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特許7024850蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/50 20130101AFI20220216BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20220216BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20220216BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20220216BHJP
【FI】
H01G11/50
H01G11/06
H01G11/84
H01M10/0585
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020211040
(22)【出願日】2020-12-21
(62)【分割の表示】P 2015230455の分割
【原出願日】2015-11-26
(65)【公開番号】P2021057607
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】三尾 巧美
(72)【発明者】
【氏名】松浦 隆志
(72)【発明者】
【氏名】大参 直輝
(72)【発明者】
【氏名】藤井 崇文
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-19029(JP,A)
【文献】特開2006-286919(JP,A)
【文献】特開2008-235169(JP,A)
【文献】特開2010-86788(JP,A)
【文献】特開2006-286218(JP,A)
【文献】特開2010-278300(JP,A)
【文献】特開2013-89625(JP,A)
【文献】特開2015-122309(JP,A)
【文献】特開2007-128919(JP,A)
【文献】特開2012-54524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/50
H01G 11/06
H01G 11/84
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に積層される複数の正極電極及び複数の負極電極と、
前記複数の正極電極の各々と前記複数の負極電極の各々との間に介在する複数のセパレータと、
前記複数の正極電極、前記複数の負極電極及び前記複数のセパレータを内包するカバーと、
前記複数の正極電極に接続され、一部が前記カバーの外部に配置される正極端子と、
前記複数の負極電極に接続され、一部が前記カバーの外部に配置される負極端子と、
前記カバーの内部に配置されるプレドープ金属箔と、
を備えるプレドープ前の蓄電デバイスであって、
前記複数の正極電極の各々及び前記複数の負極電極の各々は、孔が形成された集電箔と、前記集電箔の少なくとも片面に配置された活物質層と、を備え、
前記複数の正極電極及び前記複数の負極電極の少なくともいずれか一方は、前記プレドープ金属箔が前記活物質層の表面に直接接触した状態で配置されたプレドープ対象電極を含み、
前記プレドープ対象電極において、
前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の一部の端辺とが揃えて配置され、
前記活物質層の外周縁部分の残りの端辺と前記プレドープ金属箔の残りの端辺との間には前記プレドープ金属箔が配置されていない非配置部位が形成される、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記プレドープ金属箔は、方形状に形成され、
前記プレドープ対象電極において、
前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の方形状の1つの端辺とが揃えて配置され、
前記活物質層の外周縁部分の残りの端辺と前記プレドープ金属箔の方形状の残り3つの端辺との間には前記プレドープ金属箔が配置されていない非配置部位が形成される、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記プレドープ対象電極は、前記プレドープ金属箔が前記活物質層の表面に直接接触した状態でロールプレス加工により圧延及び圧着された電極であり、
前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の一部の端辺とが揃えて配置された部位は、前記プレドープ金属箔のうち前記ロールプレス加工の始点である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
交互に積層される複数の正極電極及び複数の負極電極と、
前記複数の正極電極の各々と前記複数の負極電極の各々との間に介在する複数のセパレータと、
前記複数の正極電極、前記複数の負極電極及び前記複数のセパレータを内包するカバーと、
前記カバーの内部に配置される電解液と、
前記複数の正極電極に接続され、一部が前記カバーの外部に配置される正極端子と、
前記複数の負極電極に接続され、一部が前記カバーの外部に配置される負極端子と、
を備える蓄電デバイスの製造方法であって、
前記複数の正極電極の各々及び前記複数の負極電極の各々は、孔が形成された集電箔と、前記集電箔の少なくとも片面に配置された活物質層と、を備え、
前記製造方法は、
前記複数の正極電極のうち少なくとも一つ又は前記複数の負極電極の少なくとも一つに対し、前記活物質層の表面にプレドープ金属箔が直接接触した状態で配置されると共に、前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の一部の端辺とが揃えて配置され、且つ、前記活物質層の外周縁部分の残りの端辺と前記プレドープ金属箔の残りの端辺との間に前記プレドープ金属箔が配置されていない非配置部位形成されたプレドープ対象電極を形成するプレドープ対象電極形成工程と、
