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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】助手席用エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2334 20110101AFI20220216BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20220216BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20220216BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/205
B60R21/2338
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018005806
(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公開番号】P2019123397
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】岡田 典久
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-296980(JP,A)
【文献】特開2018-001866(JP,A)
【文献】特開2012-056371(JP,A)
【文献】特開2003-081045(JP,A)
【文献】特許第3993324(JP,B2)
【文献】特開2016-020115(JP,A)
【文献】特開2006-321313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
助手席用エアバッグの乗員対向面及び左右のサイド面を構成するメインパネルと、
助手席用エアバッグの上面を構成するトップパネルと、
助手席用エアバッグの下面を構成するボトムパネルと
を有する助手席用エアバッグにおいて、
前記メインパネルの前記乗員対向面の上辺の2箇所以上に切り込み部が設けられており、
該切り込み部の左辺縁と右辺縁とが結合されており、
前記上辺の切り込み部同士の間に、小切り込み部が設けられており、該小切り込み部の左辺縁及び右辺縁はそれぞれトップパネルの後辺に結合されていることを特徴とする助手席用エアバッグ。
【請求項2】
助手席用エアバッグの乗員対向面及び左右のサイド面を構成するメインパネルと、
助手席用エアバッグの上面を構成するトップパネルと、
助手席用エアバッグの下面を構成するボトムパネルと
を有する助手席用エアバッグにおいて、
前記メインパネルの前記乗員対向面の下辺の2箇所以上に切り込み部が設けられており、
該切り込み部の左辺縁と右辺縁とが結合されており、
前記下辺の切り込み部同士の間に、小切り込み部が設けられており、該小切り込み部の左辺縁及び右辺縁はそれぞれボトムパネルの後辺に結合されていることを特徴とする助手席用エアバッグ。
【請求項3】
助手席用エアバッグの乗員対向面及び左右のサイド面を構成するメインパネルと、
助手席用エアバッグの上面を構成するトップパネルと、
助手席用エアバッグの下面を構成するボトムパネルと
を有する助手席用エアバッグにおいて、
前記メインパネルの上辺及び下辺の少なくとも一方に切り込み部が設けられており、
該切り込み部の左辺縁と右辺縁とが結合されており、
前記助手席用エアバッグが膨張完了した状態において、前記乗員対向面に上下方向に延在する凹部が形成されており、
前記乗員対向面に、上下方向に延在する凹部が2条形成されることを特徴とする助手席用エアバッグ。
【請求項4】
助手席用エアバッグの乗員対向面及び左右のサイド面を構成するメインパネルと、
助手席用エアバッグの上面を構成するトップパネルと、
助手席用エアバッグの下面を構成するボトムパネルと
を有する助手席用エアバッグにおいて、
前記メインパネルの上辺及び下辺の少なくとも一方に切り込み部が設けられており、
該切り込み部の左辺縁と右辺縁とが結合されており、
前記助手席用エアバッグが膨張完了した状態において、前記乗員対向面に上下方向に延在する凹部が形成されており、
前記助手席用エアバッグが膨張完了した状態において、助手席用エアバッグの上面に、前記凹部を跨ぐ凹部幅規制用テザーが設けられていることを特徴とする助手席用エアバッグ。
【請求項5】
助手席用エアバッグの乗員対向面及び左右のサイド面を構成するメインパネルと、
助手席用エアバッグの上面を構成するトップパネルと、
