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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】米飯の改質剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20220216BHJP
【FI】
A23L7/10 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018545766
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2017037974
(87)【国際公開番号】W WO2018074582
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2016207004
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】大平 琢哉
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-161144(JP,A)
【文献】特開昭60-164446(JP,A)
【文献】特開2011-193876(JP,A)
【文献】特開2009-022267(JP,A)
【文献】特開2016-154489(JP,A)
【文献】寺島晃也,富山県産酒造好適米「雄山錦」の酒造特性解明,食品の試験と研究,2003年,Vol.38,Pages68-70
【文献】今井泰彦,日本酒の酒造管理を合理化する米麹糖化力測定キット,食品工業,1996年03月15日,Vol.39, No.5,Pages 68-74
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを含有する米飯改質剤であって、グルコアミラーゼの含有量が、α-グルコシダーゼ1Uに対して1.0×10 -5 ~10Uである改質剤
【請求項2】
グルコアミラーゼの含有量が、α-グルコシダーゼ1Uに対して1.0×10 -3 0.5Uである請求項1に記載の改質剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の改質剤を含む米飯
【請求項4】
グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼをに接触させる工程を含む米飯の製造方法であって、米100g当たり、1~1000Uのグルコアミラーゼ及び100~100000Uのα-グルコシダーゼを接触させる方法
【請求項5】
100g当たり10~500Uのグルコアミラーゼを接触させる請求項に記載の方法。
【請求項6】
100g当たり100010000Uのα-グルコシダーゼを接触させる請求項又はに記載の方法。
【請求項7】
グルコアミラーゼの量が、α-グルコシダーゼ1U当たり1.0×10 -5 10Uである請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水を100g当たり80~200g添加し加熱する工程を含む請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼをに接触させる工程を含む米飯の改質方法であって、米100g当たり、1~1000Uのグルコアミラーゼ及び100~100000Uのα-グルコシダーゼを接触させる方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の酵素を含む穀類食品改質剤、該改質剤を含む穀類食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯類は、時間が経過すると食感(弾力、粘り等)が劣化し硬くボソボソになることが知られている。このような放置後水分が分離しα化したデンプンが硬くなる現象を一般に老化と呼ぶ。この老化現象は特に低温で保存する時に顕著になるため、長時間の保存や遠距離への流通には問題がある。そのため冷蔵で保存・流通させても硬くならない米飯類が望まれている。
【0003】
一方で、冷蔵で保存した弁当などの米飯は食前に電子レンジ等で加熱することが多く、加熱後の米飯は水分が蒸発し、パサついた食感を呈することから、保水性を有する食感のよい米飯が望まれている。
【0004】
このような米飯類を得るために、アミラーゼ(特許文献1、2)、グルコアミラーゼ(特許文献3)、α-グルコシダーゼ(特許文献4~7)などの様々な酵素を米飯に添加し調理することが報告されているが、アミラーゼなどの酵素を入れて炊飯する場合釜へのこげつき等の製造適性が問題となっていた(特許文献8)。さらに澱粉特有の過度な粘りによる撹拌時のほぐれにくさやおにぎり等を製造する際の成型性など、米飯の食感向上以外の問題も同時に解決することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2015-525564号公報
