(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送方法、およびアクチュエータユニット
(51)【国際特許分類】
B65G 27/24 20060101AFI20220216BHJP
B65G 27/04 20060101ALI20220216BHJP
H02N 2/04 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
B65G27/24
B65G27/04
H02N2/04
(21)【出願番号】P 2017216829
(22)【出願日】2017-11-09
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】チュ リーイー
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健
(72)【発明者】
【氏名】コウ ケ ウェン
(72)【発明者】
【氏名】八鍬 和夫
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-257724(JP,A)
【文献】特開平11-091928(JP,A)
【文献】特開2000-001208(JP,A)
【文献】特開2001-158520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/00-27/34
B06B 1/00-3/04
H02N 2/00-2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する
場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させる駆動部と、
前記アクチュエータの変位が伝達され、その上を被搬送体が前記
第1方向または前記
第2方向に搬送される搬送レールと
を具備
し、
前記駆動部は、前記アクチュエータが前記第1方向に変位している場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第1方向に搬送されることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させる駆動部と、
前記アクチュエータの変位が伝達され、その上を被搬送体が前記第1方向または前記第2方向に搬送される搬送レールと
を具備し、
前記駆動部は、前記アクチュエータが前記第2方向に変位している
場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第2方向に搬送されることを特徴とす
る搬送装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有することを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の変位を拡大して出力し、前記搬送レールに伝達する変位拡大機構であることを特徴とする請求項
3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部を有し、前記変位出力部に前記搬送レールの一方の端部が取り付けられ、前記変位出力部の変位が前記搬送レールに伝達されることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有し、前記伸縮素子が水平方向に伸縮するように前記変位伝達機構に装着され、前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の上方に設けられ、前記伸縮素子の伸縮変位と対応する方向に前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部材を有し、前記搬送レールは前記変位出力部材の上に取り付けられることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項7】
搬送レール上で被搬送体を搬送する搬送方法であって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する
場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、
前記アクチュエータの変位を前記搬送レールに伝達させて、前記被搬送体を前記搬送レール上で前記第1方向または前記第2方向に搬送
し、
前記アクチュエータが前記第1方向に変位している場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第1方向に搬送されることを特徴とする搬送方法。
【請求項8】
搬送レール上で被搬送体を搬送する搬送方法であって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、
前記アクチュエータの変位を前記搬送レールに伝達させて、前記被搬送体を前記搬送レール上で前記第1方向または前記第2方向に搬送し、
前記アクチュエータが前記第2方向に変位している
場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第2方向に搬送されることを特徴とす
る搬送方法。
【請求項9】
搬送レール上で被搬送体を搬送するためのアクチュエータユニットであって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する
