(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】クレーン及び情報表示方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/90 20060101AFI20220216BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
B66C23/90 F
B66C13/00 D
(21)【出願番号】P 2018043255
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 洋幸
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227246(JP,A)
【文献】特開2008-312004(JP,A)
【文献】特開平6-239582(JP,A)
【文献】特開2016-153335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;
23/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と、
前記車両上に配置されたブームと、
前記ブームの基端側から先端側に向けて架け渡されるワイヤロープと、
前記ブームの先端側から垂下されて前記ワイヤロープの繰り入れ及び繰り出しによって昇降するフックと、
前記フックを含む画像を撮影するカメラと、
前記画像を表示する表示装置と、
前記カメラ及び前記表示装置に接続され、情報を処理する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ブームの長さ又は前記フックの高さに基づき、前記フックが前記車両に近づく方向における移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界である内側境界を算出し、
前記表示装置は、前記カメラで撮影された画像に前記内側境界を示す画像が重畳された画像を表示することを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記移動可能な範囲は、前記ブームをその長さを維持したまま起立させて移動可能な範囲であることを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記移動可能な範囲は、前記ブームを前記フックの高さを維持したまま起立及び/又は旋回させて移動可能な範囲であることを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項4】
前記車両が前記カメラで撮影された画像外に位置する場合、
前記表示装置は、前記カメラで撮影された画像に前記車両が位置する方向を示す画像が重畳された画像を表示することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のクレーン。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ブームの旋回可能な範囲と旋回不可能な範囲との境界である旋回境界を算出し、
前記表示装置は、前記カメラで撮影された画像に前記旋回境界を示す画像が重畳された画像を表示することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載のクレーン。
【請求項6】
車両と、
前記車両上に配置されたブームと、
前記ブームの基端側から先端側に向けて架け渡されるワイヤロープと、
前記ブームの先端側から垂下されて前記ワイヤロープの繰り入れ及び繰り出しによって昇降するフックと、
前記フックを含む画像を撮影するカメラと、
前記画像を表示する表示装置と、
前記カメラ及び前記表示装置に接続され、情報を処理する制御装置と、を備えたクレーンにおける情報表示方法であって、
前記制御装置が、前記ブームの長さ又は前記フックの高さに基づき、前記フックが前記車両に近づく方向における移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界である内側境界を算出する工程と、
前記表示装置が、前記カメラで撮影された画像に前記内側境界を示す画像が重畳された画像を表示する工程と、を有することを特徴とする情報表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン及び情報表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両及びクレーン装置で構成されたクレーンが知られている。車両は、複数の車輪及びアウトリガを備え、不特定の場所に移動可能であって、移動先で作業可能範囲を広げることができる。クレーン装置は、ブームのほかにワイヤロープやフック等で構成され、荷物を移動可能としている。
【0003】
