(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】給餌装置
(51)【国際特許分類】
A01K 5/02 20060101AFI20220216BHJP
A01K 1/03 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
A01K5/02
A01K1/03 Z
(21)【出願番号】P 2019095223
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】520068010
【氏名又は名称】株式会社KAI
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 真志穂
(72)【発明者】
【氏名】竹島 雅之
(72)【発明者】
【氏名】油井 毅
(72)【発明者】
【氏名】郭 澤華
(72)【発明者】
【氏名】毛笠 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】小幡 翼
(72)【発明者】
【氏名】藤川 達矢
(72)【発明者】
【氏名】前田 晏里
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-061497(JP,A)
【文献】特開2013-005746(JP,A)
【文献】特開2010-000034(JP,A)
【文献】特開平10-136823(JP,A)
【文献】特開2016-041030(JP,A)
【文献】特開2002-360097(JP,A)
【文献】特開平02-060534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00- 9/00
A01K 39/00-39/06
A01K 31/00-31/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部材と、
前記基部材に対する相対位置が変動可能となるよう前記基部材に係合されるとともに、餌を支持する餌支持部を備え、前記餌支持部に支持される前記餌が前記餌支持部に対して相対移動しない第一状態と、前記第一状態における前記相対位置とは異なる相対位置において前記餌が前記餌支持部に対して相対移動する第二状態と、を取り得る移動部材と、
給餌の対象となる動物の所定の動作に応じて作動し、前記第一状態における前記移動部材の前記相対位置を前記第二状態における前記相対位置に変動させ、前記餌を前記餌支持部に対して相対移動させるとともに前記移動部材の外部に放出する餌放出操作部と、
を備える給餌装置。
【請求項2】
前記移動部材は前記基部材に対して相対回転可能に係合されることにより、前記基部材に対する前記相対位置が変動可能とされ、
前記餌放出操作部は、
前記動物の前記所定の動作に応じて前記移動部材を前記基部材に対して相対回転させることにより前記第一状態における前記移動部材の前記相対位置を前記第二状態における前記相対位置に変動させ、
前記第一状態において前記餌支持部に支持された前記餌を、前記第二状態において前記餌支持部に対し相対移動させた後、前記移動部材に設けられた前記外部との連通部から前記外部に放出する、請求項1に記載の給餌装置。
【請求項3】
前記第二状態において、前記餌は、重力又は遠心力によって、前記餌支持部に対し相対移動された後、前記連通部から前記外部に放出される、請求項2に記載の給餌装置。
【請求項4】
前記第二状態において、前記餌は、前記餌の外側から付与される機械的動力によって、前記連通部から前記外部に放出される、請求項2に記載の給餌装置。
【請求項5】
前記餌放出操作部は、
一端が前記移動部材と接続され、他端が自由端である軸状の操作用部材を備え、
前記操作用部材に対する前記動物の前記所定の動作により、前記第一状態における前記基部材に対する前記移動部材の前記相対位置を前記第二状態における前記相対位置に変動させる、請求項2-4の何れか1項に記載の給餌装置。
【請求項6】
前記操作用部材に対する前記動物の前記所定の動作は、
前記動物が体の一部によって前記操作用部材を把持し、前記操作用部材を重力方向における下方向の成分、又は上方向の成分、又は水平方向の成分を有した所定の方向に付勢する動作であり、
前記動作によって、前記操作用部材の一端が接続される前記移動部材に、前記基部材に対する相対回転力を付与する、請求項5に記載の給餌装置。
【請求項7】
前記操作用部材は、軸線方向における所定の部分に連結部を備え、
前記連結部は、前記操作用部材の前記他端側に所定値を超える引張荷重が付与されると切断するよう形成される、請求項6に記載の給餌装置。
【請求項8】
前記引張荷重の所定値は、前記給餌の対象となる前記動物の体重、腕力又は握力に基づいて設定される、請求項7に記載の給餌装置。
【請求項9】
前記給餌の対象となる前記動物は、前記体の一部を用いて前記操作用部材を把持し、且つ前記操作用部材に対して前記所定の動作が行なえる動物である、請求項6-8の何れか1項に記載の給餌装置。
【請求項10】
前記給餌の対象となる前記動物はサルである、請求項9に記載の給餌装置。
【請求項11】
前記移動部材が前記基部材に係合される係合部は、前記移動部材及び前記基部材の一方に回転軸を備え、
前記回転軸は、スラスト荷重及びラジアル荷重の少なくとも一方を支持する転がり軸受を介して前記移動部材及び前記基部材の他方に相対回転可能に支持される、請求項2-10の何れか1項に記載の給餌装置。
【請求項12】
前記移動部材は、少なくとも一部が、透明又は半透明な材質で形成される、請求項1-11の何れか1項に記載の給餌装置。
【請求項13】
前記透明又は前記半透明な前記材質は、アクリルである、請求項12に記載の給餌装置。
【請求項14】
前記基部材は、前記給餌の対象となる前記動物が飼育される檻の各部又は飼育される室内の天井に設けられる、請求項1-13の何れか1項に記載の給餌装置。
【請求項15】
前記基部材は、
前記檻の各部に設けられる第一基部材と、
一端が前記第一基部材と接続されるとともに、他端が前記移動部材と係合される第二基部材と、を備え、
前記第一基部材は前記檻の各部に複数設けられ、
前記移動部材は、前記複数の前記第一基部材のうち、任意の前記第一基部材から前記第二基部材を介して吊り下げられる、請求項14に記載の給餌装置。
【請求項16】
前記檻は屋内、又は屋外に配置され、
前記移動部材は開口を備えるとともに前記檻の一部に設けられた前記基部材に係合されて吊り下げられ、
前記給餌装置は、
前記移動部材の前記開口の上方に前記開口を覆う屋根を備える、請求項15に記載の給餌装置。
【請求項17】
前記給餌装置は、さらに、
前記移動部材から所定距離離間した位置における搬送部材上の供給部に供給される前記餌を前記搬送部材の作動によって、前記移動部材の前記開口まで搬送したのち前記開口を介して前記移動部材内に落下させ前記餌支持部に供給する搬送装置を備える、請求項16に記載の給餌装置。
【請求項18】
前記給餌装置は、動物園に配置され、
前記給餌装置のうち、
前記移動部材は、動物舎の内側に配置され、
前記搬送装置の前記供給部は、前記動物舎の外側に配置される、請求項17に記載の給餌装置。
【請求項19】
前記搬送装置は、前記供給部及び前記餌を前記移動部材内に落下させる落下部を除いて外周全周がカバーで覆われている、請求項17又は18に記載の給餌装置。
【請求項20】
前記餌放出操作部に対して前記所定の動作を行なった前記動物を撮影するカメラ及びビデオカメラの少なくとも一方と、
カメラ及びビデオカメラの少なくとも一方が撮影した静止画及びビデオ映像の少なくとも一方を放映するモニタと、
を備える、請求項1-19の何れか1項に記載の給餌装置。
【請求項21】
前記餌は、角部がない形状で形成される、請求項1-20の何れか1項に記載の給餌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給餌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、動物園等で飼育される展示動物(サル、象等)又は家庭等で飼育される愛玩動物(イヌ、猫等)に対して餌を与える場合、一般的には、給餌の対象となる各動物が餌を容易に確認(視認、嗅覚による確認等)でき、且つすぐに食べることができるよう、むき出しの餌を食べ易い場所(例えば、地面上、床の上、又は棚の上等)に直接供給する場合が多い。
【0003】
