IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明電舎の特許一覧

<>
  • 特許-位相同期回路 図1
  • 特許-位相同期回路 図2
  • 特許-位相同期回路 図3
  • 特許-位相同期回路 図4
  • 特許-位相同期回路 図5
  • 特許-位相同期回路 図6
  • 特許-位相同期回路 図7
  • 特許-位相同期回路 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】位相同期回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220216BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018231233
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020096419
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 稔也
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-331678(JP,A)
【文献】特開2005-278240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0074474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電圧から得られる二相電圧成分の振幅及び位相情報に基づき当該系統電圧の異常に因る位相同期ループの自走発振を判定する自走発振判定部と、
前記自走発振が検知されると前記系統電圧と同期した同期検出位相を得るための同期検出角周波数の比例積分制御を停止して当該比例積分制御の積分項の補償量を前記異常が検知される前の補償量に更新する比例積分部と
を備えたことを特徴とする位相同期回路。
【請求項2】
前記自走発振判定部は、
前記二相電圧成分の極座標変換により得られる振幅に基づき前記異常を判定する電圧異常判定部と、
前記異常と判定されると前記極座標変換により得られる同期誤差位相の積算値に基づき前記自走発振を検知する位相同期ループ動作判定部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の位相同期回路。
【請求項3】
前記系統電圧が正常である場合に高調波成分が除去された前記二相電圧成分を前記極座標変換に供する一方で前記自走発振が検知された場合に当該系統電圧の復帰時に一時的に前記高調波成分の除去を行うことなく前記二相電圧成分を当該極座標変換に供する第一スイッチ回路をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の位相同期回路。
【請求項4】
前記系統電圧が正常である場合に前記極座標変換により得られた同期誤差位相を前記比例積分制御の基準位相との偏差の演算に供する一方で前記自走発振が検知された場合に当該系統電圧の基準角周波数と所定回数サンプル前の同期検出角周波数との偏差の積算値から得られた同期誤差位相を当該演算に供する第二スイッチ回路をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の位相同期回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の系統側の事故時に対応する位相同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光等の再生可能なエネルギーから得られた直流電力を交流電力に変換する電力変換装置において、位相同期回路は、制御指令に基づく所定の波形信号により点弧制御を行うことにより、商用の配電系統の電圧と同期した位相を確保する(例えば、特許文献1)。前記波形信号の動作周波数は、前記制御指令の位相と配電系統の電圧位相との位相差がゼロとなるように制御される。また、前記交流電源の電圧は、瞬停、停電等が検知されている間は、復電時の電源周波数と前記動作周波数のずれが小さくなるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-313574号公報
【文献】特許第5830941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来の電力変換装置は、配電系統に停電が検知されると位相同期回路内の比例積分制御の積分項を停止することにより復電時の同期を短時間に実現させる。
