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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】検知装置及び検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/056 20060101AFI20220216BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20220216BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20220216BHJP
【FI】
G08G1/056
G08G1/04 A
G01S17/89
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018103930
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019207653
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 謙一
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山内 淑久
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-325287(JP,A)
【文献】特開2004-185363(JP,A)
【文献】特開2000-057499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0025003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/056
G08G 1/04
G01S 17/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された検知エリアにレーザ光を照射して前記レーザ光の反射光を受光することで点群情報を生成するレーザレーダを用いて、前記検知エリアにおける車両の検知対象の挙動である対象挙動を検知するための検知装置であって、
前記点群情報を取得する取得部と、
前記点群情報に基づいて、車両を検知する車両検知部と、
前記車両検知部によって検知された前記車両の移動方向及び単位時間当たりの移動量に基づいて、前記対象挙動を検知する挙動検知部と、
を備え
前記車両検知部は、前記点群情報に基づいて、前記車両の位置を示す位置情報を算出し、
前記挙動検知部は、
第1時刻よりも前の第2時刻における前記位置情報によって示される第2位置から、前記第1時刻における前記位置情報によって示される第1位置までの距離と方向とを示す位置ベクトルを算出し、
前記位置ベクトルを前記第1時刻と前記第2時刻との時間差で除算することによって速度ベクトルを算出し、
前記検知エリアにおいて許可されている前記車両の通行方向に沿った向きを有する基準ベクトルと前記速度ベクトルとの内積を計算し、前記内積と予め定められた閾値とを比較することにより、前記車両が前記対象挙動を行ったか否かを判定する、検知装置。
【請求項2】
前記挙動検知部は、前記速度ベクトルの推移に基づいて、前記車両が前記対象挙動を行ったか否かを判定する、請求項に記載の検知装置。
【請求項3】
前記挙動検知部は、前記対象挙動が交通違反となる挙動である場合、前記対象挙動を行った前記車両を特定するための車両情報を外部装置に取得させる取得指令を出力する、請求項1又は請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の検知装置と、
前記レーザレーダと、
を備える検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検知装置及び検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の挙動を検知する技術が知られている。例えば、特許文献1には、道路を俯瞰する位置に設けられた撮像装置によって撮像された入力画像から車両候補を抽出し、車両候補の特徴点の変位から通常車両か逆走車両かを判定する車両監視装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-269492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両監視装置は、車両の挙動を検知するために、画像処理によって、画像から車両の位置情報を算出する。カメラ等によって撮像された画像は、撮像環境の外乱の影響を受けやすい。このため、画像に基づいて得られた位置情報は、十分な精度を有しない場合がある。また、特許文献1に記載の車両監視装置は、特徴点の変位から走行方向を判断し、通常車両か逆走車両かを判定しているが、変位量が少ない場合等には、誤検知するおそれがある。本技術分野では、車両の挙動の検知精度を向上させることが望まれている。
【0005】
本開示は、車両の挙動の検知精度を向上可能な検知装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る検知装置は、予め設定された検知エリアにレーザ光を照射してレーザ光の反射光を受光することで点群情報を生成するレーザレーダを用いて、検知エリアにおける車両の検知対象の挙動である対象挙動を検知するための装置である。検知装置は、点群情報を取得する取得部と、点群情報に基づいて、車両を検知する車両検知部と、車両検知部によって検知された車両の移動方向及び単位時間当たりの移動量に基づいて、対象挙動を検知する挙動検知部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両の挙動の検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る検知装置を含む検知システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、図1に示されるレーザレーダ及び車両情報取得装置の配置例を示す図である。
図3図3は、レーザレーダの設置例を示す図である。
図4図4は、図1に示される検知装置のハードウェア構成を示す図である。
図5図5は、逆走の検知を説明するための図である。
図6図6は、検知装置が行う検知方法の一連の処理を示すフローチャートである。
図7図7は、図6の車両挙動検知処理を詳細に示すフローチャートである。
図8図8は、図7の解析処理を詳細に示すフローチャートである。
図9図9は、図7の削除処理を詳細に示すフローチャートである。
図10図10は、逆走の検知の変形例を説明するための図である。
図11図11は、Uターンの検知を説明するための図である。
