(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】バスバーユニット及びそれを備えたモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20220216BHJP
H02K 11/25 20160101ALI20220216BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K11/25
(21)【出願番号】P 2019508646
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2018002868
(87)【国際公開番号】W WO2018179790
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2017072680
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】朝日 優
(72)【発明者】
【氏名】新子 剛央
(72)【発明者】
【氏名】前田 昌良
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-102596(JP,A)
【文献】特開2010-119238(JP,A)
【文献】特開平9-312948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30- 3/52
H02K 11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心に回転するモータの相用の複数のバスバーを支持する絶縁体のバスバーホルダと、各前記バスバーの少なくとも軸方向一方側を覆って前記バスバーホルダに固定される絶縁体のバスバーカバーとを備えたバスバーユニットであって、
各前記バスバーは、
基部と、
前記基部から径方向外方に延びる複数の延設部と、
各前記延設部の径方向外端部に設けられる端子と、
を有し、
前記バスバーカバーが、軸方向他方側に突出する複数の突出部を有し、
各前記バスバーに対して、複数の前記突出部が接触するとともに少なくとも一の前記突出部が前記延設部の近傍の前記基部に接触する、バスバーユニット。
【請求項2】
複数の前記バスバーの前記基部は径方向に並んで配置され、
前記バスバーホルダには、径方向に隣接する前記バスバーを互いに隔離する隔壁が設けられ、
前記隔壁の前記軸方向一方側の端部には軸方向に切り欠かれた第1切欠き部が設けられ、
前記隔壁を跨ぐ前記延設部の一部は、前記第1切欠き部内に配置される、請求項1に記載のバスバーユニット。
【請求項3】
前記バスバーホルダの外周壁の前記軸方向一方側の端部には軸方向に切り欠かれた第2切欠き部が設けられ、
前記外周壁を跨ぐ前記延設部の一部は、前記第2切欠き部内に配置される、請求項2に記載のバスバーユニット。
【請求項4】
前記隔壁の前記軸方向一方側の端部は前記基部の前記軸方向一方側の端部よりも前記軸方向一方側に位置する、請求項2または請求項3に記載のバスバーユニット。
【請求項5】
前記バスバーカバーが、前記軸方向一方側に膨らむ収納部を有し、
径方向内側の前記基部から延設して径方向外側の前記基部に交差する前記延設部が、前記収納部に収納される、請求項2~請求項4のいずれかに記載のバスバーユニット。
【請求項6】
前記バスバーの温度を検知する温度センサをさらに備え、
前記バスバーカバーは、前記バスバーに面した凹部または貫通孔であるセンサ収納部を有し、
前記温度センサは前記センサ収納部内に配置される、請求項1~請求項5のいずれかに記載のバスバーユニット。
【請求項7】
前記バスバーカバー及び前記バスバーホルダは樹脂成形品であり、
前記バスバーカバー及び前記バスバーホルダのいずれか一方は根元よりも先端部の幅が大きい突起部を有し、前記バスバーカバー及び前記バスバーホルダの他方は前記突起部が挿通される貫通孔を有し、
前記先端部の幅が前記貫通孔の径よりも大きい、請求項1~請求項6のいずれかに記載のバスバーユニット。
【請求項8】
前記延設部の近傍の前記基部に接触する前記突出部は、前記突起部及び前記貫通孔の近傍に配置される、請求項7に記載のバスバーユニット。
【請求項9】
前記バスバーホルダは、平面視において、多角形状であり、
前記突起部または前記貫通孔は多角形の角部に配置され、
前記延設部は前記角部以外に配置される、請求項7または請求項8に記載のバスバーユニット。
【請求項10】
前記バスバーホルダは、平面視において、多角形状である、請求項1~請求項8のいずれかに記載のバスバーユニット。
【請求項11】
前記延設部の近傍の前記基部に接触する前記突出部が、多角形の角部以外に配置される、請求項10に記載のバスバーユニット。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれかに記載のバスバーユニットと、
ステータと、
前記ステータと径方向に対向するマグネットを有して前記中心軸を中心に回転するロータと、
を備える、モータ。
【請求項13】
前記バスバーホルダは外周面から径方向外方に突出する脚部を複数有し、
複数の前記脚部は前記ステータ上に固定される、請求項12に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーユニット及びそれを備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータは特許文献1に開示されている。このモータはステータ及びロータを有する。ステータは、上下に延びる中心軸を中心とする環状のステータコアを有する。ステータコアの径方向内側には中心軸に対して径方向に延びるティース部が複数形成される。ティース部に金属製の線材を巻き回すことによってコイルが形成される。ロータは、ステータと径方向に対向して配置される永久磁石を有し、中心軸を中心に回転する。
【0003】
また、コイルの軸方向上方には配索部材が設けられる。配索部材は本体部及び蓋体を備える。本体部は複数の溝を有し、コイルから引き出された線材は溝に嵌め込まれる。蓋体は本体部の溝を覆うように本体部に固定される。また、蓋体は、本体部の溝に嵌め込まれた線材を押圧する押圧突起を有する。押圧突起は、本体部の溝の位置に合わせて、蓋体の本体部側の面から突出して形成される。押圧突起によって、本体部の溝に嵌め込まれた線材は押圧固定される。
【0004】
特許文献2には、バスバーユニットを備えるモータが開示されている。このバスバーユニットはバスバーベース及び複数のバスバーを有する。バスバーベースはモータの中心軸に対して周方向に延びる複数の環状溝を有し、複数の環状溝は径方向に並ぶ。複数のバスバーはバスバーベースの環状溝内に配置される。バスバーにはバスバーベースの径方向外側へ突設されたコイル接続部及び軸方向上方へ突設された各相端子が設けられる。コイル接続部にはモータのステータのコイルが接続され、各相端子には外部配線が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-28542号公報
【文献】特開2015-100267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の配索部材の蓋体を特許文献2のバスバーユニットに用いた場合、各バスバーに対して蓋体の押圧突起が接触する位置によってはバスバーにおいてコイル接続部及び各相端子の近傍部分が浮き、コイル接続部及び各相端子のガタツキが生じるおそれがあった。このため、コイル接続部とコイルとの接続及び各相端子と外部配線との接続が不良になり、バスバーユニットの信頼性が低下する問題があった。
【0007】
本発明は、信頼性を向上できるバスバーユニット及びそれを備えたモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的なバスバーユニットは、中心軸を中心に回転するモータの相用の複数のバスバーを支持する絶縁体のバスバーホルダと、各前記バスバーの少なくとも軸方向一方側を覆って前記バスバーホルダに固定される絶縁体のバスバーカバーとを備えたバスバーユニットであって、各前記バスバーは、基部と、前記基部から径方向外方に延びる複数の延設部と、各前記延設部の径方向外端部に設けられる端子と、を有し、前記バスバーカバーが、軸方向他方側に突出する複数の突出部を有し、各前記バスバーに対して、複数の前記突出部が接触するとともに少なくとも一の前記突出部が前記延設部の近傍の前記基部に接触する。
【0009】
本発明の例示的なモータは、上記構成のバスバーユニットと、ステータと、前記ステータと径方向に対向するマグネットを有して前記中心軸を中心に回転するロータと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