【0005】
しかしながら、太陽光発電用のパワーコンディショナーシステム(以下、PCS)などの再生可能なエネルギーの供給に用いられる系統連系は、短時間の系統電圧の低下時には装置を停止せずに運転を継続することが要求される。
【0006】
系統事故点によっては残電圧が生じるため(図8のA点等)、系統電圧(Vsys)の低下を検知した時点ですぐに位相同期ループ動作を停止するべきではない。一方、図8のB点で三相短絡事故が発生した場合、PCSは電圧源を認識できないので、PCSの受電点にはPCSの出力電流と事故点までのインピーダンスによる残電圧が生じる。この残電圧はPCSの出力周波数となるので、この電圧に対して位相同期制御が行われると、位相同期ループが発散することがあり、正常な位相同期ループの動作を実現できないことがある。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑み、系統連系から電圧源を認識できないような系統事故が起こっても、位相同期ループを発散させることなく、電力変換装置の運転を継続できることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の一態様は、位相同期回路であって、系統電圧から得られる二相電圧成分の振幅及び位相情報に基づき当該系統電圧の異常に因る位相同期ループの自走発振を検知する自走発振判定部と、前記自走発振が検知されると前記系統電圧と同期した同期検出位相を得るための同期検出角周波数の比例積分制御を停止して当該比例積分制御の積分項の補償量を前記異常が検知される前の補償量に更新する比例積分部とを備える。
【0009】
本発明の一態様は、前記位相同期回路において、前記自走発振判定部は、前記二相電圧成分の極座標変換により得られる振幅に基づき前記異常を判定する電圧異常判定部と、前記異常と判定されると前記極座標変換により得られる同期誤差位相の積算値に基づき前記自走発振を検知する位相同期ループ動作判定部とを備える。
【0010】
本発明の一態様は、前記位相同期回路において、前記系統電圧が正常である場合に高調波成分が除去された前記二相電圧成分を前記極座標変換に供する一方で前記自走発振が検知された場合に当該系統電圧の復帰時に一時的に前記高調波成分の除去を行うことなく前記二相電圧成分を当該極座標変換に供する第一スイッチ回路をさらに備える。
【0011】
本発明の一態様は、前記位相同期回路において、前記系統電圧が正常である場合に前記極座標変換により得られた同期誤差位相を前記比例積分制御の基準位相との偏差の演算に供する一方で前記自走発振が検知された場合に当該系統電圧の基準角周波数と所定回数サンプル前の同期検出角周波数との偏差の積算値から得られた同期誤差位相を当該演算に供する第二スイッチ回路をさらに備える。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明によれば、系統連系から電圧源を認識できないような系統事故が起こっても、位相同期ループを発散させることなく、電力変換装置の運転を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1の位相同期回路を備えた電力変換装置のブロック図。
図2】実施形態1の位相同期回路のブロック構成図。
図3】実施形態1の動作例を説明したVsys、Vpcs、Δθ及びωsの波形図。
図4】実施形態2の位相同期回路のブロック構成図。
図5】実施形態2の動作例を説明したVsys、Vpcs、Δθ及びωsの波形図。
図6】実施形態3の位相同期回路のブロック構成図。
図7】実施形態3の動作例を説明したVsys、Vpcs、Δθ及びωsの波形図。
図8】(a)は電力変換装置が適用される系統連系装置の基本ブロック図、(b)は当該系統連系装置の系統事故時の動作例を説明したVsys及びVpcsの波形図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
[実施形態1]
図1に例示された実施形態1の電力変換装置1は、直流電源2、インバータ3、配電系統4、位相同期回路5、DQ変換部6、電流制御部(以下、ACR部)7、逆DQ変換部8及びパルス幅変調部(以下、PWM部)9を備える。
【0016】
インバータ3は、直流電源2から供された直流電力をPWM部9からのPWMによるパルス信号に基づき交流電力に変換して配電系統4に供給する。
【0017】
位相同期回路5は、前記交流電力からフィルタ回路31,変圧器32を介して検出された交流電圧Vacに基づき配電系統4の系統電圧と同期した同期検出位相θを出力する。
