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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】魚釣り用浮き
(51)【国際特許分類】
   A01K 93/00 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
A01K93/00 C
A01K93/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021178398
(22)【出願日】2021-10-30
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2020209714
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312005201
【氏名又は名称】株式会社 ワサダ
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】和三田 宗教
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3000105(JP,U)
【文献】実開昭60-144872(JP,U)
【文献】特開2017-104024(JP,A)
【文献】特開平09-028257(JP,A)
【文献】実開平04-117580(JP,U)
【文献】実開昭59-163379(JP,U)
【文献】実開昭54-037489(JP,U)
【文献】登録実用新案第3029940(JP,U)
【文献】実開昭50-117094(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 93/00-93/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内浮きが挿通される、上部に縮径部を有し前記縮径部の下端に段差部が形成された貫通孔を備える外浮きと、
前記貫通孔に上下動自在に取付けられた、中央に縦長の拡径部を有し少なくとも前記拡径部内に空気室が設けられた棒状の内浮きと、
前記貫通孔の下端に嵌め込まれ前記外浮きの下部又は底部に取付けられた重りと、
前記内浮きの底部に取付けられた回転自在な環と、
前記内浮きが前記外浮きから抜けることを防止する抜止め手段と、
を備え、
前記外浮きの形状が、流線型、涙滴型、紡錘型、卵型、円錐型又は角錐型のうちのいずれか一種であり、
前記内浮きは、前記拡径部の上端又は前記拡径部と上部との境界部に前記段差部及び前記重りに係止するストッパーを有し、
前記抜止め手段が、前記段差部と前記重りと前記ストッパーとで構成されていることを特徴とする魚釣り用浮き。
【請求項2】
前記内浮きの浮力が、前記拡径部及び/又は前記空気室の径及び長さにより調整されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣り用浮き。
【請求項3】
前記内浮きは、浮き本体の下部が下端に向けて細い先細り形状を有し、及び/又は前記拡径部と上部との境界部に円錐台部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の魚釣り用浮き。
【請求項4】
前記ストッパーは、側面視が楕円形又は紡錘形又は流線形であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣り用浮き。
【請求項5】
前記外浮きに対して前記内浮きが最も降下した状態で、前記内浮きの上端が前記貫通孔の上端と面一であり又は内浮きの上部が前記貫通孔の上端から僅かに突出していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の魚釣り用浮き。
【請求項6】
前記内浮きは、上部と前記拡径部以下の部分とが着脱可能なことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の魚釣り用浮き。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りの際に使用される浮きに関する。
【背景技術】
【0002】
浮き釣りは、魚が餌に喰い付いたか否かを浮きの動きから判断する代表的な釣りの手法である。浮きは、魚の種類、釣る場所、仕掛け等に応じて種々の形態、大きさのものが市販されており、釣り人は、その中から適当なものを選択して使用する。代表的な浮きに棒浮き及び円錐浮きがある。
【0003】
