(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20220216BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20220216BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20220216BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20220216BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20220216BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20220216BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220216BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L29/80 H
H01L29/80 V
H01L29/80 C
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 658E
H01L29/78 652D
(21)【出願番号】P 2019084049
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2020-07-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業「省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発(パワーデバイス・システム領域)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 一義
(72)【発明者】
【氏名】成田 哲生
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062140(JP,A)
【文献】特開2018-101769(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163881(WO,A1)
【文献】特開2015-056486(JP,A)
【文献】特開2014-183146(JP,A)
【文献】特開2010-263087(JP,A)
【文献】特表2007-503108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレイン電極と、
前記ドレイン電極の上方に配置されている第1のn型GaN層と、
前記第1のn型GaN層の上面に配置されて
おり、開口部を備えている低濃度p型GaN層と、
前記低濃度p型GaN層の上面に配置されている第2のn型GaN層と、
前記開口部に配置されているn型GaNである開口部半導体層であって、前記第1のn型GaN層と前記第2のn型GaN層とを接続している前記開口部半導体層と、
前記第2のn型GaN層および前記開口部半導体層の上方に配置されているゲート電極であって、前記ゲート電極を上方から見たときに前記ゲート電極が配置されている領域が前記開口部を含んでいる、前記ゲート電極と、
前記第2のn型GaN層の上面から前記低濃度p型GaN層まで到達しているトレンチ
であって、上方から見たときに前記開口部が配置されている領域外に形成されている前記トレンチと、
前記トレンチ内に配置されているコンタクト領域であって、前記低濃度p型GaN層よりもp型不純物濃度が高い高濃度p型GaNで形成されている前記コンタクト領域と、
前記コンタクト領域の少なくとも一部に接するソース電極と、
を備える窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記第2のn型GaN層および前記開口部半導体層の上面に配置されているとともに、前記ゲート電極の下方に配置されているAlGaN層をさらに備え、
前記トレンチは、前記AlGaN層の上面から前記低濃度p型GaN層まで到達している、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記低濃度p型GaN層と前記コンタクト領域との界面近傍における前記低濃度p型GaN層の水素濃度に対する、前記開口部の近傍における前記低濃度p型GaN層の水素濃度の比は、2倍以内である、請求項
1または2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記コンタクト領域は、エピタキシャル成長法またはスパッタ法によって形成された領域である、請求項1~
3の何れか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
