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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】改良型の枝切り具
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/08 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
A01G3/08 503A
A01G3/08 503C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019512235
(86)(22)【出願日】2017-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 GB2017052604
(87)【国際公開番号】W WO2018046918
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】1615290.2
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512037358
【氏名又は名称】グレイ テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,ニコラス ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッジス,クリストファー
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-146445(JP,U)
【文献】実開昭63-116053(JP,U)
【文献】特開昭60-180526(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102334421(CN,A)
【文献】米国特許第03373489(US,A)
【文献】米国特許第03590892(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 3/08
A01D 34/73
A01D 34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸歯(42)が周縁部に設けられた円形鋸刃(20)が取り付けられるカッタヘッド(18)、前記カッタヘッド(18)に収容されたモータ、及び、使用時に前記鋸刃を駆動して回転させるために前記鋸歯(42)と係合されるピニオンを有する枝切り具(10)であって、
前記鋸刃の周縁部が、ハウジング(24)によって少なくとも部分的に覆われており、前記ハウジングが、前記鋸刃の周縁部の第1の部分を露出させるための第1の開口部(52)を有し、前記ハウジングが、前記鋸刃の周縁部の第2の部分を露出させるために第2の開口部(54)を有し、
前記枝切り具(10)は操作ハンドル(12)を有し、前記第2の開口部(54)は前記第1の開口部(52)よりも前記操作ハンドル(12)に近く、
前記カッタヘッド(18)は長手方向軸(A-A)を有し、前記鋸刃(20)の中心が前記長手方向軸(A-A)からずれている(O)、枝切り具(10)。
【請求項2】
前記第1の開口部(52)と前記第2の開口部(54)とが、前記鋸刃の前記第1の部分の一部と前記鋸刃の前記第2の部分の一部とが直径方向で向かい合わされるように位置する、請求項1に記載の枝切り具。
【請求項3】
前記第1の開口部(52)の周方向長さと前記第2の開口部(54)の周方向長さとが実質的に同一である、請求項1又は2に記載の枝切り具。
【請求項4】
前記第1の開口部の径方向長さ(R)と前記第2の開口部の径方向長さとが実質的に同一である、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の枝切り具。
【請求項5】
前記第1の開口部(52)と第2の開口部(54)との形状及びサイズが実質的に同一である、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の枝切り具。
【請求項6】
