(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】電気部品製造装置および電気部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 3/00 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
B23K3/00 310D
(21)【出願番号】P 2018017400
(22)【出願日】2018-02-02
【審査請求日】2020-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】津田 貞之
(72)【発明者】
【氏名】古本 敦司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳則
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-051672(JP,A)
【文献】特開2004-006650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00-3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるワーク(52)に伝導する熱により部品(51)のはんだ付結合を実施して電気部品を製造する装置であって、
接触している前記ワークを予熱する予熱部(10)と、
前記予熱部よりも搬送下流に設けられ前記予熱部よりも高温であってはんだが溶融可能な温度に設定されて、接触している前記ワークを加熱する溶融加熱部(12)と、
前記溶融加熱部よりも搬送下流に設けられて、接触している前記ワークを冷却する冷却部(13)と、
前記ワークを支持して、前記予熱部、前記溶融加熱部、前記冷却部の順に接触させながら前記ワークを搬送する搬送部(2)と、
を備え、
前記搬送部は、
前記ワークを前記予熱部から前記溶融加熱部に移動させる途中で前記ワークが前記予熱部及び前記溶融加熱部の両方に同時に接触する接触位置を通過するように、且つ前記ワーク
を前記接触位置で停止
させることな
く前記予熱部から前記溶融加熱部に移動させ、前記溶融加熱部において停止させる間欠搬送を行う電気部品製造装置。
【請求項2】
前記ワークは、導電性を有するターミナル(520)を有しており、
前記接触位置は、前記ターミナルが前記予熱部及び前記溶融加熱部の両方に同時に接触する位置である請求項1に記載の電気部品製造装置。
【請求項3】
前記ワークにおいては、搬送方向において互いに離間した位置にある複数のはんだ付部(510)により前記部品がはんだ付結合されている、請求項1または請求項2に記載の電気部品製造装置。
【請求項4】
前記ワークは、ターミナル(520)と、前記ターミナルにはんだ付結合される素子(51)とを含んでおり、
前記溶融加熱部は、前記ターミナルにおいて前記素子とのはんだ付部(510)を除く接触加熱部位に接触している請求項1
から請求項
3のいずれか一項に記載の電気部品製造装置。
【請求項5】
搬送されるワーク(52)に伝導する熱により部品(51)のはんだ付結合を実施して電気部品を製造する装置であって、
接触している前記ワークを予熱する予熱部(10)と、
前記予熱部よりも搬送下流に設けられ前記予熱部よりも高温であってはんだが溶融可能な温度に設定されて、接触している前記ワークを加熱する溶融加熱部(12)と、
前記溶融加熱部よりも搬送下流に設けられて、接触している前記ワークを冷却する冷却部(13)と、
前記ワークを支持して、前記予熱部、前記溶融加熱部、前記冷却部の順に接触させながら前記ワークを搬送する搬送部(2)と、
を備え、
前記搬送部は、前記ワークが前記予熱部と前記溶融加熱部の両方に同時に接触した状態で停止することなく前記ワークを前記予熱部から前記溶融加熱部に移動させ、前記溶融加熱部において停止させる間欠搬送を行
い、
前記ワークは、ターミナル(520)と、前記ターミナルにはんだ付結合される素子(51)とを含んでおり、
前記溶融加熱部は、前記ターミナルにおいて前記素子とのはんだ付部(510)を除く接触加熱部位に接触している電気部品製造装置。
【請求項6】
前記溶融加熱部で停止している状態である前記ワークと前記溶融加熱部との接触度合を高める力を提供する接触力強化部(3)をさらに備える請求項1
から請求項5のいずれか一項に記載の電気部品製造装置。
【請求項7】
前記予熱部と前記溶融加熱部との間に設けられ、前記予熱部の温度と前記溶融加熱部の温度との間に含まれる温度に設定されている中間加熱部(11)をさらに備え、
前記搬送部は、前記ワークを、前記予熱部において停止させ、前記予熱部から前記中間加熱部へ移動させ、前記中間加熱部において停止させる間欠搬送を行う請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の電気部品製造装置。
【請求項8】
搬送されるワークに伝導する熱により部品のはんだ付結合を実施して電気部品を製造する装置であって、
前記ワークに接触して予熱する予熱部(10)と、
前記予熱部よりも搬送下流に設けられ前記予熱部よりも高温であってはんだが溶融可能な温度に設定されて、前記ワークにおける前記部品とのはんだ付部(510)を除く接触加熱部位に接触して加熱する溶融加熱部(12)と、
前記溶融加熱部よりも搬送下流に設けられて接触している前記ワークを冷却する冷却部(13)と、
前記ワークを支持して前記予熱部、前記溶融加熱部、前記冷却部の順に接触させながら前記ワークを搬送する搬送部(2)と、
を備える電気部品製造装置。
【請求項9】
前記溶融加熱部で停止している状態である前記接触加熱部位と前記溶融加熱部との接触度合を高める力を提供する接触力強化部(3)をさらに備える請求項
8に記載の電気部品製造装置。
【請求項10】
前記予熱部と前記溶融加熱部との間に設けられ、前記予熱部の温度と前記溶融加熱部の温度との間に含まれる温度に設定されている中間加熱部(11)をさらに備える請求項
7または請求項
9に記載の電気部品製造装置。
【請求項11】
ターミナル(520)に素子(51)をはんだ付結合するためのはんだを準備する工程と、
前記素子を前記ターミナルにおけるはんだ付部(510)に設置する設置工程と、
前記設置工程の後、はんだの溶融可能温度よりも低い予熱温度である予熱部材(10)に前記ターミナルを接触させた状態で停止させて、前記予熱部材によって予熱する予熱工程と、
前記予熱工程の後、前記ターミナルを前記予熱工程における停止状態から搬送して、
前記ターミナルを前記予熱部材からはんだの溶融可能温度である溶融加熱部材(12)
