(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】冷却装置、及び冷却方法
(51)【国際特許分類】
B22D 30/00 20060101AFI20220216BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20220216BHJP
B05B 15/00 20180101ALI20220216BHJP
C21D 1/62 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
B22D30/00
C21D1/00 119
B05B15/00
C21D1/62
(21)【出願番号】P 2017178154
(22)【出願日】2017-09-15
【審査請求日】2020-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392035352
【氏名又は名称】株式会社豊電子工業
(73)【特許権者】
【識別番号】000214939
【氏名又は名称】直本工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長 伸朗
(72)【発明者】
【氏名】今村 幸伯
(72)【発明者】
【氏名】金岡 明男
(72)【発明者】
【氏名】大塚 啓志
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-002398(JP,A)
【文献】特開2009-202197(JP,A)
【文献】特開平10-060524(JP,A)
【文献】特開平11-153386(JP,A)
【文献】特開2016-089212(JP,A)
【文献】特開昭54-031011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 30/00
C21D 1/00
B05B 15/00
C21D 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品であるワークを冷却対象物とする冷却装置であって、
前記ワークの周辺にミストを噴霧するミストノズルと、
前記ワークに向けて圧縮空気を吹き出すエアノズルと、
前記ワークが内部に配置される容器と、
送風ファンとを有し、
前記ミストノズルは、前記容器の内部にミストを噴霧し、
前記エアノズルは、前記容器の内部に配置される前記ワークに向けて圧縮空気を吹き出し、
前記容器の壁には、前記エアノズルから吹き出される圧縮空気とは別の空気を前記容器内に吸い込むための吸込口と、前記容器内の空気を吹き出すための吹出口とが形成されており、
前記送風ファンは、前記吸込口から前記吹出口へ向かう空気の流れを前記容器の内部に生じさせる冷却装置。
【請求項2】
前記ワークは、凹みを有するものであり、
前記凹みに圧縮空気が入るように、設置位置や圧縮空気の吹き出し方向が調整された前記エアノズルを有する請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記エアノズルから吹き出された圧縮空気が、前記ワークの所定範囲のみに当たるように、前記エアノズルの設置位置や前記エアノズルからの圧縮空気の吹き出し方向が調整されている請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記エアノズルとして、
前記空気の流れの上流側に向けて、圧縮空気を吹き出す第一エアノズルと、
前記空気の流れを横断する方向に、圧縮空気を吹き出す第二エアノズルとが設けられる請求項1乃至3のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項5】
前記エアノズルとして、前記空気の流れの下流側に向けて、圧縮空気を吹き出す第三エアノズルがさらに設けられる請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記容器は、上下に相対する上壁及び下壁と、前記上壁及び前記下壁をつなぐ側壁とを有し、前記上壁、前記下壁、及び前記側壁によって囲まれる内部の空間に、前記ワークが配置され、
前記吸込口が前記下壁に形成され、前記吹出口が前記上壁に形成され、前記送風ファンの駆動により、前記吸込口から前記吹出口へ向けて前記容器の内部を上昇する空気の流れが生じ、
前記第一エアノズルは、前記容器の内部における前記吹出口の近傍に配置されて、下方に向けて圧縮空気を吹き出し、
前記第二エアノズルは、前記容器の内部における前記側壁の近傍に配置されて、前記容器の径内方に向けて圧縮空気を吹き出し、
前記第三エアノズルは、前記容器の内部における前記吸込口の近傍に配置されて、上方に向けて圧縮空気を吹き出す請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記容器の下側に配置される下筒と、
前記容器の上側に配置される上筒とをさらに備え、
前記下筒は、上端及び下端に開口が形成される筒状を呈し、
前記下筒の上端における開口の周縁が前記容器の下壁における前記吸込口の周縁に接合されることで、前記下筒と前記容器とは、これらの内部が連通するように一体とされ、 前記上筒は、上端が上壁で塞がれ、下端や側壁に開口が形成された筒状を呈し、
前記上筒の下端における開口の周縁が、前記容器の上壁における前記吹出口の周縁に接合されることで、前記上筒と前記容器とは、これらの内部が連通するように一体とされ、
前記送風ファンは、前記上筒の内部に設けられる羽根車と、前記羽根車の駆動源であるモータとを備え、
前記モータは、前記上筒の上壁の上面に固定されるモータ本体と、前記モータ本体が発生する動力によって回転する回転軸とを備え、
前記回転軸は、前記モータ本体から下方に延びて、前記上筒の上壁を貫通するものであって、前記上筒の内部に延び出た前記回転軸の下部に前記羽根車が接続されており、
前記回転軸の回転に伴い、前記羽根車が回転駆動することで、前記下筒の下端の開口から前記下筒の内部に流入するとともに、前記容器の内部や前記上筒の内部を順次通過して、前記上筒の側壁の開口から排出される空気の流れが生じる請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の冷却装置を用いて、
金属部品であるワークを冷却する方法であって、
前記容器の内部に前記ワークを配置する配置工程と、
前記容器の内部に前記ワークが配置された状態で、前記送風ファンを駆動させて、前記吸込口から前記吹出口へ向かう空気の流れを前記容器の内部に生じさせるファン駆動工程とを有し、
前記ファン駆動工程が実施される間において、前記ミストノズルからミストを前記容器の内部に噴霧させることと、前記エアノズルから圧縮空気を前記容器の内部に吹き出させることとが行われる冷却方法。
【請求項9】
前記配置工程では、第一温度に加熱された前記ワークが、前記容器の内部に配置され、
前記ファン駆動工程が実施される間では、前記ワークの温度が前記第一温度から第二温度に低下するまでの時間において、前記ミストノズルからミストを噴霧させることと、前記エアノズルから圧縮空気を吹き出させることの双方が行われ、前記ワークの温度が前記第二温度から第三温度に低下するまでの時間では、前記ミストノズルからのミストの噴霧は行われず、前記エアノズルから圧縮空気を吹き出させることのみが行われる請求項8に記載の冷却方法。
【請求項10】
前記配置工程では、第一温度に加熱された前記ワークが、前記容器の内部に配置され、