助手席用エアバッグの下面を構成するボトムパネルと
を有する助手席用エアバッグにおいて、
前記メインパネルの上辺及び下辺の少なくとも一方に切り込み部が設けられており、
該切り込み部の左辺縁と右辺縁とが結合されており、
複数個設けられた前記切り込み部の少なくとも一部のものが他のものと切込み深さが異なることを特徴とする助手席用エアバッグ。
【請求項6】
前記切り込み部の前記左辺縁部及び右辺縁部は、外方に向って張り出すように湾曲していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項の助手席用エアバッグ。
【請求項7】
前記切り込み部は、前記メインパネルの上辺及び下辺の双方に設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項の助手席用エアバッグ。
【請求項8】
前記乗員対向面と助手席用エアバッグの前部側とをつなぐ前後方向テザーが設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれかの助手席用エアバッグ。
【請求項9】
前記助手席用エアバッグの左右の側面同士をつなぐ左右方向テザーが設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれかの助手席用エアバッグ。
【請求項10】
前記メインパネルは略菱型であることを特徴とする請求項1~のいずれかの助手席用エアバッグ。
【請求項11】
前記助手席用エアバッグの内部に隔壁が不存在であることを特徴とする請求項1~10のいずれかの助手席用エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は助手席用エアバッグに係り、特に膨張完了状態において乗員対向面を上下に延在する凸部を有する助手席用エアバッグに関する。本発明は、詳しくは、エアバッグの乗員対向面及び左右のサイド面をメインパネルで構成し、エアバッグの上面をトップパネルで構成し、エアバッグの下面をボトムパネルで構成した助手席用エアバッグに関する。なお、以下の説明において、前後、左右及び上下方向はそれぞれ助手席用エアバッグを搭載した自動車の前後、左右及び上下方向と合致する。
【背景技術】
【0002】
膨張完了状態において、乗員対向面を上下に延在する凹部及び該凹部の左右両側の凸部を有する助手席用エアバッグとして、特許文献1には、膨張完了状態の助手席用エアバッグの上面から乗員対向面を経てエアバッグ下面に至る周面パネルと、エアバッグの左右両側面を構成する1対の側面パネルとを有するエアバッグが記載されている。乗員対向面とエアバッグ前部とを結ぶようにテザーが設けられることにより、乗員対向面を上下に延在する凹部が形成され、凹部の両側に凸部が形成される。
【0003】
特許文献2にも、同様のパネル構成よりなる助手席用エアバッグが記載されているが、特許文献2では、凹部及び凸部は、乗員対向面を左右方向に延在するように設けられる。
【0004】
特許文献3には、乗員対向面を上下方向に延在する凹部及び該凹部の左右両側の凸部を有した助手席用エアバッグが記載されているが、エアバッグを構成する各パネルの形態についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-56371号公報
【文献】特許第3993324号公報
【文献】特開2016-20115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、膨張完了状態において、助手席用エアバッグの左右の側面及び乗員対向面を構成するメインパネルと、助手席用エアバッグの上面を構成するトップパネルと、助手席用エアバッグの下面を構成するボトムパネルとで構成され、膨張完了状態で乗員対向面に後方に突出する凸部が形成される助手席用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の助手席用エアバッグは、助手席用エアバッグの乗員対向面及び左右のサイド面を構成するメインパネルと、助手席用エアバッグの上面を構成するトップパネルと、助手席用エアバッグの下面を構成するボトムパネルとを有する助手席用エアバッグにおいて、前記メインパネルの上辺及び下辺の少なくとも一方に切り込み部が設けられており、該切り込み部の左辺縁と右辺縁とが結合されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様では、前記切り込み部の前記左辺縁及び右辺縁は、外方に向って張り出すように湾曲している。
【0009】
