風される外気は、室外熱交換器13の熱交換コア部を流通する冷媒と熱交換する。室外熱交換器13よりも空気流れの上流側には、外気温度を検出する外気温度センサ183が設置されている。固定絞り装置14は、あらかじめ設定された開度を有しており、高圧冷媒を減圧膨張する減圧装置の一例である。冷媒回路18を流通する冷媒は、固定絞り装置14によって減圧された状態で室内熱交換器15に流入する。固定絞り装置14は、キャピラリチューブで構成してもよいし、開度が調整可能な電子式膨張弁に置き換えてもよい。
【0017】
室内熱交換器15には、室内熱交換器15の熱交換コア部を通過した空気を車室内51に向けて送風する室内ファン151が付設されている。室内ファン151によって送風される空気は、室内熱交換器15の熱交換コア部を流通する冷媒と熱交換する。室内熱交換器15よりも空気流れの下流側には、車室内51に送風される空気の温度を検出する吹出し温度センサ184が設置されている。
【0018】
図4は各空調ユニットに関する制御構成図である。空調操作部40は、乗員等のユーザが操作可能な空調装置の強制運転指令スイッチ、自動運転スイッチ等を備えている。ユーザが強制運転指令スイッチを操作すると、操作に応じた運転指令信号が制御装置3の入力部30に入力され、制御装置3は暖房運転または冷房運転を実行するための機器を運転する。
【0019】
ユーザが自動運転スイッチを操作すると、自動運転指令信号が制御装置3の入力部30に入力され、制御装置3は、設定温度に応じて暖房運転または冷房運転を実行するとともに、後述する
図10に示すフローチャートにしたがった制御を実行する。制御装置3は、圧力センサ181、配管温度センサ182、外気温度センサ183および吹出し温度センサ184の各検出値や所定のプログラムや制御テーブルを用いた判定処理を行い、
図10に示す除霜運転時の制御を実行する。
【0020】
ヒートポンプサイクルを有する空調ユニットを用いて車室内の空調を行う車両用空調装置の場合、熱交換器を除霜する除霜運転を実施すると、車室内への空調吹き出し温度が除霜運転によって大きく低下してしまうという課題がある。この実施形態の車両用空調装置4は
図10に示す除霜運転時の制御を実行することにより、この課題を解決することができる。
【0021】
制御装置3は、制御出力部32に接続された、圧縮機11、四方弁12、電磁弁17、室外ファン131、室内ファン151等の制御対象部品について運転状態を制御する電子式の制御装置である。制御装置3は、制御対象部品の作動を制御するハードウェアおよびソフトウェアを有する。制御装置3は、プログラムに従って動作するマイコンのようなデバイスを主なハードウェア要素として備える。
【0022】
制御装置3は、制御対象部品、空調操作部40および各種センサ部と通信するインターフェース部と、演算処理部31と、記憶部とを少なくとも備えている。記憶部は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。演算処理部31は、演算処理装置であり、インターフェース部を通して空調操作部40や各種センサ部から取得した情報と、記憶部に記憶された制御特性マップやデータとを用いて所定のプログラムにしたがった判定処理や演算処理を行う。演算処理部31は、制御装置3における演算実行部であり判定処理実行部である。インターフェース部は、演算処理部31による判定結果、演算結果に基づいて制御対象部品を作動させる。したがって、インターフェース部は、制御装置3における入力部30および制御出力部32である。
【0023】
車両用空調装置4は、
図5に示すように、車両5に搭載されて、それぞれヒートポンプサイクル10を有して車室内51に対して空調空気を提供する4個の空調ユニット2A,2B,2C,2Dを備えている。制御装置3は、前述したように、4個の空調ユニット2A,2B,2C,2Dのそれぞれの運転状態を制御する。
【0024】
車両用空調装置4は、車室内51に対して冷房風を提供する冷房運転を実施する場合、