このとき、餌の供給方法の例としては、飼育員又は飼い主である人間が直接行なう方法がある。又、例えば特許文献1-3に記載されるような自動又は手動の給餌器を介して供給する方法がある。これにより、各動物は、餌の存在を確認した後、何の手段を講ずることなく単に餌が供給された場所に移動するだけで容易に餌を食べることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-360097号公報
【文献】特開平02-60534号公報
【文献】特開2010-34号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の給餌方法では、動物が餌を確認した後、餌を食べるまでのプロセスが非常に単純である。このため、近年、動物福祉(Animal Welfare)の観点からも好ましいとされる「動物が本来有する餌を取得する際の習性に基づく生き生きとした特有の行動(素早く走る、木を揺らす、木に登る等)を食餌の際に動物に発現させること」は困難である。従って、動物は運動不足に陥りやすく、健康面に影響が及ぶ虞がある。また、給餌の対象の動物が、例えば動物園の展示動物であった場合には、生き生きとしていない分、展示動物を観賞する際の魅力を減少させる一因ともなる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、給餌の際、動物に対し種特有の行動の発現を促す給餌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の給餌装置は、基部材と、前記基部材に対する相対位置が変動可能となるよう前記基部材に連結されるとともに餌を支持する餌支持部を備え、前記餌支持部に支持される前記餌が前記餌支持部に対して相対移動しない第一状態と、前記第一状態における前記相対位置とは異なる相対位置において前記餌が前記餌支持部に対して相対移動する第二状態と、を取り得る移動部材と、給餌の対象となる動物の所定の動作に応じて作動し、前記第一状態における前記移動部材の前記相対位置を前記第二状態における前記相対位置に変動させ、前記餌を前記餌支持部に対して相対移動させるとともに前記移動部材の外部に放出する餌放出操作部と、を備える。
【0008】
このように、給餌装置では、まず動物が所定の動作を行なう。そして、所定の動作に応じて餌放出操作部が操作されることにより、移動部材の第一状態における相対位置が第二状態における相対位置に変動する。このとき、第一状態においては、移動部材が備える餌支持部に支持されていた餌が、第二状態では餌支持部に対し相対移動するとともに移動部材の外部に放出され、移動部材の外部の何れかの場所に落下し着地する。そして、動物は、何れかの場所に成行きで着地した餌の位置に移動し餌を食べることができる。
【0009】
つまり、給餌の対象となる動物は餌を食べるために所定の動作を行なう必要がある。このため、動物の自然における餌取得時の状態に少しでも近づいたといえるため、動物にとって、精神的且つ肉体的に健康な状態となることが期待できる。また、動物が複数いる場合には、何れかの場所に成行きで着地した餌の位置まで移動する際、餌が他の動物に先に取られないよう急いで移動する必要がある。この状態についても、より自然に近い状態であるといえ、動物にとって、精神的且つ肉体的に健康な状態に近づけることが期待できる。
【0010】
また、餌は何れかの場所に成行きでランダムに着地するため、体が弱く早く走ることができない、例えば子供や高齢の動物でも、餌が近くに着地しさえすれば、餌を食べることができる。これにより、公平に餌の分配ができる。さらに、給餌の対象の動物が、例えば動物園の展示動物であった場合には、動物が所定の動作を行なうことにより、より自然に近い状態となるため展示動物を観賞する際の魅力が増し集客力の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態に係る給餌装置10の概要図である。
【
図2】第一基部材21と第二基部材22との係合方法を説明する図である。
【
図3】
図1におけるIII-III矢視断面図であり、第一状態における容器の状態を説明する図である。
【
図4】
図1におけるIII-III矢視断面図であり、第二状態における容器の状態を説明する図である。
【
図5】給餌装置10における作動を説明するフローチャートである。
【
図6】第一実施形態の変形例2の構成を説明する図である。
【
図7】第一実施形態の変形例3の構成を説明する図である。
【
図8】第二実施形態に係る給餌装置を説明する図である。
【
図9】第三実施形態に係る給餌装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1.第一実施形態>
(1-1.給餌装置10)
以下、第一実施形態の給餌装置10について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、給餌装置10は、
図1に示すように、一例として、動物園のサル舎1(動物舎に相当する)に配置されるものとして説明する。詳細には、給餌装置10は、動物園のサル舎のうち動物園の来園客が直接目視することができる屋外の檻5内に配置されるものとする。
【0013】
つまり、本実施形態においては、給餌装置10による給餌の対象となる動物はサル2(例えば、ニホンサル)である。なお、サルはあくまで一例であって、給餌装置は、動物園で飼育される他の動物に適用してもよい。この点についての詳細な説明は後に行なう。
【0014】
檻5は、少なくとも来園者側の面(前面5b)と天井5a側の面が金網又は鉄格子(以降の説明においては、代表として金網とのみ記載する)で形成され、来園者Hとサル2とが、金網によって区分け、即ち分離されているものとする。従って、檻5では、雨が降ると、天井5aの金網及び前面5bの金網を通して雨が檻5内に侵入する。
【0015】
図1に示すように、給餌装置10は、基部材20と、係合部30と、容器40(本発明の移動部材に相当する)と、餌放出操作部50と、屋根70と、ベルトコンベア80(搬送装置に相当する)とを備える。
図2に示すように、基部材20は、檻5の天井5aの金網に所定の手段によって固定される。このとき、所定の手段は、どのようなものでもよい。
【0016】
図1、
図2に示すように、基部材20は、檻5の天井5a(金網)に、図略のボルト等を利用して固定される第一基部材21、及び一端(
図1において上方)が第一基部材21と所定の手段によって接続され、他端が後に詳述する容器40と係合部30を介して係合される軸状の第二基部材22によって構成される。
【0017】
このとき、第一基部材21と第二基部材22とを接続する所定の手段は、どのようなものでもよい。一例として、
図2に示すように、直方体状に形成され、天井5aの下面に固定される第一基部材21に対し、第一基部材21の下面から下方に向かって突設される突部21aを設ける。また、軸状の第二基部材22の一端側の端面から孔22aを設け、第一基部材21の突部21aを孔22aに挿入し係合させる。
【0018】
そして、突部21aが孔22aに係合された状態で、第二基部材22及び突部21aを貫通するよう設けられた貫通孔23に抜け止めピン24を挿通させて第一基部材21と第二基部材22とを接続する。このような手段によって第一基部材21と第二基部材22とを接続してもよい。これにより、基部材20を構成する第一基部材21と第二基部材22とは容易に係脱できる。なお、上記態様に限らず、突部21aを第二基部材22に形成し、孔22aを第一基部材21に形成することによって、上記と同様に第一基部材21と第二基部材22とを接続してもよい。
【0019】
また、
図1に示すように、第一基部材21は、天井5aに複数箇所(例えば、
図1においては三箇所記載)固定される。このような構成により、容器40は、複数の第一基部材21のうち、任意の第一基部材21から第二基部材22を介して吊り下げられる。つまり、第二基部材22と接続する第一基部材21を変更することにより、容器40の吊り下げ位置が容易に変更できるようになっている。これにより、サル2が、後述するように給餌装置10を操作する際、操作に飽きがくることを抑制できる。
【0020】
このように、第二基部材22の他端には、基部材20(第一基部材21及び第二基部材22)に対する相対位置が変動可能となるよう容器40が係合部30を介して連結される。係合部30については、後に詳細に述べる。
【0021】
なお、上記において、第一基部材21と天井5aとの接続部分(詳細は図略)では、第一基部材21の質量、第二基部材22の質量、容器40の質量、及び大人のサル複数頭(例えば五頭)分の体重等が重力方向下方に向かって付与されても、接続が維持できる強度で形成される。また、第一基部材21と第二基部材22との接続部分では、第二基部材22の質量、容器40の質量、及び大人のサル複数頭(例えば五頭)分の体重等が重力方向下方に向かって付与されても、接続が維持できる強度で形成される。