前記プレドープ対象電極、前記複数の正極電極、前記複数の負極電極及び前記セパレータを積層し、前記正極端子を前記複数の正極電極に接続すると共に前記負極端子を前記複数の負極電極に接続する積層工程と、
積層された前記プレドープ対象電極、前記複数の正極電極、前記複数の負極電極及び前記セパレータを前記カバーに内包する内包工程と、
前記カバー内に前記電解液を注入し、前記プレドープ金属箔を前記複数の負極電極にプレドープするプレドープ工程と、
を備える、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記プレドープ金属箔は、方形状に形成され、
前記プレドープ対象電極において、
前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の方形状の1つの端辺とが揃えて配置され、
前記活物質層の外周縁部分の残りの端辺と前記プレドープ金属箔の方形状の残り3つの端辺との間には前記プレドープ金属箔が配置されていない非配置部位が形成される、請求項4に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記プレドープ対象電極形成工程は、
前記複数の正極電極のうち少なくとも一つ又は前記複数の負極電極の少なくとも一つに対し、前記活物質層の表面に直接接触した状態で前記プレドープ金属箔を配置すると共に、前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の一部の端辺とを揃えて配置し、且つ、前記活物質層の外周縁部分の残りの端辺と前記プレドープ金属箔の残りの端辺との間に前記プレドープ金属箔が配置されていない非配置部位を形成する配置工程と、
前記配置工程により配置された前記プレドープ金属箔をロールプレス加工により圧延及び圧着し、前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の一部の端辺とが揃えて配置された部位を、前記プレドープ金属箔のうち前記ロールプレス加工の始点とする圧着工程と、
を備え、
前記プレドープ対象電極は、前記圧着工程により前記プレドープ金属箔が圧延及び圧着された状態において、前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の一部の端辺とが揃えて配置され、且つ、前記活物質層の外周縁部分の残りの端辺と前記プレドープ金属箔の残りの端辺との間に前記プレドープ金属箔が配置されていない非配置部位が形成される、請求項4又は5に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、リチウムイオン電池の負極と電気二重層キャパシタの正極とを組み合わせた構造を有するリチウムイオンキャパシタが知られている。特許文献1には、正極、負極、リチウム極及びセパレータを含む積層体と、電解液と、ラミネート外装体とを備えたリチウムイオンキャパシタが開示されている。リチウム極は、リチウム箔をステンレス鋼からなるリチウム極集電体に圧着したシート状に形成される。
【0003】
特許文献1には、積層体が収容されたラミネート外装体に電解液を注入して封止し、所定時間放置することにより、リチウム箔が溶解してリチウムイオンとなり、そのリチウムイオンが電解液を介して負極にプレドープされることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-192888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1では、プレドープによりリチウム箔が溶解した後、リチウム極集電体はラミネート外装体の内部に残存する。しかしながら、リチウム極集電体は、プレドープ後の蓄電デバイスには不要であり、完成品としての蓄電デバイスに必要としない部品を省略することは、コスト面において望ましい。
【0006】
本発明は、部品コストを低減できる蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1.プレドープ前の蓄電デバイス)
本発明の蓄電デバイスは、プレドープ前の蓄電デバイスである。この蓄電デバイスは、交互に積層される複数の正極電極及び複数の負極電極と、前記複数の正極電極の各々と前記複数の負極電極の各々との間に介在する複数のセパレータと、前記複数の正極電極、前記複数の負極電極及び前記複数のセパレータを内包するカバーと、前記複数の正極電極に接続され、一部が前記カバーの外部に配置される正極端子と、前記複数の負極電極に接続され、一部が前記カバーの外部に配置される負極端子と、前記カバーの内部に配置されるプレドープ金属箔と、を備えるプレドープ前の蓄電デバイスであって、前記複数の正極電極の各々及び前記複数の負極電極の各々は、孔が形成された集電箔と、前記集電箔の少なくとも片面に配置された活物質層と、を備え、前記複数の正極電極及び前記複数の負極電極の少なくともいずれか一方は、前記プレドープ金属箔が前記活物質層の表面に直接接触した状態で配置されたプレドープ対象電極を含む。
前記プレドープ対象電極において、前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の一部の端辺とが揃えて配置され、前記活物質層の外周縁部分の残りの端辺と前記プレドープ金属箔の残りの端辺との間には前記プレドープ金属箔が配置されていない非配置部位が形成される。
【0008】
本発明のプレドープ前の蓄電デバイスによれば、プレドープ金属箔は、正極電極又は負極電極の活物質層の表面に直接接触した状態で配置される。これにより、従来技術においてプレドープ金属箔を配置する際に用いられていた集電体を省略することができるので、部品コストを低減することができる。
【0009】