棒浮きは、縦長の棒状の浮きであり汎用性が高く、釣り糸(道糸)に固定して使用する固定浮き又は道糸に対して移動可能に取付け使用する遊動浮きとして使用される。棒浮きは、視認性がよく、小さなアタリでも目視し易い一方で、遠投性能が低く遠くに飛ばせない、また風に弱いという弱点がある。アタリは、魚が餌を突く、食い付くときに竿・浮きに表れる動きである。
【0004】
円錐浮きは、一般的に紡錘形状を有し、浮き本体に上下方向に貫通する貫通孔を備え、貫通孔にラインを通す中通し浮きとして使用される。円錐浮きは、遠投性能に優れ、また風にも強い一方で、感度及び視認性が悪い、波が出るとアタリが分からないという弱点がある。
【0005】
以上のような棒浮き、円錐浮きの長所を活かすべく、棒浮きと円錐浮きとを合体させた2重構造の浮きが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の2重構造の浮きは、中空の浮き本体の周囲に重りを取付け、中心部に貫通孔を設け、その貫通孔に棒状の浮子を通し、浮子の上下に玉浮子を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3000105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の浮きは、浮力を得るために棒状の浮子の下部に大きな玉浮子を取付けている。このような構造では棒状の浮子が上下する際に、玉浮子が大きな抵抗となり、アタリに対する応答性が低下する。特許文献1に記載の浮き以外にも棒浮き及び円錐浮きそれぞれの長所を活かすべくこれらを合体させた浮きが提案されているが十分とは言い難い。
【0008】
従来の棒浮き及び円錐浮きは、それぞれ機能・性能を最大限発揮できるように検討工夫が重ねられ現在の形状・構造となっている。棒浮き及び円錐浮きは、それらを単独で使用することが前提で形状・構造が決められているためこれらを単純に組み合わせても形状・浮力のバランスなどが悪く優れた浮きとはならない。
【0009】
本発明の目的は、アタリに対する応答性、遠投性能、投げたときのコントロール性などに優れる、使い勝手のよい魚釣り用浮きを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内浮きが挿通される、上部に縮径部を有し前記縮径部の下端に段差部が形成された貫通孔を備える外浮きと、前記貫通孔に上下動自在に取付けられた、中央に縦長の拡径部を有し少なくとも前記拡径部内に空気室が設けられた棒状の内浮きと、前記貫通孔の下端に嵌め込まれ前記外浮きの下部又は底部に取付けられた重りと、前記内浮きの底部に取付けられた回転自在な環と、前記内浮きが前記外浮きから抜けることを防止する抜止め手段と、を備え、前記外浮きの形状が、流線型、涙滴型、紡錘型、卵型、円錐型又は角錐型のうちのいずれか一種であり、前記内浮きは、前記拡径部の上端又は前記拡径部と上部との境界部に前記段差部及び前記重りに係止するストッパーを有し、前記抜止め手段が、前記段差部と前記重りと前記ストッパーとで構成されていることを特徴とする魚釣り用浮きである。
【0011】
本発明に係る魚釣り用浮きにおいて、前記内浮きの浮力が、前記拡径部及び/又は前記空気室の径及び長さにより調整されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る魚釣り用浮きにおいて、前記内浮きは、浮き本体の下部が下端に向けて細い先細り形状を有し、及び/又は前記拡径部と上部との境界部に円錐台部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る魚釣り用浮きにおいて、前記ストッパーは、側面視が楕円形又は紡錘形又は流線形であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る魚釣り用浮きは、前記外浮きに対して前記内浮きが最も降下した状態で、前記内浮きの上端が前記貫通孔の上端と面一であり又は内浮きの上部が前記貫通孔の上端から僅かに突出していることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る魚釣り用浮きにおいて、前記内浮きは、上部と前記拡径部以下の部分とが着脱可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によればアタリに対する応答性、遠投性能、投げたときのコントロール性などに優れる、使い勝手のよい魚釣り用浮きを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1を斜め上から見た外観図である。