本発明の一態様では、前記切り込み部は、前記メインパネルの上辺及び下辺の双方に設けられている。
【0010】
本発明の一態様では、前記切り込み部は、前記乗員対向面の上辺の2箇所以上又は下辺の2箇所以上に設けられている。
【0011】
本発明の一態様では、前記上辺の2箇所以上に前記切り込み部が設けられており、該上辺の切り込み部同士の間に、小切り込み部が設けられており、該小切り込み部の左辺縁及び右辺縁はそれぞれトップパネルの後辺に結合されている。
【0012】
本発明の一態様では、前記下辺の2箇所以上に前記切り込み部が設けられており、該下辺の切り込み部同士の間に、小切り込み部が設けられており、該小切り込み部の左辺縁及び右辺縁はそれぞれボトムパネルの後辺に結合されている。
【0013】
本発明の一態様では、前記助手席用エアバッグが膨張完了した状態において、前記乗員対向面に上下方向に延在する凹部が形成されている。
【0014】
本発明の一態様では、前記乗員対向面に、上下方向に延在する凹部が2条形成される。
【0015】
本発明の一態様では、前記助手席用エアバッグが膨張完了した状態において、助手席用エアバッグの上面に、前記凹部を跨ぐ凹部幅規制用テザーが設けられている。
【0016】
本発明の一態様では、前記乗員対向面と助手席用エアバッグの前部側とをつなぐ前後方向テザーが設けられている。また、本発明の一態様では、前記助手席用エアバッグの左右の側面同士をつなぐ左右方向テザーが設けられている。
【0017】
本発明の一態様では、前記メインパネルは略菱型である。また、複数個設けられた前記切り込み部の少なくとも一部のものが他のものと切込み深さが異なる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の助手席用エアバッグは、助手席用エアバッグの乗員対向面及び左右のサイド面を構成するメインパネルと、助手席用エアバッグの上面を構成するトップパネルと、助手席用エアバッグの下面を構成するボトムパネルとで構成されており、パネル構成が簡易で縫製が容易である。
【0019】
本発明の助手席用エアバッグでは、エアバッグ内を左右に区画する隔壁が存在しないので、パネルの総重量を抑制し、助手席用エアバッグを軽量化することができる。また、エアバッグ内を左右に区画する隔壁が存在しないので、インフレータからのガスがエアバッグ内の全体に速やかに流れるようになる。
【0020】
本発明の助手席用エアバッグでは、メインパネルの上辺及び下辺の少なくとも一方の辺に切り込み部が設けられ、この切り込み部の辺縁同士が結合されている。この部分は、助手席用エアバッグが膨張完了した状態において、乗員対向面から後方に膨出した凸部となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1aは第1の実施の形態に係る助手席用エアバッグの膨張完了状態を示す斜視図、図1bは図1aの助手席用エアバッグの分解図である。
図2図1a及び1bの助手席用エアバッグのパネル構成図である。
図3図1aのIII-III線断面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】別の実施の形態に係る助手席用エアバッグの膨張完了状態を示す斜視図である。
図6】さらに別の実施の形態に係る助手席用エアバッグのパネル構成図である。
図7】さらに別の実施の形態に係る助手席用エアバッグの膨張完了状態を示す平面図である。
図8】さらに別の実施の形態に係る助手席用エアバッグの膨張完了状態を示す平面図である。
図9】さらに別の実施の形態に係る助手席用エアバッグの膨張完了状態を示す断面図である。
図10】さらに別の実施の形態に係る助手席用エアバッグの膨張完了状態を示す断面図である。
図11】さらに別の実施の形態に係る助手席用エアバッグの膨張完了状態を示す断面図である。
図12】さらに別の実施の形態に係る助手席用エアバッグの膨張完了状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0023】
図1a~4に示す第1の実施の形態に係る助手席用エアバッグ1は、インパネ(インストルメントパネル)とウィンドシールドとの間に膨張展開する。この助手席用エアバッグ1は、図1a,1b,2の通り、メインパネル10と、トップパネル40と、ボトムパネル30とを縫着したものである。
【0024】
膨張完了状態の助手席用エアバッグ1は、乗員対向面2と、左右のサイド面3,4と、上面5と、下面6とを有する。サイド面3,4にはそれぞれベントホール(図示略)が設けられている。膨張完了状態の乗員対向面2には、該乗員対向面2を上下に縦断するように上下方向に延在する凹部8が形成され、凹部8の左右両側には上下に延在する凸部9が形成される。