前記ファン駆動工程では、前記ワークの温度が前記第一温度から第二温度に低下するまでの時間や、前記ワークの温度が前記第二温度から第三温度に低下するまでの時間において、前記ミストノズルからミストを噴霧させることと、前記エアノズルから圧縮空気を吹き出させることとの双方が行われ、
前記ワークの温度が前記第一温度から前記第二温度に低下するまでの時間では、前記ミストノズルから前記容器の内部に噴霧されるミストの単位時間あたりの量が、第一量とされ、
前記ワークの温度が前記第二温度から前記第三温度に低下するまでの時間では、前記ミストノズルから前記容器の内部に噴霧されるミストの単位時間あたりの量が、前記第一量よりも少ない第二量とされる請求項8に記載の冷却方法。
【請求項11】
前記配置工程では、第一温度に加熱された前記ワークが、前記容器の内部に配置され、
前記ファン駆動工程では、前記ワークの温度が前記第一温度から第二温度に低下するまでの間、前記ミストノズルからミストを噴霧させることと、前記エアノズルから空気を吹き出させることとの双方が行われて、前記ミストノズルから前記容器の内部に噴霧するミストの単位時間あたりの量が一定とされる請求項8に記載の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部品等であるワークを冷却するための冷却装置、及び前記ワークを冷却する冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の金属部品等のワークの強度向上などを目的として、例えば、ダイキャスト法で鋳造されたワークが、200℃~1000℃程度に加熱された状態で、以下の(1)~(4)のいずれかの方法で冷却されている。
【0003】
(1)ファンが生じさせる空気の流れを、ワークに吹き付ける方法(例えば特許文献1)
(2)無風の大気中にワークを静置して、ワークを自然放熱させる方法。
(3)水にワークを浸漬させる方法。
(4)
図14に示すようにミストノズルZからミストMをワークWに噴霧する方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の(1)や(2)の方法では、ワークの冷却に長い時間を要することで、製品の生産性が低下する問題が生じていた。
【0006】
また上記の(3)の方法では、急激な温度変化による熱衝撃が原因で、ワークが割れやすくなるという問題があった。
【0007】
また
図14に示す(4)の方法では、ワークWに凹みや穴がある場合、ミストMが凹みや穴に入らないことで、ワークWの局所が冷却不能となって、温度ムラが生じる問題があった。さらに(4)の方法では、ライデンフロスト現象が生じることで、ワークの冷却に長い時間を要し得る。ライデンフロスト現象とは、
図15に示すように、高温のワークWに接触したミストMが蒸発することでワークWの表面近傍に蒸気の膜Jが形成されて、この蒸気の膜JがワークWへのミストMの接触を阻止することで、ミストMがワークWの表面から浮き上がり、この浮き上がったミストMによって水滴Sが生じる現象である。ミストMが水の液滴であり、ワークWの表面温度が140度付近から300度前後の範囲にある場合には、上記のライデンフロスト現象により、
図16に示すように、ワークWの表面温度が高いほど、ワークWの熱がミストMに伝わりにくく、ミストMの蒸発に時間がかかるようになる。そしてこのようにミストMの蒸発に時間がかかると(ワークWの熱がミストMに伝わりにくくなると)、ワークWの冷却に長い時間がかかり、多量のミストMが必要となって冷却効率が低下する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、短時間でワークを冷却できるとともに、冷却後のワークを割れにくいものにすることの可能な冷却装置及び冷却方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0010】
項1.冷却対象物であるワークの周辺にミストを噴霧するミストノズルと、
前記ワークに向けて圧縮空気を吹き出すエアノズルとを有する冷却装置。
【0011】
項2.前記ワークは、凹みを有するものであり、
前記凹みに圧縮空気が入るように、設置位置や圧縮空気の吹き出し方向が調整された前記エアノズルを有する項1に記載の冷却装置。
【0012】
項3.前記エアノズルから吹き出された圧縮空気が、前記ワークの所定範囲のみに当たるように、前記エアノズルの設置位置や前記エアノズルからの圧縮空気の吹き出し方向が調整されている項1又は2に記載の冷却装置。
【0013】
項4.前記ワークが内部に配置される容器をさらに備え、
前記ミストノズルは、前記容器の内部にミストを噴霧し、
前記エアノズルは、前記容器の内部に配置される前記ワークに向けて圧縮空気を吹き出すことを特徴とする項1乃至3のいずれかに記載の冷却装置。
【0014】
項5.送風ファンをさらに有し、
前記容器の壁には、空気の吸込口や吹出口が形成されており、
前記送風ファンは、前記吸込口から前記吹出口へ向かう空気の流れを前記容器の内部に生じさせる項4に記載の冷却装置。
【0015】
項6.前記エアノズルとして、
前記空気の流れの上流側に向けて、圧縮空気を吹き出す第一エアノズルと、
前記空気の流れを横断する方向に、圧縮空気を吹き出す第二エアノズルとが設けられる項5に記載の冷却装置。
【0016】
項7.前記エアノズルとして、前記空気の流れの下流側に向けて、圧縮空気を吹き出す第三エアノズルがさらに設けられる項6に記載の冷却装置。
【0017】
項8.前記容器は、上下に相対する上壁及び下壁と、前記上壁及び前記下壁をつなぐ側壁とを有し、前記上壁、前記下壁、及び前記側壁によって囲まれる内部の空間に、前記ワークが配置され、
前記吸込口が前記下壁に形成され、前記吹出口が前記上壁に形成され、前記送風ファンの駆動により、前記吸込口から前記吹出口へ向けて前記容器の内部を上昇する空気の流れが生じ、
前記第一エアノズルは、前記容器の内部における前記吹出口の近傍に配置されて、下方に向けて圧縮空気を吹き出し、
前記第二エアノズルは、前記容器の内部における前記側壁の近傍に配置されて、前記容器の径内方に向けて圧縮空気を吹き出し、
前記第三エアノズルは、前記容器の内部における前記吸込口の近傍に配置されて、上方に向けて圧縮空気を吹き出す項7に記載の冷却装置。
【0018】
項9.前記容器の下側に配置される下筒と、
前記容器の上側に配置される上筒とをさらに備え、
前記下筒は、上端及び下端に開口が形成される筒状を呈し、
前記下筒の上端における開口の周縁が前記容器の下壁における前記吸込口の周縁に接合されることで、前記下筒と前記容器とは、これらの内部が連通するように一体とされ、
前記上筒は、上端が上壁で塞がれ、下端や側壁に開口が形成された筒状を呈し、
前記上筒の下端における開口の周縁が、前記容器の上壁における前記吹出口の周縁に接合されることで、前記上筒と前記容器とは、これらの内部が連通するように一体とされ、
前記送風ファンは、前記上筒の内部に設けられる羽根車と、前記羽根車の駆動源であるモータとを備え、
前記モータは、前記上筒の上壁の上面に固定されるモータ本体と、前記モータ本体が発生する動力によって回転する回転軸とを備え、
前記回転軸は、前記モータ本体から下方に延びて、前記上筒の上壁を貫通するものであって、前記上筒の内部に延び出た前記回転軸の下部に前記羽根車が接続されており、
前記回転軸の回転に伴い、前記羽根車が回転駆動することで、前記下筒の下端の開口から前記下筒の内部に流入するとともに、前記容器の内部や前記上筒の内部を順次通過して、前記上筒の側壁の開口から排出される空気の流れが生じる項8に記載の冷却装置。
【0019】