【0018】
DQ変換部6は、検出器33により検出された前記交流電力の電流成分Ipcsを位相同期回路5から受けた同期検出位相θに基づくdq座標変換により二相電流成分Id,Iqに変換する。
【0019】
ACR部7は、DQ変換部6から二相電流成分Id,Iqを受けて有効電力指令値Pref及び無効電力指令値Qrefに基づく電圧指令値を出力する。
【0020】
逆DQ変換部8は、ACR部7から受けた電圧指令値を位相同期回路5から供された同期検出位相θに基づく逆dq座標変換により三相電圧成分に変換する。
【0021】
PWM部9は、逆DQ変換部8から受けた三相電圧成分に基づくPWMによるパルス信号をインバータ3に出力する。
【0022】
(位相同期回路5の態様例)
図1に例示された位相同期回路5は、DQ変換部51、ローパスフィルタ部(以下、LPF部)52、極座標変換部53、減算部54、比例積分部(以下、PI部)55、自己保持回路部(以下、Z-1部)56、積算部57及び自走発振判定部10を備える。
【0023】
DQ変換部51は、変圧器32から供された三相の交流電圧Vacを、積算部57から受けた同期検出位相θに基づくdq座標変換により二相電圧成分Vd,Vqに変換する。
【0024】
LPF部52は、DQ変換部51から受けた二相電圧成分Vd,Vqに混在する高調波成分を除去する。
【0025】
極座標変換部53は、LPF部52から受けた二相電圧成分Vd,Vqを極座標変換して得られた位相を同期誤差位相Δθとして出力する(特許文献2)。
【0026】
減算部54は、基準位相θref(=0)と同期誤差位相Δθとの偏差を算出する。
【0027】
PI部55は、減算部54から受けた前記偏差がゼロとなるように比例積分制御(以下、PI制御)を行い、同期検出位相θを得るための同期検出角周波数ωSを推定する(特許文献2)。尚、自走発振判定部10にて位相同期ループ(以下、PLL)の自走発振が検知されると、PI部55は、前記PI制御の積分動作を停止して当該制御の積分項の補償量を系統電圧の異常が検知される前の補償量にリセット(更新)する。
【0028】
-1部56は、PI部55から同期検出角周波数ωSを受けると1サンプル前の同期検出角周波数ωSを出力する。
【0029】
積算部57は、PI部55から受けた同期検出角周波数ωSとZ-1部56から受けた同期検出角周波数ωSとの積算により平均化した同期検出角周波数ωSを出力する。この同期検出角周波数ωSは時間積分により同期検出位相θに変換された後にDQ変換部51、DQ変換部6及び逆DQ変換部8に出力される。
【0030】
自走発振判定部10は、二相電圧成分Vd,Vqの振幅|V|及び位相情報(同期誤差位相Δθの積算値θINT)に基づきPLLの自走発振の有無を判定する。
【0031】
(自走発振判定部10の態様例)
図2に例示の自走発振判定部10は、電圧異常判定部11、Z-1部12、積算部13及び位相同期ループ動作判定部(以下、PLL動作判定部)14を備える。
【0032】
電圧異常判定部11は、極座標変換部53から受けた二相電圧成分Vd,Vqの振幅|V|に基づき系統電圧の異常を検知する。
【0033】
-1部12は、電圧異常判定部11から前記異常を通知するパルス信号を受けると共に極座標変換部53から同期誤差位相Δθを受けると、1サンプル前の同期誤差位相Δθを積算部13に出力する。
【0034】
積算部13は、極座標変換部53から受けた同期誤差位相ΔθとZ-1部12から受けた同期誤差位相Δθとの積算値θINTをPLL動作判定部14に出力する。
【0035】
PLL動作判定部14は、電圧異常判定部11から前記パルス信号を受けると、積算部13から供された積算値θINTに基づきPLLの自走発振を判定する。具体的には、積算値θINTが一定量を超過していると、PLL動作判定部14は、PLLの自走発振を検知し、これを通知するパルス信号をPI部55に出力する。
【0036】
(位相同期回路5の動作例)
図1~3を参照して本実施形態の位相同期回路5の動作例について説明する。
【0037】
DQ変換部51は、変圧器32から系統電圧(交流電圧Vac)を受けると、積算部57から供された同期検出位相θに基づき二相電圧成分Vd,Vqに変換する。二相電圧成分Vd,Vqは、LPF部52にて高調波成分を除去された後に、極座標変換部53により同期誤差位相Δθに変換される。この同期誤差位相Δθは、前記高調波除去済の二相電圧成分Vd,Vqの振幅|V|と共に、自走発振判定部10に出力される。
【0038】
