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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】画像形成装置および搬送制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 9/00 20060101AFI20220216BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220216BHJP
   B65H 43/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
B65H9/00 A
G03G15/00 448
B65H43/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017209217
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019081623
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】川上 嘉輝
(72)【発明者】
【氏名】塩川 康夫
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴弘
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082543(JP,A)
【文献】特開2000-233853(JP,A)
【文献】特開2009-051595(JP,A)
【文献】特開平05-116812(JP,A)
【文献】特開2015-094876(JP,A)
【文献】特開2017-97196(JP,A)
【文献】特開2014-105072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 9/00
G03G 15/00
B65H 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を転写する転写部と、
用紙搬送方向における前記転写部の上流側に設けられたレジストローラーと、
前記レジストローラーの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記用紙の形状を表す用紙形状情報に基づいて、搬送方向における前記用紙の先端を前記レジストローラーに突き当てないレジストレス動作と、前記用紙の前記先端を前記レジストローラーに突き当てるレジスト動作との何れかを選択的に行い、前記レジストレス動作の実行後、前記用紙の側端を目標位置に合わせて前記転写部によって前記用紙に転写される画像の位置が正しくなるように、前記レジストローラーの揺動を制御する、
画像形成装置。
【請求項2】
用紙に画像を転写する転写部と、
用紙搬送方向における前記転写部の上流側に設けられたレジストローラーと、
前記レジストローラーの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記用紙の形状を表す用紙形状情報に基づいて、搬送方向における前記用紙の先端を前記レジストローラーに突き当てないレジストレス動作と、前記用紙の前記先端を前記レジストローラーに突き当てるレジスト動作との何れかを選択的に行い、前記レジストレス動作の実行後、前記転写部によって転写される画像の位置に前記用紙の幅方向の位置を合わせて前記転写部によって前記用紙に転写される画像の位置が正しくなるように、前記レジストローラーの揺動を制御する、
画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記レジストレス動作において、前記用紙の前記先端が前記レジストローラーに突入する前から、前記レジストローラーを前記搬送方向に回転させる制御を行う、
請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記レジストレス動作の実行後に、前記転写部によって前記画像が転写される前記用紙搬送方向における位置と合わせるように、前記レジストローラーの回転速度を調整する制御を行う、
請求項1~3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記用紙が前記転写部に到達した後にも前記レジストローラーの揺動の制御を続行する、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記用紙形状情報が予め設定可能に構成されている、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、操作入力部を通じて設定された前記用紙形状情報に基づいて、前記レジストレス動作または前記レジスト動作の一方を実行する、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記用紙の外形を読み取るセンサーにより取得された前記用紙形状情報に基づいて、前記レジストレス動作または前記レジスト動作の一方を実行する、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
用紙に画像を転写する転写部と、用紙搬送方向における前記転写部の上流側に設けられたレジストローラーと、を備える画像形成装置の搬送制御方法であって、
前記用紙の形状を表す用紙形状情報に基づいて、搬送方向における前記用紙の先端を前記レジストローラーに突き当てないレジストレス動作と、前記用紙の前記先端を前記レジストローラーに突き当てるレジスト動作との何れかを選択的に行い、前記レジストレス動作の実行後、前記用紙の側端を目標位置に合わせて前記転写部によって前記用紙に転写される画像の位置が正しくなるように、前記レジストローラーを揺動させる、