また、プレドープ対象電極は、活物質層の外周縁部分の一部の端辺とプレドープ金属箔の一部の端辺とが揃えて配置され、活物質層の外周縁部分の残りの端辺とプレドープ金属箔の残りの端辺との間にはプレドープ金属箔が配置されていない非配置部位が形成される。ここで、活物質層の外周縁部分では、活物質層の欠落が発生するおそれがある。特に、プレドープ金属箔を活物質層の表面に直接接触した状態で配置する場合には、活物質層の外周縁部分が、プレドープ金属箔を配置することに起因して、欠落するおそれがある。仮に、プレドープ金属箔が配置されている部位において、活物質層の欠落が発生していると、プレドープ金属箔と集電箔との接触による短絡を引き起こすおそれがある。
【0010】
これに対し、本発明によれば、プレドープ金属箔は、プレドープ対象電極における活物質層の外周縁部分の全域に配置されない。即ち、プレドープ金属箔は、活物質層の欠落を引き起こすおそれのある部位を避けるように配置されている。従って、プレドープ金属箔を活物質層の表面に直接接触した状態で配置する場合であっても、プレドープ金属箔が配置されている部位において、活物質層の欠落が抑制される。その結果、プレドープ金属箔と集電箔との接触に起因する短絡の発生を防止できる。また、プレドープ金属箔と集電箔との間において活物質層の欠落部位を有した不具合のある蓄電デバイスが製造されることを抑制できるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
(2.蓄電デバイスの製造方法)
本発明の製造方法は、完成品としての蓄電デバイスを製造する方法である。本発明の製造方法により製造される完成品としての蓄電デバイスは、交互に積層される複数の正極電極及び複数の負極電極と、前記複数の正極電極の各々と前記複数の負極電極の各々との間に介在する複数のセパレータと、前記複数の正極電極、前記複数の負極電極及び前記複数のセパレータを内包するカバーと、前記カバーの内部に配置される電解液と、前記複数の正極電極に接続され、一部が前記カバーの外部に配置される正極端子と、前記複数の負極電極に接続され、一部が前記カバーの外部に配置される負極端子と、を備え、前記複数の正極電極の各々及び前記複数の負極電極の各々は、孔が形成された集電箔と、前記集電箔の少なくとも片面に配置された活物質層と、を備える。
【0012】
前記製造方法は、前記複数の正極電極のうち少なくとも一つ又は前記複数の負極電極の少なくとも一つに対し、前記活物質層の表面にプレドープ金属箔が直接接触した状態で配置されると共に、前記活物質層の外周縁部分の一部の端辺と前記プレドープ金属箔の一部の端辺とが揃えて配置され、且つ、前記活物質層の外周縁部分の残りの端辺と前記プレドープ金属箔の残りの端辺との間に前記プレドープ金属箔が配置されていない非配置部位形成されたプレドープ対象電極を形成するプレドープ対象電極形成工程と、前記プレドープ対象電極、前記複数の正極電極、前記複数の負極電極及び前記セパレータを積層し、前記正極端子を前記複数の正極電極に接続すると共に前記負極端子を前記複数の負極電極に接続する積層工程と、積層された前記プレドープ対象電極、前記複数の正極電極、前記複数の負極電極及び前記セパレータを前記カバーに内包する内包工程と、前記カバー内に前記電解液を注入し、前記プレドープ金属箔を前記複数の負極電極にプレドープするプレドープ工程と、を備える。
【0013】
本発明の蓄電デバイスの製造方法によれば、プレドープ対象電極は、正極電極又は負極電極の活物質層の表面に、プレドープ金属箔が直接接触した状態で配置される。これにより、従来技術においてプレドープ金属箔を配置する際に用いられていた集電体を省略することができるので、部品コストを低減することができる。
【0014】
また、プレドープ対象電極において、活物質層の外周縁部分の一部の端辺とプレドープ金属箔の一部の端辺とが揃えて配置され、且つ、活物質層の外周縁部分の残りの端辺とプレドープ金属箔の残りの端辺との間にプレドープ金属箔が配置されていない非配置部位形成される。即ち、プレドープ金属箔は、活物質層の欠落を引き起こすおそれのある部位を避けるように配置される。従って、プレドープ金属箔を活物質層の表面に直接接触した状態で配置する場合であっても、プレドープ金属箔が配置されている部位において、活物質層の欠落が抑制される。その結果、プレドープ金属箔と集電箔との接触に起因する短絡の発生を防止できる。また、プレドープ金属箔と集電箔との間において活物質層の欠落部位を有した不具合のある蓄電デバイスが製造されることを抑制できるので、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の一実施形態における完成品としての蓄電デバイスのカバー内部の上面図であり、カバーを破線で図示する。
図1B】完成品としての蓄電デバイスのカバー内部の側面図であり、カバーを破線で図示する。
図2】完成品としての蓄電デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図3A】正極電極の側面図であり、正極電極の一部が断面視されている。
図3B】負極電極材料の側面図であり、負極電極材料の一部が断面視されている。
図3C】正極電極又は負極電極材料にロールプレス加工を施す状態を示す図である。
図4A】プレドープ対象電極形成工程を示すフローチャートである。
図4B】プレドープ対象電極の上面図である。
図4C】プレドープ対象電極にロールプレス加工を施す状態を示す図である。
図5】プレドープ前の蓄電デバイスのカバー内部の分解斜視図であり、カバーを破線で模式的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1.完成品としての蓄電デバイス1の構成)
以下、本発明を適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、図1A及び図1Bを参照し、本発明の一実施形態における完成品としての蓄電デバイス1について説明する。図1A及び図1Bに示すように、完成品としての蓄電デバイス1は、複数の正極電極2及び複数の負極電極3と、複数のセパレータ4と、カバー5と、正極端子6と、負極端子7と、電解液8と、を備えたリチウムイオンキャパシタであり、負極電極3にはリチウムイオンがプレドープされている。