例示的な本発明によれば、信頼性を向上できるバスバーユニット及びそれを備えたモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るモータを示す側面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るモータのコイル及び中性点バスバーの位置関係を示す平面概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るモータの回路構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るモータの相用バスバーユニットを軸方向一方側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るモータの相用バスバーユニットを軸方向一方側から見た平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るモータの相用バスバーユニットの相用バスバーカバーを取り外した状態を軸方向一方側から見た平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係るモータの相用バスバーユニットの相用バスバーカバーと相用バスバーホルダとの固定後の状態を示す側面断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係るモータの相用バスバーユニットの相用バスバーカバーを軸方向他方側から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係るモータの相用バスバーユニットの相用バスバーカバーを軸方向他方側から見た平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係るモータのステータ及び中性点バスバーユニットを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係るモータの中性点バスバーユニットの周方向に沿った断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態の変形例に係るモータの中性点バスバーユニットを示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態の変形例に係るモータの中性点バスバーユニットを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、モータ1において、モータ1の中心軸Cと平行な方向を「軸方向」、中心軸Cに直交する方向を「径方向」、中心軸Cを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とそれぞれ呼ぶ。また、本明細書において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本明細書において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0013】
また、モータ1において、軸方向を上下方向とし、ステータ22に対して中性点バスバーユニット23側を上として、各部の形状や位置関係を説明する場合がある。上下方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。
【0014】
<モータの全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係るモータの側面断面図である。本実施形態のモータ1は、例えば、自動車に搭載され、パワーステアリングの駆動力を発生させるために使用される。なお、モータ1は、パワーステアリング以外の用途に使用されるものであってもよい。例えば、モータ1は、自動車の他の部位、例えばエンジン冷却用ファンまたはオイルポンプの駆動源として、使用されるものであってもよい。また、モータ1は、家電製品、OA機器、医療機器等に搭載され、各種の駆動力を発生させるものであってもよい。
【0015】
モータ1は静止部2及び回転部3を有する。静止部2は、駆動対象となる機器の枠体に固定される。回転部3は、静止部2に対して、上下に延びる中心軸Cを中心として回転可能に支持される。
【0016】
静止部2は、ハウジング21、ステータ22、中性点バスバーユニット23、相用バスバーユニット24(バスバーユニット)、第1ベアリング25及び第2ベアリング26を有する。
【0017】
ハウジング21は、筒部211、第1蓋部212及び第2蓋部213を有する。筒部211は、軸方向に略円筒状に延びる。筒部211は、ステータ22及び後述のロータ32を径方向内側に収容する。第2蓋部213は、ステータ22よりも軸方向一方側(
図1において、下側)において、筒部211から径方向内側に向けて拡がる。第1蓋部212は、ステータ22及び中性点バスバーユニット23よりも軸方向他方側(
図1において、上側)において、筒部211から径方向内側に向けて拡がる。なお、第1蓋部212及び第2蓋部213は、筒部211から径方向外側へ向けて拡がるフランジ部(不図示)を有していてもよい。
【0018】
筒部211、第1蓋部212及び第2蓋部213は、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属から成る。本実施形態では、筒部211と第1蓋部212とが単一部材で構成され、第2蓋部213が他部材で構成される。ただし、筒部211と第2蓋部213とが単一部材で構成され、第1蓋部212が他部材で構成されてもよい。また、筒部211、第1蓋部212及び第2蓋部213が、それぞれ別部材で構成されてもよい。
【0019】
ステータ22は、後述のロータ32の径方向外側に配置される電機子である。ステータ22は、ステータコア41、インシュレータ42及び複数のコイル43を有する。
【0020】
ステータコア41は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなる。ステータコア41は、中心軸Cを中心とする円環状のコアバック411と、コアバック411から径方向内側へ向けて延びる複数のティース412とを有する。コアバック411は、中心軸Cと略同軸に配置される。コアバック411の外周面は、ハウジング21の筒部211の内周面に固定される。複数のティース412は周方向に略等間隔に配置され、中心軸Cを中心に放射状に延びる。各ティース412は径方向内端において周方向に突出するアンブレラ部412aを有する。本実施形態ではティース412は9個設けられるが、ティース412の数は複数であればよい。
【0021】
インシュレータ42は、絶縁体である樹脂から成り、各ティース412の軸方向の両端面及び周方向の両端面を覆う。コイル43は、インシュレータ42の周囲に巻かれた導線により構成される。すなわち、インシュレータ42は、ティース412とコイル43との間に介在することによってティース412とコイル43との短絡を防止することができる。なお、インシュレータ42に替えて、ティース412の表面に絶縁塗装が施されもよい。
【0022】
なお、本実施形態では、
図2に示すように、1個のティース412の周囲に一対のコイル43が配置され、一対のコイル43は径方向に並ぶ。これにより、一対のコイル43はモータ1の周方向の9か所に配置される。すなわち、ステータコア41が9本のティース412を有し、モータ1のスロット数は9個である。
【0023】
各コイル43は2本の引出し線430を有し、一方の引出し線430は後述の中性点バスバー51に接続され、他方の引出し線430は後述の相用バスバー53(バスバー)に接続される。なお、「引出し線430」とは、コイル43を構成する導線の端部である。
【0024】
18個のコイル43は、
図2に示すように、第1U相コイルU11、U12、U13、第1V相コイルV11、V12、V13、第1W相コイルW11、W12、W13、第2U相コイルU21、U22、U23、第2V相コイルV21、V22、V23、第2W相コイルW21、W22、W23である。
【0025】
図2において、反時計回りに、第1U相コイルU12、第1V相コイルV12、第1W相コイルW12、第2U相コイルU21、第2V相コイルV21、第2W相コイルW21、第2U相コイルU23、第2V相コイルV23、第2W相コイルW23の順にそれぞれのティース412の径方向内端部側に配置される。
【0026】
また、
図2において、反時計回りに、第1U相コイルU11、第1V相コイルV11、第1W相コイルW11、第1U相コイルU13、第1V相コイルV13、第1W相コイルW13、第2U相コイルU22、第2V相コイルV22、第2W相コイルW22の順にそれぞれのティース412の径方向外端部側に配置される。この時、第1U相コイルU11、U12が同じティース412上に配置される。
【0027】
図1に示すように、第1ベアリング25及び第2ベアリング26は、ハウジング21と、回転部3のシャフト31との間に配置される。これにより、第1ベアリング25及び第2ベアリング26は、ハウジング21に対してシャフト31を回転可能に支持する。第1ベアリング25及び第2ベアリング26には、球体を介して外輪と内輪とを相対回転させるボールベアリングが使用される。なお、第1ベアリング25及び第2ベアリング26には、ボールベアリングに替えて、すベり軸受または流体軸受等の他の方式のベアリングが使用されてもよい。
【0028】
第1ベアリング25は、ロータ32及びコイル43よりも軸方向他方側に配置される。第1蓋部212の中央部には、第1ベアリング25を収容する第1ベアリング収容部214が設けられる。第1ベアリング収容部214は、中心軸Cに沿って延びる円筒状の部位である。第1ベアリング25の外輪は第1ベアリング収容部214の内周面に固定される。
【0029】
第2ベアリング26は、ロータ32及びコイル43よりも軸方向一方側に配置される。第2蓋部213の中央部には、第2ベアリング26を収容する第2ベアリング収容部215が設けられる。第2ベアリング収容部215は、中心軸Cに沿って延びる円筒状の部位である。第2ベアリング26の外輪は第2ベアリング収容部215の内周面に固定される。
