(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】蓋体の昇降装置並びに各種機器
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20220216BHJP
G03B 27/62 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
H04N1/00 519
G03B27/62
(21)【出願番号】P 2018045262
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 徹也
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】井上 二郎
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-144433(JP,A)
【文献】特開2003-315939(JP,A)
【文献】特開2004-271595(JP,A)
【文献】特開2014-098919(JP,A)
【文献】特開2005-103046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G03B 27/58 -27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体側の後部上端へ縦方向に取り付けるケース状の取付部材と、この取付部材に上下方向へスライド手段を介してスライド可能に取り付けられたスライド部材と、このスライド部材の上部に設けた蓋体の支持部材と、前記スライド部材を上昇方向へスライド付勢させる付勢手段と、で構成
し、
この付勢手段を、前記取付部材の取付板の内側上部に離間対向して取り付けた一対のブラケットと、この一対のブラケットの間に回転自在に取り付けられた回転シャフトと、この回転シャフトに回転を拘束されて取り付けられた一対のボビンと、この一対のボビンに一端部を固着され他端部を前記スライド部材の下端部に固着したゼンマイからなる付勢部材とで構成したことを特徴とする、蓋体の昇降装置。
【請求項2】
前記スライド手段がスライドレールで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の蓋体の昇降装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、フリクショントルク発生手段を有し、このフリクショントルク発生手段を、前記ブラケットと前記回転シャフトの端部に設けた軸部との間に設けられた複数のフリクションワッシャーとスプリングワッシャーと押えワッシャーと締め付けナットとで構成したことを特徴とする、請求項
1に記載の蓋体の昇降装置。
【請求項4】
前記請求項1~
3のいずれか1項に記載の蓋体の昇降装置を用いたことを特徴とする、各種機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機や印刷機等の事務機器の原稿圧着板やキャビネットなどの家具の蓋体を開閉する際に用いて好適な、蓋体の昇降装置並びにこの蓋体の昇降装置を用いた各種機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、とくに複写機や複合機等の事務機器の原稿圧着板開閉装置としては、例えば下記特許文献1に記載されている構成のものが公知である。この原稿圧着板開閉装置は、装置本体側へ取り付ける取付ベースとこの取付ベースより立ち上げた両側板を有する取付部材と、背板とこの背板より折り曲げた両側板を有し、この両側板を前記取付部材の両側板へ第1連結部材を介して回転可能に軸着した支持部材と、背板とこの背板より折り曲げた両側板とこの両側板より折り曲げた原稿圧着板の取付ベースとを有し、この両側板を前記支持部材の両側板の自由端側に第2連結部材を介して前記支持部材とは異なる方向へ回転可能に軸着したリフト部材と、このリフト部材における前記第2連結部材を中心とする回転に伴って旋回する位置に設けられた作動部材と、前記取付部材の前記両側板間に設けた受圧部材と、この受圧部材と前記作動部材との間に弾設させることにより、前記リフト部材を前記支持部材と重なり合う方向へ付勢させつつ当該支持部材を原稿圧着板の開成方向へ付勢させる弾性部材と、を有している。また、この原稿圧着板開閉装置を用いた事務機器も公知である。このタイプものは現在広く普及しており、現在ほとんどの複写機のような事務機器に採用されている。