図2】本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の構造を説明するための図である。
図3】本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の内浮き30の構造を説明するための図である。
図4】本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1を投げたときの状態を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の変形例である魚釣り用浮き2、3、4の構造を説明するための図である。
図6】本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の内浮き30の変形例である内浮き34、35、36、37、38、39の正面図である。
図7】本発明の第2実施形態の魚釣り用浮き5の構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1を斜め上から見た外観図である。図2は、本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の断面図であり、図中A-A切断端面は、外浮き10の最大直径部15を通るように切断した端面図である。図3は、本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の内浮き30の構造を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は矢視E方向に見たストッパー50廻りの拡大図、B-B切断端面、C-C切断端面、D-D切断端面は、それぞれ本体41の上部42、拡径部43、下部44を切断した端面図である。図4は、本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1を投げたときの状態を示す断面図である。以下、水及び海水をまとめて水、水中及び海水中をまとめて水中と記す。
【0019】
本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1は、貫通孔20を備える外浮き10と、貫通孔20に上下動自在に取付けられた棒状の内浮き30と、外浮き10の姿勢を安定させる重り60と、釣り糸100を通す環70とを備える。
【0020】
外浮き10は、内浮き30を上下動可能に支持する水に浮く浮きである。外浮き10は、入水抵抗・水中抵抗が小さく、また魚釣り用浮き1を投げたとき空気抵抗の小さい外観形状を有するものがよい。入水抵抗・水中抵抗を小さくするには、中央部から下端17に向けて細くなる先細り形状がよく、投げたときの空気抵抗を小さくするには、中央部から上端16に向けて細く湾曲した形状がよく、全体として流線型、涙滴型、紡錘型、卵型、円錐型又は角錐型の外観形状を有するものが好ましい。
【0021】
外浮き10の代表的な寸法を示せば高さ(全高)Hが30~35mm、最大直径部15の位置(高さ)Hが上端16からH/H=0.25~0.3、最大直径部15の径Dが20~25mm、下端17の直径DがD/D=0.45~0.5である。但し、本発明に係る魚釣り用浮きにおいて、外浮き10は、この大きさ(数値)に限定されるものではない。
【0022】
外浮き10の材質は、特に限定されるものではないが代表的には合成樹脂、木製であり、中実、中空構造であってもよく、所定の浮力となるように材質、構造を適宜選択すればよい。外浮き10には、視認性を高めるために基本的に蛍光塗料が塗布されるためこの点も考慮して材質を決めることが好ましい。また外浮き10の表面は、平滑であるのがよい。投げたときの空気抵抗を小さくすることができる。
【0023】
外浮き10は、中心部に縦方向に貫通する貫通孔20を備え、ここに内浮き30が上下動自在に挿通される。貫通孔20は、上部に縮径部21が設けられ、縮径部21の下端が段差部22となっている。貫通孔20のうち縮径部21を除く部分を第1孔23、縮径部21を第2孔24とすると、第1孔23の直径Dは、内浮き30の拡径部43の直径dよりも大きく、下端17の直径Dよりも小さい。第2孔24の直径Dは、内浮き30の上部42の直径dよりも大きく第1孔23の直径Dよりも小さい。
【0024】
段差部22は、内浮き30のストッパー50を係止させ、内浮き30が上部方向に抜けることを防止する部位である。外浮き10の段差部22の位置は、外浮き10の上端16に近い方が好ましい。外浮き10に対する内浮き30の係止位置が高いほど安定する。
【0025】
