(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】医療用コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20220216BHJP
A61M 39/26 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A61M39/10 120
A61M39/26
(21)【出願番号】P 2020175808
(22)【出願日】2020-10-20
(62)【分割の表示】P 2016044594の分割
【原出願日】2016-03-08
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-035140(JP,A)
【文献】特表2006-512166(JP,A)
【文献】国際公開第2008/062742(WO,A1)
【文献】特開2007-195933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
A61M 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に管体が挿入される開口部を有するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体内に設けられ、流体が流れる流体通路となる内筒部とを備え、
前記コネクタ本体の内壁は、前記開口部から挿入される前記管体の外壁と嵌合可能であり、
前記コネクタ本体の基端側は、供給側下流に位置し且つ閉塞可能な輸液チューブと接続可能であり、
前記内筒部は、伸張状態と前記伸張状態よりも縮んだ圧縮状態とを有し、前記管体の前記開口部への挿入によって、前記圧縮状態となり、
前記輸液チューブを閉塞した状態で前記管体を抜去することにより前記内筒部内の液面が前記内筒部内に留まるように前記圧縮状態から前記伸張状態に復帰する、コネクタ。
【請求項2】
前記内筒部の先端は、前記管体の端部と係合する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記内筒部の先端は、前記管体の内腔に挿入される、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記内筒部は、前記管体の端部を内部に挿入可能である、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記内筒部は、基端部と、先端部と、前記基端部と前記先端部との間に設けられ前記コネクタ本体の軸方向に弾性変形可能な変形部とを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記先端部は、前記変形部よりも変形しにくい、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記変形部は、伸縮可能な蛇腹部材である、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記コネクタ本体は、前記開口部から挿入される前記管体の外壁と嵌合可能な第1の部分と、前記変形部が収容される第2の部分とを有し、前記第2の部分の内径は前記第1の部分の内径よりも大きい、請求項5又は6に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コネクタ本体は、前記第2の部分よりも基端側に設けられた第3の部分を有し、
前記第3の部分は、前記第2の部分よりも内径が大きく、前記第2の部分と境界に段差部を有し、
前記基端部は、前記変形部よりも外径が大きく、
前記基端部の先端側の端面は、前記段差部と当接している、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記先端部の軸方向の長さは、前記第1の部分の軸方向の長さよりも長い、請求項8又は9に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記内筒部の先端は、前記開口部から突出している、請求項1~10のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項12】
先端側に管体が挿入される開口部を有するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体内に設けられ、流体が流れる流体通路となる内筒部とを備え、
前記コネクタ本体の内壁は、前記開口部から挿入される前記管体の外壁と嵌合可能であり、
前記コネクタ本体の基端側は、供給側下流に位置し且つ閉塞可能な輸液チューブと接続可能であり、