【0003】
上記した原稿圧着板開閉装置は、リフト部材に取りつけた原稿圧着板が第1連結部材(ヒンジシャフト)を支点に扇状に回転して開閉されるため、原稿圧着板を開いて装置本体上に設けた原稿載置台上へ例えば1枚の紙原稿を複写のために載置して原稿圧着板を閉じると、事務機器の後方から前方へ流れる風圧によって原稿の載置位置がずれてしまうという問題があることから、本願出願人は過去において、基本的には上記構成の原稿圧着板開閉装置によりながら、この装置に新たに部材を加えることにより、原稿圧着板をその所定の開閉角度範囲において、当該原稿圧着板を所定の閉成角度から原稿載置台に対して上下方向へ上昇降下させて、原稿を原稿載置台に圧着させるように構成したものを特許文献2に記載したように提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-97363号公報
【文献】特開2012-22175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成した特許文献1に記載の原稿圧着板開閉装置は、現在、この構成のものが主流であるが、原稿圧着板の後部に支持部材に重ねたリフト部材の前後方向の長さ分に応じた取付幅を設けなくてはならず、原稿圧着板の小型化、強いては複写機の小型化の障害となると共に、開いた原稿圧着板が複写機の後方へ突出するため、複写機を壁際に設置する際に突出分のスペースを設けなくてはならないという問題が生じている。
【0006】
上記した特許文献2に記載の原稿圧着板開閉装置は、原稿圧着板の閉成時に水平状態で閉じられるため、原稿載置台上に載置セットした臼井原稿の載置位置がずれるのを防止できるが、構造が複雑となり製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記した特許文献1と2に記載された従来公知の原稿圧着板開閉装置の持つ問題点を解決したもので、簡単な構成で原稿圧着板を原稿載置台に対し上下方向へ昇降でき、原稿圧着板の後方に設けるリフト部材の長さ分の取付スペースを省略でき、さらに原稿圧着板や複写機の小型化を図ることができた上で、複写機を壁際に設置する際にその後部に原稿圧着板を開いた際のスペースを取らなくともよい原稿圧着板開閉装置並びにこの原稿圧着板開閉装置を用いた事務機器を提供せんとするにある。
【0008】
しかるに、原稿圧着板開閉装置が用いられる分野は、複写機や複合機のような事務機器に限らないことから、以下の説明では、原稿圧着板を蓋体といい、事務機器を各種機器といい、蓋体を各種機器に開閉可能に取り付ける昇降装置を蓋体の昇降装置としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本願発明の請求項1に係る蓋体の昇降装置は、装置本体側の後部上端へ縦方向に取り付けるケース状の取付部材と、この取付部材に上下方向へスライド手段を介してスライド可能に取り付けられたスライド部材と、このスライド部材の上部に設けた蓋体の支持部材と、前記スライド部材を上昇方向へスライド付勢させる付勢手段と、で構成し、この付勢手段を、前記取付部材の取付板の内側上部に離間対向して取り付けた一対のブラケットと、この一対のブラケットの間に回転自在に取り付けられた回転シャフトと、この回転シャフトに回転を拘束されて取り付けられた一対のボビンと、この一対のボビンに一端部を固着され他端部を前記スライド部材の下端部に固着したゼンマイからなる付勢部材とで構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2発明は、前記スライド手段がスライドレールで構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3発明は、前記付勢手段がフリクショントルク発生手段を有し、このフリクショントルク発生手段を、前記ブラケットと前記回転シャフトの端部に設けた軸部との間に設けられた複数のフリクションワッシャーとスプリングワッシャーと押えワッシャーと締め付けナットとで構成したものである。
【0014】