【0030】
中性点バスバーユニット23は、6個の中性点バスバー51と、中性点バスバー51を保持する樹脂成形品の中性点バスバーホルダ52とを有する。中性点バスバー51は板状の部材であり、例えば銅などの電気伝導性の高い材料により形成される。各中性点バスバー51には、複数のコイル43の引出し線430(
図2参照)が接続される。すなわち、複数のコイル43同士がスター結線され、中性点バスバー51を介して電気的に接続される。
【0031】
6個の中性点バスバー51は、外側バスバーB11、B13、B22、内側バスバーB12、B21、B23である。外側バスバーB11、B13、B22は中性点バスバーホルダ52の外周端部に周方向に並んで配置される。内側バスバーB12、B21、B23は、外側バスバーB11、B13、B22よりも径方向内側に周方向に並んで配置される。すなわち、外側バスバーB11、B13、B22は、内側バスバーB12、B21、B23よりも径方向外側に配置される。なお、以下の説明において、外側バスバーB11、B13、B22を総称して「外側バスバーBS」と呼ぶ場合がある。また、内側バスバーB12、B21、B23を総称して「内側バスバーBU」と呼ぶ場合がある。
【0032】
図2に示すように、径方向外側に配置される第1U相コイルU11、第1V相コイルV11及び第1W相コイルW11は、径方向外側に配置される外側バスバーB11に接続される。外側バスバーB11は、軸方向から見て、第1U相コイルU11、第1V相コイルV11、第1W相コイルW11の径方向内端付近に配置される。径方向内側に配置される第1U相コイルU12、第1V相コイルV12及び第1W相コイルW12は、径方向内側に配置される内側バスバーB12に接続される。内側バスバーB12は、軸方向から見て、第1U相コイルU12、第1V相コイルV12、第1W相コイルW12の径方向内端付近に配置される。
【0033】
また、径方向外側に配置される第1U相コイルU13、第1V相コイルV13及び第1W相コイルW13は、径方向外側に配置される外側バスバーB13に接続される。外側バスバーB13は、第1U相コイルU13、第1V相コイルV13、第1W相コイルW13の径方向内端付近に配置される。径方向内側に配置される第2U相コイルU21、第2V相コイルV21及び第2W相コイルW21は、径方向内側に配置される内側バスバーB21に接続される。内側バスバーB21は、軸方向から見て、第2U相コイルU21、第2V相コイルV21、第2W相コイルW21の径方向内端付近に配置される。
【0034】
また、径方向外側に配置される第2U相コイルU22、第2V相コイルV22及び第2W相コイルW22は、径方向外側に配置される外側バスバーB22に接続される。外側バスバーB22は、軸方向から見て、第2U相コイルU22、第2V相コイルV22、第2W相コイルW22の径方向内端付近に配置される。径方向内側に配置される第2U相コイルU23、第2V相コイルV23及び第2W相コイルW23は、径方向内側に配置される内側バスバーB23に接続される。内側バスバーB23は、軸方向から見て、第2U相コイルU23、第2V相コイルV23、第2W相コイルW23の径方向内端付近に配置される。
【0035】
本実施形態では、3個の中性点バスバー51が、径方向の略同一の位置、かつ、周方向の異なる位置に配置される。また、他の3個の中性点バスバー51が、径方向の略同一の位置、かつ、周方向の異なる位置に配置される。このように、中性点バスバー51を周方向に分割して配置することにより、中性点バスバー51のモータ1への組み付け作業が容易になる。また、中性点バスバー51の歩留りを向上させることができる。
【0036】
また、径方向の略同一位置に配置される3個の中性点バスバー51は、同一形状である。これにより、6個の中性点バスバー51の形状が全て異なる場合と比較して、モータ1の製造効率が向上する。
【0037】
中性点バスバーユニット23は、ステータ22の軸方向他方側かつ第1蓋部212の軸方向一方側に配置される。また、中性点バスバーユニット23は、第1ベアリング収容部214の径方向外側に配置される。すなわち、中性点バスバー51は、第1ベアリング25と径方向に重なる位置に配置される。第1ベアリング25と中性点バスバーユニット23とを径方向に重ねることにより、モータ1の軸方向の長さの増大を抑制することができる。
【0038】
相用バスバーユニット24は、6個の相用バスバー53と、相用バスバー53を保持する絶縁体の相用バスバーホルダ241(バスバーホルダ)と、相用バスバー53の少なくとも軸方向一方側を覆う相用バスバーカバー242(バスバーカバー)と、6個の接続ピン55とを有する。相用バスバー53、相用バスバーホルダ241及び相用バスバーカバー242はそれぞれステータ22の軸方向一方側かつ第2蓋部213の軸方向他方側に配置される。相用バスバーホルダ241及び相用バスバーカバー242は例えば樹脂成形品により構成される。各接続ピン55はそれぞれ第2蓋部213を軸方向に貫通する。
【0039】
相用バスバー53は板状の部材であり、例えば銅などの電気伝導性の高い材料により形成される。各相用バスバー53には、少なくとも1個のコイル43の引出し線430が接続される。また、各接続ピン55は、第2蓋部213の軸方向他方側において相用バスバー53の外部接続端子53dと電気的に接続される。モータ1の使用時には、各接続ピン55は、第2蓋部213の軸方向一方側、すなわちハウジング21の外部において、外部電源(不図示)と電気的に接続される。モータ1の駆動時には、外部電源から接続ピン55及び相用バスバー53を介してコイル43に駆動電流が供給される。
【0040】
本実施形態において、6個の相用バスバー53は、第1U相バスバー531、第1V相バスバー532、第1W相バスバー533、第2U相バスバー534、第2V相バスバー535、及び第2W相バスバー536である。なお、以下の説明において、第1U相バスバー531、第1V相バスバー532、第1W相バスバー533、第2U相バスバー534、第2V相バスバー535、及び第2W相バスバー536を総称して「相用バスバー53」と呼ぶ場合がある。
【0041】
相用バスバー53、相用バスバーホルダ241及び相用バスバーカバー242は、第2ベアリング収容部215の径方向外側に配置される。すなわち、相用バスバー53、相用バスバーホルダ241及び相用バスバーカバー242は、第2ベアリング26と径方向に重なる位置に配置される。第2ベアリング26と相用バスバーユニット24とを径方向に重ねることにより、モータ1の軸方向の長さの増大をより抑制することができる。
【0042】
なお、以下では、ステータ22、中性点バスバーユニット23及び相用バスバーユニット24を合わせてステータユニット20(
図11参照)と称する。また、中性点バスバーユニット23及び相用バスバーユニット24のより詳細な構造や、コイル43、中性点バスバー51及び相用バスバー53の電気的な接続については後述する。
【0043】
図1に示すように、回転部3はシャフト31及びロータ32を有する。
【0044】
シャフト31は、中心軸Cに沿って延びる柱状の部材である。シャフト31の材料には、例えばステンレスが使用される。シャフト31は、第1ベアリング25及び第2ベアリング26に支持されながら、中心軸Cを中心として回転する。シャフト31の軸方向他方側の端部は、第1蓋部212よりも軸方向他方側へ突出する。シャフト31の軸方向一方側の端部は、第2蓋部213より軸方向一方側へ突出する。シャフト31の軸方向一方側の端部及び軸方向他方側の端部の少なくとも一方には、ギア等の動力伝達機構を介して、駆動対象となる装置が連結される。
【0045】
上述のように、本実施形態では、中性点バスバーユニット23と第1ベアリング25とを径方向に重なる位置に配置するとともに、相用バスバーユニット24と第2ベアリング26とを径方向に重なる位置に配置する。これにより、モータ1の重心と、シャフト31の端部との距離を短くすることができる。したがって、モータ1の重心と、駆動対象となる装置との軸方向の距離を短くすることができる。これにより、モータ1及び当該装置のいずれか一方で発生した振動が他方へ伝達する際に増幅されにくくなる。したがって、モータ1及び当該装置における振動を抑制することができる。
【0046】
ロータ32はステータ22の径方向内側に配置され、シャフト31とともに回転する。ロータ32は、ロータコア321及び複数のマグネット322を有する。
【0047】
ロータコア321は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板から成る。ロータコア321の中央には、軸方向に延びる挿入孔320が設けられる。シャフト31は、ロータコア321の挿入孔320内に配置される。シャフト31の外周面とロータコア321の内周面とは互いに固定される。
【0048】
複数のマグネット322は、ロータコア321の外周面に例えば接着剤で固定される。各マグネット322の径方向外側の面は、ティース412の径方向内側の端面に対向する磁極面となっている。複数のマグネット322は、N極とS極とが交互に並ぶように周方向に配列される。なお、複数のマグネット322に替えて、N極とS極とが周方向に交互に着磁された円環状のマグネットが使用されてもよい。また、複数のマグネット322は、ロータコア321の内部に埋め込まれてもよい。
【0049】