このようなクレーンにおいて、表示装置にブームの先端の可動範囲を表示する技術が開示されている(特許文献1参照)。これによれば、オペレータは表示装置を見ることでブームの先端の可動範囲を把握できるため、ブームの起伏、伸縮、旋回などの操作を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記されている可動範囲は、ブームの先端が車両から離れる方向の境界は示しているが、ブームの先端が車両に近づく方向の境界は示していない。つまり、ブームの先端が車両に近づく方向は全て可動範囲となっている。したがって、オペレータは、フックに吊り下げられた荷物を車両から離れる方向に移動させる場合には表示される可動範囲を参考にすることができるが、フックに吊り下げられた荷物を車両に近づく方向に移動させる場合には表示される可動範囲を参考にすることができない。
【0006】
本発明は、フックが車両に近づく方向の移動不可能又は移動可能な範囲を表示することにより、ブームの起伏、伸縮、旋回などの操作を容易に行うことができるクレーンを提供することを目的とする。また本発明は、フックが車両に近づく方向の移動不可能又は移動可能な範囲を表示することにより、ブームの起伏、伸縮、旋回などの操作を容易に行うことができる情報表示方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
クレーンは、車両と、前記車両上に配置されたブームと、前記ブームの基端側から先端側に向けて架け渡されるワイヤロープと、前記ブームの先端側から垂下されて前記ワイヤロープの繰り入れ及び繰り出しによって昇降するフックと、前記フックを含む画像を撮影するカメラと、前記画像を表示する表示装置と、前記カメラ及び前記表示装置に接続され、情報を処理する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ブームの長さ又は前記フックの高さに基づき、前記フックが前記車両に近づく方向における移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界である内側境界を算出し、前記表示装置は、前記カメラで撮影された画像に前記内側境界を示す画像が重畳された画像を表示することを特徴とする。
【0008】
上記のクレーンにおいて、前記移動可能な範囲は、前記ブームをその長さを維持したまま起立させて移動可能な範囲とすることができる。
【0009】
また、上記のクレーンにおいて、前記移動可能な範囲は、前記ブームを前記フックの高さを維持したまま起立及び/又は旋回させて移動可能な範囲とすることができる。
【0010】
また、上記のクレーンにおいて、前記車両が前記カメラで撮影された画像外に位置する場合、前記表示装置は、前記カメラで撮影された画像に前記車両が位置する方向を示す画像が重畳された画像を表示するようにしてもよい。
【0011】
また、上記のクレーンにおいて、前記制御装置は、前記ブームの旋回可能な範囲と旋回不可能な範囲との境界である旋回境界を算出し、前記表示装置は、前記カメラで撮影された画像に前記旋回境界を示す画像が重畳された画像を表示するようにしてもよい。
【0012】
情報表示方法は、車両と、前記車両上に配置されたブームと、前記ブームの基端側から先端側に向けて架け渡されるワイヤロープと、前記ブームの先端側から垂下されて前記ワイヤロープの繰り入れ及び繰り出しによって昇降するフックと、前記フックを含む画像を撮影するカメラと、前記画像を表示する表示装置と、前記カメラ及び前記表示装置に接続され、情報を処理する制御装置と、を備えたクレーンにおける情報表示方法であって、前記制御装置が、前記ブームの長さ又は前記フックの高さに基づき、前記フックが前記車両に近づく方向における移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界である内側境界を算出する工程と、前記表示装置が、前記カメラで撮影された画像に前記内側境界を示す画像が重畳された画像を表示する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カメラで撮影された画像に内側境界を示す画像が重畳された画像を表示装置に表示することにより、オペレータは表示装置を見ることでフックが車両に近づく方向の移動可能な範囲を視覚的に把握できるため、ブームの起伏、伸縮、旋回などの操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】情報表示方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
【0016】
クレーン1は、主に車両2とクレーン装置3で構成されている。
【0017】
車両2は、左右一対の前輪4及び後輪5を備えている。また、車両2は、荷物Wの運搬作業を行なう際に接地させて安定を図るアウトリガ6を備えている。さらに、車両2は、これらを駆動するためのエンジンやトランスミッション等を備えている。
【0018】