内浮き30は、細長い円柱状(棒状)の浮き本体41と上下方向の移動を規制するストッパー50とからなり、外浮き10に設けられた貫通孔20に上下動自在に挿通される。本体41は、中央に上部42及び下部44に比較して径の大きい縦長の拡径部43を有する。本体41の下部44は、下端46に向けて径が細い先細り形状を有し、正面視において僅かに外側に突出するように湾曲している。本体41の下部44を、下端46に向けて先細り形状とすることで入水抵抗・水中抵抗を小さくすることができる。本体41の上端45は、球冠形状が好ましい。本体31の上端45を球冠形状とすることで、魚釣り用浮き1を投げたとき空気抵抗を小さくすることができる。
【0026】
本体41の拡径部43の上端と上部42の下端との境界には円錐台部47を設け、拡径部43と上部42とを滑らかに連結させるのがよい。これにより水中において、内浮き30が上下動するときの抵抗を小さくすることができる。
【0027】
内浮き30は、外浮き10の第1孔23に本体41の拡径部43が位置するように、また外浮き10の第2孔24に本体41の上部42が位置するように挿通される。内浮き30は、外浮き10に対して最も上昇した状態で、上部42の大部分が外浮き10から突出し、また拡径部43の一部及び下部44が外浮き10の下端17から突出する長さを有する。内浮き30は、外浮き10に対して最も降下した状態(図4参照)で、上端45が第2孔24の上端と面一であるか、僅かに突出するのが好ましい。これにより魚釣り用浮き1を投げたとき空気抵抗を小さくすることができる。
【0028】
本体41の代表的な寸法を示せば全長h=60~70mm、拡径部43の長さhがh/h=0.4~0.5、上部42の長さh/h=0.3~0.5、拡径部43の直径がd=φ7~9mm、上部42の直径dがd/d=0.4~0.5である。但し、本発明に係る魚釣り用浮きにおいて、内浮き30の本体41は、この大きさ(数値)に限定されるものではない。
【0029】
内浮き30は、本体41の拡径部43から下部44にかけて気密性を有する中空部が設けられ、これが空気室48となっている。この空気室48は、内浮き30の浮力を調整するためのものであり、内浮き30の浮力は、空気室48の長さh及び直径d、さらには拡径部43の長さh及び直径dにより制御することができる。空気室48の気体は、通常空気であるが、浮力調整のために他の気体、ガスを充填してもよい。
【0030】
内浮き30が大きな浮力を確保するには容積の大きい空気室48を設ける必要がある。本実施形態の内浮き30では中央部を拡径させ、この拡径部43に主として空気室48を設けることで容積の大きい空気室48を確保する。一方で本体41全体が大きくなることを防ぐことができる。空気室48は、中空であるから中実材に比較して強度が低下し易いが、拡径部43に空気室48を設ければ肉厚を確保できるため強度低下を防ぐことができる。
【0031】
空気室48の形成要領は特に限定されるものではないが、本体41の下端46から拡径部43に向けて孔を設け、下端46に栓を嵌め込み接着すればよい。
【0032】
本体41の材質は、特に限定されるものではないが代表的には合成樹脂、木製である。前記のとおり本体41には拡径部43、さらに内部に空気室48を設けるため、材料の比重、強度等を考慮し材質を選択するのがよい。本体41には、視認性を高めるために基本的に蛍光塗料が塗布されるためこの点も考慮して材質を決めることが好ましい。また本体41の表面は、平滑であるのがよい。これにより水中において、外浮き10に対して内浮き30が上下動するときの抵抗を小さくすることができる。
【0033】
ストッパー50は、外浮き10に対する内浮き30の上下方向の移動を規制する部材である。ストッパー50は、一対の小さな棒状の部材であり、円錐台部47に平面視において対向する位置に、また正面視において本体41に直交するように取付けられている。ストッパー50の両先端部の間隔dは、外浮き10の第1孔23の直径Dよりも僅かに小さく、外浮き10の第2孔24の直径Dよりも大きく設定されている。これにより内浮き30は、外浮き10に対して上方に外れることはない。
【0034】
ストッパー50は、図3の矢視E方向に見た側面視において楕円形、紡錘形、流線型が好ましい(図3(C)参照)。またストッパー50の表面は、平滑であるのがよい。これにより水中において、外浮き10に対して内浮き30が上下動するときの抵抗を小さくすることができる。ストッパー50は、本体41と一体的に形成してもよく、本体41とは別に製作し、本体41に後付けしてもよい。ストッパー50の材質は、特に限定されない。
【0035】