図1に示す冷媒流れに制御する。制御装置3は、四方弁12の切換部を以下に示す状態に制御する。四方弁12は、圧縮機11の流出部に通じる通路と室外熱交換器13に通じる通路とを連結し、室内熱交換器15に通じる通路とアキュムレータ16の流入部に通じる通路とを連結する流路を形成するように制御される。制御装置3は、電磁弁17を閉状態に制御し、設定温度を満たす冷房吹き出し温度になるように圧縮機11、室外ファン131、室内ファン151をそれぞれ運転する。これにより、圧縮機11と室外熱交換器13と固定絞り装置14と室内熱交換器15とアキュムレータ16とがこの順に配管を介して接続される冷房用の冷媒回路が形成されることになる。この冷媒回路では、室外熱交換器13は凝縮器として機能し、室内熱交換器15は蒸発器として機能する。室内ファン151の吸引力により室内取入口54から取り込まれた車室内51の空気は、室内熱交換器15に送風されて冷媒との熱交換により冷却された後、吹出口53から送風ダクト52内の送風通路520を通じて送られ複数の室内吹出口から車室内51の各所に冷房風として吹き出す。
【0025】
車両用空調装置4は、車室内51に対して暖房風を提供する暖房運転を実施する場合、
図2に示す冷媒流れに制御する。制御装置3は、四方弁12の切換部を以下に示す状態に制御する。四方弁12は、圧縮機11の流出部に通じる通路と室内熱交換器15に通じる通路とを連結し、室外熱交換器13に通じる通路とアキュムレータ16の流入部に通じる通路とを連結する流路を形成するように制御される。制御装置3は、電磁弁17を閉状態に制御し、設定温度を満たす暖房吹き出し温度になるように圧縮機11、室外ファン131、室内ファン151をそれぞれ運転する。これにより、圧縮機11と室内熱交換器15と固定絞り装置14と室外熱交換器13とアキュムレータ16とがこの順に配管を介して接続される暖房用の冷媒回路が形成されることになる。この冷媒回路では、室内熱交換器15は凝縮器として機能し、室外熱交換器13は蒸発器として機能する。室内ファン151の吸引力により室内取入口54から取り込まれた車室内51の空気は、室内熱交換器15に送風されて冷媒との熱交換により加熱された後、吹出口53から送風ダクト52内の送風通路520を通じて送られ複数の室内吹出口から車室内51の各所に暖房風として吹き出す。
【0026】
車両用空調装置4は、室外熱交換器13に着霜して、除霜する除霜運転を実施する場合には、該当する室外熱交換器13を有するヒートポンプサイクル10において
図3に示す冷媒流れに制御する。制御装置3は、四方弁12の切換部を以下に示す状態に制御する。四方弁12は、冷房運転時と同様に、圧縮機11の流出部に通じる通路と室内熱交換器15に通じる通路とを連結し、室内熱交換器15に通じる通路とアキュムレータ16の流入部に通じる通路とを連結する流路を形成するように制御される。制御装置3は、電磁弁17を開状態に制御し、圧縮機11を運転し、室内ファン151を停止する。制御装置3は、室内ファン151を運転するように制御してもよい。これにより、圧縮機11と室外熱交換器13と電磁弁17とアキュムレータ16とがこの順に配管を介して接続される除霜用の冷媒回路が形成されることになる。この冷媒回路では、室外熱交換器13は放熱器として機能する。また、前述したように、バイパス通路180に対して固定絞り装置14側の通路の流通抵抗が大きいため、室外熱交換器13を流出した冷媒はほとんどバイパス通路180を流れてアキュムレータ16に流入する。制御装置3は、除霜運転を行う必要のない他のヒートポンプサイクル10については前述した暖房運転を継続する。
【0027】
次に、複数の空調ユニットの関係について
図6~
図9を参照して説明する。車両用空調装置4は、同様の構成である2個の空調ユニットをバスの屋根に前後方向に並べたグループを、車両5の車幅方向に2個並べて設置した構成であり、4個の空調ユニット2A~2Dを有している。
図6に示すように、4個の空調ユニット2A~2Dは、第1グループ4Aと第2グループ4Bとに分類されている。第1グループ4Aは空調ユニット2Aと空調ユニット2Bとを有している。第2グループ4Bは空調ユニット2Cと空調ユニット2Dとを有している。