に移動させる途中で前記ターミナルが前記予熱部材と前記溶融加熱部材との両方に同時に接触する接触位置を通過させ、前記ターミナルを
前記接触位置で停止させることなく前記予熱部材及び前記溶融加熱部材のうち前記溶融加熱部材だけに接触させた状態で停止させて、前記溶融加熱部材によって加熱する溶融加熱工程と、
前記溶融加熱工程の後、前記ターミナルを搬送してはんだが固化する温度である冷却部材(13)に前記ターミナルを接触させた状態で停止させて前記冷却部材によって冷却して、前記ターミナルに前記素子をはんだ付結合する冷却工程と、
を実施する電気部品の製造方法。
【請求項12】
前記予熱工程および前記溶融加熱工程において、前記予熱部材および前記溶融加熱部材は、前記ターミナルにおける前記はんだ付部を除く接触加熱部位に接触する請求項
11に記載の電気部品の製造方法。
【請求項13】
ターミナル(520)に素子(51)をはんだ付結合するためのはんだを準備する工程と、
前記素子を前記ターミナルにおけるはんだ付部(510)に設置する設置工程と、
前記設置工程の後、はんだの溶融可能温度よりも低い予熱温度である予熱部材(10)に前記ターミナルを接触させた状態で停止させて、前記予熱部材によって予熱する予熱工程と、
前記予熱工程の後、前記ターミナルを前記予熱工程における停止状態から搬送して、はんだの溶融可能温度である溶融加熱部材(12)に前記ターミナルを接触させた状態で停止させて、前記溶融加熱部材によって加熱する溶融加熱工程と、
前記溶融加熱工程の後、前記ターミナルを搬送してはんだが固化する温度である冷却部材(13)に前記ターミナルを接触させた状態で停止させて前記冷却部材によって冷却して、前記ターミナルに前記素子をはんだ付結合する冷却工程と、
を実施
し、
前記予熱工程および前記溶融加熱工程において、前記予熱部材および前記溶融加熱部材は、前記ターミナルにおける前記はんだ付部を除く接触加熱部位に接触する電気部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電気部品製造装置および電気部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークを搬送するコンベアと、ワークに予備加熱および本加熱を施してはんだ付処理した後、冷却するはんだ処理部と、炉を形成する本体部とを有するリフロー炉が記載されている。予備加熱ゾーンのコンベアの上部および下部には熱風発生部が設置され、本加熱ゾーンのコンベアの上部および下部にも熱風発生部が設置されている。
【0003】
特許文献2には、ワークを搬送するコンベアベルトを通して、ヒータブロックの熱をワークに移動させてワークを加熱することにより、伝導される熱によりリフローはんだ付を行う装置が記載されている。この装置は、ワークを予熱するプリヒート用ヒータブロックと、プリヒート用ヒータブロックの下流側でワークに塗布されたソルダペーストを溶融するリフロー用ヒータブロックと、ワーク冷却速度調整用ヒータブロックと、ワーク冷却用ブロックとを備える。ワーク冷却速度調整用ヒータブロックはリフロー用ヒータブロックの下流側でワークの冷却速度を遅らせるように加熱調節することでワークを緩やかに冷却する。ワーク冷却用ブロックはワーク冷却速度調整用ヒータブロックの下流側でワークを急速に冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-77607号公報
【文献】特許第3138486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、熱風発生装置とリフロー炉とを有するため、製造装置の大型になりやすいという課題がある。
【0006】
特許文献2の装置は特許文献1の装置に比べて小型化できる。しかし、特許文献2では、プリヒート用ヒータブロックのエリアとリフロー用ヒータブロックのエリアにおいてワークをコンベアで連続的に搬送するため、ワークが温度差のあるエリアをまたいだ状態で加熱される。この加熱状態により、搬送方向においてワークの温度差が大きくなりやすい。このため、ワークにおいて溶融するはんだの表面張力に差が生じてツームストーン現象が発生するという課題がある。また、特許文献2に記載の装置では、溶融したはんだが流動してヒータブロックに付着するという課題がある。
【0007】
この明細書に開示する一つの目的は、製造装置の小型化とワークにおける温度差の抑制とを図る電気部品製造装置および電気部品の製造方法を提供することである。
【0008】
この明細書に開示する一つの目的は、製造装置の小型化とはんだの流動抑制とを図る電気部品製造装置および電気部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
開示された電気部品製造装置の一つは、搬送されるワーク(52)に伝導する熱により部品(51)のはんだ付結合を実施して電気部品を製造する装置であって、接触しているワークを予熱する予熱部(10)と、予熱部よりも搬送下流に設けられ予熱部よりも高温であってはんだが溶融可能な温度に設定されて、接触しているワークを加熱する溶融加熱部(12)と、溶融加熱部よりも搬送下流に設けられて、接触しているワークを冷却する冷却部(13)と、ワークを支持して、予熱部、溶融加熱部、冷却部の順に接触させながらワークを搬送する搬送部(2)と、を備え、搬送部は、ワークを予熱部から溶融加熱部に移動させる途中でワークが予熱部及び溶融加熱部の両方に同時に接触する接触位置を通過するように、且つワークを接触位置で停止させることなく予熱部から溶融加熱部に移動させ、溶融加熱部において停止させる間欠搬送を行う。
開示された電気部品製造装置の一つは、搬送されるワーク(52)に伝導する熱により部品(51)のはんだ付結合を実施して電気部品を製造する装置であって、接触しているワークを予熱する予熱部(10)と、予熱部よりも搬送下流に設けられ予熱部よりも高温であってはんだが溶融可能な温度に設定されて、接触しているワークを加熱する溶融加熱部(12)と、溶融加熱部よりも搬送下流に設けられて、接触しているワークを冷却する冷却部(13)と、ワークを支持して、予熱部、溶融加熱部、冷却部の順に接触させながらワークを搬送する搬送部(2)と、を備え、搬送部は、ワークが予熱部と溶融加熱部の両方に同時に接触した状態で停止することなくワークを予熱部から溶融加熱部に移動させ、溶融加熱部において停止させる間欠搬送を行い、ワークは、ターミナル(520)と、ターミナルにはんだ付結合される素子(51)とを含んでおり、溶融加熱部は、ターミナルにおいて素子とのはんだ付部(510)を除く接触加熱部位に接触している。