図12図12は、右折の検知を説明するための図である。
図13図13は、車線変更の検知を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]実施形態の概要
本開示の一側面に係る検知装置は、予め設定された検知エリアにレーザ光を照射してレーザ光の反射光を受光することで点群情報を生成するレーザレーダを用いて、検知エリアにおける車両の検知対象の挙動である対象挙動を検知するための装置である。検知装置は、点群情報を取得する取得部と、点群情報に基づいて、車両を検知する車両検知部と、車両検知部によって検知された車両の移動方向及び単位時間当たりの移動量に基づいて、対象挙動を検知する挙動検知部と、を備える。
【0010】
この検知装置では、レーザレーダによって生成された点群情報を用いて、車両が検知される。レーザ光の反射光に基づいて生成された点群情報は、光量及び天候等の影響を受けにくいので、点群情報に基づいて車両を高精度に検知することができる。また、上記検知装置では、検知された車両の移動方向及び単位時間当たりの移動量に基づいて、対象挙動が検知される。このように、車両の移動方向だけでなく単位時間当たりの移動量が考慮されるので、計測誤差によって対象挙動が誤検知される可能性を低減することが可能となる。その結果、車両の挙動の検知精度を向上させることが可能となる。
【0011】
車両検知部は、点群情報に基づいて、車両の位置を示す位置情報を算出してもよい。挙動検知部は、第1時刻における位置情報である第1位置情報と、第1時刻よりも前の第2時刻における位置情報である第2位置情報と、に基づいて、移動方向を示すベクトルを算出してもよい。挙動検知部は、ベクトルに基づいて、車両が対象挙動を行ったか否かを判定してもよい。第2時刻から第1時刻までの間に、車両は第2位置情報で示される第2位置から第1位置情報で示される第1位置まで移動している。このため、2つの時刻における位置情報を用いることで、車両の移動方向を示すベクトルを算出することができる。
【0012】
挙動検知部は、第2位置情報によって示される第2位置から第1位置情報によって示される第1位置までの距離と方向とを示す位置ベクトルを算出し、位置ベクトルを第1時刻と第2時刻との時間差で除算することによって速度ベクトルをベクトルとして算出してもよい。この場合、速度ベクトルは、車両の移動方向と単位時間当たりの移動量とを示す。このため、速度ベクトルを用いて車両が対象挙動を行ったか否かが判定されるので、計測誤差によって対象挙動が誤検知される可能性を低減することが可能となる。
【0013】
挙動検知部は、検知エリアにおいて許可されている車両の通行方向に沿った向きを有する基準ベクトルと速度ベクトルとの内積を計算してもよく、内積と予め定められた閾値とを比較することにより、車両が対象挙動を行ったか否かを判定してもよい。上述のようにして得られた内積は、車両の移動方向及び単位時間当たりの移動量を表す。このため、内積を用いることで、対象挙動の検知に要する計算量を削減することが可能となる。
【0014】
挙動検知部は、ベクトルの推移に基づいて、車両が対象挙動を行ったか否かを判定してもよい。車両が対象挙動を行った場合、車両の移動方向が、時間の経過とともに、対象挙動に応じた所定のパターンで変化する。このため、ベクトルが所定のパターンで推移している場合に車両が対象挙動を行ったと判定することができる。
【0015】
挙動検知部は、対象挙動が交通違反となる挙動である場合、対象挙動を行った車両を特定するための車両情報を外部装置に取得させる取得指令を出力してもよい。この場合、交通違反車両を特定するための車両情報が取得される。このため、例えば、交通違反車両の運転者に対して、違反点数の付与及び罰金の徴収等を行うことができる。
【0016】
本開示の別の側面に係る検知システムは、上述の検知装置と、レーザレーダと、を備える。この検知システムは、上述の検知装置を備えているので、車両の挙動の検知精度を向上させることが可能となる。
【0017】
[2]実施形態の例示
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る検知装置を含む検知システムの構成を概略的に示す図である。図2は、図1に示されるレーザレーダ及び車両情報取得装置の配置例を示す図である。図3は、レーザレーダの設置例を示す図である。図4は、図1に示される検知装置のハードウェア構成を示す図である。図5は、逆走の検知を説明するための図である。
【0019】
図1に示される検知システム1は、対象地点における車両の挙動を検知するシステムである。より具体的には、検知システム1は、対象地点における車両の対象挙動を検知する。対象地点は、監視対象となる道路上の場所(地点)である。対象地点は、道路上の任意の場所が選択され得る。対象地点として、例えば、交差点、合流地点、及び道路の途中地点が選択される。車両の例としては、自動車及びバイクが挙げられる。
【0020】
対象挙動は、車両の検知対象の挙動である。対象挙動には、(交通)違反走行が含まれる。違反走行としては、例えば、Uターン禁止エリアでのUターン、交差点における右折(又は左折)禁止エリアでの右折(又は左折)、道路において許可されている車両の通行方向と反対向きの走行(以下、「逆走」という)、及び車線変更禁止エリアでの車線変更が挙げられる。本実施形態では、対象挙動として逆走を用いて説明する。検知システム1は、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)に用いられる。検知システム1は、レーザレーダ2と、車両情報取得装置3(外部装置)と、出力装置4と、記憶装置5と、通信装置6と、検知装置10と、を備えている。
【0021】
レーザレーダ2は、点群情報を生成する装置である。レーザレーダ2は、ライダー(LiDAR:Light Detection And Ranging)、又はLaser Range Finderとも称される。図2及び図3に示されるように、レーザレーダ2は、対象地点の近傍に設置されている。図2に示される例では、対象地点は、道路TRの途中地点である。レーザレーダ2は、例えば、対象地点の上空に設けられる。レーザレーダ2は、地上に設置された支持部材7に固定されている。支持部材7は、例えば、道路TRの路側に設けられる。支持部材7は、例えば、路側に立設された支柱71と、支柱71の上端から道路を横断する方向に延びるアーム72と、を備えている。アーム72には、レーザレーダ2が取り付けられている。支持部材7は、例えば、電柱、及び倉庫の壁であってもよい。なお、図2等では、支持部材7の図示が省略されている。
【0022】