搬送制御方法。
【請求項10】
用紙に画像を転写する転写部と、用紙搬送方向における前記転写部の上流側に設けられたレジストローラーと、を備える画像形成装置の搬送制御方法であって、
前記用紙の形状を表す用紙形状情報に基づいて、搬送方向における前記用紙の先端を前記レジストローラーに突き当てないレジストレス動作と、前記用紙の前記先端を前記レジストローラーに突き当てるレジスト動作との何れかを選択的に行い、前記レジストレス動作の実行後、前記転写部によって転写される画像の位置に前記用紙の幅方向の位置を合わせて前記転写部によって前記用紙に転写される画像の位置が正しくなるように、前記レジストローラーを揺動させる、
搬送制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセス技術を利用した画像形成装置(プリンター、複写機、ファクシミリ等)は、帯電した感光体ドラム(像担持体)に対して、画像データに基づくレーザー光を照射(露光)することにより静電潜像を形成する。そして、画像形成装置では、静電潜像が形成された感光体ドラムへ現像部よりトナーを供給することにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。さらに、画像形成装置では、このトナー像を一次的または二次的に用紙に転写させ、該用紙を定着部の定着ニップで加熱、加圧して、用紙にトナー像を定着させる。また、画像形成装置において、用紙に画像を転写させる転写部の上流側には、レジストローラーが設けられる。レジストローラーは、用紙の搬送方向における先端側と画像の先端とを合わせるために、用紙の搬送速度を調整するように回転して、当該用紙を転写部に送り込む機能を有する。
【0003】
また、従来のレジストローラーの機能としては、搬送されて来る用紙を突き当てることによって、用紙の搬送方向における先端側の曲がりすなわち斜行(スキュー)を補正する機能(以下、曲り補正という。)を有する。さらに、レジストローラーは、この曲り補正を行った後に、用紙の幅方向に沿って揺動することにより、用紙の幅方向における位置ずれを補正する機能(以下、位置ずれ補正という。)を有するものもある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-133634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像形成装置では、印刷用の転写紙(記録材)として、一般に平面矩形の用紙(A4等の定型紙など)が最も多く使用されているが、他方で、例えば、封筒、極薄または極厚のシート材、裁断が荒く端部が直角でない紙、など、様々な形状のものが使用されることもある。さらには、矩形以外の様々な平面形状の用紙に画像を印刷することの潜在的な需要も高いと考えられる。
【0006】
他方、上記の曲り補正および位置ずれ補正を行う従来のレジストローラーの動作では、転写する画像位置の精度を確保する(すなわち画像保証する)ためには、搬送方向における用紙の先端側の辺が直線であり、かつ、かかる直線と用紙の側端の辺が直角である必要があった。具体的には、搬送方向の先端側の辺同士が直角をなしていない用紙を使用する場合、上記の曲がり補正の際に用紙の曲がり(斜行)状態がさらに悪化する(いわゆる逆補正になる)場合がある。このような場合、上記の位置ずれ補正を行っても用紙の曲がりを補正し切れずに転写部に到達してしまう虞があり、転写部により転写される画像の位置の精度を確保する(すなわち画像保証する)ことができない。
【0007】
本発明の目的は、様々な形状の用紙に対する転写画像の位置精度の向上を図ることが可能な画像形成装置および搬送制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、
用紙に画像を転写する転写部と、
用紙搬送方向における前記転写部の上流側に設けられたレジストローラーと、
前記レジストローラーの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記用紙の形状を表す用紙形状情報に基づいて、搬送方向における前記用紙の先端を前記レジストローラーに突き当てないレジストレス動作と、前記用紙の前記先端を前記レジストローラーに突き当てるレジスト動作との何れかを選択的に行い、前記レジストレス動作の実行後、前記用紙の側端を目標位置に合わせて前記転写部によって前記用紙に転写される画像の位置が正しくなるように、前記レジストローラーの揺動を制御する。
本発明に係る画像形成装置は、
用紙に画像を転写する転写部と、
用紙搬送方向における前記転写部の上流側に設けられたレジストローラーと、
前記レジストローラーの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記用紙の形状を表す用紙形状情報に基づいて、搬送方向における前記用紙の先端を前記レジストローラーに突き当てないレジストレス動作と、前記用紙の前記先端を前記レジストローラーに突き当てるレジスト動作との何れかを選択的に行い、前記レジストレス動作の実行後、前記転写部によって転写される画像の位置に前記用紙の幅方向の位置を合わせて前記転写部によって前記用紙に転写される画像の位置が正しくなるように、前記レジストローラーの揺動を制御する。
【0009】
本発明に係る搬送制御方法は、
用紙に画像を転写する転写部と、用紙搬送方向における前記転写部の上流側に設けられたレジストローラーと、を備える画像形成装置の搬送制御方法であって、
前記用紙の形状を表す用紙形状情報に基づいて、搬送方向における前記用紙の先端を前記レジストローラーに突き当てないレジストレス動作と、前記用紙の前記先端を前記レジストローラーに突き当てるレジスト動作との何れかを選択的に行い、前記レジストレス動作の実行後、前記転写部によって前記用紙に転写される画像の位置が正しくなるように、前記レジストローラーを揺動させる。