前記内筒部の先端は、前記管体が前記コネクタ本体から抜去されている場合よりも、前記管体が前記コネクタ本体に挿入されている場合の方が基端側に位置し、
前記輸液チューブを閉塞した状態で前記管体を前記開口部から抜去した際に前記内筒部内の液面が前記内筒部内に留まるように先端側の位置に復帰する、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医療用コネクタに関し、特に輸液用回路等に用いることができる医療用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器においては、機器とチューブ、チューブとシリンジ、及びチューブ同士など種々の接続部が存在する。これらの接続部には、コネクタが用いられている。経口によらずに患者に栄養及び薬剤を投与する経腸栄養法においても、患者に挿入されたカテーテル等と、経腸栄養剤等の液状物の供給容器とはコネクタを介して接続されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
近年、医療機器増加により、医療機器の誤接続が大きな問題となっている。このため、医療機器の誤接続を防止するために、新しいコネクタの規格が定められつつある。具体的には、医療機器を6つのカテゴリーに分け、異なるカテゴリーの医療機器を互いに接続できないコネクタとすることが求められている。例えば、栄養に関する分野においては、供給側下流端にコネクタを設け、患者側上流端をコネクタに挿入される管体とする規格となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、管体が挿入されるコネクタは、管体よりも径が大きく、開口側に向かって拡がるようになっているため、管体と比べて液だれが生じやすい。特に、供給側下流端のコネクタは取り外された後、下向きに保持されることが多く、コネクタからの液だれは大きな問題となる。経腸栄養の回路は、長期に使用されることが多く、高栄養の輸液が液だれすると、雑菌が繁殖し感染症の原因となるおそれがある。
【0006】
そこで、新しい規格を満たすと共に、これらの問題の発生を抑えることができるコネクタの開発が求められている。
【0007】
本開示の課題は、管体とコネクタとの接続を外した際に液だれが生じにくいコネクタを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のコネクタの第1の態様は、一方の端部に管体が挿入される開口部を有するコネクタ本体と、コネクタ本体内に設けられ、流体が流れる流体通路となる内筒部とを備え、コネクタ本体の内壁は、開口部から挿入される管体の外壁と嵌合可能であり、コネクタ本体の他方の端部は、輸液チューブと接続可能であり、内筒部は、管体の開口部への挿入によって、軸方向に可逆的に圧縮される。
【0009】
第1の態様のコネクタは、管体が引き抜かれた際に、可逆的に圧縮されていた内筒部が再び伸張する。このため、管体とコネクタとの接続を外した際に、コネクタからの液だれを抑えることができる。
【0010】
コネクタの第1の態様において、内筒部の先端は、管体の端部と係合することができる。この場合に、内筒部の先端は、管体の内腔に挿入されるようにしたり、管体の端部を内部に挿入可能にしたりすることができる。このような構成とすることにより、管体とコネクタの接続時において、内筒部の先端が管体の端部と係合していない場合よりも内筒部の先端部と管体の端部から液体が漏れ出しにくくすることができる。
【0011】
コネクタの第1の態様において、内筒部は、基端部と、先端部と、基端部と先端部との間に設けられ、コネクタの軸方向に弾性変形可能な変形部とを有する構成とすることができる。この場合において、変形部材は、伸縮可能な蛇腹状部材とすることができる。このような構成とすることにより、内筒部を容易に伸縮させ、コネクタからの液だれを抑えることができる。
【0012】
コネクタの第1の態様において、先端部は、変形部よりも変形しにくいように構成することができる。このような構成とすることにより、変形部よりも硬い部材であるため、管体が押し込まれても変形しにくく、内筒部の先端部と管体の端部とを接続しやすくすることができる。
【0013】
コネクタの第1の態様において、コネクタ本体は、開口部から挿入される管体の外壁と嵌合可能な第1の部分と、内筒部の変形部が収容される第2の部分とを有し、第2の部分の内径は第1の部分の内径より大きくてもよい。このような構成とすることにより、変形部をスムーズに変形させることができる。
【0014】