レーザレーダ2は、照射可能範囲Raに向けてレーザ光を照射し、照射したレーザ光の反射光を受光することにより点群情報を生成する。照射可能範囲Raは、レーザレーダ2がレーザ光を照射可能な範囲であり、例えば150m程度の範囲である。照射可能範囲Raは、検知エリアRdを含む。検知エリアRdは、照射可能範囲Raのうちの監視対象となる領域である。点群情報は、照射可能範囲Raに含まれる各計測点の計測点情報の集合である。
【0023】
計測点情報は、時刻情報、及び位置情報を含む。時刻情報は、位置情報で示される計測点に対して計測点情報を生成した(反射光を受光した)時刻を示す情報である。位置情報は、計測点の位置を示す情報である。位置には、ヨー角、ピッチ角、及び深度で表される極座標系が用いられてもよく、X座標、Y座標、及びZ座標の3次元座標系が用いられてもよい。各計測点の座標には、例えば、レーザレーダ2の設置位置を原点とした座標が用いられる。図2に示される例では、道路TRの幅方向がX軸方向であり、道路TRの延びる方向がY軸方向であり、高さ方向がZ軸方向である。計測点情報は、反射強度情報をさらに含んでもよい。反射強度情報は、位置情報で示される計測点から、時刻情報で示される時刻に受光した反射光の強度を示す情報である。
【0024】
レーザレーダ2は、レーザ光を用いて照射可能範囲Raを主走査方向及び副走査方向に走査する。照射可能範囲Raへのレーザ光の照射によって得られる点群情報は、1フレームと称される場合がある。照射可能範囲Raへのレーザ光の照射は、所定の時間間隔で繰り返される。レーザレーダ2は、生成した点群情報を検知装置10に送信する。
【0025】
車両情報取得装置3は、検知装置10によって対象挙動を行ったと判定された車両を特定するための車両情報を取得する装置である。車両情報取得装置3は、例えば、自動速度違反取締装置である。車両情報としては、例えば、ナンバープレートの画像が用いられる。車両情報取得装置3は、検知装置10から車両位置情報とともに取得指令を受信すると、例えば、車両位置情報によって示される位置に存在する車両(取得対象の車両)のナンバープレートを含むように撮影を行い、ナンバープレートの画像を取得する。
【0026】
車両情報取得装置3は、監視範囲Rbに取得対象の車両が進入すると、当該車両を撮影する。監視範囲Rbは、車両情報取得装置3が撮影可能な範囲であり、数m程度である。図2に示される例では、監視範囲Rbは、車両情報取得装置3に対して、道路TRの延在方向に沿った両方向に設定されている。車両の前方及び後方に、ナンバープレートが設けられているので、車両情報取得装置3は、車両の前方及び後方のいずれから車両を撮影してもよい。
【0027】
車両情報取得装置3は、レーザレーダ2と同様に、支持部材に固定されている。レーザレーダ2と車両情報取得装置3とは、同じ支持部材に取り付けられてもよく、互いに異なる支持部材に取り付けられてもよい。なお、図2等では、支持部材の図示が省略されている。車両情報取得装置3は、車両情報を記憶装置5に送信し、記憶装置5に記憶させてもよい。車両情報取得装置3は、通信装置6を介して公的機関、及び道路管理業者等に車両情報を送信してもよい。
【0028】
出力装置4は、注意、警告、及び指示を行う装置である。出力装置4は、例えば、表示板、及びスピーカを含む。出力装置4は、検知装置10から出力指令を受信すると、注意、警告、及び指示等を違反車両の運転者に向けて出力する。出力装置4は、周囲の歩行者等に向けて注意、警告、及び指示等を出力してもよい。
【0029】
記憶装置5は、各種情報を記憶する装置である。記憶装置5の例としては、ハードディスク装置、及び半導体メモリが挙げられる。記憶装置5に記憶される各種情報としては、例えば、車両情報取得装置3によって取得された車両情報、後述する検知車両の検知時刻、位置、速度、及び大きさ(寸法)が挙げられる。車両情報取得装置3がビデオカメラを含む場合には、各種情報には、検知時刻を含む時間帯のビデオ動画が含まれてもよい。各種情報には、検知時刻を含む時間帯の点群情報が含まれてもよい。各種情報には、検知車両の移動軌跡(時系列の車両位置情報)が含まれてもよい。
【0030】
通信装置6は、道路脇に設置されている通信設備である。通信装置6は、例えば、路側機(ITSスポット)である。通信装置6は、検知システム1の外部の装置と通信を行う。外部の装置としては、車載器、サーバ装置、及び他のシステム等が挙げられる。通信装置6は、記憶装置5に記憶される各種情報と同様の情報を外部の装置に送信する。
【0031】
検知装置10は、レーザレーダ2を用いて、検知エリアRdにおける車両の挙動を検知するための装置である。検知装置10は、例えば、コンピュータ等の情報処理装置によって構成される。
【0032】
図4に示されるように、検知装置10は、物理的には、1又は複数のプロセッサ101、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の主記憶装置102、ハードディスク装置等の補助記憶装置103、キーボード等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、並びに、データ送受信デバイスである通信装置106等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成され得る。検知装置10の図1に示される各機能は、主記憶装置102等のハードウェアに1又は複数の所定のコンピュータプログラムを読み込ませることにより、1又は複数のプロセッサ101の制御のもとで各ハードウェアを動作させるとともに、主記憶装置102及び補助記憶装置103におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0033】
検知装置10は、機能的には、取得部11と、設定部12と、物体検知部13(車両検知部)と、物体追跡部14と、挙動検知部15と、を備えている。
【0034】
取得部11は、レーザレーダ2から点群情報を取得する。取得部11は、取得した点群情報を物体検知部13に出力する。
【0035】
設定部12は、検知エリアRdを示すエリア情報を取得する。例えば、検知装置10の入力装置104を用いてユーザが検知エリアRdを設定する。例えば、対象地点を模擬した3次元空間が出力装置105に表示され、ユーザが枠等によって検知エリアRdを設定する。例えば、検知エリアRdは、歩道を含まないように設定される。また、交差点及び道路には、信号機、支柱、電柱、及び高架等の固定物がある。これらの固定物は、監視対象外であるので、これらの固定物を除外するために、検知エリアRdの高さとして、所定の高さ以下の範囲が設定されてもよい。また、地面を除外するために、検知エリアRdの高さとして、所定の高さ以上の範囲が設定されてもよい。例えば、検知エリアRdの高さには、地表を基準として20cm以上500cm以下の範囲が設定されてもよい。設定部12は、設定された検知エリアRdを示すエリア情報を取得し、取得したエリア情報を物体検知部13に出力する。
【0036】