本発明に係る搬送制御方法は、
用紙に画像を転写する転写部と、用紙搬送方向における前記転写部の上流側に設けられたレジストローラーと、を備える画像形成装置の搬送制御方法であって、
前記用紙の形状を表す用紙形状情報に基づいて、搬送方向における前記用紙の先端を前記レジストローラーに突き当てないレジストレス動作と、前記用紙の前記先端を前記レジストローラーに突き当てるレジスト動作との何れかを選択的に行い、前記レジストレス動作の実行後、前記転写部によって転写される画像の位置に前記用紙の幅方向の位置を合わせて前記転写部によって前記用紙に転写される画像の位置が正しくなるように、前記レジストローラーを揺動させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、様々な形状の用紙に対する転写画像の位置精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態における画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2】本実施の形態における画像形成装置の制御系の主要部を示す。
図3】従来のレジストローラー対の動作を説明する平面図であり、用紙の搬送方向における先端側の辺をレジストローラー対に突き当てた状態を示す。
図4】本実施の形態におけるレジストローラー対の第2動作(レジストレス動作)を説明する平面図であり、用紙の先端側をレジストローラー対に突き当てずに搬送した後、揺動の動作が行われる様子を示す。
図5】搬送される用紙の先端を検知する先端検知センサーを設けた構成を示す平面図である。
図6】先端検知センサーを2つ設けた構成を示す平面図である。
図7】レジストローラー対の第1動作と第2動作とを選択可能とした場合を説明する図であり、図7Aは第1動作で対応可能な用紙の外形を、図7Bは第1動作では対応が困難な用紙の外形の一例を各々示す。
図8】本実施の形態におけるレジストローラー対の動作制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
【0013】
本実施の形態の画像形成装置1は、用紙Sとして、一般に良く用いられるA4サイズ、A3サイズ等の定型紙(規格用紙)の他、種々の特殊用紙を使用し、これらの用紙Sに画像を形成する。
【0014】
本実施の形態において、特殊用紙は、例えば、封筒、上記規格用紙よりも搬送方向の長さが長い長尺紙、極薄または極厚の用紙、ラベル紙、裁断が荒く端部が直角でない紙、台形や平行四辺形の紙、三角形または5角以上の多角形の紙、曲線の辺を有する紙、材質が紙以外(例えば樹脂製)のものなど、種々の態様が含まれ得る。
【0015】
総じて、本実施の形態の画像形成装置1で使用される用紙Sは、後述するレジスト揺動の制御時に、基準ないし目標となる幅方向の位置に合わせることができるような、搬送方向に沿った辺(好ましくは直線の辺)を有するものであればよい。
【0016】
以下、用紙Sまたは単に「用紙」という場合、上述した定型紙(規格用紙)と特殊用紙の両方が含まれ得る。また、特殊用紙の使用例として、主として、台形の用紙S(図4図7B等参照)に画像を形成する場合を説明する。
【0017】
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、トナー像を形成する。
【0018】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0019】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、および制御部100等を備える。
【0020】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0021】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター(PC))との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0022】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0023】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0024】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0025】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0026】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0027】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0028】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0029】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0030】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0031】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
【0032】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0033】
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0034】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニングブレード等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニングブレードによって除去する。
