(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 57/021 20120101AFI20220216BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20220216BHJP
F16H 57/03 20120101ALI20220216BHJP
F16H 3/091 20060101ALI20220216BHJP
F16H 57/027 20120101ALI20220216BHJP
【FI】
F16H57/021
F16H57/04 J
F16H57/03
F16H3/091
F16H57/027
(21)【出願番号】P 2018079793
(22)【出願日】2018-04-18
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】更科 俊平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岩井 夏樹
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-332805(JP,A)
【文献】特開2002-147579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/021
F16H 57/04
F16H 57/03
F16H 3/091
F16H 57/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速用の複数の入力ギヤを有し、内燃機関から動力が伝達される入力軸と、前記入力軸を収容する変速機ケースとを有し、
前記変速機ケースが、前記入力軸を回転自在に支持する入力軸受支持部を有し、前記入力軸受支持部から径方向外方に延びる隔壁と、前記変速機ケースの外部と連通するブリーザ室とを備えた車両用変速機であって、
前記ブリーザ室は、前記変速機ケースの外壁と、前記隔壁と、前記隔壁と前記外壁とを連結するブリーザ室壁とによって囲まれる空間から構成されており、
前記入力軸受支持部は、前記ブリーザ室壁に支持されて
おり、
前記ブリーザ室壁は、前記入力軸受支持部の外周縁に沿って連結される第1の連結側部と、前記第1の連結側部から一方側に延びる第1のブリーザ室壁部と、前記入力軸受支持部と交差するよう前記入力軸受支持部に連結される第2の連結側部と、前記第2の連結側部から前記第1のブリーザ室壁部と反対側に延びる第2のブリーザ室壁部とを有することを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
変速用の複数の入力ギヤを有し、内燃機関から動力が伝達される入力軸と、前記入力軸を収容する変速機ケースとを有し、
前記変速機ケースが、前記入力軸を回転自在に支持する入力軸受支持部を有し、前記入力軸受支持部から径方向外方に延びる隔壁と、前記変速機ケースの外部と連通するブリーザ室とを備えた車両用変速機であって、
前記ブリーザ室は、前記変速機ケースの外壁と、前記隔壁と、前記隔壁と前記外壁とを連結するブリーザ室壁とによって囲まれる空間から構成されており、
前記入力軸受支持部は、前記ブリーザ室壁に支持されており、
前記変速機ケースに、前記入力ギヤに噛み合う複数のカウンタギヤを有するカウンタ軸が収容されており、
前記隔壁は、前記カウンタ軸の軸方向端部を回転自在に支持するカウンタ軸受支持部を有し、
前記ブリーザ室は、前記入力軸受支持部を挟んで前記カウンタ軸受支持部と反対側に設置されていることを特徴とす
る車両用変速機。
【請求項3】
前記ブリーザ室壁は、前記入力軸受支持部の外周縁に沿って連結される第1の連結側部と、前記第1の連結側部から一方側に延びる第1のブリーザ室壁部と、前記入力軸受支持部と交差するよう前記入力軸受支持部に連結される第2の連結側部と、前記第2の連結側部から前記第1のブリーザ室壁部と反対側に延びる第2のブリーザ室壁部とを有することを特徴とす
る請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項4】
前記隔壁は、オイル通路を有するオイル通路部を備えており、
前記オイル通路部は、前記入力軸受支持部を挟んで前記ブリーザ室と反対側に設置され、かつ、前記入力軸受支持部から前記変速機ケースの径方向外端まで延びていることを特徴とする請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項5】
前記変速機ケースに、同期装置および複数のシフタ軸が収容されており、
前記同期装置は、前記入力軸の軸方向に移動することにより、前記複数の入力ギヤのうちの1つを選択し、選択した入力ギヤから当該入力ギヤに噛み合う前記カウンタギヤに動力を伝達させるように構成されており、
前記シフタ軸は、前記同期装置を前記入力軸の軸方向に移動させるように構成されており、
前記隔壁は、前記入力軸受支持部の上方において、前記複数のシフタ軸をそれぞれ支持する複数のシフタ軸用軸受部を有し、
前記シフタ軸用軸受部は、前記ブリーザ室壁と前記オイル通路部とを連結していることを特徴とする請求項4に記載の車両用変速機。
【請求項6】
前記入力軸の軸方向端部に、前記内燃機関と前記入力軸との間で動力を伝達可能または動力を遮断可能なクラッチが設けられており、
前記入力軸の径方向外方に、クラッチレバーによって前記入力軸の軸方向に移動され、
前記クラッチを断続するレリーズベアリングが設けられており、
前記入力軸受支持部を挟んで前記ブリーザ室と反対側の前記隔壁にボス部が形成されており、
前記ボス部は、補強部によって前記入力軸受支持部に連結されており、
前記ボス部に、前記クラッチレバーの揺動支点を構成するガイド部材が嵌合されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用変速機。
【請求項7】