【0011】
開示された電気部品製造装置によれば、ワークは予熱部、溶融加熱部、冷却部の順に接触しながら各部において温度調節される構造であるので、製造装置の占有容積を抑えることができる。搬送部は、ワークが予熱部と溶融加熱部の両方に同時に接触した状態で停止することなくワークを予熱部から溶融加熱部へ移動させて溶融加熱部において停止させる間欠搬送を行う。このため、予熱部と溶融加熱部の両方が同時にワークを加熱する時間が短く、ワークを溶融加熱部で加熱する時間を十分に確保できる。これにより、ワークの搬送過程において、ワークにおける搬送方向の温度差を抑えるようなワークの加熱を実現できる。このように電気部品製造装置は、製造装置の小型化とワークにおける温度差の抑制効果とを提供することができる。
【0012】
開示された電気部品製造装置の一つは、搬送されるワーク(52)に伝導する熱により部品(51)のはんだ付結合を実施して電気部品を製造する装置であり、ワークに接触して予熱する予熱部(10)と、予熱部よりも搬送下流に設けられ予熱部よりも高温であってはんだが溶融可能な温度に設定されて、ワークにおける部品とのはんだ付部(510)を除く接触加熱部位に接触して加熱する溶融加熱部(12)と、溶融加熱部よりも搬送下流に設けられて接触しているワークを冷却する冷却部(13)と、ワークを支持して予熱部、溶融加熱部、冷却部の順に接触させながらワークを搬送する搬送部(2)と、を備える。
【0013】
開示された電気部品製造装置によれば、ワークは予熱部、溶融加熱部、冷却部の順に接触しながら各部において温度調節される構造であるため、製造装置の占有容積を抑えることができる。溶融加熱部は、ワークにおける部品とのはんだ付部を除く接触加熱部位に熱を与えるため、溶融状態のはんだが大きく流動することを抑えて、溶融状態のはんだが溶融加熱部側に流れてしまうことを抑制できる。このように電気部品製造装置は、製造装置の小型化とはんだの流動抑制とを提供することができる。
【0014】
開示された電気部品の製造方法の一つは、ターミナル(520)に素子(51)をはんだ付結合するためのはんだを準備する工程と、素子をターミナルにおけるはんだ付部(510)に設置する設置工程と、設置工程の後、はんだの溶融可能温度よりも低い予熱温度である予熱部材(10)にターミナルを接触させた状態で停止させて、予熱部材によって予熱する予熱工程と、予熱工程の後、ターミナルを予熱工程における停止状態から搬送して、ターミナルを予熱部材からはんだの溶融可能温度である溶融加熱部材(12)に移動させる途中でターミナルが予熱部材と溶融加熱部材との両方に同時に接触する接触位置を通過させ、ターミナルを接触位置で停止させることなく予熱部材及び溶融加熱部材のうち溶融加熱部材だけに接触させた状態で停止させて、溶融加熱部材によって加熱する溶融加熱工程と、溶融加熱工程の後、ターミナルを搬送してはんだが固化する温度である冷却部材(13)にターミナルを接触させた状態で停止させて冷却部材によって冷却して、ターミナルに素子をはんだ付結合する冷却工程と、を実施する。
開示された電気部品の製造方法の一つは、ターミナル(520)に素子(51)をはんだ付結合するためのはんだを準備する工程と、素子をターミナルにおけるはんだ付部(510)に設置する設置工程と、設置工程の後、はんだの溶融可能温度よりも低い予熱温度である予熱部材(10)にターミナルを接触させた状態で停止させて、予熱部材によって予熱する予熱工程と、予熱工程の後、ターミナルを予熱工程における停止状態から搬送して、はんだの溶融可能温度である溶融加熱部材(12)にターミナルを接触させた状態で停止させて、溶融加熱部材によって加熱する溶融加熱工程と、溶融加熱工程の後、ターミナルを搬送してはんだが固化する温度である冷却部材(13)にターミナルを接触させた状態で停止させて冷却部材によって冷却して、ターミナルに素子をはんだ付結合する冷却工程と、を実施し、予熱工程および溶融加熱工程において、予熱部材および溶融加熱部材は、ターミナルにおけるはんだ付部を除く接触加熱部位に接触する。
【0015】
開示された電気部品の製造方法によれば、ワークを予熱部材、溶融加熱部材、冷却部材の順に接触させながら各部において温度調節するので、製造装置の占有容積を抑えることができる。さらに、停止状態のワークを予熱部材から溶融加熱部材へ移動させ溶融加熱部材において停止させる製造方法であるため、予熱部材と溶融加熱部材の両方が同時にワークを加熱する時間が短く、ワークを溶融加熱部材で加熱する時間を十分に確保できる。この製造方法によれば、ワークの搬送過程において、ワークにおける搬送方向の温度差を抑えるようなワークの加熱を実現できる。この電気部品の製造方法は、製造装置の小型化とワークにおける温度差の抑制効果とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の製造装置を使用して製造した電気部品の平面図である。
【
図2】
図1の電気部品においてターミナルと素子とのはんだ付部を示した斜視図である。
【
図3】第1実施形態の製造装置の運転に関する構成図である。
【
図4】第1実施形態の製造装置について搬送部を取り外した状態を示した斜視図である。
【
図5】第1実施形態の製造装置を示した斜視図である。
【
図6】第1実施形態の製造装置において搬送部に支持されているワークを示した部分斜視図である。
【
図7】第1実施形態の製造装置において押圧装置によってワークと溶融加熱部との接触度合が高められた状態を示した部分斜視図である。
【
図8】第1実施形態の製造装置においてワークが溶融加熱部に接触して停止した状態を示した図である。
【
図9】第1実施形態の製造装置においてワークが溶融加熱部に接触している状態を示した側面図である。
【
図10】ワークが予熱部から溶融加熱部へ移動する様子を模式的に示した図である。
【
図11】第1実施形態の製造装置において、予熱工程と溶融加熱工程とにおけるワークの温度変化を示した図である。
【
図12】従来の製造装置において、予熱工程と溶融加熱工程とにおけるワークの温度変化を示した図である。
【
図13】第1実施形態の製造装置において、予熱工程と中間加熱工程と溶融加熱工程とにおけるワークの温度変化を示した図である。
【
図14】第2実施形態の製造装置について、予熱部材や中間加熱部材と溶融加熱部材とにおいて互いに隣接する端部の形状を示した図である。
【
図15】第3実施形態の製造装置について、台座に対する、予熱部材、中間加熱部材、溶融加熱部材に係る固定構造を示した平面図である。
【
図16】予熱部材、中間加熱部材、溶融加熱部材に係る固定構造をワークの搬送方向にみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について、