【0035】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0036】
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0037】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0038】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0039】
中間転写ベルト421、バックアップローラー423Bおよび二次転写ローラー424により形成される二次転写ニップは、本発明の「転写部」に対応する。
【0040】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0041】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0042】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0043】
定着部60は、用紙Sの定着面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0044】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。また、定着器Fには、エアを吹き付けることにより、定着面側部材から用紙Sを分離させるエア分離ユニット60Dが配置されている。
【0045】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aやループローラー53b等の複数の搬送ローラー、用紙Sの両面に画像形成するための両面搬送経路、用紙Sを装置の外部(図1における右側)から給紙するための外部給紙搬送路等を有する。レジストローラー対53aは、本発明の「レジストローラー」に対応する。
【0046】
レジストローラー対53aは、制御部100の制御の下、用紙Sの曲り補正を行う役割と、用紙Sの位置ずれ補正を行う役割を担う。また、レジストローラー対53aは、制御部100の制御の下、用紙上に二次転写されるトナー像の位置を合わせるように回転することで、用紙の搬送速度を調整する機能を有する。
【0047】
ここで、曲り補正は、搬送されて来る用紙Sをレジストローラー対53aに突き当てることによって、用紙Sの搬送方向における先端側の曲がりすなわち斜行(スキュー)を補正するものである。本実施の形態では、用紙Sの曲り補正の際に、レジストローラー対53aの駆動源(モーター等)に制御部100から制御信号が出力されることによって、レジストローラー対53aの回転が制御される。なお、用紙Sの曲り補正の制御内容の詳細については後述する。
【0048】
他方、位置ずれ補正は、レジストローラー対53aの揺動によって、用紙Sの幅方向における位置を補正するものである。すなわち、レジストローラー対53aのニップ(以下、レジストニップともいう。)に用紙Sが挟持された後、レジストローラー対53aが幅方向に移動して用紙Sを移動させる揺動動作(レジスト揺動)の制御が行われることにより、用紙Sの幅方向における位置が補正される。本実施の形態では、レジストローラー対53aを揺動させる駆動源は、レジストローラー対53aを回転させるモーターとは別のモーター(ステッピングモーター等)が使用される。なお、レジスト揺動の制御内容の詳細については後述する。
【0049】
ループローラー53bは、搬送方向におけるレジストローラー対53aの上流側に配置されたローラー対である。ループローラー53bは、制御部100の制御の下、レジストローラー対53aとの間で用紙Sにループを形成するように回転することによって、レジストローラー対53aと協働して用紙Sの曲がりを補正する。
【0050】
用紙搬送方向におけるレジストローラー対53aの下流側で二次転写ニップの上流側には、ラインセンサー54が配置されている。ラインセンサー54は、光電変換素子をライン状に配置したセンサーであり、用紙Sの幅方向の一方の端部(以下、側端という)を検出して、用紙Sの片寄り(基準ないし目標位置(図4中の点線参照)からの位置ずれ)を検知する役割を担う。
【0051】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。あるいは、用紙Sは、外部給紙トレイまたは画像形成装置1に接続された給紙装置(いずれも図示せず)から、上述した外部給紙搬送路を介して画像形成部40に搬送される。このとき、給紙された用紙Sの搬送方向における先端の辺がレジストローラー対53aに突き当てられて、かかる先端の辺をレジストローラー対53aの軸と平行にすることにより、用紙Sの曲がりが補正(曲り補正)されるとともに、用紙Sの搬送タイミングが調整される。
【0052】
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。なお、両面印刷時には、第一面への画像形成が行われた用紙Sは、両面搬送経路を経由してスイッチバック搬送されることで、搬送方向の先後端が逆になり、表裏が反転された後、第二面にトナー像が二次転写および定着されて、排紙部52により機外に排紙される。
【0053】
ところで、画像形成装置では、印刷用の転写紙(記録材)として、一般に平面矩形の用紙(A4等の定型紙など)が最も多く使用されているが、他方で、例えば、封筒、極薄または極厚のシート材、裁断が荒く端部が直角でない紙、など、様々な形状のものが使用されることもある。さらには、矩形以外の様々な平面形状の特殊用紙に画像を印刷することの潜在的な需要も高いと考えられる。
【0054】