請求項4発明では、上記した各発明に係る蓋体の昇降装置を用いた各種機器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置本体の後端部上方において縦方向に取り付けた取付部材に対し、スライド部材がスライド手段を介して上下方向へスライド可能に取り付けられているので、このスライド部材の上端部に支持部材を介して取り付けた蓋体は、装置本体に対し上下方向に移動して装置本体に対して蓋体の開閉操作を行うことができるものである。その際に付勢手段によりスライド部材は上昇方向へスライド付勢されているので、蓋体を軽い操作力で上方へ持ち上げることができ、閉じる際には付勢手段の付勢力に抗して押し下げられるので、急激に閉じることはないものである。
【0016】
また、付勢手段にフリクショントルク発生手段を組み合わせると、スライド部材のスライド動作が急激に起こることを防止できる上に、スライド部材に対しフリーストップ機能を発揮させることができることから、操作フィーリングの向上と、スライド部材の急激な動きにより蓋体や装置本体に衝撃が加わったり、手を挟んでしまったりすることを防止できるものである。
【0017】
さらに、装置本体とその背面側の壁との間に大きなデッドスペースが発生することなく、また、装置本体とその背面側の壁との間の干渉を回避して、蓋体(原稿圧着板)を開くことができる蓋体の昇降装置並びにこの蓋体の昇降装置を用いた事務機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願発明に係る蓋体の昇降装置を用いた事務機器を示し、(a)は蓋体を上昇させた状態を斜め前方から見た斜視図、(b)は蓋体を閉じた状態を後方から見た斜視図である。
【
図2】
図1(a)に示した本願発明に係る蓋体の昇降装置単体を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図2に示した蓋体の昇降装置の背面断面図である。
【
図4】
図2に示した蓋体の昇降装置の拡大底面図である。
【
図5】
図2に示した蓋体の昇降装置の縦断面図である。
【
図6】
図2に示した蓋体の昇降装置の取付部材の斜視図である。
【
図7】
図2に示した蓋体の昇降装置のスライド部材の斜視図である。
【
図8】
図2に示した蓋体の昇降装置の付勢手段の拡大説明図であり、(a)はその側面図、(b)は(a)の平面断面図である。
【
図9】
図8に示した付勢手段の拡大分解斜視図である。
【
図10】
図2に示した蓋体の昇降装置の使用状態を説明するもので、蓋体を閉じた状態の縦断面図である。
【
図11】
図2に示した蓋体の昇降装置の付勢手段の回転シャフトの平面図である。
【
図12】
図2に示した蓋体の昇降装置の付勢手段のボビンを示し、(a)はその斜視図、(b)はその側面図である。
【
図13】
図2に示した蓋体の昇降装置のスライドレール説明図であり、(a)はその正面図、(b)はその平面図である。
【
図14】
図9に示した蓋体の昇降装置の付勢手段に用いているフリクショントルク発生手段の部品の拡大図であり、(a)は第1フリクションプレート、(b)は第2フリクションプレート、(c)は第3フリクションプレートである。
【
図15】
図9に示した蓋体の昇降装置の付勢手段に用いているフリクショントルク発生手段のスプリングワッシャーを示し、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
【
図16】
図9に示した蓋体の昇降装置の付勢手段に用いているフリクショントルク発生手段の押えワッシャーを示し、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では複写機や複合機に用いられる原稿圧着板開閉装置の実施例を説明するが、以下に説明する原稿圧着板開閉装置は、上述したように、複写機或は複合機以外の印刷機やファクシミリ、スキャナーなどの事務機器、或はキャビネットなどの広く蓋体の開閉装置として用いることができる。したがって、本願発明の対象は複写機や複合機に用いられる原稿圧着板開閉装置に限らないことから、発明の目的の項と発明の要約の項、並びに以下の説明及び特許請求の範囲においては、原稿圧着板を蓋体とし、発明の名称を蓋体の昇降装置とすると共に、この蓋体の昇降装置を用いる機器を各種機器とする。本願明細書及び特許請求の範囲の記載では、これらの用語が混在する場合があるが、同じ意味合いである。
【0020】