【0028】
図6、
図7に示すように、各空調ユニットは、室内側ユニットと室外側ユニットとに大きく分けられている。室外側ユニットは、開閉自在なカバーを有し、各空調ユニットにおいて室内側ユニットよりも前側また後側に隣接して設置されている。室外側ユニットは、室外熱交換器13、室外ファン131、圧縮機11、四方弁12、固定絞り装置14、アキュムレータ16、電磁弁17、これらに接続されている配管等を含んで構成されている。室外側ユニットは、車両5の屋根に固定された架台に設置されている。室外側ユニットでは、室外熱交換器13の凝縮熱等を放出するために室外ファン131によって外気を取り込んで熱交換後、車外に排出する。
【0029】
車幅方向に並んで設置されている空調ユニット2Aと空調ユニット2Cは、室外側ユニットが室内側ユニットよりも前側に設置されている。車幅方向に並んで設置されている空調ユニット2Bと空調ユニット2Dは、室外側ユニットが室内側ユニットよりも後側に設置され、車両の前後方向に並んで設置されている、空調ユニット2Aと空調ユニット2B、空調ユニット2Cと空調ユニット2Dは、それぞれの室内側ユニットが隣接して設置されている。
【0030】
室内側ユニットは、開閉自在なカバーを有する室内側ケース内にそれぞれ収納されている。室内側ユニットは、車両5の屋根に固定されたベース部に設置されている。室外側ユニットが設置されている架台とベース部とは、別体の部材であってもよいし、一体である同一の部材で構成してもよい。室内側ユニットは、室内熱交換器15、室内ファン151、これらに接続されている配管等を含んで構成されている。
【0031】
各室内側ユニットにおいて室内熱交換器15と室内ファン151は、車両幅方向に並んで設置されている。室内熱交換器15は、室内ファン151よりも車両幅方向について外側に設置されている。室内熱交換器15は、熱交換コア部が上下方向および車両5の前後方向に平行な通風面を形成するような姿勢で設置されている。室内取入口54は、車室内51に連通する開口部であり、室内熱交換器15よりも車両幅方向について車両中央側に設置されている。室内ファン151は、ファンの回転軸方向に空気を吸い込む吸込み部を有してファンの遠心方向に吹き出す遠心式のファンを有する。
【0032】
各空調ユニットには、2個の室内ファンが前後方向に並んで設けられている。空調空気を吹き出す吹出口53は、各室内ファン151の吹出し部に接続されており、送風ダクト52に接続されて送風通路520に連通している。したがって、各室内ファン151の吸引力によって室内取入口54を通じて上方に取り出された車室内51の空気は、室内熱交換器15の熱交換コア部に対して直交する方向に流れて冷媒と熱交換される。熱交換コア部を通過後の空調空気は、室内ファン151の吸込み部に吸い込まれて、下方に向けて吹出口53から吹き出され、送風ダクト52内で他の吹出口53から吹き出された空気と混合して温調される。このように温調された空気は、車室内51においてバス車両の前後方向に伸長するように送風ダクト52における天井側の車幅方向両側部位や車室内天井部付近の各室内吹出口から車室内全体に向けて送風される。
【0033】
図8に示すように、複数の空調ユニット2A~2Dは、燃料電池500と水素収容タンク501とが搭載された燃料電池車に設置されている。複数の空調ユニット2A~2Dは、燃料電池車が備える二次電池から供給される電力を使用して空調運転を行うように構成されている。したがって車両用空調装置4は、二次電池に蓄電された電力を、圧縮機11、四方弁12、電磁弁17、室外ファン131、室内ファン151等の運転のために使用して、冷房運転、暖房運転、除霜運転等を実施する。
【0034】
複数の空調ユニット2A~2Dは、車両5の屋根または屋根内において前後方向について燃料電池500と水素収容タンク501との間に位置するように設置されている。複数の空調ユニット2A~2Dは、その天部の位置が燃料電池500と水素収容タンク501よりも低くなるように設置されている。複数の空調ユニット2A~2Dの上下方向の寸法は、その天部の位置が燃料電池500と水素収容タンク501よりも低くなるように設定されている。