重り60は、外浮き10に取付けられ、外浮き10の重量バランス及び姿勢を整える部材である。本実施形態では、リング状の重り60が、第1孔23の下部に固定されている。重り60を外浮き10の下部又は底部に取付けることで重心が低くなり姿勢が安定する。重り60の内径Dは、内浮きの本体41の拡径部43の直径dよりも大きく、ストッパー50の両端の間隔dよりも小さく設定されている。これによりストッパー50は、外浮き10の段差部22及び重り60を通過することができず、内浮き30の上下動の範囲が規制される。
【0036】
以上のように魚釣り用浮き1では、外浮き10の貫通孔20の段差部22、貫通孔20の下端に取付けられた重り60、内浮き30の円錐台部47に取付けられたストッパー50とで内浮き30の抜止め手段が構成される。
【0037】
上記のとおり重り60は、ストッパーとしての役目も備え、重り60の上端は、外浮き10に対する内浮き30の最も低い降下位置を決める。このため重り60の高さは、この点を考慮して設定される。重り60の材質は、寸法、比重から所定の重量となるよう適宜選択し決定される。重り60の形状、構造は、本実施形態に限定されるものではないが、重り60をリング状とし、これを第1孔23に嵌め込む構造は、製造し易く好ましい。
【0038】
魚釣り用浮き1において、内浮き30の上部42と第2孔24との隙間α及び内浮き30の拡径部43と重り60との隙間βは、内浮き30が上下動するときの水の出入口となる。このためこの隙間α,βが極端に狭い、あるいは隙間がないときは、この部分が抵抗となり内浮き30の上下動の動きが悪くなる。一方、その部分の間隔が極端に広いと内浮き30の姿勢が不安定となる。本実施形態の魚釣り用浮き1は、これらの点を考慮し、内浮き30の上部42と第2孔24との隙間α及び内浮き30の拡径部43と重り60との隙間βが設定されている。
【0039】
環70は、中浮き30の下端に回転自在に取付けられた部材であり、スイベルなどが該当する。環70には、釣り糸100が固定され、または釣り糸100が挿通され使用される。よって魚釣り用浮き1は、固定浮き又は遊動浮きとして使用することができる。
【0040】
以上からなる本実施形態の魚釣り用浮き1は、流線型、涙滴型、紡錘型、卵型、円錐型又は角錐型をする外浮き10が棒状の内浮き30を上下動可能に支持する構造からなり、基本的に棒浮き及び円錐浮きの機能を備える。特に内浮き30は、中央に縦長の拡径部43を設け、ここに空気室48を設けるので内浮き30の強度を低下させることなく大きな空気室48を確保することができる。このような内浮き30は、拡径部43及び/又は空気室48の径及び長さを調整することで所望の浮力を得ることができる。
【0041】
また魚釣り用浮き1は、内浮き30の外浮き10に対する抜止め手段が外浮き10の内部に設けられているので外観形状がシンプルですっきりとしている。また外浮き10の他に、内浮き30の下部44も下端46に向かって先細りの流線型、円錐型又は角錐型であるので入水抵抗・水中抵抗が小さい。さらに外浮き10に対して内浮き30が最も降下したとき、内浮き30の上端45が貫通孔20の上端から僅かに突出している状態であるから、本魚釣り用浮き1を投げたときの空気抵抗が少ない。このため魚釣り用浮き1は、遠投性能、狙ったところに投げることができるコントロール性能に優れる。
【0042】
また魚釣り用浮き1は、内浮き30の上部42と拡径部43との境界が円錐台部47となっており、ストッパー50の横断面も水中における上下方向の移動に対する抵抗が小さい形状となっている。また貫通孔20内への水の出入りのための流路も十分に確保されている。これらは内浮き30が上下動するときの抵抗を低減させる抵抗低減手段である。このため内浮き30の水中での上下動に対する抵抗が小さく、アタリに的確に反応することができる。
【0043】
以上のように本実施形態の魚釣り用浮き1は、公知の棒浮き及び円錐浮きに対応する内浮き30及び外浮き10それぞれの機能・性能を最大限発揮できるように形状・構造・浮力のバランスなどが決められているため、アタリに対する応答性、遠投性能、投げたときのコントロール性などに優れ、使い勝手のよい魚釣り用浮きとなる。
【0044】
次に本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の変形例を示す。図5は、本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の変形例である魚釣り用浮き2、3、4の断面図であり、図6は、本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の内浮き30の変形例である内浮き34、35、36、37、38、39の正面図である。図1から図4に示す第1実施形態の魚釣り用浮き1、外浮き10及び内浮き30と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略し、以下、第1実施形態の魚釣り用浮き1、外浮き10及び内浮き30との相違点を中心に説明する。