物体検知部13は、点群情報に基づいて、車両を検知する。具体的には、物体検知部13は、取得部11から点群情報を受け取ると、設定部12から受け取ったエリア情報によって示される検知エリアRd外に位置する計測点の計測点情報を点群情報から除外する。物体検知部13は、残った点群情報をクラスタリングする。つまり、物体検知部13は、検知エリアRd内の複数の計測点のうち、近傍の計測点同士をつなぎ合わせ、クラスタ(塊)に分割する。物体検知部13は、得られたクラスタを単一の検知物体(車両及び人等)として検知する。
【0037】
物体検知部13は、検知物体の寸法(幅、奥行き、及び高さ)及び位置を計算する。検知物体の位置は、検知物体の四隅(前方右端、前方左端、後方右端、及び後方左端)の座標でもよく、クラスタに含まれる計測点情報の位置の平均でもよく、検知物体の重心位置でもよい。検知物体の位置は、前方右端及び前方左端の座標でもよく、レーザレーダ2から見て最も手前の計測点の座標でもよい。
【0038】
検知装置10では、車両の挙動が検知されるので、人及び鳥等の移動物体(非車両)を追跡する必要がない。このため、物体検知部13は、検知物体から非車両を除外する。具体的には、物体検知部13は、検知物体の大きさ(寸法)に基づいて、検知物体の分類を行う。ここでは、物体検知部13は、検知物体を車両と非車両とに分類する。物体検知部13は、例えば、検知物体の幅が1m未満である場合、検知物体を非車両に分類し、検知物体の幅が1m以上である場合、検知物体を車両に分類する。
【0039】
物体検知部13は、車両に分類した検知物体(以下、「検知車両」という。)について、検知結果を物体追跡部14に出力する。検知結果は、検知車両の寸法を示す寸法情報、検知車両の位置を示す車両位置情報、及び検知車両を検知した検知時刻を示す検知時刻情報を含む。検知時刻は、例えば、クラスタに含まれる各計測点の計測点情報が有する時刻情報によって示される時刻の平均時刻である。
【0040】
物体追跡部14は、検知車両を追跡し、追跡結果を生成する。つまり、物体追跡部14は、物体検知部13から検知結果を受け取ると、異なるフレーム(異なる検知時刻)において検知された検知車両に対し、車両ID(Identifier)の対応付けを行う。車両IDは、検知車両を一意に識別可能な識別情報である。具体的には、物体追跡部14は、検知車両の位置及び寸法、並びに、過去の観測結果から推定される速度及び角速度等に基づいて、現在のフレームにおいて検知された検知車両が、過去のフレームにおいて検知された検知車両のいずれかと対応しているかを判定する。
【0041】
物体追跡部14は、現在のフレームにおいて検知された検知車両が、過去のフレームにおいて検知された検知車両のいずれとも対応しないと判定した場合に、新規の検知車両として当該検知車両に新しい車両IDを付与する。物体追跡部14は、現在のフレームにおいて検知された検知車両が、過去のフレームにおいて検知された検知車両と対応すると判定した場合に、対応する検知車両に付与されている車両IDを現在のフレームにおいて検知された検知車両に付与する。物体追跡部14は、車両IDが付与されている検知車両のうち、長時間検知されていない検知車両について、車両IDを削除する。
【0042】
なお、複数の検知車両を追跡する(ID付けする)問題は、マルチターゲットトラッキング問題と称される。物体追跡部14は、公知のアルゴリズムを用いて、各検知車両を追跡する。公知のアルゴリズムとしては、SNN(Suboptimal Nearest Neighbor)、GNN(Global Nearest Neighbor)、及びJPDAF(Joint Probabilistic Data Association Filter)等が挙げられる。物体追跡部14は、追跡結果を挙動検知部15に出力する。追跡結果は、車両ID、車両位置情報、及び検知時刻情報を含む。
【0043】
挙動検知部15は、車両ID及び車両位置情報に基づいて、検知車両の対象挙動を検知する。具体的には、挙動検知部15は、検知車両の移動方向(走行方向)及び単位時間当たりの移動量(走行量)に基づいて、対象挙動を検知する。より具体的に説明すると、挙動検知部15は、物体追跡部14から追跡結果を受け取ると、速度ベクトルを計算する。速度ベクトルは、検知車両の移動方向に沿った向きと、検知車両の単位時間当たりの移動量に応じた大きさと、を有する。つまり、速度ベクトルは、検知車両の移動方向と、検知車両の単位時間当たりの移動量と、を示す。
【0044】
図5に示されるように、挙動検知部15は、例えば、前回(検知時刻t-1)のフレームにおける車両位置情報(第2位置情報)と、現在(検知時刻t)のフレームにおける車両位置情報(第1位置情報)と、に基づいて、速度ベクトルを計算する。つまり、挙動検知部15は、前回フレームの車両位置情報によって示される検知車両Mの位置p(t-1)から現在のフレームの車両位置情報によって示される検知車両Mの位置p(t)までの距離と方向とを示す位置ベクトルを計算する。位置ベクトルは、検知車両Mの移動方向及び移動量を示す。位置ベクトルは、動きベクトルとも称される。式(1)に示されるように、挙動検知部15は、位置p(t)(第1位置)から位置p(t-1)(第2位置)を減算することで、位置ベクトルを求め、検知時刻t(第1時刻)と検知時刻t-1(第2時刻)との時間差で位置ベクトルを除算することによって、検知時刻tにおける速度ベクトルVv(t)=(vx,vy)を計算する。
【数1】
【0045】
挙動検知部15は、速度ベクトルに基づいて、検知車両Mが逆走したか否かを判定する。例えば、式(2)に示されるように、挙動検知部15は、基準ベクトルVrと速度ベクトルVv(t)との内積を計算する。基準ベクトルVrは、検知車両Mが走行している道路(車線)において許可されている車両の通行方向に沿った向きを有する単位ベクトルである。単位ベクトルは、その大きさが1であるベクトルである。挙動検知部15には、基準ベクトルVr=(sx,sy)が予め設定されている。図5に示される道路TRにおいて許可されている車両の通行方向がY軸正方向であるとすると、基準ベクトルVrは、(0,1)に設定される。
【数2】
【0046】
検知車両Mの移動方向が通行方向と同じである場合、内積は正の値となる。検知車両Mの移動方向が通行方向と反対である場合、内積は負の値となる。検知車両Mが停止している場合には、内積は0となる。内積の大きさが大きいほど、検知車両Mの単位時間当たりの移動量が大きいことを示す。つまり、内積は、検知車両Mの移動方向及び単位時間当たりの移動量を表す指標として用いられる。
【0047】
挙動検知部15は、内積と閾値とを比較することにより、検知車両Mが対象挙動を行ったか否かを判定する。対象挙動が逆走である場合、閾値は、予め定められた負の値であり、レーザレーダ2による計測誤差を除外できる程度の大きさを有する。挙動検知部15は、例えば、予め定められた期間(一定時間)以上に亘って、内積が閾値よりも小さい負の値を取り続けた場合、検知車両Mが逆走していると判定する。挙動検知部15は、対象挙動を検知した場合、車両情報を取得するための取得指令を車両情報取得装置3に出力する。