【0025】
図2の通り、メインパネル10の上辺及び下辺は、それぞれ左右方向の中央に、略V字状の小切り込み部11,21が設けられている。小切り込み部11,21の左側に略V字状の左側切り込み部12,22が設けられ、右側に略V字状の右側切り込み部13,23が設けられている。小切り込み部11,21の切り込み深さは、左側及び右側切り込み部12,22,13,23の切り込み深さよりも小さい。
【0026】
左側切り込み部12,22よりも左側は、左斜辺部14,24となっており、右側切り込み部13,23よりも右側は右斜辺部15,25となっている。左斜辺部14,24の左端同士はメインパネル10の左端において交わっており、右斜辺部15,25の右端同士はメインパネル10の右端において交わっている。これにより、メインパネル10は、略菱型となっている。
【0027】
左斜辺部14,24と左側切り込み部12,22との交点16,26近傍部及び右斜辺部15,25と右側切り込み部13,23との交点17,27近傍部は、それぞれ外方に向って突出している。
【0028】
小切り込み部11,21は、略V字状に交わる左辺縁11a,12a及び右辺縁11b,21bを有している。
【0029】
左側及び右側切り込み部12,13,22,23は、略V字状に交わる左辺縁12a,13a,22a,23a及び右辺縁12b,13b,22b,23bを有している。左側及び右側切り込み部12,13,22,23の左辺縁12a,13a,22a,23a及び右辺縁12b,13b,22b,23bは、メインパネル10の外方に向って張り出す湾曲形状(この実施の形態ではアール形状と称される円弧形状)となっている。左右の斜辺部14,15,24,25は、交点16,17,26,27近傍では凹に湾曲しているが、その他の部分では若干凸に湾曲している。
【0030】
トップパネル40は、後辺41と、左辺42と、右辺43と、前辺44とを有する略台形のパネルである。この実施の形態では、左辺42及び右辺43と、後辺41との交差部は、丸みを帯び、左方及び右方にそれぞれ張り出した形状となっている。左辺42及び右辺43の前部側は前後方向に略直線状に延在している。
【0031】
後辺41は、この丸みを帯びた左右両端部を除いて、左右方向に直線状に延在している。前辺44は左右方向に直線状に延在している。
【0032】
ボトムパネル30は、後辺31と、左辺32と、右辺33と、前辺34とを有する略台形のパネルである。この実施の形態では、左辺32及び右辺33と、後辺31との交差部は、丸みを帯び、左方及び右方にそれぞれ張り出した形状となっている。左辺32及び右辺33の前部側は前後方向に略直線状に延在している。
【0033】
後辺31は、この丸みを帯びた左右両端部を除いて、左右方向に直線状に延在している。前辺34は左右方向に直線状に延在している。
【0034】
ボトムパネル30の前部側には、インフレータ用開口35が設けられている。該インフレータ用開口35の周囲には、インフレータ取付用ボルトを挿通させるための小孔(図示略)が複数個(例えば4個)設けられている。
【0035】
メインパネル10の上辺の小切り込み部11の左辺縁11a及び右辺縁11bと、トップパネル40の後辺41の中央縫合予定部41a,41bとを縫合する。この中央縫合予定部41a,41bは、後辺41の左右方向の中間点から左側及び右側の所定範囲の部分である。
【0036】
メインパネル10の左側切り込み部12にあっては、左辺縁12aと右辺縁12bとを縫合し、右側切り込み部13にあっては、左辺縁13aと右辺縁13bとを縫合する。上辺の交点16は中央縫合予定部41aの左端に縫合され、交点17は中央縫合予定部41bの右端に縫合される。
【0037】
左斜辺部14を、トップパネル40の中央縫合予定部41aの左端から左辺42の前端までの範囲に縫合する。また、右斜辺部15を中央縫合予定部41bの右端から右辺43の前端までの範囲に縫合する。
【0038】
メインパネル10の下辺の小切り込み部21の左辺縁21a及び右辺縁21bと、ボトムパネル30の後辺31の中央縫合予定部31a,31bとを縫合する。この中央縫合予定部31a,31bは、後辺31の左右方向の中間点から左側及び右側の所定範囲の部分である。
【0039】
メインパネル10の下辺の左側切り込み部22にあっては、左辺縁22aと右辺縁22bとを縫合し、右側切り込み部23にあっては、左辺縁23aと右辺縁23bとを縫合する。下辺の交点26は中央縫合予定部31aの左端に縫合され、交点27は中央縫合予定部31bの右端に縫合される。