【0045】
図5(A)の魚釣り用浮き2は、魚釣り用浮き1と基本構成を同じくするが、以下の点で、魚釣り用浮き1と異なる。魚釣り用浮き2の内浮き31は、上端45に内浮き31の降下を規制するストッパー51を備える。内浮き31の上昇を規制するストッパーは、上部42と拡径部43との間に設けられた段差部52である。また外浮き11は、最大直径部15から下端17までが円錐台形状を有し、正面視において最大直径部15から下端17に向け直線的に縮径している。
【0046】
図5(B)の魚釣り用浮き3は、魚釣り用浮き1と基本構成を同じくするが、以下の点で、魚釣り用浮き1と異なる。魚釣り用浮き3の外浮き12は、最大直径部15から上部が円錐台形状を有し、正面視において上端16に向けて直線的に傾斜している。また内浮き32は、拡径部43のうち下半分が僅かに縮径している。
【0047】
図5(C)の魚釣り用浮き4は、魚釣り用浮き1と基本構成を同じくするが、以下の点で、魚釣り用浮き1と異なる。魚釣り用浮き4の外浮き13は、最大直径部15から下端17までが円錐台形状を有し、正面視において最大直径部15から下端17に向け直線的に縮径している。また外浮き10に比較して外浮き13の高さ(全高)Hが低い。但し、外浮き13の高さ(全高)Hは、外浮き10の高さ(全高)Hと同じであってもよい。また重り61が、外浮き13の下部外壁面の一部を形成している。重り61がストッパーとして機能する点は、第1実施形態の重り60と同じである。
【0048】
魚釣り用浮き4の内浮き33は、上部42と拡径部43の境界に略円錐台状のストッパー54が設けられている。これに合わせて外浮き13の段差部22も円錐状となっている。
【0049】
図6(A)の内浮き34は、棒状のストッパー50が1つである。図6(B)の内浮き35は、上部42が上端45に向けて拡径しており、図6(C)の内浮き36は、上部42が上端45に向けて縮径している。図6(D)の内浮き37は、下部44が縮径しておらず中央の拡径部43と同じ直径である。また図6(D)の内浮き37は、一対の棒状のストッパー50に代えて、円板状のストッパー55が設けられている。
【0050】
図6(E)の内浮き38は、空気室48が、内浮き38の上部42及び拡径部43に設けられており、下部44には空気室が設けられていない。図6(F)の内浮き39は、空気室48が、内浮き39の上部42、拡径部43及び下部44に設けられている。内浮き34、35、36、38、39は、下部44が下端45に向かって直線的に縮径しているが、内浮き30と同様に正面視において下部が外側に向けて僅かに湾曲していてもよい。
【0051】
図5及び図6を用いて本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の変形例を示したが、外浮き11、12、13は、外浮き10と同様に外観形状が流線型、涙滴型、紡錘型、卵型、円錐型又は角錐型であり、投げたときの空気抵抗、さらには水中で上下動するときの抵抗が小さい。また内浮き31、32、33、34、35、36、37、38、39は、内浮き30と同様に細長い棒状の浮きであり、さらに抵抗低減手段を備えるのでアタリに対して敏感に反応することができる。また内浮き31、32、33、34、35、36、37、38、39は、内浮き30と同様に、少なくとも拡径部43に空気室48を備えるので強度を確保しつつ容積の大きい空気室48を設けることができる。
【0052】
図7は、本発明の第2実施形態の魚釣り用浮き5の構造を説明するための図である。図1から図4に示す本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。以下、第1実施形態の魚釣り用浮き1との相違点を中心に説明する。
【0053】
本発明の第2実施形態の魚釣り用浮き5の構成は、本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1と基本的に同じであり、作用効果も基本的に本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1と同じである。相違点は、内浮き40の構造にある。より具体的には、第2実施形態の魚釣り用浮き5の内浮き40は、本体41の上部42が拡径部43以下の部材に対して着脱可能に構成されている。
【0054】