前記隔壁は、前記入力軸受支持部の径方向外方にリブが形成されており、
前記リブは、前記入力軸受支持部と同心円状に延びており、前記オイル通路部と前記ボス部と前記ブリーザ室壁とを連結していることを特徴とする請求項6に記載の車両用変速機。
【請求項8】
前記カウンタ軸受支持部は、前記ブリーザ室壁と前記入力軸受支持部とに連結されていることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用手動変速機を収容するトランスミッションケースに支持壁を設け、入力軸の一端を第1ベアリングを介して支持壁に回転可能に支持したものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この車両用手動変速機は、トランスミッションケースの第1支持壁とベアリングリテーナとが、複数本の締結ボルトの配列線よりも内側において補強ボルトにより結合されている。
【0004】
これにより、入力軸とカウンタ軸との間で常時噛み合う状態で設けられた複数のギヤ対の噛合いに起因して、入力軸およびカウンタ軸を回転可能に支持する第1支持壁のうち、第1入力軸軸受と第1カウンタ軸軸受との間の脆弱部分に発生する撓みが好適に抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の車両用手動変速機にあっては、第1入力軸軸受と第1カウンタ軸軸受との間の脆弱部分を補強するために、トランスミッションケースの第1支持壁にベアリングリテーナを締結している。
【0007】
これにより、補強用のベアリングリテーナが必要となり、車両用手動変速機の部品点数が増加して、車両用手動変速機の重量および製造コストが増大するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、新規の部品を追加することなく軸受支持部の支持剛性を容易に向上でき、重量および製造コストが増大することを防止できる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、変速用の複数の入力ギヤを有し、内燃機関から動力が伝達される入力軸と、前記入力軸を収容する変速機ケースとを有し、前記変速機ケースが、前記入力軸を回転自在に支持する入力軸受支持部を有し、前記入力軸受支持部から径方向外方に延びる隔壁と、前記変速機ケースの外部と連通するブリーザ室とを備えた車両用変速機であって、前記ブリーザ室は、前記変速機ケースの外壁と、前記隔壁と、前記隔壁と前記外壁とを連結するブリーザ室壁とによって囲まれる空間から構成されており、前記入力軸受支持部は、前記ブリーザ室壁に支持されており、前記ブリーザ室壁は、前記入力軸受支持部の外周縁に沿って連結される第1の連結側部と、前記第1の連結側部から一方側に延びる第1のブリーザ室壁部と、前記入力軸受支持部と交差するよう前記入力軸受支持部に連結される第2の連結側部と、前記第2の連結側部から前記第1のブリーザ室壁部と反対側に延びる第2のブリーザ室壁部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、軸受支持部を有する隔壁の剛性を容易に向上でき、軸受支持部の支持剛性を容易に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を入力軸に沿って縦方向に切断した縦断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のフロントケースの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、変速用の複数の入力ギヤを有し、内燃機関から動力が伝達される入力軸と、入力軸を収容する変速機ケースとを有し、変速機ケースが、入力軸を回転自在に支持する入力軸受支持部を有し、入力軸受支持部から径方向外方に延びる隔壁と、変速機ケースの外部と連通するブリーザ室とを備えた車両用変速機であって、ブリーザ室は、変速機ケースの外壁と、隔壁と、隔壁と外壁とを連結するブリーザ室壁とによって囲まれる空間から構成されており、入力軸受支持部は、ブリーザ室壁に支持されている。
これにより、新規の部品を追加することなく軸受支持部の支持剛性を容易に向上でき、車両用変速機の重量および製造コストが増大することを防止できる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
図1から
図6は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。
図1から
図6において、上下前後左右方向は、車両の進行する方向を前、後退する方向を後とした場合に、車両の幅方向が左右方向、車両の高さ方向が上下方向である。
【0014】
まず、構成を説明する。
図1、
図2において、車両1には自動変速機2が搭載されており、自動変速機2は、エンジン3に接続された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。すなわち、本実施例の車両1は、後輪駆動車両である。本実施例の自動変速機2は、本発明の車両用変速機を構成する。
【0015】
自動変速機2は変速機ケース4を備えており、変速機ケース4は、トルクコンバータハウジング(以下、単にトルコンハウジングという)5と、フロントケース6と、リヤケース7と、エクステンションケース8とを備えている。
【0016】
トルコンハウジング5の前端部には図示しないボルトによって内燃機関としてのエンジン3が接続されている。エンジン3は、燃料の燃焼を行い、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する。
【0017】
トルコンハウジング5の後端部には環状の接合部5Aが形成されており、接合部5Aには円周方向に所定の間隔を空けて複数の締結部5Bが形成されている。
【0018】
図2において、フロントケース6のトルコンハウジング5側は、開口している。