GaN基板上に第1のn型GaN層をエピタキシャル成長法により形成する工程と、
前記第1のn型GaN層の上面に低濃度p型GaN層をエピタキシャル成長法により形成する工程と、
前記低濃度p型GaN層の上面から前記第1のn型GaN層まで到達している開口部を形成する工程と、
前記開口部の内部および前記低濃度p型GaN層の上面に第2のn型GaN層をエピタキシャル成長法により形成する工程と、
前記第2のn型GaN層の上面から前記低濃度p型GaN層まで到達しているトレンチを形成する工程
であって、上方から見たときに前記開口部が配置されている領域外に前記トレンチを形成する工程と、
前記低濃度p型GaN層よりもp型不純物濃度が高い高濃度p型GaNで形成されているコンタクト領域を、前記トレンチ内に形成する工程と、
不活性雰囲気でアニールすることで前記低濃度p型GaN層に含まれている水素を前記コンタクト領域に拡散させるアニール工程と、
前記コンタクト領域の少なくとも一部に接するソース電極を形成する工程と、
を備える、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記コンタクト領域を形成する工程は、エピタキシャル成長法またはスパッタ法によって行われる、請求項
5に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、窒化物半導体装置および窒化物半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNでは、水素が高濃度に含まれていると、アクセプタ(例:Mg)が活性化せず、p型領域の性能が得られない場合がある。特許文献1には、p型GaN層から効率よく水素を離脱させるために、p型GaN層が露出した状態で脱水素アニールを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
p型GaN層が露出した状態で脱水素アニールを行った場合においても、p型GaN層の水素が十分抜けきらず、実効アクセプタ濃度が低下してしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する窒化物半導体装置の一実施形態は、ドレイン電極を備える。ドレイン電極の上方に配置されている第1のn型GaN層を備える。第1のn型GaN層の上面に配置されている低濃度p型GaN層を備える。低濃度p型GaN層の上面に配置されている第2のn型GaN層を備える。第2のn型GaN層の上面から低濃度p型GaN層まで到達しているトレンチを備える。トレンチ内に配置されているコンタクト領域であって、低濃度p型GaN層よりもp型不純物濃度が高い高濃度p型GaNで形成されているコンタクト領域を備える。コンタクト領域の少なくとも一部に接するソース電極を備える。
【0006】
また、本明細書に開示する窒化物半導体装置の一実施形態は、ドレイン電極を備える。ドレイン電極の上方に配置されている第1のn型GaN層を備える。第1のn型GaN層の上面に配置されている低濃度p型GaN層を備える。低濃度p型GaN層よりもp型不純物濃度が高い高濃度p型GaN層であって、低濃度p型GaN層の上面に配置されている高濃度p型GaN層を備える。高濃度p型GaN層の上面から低濃度p型GaN層まで到達しているトレンチを備える。トレンチ内に配置されているn型GaNのソース領域を備える。ソース領域の上面から低濃度p型GaN層を貫通して第1のn型GaN層まで到達しているゲート電極領域を備える。ソース領域の上面の少なくとも一部および高濃度p型GaN層の上面の少なくとも一部に接するソース電極を備える。
【0007】
低濃度p型GaN層の上面の一部に高濃度p型GaN層が形成されている状態で、アニールを行うことができる。低濃度p型GaN層に含まれている水素を高濃度p型GaN層に拡散させることができるため、低濃度p型GaN層の水素濃度を、高濃度p型GaN層が上面に配置されていない場合に比して短時間で十分低くすることができる。低濃度p型GaNの実効アクセプタ濃度を高めることができる。
【0008】
第2のn型GaN層の上面から低濃度p型GaN層を貫通して第1のn型GaN層まで到達しているゲート電極領域をさらに備えていてもよい。
【0009】
低濃度p型GaN層とコンタクト領域との界面近傍における低濃度p型GaN層の水素濃度に対する、ゲート電極領域の近傍における低濃度p型GaN層の水素濃度の比は、2倍以内であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0010】
低濃度p型GaN層は開口部を備えていてもよい。窒化物半導体装置は、開口部に配置されているn型GaNである開口部半導体層であって、下面が低濃度p型GaN層の下面と同一平面内であり、上面が低濃度p型GaN層の上面と同一平面内である、開口部半導体層をさらに備えていてもよい。第2のn型GaN層および開口部の上方に配置されているゲート電極であって、ゲート電極を上方から見たときにゲート電極が配置されている領域が開口部を含んでいる、ゲート電極をさらに備えていてもよい。