この場合において、コネクタ本体は、第2部の分よりも基端側に設けられた第3の部分を有し、第3の部分は、第2部分よりも内径が大きく、第2の部分との境界に段差部を有し、内筒部は、変形部よりも基端側に設けられ、変形部よりも外径が大きい基端部を有し、基端部の先端側の端面は、段差部と当接しているようにすることができる。このような構成とすることにより、内筒部の先端方向への移動が容易に規制できる。
【0015】
さらに、先端部の軸方向の長さが、第1の部分の軸方向の長さよりも長い構成とすることができる。このような構成とすることにより、先端部を管体を挿入する際のガイドとして機能させることができる。
【0016】
コネクタの第1の態様において、内筒部の先端は開口部から突出している構成とすることができる。このような構成とすることにより、内筒部の先端を管体を挿入する際のガイドとして機能させることができる。
【0017】
本開示のコネクタの第2の態様は、一方の端部に管体が挿入される開口部を有するコネクタ本体と、コネクタ本体内に設けられ、流体が流れる流体通路となる内筒部とを備え、コネクタ本体の内壁は、開口部から挿入される管体の外壁と嵌合可能であり、コネクタ本体の他方の端部は、輸液チューブと接続可能であり、内筒部の先端は管体がコネクタ本体から抜去されている場合よりも、管体がコネクタ本体に挿入されている場合の方が基端側に位置する。
【発明の効果】
【0018】
本開示の、コネクタによれば、管体とコネクタとの接続を外した際に液だれを生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係るコネクタを示す断面図である。
【
図3】チューブをクランプした場合において内筒部が伸張状態に戻った状態を示す断面図である。
【
図4】一実施形態に係る内筒部を示す断面図である。
【
図5】一実施形態に係る内筒部を先端側の端面から見た平面図である。
【
図6】一実施形態に係る内筒部を示す斜視図である。
【
図10】管体が挿入された状態を示す断面図である。
【
図11】チューブをクランプした場合において内筒部が伸張状態に戻った状態を示す断面図である。
【
図13】変形例に係る内筒部を先端側の端面から見た平面図である。
【
図17】変形例に係るコネクタを示す断面図である。
【
図18】管体が挿入された状態を示す断面図である。
【
図19】チューブをクランプした場合において内筒部が伸張状態に戻った状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は経腸栄養コネクタに関して、特に国際標準規格(ISO80369-3)を満たす経腸栄養コネクタとして好ましい態様を記載している。
図1に示すように、本実施形態のコネクタ101は医療用のコネクタであり、コネクタ本体110と、コネクタ本体110内に設けられた内筒部120とを備えている。コネクタ本体110は、一方の端部に設けられ管体が挿入される開口部113を有しており、反対側の端部にはチューブ130が接続されている。開口部113付近においてコネクタ本体110の内壁114は、開口部113から挿入される管体の外壁と当接し、液密に嵌合する面となっている。内筒部120は、輸液等の流体が流れる流体通路となり、管体の開口部113への挿入によって、軸方向に可逆的に圧縮される。
【0021】
図2は、管体201がコネクタ101に挿入された状態を示している。管体201は、コネクタ本体110の開口部113に挿入される挿入筒部210と、挿入筒部210の周りに設けられ、コネクタ本体110の外面に設けられたねじ山116と係合するロックナットである外筒部220とを有している。
図2において、管体201の外筒部220がねじ山116と係合している構成を示している。
【0022】
挿入筒部210の外壁212は、開口部113付近においてコネクタ本体110の内壁114と嵌合するテーパ面となっており、挿入筒部210の外壁212と開口部113付近におけるコネクタ本体110の内壁114とは液密に嵌合している。挿入筒部210の内腔と内筒部120の内腔とが連通し、内部を液が通過する。
【0023】
図2に示すように、管体201がコネクタ101の開口部113に挿入されると、内筒部120の端部が管体201の挿入筒部210の端部と当接し、内筒部120は可逆的に圧縮され、コネクタ本体110内で縮んだ圧縮状態となる。これにより、内筒部120の先端は、管体201をコネクタ本体110から抜去している場合よりも管体201をコネクタ本体110に挿入している場合の方が基端側に位置する。
【0024】
図2には、液を流した後、上流側のチューブ130を閉塞した状態におけるコネクタ101内における液面150を説明のために示している。チューブを閉塞することで、上流から液体が流れ込まなくなり、コネクタ101内における液面150は下流側に移動しにくくなる。チューブ130の閉塞は手や鉗子で押さえることで実現してもよいが、クランプを設けることが好ましい。この状態で、管体201をコネクタ101から取り外すと、