【0022】
容器40(移動部材)は、サル舎で飼育されている複数のサル2たちに餌47を与える際、餌47を一時的に保持するアクリル製で透明(又は半透明)な容器である。従って、容器40内に餌47が投入された場合、サル2は容器40の外から容器40内の餌47が視認できる。本実施形態において、容器40は、概ね、直方体状に形成され、底面部41、側面部42-45及び四方の側面部42-45に囲われるとともに側面部42-45の上部に形成される開口Mを備える。
【0023】
このとき、底面部41、及び側面部42-45は、全てが透明(又は半透明)でなくてもよく、一部のみが透明(又は半透明)であるだけでも良い。なお、透明(又は半透明)な「一部」とは、サル2が容器40内の餌47を確実に視認できる部分であることが好ましく、例えば底面部41の全面、又は側面部42-45の下方部分等が例として挙げられる。
【0024】
図1、
図3に示すように、容器40は、第二基部材22の他端(
図1、
図3において下方)と、底面部41の概ね中央部に設けられた上述の係合部30を介して連結される。これにより、容器40は、檻5の天井5aに固定された基部材20に吊り下げられて空中で支持される。
【0025】
本実施形態において、係合部30は、
図1、
図3に示すように、回転軸31、ボールベアリング32、32(本発明の転がり軸受に相当する)、及び容器40の底面部41に形成される回転軸支持部33、33を備える。
図1に示すように、回転軸31は、第二基部材22(移動部材及び基部材の一方に相当する)の他端部に一体的に形成される。
【0026】
回転軸31は、回転軸31の軸方向における中央部において第二基部材22の軸方向と直交するとともに、第二基部材22が第一基部材21を介し天井5aへ取り付けられた状態において、水平で且つ容器40の側面部42、44と平行となるよう形成される。このように形成された回転軸31は、ラジアル荷重を支持するボールベアリング32、32を介して、容器40の底面部41に一体的に形成される回転軸支持部33、33に相対回転(相対移動に相当する)可能に支持される。
【0027】
これにより、容器40は、
図4に示すように、基部材20(第二基部材22)に対する相対位置が変動可能となるよう係合部30を介して基部材20に係合され支持される。ボールベアリング32、32は、回転軸31に対してラジアル方向の荷重を支持可能である公知の転がり軸受である。また、ボールベアリング32、32は、転動体としてボールを使用している。しかしながら、この態様に限らず、ボールベアリングは、転動体としてコロを使用するコロベアリング(転がり軸受)であってもよい。
【0028】
なお、上記実施形態においては、係合部30の回転軸31は、第二基部材22に形成され、ボールベアリング32を介して容器40(回転軸支持部33)を支持するものとして説明した。しかし、この態様には限らない。図示しないが、係合部30の回転軸31が容器40側に設けられた状態で、容器40がボールベアリング32、32を介して第二基部材22側に支持される構成であってもよい。これによっても同様の効果が期待できる。
【0029】
そして、容器40は、給餌装置10が作動しない非作動時、即ち通常時において、底面部41の上面が水平となる姿勢で基部材20の回転軸31に支持される。このような状態を成立させるため、容器40は、例えば、
図3、
図4に示すように第一引っ張りバネ48及び第二引っ張りバネ49を備えてもよい。
【0030】
第一引っ張りバネ48は、側面部42と回転軸31との間に所定の張力を有して配置される。また、第二引っ張りバネ49は、側面部42と対向する側面部44と回転軸31との間に所定の張力を有して配置される。そして、第一引っ張りバネ48及び第二引っ張りバネ49の各張力のバランスを調整することにより、給餌装置10の非作動時(通常時)における底面部41の上面を概ね水平状態とする(
図3参照)。
【0031】
また、容器40は、底面部41の上面に餌支持部46を備える。本実施形態において餌支持部46は、底面部41の上面における平面部全面である。つまり、給餌装置10の非作動時に、水平な底面部41の上面において、餌47を静止状態で支持(保持)可能な面全面を餌支持部46とする。なお、餌支持部46は平面状に限らず、若干、窪んでいてもよい。
【0032】
また、このとき、本実施形態における餌47は、人工で固形のペレットであり、概ね球状を呈しているものとする。ただし、この態様に限らず、餌47は、大豆等の豆類や、球状にカットされた、にんじん、サツマイモ、又はジャガイモ等の野菜であってもよい。また、餌47は、球状に限らず、角部がない形状で形成されているだけでもよく、例えば、米、麦等の小さく角部がなくて転がり易い穀類であってもよい。
【0033】
これにより、給餌装置10の非作動時において、底面部41が水平状態に維持されている場合、餌支持部46に支持された餌47は、水平状態の餌支持部46に対して相対移動しない。このような状態を「第一状態」と定義する。換言すると、底面部41(餌支持部46)が水平状態に維持され、餌47が餌支持部46に対して相対移動しない状態における、基部材20に対する容器40の相対位置の状態を「第一状態」と定義する。
【0034】
そして、このとき、
図3において、容器40に対し、矢印Ar1方向に所定の回転力が付与されると、底面部41(餌支持部46)が、水平状態から所定角度だけ傾斜する(
図4参照)。これにより、餌47は自身に付与される重力によって餌支持部46上に静止していられず、餌支持部46上を転がり(又は滑り)、餌支持部46に対して相対移動する。このような状態、即ち「第一状態」における基部材20に対する容器40の相対位置とは異なる相対位置において餌47が餌支持部46に対して相対移動する状態を「第二状態」と定義する。このように、容器40は、「第一状態」及び「第二状態」という二つの状態を取り得る。
【0035】
「第二状態」における底面部41(餌支持部46)の傾斜角度は、餌47の形状によって決まる。また、「第二状態」は、単に底面部41(餌支持部46)の一つの傾斜角度に対応する容器40の状態のみをいうのではない。「第二状態」は、餌47が餌支持部46に対して相対移動を開始する、即ち、転がり始めの傾斜角度以上の傾斜角度全てに対応する容器40の状態をいう。つまり、「第二状態」における底面部41(餌支持部46)の傾斜角度は、範囲(幅)を有している。
【0036】
容器40の底面部41には、任意の箇所に複数、容器40の外部と連通される連通部41aが設けられている。連通部41aは、餌47が容器40の内部から外部に通過可能な大きさで形成される。連通部41aは、底面部41のうちのどこに設けても良いが、容器40の状態が第一状態から第二状態となった時に、餌47が餌支持部46に対して相対移動し、その後、連通部41aを通過し、所定の付勢力を有して容器40から外部に放出される位置に形成されることが好ましい。連通部41aは、このような条件を満たすよう位置及び形状が決定される。なお、上述したように連通部41aの配置は任意であり、以降に説明する連通部41bを設けた場合には、連通部41aは設けても設けなくとも良い。
【0037】
容器40の側面部42のうち底面部41と接している下端部分の任意の箇所に容器40の外部と連通される連通部41bが複数設けられる。連通部41bも、餌47が容器40の内部から外部に通過可能な大きさで形成される。また、このとき、側面部42は、第二状態において底面部41が傾斜した際、傾斜の下方側に位置する側面である。
【0038】
連通部41bは、側面部42のうちのどこに設けても良いが、容器40が第一状態から第二状態に変動した時に、餌47が餌支持部46に対して相対移動し、その後、連通部41bを通過し、所定の付勢力を有して容器40から外部に放出される位置に形成されることが好ましい。連通部41bは、このような条件を満たすよう位置及び形状が決定される。
【0039】
餌放出操作部50は、給餌の対象となる動物であるサル2の所定の動作に応じて作動し、第一状態における容器40(移動部材)の相対位置を第二状態における相対位置に変動させる。これにより、餌47を餌支持部46に対して相対移動させるとともに容器40の外部に放出する。
【0040】
具体的には、餌放出操作部50は、
図1、
図3、
図4に示すように、一端が容器40の側面部42の上端部と接続され重力方向下方に延在する紐51(操作用部材に相当する)である。紐51は、容器40を作動させるのに必要な強度を備えていれば、どのような材質で形成されてもよい。材質の例としては、木綿、麻、絹、ポリプロピレン(PP)、ナイロン、紙、ゴム等が挙げられる。また、紐51は、軸状の部材であるともいえる。