前記操作ハンドル(12)が長手方向軸を有し、前記第1の開口部(52)が前記ハンドルの前記長手方向軸に重なっている、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の枝切り具。
【請求項7】
前記第1の開口部(52)が、前縁部(60A)及び後縁部(62A)を有し、前記第1の開口部の前記後縁部が、前記第1の開口部の前記前縁部よりも長く前記鋸刃(20)を越えて突き出ている、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の枝切り具。
【請求項8】
前記第2の開口部(54)が、前縁部(60B)及び後縁部(62B)を有し、前記第2の開口部の前記後縁部が、前記第2の開口部の前記前縁部よりも長く前記鋸刃(20)を越えて突き出ている、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の枝切り具。
【請求項9】
前記第1の開口部(52)の前記後縁部(62A)及び/又は前記第2の開口部(54)の前記後縁部(62B)が、使用中に回転している前記鋸刃に引っ掛けて枝を保持するように適合された歯又は他の形状部を有する、請求項7又は8に記載の枝切り具。
【請求項10】
前記ピニオンが、可撓性の駆動ベルト(36)によって前記モータに接続されている、請求項1~9のうちいずれか一項に記載の枝切り具。
【請求項11】
前記ハウジング(24)が、前記鋸刃(20)の一方の側面の一部を覆い、前記鋸刃の他方の側面が大部分露出されている、請求項1~10のうちいずれか一項に記載の枝切り具。
【請求項12】
前記鋸刃(20)用の軸受部を有し、前記鋸刃が取外し可能及び交換可能であり、前記枝切り具が、前記鋸刃(20)を前記軸受部に固定するための取外し可能な締結具(26)を鋸刃の表面に有し、前記締結具が、前記鋸刃の前記大部分露出されている側から取り付けられている、請求項11に記載の枝切り具。
【請求項13】
前記締結具(26)が、前記取り付けられた締結具を取り囲むボス(30)内に位置している、請求項12に記載の枝切り具。
【請求項14】
前記ボスが、少なくとも1つのバットレス(32)を有する、請求項13に記載の枝切り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝切り具、すなわち木の枝などを切断するために使用される円形鋸刃を有する電動工具に関する。
【0002】
分かりやすくするために、以下では、枝切り具の使用者が男性であるものとして述べるが、実際には必ずしもそうではない。
【背景技術】
【0003】
従来の鋸を用いて木の枝を手動で切断することが知られている。また、チェーンソーを用いて枝を切断することも知られており、チェーンが切歯を有し、内燃機関又は電動機によって駆動される。
【0004】
別のタイプの枝切り具、及び本発明が対象とするタイプは、周縁部の周りに鋸歯を有する実質的に剛性の円形鋸刃を有し、鋸歯が、通常は電動機によって駆動されて回転する。このタイプの既知の枝切り具は、本出願人らによって型式番号HT04の下で供給されており、その特定の枝切り具の刃部は、電動機によって駆動され、電動機は、この工具のハンドルに取り付けられた電池によって電力供給される。
【0005】
このタイプの枝切り具は、鋸刃の少なくとも一方の側面をハウジング内に部分的に取り囲んでおり、ハウジングは、鋸の周縁部の一部の周りに延在し、鋸刃がハウジング開口部でのみ完全に露出されるようにする。刃部の周縁部の大部分の周りにハウジングを設けることにより、鋸刃、特に鋸歯に意図せず接触する可能性が大幅に低減する。
【0006】
ハウジング開口部のサイズ、すなわちその径方向長さ及び周方向長さは、刃部の半径によってほぼ決定される。刃部は、その中心部で軸受部に取り付けられ、したがって、理論上、切断することができる枝の最大の太さは、この刃部の半径よりもわずかに小さい。しかし、既知の枝切り具のハウジングは、軸受部を越えて延在して、軸受部のための保護を提供している。したがって、鋸刃の露出されている径方向長さは刃部の半径未満であり、それにより、切断することができる枝の太さが小さくなる。特に、刃部が50mmの半径を有することがあるが、ハウジング開口部は、刃部の外側部分(例えば、約25mmの径方向長さを有する)しか露出しないことがある。したがって、そのような枝切り具は、25mmの最大切込み歯丈を有する。