【0017】
正極電極2及び負極電極3は、シート状の電極であり、1枚ずつ交互に積層される。セパレータ4は、シート状の絶縁体であり、交互に積層された各々の正極電極2と各々の負極電極3との間に介在する。なお、セパレータ4に使用される材料としては、ビスコースレイヨンや天然セルロース等の抄紙、ポリエチレンやポリプロピレン等の不織布などが例示される。
【0018】
カバー5は、積層された正極電極2、負極電極3及びセパレータ4を内包する袋状の部材であり、プラスチックフィルムから構成される。正極端子6は、複数の正極電極2に電気的に接続される端子であり、負極端子7は、複数の負極電極3に電気的に接続される端子である。正極端子6及び負極端子7は、金属板から構成され、カバー5は、正極端子6及び負極端子7の一部をカバー5の外部に露出させた状態でシールされる。
【0019】
電解液8は、リチウム塩を電解質とする非水系の溶液であり、カバー5の内部に注入される。なお、電解液8は、主溶媒として、γ-ブチルラクトン、プロピレンカーボネート等を、副溶媒として、エチレンカーボネート等のカーボネート類を用いる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4等を用いる。
【0020】
(2.蓄電デバイス1の製造工程)
次に、完成品としての蓄電デバイス1の製造工程を説明する。図2に示すように、完成品としての蓄電デバイス1の製造工程は、電極製造工程(S1)と、プレドープ対象電極形成工程(S2)と、積層工程(S3)と、内包工程(S4)と、プレドープ工程(S5)と、ガス抜き工程(S6)と、シール工程(S7)と、を備える。なお、電極製造工程(S1)から内包工程(S4)までが、プレドープ前の蓄電デバイス100の製造工程(S100)となる。
【0021】
(2-1:電極製造工程)
まず、図2から図5を参照し、プレドープ前の蓄電デバイス100の製造方法(S100)について説明する。
【0022】
電極製造工程(S1)は、正極電極2と、負極電極3の材料となる負極電極材料30とをそれぞれ複数枚製造する工程である。なお、負極電極材料30は、リチウムイオンがプレドープされる前の負極電極3(図1A参照)のことを指し、リチウムイオンがプレドープされていない点を除き、負極電極3と同等の構成を有する。
【0023】
図3Aに示すように、正極電極2は、複数の孔を有する金属箔で構成される正極集電箔21と、正極集電箔21の両面又は片面に配置される正極活物質層22とを備える。なお、本実施形態においては、正極活物質層22が正極集電箔21の両面に配置される。
【0024】
正極集電箔21は、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等からなる箔を用いることができる。正極集電箔21には、長手方向一端側(図3A左側)から長手方向へ延設される正極延設部21aが形成される。正極延設部21aの幅方向長さ寸法(図3A紙面垂直方向における長さ寸法、図1A上下方向における長さ寸法)は、正極集電箔21の長手方向他端側(図3A右側)における正極集電箔21の幅方向長さ寸法よりも小さく、正極延設部21aは、正極集電箔21の幅方向一方側(図3A紙面手前側、図1A下側)へ偏った位置に配置される。
【0025】
正極活物質層22は、正極材料に種々の添加材、例えば導電助材、結着剤、増粘剤等を適宜に添加した正極合材を適切な溶媒に懸濁させて混合し、スラリとしたものを正極集電箔21に塗布し、乾燥し、プレスすることで作製される。正極材料としては、特に限定されるものではなく、活性炭やポリアセン等を用いることができる。導電助材としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等を、結着剤としては、ポリフッ化ビニデリン、SBRゴム、ポリアクリル酸等を、増粘剤としてカルポキシルメチルセルロース等を、溶媒としては、N-メチルピロリドン等の有機溶媒又は水を用いることができる。正極活物質層22は、正極延設部21aを除く部位に、矩形箔状に配置される。
【0026】
図3Bに示すように、負極電極材料30は、複数の孔を有する金属箔で構成される負極集電箔31と、負極集電箔31の両面又は片面に配置される負極活物質層32とを備える。なお、本実施形態においては、負極活物質層32は、負極集電箔31の両面に配置される。
【0027】
負極集電箔31は、銅、ステンレス鋼等からなる箔を用いることができる。負極集電箔31には、長手方向一端側(図3B左側)から長手方向へ延設される負極延設部31aが形成される。負極延設部31aの幅方向長さ寸法(図3B紙面垂直方向における長さ寸法、図1A上下方向における長さ寸法)は、負極集電箔31の長手方向他端側(図3B右側)における負極集電箔31の幅方向長さ寸法よりも小さく、負極延設部31aは、負極集電箔31の幅方向他方側(図3B紙面奥側、図1A上側)へ偏った位置に配置される。
【0028】
負極活物質層32は、正極活物質層22と同様に、負極材料に適宜に添加材を添加した負極合剤のスラリを負極集電箔31に塗布し、乾燥し、プレスすることで作製される。負極材料としては、リチウムイオンを可逆的に挿入・脱離できる黒鉛(グラファイト)等の炭素系材料を用いることができる。負極活物質層32における導電助材、結着剤、増粘剤及び溶媒は、正極活物質層22と同様のものを用いることができる。負極活物質層32は、負極延設部31aを除く部位に、矩形箔状に配置される。
【0029】
電極製造工程(S1)では、複数の孔が形成された金属箔の両面に対し、正極材料及び添加材を含有するスラリを塗布し、スラリを乾燥させる。これにより、正極集電箔21の両面に矩形箔状の正極活物質層22が配置された正極電極2が製造される。同様に、複数の孔が形成された金属箔の両面に対し、負極材料及び添加材を含有するスラリを塗布し、スラリを乾燥させる。これにより、負極集電箔31の両面に矩形箔状の負極活物質層32が配置された負極電極材料30が製造される。