【0041】
そして、紐51の端部には、サル2が手でつかみ易い部材である、例えばリング状部材やサル2が好きなおもちゃ等が取り付けられていても良い。また、紐51は、一端が容器40の側面部42の上端部と接続され吊り下げられたとき、自由端である他端の端部が、サル2が少し立ち上がって届く距離だけ離間していることが好ましい。ただし、これはあくまで一例であって、他端の端部の位置は、任意に設定すればよい。
【0042】
そして、サル2の所定の動作である、紐51の端部を手(体の一部に相当する)で掴み(把持に相当する)、下方に向かって引く動作(所定の動作に相当する)により、紐51に付与された引張り力(引張り荷重)が紐51の一端、延いては紐51の一端に接続される容器40との接続部に作用する。なお、上記態様に限らず、餌放出操作部50は、紐51に限らず、棒状の軸状部材でもよい。このとき、棒状の軸状部材である場合には、サル2の所定の動作としては、棒状の部材を引く動作だけではなく押す動作であっても良い。
【0043】
換言すると、紐51(操作用部材)に対するサル2の所定の動作とは、サル2が体の一部である手によって紐51を把持し、重力方向における下方向の成分を有した所定の方向に付勢する動作である。なお、紐51を引く方向は、重力方向における下方向の成分を有していればよいので、重力方向真下には限らない。そして、この動作によって、紐51の一端が接続される容器40(移動部材)に対し、基部材20に対する相対回転力を付与する。
【0044】
これによって、容器40は、
図4に示すように、第二引っ張りバネ49の付勢力(張力)に打ち勝ち、基部材20に対して回転軸31周りで且つ矢印Ar1の方向に相対回転され、
図3の状態である第一状態における容器40の相対位置が、第二状態における相対位置に変動される。このとき、第二状態における相対位置とは、容器40の底面部41の上面が所定の範囲の角度だけ傾斜した状態における相対位置である。
【0045】
このような容器40の変動により、第一状態において餌支持部46に支持された餌47が、第二状態において、主に重力によって餌支持部46に対し相対移動し、その後、容器40に設けられた連通部41a又は連通部41bを通過して外部に成行きで放出される。外部に放出された餌47は、例えば地面上に落下したのち、地面上を成行きで転がりランダムな位置で停止する。
【0046】
また、紐51は、軸線方向において、例えば一端側寄りの部分(所定の部分に相当する)に連結部51aを備える。連結部51aは、紐51の他端側に所定値(図略)を超える荷重(引張荷重)が付与されると切断されるよう形成される。このとき、荷重の所定値は、給餌の対象となるサル2の体重、詳細には大人のサル2の体重に基づいて設定される。
【0047】
一例として、連結部51aは、大人のサル三頭分の体重に相当する荷重が紐51の他端部に付与されたとき切断されるよう設定される。連結部51aの具体的な構造としては、例えば、紐51における連結部51aの部分を他の部分より細くすることにより対応すればよい。このとき、連結部51aの太さをどれだけにするかは、事前の実験等により決定すればよい。紐51が、このような構造を有する連結部51aを備えることにより、例えば、三頭以上の複数の大人のサル2が、紐51に同時にぶら下がると、まず紐51の連結部51aが切断される。
【0048】
これにより、紐51にぶら下がった三頭以上の複数のサル2の重さ、及び容器40の重さ等によって、容器40を天井5aに固定する基部材20が破壊され、容器40が基部材20等とともに落下し、落下した容器40及び基部材20等によってサル2が怪我をする事故が防止される。なお、このとき、容器40が吊り下げられる基部材20及び基部材20が固定される金網の各強度は、少なくとも、基部材20及び基部材20に吊り下げられる容器40、紐51及び大人のサル三頭分の合計質量を十分支持可能な強度で形成されることはいうまでもない。
【0049】
ただし、上記態様には限らず、荷重の所定値は、給餌の対象となるサル2の腕力、又は握力に基づいて設定してもよい。つまり、腕力の強さは、紐51を引く力の強さに等しいと考える。また、握力に基づいて設定する場合、握力の強さは、紐51を引く力に比例するものとして考える。そして、連結部51aは、複数のサル2が紐51を所定の荷重を超えた荷重で引張った場合に、切断されるよう設定されればよい。
【0050】
また、上記態様に限らず、紐51(操作用部材)は、連結部51aを備えていなくても良い。この場合、例えば、上述した基部材20及び金網の各強度をさらに向上させることにより対応可能である。コストはかかるが、このような対応によって、容器40の落下を防止しても良い。
【0051】
屋根70は、容器40の開口Mの上方に配置され、上方から視たとき開口Mを覆うように基部材20に所定の手段によって固定される。このとき、基部材20に固定するための所定の手段はどのようなものでもよい。また、屋根70はどのような形状であってもよいが、本実施形態では、基部材20の位置を頂点として容器40の側面部43及び側面部45側に向ってそれぞれ傾斜し形成される。これにより、雨が降った場合においても、開口Mから容器40の内部に水が入ることを防止でき、延いては容器40の内部にある餌47が濡れることを防止できる。
【0052】
このとき、屋根70と容器40の上端面との間には、少なくとも容器40が第一状態から第二状態に変動した場合においても、屋根70と容器40の上端面とが相互に干渉しない分の隙間を備える。また、容器40の上端面のうち、側面部43の上端面と屋根70との間には、
図1に示す、後に詳述するベルトコンベア80(搬送装置)の先端側の端部が容器40の開口Mの上方位置まで進入可能な隙間α1を備えている。また、容器40において、側面部43と対向する側面部45の上端面と屋根70との間には、隙間α1と同等、若しくは隙間α1より小さな隙間α2を備えている。
【0053】
図1に示すように、ベルトコンベア80は、先端側、即ち容器40側に設けられた先端プーリ81、後端に設けられた後端プーリ82及び先端プーリ81と後端プーリ82との間に亘って掛け渡されたベルト83(搬送部材に相当)を備える。そして、ベルトコンベア80は、ベルト83上における後端部に餌47を載置して供給する供給部84を備える。また、ベルトコンベア80は、ベルト83上における先端部に、ベルト83の作動によって供給部84から運搬された餌47を、開口Mを介して容器40内に落下させ、餌支持部46に供給する落下部85を備える。
【0054】
なお、供給部84及び落下部85は、ベルトコンベア80における相対的な位置(先端部及び後端部)を示すものであり、ベルト83上における特定の位置を称しているのではない。このため、ベルト83が作動しているとき、ベルトコンベア80において供給部84及び落下部85の各相対位置は移動せず、ベルト83上において供給部84及び落下部85はベルト83の作動に対応して順次移動していく。
【0055】
また、ベルトコンベア80は、公知のベルトコンベアである。よって、これ以上の詳細な説明については省略する。また、容器40及びベルトコンベア80の落下部85は、上述したようにサル舎(動物舎)の内側、即ち、檻5の内側のエリアAriに配置される。また、供給部84は、サル舎(動物舎)の外側、即ち、檻5の外側のエリアAroに配置される。
【0056】
このとき、一例として、ベルトコンベア80の供給部84には、来園者Hが自ら購入した餌47が来園者自身によって供給されてもよい。これにより、来園者Hには、自らサル2に餌を与えることができた、という満足感を与えることができるのと同時に、併せて動物園の収益向上をも図ることができる。ただし、この態様に限らず、無料の餌47を供給部84の近傍に配置しておき、来園者が供給部84に自由に供給できるようにしてもよい。この場合においても、自分でサル2に餌47を与えるという、日常ではできない楽しい経験ができるため、集客力の向上に寄与することができる。さらには、供給部84に餌47を供給するのは、来園者には限らず、動物園の飼育員であってもよい。
【0057】
また、
図1に示すようにベルトコンベア80は、供給部84及び落下部85を除いて外周全周がカバー86で覆われている。これにより、ベルト83によって、供給部84から落下部85まで運搬される餌47をサル2が途中で奪い取ることを防止できる。また、サル2がベルト83に巻き込まれる事故を防止することもできる。また、雨が降っている場合には、ベルトコンベア80による運搬途中に餌47が雨に濡れることを防止できる。