項10.ワークを冷却する方法であって、
ミストノズルから前記ワークの周辺にミストを噴霧させることと、エアノズルから前記ワークに向けて圧縮空気を吹き出させることとが行われる冷却方法。
【0020】
項11.項5乃至9のいずれかに記載の冷却装置を用いて、ワークを冷却する方法であって、
前記容器の内部に前記ワークを配置する配置工程と、
前記容器の内部に前記ワークが配置された状態で、前記送風ファンを駆動させて、前記吸込口から前記吹出口へ向かう空気の流れを前記容器の内部に生じさせるファン駆動工程とを有し、
前記ファン駆動工程が実施される間において、前記ミストノズルからミストを前記容器の内部に噴霧させることと、前記エアノズルから圧縮空気を前記容器の内部に吹き出させることとが行われる冷却方法。
【0021】
項12.前記配置工程では、第一温度に加熱された前記ワークが、前記容器の内部に配置され、
前記ファン駆動工程が実施される間では、前記ワークの温度が前記第一温度から第二温度に低下するまでの時間において、前記ミストノズルからミストを噴霧させることと、前記エアノズルから圧縮空気を吹き出させることの双方が行われ、前記ワークの温度が前記第二温度から第三温度に低下するまでの時間では、前記ミストノズルからのミストの噴霧は行われず、前記エアノズルから圧縮空気を吹き出させることのみが行われる項11に記載の冷却方法。
【0022】
項13.前記配置工程では、第一温度に加熱された前記ワークが、前記容器の内部に配置され、
前記ファン駆動工程では、前記ワークの温度が前記第一温度から第二温度に低下するまでの時間や、前記ワークの温度が前記第二温度から第三温度に低下するまでの時間において、前記ミストノズルからミストを噴霧させることと、前記エアノズルから圧縮空気を吹き出させることとの双方が行われ、
前記ワークの温度が前記第一温度から前記第二温度に低下するまでの時間では、前記ミストノズルから前記容器の内部に噴霧されるミストの単位時間あたりの量が、第一量とされ、
前記ワークの温度が前記第二温度から前記第三温度に低下するまでの時間では、前記ミストノズルから前記容器の内部に噴霧されるミストの単位時間あたりの量が、前記第一量よりも少ない第二量とされる項11に記載の冷却方法。
【0023】
項14.前記配置工程では、第一温度に加熱された前記ワークが、前記容器の内部に配置され、
前記ファン駆動工程では、前記ワークの温度が前記第一温度から第二温度に低下するまでの間、前記ミストノズルからミストを噴霧させることと、前記エアノズルから空気を吹き出させることとの双方が行われて、前記ミストノズルから前記容器の内部に噴霧するミストの単位時間あたりの量が一定とされる項11に記載の冷却方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、短時間でワークを冷却できるとともに、冷却後のワークを割れにくいものにすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷却装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る冷却装置の平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る冷却装置の正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る冷却装置の側面図である。
【
図7】冷却装置に設けられる管路を示す概略図である。
【
図8】第一エアノズル7Aから吹き出される圧縮空気Bが、第1ミストノズル8Aから噴霧されるミストMを、ワークWの表面に押し付ける状態を示す概略図である。
【
図9】本発明の冷却装置の変形例を示す概略断面図である。
【
図10】比較例における冷却後のワークWの状態を示す写真である。
【
図11】本発明の実施例における冷却後のワークWの状態を示す写真である。
【
図12】比較例においてワークWを冷却する間におけるワークWの表面の状態を示す写真である。
【
図13】本発明の実施例においてワークWを冷却する間におけるワークWの表面の状態を示す写真である。
【
図14】ワークにミストを噴霧することで、ワークを冷却する従来の方法を示す概略斜視図である。
【
図15】ライデンフロスト現象を示す概略図である。
【
図16】ミストの蒸発時間と、ワークの表面温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る冷却装置1を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る冷却装置1の斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係る冷却装置1の平面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る冷却装置1の正面図である。
図4は、本発明の実施形態に係る冷却装置1の側面図である。
図5は、冷却装置1の内部を示す概略断面図である。
図6は、冷却装置1が備える容器2の内部を示す写真である。
【0027】
本実施形態に係る冷却装置1は、容器2の内部に配置されるワークW(
図5)を冷却可能なものである。冷却対象物であるワークWは、例えば、ダイキャスト法で鋳造される自動車の金属部品である。当該ワークWは、焼き入れ処理のために、200℃~1000℃程度に加熱された状態で容器2の内部に配置されて冷却される。
図5に示す例では、ワークWは、3層構造を呈し、下層W1・上層W2・中間層W3の順に平面寸法が小さくなることで、中間層W3の側方に凹みKを有している。
【0028】
図1~
図5に示すように、冷却装置1は、上記の容器2と、下筒3と、上筒4と、送風ファン5と、エアノズル7(7A,7B,7C)と、ミストノズル8(8A,8B)とを有する(送風ファン5やノズル7,8については
図5参照)。
【0029】
容器2は、直方体の箱状を呈している。すなわち、容器2は、上下に相対する上壁9及び下壁10と、上壁9及び下壁10をつなぐ4つの側壁11とを有しており、上壁9、下壁10、及び側壁11によって囲まれる内部の空間にワークWが配置される。
図5に示すように、容器2の上壁9には空気の吹出口12が形成される。容器2の下壁10には空気の吸込口13が形成される。
【0030】
容器2が備える4つの側壁11のうち、一の側壁11には扉14(
図1~
図4)が設けられ、前記一の側壁11と相対する二の側壁11には扉15(
図4)が設けられる。これら扉14,15は公知の手段によって開閉可能とされたものであり、扉14を開状態にすることで容器2の内部にワークWを配置でき、扉15を開状態にすることで容器2の内部からワークWを取り出すことができる(容器2の内部でワークWの冷却を行う際には、扉14,15は閉状態とされる)。
【0031】
図6は、ワークWが配置されていないときの容器2の内部の状態を示している。
図6に示すように、容器2の内部には一対のレール16,16が設けられる。レール16,16は、下壁10の内面に固定されるものであって、扉14側(
図6の手前側)から扉15側(
図6の奥側)へと延びて、吸込口13の上方を通過する。容器2の内部にワークWを配置する際には、レール16の上にワークWが載置される(具体的には、
図6に示すようにレール16の上に金属製の格子17が配置されて、この格子17の上にワークWが載置される)。これにより、ワークWが吸込口13を塞ぐものとならず、吸込口13から空気を流入させることができる。
【0032】
図1,
図3~