【0035】
図9に示すように、空調ユニット2Aと空調ユニット2Bのそれぞれの吹出口53から吹き出された空調風は、送風ダクト52内で互いに混合させてから、車室内51において一方側領域である、前方に向かって右側領域に配された各室内吹出口から車室内51に提供される。空調ユニット2Aと空調ユニット2Bのそれぞれの吹出口53から吹き出された空調風は、送風ダクト52内で互いに混合させてから、車室内51において他方側領域である、前方に向かって左側領域に配された各室内吹出口から車室内51に提供される。このように同じグループに属する空調ユニットは、それぞれが吹き出した空調空気を混合させてから車室内51に提供するように構成されている。さらに異なるグループに属する空調ユニットは、それぞれが吹き出した空調空気を車室内51において異なる場所に提供するように構成されている。
【0036】
車両用空調装置4が実施する制御処理の一例を
図10のフローチャートにしたがって説明する。車両用空調装置4の制御装置3は、空調操作部40の強制運転指令スイッチまたは自動運転スイッチが操作されることによって運転指令が入力部30に入力されると、
図10に示すフローチャートの各ステップにおける処理を順に実行し、これらのステップを反復処理する。
図10のフローチャートに示す処理に係る制御プログラムは、制御装置3の記憶部に記憶されている。
【0037】
まず、制御装置3は、ステップS10で、車両用空調装置4が備えるすべての室外熱交換器13について、着霜条件が成立するか否かを判定する。着霜条件は、室外熱交換器13に霜が付着する状態または霜の付着が予測される状態であると判定すると成立する。室外熱交換器13に着霜すると室外熱交換器13における熱交換性能が低下して車室内51への空調出力が損なわれるため、この状態を解消するためにステップS10の判定処理を繰り返し実行している。ステップS10で着霜条件が成立していないと判定している間は、空調操作部40からの運転指令に基づいた暖房運転または冷房運転を継続して実施する。
【0038】
ステップS10では、例えば、外気温度センサ183が検出する外気温度と配管温度センサ182が検出する冷媒温度との温度差が基準値以上である場合は着霜条件が成立すると判定する。この温度差が基準値を下回る場合は着霜条件が成立しないと判定し、この判定処理を繰り返し実行する。基準値は、霜が付着する状態または霜の付着が予測される状態における、実験で求めた温度差であり、あらかじめ定められている。着霜条件が成立する場合は、チューブやフィン等の表面温度が氷点を下回ることで外気中の水分が凝固する場合であるので、通常は暖房運転中であることが想定できる。したがって、
図2に示す冷媒流れである場合であって室外熱交換器13が蒸発器として機能するので、配管温度センサ182が検出する冷媒温度は室外熱交換器13において外気との熱交換を行った後の冷媒温度になる。冷媒温度は、熱交換コア部のフィンの温度を代用してもよい。このようにステップS10では、外気温度と、冷媒温度、配管温度、フィン温度のいずれかとを用いて判定することができる。
【0039】
演算処理部31は、ステップS10で、着霜条件が成立すると判定すると、次のステップS20で所定時間が経過した否かを判定する。この所定時間は、着霜条件が成立したときから除霜運転を開始するまでの遅延時間として設定されている。すなわち、ステップS20で所定時間が経過したと判定するまでは除霜運転に移行しない。このように着霜条件が成立しても除霜運転を遅らせることにより、暖房運転をできるだけ継続して車室内51への暖房出力の低下を遅らせることができる。
【0040】
ステップS20で所定時間が経過したと判定すると、制御装置3は、ステップS30で、除霜条件が成立した室外熱交換器13を有する空調ユニット以外の他の空調ユニットについて暖房出力を増加させる処理を実行する。例えば、制御装置3は、除霜運転を行わない空調ユニットについて圧縮機11の冷媒吐出量を増加させるように回転数等を制御して、当該空調ユニットの暖房出力を増加させる。制御装置3は、ステップS40で、除霜条件が成立した室外熱交換器13を有する空調ユニットについて除霜運転を実施する。制御装置3は、
