(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】建設機械自動運転システム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20220216BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20220216BHJP
E02F 3/30 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
H04Q9/00 301Z
E02F9/20 Q
E02F9/20 H
E02F3/30 E
(21)【出願番号】P 2018030185
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】591181920
【氏名又は名称】大和機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】武石 学
(72)【発明者】
【氏名】副島 幸也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雄一
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-256020(JP,A)
【文献】特開2014-003395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
E02F 9/20
E02F 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線操作送信機を介して建設機械を自動運転させるシステムであって、
コンピュータと、
操作に応じた信号を送信することで、前記建設機械を操縦する前記無線操作送信機と、
前記コンピュータからの信号を前記無線操作送信機に伝達する通信手段と、を備え、
前記コンピュータ、前記通信手段、及び前記無線操作送信機は、前記建設機械とは異なる場所に配置され、
前記コンピュータが操作プログラムを実行することで、前記無線操作送信機を操作する操作信号を、前記通信手段を介して前記無線操作送信機に送信し、
前記操作信号を受信した前記無線操作送信機は、
該無線操作送信機が具備する操縦スイッチ及び/又は操縦桿を操作したときと同様の操縦信号を前記建設機械に送信することによって該建設機械を自動操縦し、
前記通信手段を前記コンピュータ又は前記無線操作送信機から切断された状態にすると、前記無線操作送信機を手動で操作することによって前記建設機械を操縦し得る、
ことを特徴とする建設機械自動運転システム。
【請求項2】
手動操作により前記無線操作送信機で前記建設機械を操縦した記録を記憶する操縦記録記憶手段と、
前記操縦記録記憶手段で記録された操縦記録に基づいて、前記操作プログラムを作成する操作プログラム作成手段と、をさらに備え、
前記コンピュータが、前記操作プログラム作成手段で作成された前記操作プログラムを実行する、
ことを特徴とする請求項1記載の建設機械自動運転システム。
【請求項3】
前記無線操作送信機の主電源がoffの状態であっても、コンピュータからの前記操作信号が前記操縦スイッチ及び/又は前記操縦桿に入力される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の建設機械自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、振動ローラやブルドーザといった建設機械の自動運転に関する技術であり、より具体的には、遠隔操作形式の建設機械を利用した建設機械自動運転システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建設業界の人手不足が深刻化しており、行政が計画している工事の遂行にも少なからず影響を及ぼしている。また、災害現場や事故現場など人が立ち入るには危険な場所で施工する場合、その安全対策には常に苦心を強いられていた。このような背景のもと、無人の建設機械によって土工事などを施工する「無人施工」が望まれていた。そして、情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)や測位技術(GNSS:Global Navigation Satellite System)の飛躍的な進歩もあって、この無人施工が実用化されるようになってきた。
【0003】
無人施工は、人が建設機械に乗ることなく、施工現場で建設機械のみが稼働することによって目的の施工を行うものであり、例えば盛土工事であればダンプトラックによる盛土材の運搬や、ブルドーザによる盛土材の敷き均し、振動ローラによる締め固めといった作業などで実践される。
【0004】