【0058】
さらに、
図1に示すように、給餌装置10は、ビデオカメラ90と、ビデオカメラ90と接続(図略)されるモニタ91とを備える。ビデオカメラ90は、餌放出操作部50に対して所定の動作(引っ張り動作)を行なったサル2の全身又は顔を撮影するためのものである。従って、ビデオカメラ90は、
図1に示すように、例えば、檻5の前面5bの金網の内側の面に脱着可能に固定される。これにより、たとえ雨が降っても、ビデオカメラ90を金網から容易に取り外しでき、ビデオカメラ90が雨に濡れることを防止できる。ただし、ビデオカメラ90は、サル2の全身又は顔の撮影が可能であれば、前面5bの金網に限らず、どこに設置しても良い。
【0059】
モニタ91は、ビデオカメラ90が撮影した映像を放映し主に来園者Hに鑑賞させる。モニタ91は、様々な場所に着脱可能に設置できる。例えば、檻5の前面5bの金網の外側の面において、外方に向って設置しても良い。従って、檻5の外側で見学している来園者Hがより詳細にサル2の行動を観察できる。これにより、来園者の満足度は向上し、集客力の向上を図ることができる。
【0060】
また、モニタ91は、動物園内において、サル舎1がある場所とは異なる様々な場所に設置してもよい。このとき、様々な場所の例としては、動物園内にあるレストラン内、土産物店内、トイレ内、動物園の入園口等が挙げられる。これにより、来園者Hにサル舎のサル2に興味を持ってもらい、サル舎1に足を運んでもらうことを促進できる。ただし、上記態様に限らず、ビデオカメラ90及びモニタ91はなくてもよい。給餌装置10が作動する際には、サル2の行動は生き生きとしているため、来園者は肉眼のみによってサル2の行動を観察するだけでも、相応の魅力を感じることはできる。
【0061】
なお、上記態様に限らず、ビデオカメラ90に替え、又はビデオカメラ90と共に静止画撮影用のカメラ(図略)を備えてもよい。そして、カメラが撮影した静止画をモニタ91で放映する。このとき、ビデオカメラ90と共にカメラを備えた場合には、静止画と動画とを交互に放映しても良いし、モニタ91の表示画面を2画面として半分ずつ放映しても良い。これにより、ビデオカメラ90のみを備えた場合と同様の効果が期待できる。
【0062】
(1-2.作用)
次に給餌装置10の作用について
図5のフローチャートに基づき説明する。なお、説明において、檻5内には、複数の大人のサル2と複数の子供のサル2がいるものとする。また、初期、容器40内に餌47は入っていないものとする。そして、サル達は、全面が透明なアクリル製の容器を通して視認し、容器40内に餌47が入っていないことを認識しているものとする。
【0063】
このような状態において、給餌装置10を作動させるため、まず容器40内の餌支持部46に餌47を供給する。このとき、飼育員が、屋根70と容器40との間の隙間α2に手を差し入れ、容器40内の底面部41上の餌支持部46に自らの手で直接餌47を供給しても良い。この場合、ベルトコンベア80はなくてもよい。ただし、本実施形態では、ベルトコンベア80によって、餌47を容器40内の餌支持部46に供給する態様について説明する。
【0064】
(1-2-1.餌供給工程S10)
まず、餌供給工程S10では、初めに来園者Hが自ら購入した複数の球状のペレット(餌47)をベルトコンベア80の供給部84に載置する(
図1参照)。このとき、ベルトコンベア80は、初めから作動し続けていても良いし、来園者がベルトコンベア80のスイッチをONすることにより、ベルトコンベア80が作動を開始しても良い。そして、来園者Hは、購入した複数の餌47を順次、供給部84に供給する。
【0065】
なお、このとき、供給部84は、サル舎1(動物舎)の外側、即ち、檻5の外側のエリアに配置されている。このため、人が檻5の中に入り餌47をサル2の直近で供給する場合と比べて、少しでも自然に近い状態が再現できる。これにより、サル2が本来有する、餌を取得する際の習性に基づく生き生きとした特有の行動(木を揺らす、木に登る等)をサル2に発現させやすくなる。
【0066】
(1-2-2.餌落下工程S20)
次に、餌落下工程S20にて、ベルトコンベア80のベルト83が、餌47を落下部85まで搬送する。そして、その後、餌47を落下部85から落下させ、開口Mを介して容器40内の餌支持部46に成行きで供給する(
図3の状態参照)。このとき、餌支持部46に落下した餌47は球状である。このため、餌47は落下の勢いで餌支持部46上を転がり、底面部41に設けた連通部41a又は側面部42に設けた連通部41bから外部に落下する場合がある。
【0067】
しかし、本実施形態では、落下部85から餌支持部46に落下した餌47が、餌支持部46上を成行きで転がり連通部41a及び連通部41bから落下しないよう予め考慮されて形成される。このため、多くの場合、連通部41a及び連通部41bからは落下せず、餌支持部46上に支持される(第一状態)。
【0068】
(1-2-3.餌放出操作部操作工程S30)
このとき、サル2のうち少なくとも一匹のサル2が、複数の餌47がベルトコンベア80によって、運搬され、容器40内に供給されたことを目で見て確認したとする。これにより、容器40内に餌47が存在することを確認したサル2は、容器40に近づき、サル2の所定の動作である、紐51の他端部を体の一部である手で把持する。そして、把持した紐51(操作用部材)を重力方向における下方向の成分を有した所定の方向に向かって引っぱる(付勢する)動作を行なう(餌放出操作部操作工程S30)。
【0069】
なお、このとき、サル2は、容器40内に餌47があることが分かっている場合、紐51を下方に引くことにより容器40から餌47が飛び出し食べることができることを事前の学習により知っている。このとき、紐51を下方に引く動作は、例えば、自然界で、サル2が木の枝を引っ張って果実を落とす動作にも似ている。このため、サル2に紐51を下方に引く動作をさせることにより、サル2の習性が発現され、サル2を生き生きとさせることができる。また、運動不足の解消やストレス発散の効果も期待できる。
【0070】
サル2が、紐51を下方に引く動作により、容器40は、
図4に示すように、第二引っ張りばね49の付勢力に打ち勝ち、基部材20に対して回転軸31周り(矢印Ar1方向)に相対回転される。これにより、第一状態における容器40の相対位置が、第二状態における相対位置に変動される。このとき、第二状態における相対位置とは、上述したように、容器40の底面部41の上面が所定の範囲の角度だけ傾斜した状態である。
【0071】
このような容器40の変動により、第一状態において餌支持部46に支持された餌47が、第二状態において、主に重力によって餌支持部46に対し相対移動し、容器40に設けられた連通部41a又は連通部41bを通過して外部に成行きで放出される。そして、容器40から外部に放出された餌47は、例えば地面上を成行きで転がり、ランダムな位置で停止することになる。
【0072】
(1-2-4.餌捕食工程S40)
餌47が外部に放出されると、紐51を下方に引っぱったサル2を含む強い大人のサル達は、餌47を自分のものとするため、餌47の位置まで素早く移動し、競って餌を手にとり食べる。このような動作も、餌を食べる際のサル2の習性、本能を発現させるのに効果的である。さらに、容器40の外部に放出された餌47は、上述したようにランダムな位置に着地する。
【0073】
このため、子供や体の弱いサル2であっても、自分の近傍に餌47が飛んでくる可能性は十分ある。これにより、餌47の捕食の確率が向上し、餌47の分配の公平性が向上される。なお、上記において、容器40の外部に放出された餌47を食べるため、紐51を下方に引っぱったサル2が紐51を手放すと、容器40は第一引っ張りばね48及び第二引っ張りばね49の各張力の作用により、第一状態に復帰する。
【0074】
(1-3.第一実施形態による効果)
上記第一実施形態によれば、給餌装置10は、基部材20と、基部材20に対する相対位置が変動可能となるよう基部材20に係合されるとともに、餌47を支持する餌支持部46を備え、餌支持部46に支持される餌47が餌支持部46に対して相対移動しない第一状態と第一状態における相対位置とは異なる相対位置において餌47が餌支持部46に対して相対移動する第二状態とを取り得る容器40(移動部材)とを備える。また、給餌装置10は、サル2(給餌の対象となる動物)の引っ張り動作(所定の動作)に応じて作動し、第一状態における容器40の相対位置を第二状態における相対位置に変動させ、餌47を餌支持部46に対して相対移動させるとともに容器40の外部に放出する餌放出操作部50を備える。