図5に示すように、下筒3は、容器2の下側に配置される。
図5に示すように、下筒3は、上端に開口18が形成され、下端に開口19が形成される筒状を呈しており、下筒3の下部3aは大径とされ、下筒3の上部3bは上側になるほど径が徐々に小さくなっている。そして下筒3の上端における開口18の周縁が、容器2の下壁10における吸込口13の周縁に接合されることで、下筒3と容器2とは、これらの内部が連通するように一体とされている。
【0033】
図1,
図3~
図5に示すように、上筒4は、容器2の上側に配置される。上筒4は、上端が上壁20で塞がれる略円筒状を呈しており、下端に開口21が形成され、側壁24に開口22を有するダクト23が形成される。そして上筒4の下端における開口21の周縁が、容器2の上壁9における吹出口12の周縁に接合されることで、上筒4と容器2とは、これらの内部が連通するように一体とされている。
【0034】
ダクト23は、上筒4の側壁24から外側に突出するものであり、開口22はダクト23の上壁23aの先端側に形成され、ダクト23の下壁23bは先端側になるほど上方に湾曲する。このダクト23の構造によって、上筒4の内部に流入した空気は、開口22に向けて円滑に流れて、開口22から上方に排出される。
【0035】
図5に示すように、送風ファン5は、上筒4の内部に設けられる羽根車30と、羽根車30の駆動源であるモータ31とを備える。
【0036】
モータ31は、モータ本体32と、回転軸33とを備える。モータ本体32は、上筒4の上壁20の上面に固定される。回転軸33は、モータ本体32から下方に延びるものであって、モータ本体32が発生する動力によって回転する。この回転軸33は、上筒4の上壁20を貫通して、その下部が上筒4の内部に延び出ており、当該上筒4の内部に延び出た回転軸33の下部に羽根車30が接続される。
【0037】
上記の送風ファン5によれば、回転軸33の回転に伴い羽根車30が回転駆動することで、冷却装置1内に空気の流れRを生じさせることができる。この空気の流れRは、下筒3の開口19から下筒3の内部に流入した常温の空気が、容器2の内部や上筒4の内部を順次通過して、上筒4の開口22(ダクト23の開口22)から排出されるものであり、容器2の内部では、空気の流れRは、吸込口13から吹出口12へ向けて上昇する。
【0038】
なお、下筒3の下端の開口19から空気を流入させるために、冷却装置1は、架台40に吊り下げられて、下筒3が宙に浮くものとされる(
図1,
図3,
図4参照)。
【0039】
架台40は、キャスター取付板41と、複数の支柱42と、枠体43と、一対の背面フレーム44,44と、連結フレーム45と、固定部材46と、門型フレーム49とを有する。キャスター取付板41は矩形の環状を呈しており、当該取付板41の四隅の下面にキャスター70が取り付けられる。このキャスター70が床に載置されることで、架台40は移動可能とされる。
【0040】
支柱42は、キャスター取付板41の外周縁から上方に延びる。枠体43は支柱42の上端に支持される。枠体43は矩形の環状を呈しており、枠体43の内側の孔43a(
図3,
図4)に下筒3の上部3bが通される。一対の背面フレーム44,44は、枠体43から上方に延びる。連結フレーム45は、背面フレーム44,44の上部を連結する。固定部材46は、連結フレーム45に固定される板材47と、板材47から前方に突出する突出部材48とを備え、突出部材48の先端に送風ファン5のモータ本体32が公知の手段によって固定される。門型フレーム49は、一対の脚部49a,49aと、脚部49a,49aの上端同士を連結する連結板49bとを備える。脚部49a,49aの下端は枠体43に固定される。容器2は脚部49a,49aの間に配置される。連結板49bの幅中央には貫通孔49c(
図3)が形成されており、この貫通孔49cに上筒4の下端部4aが通される。下端部4aの外壁にはフランジ4bが形成されており、当該フランジ4bは連結板49bの上面に支持されて連結板49bに固定される。
【0041】
上記の架台40は、突出部材48の先端にモータ本体32が固定されることや、連結板49bが上筒4のフランジ4bを支持することや、枠体43が容器2の下壁10(
図5参照)を支持することにより、冷却装置1を吊り下げる。この吊り下げにより、下筒3が宙に浮いており、送風ファン5の駆動に伴い(羽根車30の回転駆動に伴い)、下筒3の下端の開口19から空気を流入させて、空気の流れRを生じさせることできる。なお、冷却装置1を吊り下げる手段は、上記の架台40に限定されず、冷却装置1を吊り下げ可能な種々の手段を適用できる。
【0042】
ミストノズル8(
図5)は、容器2の内部にミストMを噴霧するものである。このミストMは、コンプレッサC(後述の
図7)から供給される圧縮空気Bと、水道源Dから供給される冷却水(水道水)とがミストノズル8で混合されることで生じる。本実施形態の冷却装置1では、上記のミストノズル8として、第一ミストノズル8Aと、第二ミストノズル8Bとが設けられる。
【0043】
第一ミストノズル8Aは、容器2の内部における側壁11の近傍に配置されて、容器2の径内方に向けてミストMを噴霧する。
【0044】
第二ミストノズル8Bは、下筒3の内部における吸込口13の下側に配置されて、上方の容器2の内部に向けてミストMを噴霧する。
【0045】
上記の第一,第二ミストノズル8A,8Bとして、例えば、株式会社いけうち製のSETOV0406S303+TS303やBIMV8022S303+TS303を使用できる。
【0046】
エアノズル7(
図5)は、コンプレッサによって圧縮された空気Bを、容器2の内部に配置されるワークWに向けて吹き出すものである。このエアノズル7は、ライデンフロスト現象(ミストMが高温のワークWに接触することでワークWの表面近傍に生じた蒸気の膜が、ワークWへのミストMの接触を阻止する現象)を抑制するために設けられる。本実施形態の冷却装置1では、上記のエアノズル7として、第一エアノズル7Aと、第二エアノズル7Bと、第三エアノズル7Cとが設けられる。
【0047】
第一エアノズル7Aは、容器2の内部における吹出口12の近傍に配置されて、下方に向けて圧縮空気Bを吹き出す。この第一エアノズル7Aは、吸込口13から吹出口12へ向かう空気の流れRの上流側に向けて、圧縮空気Bを吹き出すものである。
【0048】
第二エアノズル7Bは、容器2の内部における側壁11の近傍に配置されて、容器2の径内方に向けて空気を吹き出す。この第二エアノズル7Bは、吸込口13から吹出口12へ向かう空気の流れRを横断する方向に、圧縮空気Bを吹き出すものである。また本実施形態では、第二エアノズル7Bから吹き出された圧縮空気BがワークWの凹みKに入るように、第二エアノズル7Bの設置位置や、第二エアノズル7Bから圧縮空気Bが吹き出される方向が調整されている。
【0049】
第三エアノズル7Cは、容器2の内部における吸込口13の近傍に配置されて、上方に向けて空気を吹き出す。この第三エアノズル7Cは、吸込口13から吹出口12へ向かう空気の流れRの下流側に向けて、圧縮空気Bを吹き出すものである。
【0050】
上記の第一・第二・第三エアノズル7A,7B,7Cとして、例えば、株式会社ミスミ製のPNZRF2-3-10やHOSAJW2-30-2-R20-L20-A2を使用できる。
【0051】
図7は、冷却装置1に設けられる管路Tを示す概略図である。
【0052】
図7に示す管路Tは、第一・第二・第三エアノズル7A,7B,7Cから圧縮空気Bを吹き出させ、第一・第二ミストノズル8A,8BからミストMを噴霧させるために設けられる。この管路Tでは、コンプレッサCに対して、第一主管50と、第一分岐管51と、第二分岐管52と、第三分岐管53と、複数の第四分岐管54と、複数の第五分岐管55と、複数の第六分岐管56とが設けられている。