場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させる駆動部と
を具備し、
前記搬送レールに前記アクチュエータの変位が伝達され、前記搬送レール上を前記被搬送体が前記
第1方向または前記
第2方向に搬送さ
れ、
前記駆動部は、前記アクチュエータが前記第1方向に変位している場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第1方向に搬送されることを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項10】
搬送レール上で被搬送体を搬送するためのアクチュエータユニットであって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させる駆動部と
を具備し、
前記搬送レールに前記アクチュエータの変位が伝達され、前記搬送レール上を前記被搬送体が前記第1方向または前記第2方向に搬送され、
前記駆動部は、前記アクチュエータが前記第2方向に変位している
場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記
被搬送体は前記第2方向に搬送されることを特徴とす
るアクチュエータユニット。
【請求項11】
前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有することを特徴とする請求項
9または請求項10に記載のアクチュエータユニット。
【請求項12】
前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の変位を拡大して出力し、前記搬送レールに伝達する変位拡大機構であることを特徴とする請求項
11に記載のアクチュエータユニット。
【請求項13】
前記アクチュエータは、前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部を有し、前記変位出力部に前記搬送レールの一方の端部が取り付けられ、前記変位出力部の変位が前記搬送レールに伝達されることを特徴とする請求項
9から請求項
12のいずれか1項に記載のアクチュエータユニット。
【請求項14】
前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有し、前記伸縮素子が水平方向に伸縮するように前記変位伝達機構に装着され、前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の上方に設けられ、前記伸縮素子の伸縮変位と対応する方向に前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部材を有し、前記搬送レールは前記変位出力部材の上に取り付けられることを特徴とする請求項
9または請求項10に記載のアクチュエータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する搬送装置、搬送方法、およびそれに用いるアクチュエータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を搬送する搬送装置として、板ばね等で支持された搬送路を電磁石や圧電素子などのアクチュエータにより振動させることによって、搬送路上の物品を搬送するパーツフィーダが知られている。
【0003】
パーツフィーダとして、特許文献1には、水平回転するボウルまたは水平に直線移動するフィーダを、カム機構を用い、往復に加速度差をつけて水平振動させることにより、摩擦力と慣性力を利用して被搬送体である物品(ワーク)を搬送するものが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、両端が互いに平行な平面とされ、これら2つの平面に電極が形成されるとともに、その電極の形成された平面に平行に分極された圧電素子を設け、この圧電素子の一端を基板上に固定し、他端を被搬送体である物品と接する作用部として配設し、圧電素子の電極間に電圧を印加することにより作用部に、第1振動方向の速度と、この速度よりも小さな第2振動方向の速度とを発生させ、物品を第2振動方向へ送る搬送装置が記載されている。すなわち、速度が小さい第2振動方向の移動により、移動体は作用部とともに移動し、圧電素子が第1振動方向へ移動する際には速度が大きく、動摩擦係数は静摩擦係数よりも小さいため、物品は移動した後の位置からは動かず、圧電素子のみが第1振動方向に移動する。このため、この動作を繰り返すことにより、物品を第2振動方向に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭55-007852号公報
【文献】特開平5-105291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された搬送装置では、相対滑りを生じさせて被搬送体である物品(ワーク)を効率良く搬送しようとしているが、滑りを生じさせ易くするためには、大きな駆動力により物品の摺動抵抗を軽減しなければならず、効率の良い搬送を行うことは困難である。また、搬送時の加速度が物品との静摩擦係数より大きくなると物品との間に滑りが発生して搬送効率が低下してしまう。
【0007】