【0048】
次に、図6図9を参照して、検知装置10が行う検知方法について説明する。図6は、検知装置が行う検知方法の一連の処理を示すフローチャートである。図7は、図6の車両挙動検知処理を詳細に示すフローチャートである。図8は、図7の解析処理を詳細に示すフローチャートである。図9は、図7の削除処理を詳細に示すフローチャートである。図6に示される一連の処理は、例えば、一定の時間ごとに実施される。
【0049】
まず、取得部11が、レーザレーダ2から点群情報を取得する(ステップS01)。そして、取得部11は、取得した点群情報を物体検知部13に出力する。続いて、物体検知部13は、点群情報に基づいて、検知物体を検知する(ステップS02)。具体的には、物体検知部13は、取得部11から点群情報を受け取ると、設定部12から受け取ったエリア情報によって示される検知エリアRd外に位置する計測点の計測点情報を点群情報から除外する。そして、物体検知部13は、残った点群情報をクラスタリングし、得られたクラスタを単一の検知物体(車両及び人等)として検知する。そして、物体検知部13は、検知物体の寸法及び位置を計算する。
【0050】
続いて、物体検知部13は、検知物体を分類する(ステップS03)。具体的には、物体検知部13は、検知物体の寸法に基づいて、検知物体を車両と非車両とに分類する。そして、物体検知部13は、車両に分類した検知物体について、検知結果を物体追跡部14に出力する。
【0051】
続いて、物体追跡部14は、検知物体(検知車両)を追跡する(ステップS04)。具体的には、物体追跡部14は、物体検知部13から検知結果を受け取ると、現在のフレームにおいて検知された検知車両が、過去のフレームにおいて検知された検知車両のいずれとも対応しないと判定した場合に、新規の検知車両として当該検知車両に新しい車両IDを付与する。物体追跡部14は、現在のフレームにおいて検知された検知車両が、過去のフレームにおいて検知された検知車両と対応すると判定した場合に、対応する検知車両に付与されている車両IDを現在のフレームにおいて検知された検知車両に付与する。そして、物体追跡部14は、追跡結果(車両ID、車両位置情報、及び検知時刻情報)を挙動検知部15に出力する。
【0052】
続いて、挙動検知部15は、車両挙動検知処理を実施する(ステップS05)。ステップS05の車両挙動検知処理では、図7に示されるように、挙動検知部15は、物体追跡部14から追跡結果を受け取ると、追跡結果に含まれる各車両IDについて、ステップS11~ステップS14の処理を行う。まず、挙動検知部15は、管理テーブルを更新する(ステップS11)。管理テーブルは、検知車両を管理するためのテーブルである。
【0053】
管理テーブルは、車両IDと、履歴情報と、を対応付けた挙動情報を管理している。履歴情報は、車両IDによって示される検知車両の位置の履歴(移動軌跡)を示す情報である。履歴情報は、検知時刻を示す検知時刻情報と、車両IDによって示される検知車両の当該検知時刻における位置を示す車両位置情報と、の1つ以上の組を有する。
【0054】
挙動検知部15は、追跡結果に含まれる車両IDを含む挙動情報が管理テーブルに存在しない場合には、当該車両IDを含む挙動情報を管理テーブルに追加登録する。つまり、挙動検知部15は、新たな挙動情報を追加し、挙動情報の車両IDとして追跡結果に含まれる車両IDを設定し、追跡結果に含まれる検知時刻情報及び車両位置情報の組を履歴情報に設定する。挙動検知部15は、追跡結果に含まれる車両IDを含む挙動情報が管理テーブルに存在する場合には、追跡結果に含まれる検知時刻情報及び車両位置情報の組を、当該挙動情報の履歴情報に追加する。
【0055】
続いて、挙動検知部15は、解析処理を行う(ステップS12)。ステップS12の解析処理では、図8に示されるように、挙動検知部15は、まず、検知車両Mの速度ベクトルVv(t)を計算する(ステップS21)。具体的には、挙動検知部15は、車両IDに対応する履歴情報から最新の検知時刻(ここでは、検知時刻tとする。)における車両位置情報と前回の検知時刻(ここでは、検知時刻t-1とする。)における車両位置情報とを抽出する。そして、挙動検知部15は、式(1)に示されるように、検知時刻tの車両位置情報によって示される検知車両Mの位置p(t)から検知時刻t-1の車両位置情報によって示される検知車両Mの位置p(t-1)を減算することで、位置ベクトルを求め、検知時刻tと検知時刻t-1との時間差で位置ベクトルを除算することによって、速度ベクトルVv(t)=(vx,vy)を計算する。
【0056】
続いて、挙動検知部15は、式(2)に示されるように、基準ベクトルVrと速度ベクトルVv(t)との内積を計算する(ステップS22)。そして、挙動検知部15は、内積と閾値とを比較し、内積が閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS23)。挙動検知部15は、内積が閾値よりも小さいと判定した場合(ステップS23;YES)、検知車両Mが逆走していると判定し(ステップS24)、ステップS12の解析処理を終了する。一方、挙動検知部15は、内積が閾値以上であると判定した場合(ステップS23;NO)、検知車両Mは逆走していないと判定し、ステップS12の解析処理を終了する。
【0057】
なお、挙動検知部15は、ステップS23において、予め定められた期間(一定時間)以上に亘って、内積が閾値よりも小さい負の値を取り続けたか否かを判定してもよい。挙動検知部15は、一定時間以上に亘って、内積が閾値よりも小さい負の値を取り続けた場合に、検知車両Mが逆走していると判定してもよい。
【0058】
続いて、図7に示されるように、挙動検知部15は、ステップS12において検知車両Mの挙動が逆走である(違反している)と判定された場合には(ステップS13;YES)、検知車両の車両情報を取得するために、取得指令を車両位置情報とともに車両情報取得装置3に送信する(ステップS14)。このとき、挙動検知部15は、違反車両に関する各種情報を記憶装置5及び通信装置6に送信してもよい。各種情報には、検知車両(違反車両)の検知時刻、位置、速度、及び大きさ(寸法)が含まれ得る。各種情報には、検知時刻を含む時間帯のビデオ動画が含まれてもよい。各種情報には、検知時刻を含む時間帯の点群情報、及び検知車両の移動軌跡(時系列の車両位置情報)が含まれてもよい。さらに、挙動検知部15は、違反車両に対して注意、警告、及び指示を行うための出力指令を出力装置4に送信してもよい。挙動検知部15は、ステップS12において検知車両Mの挙動が逆走でないと判定された場合には(ステップS13;NO)、取得指令を車両情報取得装置3に送信しない。