この無人施工は、遠隔操作形式と自動運転形式に大別することができる。遠隔操作形式は、人が建設機械から離れた位置に立ち、無線操作送信機を操作することによって建設機械を操る手法であり、通常は遠隔操作形式の建設機械と専用の無線操作送信機がセットで提供されている。一方の自動運転形式は、一連の作業が組み込まれたプログラムをコンピュータが実行することで建設機械が稼働する手法であり、通常は建設機械にコンピュータが搭載されており、離れた位置から人がタブレット型コンピュータ等で操作指示を送信する。
【0005】
遠隔操作形式は、直接的にあるいは動画等で間接的に建設機械の動きを確認しながら操作する手法あり、直感的に操作できるうえ不測の事態にも柔軟に対応することができるという長所がある反面、その操作にはある程度の経験が必要であり操作者が限定的になるという短所がある。
【0006】
自動運転形式は、熟練の操作者を要することなく無人施工を行うことができるという長所がある反面、建設機械にコンピュータを搭載するための技術や費用が必要であり、またコンピュータに不具合が生じた(例えば暴走した)ときにはその建設機械まで足を運んで対処しなければならないという短所がある。なお特許文献1では、自動運転コントローラ(コンピュータ)を建設機械に設置するための作業性及びコストの面を課題と捉え、これを解決するための技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の遠隔操作システムは、制御側の装置と重機2(建設機械)側の装置で構成され、制御側装置にはプログラミング遠隔操作装置11(コンピュータ)とオペレータ遠隔操作装置12(無線操作送信機)、送信制御装置13、無線LAN親機14が配置され、重機2側装置には制御装置20と複数の制御要素21、無線LAN子機22、センサ23が配置される。このうちプログラミング遠隔操作装置11は、プログラムを実行することによって制御信号を送るものであり、この制御信号を受信した重機2は自動運転を行う。またオペレータ遠隔操作装置12は、オペレータ(操作者)が遠隔操作を行うためのものであり、操作に伴って送られる操縦信号に応じて重機2が動作する。したがってこの遠隔操作システムは、いわば遠隔操作形式と自動運転形式を併用した手法といえる。
【0009】
送信制御装置13には、プログラミング遠隔操作装置11からの制御信号と、オペレータ遠隔操作装置12からの操縦信号が入力され、プログラミング遠隔操作モードのon/offを判断しながらいずれかの信号を、無線LAN親機14を介して重機2側装置の制御装置20に送信する。具体的には、プログラミング遠隔操作モードがonであってオペレータ遠隔操作装置12からの操縦信号が入力されていないときはプログラミング遠隔操作装置11からの制御信号を送信し、プログラミング遠隔操作モードがonであってもオペレータ遠隔操作装置12からの操縦信号が入力されているときはその操縦信号を送信する。
【0010】
このように特許文献1の遠隔操作システムは、2系統の信号(制御信号と操縦信号)が並列して入力される構造としていることから、これを選別するための送信制御装置13が必要となり、また重機2側装置には、2系統の信号(制御信号と操縦信号)のいずれにも対応すべく制御装置20が必要となり、したがってシステム構築にかかるコストは上昇する。さらに、これら送信制御装置13や制御装置20は相当の処理を行うものであるから、その分システム全体が複雑な構造となり不具合が生じる機会も増加する。特に、重機プログラミング遠隔操作装置11が暴走した場合は、重機2まで足を運んで制御装置20を操作することも考えられ、これでは遠隔操作形式と自動運転形式を併用した利益が半減する。
【0011】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわちコンピュータに不具合が生じた場合でも建設機械まで行くことなく柔軟に対処することができる建設機械自動運転システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、通常の遠隔操作形式の建設機械を利用することで、特段の装置を建設機械側に設置することなく自動運転を実現することとし、コンピュータと無線操作送信機を直列に接続して信号の伝達系等を1系統とする、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0013】
本願発明の建設機械自動運転システムは、無線操作送信機を介して建設機械を自動運転させるシステムであり、コンピュータと、無線操作送信機、通信手段を備えたものである。このうち無線操作送信機は、操作に応じた信号を送信することで建設機械を操縦する手段であり、通信手段は、コンピュータからの信号を無線操作送信機に伝達する手段である。コンピュータが操作プログラムを実行することで、無線操作送信機を操作する操作信号を、通信手段を介して無線操作送信機に送信し、操作信号を受信した無線操作送信機は、その操作信号に従って建設機械を自動操縦する。なお、通信手段を切断すると、無線操作送信機を手動で操作することによって建設機械を操縦することができる。