また、特許文献2の技術では、被搬送体である物品を搬送するためには、圧電素子を第2振動方向へゆっくりと伸長させた後、第1振動方向へ急速に縮退させるが、小型の物品を搬送する際には、圧電素子を第1振動方向へ急速に縮退しても、物品がそれに追従して第1振動方向に移動してしまう場合があり、また、圧電素子にこのような変位を高速で行わせると残留振動により効率の良い搬送は困難である。
【0008】
したがって、本発明は、振動搬送の技術を用いて被搬送体を効率良くかつ高速で搬送することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の(1)~(14)を提供する。
【0010】
(1)所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させる駆動部と、
前記アクチュエータの変位が伝達され、その上を被搬送体が前記第1方向または前記第2方向に搬送される搬送レールと
を具備し、
前記駆動部は、前記アクチュエータが前記第1方向に変位している場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第1方向に搬送されることを特徴とする搬送装置。
【0012】
(2)所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させる駆動部と、
前記アクチュエータの変位が伝達され、その上を被搬送体が前記第1方向または前記第2方向に搬送される搬送レールと
を具備し、
前記駆動部は、前記アクチュエータが前記第1方向に変位している場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第1方向に搬送されることを特徴とする搬送装置。
【0013】
(3)前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有することを特徴とする(1)または(2)に記載の搬送装置。
【0014】
(4)前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の変位を拡大して出力し、前記搬送レールに伝達する変位拡大機構であることを特徴とする(3)に記載の搬送装置。
【0015】
(5)前記アクチュエータは、前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部を有し、前記変位出力部に前記搬送レールの一方の端部が取り付けられ、前記変位出力部の変位が前記搬送レールに伝達されることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の搬送装置。
【0016】
(6)前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有し、前記伸縮素子が水平方向に伸縮するように前記変位伝達機構に装着され、前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の上方に設けられ、前記伸縮素子の伸縮変位と対応する方向に前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部材を有し、前記搬送レールは前記変位出力部材の上に取り付けられることを特徴とする(1)または(2)に記載の搬送装置。
【0017】
(7)搬送レール上で被搬送体を搬送する搬送方法であって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、
前記アクチュエータの変位を前記搬送レールに伝達させて、前記被搬送体を前記搬送レール上で前記第1方向または前記第2方向に搬送し、
前記アクチュエータが前記第1方向に変位している場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第1方向に搬送されることを特徴とする搬送方法。
【0019】
(8)搬送レール上で被搬送体を搬送する搬送方法であって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、
前記アクチュエータの変位を前記搬送レールに伝達させて、前記被搬送体を前記搬送レール上で前記第1方向または前記第2方向に搬送し、
前記アクチュエータが前記第2方向に変位している場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第2方向に搬送されることを特徴とする搬送方法。
【0020】
(9)搬送レール上で被搬送体を搬送するためのアクチュエータユニットであって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させる駆動部と
を具備し、
前記搬送レールに前記アクチュエータの変位が伝達され、前記搬送レール上を前記被搬送体が前記第1方向または前記第2方向に搬送され、
前記搬送レールに前記アクチュエータの変位が伝達され、前記搬送レール上を前記被搬送体が前記第1の方向または前記第2の方向に搬送され、
前記駆動部は、前記アクチュエータが前記第1方向に変位している場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第1方向に搬送されることを特徴とするアクチュエータユニット。
【0022】