【0040】
左斜辺部24を、ボトムパネル30の中央縫合予定部31aの左端から左辺32の前端までの範囲に縫合する。また、右斜辺部25を中央縫合予定部31bの右端から右辺33の前端までの範囲に縫合する。
【0041】
このように、各左辺縁12a,13a,22a,23aと各右辺縁12b,13b,22b,23bとを縫合すると共に、小切り込み部11の辺縁11a,11bをトップパネル40の後辺41の中央部に縫合し、小切り込み部21の辺縁21a,21bをボトムパネル30の後辺31の中央部に縫合することにより、図1a,3,4の通り、乗員対向面2の左右両側に、助手席用エアバッグ1の膨張完了状態において後方すなわち乗員側へ突出した凸部9,9が形成されると共に、凸部9,9間に上下方向に延在した凹部8が形成される。
【0042】
この実施の形態では、図3,4の通り、乗員対向面2の中央部(上下方向の中央かつ左右方向の中央)と助手席用エアバッグ1の前部側とをつなぐ前後方向テザー51が設けられている。この実施の形態では、テザー51の前端は、ボトムパネル30のインフレータ用開口35の周縁部に縫合されている。このテザー51を設けたことにより、凹部8の深さが規定通りとなる。
【0043】
また、この実施の形態では、図3の通り、左サイド面3と右サイド面4とをつなぐ左右方向テザー52が設けられている。このテザー52は、乗員対向面2の前記中央部にも縫合されている。
【0044】
図3,4の符号Sは、テザー51,52と各パネル同士の縫合糸を示している。
【0045】
なお、上記のように各パネル10,30,40同士を縫着した後、インフレータ用開口35を通してエアバッグ1を表裏反転させることにより、縫合代をエアバッグ1内に配置させて製品形態のエアバッグ1とする。
【0046】
このエアバッグ1は、インフレータが取り付けられ、折り畳まれ、箱状のケース内に設置され、インフレータ取付用ボルトによってケースに取り付けられる。インパネには、エアバッグ1の折り畳み体を覆うようにリッド(図示略)が設けられる。折り畳まれたエアバッグ1と、インフレータと、ケースとによって助手席用エアバッグ装置が構成される。このリッドはインパネの一部として設けられてもよく、インパネとは別体の蓋状部材として設けられてもよい。後者の場合、リッドはケースに連結される。
【0047】
インフレータが作動した場合、エアバッグ1はリッドを押し開け、図1a,3,4の通り、助手席乗員の前方においてインパネとウィンドシールドとの間に展開し、該乗員を拘束する。
【0048】
このエアバッグ1は、膨張完了状態にあっては、乗員対向面2は、助手席用エアバッグ1の後面視において、略方形となる。そして、この乗員対向面2に上下方向の凹部8が形成され、凹部8の左側及び右側にそれぞれ上下方向に延在する凸部9が形成される。車両衝突時に、乗員の上半身の左側部分及び右側部分がそれぞれ凸部9,9によって拘束される。乗員の頭部は凹部8に入り込むようにして拘束される。凹部8は乗員の胸骨に対面する。
【0049】
このエアバッグ1にあっては、車両の左斜突(車両に対し左前方から衝撃が加えられる衝突形態。オフセット衝突を含む。)時には乗員が左側の凸部9に受承され、右斜突時には右側の凸部9に受承される。
【0050】
この助手席用エアバッグ1は、パネル構成が簡易であり、縫製が容易であると共に、パネル総重量を小さくすることができる。また、エアバッグ1内を左右に区画する隔壁がないので、インフレータからのガスがエアバッグ1内の全体に速やかに流れる。
【0051】
本発明では、図5の助手席用エアバッグ1’の通り、膨張完了状態の助手席用エアバッグ1’の後部上面及び後部下面に、凹部8を跨ぐテザー60,62を設け、凹部8の上部及び下部の左右幅を規制してもよい。テザー60,62の両端部は縫合糸61によって上面5、下面6にそれぞれ縫合されている。図5では、上側及び下側のテザー60,62の双方が設けられているが、上側のテザー60のみ又は下側のテザー62のみを設けてもよい。図5の助手席用エアバッグ1’のその他の構成は助手席用エアバッグ1と同一である。
【0052】
上記実施の形態では、1条の凹部8が乗員対向面2の中央を上下方向に延在するように設けられているが、2条以上の上下方向の凹部が設けられてもよい。2条の凹部を形成するためのメインパネルの一例を図6に示す。
【0053】