【0007】
軸受部を損壊から保護することができるようにハウジングが刃部の軸受部を覆っていることが望ましい。そうしないと、切断操作中、切断中の枝との接触又は隣接している枝との接触によって損壊が生じる恐れがある。また、軸受部を覆うことによって、鋸屑や樹液などが軸受部を汚損する可能性が低減される。さらに、鋸刃は通常、清掃及び交換のために取外し可能であり、締結体によって軸受部に固定される;切断中の枝が締結体に引っ掛からず、刃部の回転中に刃部が意図せず緩んだり外れたりする可能性を低減することが望ましい。
【0008】
鋸刃を駆動するモータのトルクは、切断することができる枝の最大の太さに従って決定することができる。例えば、ハウジング開口部が約25mmの最大の枝太さを切断できるようにサイズ設定されている場合、モータトルクをそれに従って選択することができ、より太い枝に切り込むのに十分なトルクを提供する必要性をなくすことができる。モータが必要とする最大トルクを低減することは、電池式の枝切り具には特に有益である。
【0009】
既知の枝切り具HT04は、周縁ピニオンギアを使用して鋸刃を駆動する。したがって、鋸刃は、その中心部で軸受部に取り付けられているが、その周縁部で駆動されて回転する。これは、(回転可能な)鋸刃の周縁部から中心部まで駆動力を伝える必要がないため、パッケージ化の点で大きな利益をもたらす。したがって、ハウジングは、特に鋸刃の中心部に隣接して薄くすることができ、これは、使用中にハウジングが別の枝(又は切られている枝の別の部分)にからまる可能性を低減する。また、HT04枝切り具の周縁ピニオンギアは、鋸刃の取外し及び修理を容易にする。
【0010】
25mmの径方向長さを有するハウジング開口部を有する枝切り具を使用して、25mmよりも太い枝に切り込むことができることを理解されたい。特に、そのような枝切り具を用いて、(例えば)30mmの枝の25mmに切り込み、残りの5mmを折ることが可能になる。また、50mmの枝の一方の側から枝の25mmに切り込み、次いでその枝の他方の側から残りの25mmに切り込むことも可能である。両側から枝を切ることができるように枝切り具の向きを変えることは常に可能であるとは限らず、切断することができる枝の最大の太さは、実用上はハウジング開口部のサイズによって直接決定され得る。
【0011】
ハウジング開口部の周方向長さを制限して、回転する鋸刃の歯に意図せず接触する危険を最小限にすることが望ましいにも関わらず、ハウジング開口部の周方向長さは通常、径方向長さを超える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、改良型の枝切り具であり、特に、より容易に安全に使用することができ、より大きい刃部又はより強力なモータを必要とせず、より太い枝を切断することができる枝切り具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、円形鋸刃、及び鋸刃を駆動して回転させるためのモータを有する枝切り具であって、鋸刃の周縁部が、保護ハウジングによって少なくとも部分的に覆われており、ハウジングが、鋸刃の周縁部の第1の部分を露出させるための第1の開口部を有し、ハウジングが、鋸刃の周縁部の第2の部分を露出させるための第2の開口部を有する、枝切り具が提供される。
【0014】
鋸刃の周縁部の第1の部分と鋸刃の周縁部の第2の部分とは、鋸刃の円周方向で離隔される。これにより、この枝切り具を使用して、実質的に枝切り具の向きを変えずに、第1の開口部で露出されている鋸歯によって第1の方向で枝を切り、第2の開口部で露出されている鋸歯によって第2の方向で枝を切ることが可能になる。したがって、この枝切り具を使用して、例えば、実質的に枝切り具の向きを変えずに、枝の上半分を下方向に切り、同じ枝の下半分を上方向に切ることができる。第1及び第2の開口部がそれぞれ、刃部の25mmの径方向長さを露出している場合、容易に切断することができる枝の最大の太さは50mmとなる。
【0015】
