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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】開閉装置、及び端末装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20220216BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20220216BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20220216BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20220216BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G06F1/16 312F
H04M1/02 C
F16C11/04 F
H05K5/02 R
G09F9/00 350Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017181060
(22)【出願日】2017-09-21
(65)【公開番号】P2019057131
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】倉持 竜太
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0205792(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0227994(US,A1)
【文献】国際公開第2016/077254(WO,A1)
【文献】特開2016-169767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/16
H04M1/02
H05K5/00-5/06
F16C11/00-11/12
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体とを開閉可能に連結すると共に、閉成状態で円弧状の断面を形成して前記第1筐体と前記第2筐体とに渡って設けられたフレキシブルディスプレイパネルを支持する開閉装置であって、
前記第1筐体に固定可能な第1取付部材と、
前記第1取付部材に対して回動を伴ってスライド可能な第1リンク部材と、
前記第2筐体に固定可能な第2取付部材と、
前記第2取付部材に対して回動を伴ってスライド可能な第2リンク部材と、
前記第1リンク部材と前記第2リンク部材との間に設けられ、一端部が前記第1リンク部材に対して回動を伴ってスライド可能であって、他端部が前記第2リンク部材に対して回動を伴ってスライド可能である中央部材と、
前記第1取付部材と前記中央部材との間に設けられ、前記第1取付部材に対する前記中央部材の回動に抵抗力を作用させる第1フリクション発生手段と、
前記第2取付部材と前記中央部材との間に設けられ、前記第2取付部材に対する前記中央部材の回動に抵抗力を作用させる第2フリクション発生手段と、を有する、
ことを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記第1フリクション発生手段は、
前記中央部材に対する回動を規制して前記中央部材に設けられた第1摩擦部材と、
一端部が前記第1取付部材に取付けられ、他端部が前記第1摩擦部材に嵌合して前記抵抗力としての摩擦力を作用させる第2摩擦部材と、を有し、
前記第2フリクション発生手段は、
前記中央部材に対する回動を規制して前記中央部材に設けられた第3摩擦部材と、
一端部が前記第2取付部材に取付けられ、他端部が前記第3摩擦部材に嵌合して前記抵抗力としての摩擦力を作用させる第4摩擦部材と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記第1取付部材に対する回動を規制して前記第1取付部材に設けられ、前記第2摩擦部材の前記一端部に嵌合して前記抵抗力としての摩擦力を作用させる第5摩擦部材と、
前記第2取付部材に対する回動を規制して前記第2取付部材に設けられ、前記第4摩擦部材の前記一端部に嵌合して前記抵抗力としての摩擦力を作用させる第6摩擦部材と、を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記第5摩擦部材は、前記第1取付部材に対する前記中央部材の回動に伴って前記第1取付部材に沿ってスライドするように設けられ、
前記第6摩擦部材は、前記第2取付部材に対する前記中央部材の回動に伴って前記第2取付部材に沿ってスライドするように設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記第1摩擦部材及び前記第3摩擦部材が単一部材により構成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記第1摩擦部材及び前記第3摩擦部材は、U字型に曲がった金属線材の対向する平行部分により構成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の開閉装置。
【請求項7】
前記第2摩擦部材及び前記第4摩擦部材は、それぞれ前記第1摩擦部材及び前記第3摩擦部材の前記金属線材の断面を締め付けるように断面を屈曲させた弾性板材により構成されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の開閉装置。
【請求項8】
前記第1フリクション発生手段と前記第2フリクション発生手段とは前記中央部材上で一体に連結され、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項9】
前記第1取付部材、前記第1リンク部材、前記第2取付部材、前記第2リンク部材、及び前記中央部材からなる連結部が一対設けられ、
一体に連結された前記第1フリクション発生手段と前記第2フリクション発生手段とが一対の前記連結部の間に複数組配置されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の開閉装置。
【請求項10】
前記第1リンク部材と前記第1取付部材とのうちの一方に設けた円弧溝にその他方に設けた円弧凸部が保持されることにより、前記第1リンク部材は、前記第1取付部材に対して回動及びスライドが可能であって、
前記第2リンク部材と前記第2取付部材とのうちの一方に設けた円弧溝にその他方に設けた円弧凸部が保持されることにより、前記第2リンク部材は、前記第2取付部材に対して回動及びスライドが可能であって、
前記第1リンク部材と前記中央部材とのうちの一方に設けた円弧溝にその他方に設けた円弧凸部が保持されることにより、前記中央部材は、前記第1リンク部材に対して回動及びスライドが可能であって、