(10)搬送レール上で被搬送体を搬送するためのアクチュエータユニットであって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の伸縮変位に対応する第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を繰り返す変位波形を生じさせ、前記アクチュエータが前記第1方向または前記第2方向に変位する場合に、変位の変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させる駆動部と
を具備し、
前記搬送レールに前記アクチュエータの変位が伝達され、前記搬送レール上を前記被搬送体が前記第1方向または前記第2方向に搬送され、
前記駆動部は、前記アクチュエータが前記第2方向に変位している場合に前記変曲点が形成されるように前記アクチュエータを動作させ、前記被搬送体は前記第2方向に搬送されることを特徴とするアクチュエータユニット。
【0023】
(11)前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有することを特徴とする(9)または(10)に記載のアクチュエータユニット。
【0024】
(12)前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の変位を拡大して出力し、前記搬送レールに伝達する変位拡大機構であることを特徴とする(11)に記載のアクチュエータユニット。
【0025】
(13)前記アクチュエータは、前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部を有し、前記変位出力部に前記搬送レールの一方の端部が取り付けられ、前記変位出力部の変位が前記搬送レールに伝達されることを特徴とする(9)から(12)のいずれかに記載のアクチュエータユニット。
【0026】
(14)前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有し、前記伸縮素子が水平方向に伸縮するように前記変位伝達機構に装着され、前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の上方に設けられ、前記伸縮素子の伸縮変位と対応する方向に前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部材を有し、前記搬送レールは前記変位出力部材の上に取り付けられることを特徴とする(9)または(10)に記載のアクチュエータユニット。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、振動搬送の技術を用いて少ない消費電力で効率良く、被搬送体の搬送量を稼ぐことができ、かつ高速搬送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る搬送装置を示す側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る搬送装置を示す平面図である。
【
図3】物品を第1方向であるA方向に搬送しようとする際のアクチュエータから出力される変位波形の一例を示す図である。
【
図4】物品を第2方向であるB方向に搬送しようとする際のアクチュエータから出力される変位波形の一例を示す図である。
【
図5】変位波形に形成される変曲点の例を示す図である。
【
図6】本発明の効果を説明するための実験結果を示す図である。
【
図7】搬送レールが圧電素子の伸長方向に対応するA方向に変位する際に変曲点が形成される変位波形とその変位波形を形成した際の電圧波形の例を示す図である。
【
図8】搬送レールが圧電素子の伸長方向に対応するA方向に変位する際に変曲点が形成される変位波形とその変位波形を形成した際の電圧波形の例を示す図である。
【
図9】搬送レールが圧電素子の伸長方向に対応するA方向に変位する際に変曲点が形成される変位波形とその変位波形を形成した際の電圧波形の例を示す図である。
【
図10】搬送レールが圧電素子の伸長方向に対応するB方向に変位する際に変曲点が形成される変位波形とその変位波形を形成した際の電圧波形の例を示す図である。
【
図11】搬送レールが圧電素子の伸長方向に対応するB方向に変位する際に変曲点が形成される変位波形とその変位波形を形成した際の電圧波形の例を示す図である。
【
図12】搬送レールが圧電素子の戻り方向に対応するB方向に変位する際に変曲点を設けた場合のナットの変位と、搬送レールの変位波形および電圧波形の一例を示す図である。
【
図13】
図12における搬送レールの変位波形および電圧波形を拡大して示す図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係る搬送装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
最初に本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る搬送装置を示す側面図、
図2はその平面図である。
これらの図に示すように、本実施形態の搬送装置1は、水平部101および垂直部102を有するベース部材100と、ベース部材100の垂直部102に固定され所定波形の変位を出力するアクチュエータ200と、アクチュエータ200を駆動する駆動部300と、アクチュエータ200の変位が伝達され、物品10を搬送する搬送レール400と、ベース部材100の水平部101に取り付けられ、搬送レール400を移動可能に支持する支持部500と、支持部500と搬送レール400の間に設けられたリニアガイド600とを有する。アクチュエータ200と駆動部300とによりアクチュエータユニット700を構成する。