【0014】
本願発明の建設機械自動運転システムは、操縦記録記憶手段と操作プログラム作成手段をさらに備えたものとすることもできる。操縦記録記憶手段は、手動操作により無線操作送信機で建設機械を操縦した記録を記憶する手段であり、操作プログラム作成手段は、操縦記録記憶手段で記録された操縦記録に基づいて操作プログラムを作成する手段である。コンピュータは、操作プログラム作成手段で作成された操作プログラムを実行することもできる。
【0015】
本願発明の建設機械自動運転システムは、変換手段をさらに備えたものとすることもできる。変換手段は、コンピュータから送信されるデジタル形式の操作信号を、アナログ信号に変換する手段である。この場合、無線操作送信機は、アナログ形式の操作信号を受信する。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の建設機械自動運転システムには、次のような効果がある。
(1)人手不足を解消することができるうえ、危険な場所での施工も可能となる。
(2)コンピュータに不具合が生じた場合でも、無線操作送信機を操作することで建設機械の運転を継続することができる。したがって、従来のように作業者が建設機械まで行く必要がなく、その結果、作業者の安全性が極めて向上する。
(3)通常の遠隔操作形式の建設機械を利用することから、特段の装置を建設機械側に設置する必要がなく、その結果、システム全体の構築にかかるコストを抑えることができる。
(4)また、通常の遠隔操作形式の建設機械を利用することから、不具合が生ずる機会を抑制することができ、安定したシステム稼働を図ることができる。
(5)人による無線操作送信機の操作を記録し、これに基づいて操作プログラムを作成する仕様とすれば、効率的にプログラムを作成することができ、また、熟練操作者のノウハウを伝承することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本願発明の建設機械自動運転システムの主な構成を示すブロック図。
【
図2】本願発明の建設機械自動運転システムの主な構成を模式的に示したモデル図。
【
図4】操縦記録記憶手段と操作プログラム作成手段を含んで構成される建設機械自動運転システムの一部の構成を示すブロック図。
【
図5】通信手段が切断されたときの建設機械自動運転システムの主な構成を模式的に示したモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明の建設機械自動運転システムの実施形態の例を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明の建設機械自動運転システム100の主な構成を示すブロック図であり、
図2は、建設機械自動運転システム100の主な構成を模式的に示したモデル図である。
図1に示すように建設機械自動運転システム100は、コンピュータ110と、通信手段120、無線操作送信機130を含んで構成され、また操作プログラム記憶手段140や変換手段150を含んで構成することもでき、さらに後述する操縦記録記憶手段160と操作プログラム作成手段170を含んで構成することもできる。
【0019】
図2に示すように建設機械自動運転システム100は、通信手段120を介してコンピュータ110と無線操作送信機130がいわば直列に接続された構成であり、直接的には無線操作送信機130から操縦信号が送信される(
図2で示す破線の矢印)。そして、ダンプトラックやブルドーザ、振動ローラといった建設機械200が、無線操作送信機130からの操縦信号を受信すると、自動運転によって所定の施工を行う。建設機械自動運転システム100は、所望の場所に配置することができ、建設機械200が稼働している施工現場から離れた場所、例えば現場事務所などに設置することができる。なお、建設機械自動運転システム100は1台の建設機械200を自動運転させることもできるし、2台以上の建設機械200や2種類以上(例えばブルドーザと振動ローラ)の建設機械200を自動運転させることもできる。以下、建設機械自動運転システム100の主な構成ごとに詳しく説明する。
【0020】
(コンピュータ)
コンピュータ110は、種々のプログラムを実行するものであり、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備したもので、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものとすることもできる。コンピュータ110としては、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレットPC、スマートフォンを含む携帯端末、あるいはPDA(Personal Data Assistance)などを例示することができる。また
