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  • 特許-排気後処理装置 図1
  • 特許-排気後処理装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】排気後処理装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/035 20060101AFI20220216BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
F01N3/035 E
F01N3/025 101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017248171
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019113020
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】景山 遊大
(72)【発明者】
【氏名】正田 敦志
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247195(JP,A)
【文献】特開2004-162611(JP,A)
【文献】特開2006-077591(JP,A)
【文献】特開2008-128170(JP,A)
【文献】特開2009-287507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00~ 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気を浄化する排気後処理装置に於いて、
排気管と、
前記排気管の排気下流側に配置され前記排気管より断面積が大きい管状筐体と、
前記排気管と前記管状筐体との間で両者を接続し、前記管状筐体より断面積が小さい別体の管状部材と、
前記管状筐体に設置した粒子状物質捕集フィルタと、
前記粒子状物質捕集フィルタの排気上流側の前記管状筐体に設置した酸化触媒と、
前記管状部材に設置した前段酸化触媒と、
を備え、
前記前段酸化触媒は、前記酸化触媒の近傍に設置され、
前記前段酸化触媒は、前記酸化触媒と比較し開口率が高く、
前記管状部材は、前記排気管と前記管状筐体に隣接され、
前記排気管と前記管状部材は鍔部を介し接続され、前記管状部材と前記管状筐体は別の鍔部を介し接続される
事を特徴とする排気後処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の排気を浄化する排気後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関においては、内燃機関から排出される粒子状物質(PM:Particulate matter)の大気放出量を抑制するため、排気管に設置した粒子状物質捕集フィルタで粒子状物質を捕集し、再生制御により粒子状物質捕集フィルタを昇温し、捕集した粒子状物質を燃焼除去している。再生制御として、例えば、粒子状物質捕集フィルタの排気上流側の排気管に設置した酸化触媒へ燃料を供給するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-149402号公報
【文献】特開2014-077369号公報
【文献】特開2012-036821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然し乍ら、運転負荷が低い時は運転負荷が高い時と比較し排気流量が少なく排気温度が低い為、粒子状物質の一部を構成する粘着質な可溶性有機成分が酸化触媒の排気上流側端面に付着し酸化触媒を閉塞させる虞が有る。
【0005】
以上の事情に鑑み、本開示は、酸化触媒の閉塞を抑制する排気後処理装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、内燃機関の排気を浄化する排気後処理装置に於いて、排気管に設置した粒子状物質捕集フィルタと、前記粒子状物質捕集フィルタの排気上流側の前記排気管に設置した酸化触媒と、前記酸化触媒の排気上流側の前記排気管に設置した前段酸化触媒と、前記前段酸化触媒の排気上流側の前記排気管に設置した排気管内燃料噴射器と、を備える排気後処理装置を提供する。
【0007】
前記前段酸化触媒は、前記酸化触媒の近傍に設置される事が望ましい。
【0008】
本開示は、内燃機関の排気を浄化する排気後処理装置に於いて、排気管に設置した粒子状物質捕集フィルタと、前記粒子状物質捕集フィルタの排気上流側の前記排気管に設置した酸化触媒と、前記酸化触媒の排気上流側の前記排気管に設置した前段酸化触媒と、を備え、前記前段酸化触媒は、前記酸化触媒の近傍に設置される排気後処理装置を提供する。
【0009】
前記前段酸化触媒を保持する前記排気管は、前記酸化触媒を保持する管状筐体と比較し断面積が小さい事が望ましい。
【0010】
前記前段酸化触媒は、前記酸化触媒と比較し開口率が高い事が望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、酸化触媒の閉塞を抑制する排気後処理装置を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一の実施の形態に係る排気後処理装置を示す概略構成図である。
図2】第二の実施の形態に係る排気後処理装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る発明の実施の形態を添付図面に順って説明する。
【0014】
図1に示す様に、本開示に係る発明の第一の実施の形態に係る排気後処理装置100は、内燃機関101の排気を浄化する装置であって、排気管102に設置した粒子状物質捕集フィルタ103と、粒子状物質捕集フィルタ103の排気上流側の排気管102に設置した酸化触媒104と、酸化触媒104の排気上流側の排気管102に設置した前段酸化触媒105と、前段酸化触媒105の排気上流側の排気管102に設置した排気管内燃料噴射器106と、を備える。
【0015】