図1、
図3において、フロントケース6の前端部には環状の接合部6Aが形成されており、接合部6Aには円周方向に所定の間隔を空けて複数の締結部6Bが形成されている。締結部6Bは、締結部5Bに合致するようにフロントケース6に設けられている。
【0019】
締結部5Bと締結部6Bには図示しないボルトが取付けられており、締結部5Bと締結部6Bとはボルトによって締結されている。これにより、トルコンハウジング5とフロントケース6とは接合部5Aと接合部6Aとが接合された状態で互いに連結されている。
【0020】
図2において、フロントケース6のリヤケース7側は、開口している。
図1に示すように、フロントケース6の後端部には環状の接合部6Cが形成されており、接合部6Cには円周方向に所定の間隔を空けて複数の締結部6Dが形成されている。
【0021】
図2において、リヤケース7のフロントケース6側は、開口している。
図1に示すように、リヤケース7の前端部には環状の接合部7Aが形成されており、接合部7Aには円周方向に所定の間隔を空けて複数の締結部7Bが形成されている。
【0022】
締結部6Dと締結部7Bには図示しないボルトが取付けられており、締結部6Dと締結部7Bとはボルトによって締結されている。これにより、フロントケース6とリヤケース7とは接合部6Cと接合部7Aとが接合された状態で互いに連結されている。
【0023】
図2において、トルコンハウジング5にはトルクコンバータ10が収容されている。トルクコンバータ10は、図示しないドライブプレートを介してエンジン3の図示しないクランク軸に連結されるフロントカバー10Aと、フロントカバー10Aに連結されたシェル10Bとを備えており、エンジン3と自動変速機2との間でオイルを介して動力を伝達する流体継手を構成している。
【0024】
シェル10Bの内面には、図示しないポンプインペラが固定されている。シェル10Bの内部には、図示しないタービンランナがポンプインペラに対向して設置されており、タービンランナは、タービン軸11に連結されている。ポンプインペラとタービンランナとの間には図示しないステータが設置されている。
【0025】
トルクコンバータ10において、クランク軸が回転すると、ドライブプレートを介してフロントカバー10A、シェル10Bおよびポンプインペラが一体で回転する。このとき、ポンプインペラの回転による遠心力によって、トルクコンバータ10の内部の流体、すなわち、オイルに、ポンプインペラからタービンランナに向かう流れが生じる。
【0026】
この流体の流れによりタービンランナが回転され、タービンランナに接続されたタービン軸11が回転する。ステータは、タービンランナからの流体の流れをポンプインペラの回転方向に沿うように変換することにより、エンジン3の動力を増幅させる。
【0027】
トルクコンバータ10には図示しないロックアップクラッチが設けられており、ロックアップクラッチは、ロックアップクラッチ締結用のオイルが供給されると、タービンランナをフロントカバー10Aに締結する。これにより、エンジン3の動力が、フロントカバー10Aから流体を介さずにタービンランナを回転させることにより、タービン軸11に伝達される。
【0028】
ロックアップクラッチは、ロックアップクラッチ解除用のオイルが供給されると、タービンランナをフロントカバー10Aから引き離す。これにより、エンジン3の動力が、フロントカバー10Aから流体を介してタービンランナを回転させることにより、タービン軸11に伝達される。
【0029】
トルコンハウジング5には隔壁31が形成されており、隔壁31は、トルコンハウジング5の内部の空間とフロントケース6の内部の空間とを仕切っている。タービン軸11は、軸受38を介して隔壁31に形成された軸受支持部31aに回転自在に支持されている。
【0030】
トルコンハウジング5にはオイルポンプ12が収容されており、オイルポンプ12は、例えば、トロコイド式のオイルポンプから構成されている。オイルポンプ12は、図示しないボルトによって隔壁31に固定されたリヤポンプケース13と、図示しないボルトによってリヤポンプケース13に締結されたフロントポンプケース14とを有する。
【0031】
リヤポンプケース13とフロントポンプケース14とに挟まれた内部空間にはポンプ室15が形成されており、ポンプ室15には図示しないインナロータおよびアウタロータが設けられている。インナロータは、シェル10Bと一体で回転するようにシェル10Bの一部に取付けられている。
【0032】
アウタロータは、インナロータの径方向外方に設けられており、インナロータの回転に伴って回転する。トロコイド式のオイルポンプ12は、アウタロータに形成された複数の内歯とインナロータに形成された複数の外歯とが接触することにより、外歯と内歯との間にオイルを収容する図示しない複数の作動室が形成されている。
【0033】
オイルポンプ12において、エンジン3の動力がシェル10Bによってインナロータに伝達されると、インナロータとアウタロータとが一方向に回転する。このとき、作動室の容積増加および容積減少が連続して発生することにより、オイルを図示しない吸入ポートから作動室に吸入し、作動室によって加圧されたオイルを図示しない吐出ポートから吐出する。
【0034】
タービン軸11の後端部には拡径部11Aが形成されており、拡径部11Aは、タービン軸11の前端部や中央部よりも大径に形成されている。拡径部11Aには環状のフライホイール16が取付けられており、フライホイール16は、フロントケース6に収容されている。
【0035】
フロントケース6にはクラッチ17が収容されており、クラッチ17は、フライホイール16に対向するようにフライホイール16に取付けられる。クラッチ17は、入力軸21の軸方向の前端部21aに設置されている。入力軸21は、フロントケース6およびリヤケース7に収容されており、車両1の前後方向に延びている。
【0036】