また、本願明細書並びに特許請求の範囲に記載された取付部材、スライド部材、支持部材、スライド手段、付勢手段等の用語は、その一実施例として用いた具体的な取付部材、スライド部材、支持部材、スライド手段、弾性手段等には限定されない、以下に記載したものよりさらに広い概念のものである。
【0021】
図面によれば、まず、
図1(a)と(b)に示したように、本発明に係る各種機器Aの装置本体D上には、一対の蓋体Cの昇降装置B、B’を介して、自動原稿送り装置c付きの蓋体Cが昇降可能に取り付けられている。これらの一対の蓋体Cの昇降装置B、B’のうち、(b)図の右側の蓋体Cの昇降装置Bは、自動原稿送り装置cの重い機構部側で開閉操作時に加わる荷重が大きいので、右側の軽い蓋体Cの側を保持する蓋体Cの昇降装置B’とはその構成は同じであっても、とくにその大きさにおいて異なっている。また、異なる構成の場合もある。以下の説明では、右側の蓋体Cの昇降装置Bについて説明する。
【0022】
次に、
図1(b)に示したように、蓋体Cの閉成状態では、蓋体Cは、装置本体Dのコンタクトガラスを用いた原稿載置台dに対して平行であって、原稿載置台dと密着して漏光を阻止できる構成である。
図5に示したように、本発明に係る蓋体Cの昇降装置B、B’を用いると、蓋体Cの上昇時と下降時において、つまり蓋体Cの開閉操作時において、蓋体Cの後部が装置本体Dの後部に突出しないように構成できるので、複写機を壁部などに接して設置した場合に、従来公知の蓋体開閉装置のように、蓋体の開成時に後部に蓋体Dが突出する際のスペースを取らなくとも良いことから、事務機器の設置スペースを省略できるものである。
【0023】
図2~
図14に示すように、本発明に係る蓋体Cの昇降装置Bは、装置本体D側の後部上端へ縦方向に取り付ける略ケース状の取付部材1と、この取付部材1に上下方向へスライド手段4、4を介してスライド可能に取り付けられたスライド部材2と、このスライド部材2の上部に設けた蓋体Cの支持部材3と、前記スライド部材2を上昇方向へスライド付勢させる付勢手段5と、で構成されている。
【0024】
取付部材1は、装置本体D上に取り付けられる取付板1aと、この取付板1aの両側端部からそれぞれ当該取付板1aに対して直交する方向(略直交する方向も含む)に屈曲された両側板1b、1bと、この両側板1b、1bの自由端側から内側に向けて屈曲された一対の抱え板部1c、1cと、取付板1aの頂部から両側板1b、1bの方向へその両側に間隙1d、1dを設けて屈曲された頂板1eとで構成されており、平断面略Cチャンネル形状を呈している。この取付部材1は、その取付板1aをそこに設けた取付孔1f、1f・・・を介して図示してない取付ネジを用いて、
図1の(a)と(b)に示したように、装置本体Dの後部上端部へ取り付けても良いが、取付板1aに図示してない取付プレートを取り付け、この取付プレートを装置本体Dの後部上端へ取り付けるようにしても良い。また、装置本体Dの後部上端から縦方向に図示を省略した挿入孔を設け、この挿入孔へ取付部材1を挿入固定しても良い。
【0025】
なお、とくに
図6に示したように、指示記号1g、1g・・(
図6では1つのみ図示)で示したものは、後述するブラケット6、6を取り付ける取付孔である。また、指示記号1h、1h・・で示したものは、スライドレールの外側レールを取り付ける取付孔である。
【0026】
スライド部材2は、とくに
図7に示したように、背板2aと、この背板2aの両側部から直角方向へ屈曲された両側板2b、2bと、この両側板2b、2bの下方個所を切り欠いて内側へ突出させたストッパー片2c、2cで構成されている。このスライド部材2は、とくに
図2と
図4に示したように、背板2aの部分を取付部材1の抱え板部1c、1cの側に向けた状態で、その両側板1b、1bを後述するスライド手段4、4ごと間隙1d、1dより取付部材1の中に挿入されている。ストッパー片2c、2cはスライド部材2が上方へスライドした際に取付部材1の頂板1eに当接し、スライド部材2の上昇範囲を規制するものである。
【0027】
なお、
図7に指示記号2d、2d・・で示したものは、支持部材3の取付孔、指示記号2e、2e・・で示したものは、スライド手段4、4の内側レール4b、4bの取付孔であり、指示記号2f、2f・・(1つの表示)で示したものは、後述する付勢手段5の付勢部材9の先端を取り付ける取付孔である。
【0028】
支持部材3は、とくに
図2と