図3に示すように内筒部120が再び伸張する。コネクタが下向きに保持された場合においても、伸張した内筒部120内に液面150が存在するため、液面が内筒部に対して相対的に引っ込むため、液だれの発生を抑えることができる。
【0025】
図4~
図6は、内筒部120を拡大して示している。
図4~
図6に示すように、内筒部120は、基端側から順に基端部121、変形部122及び先端部123を有している。基端部121は、他の部分と比べて肉厚となっており、外周面がコネクタ本体110の基端部の内周面と嵌合するように設けられている。変形部122は、開口部113から管体201が挿入された際に伸縮し、管体201が引き抜かれた際に伸張するように設けられている。本実施形態において、変形部122は、蛇腹状部材により形成されている。先端部123は、開口部113から挿入される管体201の挿入筒部210の端部と係合可能に設けられている。使用時に内筒部の先端と管体の端部から液漏れする現象は、コネクタ本体の内周面と内筒部の外周面との間の空気と、流路を流れる液体とが置換されることにより生じると考えられる。しかし、上記のような構成とすることで、空気と液体との置換がより生じにくくなり、接続時にコネクタ本体の内周面に液体が漏れ出すよりも、液体が上流から下流に流れていきやすくなるため、接続時の液漏れが起こりにくくなる。なお、蛇腹部材は軸方向で切った断面において、波状態となっており、圧縮状態から伸張状態に戻る付勢力を有する構成とされていればよく、蛇腹部分が螺旋状に設けられている態様にすることもできる。
【0026】
本実施形態のコネクタは、コネクタ本体110の基端側の内径が内筒部120の基端部121の外径とほぼ等しくなっており、コネクタ本体110の中に内筒部120を挿入して組み立てることができる。なお、コネクタ本体110の基端側の内周面と内筒部120の基端部121の外周面により嵌合しているようにすることができる。また、コネクタ本体110の基端側の内周面には、内筒部120の基端部121を外れにくくするための突起115が設けられている。突起115は、内筒部120がコネクタ本体110の開口部113方向へ動くことを規制するように設けられており、環状とすることも複数の突起とすることもできる。内筒部120の基端側の端部は、面取りされたRを有する形状とすることができる。このような構成にすることで、組み立て時に内筒部120をコネクタ本体110へ挿入しやすくすることができる。
【0027】
このような構成に限らず、内筒部120は、コネクタ本体110内の所定の位置に固定されていればよい。例えば、コネクタ本体110内に窪みを設け、内筒部120の基端部121を窪みにはめ込んで固定するようにできる。また、接着剤等を用いて内筒部120をコネクタ本体110内に固定することもできる。
【0028】
管体201をコネクタ101から抜き取ると、可逆的に圧縮されていた内筒部120の変形部122は、元の伸張状態に復帰するような付勢力を有するように弾性変形可能な変形部として構成されていることが好ましい。
【0029】
管体201が挿入され変形部122が圧縮状態にある場合おいて、変形部122及び先端部123は、コネクタ本体110の内周面と接触しないようにすることが好ましい。このような構成にすれば、管体201を抜き取った際に、変形部122が圧縮状態から伸張状態に移行しやすくできる。
【0030】
管体201をコネクタ101から抜き取ると、コネクタ101の上流側において供給側のチューブ130がクランプされていても、コネクタ101側の液面は、内圧や重力の影響により下流側に膨らむ。下流側への液面の膨張が限界を超えると液だれが生じる。一般にコネクタの内腔は管体の内腔よりも径が大きく、且つ外向きに拡がっているため、管体よりも液だれが生じやすい。
【0031】
一方、本実施形態のコネクタ101においては、管体201が取り外された際に、可逆的に圧縮されていた内筒部120が再び伸張する。このため、
図3に示すようにコネクタ101側の液面を内筒部120の内部にとどまらせることができ、液だれの発生を抑えることができる。
【0032】
図1には、伸張状態の内筒部120の先端が、開口部113から突出している例を示している。伸張状態において内筒部120の先端が開口部113から突出するようにすれば、開口部113への管体の挿入をガイドするガイド手段として機能させることができる。しかし、標準的なサイズのコネクタの場合、伸張状態と圧縮状態とで内筒部120の長さが0.5mm程度変化すれば、液だれを抑える効果が得られる。従って、伸張状態において内筒部120の先端が開口部113から突出していなくてもよい。