【文献】WO15/060374
【文献】特開2016-154489号公報
【文献】WO14/115894
【文献】特開2011-206048号公報
【文献】特開2011-193876号公報
【文献】特表2010-35858号公報
【文献】特表2004-290075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、米飯類の老化を抑制し保水性を高めた米飯類を提供し、炊飯時の焦げつき等を防止しほぐれやすく成型性に優れた米飯類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、グルコアミラーゼとα-グルコシダーゼを含有する米飯類が、低温保存時でも老化が抑制され加熱時にも水分が保持され食感のよい米飯類が得られることを見出し、さらに炊飯する際の釜へのこびりつき抑制や炊飯後成型する際の成型性にも優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを含有する穀類食品改質剤。
[2]グルコアミラーゼの含有量が、α-グルコシダーゼ1Uに対して1.0×10-7~1.0×10Uである[1]に記載の改質剤。
[3]穀類食品が米飯である[1]又は[2]に記載の改質剤。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の改質剤を含む穀類食品。
[5]グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを穀類に接触させる工程を含む穀類食品の製造方法。
[6]穀類100g当たり0.1~10000Uのグルコアミラーゼを接触させる[5]に記載の方法。
[7]穀類100g当たり10~1000000Uのα-グルコシダーゼを接触させる[5]又は[6]に記載の方法。
[8]グルコアミラーゼの量が、α-グルコシダーゼ1U当たり1.0×10-7~1.0×10Uである[5]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]水を穀類100g当たり80~200g添加し加熱する工程を含む[5]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]穀類が米である[5]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを穀類に接触させる工程を含む穀類食品の改質方法。
[12]穀類100g当たり0.1~10000Uのグルコアミラーゼを接触させる[11]に記載の方法。
[13]穀類100g当たり10~1000000Uのα-グルコシダーゼを接触させる[11]又は[12]に記載の方法。
[14]グルコアミラーゼの量が、α-グルコシダーゼ1U当たり1.0×10-7~1.0×10Uである[11]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]水を穀類100g当たり80~200g添加し加熱する工程を含む[11]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]穀類が米である[11]~[15]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、保存性に優れもちもちとした米飯類を提供することができる。
本発明により、加熱してもパサつきのない米飯類を提供することができる。
本発明によれば、炊飯時の釜へのこびりつきが無く原料のロスを抑えることができる。
本発明によれば、混合する際にはほぐれやすいために成型性に優れた米飯類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを含有する穀類食品改質剤(以下本発明の改質剤と略することもある)に関する。
【0011】
本発明に用いられるグルコアミラーゼ(以下GAと略することもある)は、市販のものやGAを産生する微生物の培養液より調製したものを用いることができる。その調製方法については、公知のタンパク質分離、精製方法(遠心分離、UF濃縮、塩析、イオン交換樹脂等を用いた各種クロマトグラフィー等)を用いることができる。
またGAは、デンプンの構成要素であるアミロースとアミロペクチンのα-1,4-グルコシド結合を非還元性末端からグルコース単位で切断する作用および/またはα-1,6-グルコシド結合を切断する作用を有する限りにおいてその種類は特に限定されるものではない。この様な酵素の例として、Aspergillus属やRhizopus属由来のGA等があるが、これらに特に限定されるものではない。
【0012】
本発明に用いられるα-グルコシダーゼ(以下AGと略することもある)は、市販のものやAGを産生する微生物の培養液より調製したものを用いることができる。その調製方法については、公知のタンパク質分離、精製方法(遠心分離、限外ろ過(UF)濃縮、塩析、イオン交換樹脂等を用いた各種クロマトグラフィー等)を用いることができる。