図3を参照して前述したように、四方弁12を制御し、電磁弁17を開状態に制御し、圧縮機11を運転し、室内ファン151を停止する。ステップS30、ステップS40の処理により、除霜運転を実施する空調ユニットと同じグループに属する他の空調ユニットは暖房運転を継続するため、車室内51において同じ領域に送風される空調温度が除霜運転によって大きく低下することを回避できる。
【0041】
ステップS30、ステップS40の処理は、演算処理部31がステップS50で除霜終了条件が成立したと判定するまで継続する。除霜終了条件は、例えば、除霜運転を実施している空調ユニットにおいて配管温度センサ182によって検出された冷媒温度があらかじめ定めた閾値以上になると成立するように設定することができ、制御装置3は除霜運転の必要がない状態であるとみなす。また、除霜終了条件は、あらかじめ定めた除霜運転時間が経過すると成立するように設定してもよい。また、除霜終了条件は、あらかじめ定めた除霜運転時間が経過する前であっても、除霜運転を実施している空調ユニットにおいて配管温度センサ182によって検出された冷媒温度があらかじめ定めた閾値以上になった場合に成立するように設定してもよい。演算処理部31がステップS50で除霜終了条件が成立したと判定すると、制御装置3はステップS60で除霜運転を終了して除霜運転から暖房運転に変更するように空調ユニットを制御し、再びステップS10に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
【0042】
次に、第1実施形態の車両用空調装置4がもたらす作用、効果について説明する。車両用空調装置4は、車両5に搭載されてそれぞれヒートポンプサイクル10を有して車室内51に対して空調空気を提供する複数の空調ユニットと、各空調ユニットについて冷房運転、暖房運転、および除霜運転を実施可能に制御する制御装置3とを備える。制御装置3は、除霜運転の実施中に、除霜運転を実施する空調ユニット以外の空調ユニットについては暖房運転を実施する(ステップS30、ステップS40)。
【0043】
この車両用空調装置4によれば、複数の空調ユニットのうち、除霜を行う必要のある空調ユニットに対して除霜を実施できるとともに、他の空調ユニットについて暖房運転を実施することで除霜運転による車室内51への空調温度の低下を抑えた空調を提供できる。したがって、この車両用空調装置4によれば、熱交換器の除霜を実施でき、かつ暖房出力低下の抑制を図ることができる。
【0044】
複数の空調ユニットは、各グループについて空調空気を互いに混合させてから車室内51に提供するように設けられた2つ以上のグループに分類されている。制御装置3は、各グループにおいて除霜運転を実施中である空調ユニット以外の空調ユニットについては暖房運転を実施する。これによれば、除霜運転を実施する空調ユニットと同じグループに属する他の空調ユニットについては暖房運転を継続する。これにより、除霜運転を実施する空調ユニットによる暖房出力の低下を、車室内51において同じ領域に送風する他の空調ユニットの暖房出力が補うため、この領域に送風される吹き出し温度が大きく低下することを回避する車両用空調装置4を提供できる。
【0045】
2つ以上のグループは、それぞれ車室内51において異なる場所に空調空気を提供するように設けられている。これによれば、車室内51において異なる場所に提供される吹き出し温度が大きく低下することを回避できるので、車室内51の広い範囲にわたって除霜運転時の暖房感を改善することができる。
【0046】
複数の空調ユニットは、空調空気を互いに混合させてから車室内51の一方側領域に提供する第1グループ4Aと、空調空気を互いに混合させてから車室内51の他方側領域に提供する第2グループ4Bとに分類されている。制御装置3は、第1グループ4Aと第2グループ4Bのそれぞれにおいて除霜運転を実施中である空調ユニット以外の空調ユニットについては暖房運転を実施する。これによれば、車室内51において一方側部と他方側部とに提供される吹き出し温度が大きく低下することを回避できるので、車室内51の広い範囲にわたって除霜運転時の暖房感を改善することができる。