内燃機関101は、例えばディーゼルエンジンによって構成される。粒子状物質捕集フィルタ103は、例えばディーゼルパティキュレートフィルタによって構成される。尚、本開示は、ガソリンエンジン等、他の内燃機関に於いても適用可能である。粒子状物質捕集フィルタ103は、内燃機関101が排出した粒子状物質を捕集し排気を浄化する。粒子状物質捕集フィルタ103上の粒子状物質は、例えば粒子状物質捕集量が閾値以上と成った場合に排気管内燃料噴射器106を使用し排気中に燃料を噴射すると共に排気温度を昇温させる再生制御を実施する事によって燃焼除去される。排気管内燃料噴射器106は、例えば不図示の過給機の排気下流側に設置される。
【0016】
粒子状物質捕集フィルタ103と酸化触媒104は、例えば共通の管状筐体107に直列に収容され一体化される。管状筐体107の排気下流側の排気管102に尿素選択触媒還元装置等の他の排気後処理装置が設置されても構わない。管状筐体107は排気管102と比較し内径断面積が大きい為、排気管102と管状筐体107との間に設置した縮拡径部108を使用し両者の内径断面をなだらかに接続している。
【0017】
酸化触媒104は、内燃機関101が排出した炭化水素と一酸化炭素と一酸化窒素とを酸化させると共に排気温度を昇温させ粒子状物質捕集フィルタ103上の粒子状物質の燃焼除去を促進させる。酸化触媒104は排気が自身を通過していく過程で排気温度を徐々に昇温させていく。然し乍ら、昇温開始地点と成る酸化触媒104の排気上流側端面の排気温度は、たとえ再生制御を実施したとしても酸化触媒104の排気上流側端面上の可溶性有機成分を燃焼除去する事が出来る程度の温度迄、十分に昇温され難い。
【0018】
従って、酸化触媒104の排気上流側端面の排気温度を如何に昇温させるかが課題と成る。尚、再生制御を実施する時の排気管燃料噴射量を増加させ酸化触媒104の排気上流側端面の排気温度を昇温させる事が出来るが、排気管燃料噴射量を増加させると、燃料消費効率を大きく低下させる事と成る。
【0019】
本課題に鑑み、排気後処理装置100は、酸化触媒104の排気上流側の排気管102に設置した前段酸化触媒105を使用し酸化触媒104の排気上流側端面の排気温度を昇温させている。具体的に言えば、酸化触媒104の排気上流側の排気管102に前段酸化触媒105を設置した場合は、排気管燃料噴射量を増加させなくても、酸化触媒104の排気上流側の排気管102に前段酸化触媒105を設置しない場合と比較し酸化触媒104の排気上流側端面の排気温度を100℃程度昇温させる事が出来る。
【0020】
前段酸化触媒105は、酸化触媒104の近傍に設置される事が望ましい。特に酸化触媒104の排気直上流側の排気管102の一部に設置される事が望ましい。前段酸化触媒105を酸化触媒104に近付ける程、前段酸化触媒105と酸化触媒104との間の距離を短くし前段酸化触媒105と酸化触媒104との間の放熱量を少なくする事が出来る為、前段酸化触媒105を酸化触媒104の近傍に設置すると、酸化触媒104の排気上流側端面の排気温度を十分に昇温させる為に必要と成る排気管燃料噴射量を削減する事が出来る。
【0021】
前段酸化触媒105を保持する排気管102は、酸化触媒104を保持する管状筐体107と比較し断面積が小さい事が望ましい。前段酸化触媒105の断面積を酸化触媒104の断面積と比較し小さくすると、前段酸化触媒105の排気流速を酸化触媒104の排気流速と比較し速くする事が出来る為、粒子状物質と燃料とが前段酸化触媒105を通過し易く成り、前段酸化触媒105の閉塞を抑制する事が出来ると共に前段酸化触媒105の排気下流側に燃料を効果的に供給する事が出来る。尚、前段酸化触媒105と酸化触媒104は、排気管102と管状筐体107の断面(内径断面)を埋める様に設置される為、両者の断面積にも排気管102と管状筐体107の断面と同様の相関がある(即ち、前段酸化触媒105は、酸化触媒104と比較し断面積が小さい)。
【0022】
前段酸化触媒105は、酸化触媒104と比較し開口率が高い事が望ましい。前段酸化触媒105の開口率(例えば密度が100cpsiとなる開口率)を酸化触媒104の開口率(例えば密度が300cpsiとなる開口率)と比較し高くすると、粒子状物質と燃料とが前段酸化触媒105を通過し易く成る為、前段酸化触媒105の閉塞を抑制する事が出来ると共に前段酸化触媒105の排気下流側に燃料を効果的に供給する事が出来る。
【0023】
排気後処理装置100を使用すると、酸化触媒104の排気上流側の排気管102に前段酸化触媒105を設置する以外は従来と比較し如何なる変更も無く、酸化触媒104の閉塞を抑制する事が可能と成る。
【0024】
図2に示す様に、本開示に係る発明の第二の実施の形態に係る排気後処理装置200は、排気後処理装置100と比較すると、排気管内燃料噴射器106が無く、前段酸化触媒105を設置する位置が酸化触媒104の近傍に限定される点が相違する。
【0025】
排気後処理装置200は、排気管内燃料噴射器106を使用し排気中に燃料を噴射すると共に排気温度を昇温させる再生制御に代え、例えばポスト噴射を使用し排気中に未燃燃料を供給すると共に排気温度を昇温させる再生制御を採用する。
【0026】
排気後処理装置200を使用すると、酸化触媒104の排気上流側の排気管102に前段酸化触媒105を設置する以外は従来と比較し如何なる変更も無く、酸化触媒104の閉塞を抑制する事が可能と成る。
【0027】
前述の排気後処理装置100と排気後処理装置200は、排気管内燃料噴射器106を使用し排気中に燃料を噴射すると共に排気温度を昇温させる再生制御とポスト噴射を使用し排気中に未燃燃料を供給すると共に排気温度を昇温させる再生制御の何れかを採用したが、両者を併用しても構わない。
【0028】
排気管内燃料噴射器106を使用した燃料噴射と内燃機関101(の筒内燃料噴射器)を使用した未燃燃料噴射は、不図示の制御装置によって実行される。制御装置は、例えばエンジンコントロールユニットによって構成される。
【0029】
尚、前段酸化触媒105は、排気管102自体に設置する以外に排気管102と管状筐体107とを接続する排気管102と別体の管状部材109に設置しても構わない。この場合、管状部材109と管状筐体107とが相互に隣接するように構成すると尚良い。また、排気管102と管状部材109及び管状部材109と管状筐体107は、例えば鍔部110を介し接続される。
【符号の説明】
【0030】
100 排気後処理装置
101 内燃機関
102 排気管
103 粒子状物質捕集フィルタ
104 酸化触媒
105 前段酸化触媒
106 排気管内燃料噴射器
107 管状筐体
108 縮拡径部
109 管状部材
110 鍔部
200 排気後処理装置
図1
図2