【0053】
第一主管50の上流端は、コンプレッサCに接続される。第一、第二、第三分岐管51,52,53は、第一主管50の下流端から分岐する。第四分岐管54の各々は、第一分岐管51の下流端から分岐する。第五分岐管55の各々は、第二分岐管52の下流端から分岐する。第六分岐管56の各々は、第三分岐管53の下流端から分岐する。そして各第四分岐管54の下流端に第一ミストノズル8Aが接続され、各第五分岐管55の下流端に第二ミストノズル8Bが接続されている。また複数の第六分岐管56のうち、一部の下流端に第一エアノズル7Aが接続され、一部の下流端に第二エアノズル7Bが接続され、一部の下流端に第三エアノズル7Cが接続されている。また第一、第二、第三分岐管51,52,53には、それぞれ圧縮空気用電磁弁57,58,59が設けられている。
【0054】
さらに
図7に示す管路Tでは、水道源Dに対して、第二主管60と、第七分岐管61と、第八分岐管62と、複数の第九分岐管63と、複数の第十分岐管64とが設けられている。
【0055】
第二主管60の上流端は、水道源Dに接続される。第七及び第八分岐管61,62は、第二主管60の下流端から分岐する。第九分岐管63の各々は、第七分岐管61の下流端から分岐する。第十分岐管64の各々は、第九分岐管63の下流端から分岐する。そして各第九分岐管63の下流端に第一ミストノズル8Aが接続され、各第十分岐管64の下流端に第二ミストノズル8Bが接続されている。また第七及び第八分岐管61,62には、それぞれ冷却水用電磁弁65,66が設けられている。
【0056】
以上の管路Tによれば、第一主管50・第三分岐管53・第六分岐管56を介して、コンプレッサCが発生した圧縮空気を第一・第二・第三エアノズル7A,7B,7Cに供給して、第一・第二・第三エアノズル7A,7B,7Cから圧縮空気Bを吹き出させることができる。また圧縮空気用電磁弁59の開閉を制御することで、第一・第二・第三エアノズル7A,7B,7Cから吹き出される圧縮空気Bの単位時間当たりの量や、第一・第二・第三エアノズル7A,7B,7Cから圧縮空気Bが吹き出される時間を調整可能である。
【0057】
また上記の管路Tによれば、第一主管50・第一分岐管51・第四分岐管54を介して、コンプレッサCが発生した圧縮空気を第一ミストノズル8Aに供給でき、第二主管60・第七分岐管61・第九分岐管63を介して、水道源Dからの冷却水を第一ミストノズル8Aに供給できる。これにより、第一ミストノズル8Aで圧縮空気と冷却水とを混合してミストMとし、このミストMを第一ミストノズル8Aから噴霧させることができる。また圧縮空気用電磁弁57や冷却水用電磁弁65の開閉を制御することで、第一ミストノズル8Aから噴霧されるミストMの単位時間当たりの量や、第一ミストノズル8AからミストMが噴霧される時間を調整可能である。
【0058】
さらに上記の管路Tによれば、第一主管50・第二分岐管52・第五分岐管55を介して、コンプレッサCが発生した圧縮空気Bを第二ミストノズル8Bに供給でき、第二主管60・第八分岐管62・第十分岐管64を介して、水道源Dからの冷却水を、第二ミストノズル8Bに供給できる。これにより、第二ミストノズル8Bで圧縮空気Bと冷却水とを混合してミストMとし、このミストMを第二ミストノズル8Bから噴霧させることができる。また圧縮空気用電磁弁58や冷却水用電磁弁66の開閉を制御することで、第二ミストノズル8Bから噴霧されるミストMの単位時間当たりの量や、第二ミストノズル8BからミストMが噴霧される時間を調整可能である。
【0059】
本実施形態の冷却装置1を用いてワークWを冷却する際には、まず、加熱されて高温になったワークWを容器2の内部に配置する工程(以下、配置工程)が実施される。ついで、送風ファン5を駆動させることで、吸込口13から吹出口12へ向かう空気の流れRを容器2の内部に生じさせる工程(以下、ファン駆動工程)が実施される。そして当該ファン駆動工程が行われる間において(つまり容器2の内部に空気の流れRが生じる間において)、ミストノズル8からミストMを容器2の内部に噴霧させることと、エアノズル7から圧縮空気Bを容器2の内部に吹き出させることとが行われる。
【0060】
本実施形態によれば、エアノズル7から圧縮空気Bが吹き出されることで、蒸気の膜によってミストMが浮き上がるライデンフロスト現象を抑制できる。つまり本実施形態では、ミストノズル8から噴霧されたミストMが高温のワークWに接触して蒸発することで、ワークWの表面近傍に蒸気の膜が生じ得るが、
図8に示すように、エアノズル7から吹き出される圧縮空気Bは、蒸気の膜が浮き上がらせようとするミストMを、強制的にワークWの表面に押し付ける(
図8は、第一エアノズル7Aから吹き出される圧縮空気Bが、第1ミストノズル8Aから噴霧されるミストMを、ワークWの表面に押し付ける状態を示す)。このため本実施形態によれば、ライデンフロスト現象を抑制でき、ワークWの熱を迅速にミストMに奪わせることができる。
以上のことから本実施形態によれば、ワークWを短時間で冷却できる。そしてこのことから、冷却に要するミストMの量が少なく抑えられるので、冷却効率を向上させることができる。なお上記の効果を得るために、エアノズル7については、圧縮空気BがワークWに向かうように、設置位置や圧縮空気の吹き出し方向が調整される必要があるが、ミストノズル8については、ワークWの周辺にミストMが噴霧されるように、設置位置やミストMの噴霧方向が調整されればよい。上記の「ワークWの周辺」とは、「ミストMの浮遊によって、圧縮空気Bが吹き付けられるワークWの位置に、ミストMを到達させることの可能な空間」を意味するものであり、当該「ワークWの周辺」には、「ワークWが配置される空間」や、「ワークWが配置されないワークW近傍の空間」が含まれる。この「ワークWの周辺」にミストMが噴霧されれば、浮遊するミストMが圧縮空気BによってワークWに押し付けられるため、上記の効果が得られる。
図1に示す冷却装置1では、容器2の内部が、上記の「ワークWの周辺」に相当する。
【0061】
また本実施形態によれば、第一エアノズル7Aからの圧縮空気Bが、ミストMをワークWの上面に押し付け、第二エアノズル7Bからの圧縮空気Bが、ミストMをワークWの側面に押し付け、第三エアノズル7Cからの圧縮空気Bが、ミストMをワークWの下面に押し付けることで、ワークWの上面・側面・下面の全てにミストMが押し付けられる。また第二エアノズル7Bから吹き出される圧縮空気BがワークWの凹みKに入るので、ワークWの凹みKの内面にもミストMを押し付けることができる。以上のことから本実施形態によれば、ワークWの全体を均一に冷却可能であり、ワークWに温度ムラが生じることを防止できる。
【0062】
また本実施形態の冷却装置1によれば、ミストノズル8A,8Bから容器2の内部に噴霧されるミストMの単位時間当たりの量(以下、ミスト噴霧量)や、ミストノズル8A,8BからミストMが噴霧される時間(以下、ミスト噴霧時間)や、エアノズル7A,7B,7Cから容器2の内部に吹き出される圧縮空気Bの単位時間当たりの量(圧縮空気吹き出し量)や、エアノズル7A,7B,7Cから圧縮空気Bが吹き出される時間(圧縮空気吹き出し時間)を調整することで、ワークWに押し付けるミストMの量を調整できる。そしてこのような調整を行うことで、ワークWに急激な温度変化が生じることを回避できるので、冷却後のワークWを割れにくいものとすることができる。また上記の調整を行うことで、冷却後にワークWの表面に水分が残存することを防止できるので、冷却後におけるワークWの乾燥を省略できる。