実用上、枝切り具の向きを変えないことは、多くの場合には枝切り具の使用の安全性の面で重要となる。上で説明したように、既知の枝切り具を用いてより太い枝を切断することができるが、それは、枝切り具の向きを変える、すなわち一方の側から、次いで別の側から(又は例えば上から、次いで下から)枝切り具を枝に向けることによってのみ可能である。そのような枝切り具を使用して地面からいくぶん離れた枝を切断する場合、枝の両側へ安全に手が届くように、使用者は、梯子を降り、梯子の位置を変え、次いで梯子を再び上がらなければならないことがある。梯子の位置を変えることが可能でない、又は梯子の位置を変えることを使用者が面倒に感じる場合、枝の第1の側は、枝を切るときに、ハウジング開口部(及び露出された回転する鋸歯)が使用者とは逆を向いた状態で、使用者が自分から離れる向きに刃部を押して切ることができる。次いで、枝の第2の側は、枝を切るときに、ハウジング開口部(及び露出された回転する鋸歯)が使用者の方を向いた状態で、使用者の方へ刃部を引いて切ることができる。この操作において使用者の方へ引く工程が、使用者に大きな危険をもたらすことは明白である。
【0016】
あるいは、使用者は、太い枝のほぼ半分に上から切り込むことを選択することができ、枝のその半分を切るときに刃部を下方向に動かす。次いで、枝の第2の半分を下から切ることができ、枝を切るときに刃部を上方向に動かす。そのような切断操作は、既知の枝切り具を用いて可能であるが、使用者が自分の位置を変える、又は枝切り具のハンドルを持ち替える必要がある。実用上、使用者が、枝切り具のハンドルを左右の手で持ち替えなければならないことがあり、これにより、使用者の安全性及び快適性が大幅に損なわれることがある。
【0017】
上記の理由から、実際には、既知の枝切り具は通常、1つの向きで、使用者が自分又は枝切り具の向きを変えずに枝を切断するために使用される。したがって、切ることができる枝の最大の太さは、ほぼハウジング開口部の径方向長さに制限される(例えば25mmであり得る)。
【0018】
他方、本発明では、使用者は、枝に引っ掛けて鋸刃の第1の部分を動かすことができ、枝切り具は、使用者に対して選択された安全な方向に動かされる。使用者は、枝の第1の部分を切断するときに、選択された安全な移動方向を維持することができる。その後、使用者は、(幾分異なる方向であるが)やはり使用者に対して選択された安全な方向で、その枝の異なる部分に引っ掛けて刃部の第2の部分を動かすことができる。通常、使用者は、これらの切断操作間に自分が動く必要はなく、通常、これらの切断操作間に枝切り具を持ち直す必要はない。2つの異なる方向から枝を切ることを可能にすること(又は言い換えると、同じ枝の異なる部分を順に切ることを可能にすること)により、既知の枝切り具で可能なよりも太い枝を簡単にかつ安全に切断することが可能になる。
【0019】
好ましくは、第1の部分の一部と第2の部分の一部とは、鋸刃にわたって直径方向で向かい合わされている。これにより、枝の向かい合う側を順に切ることが可能になり、それにより、切断することができる枝の太さを最大にする。
【0020】
太い枝を向かい合う2方向から使用者がより簡単に切り込むことができるようにするので、直径方向で向かい合う第1の開口部と第2の開口部とが好ましいことを理解されたい。しかし、厳密に直径方向で向かい合っていることは必要でなく、第1の開口部の一部のみが第2の開口部の一部のみに対して直径方向で向かい合わされていれば十分である。
【0021】
望ましくは、鋸刃の中心は、カッタヘッドの長手方向軸からずれている。カッタヘッドは、刃部用のモータ及び駆動手段を収容し、刃部用のハウジングを含む。既知の枝切り具HT04は、鋸刃の中心及び鋸刃の開口部がカッタヘッドの長手方向軸と位置合わせされている。開口部のそのような位置決めは好ましい。なぜなら、これにより、使用者は、ハンドル及びカッタヘッドの長手方向軸に沿って切断位置に力が向けられた状態で、切断される枝に向けて枝切り具を押すことができるようになるからである。そのような配置で第2の開口部を提供するには、2つの開口部が互いに非常に近い必要があり、又は既存の開口部をあまり適切でない位置に動かす必要がある。しかし、鋸刃の中心をカッタヘッドの長手方向軸からずらすことにより、望みに応じて第1の開口部をカッタヘッドの長手方向軸と位置合わせし、第2の開口部を第1の開口部から有意な距離だけ(おそらく第1の開口部に直径方向で向かい合わせて)離隔することが可能である。
【0022】