前記第2リンク部材と前記中央部材とのうちの一方に設けた円弧溝にその他方に設けた円弧凸部が保持されることにより、前記中央部材は、前記第2リンク部材に対して回動及びスライドが可能であって、
前記円弧溝の両端部は、開閉に伴って前記円弧凸部の前記円弧溝に沿った移動を規制する規制手段を兼ねている、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の開閉装置。


【請求項11】
前記第1筐体と、
前記第2筐体と、
請求項1~10のいずれか1項に記載の開閉装置と、
前記第1筐体と前記第2筐体と前記開閉装置との内側面に配置された屈曲可能なフレキシブルディスプレイパネルと、を有する、
ことを特徴とする端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1筐体から第2筐体に渡って設けられた可撓性を有するシート状のフレキシブルディスプレイパネル、例えば有機EL(Electro Luminescence)パネル、液晶パネル等を支持して屈曲、展開させる開閉装置、並びにこの開閉装置を用いた端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機ELパネルや液晶パネル等のようなフレキシブルディスプレイパネルを、第1筐体から第2筐体に渡って設け、不使用時にはフレキシブルディスプレイパネルを二つ折り状態に屈曲させ、使用時にはフレキシブルディスプレイパネルを一枚の平面状態に展開させるスマートフォン、タブレットパソコン、ゲーム機、携帯電話などの端末装置が実用化されつつある。このような端末装置のために、第1筐体と第2筐体の間をフレキシブルに連結することができる開閉装置の例が特許文献1に示される。
【0003】
特許文献1の開閉装置は、樹脂製の蛇腹構造により第1筐体と第2筐体とをフレキシブルに連結して有機ELパネルを支持している。そして、第1筐体と第2筐体とを重ねて有機ELパネルを折り返し状態に屈曲させた際には、開閉装置が円筒面状の屈曲を形成して有機ELパネルに所定の曲率半径を持たせている。また、特許文献1の開閉装置は、樹脂製の蛇腹構造を縦断するように形状記憶合金で形成された屈曲方向の補強梁を設けている。補強梁が自在に塑性変形して形状を保持することで、第1筐体と第2筐体とを任意の開成角度で保持可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-161009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1筐体と第2筐体とを連結してフレキシブルディスプレイパネルを支持する開閉装置は、フレキシブルディスプレイパネルを折り返し状態に屈曲させた際には所定の曲率半径の屈曲を形成できることが好ましい。フレキシブルディスプレイパネルを許容範囲よりも小さな曲率半径で折り曲げると、フレキシブルディスプレイパネルの性能が損なわれる可能性があるからである。また、開閉装置は、フレキシブルディスプレイパネルの屈曲/展開に伴って、フレキシブルディスプレイパネルを支持する屈曲面の長さが一定であることが好ましい。屈曲/展開に伴って屈曲面の長さが大きく変化すると、支持されたフレキシブルディスプレイパネルに無理な力が作用して性能が損なわれる可能性があるからである。さらに開閉装置は、フレキシブルディスプレイパネルを支持する第1筐体と第2筐体とを任意の開成角度にて保持できることが好ましい。開閉装置自身がフレキシブルディスプレイパネルの展開(開閉ともいう)角度を保持する機能を持っていれば、フレキシブルディスプレイパネルを手や道具で押さえていなくても、屈曲させた二つ折り状態や展開した平面状態を維持できるからである。
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される樹脂製の蛇腹構造では、第1筐体と第2筐体とが重なる閉成状態と第1筐体と第2筐体とが平面状に展開される開成状態とで、蛇腹構造の屈曲の内側面の屈曲に沿った長さが変化する。このため、屈曲に沿って伸縮しないフレキシブルディスプレイパネルを蛇腹構造の屈曲部分に支持させると、開成状態ではフレキシブルディスプレイパネルに引張りが作用し、閉成状態ではフレキシブルディスプレイパネルと蛇腹構造との間に隙間が発生する。
【0007】
そこで、複数のリンク部材を屈曲方向に回動を伴ってスライド可能に連結し、複数のリンク部材の内側の包絡面によって円弧状の屈曲面を形成する開閉装置が提案された。そして、第1筐体と第2筐体とを任意の開成角度で保持できるように、隣接するリンク部材の連結部を締り嵌めにして摩擦力を発生させることが提案された。
【0008】
しかし、隣接するリンク部材の連結部を締り嵌めにすると、もはやリンク機構とは言えず、隣接するリンク部材同士が屈曲方向へ円滑にスライドできなくなって、複数のリンク部材の全体で滑らかに屈曲を形成し解除することができなくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、第1筐体から第2筐体にかけて設けられたフレキシブルディスプレイパネルを用いた端末装置の開閉装置として、上述した求められる機能を満足させた上で、より滑らかにフレキシブルディスプレイパネルを屈曲/展開できる構造簡単な開閉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の開閉装置は、第1筐体と第2筐体とを開閉可能に連結すると共に、閉成状態で円弧状の断面を形成して前記第1筐体と前記第2筐体とに渡って設けられたフレキシブルディスプレイパネルを支持するものである。そして、前記第1筐体に固定可能な第1取付部材と、前記第1取付部材に対して回動を伴ってスライド可能な第1リンク部材と、前記第2筐体に固定可能な第2取付部材と、前記第2取付部材に対して回動を伴ってスライド可能な第2リンク部材と、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材との間に設けられ、一端部が前記第1リンク部材に対して回動を伴ってスライド可能であって、他端部が前記第2リンク部材に対して回動を伴ってスライド可能である中央部材と、前記第1取付部材と前記中央部材との間に設けられ、前記第1取付部材に対する前記中央部材の回動に抵抗力を作用させる第1フリクション発生手段と、前記第2取付部材と前記中央部材との間に設けられ、前記第2取付部材に対する前記中央部材の回動に抵抗力を作用させる第2フリクション発生手段と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1筐体から第2筐体にかけて設けられたフレキシブルディスプレイパネルを用いた端末装置の開閉装置として、上述した求められる機能を満足させた上で、より滑らかにフレキシブルディスプレイパネルを屈曲/展開できる構造簡単な開閉装置、並びにこの開閉装置を用いた端末装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の端末装置の開成角度の説明図である。(a)は0度、(b)は90度、(c)は180度である。