【0063】
また本実施形態の冷却装置1によれば、上記のミスト噴霧量・ミスト噴霧時間・圧縮空気吹き出し量・圧縮空気吹き出し時間を調整することで、以下のモード1~3の方法によって、ワークWを冷却できる。
【0064】
<モード1>
配置工程では、第一温度(例えば500℃)に加熱されたワークWが、容器2の内部に配置される。
ファン駆動工程が実施される間では(送風ファン5の駆動で空気の流れRが生じる間では)、ワークWの温度が前記第一温度から第二温度(例えば200℃)に低下するまでの時間において、ミストノズル8からミストMを噴霧させることと、エアノズル7から圧縮空気Bを吹き出させることの双方が行われ、ワークWの温度が前記第二温度から第三温度(例えば50℃)に低下するまでの時間では、ミストノズル8からのミストMの噴霧は行われず、エアノズル7から圧縮空気Bを吹き出させることのみが行われる。
【0065】
<モード2>
配置工程では、第一温度(例えば500℃)に加熱されたワークWが、容器2の内部に配置される。
ファン駆動工程が実施される間では(送風ファン5の駆動で空気の流れRが生じる間では)、ワークWの温度が前記第一温度から第二温度(例えば200℃)に低下するまでの時間や、ワークWの温度が前記第二温度から第三温度(例えば50℃)に低下するまでの時間において、ミストノズル8からミストMを噴霧させることと、エアノズル7から圧縮空気Bを吹き出させることとの双方が行われる。
そしてワークWの温度が前記第一温度から前記第二温度に低下するまでの時間では、ミストノズル8から容器2の内部に供給されるミストMの単位時間あたりの量が、第一量とされ、ワークWの温度が前記第二温度から前記第三温度に低下するまでの時間では、ミストノズル8から容器2の内部に供給されるミストMの単位時間あたりの量が、第一量よりも少ない第二量とされる。
【0066】
<モード3>
配置工程では、第一温度(例えば500℃)に加熱されたワークWが、容器2の内部に配置される。
ファン駆動工程では、ワークWの温度が前記第一温度から第二温度(例えば50℃)に低下するまでの間、ミストノズル8からミストMを噴霧させることと、エアノズル7から空気を吹き出させることとの双方が行われて、ミストノズル8から容器2の内部に供給されるミストMの単位時間あたりの量が一定とされる。
【0067】
上記のモード1によれば、冷却前半にミストMが容器2の内部に供給されることで、冷却時間の短縮が図られる。そして冷却後半でワークWの冷却が空気のみによって行われることで、冷却後のワークWの表面に水分が残存することが防止される。
【0068】
上記のモード2によれば、冷却前半に多量のミストMが容器2の内部に供給されることで、冷却時間の短縮が図られる。そして冷却後半にミストMの供給量が減らされることで、冷却後のワークWの表面に水分が残存することが防止される。
【0069】
上記のモード3は、冷却時間の短縮を重視する場合に行われる。このモード3によれば、ミストMによる冷却効果が最大限に得られるため、冷却時間を大きく短縮できる。
【0070】
なお、モード1~3における以下の(1)~(5)の時間は、実験によって予め確認される時間である。モード1~3のファン駆動工程では、送風ファン5の駆動・ミストMの噴霧・圧縮空気Bの吹き出しが、実験と同一の条件で行われることで、実験で確認された時間において、ワークWの温度が第二温度や第三温度に低下する。
【0071】
(1)モード1における「ワークWの温度が第一温度(例えば500℃)から第二温度(例えば200℃)に低下するまでの時間」
(2)モード1における「ワークWの温度が第二温度(例えば200℃)から第三温度(例えば50℃)に低下するまでの時間」
(3)モード2における「ワークWの温度が第一温度(例えば500℃)から第二温度(例えば200℃)に低下するまでの時間」
(4)モード2における「ワークWの温度が第二温度(例えば200℃)から第三温度(例えば50℃)に低下するまでの時間」
(5)モード3における「ワークWの温度が第一温度(例えば500℃)から第二温度(例えば50℃)に低下するまでの時間」
【0072】
なお上記のワークWの温度とは、例えば、ワークWの所定箇所における温度であり、上記の予め行われる実験では、上記のワークWの温度が熱電対によって計測される。
【0073】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲において種々改変できる。
【0074】
例えば、本発明の冷却装置1によって冷却可能なワークWは、自動車の金属部品に限定されない。本発明の冷却装置1によれば、容器2の内部に配置可能な様々なワークWを冷却可能である。例えば、鉄などのアルミ以外の金属やCFRP(carbon fiber reinforced plastic)などの樹脂含有材料やセラミック等から形成された部品(ワーク)も、冷却装置1で冷却され得る。また、円筒や平板などの単純形状を呈する部品(ワーク)や、航空機や配管など自動車以外の用途に使用される部品(ワーク)も冷却装置1で冷却され得る。
【0075】
またエアノズル7やミストノズル8の形状や数や位置や、エアノズル7から圧縮空気が吹き出される方向や、ミストノズル8からミストが噴霧される方向も、ワークWの形状等に応じて種々設定され得る。
【0076】
例えば、エアノズル7A,7B,7Cから吹き出される圧縮空気Bの方向は、それぞれワークWの上面・側面・下面に対して垂直とされる。このようにすれば、ワークWの上面・側面・下面に圧縮空気Bを強く吹き付けることができるので、圧縮空気Bによって確実にミストMをワークWの上面・側面・下面に押し付けることができる。或いは、エアノズル7A,7B,7Cから吹き出される圧縮空気Bの方向は、ワークWの上面・側面・下面に対して、斜めとされてもよい(垂直でなくてもよい)。このようにすれば、ワークWの上面・側面・下面の広い範囲に圧縮空気Bを吹き付けることができるため、ワークWの上面・側面・下面の広い範囲にミストMを押し付けることができる。
【0077】
また例えば、
図5に示すエアノズル7A,7B,7Cのうち、空気の流れRの下流側に向けて圧縮空気Bを吹き出す第三エアノズル7Cは省略されてもよい。この場合、羽根車30を高速回転して、空気の流れRを速めることが行われる。このようにすれば、空気の流れRが、蒸気の膜によって浮き上がるミストMを強制的にワークWの下面に押し付けるので、ワークWの下面をミストMによって冷却できる。
【0078】
また、ワークW内部へのミストMの侵入を防止すべく、ワークWの表面にミストMを当てたくない部分が存在する場合には、エアノズル7の設置位置やエアノズル7からの圧縮空気Bの吹き出し方向を調整することで、ワークWの所定範囲のみに圧縮空気Bを当て、上記のワークWの部分には圧縮空気Bを当てないようにしてもよい。
【0079】
また、エアノズル7から圧縮空気Bを吹き出させ、ミストノズル8からミストMを噴霧させるために設けられる管路も、
図7に示す管路Tに限定されない。例えば、上流端がコンプレッサCに接続される管を、エアノズル7やミストノズル8の各々に対して設け、これらの管によって、コンプレッサCが発生した圧縮空気Bをエアノズル7やミストノズル8に個別に供給してもよい。また上流端が水道源Dに接続される管を、ミストノズル8の各々に対して設け、これらの管によって水道水をミストノズル8に個別に供給してもよい。以上のようにしても、エアノズル7から圧縮空気Bを吹き出させ、ミストノズル8からミストMを噴霧させることが可能である。さらに上記の場合には、各管に電磁弁を設けることが好ましい。このようにすれば、各電磁弁の開閉で、容器2の内部へのミストMの噴霧量・噴霧時間や、容器2の内部への圧縮空気Bの吹き出し量・吹き出し時間を調整できるので、上記のモード1~3の方法を実施できる。