望ましくは、第1の開口部の周方向長さと第2の開口部の周方向長さとは同一又は実質的に同一である。また、望ましくは、第1の開口部の径方向長さと第2の開口部の径方向長さは同一又は実質的に同一である。好ましくは、第1の開口部と第2の開口部との形状及びサイズは同一又は実質的に同一である。サイズ及び形状が同一である第1の開口部と第2の開口部とを提供することにより、両方の開口部によって実質的に同じ切断操作を行うことが可能になる。
【0023】
あるいは、第1の開口部は、第2の開口部よりも周方向長さ及び/又は径方向長さが大きい。そのような構成により、第1の開口部が、大抵の時間にわたって使用される主開口部となり、第2の開口部は、時々、例えばより太い枝を切断するのに必要なときにだけ使用される。
【0024】
好ましくは、枝切り具はハンドルを有し、第2の開口部は、第1の開口部よりもハンドルに近い;通常、使用者は、ハンドルにより近い開口部を通して鋸刃が露出されるとき、より大きな力を鋸刃に付与することができることを理解されたい。したがって、第2の開口部を第1の開口部よりもハンドルの近くに位置させることにより、特に、より高い枝を切るときに、使用者は大抵の時間にわたって第2の開口部を利用する可能性が高い。HT04などの枝切り具を使用するときには、鋸刃開口部の位置は、使用者が自分から離れるようにカッタヘッドを押すことによって枝を切る必要があることを理解されたい。通常、これは最も安全な選択肢であるが、下から枝を切るとき、枝の重さで切断部が閉じて鋸刃が挟まってしまうので不利になる。第2の開口部をこのカッタヘッドのより近くに位置することで、使用者の方に向けてカッタヘッドを引くことによって枝を切ることが可能になり、これは、特に、高い枝を上から切ることを可能にし、枝の重さが切断部を開くように(及び刃部を挟み込まないように)作用する。
【0025】
第1及び第2のハウジング開口部は、鋸刃の回転方向に従って前縁部及び後縁部を有する。使用中の鋸刃の回転が、切断される枝を前縁部から後縁部に向かうように押す(及び/又は枝に対して枝切り具を動かすこともある)ことを理解されたい。望ましくは、後縁部は、前縁部よりも大きい径方向長さを有する。この前縁部は、主に鋸刃を覆うために提供され、したがって刃部を越える大きい径方向長さを必要としない。しかし、後縁部は、より大きい径方向長さを有するべきであり、すなわち、鋸刃が回転するときに後縁部で枝を捕捉するように、鋸刃を越えてさらに延在するべきである(それにより、枝が後縁部に引っ掛かることで、枝が鋸刃から押し離される可能性を最小限にする)。望ましくは、後縁部は、歯又は他の形状部を有することができ、及び/又は回転する鋸刃に引っ掛けて枝を保持する、又は回転する鋸刃に向けて枝を付勢するような形状にすることもできる。
【0026】
望ましくは、鋸刃の周縁部と係合するギアホイール又はピニオンによって鋸刃が駆動されて回転する。したがって、鋸刃の中心部に駆動力を伝える必要はなく、鋸刃の中心取付部を周縁の駆動から切り離すことができる。
【0027】
好ましくは、ピニオンは、可撓性ベルトによって駆動される。可撓性駆動ベルトは、実質的に伸張不能であるように設計されるが、ベルトは、鋸刃とモータとの間でのいくらかの衝撃吸収を提供し、それにより、使用中、ピニオンによる鋸歯の損壊の可能性を低減する。
【0028】
望ましくは、ハウジングは、鋸刃の一方の側面の一部のみを覆っており、鋸刃の他方の側面は、完全に又は大部分露出されている;したがって、鋸刃及び鋸歯の周縁を覆うハウジングによって使用者の安全性が高められ、刃部の平らな面を覆うことによって提供される追加の安全手段はほとんど又は全くないことを理解されたい。また、鋸刃の一方の側面を完全に又は大部分露出させることで、鋸屑及び他のデブリは、枝切り具の一部によって捕捉されることなく、より良好に鋸刃から落ちることができる。
【0029】
好ましくは、枝切り具は、鋸刃用の軸受部、及び鋸刃を軸受部に固定するための締結具を有する。また、好ましくは、鋸刃の露出側から鋸刃の被覆側に向けて締結具が挿入される。そのような構成は、例えば、清掃、刃研ぎ、及び/又は交換のために鋸刃を取り外すことが望まれるとき、締結具に容易に手が届くようにする。また、そのような構成は、軸受部をハウジングによって覆い隠して保護することを可能にする。
【0030】