【0059】
そして、挙動検知部15は、追跡結果に含まれるすべての車両IDを処理したか否かを判定する(ステップS15)。挙動検知部15は、すべての車両IDを処理していないと判定した場合には(ステップS15;NO)、次の車両IDについて、ステップS11~ステップS15を再び実行する。一方、挙動検知部15は、すべての車両IDを処理したと判定した場合には(ステップS15;YES)、挙動情報の削除処理を行う(ステップS16)。
【0060】
ステップS16の削除処理では、図9に示されるように、挙動検知部15は、管理テーブルに登録されている各挙動情報について、ステップS31及びステップS32の処理を行う。まず、挙動検知部15は、現在の時刻と挙動情報の履歴情報に含まれている最新の検知時刻情報によって示される検知時刻との差を計算し、その差が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する(ステップS31)。閾値は、例えば、車両が検知エリアRdを通過するのに要する平均時間よりも大きい値に設定されている。挙動検知部15は、差が閾値以上であると判定した場合(ステップS31;YES)、当該挙動情報の車両IDによって示される車両が検知エリアRdから退出したとみなして、当該挙動情報を管理テーブルから削除する(ステップS32)。一方、挙動検知部15は、差が閾値未満であると判定した場合(ステップS31;NO)、当該挙動情報を管理テーブルから削除しない。
【0061】
そして、挙動検知部15は、管理テーブルに登録されているすべての挙動情報を処理したか否かを判定する(ステップS33)。挙動検知部15は、すべての挙動情報を処理していないと判定した場合には(ステップS33;NO)、次の挙動情報について、ステップS31~ステップS33を再び実行する。一方、挙動検知部15は、すべての挙動情報を処理したと判定した場合には(ステップS33;YES)、車両挙動検知処理を終了する。以上により、検知装置10が行う検知方法の一連の処理が終了する。
【0062】
そして、車両情報取得装置3は、検知装置10(挙動検知部15)から車両位置情報とともに取得指令を受信すると、車両情報を取得する。具体的には、車両情報取得装置3は、車両位置情報によって示される位置に存在する車両が監視範囲Rbに進入すると、当該車両のナンバープレートを含むように撮影を行い、ナンバープレートの画像を取得する。そして、車両情報取得装置3は、車両情報を記憶装置5に送信し、記憶装置5に記憶させるとともに、通信装置6を介して公的機関、及び道路管理業者等に車両情報を送信する。
【0063】
以上説明したように、検知システム1及び検知装置10では、レーザレーダ2によって生成された点群情報を用いて、検知車両Mが検知される。レーザレーダ2は、時間帯(朝及び夜)による光量の変化、天候(雨天、降雪、及び濃霧)の変化、並びに太陽光及びヘッドライト等の強い光の入光といった環境の外乱の影響を受けにくい。また、レーザレーダ2は、レーザレーダ2と物体との距離を数cm程度の誤差で計測することができる。このため、検知システム1及び検知装置10では、検知車両Mの位置を高精度に検知することができる。
【0064】
レーザレーダ2による計測の誤差によって、実際の車両の移動とは異なる方向の移動が検知される場合がある。つまり、検知車両Mの位置が正確に得られないことがあるので、例えば、移動方向だけで対象挙動を検知する場合には、車両が停止していたとしても、検知車両Mが逆走していると判定され得る。このため、移動方向だけで対象挙動を検知する場合には、誤検知が生じる可能性がある。これに対し、検知システム1及び検知装置10では、検知車両Mの移動方向及び単位時間当たりの移動量に基づいて、対象挙動が検知される。具体的には、検知システム1及び検知装置10では、速度ベクトルVv(t)を用いて、検知車両Mが対象挙動を行ったか否かが判定される。速度ベクトルVv(t)は、検知車両Mの移動方向と、検知車両Mの単位時間当たりの移動量と、を示す。このように、検知車両Mの移動方向だけでなく単位時間当たりの移動量が考慮されるので、例えば、単位時間当たりの移動量が小さい場合には、検知車両Mが対象挙動を行っていないと判定することができる。これにより、計測誤差によって対象挙動が誤検知される可能性を低減することが可能となる。その結果、車両の挙動の検知精度を向上させることが可能となる。
【0065】
また、検知システム1及び検知装置10では、検知時刻tにおける検知車両Mの位置p(t)と、検知時刻t-1における検知車両Mの位置p(t-1)と、に基づいて、速度ベクトルVv(t)が算出され、速度ベクトルVv(t)に基づいて、検知車両Mが対象挙動を行ったか否かが判定される。検知時刻t-1から検知時刻tまでの間に、検知車両Mは位置p(t-1)から位置p(t)まで移動している。このため、検知時刻t-1,tにおける車両位置情報を用いることで、検知車両Mの移動方向を示す位置ベクトルを算出することができる。また、検知時刻t-1と検知時刻tとの時間差によって、位置ベクトルを除算することで、速度ベクトルVv(t)を算出することができる。
【0066】
検知システム1及び検知装置10では、基準ベクトルVrと速度ベクトルVv(t)との内積が計算され、内積と閾値とを比較することにより、検知車両Mが対象挙動を行ったか否かが判定される。上述のようにして得られた内積は、検知車両Mの移動方向及び単位時間当たりの移動量を表すことができる。例えば、内積が正の値であれば、検知車両Mの移動方向が、道路TR(車線)において許可されている通行方向と同じであり、内積が負の値であれば、検知車両Mの移動方向が道路TR(車線)において許可されている通行方向と反対である。内積の大きさは、検知車両Mの単位時間当たりの移動量を表す。このため、内積を用いることで、対象挙動の検知に要する計算量を削減することが可能となる。
【0067】
挙動検知部15は、対象挙動が交通違反となる挙動である場合、対象挙動を行った車両を特定するための車両情報を車両情報取得装置3に取得させる取得指令を出力する。これにより、違反車両を特定するための車両情報が取得される。このため、例えば、違反車両の運転者に対して、違反点数の付与及び罰金の徴収等を行うことができる。また、違反車両を特定することによって、違反車両の運転者に警告を与えることができる。逆走のような危険度の高い運転に対しては、運転指示を行うことができる。運転指示の例としては、「逆走しているので直ちにUターンせよ」等が挙げられる。
【0068】
レーザレーダ2は、照射可能範囲Ra(検知エリアRd)に対してレーザ光を繰り返し照射するので、検知車両Mの位置を経時的に検知することができる。レーザレーダ2は、カメラ等と比較して、検知エリアRdが広いので、複数のレーザレーダ2を設置する必要がない。レーザレーダ2は、交差点内のような見通しの良い空間でも計測することができる。