図1~
図13を参照して説明する。第1実施形態では、明細書に開示の目的を達成可能な電気部品製造装置や製造方法の一例を説明する。この電気部品製造装置や製造方法では、熱伝導性を有する部位同士をはんだ付結合する構成を有するワークを含む電気部品を製造することができる。この電気部品製造装置や製造方法では、例えば、導電性を有するターミナルに部品の端子がはんだ付結合されたワークを含む電気部品を製造することができる。このワークは、部品が搭載されたターミナル、または部品が搭載された電気部品とも称することができる。この電気部品は、ターミナルにはんだ付結合されている単数または複数の素子を有することができる。この電気部品は、例えば半導体デバイスを含むが、このような製品に限定されない。
【0019】
第1実施形態において開示する電気部品製造装置や製造方法は、ワーク52に固定物を接触させて固体物からの熱移動によってワーク52を直接加熱し、はんだ付部510に設けられたはんだを溶融する。したがって、この製造装置や製造方法は、ワーク52が固体間の熱伝達によって加熱される方式である。この製造装置や製造方法による製造物である電気部品の一例として、第1実施形態では
図1および
図2に図示するような電気部品5を開示する。
【0020】
電気部品5は、ワーク52と、ワーク52に溶接接合された第1素子50とを備えている。ワーク52は、第2素子51と第2素子51が搭載されたターミナル520とを含む。第1素子50は、導電性を有しターミナル520側に延びる複数の端子500を備える。第1素子50は、端子500がターミナル520に溶接接合されている構成によってターミナル520に結合されている。この溶接結合は、第2素子51とターミナル520とのはんだ付結合を実施する前に完了している。つまり、第2素子51をターミナル520の所定位置に設置する状態では、すでに端子500はターミナル520に溶接接合されている。
【0021】
図1に示すように、ワーク52は横方向に並ぶ2個のターミナル520を有している。ターミナル520は、例えば導電性の平板を打ち抜き加工して形成した板状の部材である。ワーク52は、2個のターミナル520を一端側で連結する連結部521を有している。連結部521は、2個のターミナル520の並び方向に延びる板状部分である。連結部521には、2個のターミナル520の並び方向に並ぶ2個の孔部521aが設けられている。孔部521aは、ワーク52を製造ライン1上に搬送するために支持装置21によって支持される被支持部である。
【0022】
各ターミナル520は、第1素子50と第2素子51とが結合されている。第1素子50は、例えば、半導体集積回路等の電子回路を構成する部品である。第2素子51は、例えば、セラミックコンデンサ等のチップコンデンサである。第2素子51は、導電部がターミナル520のはんだ付部510にはんだ付結合されている構成によってターミナル520と一体になっている。はんだ付部510には、はんだ材料が付着または被覆されている。第2素子51は、はんだ付部510を介してターミナル520に載置されるように電気部品5に設けられている。第2素子51は、ターミナル520において、孔部521aである被支持部とは離れた反対側に設けられている。
【0023】
ターミナル520には、製造工程のうちはんだを溶融する工程において溶融加熱部材12との接触度合を高めるために溶融加熱部材12にターミナル520を押しつける際に、製造装置によって押さえられる被押圧部が設けられている。この被押圧部は孔部521aとはんだ付部510との間に位置している。連結部521はターミナル520の一端側に設けられ、第2素子51はターミナル520の他端側に結合されている。第1素子50および溶接接合部501は、第2素子51およびはんだ付部510よりもターミナル520において他方側に設けられていることが好ましい。この構成により、連結部521、被押圧部、はんだ付部510、溶接接合部501は、ターミナル520一方側から他方側にかけてこの順に位置している。
【0024】
はんだ付部510は、板状のターミナル520において、第1素子50の端子500が溶接接合されている溶接接合部501を含む面とは反対側の面に設けられている。したがって、はんだ付部510は溶接接合面の裏面に設けられている。各ターミナル520には、ターミナル520の並び方向や端子500の延びる方向に並ぶ2個の第2素子51が搭載されている。
【0025】
次に
図3~
図9を参照しながら製造装置および製造方法について説明する。製造装置は、ワーク52がスライド移動する製造ライン1と、ワーク52を製造ライン1に押し付けるための押圧装置3と、ワーク52を製造ライン1上で搬送する搬送部2と、を備えている。
図3に示すように、製造装置の運転をつかさどる制御装置4は、製造ライン1における各部材の温度を調節するためにヒータ100、ヒータ110、ヒータ120を制御する電子式の制御装置である。ヒータ100は、製造ライン1における予熱部材10の温度を調節する発熱装置である。ヒータ110は、製造ライン1における中間加熱部材11の温度を調節する発熱装置である。ヒータ120は、製造ライン1における溶融加熱部材12の温度を調節する発熱装置である。予熱部材10、中間加熱部材11、溶融加熱部材12を加熱する装置は、各部材を直接に加熱する手段であればよく、前述のヒータに限定するものではない。
【0026】
製造ライン1には、気化したフラックスを回収するために、予熱部材10、中間加熱部材11、溶融加熱部材12等の上面と回収部とを連通させる回収通路が設けられている。回収通路には、吸入用の送風機等による吸引力が作用するように構成されている。この構成によれば、予熱部材10、中間加熱部材11、溶融加熱部材12等の上方に漂う気化したフラックスを回収通路に引き込み、回収部の内部に排出して集めることができる。
【0027】
さらに制御装置4は、押圧装置3の動作、支持装置21の動作、搬送用駆動装置20の駆動力を制御するように構成されている。制御装置4は、制御対象部品の作動を制御するハードウェアおよびソフトウェアを有する。制御装置4は、プログラムに従って動作するマイコンのようなデバイスを主なハードウェア要素として備える。
【0028】