【0075】
このように、給餌装置10では、まずサル2(動物)が引っ張り動作(所定の動作)を行なう。そして、引っ張り動作に応じて餌放出操作部50が操作されることにより、容器40の第一状態における相対位置が第二状態における相対位置に変動する。このとき、第一状態においては、容器40が備える餌支持部46に支持されていた餌47が、第二状態では餌支持部46に対し相対移動するとともに容器40の外部に放出され、容器40の外部の何れかの場所に落下し着地する。そして、サル2は、何れかの場所に成行きで着地した餌47の位置に移動し餌を食べることができる。
【0076】
つまり、サル2は餌47を食べるために引っ張り動作を行なう必要がある。従って、自然界におけるサル2の餌取得時の状態に少しでも近づいたといえるため、サル2にとって、精神的且つ肉体的に健康な状態となることが期待できる。また、サル2が複数いる場合には、何れかの場所に成行きで着地した餌の位置まで移動する際、餌が他の動物に先に取られないよう急いで移動する必要がある。この状態についても、より自然に近い状態であるといえ、動物にとって、精神的且つ肉体的に健康な状態に近づけることが期待できる。
【0077】
また、餌47は何れかの場所に成行きでランダムに着地するため、体が弱く早く走ることができない、例えば子供や高齢の動物でも、餌47が近くに着地しさえすれば、餌47を食べることができる。これにより、公平に餌47の分配が可能となる。さらに、サル2のように、動物が例えば動物園の展示動物であった場合には,サル2が引っ張り動作を行なうことにより、より自然に近い状態となるため展示動物を観賞する際の魅力が増し集客力の向上も期待できる。
【0078】
また、上記第一実施形態によれば、容器40は基部材20に対して相対回転可能に係合されることにより、基部材20に対する相対位置が変動可能とされる。そして、餌放出操作部50は、サル2の引っ張り動作に応じて容器40を基部材20に対して相対回転させることにより第一状態における容器40の相対位置を第二状態における相対位置に変動させる。このとき、第二状態における相対位置では、容器40の底面部41の上面、即ち餌支持部46が水平状態に対し傾斜を有した状態となる。これにより、第一状態において餌支持部46に支持された餌47を、第二状態では、主に重力によって餌支持部46に対し相対移動させた後、容器40に設けられた外部との連通部41a、41bを通過して外部に放出する。
【0079】
このように、サル2の引っ張り動作に応じて、容器40を餌支持部46が傾斜を有した状態となるよう回転させるため、第一状態において餌支持部46に支持された餌47を、主に重力を利用して相対移動させ、良好に付勢できる。これにより、餌47が容器40の外部に放出された際、餌47をランダムな位置に良好にばら撒くことができる。これにより、大人のサル同士に餌47の取り合いをさせることができ、効果的に本能を発現させることができる。また、サル2の運動不足の解消を図ることができる。また、餌47を容器40から放出し成行き(ランダム)で着地させることができるため、体が弱く早く走ることができない、例えば子供や高齢の動物でも、餌47が近くに着地しさえすれば、餌47を食べることができる。
【0080】
また、上記第一実施形態によれば、紐51(操作用部材)に対するサル2の所定の動作とは、サル2が体の一部である手によって紐51を把持するとともに、重力方向における下方向の成分を有した所定の方向に付勢する動作である。そして、この動作によって、紐51の一端が接続される容器40(移動部材)に、基部材20に対する相対回転力を付与する。これにより、サル2の自然における餌取得時の状態に少しでも近づいたといえるため、サル2にとって、精神的且つ肉体的に健康な状態となることが期待できる。
【0081】
また、上記第一実施形態によれば、餌放出操作部50は、一端が容器40と接続され、他端が自由端であり、下方に延在する軸状の紐51(操作用部材)を備える。そして、サル2の所定の動作である、紐51を下方に引く動作により、紐51に付与された引張り力が容器40に作用し、第一状態における容器40の相対位置を第二状態における相対位置に変動させる。このように非常に簡易な構成によって、給餌装置10が構成できるため、低コスト化が図れる。
【0082】
また、上記第一実施形態によれば、紐51(操作用部材)は、軸方向における一端側近傍(何れかの部分)に連結部51aを備える。そして、紐51の他端に所定値を超える荷重が下方に向かって付与されると連結部51aは切断される。これにより、所定値を超える過大な荷重が紐51の他端部に付与されても、容器40を天井5aに固定する基部材20が破壊され、容器40が基部材20等とともに落下することが防止される。
【0083】
また、上記第一実施形態によれば、連結部51aが切断される荷重の所定値は、サル2(給餌の対象となる動物)の体重に基づいて設定される。一例として、三頭以上である複数の大人のサル2が、紐51の他端部に同時にぶら下がると、連結部51aが切断されるよう設定される。これにより、紐51にぶら下がった三頭以上の複数のサル2の重さ、及び容器40の重さ等によって、容器40を天井5aに固定する基部材20が破壊され、容器40が基部材20等とともに落下し、落下した容器40及び基部材20等によってサル2が怪我をすることが防止される。ただし、連結部51aが切断される荷重の所定値は、サル2(給餌の対象となる動物)の体重には限らず、上述したようにサル2の腕力や握力に基づき設定しても良い。
【0084】
また、上記第一実施形態によれば、給餌の対象となる動物はサル2である。サル2は他の動物と比べて比較的知能が高い。このため、紐51を引っ張るという所定の動作(原因)と、所定の動作の結果として容器40から餌47が出てくるという作用との因果関係を短時間で学習することが期待できる。従って、一度、紐51を引っ張るという所定の動作と、容器40から餌47が出てくるという作用との因果関係を記憶してしまえば、確実に同様の動作が行なえるため効率が良い。
【0085】
また、上記第一実施形態によれば、容器40が基部材20に係合される係合部30は、容器40及び基部材20の一方に回転軸31を備える。そして、回転軸31は、ラジアル荷重を支持するボールベアリング32、32(転がり軸受)を介して容器40及び基部材20の他方を相対回転可能に支持する。これにより、サル2が紐51を引っ張ったときに、容器40は基部材20に対してスムーズに相対回転でき、餌47は、容器40の外部に勢いよく放出されランダムな位置に良好にばら撒かれる。
【0086】
また、上記第一実施形態によれば、容器40は、アクリルで形成される透明な容器である。これにより、サル2は、目視によって餌47が容器内に入っていることを確認したときのみ給餌装置10を作動させて餌47を取得することができる。このため、サル2は紐51を引っ張ったのに容器40から餌47が出てこないという無駄な作業を回避できる。これにより、サル2が無駄な作業を行った場合に、紐51を引っ張っても容器40から餌47が出てこないことがあると学習したサル2が、以後、紐51を引っ張る作業を行わなくなることを防止できる。なお、容器40は半透明でもよいし、サル2が、外部から容器40内の餌47を視認できれば容器40の一部が透明又は半透明であるだけでもよい。また、透明又は半透明な部分は、アクリルに限らずどのような材質で形成しても良い。
【0087】
また、上記第一実施形態によれば、基部材20は、サル2(給餌の対象となる動物)が飼育される檻5の天井5aに固定される。このように、基部材20が、檻5の天井5aに固定されることにより、例えば、檻5の壁等に新たに支柱を設け、当該支柱に基部材20を固定する場合と比較して、簡易な構造とすることができるとともに、低コストで製造できる。
【0088】
また、上記第一実施形態によれば、基部材20は、天井5aに固定される第一基部材21と、一端が第一基部材21と接続されるとともに、他端が移動部材と係合される第二基部材22と、を備える。第一基部材21は天井5aに複数設けられる。そして、容器40は、複数の第一基部材21のうち、任意の第一基部材21から第二基部材22を介して吊り下げられる。このような構成により、容器40の吊り下げ位置が自由に変更できるので、サル2が、給餌装置10を操作する際、操作に飽きがくることを抑制できる。
【0089】
また、上記第一実施形態によれば、檻5は屋外に配置され、容器40は上方に開口Mを備えるとともに檻5の天井5aに固定された基部材20に係合されて吊り下げられる。そして、給餌装置10は、容器40の開口Mの上方に開口Mを覆う屋根70を備える。これにより、雨が降った場合においても、開口Mから容器40の内部に水が入ることを防止でき、延いては容器40の内部にある餌47が濡れることを防止できる。ただし、檻5は、雨の吹き込みがある屋内に配置されてもよい。