図1に示す操作プログラム記憶手段140は、例えばデータベースサーバに構築することができ、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くことも、あるいはインターネット経由で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0021】
建設機械自動運転システム100として作動する場合、コンピュータ110は操作プログラム記憶手段140から読み出した「操作プログラム」を実行する。ところで、従来の自動運転形式による無人施工では、建設機械200の動作(例えば走行ルートや転圧仕様など)を直接的に記述したプログラムを実行していたが、本願発明の「操作プログラム」は、無線操作送信機130(いわゆるコントローラ)を制御する指令が記述されている。すなわち、コンピュータ110が操作プログラムを実行すると、直接的には無線操作送信機130を操作する信号が送られ、この信号に基づいて無線操作送信機130の自動操作が行われ、そして、その操作に伴う信号に応じて建設機械200が動作するわけである。なおここでは便宜上、コンピュータ110から無線操作送信機130に送られる信号のことを「操作信号」と、無線操作送信機130から建設機械200に送られる信号のことを「操縦信号」ということとする。
【0022】
建設機械200によっては、GNSS受信や、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)、画像/動画取得手段、レーザー計測機といった各種センサを搭載しているものもある。これらセンサによる施工現場のリアルタイム情報は、建設機械自動運転システム100を管理するユーザにとっても極めて有益である。したがってこの場合、コンピュータ110の近傍に無線LANアクセスポイント(例えばWi-Fi)を設置することとし、コンピュータ110と建設機械200が通信可能となる構成にするとよい。
【0023】
(通信手段)
通信手段120は、操作プログラムを実行することによってコンピュータ110から送信される操作信号を、無線操作送信機130に伝達するものである。
図2では、コンピュータ110と無線操作送信機130が有線で接続され、すなわちこの場合の通信手段120は通信ケーブルが利用されているが、無線操作送信機130の仕様(性能)によってはあるいは無線操作送信機130を改良することによって無線通信とすることもでき、その場合、通信手段120は無線通信機能を有する装置を利用することとなる。
【0024】
コンピュータ110からの操作信号はデジタル信号であるのに対して、無線操作送信機130はアナログ信号を処理する仕様のものもある。この場合、無線操作送信機130にはアナログ信号の操作信号を入力する必要があるため、コンピュータ110と無線操作送信機130との間(つまり通信手段120の途中)に変換手段150(
図1)を設置するとよい。この変換手段150は、コンピュータ110からのデジタル信号を無線操作送信機130仕様のアナログ信号に変換するものであり、従来から用いられているA/D変換器を利用することができる。また無線操作送信機130の入出力端子がRS422形式のものであって、一方のコンピュータ110にはこの端子が設けられていない(USB端子のみが設けられた)ケースもある。この場合、通信手段120の途中にUSB-RS422変換アダプタを設置するとよい。
【0025】
(無線操作送信機)
無線操作送信機130は、建設機械200を遠隔操縦するためのいわゆるコントローラである。既述したとおり、遠隔操作形式の建設機械200と専用の無線操作送信機はセットで提供(市販)されていることも多く、この場合はそのまま(つまり純正の)無線操作送信機130を利用することもできる。もちろん、建設機械自動運転システム100のために純正の無線操作送信機130を改良(カスタマイズ)することもできるし、新たに無線操作送信機130を作成してもよい。
【0026】
図3は、無線操作送信機130の操作面を見た平面図である。無線操作送信機130は、本来、人が手動で操作することによって建設機械200を遠隔操縦するものであり、具体的には、