【0033】
本実施形態において、内筒部の先端部123が軸方向と交差する方向に突出するフランジ部124を有していている構成を示した。このような構成にすることで、内筒部120の軸出しが可能となる。なお、フランジ部124はコネクタ本体110の内周面と接していてもよいが、接していない方がより好ましい。このような態様にすることで、内筒部120が圧縮状態から伸張状態に戻りやすくすることができる。但し、フランジ部124は設けなくてもよい。また、変形部122が基端部121から伸びている構成を示したが、基端部121と変形部122との間に非圧縮部が設けられている構成とすることもできる。
【0034】
図2において、内筒部120の先端部123が、挿入筒部210の内腔に挿入される例を示した。このようにすることにより、管体201の先端がガイドされ挿入が容易となるという利点が得られる。また、内筒部120と挿入筒部210とが液密に接続されるようにすれば、コネクタ内をスムーズに輸液が通過できるという利点が得られる。但し、挿入筒部210の外壁212と開口部113の内壁114とが液密に嵌合するため、内筒部120と挿入筒部210とは液密に接続されていなくてもよい。内筒部120の先端部が挿入筒部210の内腔に挿入されている例を示したが、内筒部120の先端部と挿入筒部210先端部とが互いに当接して係合していれば、内筒部120の先端部が挿入筒部210の内腔に挿入されていなくてもよい。
【0035】
例えば、
図7に示すように、挿入筒部210の先端部が、内筒部120の内腔に挿入されている構成とすることができる。また、
図8に示すように、内筒部120の先端部と、挿入筒部210の端部とが嵌め合いとなる構成とすることもできる。
【0036】
また、内筒部の先端部は、変形部よりも変形しにくいように構成することができる。このような構成とすることにより、変形部よりも硬い部材であるため、管体が押し込まれても変形しにくく、内筒部の先端部と管体の端部とを接続しやすくすることができる。
【0037】
図9~
図14には、コネクタの変形例を示す。本変形例のコネクタ101Aは、筒状の先端部123Aを有する内筒部120Aを備えている。先端部123Aの外径φ3は、変形部122Aの外径φ2よりも小さく、変形部122Aの外径φ2は、基端部121Aの外径φ1よりも小さい例を示しているが、このような態様に限定されるものではない。なお、変形部122Aの外径φ2は、蛇腹状部材からなる変形部122Aの最大径である。この変形例において、コネクタ本体110Aは、先端側から、内筒部120Aの先端部123Aを収容する第1の部分117Aと、変形部122Aを収容する第2の部分117Bと、基端部121Aを収容すると共に、チューブ130が接続される第3の部分117Cと、を有している。
【0038】
コネクタ本体110Aの第3の部分117Cは、内筒部120Aの基端部121A及びチューブ130とほぼ等しい内径を有している。第2の部分117Bは、基端部121Aの外径よりも小さく、変形部122Aの外径よりも大きい内径を有している。第1の部分117Aは、変形部122Aの外径よりも小さく、先端部123Aの外径とほぼ等しいかそれよりも大きい内径を有している。また、第1の部分117Aは、管体201の挿入筒部210の外壁と嵌合するテーパ面となっている。
【0039】
本変形例のコネクタ101Aは、第2の部分117Bの内径が変形部122Aの外径よりも大きい。このため、第2の部分117Bに収容された変形部122Aの圧縮及び伸縮が容易となる。一方、変形部122Aの外径よりも第2の部分117Bの内径を大きくしても、第1の部分117Aは、管体201の挿入筒部210と嵌合するサイズにすることが容易にできる。
【0040】
内筒部120Aの筒状の先端部123Aの長さは、第1の部分117Aの軸方向の長さよりも長くすることが好ましい。これにより、内筒部120の先端が開口部113から突出し、内筒部120Aをガイドとして機能させることができる。
図9において、テーパ状となった第1の部分117Aの内径の最小値が先端部123Aの外径とほぼ等しく、第1の部分117Aの内面と先端部123Aの外面の一部とが接触している。このように、第1の部分117Aの内面と先端部123Aの外面とが一部で接触して摺動すれば、内筒部120Aの軸出しが容易となる。但し、第1の部分117Aの内面と先端部123Aの外面とが接触しないようにすることもできる。
【0041】