【0047】
制御装置3は、複数の空調ユニットが有する熱交換器のうち着霜条件が成立した熱交換器がある場合に、着霜条件が成立した熱交換器を備える空調ユニットについて除霜運転を実施する(ステップS40)。さらに制御装置3は、除霜運転を実施する空調ユニットと同じグループに属する他の空調ユニットについては圧縮機11による冷媒吐出量を増加させて暖房運転を実施する(ステップS30)。この制御によれば、除霜運転時に他の空調ユニットが実施する暖房運転を暖房出力を大きくして実施するため、除霜運転による車室内51への吹き出し温度の低下をさらに抑えることが可能な空調を提供できる。
【0048】
制御装置3は、複数の空調ユニットが有する熱交換器のうち着霜条件が成立した熱交換器がある場合に、暖房運転を継続し、所定の遅延時間が経過後、暖房運転から除霜運転に切り換える(ステップS10~ステップS40)。この制御によれば、着霜条件が成立したときに即座に除霜運転を実施せずに暖房運転を継続することができるので、暖房運転を長く実施でき、車室内51の乗員に対する暖房感をできるだけ長く提供する車両用空調装置を提供できる。
【0049】
複数の空調ユニットは燃料電池車に搭載されていることが好ましい。燃料電池車に搭載された車両用空調装置4によれば、除霜運転による車室内51への空調温度の低下を抑えた空調を提供できるので、除霜運転時に暖房出力を大きく上げるような自動運転やユーザによる空調操作が行われることを抑制できる。したがって、車両用空調装置4は、空調負荷を抑えて燃料電池で発電した電力を有効に使用できる除霜運転時の空調制御を提供する。
【0050】
複数の空調ユニットは電気自動車に搭載されていることが好ましい。電気自動車に搭載された車両用空調装置4によれば、除霜運転による車室内51への空調温度の低下を抑えた空調を提供できるので、除霜運転時に暖房出力を大きく上げるような自動運転やユーザによる空調操作が行われることを抑制できる。したがって、車両用空調装置4は、空調負荷を抑えて電気自動車において発電した電力を有効に使用できる除霜運転時の空調制御を提供する。
【0051】
複数の空調ユニットはハイブリッド車両に搭載されていることが好ましい。ハイブリッド車両に搭載された車両用空調装置4によれば、除霜運転による車室内51への空調温度の低下を抑えた空調を提供できるので、除霜運転時に暖房出力を大きく上げるような自動運転やユーザによる空調操作が行われることを抑制できる。したがって、車両用空調装置4は、ハイブリッド車両で発電した電力を有効に使用できる除霜運転時の空調制御を提供する。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態では、車両用空調装置4が実行する他の制御について
図11を参照して説明する。
図11のフローチャートに示す制御処理は、空調運転時に複数の空調ユニットが共振して振動が大きくなることを抑制するために、
図10のフローチャートに示す制御処理と同時並行して行われる。以下、第1実施形態と相違する内容について説明する。
【0053】
車両用空調装置4が実施する制御処理の一例を
図11のフローチャートにしたがって説明する。車両用空調装置4の制御装置3は、空調操作部40の強制運転指令スイッチまたは自動運転スイッチが操作されることによって運転指令が入力部30に入力されると、
図11に示すフローチャートの各ステップにおける処理を順に実行し、これらのステップを反復処理する。
図11のフローチャートに示す処理に係る制御プログラムは、制御装置3の記憶部に記憶されている。
【0054】