枝切り具は、枝切り具上及び枝切り具内に蓄積することが多い樹液、湿気、及び鋸屑の組合せにより、頻繁な清掃が必要であることが知られている。周縁駆動の提供は、これに関して特に有益である。なぜなら、鋸刃を、単純な取外し可能な締結体によって軸受部に固定することができ、鋸刃及びハウジングの清掃のために定期的に繰り返し取り外すことができるようになるからである。
【0031】
次に、例として添付図面を参照して、本発明をより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による枝切り具の斜視図である。
図2】枝切り具の一部の側面図である。
図3】カバーの一部が取り外された状態での、図2の枝切り具の一部の底面図である。
図4図3の枝切り具の一部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
枝切り具10は、(取外し可能であり充電式の)電池14及び作動スイッチ16を有するハンドル12を備える。電池及びスイッチは、カッタヘッド18内のモータ(図示せず)に接続されている。以下で説明するように、このモータは、円形鋸刃20を駆動して回転させる。
【0034】
本実施形態では、カッタヘッド18は、解放可能な接続部22によってハンドル12から取外し可能である。したがって、同じハンドル12を、例えばヘッジトリマを含む他の工具と共に使用することができる;他の実施形態では、解放可能な接続部は必要とされず、カッタヘッド18は、ハンドル12に永久的に固定されている。
【0035】
鋸刃20は、その中心部で、解放可能な締結具26によって軸受部(図示せず)に取り付けられる。図4でより良く見られるように、締結具26は、鋸刃20の表面に対してボス30を締め付ける十字穴付きボルトであり、鋸刃は、その中心部に、締結具26が通ることができる小さい穴(図示せず)を有する。本実施形態では、この穴は円形であり、締結具26のシャフトの直径よりもわずかだけ大きく、したがって、締結具の挿入は、刃部20を、その軸受部(図示せず)に対して中心に位置決めする働きをする。他の実施形態では、この穴はより大きく、ボス30の下面にある位置付け突起を収容する。
【0036】
ボス30は、4つのバットレス32を有し、バットレス32は、締結具26を締める及び/又は緩めるときに使用者が把持することができ、取外し及び取付け中に回転しないように鋸刃20を保持することができる。
【0037】
図2で見られるように、締結具の頭部は、ボス30のスリーブ38の内側にある。したがって、ボス30は、使用中、切断される枝若しくは近接する枝、又は飛散する鋸屑が締結具26に引っ掛かる可能性を低減することによって締結具26の保護も行う。それにより、締結具26が意図せず緩んでしまう可能性がかなり低減される。既知の枝切り具及び同様の工具におけるように、鋸刃20は、締結具26を締めるように作用する方向(図4で見て反時計回り)に回転する。
【0038】
図3に関して示されるように、モータは、可撓性ベルト36を駆動する駆動プーリ34に接続されており、可撓性ベルトは駆動プーリ40を順に回転させ、駆動プーリ40は、鋸刃20の周縁部で鋸歯42と係合するピニオン(図示せず)に接続されている。このピニオンは、(回転しない)カバー46の下に位置し、カバー46は、図1図2、及び図4で見ることができる。ピニオンは、鋸歯42と協働する歯を有し、ピニオンの歯は、理想的には、鋸歯42と係合する面積を最大にして、鋸歯に対する点負荷及びそれによる摩耗を最小にするような形状にされていることを理解されたい
【0039】
可撓性ベルト36は、実質的に非可撓性であるように設計されているが、実際には、いくらかの弾力性を有し、したがってピニオンと鋸歯42との間の応力をいくらか吸収することができ、それにより、ピニオンと鋸歯42との間の最大力を減少させて、使用中のピニオン及び/又は鋸歯42の損壊の可能性を低減することができる。
【0040】
カッタヘッド18は、鋸刃20用のハウジング24を有する。図3及び図4から分かるように、ハウジング24は、鋸刃20の片側のみの一部を覆っており、したがってボス30及び締結具26は永久的に露出され、永久的に手が届くようになっている。鋸刃20の片側を露出させることにより、鋸屑などを刃部から落とすことが可能であり、それにより、鋸屑、樹液、及び他のデブリがカッタヘッド18内で捕捉(及び圧縮)され得る箇所の数を減少する。