内浮き40の本体41の上部42は、上端45が閉じた筒状のキャップ80からなる。内浮き40の本体41の拡径部43の上端には、キャップ80が嵌り込む棒状の突起49が設けられている。突起49の長さは特に限定されるものではないが、外浮き10に対してキャップ80を取外した本体41を最も上昇させたとき、上端が外浮き10の上端16と面一となる程度のものが好ましい。
【0055】
キャップ80の内径と突起49の外径とは略同一であり、突起49に対してキャップ80を押し込むことでぐらつくことなく連結される。棒状の突起49を、上端に向かって僅かに縮径させた先細り形状とし、キャップ80の下部を弾性変形可能に構成すれば、キャップ80をより堅固に、また液密可能に連結させることもできる。
【0056】
キャップ80の外径は、基本的に第1実施形態の内浮き30の上部42の直径dと同じであり、キャップ80の長さhは、基本的には突起49に嵌め込んだとき、第1実施形態の内浮き30と同じ寸法になるようにすればよい。キャップ80の内部空間81の高さhも特に限定されるものではない。本実施形態では、内部空間81の高さhがキャップ80の長さhと略同一であるが、内部空間81の高さhを突起49の高さと略同一としてもよい。突起49の高さに比較して内部空間81の高さhを大きくすれば、突起49にキャップ80を取付けたとき内部に空気室ができる。
【0057】
キャップ80の材質は、軽いものが好ましく、基本的には第1実施形態の内浮き30の本体41と同様に考えればよい。またキャップ80にゴム弾性を有する素材を使用してもよい。キャップ80の材質は、本体41の拡径部43以下の部材と同じ材質であっても異なっていてもよい。キャップ80は、表面が平滑であるのがよく、表面に蛍光塗料を塗布する点も第1実施形態の内浮き30と同様に考えればよい。
【0058】
第2実施形態の魚釣り用浮き5は、内浮き40の本体41の上部42が拡径部43以下の部材に対して着脱可能に構成されているので、キャップ80を取外せばコンパクトになり持ち運びが容易となる。予め長さhの異なるキャップ80を準備しておけば、釣り場の状況に応じ適したものを使用することができ使い勝手がよくなる。またキャップ80を別体とすることで製造も容易となる。またキャップ80に市販の樹脂製キャップ、ゴム製キャップ等を用いれば魚釣り用浮き5を安価に製造することができる。
【0059】
図5及び図6において、本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1の変形例を示したが、これらは本発明の第2実施形態の魚釣り用浮き5にも適用することができる。
【0060】
以上、本発明の第1実施形態の魚釣り用浮き1、本発明の第2実施形態の魚釣り用浮き5及びその変形例、さらには外浮き10、内浮き30の変形例を用いて本発明に係る魚釣り用浮きを示したが、本発明に係る魚釣り用浮きは上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更して使用することができる。
【0061】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0062】
1,2,3,4,5 魚釣り用浮き
10,11,12,13 外浮き
15 最大直径部
20 貫通孔
21 縮径部
22 段差部
23 第1孔
24 第2孔
30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40 内浮き
41 本体
42 上部
43 拡径部
44 下部
47 円錐台部
48 空気室
50,51,54,55 ストッパー
52 段差部
60,61 重り
70 環
80 キャップ
100 釣り糸
内浮きの拡径部43の直径
空気室48の直径
内浮きの拡径部43の長さ
空気室48の長さ
キャップ80の長さ
【要約】
【課題】アタリに対する応答性、遠投性能、投げたときのコントロール性などに優れる、使い勝手のよい魚釣り用浮きを提供する。
【解決手段】内浮き30が挿通される貫通孔20を備える外浮き10と、前記貫通孔20に上下動自在に取付けられた棒状の内浮き30と、前記外浮き10の下部又は底部に取付けられた重り60と、前記内浮き30の底部に取付けられた回転自在な環70と、前記内浮き30が前記外浮き10から抜けることを防止する抜止め手段と、を備え、前記外浮き10の形状が、流線型、涙滴型、紡錘型、卵型、円錐型又は角錐型のうちのいずれか一種であり、前記内浮き30は、中央に縦長の拡径部43を有し、少なくとも前記拡径部43内に空気室48が設けられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7