まず、制御装置3は、ステップS100で、車両用空調装置4が備える複数の空調ユニットについて共振抑制条件が成立するか否かを判定する。共振抑制条件は、各空調ユニットが備える圧縮機11の振動に起因して空調ユニット間で共振が発生する状態または共振の発生が予測される状態である場合に成立する。共振が発生すると、うなり音や振動音が大きくなり、車室内51の騒音となる。特にエンジンを備えていない燃料電池車、電気自動車、モータ走行時のハイブリッド車両においては、うなり音や振動音が車室内51の騒音となりやすく、この状態を解消するためにステップS100の判定処理を繰り返し実行することが有用である。ステップS100で共振抑制条件が成立していないと判定している間は、空調操作部40からの運転指令に基づいた暖房運転、冷房運転等を継続して実施する。なお、制御装置3は、暖房運転、冷房運転等において、複数の空調ユニットにおける空調出力を同レベルに制御しているため、各圧縮機11の回転数は同レベルに制御されている。
【0055】
ステップS100では、例えば、各空調ユニットが備える圧縮機11の回転数が所定の共振範囲に入った場合に共振抑制条件が成立すると判定する。圧縮機11の回転数が共振範囲の回転数に含まれない場合は共振抑制条件が成立しないと判定し、この判定処理を繰り返し実行する。共振範囲の回転数は、実機を用いた実験結果から得られた数値であり、あらかじめ定められて制御装置3の記憶部に記憶されている。
【0056】
演算処理部31は、ステップS100で、共振抑制条件が成立すると判定すると、次のステップS200で各圧縮機11の回転数を制御する処理を実行する。制御装置3は、共振抑制条件が成立する圧縮機11について回転数を所定値分下げるように制御し、共振抑制条件が成立する圧縮機11と同じグループに属する他の空調ユニットの圧縮機11について回転数を所定値分上げるように制御する。この制御処理により、同じグループに属する空調ユニットにおいて圧縮機11の回転数が共振点を外したものになって共振を抑制でき、さらにトータルの回転数の大きな変化を抑えるため空調出力の変動を抑えることができる。
【0057】
また、制御装置3は、共振抑制条件が成立する圧縮機11について回転数を所定値分上げるように制御し、共振抑制条件が成立する圧縮機11に隣接する空調ユニットの圧縮機11について回転数を所定値分下げるように制御してもよい。この制御処理により、隣接する空調ユニットにおいて圧縮機11の回転数が共振点を外したものになって共振を抑制することができる。
図7に示すような位置関係に設置された空調ユニット2A~2Dの場合には、例えば空調ユニット2Aと空調ユニット2Dの圧縮機11について共振抑制条件が成立したとき、次のように圧縮機11の回転数を制御すればよい。空調ユニット2Aと空調ユニット2Dの各圧縮機11について回転数を所定値分下げるように制御し、空調ユニット2Bと空調ユニット2Cの各圧縮機11について回転数を所定値分上げるように制御する。これにより、車幅方向や車両前後方向に隣接する空調ユニットの圧縮機11の回転数が共振点を外したものになり共振を抑制でき、さらに同じグループに属する空調ユニットにおいてトータルの回転数の変化を抑えるため空調出力の変動を抑えることができる。
【0058】
また、制御装置3は、ステップS200で共振抑制条件が成立する圧縮機11について回転数を所定値分上げるように制御し、共振抑制条件が成立する圧縮機11と同じグループに属する空調ユニットの圧縮機11について回転数を所定値分下げるように制御してもよい。
【0059】
制御装置3は、ステップS200において、回転数を所定値分下げる圧縮機11と、回転数を所定値分上げる圧縮機11とを、所定時間経過毎に入れ換えるように制御する処理を実行する。したがって、ステップS200において、各圧縮機11は、回転数を低下させる処理と回転数を上げる処理とに交互に制御されることになる。
【0060】
ステップS200の制御処理は、演算処理部31がステップS300で共振抑制条件が成立しないと判定するまで継続する。演算処理部31がステップS300で共振抑制条件が成立しないと判定すると、制御装置3はステップS400で共振抑制制御を終了し、再びステップS100に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
【0061】