【0090】
また、上記第一実施形態によれば、給餌装置10は、さらに、容器40から所定距離離間した位置におけるベルト83上の供給部84に供給される餌47をベルト83(搬送部材)の作動によって、容器40の開口Mの上方まで搬送したのち開口Mを介して容器40内に落下させ餌支持部46に供給するベルトコンベア80(搬送装置)を備える。このため、餌47を容器40内に供給する際、少しでもサル2から離れた場所から餌47を供給できるので、自然に近い状態とすることができる。これにより、サル2が本来有する、餌47を取得する際の習性に基づく生き生きとした特有の行動(枝を引っ張る、木を揺らす、木に登る等)をサル2に発現させやすくなる。
【0091】
また、上記第一実施形態によれば、給餌装置10は、動物園に配置され、給餌装置10のうち、容器40は、サル舎1(動物舎)の内側に配置され、ベルトコンベア80の供給部84は、サル舎1(動物舎)の外側に配置される。これにより、サル舎1(動物舎)の外側からサル2に餌47を与えることができる。このため、例えば、ベルトコンベア80の供給部84に餌47を供給するのが来園者であり、且つ餌47は購入したものであった場合、来園者には自らサル2に餌を与えることができた、という満足感を与えることができるとともに、併せて動物園の収益向上を図ることもできる。
【0092】
また、例えば、餌47が無料であった場合にも、来園者には自らサル2に餌47を与えることができた、という満足感を与えることはできる。また、供給部84に餌47を供給するのは、来園者ではなく動物園の飼育員である場合であっても、来園者は日常とは異なる餌47の供給を見学することにより十分楽しめ、集客力の向上が期待できる。
【0093】
また、上記第一実施形態によれば、ベルトコンベア80は、供給部84及び餌47を容器40内に落下させる落下部85を除いて外周全周がカバー86で覆われている。これにより、ベルト83によって、供給部84から落下部85まで運搬される餌47をサル2が途中で奪い取ることを防止できる。また、サル2がベルト83に巻き込まれる事故を防止することもできる。さらに、雨が降っている場合には、ベルトコンベア80による運搬途中にベルト83上の餌47が雨に濡れることを防止できる。
【0094】
また、上記第一実施形態によれば、紐51(餌放出操作部50)に対して引っ張り動作(所定の動作)を行なったサル2を撮影するビデオカメラ90と、ビデオカメラ90が撮影した映像を放映するモニタ91とを備える。これにより、来園者が目視では確認しにくい、引っ張り動作(所定の動作)時のサル2の生き生きとした仕草や表情を、モニタ91を通し、例えば拡大して確認できるので、集客力の向上が期待できる。
【0095】
また、上記第一実施形態によれば、餌47は、角部がない形状で形成される。これにより、餌47は、容器40内において餌支持部46に対し相対移動するときに、勢いよく転がり相対移動できるとともに、容器40から外部に放出されたときにも着地した位置で良好に転がりランダムな位置で停止することができる。
【0096】
これにより、紐51を下方に引っぱったサル2を含む強い大人のサル達は、餌47を自分のものとするため、ランダムな位置で停止した餌47の位置まで素早く移動し、競って餌を取り合う状況が生じやすくなる。このような動作も、餌を食べる際のサル2の習性、本能を発現させるのに効果的である。さらに、餌47は、ランダムな位置に着地するため、子供や体の弱いサル2であっても、自分の近傍に餌47が飛んでくる可能性は十分ある。このため、餌47の捕食の確率が向上し、餌47の分配の公平性が向上される。
【0097】
(1-4.その他)
(1-4-1.変形例1)
上記第一実施形態では、回転軸31はボールベアリング32、32を介して容器40(回転軸支持部33)を支持した。しかし、この態様には限らず、変形例1(図略)として、回転軸31は金属製又は樹脂製である公知のドライベアリング(すべり軸受)を介して容器40(回転軸支持部33)を支持してもよい。この場合、容器40が回転軸31に対して相対回転する際、若干、回転抵抗は上昇するが、その他については同様の効果が得られる。
【0098】
(1-4-2.変形例2)
また、上記第一実施形態では、容器40は檻5の天井5aから吊り下げられる態様としたが、この態様には限らない。
図6に示すように、変形例2として、天井5aに相当する支持腕6を檻5の側面の壁(図略)から延在させ、基部材20を介して支持腕6から容器40を吊り下げてもよい。これによっても、製作コストが高くなる点を除いて、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0099】
(1-4-3.変形例3)
また、上記第一実施形態では、係合部30の回転軸31は底面部41に設けた。しかし、
図7に示すように、係合部130の回転軸131は容器40の側面部43、45を貫通して設けてもよい。このとき、回転軸31は、径方向において側面部42、44に形成された貫通孔43a、45aとの間に図略のボールベアリング又はドライベアリングを介して支持すればよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0100】
(1-4-4.変形例4)
また、上記第一実施形態では、給餌の対象となる動物は、動物園の展示動物であるサル2であるとした。なお、このとき、サル2は、人間を除く霊長類の全てを含むと考えても良い。しかしこの態様には限らず、変形例4(図略)として、給餌の対象となる動物は、サル2以外の展示動物でも良く、例えば、象、ライオン、トラ、シマウマ、ヤギ等、どのような動物であってもよい。つまり、給餌の対象となる動物は、紐51(操作用部材)を体の一部(各部)を使って所定の方向に付勢することができる動物であればどのような動物であってもよい。
【0101】
このとき、各動物が行なう所定の動作は、動物毎に異なる。例えば、象の場合には、所定の動作として、鼻によって紐51(餌放出操作部50)の他端部を把持し、下方に引っ張る(付勢する)。これにより、容器40から餌47が落下するようにすればよい。なお、このときの給餌装置は、第一実施形態の給餌装置10と同様の構造であるので詳細な説明は省略する。また、屋根70及びベルトコンベア80については、あってもなくてもよい。また、餌47については、例えば、りんご等が採用可能である。
【0102】
また、ライオン、トラ、シマウマ、ヤギ等の場合には、所定の動作として、口によって紐51(餌放出操作部50)の他端部を噛み、下方に引っ張る(付勢する)ことにより、容器40から餌47が外部に落下するようにすればよい。また、餌47については、例えば、転がり易いよう加工された肉、又はペレット状の餌等でよい。ただし、象の場合も同様であるが、これらの動作は、各動物に事前に学習させる必要がある。そして、学習ができない動物に対しては適用できないのはいうまでもない。
【0103】
上記より、各動物は餌47を食べるために紐51を引っ張る引っ張り(付勢)動作(所定の動作)を行なう。従って、自然における餌取得時の状態に少しでも近づいたといえるため、各動物にとって、精神的且つ肉体的に健康な状態となることが期待できる。また、各動物が複数いる場合には、容器40から外部に放出され、何れかの場所に成行きで着地した餌47の位置まで移動する際、餌47が他の動物に先に取られないよう急いで移動する必要がある。この状態についても、より自然に近い状態であるといえ、動物にとって、精神的且つ肉体的に健康な状態に近づけることが期待できる。
【0104】
(1-4-5.変形例5)
また、変形例4に限らず、変形例5(図略)として、給餌の対象となる動物は、家庭等で飼育される愛玩動物(イヌ、猫等)であってもよい。この場合、容器40は、例えば、飼育される室内の天井から基部材20を介して吊り下げる。
【0105】
そして、愛玩動物(イヌ、猫等)の所定の動作としても、口によって紐51(餌放出操作部50)の他端部を噛み、下方に引っ張る(付勢する)ことにより、容器40から餌47が外部に落下するようにすればよい。なお、変形例5では、屋根70及びベルトコンベア80は、不要である。また、餌47については、例えば、ペレット状のドッグフードやキャットフード等でよい。
【0106】