またAGは、非還元末端α-1,4-グルコシド結合を加水分解し、α-グルコースを生成する作用を有する限りにおいてその種類は特に限定されるものではない。この様な酵素の例として、Aspergillus属やTrichoderma属由来のAG等があり、これらに特に限定されるものではないが、Aspergillus属由来のAGが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる穀類は、米、小麦、大麦、稗や粟等の雑穀類、大豆や小豆などの豆類、ジャガイモやサツマイモといったイモ類、トウモロコシ等のデンプンを含有する食品原料である。なかでも米、小麦、大麦等が好ましく、米がより好ましい。また穀類は精製されていても未精製でもよいが、精製されたものが好ましい。
【0014】
本発明において穀類食品は、デンプンを含有する食品であれば特に限定されないが、デンプンが該食品の食感、物性に寄与している食品が挙げられる。具体的には、米飯食品(炊飯米(白飯、雑穀米)、酢飯(寿司飯)、赤飯、ピラフ、炒飯、炊き込みご飯、おこわ、お粥、リゾット、おにぎり、寿司、弁当など)、米加工品(和菓子、餅など)、麺(小麦麺(うどん、中華麺、パスタなど)、そば、米粉麺など)、小麦加工食品(餃子の皮、てんぷら衣など)、ジャガイモやサツマイモといったイモ類やトウモロコシなどのその他野菜類を原料とした加工食品が挙げられる。これらの中で、特に米飯食品が好ましい。また、これらの冷凍品、無菌包装品、レトルト品、乾燥品、缶詰品も含まれる。
【0015】
本発明の穀類食品改質剤とは、穀類食品の食感等の品質改善又は製造適性を向上させるものである。食感とは食物を口に入れた時の歯ごたえや舌触りなどの感覚であって、米飯の場合は、米の弾力、粘り、保水性(パサつき)などを指す。製造適性とは、目的とする品質での製造に適しているか否かであり、米飯の場合は、炊飯する際の釜底へのこびりつきや炊飯後成型する際の成型しやすさなどを指す。
【0016】
本発明の改質剤においては、グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを有効成分として含み、グルコアミラーゼの含有量は、α-グルコシダーゼ1Uに対して、通常1.0×10-7~1.0×10U、好ましくは1.0×10-5~10U、より好ましくは1.0×10-3~5.0×10-1Uである。本発明の改質剤は、これら酵素が一緒に含まれていても、別々に調製され使用前に合わせて使用するキットの形式でもよい。
【0017】
本発明の改質剤は、後述のように穀類食品の製造工程において、いずれの工程で添加してもよい。例えば、穀類を洗浄後、穀類100gに対して、通常水80~200g(加水率80~200重量%)を加え、そこに本発明の改質剤:グルコアミラーゼ0.1~10000U及びα-グルコシダーゼ10~1000000Uを加えて炊飯することが挙げられる。
【0018】
本発明の改質剤には、上記酵素の他に、さらに、デキストリン、デンプン、加工デンプン、還元麦芽糖等の賦形剤、畜肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物、乳化剤、クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤、グルタチオン、システイン等の還元剤、アルギン酸、かんすい、油脂、色素、酸味料、香料等その他の食品添加物等を含有してもよい。
【0019】
本発明の改質剤の形態は、液体状、ペースト状、顆粒状、粉末状が挙げられるが、いずれの形態でもよい。
【0020】
また本発明の改質剤を含む穀類食品も本発明に含まれる。穀類食品としては上述したものが挙げられる。
【0021】
本発明には、グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを穀類に接触させる工程を含む穀類食品の製造方法も含まれる(以下「本発明の方法」と略することもある)。
【0022】
本発明の方法は、グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを穀類に接触させる工程を含むことが特徴であるが、その他の工程は例えば下記のような慣用のものを適用することができる:
(a)穀類の洗浄工程
(b)穀類を水に浸漬する工程
(c)適量の水と一緒に穀類を加熱(炊飯)する工程。
また上記以外にも冷却工程や他の調味液や添加物を加える工程や調味液と混合する工程等を適宜含んでもよい。
【0023】
本発明の方法において、グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを穀類に接触させる工程とは、穀類にグルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを接触させることができれば特に限定されない。例えば、上記工程(b)や(c)の前後に酵素を穀類に直接接触させても、酵素と水で酵素水を調製し穀類と接触させてもよい。
【0024】