【0011】
低濃度p型GaN層とコンタクト領域との界面近傍における低濃度p型GaN層の水素濃度に対する、開口部の近傍における低濃度p型GaN層の水素濃度の比は、2倍以内であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0012】
コンタクト領域は、エピタキシャル成長法またはスパッタ法によって形成された領域であってもよい。
【0013】
本明細書に開示する窒化物半導体装置の製造方法の一実施形態は、GaN基板上に第1のn型GaN層をエピタキシャル成長法により形成する工程を備える。第1のn型GaN層の上面に低濃度p型GaN層をエピタキシャル成長法により形成する工程を備える。低濃度p型GaN層の上面に第2のn型GaN層をエピタキシャル成長法により形成する工程を備える。第2のn型GaN層の上面から低濃度p型GaN層まで到達しているトレンチを形成する工程を備える。低濃度p型GaN層よりもp型不純物濃度が高い高濃度p型GaNで形成されているコンタクト領域を、トレンチ内に形成する工程を備える。不活性雰囲気でアニールすることで低濃度p型GaN層に含まれている水素をコンタクト領域に拡散させるアニール工程を備える。コンタクト領域の少なくとも一部に接するソース電極を形成する工程を備える。
【0014】
コンタクト領域を形成する工程は、エピタキシャル成長法またはスパッタ法によって行われてもよい。
【0015】
また、本明細書に開示する窒化物半導体装置の製造方法の一実施形態は、GaN基板上に第1のn型GaN層をエピタキシャル成長法により形成する工程を備える。第1のn型GaN層の上面に低濃度p型GaN層をエピタキシャル成長法により形成する工程を備える。低濃度p型GaN層の上面に、低濃度p型GaN層よりもp型不純物濃度が高い高濃度p型GaN層をエピタキシャル成長法により形成する工程を備える。不活性雰囲気でアニールすることで低濃度p型GaN層に含まれている水素を高濃度p型GaN層に拡散させるアニール工程を備える。高濃度p型GaN層の上面から低濃度p型GaN層まで到達している第1トレンチを形成する工程を備える。第1トレンチ内にn型GaNのソース領域を形成する工程を備える。ソース領域の上面から低濃度p型GaN層を貫通して第1のn型GaN層まで到達している第2トレンチを形成する工程を備える。第2トレンチ内にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成するとともに、ソース領域の上面の少なくとも一部および高濃度p型GaN層の上面の少なくとも一部に接するソース電極を形成する工程を備える。
【0016】
ソース領域を形成する工程は、エピタキシャル成長法またはスパッタ法によって行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1に係る半導体装置1の断面概略図である。
【
図2】実施例1に係る半導体装置1の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】実施例1に係る半導体装置1の製造工程を示す図である。
【
図4】実施例1に係る半導体装置1の製造工程を示す図である。
【
図5】低濃度p型GaN層の水素濃度の測定結果のグラフである。
【
図6】実施例2に係る半導体装置101の断面概略図である。
【
図7】実施例2に係る半導体装置101の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】実施例2に係る半導体装置101の製造工程を示す図である。
【
図9】実施例2に係る半導体装置101の製造工程を示す図である。
【
図10】実施例3に係る半導体装置201の断面概略図である。
【
図11】実施例3に係る半導体装置201の製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】実施例3に係る半導体装置201の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
(半導体装置1の構成)
図1に、実施例1に係る半導体装置1の断面概略図を示す。半導体装置1は、トレンチゲートを備えた縦型MOSFETである。半導体装置1は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、ドレイン層32、ドリフト層34、ボディ層36、ソース領域38が積層した構造を有している。
【0019】