クレーン装置3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム7を備えている。そのため、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在となっている(矢印A参照)。また、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(矢印B参照)。さらに、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在となっている(矢印C参照)。加えて、ブーム7には、ワイヤロープ8が架け渡されている。ブーム7の基端側には、ワイヤロープ8を巻き付けたウインチ9が配置され、ブーム7の先端側には、ワイヤロープ8によってフック10が垂下されている。ウインチ9は、アクチュエータと一体的に構成されており、ワイヤロープ8の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。そのため、フック10は、アクチュエータによって昇降自在となっている(矢印D参照)。なお、クレーン装置3は、ブーム7の側方にキャビン11を備えている。キャビン11の内部には、後述する旋回操作具21、伸縮操作具22、起伏操作具23、巻回操作具24、操作具25、表示装置26が設けられている。
【0019】
次に、
図2を参照して、情報表示システム27について説明する。
【0020】
情報表示システム27は、主に制御装置20で構成されている。制御装置20には、各種操作具21~24が接続されている。また、制御装置20には、各種バルブ31~34が接続されている。さらに、制御装置20には、各種センサ41~44が接続されている。
【0021】
上述したように、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在となっている(
図1における矢印A参照)。本実施形態においては、かかるアクチュエータを旋回用油圧モータ51(
図1参照)と定義する。旋回用油圧モータ51は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ31によって適宜に稼動される。つまり、旋回用油圧モータ51は、旋回用バルブ31が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、ブーム7の旋回角度(図示しない)は、旋回用センサ41によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の旋回角度を認識することができる。
【0022】
また、上述したように、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(
図1における矢印B参照)。本実施形態においては、かかるアクチュエータを伸縮用油圧シリンダ52(
図1参照)と定義する。伸縮用油圧シリンダ52は、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ32によって適宜に稼動される。つまり、伸縮用油圧シリンダ52は、伸縮用バルブ32が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、ブーム7の伸縮長さE(
図1参照)は、伸縮用センサ42によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の伸縮長さEを認識することができる。
【0023】
さらに、上述したように、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在となっている(
図1における矢印C参照)。本実施形態においては、かかるアクチュエータを起伏用油圧シリンダ53(
図1参照)と定義する。起伏用油圧シリンダ53は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ33によって適宜に稼動される。つまり、起伏用油圧シリンダ53は、起伏用バルブ33が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、ブーム7の起伏角度F(
図1参照)は、起伏用センサ43によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の起伏角度Fを認識することができる。
【0024】
加えて、上述したように、フック10は、アクチュエータによって昇降自在となっている(
図1における矢印D参照)。本実施形態においては、かかるアクチュエータを巻回用油圧モータ54(
図1参照)と定義する。巻回用油圧モータ54は、電磁比例切換弁である巻回用バルブ34によって適宜に稼動される。つまり、巻回用油圧モータ54は、巻回用バルブ34が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、フック10の吊下長さL(
図1参照)は、巻回用センサ44によって検出される。そのため、制御装置20は、フック10の吊下長さLを認識することができる。
【0025】