押圧装置3は、製造方法のはんだを溶融する工程において、ターミナル520を熱源に押し付ける外力をワーク52に与える装置である。押圧装置3は、柱状の押圧部30を製造ライン1に近づけたり離間させたりするように駆動して、ターミナル520の中心付近に位置する被押圧部およびその周囲を適切な圧力で押さえることができる。押圧装置3は、押圧部30がターミナル520を製造ライン1に押し付ける接触状態と、押圧部30がターミナル520から離間した非接触状態とにわたって制御されるアクチュエータを有する。接触状態の動作により、ターミナル520と製造ライン1との接触度合が高まるため、押圧装置3は、ワーク52と製造ライン1との接触度合を高める力を提供する接触力強化部の一例である。
【0029】
支持装置21は、製造方法において、ワーク52を製造ライン1上で移動させるためにターミナル520を支持する装置である。支持装置21は、製造ライン1の側方をスライド移動する搬送部2に設けられたピン状部がターミナル520における孔部521aに嵌ることによってターミナル520を支持することができる。搬送用駆動装置20は、搬送部2を製造ライン1に沿う方向に搬送する駆動力を提供する装置である。搬送用駆動装置20は、支持装置21がターミナル520を支持した状態である搬送部2を駆動する。搬送用駆動装置20は、所定の送り速度、所定の送り距離、所定の停止時間にしたがってワーク52をステップ送りする間欠搬送を行うように、搬送部2を駆動するアクチュエータを有する。この動作により、はんだが溶融する工程においてターミナル520において大きな温度差が生じないようにでき、ワーク52におけるはんだ付結合状態に不具合が生じないような製造を実施できる。
【0030】
図4は、製造ライン1を理解しやすくするために、搬送部2を除いた状態の製造装置を示している。
図5は、
図4に搬送部2を追加して、正規の製造装置を示している。製造ライン1上には、多数のワーク52が搬送部2の搬送方向に並んで配置されている。製造ライン1上に並んでいる多数のワーク52は、
図5に示す搬送部2によって、停止状態から所定ピッチずつ搬送方向に送られた後、再び所定時間停止する。この実施形態の例では、最も搬送方向寸法が短い中間加熱部の寸法に合わせて、ワーク52を2個ずつまたは1個ずつ送る所定ピッチに設定されている。このような送りピッチによれば、製造工程において、ワーク52が隣接する2つエリアにまたがって停止するような事態を回避している。
【0031】
製造ライン1は、予熱部、中間加熱部、溶融加熱部、冷却部を備えている。予熱部は、接触しているワーク52を予熱する予熱部材10を備えている。予熱部材10は、ターミナル520の温度をはんだが溶融する温度に上げる前に予備加熱するエリアを構成し、予備加熱時間を確保するために溶融加熱部よりも搬送方向に長い寸法となるように設定されている。予熱部材10は、ヒータ100によって、例えば140℃~180℃の範囲の温度に設定されている。
【0032】
中間加熱部は、予熱部よりも搬送下流に設けられている。搬送下流とは、製造工程で搬送部2が進行する方向に、より進んだ位置のことを意図している。中間加熱部は、接触しているワーク52を予熱部よりも高い温度に加熱する中間加熱部材11を備えている。中間加熱部材11は、ターミナル520の温度をはんだ溶融可能温度に近づけるエリアを構成し、予熱部や溶融加熱部よりも搬送方向に短い寸法となるように設定されている。中間加熱部材11は、予熱部の温度と溶融加熱部の温度との間に含まれる温度に設定されており、ヒータ110によって、例えば180℃~220℃の範囲の温度に設定されている。
【0033】
溶融加熱部は、予熱部や中間加熱部よりも搬送下流に設けられている。溶融加熱部は、接触しているワーク52を予熱部や中間加熱部よりも高い温度に加熱する溶融加熱部材12を備えている。溶融加熱部材12は、接触しているターミナル520の温度をはんだが溶融可能な温度になるように、ヒータ110によって、例えば230℃~250℃の範囲の温度に設定されている。つまり、はんだ付部510に設けられたはんだは、ターミナル520がこの温度範囲に制御された場合に溶融する材料である。例えば、はんだには溶融温度が217℃となる材料が用いられている。
【0034】
図7は、溶融加熱部で停止している状態のすべてのワーク52に対して、押圧装置3が押圧力を提供する直前の状態を示している。この状態では、押圧部30は対応するワーク52の中心付近の直上に位置している。この後、溶融加熱部で停止している状態のすべてのワーク52は、押圧装置3によって溶融加熱部材12に押し付けられている。これにより、溶融加熱部材12とワーク52との接触度合が強化されて、固体間の熱伝達の効率を高めることができる。
【0035】
冷却部は、溶融加熱部よりも搬送下流に設けられている。冷却部は、接触しているワーク52を冷却する冷却部材13を備えている。冷却部材13は、接触しているターミナル520の温度をはんだが固化する温度になるように、例えば内部を流通する流体の吸熱作用によって制御されている。
【0036】
図4等に例示された製造装置は、この実施形態で説明するワーク52の個数、停止時間、移動時間に限定されず、多様な組み合わせによって構成することができる。例えば、予熱部材10、中間加熱部材11、溶融加熱部材12および冷却部材13は、搬送方向の長さが異なるものの同様の横断面形状を有するブロック状態で形成されており、この順に隣接して連なることによって製造ライン1を形成している。製造工程において、予熱部材10には20個のワーク52が配置され、中間加熱部材11には2個のワーク52が配置され、溶融加熱部材12には10個のワーク52が配置され、冷却部材13には2個のワーク52が配置されるようになっている。また、製造ライン1は、中間加熱部材11を除いた、予熱部材10、溶融加熱部材12および冷却部材13によって構成することもできる。
【0037】
図6および
図8は、製造装置においてワーク52が搬送部2によって支持されている状態を示している。搬送部2は、支持装置21のピン状部が孔部521aに下方から嵌った状態によって各ワーク52を支持している。ピン状部は、搬送方向について各ターミナル520に対応する位置で連結部521を支持している。したがって、支持装置21は1個のワーク52について搬送方向に並ぶ2箇所で支持している。孔部521aはその内径がピン状部の外径よりも大きくなるように形成されている。このため、ピン状部が孔部521aに嵌った状態で、ピン状部と孔部521aとの間にクリアランスが生じ、支持装置21がワーク52を支持する工程を円滑に実施することに貢献できる。
【0038】
図6に示すように、製造装置は複数の搬送部2を有し、各搬送部2は搬送方向に並ぶ4個のワーク52を支持している。溶融加熱部材12は、ターミナル520において第2素子51とのはんだ付部510を除く接触加熱部位に接触している。
図8および