ドレイン層32は、高濃度n型(n+型)のGaN基板である。ドレイン層32の裏面には、ドレイン電極52が形成されている。ドレイン層32のドナー濃度は、2×1018cm-3とした。ドレイン層32の表面には、ドリフト層34が形成されている。ドリフト層34は、ドレイン層32の表面上にエピタキシャル成長した低濃度n型(n-型)のGaN層である。ドリフト層34のドナー濃度は、8×1015cm-3とした。ボディ層36は、ドリフト層34上にエピタキシャル成長した低濃度p型(p-型)のGaN層である。ボディ層36のアクセプタ(Mg)濃度は、5×1017cm-3とした。ソース領域38は、ボディ層36上にエピタキシャル成長した、高濃度n型(n+型)のGaN領域である。ソース領域38のドナー濃度は、1×1018cm-3とした。
【0020】
ソース領域38の上面からボディ層36まで到達しているコンタクトトレンチT2が形成されている。コンタクトトレンチT2内には、ボディコンタクト領域46が配置されている。ボディコンタクト領域46は、コンタクトトレンチT2内にエピタキシャル成長した高濃度p型(p+型)のGaN層である。ボディコンタクト領域46は、ボディ層36よりもp型不純物濃度が高い。ボディコンタクト領域46のアクセプタ(Mg)濃度は、3×1019cm-3とした。ボディコンタクト領域46は開口領域A1を備えている。開口領域A1は、ボディ層36の上面にボディコンタクト領域46が配置されていない領域である。開口領域A1の内部に、ソース領域38の一部およびゲート電極領域41が配置されている。
【0021】
ボディ層36の水素濃度は、ボディコンタクト領域46の水素濃度よりも低い。例えば、ボディ層36の水素濃度は、ボディコンタクト領域46の水素濃度の1/10以下であってもよい。ボディ層36の水素濃度は、5×1016cm-3とした。
【0022】
図1に示すように、ボディ層36内において、ゲート電極領域41の近傍の領域であって、ゲート絶縁膜42を介してトレンチゲート電極40に対向している領域を、領域R1とする。またボディ層36内において、ボディ層36とボディコンタクト領域46との界面近傍の領域を、領域R2とする。領域R2の水素濃度に対する領域R1の水素濃度の比は、2倍以内である。
【0023】
ゲート電極領域41は、トレンチゲート電極40およびゲート絶縁膜42を備えている。トレンチゲート電極40は、ソース領域38の表面から、ソース領域38とボディ層36を貫通してドリフト層34に侵入している。トレンチゲート電極40は、ゲート絶縁膜42で側面および底面が覆われたゲートトレンチT1内に形成された電極である。トレンチゲート電極40は、ゲートトレンチT1外を延びており、ゲート電極50と接触している。トレンチゲート電極40は、多結晶シリコンなどで形成されている。
【0024】
層間絶縁膜48は、トレンチゲート電極40およびゲート電極50とソース電極44との絶縁を確保するための層である。ボディコンタクト領域46の上面の一部、および、ソース領域38の上面の一部には、ソース電極44が接触している。
【0025】
(半導体装置1の製造方法)
図2~
図4を参照して、半導体装置1の製造方法について説明する。
図2のフローチャートのステップS1において、積層構造形成工程が行われる。具体的には、ドレイン層32、ドリフト層34、ボディ層36、ソース領域38が積層している半導体基板10を形成する。半導体基板10は、エピタキシャル成長法(例:MOVPE法)によって、ドレイン層32上にドリフト層34、ボディ層36、ソース領域38を成長させることで形成してもよい。
【0026】
ステップS2において、コンタクトトレンチ形成工程が行われる。具体的には、ソース領域38の上面からソース領域38を貫通してボディ層36に到達するコンタクトトレンチT2を加工する。コンタクトトレンチT2の加工は、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工により行うことができる。これにより、
図3に示す構造が形成される。
【0027】
ステップS3において、ボディコンタクト領域形成工程が行われる。具体的には、エピタキシャル成長法(例:MOVPE法)によって、ソース領域38上に高濃度p型GaN層を成長させる。これにより、コンタクトトレンチT2の内部およびソース領域38の上面に、高濃度p型GaN層が形成される。次に、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、開口領域A1に対応する開口部を備えたマスクを加工する。ドライエッチングにより開口領域A1の高濃度p型GaN層を除去することで、ソース領域38を露出させる。これにより、
図4に示すように、ボディコンタクト領域46が形成される。
【0028】
ステップS4において、アニール工程が行われる。具体的には、半導体基板10を不活性雰囲気中(例:N
2雰囲気中)で900℃、10分間の条件で加熱する。これにより、ボディ層36(低濃度p型GaN層)に含まれている水素を、ボディコンタクト領域46(高濃度p型GaN層)に拡散させることができる。換言すると、