入力軸21は、その軸方向の前端部側でフロントケース6に形成された隔壁32に回転自在に支持され、その軸方向の後端部21bが出力軸22に回転自在に支持されている。本実施例の入力軸21の前端部21aは、本発明の入力軸の軸方向端部を構成する。
【0037】
出力軸22は、入力軸21の軸方向において入力軸21に対向している。出力軸22は、リヤケース7の後端部に形成された隔壁33およびエクステンションケース8に軸受39A、39Bを介して回転自在に支持されており、入力軸21に対して相対回転する。
【0038】
クラッチ17は、入力軸21に一体回転自在、かつ入力軸21の軸方向に移動自在に設けられたクラッチディスク17Aと、クラッチディスク17Aをフライホイール16に押し付けるプレッシャプレート17Bと、プレッシャプレート17Bをフライホイール16側に付勢するダイヤフラムスプリング17Cとを備えている。
【0039】
フロントケース6の隔壁32には筒状部32aが形成されており、筒状部32aは、隔壁32の径方向内端部から入力軸21の軸方向に沿ってクラッチ17側に延び、前端部が開口している。ここで、径方向とは、入力軸21の軸方向に対して放射方向である。
【0040】
筒状部32aの外周部にはレリーズベアリング18が設けられており、レリーズベアリング18は、入力軸21の軸方向に対して、クラッチレバー51の付勢力が作用するとダイヤフラムスプリング17Cの付勢力に抗して前方に移動して、ダイヤフラムスプリング17Cの径方向内端部に接触する。一方、クラッチレバー51の付勢力が作用しなくなるとダイヤフラムスプリング17Cの付勢力により後方に移動して、ダイヤフラムスプリング17Cの径方向内端部から離れる。
【0041】
図6において、クラッチレバー51の径方向の内端部51aは、レリーズベアリング18に接触自在となっており、クラッチレバー51は、入力軸21の外周部からフロントケース6に形成された開口部6aを通してフロントケース6の外方に突出している。
【0042】
フロントケース6から突出したクラッチレバー51の径方向の外端部51bは、図示しないクラッチアクチュエータに接続されている。クラッチレバー51の揺動支点51cは、内端部51aと外端部51bの間に設置されている。
【0043】
隔壁32にはボス部32Hが形成されている(
図3、
図5参照)。ボス部32Hにはガイド部材52が嵌合されており、クラッチレバー51の揺動支点51cは、ガイド部材52に支持されている。クラッチレバー51は、クラッチアクチュエータによって操作されると、揺動支点51cを支点として揺動し、内端部51aが入力軸21の軸方向に沿って移動する。
【0044】
クラッチレバー51が作動していないとき、レリーズベアリング18は、ダイヤフラムスプリング17Cの径方向内端部から離れる。このとき、ダイヤフラムスプリング17Cがプレッシャプレート17Bを付勢してクラッチディスク17Aをフライホイール16に押し付ける。この結果、クラッチ17は、エンジン3のクランク軸の回転を入力軸21に伝達する。
【0045】
クラッチレバー51が作動したとき、レリーズベアリング18は、ダイヤフラムスプリング17Cの径方向内端部を前方に向かって押圧する。このとき、プレッシャプレート17Bの付勢が解除され、クラッチディスク17Aがフライホイール16から離れる。この結果、クラッチ17は、エンジン3のクランク軸の回転を入力軸21に伝達しなくなる。
【0046】
図2において、フロントケース6およびリヤケース7にはカウンタ軸23が収容されており、カウンタ軸23は、隔壁32、33に回転自在に支持されている。カウンタ軸23は、入力軸21および出力軸22に対して平行に延びている。
【0047】
隔壁32は、フロントケース6の内部をクラッチ収容室19とギヤ収容室20とに仕切っており、ギヤ収容室20は、リヤケース7の内部の空間も含んでいる。クラッチ収容室19は、トルコンハウジング5の隔壁31とフロントケース6の隔壁32によって形成されるフロントケース6の内部の空間であり、クラッチ収容室19にはフライホイール16とクラッチ17が収容されている。
【0048】
ギヤ収容室20は、フロントケース6の隔壁32とリヤケース7の隔壁33によって形成されるフロントケース6およびリヤケース7の内部の空間であり、ギヤ収容室20には入力軸21、カウンタ軸23および入力軸21とカウンタ軸23に取付けられた後述する変速用のギヤが収容されている。
【0049】
入力軸21には、クラッチ17側から出力軸22に向かってそれぞれ変速用の4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dおよびリバース入力ギヤ24Eが設置されている。
【0050】
4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dおよびリバース入力ギヤ24Eは、入力軸21に相対回転自在に連結されている。
【0051】
出力軸22の前端部には5速クラッチギヤ22Aが設けられており、5速クラッチギヤ22Aは、出力軸22の外周部に形成されたドグから構成される。
【0052】
カウンタ軸23には、クラッチ17側から出力軸22に向かってそれぞれ変速用の4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dおよびカウンタドライブギヤ26Eが設けられている。
【0053】
4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dおよびカウンタドライブギヤ26Eは、カウンタ軸23に固定されており、カウンタ軸23と相対回転不能となっている。
【0054】
4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dは、それぞれ同一の変速段を構成する4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dに噛み合っている。