上記においても、各動物は餌47を食べるために引っ張り(付勢)動作(所定の動作)を行なう。従って、自然における餌取得時の状態に少しでも近づいたといえるため、各動物にとって、精神的且つ肉体的に健康な状態となることが期待できる。また、各動物が複数いる場合には、何れかの場所に成行きで着地した餌の位置まで移動する際、餌が他の動物に先に取られないよう急いで移動する必要がある。この状態についても、より自然に近い状態であるといえ、動物にとって、精神的且つ肉体的に健康な状態に近づけることが期待できる。
【0107】
(1-4-6.変形例6)
また、上記第一実施形態では、ベルトコンベア80は、餌47が供給される部分及び餌47を容器40内に落下させる部分を除いて外周全周がカバー86で覆われているものとして説明した。しかしながら、変形例6(図略)としてカバー86はなくてもよい。これによっても、上記カバー86を有することによる効果以外の効果は十分得られる。
【0108】
<2.第二実施形態>
なお、上記第一実施形態では、容器40が基部材20に対して相対回転する回転軸31は、水平方向に延在した。そして、容器40は、基部材20に対して水平な回転軸31周りに相対回転した。しかしながら、この態様には限らず、第二実施形態の給餌装置210として、容器240(移動部材に相当)の回転軸231は、
図8に示すように、垂直に配置されてもよい。
【0109】
図8に示すように、給餌装置210は、第一実施形態の給餌装置10に対して、主に回転軸231の姿勢が異なる。従って、異なる部分についてのみ詳細に説明し、同様部分については、説明を省略する。また、同様に部材については同じ符号を付す。給餌装置210は、基部材220と、係合部230と、容器240(移動部材に相当)と、餌放出操作部250と、を備える。
【0110】
図8に示すように、基部材220は、例えば、檻5の側面の壁(図略)から延在させた支持腕である。そして、容器240が、ボールベアリング232(転がり軸受)を介して基部材220に吊り下げられる。このとき、ボールベアリング232は、スラスト荷重を支持可能な公知のスラスト玉軸受けであることが好ましい。容器240は、上端に形成された円板状の係止部241及び軸部242の下端に一体的に形成される円筒部243を備える。
図8に示すように、ボールベアリング232は、係止部241と基部材220の上面との間に介在する。
【0111】
円筒部243は、有底筒状に形成され、軸部242の下端と底面の中央部で連結されている。そして、円筒部243の側面部244の下端には、外部と連通される連通部244aが複数設けられている。円筒部243の底面部245の上面には、餌支持部246が設けられている。また、餌放出操作部250である紐251は、一端が底面部245の外周面における所定の固定位置(図略)に固定される。そして、紐251は、一端が所定の固定位置から円筒部243の外周面に沿って所定量巻かれたのち、滑車252を介して下方に吊り下げられる。滑車252は、地面に固定した図略の支持部材に取り付けられる。
【0112】
このような構成において、サル2が、紐251の下端を下方に引くと、引っ張り力が滑車252を介して紐251の一端の所定の固定位置に作用し、円筒部243、延いては、容器240を回転軸231周りに回転させる。これにより、第一状態において餌支持部246に支持されていた餌247が、円筒部243が回転状態となる第二状態において遠心力を受け、餌支持部246に対して相対移動したのち、円筒部243の連通部244aを通過し、容器240の外方に向って放出される。これによって、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0113】
なお、詳細な説明は省略したが、容器240は、サル2が、紐251を引くことにより回転する方向と反対方向に向って付勢力を付与するよう図略のばねによって、回転軸231周りに付勢されることが好ましい。このとき、バネは、どのようなものでもよい。これにより、サル2が、紐251を下方に向って引いた後に紐251から手を離すと、容器240は、回転軸231周りに回転し、初期状態に戻ることができる。
【0114】
<3.第三実施形態>
また、上記第一実施形態の態様に限らず、
図9に示すように、第三実施形態の給餌装置310として、餌放出操作部350が、紐351と、紐351の一端と連結されるスイッチ352と、スイッチ352の作動によって回転作動するモータ353とによって構成されていてもよい。このとき、スイッチ352は、容器340に設けられていなくてもよい。そして、モータ353は容器340に固定され、モータ353の回転軸353aを基部材320に形成された回転軸331と一体的に連結すればよい。
【0115】
このような構成により、サル2が、紐351を引くと、スイッチ352がON状態となり、モータ353が回転作動される。これにより、容器340(移動部材に相当する)が基部材320に対して相対回転され、基部材320に対する容器340の状態を第一状態から第二状態に変動させ、餌支持部346に支持される餌347を容器340の外部に放出する。これによっても上記実施形態と同様の効果が得られる。なお、このとき、スイッチ352とモータ353とは有線で接続されていても無線で接続されていてもよい。
【0116】
また、この態様には限らず、容器を振動させる振動子(図略)を備え、サル2が、紐351を引くことにより、スイッチ352がON状態となり、これによって振動子を振動させて容器340を振動させ餌347を容器340の外部に放出するようにしてもよい。
【0117】
<4.その他>
なお、各上記実施形態では、動物(サル2)が、紐51、251、351(操作用部材)に対して、下方への引っ張り動作(所定の動作)を行なうことにより、容器40、240、340(移動部材)の状態を第一状態から第二状態に変動させた。しかしながらこの態様に限らず、操作用部材を、水平方向成分を有した方向、若しくは上方向成分を有した方向に向けて付勢(引張り、若しくは押付け)することによって容器40、240、340の状態を第一状態から第二状態に変動させてもよい。これによっても上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0118】
また、各上記実施形態では、容器40、240、340が第二状態に位置する場合、重力又は遠心力を利用して、餌47、247、347を容器40、240、340の外部に放出した。しかしながら、この態様には限らず、容器40、240、340を第二状態とした上で、容器40、240、340内に設けた所定の機械を作動させることによって餌47、247、347に外力を付与し、餌47、247、347をさらに強力に且つランダムに外部に放出させてもよい。
【0119】
このとき、所定の機械はどのようなものでもよく、例えば、小型の扇風機でもよい。この場合、容器40、240、340内に配置した小型の扇風機により発生させた風により、第二状態において容器40、240、340の底面部の上面を移動中の餌47、247、347を、強く吹き飛ばし外部に放出させてもよい。また、別の例としては、モータの回転軸に、回転軸と直交する腕を設け、モータを作動させることにより腕を底面部の上面近傍で回転軸周りに回転させる。これにより、容器40、240、340の底面部の上面を移動中である餌47、247、347に対し、回転する腕を当接させて外力を付与し、弾き飛ばして外部に放出させてもよい。つまり、第二状態において、餌47、247、347は、餌47、247、347の外側から付与される機械的動力によって餌支持部46、246、346に対し相対移動された後、連通部41a、41b、244aから外部に放出される。
【0120】
また、各上記実施形態では、搬送装置としてベルト83を備えたベルトコンベア80を採用した。しかしながら、この態様には限らず、搬送装置は、円筒状のローラによって構成されたローラコンベアであってもよい。
【符号の説明】
【0121】
1;サル舎(動物舎)、 2;サル、 5;檻、 5a;天井、 5b;前面、 10、210、310;給餌装置、 20、220、320;基部材、 30、230;係合部、 31、131、231、331;回転軸、 32、232;ボールベアリング(転がり軸受)、 40、240、340;容器(移動部材)、 41;底面部、 41a、41b;連通部、 42-45;側面部、 46、246、346;餌支持部、 47、247、347;餌、 50、250、350;餌放出操作部、 51、251、351;紐(操作用部材)、 51a;連結部、 70;屋根、 80;搬送装置(ベルトコンベア)、 83;搬送部材(ベルト)、 84;供給部、 85;落下部、 86;カバー、 90;ビデオカメラ、 91;モニタ、 H;来園者、 M;開口、 S10;餌供給工程、 S20;餌落下工程、 S30;餌放出操作部操作工程、 S40;餌捕食工程。