【0030】
アクチュエータ200は、電圧等のトリガーを与えることにより伸縮する伸縮素子201と、この伸縮素子201が装着され、伸縮素子201の変位を搬送レール400に伝達する変位伝達機構としての変位拡大機構210とを具備している。
【0031】
伸縮素子201は、長尺状をなし、長手方向を鉛直にして配置されている。伸縮素子201としては、トリガーが与えられることにより主に長手方向に伸縮する素子であればよく、電圧に応じて変位する圧電素子、磁界に応じて変位する磁歪素子、温度に応じて変位する形状記憶合金素子等を挙げることができる。いずれの素子の場合にも電源からの電圧を直接印加するか、または電圧を適宜の手段で磁界や温度に変換して用いることにより電圧に応じた変位を実現することができる。
【0032】
伸縮素子201としては、圧電素子が好ましい。圧電素子を用いたアクチュエータは、(1)投入される電気エネルギーに対して実に60%以上が機械エネルギーに変換され、例えば10mm×10mmの素子で発生する力が300kgfに達し、エネルギー効率が極めて高い、(2)数kHz以上の高速応答が可能である、(3)物体を一定の位置で保持する場合に、電圧を印加する必要はあるが、電流は流れなくて済むため、電気エネルギー消費を抑えることができる、(4)小型化、薄型化に適している、等の優れた点を有している。
【0033】
伸縮素子201として用いられる圧電素子としては、板状の圧電体が電極を挟んで複数積層されて構成された積層タイプのものが用いられる。例えば、10mm×10mmの圧電体を40mm程度の長さに積層して直方体として構成される。圧電体を構成する圧電材料としては、圧電効果を有するセラミック材料が用いられ、そのような材料として、典型的にはチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3;PZT)を挙げることができる。伸縮素子201の形状は直方体に限らず、例えば三角柱や六角柱等の多角柱であっても、円柱であってもよい。
【0034】
変位拡大機構210は、伸縮素子201の変位を拡大して出力し、その拡大された変位を搬送レール400に伝達するものであり、本例では、長尺体からなる伸縮素子201の一端面および他端面にそれぞれ固定された第1の取り付け部材211および第2の取り付け部材212と、伸縮素子201の一方の側面に、これら第1の取り付け部材211および第2の取り付け部材212を連結するように設けられ、圧電素子の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する変位伝達部213と、伸縮素子201の他方の側面に、第1の取り付け部材211および第2の取り付け部材212を、可撓性を有するヒンジ216を介して連結するように設けられた固定部材214とを有する。変位伝達部213は、中央に出力部材215を有し、複数の可撓性を有するヒンジ216および複数のアーム217の作用により出力部材215から拡大された変位を出力することが可能となっている。出力部材215には搬送レール400が取り付けられる取り付け部材218が装着されている。固定部材214の表面は固定面であり、ベース部材100の垂直部102に固定される。
【0035】
このような構成の変位拡大機構210に伸縮素子201が装着されることによりアクチュエータ200が構成される。なお、変位拡大機構は、図示したような構成に限らず種々の構成をとることができる。また、変位伝達機構としては、変位を拡大せずに伸縮素子201の変位を伝達する機能のみを有するものであってもよい。また、変位伝達機構を用いずに、伸縮素子のみでアクチュエータ200を構成してもよい。
【0036】
伸縮素子201が圧電素子の場合、脆性材料であるセラミックス材料で構成されており、引張り力に対して弱い。このため、図示するように、伸縮素子201に与圧機構220により長手方向に圧縮力を与えられた状態で変位拡大機構210に装着されることが好ましい。与圧機構220により予め圧縮力を与えることによりこのような欠点を軽減することができる。与圧機構220は、本例では、伸縮素子201の一端面および他端面に固定される一対のヘッドピース221,222と、これらの間に架け渡されるように設けられた例えば2本の圧縮力付与部材223とを有している。ただし、与圧機構の構成は、圧縮力を付与できればこれに限るものではない。なお、与圧機構220は設けなくともよく、また、変位拡大機構(変位伝達機構)に与圧機構としての機能を持たせてもよい。
【0037】
駆動部300は、伸縮素子201を伸縮駆動させるドライバー301と、所定波形の信号を発生してドライバー301に供給する信号発生部302を有している。ドライバー301は、電源と駆動回路とを有している。伸縮素子201が圧電素子である場合には、ドライバー301は、圧電素子である伸縮素子201に信号発生部302から所定の波形の信号に応じて所定の電圧を印加して充放電させることにより伸縮素子201を駆動する。
【0038】
駆動部300により伸縮素子201が所定の波形で伸縮駆動され、変位拡大機構210の出力部材215から、その伸縮駆動の波形に対応した変位波形が出力される。このときの出力される変位波形については後述する。
【0039】