【0080】
また上記の実施形態では、水道源Dから供給される冷却水(水道水)と、コンプレッサCから供給される圧縮空気とを混合してミストMを生じさせていたが、ミストMを生じさせるために圧縮空気と混合する液体は、上記の冷却水(水道水)に限定されない。例えば、メタノール・エタノール・プロパノールのアルコールや、フロンなど、粘性が低くて40℃~150℃で蒸発する液体を圧縮空気と混合することでミストMを生じさせて、当該ミストMをミストノズル8から噴霧させてもよい。このようにしても、ミストノズル8から噴霧されるミストMによってワークWを冷却できる(具体的には、エアノズル7から吹き出される圧縮空気が、ミストノズル8から噴霧されるミストMをワークWに押し付けることで、ワークWを冷却できる)。なお上記のようにする場合には、本発明の冷却装置は、
図7に示す管60~64や冷却水用電磁弁65,66の代わりに、例えば、上記のアルコールやフロン等の液体を貯留するタンクと、当該タンクとミストノズル8A,8Bとをつなぐ管と、当該管を介してタンク内の液体(アルコールやフロン等)をミストノズル8A,8Bに圧送するポンプと、上記管に設けられる液体用電磁弁とを備えるものとされる。以上のようにする場合には、ポンプによってミストノズル8A,8Bに圧送される液体とコンプレッサCからの圧縮空気とが混合することでミストMが生じ、当該ミストMがミストノズル8A,8Bから噴霧される。また上記液体用電磁弁や圧縮空気用電磁弁57,58(
図7)の開閉が制御されることで、ミストノズル8A,8Bから噴霧されるミストMの単位時間当たりの量や、ミストノズル8A,8BからミストMが噴霧される時間が調整可能とされる。
【0081】
さらに容器2の形状も、実施形態に示した直方体に限定されず、ワークWを内部に配置可能であり、空気の吹出口12・吸込口13を形成可能な任意の形状に変更され得る。また上筒4や下筒3の形状も、上記実施形態に示した形状に限定されず、容器2に接続可能な種々の形状に変更され得る。例えば上記の実施形態では、下筒3の下端に開口19(
図5)が形成される例を示したが、下筒3は、下端が底壁で塞がれたものであってもよい。この場合、
図5に示す開口19の代わりに、下筒3の側壁を貫通する開口が形成されて、当該側壁の開口から下筒3の内部に空気を流入させることが行われる。このようにすれば、下筒3を宙に浮かせる必要がないので、架台40を省略できる。また上壁9は、ダクト23が省略されたものであってもよい。この場合、上筒4は、例えば、羽根車30を内部に収容可能な略円筒形状とされる。そして
図5に示す開口22の代わりに、上筒4の側壁を貫通する開口が形成されて、この開口から上筒4の内部に流入した空気が排出される。
【0082】
また上筒4や下筒3は省略されてもよい。この場合、冷却装置の構造は、例えば
図9に示すように変更され得る。以下、
図9に示す冷却装置80について、上記実施形態に示した冷却装置1と異なる点を中心に説明する。
【0083】
図9に示す冷却装置80では、容器2の側壁11の上側にダクト230が設けられて、このダクト230によって空気の吹出口12が構成される。送風ファン5の羽根車30は容器2の内部の上側に配置されており、この羽根車30の下側にワークWが配置される。モータ本体32は容器2の上壁9の上面に固定されており、このモータ本体32から回転軸33が下方に延びている。この回転軸33は、容器2の上壁9を貫通して、その下部が容器2の内部に延び出ており、当該容器2の内部に延び出た回転軸33の下部に羽根車30が接続される。
図9に示す冷却装置80によれば、回転軸33の回転に伴い羽根車30が回転駆動することで、容器2の吸込口13から容器2の内部に流入する空気の流れRが生じる。この空気の流れRは、吸込口13から吹出口12に向けて容器2の内部を上昇して、吹出口12から排出されるものである。そして
図9に示す冷却装置80では、第一ミストノズル8Aが容器2の内部における側壁11の近傍に配置され、第二ミストノズル8Bが容器2の内部における吸込口13の近傍に配置される。また、第一エアノズル7Aは、容器2の内部における羽根車30の下側且つワークWの上側に配置され、第二エアノズル7Bは、容器2の内部における側壁11の近傍に配置され、第三エアノズル7Cは、容器2の内部におけるワークWの下側且つ第二ミストノズル8Bの上側に配置される。以上の冷却装置80によっても、上記実施形態に示した冷却装置1と同様の効果を奏し得る。また
図9に示す冷却装置80では、ダクト230を省略して、容器2の側壁11を貫通する吹出口12が形成されてもよい。
【0084】
図1に示す冷却装置1や
図9に示す冷却装置80では、空気の流れRを生じさせる送風ファン5は設けられなくてもよい。この場合でも、ミストノズル8から容器2の内部にミストMを噴霧させるとともに、エアノズル7から容器2の内部に圧縮空気Bを吹き出させることで、圧縮空気BがミストMをワークWの表面に押し付ける作用が生じるので、ワークWを短時間で冷却できる。
【0085】
また本発明の冷却装置は、ワークWを開放空間に配置するものであってもよい(つまり、本発明の冷却装置は、ワークWを内部に配置する容器2を有しないものであってもよい)。この場合でも、ミストノズル8やエアノズル7をワークWの近傍に配置して、ミストノズル8からワークWの周辺にミストMを噴霧し、エアノズル7からワークに向けて圧縮空気Bを吹き出せば、圧縮空気Bが、浮遊するミストMをワークWの表面に押し付ける作用が生じる。このため、ワークWを短時間で冷却できる。なお
図1に示す冷却装置1や
図9に示す冷却装置80のように、容器2が設けられれば、浮遊するミストMが容器2内に留まるため、確実にワークWの周辺にミストMを滞留させることができる。したがって、ワークWの表面に押し付けられるミストMの量を増やすことができるので、より短時間でワークWを冷却できる。
【0086】
本発明者らは、本発明による効果を確認する試験を行っている。以下、この試験について説明する。
【0087】
本発明者らは、本発明の実施例として、
図1~
図7に示す冷却装置1を使用してワークWを冷却することを行った。また比較例として、水への浸漬でワークWを冷却することを行った。
【0088】
実施例では、900℃に加熱したワークW(0.3kgの鋳鉄の配管部品)を容器2の内部に配置した後、送風ファン5を駆動させて容器2の内部に空気の流れRを生じさせた。そして送風ファン5が駆動する間において、第一・第二ミストノズル8A,8Bから容器2の内部にミストMを供給し、第一・第二・第三エアノズル7A,7B,7Cから容器2の内部に圧縮空気Bを供給して、ワークWの温度を50℃に低下させた。
【0089】
一方、比較例では、900℃に加熱したワークWを水に浸漬することで、ワークWの温度を50℃に低下させた。
【0090】
実施例では、ワークWの温度が900℃から50℃に低下するまでの時間が45秒であった。これに対し、比較例では、ワークWの温度が900℃から50℃に低下するまでの時間が6秒であった。このことから、比較例ではワークWに急激な温度低下が生じたこと、実施例では、比較例に比べてワークWの温度が緩やかに低下することが確認された。
【0091】
図10は、比較例における冷却後のワークWの状態を示す写真である。