【0055】
カウンタドライブギヤ26Eは、カウンタドリブンギヤ27に噛み合っており、カウンタドリブンギヤ27は、出力軸22と一体で回転するように出力軸22に固定されている。
【0056】
フロントケース6およびリヤケース7には3速-4速用の同期装置28、1速-2速用の同期装置29およびリバース-5速用の同期装置30が収容されている。
【0057】
3速-4速用の同期装置28は、入力軸21と一体で回転可能で、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられている。3速-4速用の同期装置28は、図示しない3速-4速用のシフトフォーク、図示しない3速-4速用のシフタ軸および図示しない3速-4速用のシフトヨークを介してシフトアンドセレクト軸42で移動可能となっている。
【0058】
シフトアンドセレクト軸42が3速-4速用のシフトヨークを選択し、3速-4速用のシフタ軸を介して3速-4速用のシフトフォークを入力軸21の軸方向に移動させると、3速-4速用の同期装置28が入力軸21の軸方向に移動される。
【0059】
1速-2速用の同期装置29は、入力軸21と一体で回転可能で、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられている。1速-2速用の同期装置29は、図示しない1速-2速用のシフトフォーク、1速-2速用のシフタ軸29Aおよび図示しない1速-2速用のシフトヨークを介してシフトアンドセレクト軸42で移動可能となっている。
【0060】
シフトアンドセレクト軸42が1速-2速用のシフトヨークを選択し、1速-2速用のシフタ軸29Aを介して1速-2速用のシフトフォークを入力軸21の軸方向に移動させると、1速-2速用の同期装置29が入力軸21の軸方向に移動される。
【0061】
リバース-5速用の同期装置30は、入力軸21と一体で回転可能で、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられている。リバース-5速用の同期装置30は、図示しないリバース-5速用のシフトフォーク、リバース-5速用のシフタ軸30Aおよび図示しないリバース-5速用のシフトヨークを介してシフトアンドセレクト軸42で移動可能となっている。
【0062】
シフトアンドセレクト軸42がリバース-5速用のシフトヨークを選択し、リバース-5速用のシフタ軸30Aを介してリバース-5速用のシフトフォークを入力軸21の軸方向に移動させると、リバース-5速用の同期装置30が入力軸21の軸方向に移動される。
【0063】
3速-4速用の同期装置28は、中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動することにより、4速入力ギヤ24Aを入力軸21に連結して前進4速段を成立させ、入力軸21の動力を4速入力ギヤ24Aおよび4速カウンタギヤ26Aを介してカウンタ軸23に伝達する。
【0064】
カウンタ軸23に伝達される動力は、カウンタドライブギヤ26Eからカウンタドリブンギヤ27を介して出力軸22に伝達される。出力軸22には図示しないプロペラ軸を介していずれも図示しないディファレンシャル装置、ドライブ軸および駆動後輪が連結されている。
【0065】
これにより、出力軸22に伝達された動力は、プロペラ軸を介してディファレンシャル装置に伝達され、ディファレンシャル装置によって左右のドライブ軸に分配された後に、駆動後輪に伝達される。この結果、車両1が走行される。
【0066】
3速-4速用の同期装置28は、中立位置から入力軸21の軸方向の後側に移動することにより、3速入力ギヤ24Bを入力軸21に連結して前進3速段を成立させ、入力軸21の動力を3速入力ギヤ24Bおよび3速カウンタギヤ26Bを介してカウンタ軸23に伝達する。
【0067】
1速-2速用の同期装置29は、中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動することにより、2速入力ギヤ24Cを入力軸21に連結して前進2速段を成立させ、入力軸21の動力を2速入力ギヤ24Cおよび2速カウンタギヤ26Cを介してカウンタ軸23に伝達する。
【0068】
1速-2速用の同期装置29は、中立位置から入力軸21の軸方向の後側に移動することにより、1速入力ギヤ24Dを入力軸21に連結して前進1速段を成立させ、入力軸21の動力を1速入力ギヤ24Dおよび1速カウンタギヤ26Dを介してカウンタ軸23に伝達する。
【0069】
リバース-5速用の同期装置30は、中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動することにより、リバース入力ギヤ24Eを入力軸21に連結して後進段を成立させ、入力軸21の動力をリバース入力ギヤ24Eからいずれも図示しないリバースアイドラギヤ、リバース出力ギヤ、1速カウンタギヤ26Dを介してカウンタ軸23に伝達する。このとき、カウンタ軸23は、前進時の回転方向と逆方向に回転するので、車両1が後進される。
【0070】
リバース-5速用の同期装置30は、中立位置から入力軸21の軸方向の後側に移動することにより、5速クラッチギヤ22Aを入力軸21に連結して前進5速段を成立させ、入力軸21の動力を出力軸22に直接伝達する。
【0071】
フロントケース6の上部にはシフトケース9が設けられており、シフトアンドセレクト軸42は、シフトケース9の内部に設けられている。シフトアンドセレクト軸42は、入力軸21の延びる方向と直交する車幅方向に延びている。
【0072】
シフトアンドセレクト軸42は、シフトケース9に回転自在かつ、軸方向に移動自在に設けられており、図示しないシフトユニットによって操作される。
【0073】
このように同期装置28、29、30は、入力軸21の軸方向に移動することにより、複数の入力ギヤ24A、24B、24C、24Dおよび5速クラッチギヤ22Aのうちの1つを選択し、入力軸21から出力軸22に動力を伝達させる。