図2】開閉装置の説明図である。(a)は取付状態、(b)は組立状態である。
図3】開閉装置の分解斜視図である。
図4】連結部の分解斜視図である。(a)は右側の連結部、(b)は左側の連結部である。
図5】フリクション発生部の分解斜視図である。
図6】フリクション発生部の構成及び取付の説明図である。
図7】フリクション発生部の断面図である。
図8】開閉装置の各断面の名称の説明図である。
図9】開成角度が0度の場合の連結部の各断面である。(a)はA-A断面、(b)はB-B断面、(c)はC-C断面、(d)はD-D断面、(e)はE-E断面である。
図10】開成角度が90度の場合の連結部の各断面である。(a)はA-A断面、(b)はB-B断面、(c)はC-C断面、(d)はD-D断面、(e)はE-E断面である。
図11】開成角度が180度の場合の連結部の各断面である。(a)はA-A断面、(b)はB-B断面、(c)はC-C断面、(d)はD-D断面、(e)はE-E断面である。
図12】開成角度が0度の場合のフリクション発生部の各断面である。(a)はF-F断面斜視図、(b)はF-F断面、(c)はG-G断面斜視図、(d)はG-G断面である。
図13】開成角度が90度の場合のフリクション発生部の各断面である。(a)はF-F断面斜視図、(b)はF-F断面、(c)はG-G断面斜視図、(d)はG-G断面である。
図14】開成角度が180度の場合のフリクション発生部の各断面である。(a)はF-F断面斜視図、(b)はF-F断面、(c)はG-G断面斜視図、(d)はG-G断面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、添付した図面を参照して詳細に説明する。以下の実施例では、複数のリンク部材を連結して構成された構造全体が端末装置の開閉に伴って屈曲を形成し解除する。そして、隣接するリンク部材は、その一方に形成された円弧溝に、その他方に形成された円弧凸部を嵌合させることにより、ヒンジシャフトを使用することなくヒンジ(回動部)を形成している。
【実施例1】
【0014】
(端末装置)
図1は実施例1の端末装置の開成角度の説明図である。図1中、(a)は0度、(b)は90度、(c)は180度である。図1の(a)に示すように、実施例1の端末装置100は、フレキシブルな有機ELのディスプレイパネルを搭載したコンピュータディスプレイである。端末装置は、開閉装置10を挟んで折り返して重ね合わせることができる2つの筐体に跨ってフレキシブルディスプレイパネルを設けている。開閉装置10は、2つの筐体の間に円筒状の屈曲面を形成してフレキシブルディスプレイパネルを支持している。
【0015】
実施例1の端末装置100は、第1筐体101と第2筐体102とを一対の開閉装置103,104によって開閉可能に連結している。第1筐体101は、不図示の無線通信アンテナと回路基板とが内蔵されたアルミニウムの合金の箱体である。第2筐体102は、不図示の二次電池が内蔵されたアルミニウムの合金の箱体である。第1筐体101と第2筐体102との開成角度が0度の閉成状態では、開閉装置103,104は、内側面と外側面との両方において円筒面状に屈曲した包絡面を形成している。
【0016】
図1の(b)に示すように、第1筐体101と第2筐体102と開閉装置103,104との内側面全体に重ねてフレキシブルな有機ELパネル105が取付けられている。有機ELパネル105は、樹脂シートの基板上に形成された有機EL画像表示素子であって、全体が開閉装置103,104の内側面の包絡面に倣って円筒状に屈曲する。有機ELパネル105は、第2筐体102に内蔵された二次電池から電力供給される。有機ELパネル105は、第1筐体101に内蔵された回路基板に駆動されて画像を表示する。なお、有機ELパネル105は、通常、素子自体の厚みは0.05~0.2mmとごく薄いシート状であるが、背面に柔軟なスペーサを配置して厚みを0.5~2.0mmに調整したものであってもよい。
【0017】
開閉装置103,104は、第1筐体101に対して第2筐体102を開いたとき、後述するフリクション発生部(40)により、0度から180度の範囲のうちの任意の開成角度を保持して停止させることが可能である。開閉装置103,104は、第2筐体102の開成角度が90度のときも、内側面に円筒面状の包絡面を形成して有機ELパネル105を支持する。
【0018】
図1の(c)に示すように、開閉装置103,104は、第2筐体102の開成角度が180度のとき、内側面に第1筐体101と第2筐体102と同一高さの平坦面を形成する。第1筐体101と第2筐体102と開閉装置103,104の内側面とは、有機ELパネル105の下面を同一高さで支持する平坦面を形成している。
【0019】
ところで、開閉装置103,104を通常のリンク部材、すなわち屈曲面に沿って配置した複数のリンク部材をそれぞれヒンジシャフトで連結したキャタピラ状の構造で構成した場合、開閉装置の開閉に伴って内側面の屈曲に沿った長さが変化する。一方、屈曲面に沿って円周状に並んだヒンジシャフトの中心の包絡面では、開閉装置の開閉に伴って内側面の屈曲に沿った長さが一定に保たれる。そこで、開閉装置103,104では、隣接するリンク部材を相対的に回動させる機構をヒンジシャフトを使用することなく構成して、本来ならヒンジシャフトが配置される位置を有機ELパネル105に明け渡している。開閉装置103,104は、隣接するリンク部材の相対的な回動の中心位置を開閉装置103,104の内側面上に設定することにより、内側面が形成する屈曲面の屈曲に沿った長さ(有機ELパネルの厚みを考慮すると、有機ELパネルの有機EL素子が配置される高さ位置での屈曲面に沿った長さ)が開閉装置103,104の開閉に伴ってあまり変化しないようにしている。
【0020】
(開閉装置)
図2は開閉装置の説明図である。図3は開閉装置の分解斜視図である。図2中、(a)は取付状態、(b)は組立状態である。図2の(a)に示すように、開閉装置103,104は、第1筐体101と第2筐体102とを開閉可能に連結している。開閉装置103,104は、共通の部品を用いて組立てられている。開閉装置103,104は、実質的に同一製品であるため、以下では、共通に開閉装置10と呼ぶ。
【0021】
図2の(b)に示すように、開閉装置10は、第1筐体101と第2筐体102とを開閉可能に連結している。開閉装置10は、中心線H-Hを中心にして左右対称に形成された部品を用いて左右対称に組立てられている。開閉装置10は、中心線H-Hを中心にした左右の部分が実質的に同一構造であるため、左右の対称な二組の部品群には、1の桁を共通にして10の桁を異ならせた記号(20~26、30~36)を付している。