図9に示すように、この接触加熱部位は、ターミナル520において溶融加熱部材12の上面12aと接触する部分である。この接触加熱部位は、ターミナル520において、はんだ付部510と連結部521との間の範囲である。したがって、はんだ付部510と第1素子50および溶接接合部501は、この接触加熱部位の外に位置している。
【0039】
電気部品を製造する方法は、ターミナル520に第2素子51をはんだ付結合するためのはんだを準備する準備工程、第2素子51をターミナル520におけるはんだ付部510に設置する設置工程、予熱工程、中間加熱工程、溶融加熱工程、および冷却工程を備える。準備工程は、すでに第1素子50が溶接接合されたターミナル520に対してはんだ付部510にはんだを設置する工程である。設置工程は、製造ライン1上に載置するすべてのワーク52について、はんだ付部510に第2素子51の導電部が接触するように第2素子51を所定の位置に設置する工程である。
【0040】
予熱工程は、設置工程の後、はんだの溶融可能温度よりも低い予熱温度に設定した予熱部材10にターミナル520を接触させた状態で停止させて予熱部材10によって予熱する。予熱工程では、ワーク52を1個分ずつステップ送りし、例えば停止状態から移動を開始後、4秒間経過するまで停止する。したがって、各ワーク52は予熱工程において80秒間予熱されることになる。中間加熱工程は、予熱工程の後、ターミナル520を予熱工程における停止状態から搬送して、予熱温度とはんだの溶融可能温度との間の温度に設定した中間加熱部材11にターミナル520を接触させた状態で停止させて加熱する。中間加熱工程でもワーク52を1個分ずつステップ送りし、例えば停止状態から移動を開始後、4秒間経過するまで停止するので、各ワーク52は中間加熱工程において8秒間加熱されることになる。
【0041】
溶融加熱工程は、中間加熱工程の後、ターミナル520を中間加熱部材工程における停止状態から搬送して、はんだの溶融可能温度に設定した溶融加熱部材12にターミナル520を接触させた状態で停止させて溶融加熱部材12によって加熱する。溶融加熱工程でもワーク52を1個分ずつステップ送りし、例えば停止状態から移動を開始後、4秒間経過するまで停止するので、各ワーク52は溶融加熱工程において40秒間加熱されることになる。冷却工程は、溶融加熱工程の後、ターミナル520を溶融加熱工程における停止状態から搬送して、はんだが固化する温度である冷却部材13にターミナル520を接触させた状態で停止させて冷却部材13によって冷却する。冷却工程でもワーク52を1個分ずつステップ送りし、例えば停止状態から移動を開始後、4秒間経過するまで停止するので、各ワーク52は冷却工程において8秒間冷却されることになる。
【0042】
各工程において搬送部2の動作を制御することにより、製造ライン1上のすべてのワーク52を同時に所定ピッチ分ステップ送りした後、所定時間停止させ、再び所定ピッチ分ステップ送り後所定時間停止することを繰り返す。つまり、搬送部2は、
図10において破線で示したワーク52から実線で示したワーク52へ短時間でワーク52をステップ送りすることを繰り返す。この搬送部2の動作によればワーク52は温度の異なる部材間を短時間で通過するため、各ワーク52が予熱部材10と中間加熱部材11の両方に同時に接触した状態で停止しないし、中間加熱部材11と溶融加熱部材12の両方に同時に接触した状態で停止しない。つまり、製造工程を通じてワーク52は、
図10において二点鎖線で示したワーク52の位置に停止することがない。これにより、製造工程を通じて各ワーク52の温度が搬送方向について大きくばらつくような事態を回避できる。
【0043】
図11は、中間加熱部材11を有していない場合の製造装置および方法において、予熱工程と溶融加熱工程とにおけるワーク52の温度変化を示している。この製造装置の場合、ワーク52は予熱部材10に対する停止状態から溶融加熱部材12に対する停止状態になるまで速やかに移動するので、ワーク52における搬送上流側のターミナル520も予熱部材10から溶融加熱部材12へ迅速に移動する。この間欠搬送により、搬送上流側のターミナル520は搬送下流側のターミナル520と同程度の時間、溶融加熱部材12に接触することができる。なお、搬送上流側とは、製造工程で搬送部2が進行する方向とは反対側を意図している。したがって、搬送上流側のターミナル520は、
図8において左側のターミナル520のことを示している。
【0044】
図11に示すように、予熱部材10に対する停止状態の開始から溶融加熱部材12に対する停止状態を終了するまでの間、搬送上流側のターミナル520の温度変化は、搬送下流側のターミナル520の温度変化とあまり変わらないことを示している。溶融加熱部材12に対する停止状態の初期にワーク52の温度は急上昇するが、搬送上流側のターミナル520と搬送下流側のターミナル520とは、温度の立ち上がり時間の差が小さくなっている。これにより、ワーク52の搬送方向におけるはんだ溶融の時間差が小さく、はんだの溶融状態が不均一になることを抑制でき、はんだ付結合を良好に実施することに寄与する。
【0045】
これに対して、
図12は従来の製造装置において、予熱工程と溶融加熱工程とにおけるワークの温度変化を示している。ここでいう従来の製造装置は、間欠搬送ではなく、予熱エリアと溶融加熱エリアとの両方にわたって一定の速度でワークを搬送する装置である。この製造装置の場合、ワーク52における搬送上流側のターミナル520は、搬送下流側のターミナル520よりも溶融加熱部材から受熱する時間が短くなる。したがって、
図12に示すように、ワークにおいて搬送上流側部の温度変化が搬送下流側部の温度変化よりもなだらかに立ち上がっている。つまり、ワークにおいて搬送方向の温度差が、
図11に示す温度差よりも大きいことを示している。この温度差により、はんだが溶融状態となるのに時間差が生じて溶融状態が不均一になり、ツームストーンなどの不具合が発生しやすくなる。
【0046】
図13は、予熱部材10と溶融加熱部材12との間に中間加熱部材11を有している製造装置および方法に関して、予熱工程と溶融加熱工程とにおけるワーク52の温度変化を示している。
図13において二点鎖線で示している温度変化は、
図11に示した、中間加熱部材11を有していない場合の温度変化である。この製造装置の場合、ワーク52は予熱部材10に対する停止状態から中間加熱部材11に対する停止状態になるまで迅速に移動し、さらに中間加熱部材11に対する停止状態から溶融加熱部材12に対する停止状態になるまで迅速に移動する。この間欠搬送により、搬送上流側のターミナル520は搬送下流側のターミナル520と同程度の時間、中間加熱部材11に接触することができる。
【0047】