図6のメインパネル10’にあっては、メインパネル10’の上辺及び下辺の左右方向の中間から所定距離だけ左側の部分及び右側の部分にそれぞれ小切り込み部11,21が設けられ、左側の小切り込み部11,21の左側にそれぞれ左側切り込み部12,22が設けられ、右側の小切り込み部11,21の右側にそれぞれ右側切り込み部13,23が設けられている。各小切り込み部11,11同士の間に中央切り込み部19,29が設けられている。中央切り込み部19,29の形状は、左側及び右側切り込み部12,13,22,23と同様である。中央切り込み部19の左辺縁19aと右辺縁19bとを縫合し、中央切り込み部29の左辺縁29aと右辺縁29bとを縫合することにより、中央切り込み部19,29部分が、左側及び右側切り込み部12,13,22,23部分と同様に、エアバッグ膨張完了時に後方に突出した凸部となる。
【0054】
このメインパネル10’を用いて構成された助手席用エアバッグは、膨張完了状態において乗員対向面の左半側及び右半側に、それぞれ上下方向に延在する凹部が2条形成され、凸部が3条形成される。即ち、凸部は、凹部同士の間、左側凹部の左方側、右側凹部の右方側にそれぞれ形成される。
【0055】
上記各実施の形態の助手席用エアバッグ1は、左右対称であるが、本発明はこれに限定されず、膨張完了時に乗員対向面2の左側又は右側が他の部分よりも後方に突出する構成とされてもよい。
【0056】
図7,8に示す助手席用エアバッグ1A,1Bは、この一例を示している。図7,8は、膨張完了状態の助手席用エアバッグ1A,1Bの平面図である。
【0057】
図7の助手席用エアバッグ1Aは、凹部8が乗員対向面2の中央よりも左方に位置している。凹部8よりも左方の左側部分1Lは車両後方へ張り出している。この左側部分1Lは、左前方への斜突(オフセット斜突を含む)時に乗員を拘束する。
【0058】
図8の助手席用エアバッグ1Bでは、乗員対向面2に2条の上下方向凹部8,8が形成されており、膨張完了状態では、乗員対向面2に左側部分1L、右側部分1R及び中央部分1Mが形成される。左側部分1Lは右側部分1R及び中央部分1Mよりも後方に突出し、右側部分1Rは中央部分1Mと同一か又はそれよりも後方に突出している。
【0059】
この助手席用エアバッグ1Bの左側部分1Lも、左前方への斜突(オフセット斜突を含む)時に乗員を拘束する。
【0060】
図7,8では、左側部分1Lを後方へ突出させているが、図7,8と逆(左右対称)とし、右側部分を後方へ突出させてもよい。また、図8において、左側部分1Lと右側部分1Rとを後方へ突出させてもよい。
【0061】
本発明では、内部のテザー51,52の双方とも設けられなくてもよい。また、テザー51,52の一方のみが設けられてよい。
【0062】
図9a,9bのエアバッグ1C(なお、図9bは図8aのIXb-IXb線断面図である。)では、前後方向テザー51Cのみが設けられている。図10のエアバッグ1Dでは、左右方向テザー52Dのみが設けられている。なお、図10では、左側のテザー52Dと右側のテザーとが別体となっている。図11のエアバッグ1Eでは、前後方向テザー51Cと左右方向テザー52Dとが設けられている。図12のエアバッグ1Fのように、左右方向テザー52Dは、左右側方ほど前方となるように斜めに設けられてもよい。図12において、さらに前後方向テザーが設けられてもよい。
【0063】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、上記実施の形態では、メインパネル10,10’が左端側から右端側まで連続した1枚のパネルにて構成されているが、2枚以上のパネルを縫合などにより繋ぎ合わせてメインパネルを構成してもよい。具体的には、メインパネルを中央で分断した形状の左半側パネルと右半側パネルとを繋ぎ合わせたメインパネルを用いてもよい。
【0064】
上記実施の形態では、メインパネル10,10’の上辺及び下辺にそれぞれ切り込み部が設けられているが、上辺及び下辺の一方にのみ切り込み部が設けられてもよい。また、上辺又は下辺に左側切り込み部と右側切り込み部との一方だけ設けられてもよい。本発明では、複数個設けられた切り込み部の少なくとも一部のものが他のものと切込み深さが異なってもよい。本発明では、小切り込み部は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,1’,1A~1F エアバッグ
2 乗員対向面
3,4 サイド面
5 上面
6 下面
8 凹部
9 凸部
10,10’ メインパネル
11,21 小切り込み部
12,22 左側切り込み部
13,23 右側切り込み部
19,29 中央切り込み部
30 ボトムパネル
35 インフレータ用開口
40 トップパネル
51,52,60,62 テザー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12