搬送レール400は、変位拡大機構210の出力部材215に装着された取り付け部材218に着脱可能に取り付けられており、出力部材215から出力される変位波形が直接伝達される。搬送レール400は、複数の物品10が載せられる搬送面401と、搬送面401から物品10が落下しないように搬送面401の両側部に設けられたガード部材403を有している。また、搬送レール400は、アクチュエータ側の第1の端部411と、先端側の第2の端部412とを有しており、これらの間で物品10が搬送される。このとき、後述するように、アクチュエータ200から出力される変位波形を、変曲点を有するものとし、その変曲点を形成する位置を調整することにより、物品10を第1の端部411から第2の端部412に搬送することも、第2の端部412から第1の端部411に搬送することもできる。物品10は特に限定されず、ボルトやナット等の部品でもよいし、重量が大きいものであってもよいが、特に、直径0.5mm以下の小さいものに対して有効である。
【0040】
搬送レール400の下部には、長手方向に沿ってガイドレール410が設けられている。そして、このガイドレール410にリニアガイド600が装着され、搬送レール400は、ベース部材100の水平部101に取り付けられた支持部500にリニアガイド600を介して支持されている。このため、搬送レール400は、アクチュエータ200の変位に追従して移動することができる。
【0041】
このように構成される搬送装置1においては、駆動部300の信号発生部302からの信号に基づいて、ドライバー301から伸縮素子201に所定波形の電圧が印加され、伸縮素子201は伸縮変位を高速で繰り返す。この伸縮変位は、変位伝達機構である変位拡大機構210により拡大された変位として出力部材215から出力され、この変位が搬送レール400に伝達される。
【0042】
出力部材215は、伸縮素子201の伸縮変位に対応して、基本的に、電圧非印加時の基準位置から水平方向へ進出する第1方向であるA方向の変位と、進出した位置から基準位置に戻る第2方向であるB方向の変位とを高速で繰り返す変位波形により変位し、これにともなって搬送レール400も同様に変位する。このとき、アクチュエータ200(出力部材215)に基づく搬送レール400の変位波形において、A方向およびB方向のうち、物品10を搬送しようとする方向に変位している際に、変位の変曲点が生じるように、伸縮素子201を駆動する。ここで変位の変曲点とは、速度が極値(極大値または極小値)になる点をいう。
【0043】
具体的には、物品10を第1方向であるA方向に搬送しようとする際には、アクチュエータ200から出力される変位波形の一例としては、
図3に示すようなものとなる。すなわち、アクチュエータ200がA方向に変位しているときに、その途中に変曲点Cが形成されるように、伸縮素子201を駆動する。
【0044】
逆に、物品10を第2方向であるB方向に搬送しようとする際には、アクチュエータ200から出力される変位波形の一例としては、
図4に示すようなものとなる。すなわち、アクチュエータ200がB方向に変位しているときに、その途中に変曲点Cが形成されるように、伸縮素子201を駆動する。
【0045】
変位の変曲点としては、
図5のように、A方向に一定の速度で変位している途中で、(a)に示すようにA方向の変位を保ったまま変位の速度が低下する場合、(b)に示すように変位変化が0になる場合、(c)に示すように変位がB方向に逆転する場合のいずれであってもよい。変曲点で速度または加速度が変化した後は、所定期間で変位の速度が元の速度に戻る。
【0046】
このような変曲点を有するアクチュエータ200の変位すなわち搬送レール400の変位を実現するためには、対応する電圧波形をコンピュータで合成してもよいし、信号発生装置で発生した2つ以上の波形を合成してもよいし、プレパルスを利用してもよい。
【0047】
次に、本発明における物品搬送の原理について説明する。
アクチュエータ200により搬送レール400を一方向に変位させると、搬送面401上の物品10は、静止摩擦により搬送レール400の移動方向に加速力が伝達される。加速力を得た物品10は搬送面401との間に滑りが生じた状態となり、搬送レール400よりも低速で搬送レールの変位方向に移動する。そしてアクチュエータ200により搬送レール400が搬送方向に変位している途中で変位の変曲点Cを設けることにより、搬送レール400の速度が変化し、ある時点で搬送レール400と物品10との相対速度差が0となる。この相対速度差が0になる時点において、搬送レール400と物品10との間に再び静止摩擦が生じる。その後、搬送レール400は加速され、その際に静止摩擦により搬送レール400から物品10に加速力が伝達されて、その結果、物品10が加速され、搬送レール400の変位が逆向きになった際にも、物品10は摩擦力に抗して搬送面401上を搬送方向に向けて変位する。このため、伸縮素子201が伸長して戻るまでの変位に対応する搬送レール400の一回の変位波形で、物品10を大きく変位させることができ、搬送レール400にこのような変位波形を繰り返し与えることにより、物品10を効率良く搬送することができる。また搬送レールを駆動する周波数を高くすることができるので、高速搬送が可能である。このように、1回目の加速力により搬送レール400上で物品10を滑らせながら、搬送レール400の変位に変曲点Cを設けて、物品10に2回目の加速力を加えるため、一回の変位波形で物品10に2回の加速力を加えることができ、少ない消費電力で効率良く、物品の搬送量を稼ぐことができ、かつ高速搬送が実現できる。