【0022】
図3に示すように、取付部材11は、第1筐体101の取付孔101aに取付孔11aを重ね合わせて止ピン101bを挿入し、止ピン101bの先端をかしめることにより第1筐体101と一体に固定されている。取付部材12は、第2筐体102の取付孔102aに取付孔12aを重ね合わせて止ピン102bを挿入し、止ピン102bの先端をかしめることにより第2筐体102と一体に固定されている。したがって、第1取付部材の一例である取付部材11は、第1筐体101に固定可能であり、第2取付部材の一例である取付部材12は、第2筐体102に固定可能である。
【0023】
取付部材11は、リンク支持部材13の取付孔13aに取付孔11bを重ね合わせて止ピン13bを挿入し、止ピン13bの先端をかしめることによりリンク支持部材13と一体に固定されている。取付部材12は、リンク支持部材14の取付孔14aに取付孔12bを重ね合わせて止ピン14bを挿入し、止ピン14bの先端をかしめることによりリンク支持部材14と一体に固定されている。
【0024】
リンク支持部材25は、リンク支持部材13の雌ねじ13cに対してリンク支持部材25の丸孔25aを貫通させた雄ねじ13dを締め付けることによりリンク支持部材13と一体に固定されている。リンク支持部材26は、リンク支持部材14の雌ねじ14cに対してリンク支持部材26の丸孔26aを貫通させた雄ねじ14dを締め付けることによりリンク支持部材14と一体に固定されている。リンク支持部材35は、リンク支持部材13の雌ねじ13eに対してリンク支持部材35の丸孔35aを貫通させた雄ねじ13fを締め付けることによりリンク支持部材13と一体に固定されている。リンク支持部材36は、リンク支持部材14の雌ねじ14eに対してリンク支持部材36の丸孔36aを貫通させた雄ねじ14fを締め付けることによりリンク支持部材14と一体に固定されている。
【0025】
連結部20は、リンク部材の一例であるリンク支持部材25、26と中央部材21との間にリンク部材22、24を配置して、取付部材11と取付部材12とを連絡している。連結部20は、取付部材11に対する取付部材12の回動に伴って、開閉装置10の内側と外側とに、取付部材11と取付部材12とを滑らかに連絡する円弧状の包絡面を形成する。連結部30は、リンク支持部材35、36と中央部材31との間にリンク部材32、34を配置して、取付部材11と取付部材12との間を連絡する。連結部30は、取付部材11に対する取付部材12の回動に伴って、開閉装置10の内側と外側とに、取付部材11と取付部材12とを滑らかに連絡する円弧状の包絡面を形成する。
【0026】
連結部20の中央部材21と連結部30の中央部材31とは、外側の円周面と内側の平坦面とを共有する単一部品の中央ブロック15として一体に形成されている。中央部材21と中央部材31とは、中央ブロック15の左右の端部に位置して一体に回動する。
【0027】
中央部材21,31,23,33、リンク部材22,32、リンク部材24,34、リンク支持部材13,14、リンク支持部材25,35、及びリンク支持部材26,36は、開閉装置10の外側面と内側面に円筒面状の包絡面を形成するように、内側と外側のそれぞれの形状が形成されている。中央ブロック15、リンク支持部材13,14、リンク支持部材25,35,26,36、リンク部材22,32、リンク部材24,34、中央部材23,33、及びリンク支持部材13,14は、各連結部の強度を考慮して、MIM(メタルインジェクションモールド)部品、鉄系金属、ステンレス鋼、チタン合金等により形成されている。
【0028】
(連結部)
図4は連結部の分解斜視図である。図4中、(a)は右側の連結部、(b)は左側の連結部である。図3に示すように、リンク支持部材25,35は、リンク支持部材13を介して取付部材11に固定されている。リンク支持部材26,36は、リンク支持部材14を介して取付部材12に固定されている。
【0029】
図4に示すように、リンク部材24,34は、短い円弧凸部24a、34aをリンク支持部材25,35の長い円弧溝25m,35mに緩く嵌合させ、反対側の短い円弧凸部24b、34bを中央部材23,33の長い円弧溝23a,33aに緩く嵌合させている。このため、リンク部材24,34は、円弧溝25m,35m及び円弧溝23a,33aに両端を案内されて円弧状にスライドすることが可能である。したがって、第1リンク部材の一例であるリンク部材24,34は、リンク支持部材25,35に対して回動を伴ってスライド可能である。
【0030】
リンク部材22,32は、短い円弧凸部22a,32aをリンク支持部材26,36の長い円弧溝26m,36mに緩く嵌合させ、反対側の短い円弧凸部22b、32bを中央部材21,31の長い円弧溝21b,31bに緩く嵌合させている。このため、リンク部材22,32は、円弧溝26m,36m及び円弧溝21b,31bに両端を案内されて円弧状にスライドすることが可能である。したがって、第2リンク部材の一例であるリンク部材22,32は、リンク支持部材26,36に対して回動を伴ってスライド可能である。
【0031】
中央部材23,33は、短い円弧凸部23b,33bを中央部材21,31の短い円弧溝21a,31aに緩く嵌合させている。このため、中央部材23,33は、中央部材21,31と相対的に回動もスライドもすることなく一体に回動する。中央部材の一例である中央部材21,31及び中央部材23,33は、リンク部材24,34とリンク部材22,32とを連絡する。中央部材21,31は、長い円弧溝21b,31bにリンク部材22,32の短い円弧凸部22b、32bを緩く嵌合させている。中央部材23,33は、長い円弧溝23a,33aにリンク部材24,34の短い円弧凸部24b、34bを緩く嵌合させている。したがって、中央部材21,31は、一端部がリンク部材24,34に対して回動を伴ってスライド可能であって、他端部がリンク部材22,32に対して回動を伴ってスライド可能である。
【0032】
リンク支持部材25,35の円弧溝25m,35m及び中央部材23,33の円弧溝23a,33aは、円周状に形成され、円周の中心がリンク支持部材25,35及び中央部材23,33の内側面に一致するように設計されている。リンク支持部材26,36の円弧溝26m,36m及び中央部材21,31の円弧溝21b,31bは、円周状に形成され、円周の中心がリンク支持部材26,36及び中央部材21,31の内側面に一致するように設計されている。このため、これらと、リンク部材22,32,24,34との包絡面として形成される開閉装置10の内側面は、開閉に伴う屈曲に沿った長さの変化が小さい。
【0033】