自走発振判定部10において、電圧異常判定部11は、極座標変換部53から受けた振幅|V|と予め設定された所定値との比較に基づき前記系統電圧の異常を検知する。例えば、振幅|V|が前記所定値を超えた場合、前記系統電圧は異常であると判断される。一方、振幅|V|が前記所定値を超えていない場合、前記系統電圧は正常であると判断される。
【0039】
前記系統電圧が正常であると判断されている場合、PLL動作判定部14は積算部13から受けている同期誤差位相Δθの積算値θINTをクリアにする。そして、減算部54、PI部55、Z-1部56及び積算部57の通常の動作により、三相の交流電圧Vacと同期した同期検出位相θがDQ変換部51、DQ変換部6及び逆DQ変換部8に出力される。
【0040】
一方、前記系統電圧が異常であると判断されると、電圧異常判定部11は当該異常を通知するパルス信号をPLL動作判定部14に出力する。PLL動作判定部14は、前記パルス信号を受けると、同期誤差位相Δθの積算を開始する。この同期誤差位相Δθの積算値θINTが所定量を超過すると、PLL動作判定部14は、PLLの自走発振を検知し、これを通知するパルス信号をPI部55に出力する。PI部55は、前記パルス信号を受けると、PI制御の積分動作を停止し、積分項の補償量を系統電圧の異常が検知される前(系統電圧が正常であった場合)の補償量にリセットする。そして、PI部55のPI動作は、系統電圧(Vsys)が正常になるまで停止し、系統電圧が正常に復帰すると再開する(図3)。
【0041】
以上の位相同期回路5によれば同期誤差位相Δθの積算値θINTに基づき自走発振が検知される。そして、配電系統4の系統電圧の異常に因る自走発振が検知されると、PI制御の積分項の演算が停止し、積分項の操作量が正常時の値に更新される。したがって、PCSから電圧源を認識できないような状況の系統事故が起こっても位相同期回路5がPLLを発散させることなく電力変換装置1の運転を継続できる。
【0042】
[実施形態2]
図4に例示された実施形態2の位相同期回路5は、実施形態1の態様において、第一スイッチ回路58をさらに備える。第一スイッチ回路58は、系統電圧が正常である場合にLPF部52を介して二相電圧成分Vd,Vqを極座標変換部53に出力する。一方、前記系統電圧の異常に因るPLLの自走発振が検知された場合に当該系統電圧の復帰時に一時的にLPF部52を介することなく二相電圧成分Vd,Vqを極座標変換部53に出力する。
【0043】
図4,5を参照して本実施形態の位相同期回路5の動作例について説明する。
【0044】
電圧異常判定部11にて前記系統電圧が正常であると判断されている場合、第一スイッチ回路58はDQ変換部51からLPF部52を介した二相電圧成分Vd,Vqを極座標変換部53に出力する。そして、減算部54、PI部55、Z-1部56及び積算部57の通常の動作により、三相の交流電圧Vacと同期した同期検出位相θがDQ変換部51、DQ変換部6及び逆DQ変換部8に出力される。
【0045】
一方、前記系統電圧が異常であると判断されると、電圧異常判定部11は当該異常を通知するパルス信号をPLL動作判定部14に出力する。PLL動作判定部14は、前記パルス信号を受けると、同期誤差位相Δθの積算を開始し、この積算値θINTに基づきPLLの自走発振を検知する。PI部55のPI動作は、実施形態1と同様に、系統電圧が正常になるまで停止され、PI制御の積分項の補償量が系統電圧の異常が検知される前(系統電圧が正常であった場合)の補償量にリセットされる。
【0046】
そして、系統電圧が正常に復帰すると、第一スイッチ回路58はDQ変換部51からの二相電圧成分Vd,Vqの出力先をLPF部52ではなく極座標変換部53に切替える。そして、一定時間経過後、第一スイッチ回路58は二相電圧成分Vd,Vqの出力先をLPF部52に切替える。その後、減算部54、PI部55、Z-1部56及び積算部57の通常の動作により、三相の交流電圧Vacと同期した同期検出位相θがDQ変換部6及び逆DQ変換部8に出力される。
【0047】
以上の本実施形態の位相同期回路5によれば実施形態1と同様の効果を奏する。特に、配電系統4の系統電圧(Vsys)が異常時に発生した自走発振状態から復帰する際に、系統電圧の検出値がLPF部52を介していない瞬時の電圧値(Vpcs)に切り替わる(図5)。このように、系統電圧の異常から復帰した際の瞬時の電圧がLPF部52を介することなく極座標変換部53に供されるので、系統電圧の位相に迅速な位相同期を行え、系統電圧が復帰した後のPLLの収束が早まる。
【0048】
[実施形態3]