【0074】
すなわち、複数の入力ギヤ24A、24B、24C、24Dのうちの1つが選択されると、選択された入力ギヤ24A、24B、24C、24Dから選択された入力ギヤ24A、24B、24C、24Dに噛み合うカウンタギヤ26A、26B、26C、26Dに動力が伝達される。また、5速クラッチギヤ22Aが選択されると、入力軸21から出力軸22に直接動力が伝達される。
【0075】
図3において、隔壁32は、接合部6Aの内方に設けられており、隔壁32には軸受支持部32A、32B、32Cが設けられている。隔壁32は、軸受支持部32Aから径方向外方に延びている。
【0076】
図2において、軸受支持部32Aは、隔壁32からギヤ収容室20に向かって筒状に延びており、入力軸21の前端部21aは、軸受支持部32Aから筒状部32aを通してクラッチ収容室19に延びている。
【0077】
軸受支持部32Aには軸受41が嵌合しており、入力軸21の前側は、軸受41を介して軸受支持部32Aに回転自在に支持されている。
【0078】
図3において、軸受支持部32Bは、筒状に形成されており、軸受支持部32Aの下方に設置されている。軸受支持部32Bには図示しない軸受が嵌合されており、カウンタ軸23の前端部は、軸受を介して軸受支持部32Bに回転自在に支持されている。
【0079】
カウンタ軸23の後端部は、図示しない軸受を介して隔壁33に形成された図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。本実施例の軸受支持部32Aは、本発明の入力軸受支持部を構成し、軸受支持部32Bは、本発明のカウンタ軸受支持部を構成する。
【0080】
図3において、軸受支持部32Cは、軸受支持部32Aの右方で、かつ、軸受支持部33Aと同じ高さ位置に形成されている。軸受支持部32Cには図示しない軸受を介して図示しない後進用のリバース軸の前端部が回転自在に支持されている。
【0081】
図4において、筒状部32aは、隔壁32の径方向の内方から入力軸21の軸方向に沿って接合部6Aに向かって、すなわち、トルコンハウジング5に向かって延びている。
【0082】
隔壁32は、入力軸21の軸方向(前後方向)において、接合部6Aと接合部6Cの間に形成されている。すなわち、隔壁32は、接合部6Aおよび接合部6Cよりもフロントケース6の内部に入り込んでいる。
【0083】
図2において、フロントケース6の底壁34にはオイルパン61が取付けられており、オイルパン61にはオイルが貯留されている。フロントケース6にはフロントケース6の底壁34とオイルパン61とによってバルブボディ室63が形成されており、バルブボディ室63にはバルブボディ62が設置されている。
【0084】
バルブボディ62は、レギュレータ62a、ロックアップバルブ62bおよび図示しない電磁ソレノイドを備えており、内部に油路を有する。
【0085】
フロントケース6の底壁34およびトルコンハウジング5の隔壁31には図示しない複数のオイル通路が形成されている。
【0086】
バルブボディ62において、電磁ソレノイドによってロックアップバルブ62bがロックアップクラッチ締結用のオイル通路を選択するように切換えられると、オイルポンプ12によってオイルパン61から吸引されたオイルが隔壁31に形成されたロックアップクラッチ締結用のオイル通路を流れる。
【0087】
このオイル通路を流れるオイルは、リヤポンプケース13のロックアップクラッチ締結用のオイル通路からシェル10Bとタービン軸11の間のオイル通路45(
図2参照)を通してトルクコンバータ10に供給される。ロックアップクラッチは、このオイルによって作動され、タービンランナをフロントカバー10Aに締結する。
【0088】
バルブボディ62において、電磁ソレノイドによってロックアップバルブ62bがロックアップクラッチ解除用のオイル通路を選択するように切換えられると、オイルポンプ12によってオイルパン61から吸引されたオイルが隔壁31に形成されたロックアップクラッチ解除用のオイル通路を流れる。
【0089】
このオイル通路を流れるオイルは、リヤポンプケース13のロックアップクラッチ解除用のオイル通路からタービン軸11のオイル通路11B(
図2参照)を通してトルクコンバータ10に供給される。ロックアップクラッチは、このオイルによって作動され、タービンランナをフロントカバー10Aから引き離す。
【0090】
図4、
図5において、フロントケース6にはブリーザ室65が形成されている。
図3、
図5において、ブリーザ室65は、軸受支持部32Aを挟んで軸受支持部32Bと反対側に形成されている。
【0091】
図3から
図5のいずれかにおいて、ブリーザ室65は、フロントケース6の左側壁6Eと、隔壁32と、隔壁32と左側壁6Eとを連結するブリーザ室壁66と、左側壁6Eと隔壁32とブリーザ室壁66とを連結する上壁67とを有する。
【0092】
上壁67には図示しない空気孔が形成されており、空気孔は、ブリーザ室65とフロントケース6の外部とを連通している。
【0093】
ブリーザ室65の下方は、バルブボディ室63に連通しており、ブリーザ室65は、バルブボディ室63の圧力が上昇した場合に、空気孔から空気を抜くことにより、バルブボディ室63の圧力が上昇することを抑制する。本実施例の左側壁6Eは、本発明の変速機ケースの外壁を構成する。
【0094】
軸受支持部32Aは、ブリーザ室壁66に支持されている。すなわち、ブリーザ室壁66は、軸受支持部32Aの一部を構成している。具体的には、
図3、
図5において、ブリーザ室壁66は、軸受支持部32Aの外周縁に沿って連結される第1の連結側部66Aと、第1の連結側部66Aから一方側である上方に延びる第1のブリーザ室壁部66Bとを有する。
【0095】