開閉装置10の開閉に伴って内側面に重ねて配置される有機ELパネル(105)が引張られたり圧縮されたりしないように、内側面に形成される包絡面は、開閉装置10の開閉に伴う円周方向の長さが一定であることが好ましい。このため、図4に示すように、長い円周溝21b,26m、23a,25mと短い円周突起22b,22a、24b,24aとの組み合わせ及び長い円周溝31b,36m、33a,35mと短い円周突起32b,32a、34b,34aとの組み合わせでリンク部材22,32、24,34の回動を制御している。ヒンジシャフトを使用して同様の回動を制御すると、ヒンジシャフトが邪魔になって開閉装置10の開閉に伴う円周方向の長さが一定の高さ位置へは有機ELパネル105を設けられない。
【0034】
ところで、隣接するリンク部材をヒンジシャフトで連結する通常の開閉装置であれば、ヒンジシャフトの周りにフリクション発生部を設けて開閉装置の開成角度を保持させることが可能である。しかし、開閉装置10は、円弧溝に円弧凸部を保持させて隣接するリンク部材を相対的に回動させるものであるため、ヒンジシャフトを有さず、したがって、ヒンジシャフトの周りにフリクション発生部を設けることができない。また、開閉装置10では、円弧溝と円弧凸部との間の摩擦を大きくして開閉装置10の開成角度を保持させようとすると、隣接するリンク部材の円滑なスライド移動が妨げられて開閉装置10の開閉そのものが困難になる。そこで、実施例1では、隣接するリンク部材を1つ越えたリンク部材同士の間に跨らせてフリクション発生部を設けている。これにより、隣接するリンク部材の間で円滑なスライド移動が可能となって、開閉装置10の開閉が円滑に行えるようになった。
【0035】
(フリクション発生部)
図5はフリクション発生部の分解斜視図である。図6はフリクション発生部の構成及び取付の説明図である。図7はフリクション発生部の断面図である。図3に示すように、フリクション発生部40は、リンク部材22,32,24,34を飛び越えて、取付部材11と中央ブロック15と取付部材12とを連結する。図5に示すように、フリクション発生部40は、取付部材11の上にL字軸42,45を位置させ、中央ブロック15の上にU字軸41,49を位置させ、取付部材12の上にL字軸43,46を位置させている。
【0036】
図3に示すように、フリクション発生部40は、プレート51,52,53により取付部材11、取付部材12、及び中央ブロック15に重ねて取付けられる。プレート51は、丸孔51aを貫通させた雄ねじ11dを取付部材11の雌ねじ11cに締め付けることにより、取付部材11と一体に固定されている。プレート52は、丸孔52aを貫通させた雄ねじ12dを取付部材12の雌ねじ12cに締め付けることにより、取付部材12と一体に固定されている。プレート53は、丸孔53aを貫通させた雄ねじ15bを中央ブロック15の雌ねじ15aに締め付けることにより、中央ブロック15と一体に固定されている。
【0037】
図6は、L字軸42,43,45,46及びU字軸41,49の取付状態を詳細に説明するための図であって、部品同士の関係の理解を容易にするために、図3に示すいくつかの部品を取り除いた状態を示している。図6に示すように、プレート51と取付部材11のスライド面11eとの間にL字軸42の端部42bがスライド可能に保持される。取付部材12のスライド面12eの上に取付けられるプレート52とスライド面12eとの間にL字軸43の端部43bがスライド可能に保持される。同様に、プレート51と取付部材11のスライド面11fとの間にL字軸45の端部45bがスライド可能に保持されている。プレート52とスライド面12fとの間にL字軸46の端部46bがスライド可能に保持される。中央ブロック15の溝部15eは、U字軸41のU字に曲がった部分を緩く保持している。中央ブロック15の溝部15fは、U字軸49のU字に曲がった部分を緩く保持している。
【0038】
図7に示すように、第1フリクション発生手段の一例であるフリクション発生部40は、取付部材11と中央ブロック15とを摩擦軸受47により連絡し、取付部材11に対する中央部材21,31の回動に対して抵抗力を作用させる。摩擦軸受47は、L字軸42,45とU字軸41,49とを連結している。摩擦軸受47は、弾性板材(ステンレス)47aの端部47b,47c,47dを円筒状にカールさせて円孔を形成しており、L字軸42,45とU字軸41,49とを円孔内でそれぞれ締り嵌めで保持する。
【0039】
第2フリクション発生手段の一例であるフリクション発生部40は、取付部材12と中央ブロック15を摩擦軸受48により連絡し、取付部材12に対する中央部材21,31の回動に対して抵抗力を作用させる。摩擦軸受48は、L字軸43,46とU字軸41,49とを連結している。摩擦軸受48は、弾性板材(ステンレス)48aの端部48b,48c,48dを円筒状にカールさせて円孔を形成しており、L字軸43,46とU字軸41,49とを円孔内でそれぞれ締り嵌めで保持する。
【0040】
L字軸42,45を保持する摩擦軸受47の端部47bは、図3に示すプレート51により、取付部材11にスライド移動可能に取付けられている。L字軸43,46を保持する摩擦軸受48の端部48bは、図3に示すプレート52により、取付部材12にスライド移動可能に取付けられている。U字軸41,49を保持する摩擦軸受47、48の端部47c,47d,48c,48dは、プレート53により、中央ブロック15に取付けられている。
【0041】
図7に示すように、摩擦軸受47は、リンク部材24,34を飛び越えて、L字軸42,45の端部42a、45aとU字軸41,49の端部41a,49aとを連結している。摩擦軸受48は、リンク部材22,32を飛び越えて、L字軸43,46の端部43a,46aとU字軸41,49の端部41b,49bとを連結している。
【0042】
第1摩擦部材の一例であるU字軸41,49の端部41a,49aは、中央部材21,31に対する回動を規制して中央部材21,31に設けられている。第2摩擦部材の一例である摩擦軸受47は、一方の端部47bが取付部材11に取付けられ、他方の端部47c,47dがU字軸41,49に嵌合して抵抗力としての摩擦力を作用させる。第3摩擦部材の一例であるU字軸41,49の端部41b,49bは、中央部材21,31に対する回動を規制して中央部材21,31に設けられている。第4摩擦部材の一例である摩擦軸受48は、端部48bが取付部材12に取付けられ、端部48c,48dがU字軸41,49に嵌合して抵抗力としての摩擦力を作用させる。第5摩擦部材の一例であるL字軸42,45の端部42a,45aは、取付部材11に対する回動を規制して取付部材11に設けられ、摩擦軸受47の端部47bに嵌合して抵抗力としての摩擦力を作用させる。第6摩擦部材の一例であるL字軸43,46の端部43a,46aは、取付部材12に対する回動を規制して取付部材12に設けられ、摩擦軸受48の端部48bに嵌合して抵抗力としての摩擦力を作用させる。
【0043】