図11は、実施例における冷却後のワークWの状態を示す写真である。比較例では、ワークWに急激な温度低下が生じたことで、
図10に示すように、冷却後のワークWに割れHが発生した。これに対して、ワークWの温度が緩やかに低下した実施例では、
図11に示すように、冷却後のワークWに割れは生じなかった。以上のことから、本発明によれば、ワークWに急激な温度低下が生じることを回避し、冷却後のワークWに割れが発生することを防止可能であることが確認された。
【0092】
また本発明者らは、送風ファン5の駆動時に圧縮空気Bを容器2の内部に供給する実施例と、送風ファン5の駆動時に圧縮空気Bを容器2の内部に供給しない比較例とを比較する試験も行った。
【0093】
実施例では、300℃に加熱したワークW(アルミ製の自動車部品)を容器2の内部に配置した状態で、送風ファン5の駆動により空気の流れRを生じさせた。そして送風ファン5が駆動する間において、第一・第二ミストノズル8A,8BからミストMを容器2の内部に供給し、第一・第二・第三エアノズル7A,7B,7Cから圧縮空気Bを容器2の内部に供給した。
【0094】
一方、比較例では、実施例と同様、300℃に加熱したワークW(アルミ製の自動車部品)を容器2の内部に配置して、送風ファン5の駆動で空気の流れRを生じさせたが、この送風ファン5の駆動時には、第一・第二ミストノズル8A,8BからミストMを容器2の内部に供給することのみを行い、第一・第二・第三エアノズル7A,7B,7Cからの圧縮空気Bの供給は行わなかった。
【0095】
図12は、比較例でワークWを冷却する間におけるワークWの表面の状態を示す写真である。
図13は、実施例でワークWを冷却する間におけるワークWの表面の状態を示す写真である。
【0096】
圧縮空気Bを容器2の内部に供給しない比較例では、
図12に示すように、ワークWを冷却する間に、ライデンフロスト現象による水滴SがワークWの表面に生じた(水滴Sは、ワークWの表面近傍に発生した蒸気の膜によって、ワークWへの接触が阻まれ蒸発しなかったミストMが、集積したものである)。一方、圧縮空気Bを容器2の内部に供給した実施例では、ライデンフロスト現象による水滴がワークWの表面に生じなかった(
図13)。以上のことから、本発明によれば、圧縮空気Bを容器2の内部に供給することで、ライデンフロスト現象が抑制されることが確認された(つまり、圧縮空気Bを容器2の内部に供給することで、ミストMがワークWの表面に押さえ付けられて、ワークWの熱でミストMが蒸発することが確認された)。そしてこのことから、圧縮空気Bを容器2の内部に供給することで、ワークWの熱を確実にミストMに奪わせることが可能になることが確認された。
【0097】
以下の表1は、上記の実施例及び比較例において、ワークWの温度を300℃から50℃に低下させるために要した時間や冷却水(水道水)の量を示す(冷却水は、ミストMを生じさせるために、ミストノズル8で圧縮空気Bと混合されるものである)。
【0098】
【0099】
表1から明らかなように、圧縮空気Bを容器2の内部に供給する実施例では、ワークWの温度が50℃になるまでの時間が、圧縮空気Bを容器2の内部に供給しない比較例の時間に比して、1/3程度に抑えられた。そしてこのことから、実施例では、比較例に比して、1/3程度の冷却水の量で、ワークWの温度を50℃に低下させることができた。以上のことから、容器2の内部に圧縮空気Bを供給することで、ワークWの冷却時間が短縮して、冷却効率が向上することが実証された。
【0100】
また本発明者らは、上述したモード1~3の方法による冷却効果を確認するため、モード1~3の各々の方法によって、ワークW(アルミ製の自動車部品)を冷却する試験も行った。この試験では、モード1~3のいずれの方法においても、500℃(第一温度)に加熱したワークWを容器2の内部に配置し、これに続くファン駆動工程にて、送風ファン5を駆動させて、空気の流れRを生じさせた。
【0101】
そしてモード1の方法では、ファン駆動工程の前半で、ミストノズル8からミストMを噴霧させることと、エアノズル7から圧縮空気Bを吹き出させることの双方を行って、ワークWの温度を500℃(第一温度)から200℃(第二温度)に低下させた。ファン駆動工程の後半では、ミストノズル8からのミストMの噴霧は行わず、エアノズル7から圧縮空気Bを吹き出させることのみ行って、ワークWの温度を200℃(第二温度)から50℃(第三温度)に低下させた。
【0102】
モード2の方法では、ファン駆動工程を実施する前半・後半にて、ミストノズル8からミストMを噴霧させることと、エアノズル7から圧縮空気Bを吹き出させることの双方を行った。そしてファン駆動工程の前半では、容器2の内部に供給されるミストMの単位時間あたりの量を第一量にして、ワークWの温度を500℃(第一温度)から200℃(第二温度)に低下させた。ファン駆動工程の後半では、容器2の内部に供給されるミストMの単位時間あたりの量を、第一量よりも少ない第二量にして、ワークWの温度を200℃(第二温度)から50℃(第三温度)に低下させた。
【0103】
モード3の方法では、ファン駆動工程を実施する間、ミストノズル8からミストMを噴霧させることと、エアノズル7から圧縮空気Bを吹き出させることの双方を行い、ミストノズル8から噴霧されるミストMの単位時間あたりの量を一定にして、ワークWの温度を500℃(第一温度)から50℃(第二温度)に低下させた。
【0104】
また本試験では、比較例として、500℃に加熱したワークWを、送風ファン5の駆動による空気の流れRのみで冷却することも行っている(比較例では、ミストノズル8からのミストMの噴霧や、エアノズル7からの圧縮空気Bの吹き出しは行っていない)。
【0105】
そして本試験では、モード1~3や比較例の各々における、ワークWの冷却時間をタイマーで計測するとともに、冷却後のワークWの表面に残存する水分を目視で確認した。その結果を以下の表2に示す。
【0106】
【0107】
ファン駆動時にミストMを噴霧するモード1、2によれば、ミストMを噴霧しない比較例に比べて、ワークWの冷却時間が短縮された。このことから、ミストMを噴霧することが冷却時間を短縮する上で効果的であることが実証された。さらにファン駆動時にミストノズル8から一定量のミストMを噴霧させたモード3によれば、ワークWの冷却時間が、モード1,2よりも短縮されることが確認された。したがってモード3によれば、ワークWの冷却時間を大幅に短縮できることが確認された。
【0108】
またファン駆動に一定量のミストMを噴霧させたモード3ではワークWの表面に残存する水分が確認されたものの、モード1,2によれば、ワークWの表面に残存する水分が確認されなかった。このことから、モード1で冷却後半にミストMの噴霧を行わないことや、モード2で冷却後半にミストMの供給量を少なくすることが、ワークW表面に水分が残存することを防止する上で効果的であることが確認された。
【符号の説明】
【0109】
1,80 冷却装置、
2 容器、
3 下筒、
4 上筒、
5 送風ファン、
7 エアノズル、
7A 第一エアノズル、
7B 第二エアノズル、
7C 第三エアノズル、
8 ミストノズル、
8A 第一ミストノズル、
8B 第二ミストノズル、
9 容器の上壁、
10 容器の下壁、
11 容器の側壁、
12 吹出口、
13 吸込口、
18 下筒の上端の開口、
19 下筒の下端の開口、
20 上筒の上壁、
21 上筒の下端の開口、
22 上筒の側壁の開口、
30 羽根車、
31 モータ、
32 モータ本体、
33 回転軸、
A 圧縮空気、
M ミスト、
R 空気の流れ、
W ワーク