【0041】
ハウジング24は、鋸刃20のいくつかの部分を越えて延在し、延在部分は、鋸刃20の周縁部の周りに段状に設けられ、鋸歯42に被さって部分的に取り囲む表面50を提供する。それにより、ハウジング24が意図せず鋸歯と接触するのを防止する。したがって、特に図2で見られるように、ハウジング24は、鋸歯42の大部分を覆っている。
【0042】
しかし、鋸歯42は、第1のハウジング開口部52及び第2のハウジング開口部54で露出されている。したがって、既知の枝切り具とは異なり、本発明による枝切り具の鋸刃20は、2つの別個のハウジング開口部で露出され、2つの別個の切断領域を提供している。本実施形態におけるこの第1のハウジング開口部52と第2のハウジング開口部54とは、同じ径方向長さR及び同じ周縁方向長さを有する(すなわち、第1の開口部52の前縁部60Aと後縁部62Aとの間の周方向距離が、第2の開口部54の前縁部60Bと後縁部62Bとの間の周方向距離と同じである)が、必ずしもそうである必要はない。
【0043】
実際には、枝切り具10は、大抵の時間にわたって、径方向長さRよりも小さい枝を切断するために使用されることが予想され、使用者は通常、第1のハウジング開口部52で露出された鋸歯42によってそれらの枝を切り、使用者は、従来技術の枝切り具HT04と同様に、自分から離れる方向にカッタヘッド18を押す。径方向長さRよりも太い枝を切断することが望まれるとき、又は高い枝を下から切断することが望まれるとき、使用者は通常、第2のハウジング開口部54で露出された鋸歯を使用する。
【0044】
通常、第2のハウジング開口部54で露出された鋸歯を使用するとき、使用者は、第2の開口部54が下方向にかつ使用者の方に向いた状態で枝切り具10を保持する;次いで、下方向にかつわずかに使用者の方に向けてカッタヘッド18を動かすことによって枝を切断することができる。枝が径方向長さRよりも太い場合、使用者は、(事前に又は後で)カッタヘッドの位置を変えて、第1の開口部52で露出された鋸歯によって枝の別の部分に切り込むことができ、カッタヘッドは、枝が切断されるときに使用者から離れる方向に(及びまた、おそらくわずかに上方向に)動かされる。使用者は、これらの切断操作の両方を行うために自分の位置を変える、又は枝切り具を持ち直す必要がないことを理解されたい。
【0045】
見てわかるように、第2の開口部54は、第1の開口部52と直径方向で向かい合わされていないが、他の実施形態では、望みであれば、開口部どうしを直径方向で向かい合わせることもできる。しかし、第2の開口部54の一部は、第1の開口部52の一部と直径方向で向かい合わされ、したがって、この2つの開口部を使用して、実質的に逆向きの2方向で枝を切ることができる。「第1の開口部と第2の開口部との一部が直径方向で向かい合わされる」とは、鋸刃の選択された直径の両端がそれぞれ第1及び第2の開口部内にあることを意味するものと理解されたい。
【0046】
これらの開口部52、54の一部の直径方向での対向は、本実施形態では、ずれ量Oだけ刃部の中心を長手方向軸A-A(図4)からずらすことによって実現される。このようにずらすことにより、第1の開口部と第2の開口部との所望の引き離しが可能になると共に、第1の開口部は依然として長手方向軸A-Aに重なっている。第1の開口部のこの位置決めは非常に望ましい。なぜなら、これにより、使用者は、力線が長手方向軸A-Aに沿って(結果として、本実施形態ではハンドル12の長手方向軸に沿って)直接作用する状態で、切断対象の枝に刃部20を押し当てることが可能になるからである。
【0047】
図4の向きでの刃部の回転方向は、反時計回りである。使用中、枝切り具は、前縁部60A(又は適用可能であれば60B)から離れ、後縁部62A(又は適用可能であれば62B)に向かうように駆動される。後縁部62A、62Bは、前縁部60A、60Bよりも大きい径方向長さを有しており、後縁部を越える及び鋸歯42から離れるように枝に力が加えられる可能性を低減する。他の実施形態では、後縁部62A、62Bは、固定歯を有することができ、又は粗面化することができ、切断中、枝が鋸歯42から離れるように動く可能性を低減する。
図1
図2
図3
図4