ところで、開閉装置10では、複数のリンク部材が形成する包絡面が隣接するリンク部材の相対的な回動の中心に略一致している。言い換えれば、隣接するリンク部材の相対的な回動における仮想的なヒンジシャフトが複数のリンク部材が内側に形成する包絡面に沿って配置されている。そして、開閉装置10の開閉に伴って屈曲に沿った方向の長さがあまり変化しない高さ位置に有機ELパネル105が配置されている。このため、フリクション発生部40のL字軸42,43,45,46及びU字軸41,49は、仮想的なヒンジシャフトの位置に配置することができず、仮想的なヒンジシャフトから屈曲の外側へ大きくずれた位置に配置されている。したがって、開閉装置10の開閉に伴ってL字軸42,43,45,46及びU字軸41,49が配置された円周面の周長が大きく変化する。しかし、U字軸41,49は、中央部材21,31に固定されているため、内側面の屈曲に沿った移動が不可能である。このため、フリクション発生部40のL字軸42,43,45,46を取付部材11,12に固定すると、フリクション発生部40が取付部材11,12の間隔を筋交い状にロックしてしまい、開閉装置10の開閉が困難になる。そこで、開閉装置10では、L字軸42,43,45,46の端部42b,43b,45b,46bを取付部材11,12に沿って屈曲に沿った方向へスライド可能に取付けている。
【0044】
(L字軸のスライド)
L字軸42,45の端部42b,45bは、取付部材11の空間11hにスライド可能に保持されている。L字軸42,45は、空間11h内で取付部材11に対する中央部材21,31の回動に伴って取付部材11に沿ってスライドする。L字軸43,46の端部43b,46bは、取付部材12の空間12hにスライド可能に保持されている。L字軸43,46は、空間12h内で取付部材12に対する中央部材21,31の回動に伴って取付部材12に沿ってスライドする。
【0045】
U字軸41,49の端部41a,49aとU字軸41,49の端部41b,49bとは、単一部材のU字軸41,49により構成されている。U字型に曲がった金属線材の対向する平行部分によりU字軸41,49の端部41a,49aとU字軸41,49の端部41b,49bとが構成されている。摩擦軸受47,48は、金属線材の断面を締め付けるように断面を屈曲させた弾性板材により構成されている。
【0046】
フリクション発生部40は、U字軸41,49によって第1フリクション発生手段と第2フリクション発生手段とが中央ブロック15上で一体に連結されている。取付部材11、リンク部材24,34、取付部材12、リンク部材22,32、及び中央ブロック15からなる一対の連結部20、30の間にフリクション発生部40が複数組配置されている。フリクション発生部40は、U字軸41,49、L字軸42,43,45,46の直径、摩擦軸受47,48の円孔の直径のばらつきによって嵌合部分ごとの摩擦抵抗がばらつくため、3つのフリクション発生部40は、フリクション発生部40の各回動中心における合計の回動抵抗力が略同一になるように組合せが選択されている。
【0047】
(開成角度ごとの連結部の断面)
図8は開閉装置の各断面の名称の説明図である。図9は開成角度が0度の場合の連結部の各断面である。図10は開成角度が90度の場合の連結部の各断面である。図11は開成角度が180度の場合の連結部の各断面である。図9図11中、(a)はA-A断面、(b)はB-B断面、(c)はC-C断面、(d)はD-D断面、(e)はE-E断面である。
【0048】
図8に示すように、連結部の各位置A~Eの断面を定義して、開成角度ごとの断面図を図9図11に示す。
【0049】
図9図11の(a)に示すように、リンク部材24,34は、短い円弧凸部24a、34aをリンク支持部材25,35の長い円弧溝25m,35mに緩く嵌合させることによりリンク支持部材25,35に対して回動を伴ってスライド可能である。図9図11の(b)に示すように、リンク部材22,32は、短い円弧凸部22a,32aをリンク支持部材26,36の長い円弧溝26m,36mに緩く嵌合させることによりリンク支持部材26,36に対して回動を伴ってスライド可能である。
【0050】
図9図11の(c)に示すように、リンク部材24,34は、短い円弧凸部24b、34bを中央部材23,33の長い円弧溝23a,33aに緩く嵌合させることにより中央部材23,33に対して回動を伴ってスライド可能である。図9図11の(e)に示すように、リンク部材22,32は、短い円弧凸部22b、32bを中央部材21,31の長い円弧溝21b,31bに緩く嵌合させることにより中央部材21,31に対して回動を伴ってスライド可能である。中央部材23,33は、円弧凸部23b,33bを中央部材21,31の円弧溝21a,31aに緩く嵌合させることにより中央部材21,31に固定されている。
【0051】
(開成角度ごとのフリクション発生部の断面)
図12は開成角度が0度の場合のフリクション発生部の各断面である。図13は開成角度が90度の場合のフリクション発生部の各断面である。図14は開成角度が180度の場合のフリクション発生部の各断面である。図12図14中、(a)はF-F断面斜視図、(b)はF-F断面、(c)はG-G断面斜視図、(d)はG-G断面である。
【0052】
図8に示すように、フリクション発生部の各位置F、Gの断面を定義して、開成角度ごとの断面図を図12図14に示す。図12図14の(a)に示すように、U字軸41は、摩擦軸受47、48の端部47d,48dに締り嵌めで保持されて摩擦軸受47、48との間に摩擦を発生する。U字軸49は、摩擦軸受47、48の端部47c,48cに締り嵌めで保持されて摩擦軸受47、48との間に摩擦を発生する。これにより、中央ブロック15に対して摩擦軸受47、48を回動させる力、すなわち中央ブロック15に対して取付部材11を回動させる力に抵抗する。
【0053】
L字軸42,45は、摩擦軸受47の端部47bに締り嵌めで保持されて摩擦軸受47との間に摩擦を発生する。L字軸43,46は、摩擦軸受48の端部48bに締り嵌めで保持されて摩擦軸受48との間に摩擦を発生する。これにより、取付部材11、12対して摩擦軸受47、48を回動させる力、すなわち中央ブロック15に対して取付部材11を回動させる力に抵抗する。
【0054】
したがって、取付部材11と取付部材12との開成角度を変化させるためには、摩擦軸受47、48の端部47b,47c,47d,48b,48c,48dの摩擦に打ち勝ってU字軸41,49及びL字軸42,43,45,46を回動させる必要がある。したがって、開閉装置10は、取付部材11と取付部材12との開成角度が0度から180度の範囲における任意の開成角度で保持される。
【0055】