しかしながら、上述のような曲り補正および位置ずれ補正を行う従来のレジストローラー対53aの動作では、印刷されるトナー像の位置精度を確保する(画像保証する)ためには、搬送方向における用紙の先端側の辺が直線であり、かつ、かかる直線と用紙の側端の辺が直角である必要があった。
【0055】
上記の問題を、図3等を参照してより具体的に説明する。ここで、図3は、矩形の用紙Sの搬送方向の先端をレジストローラー対53aに突き当てた状態を示し、用紙Sの搬送方向を矢印で示している。簡明のため、図3中、ループローラー53bの図示を省略しており、後述する図4図6も同様である。
【0056】
図3に示すように、用紙Sの平面形状が矩形である場合、通常のレジスト動作によって、用紙Sの曲り補正を正常に行うことができる。ここで、通常のレジスト動作は、制御部100の制御の下、レジストローラー対53aが以下のように回転することによって行われる。すなわち、レジストローラー対53aは、搬送方向における用紙Sの先端の辺(以下、単に先端という。)が突き当たるまでは、回転停止(または逆送り方向に回転)しており、用紙Sの先端がレジストローラー対53aに突き当てられると、順送り方向(すなわち二次転写ニップへの搬送方向)に回転を開始する。
【0057】
より具体的には、用紙Sは、その上流側がループローラー53bによって搬送されており、用紙Sの先端が(回転停止等の状態にある)レジストローラー対53aに突き当たると、ループローラー53bの回転によってループ(用紙たわみ)を形成する。このとき、用紙Sの先端の辺全体がレジストローラー対53aのニップに等しく当接することによって、用紙Sの曲がり(斜行)が補正され、この後、レジストローラー対53aが順送り回転を開始すると、用紙Sは、斜行が矯正された状態で二次転写ニップに向けて搬送される。
【0058】
通常のレジスト動作では、このようにレジストローラー対53aの回転が切り替えられることにより、用紙Sは、レジストローラー対53aによって曲がり(斜行)が補正された後、二次転写ニップに向けて搬送される。
【0059】
これに対して、例えば図4に示すような台形の平面形状を有する用紙Sを使用する場合、用紙Sの搬送方向における先端側の辺と側端の辺のなす各が直角(90°)でないことから、上述した通常のレジスト動作では、用紙Sの曲り補正を正常に行うことができない。すなわち、このような用紙Sに対して通常のレジスト動作を行うと、用紙Sがレジストローラー対53aに突き当たった際に曲がり(斜行)が発生するため、上記の曲がり補正の際に用紙Sの曲がり(斜行)状態がさらに悪化する(いわゆる逆補正になる)場合がある。このような場合、レジスト動作後のレジストローラー対53aの揺動動作(すなわちレジスト揺動の制御)では用紙Sの曲りを補正し切れない虞があり、二次転写ニップで転写する画像の位置の精度を確保する(すなわち画像保証する)ことができない。
【0060】
また、本実施の形態のように、用紙Sをスイッチバック搬送させて両面印刷を行う画像形成装置1では、用紙Sの両面印刷を行う場合、第1面および第2面の印刷時において、用紙Sの側端は変わらない一方、レジストローラー対53aに突き当てられる用紙Sの先端は逆側になる。したがって、平面形状が矩形以外の用紙Sについて図4に示すような向きで搬送する場合、第1面および第2面のいずれの印刷時においても、通常のレジスト動作では、用紙Sの曲り補正を正常に行うことができない。
【0061】
総じて、レジストローラー対53a等の曲がり補正の動作によって用紙Sの曲がりを完全に矯正するためには、用紙Sの先端の辺が、用紙Sの側端の辺に対して完全な直角(正確に90°)であることが必要になる。他方、用紙Sの製造時における機械(裁断機など)の違いや製造上の公差等、により、定型紙であっても上述のような完全な直角を有しない用紙Sが存在する。さらに言えば、用紙Sの先端の辺と側端の辺のなす角度を完全な直角にすることは、製造技術上の側面からも容易ではなく、定型紙において、当該角度が略89°または91°となるような場合(1°程度のずれ)は頻繁に発生し得る。
【0062】
そこで、本実施の形態の画像形成装置1では、レジストローラー対53aで用紙Sを搬送する際の動作として、用紙Sの先端をレジストローラー対53aに突き当てない動作(レジストレス動作)を、選択的に実行できる構成とした。すなわち、制御部100は、用紙Sの先端をレジストローラー対53aに突き当てる通常のレジスト動作(第1動作)と、用紙Sの先端をレジストローラー対53aに突き当てないレジストレス動作(第2動作)と、のいずれかを実行するように、レジストローラー対53aの動作を制御する。
【0063】
本実施の形態において、通常のレジスト動作(第1動作)は、上述した従来のレジスト動作と同じである。他方、レジストレス動作(第2動作)は、用紙Sの先端がレジストローラー対53aに到達(突入)する前から、レジストローラー対53aを搬送方向(順送り方向)に回転させる動作である。すなわち、制御部100は、レジストレス動作を実行する場合、用紙Sの先端がレジストローラー対53aに突入する前から、レジストローラー対53aを搬送方向に回転させるように、レジストローラー対53aを回転駆動するモーターに制御信号を出力する。
【0064】
この例では、生産性向上の観点から、レジストレス動作の実行時において、レジストローラー対53aの回転速度は、ループローラー53bの回転速度と略同一になるように制御される。このため、レジストレス動作の実行時において、ループローラー53bとレジストローラー対53aとの間で用紙Sのループが形成されない。他方、レジストレス動作の実行開始時におけるレジストローラー対53aの回転速度は、図示しないユーザー設定画面等を通じて任意の速度に調整することができる。
【0065】