【0069】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0070】
例えば、上記実施形態では、検知装置10は、1つの装置として構成されているが、2以上の装置で構成されてもよい。検知装置10は、レーザレーダ2を備えていてもよい。レーザレーダ2が検知装置10の機能を有する情報処理装置を備えていてもよい。
【0071】
対象地点は、交差点でもよい。交差点は、2つの道路が交差する交差点でもよく、T字路でもよい。対象地点は、2以上の道路が合流する合流地点でもよく、ビル等の施設の出口と道路との合流地点でもよい。対象地点は、一般道でもよく、高速道路でもよい。
【0072】
挙動検知部15は、速度ベクトルVv(t)に代えて、位置ベクトルに基づいて、検知車両Mが対象挙動を行ったか否かを判定してもよい。また、速度ベクトルVv(t)(位置ベクトル)の計算には、連続する2つのフレームにおける検知車両Mの位置が用いられなくてもよく、2つの検知時刻における検知車両Mの位置が用いられればよい。
【0073】
逆走を検知する対象となる道路は、1車線(走行レーン)の道路でなくてもよく、複数の車線を有する道路であってもよい。許可されている通行方向が互いに同じ車線には、共通の基準ベクトルが設定される。図10に示される例では、道路TRは、2つの車線TL1と、3つの車線TL2と、中央分離帯Cと、を有する。この道路TRでは、中央分離帯Cによって2つの車線TL1と3つの車線TL2とに分離されている。2つの車線TL1において許可されている通行方向は互いに同じ方向(Y軸正方向)であり、3つの車線TL2において許可されている通行方向は互いに同じ方向(Y軸負方向)である。この場合、2つの車線TL1に対して、基準ベクトルVr1=(0,1)が設定される。同様に、3つの車線TL2に対して、基準ベクトルVr2=(0,-1)が設定される。この構成では、レーザレーダ2の数を増やすことなく、許可されている通行方向が異なる車線の逆走を検知することができる。なお、基準ベクトルは、車線毎に設定されてもよい。
【0074】
挙動検知部15は、速度ベクトルの推移に基づいて、検知車両Mが対象挙動を行ったか否かを判定してもよい。この場合、挙動情報は、履歴情報に各検知時刻において算出された速度ベクトルをさらに含む。挙動検知部15は、挙動情報に含まれる複数の速度ベクトルを時系列に並べた場合の複数の速度ベクトルの向きの変化に基づいて、対象挙動を検知する。例えば、対象挙動が逆走である場合、挙動検知部15は、連続する2以上のフレームにおいて、速度ベクトルの向きが道路(車線)において許可されている通行方向と反対である場合に、検知車両Mが逆走していると判定する。あるいは、内積を用いる場合には、上述のように、挙動検知部15は、予め定められた期間(一定時間)以上に亘って、内積が閾値よりも小さい負の値を取り続けた場合、検知車両Mが逆走していると判定してもよい。
【0075】
対象挙動は、逆走に限られない。例えば、図11に示されるように、対象挙動は、Uターンが禁止されている交差点PでのUターンであってもよい。Uターンは、車両が進行方向を180度変えて反対方向に進むことであり、転回とも称される。図11に示される例では、交差点PからY軸正方向に沿って延びる1つの道路TRは、交差点Pに進入する複数(ここでは、3つ)の車線TLinと、交差点Pから退出する複数(ここでは、2つ)の車線TLoutと、車線TLinと車線TLoutとの間に設けられた中央分離帯Cと、を有する。車線TLoutは、車線TLinのX軸負方向に配置されている。車線TLinにおいて許可されている通行方向はY軸負方向であり、車線TLoutにおいて許可されている通行方向はY軸正方向である。
【0076】
この場合、検知車両Mの各検知時刻t-7~tの位置p(t-7)~p(t)のうち、時系列で互いに隣り合う2つの位置から速度ベクトルVv(t-6)~Vv(t)が算出される。そして、挙動検知部15は、例えば、速度ベクトルVv(t-6)~Vv(t)を時系列に(古い順に)並べた場合の速度ベクトルVv(t-6)~Vv(t)の向きの変化に基づいて、Uターンを検知する。例えば、挙動検知部15は、時系列に並べられた速度ベクトルVv(t-6)~Vv(t)の向きがY軸負方向、X軸負方向、及びY軸正方向の順に変化する場合に、検知車両Mが車線TLinから車線TLoutにUターンしたと判定する。
【0077】
図12に示されるように、対象挙動は、右折が禁止されている交差点Pでの右折であってもよい。図12に示される例では、交差点PからY軸正方向に沿って延びる道路TR1は、交差点Pに進入する複数(ここでは、3つ)の車線TLinを有する。交差点PからX軸負方向に沿って延びる道路TR2は、交差点Pから退出する複数(ここでは、2つ)の車線TLoutを有する。この場合もUターンと同様に、検知車両Mの各検知時刻t-7~tの位置p(t-7)~p(t)のうち、時系列で互いに隣り合う2つの位置から速度ベクトルVv(t-6)~Vv(t)が算出される。挙動検知部15は、時系列に(古い順に)並べられたVv(t-6)~Vv(t)の向きがY軸負方向、及びX軸負方向の順に変化する場合に、検知車両Mが道路TR1の車線TLinから道路TR2の車線TLoutに右折したと判定する。
【0078】
図13に示されるように、対象挙動は、車線変更が禁止されているエリア(区間)での車線変更であってもよい。車線変更は、車両が1つの車線から別の車線に移動することである。この場合、1つの道路が、複数の車線を含み、複数の車線において許可されている通行方向が互いに同じであり、互いに隣り合う2つの車線の間には、車線変更の禁止を表す線(日本では黄色線)が設けられている。図13に示される例では、1つの道路TRが、同じ通行方向を有する2つの車線TL1,TL2を含む。車線TL1,TL2の通行方向は、X軸負方向である。この場合、検知車両Mの各検知時刻t-5~tの位置p(t-5)~p(t)のうち、時系列で互いに隣り合う2つの位置から速度ベクトルVv(t-4)~Vv(t)が算出される。挙動検知部15は、時系列に(古い順に)並べられたVv(t-4)~Vv(t)の向きがX軸負方向、X軸負方向及びY軸負方向の成分を有する方向、及びX軸負方向の順に変化する場合に、検知車両Mが車線TL1から車線TL2に車線変更したと判定する。
【0079】
車線変更の検知対象となる道路は、2車線を有する道路に限られず、3車線以上の複数の車線を有する道路であってもよい。2車線間の車線変更と同様にして、複数車線における車線変更を検知することができる。
【0080】
以上のように、検知車両Mが対象挙動を行った場合、検知車両Mの移動方向が、時間の経過とともに、対象挙動に応じた所定のパターンで変化する。このため、速度ベクトルが所定のパターンで推移している場合に検知車両Mが対象挙動を行ったと判定することができる。