図4の矢印Y1に示すように、ボディ層36中の水素を、ボディコンタクト領域46側に吸い出すことができる。これにより、ボディ層36の水素濃度を、約5×10
16cm
-3程度まで低減することができる。なお、アニール温度は900℃以下が好ましい。アニール温度が900℃より高いと、GaNが熱分解してしまうためである。
【0029】
ステップS5において、ゲートトレンチ形成工程が行われる。具体的には、開口領域A1の一部に、ソース領域38の上面からボディ層36を突き抜けてドリフト層34に到達するゲートトレンチT1を加工する。ステップS6において、ゲート電極領域形成工程が行われる。具体的には、ゲートトレンチT1内および半導体基板10の表面に、ゲート絶縁膜42を形成する。ゲート絶縁膜42は、SiO2またはAl2O3等を原子堆積法などで堆積させて形成した絶縁膜である。ボロンなどの不純物をドープしたポリシリコンをLP-CVD法で成膜する。周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、ゲートトレンチT1周囲のポリシリコンを除去することで、トレンチゲート電極40を形成する。
【0030】
ステップS7において、ソース電極およびゲート電極形成工程が行われる。具体的には、トレンチゲート電極40の上面に層間絶縁膜48を成膜する。そして周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、ソース電極44およびゲート電極50を形成する領域の層間絶縁膜48およびゲート絶縁膜42を除去する。金属層を成膜する。周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、金属層を、ソース電極44およびゲート電極50に加工する。
【0031】
ステップS8において、ドレイン電極形成工程が行われる。具体的には、ドレイン層32の裏面に、金属層のドレイン電極52を成膜する。以上により、
図1に示す半導体装置1が完成する。
【0032】
(半導体装置1の動作)
図1に示す半導体装置1は、ドレイン電極52を高電位に接続し、ソース電極44を接地し、ゲート電極50に加える電位を変化させる。ゲート電極50に正電位を加えると、ゲート絶縁膜42を介してトレンチゲート電極40に対向している領域R1のp
-型のボディ層36がn型に反転し、反転層によってn
+型のソース領域38とn
-型のドリフト層34が導通し、ソース電極44とドレイン電極52の間を電流が流れる。ゲート電極50に正電位を加えるのを停止すると、領域R1の反転層が消失し、ドリフト層34に空乏層が伸長して、ソース電極44とドレイン電極52の間が高抵抗な状態となる。
【0033】
(実施例1の効果)
低濃度p型GaN層であるボディ層36は、前述したように反転層が形成される層であるため、半導体装置1のしきい値を決定する重要な層である。またp型GaNは、水素が高濃度に含まれていると、アクセプタ(例:Mg)が活性化せず、p型特性が十分が得られない場合がある。従って、ボディ層36の水素濃度を低減する必要がある。本明細書に記載されている技術では、低濃度p型GaN層(ボディ層36)の上面の一部に高濃度p型GaN層(ボディコンタクト領域46)が接している状態で、不活性雰囲気でアニールを行うことができる(ステップS4)。このようなアニールを行うことで、低濃度p型GaN層の水素濃度を、高濃度p型GaN層が上面に配置されていない場合に比して短時間で十分低くすることができることを、本発明者らは見出した。これは、高濃度p型GaN層と低濃度p型GaN層の界面では水素がプロトンとして存在し、高濃度p型GaN層側への水素の拡散が電界によって加速されるためと考えられる。これにより、低濃度p型GaN層(ボディ層36)の水素濃度を十分に低減することができる。設計通りの実効アクセプタ濃度を得ることができるため、しきい値電圧を精密に制御することが可能となる。またこれにより、低濃度p型GaN層(ボディ層36)の脱水素を短時間アニール(例:10分以下)で実現することができる。長時間アニールによって低濃度p型GaN層(ボディ層36)に新たな欠陥が導入されてしまう事態を抑制することが可能となる。
【0034】
本明細書に記載されている半導体装置1は、ソース領域38を貫いてボディ層36へ到達するコンタクトトレンチT2内に、高濃度p型GaN層(ボディコンタクト領域46)を配置する構造を備えている。これにより、ボディコンタクト領域46を、脱水素アニール(ステップS4)で水素をボディ層36から吸い出すための領域として流用することが可能になる。
【0035】
従来のように、イオン注入法によって、ボディ層の上部にソース領域(高濃度n型GaN層)を形成する場合には、イオン注入により導入されるダメージにより、チャネル特性が悪化してしまう。本明細書に記載されている半導体装置1では、ソース領域38を、エピタキシャル成長により形成することができる(ステップS1)。これにより、ソース領域38にダメージが導入されることがないため、チャネル特性の悪化を抑制することが可能となる。