このようなレジストレス動作の実行時には、レジストローラー対53aによる用紙Sの曲り補正が行われないことから、上述したような用紙Sの曲り(斜行状態)がより悪化するような事態を防止することができる。反面、かかるレジストレス動作では用紙Sの曲り(斜行)が矯正されないことから、本実施の形態では、レジストレス動作の実行後、レジストローラー対53aを揺動させることによって、当該用紙Sの位置ずれ補正とともに曲り(斜行)補正を行う。
【0066】
本実施の形態では、レジストローラー対53aの揺動動作は、通常のレジスト動作(第1動作)の実行後も行われる。すなわち、制御部100は、通常のレジスト動作またはレジストレス動作の実行後に、用紙Sを該用紙の幅方向に沿って揺動させるように、レジストローラー対53aの揺動を制御する。
【0067】
図4では、台形の用紙Sに対して第2動作の実行後にレジストローラー対53aを複数回(3回)揺動させる場合を例示し、各々のレジストローラー対53aの揺動タイミングおよび方向を3本の矢印で示している。図4では、点線で示す目標位置に対して用紙Sが右に位置ずれしており、簡明のため、レジストローラー対53aを左方向に同量および同じインターバルで3回揺動させる場合を例示している。他方、実際の用紙搬送においては、用紙Sの曲り(斜行)が発生し得ることから、レジストローラー対53aの揺動の動作(揺動方向、揺動回数、各々の揺動量、など)は種々の態様になる。
【0068】
また、制御部100は、通常のレジスト動作またはレジストレス動作の実行後に、二次転写ニップ(転写部)によって画像(トナー像)を転写する用紙搬送方向の位置に用紙Sの先端側を合わせるように、レジストローラー対53aの回転速度(すなわち用紙Sの搬送速度)を調整する制御を行う。この制御は、「先端タイミング合わせ」と呼ばれるものであって、公知の手法により用紙Sの搬送速度を加減速して最終的に二次転写ニップの搬送速度に合わせるものであり、レジストローラー対53aの揺動動作と並行的に行われる。
【0069】
本実施の形態において、レジストレス動作の実行後の先端タイミング合わせの制御は、用紙Sの先端がレジストローラー対53aに突入された後の所定タイミングで開始される。例えば、用紙Sが図4に示すような台形の平面形状の場合、用紙Sの先端側の辺(斜辺)がレジストローラー対53aのニップを抜けるタイミング(用紙Sの幅全体がレジストニップに挟まれる時点)で先端タイミング合わせの制御を開始する。他の例として、第2動作の実行後の先端タイミング合わせの制御は、ラインセンサー54によって用紙の一部が検知されたタイミングで開始する。
【0070】
また、他の例として、レジストレス動作の実行後の先端タイミング合わせの制御は、ラインセンサー54とは別に、図5または図6に示すように、用紙Sの先端を検知するためのセンサー(先端検知センサー55)を配置し、かかるセンサーにより用紙Sの先端が検知されたタイミングで開始する。ここで、図5は先端検知センサー55を1つ設けた場合、図6はレジストローラー対53aおよび二次転写ニップの軸方向に沿って、先端検知センサー55を複数(55Aおよび55Bの2つ)設けた場合を示す。図6に示すように、先端検知センサー55を複数設けた場合には、用紙Sの先端の傾きを推定することができるため、先端タイミングひいては用紙Sの先端側の画像の書き出し位置をより精密に制御することができる。これら先端検知センサー55、55A,55Bは、用紙の先端を検知できるものであれば、特に制限されず、例えば光学的または物理的な方式のいずれであってもよい。
【0071】
本実施の形態において、レジストレス動作の実行後のレジストローラー対53aの揺動動作は、用紙Sの曲り補正と、用紙Sの側端の位置ずれ補正(以下、単に位置ずれ補正という。)の両方の側面を有する。本実施の形態では、例えば、レジストレス動作(第2動作)の実行後にレジストローラー対53aを複数回または継続的に揺動させて、用紙Sの側端を常に目標位置に合わせるように、用紙Sを幅方向(搬送方向と直交する方向)に順次移動させる動作を行う。また、このような揺動動作すなわち制御部100によるレジストローラー対53aの揺動制御は、用紙Sが二次転写ニップに到達した後にも続行(適宜実行)する。このようなレジストローラー対53aの揺動動作により、用紙Sの先端側の形状に依存することなく、二次転写ニップによってトナー像の転写が開始される前に、用紙Sの曲がり(斜行)および位置ずれを矯正することができる。この結果、様々な種類の用紙Sに対する転写画像の位置精度の向上を図ることができる。
【0072】
なお、レジストローラー対53aで用紙を搬送する際の動作として、通常のレジスト動作(第1動作)とレジストレス動作(第2動作)のいずれを実行するかについては、自動でまたは任意に選択できる構成とするとよい。
【0073】
すなわち、上述したように用紙Sの形状が台形であるような場合(図7B参照)、用紙Sの各隅の角度が90°から大きくずれており、従来と同様のレジスト動作(第1動作)を行った場合、その後のレジスト揺動の制御では対応できない(画像保証できない)虞がある。
【0074】
他方、用紙Sの形状によっては、典型的には、用紙Sが定型紙であり且つ各隅の角度が90°に極めて近いような場合(図7A参照)、従来と同様のレジスト動作(第1動作)およびレジスト揺動の制御で十分に対応できる(すなわち画像保証できる)場合があると考えられる。
【0075】
上記の観点から、本実施の形態では、印刷ジョブの実行に先立って、操作表示部20や外部装置(PC等)の図示しないユーザー設定画面等を通じて、用紙Sの形状を表す用紙形状情報を登録(メモリ等に記憶)しておく。そして、制御部100は、予め登録された用紙形状情報に基づいて、印刷ジョブの実行時に、通常のレジスト動作(第1動作)とレジストレス動作(第2動作)のいずれを実行するかについて決定する処理を行う。
【0076】
ここで、用紙形状情報は、上記のユーザー設定画面を通じて、用紙Sの外形に関する数値(縦横の長さや各隅の角度など)をユーザーが手動で入力し、設定登録することができる。