加えて、制御装置20には、操作具25、カメラ28、表示装置26が接続されている。
【0026】
操作具25は、表示装置26の表示態様を選択的に切り替えたり、カメラ28の撮影倍率や撮影方向を切り替えたりするものである。表示態様には、カメラ28で撮影された画像を表示、その画像にフック10の移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界を示す画像を重畳表示、その画像にブーム7の旋回可能な範囲と旋回不可能な範囲との境界を示す画像を重畳表示などがある。
【0027】
カメラ28は、画像を撮影するものである。カメラ28は、ブーム7の先端部分に取り付けられている。制御装置20は、カメラ28がフック10を含む画像を撮影するように制御することができる。カメラ28は、ほぼリアルタイムに画像を撮影することができる。
【0028】
表示装置26は、上述したように、カメラ28で撮影された画像、その画像にフック10の移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界を示す画像を重畳した画像、その画像にブーム7の旋回可能な範囲と旋回不可能な範囲との境界を示す画像を重畳した画像などを表示するものである。
【0029】
次に、
図3から
図6を参照して、表示装置26の表示態様について説明する。ここでは、
図1に示すように、フック10が荷物Wを吊り下げた状態であって、地面から荷物Wの底面までの高さが車両2の高さより低い状況を想定して説明する。
【0030】
フック10が車両2に近づく方向における荷物Wの移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界である内側境界と、ブーム7の旋回可能な範囲と旋回不可能な範囲との境界である旋回境界とは、内側境界算出工程K101、旋回境界算出工程K102、表示工程K103を経て表示される。
【0031】
内側境界算出工程K101において、制御装置20は、ブーム7の長さに基づいてフック10が車両2に近づく方向における荷物Wの移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界である第1内側境界を算出する。具体的には、制御装置20は、ブーム7の現在の長さを認識し、ブーム7をその長さを維持したまま起立させたときのフック10が移動可能な範囲の内側の境界(第1内側境界)を算出する。クレーン1の仕様によって起伏角度Fの最大値は決まっているため、ブーム7の長さが決まることによって第1内側境界が決まる。
【0032】
また、内側境界算出工程K101において、制御装置20は、フック10の高さに基づいてフック10が車両2に近づく方向における荷物Wの移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界である第2内側境界を算出する。具体的には、制御装置20は、地面から荷物Wの底面までの高さを認識し、ブーム7をフック10の高さを維持したまま起立及び/又は旋回させたときの荷物Wが車両2に衝突せずに移動可能な範囲の内側の境界(第2内側境界)を算出する。
【0033】
クレーン1の仕様によって車両2の高さは決まっているため、地面から荷物Wの底面までの高さを求めることによって、現在のフック10の高さを維持したままフック10を車両2に近づく方向に移動させたときに荷物Wが車両2に衝突するか否かを判別できる。その結果、衝突する場合には車両2の外周に沿って第2内側境界が定められる。一方、衝突しない場合には第2内側境界は算出されない。
【0034】
なお、地面から荷物Wの底面までの高さは、例えば、フック10から荷物Wの底面までの長さを予め求めておくことにより算出できる。具体的には、荷物Wを地切りする際の巻回用センサ44の検知結果から、ワイヤロープ8が緊張状態になった時点を認識する。そして、その時点におけるブーム7の先端の高さからフック10の吊下長さLを差し引いた値が、フック10から荷物Wの底面までの長さとなる。よって、その後荷物Wを吊り上げた状態において地面から荷物Wの底面までの高さを求めるには、フック10の吊下長さLに予め求めたフック10から荷物Wの底面までの長さを加えた値を、ブーム7の先端の高さから差し引けばよい。
【0035】
旋回境界算出工程K102において、制御装置20は、ブーム7の旋回可能な範囲と旋回不可能な範囲との境界である旋回境界を算出する。ブーム7の旋回可能な範囲とはクレーン1が倒れずに旋回可能な範囲であり、旋回境界は、ブーム7の長さと、ブーム7の起伏角度Fと、巻回用センサ44で検知される荷重とに基づいて算出される。
【0036】
表示工程K103において、表示装置26は、カメラ28で撮影された画像に、内側境界(第1内側境界及び第2内側境界)を示す画像と、旋回境界を示す画像とが重畳された画像を表示する(
図4参照)。具体的には、制御装置20は、カメラ28で撮影された画像61に、第1内側境界を示す画像62と、第2内側境界を示す画像63と、旋回境界を示す画像64とを重畳して出力画像60を生成する。そして、制御装置20は出力画像60を表示装置26へ出力し、表示装置26が出力画像60を表示する。