【0036】
ボディコンタクト領域46を用いて水素をボディ層36から吸い出すことによって、
図1に示すように、領域R11の水素濃度に対する領域R12の水素濃度の比を、2倍以内にすることができる。これにより、面内均一性よく、ボディ層36の水素濃度を低減することができる。すなわち、ボディ層36の活性化率を均一に保つことができる。よって、半導体装置1のしきい値電圧の面内均一性を向上させることができる。半導体装置1のしきい値電圧の精密制御や、素子耐圧の確保が可能となる。
【0037】
(水素濃度の測定結果)
図5に、低濃度p型GaN層の水素濃度の測定結果のグラフを示す。
図5は、二次イオン質量分析(SIMS)法を用いた測定結果である。典型的な測定条件例としては、一次イオン種としてCs
+イオンを用い、加速電圧として8.0kVを用いた。縦軸は、正規化された水素濃度である。横軸は、アニール時間である。アニール温度は850℃、アニール雰囲気はN
2とした。比較例1、比較例2、本実施例、の3つの条件の各々について、水素濃度を測定した。比較例1では、低濃度p型GaN層の上面に高濃度n型GaN層が形成されているサンプルを使用した。比較例2では、低濃度p型GaN層が露出しているサンプルを使用した。本実施例では、低濃度p型GaN層の上面に高濃度p型GaN層が形成されているサンプルを使用した。
図5では、比較例1の測定結果を三角形の点、比較例2の測定結果を丸形の点、本実施例の測定結果を四角形の点、で示している。
【0038】
アニール時間が10分である時刻t1の時点において、比較例1(三角形)では水素濃度がアニール前とほぼ同一である。また比較例2(丸形)では、アニール前の60%程度までしか水素濃度が減少していない。しかし、本実施例(四角形)では、アニール前の10%程度まで減少させることができる。低濃度p型GaN層の上面に高濃度p型GaN層が形成されている状態でアニールすることで、低濃度p型GaN層の水素濃度を効率よく低減させることができることが分かる。またこの効果は、アニール時間を10分より長くした場合においても得られることが分かる。
【実施例2】
【0039】
(半導体装置101の構成)
図6に、実施例2に係る半導体装置101の断面概略図を示す。半導体装置101は、トレンチゲートを備えた縦型MOSFETである。実施例1の半導体装置1(
図1)に対して、実施例2の半導体装置101(
図6)が異なる部分には、符号の末尾に「a」を付すことで区別している。半導体装置1と101とで共通する部分には同一符号を付すことで、説明を省略する。実施例1の半導体装置1は、コンタクトトレンチT2内に高濃度p型GaN層(ボディコンタクト領域46)を形成する構造であった。一方、実施例2の半導体装置101は、トレンチT3a内に高濃度n型GaN層(ソース領域38a)を形成する構造を有する。以下に説明する。
【0040】
半導体基板10aは、ドレイン層32、ドリフト層34、ボディ層36、ボディコンタクト領域46aが積層した構造を有している。ボディコンタクト領域46aは、ボディ層36上にエピタキシャル成長した、高濃度p型(p+型)のGaN領域である。ボディコンタクト領域46aは、ボディ層36よりもp型不純物濃度が高い。
アクセプタ(Mg)濃度は、ボディコンタクト領域46aが3×1019cm-3であり、ボディ層36が5×1017cm-3であるとした。
【0041】
ボディコンタクト領域46aの上面からボディ層36まで到達しているトレンチT3aが形成されている。トレンチT3a内には、ソース領域38aが配置されている。ソース領域38aは、トレンチT3a内にエピタキシャル成長した高濃度n型(n+型)のGaN層である。ソース領域38aのドナー濃度は、1×1018cm-3とした。
【0042】
ボディ層36の水素濃度は、ボディコンタクト領域46aの水素濃度よりも低い。また、
図6に示すように、ボディ層36内において、ボディ層36とボディコンタクト領域46aとの界面近傍の領域を、領域R2aとする。領域R2aの水素濃度に対する領域R1の水素濃度の比は、2倍以内である。
【0043】
(半導体装置101の製造方法)
図7~
図9を参照して、半導体装置101の製造方法について説明する。実施例1の半導体装置1の製造フローチャート(
図2)に対して、実施例2の半導体装置101の製造フローチャート(
図7)が異なる部分には、符号の末尾に「a」を付すことで区別している。共通するステップには同一符号を付すことで、説明を省略する。
【0044】
図7のフローチャートのステップS1aにおいて、積層構造形成工程が行われる。具体的には
図8に示すように、ドレイン層32、ドリフト層34、ボディ層36、ボディコンタクト領域46aが積層している半導体基板10aを形成する。
【0045】