上記構成のモータ1において、外部電源(不図示)から相用バスバー53を介してコイル43に駆動電流が与えられると、ステータコア41の複数のティース412に磁束が生じる。そして、ティース412とマグネット322との間の磁束の作用により、周方向のトルクが発生する。これにより、静止部2に対して回転部3が中心軸Cを中心として回転する。
【0050】
<モータ内の電気的接続について>
図3は、モータ1の回路構成を示す図である。
【0051】
モータ1は、18個のコイル43、6個の中性点バスバー51及び6個の相用バスバー53を有する。18個のコイル43、6個の中性点バスバー51及び6個の相用バスバー53は、それぞれ、第1制御系統11と第2制御系統12とに分けられる。第1制御系統11と第2制御系統12は、それぞれ独立して別個に制御される。すなわち、第1制御系統11と第2制御系統12とは電気的に按続されない。
【0052】
18個のコイル43は、第1制御系統11に属する第1コイル群431と、第2制御系統12に属する第2コイル群432と、に分けられる。第1コイル群431及び第2コイル群432にはそれぞれ9個のコイル43が含まれる。
【0053】
具体的には、第1コイル群431には、第1U相コイルU11、U12、 U13と、第1V相コイルV11、V12、V13と、第1W相コイルW11、W12、W13と、が含まれる。第2コイル群432には、第2U相コイルU21、U22、U23と、第2V相コイルV21、V22、V23と、第2W相コイルW21、W22、W23と、が含まれる。
【0054】
外側バスバーB11、B13及び内側バスバーB12は、第1制御系統11に属する。内側バスバーB21、B23及び外側バスバーB22は、第2制御系統12に属する。
【0055】
外側バスバーB11、B13及び内側バスバーB12には、それぞれ第1コイル群431に含まれる3個のコイル43のそれぞれの引出し線430が接続される。具体的には、外側バスバーB11には、第1U相コイルU11、第1V相コイルV11及び第1W相コイルW11のそれぞれの引出し線430が接続される。内側バスバーB12には、第1U相コイルU12、第1V相コイルV12及び第1W相コイルW12のそれぞれの引出し線430が接続される。外側バスバーB13には、第1U相コイルU13、第1V相コイルV13及び第1W相コイルW13のそれぞれの引出し線430が接続される。
【0056】
内側バスバーB21、B23及び外側バスバーB22には、それぞれ第2コイル群432に含まれる3個のコイル43のそれぞれの引出し線430が接続される。具体的には、内側バスバーB21には、第2U相コイルU21、第2V相コイルV21及び第2W相コイルW21のそれぞれの引出し線430が接続される。外側バスバーB22には、第2U相コイルU22、第2V相コイルV22及び第2W相コイルW22のそれぞれの引出し線430が接続される。内側バスバーB23には、第2U相コイルU23、第2V相コイルV23及び第2W相コイルW23のそれぞれの引出し線430が接続される。
【0057】
以上のように、第1制御系統11及び第2制御系統12がそれぞれ3個の中性点バスバー51を有する。これにより、各中性点バスバー51に接続されるコイル43の数を3相モータの中性点NPとして最低限の3個にできる。
【0058】
第1U相バスバー531、第1V相バスバー532及び第1W相バスバー533は第1制御系統11に属する。第2U相バスバー534、第2V相バスバー535及び第2W相バスバー536は第2制御系統12に属する。
【0059】
第1U相バスバー531には、第1U相コイルU11、U12、U13のそれぞれの引出し線430が接続される。第1V相バスバー532には、第1V相コイルV11、V12、V13のそれぞれの引出し線430が接続される。第1W相バスバー533には、第1W相コイルW11、W12、W13のそれぞれの引出し線430が接続される。
【0060】
第2U相バスバー534には、第2U相コイルU21、U22、U23のそれぞれの引出し線430が接続される。第2V相バスバー535には、第2V相コイルV21、V22、V23のそれぞれの引出し線430が接続される。第2W相バスバー536には、第2W相コイルW21、W22、W23のそれぞれの引出し線430が接続される。
【0061】
<相用バスバーユニットの構造について>
図4は、相用バスバーユニット24を軸方向一方側(
図1において、下方)から見た斜視図である。
図5は、相用バスバーユニット24を軸方向一方から見た平面図である。
図6は、相用バスバーユニット24の相用バスバーカバー242を取り外した状態を軸方向一方側から見た平面図である。
図4及び
図5は、熱溶着による相用バスバーホルダ241と相用バスバーカバー242との固定前の状態を示している。
図4における上方は
図1の軸方向一方側(下方)に対応し、
図4における下方は
図1の軸方向他方側(上方)に対応する。また、
図6のハッチングで示す領域R1~R13は、相用バスバー53の基部53aにおいて、相用バスバーカバー242の突出部242pが接触する領域を示している。
【0062】
相用バスバー53は板状の部材であり、中心軸Cに対して周方向に延びる基部53aと、基部53aから径方向外方に延びる複数の延設部53bと、各延設部53bの径方向外端部に設けられるコイル接続端子53c(端子)及び外部接続端子53d(端子)とを有する。外部接続端子53dは、コイル接続端子53cよりも軸方向一方側に位置する。本実施形態では、各相用バスバー53は3個の延設部53bを有し、各延設部53bは2個のコイル接続端子53c及び1個の外部接続端子53dを有する。すなわち、各相用バスバー53は2個のコイル接続端子53c及び1個の外部接続端子53dを有する。なお、本実施形態において、基部53aは周方向に延びているが、これに限定されず、基部53aは例えば径方向に交差する方向に延びていればよい。
【0063】
相用バスバーホルダ241において、中心軸C側から径方向外側に向かって、第1U相バスバー531、第1V相バスバー532、第1W相バスバー533の順に配置される。相用バスバーホルダ241において、中心軸C側から径方向外側に向かって、第2U相バスバー534、第2V相バスバー535、及び第2W相バスバー536の順に配置される。また、第1U相バスバー531と第2U相バスバー534とは周方向に隣接する。第1V相バスバー532と第2V相バスバー535とは周方向に隣接する。第1W相バスバー533と第2W相バスバー536とは周方向に隣接する。なお、相用バスバー53の配置はこれに限定されず、適宜変更することができる。
【0064】
相用バスバーホルダ241は、平面視において、略九角形の多角形状である。相用バスバー53の基部53aは略九角形(多角形)の辺に沿って延びるとともに略九角形の角部CR付近で径方向内側に屈曲する。延設部53bは角部CR以外に配置される。なお、相用バスバーホルダ241は、平面視において、他の多角形状(例えば六角形または八角形等)でもよく、多角形状以外の形状(例えば円形等)でもよい。本実施形態では相用バスバー53の基部53aが角部CR付近で径方向内側に屈曲するため、相用バスバーホルダ241を平面視において多角形状にすると、相用バスバー53の周方向の位置決めが容易になるため望ましい。なお、「多角形」には略多角形も含まれる。
【0065】
相用バスバーホルダ241には、径方向に隣接する相用バスバー53を互いに隔離する隔離壁241k(
図6~
図8参照)が設けられる。内周壁241nと隔壁241kとの間、径方向に隣接する隔壁241k間、及び隔壁241kと外周壁241gとの間に溝部241dが構成され、溝部241d内に相用バスバー53が収容される。隔壁241kによって、径方向に隣接する相用バスバー53間の短絡を防止することができる。また、隔壁241kの軸方向一方側の端部は、相用バスバー53の基部53aの軸方向一方側の端部よりも軸方向一方側に位置する。
【0066】
隔離壁241kの軸方向一方側の端部には軸方向に切り欠かれた第1切欠き部241aが設けられる。隔壁241kを跨ぐ延設部53bの一部は、第1切欠き部241a内に配置される。これにより、相用バスバーユニット24の軸方向の長さの増大を抑制することができる。
【0067】
また、相用バスバーホルダ241の外周壁241gの軸方向一方側の端部には軸方向に切り欠かれた第2切欠き部241bが設けられる。外周壁241gを跨ぐ延設部53bの一部は、第2切欠き部241b内に配置される。これにより、相用バスバーユニット24の軸方向の長さの増大をより抑制することができる。
【0068】
相用バスバーホルダ241は外周面から径方向外方に突出する脚部241tを複数有する。本実施形態では、脚部241tは9個設けられ、相用バスバーホルダ241の形状(略九角形)の辺毎に配置される。すなわち、複数の脚部241tは角部CR以外に配置される。なお、脚部241tの数は9個に限定されず、複数であればよい。
【0069】
ステータ22のインシュレータ42は、コイル43よりも径方向外方において軸方向一方側に突出するインシュレータ突出部421(
図1参照)を有する。複数の脚部241tはインシュレータ突出部421に固定される。脚部241tとインシュレータ突出部421との固定方法に特に限定はないが、例えば熱溶着方法を用いることができる。
【0070】
また、相用バスバーホルダ241は、外周部から軸方向一方側に突出する突起部241pを複数有する。本実施形態では、突起部241pは4個設けられる。なお、突起部241pの数は4個に限定されず、複数であればよい。
【0071】
図7は、
図5のA-A断面図である。
図8は、
図5における熱溶着後のA-A断面図を示す。