【0077】
あるいは、用紙形状情報を自動で登録するため、例えば、図示しないスキャナーなどの光学的センサーを備えた読み取り装置を画像形成装置1に接続し、画像形成装置1で使用する用紙の外形を、予め読み取り装置で検出しておく。そして、読み取り装置で検出された用紙の外形を用紙形状情報として、読み取り装置から画像形成装置1に送信し、制御部100は、受信された用紙形状情報を記憶部72またはRAM103に記憶しておく。このような処理を行うことで、用紙の形状(各辺の長さや各隅の角度など)を正確に検出し、用紙形状情報として設定することができる。
【0078】
用紙の外形は、同一ロットであれば互いに同一ないし極めて近い形状になると考えられる。このため、用紙形状情報の登録(すなわち更新)は、ロット毎に行うとよい。他方、画像保証などの観点から、用紙形状情報の更新をより頻繁に行うこともできる。例えば、同一ロットであっても、所定枚数(例えば数百枚)毎あるいは印刷ジョブ毎に用紙形状情報を更新してもよい。
【0079】
他の例として、第1動作と第2動作のいずれを実行するかについて、上記のユーザー設定画面を通じてユーザーが設定できるようにしてもよい。例えば、用紙Sの外形から、一見して、従来と同様のレジスト動作(第1動作)およびレジスト揺動の制御では対応できない(画像保証できない)ことが明白な場合、あるいは図7Aで説明したように、この逆の場合があり得る。したがって、用紙形状情報の登録の有無に関わらず、第1動作と第2動作のいずれを実行するかをユーザーが選択するように、予め設定できるようにしてもよい。
【0080】
図3および図4を比較して、本実施の形態の第1動作と第2動作とを比較して説明する。図3に示すように、従来のレジスト動作(本実施の形態の第1動作)では、搬送方向における用紙Sの先端がレジストローラー対53aに突き当てられる(すなわち一旦停止する)ことにより、用紙Sの先端の辺がレジストローラー対53aの軸と平行になるように補正される。
【0081】
これに対して、本実施の形態の第2動作(レジストレス動作)では、図3に示す時点で既にレジストローラー対53aが搬送方向に回転しており、このため、用紙Sの先端は、レジストローラー対53aに突き当てられる(一旦停止する)ことなく二次転写ニップに向けて搬送される(図4参照)。したがって、仮に用紙Sの側辺が図4中に点線で示す搬送方向と平行な基準線から曲がった状態にある場合、この曲がりは第2動作の時点では補正されない。このような場合でも、レジストローラー対53aを幅方向に揺動させて用紙Sの側端を目標位置(図4中の点線参照)に合わせるように揺動させることで、二次転写ニップに到達する前に用紙Sの側端を搬送方向と平行に補正して、当該曲がりを矯正することができる。
【0082】
このように、本実施の形態の第2動作では、用紙Sの副走査側を補正することで、搬送方向における用紙Sの先端側の形状に依存することなく、曲がりの矯正を行うことができる。
【0083】
また、図3図4を比較して分かるように、本実施の形態のレジストレス動作では、用紙Sをレジストローラー対53aに突き当てることにより用紙Sを一旦停止させる動作が発生しないことから、二次転写ニップまでの搬送時間を短縮することができる。
【0084】
上述のように、制御部100は、基本的に、レジストローラー対53aによって搬送されている用紙Sの側端を目標位置(図4中の点線参照)に合わせるように、レジストローラー対53aの揺動を制御する。このような制御を行うことにより、二次転写ニップに到達する前に用紙Sの曲がり(斜行)を矯正し、用紙Sの側端側と二次転写ニップにより転写されるトナー像の幅方向における書き出し位置が合う。
【0085】
他方、レジストローラー対53aと二次転写ニップまたは定着ニップとのアライメント等によっては、上記の制御を行った場合でも用紙Sが途中から曲がる虞がある。特に、レジストローラー対53aを抜けた後に用紙Sが曲がると、二次転写ニップに到達した用紙Sの側端の位置がずれてしまう場合がある。そこで、このような場合、制御部100は、用紙Sの側端の位置を、二次転写ニップによって転写されるトナー像の位置に合わせるように、レジストローラー対53aを揺動させる。すなわち、制御部100は、レジストローラー対53aを抜けた後の用紙Sの曲がり分を考慮して、例えば用紙Sの後端側の側端を目標位置(図4中の点線参照)から敢えてずらすように、レジストローラー対53aを揺動させる。このような制御を行うことにより、用紙の曲がりや位置ずれをより正しく矯正して、画像の位置ずれの発生を防止することができる。
【0086】
別の観点から説明すると、制御部100は、第1動作または第2動作の実行後の揺動制御において、用紙Sの側端の目標位置を適宜補正し(すなわち図4中の点線の位置を適宜シフトさせ)、補正された目標位置に用紙の側端が来るように、レジストローラー対53aを揺動させる。
【0087】
このようなレジストローラー対53aの揺動制御を行うために、例えば、画像形成装置1の後段に図示しない画像読み取り装置(スキャナー等)を設け、画像形成装置1で予め用紙Sの試し刷りを行う。そして、試し刷りが行われた用紙S上の画像位置を画像読み取り装置で読み取って画像の位置ずれの程度を検出し、かかる検出結果を、本刷りの際に、用紙Sの側端の目標位置の補正値に反映(フィードバック)させるようにする。
【0088】
このように、レジストローラー対53aの揺動に関する種々の処理が行われることで、二次転写ニップによって用紙Sに転写されるトナー像の位置の精度をより高めることができる。
【0089】
以下、画像形成装置1におけるレジストローラー対53aの動作ひいては用紙Sの搬送制御に関して制御部100が実行する処理の一例について、図8のフローチャートを参照して説明する。この例では、図6で上述した先端検知センサー55Aおよび55Bを設け、図4等で上述した台形の用紙Sを使用する場合を仮定する。
【0090】