【0030】
続いて、図3Cに示すように、スラリを乾燥させた正極電極2及び負極電極材料30に対し、ロールプレス機によるプレス加工を施し、正極活物質層22及び負極活物質層32の厚さ寸法を均等にならす。
【0031】
(2-2:プレドープ対象電極形成工程)
次に、図4Aから図4Cを参照し、プレドープ対象電極形成工程(S2)について説明する。このプレドープ対象電極形成工程(S2)では、リチウム金属からなる矩形箔状のプレドープ金属箔9を負極電極材料30に圧着したプレドープ対象電極30aを形成する。なお、プレドープ金属箔9の長辺の寸法は、負極活物質層32の長辺の寸法よりも小さく、プレドープ金属箔9の短辺の寸法は、負極活物質層32の短辺の寸法よりも小さい(図4B参照)。
【0032】
図4Aに示すように、プレドープ対象電極形成工程(S2)は、配置工程(S21)と圧着工程(S22)とを備える。配置工程(S21)は、完成品としての一の蓄電デバイス1(図1A参照)に使用される複数枚の負極電極材料30のうち、一枚の負極電極材料30に対し、プレドープ金属箔9を配置する工程であり、プレドープ金属箔9を負極活物質層32の表面に直接接触させた状態で配置する。
【0033】
図4Bに示すように、配置工程(S21)では、負極活物質層32が配置される部位の中央部分にプレドープ金属箔9を配置する。これにより、負極活物質層32には、プレドープ金属箔9が配置されていない非配置部位33が、負極活物質層32の外周縁部分において全周にわたり形成される。
【0034】
図4Cに示すように、圧着工程(S22)は、プレドープ金属箔9を負極活物質層32の表面に圧着する工程である。この圧着工程(S22)では、配置工程(S21)において負極活物質層32の表面にプレドープ金属箔9を配置した負極電極材料30に対してロールプレス機によるプレス加工を施し、プレドープ対象電極30aを形成する。
【0035】
このように、プレドープ対象電極形成工程(S2)において、プレドープ金属箔9は、負極電極材料30の表面に直接接触させた状態で圧着される。従って、金属板等で構成されるプレドープ集電体にプレドープ金属箔9を圧着し、プレドープ集電体を介して負極電極材料30の表面にプレドープ金属箔9を配置する場合と比べて、プレドープ集電体を省略できる分、部品コストの抑制を図ることができる。
【0036】
なお、プレドープ金属箔9は、プレス加工を施すことで圧延される。これに対し、本実施形態では、配置工程(S21)によりプレドープ金属箔9が負極活物質層32の表面に配置された状態において、非配置部位33が負極活物質層32の外周縁部分において全周にわたり形成される。
【0037】
よって、圧着工程(S22)においてプレス加工により圧延されたプレドープ金属箔9が、負極活物質層32が配置された部位から外側へはみ出すことを防止できる。これにより、負極活物質層32が配置された部位から外側へはみ出したプレドープ金属箔9が負極集電箔31と接触し、短絡が発生するといった不具合の発生を回避できる。また、プレス加工により、負極活物質層32が配置された部位からプレドープ金属箔9が外側へはみ出した不具合のあるプレドープ対象電極が形成されることを抑制できるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0038】
また、負極活物質層32は、粉末状の負極材料を結着剤により結着させることで箔状に形成されている。しかしながら、負極活物質層32に含有される結着剤は絶縁体であるため、負極電極3(図1A参照)を構成する負極活物質層32における結着剤の含有量は、最低限に抑えることが望ましい。こうした理由により、負極活物質層32では、負極材料どうしの結着強度は低く設定されている。
【0039】
そのため、電極製造工程(S1)及び圧着工程(S22)において負極電極材料30にプレス加工を施す際、負極活物質層32のうち他の部分と比べて大きな応力が加わる外周縁部分では、負極材料どうしの結着が解除されやすく、欠落が発生しやすい。仮に、プレドープ金属箔9が配置されている部位において、活物質層の欠落が発生していると、プレドープ金属箔9と負極集電箔31との接触による短絡を引き起こすおそれがある。
【0040】
これに対し、プレドープ対象電極30aでは、負極活物質層32の外周縁部分において非配置部位33が形成され、プレドープ金属箔9は、プレドープ対象電極30aにおける負極活物質層32の外周縁部分の全域に配置されない。即ち、プレドープ金属箔9は、負極活物質層32の欠落を引き起こすおそれのある部位を避けるように配置されている。従って、プレドープ金属箔9を負極活物質層32の表面に直接接触した状態で配置する場合であっても、プレドープ金属箔9が配置されている部位において、負極活物質層32の欠落が抑制される。
【0041】
よって、プレドープ金属箔9と負極集電箔31との接触に起因する短絡の発生を防止できる。また、プレドープ金属箔9と負極集電箔31との間において負極活物質層32の欠落部位を有した不具合のある蓄電デバイス100が製造されることを抑制できるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、電極製造工程(S1)とプレドープ対象電極形成工程(S2)とを別々に行っているが、プレドープ対象電極形成工程(S2)を電極製造工程(S1)と同時に行ってもよい。即ち、電極製造工程(S1)において、スラリを乾燥させた複数の負極電極材料30のうちの一枚の負極電極材料30に対し、配置工程(S21)としてプレドープ金属箔9を負極活物質層32の表面に直接接触させた状態で配置し、その後に圧着工程(S22)を施してもよい。この場合、電極製造工程(S1)において負極活物質層32の厚さ寸法を均等にならすためのプレス加工を、圧着工程(S22)と同時に行うことができるので、プレドープ対象電極30aの製造に要する時間を短縮することができる。
【0043】
(2-3:積層工程)