図9は、相用バスバーカバー242を裏側(相用バスバーホルダ241側)から見た斜視図である。
図10は、相用バスバーカバー242を裏側から見た平面図である。
図9における上方は
図1の軸方向他方側(上方)に対応し、
図9における下方は
図1の軸方向一方側(下方)に対応する。
【0072】
相用バスバーカバー242は、軸方向他方側に突出する複数の突出部242pを有する。突出部242pの平面形状は長方形であり、突出部242pの長手方向は周方向に略一致する。なお、「長方形」には略長方形も含まれる。本実施形態では、突出部242pは13個設けられる。
図6の領域R1~R13に示すように、各相用バスバー53に対して、複数の突出部242pが基部53aに接触するとともに少なくとも一の突出部242pが延設部53bの近傍の基部53aに接触する。
【0073】
ここで、13個の突出部242pをそれぞれ突出部P1~P13とすると、
図6の領域R1~R13はそれぞれ突出部P1~P13が接触する領域になる。本実施形態では、突出部P1、P2、P3、P5、P6、P8、P9、P10、P11、P13が延設部53bの近傍の基部53aに接触する。なお、「延設部53bの近傍」とは、例えば、突出部242pと延設部53bとの距離が、突出部242pの長手方向の長さと同一の長さ以内であることをいう。ここで、「同一の長さ」とは略同一の長さも含む。
【0074】
相用バスバーカバー242の外周部には軸方向に貫通する複数の貫通孔242hが設けられる。本実施形態では、4個の貫通孔242hが周方向に並んで配置される。なお、貫通孔242hの数は4個に限定されず、相用バスバーホルダ241の突起部241pと同じ数であってもよく、4個以上であってもよい。
【0075】
次に、相用バスバーホルダ241と相用バスバーカバー242との固定方法について説明する。まず、相用バスバーカバー242の貫通孔242hに相用バスバーホルダ241の突起部241pを挿通させる。次に、熱溶着装置(不図示)を用いて、突起部241pの先端部241s(軸方向一方側の端部)を加熱しながら軸方向他方側(
図7において、下方)へ押圧する。これにより、突起部241pの先端部241sが変形し、突起部241pの先端部241sの幅W1(
図8参照)は貫通孔242hの径W2(
図8参照)よりも大きくなる。また、先端部241sの幅は突起部241pの根元の幅よりも大きくなる。熱溶着装置により、突起部241pと相用バスバーカバー242とが熱溶着される。この時、先端部241sと相用バスバーホルダ241の軸方向他方側の端面とにより相用バスバーカバー242が挟まれる。これにより、相用バスバーカバー242は相用バスバーホルダ241に固定される。
【0076】
延設部53bの近傍の基部53aに接触する突出部242pは、突起部241p及び貫通孔242hの近傍に配置されることが好ましい。なお、「突起部241p及び貫通孔242hの近傍」とは、例えば、突出部242pと突起部241p及び貫通孔242hとの距離が、突出部242pの長手方向の長さと同一の長さ以内であることをいう。ここで、「同一の長さ」とは略同一の長さも含む。
【0077】
相用バスバー53の基部53aにおいて、角部CR近傍の部分は塑性変形により曲げ加工され、角部CR近傍以外の部分では曲げ加工されておらず略直線の部分になっている。このため、相用バスバーホルダ241における相用バスバー53の軸方向の位置精度は、塑性変形させている角部CR近傍の部分よりも、角部CR近傍以外の略直線の部分のほうが高くなる。そこで、延設部53bの近傍の基部53aに接触する突出部242pは、多角形の角部CR以外に配置されると好ましい。これにより、延設部53bの近傍の基部53aに接触する突出部242pは、基部53aに精度良く接触することができる。
【0078】
相用バスバーカバー242は、軸方向一方側に膨らむ収納部242s(
図4、
図9参照)を有する。径方向内側の基部53aから延設して径方向外側の基部53aに交差する延設部53bは、収納部242sに収納される。
【0079】
また、相用バスバーユニット24は、相用バスバー53の温度を検知する温度センサ90(
図5参照)を備える。相用バスバーカバー242は、相用バスバー53に面した貫通孔であるセンサ収納部242tを有する。温度センサ90はセンサ収納部242t内に配置される。なお、センサ収納部242tは、貫通孔に替えて、相用バスバー53に面した凹部であってもよい。
【0080】
<中性点バスバーユニットの構造について>
図11は、ステータユニット20を軸方向他方側から見た斜視図である。
図12は、中性点バスバーユニット23の中性点バスバー51(内側バスバーBU)を通って周方向に沿った断面図である。なお、
図11の下部は上部の円で囲った部分の拡大図を示す。
【0081】
各中性点バスバー51はそれぞれ3個の板状部511を有する。板状部511は、軸方向かつ周方向に拡がる平板状の部位である。各板状部511には、コイル43の引出し線430との接続箇所512が1箇所設けられる。平板状の板状部511に接続箇所512を設けることにより、湾曲した中性点バスバーに対して溶接を行う場合よりも溶接作業を容易に行うことができる。
【0082】
中性点バスバー51の平面形状(軸方向から見た形状)は、中心軸Cを中心とした正九角形の一部である。また、ステータコア41のティース412は9個である。中性点バスバー51を正九角形に沿って配置することにより、径方向の同一位置に配置される板状部511の長さを長くとることができる。このため、ティース412の個数がN個である場合に、中性点バスバー51を正N角形に沿って配置することにより、周方向の長さの長いN個の板状部511を効率良く形成することができる。したがって、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との溶接時の作業性をより向上させることができる。
【0083】
本実施形態では、内側バスバーBUとコイル43の引出し線430との接続箇所512は、外側バスバーBSの径方向外側に位置する。また、外側バスバーBSとコイル43の引出し線430との接続箇所512は、外側バスバーBSの径方向外側に位置する。このように、全ての接続箇所512を中性点バスバー51の径方向内側及び径方向外側のいずれか一方に配置することが好ましい。これにより、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との溶接時に、溶接治具の向きを変更することなく、全ての接続箇所512を溶接することができる。したがって、モータ1の生産性を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態の中性点バスバー51は、平板状の鋼板の2箇所を折り曲げることにより形成される。このため、中性点バスバー51にはスプリングバックにより平板状に戻ろうとする力が発生する可能性がある。スプリングバックが発生した場合、当該スプリングバックによる力により、中性点バスバー51は径方向外側へと向かうように変形しようとする。
【0085】
モータ1では、接続箇所512が中性点バスバー51の径方向外側に配置される。このため、中性点バスバー51にスプリングバックによるカが発生した場合、中性点バスバー51はコイル43の引出し線430に向かう方向に移動する。したがって、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430とが互いに押しつけ合うカが発生する。したがって、中性点バスバー51にスプリングバックによる力が発生した場合に、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との固定強度の低下を抑制することができる。
【0086】
なお、スプリングバックの問題は、本実施形態のように中性点バスバー51を複数箇所で折り曲げた場合だけでなく、中性点バスバー51全体を円弧状に湾曲させた場合であっても生じる虞がある。したがって、中性点バスバー51全体を円弧状に湾曲させた場合にも、接続箇所512は中性点バスバー51の径方向外側に配置されることが好ましい。
【0087】
中性点バスバーホルダ52は、中心軸Cに対して略垂直方向に拡がるベース部521と、ベース部521から軸方向他方側(
図11において、上方)に延びる保持部522とを有する。ベース部521は中心軸Cの周囲に環状に拡がり、平面視において略正九角形の多角形状である。
【0088】
保持部522は、第1内側支持壁522a、第2内側支持壁522b、第1外側支持壁522c、及び第2外側支持壁522dを有する。第1内側支持壁522aは、内側バスバーBUの外周面を支持する。第2内側支持壁522bは、内側バスバーBUの内周面を支持する。第1外側支持壁522cは、外側バスバーBSの内周面を支持する。第2外側支持壁522dは、外側バスバーBSの外周面を支持する。
【0089】
第1内側支持壁522a及び第2内側支持壁522bにより内側バスバーBUが挟まれて保持される。第1外側支持壁522c及び第2外側支持壁522dにより外側バスバーBSが挟まれて保持される。これにより、内側バスバーBU及び外側バスバーBSが中性点バスバーホルダ52に対して径方向に移動することが抑制される。
【0090】
第1内側支持壁522a及び第1外側支持壁522cの両方には複数の開口部528が設けられる。複数の開口部528は周方向に並んで配置され、コイル43の引出し線430が通される。また、開口部528は、軸方向から見て、周方向に隣接するティース412間に配置される。本実施形態では、開口部528は径方向の切り欠きにより構成される。開口部528によりコイル43との接続箇所512が形成される。なお、開口部528は、第1内側支持壁522a及び第1外側支持壁522cの少なくとも一方に設けられればよい。