ステップS2aにおいて、アニール工程が行われる。具体的には、半導体基板10aを不活性雰囲気中で900℃、10分間の条件で加熱する。これにより、ボディ層36(低濃度p型GaN層)に含まれている水素を、ボディコンタクト領域46a(高濃度p型GaN層)に拡散させることができる(
図8、矢印Y2)。これにより、ボディ層36の水素濃度を、約5×10
16cm
-3程度まで低減することができる。
【0046】
ステップS3aにおいて、トレンチ形成工程が行われる。具体的には、ボディコンタクト領域46aの上面からボディ層36に到達するトレンチT3aを加工する。
【0047】
ステップS4aにおいて、ソース領域形成工程が行われる。具体的には、スパッタリング法によって、トレンチT3aの内部に、高濃度n型GaN層を形成する。次に、ボディコンタクト領域46aの上面に成長した高濃度n型GaN層を、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて除去する。これにより
図9に示すように、トレンチT3aにソース領域38aが形成される。
【0048】
ステップS5~S8の内容は、実施例1のフローチャート(
図2)の内容と同様であるため、説明を省略する。以上により、
図6に示す半導体装置101が完成する。
【0049】
(実施例2の効果)
実施例2に記載されている技術では、低濃度p型GaN層(ボディ層36)の上面に高濃度p型GaN層(ボディコンタクト領域46a)が接している状態で、アニールを行うことができる(ステップS2a)。これにより、短時間のアニールで、低濃度p型GaN層(ボディ層36)の水素濃度を十分に低減することができる。またボディ層36の上面の全体にボディコンタクト領域46aが配置された状態でアニールを行うことができるため、面内均一性よく、ボディ層36の水素濃度を低減することができる。
【0050】
実施例2に記載されている半導体装置101では、ソース領域38aを、スパッタリング法により形成することができる(ステップS4a)。これにより、ソース領域をイオン注入で形成する場合に比して、ソース領域に導入されてしまうダメージを抑制することができるため、チャネル特性の悪化を抑制することが可能となる。またスパッタリング法は雰囲気に水素を含まないため、ステップS4aにおけるボディ層への新たな水素の導入を防止することができる。
【実施例3】
【0051】
(半導体装置201の構成)
図10に、実施例3に係る半導体装置201の断面概略図を示す。半導体装置201は、ノーマリオフ型の縦型HEMT(High Electron Mobility Transistor)である。半導体装置201は、ドレイン電極210、ドレイン層211、ドリフト層212、電流狭窄層213、開口部213a、開口部半導体層214、チャネル層215、AlGaN層216、P型層220、ゲート電極221、絶縁層222、コンタクト領域223、ソース電極224、を備える。
【0052】
ドレイン層211は高濃度n型GaN(ドナー濃度=2×1018cm-3)である。ドリフト層212は、低濃度n型GaN(ドナー濃度=8×1015cm-3)である。ドリフト層212の上面には、電流狭窄層213が接している。電流狭窄層213は、低濃度p型GaN(アクセプタ(Mg)濃度=1×1019cm-3)である。電流狭窄層213は、開口部213aを備えている。電流狭窄層213の上面には、低濃度n型GaNであるチャネル層215が接している。開口部213aの内部には、低濃度n型GaNである開口部半導体層214が配置されている。開口部半導体層214は、縦方向電流経路として機能する。よって、いわゆるアパーチャ構造が形成されている。チャネル層215の上面および開口部半導体層214の上面には、AlGaN層216がヘテロ接合している。AlGaN層216の上面には、高濃度p型GaNであるP型層220(アクセプタ(Mg)濃度=2×1019cm-3)が接している。P型層220の上面には、ゲート電極221が接している。ゲート電極221を上方(z軸正方向)から見たときに、ゲート電極221が配置されている領域内に、開口部213aが含まれている。
【0053】
AlGaN層216の上面からチャネル層215を貫通して電流狭窄層213まで到達しているコンタクトトレンチT4が形成されている。コンタクトトレンチT4内には、コンタクト領域223が配置されている。コンタクト領域223は、コンタクトトレンチT4内にエピタキシャル成長した高濃度p型GaN(アクセプタ(Mg)濃度=5×1019cm-3)である。コンタクト領域223は、電流狭窄層213よりもp型不純物濃度が高い。絶縁層222は、P型層220とソース電極224の絶縁を確保するための層である。AlGaN層216の上面の一部、および、コンタクト領域223の上面には、ソース電極224が接触している。
【0054】