【0037】
図4において、第1内側境界を示す画像62と、第2内側境界を示す画像63と、旋回境界を示す画像64とは、境界線を表示している。したがって、出力画像60に表示される荷物Wの位置から各境界線までが荷物Wの移動可能な範囲となる。なお、境界線の替わりに移動可能な範囲又は移動不可能な範囲を周囲と異なる色で表示してもよい。例えば、移動可能な範囲をカラー表示、移動不可能な範囲を白黒表示とすることができる。
【0038】
なお、旋回境界は、旋回境界算出工程K102の算出結果の他に、オペレータが任意に入力できるようにしてもよい。例えば、オペレータが建物の壁や近くのクレーンの旋回範囲等を旋回境界として入力することが考えられえる。この場合、オペレータによって入力された旋回境界も同様に出力画像60に重畳される。
【0039】
このように、カメラ28で撮影された画像61に内側境界を示す画像62、63と旋回境界を示す画像64とが重畳された出力画像60を表示装置26に表示することにより、オペレータは表示装置26を見ることで荷物Wが車両2に近づく方向及び旋回方向の移動可能な範囲を視覚的に把握できるため、ブームの起伏、伸縮、旋回などの操作を容易に行うことができる。
【0040】
さらに、内側境界算出工程K101と旋回境界算出工程K102との間に、外側境界算出工程を追加し、表示工程K103において、表示装置26はカメラ28で撮影された画像に外側境界を示す画像が重畳された画像を表示するようにしてもよい(
図5参照)。具体的には、制御装置20は、ブーム7の現在の長さ及び巻回用センサ44で検知される荷重を認識し、ブーム7をその長さを維持したまま倒伏させたときのフック10が移動可能な範囲の外側境界を算出する。フック10が移動可能な範囲とはクレーン1が倒れずに倒伏可能な範囲であり、外側境界は、ブーム7の現在の長さ及び巻回用センサ44で検知される荷重に基づいて算出される。
【0041】
続いて、制御装置20は、カメラ28で撮影された画像61に、第1内側境界を示す画像62と、第2内側境界を示す画像63と、旋回境界を示す画像64と、外側境界を示す画像65とを重畳して出力画像66を生成する。そして、制御装置20は出力画像66を表示装置26へ出力し、表示装置26が出力画像66を表示する。
【0042】
このように、カメラ28で撮影された画像61に外側境界を示す画像65が重畳された出力画像66を表示装置26に表示することにより、オペレータは表示装置26を見ることで荷物Wが車両2から離れる方向の移動可能な範囲を視覚的に把握できるため、ブームの起伏、伸縮、旋回などの操作を容易に行うことができる。
【0043】
さらに、カメラ28で撮影された画像外に車両2が位置する場合、表示装置26は、カメラ28で撮影された画像に、車両2が位置する方向を示す画像が重畳された画像を表示するようにしてもよい(
図6参照)。具体的には、制御装置20は、カメラ28で撮影された画像外の車両2の位置を認識し、カメラ28で撮影された画像61に車両2が位置する方向を示す矢印画像67と、各境界を示す画像64、65とを重畳して出力画像68を生成する。そして、制御装置20は出力画像68を表示装置26へ出力し、表示装置26が出力画像68を表示する。
【0044】
このように、車両が前記カメラで撮影された画像外に位置する場合、カメラ28で撮影された画像61に車両2が位置する方向を示す矢印画像67が重畳された出力画像68を表示装置26に表示することにより、オペレータは表示装置26を見ることで車両2が位置する方向を視覚的に把握できるため、ブームの起伏、伸縮、旋回などの操作を容易に行うことができる。
【0045】
上記の実施形態では、フック10に荷物Wが吊り下げられている場合を例に説明したが、フック10に荷物が吊り下げられていない場合でも同様にフック10の移動可能な範囲と移動不可能な範囲との境界を算出して表示することができる。この場合、第2内側境界はフック10が車両2と干渉しない範囲の境界となる。
【0046】
なお、第1内側境界を示す画像62、第2内側境界を示す画像63、旋回境界を示す画像64、外側境界を示す画像65は、カメラ28で撮影された画像に単独で重畳してもよいし、適宜組み合わせて表示してもよい。そして、これらの表示態様は操作具25によって切り替えできるようにしてもよい。
【0047】
また、クレーン1はクレーン装置3の揚程や作業半径を拡大するジブを備えていてもよい。この場合、ジブのフックについても同様に、内側境界、旋回境界、外側境界を示す画像を表示することができる。
【0048】
また、
図4から
図6に示した出力画像60、66、68は、3Dマッピング等を用いて三次元で表示することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 クレーン
2 車両
7 ブーム
8 ワイヤロープ
10 フック
20 制御装置
26 表示装置
28 カメラ
62、63 画像(内側境界を示す画像)
64 画像(旋回境界を示す画像)