開閉装置10の内側面に配置された有機ELパネル105が開閉装置10の開閉に伴って引張られたり圧縮されたりしないように、開閉装置10の内側面に形成される複数のリンク部材(21,23,22,24,25,26,31,33,32,34,35,36)の内側の包絡面は、開閉装置10の開閉に伴って屈曲方向の長さが略一定である。開閉装置10は、隣接するリンク部材の連結にヒンジシャフトを使用せず、長い円弧溝に案内させて円弧凸部をスライドさせて隣接するリンク部材に相対的な回動を発生させることにより、内側に円周方向の長さが略一定となる包絡面を形成している。そして、図12の(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、円弧溝の一方の端部に円弧凸部が突き当たる状態で開閉装置10の開成角度が0度になるように設計されている。また、図14の(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、円弧溝の他方の端部に円弧凸部が突き当たる状態で開閉装置10の開成角度が180度になるように設計されている。それぞれの円弧溝の長さは、挿入される円弧凸部を180度÷4=45度回転させるように設計されている。したがって、円弧溝は、隣接するリンク部材の回動角度を所定角度に規制する規制手段KSとして機能している。
【0056】
一方、上述したように、摩擦軸受47、48の端部47b,47c,47d,48b,48c,48dに沿った包絡面は、開閉装置10の内側面に形成される包絡面よりも外側に配置されているので、開閉装置10の開閉に伴って屈曲方向の長さが変化する。
【0057】
ここで、摩擦軸受47、48の端部47c,47d,48c,48dは、中央ブロック15に固定されているため、包絡面の円周方向に移動できない。このため、開閉装置10の開閉に伴って端部47b,48bが取付部材11,12に対して相対移動することにより、摩擦軸受47、48に沿った包絡面の円周方向の長さに追従する。上述したように、L字軸42は、取付部材11とプレート51との間に準備された空間11hに回動を規制されつつスライド移動する。L字軸43は、取付部材12とプレート52との間に準備された空間12hに回動を規制されつつスライド移動する。図12図14の(c)に示すように、L字軸42,43は、空間11h,12h内で取付部材11に対する中央部材21,31の回動に伴ってスライド移動する。
【0058】
(実施の形態1の効果)
実施例1では、リンク部材24,34は、取付部材11に対して回動を伴ってスライド可能である。リンク部材22,32は、取付部材12に対して回動を伴ってスライド可能である。中央部材21,31は、リンク部材24,34とリンク部材22,32とを連絡する。中央部材21,31は、一端部がリンク部材24,34に対して回動を伴ってスライド可能であって、他端部がリンク部材22,32に対して回動を伴ってスライド可能である。このため、隣接するリンク部材の相対的な回動中心をリンク部材の内側面に位置させることが可能になる。なお、開閉装置の内周側に形成される屈曲面は、技術思想的には円筒状であっても、実際には多角柱状である。複数のリンク部材の包絡面は、実際には円筒面ではなく、楕円筒面又は略円筒面である。隣接するリンク部材の回動中心は、実際にはリンク部材の内側面から少し離れている場合も含む。
【0059】
実施例1では、フリクション発生部40は、取付部材11と中央部材21,31とを連絡し、取付部材11に対する中央部材21,31の回動に抵抗力を作用させる。フリクション発生部40は、取付部材12と中央部材21,31とを連絡し、取付部材12に対する中央部材21,31の回動に抵抗力を作用させる。このため、開閉装置10は、抵抗力によって開成角度を保持可能である。そして、隣接するリンク部材を越えたリンク部材の回動に抵抗するため、隣接するリンク部材の回動が円滑に行われ、複数のリンク部材を連結して構成された構造全体で滑らかに屈曲を形成し解除できる。また、開閉装置10は、特許文献1に示される形状記憶合金の補強梁のような形状記憶合金に起因する不利を生じない。補強梁の塑性変形によって蛇腹構造の屈曲状態を保持しないので、塑性変形に至る前の弾性変形に起因する形状記憶合金のバックラッシュが第1筐体101と第2筐体102との開成角度の設定の邪魔にならない。また、開閉のたびに形状記憶合金の補強梁が塑性変形しないので、開閉の繰り返し回数に制限が無い。さらに、形状記憶合金を使用しないので、開閉装置10の材料コストが低くなる。
【0060】
実施例1では、U字軸41,49の端部41a,49aは、中央部材21,31に対する回動を規制して中央部材21,31に設けられている。摩擦軸受47は、一方の端部47bが取付部材11に取付けられ、他端部47c,47dがU字軸41,49に嵌合して抵抗力としての摩擦力を作用させる。U字軸41,49の端部41b,49bは、中央部材21,31に対する回動を規制して中央部材21,31に設けられている。摩擦軸受48は、一方の端部48bが取付部材12に取付けられ、他方の端部48c,48dがU字軸41,49に嵌合して抵抗力としての摩擦力を作用させる。L字軸42,45の端部42a,45aは、取付部材11に対する回動を規制して取付部材11に設けられ、摩擦軸受47の一方の端部47bに嵌合して抵抗力としての摩擦力を作用させる。L字軸43,46の端部43a,46aは、取付部材12に対する回動を規制して取付部材12に設けられ、摩擦軸受48の一方の端部48bに嵌合して抵抗力としての摩擦力を作用させる。このため、U字軸、L字軸、摩擦軸受というシンプルで小型の部材を用いてフリクション発生部40を構成できる。
【0061】
実施例1では、L字軸42,45の端部42a,45aは、取付部材11に対する中央部材21,31の回動に伴って取付部材11に沿ってスライドする。L字軸43,46の端部43a,46aは、取付部材12に対する中央部材21,31の回動に伴って取付部材12に沿ってスライドする。このため、開閉装置10の開閉に伴ってL字軸42,43,45,46がスライドして開閉装置10の開閉を妨げない。
【0062】
実施例1では、U字軸41,49の端部41a,49aとU字軸41,49の端部41b,49bとが単一部材のU字軸41,49により構成されている。U字軸41,49の端部41a,49aとU字軸41,49の端部41b,49bとがU字型に曲がった金属線材の対向する平行部分により構成されている。このため、U字軸41,49を中央部材21,31に固定することにより、U字軸41,49の断面の回転を規制して、摩擦軸受47,48との間に摩擦を発生させることができる。
【0063】
実施例1では、摩擦軸受47,48は、金属線材の断面を締め付けるように断面を屈曲させた弾性板材により構成されている。このため、フリクション発生部40の構造が単純になり、部品点数少なく形成できる。実施例1では、フリクション発生部40は、U字軸41,49によって第1フリクション発生手段と第2フリクション発生手段とが中央ブロック15上で一体に連結されている。このため、第1フリクション発生手段と第2フリクション発生手段との合計の部品点数が削減される。