またGA及びAGを穀類に同時に接触させても、時間差で接触させてもよい。例えば、GAを上記(b)の工程でAGを上記(c)の工程で接触させる又はその反対、GAを上記(b)の工程でAGを上記(c)の工程の後で接触させる又はその反対、GAを上記(c)の工程でAGを上記(c)の工程の後で接触させる又はその反対などが挙げられる。なかでも(b)または(c)の工程でGA及びAGを一緒に水に添加することが好ましい。
【0025】
本発明において、グルコアミラーゼの接触(添加)量は、穀類100g(米飯食品の場合、原料生米100g)に対して酵素活性が通常0.1~10000U、好ましくは1~1000U、より好ましくは10~500Uに該当する量である。この範囲であれば穀類食品の老化を抑制し保水性を高め、時間経過後も良好な食感を保持できる。尚、酵素量が極微量の場合は、計量可能な濃度の酵素溶液を調製し、その溶液を希釈して添加すればよい。
グルコアミラーゼの1U(ユニット)とは、pH5.0、40℃の条件下で可溶性澱粉から30分間に10mgのグルコース相当の還元力を生成する活性と定義される。
【0026】
本発明の方法において、α-グルコシダーゼの接触(添加)量は、穀類100g(米飯食品の場合、原料生米100g)に対して酵素活性が通常10~1000000U、好ましくは100~100000U、より好ましくは1000~100000U、さらに好ましくは1000~10000Uに該当する量である。この範囲であれば穀類食品の老化を抑制し保水性を高め、時間経過後も良好な食感を保持できる。尚、酵素量が極微量の場合は、計量可能な濃度の酵素溶液を調製し、その溶液を希釈して添加すればよい。
α-グルコシダーゼの1U(ユニット)とは、α-メチル-D-グルコシドを基質として、pH5.0、40℃の条件下で60分間に1μgのブドウ糖を生成する酵素量と定義される(参考文献;日本食品添加物協会 第4版既存添加物自主規格「トランスグルコシダーゼ活性測定法」)。
【0027】
本発明の方法においては、接触させるグルコアミラーゼとα-グルコシダーゼの比率は、老化抑制効果の観点から、α-グルコシダーゼ1Uに対して、通常1.0×10-7~1.0×10U、好ましくは1.0×10-5~10U、より好ましくは1.0×10-3~5.0×10-1Uである。
【0028】
各酵素の接触させる時間(反応時間)は、酵素が穀類に作用することが可能な時間であれば特に限定されないが、穀類食品の調理・製造工程の観点から、10分~24時間が挙げられ、20分~2時間が好ましい。
また、接触温度(反応温度)は、酵素が活性を保つ範囲であれば特に限定されないが、反応効率の観点から、通常20~70℃であり、好ましくは40~60℃である。
各酵素を接触させる時のpHは特に限定されないが、通常pH3~10である。
【0029】
上記(a)穀類の洗浄工程においては、通常水で穀類を洗浄し、洗浄時間や洗浄温度は穀類に応じて適宜選択しうる。
【0030】
上記(b)穀類を水に浸漬する工程においては、浸漬時間は、穀類に応じて変わるが、米の場合には通常0~30℃で0.1~24時間、好ましくは4~20℃で1~3時間である。
【0031】
上記(c)適量の水と一緒に穀類を加熱(炊飯)する工程においては、炊き上がり後の食感や物性の観点から、添加する水の量は穀類100g当たり、通常80~200g(加水率80~200重量%)、好ましくは100~170g(同100~170重量%)、より好ましくは110~160g(同110~160重量%)、さらに好ましくは120~150g(同120~150重量%)である。
穀類を加熱する工程は、常圧で加熱する方法が挙げられるが、圧力をかけて加熱してもよい。また従来の炊飯器を使用して炊飯してもよい。加熱時間は穀類によって適宜選択され、火加減等も従来知られている方法で行うことができる。
【0032】
本発明には、グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを穀類に接触させる工程を含む穀類食品の改質方法も含まれる。穀類食品の改質方法とは、穀類食品の食感等の品質を改善又は製造適性を向上させる方法である。各成分の定義、接触量や好適範囲は既述に準ずる。
【実施例
【0033】
以下、本発明について実施例で更に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの例によって制限されるものではない。また本実施例における官能評価は、特に断りのない限り、食品業務に5年以上従事している充分に訓練された専門パネルを用いて実施した。なお本明細書中においては、特に断りのない限り、%は重量%を表す。
【0034】
<米飯の調製>
生米450gに水を注ぎ洗米し、水を入れ替えて5回洗米した。その後規定の量の水に1時間浸漬した。浸漬米をざるにあげて水切りし、水切り後の米を炊飯器(3.5合炊き炊飯器、三菱電機株式会社製)に投入し、生米重量に対して表に記載の加水率となるように水を加え1時間浸漬した。各酵素の表に記載の量を添加し、炊飯器にて炊飯した。なおグルコアミラーゼとしてグルターゼAN(13000U/g、エイチビィアイ株式会社製)(以下「GA」と記載)、α-グルコシダーゼとしてはトランスグルコシダーゼが好ましくトランスグルコシダーゼL「アマノ」(600000U/g、天野エンザイム株式会社製)(以下「AG」と記載)を使用した。