図6に例示された実施形態3の位相同期回路5は、実施形態1の態様において、電圧異常判定部11、基準角周波数生成部15、減算部16、Z-1部17、積算部18及び第二スイッチ回路19をさらに備える。
【0049】
基準角周波数生成部15は、系統電圧が正常時におけるインバータ3内部の角周波数ωSを出力する。
【0050】
減算部16は、基準角周波数生成部15から受けた基準角周波数ωrefと現在の角周波数ωSとの偏差を算出する。
【0051】
-1部17は、電圧異常判定部11から前記パルス信号を受けると、基準角周波数ωrefと所定回数サンプル前(以下、Nサンプル前)の同期検出角周波数ωSとの偏差を積算部18に出力する。
【0052】
積算部18は、減算部16から受けた偏差をZ-1部56から受けた1サンプル前の偏差に積算する。
【0053】
第二スイッチ回路19は、自走発振判定部10による自走発振の検知の有無に基づき、極座標変換部53からの同期誤差位相Δθ、または、減算部16からの同期検出角周波数の偏差の積算値ωINTに基づく同期誤差位相Δθを出力する。
【0054】
図6,7を参照して本実施形態の位相同期回路5の動作例について説明する。
【0055】
電圧異常判定部11にて系統電圧が正常であると判断されている場合、第二スイッチ回路19は極座標変換部53から受けた同期誤差位相Δθを減算部54に出力する。そして、実施形態1と同様に、減算部54、PI部55、Z-1部56及び積算部57の通常の動作により、三相の交流電圧Vacと同期した同期検出位相θがDQ変換部51、DQ変換部6及び逆DQ変換部8に出力される。
【0056】
一方、前記系統電圧が異常であると判断されると、電圧異常判定部11は当該異常を通知するパルス信号を基準角周波数生成部15及びZ-1部17に出力する。基準角周波数生成部15は、前記パルス信号を受けると、予め保持した電圧異常が検知されるNサンプル前の正常動作時の角周波数を基準角周波数ωrefとして減算部16に出力する。減算部16は、基準角周波数生成部15から受けた基準角周波数ωrefと現在の同期検出角周波数ωSとの偏差を算出して積算部18に出力する。積算部18は、減算部16から受けた偏差をZ-1部17から受けた1サンプル前の偏差に積算する。この偏差の積算値ωINTは時間積分されて同期誤差位相Δθ’として第二スイッチ回路19に出力される。第二スイッチ回路19は、実施形態1と同様の動作により自走発振判定部10から出力された自走発振の検知を通知するパルス信号を受けると、同期誤差位相Δθ’を減算部54に出力する。減算部54は、基準位相θref(=0)と同期誤差位相Δθ’との偏差を算出してPI部55に出力する。PI部55は、減算部54から受けた前記偏差がゼロとなるようにPI制御を行い、同期検出角周波数ωSを推定する。この同期検出角周波数ωSは積算部57さらに時間積分を介して同期検出位相θとしてDQ変換部51、DQ変換部6及び逆DQ変換部8に出力される。
【0057】
以上の本実施形態の位相同期回路5によれば実施形態1と同様の効果を奏する。特に、系統電圧の異常を検知してからの位相差の積算値に基づきPLLの自走発振が検知されると、系統電圧の異常が発生する前の角周波数との偏差が積算される。そして、系統電圧が異常時の自走発振において、PI部55でのPI制御に角周波数の積算値が供される。このように、PLLの自走発振が検知されると、PI制御の検出値を角周波数の積算値に切替え、電圧異常判定後の操作量を相殺するように動作することにより、自走発振により生じたインバータ3の出力電圧(Vpcs)と配電系統4の系統電圧(Vsys)の位相差がなくなるように制御される(図7)。したがって、自走発振が検知されるまでに生じた位相差及び系統事故からの復帰時の系統電圧とインバータ3の出力電圧との位相差がなくなり、電力変換装置1の安定した動作が可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1…電力変換装置
2…直流電源
3…インバータ
4…配電系統
5…位相同期回路部、51…DQ変換部、52…LPF部、53…極座標変換部、54…減算部、55…PI部、56…Z-1部、57…積算部、58…第一スイッチ回路
6…DQ変換部
7…ACR部、
8…逆DQ変換部
9…PWM部
10…自走発振判定部、11…電圧異常判定部、12…Z-1部、13…積算部、14…PLL動作判定部
15…基準角周波数生成部、16…減算部、17…Z-1部、18…積算部、19…第二スイッチ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8