次に、積層工程(S3)について説明する。図5に示すように、積層工程(S3)は、複数の正極電極2、複数の負極電極材料30及びセパレータ4を積層する工程である。積層工程(S3)では、まず、最外層にプレドープ対象電極30aを配置した状態で積層された複数の負極電極材料30の間に、正極電極2を一枚ずつ介在させる。これにより、負極電極材料30と正極電極2とが一枚ずつ交互に積層される。
【0044】
このとき、積層された複数の正極電極2は、正極延設部21aどうしが積層方向において重なる位置に配置され、積層された複数の負極電極材料30は、負極延設部31aどうしが積層方向において重なる位置に配置される。さらに、複数の正極電極2と複数の負極電極材料30とは、積層方向において正極延設部21aと負極延設部31aとが互いに重ならない位置に配置される。また、積層工程(S3)において、複数の正極電極2及び複数の負極電極材料30は、積層方向から見た場合に、各々の正極活物質層22及び各々の負極活物質層32が、プレドープ金属箔9と重なる位置に配置される。
【0045】
次に、一枚ずつ交互に積層された負極電極材料30と正極電極2との間に、セパレータ4を一枚ずつ介在させる。続いて、積層された複数の正極電極2の正極延設部21aに正極端子6を電気的に接続すると共に、積層された複数の負極電極材料30の負極延設部31aに負極端子7を電気的に接続する。
【0046】
(2-4:内包工程)
図2に戻り、プレドープ前の蓄電デバイス100の製造方法についての説明を続ける。内包工程(S4)は、正極端子6の一部及び負極端子7の一部をカバー5の外部に露出させた状態で、積層された正極電極2、負極電極材料30及びセパレータ4をカバー5に内包する。これにより、プレドープ前の蓄電デバイス100の製造が完了する。
【0047】
(2-5:プレドープ工程)
引き続き、図2を参照して、プレドープ前の蓄電デバイス100にプレドープを行い、完成品としての蓄電デバイス1が製造されるまでの製造工程について説明する。
【0048】
プレドープ工程(S5)は、プレドープ前の蓄電デバイス100の負極電極材料30に対し、リチウムイオンをプレドープする工程である。プレドープ工程(S5)では、カバー5内に電解液8を注入してカバー5を一旦シールする。これにより、カバー5内において、負極電極材料30に対するリチウムイオンのプレドープが開始される。即ち、プレドープ金属箔9が電解液8に溶解してリチウムイオンとなり、そのリチウムイオンが電解液8を介して負極電極材料30にプレドープされる。所定時間経過すると、プレドープ対象電極30aを含む全ての負極電極材料30は、リチウムイオンがドープされた負極電極3となる。
【0049】
なお、正極集電箔21及び負極集電箔31には、複数の孔が形成されている。従って、負極活物質層32のうち、積層方向から見てプレドープ金属箔9と重なる位置に配置された部位では、プレドープは円滑に行われる。一方、負極活物質層32のうち積層方向から見てプレドープ金属箔9と重ならない位置に配置された部位では、積層方向から見てプレドープ金属箔9と重なる位置に配置される負極活物質層32と比べて、プレドープに多くの時間を要する。
【0050】
この点に関し、プレドープ前の蓄電デバイス1において、プレドープ対象電極30aを正極電極2及び負極電極材料30の積層方向から見たときのプレドープ金属箔9の投影面積は、負極活物質層32が配置された部位全体の投影面積の80%以上かつ100%未満であることが望ましく、本実施形態では、プレドープ金属箔9の投影面積が、負極活物質層32が配置された部位全体の投影面積の約90%である。これにより、正極電極2及び負極電極材料30の積層方向から見た場合に、負極活物質層32が広範囲においてプレドープ金属箔9と重なる位置に配置されるので、リチウムイオンのプレドープに要する時間の短縮を図ることができる。
【0051】
一方、プレドープ対象電極30aでは、積層方向から見たプレドープ金属箔9の投影面積を積層方向から見た負極活物質層32全体の100%未満とし、負極活物質層32の外周縁部分には、プレドープ金属箔9が配置されていない非配置部位33が形成される。これにより、負極活物質層32の外周縁部分が欠落した場合であっても、プレドープ金属箔9と負極集電箔31との間において負極活物質層32の欠落部位が発生することを抑制できる。
【0052】
(2-6:ガス抜き工程及びシール工程)
プレドープ工程(S5)が終了した後、ガス抜き工程(S6)へ移行する。このガス抜き工程(S6)では、正極電極2及び負極電極3に対する充電作業を行い、充電に伴ってカバー5内に発生するガスをカバー5の外部へ放出する。最後に、シール工程(S7)においてカバー5をシールする。これにより、完成品としての蓄電デバイス1の製造工程を終了する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態における蓄電デバイス1の製造方法では、プレドープ金属箔9が、負極電極材料30の負極活物質層32の表面に直接接触した状態で配置される。これにより、従来技術においてプレドープ金属箔9を配置する際に用いられていたプレドープ集電体を省略することができるので、部品コストを低減することができる。
【0054】
(3.その他)
以上、上記各実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記各形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0055】
例えば、本実施形態において、プレドープ対象電極30aの片面にプレドープ金属箔9を配置する場合について説明したが、一枚のプレドープ対象電極30aの両面にプレドープ金属箔9を配置してもよい。また、本実施形態では、配置工程(S21)において複数の負極電極材料30を積層する際、積層する複数の負極電極材料30の最外層にプレドープ対象電極30aを配置する場合について説明したが、積層する複数の負極電極材料30の間にプレドープ対象電極30aを配置してもよい。
【0056】