【0091】
周方向に隣接する開口部528間には連結リブ529が設けられる。連結リブ529は径方向に延びて第1内側支持壁522aと第1外側支持壁522cとを連結する。複数の連結リブ529は、中心軸Cを中心とした放射状に配置される。連結リブ529は、第1内側支持壁522aの開口部528の周方向の端縁と、第1外側支持壁522cの開口部528の周方向の端縁とを連結する。
【0092】
中性点バスバー51の周方向の一部を被保持部61と称し、その他の一部を露出部62と称する。被保持部61は、径方向の両側面の少なくとも一部が中性点バスバーホルダ52により覆われる部位である。すなわち、被保持部61の径方向の両側面の少なくとも一部が保持部522により覆われる。また、露出部62は、径方向の両側面が中性点バスバーホルダ52から露出する部位である。被保持部61と露出部62とは周方向に隣接する。
【0093】
中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との接続箇所512は、露出部62に配置される。これにより、中性点バスバー51が軸方向または径方向に突出する端子を有していなくても、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430とを接続することができる。したがって、モータ1の製造時の作業効率を低下させることなく、モータ1を小型化することができる。
【0094】
また、中性点バスバー51の周方向の一部を接触部71と称し、その他の一部を非接触部72と称する。接触部71は、軸方向一方側の端面が中性点バスバーホルダ52のベース部521の軸方向他方側の端面と接触する部位である。非接触部72は、軸方向一方側の端面が空間SP(
図12参照)に面する部位である。なお、非接触部72の少なくとも一部が露出部62と重なる。接触部71及び非接触部72は周方向に隣接する。
【0095】
本実施形態のベース部521の軸方向他方側の表面は軸方向一方側に凹む凹部523を有する。凹部523の軸方向一方側の端面と、中性点バスバー51の軸方向一方側の端面とは、軸方向に間隔をあけて対向する。すなわち、凹部523の軸方向一方側の端面と、中性点バスバー51の軸方向一方側の端面との間には、空間SPが存在する。したがって、中性点バスバー51において、凹部523と軸方向に重なる部分は非接触部72となる。
【0096】
中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との接続箇所512は、非接触部72に配置される。これにより、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430とを中性点バスバー51の軸方向一方側の端部まで溶接することができる。すなわち、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との溶接面積を大きくすることができる。したがって、溶接条件が安定するとともに、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との固定強度を向上させることができる。
【0097】
本実施形態では、被保持部61の位置と、接触部71の位置とが一致する。また、露出部62の位置と非接触部72の位置とが一致する。
【0098】
中性点バスバー51と接続されるコイル43の引出し線430の軸方向他方側の端部は、中性点バスバー51の軸方向他方側の端部よりも軸方向他方側に配置される。これにより、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430とを中性点バスバー51の軸方向他方側の端部まで溶接することができる。すなわち、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との溶接面積をより大きくすることができる。したがって、溶接条件が安定するとともに、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との固定強度をより向上させることができる。
【0099】
図11に示すように、ベース部521は、第1コイル線案内部81及び第2コイル線案内部82を有する。第1コイル線案内部81は、ベース部521の径方向外端部から外側バスバーBSへ向かって切り欠かれる切欠きである。各外側バスバーBSと接続するコイル43の引出し線430はそれぞれ第1コイル線案内部81の内部に配置される。
【0100】
ベース部521が第1コイル線案内部81を有するため、ステータユニット20の組み立て時に、コイル43の引出し線430を外側バスバーBSの側面付近へと配置しやすい。これにより、モータ1の製造効率を向上させることができる。また、ベース部521が第1コイル線案内部81を有するため、外側バスバーBSとコイル43の引出し線430との溶接時に、コイル43の引出し線430の位置ずれを抑制することができる。したがって、溶接条件が安定するとともに、外側バスバーBSとコイル43の引出し線430との固定強度を向上させることができる。
【0101】
また、第2コイル線案内部82は、軸方向に貫通する貫通孔である。第2コイル線案内部82は、軸方向から見て、内側バスバーBUの径方向外端と重なる。ベース部521が第2コイル線案内部82を有するため、ステータユニット20の組み立て時に、コイル43の引出し線430を径方向内側の内側バスバーBUの側面付近へと配置しやすい。したがって、モータ1の製造効率を向上させることができる。
【0102】
また、中性点バスバーホルダ52は、第2外側支持壁522dの外周面から径方向外方に突出する取付部52tを複数有する。取付部52tはインシュレータ42に設けられたインシュレータ凹部422に嵌合し、インシュレータ42に熱溶着される。これにより、中性点バスバーユニット23はステータ22に固定される。
【0103】
取付部52tには軸方向他方側に突出するホルダ突出部524が設けられる。ホルダ突出部524の軸方向他方側の端部は、中性点バスバー51およびコイル43の引出し線430の軸方向他方側の端部より軸方向他方側に配置される。これにより、ステータユニット20の軸方向他方側を下側に向けて作業台等の上に載置した場合であっても、コイル43の引出し線430が作業台等に接触しない。したがって、コイル43を構成する導線が断線したり、接続箇所512において中性点バスバー51とコイル43の引出し線430とが剥離したりすることが抑制される。
【0104】
また、
図1に示すように、中性点バスバーユニット23はコイル43の軸方向他方側に配置され、相用バスバーユニット24はコイル43の軸方向一方側に配置される。すなわち、6個の中性点バスバー51は全てコイル43の軸方向他方側に配置され、6個の相用バスバー53は全てコイル43の軸方向一方側に配置される。中性点バスバー51と相用バスバー53とがステータ22に対して互いに軸方向反対側に配置されるため、中性点バスバー51のレイアウト可能な領域を広く確保することができる。これにより、外側バスバーBSとコイル43の引出し線430との接続箇所512と、内側バスバーBUとコイル43の引出し線430との接続箇所512とを間隔をあけて配置することができる。したがって、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との溶接作業の効率が向上する。
【0105】
中性点バスバー51とコイル43の引出し線430とを溶接する際には、溶接熱により中性点バスバー51の温度が上昇する。本実施形態では、1個の中性点バスバー51に接続されるコイル43の引出し線430の数を最小の3個としている。これにより、1個の中性点バスバー51のうち、最後に溶接を行う接続箇所512においても、適切な温度で溶接作業を行うことができる。すなわち、全ての溶接箇所において、安定した条件で溶接を行うことができる。また、溶接条件の安定のために溶接作業を中断して中性点バスバー51の温度低下を待つ必要が無いため、溶接作業のタクトタイムを短くすることができる。
【0106】
これにより、ステータユニット20の製造時には、径方向の同一の位置に配置される中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との接続箇所512に対して、周方向に順に溶接作業を行うことができる。その結果、溶接作業の作業効率をさらに向上させることができる。
【0107】
以上のように、径方向内側に配置されるコイル43と径方向内側に配置される内側バスバーBUとが接続され、かつ、径方向外側に配置されるコイル43と径方向外側に配置される外側バスバーBSとが接続される。冗長を持たせるため複数系統のコイル群431、432を有するモータ1においては、コイル43の数が多い。しかしながら、当該構成により、コイル43の数が多いモータ1であっても、コイル43から引き出される導線の配置の複雑化を抑制することができる。なお、「冗長」したモータの構成とは、モータ中の一部の機能に欠陥が生じた場合であっても、モータの回転機能を継続できる構成をいう。
【0108】
本実施形態では、