図4に示したように、背板3aとこの背板3aの両側から下方に向けて屈曲させた両側板3b、3bを有するもので、背板3aには蓋体Cの後部を取り付けるための取付孔3c、3c・・が設けられ、取付ネジ3d、3d・・を介してスライド部材2の両側板2b、2bの上端部に固着されている。そして、この支持部材3には、取付孔3c、3c・・を介して図示してない取付ネジで蓋体Cが取付部材1に対して直角方向へ取り付けられている。なお、取付部材1とスライド部材2と支持部材3は、実施例ではいずれもSUSのようなステンレス鋼をプレス加工して製造したものを示してあるが、これらの全部、あるいは一部をABSのような機械強度に優れた合成樹脂製の成型品とすることができる。
【0029】
取付部材1の両側板1b、1bとスライド部材2の両側板2b、2bとの間には、とくに
図4に示したように、スライド手段4、4が設置されている。このスライド手段4、4は、実施例のものは市販されているスライドレールを用いている。このスライド手段4、4は、同じ構造のもので、とくに
図4と
図13に示したように、取付部材1の両側板1b、1b側に取り付けられた外側レール4a、4aと、スライド部材2の両側板2b、2b側に取り付けられた内側レール4b、4bと、外側レール4a、4aと内側レール4b、4bの間に介在させた複数のボール4c、4c・・・と、このボール4c、4c・・を保持するリテーナー4d、4dとで構成されている。なお、このスライド手段4、4の構成は一例であって、このものに限定されない。
【0030】
付勢手段5は、とくに
図4と
図8と
図9に示したように、取付部材1の取付板1aとスライド部材2の背板2aとの間に設けられており、取付板1aの上端部側に位置して取付ネジ6f、6f・・を用いて所定間隔を空けて取り付けられた一対のブラケット6、6と、このブラケット6、6に回転自在に軸支された回転シャフト7と、この回転シャフト7の軸方向に重ねて固定した一対のボビン8、8と、このボビン8、8へ巻き付けられたゼンマイからなる付勢部材9とで構成され、この付勢部材9の自由端をスライド部材2の背板2aの下端部に取付ネジ2g、2gを介して固着させてある。即ち、回転シャフト7はその中央部に断面略矩形状を呈した変形大軸部7aを有し、この変形大軸部7aの両側に径の小さな円形小軸部7b、7bが設けられており、この円形小軸部7b、7bに続いて変形雄ネジ部7c、7cが設けられている。回転シャフト7は円形小軸部7b、7bがブラケット6、6に設けられた軸受孔6c、6cに回転自在に軸受けされている。尚、ブラケット6、6は、取付板部6a、6aと、この取付板部6a、6aより直角に折り曲げた保持板部6b、6bとから成り、取付板部6a、6aを取付部材1の取付板1aの上部へ取付ねじで固着し、保持板部6b、6bに設けた軸受孔6c、6cへ、回転シャフト7の円形小軸部7b、7bを挿通軸受けされている。なお、指示記号6e、6eは、取付板部6a、6aを取付部材1の取付板1aへ取り付ける場合の取付孔である。
【0031】
各ボビン8、8は同じ形状のもので、軸部8a、8aと、この軸部8a、8aの一端部に軸心を共通にして設けられたフランジ部8b、8bとで構成され、軸部8a、8aとフランジ部8b、8bを貫通して設けた変形孔8c、8cに回転シャフト7の変形大軸部7aを挿通させることにより、回転シャフト7に回転を拘束されて共に回転するように取り付けられている。各ボビン8、8の軸部8a、8aにはその円周方向に係止溝8d、8dが設けられ、この係止溝8d、8dに付勢部材9の端部が挿入係合されるものである。
【0032】
付勢手段5には、フリクショントルク発生手段10が設けられている。このフリクショントルク発生手段10は、とくに
図4と
図8と
図9に示したように、各ブラケット6、6と、回転シャフト7の両端部との間に設けられた一対の第1フリクショントルク発生手段10aと第2トルク発生手段10bから構成されており、どちらも同じ構成である。
【0033】