【0064】
実施例1では、取付部材11、リンク部材24,34、取付部材12、リンク部材22,32、及び中央ブロック15からなる一対の連結部20、30の間にフリクション発生部40が複数組配置されている。このため、複数組のフリクション発生部の抵抗力をそれぞれ測定して組み合わせることにより第1フリクション発生手段と第2フリクション発生手段とにおける回動に対する抵抗力の差を小さくすることができる。
【実施例2】
【0065】
実施例1では、隣接するリンク部材のうちの一方に形成された円弧溝と他方に形成された円弧凸部との組み合わせにより、回動を伴ってスライドする構造を実現した。しかし、回動を伴ってスライドする構造は、円弧溝と円弧凸部との組み合わせには限らない。円弧凸部は、その周方向の端部に対応する位置に配置した一対のピンに置き換えても、実施例1と同様な隣接するリンク部材の間の相対移動を実現可能である。隣接するリンク部材のうちの一方に円弧状のレールを設け、他方にレールを挟むローラ対をレールに沿って二対設けてもよい。なお、回動を伴ってスライドする運動は、スライドを伴って回動する運動と同義である。
【実施例3】
【0066】
実施例1では、円形断面のピンと円孔の締り嵌めによって1つのリンク部材を越えた2つのリンク部材の相対的な回動に抵抗力を作用させた。しかし、1つのリンク部材を越えた2つのリンク部材の相対的な回動に対して抵抗力を作用する構造は、円形断面のピンと円孔の締り嵌め組合せには限らない。中央ブロック15及び取付部材11,12にそれぞれ実施例1と同様な摩擦軸受を配置して、3つの摩擦軸受を実施例1と同様なU字軸で相互に連結してもよい。このとき、取付部材11,12に配置する摩擦軸受は、取付部材11,12に沿って移動可能に設けることが好ましい。
【実施例4】
【0067】
実施例1では、金属線材のL字軸、U字軸と弾性金属板材の端部をカールさせた摩擦軸受とでフリクション発生部を形成した。しかし、フリクション発生部における挿入側と被挿入側の材料及び形状の組合せは実施例1のものには限らない。挿入側と被挿入側との間に安定した摩擦相対移動を発生することが可能な様々な材料の組合せを選択できる。被挿入側の摩擦軸受を剛性の高い材料で形成して、挿入側を弾性的に縮径する材料で形成してもよい。
【実施例5】
【0068】
実施例1では、フリクション発生部は、回動を伴ってスライドする複数のリンク部材から独立して組立てられ、複数のリンク部材から一体に着脱されるものとした。しかし、複数のリンク部材とフリクション発生部とは少なくとも一部の部材を共有して組立てられていてもよい。例えば、中央部材21、31に直接、U字軸、L字軸の軸部分を挿入する締り嵌めの円孔を形成してもよい。
【実施例6】
【0069】
実施例1では、複数のフリクション発生部40を同一のものとした。しかし、複数のフリクション発生部40は回動に対して発生する抵抗力の量又は質を異ならせたものとしてもよい。抵抗力の量としては摩擦抵抗の大きさが異なる複数種類のフリクション発生部を準備し、合計の摩擦抵抗の大きさが所定範囲になるように複数種類のフリクション発生部を組み合わせることが考えられる。抵抗力の質が異なる場合としては、回動に対して発生する抵抗力が開成角度に応じて変化し、所定の開成角度で最大となり、その中間角度で最小となるようなフリクション発生手段とする場合が考えられる。
【0070】
例えば、ディスプレイ筐体と本体筐体とを連結するラップトップコンピュータの開閉装置は、0度の閉成角度と90度の開成角度とで回動に対する抵抗力が小さくなるフリクション発生手段(吸込み機構と呼ばれる場合もある)を備えている。具体的には、円形断面のピンの代わりに正多角形断面のピン又はカムを準備し、板金の端部をカールさせた摩擦軸受の代わりに樹脂材料の正多角形断面の孔を準備する。そして、正多角形断面の孔の中で正多角形断面のピンが回動する際の回転抵抗の変動を利用する。正多角形断面の頂点同士が噛み合う角度で相対回転の抵抗が最小となり、その中間で正多角形断面の頂点が辺を押し上げて抵抗を最大にする。あるいは、扁平な断面形状のピン又はカムをU字断面の弾性部材で挟み込んで回動抵抗を180度の位相差で小さくするディテント機構を採用してもよい。
【0071】
(その他の実施の形態)
本発明の開閉装置は、上述した実施例で説明した具体的な構成及び用途には限定されない。上述した実施例の構成の一部又は全部を等価な構成に置き換えた別の形態でも実施可能である。上述した実施例では、有機ELパネルを搭載した端末装置の開閉装置について説明した。しかし、上述した実施例の開閉装置は、液晶パネルを搭載した端末装置でも使用可能である。二つ折りを三つ折り、四つ折り、多重蛇腹折り等に置き換えてもよい。端末装置は、折り畳みテレビを含む。画像を表示しないフレキシブルな面状のデバイス、例えばタッチパネルやキーボード等を折り重ねて収容させる端末装置以外の電子機器でも実施可能である。開閉装置は、第1筐体と第2筐体とを複数のリンク部材で連結して内側に屈曲した包絡面を形成して成る種々の機器や容器において用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は以上のように構成したので、とくに有機ELデバイスを用いたフレキシブルディスプレイパネルを第1筐体から第2筐体にかけて設置した二つ折り形式の端末装置、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、タブレット型パソコン、ゲーム機、ディスプレイ、サインボード、その他のものの開閉装置、並びにこの開閉装置を用いた端末装置として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0073】
10 開閉装置
11 取付部材(第1取付部材)
12 取付部材(第2取付部材)
13,14 リンク支持部材
15 中央ブロック(中央部材)
20,30 連結部
21,31 中央部材
22,32 リンク部材(第2リンク部材)
23,33 中央部材
24,34 リンク部材(第1リンク部材)
25,35 リンク支持部材
26,36 リンク支持部材
40 フリクション発生部(第1フリクション発生手段、第2フリクション発生手段)
41,49 U字軸
42,45 L字軸
43,46 L字軸
47 摩擦軸受(摩擦部材)
47a 弾性板材
47b,47c,47d 端部
48 摩擦軸受(摩擦部材)
48a 弾性板材
48b,48c,48d 端部
51 プレート
52 プレート
53 プレート
100 端末装置
101 第1筐体
102 第2筐体
103,104 開閉装置
105 有機ELパネル(フレキシブルディスプレイパネル)
KS 規制手段
図1
図2
図3
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