ブリーザ室壁66は、軸受支持部32Aと交差するよう軸受支持部32Aに連結される第2の連結側部66Cと、第2の連結側部66Cから第1のブリーザ室壁部66Bと反対側の下方に延びる第2のブリーザ室壁部66Dとを有する。
【0096】
第1の連結側部66Aおよび第2の連結側部66Cは、ブリーザ室壁66の右側面であり、第1の連結側部66A、第1のブリーザ室壁部66B、第2の連結側部66Cおよび第2の連結側部66Cは、上下方向に連続している。このように、軸受支持部32Aは、ブリーザ室壁66によって支持されている。
【0097】
隔壁32にはオイル通路部32Dが形成されている。オイル通路部32Dは、隔壁32から入力軸21の軸方向に膨出するボス形状に形成されており、内部にオイル通路32dを有する。
【0098】
図5において、オイル通路部32Dは、軸受支持部32Aを挟んでブリーザ室65と反対側に形成されている。オイル通路部32Dは、軸受支持部32Aからフロントケース6の径方向外端まで延びている。
【0099】
オイル通路32dにはオイルが供給され、オイル通路32dに供給されたオイルによって軸受41が潤滑および冷却される。なお、変速機ケース4の内部において、オイル通路32dにオイルを供給する経路は、どのような経路でも良い。
図3、
図5において、軸受支持部32Bは、第2のブリーザ室壁部66Dと軸受支持部32Bとに連結されている。
【0100】
図3、
図5において、隔壁32には複数のシフタ軸用軸受部32E、32F、32Gが形成されており、シフタ軸用軸受部32E、32F、32Gには3速-4速用のシフタ軸、1速-2速用のシフタ軸29Aおよびリバース-5速用のシフタ軸30Aの軸方向の前端部が挿入されている。
【0101】
3速-4速用のシフタ軸、1速-2速用のシフタ軸29Aおよびリバース-5速用のシフタ軸30Aの後端部は、隔壁33に形成された図示しないシフタ軸用軸受部に挿入されている。3速-4速用のシフタ軸、1速-2速用のシフタ軸29Aおよびリバース-5速用のシフタ軸30Aは、シフタ軸用軸受部32E、32F、32Gおよび隔壁33に形成されたシフタ軸用軸受部に挿入された状態で入力軸21の軸方向に移動自在である。
【0102】
シフタ軸用軸受部32E、32F、32Gは、軸受支持部32Aから径方向に離れた位置で軸受支持部32Aの周方向に沿って並んで設置されており、ブリーザ室壁66とオイル通路部32Dとを連結している。すなわち、シフタ軸用軸受部32Eとシフタ軸用軸受部32Fとは連結されており、シフタ軸用軸受部32Fとシフタ軸用軸受部32Gとは連結されている。
【0103】
シフタ軸用軸受部32Eは、オイル通路部32Dに連結されており、シフタ軸用軸受部32Gは、ブリーザ室壁66に連結されている。これにより、シフタ軸用軸受部32E、32F、32Gは、軸受支持部32Aの周方向に沿って並んだ状態でオイル通路部32Dとブリーザ室壁66とを連結している。
【0104】
ボス部32Hは、軸受支持部32Aを挟んでブリーザ室65と反対側に形成されており、ボス部32Hは、軸受支持部32Bに連結されている。隔壁32にはリブ32Iが形成されている。
【0105】
リブ32Iは、軸受支持部32Aの径方向外方において軸受支持部32Aと軸受支持部32Bとの間に形成されており、軸受支持部32Aと同心円状に延びている。ボス部32Hは、リブ32Jによって軸受支持部32Aに連結されている。本発明のリブ32Jは、本発明の補強部を構成する。
【0106】
リブ32Iは、オイル通路部32Dとボス部32Hとブリーザ室壁66とを連結している。すなわち、リブ32Iは、オイル通路部32Dからボス部32Hを跨いでブリーザ室壁66まで延びている。
【0107】
本実施例の自動変速機2は、複数の入力ギヤ24A、24B、24C、24Dを有し、エンジン3から動力が伝達される入力軸21と、入力軸21を収容するフロントケース6とを有する。
【0108】
フロントケース6は、軸受41を介して入力軸21を回転自在に支持する軸受支持部32Aを有し、軸受支持部32Aから径方向外方に延びる隔壁32と、空気孔を介してフロントケース6の外部と連通するブリーザ室65とを備えている。
【0109】
ブリーザ室65は、フロントケース6の左側壁6Eと、隔壁32と、隔壁32と左側壁6Eとを連結するブリーザ室壁66とによって囲まれる空間から構成されており、軸受支持部32Aは、ブリーザ室壁66に支持されている。
【0110】
これにより、軸受支持部32Aを隔壁32とブリーザ室壁66の両方によって支持することができ、軸受支持部32Aの支持剛性を容易に向上できる。また、自動変速機2に既存のブリーザ室65の一部を構成するブリーザ室壁66によって軸受支持部32Aの支持剛性を向上できるので、新規に軸受支持部32Aの支持剛性を向上するための構成を追加することを不要にできる。
【0111】
このため、自動変速機2の部品点数が増加することを防止して、自動変速機2の重量が増大することを防止できる上に、自動変速機2の製造コストが増大することを防止できる。
【0112】
また、本実施例の自動変速機2によれば、フロントケース6に、入力ギヤ24A、24B、24C、24Dに噛み合うカウンタギヤ26A、26B、26C、26Dを有するカウンタ軸23が収容されている。
【0113】
隔壁32は、カウンタ軸23の前端部を軸受を介して回転自在に支持する軸受支持部32Bを有し、ブリーザ室65は、軸受支持部32Aを挟んで軸受支持部32Bと反対側に設置されている。
【0114】
これにより、入力ギヤ24A、24B、24C、24Dとカウンタギヤ26A、26B、26C、26Dとの噛み合いによって発生する荷重(
図3に噛み合い荷重Fを示す)を、ブリーザ室壁66によって支持することができる。このため、軸受支持部32Aの支持剛性をより効果的に向上できる。
【0115】
また、本実施例の自動変速機2によれば、ブリーザ室壁66は、軸受支持部32Aの外周縁に沿って連結される第1の連結側部66Aと、第1の連結側部66Aから上方に延びる第1のブリーザ室壁部66Bとを有する。
【0116】