さらに、本実施形態では、一つのプレドープ前の蓄電デバイス100に対し、プレドープ対象電極30aを一枚配置する場合について説明したが、プレドープ対象電極30aを複数枚配置してもよい。例えば、一つのプレドープ前の蓄電デバイス100が、2枚のプレドープ対象電極30aを備え、配置工程(S21)において複数の負極電極材料30を積層する際に、2枚のプレドープ対象電極30aを最外層に配置し、それら2枚のプレドープ対象電極30aの間に、プレドープ対象電極30aではない残りの負極電極材料30を配置してもよい。
【0057】
本実施形態では、プレドープ金属箔9が負極電極材料30の負極活物質層32の表面に配置される場合について説明したが、正極電極2の正極活物質層22の表面にプレドープ金属箔9を配置してもよい。また、本実施形態では、積層工程(S3)において最外層に負極電極材料30を配置する場合について説明したが、最外層に正極電極2を配置してもよい。
【0058】
上記実施形態では、電極製造工程(S1)において、乾燥した正極活物質層22及び負極活物質層32にプレス加工を施す際にロールプレス機を使用したが、ロールプレス機以外のプレス機でプレス加工を施してもよい。
【0059】
上記実施形態では、プレドープ対象電極30aにおいて、負極活物質層32が配置される部位の中央部分にプレドープ金属箔9を配置し、負極活物質層32の外周縁部分の全周において、非配置部位33を形成する場合について説明したが、負極活物質層32が配置される部位のうち、負極活物質層32の一の端部とプレドープ金属箔9の一の端部とを揃えた状態で配置してもよい。この場合、負極活物質層32の一の端部とプレドープ金属箔9の一の端部とが揃えて配置された部位を、ロールプレス機によるプレス加工の始点とすることにより、プレドープ金属箔9が負極活物質層32の配置される部位からはみ出すことを防止できる。
【0060】
なお、本実施形態では、完成品としての蓄電デバイス1がリチウムイオンキャパシタであり、プレドープ金属箔9がリチウムから構成される場合について説明したが、プレドープ金属箔9がリチウム以外のアルカリ金属から構成されていてもよい。なお、リチウム以外のアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが例示される。
【0061】
(4.効果)
上記実施形態のプレドープ前の蓄電デバイス100は、交互に積層される複数の正極電極2及び複数の負極電極3(負極電極材料30)と、複数の正極電極2の各々と複数の負極電極3の各々との間に介在する複数のセパレータ4と、複数の正極電極2、複数の負極電極3及び複数のセパレータ4を内包するカバー5と、複数の正極電極2に接続され、一部がカバー5の外部に配置される正極端子6と、複数の負極電極3に接続され、一部がカバー5の外部に配置される負極端子7と、カバー5の内部に配置されるプレドープ金属箔9と、を備え、複数の正極電極2の各々及び複数の負極電極3の各々は、孔が形成された集電箔としての正極集電箔21及び負極集電箔31と、集電箔の少なくとも片面に配置された活物質層としての正極活物質層22及び負極活物質層32、を備える。
【0062】
これに加え、プレドープ前の蓄電デバイス100は、複数の正極電極2及び複数の負極電極3の少なくともいずれか一方は、プレドープ金属箔9が活物質層の表面に直接接触した状態で配置されたプレドープ対象電極30aを含み、プレドープ対象電極30aには、活物質層の外周縁部分の少なくとも一部に、プレドープ金属箔9が配置されていない非配置部位33が形成される。
【0063】
このプレドープ前の蓄電デバイス100によれば、プレドープ金属箔9は、正極電極2又は負極電極3(負極電極材料30)の活物質層としての正極活物質層22又は負極活物質層32の表面に直接接触した状態で配置される。これにより、従来技術においてプレドープ金属箔9を配置する際に用いられていた集電体を省略することができるので、部品コストを低減することができる。
【0064】
また、プレドープ対象電極30aは、活物質層の外周縁部分の少なくとも一部に、プレドープ金属箔9が配置されていない非配置部位33を備える。ここで、活物質層の外周縁部分では、活物質層の欠落が発生するおそれがある。特に、プレドープ金属箔9を活物質層の表面に直接接触した状態で配置する場合には、活物質層の外周縁部分が、プレドープ金属箔9を配置することに起因して、欠落するおそれがある。仮に、プレドープ金属箔9が配置されている部位において、活物質層の欠落が発生していると、プレドープ金属箔9と集電箔としての正極集電箔21又は負極集電箔31との接触による短絡を引き起こすおそれがある。
【0065】
これに対し、プレドープ前の蓄電デバイス100によれば、プレドープ金属箔9は、プレドープ対象電極30aにおける活物質層の外周縁部分の全域に配置されない。即ち、プレドープ金属箔9は、活物質層の欠落を引き起こすおそれのある部位を避けるように配置されている。従って、プレドープ金属箔9を活物質層の表面に直接接触した状態で配置する場合であっても、プレドープ金属箔9が配置されている部位において、活物質層の欠落が抑制される。その結果、プレドープ金属箔9と集電箔との接触に起因する短絡の発生を防止できる。また、プレドープ金属箔9と集電箔との間において活物質層の欠落部位を有した不具合のある蓄電デバイス100が製造されることを抑制できるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0066】
また、プレドープ前の蓄電デバイス100において、プレドープ対象電極30aには、非配置部位33が、活物質層としての正極活物質層22又は負極活物質層32の外周縁部分の全周にわたり形成される。この場合、プレドープ金属箔9が配置されている部位において、活物質層が欠落することをより一層回避しやすくすることができる。
【0067】
また、プレドープ前の蓄電デバイス100において、プレドープ対象電極30aは、正極電極2及び負極電極3(負極電極材料30)の積層方向から見た場合に、活物質層が配置された部位全体に対するプレドープ金属箔9の投影面積を80%以上且つ100%未満とする。