図3に示す操縦スイッチや操縦ボタン、操縦桿などを適宜操作することによって操縦信号を送信し、建設機械200に所望の動作をさせるものである。建設機械自動運転システム100として作動する場合、無線操作送信機130は、通信手段120を介してコンピュータ110から送られた操作信号を受信し、この操作信号に基づいて操縦スイッチや操縦桿などを操作したときと同様の操縦信号を送信させる。換言すれば、操作信号に基づいて操縦スイッチや操縦桿などに必要な操縦信号を入力させるわけである。このとき、無線操作送信機130の主電源がoffの状態であっても、コンピュータ110からの操作信号に応じて操縦スイッチや操縦桿などに入力させる仕様にすると、主電源をonにする手間が省け、また電源操作を失念したときでもコンピュータ110の操作のみで建設機械200を自動運転させることができて好適となる。なお無線操作送信機130は、操作信号による自動操作機能を有しているが、本来の手動操作を行う機能も維持している。
【0027】
(操作プログラム作成手段)
既述したとおり、建設機械200を操縦するために行う無線操作送信機130の手動操作には経験を要し、また操作者による巧拙が生じやすい。したがって、熟練の操作者による手動操作を再現することができると好適である。操作プログラム作成手段170は、熟練操作者による手動操作をプログラム化するものであり、いわば暗黙知を形式知に変換するものである。
【0028】
操作プログラム作成手段170は、操縦記録記憶手段160から「操縦記録」を読み出し、この操縦記録に基づいて操作プログラムを作成する。したがってこの操作プログラム作成手段170は、コンピュータを利用するとよい。なお「操縦記録」は、例えば熟練操作者が無線操作送信機130を手動操作したときの記録であり、操縦記録記憶手段160に記憶される。このとき、無線操作送信機130の手動操作がアナログ信号として記録される場合は、A/D変換を行いデジタルデータとしたうえで操縦記録記憶手段160に記憶させるとよい。また、操作プログラム作成手段170によって作成された操作プログラムは、操作プログラム記憶手段140に記憶される。
【0029】
(使用例)
以下、建設機械自動運転システム100の使用例について説明する。
【0030】
まずコンピュータ110を用いて、操作プログラム記憶手段140から所望の操作プログラを読み出す。このとき、熟練操作者の「操縦記録」に基づいて操作プログラム作成手段170が作成した操作プログラムを読み出すこともできる。コンピュータ110が操作プログラムを読み出すと、オペレータの操作によってその操作プログラムを実行し、「操作信号」を送信する。この操作信号は、通信手段120を通じて変換手段150に送られ、ここでアナログ信号に変換したうえで無線操作送信機130に送信される。
【0031】
アナログ信号の「操作信号」を受信した無線操作送信機130は、その操作信号の制御命令にしたがって、操縦スイッチや操縦ボタン、操縦桿などに適宜入力させながら、建設機械200にデジタル信号である「操縦信号」を送信する。つまり無線操作送信機130は、アナログ信号の「操作信号」を受信してデジタル信号の「操縦信号」を送信する(
図1)ことから、いわばA/D変換機能も備えているわけである。そして、この操縦信号に応じて建設機械200は所定の動作を行い、施工現場において目的の作業を実施する。
【0032】
なお、コンピュータ110に不具合が生じた場合、あるいは操作プログラムに不備が認められた場合には、
図5に示すように速やかに通信手段120を切断する。具体的には、通信手段120である通信ケーブルをコンピュータ110から抜き取るか、あるいは無線操作送信機130や変換手段150から抜き取る。そして、いわば独立した状態の無線操作送信機130を操作者が手動によって操縦することで、建設機械200の運転を継続する。このように建設機械自動運転システム100を使用すれば、不測の事態が生じた場合でも、人が建設機械200まで(つまり施工現場まで)足を運ぶ必要がなく、円滑にかつ柔軟に施工を継続することができる。特に、施工現場が危険な環境であるときには、作業者の安全を確保しながら施工を継続できるため極めて好適となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本願発明の建設機械自動運転システムは、造成工事、道路路床や路体といった土構造物工事のほか、土運搬を含む掘削工事、コンクリートの打ち込みなど、種々の施工現場で広く利用することができる。本願発明が、作業者の安全を図り、しかも慢性化した建設業界の人手不足を解消することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0034】
100 建設機械自動運転システム
110 (建設機械自動運転システムの)コンピュータ
120 (建設機械自動運転システムの)通信手段
130 (建設機械自動運転システムの)無線操作送信機
140 (建設機械自動運転システムの)操作プログラム記憶手段
150 (建設機械自動運転システムの)変換手段
160 (建設機械自動運転システムの)操縦記録記憶手段
170 (建設機械自動運転システムの)操作プログラム作成手段
200 建設機械