印刷ジョブの実行時に、制御部100は、当該印刷ジョブにおける種々の設定情報を取得する(ステップS100)。ここで、制御部100は、設定情報として、例えば上述した用紙形状情報を含む用紙Sの種類を示す情報(例えば、用紙Sの各辺の長さ、各隅の角度、坪量、など)、用紙Sの向き、レジストローラー対53aの動作選択、両面印刷の有無、等に関するユーザー設定、などを取得する。
【0091】
ステップS110において、制御部100は、取得された設定情報を参照して、上述したレジスト動作(用紙先端の突き当て)を行わないか否か、すなわち第2動作又は第1動作のいずれを実行するか、を決定する。この例では、制御部100は、用紙形状情報に基づいて、第2動作(レジストレス動作)を実行する旨を決定し(ステップS110、YES)、ステップS130に移行する。
【0092】
ステップS130において、制御部100は、用紙Sの先端がレジストローラー対53aに達する(突入する)前から順送り回転を開始するようにレジストローラー対53aの駆動源を制御する(第2動作の実行)。この制御により、レジストローラー対53aは、用紙Sの先端の突き当て(一旦停止)の動作を行うことなく、用紙Sをそのまま二次転写ニップに向けて搬送する(図4参照)。したがって、用紙Sに曲がり(斜行)がある場合、当該曲がりはこの時点では補正されない反面、二次転写ニップまでの搬送時間を短くすることができる。
【0093】
ステップS130に続くステップS140において、制御部100は、先端検知センサー55Aおよび55Bの検知信号を監視して、用紙Sがセンサー55Aおよび55Bによって検知されたか否かを判定する。そして、制御部100は、用紙Sがセンサー55Aおよび55Bによって検知されていない(ステップS140、NO)と判定している間は、用紙Sの先端がセンサー55Aおよび55Bの位置に達していないとみなしてステップS140の判定を繰り返す。他方、制御部100は、用紙Sがセンサー55Aおよび55Bによって検知された(ステップS140、YES)と判定した場合、ステップS150に移行する。
【0094】
ステップS150において、制御部100は、上述した用紙の先端タイミング合わせの動作とともにレジスト揺動(用紙の側端位置合わせ)の動作を行うように、レジストローラー対53aの回転および揺動を制御する。レジスト揺動の動作に関し、この例では、制御部100は、ラインセンサー54によって検知された用紙Sの側端の位置を目標位置(図4中の点線参照)に合致させるように、レジストローラー対53aを幅方向に揺動させる。
【0095】
制御部100は、ステップS150のレジスト揺動制御の実行の後、上述した一連の処理を終了する。なお、ステップS150のレジスト揺動制御は、用紙Sが二次転写ニップに到達した後にも続行することができる。
【0096】
また、両面印刷ジョブの実行時には、制御部100は、ステップS150の後にステップS110に戻って、用紙Sの第2面に対する搬送制御を行う。この例では、用紙Sが台形であり、スイッチバック搬送後の第2面の先端も斜辺となるため、制御部100は、第2動作(レジストレス動作)を実行する旨を決定し(ステップS110、YES)、ステップS130に移行して、第1面と同様の制御を実行する。
【0097】
他の印刷例として、図7A等で説明したように、用紙Sの各隅の角度が90°に極めて近いような場合、制御部100は、用紙Sの第1面と第2面の両方とも、通常のレジスト動作(第1動作)を実行する旨を決定し(ステップS110、NO)、ステップS120を経て上述したステップS150に移行する。ステップS120における第1動作の制御により、レジストローラー対53aは、用紙Sの先端が突き当たるまでは回転停止または逆送り回転の状態を継続し、用紙Sの先端がレジストローラー対53aに突き当てられると、順送り回転を開始する。この第1動作により、用紙Sは、レジストローラー対53aによって曲がりが補正され、斜行状態が矯正された姿勢で二次転写ニップに搬送される。
【0098】
上記のような制御を行う画像形成装置1によれば、様々な形状の用紙に対する転写画像の位置精度の向上を図ることができる。
【0099】
上述した実施の形態では、特殊用紙として台形の用紙Sに対してレジストレス動作を実行する場合を例示して説明した。他方、本実施の形態のレジストレス動作は、上述のように、様々な外形の用紙に適用でき、さらには完全な矩形の用紙Sに対しても同様に適用することができる。
【0100】
総じて、上述のような搬送制御を行う本実施の形態の画像形成装置1によれば、用紙Sの搬送方向における先端側の形状や角度等にかかわらず、形成する画像位置の精度を確保する(ひいては画像保証する)ことができる。
【0101】
上述した実施の形態では、用紙として枚葉紙を使用する場合を説明した。他方、上記実施の形態は、ロール紙に対しても同様に適用することができる。
【0102】
上述した実施の形態では、中間転写ベルト421を用いて印刷する画像を用紙Sに二次的に転写させる転写部を備えた画像形成装置の例を説明した。他方、上記実施の形態は、印刷する画像を用紙Sに一次的に転写させる転写方式の画像形成装置(例えばモノクロプリンタやインクジェットプリンタなど)に対しても、同様に適用されることができる。
【0103】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 画像形成装置
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
50 用紙搬送部
53a レジストローラー対
54 ラインセンサー
55,55A,55B 先端検知センサー
100 制御部
421 中間転写ベルト
423B バックアップローラー
424 二次転写ローラー
S 用紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8