図10に示すように、電流狭窄層213内において、開口部半導体層214の近傍の領域を、領域R21とする。また電流狭窄層213内において、電流狭窄層213とコンタクト領域223との界面近傍の領域を、領域R22とする。領域R22の水素濃度に対する領域R21の水素濃度の比は、2倍以内である。
【0055】
(半導体装置201の製造方法)
図11および
図12を参照して、半導体装置201の製造方法について説明する。
図11のフローチャートのステップS101において、積層構造形成工程が行われる。具体的には、エピタキシャル成長法(例:MOVPE法)によって、ドレイン層211上にドリフト層212、電流狭窄層213を成長させる。ステップS102において、開口部形成工程が行われる。具体的には、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、開口部213aに対応する部分を除去し、トレンチを形成する。そして、埋め込み再成長法によって、低濃度n型GaNである開口部半導体層214およびチャネル層215を形成する。ステップS103において、ゲート構造形成工程が行われる。具体的には、AlGaN層216と、高濃度p型GaN層を積層する。そして高濃度p型GaN層をP型層220に加工する。
【0056】
ステップS104において、コンタクトトレンチ形成工程が行われる。具体的には、AlGaN層216の上面から電流狭窄層213に到達するコンタクトトレンチT4を加工する。そして、高濃度p型GaN層を、埋め込み再成長法によってコンタクトトレンチT4内に形成する。ドライエッチングにより、AlGaN層216表面やP型層220表面の不要な高濃度p型GaN層を除去する。これにより、
図12に示すように、コンタクト領域223が形成される。
【0057】
ステップS105において、アニール工程が行われる。具体的には、
図12に示す構造を不活性雰囲気中(例:N
2雰囲気中)で900℃、10分間の条件で加熱する。これにより、矢印Y3に示すように、電流狭窄層213中の水素を、コンタクト領域223側に吸い出すことができる。これにより、電流狭窄層213の水素濃度を、約5×10
16cm
-3程度まで低減することができる。
【0058】
ステップS106において、ゲート電極221、ソース電極224、ドレイン電極210が形成される。以上により、
図10に示す半導体装置201が完成する。
【0059】
(実施例3の効果)
実施例3に記載されている技術では、低濃度p型GaN層(電流狭窄層213)の上面に高濃度p型GaN層(コンタクト領域223)が接している状態で、アニールを行うことができる(ステップS105)。これにより、短時間のアニールで、電流狭窄層213の水素濃度を十分に低減することができる。
【0060】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0061】
(変形例)
トレンチ内にボディコンタクト領域46やコンタクト領域223を形成する方法は、エピタキシャル成長法に限られず、様々な方法を使用可能である。例えば、スパッタ法であってもよい。またソース領域38aを形成する方法は、水素ガスを含まないエピタキシャル成長法(例:分子線エピタキシー法)であってもよい。
【0062】
本実施例における脱水素アニールを行うタイミングは一例であり、様々なタイミングが使用可能である。例えば実施例2のフローチャート(
図7)において、アニール工程は、トレンチ形成工程(ステップS4a)の後や、ゲート電極領域形成工程(ステップS6)の後に行われてもよい。
【0063】
アニール工程の温度は850℃に限られず、850℃以下の温度であってもよい。温度を下げるほど、低濃度p型GaN層の水素濃度の低下速度が下降するが、アニールによる結晶性の劣化を抑制することが可能となる。
【0064】
半導体基板10を構成するIII族窒化物半導体はGaNに限定されるものではなく、例えばAlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)、または、その混晶等であってもよい。
【0065】
上記の実施例では、p型領域を形成するためのII族元素の一例としてマグネシウム(Mg)を用いていたが、この構成に限定されるものではない。II族元素は、例えばベリウム(Be)、カルシウム(Ca)等であってもよい。
【0066】
本実施例で説明した不純物濃度はすべて一例である。様々な濃度の組み合わせを用いることが可能である。
【0067】
ドリフト層34は、第1のn型GaN層の一例である。ボディ層36は、低濃度p型GaN層の一例である。ソース領域38は、第2のn型GaN層の一例である。
ボディコンタクト領域46はコンタクト領域の一例である。
【符号の説明】
【0068】
1:半導体装置 10:半導体基板 32:ドレイン層 34:ドリフト層 36:ボディ層 38:ソース領域 41:ゲート電極領域 44:ソース電極 46:ボディコンタクト領域 T2:コンタクトトレンチ