第3の部分117Cの内径は、内筒部120Aの基端部121Aの外径と同じか僅かに小さく、基端部121Aの外周面と、第3の部分117Cの外周面とが嵌合している。また、第3の部分117Cが第2の部分117Bよりも大きいため、第3の部分117Cと第2の部分117Bとの境界には段差ができる。この段差は、内筒部120Aの基端部121Aが先端側に移動することを規制するフランジとして機能する。さらに、第3の部分117Cの基端側の開口からチューブ130が挿入され、第1の部分117Cと溶着又は接着されている。このため、基端部121Aの基端側への移動は、チューブ130の端面により規制されている。従って、本変形例においては、内筒部120Aをコネクタ本体110Aに容易に且つ強固に固定することが可能となり、またフランジを設けなくてもよいため、コネクタ本体をコンパクトにすることができる。なお、内筒部120Aの基端部121Aの基端側の固定は、チューブ130の端面での固定に限られたものではなく、第3の部分117Cにおいて、内筒部120Aの基端部121Aよりも基端側にフランジを設けてもよい。
【0042】
なお、本変形例においても、
図15に示すように、挿入筒部210の先端部が、内筒部120Aの内腔に挿入されている構成とすることができる。また、
図16に示すように、内筒部120Aの先端部と、挿入筒部210の端部とが嵌め合いとなる構成とすることもできる。
【0043】
本実施形態及び変形例のコネクタ本体の材質は特に限定されないが、ISO規格を満たす半硬質又は硬質の材料により形成することが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート樹脂又はアクリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等を用いることができる。
【0044】
内筒部は、伸縮自在となるように弾性を有する材料により形成する。例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等を用いることができる。また、ゴム又はエラストマーを用いることもできる。さらに、内筒部の基端部と先端部の間にコイルバネ等の付勢部材が設けられ、変形部が圧縮状態から伸張状態へ戻る付勢力を補うように構成されていてもよい。これにより、コネクタと管体の接続が解除された際に、内筒部が圧縮状態から伸張状態に戻りやすくすることができる。
【0045】
伸縮可能な蛇腹状部材である変形部を有する内筒部を用いる例を示したが、内筒部の変形部は蛇腹状部材に限らず、コネクタ本体110の軸方向に伸縮可能な部材を使用することができる。また、管体の挿入によって、内筒部が、軸と交差する方向に膨らんだ圧縮状態となり、管体との接続が外れた後は元の伸張状態に戻るような構成とすることもできる。具体例として、
図17~
図19に示す変形例のように弾性を有するチューブ状の内筒部120Bを設けることもできる。本変形例のコネクタ101Bの内筒部120Bは、挿入筒部210の先端により押圧されてコネクタ本体110の軸と交差する方向に膨らんで圧縮変形され、挿入筒部210を引き抜くことにより、元に戻る。内筒部120Bの変形量は0.5mm程度以上あれば、液だれを抑える効果が得られる。内筒部120Bは、例えば、ポリエチレン、又はポリプロピレン等により形成することができる。
【0046】
図18においては、内筒部120Bの先端が、挿入筒部210の内腔に挿入されている例を示した。しかし、内筒部120Bの先端が挿入筒部210の内腔に挿入されておらず、端面同士が当接して嵌め合いとなる構成としたり、挿入筒部210の先端が、内筒部120Bの内腔に挿入されている構成としたりすることもできる。
【0047】
本実施形態のメスコネクタは、経腸栄養等の輸液回路において、管体を引き抜いた際の液だれの発生を抑えることができる。また、輸液回路以外の回路の接続に用いることもできる。さらに、メスコネクタが供給側に配置されている場合だけでなく、患者側に配置されている場合においても、液だれの発生を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示のメスコネクタは、供給側に設けられた際にも、液だれを生じにくく、特に経腸栄養等の輸液回路に用いるコネクタとして有用である。
【符号の説明】
【0049】
101 コネクタ
101A コネクタ
101B コネクタ
110 コネクタ本体
110A コネクタ本体
113 開口部
114 内壁
115 突起
116 ねじ部
117A 第1の部分
117B 第2の部分
117C 第3の部分
120 内筒部
120A 内筒部
120B 内筒部
121 基端部
121A 基端部
122 変形部
122A 変形部
123 先端部
123A 先端部
124 フランジ部
130 チューブ
150 液面
201 管体
210 挿入筒部
212 外壁
220 外筒部