【0068】
集電箔としての正極集電箔21及び負極集電箔31には、複数の孔が形成されているので、負極活物質層32のうち、正極電極2及び負極電極3(負極電極材料30)の積層方向から見てプレドープ金属箔9と重なる位置に配置される部位は、プレドープ金属箔9と重ならない位置に配置される部位と比べて、プレドープに要する時間が短くなる。従って、活物質層が配置された部位全体に対するプレドープ金属箔9の投影面積を80%以上とすることにより、正極電極2及び負極電極3の積層方向から見た場合に、活物質層が広範囲においてプレドープ金属箔9と重なる位置に配置されるので、プレドープに要する時間の短縮を図ることができる。
【0069】
一方、正極電極2及び負極電極3の積層方向から見た場合に、活物質層が配置された部位全体に対するプレドープ金属箔9の投影面積を100%未満とし、活物質層の外周縁部分に非配置部位を形成することで、活物質層の外周縁部分が欠落した場合であっても、プレドープ金属箔9と集電箔との間において活物質層の欠落部位が発生することを抑制できる。
【0070】
また、上記実施形態によれば、完成品としての蓄電デバイス1の製造方法は、交互に積層される複数の正極電極2及び複数の負極電極3と、複数の正極電極2の各々と複数の負極電極3の各々との間に介在する複数のセパレータ4と、複数の正極電極2、複数の負極電極3及び複数のセパレータ4を内包するカバー5と、カバー5の内部に配置される電解液8と、複数の正極電極2に接続され、一部がカバー5の外部に配置される正極端子6と、複数の負極電極3に接続され、一部がカバー5の外部に配置される負極端子7と、を備えた蓄電デバイス100の製造方法であり、複数の正極電極2の各々及び複数の負極電極3の各々は、孔が形成された集電箔としての正極集電箔21又は負極集電箔31と、集電箔の少なくとも片面に配置された活物質層としての正極活物質層22又は負極活物質層32と、を備える。
【0071】
これに加え、完成品としての蓄電デバイス1の製造方法は、複数の正極電極2のうち少なくとも一つ又は複数の負極電極3(負極電極材料30)の少なくとも一つに対し、活物質層の表面にプレドープ金属箔9が直接接触した状態で配置されると共に、プレドープ金属箔9が配置されていない非配置部位33が活物質層の外周縁部分の少なくとも一部に形成されたプレドープ対象電極30aを形成するプレドープ対象電極形成工程(S2)と、プレドープ対象電極30a、複数の正極電極2、複数の負極電極3及びセパレータ4を積層し、正極端子6を複数の正極電極2に接続すると共に負極端子7を複数の負極電極3に接続する積層工程(S3)と、積層されたプレドープ対象電極30a、複数の正極電極2、複数の負極電極3及びセパレータ4をカバー5に内包する内包工程と、カバー5内に電解液8を注入し、プレドープ金属箔9を複数の負極電極3にプレドープするプレドープ工程(S5)と、を備える。
【0072】
完成品としての蓄電デバイス1の製造方法によれば、プレドープ対象電極30aは、正極電極2又は負極電極3(負極電極材料30)の活物質層としての正極活物質層22又は負極活物質層32の表面に、プレドープ金属箔9が直接接触した状態で配置される。これにより、従来技術においてプレドープ金属箔9を配置する際に用いられていた集電体を不要とすることができるので、部品コストを低減することができる。
【0073】
また、プレドープ対象電極30aには、プレドープ金属箔9が配置されていない非配置部位33が、活物質層の外周縁部分の少なくとも一部に形成される。即ち、プレドープ金属箔9は、活物質層の欠落を引き起こすおそれのある部位を避けるように配置される。従って、プレドープ金属箔9を活物質層の表面に直接接触した状態で配置する場合であっても、プレドープ金属箔9が配置されている部位において、活物質層の欠落が抑制される。その結果、プレドープ金属箔9と集電箔としての正極集電箔21又は負極集電箔31の接触に起因する短絡の発生を防止できる。また、プレドープ金属箔9と集電箔との間において活物質層の欠落部位を有した不具合のある蓄電デバイス1が製造されることを抑制できるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0074】
また、完成品としての蓄電デバイス1の製造方法において、プレドープ対象電極形成工程(S2)は、複数の正極電極2のうち少なくとも一つ又は複数の負極電極3の少なくとも一つに対し、活物質層としての正極活物質層22又は負極活物質層32の表面に直接接触した状態でプレドープ金属箔9を配置する配置工程(S21)と、配置工程(S21)により配置されたプレドープ金属箔9を圧着する圧着工程(S22)と、を備え、プレドープ対象電極30aは、圧着工程(S22)によりプレドープ金属箔9が圧着された状態において、活物質層の外周縁部分の少なくとも一部に非配置部位33が形成される。
【0075】
この完成品としての蓄電デバイス1の製造方法によれば、プレドープ金属箔9が圧着された状態において、活物質層の外周縁部分の少なくとも一部に非配置部位33が形成されるので、プレドープ金属箔9が配置される部位において、活物質層が欠落することをより一層回避しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1:蓄電デバイス、 2:正極電極、 3:負極電極、 4:セパレータ、 5:カバー、 6:正極端子、 7:負極端子、 8:電解液、 9:プレドープ金属箔、 21:正極集電箔(集電箔)、 22:正極活物質層(活物質層)、 30:負極電極材料(負極電極)、 30a:プレドープ対象電極、 31:負極集電箔(集電箔)、 32:負極活物質層(活物質層)、 33:非配置部位、100:プレドープ前の蓄電デバイス、 S2:プレドープ対象電極形成工程、 S21:配置工程、 S22:圧着工程、 S3:積層工程、 S4:内包工程、 S5:プレドープ工程
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5