【0048】
図6は、このことを示す実験結果である。ここでは、物品として直径約10mmのナットを用いた。
図6では、横軸に時間をとり、縦軸に端子間電圧および変位をとっている。搬送レールおよびナットの変位は、搬送レール400の先端側に設けられたレーザー距離計により測定した。なお、
図6は、搬送レール400にA方向およびB方向の変位を一往復与えた場合を示し、変位の方向は、
図3、
図4とは逆で、正方向(上方向)がB方向(戻り方向)であり、負方向(下方向)がA方向(伸長方向)である。
【0049】
図6に示すように、搬送レール400を搬送方向であるA方向に変位させている途中で、変位の変曲点を形成することで、搬送レール400の変位方向がB方向に転じた後もナットがA方向へ変位していることがわかる。このことから、物品であるナットを効率良く搬送できること、つまり、一回の変位波形で物品10に2回の加速力を加えて、少ない消費電力で効率良く物品の搬送量を稼ぐことができ、かつ高速搬送が実現できることが確認された。
【0050】
また、本実施形態では、アクチュエータ200および搬送レール400の変位波形における変曲点の位置により物品10をA方向にもB方向にも搬送することができるという利点も得られる。
【0051】
さらに、伸縮素子、特に圧電素子は、0.1~50μm程度の小さな変位で駆動することができるので、直径0.5mm以下の小さな物品であっても、部品の搬送先との間の継ぎ目を物品の落下の危険性が生じない程度に狭くすることができ、しかも、変曲点を設けることにより、残留振動が低減され、残留振動の影響をほとんど受けずに高速駆動が可能であるため、1回の変位が小さくても十分に高い搬送速度で物品を搬送することができる。
【0052】
次に、実際に変曲点を有する変位波形を搬送レールに繰り返し与えて搬送実験を行った結果について説明する。
【0053】
ここでは、伸縮素子として圧電素子を用いたアクチュエータにより、搬送レール上の物品として直径約10mmのナットを搬送する実験を行った。端子間電圧を150Vとし、圧電素子を伸長して元に戻すまでの1波長の時間を8msecとし、最大変位を150μmとし、電圧波形を変化させて、種々の変曲点を有する変位波形を形成して搬送レールを振動させてナットの搬送実験を行った。
【0054】
図7~9は、搬送レールが圧電素子の伸長方向に対応するA方向に変位する際に変曲点が形成される変位波形とその変位波形を形成した際の電圧波形の例を示す図であり、
図10~11は、搬送レールが圧電素子の戻り方向に対応するB方向に変位する際に変曲点が形成される変位波形とその変位波形を形成した際の電圧波形の例を示す図である。なお、これらの図においては、変位の方向は、
図3、
図4と同様、正方向(上方向)がA方向(伸長方向)であり、負方向(下方向)がB方向(戻り方向)である。
【0055】
図7~9の場合は、いずれもナットをA方向に搬送することができ、その際の平均搬送速度は、12~20mm/secであった。また、
図10~11の場合は、いずれもナットをB方向に搬送することができ、その際の平均速度は、8~10mm/secであった。このように、本発明により効率良くかつ高速な搬送が可能なことが確認された。
【0056】
図12は、搬送レールが圧電素子の戻り方向に対応するB方向に変位する際に変曲点を設けた場合のナットの変位と搬送レールの変位波形の一例を示す図であり、
図13は、その際の端子間電圧と搬送レールの変位を拡大して示す図である。なお、
図12、13においては、変位の方向は、
図7~11とは逆で、正方向(上方向)がB方向(戻り方向)であり、負方向(下方向)がA方向(伸長方向)である。この場合、
図12に示すように、ナットは最初の15波形までは、逆方向のA方向に搬送され、それ以降B方向に搬送される現象がみられた。これは、最初の圧電素子の伸長に対応する搬送レールのA方向の変位によりナットがA方向に搬送される影響が残留したためと考えられる。この現象の時間はわずかであるから、B方向の搬送には大きな影響はおよぼさない。
【0057】
<第2の実施形態>
次に本発明の第1の実施形態について説明する。
図14は本発明の第2の実施形態に係る搬送装置を示す側面図である。
この図に示すように、本実施形態の搬送装置2は、所定波形の変位を出力するアクチュエータ800と、アクチュエータ800を駆動する駆動部300と、アクチュエータ800の変位が伝達され、物品10を搬送する搬送レール400とを有する。アクチュエータ800と駆動部300とでアクチュエータユニット900を構成する。アクチュエータ800は、基台1000上に載置または固定される。
【0058】
アクチュエータ800は、電圧等のトリガーを与えることにより伸縮する伸縮素子801と、この伸縮素子801が装着され、伸縮素子801の変位を搬送レール400に伝達する変位伝達機構810とを具備している。
【0059】
伸縮素子801は、長尺状をなし、長手方向を水平にして配置されている。伸縮素子801としては、伸縮素子201と同様、トリガーが与えられることにより主に長手方向に伸縮する素子であればよく、電圧に応じて変位する圧電素子、磁界に応じて変位する磁歪素子、温度に応じて変位する形状記憶合金素子等を挙げることができ、これらの中では圧電素子が好ましい。
【0060】