図面によれば、各ブラケット6、6の内側に位置して中心部に挿通孔11aを、外周部に係止片11bを、面部に油溜部11cを有し、挿通孔11aに円形小軸部7b、7bを通し、係止片11bを回転シャフト7の変形大軸部7aに設けた係合溝部7d、7dに係合させた第1フリクションワッシャー11、11と、この第1フリクションワッシャー11、11に隣接して中心部に挿通孔12a、12aを、外周部に係止片12b、12bを設け、挿通孔12a、12aに円形小軸部7b、7bを通し、係止片12b、12bを各ブラケット6、6に設けた係合孔6d、6dに係合させて設けた第2フリクションワッシャー12、12と、各ブラケット6、6の保持板部6b、6bの外側に位置して中心部に挿通孔13a、13aを外周部に係止片13b、13bを設け、挿通孔13a、13aに円形小軸部7b、7bを通し、係止片13b、13bをブラケット6、6の保持板部6b、6bに設けた係合孔6d、6dに係合させた第3フリクションワッシャー13、13と、この第3フリクションワッシャー13、13に隣接して、その中心部軸方向に設けた挿通孔14a、14aに円形小軸部7b、7bを通したスプリングワッシャー14、14と、このスプリングワッシャー14、14に隣接して、その中心部軸方向に設けた変形挿通孔15a、15aを回転シャフト7の変形雄ネジ部7c、7cに通して設けた押えワッシャー15、15と、この押えワッシャー15、15に隣接して回転シャフト7の変形雄ネジ部7c、7cにネジ着された締付けナット16、16とで構成されている。
【0034】
本発明に係る蓋体Cの昇降装置Bは以上のように構成したので、
図1の(a)に示したように、蓋体Cを閉じた状態においては、この蓋体Cの重量が付勢手段5の付勢力より勝るように構成されていることから、蓋体Cは自重で閉成状態を保っており、フリクショントルク発生手段10によりその状態を安定的に保っている。この閉成状態は外部から振動が加えられても蓋体Cが自然に上昇してしまうことはない。
【0035】
次に、蓋体Cを上昇させるべく、この蓋体Cの手前側に手を添えて持ち上げると、蓋体Cはスライド部材2が付勢手段5により上方へスライド付勢されているので、それ本来の重さを感じることなく上方へ移動して開かれる。この蓋体Cが上昇する間においては、フリクショントルク発生手段10が作用しているので、蓋体Cをどの高さにおいても手を離すと、その位置で停止する。上昇した蓋体Cは、スライド部材2に設けたストッパー片2c、2cが取付部材1の頂板1eに当接することで上昇が停止される。この位置が蓋体Cの最大上昇角度即ち全開位置である。なお、フリクショントルク発生手段10は、片方の第1フリクショントルク発生手段10aか第2フリクショントルク発生手段10bのどちらか片方でもよい場合もある。
【0036】
上昇した蓋体Cを閉じる際には、この蓋体Cに手を添えて下方へ押すと、付勢手段5の付勢部材9が繰り出され、スライド部材2の下降がなされるので、蓋体Cは付勢手段5の牽引力とフリクショントルク発生手段10のフリクショントルクとにアシストされながら静かに閉じられるものである。
【0037】
その他の実施例として、付勢手段5の付勢部材9としては、ゼンマイの他に引張コイルスプリングや圧縮コイルスプリングやロープ牽引機構を用いることができる。その場合には、フリクショントルク発生手段は、取付部材1の両側板1b、1bとスライド部材2の両側板2b、2bの間に設けたフリクショントルク発生手段とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、以上のように構成したので、各種機器の装置本体の後部に開閉可能に取り付ける蓋体を全開状態にしてもその後部が装置本体の後部から突出しないことから、蓋体がヒンジシャフトを支点に扇状に回転して開閉される従来公知の蓋体開閉装置と比べて、設置スペースを省略できる上に、蓋体や各種機器を小型にでき、さらに開閉される蓋体の風圧によって原稿が原稿載置台上でずれてしまうことがないという作用効果を奏する各種機器の蓋体の昇降装置並びにこの蓋体の昇降装置を用いた各種機器として好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0039】
A 各種機器(複合機)
B、B’ 蓋体の昇降装置
C 蓋体
D 装置本体
d 原稿載置台
1 取付部材
1a 取付板
1b 両側板
1c 抱え板部
2 スライド部材
2a 背板
2b 両側板
2c ストッパー片
3 支持部材
4 スライド手段
4a 外側レール
4b 内側レール
5 付勢手段
6 ブラケット
7 回転シャフト
8 ボビン
9 付勢部材
10 フリクショントルク発生手段
10a 第1フリクショントルク発生手段
10b 第2フリクショントルク発生手段
11 第1フリクションワッシャー
12 第2フリクションワッシャー
13 第3フリクションワッシャー
14 スプリングワッシャー
15 押えワッシャー
16 締付ナット