図2に示すように、第1コイル群431に含まれるコイル43のみが周囲に配置されるティース412と、第1コイル群431に含まれるコイル43と第2コイル群432に含まれるコイル43とが周囲に配置されるティース412と、第2コイル群432に含まれるコイル43のみが周囲に配置されるティース412とが存在する。すなわち、第1コイル群431の配置エリアと、第2コイル群432の配置エリアとが分かれている。これにより、第1制御系統11及び第2制御系統12のいずれか一方が制御不能となった場合に、制御可能な他方の制御系統のコイル43が、制御不能な制御系統の影響を受けにくい。
【0109】
また、相用バスバーユニット24の温度センサ90の検知温度が所定の上限温度を超えた場合に、例えば第1制御系統11及び第2制御系統12の一方から他方に切り替えてもよい。これにより、第1制御系統11及び第2制御系統12の一方が制御不能になる前に他方に切り替えることができ、一方の制御不能状態を未然に防止することができる。
【0110】
また、内側バスバーBUと外側バスバーBSとを径方向に重なるように配置することにより、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との接続箇所512とを周方向だけでなく、径方向にも分散することができる。複数系統のコイル群431、432を有するモータ1において、冗長を持たせるためにコイル43の数が多い。すなわち、中性点バスバー51とコイル43の引出し線430との接続箇所512の数が多い。しかしながら、当該構成により、接続箇所512同士の間隔を広くとることができる。
【0111】
<中性点バスバーユニットの変形例>
図13及び
図14は、それぞれ本実施形態の変形例に係る中性点バスバーユニット23を示す斜視図及び平面図である。中性点バスバーホルダ52は平面視において円形であってもよい。なお、「円形」とは略円形を含む。また、中性点バスバーホルダ52からホルダ突出部524を省いてもよい。また、第2コイル線案内部82を第1コイル線案内部81と同様に径方向に切り欠かれた切欠きにより構成してもよい。
【0112】
また、内側バスバーBUは、軸方向から見て、ティース412のアンブレラ部412aに重なる位置に配置され、外側バスバーBSは、軸方向から見て、コイル43よりも径方向外方に配置されてもよい。これにより、内側バスバーBU及び外側バスバーBSとコイル43とが軸方向に重ならず、モータ1の軸方向の長さの増大を抑制することができる。
【0113】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態によると、相用バスバーユニット24(バスバーユニット)は、中心軸Cを中心に回転するモータ1の複数の相用バスバー53(バスバー)を支持する絶縁体の相用バスバーホルダ241(バスバーホルダ)と、各相用バスバー53の少なくとも軸方向一方側を覆って相用バスバーホルダ241に固定される絶縁体の相用バスバーカバー242(バスバーカバー)とを備える。各相用バスバー53は、基部53aと、基部53aから径方向外方に延びる複数の延設部53bと、各延設部53bの径方向外端部に設けられるコイル接続端子53c(端子)及び外部接続端子53d(端子)と、を有する。相用バスバーカバー242が、軸方向他方側に突出する複数の突出部242pを有し、各相用バスバー53に対して、複数の突出部242pが接触するとともに少なくとも一の突出部242pが延設部53bの近傍の基部53aに接触する。
【0114】
これにより、延設部53bの近傍の基部53aを突出部242pと相用バスバーホルダ241とで挟み込むことができるため、コイル接続端子53c及び外部接続端子53dのガタツキを防止することができる。したがって、コイル接続端子53cとコイル43の引出し線430との電気的接続及び外部接続端子53dと外部配線との電気的接続を安定させることができ、相用バスバーユニット24の信頼性を向上させることができる。
【0115】
複数の相用バスバー53の基部53aは径方向に並んで配置され、相用バスバーホルダ241には、径方向に隣接する相用バスバー53を互いに隔離する隔壁241kが設けられる。隔壁241kの軸方向一方側の端部には軸方向に切り欠かれた第1切欠き部241aが設けられる。隔壁241kを跨ぐ延設部53bの一部は、第1切欠き部241a内に配置される。これにより、径方向に隣接する相用バスバー53間の短絡を隔壁241gにより防止しながら、相用バスバーユニット24の軸方向の長さの増大を抑制することができる。
【0116】
相用バスバーホルダ241の外周壁241gの軸方向一方側の端部には軸方向に切り欠かれた第2切欠き部241bが設けられる。外周壁241gを跨ぐ延設部53bの一部は、第2切欠き部241b内に配置される。これにより、相用バスバーユニット24の軸方向の長さの増大をより抑制することができる。
【0117】
隔壁241kの軸方向一方側の端部は基部53aの軸方向一方側の端部よりも軸方向一方側に位置する。これにより、径方向に隣接する相用バスバー53間の沿面距離を長くすることができる。したがって、相用バスバーユニット24の径方向の長さの増大を抑制しながら、径方向に隣接する相用バスバー53間の短絡を容易に防止することができる。
【0118】
相用バスバーカバー242が、軸方向一方側に膨らむ収納部242sを有する。径方向内側の基部53aから延設して径方向外側の基部53aに交差する延設部53bが、収納部242sに収納される。これにより、径方向外側の相用バスバー53の基部53aに交差する延設部53bと、相用バスバーカバー242との干渉を防止することができる。
【0119】
相用バスバーユニット24は、相用バスバー53の温度を検知する温度センサ90をさらに備える。相用バスバーカバー242は、相用バスバー53に面した凹部または貫通孔であるセンサ収納部242tを有し、温度センサ90はセンサ収納部242t内に配置される。これにより、温度センサ90によって相用バスバー53の温度を容易に検知することができ、例えば温度センサ90の検知結果に基づいてモータ1を制御することができる。また、温度センサ90を相用バスバーユニット24に簡単に取り付けることができる。
【0120】
相用バスバーカバー242及び相用バスバーホルダ241は樹脂成形品である。相用バスバーホルダ241は根元よりも先端部241sの幅が大きい突起部241pを有し、相用バスバーカバー242は突起部241pが挿通される貫通孔242hを有する。突起部241pの先端部241sの幅W1が貫通孔242hの径W2よりも大きい。これにより、相用バスバーカバー242を相用バスバーホルダ241に容易に固定することができる。なお、相用バスバーホルダ241が貫通孔242hを有し、相用バスバーカバー242が突起部241pを有してもよい。すなわち、相用バスバーカバー242及び相用バスバーホルダ241のいずれか一方は突起部241pを有し、相用バスバーカバー242及び相用バスバーホルダ241の他方が貫通孔242hを有すればよい。
【0121】
延設部53bの近傍の基部53aに接触する突出部242pは、突起部241p及び貫通孔242hの近傍に配置されることが好ましい。これにより、貫通孔242hに挿通された突起部241pと相用バスバーカバー242との固定の際に、延設部53b近傍の基部53aに接触する突出部242pと基部53aとの寸法精度が安定する。したがって、突出部242pが延設部53b近傍の基部53aにより安定して接触することができる。
【0122】
相用バスバーホルダ241は、平面視において、多角形状であり、突起部241pまたは貫通孔242hは多角形の角部CRに配置され、延設部53bは角部CR以外に配置されることが好ましい。これにより、突起部241p及び貫通孔242hにおいて、例えば熱溶着を行って相用バスバーカバー242と相用バスバーホルダ241とを固定する際に、相用バスバーホルダ241において延設部53bが配置される箇所の熱変形等を低減することができる。したがって、相用バスバーホルダ241における延設部53bの位置精度を向上させ、コイル接続端子53cと引出し線430との接続及び外部接続端子53dと外部配線との接続をより安定させることができる。
【0123】
相用バスバーホルダ241は、平面視において、多角形状である。これにより、相用バスバー53の周方向の位置決めが容易になる。
【0124】
相用バスバー53の基部53aにおいて、角部CR近傍の部分は塑性変形により曲げ加工され、角部CR近傍以外の部分では曲げ加工されておらず略直線の部分になっている。このため、相用バスバーホルダ241における相用バスバー53の軸方向の位置精度は、塑性変形させている角部CR近傍の部分よりも、角部CR近傍以外の略直線の部分のほうが高くなる。そこで、延設部53bの近傍の基部53aに接触する突出部242pは、多角形の角部CR以外に配置されると好ましい。これにより、延設部53bの近傍の基部53aに接触する突出部242pは、基部53aに精度良く接触することができる。
【0125】
モータ1は、相用バスバーユニット24と、ステータ22と、ステータ22と径方向に対向するマグネット322を有して中心軸Cを中心に回転するロータ32と、を備える。これにより、信頼性を向上できる相用バスバーユニット24を備えたモータ1を容易に実現することができる。
【0126】
相用バスバーホルダ241は外周面から径方向外方に突出する脚部241tを複数有し、複数の脚部241tはステータ22上に固定される。これにより、相用バスバーユニット24をステータ22に容易に取り付けることができる。
【0127】