変位伝達機構810は、伸縮素子801の変位を搬送レール400に伝達するものであり、基台1000に載置または固定されるベース部材811と、ベース部材811と一体またはベース部材811に固定して設けられ、伸縮素子801の一端が取り付けられる第1の取り付け部材812と、伸縮素子801の他端が移動可能に取り付けられる第2の取り付け部材813と、伸縮素子801の上方に水平に設けられ、伸縮素子801の伸縮変位に対応した水平方向の所定波形の変位を出力する出力部材814とを有している。第2の取り付け部材813は、ベース部材811の一端および出力部材814の対応する一端に、それぞれ可撓性を有するヒンジ815を介して連結されている。一方、ベース部材811の他端および出力部材814の対応する他端には、中間部材816がそれぞれ可撓性を有するヒンジ815を介して連結されている。出力部材814の上には搬送レール400が取り付けられる取り付け部材816が装着され、搬送レール400は、取り付け部材816を介して出力部材814上に取り付けられている。
【0061】
このような構成の変位伝達機構810に伸縮素子801が装着されることによりアクチュエータ800が構成される。
【0062】
伸縮素子801には、その長手方向に予め圧縮力を与える与圧機構820が装着されている。与圧機構820は、上述した与圧機構220と同様の機能を有しており、本例では、伸縮素子801の一端面および他端面に固定される一対のヘッドピース821,822と、これらの間に架け渡されるように設けられた例えば2本の圧縮力付与部材823とを有している。ただし、与圧機構の構成は、圧縮力を付与できればこれに限るものではない。なお、与圧機構820は設けなくともよく、また、変位伝達機構に与圧機構としての機能を持たせてもよい。
【0063】
駆動部300は、第1の実施形態と同様、ドライバーと、所定波形の信号を発生してドライバーに供給する信号発生部とを有している。詳細については第1の実施形態と同様であるから省略する。駆動部300により伸縮素子801が所定の波形で伸縮駆動され、変位伝達機構810の出力部材814から、その伸縮駆動の波形に対応した変位波形が出力される。このときの出力される変位波形は第1の実施形態と同様である。
【0064】
搬送レール400は、第1の実施例と同様に構成され、変位伝達機構810の出力部材814に装着された取り付け部材816に着脱可能に取り付けられており、出力部材814から出力される変位波形が直接伝達される。第1の実施形態と同様、物品10は特に限定されず、ボルトやナット等の部品でもよいし、重量が大きいものであってもよいが、特に、直径0.5mm以下の小さいものに対して有効である。
【0065】
出力部材814は、伸縮素子801の伸縮変位に対応して、基本的に、電圧非印加時の基準位置から伸縮素子801が伸長する第1方向であるA方向の変位と、伸長した位置から基準位置に戻る第2方向であるB方向の変位とを高速で繰り返す変位波形により変位し、これにともなって搬送レール400も同様に変位する。このとき、第1の実施形態と同様、アクチュエータ800(出力部材814)に基づく搬送レール400の変位波形において、A方向およびB方向のうち、物品10を搬送しようとする方向に変位している際に、変位の変曲点が生じるように、伸縮素子801を駆動する。
【0066】
これにより、第1の実施形態と同様の原理で、伸縮素子801が伸長して戻るまでの変位に対応する搬送レール400の一回の変位波形で、物品10を大きく変位させることができ、搬送レール400にこのような変位波形を繰り返し与えることにより、物品10を効率良く搬送することができる。
【0067】
また、本実施形態においても、アクチュエータ800および搬送レール400の変位波形における変曲点の位置により物品10をA方向にもB方向にも搬送することができるという利点も得られる。
【0068】
さらに、伸縮素子、特に圧電素子は、0.1~50μm程度の小さな変位で駆動することができるので、直径0.5mm以下の小さな物品であっても、部品の搬送先との間の継ぎ目を物品の落下の危険性が生じない程度に狭くすることができ、しかも、変曲点を設けることにより、残留振動が低減され、残留振動の影響をほとんど受けずに高速駆動が可能であるため、1回の変位が小さくても十分に高い搬送速度で物品を搬送することができる。
【0069】
さらにまた、本実施形態では搬送レール400の第1の端部411および第2の端部412のいずれも開放されているので、これらのいずれにも物品10の搬送先の部材を設けることが可能であるという利点を得ることができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では圧電素子を与圧機構により予め圧縮力を与えた例を示したが、与圧機構は必須ではない。また、変位伝達機構は、上記実施形態に限定されるものではなく、上述した変曲点を有する所望の変位波形を形成し、搬送レールに伝達することができるものであればよく、さらに、上述した変曲点を有する所望の変位波形を実現することができれば変位伝達機構を設けなくてもよい。
【0071】
さらにまた、アクチュエータユニットの構成は、搬送レールに物品の搬送が可能な上記変位波形を伝達できるものであれば、上記2つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1,2;搬送装置
10;物品(被搬送体)
100;ベース部材
200,800;アクチュエータ
201,801;伸縮素子
210;変位拡大機構(変位伝達機構)
300;駆動部
400;搬送レール
500;支持部
600;リニアガイド
700,900;アクチュエータユニット
1000;基台