図13に示すように、予熱部材10に対する停止状態の開始から中間加熱部材11に対する停止状態を終了するまでの間においても、搬送上流側のターミナル520の温度変化は、搬送下流側のターミナル520の温度変化とあまり変わらないことを示している。このように中間加熱部材11を備えることにより、ワーク52の温度を、はんだの溶融可能温度に向けてさらに段階的に上昇させることができるので、はんだが溶融する温度により到達しやく、また溶融加熱エリアにおけるワーク52の停止時間を抑えることも可能にする。
【0048】
次に第1実施形態がもたらす作用、効果について説明する。第1実施形態の電気部品製造装置は、搬送されるワーク52に伝導する熱により部品のはんだ付結合を実施して電気部品を製造する装置である。この製造装置の一つは、接触しているワーク52を予熱する予熱部と、予熱部よりも搬送下流に設けられる溶融加熱部と、溶融加熱部よりも搬送下流に設けられる冷却部と、予熱部、溶融加熱部、冷却部の順に接触させながらワーク52を搬送する搬送部とを備える。溶融加熱部は、予熱部よりも高温であってはんだが溶融可能な温度に設定されて、接触しているワーク52を加熱する。搬送部は、ワーク52が予熱部と溶融加熱部の両方に同時に接触した状態で停止することなくワーク52を予熱部から溶融加熱部へ移動させ、溶融加熱部において停止させる間欠搬送を行う。
【0049】
この製造装置によれば、ワーク52は予熱部、溶融加熱部、冷却部の順に接触しながら各部において温度調節される構造である。この加熱方式は、対流加熱でなく固体による熱伝達によるものであるので、製造装置の占有容積を抑えることができる。搬送部は、ワーク52が予熱部と溶融加熱部の両方に同時に接触した状態で停止することなくワーク52を予熱部から溶融加熱部へ移動させる間欠搬送を行う。このように予熱部と溶融加熱部の両方が同時にワーク52を加熱する時間が短く、溶融加熱部でワーク52全体を加熱する時間を十分に確保できる。これにより、はんだの溶融過程において、ワーク52における搬送方向の温度差を抑えるようなワーク52の加熱を実現でき、例えばツームストーンなどの不具合を抑制できる。このように製造装置は、装置全体の小型化とワーク52における温度差抑制とに寄与する。
【0050】
電気部品製造装置は、予熱部よりも搬送下流に設けられ予熱部よりも高温であってはんだが溶融可能な温度に設定されて、ワーク52における部品とのはんだ付部510を除く接触加熱部位に接触して加熱する溶融加熱部を備える。
【0051】
この製造装置によれば、溶融加熱部において、ワーク52における部品とのはんだ付部510を除く接触加熱部位に熱を与えるので、はんだが過剰に流動する状態になることを抑えることができる。はんだの過剰な溶融状態を抑えることにより、溶融状態のはんだが溶融加熱部材12に流れて付着してしまうことを抑制できる。この製造装置は、装置全体の小型化とはんだの流動抑制とに寄与する。
【0052】
電気部品製造装置は、溶融加熱部で停止している状態であるワーク52と溶融加熱部との接触度合を高める力を提供する接触力強化部をさらに備える。この製造装置によれば、ワーク52が溶融加熱部に載置されて接触している状態に比べて、ターミナル520と溶融加熱部との接触度合を高めることができる。この効果により、溶融加熱部の熱をターミナル520に効率的に熱伝達させることができるので、はんだの溶融状態を所望の状態にして、より確実なはんだ付結合を実施することに寄与する。
【0053】
ワーク52は、ターミナル520と、ターミナル520にはんだ付結合される素子とを含んでいる。溶融加熱部は、ターミナル520において素子とのはんだ付部510を除く接触加熱部位に接触している。この製造装置によれば、溶融加熱部と接触しているターミナル520における接触加熱部位は、はんだ付部510を含んでいないので、はんだ付部510の温度が過剰に上がりすぎないようにはんだを溶融させることに寄与する。これによれば、溶融状態のはんだの粘性が下がりすぎて過剰に流動して溶融加熱部材12に付着することを抑制できる。
【0054】
電気部品製造装置は、予熱部と溶融加熱部との間に設けられ、予熱部の温度と溶融加熱部の温度との間に含まれる温度に設定されている中間加熱部をさらに備える。搬送部2は、ワーク52を、予熱部において停止させ、予熱部から中間加熱部へ移動させ、中間加熱部において停止させる間欠搬送を行う。この製造装置によれば、停止状態のワーク52を予熱部から中間加熱部に移動させて停止し、さらに停止状態のワーク52を中間加熱部から溶融加熱部に移動させて停止する。これにより、ワーク52が予熱部と中間加熱部の両方で加熱される時間や中間加熱部と溶融加熱部の両方で加熱される時間を短くすることができ、ワーク52全体を中間加熱部や溶融加熱部で加熱する時間を十分に確保できる。したがって、搬送方向についてワーク52の温度差を抑えた加熱を実施でき、例えばツームストーンなどの不具合を抑制できる。さらに、予熱部と溶融加熱部との間に中間加熱部を備えることにより、ワーク52を加熱する温度設定がより小刻みになるので、ワーク52の熱変化を緩やかに設定することに寄与する。
【0055】
電気部品の製造方法の一つは、ターミナル520に第2素子51をはんだ付結合するためのはんだを準備する工程と、第2素子51をターミナル520におけるはんだ付部510に設置する設置工程とを実施する。この製造方法は、さらに予熱工程と溶融加熱工程と冷却工程とを実施する。予熱工程は、設置工程の後、はんだの溶融可能温度よりも低い予熱温度である予熱部材10にターミナル520を接触させた状態で停止させて、予熱部材10によって予熱する工程である。溶融加熱工程は、予熱工程の後、ターミナル520を予熱工程における停止状態から搬送して、はんだの溶融可能温度である溶融加熱部材12にターミナル520を接触させた状態で停止させて溶融加熱部材12によって加熱する工程である。冷却工程は、溶融加熱工程の後、ターミナル520を搬送してはんだが固化する温度である冷却部材13にターミナル520を接触させた状態で停止させて冷却部材13によって冷却してターミナル520に素子をはんだ付結合する。
【0056】
この製造方法によれば、ワーク52を予熱部材10、溶融加熱部材12、冷却部材13の順に接触させながら温度調節するので、製造装置の占有容積を抑えることができる。さらに製造方法は、停止状態のワーク52を予熱部材10から溶融加熱部材12へ移動させ溶融加熱部材12において停止させる方法である。このため、予熱部材10と溶融加熱部材12の両方が同時にワーク52を加熱する時間が短く、ワーク52全体が溶融加熱部材12で加熱されている時間を十分に確保できる。この製造方法によれば、ワーク52の搬送過程において、ワーク52において搬送方向の温度差を抑える加熱を実現でき、例えばツームストーンなどの不具合を抑制できる。この電気部品の製造方法は、製造装置の小型化とワーク52における温度差抑制とに寄与する。