これに加えて、ブリーザ室壁66は、軸受支持部32Aと交差するよう軸受支持部32Aに連結される第2の連結側部66Cと、第2の連結側部66Cから第1のブリーザ室壁部66Bと反対側に延びる第2のブリーザ室壁部66Dとを有する。
【0117】
これにより、軸受支持部32Aの外周縁に沿って連結される第1の連結側部66Aと第1の連結側部66Aから上方に延びる第1のブリーザ室壁部66Bとによって軸受支持部32Aに加わる噛み合い荷重Fを支持することができる。
【0118】
さらに、軸受支持部32Aと交差するよう軸受支持部32Aに連結される第2の連結側部66Cと、第2の連結側部66Cから第1のブリーザ室壁部66Bと反対側である下方に延びる第2のブリーザ室壁部66Dとによって軸受支持部32Aに加わる下方の荷重を支持できる。
【0119】
すなわち、入力軸21から下方に加わる荷重(入力軸21や入力ギヤ24A、24B、24C、24Dの等自重を含む)を、第2の連結側部66Cと第2のブリーザ室壁部66Dとによって支持することができる。この結果、軸受支持部32Aの支持剛性をより効果的に向上できる。
【0120】
また、本実施例の自動変速機2によれば、隔壁32は、オイル通路32dを有するオイル通路部32Dを有する。オイル通路部32Dは、軸受支持部32Aを挟んでブリーザ室65と反対側に形成されており、軸受支持部32Aからフロントケース6の径方向外端まで延びている。
【0121】
これにより、オイル通路部32Dが補強部となって軸受支持部32Aを強固に支持できる。そして、補強部であるオイル通路部32Dが軸受支持部32Aを挟んでブリーザ室65と反対側に形成されているので、オイル通路部32Dが突っ張り棒として機能する。
【0122】
このため、ブリーザ室壁66が変形することを抑制でき、ブリーザ室壁66によって軸受支持部32Aの支持剛性をより効果的に向上できる。
【0123】
また、本実施例の自動変速機2によれば、隔壁32は、軸受支持部32Aの上方において、3速-4速用のシフタ軸、1速-2速用のシフタ軸29Aおよびリバース-5速用のシフタ軸30Aをそれぞれ支持するシフタ軸用軸受部32E、32F、32Gを有し、シフタ軸用軸受部32E、32F、32Gは、ブリーザ室壁66とオイル通路部32Dとを連結している。
【0124】
これにより、シフタ軸用軸受部32E、32F、32Gがブリーザ室壁66とオイル通路部32Dとを連結する補強部として機能することになる。このため、剛性の高いシフタ軸用軸受部32E、32F、32Gとオイル通路部32Dとによって軸受支持部32Aを支持するブリーザ室壁66が変形することを抑制できる。この結果、ブリーザ室壁66によって軸受支持部32Aの支持剛性をより効果的に向上できる。
【0125】
また、本実施例の自動変速機2によれば、軸受支持部32Aを挟んでブリーザ室65と反対側の隔壁32にボス部32Hが形成されており、ボス部32Hに、クラッチレバー51の揺動支点51cを構成するガイド部材52が嵌合されている。
【0126】
これにより、ボス部32Hが突っ張り棒として機能してブリーザ室壁66が変形することを抑制でき、ブリーザ室壁66によって軸受支持部32Aの支持剛性をより効果的に向上できる。
【0127】
また、本実施例の自動変速機2によれば、隔壁32は、軸受支持部32Aの径方向外方にリブ32Iが形成されており、リブ32Iは、軸受支持部32Aと同心円状に延び、オイル通路部32Dとボス部32Hとブリーザ室壁66とを連結している。
これに加えて、ボス部32Hは、リブ32Jによって軸受支持部32Aに連結されている。
【0128】
これにより、リブ32Iとリブ32Jとが突っ張り棒として機能してブリーザ室壁66が変形することを抑制でき、ブリーザ室壁66によって軸受支持部32Aの支持剛性をより効果的に向上できる。
【0129】
また、本実施例の自動変速機2によれば、軸受支持部32Bは、ブリーザ室壁66の第2のブリーザ室壁部66Dと軸受支持部32Bとに連結されている。軸受支持部32Bは、軸受を収容するために筒状に形成されており、剛性が大きいので、隔壁32の剛性を軸受支持部32Bによって高くできる。
【0130】
これにより、軸受支持部32Bによってブリーザ室壁66が変形することを抑制でき、ブリーザ室壁66によって軸受支持部32Aの支持剛性をより効果的に向上できる。
【0131】
さらに、軸受支持部32Bを軸受支持部32Aに連結することにより、軸受支持部32Aの剛性をより一層高くでき、結果的に、軸受支持部32Bとブリーザ室壁66によって軸受支持部32Bを両側から挟むように支持することにより、軸受支持部32Aの支持剛性をより効果的に向上できる。
【0132】
なお、本発明の車両用変速機は、自動変速機に適用されているが、手動変速機に適用されてもよい。
【0133】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0134】
1...車両、2...自動変速機(車両用変速機)、3...エンジン(内燃機関)、4...変速機ケース、17...クラッチ、18...レリーズベアリング、21...入力軸、21a...前端部(入力軸の軸方向端部)、23...カウンタ軸、24A,24B,24C,24D...入力ギヤ、26A,26B,26C,26D...カウンタギヤ28,29,30...同期装置、29A,30A...シフタ軸、32...隔壁、32A...軸受支持部(入力軸受支持部)、32B...軸受支持部(カウンタ軸受支持部)、32D...オイル通路部、32d...オイル通路、32E,32F,32G...シフタ軸用軸受部、32H...ボス部、32I...リブ、32J...リブ(補強部)、41,43...軸受、51...クラッチレバー、51c...揺動支点、52...ガイド部材、65...ブリーザ室、66...ブリーザ室壁、66A...第1の連結側部、66B...第1ブリーザ室壁部、66C...第2の連結側部、66D...第2のブリーザ室壁部