【0035】
<米飯の評価>
炊飯後、各試験の方法により保管後の米飯を3人以上のパネルにより下記基準に従い評価を行った。評価の平均を各表に記載した。
【0036】
(1)老化抑制
米飯の弾力や粘り、ボソつきについて評価した。
◎:極めて良好
○:良好(弾力や粘りがあり、ボソつきが少ない)
△:普通
×:悪い(弾力や粘りがなく、ボソついている)
【0037】
(2)経時保水性
米飯を電子レンジで加熱した後の表面のパサつきについて評価した。
◎:極めて良好
○:良好(表面のパサつきが少ない)
△:普通
×:悪い(表面がパサついている)
【0038】
(3-1)成型性(ねられやすさ)
米飯をおにぎりに成型した後、米粒の食感(やわらかさ)や保形性(つぶれ)を評価した。
○:良好(米粒に適度なかたさがあり、形を保っている)
△:普通
×:悪い(米粒がやわらか過ぎ、つぶれている)
【0039】
(3-2)成型性(ほぐれやすさ)
酢飯を調製し5時間後に、酢飯の塊が崩れやすいかについて評価した。
○:良好(崩れやすい)
△:普通
×:悪い(崩れにくい)
【0040】
(4)製造適性
炊飯時の釜底へのこびりつきについて評価した。
○:良好(釜底へのこびりつきがほとんどない)
△:普通
×:悪い(釜底へのこびりつきが多い)
【0041】
<試験例1>
コシヒカリとゆめぴりかのブレンド米を<米飯の調製>に記載の方法で、表1に記載の加水率及び酵素で炊飯し、炊飯米を真空冷却(20℃)し、240gずつパックに分注し、5℃で保管し、保管1日後に炊飯米に蓋をして1500Wで1分間電子レンジで加熱した。加熱終了後10分後に蓋をあけ老化抑制効果について評価した。また加熱終了後10分後に蓋をあけ10分間放置後に経時保水性を評価した。
各々の評価を表1に示し、経時保水性を主要な評価指標、老化抑制効果を副次的な評価指標として、総合評価した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1の結果より、グルコアミラーゼを添加した米飯が老化抑制及び経時保水性のいずれにも優れていることが示された。
【0044】
<試験例2>
コシヒカリとゆめぴりかのブレンド米を<米飯の調製>に記載の方法で、表2に記載の加水率及び酵素で炊飯し、炊飯米を真空冷却(20℃)し、240gずつパックに分注し、チルド5℃で保管し、保管1日後に炊飯米に蓋をして1500Wで1分間電子レンジで加熱した。加熱終了後10分後に蓋をあけ老化抑制効果について評価した。また加熱終了後10分後に蓋をあけ10分間放置後に経時保水性を評価した。
各々の評価を表2に示し、経時保水性を主要な評価指標、老化抑制効果を副次的な評価指標として、総合評価とした。
【0045】
【表2】
【0046】
表2の結果より、グルコアミラーゼとα-グルコシダーゼを併用することで特に経時保水性が向上することが示された。
【0047】
<試験例3>
ひとめぼれ米を<米飯の調製>に記載の方法で、表3に記載の加水率及び酵素で炊飯し、炊飯米を真空冷却(20℃)し、80gずつおにぎりの形に成型し(3個)食品包装用ラップで包んだ。また、おにぎりの成型性について上記基準により評価した。おにぎりを常温(18℃)で保管し、保管1日後に老化抑制効果について評価した。
各々の評価を表3に示し、老化抑制効果を主要な評価指標、成型性を副次的な評価指標として、総合評価した。
【0048】
【表3】
【0049】
表3の結果より、グルコアミラーゼとα-グルコシダーゼを併用することで老化が抑制され成型性のよいおにぎりが得られることが示された。
【0050】
<試験例4>
まっしぐら(品種名)米を<米飯の調製>に記載の方法で、表4に記載の加水率及び酵素で炊飯した。炊飯時の釜底のこびりつきを上記の基準で評価した。調味酢(酢量は炊飯米に対して約10%)を添加し、酢合わせ機(鈴茂器工株式会社製、MCR-SSC)により3分間混合し、酢合わせを行った。得られた酢飯をプラスチックケースに分注し、番重及び冷蔵庫(5℃)で保管し、保管5時間後に番重保管品の成型性(ほぐれ性)と冷蔵庫保管品の老化抑制効果について評価した。
各々の評価を表4に示し、老化抑制効果を主要な評価指標、成型性および製造適性を副次的な評価指標として、総合評価した。
【0051】
【表4】
【0052】
表4の結果より、グルコアミラーゼとα-グルコシダーゼを併用することで老化が抑制され成型性や製造適性に優れた酢飯が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、食感や品質が向上された米飯及び米飯加工食品を提供することができる。
【0054】
本出願は、日本で出願された特願2016-207004を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含されるものである。