【0057】
予熱工程および溶融加熱工程において、予熱部材10および溶融加熱部材12は、ターミナル520におけるはんだ付部510を除く接触加熱部位に接触する。この製造方法によれば、溶融加熱部材12において、ワーク52における第2素子51とのはんだ付部510を除く接触加熱部位に熱を与えるので、はんだが過剰に流動する状態になることを抑えることができる。これにより、溶融状態のはんだが溶融加熱部材12に流れて付着してしまうことを抑制できる。この製造方法は、装置全体の小型化とはんだの流動抑制とに寄与する。
【0058】
溶融加熱工程においては、溶融加熱部材12で停止している状態であるワーク52と溶融加熱部材12との接触度合を高める外力を提供する。この製造方法によれば、ワーク52が溶融加熱部材12に載置されて接触している状態に比べて、ターミナル520と溶融加熱部材12との接触度合を高めることができる。この効果により、溶融加熱部材12の熱がターミナル520に効率的に熱伝達するので、ターミナル520と第2素子51とのはんだ付結合をより確実に実施することに寄与する。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図14を参照して説明する。第2実施形態において、第1実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品および説明しない構成は、第1実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。第2実施形態では、第1実施形態との相違点のみ説明する。
【0060】
図14に示すように、隣接する予熱部材10と溶融加熱部材12との間には隙間が設けられている。隣接する中間加熱部材11と溶融加熱部材12との間には隙間が設けられている。また、隣接する溶融加熱部材12と冷却部材13の間に隙間が設けられていてもよく、隣接する予熱部材10と中間加熱部材11との間に隙間が設けられていてもよい。これらの隙間は、搬送されるワーク52が製造ライン1から脱落しないように設定されている。
【0061】
予熱部材10は、隣接する中間加熱部材11や溶融加熱部材12に対面する搬送下流端面10bに向かうにつれて、上面10aが低くなる表面形状を有する角部10a1を備える。中間加熱部材11は、隣接する溶融加熱部材12に対面する搬送下流端面11bに向かうにつれて、上面11aが低くなる表面形状を有する角部11a1を備える。中間加熱部材11は、隣接する予熱部材10に対面する搬送上流端面に向かうにつれて、上面11aが低くなる表面形状を有する角部を備える。溶融加熱部材12は、隣接する予熱部材10や中間加熱部材11に対面する搬送上流端面12bに向かうにつれて、上面12aが低くなる表面形状を有する角部12a1を備える。これらの角部は、湾曲面状、面取り形状で形成することができる。これらの角部は、ワーク52を製造ライン1で安定的かつ円滑に搬送できるような寸法に設定されている。
【0062】
第2実施形態の製造装置によれば、搬送部2によってワーク52を搬送する際に、製造ライン1において隣接する部材間でワーク52をスムーズに滑らすことに寄与する。したがって、第2実施形態によれば、生産性に優れた製造装置を提供できる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態について
図15および
図16を参照して説明する。第3実施形態において、第1実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品および説明しない構成は、第1実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。第3実施形態では、第1実施形態との相違点のみ説明する。
【0064】
図15および
図16に示すように、予熱部材10、中間加熱部材11、溶融加熱部材12のそれぞれは、搬送方向について一方側または他方側において、台座部材14に固定されている。予熱部材10、中間加熱部材11、溶融加熱部材12のそれぞれは、搬送下流端部近傍または搬送上流端部近傍において、台座部材14に固定されている固定部15を備える。固定部15は、予熱部材10、中間加熱部材11、溶融加熱部材12のそれぞれにおいて、搬送方向について1箇所に設けられている。したがって、予熱部材10、中間加熱部材11、溶融加熱部材12のそれぞれは、搬送方向について1箇所のみで台座部材14に固定されている。
【0065】
第3実施形態によれば、製造過程において予熱部材10、中間加熱部材11、溶融加熱部材12が熱膨張したとしても、各部材における台座部材14に対する拘束部位が搬送方向に1箇所であるため、熱膨張による変形を逃すことができる。したがって、ワーク52との接触面が大きく変形することを回避でき、ワーク52への熱伝達性能を確保できる製造装置を提供できる。
【0066】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0067】
前述の実施形態において、ワーク52は横方向に並ぶ2個のターミナル520を有しているが、ターミナルの個数は2個の限定するものではない。例えばワーク52は、1個または3個以上のターミナルを有する構成でもよい。
【0068】
前述の実施形態において押圧装置3は、ワーク52と溶融加熱部との接触度合を高める力を提供する接触力強化部に含まれる。製造装置における接触力強化部は、押圧装置3のようにワーク52を溶融加熱部に対して押し付ける構成に限定するものではない。接触力強化部は、ワーク52を吸引力等によって溶融加熱部に引き付ける構成であってもよい。
【0069】
前述の実施形態における押圧装置3は、溶融加熱部だけでなく、他のエリアにおいてもワーク52との接触度合を高める力を提供する構成としてもよい。これにより、溶融加熱部だけでなく、他のエリアにおいてもワーク52との接触度合が強化されて、固体間の熱伝達の効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0070】
2…搬送部、 3…押圧装置(接触力強化部)
10…予熱部材(予熱部)、 11…中間加熱部材(中間加熱部)
12…溶融加熱部材(溶融加熱部)、 13…冷却部材(冷却部)
51…第2素子(部品、素子)、 52…ワーク
510…はんだ付部、 520…ターミナル