【0081】
対象挙動は、交通違反となる挙動(走行)に限られない。例えば、対象挙動は、Uターンが禁止されていないエリアでのUターン、右折(又は左折)が禁止されていないエリアでの右折(又は左折)、車線変更が禁止されていないエリアでの車線変更、通常走行、及び進路変更等でもよい。進路変更は、道路が延びる方向に対して斜めに向いて進行することである。進路変更は、車線変更を含む。進路変更は、車線変更と同様にして検知され得る。
【0082】
通常走行は、道路(車線)において許可されている車両の通行方向に沿った走行である。通常走行の検知は、逆走の検知と同様に行われる。速度ベクトルVv(t)と基準ベクトルVrとの内積を用いる場合には、通常走行判定用の閾値は、逆走判定用の閾値と異なる。つまり、通常走行判定用の閾値は、予め定められた正の値であり、レーザレーダ2による計測誤差を除外できる程度の大きさを有する。そして、挙動検知部15は、内積と通常走行判定用の閾値とを比較することにより、検知車両Mが通常走行を行っているか否かを判定する。例えば、挙動検知部15は、内積が通常走行判定用の閾値よりも大きい場合、検知車両Mは通常走行を行っていると判定し、内積が通常走行判定用の閾値以下であると判定した場合、検知車両Mは通常走行を行っていないと判定する。挙動検知部15は、予め定められた期間(一定時間)以上に亘って、内積が通常走行判定用の閾値よりも大きい正の値を取り続けた場合、検知車両Mが通常走行していると判定してもよい。
【0083】
対象挙動が交通違反となる挙動でない場合、検知システム1は、対象挙動を行った車両の数等の統計情報を取得する。この場合、検知システム1は、車両情報取得装置3を備えていなくてもよい。
【0084】
レーザレーダ2及び車両情報取得装置3の配置は、各図に示された配置に限られない。例えば、図5では、車両情報取得装置3は、逆走車両を前方及び後方から撮影可能である。車両情報取得装置3は、逆走車両を後方から撮影可能なように設けられてもよく、逆走車両を前方から撮影可能なように設けられてもよい。
【0085】
レーザレーダ2として、全周囲方向にレーザ光を照射できるタイプの3次元レーザレーダが用いられてもよい。例えば、対象挙動が、交差点におけるUターンである場合、交差点の4つの道路におけるUターンを検知することが可能となる。対象挙動が右折である場合、交差点から延びる複数の道路からの右折を検知することが可能となる。また、検知システム1及び検知装置10は、単一のレーザレーダ2で、複数種類の対象挙動を検知してもよい。これらの場合、単一のレーザレーダ2で、複数の車両の挙動を検知することができるので、レーザレーダ2の数を低減することが可能となる。
【0086】
検知システム1は、単一のレーザレーダ2を備えているが、検知システム1は、複数のレーザレーダ2を備えていてもよい。この場合、検知装置10は、複数のレーザレーダ2によって生成された点群情報を結合して使用してもよい。この構成では、死角が少なくなるので、検知の確実性を向上させることが可能となる。
【0087】
車両情報取得装置3は、自動速度違反取締装置に代えて、高解像度を有するビデオカメラでもよい。車両情報取得装置3は、夜間に対応するために、撮影用の光源(フラッシュ装置、又はストロボ装置ともいう。)をさらに備えていてもよい。車両情報取得装置3は、例えば、通信装置6と車載器とによる無線通信によって、車両情報(ナンバープレートに記載された情報等)を取得してもよい。
【0088】
車両情報取得装置3が取得する車両情報は、ナンバープレートの画像に限られない。車両情報は、車両の運転者の顔写真でもよい。車両情報は、例えば、運転免許証情報等の電子的な情報であってもよい。
【0089】
違反車両の走行先にゲート(遮断機)が設置されている場合、検知装置10は、違反車両が物理的に走行できなくするために、ゲートを封鎖するように制御してもよい。例えば、高速道路にはETC(Electronic Toll Collection System)ゲートが設けられているので、挙動検知部15は、ETCゲートを封鎖するように制御してもよい。この場合、違反車両の走行を妨害することができ、違反走行を阻止することができる。
【0090】
検知システム1及び検知装置10が、違反車両の走行制御システムに介入できる場合、違反車両を安全に停止させてもよい。
【0091】
対象挙動がUターンである場合、挙動検知部15は、交差点中心と検知車両MのUターン時の軌跡との最小距離、及びUターン開始位置を計算してもよい。挙動検知部15は、これらの情報を検知車両Mに関する各種情報に含めて、記憶装置5及び通信装置6に送信してもよい。Uターン開始位置は、検知車両Mが交差点に進入したときの検知車両Mの位置である。車両が交差点の中心近くまで深く進入してUターンした場合、及び中央分離帯から離れた位置からUターンを開始した場合等では、危険度が高い。このため、上記情報をさらに追加することで、例えば、危険度が高いUターンを行った運転者に高いペナルティを与えることができる。
【0092】
検知装置10は、緊急車両のサイレン音、又は緊急車両の座標情報(GPS(Global Positioning System)情報)に基づいて、緊急車両が対象地点に接近しているか否かを判定する判定部をさらに備えてもよい。例えば、車線変更禁止エリアであっても、緊急車両に進路を譲る場合には、車線変更が認められる。このため、挙動検知部15は、緊急車両が対象地点を通行したことを示す情報を、検知車両Mに関する各種情報に追加して、記憶装置5及び通信装置6に送信してもよい。挙動検知部15は、緊急車両が対象地点を通行している間の検知車両Mに関する各種情報を、記憶装置5及び通信装置6に送信しなくてもよい。
【0093】
方向指示器によって進行方向の指示を出すことなく、右左折、又は車線変更を行うことは、交通違反(合図不履行違反)である。この交通違反を検知するために、検知システム1は、ビデオカメラ等の撮像装置をさらに備えてもよい。撮像装置は、撮像画像を検知装置10に送信する。挙動検知部15は、撮像画像を解析することで、検知車両Mが進行方向の指示を出しているか否かを判定する。そして、挙動検知部15は、右左折、又は車線変更を行った検知車両Mが進行方向の指示を出していないと判定した場合、検知車両Mを違反車両と判定してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 検知システム
2 レーザレーダ
3 車両情報取得装置(外部装置)
4 出力装置
5 記憶装置
6 通信装置
10 検知装置
11 取得部
12 設定部
13 物体検知部(車両検知部)
14 物体追跡部
15 挙動検知部
M 検知車両
Rd 検知エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13