第2実施形態によれば、制御装置3は、複数の圧縮機11のうち共振が発生し得る所定の回転数条件を満たす圧縮機11がある場合に、所定の回転数条件を満たす圧縮機11の回転数と、回転数条件を満たす圧縮機11と同じグループに属する他の圧縮機11の回転数とをずらすように制御する。これによれば、同じグループに属する圧縮機11について回転数をずらすように制御する。これにより、隣接する空調ユニット間で共振が発生することを回避することができる。また、所定の回転数条件を満たしている一方の圧縮機11の回転数を増加させ、他方の圧縮機11の回転数を低減する場合には、共振を抑制しつつ、車室内51において同じ領域に送風する空調ユニットの空調出力が大きく変化することを回避する車両用空調装置4を提供できる。
【0062】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0063】
第1実施形態に記載した複数の空調ユニット2A~2Dは、
図12に示すように、車両5の屋根でない場所、例えば車両後部や車両下部に設置するように構成してもよい。このように設置した車両用空調装置4であっても明細書に開示の目的を達成可能である。
【0064】
前述の実施形態において圧縮機11は電動式の圧縮機であるが、このような構成に限定されない。圧縮機11は、車両走行用のエンジンの駆動力を用いて圧縮機構を駆動する構成でもよいし、圧縮機11を駆動するために設けられた専用のエンジンの駆動力を用いるものであってもよい。
【0065】
前述の実施形態において流路切換装置の一例として説明されている四方弁12は、複数の電磁弁を組み合わせて構成される流路切換手段により代替することもできる。
【0066】
前述の実施形態において車両用空調装置4は、4個の空調ユニット2A,2B,2C,2Dを備えている。明細書に開示の目的を達成可能な車両用空調装置4が備える空調ユニットの個数は、2個以上の任意の数であればよく4個に限定するものではない。
【0067】
前述の実施形態において、車両用空調装置4が有する複数の空調ユニットは、第1グループ4Aと第2グループ4Bとの2つのグループに分類されているが、この個数のグループに限定するものではない。車両用空調装置4が有する複数の空調ユニットは、2つ以上の任意の数のグループに分類することができる。
【0068】
前述の実施形態において2つのグループは、それぞれの空調ユニットが吹き出した空調空気を混合させてから車室内51における右側領域と左側領域とに提供するが、このような構成に限定されない。例えば2つのグループは、各グループの空調ユニットが吹き出した空調空気を混合させてから車室内51における前側領域や後側領域に提供するように構成してもよい。
【0069】
明細書に開示の目的を達成可能な車両用空調装置4は、第1実施形態において複数の空調ユニットが車両5の屋根の上に設置されているが、この構成に限定されない。複数の空調ユニットは、第2実施形態に記載する構成の他、車両5の任意の場所に搭載される構成でもよい。例えば複数の空調ユニットは、屋根の内側に設置されている構成でもよいし、車両の下部に設置されている構成でもよい。
【0070】
前述の実施形態において、空調ユニットは室内側ユニットと室外側ユニットとが隣接して設置されている構成であるが、これらが離れた場所に設置されている構成でもよい。また、圧縮機11と空調ユニットを構成する他の構成部品とが離れた場所に設置されている構成でもよい。
【0071】
前述の実施形態において、ステップS30で、制御装置3は、除霜運転を行わない空調ユニットについて圧縮機11の冷媒吐出量を増加させるように回転数等を制御する。制御装置3、この処理の代わりにまたはこの処理に加えて、送風量を増加させるように室内ファン151を制御してもよい。この処理を実施する場合にも、暖房風を大きくできるため、除霜運転による暖房感の低下を抑えることが可能な空調を提供できる。
【符号の説明】
【0072】
2A…空調ユニット、 2B…空調ユニット
2C…空調ユニット、 2D…空調ユニット
3…制御装置、 4A…第1グループ、 4B…第2グループ
5…車両、 10…ヒートポンプサイクル、 11…圧縮機
51…車室内