また、中性点バスバーユニット23は、モータ1の中心軸Cに対して周方向に延びてステータ22のコイル43に接続される内側バスバーBU及び外側バスバーBSを樹脂成形品の中性点バスバーホルダ52により保持し、外側バスバーBSが内側バスバーBUよりも径方向外側に配置される。中性点バスバーホルダ52は、内側バスバーBUの外周面を支持する第1内側支持壁522aと、外側バスバーBSの内周面を支持する第1外側支持壁522cとを有する。また、中性点バスバーホルダ52は、第1内側支持壁522a及び第1外側支持壁522cの少なくとも一方に周方向に並んで開口してコイル43の引出し線430が通される複数の開口部528と、周方向に隣接する開口部528間で径方向に延びて第1内側支持壁522aと第1外側支持壁522cとを連結する連結リブ529と、を有する。
【0128】
連結リブ529により、軸方向の長さを増大させることなく、中性点バスバーホルダ52の剛性を向上させることができる。また、中性点バスバーホルダ52の成形時に、連結リブ529の樹脂を介して、第1内側支持壁522aの樹脂と第1外側支持壁522cの樹脂とがつながる。このため、第1内側支持壁522aの外周側及び第1外側支持壁522cの内周側への樹脂の回り込みを防止しながら樹脂を金型に充填することができ、中性点バスバーホルダ52の成形時の湯流れを向上させることができる。また、連結リブ529の樹脂を介して、金型への充填後の第1内側支持壁522aの樹脂と第1外側支持壁522cの樹脂がほぼ同程度に冷却されるため、ヒケ等の発生を抑制することができる。したがって、中性点バスバーホルダ52の変形を低減し、中性点バスバー51の位置精度を向上させることができる。その結果、コイル43の引出し線430と中性点バスバー51との接続精度を向上させることができ、中性点バスバーユニット23の信頼性を向上させることができる。
【0129】
中性点バスバーホルダ52が、内側バスバーBUの内周面を支持する第2内側支持壁522bと、外側バスバーBSの外周面を支持する第2外側支持壁522dと、を有する。第1内側支持壁522a及び第2内側支持壁522bにより内側バスバーBUが挟まれて保持され、第1外側支持壁522c及び第2外側支持壁522dにより外側バスバーBSが挟まれて保持される。これにより、内側バスバーBU及び外側バスバーBSを容易に保持することができる。
【0130】
開口部528は第1内側支持壁522a及び第1外側支持壁522cに設けられる。これにより、コイル43の引出し線430と内側バスバーBU及び外側バスバーBSとの溶接時の作業性を向上させることができる。
【0131】
連結リブ529は、第1内側支持壁522aの開口部528の周方向の端縁と、第1外側支持壁522cの開口部528の周方向の端縁とを連結する。これにより、開口部528を設けても、第1内側支持壁522a及び第1外側支持壁522cを容易に補強することができる。
【0132】
開口部528が径方向の切り欠きにより構成される。これにより、開口部528を容易に実現することができる。
【0133】
複数の連結リブ529は、中心軸Cを中心とした放射状に配置される。これにより、中性点バスバーホルダ52の剛性をより向上させることができる。
【0134】
モータ1は、中性点バスバーユニット23と、ステータ22と、ステータ22の径方向内側に対向配置されるマグネット322を有して中心軸Cを中心に回転するロータ32と、を備える。ステータ22は、環状のコアバック411と、コアバック411の内周面から径方向内方に延びるとともに周方向に並んで配置される複数のティース412と、各ティース412に巻き回されるコイル43とを有する。これにより、中性点バスバーホルダ52の剛性を向上して中性点バスバー51の位置精度を向上できるモータ1を容易に実現することができる。
【0135】
開口部528は、軸方向から見て、周方向に隣接するティース412間に配置される。これにより、隣接するティース412間のスペースを有効利用して、モータ1の軸方向の長さの増大を容易に抑制することができる。
【0136】
複数のコイル43がスター結線されることにより複数の中性点NPが構成され、中性点NPは内側バスバーBU及び外側バスバーBSにより構成される。これにより、中性点NPを径方向内側及び径方向外側に有する中性点バスバーユニット23を備えたモータ1を容易に実現することができる。
【0137】
各ティース412は径方向内端において周方向に突出するアンブレラ部412aを有する。内側バスバーBUは、軸方向から見て、アンブレラ部412aに重なる位置に配置され、外側バスバーBSは、軸方向から見て、コイル43よりも径方向外方に配置されることが好ましい。これにより、モータ1の軸方向長さの増大をより抑えることができる。
【0138】
複数のコイル43は、第1制御系統11に属する複数のコイル43を有する第1コイル群431と、第1制御系統11から独立した第2制御系統12に属する複数のコイル43を有する第2コイル群432とを含む。これにより、第1制御系統11及び第2制御系統12の一方の一部に失陥が生じた場合であっても、他方を用いてモータ1の回転を継続することができる。
【0139】
ティース412は9個であると好ましい。これにより、中性点バスバーユニット23を備えた9スロットのモータ1を容易に実現することができる。
【0140】
なお、本実施形態では、ティース412の数が9個であり、コイル43の数が18個であった。すなわち、スロット数が9であり、制御系統数が2であった。しかしながら、本発明はこれに限られない。スロット数は9に限らず、例えば6または12であってもよい。また、制御系統数は3以上であってもよい。
【0141】
また、本実施形態では、1個のティース412の周囲に2個のコイル43が配置されている。しかしながら、本発明はこれに限られない。1個のティースの周囲に1個のコイルが配置されるものであってもよく、1個のティースの周囲に3個以上のコイルが配置されるものであってもよい。また、本実施形態では、1個のティース412に2個のコイル43が径方向に並んで配置されたが、本発明はこれに限られない。1個のティース412の同じ径方向位置に重なるように2個のコイル43が配置されてもよい。また、コイル43をバイファイラ巻にしてもよい。
【0142】
また、本実施形態では、第1制御系統11と第2制御系統12とがそれぞれ別個に制御されたが、本発明はこの限りではない。第1制御系統11と第2制御系統12とが単一の制御部により連動して制御されてもよい。ただし、その場合であっても、モータ1において、第1制御系統11に属するコイル、中性点バスバー及び相用バスバーと、第2制御系統12に属するコイル、中性点バスバー及び相用バスバーとは、電気的に接続されない。
【0143】
また、本実施形態のモータ1はインナロータ型のモータであったが、アウターロータ型のモータに対して本発明を適用してもよい。
【0144】
また、各部材の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、相用バスバーユニット(バスバーユニット)及びそれを備えたモータに利用できる。
【符号の説明】
【0146】
1・・・モータ、11・・・第1制御系統、12・・・第2制御系統、2・・・静止部、20・・・ステータユニット、21・・・ハウジング、211・・・筒部、212・・・第1蓋部、213・・・第2蓋部、214・・・第1ベアリング収容部、215・・・第2ベアリング収容部、22・・・ステータ、23・・・中性点バスバーユニット、24・・・相用バスバーユニット(バスバーユニット)、241・・・相用バスバーホルダ(バスバーホルダ)、241a・・・第1切欠き部、241b・・・第2切欠き部、241d・・・溝部、241g・・・外周壁、241k・・・隔壁、241n・・・内周壁、241p・・・突起部、241s・・・先端部、241t・・・脚部、242・・・相用バスバーカバー(バスバーカバー)、242h・・・貫通孔、242p・・・突出部、242s・・・収納部、242t・・・センサ収納部、25・・・第1ベアリング、26・・・第2ベアリング、3・・・回転部、31・・・シャフト、32・・・ロータ、320・・・挿入孔、321・・・ロータコア、322・・・マグネット、41・・・ステータコア、411・・・コアバック、412・・・ティース、412a・・・アンブレラ部、42・・・インシュレータ、421・・・インシュレータ突出部、422・・・インシュレータ凹部、43・・・コイル、430・・・引出し線、431・・・第1コイル群、432・・・第2コイル群、51・・・中性点バスバー、511・・・板状部、512・・・接続箇所、52・・・中性点バスバーホルダ、52t・・・取付部、521・・・ベース部、522・・・保持部、522a・・・第1内側支持壁、522b・・・第2内側支持壁、522c・・・第1外側支持壁、522d・・・第2外側支持壁、523・・・凹部、524・・・ホルダ突出部、528・・・開口部、529・・・連結リブ、53・・・相用バスバー(バスバー)、53a・・・基部、53b・・・延設部、53c・・・コイル接続端子(端子)、53d・・・外部接続端子(端子)、531・・・第1U相バスバー、532・・・第1V相バスバー、533・・・第1W相バスバー、534・・・第2U相バスバー、535・・・第2V相バスバー、536・・・第2W相バスバー、55・・・接続ピン、61・・・被保持部、62・・・露出部、71・・・接触部、72・・・非接触部、81・・・第1コイル線案内部、82・・・第2コイル線案内部、90・・・温度センサ、BS、B11、B13、B22・・・外側バスバー、BU、B12、B21、B23・・・内側バスバー、C・・・中心軸、CR・・・角部、NP・・・中性点、SP・・・空間