IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリスチャン エムディー アンダーソンの特許一覧

<>
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図1
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図2
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図3
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図4
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図5
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図6
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図7
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図8
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図9a
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図9b
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図10
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図11
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図12
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図13
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図14
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図15
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図16
  • 特許-自己緊結縫合構成装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】自己緊結縫合構成装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
A61B17/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020521856
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018041116
(87)【国際公開番号】W WO2019010434
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-02-22
(31)【優先権主張番号】15/643,173
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/783,498
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/937,390
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520004281
【氏名又は名称】クリスチャン エムディー アンダーソン
(74)【代理人】
【識別番号】100138760
【弁理士】
【氏名又は名称】森 智香子
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン エムディー アンダーソン
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-233434(JP,A)
【文献】特表2010-504828(JP,A)
【文献】特開2005-237966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0082127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復縫合糸先端および往復縫合糸追従端を有する往復縫合糸と、
前記縫合糸追従端に形成される往復縫合糸固定ループと、
前記往復縫合糸固定ループに配置される連続ループ部材と、
前記連続ループ部材に配置される自己緊結縫合部材であって、第1の撚り糸、第2の撚り糸、および前記第2の撚り糸に画定されるスリーブを含む自己緊結縫合部材と、
前記第2の撚り糸に形成された自己緊結縫合部材固定ループと、
を備える縫合構成装置であって、
前記第1の撚り糸は、前記スリーブを通過して、自己緊結縫合部材自由端を形成して、前記第1の撚り糸は、前記スリーブを通って軸方向に移動可能であり、
張力が前記自己緊結縫合部材自由端に印加されるときに、前記自己緊結縫合部材の前記スリーブは、前記第1の撚り糸に対して締まり、自己緊結縫合部材自由端の軸方向の並進を制限する、
外科手術のための縫合構成装置。
【請求項2】
前記第1および第2の撚り糸は、調整可能なループを形成する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記調整可能なループの長さは、前記第1の撚り糸を前記スリーブを通して摺動させることによって調整可能である請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記自己緊結縫合部材固定ループに配置される縫合ボタンをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記連続ループ部材に形成されるひばり結びをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記往復縫合糸は、第1の往復縫合糸直径を有する第1の部分および第2の往復縫合糸直径を有する第2の部分からなり、前記第2の往復縫合糸直径は、前記第1の往復縫合糸直径より大きい請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記往復縫合糸に配置される拡張部材をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記拡張部材は、前記往復縫合糸に一体的に形成される請求項に記載の装置。
【請求項9】
膝の半月板組織を修復するための縫合構成装置であって、
前記半月板の通過穴を通って挿入するように構成される先頭の往復縫合糸自由端および前記先頭の往復縫合糸自由端の反対側の追従端を含む往復縫合糸と、
前記先頭の往復縫合糸自由端の反対側の前記往復縫合糸の前記追従端に配置される往復縫合糸固定ループと、
環状開口部を形成する連続ループであって、前記往復縫合糸固定ループを通過する連続ループと、
前記連続ループの前記環状開口部を通過する自己緊結縫合部材であって、前記往復縫合糸の反対側の続ループ縫合から各々伸びる第1の撚り糸および第2の撚り糸を含み、前記第1の撚り糸は自己緊結縫合部材自由端を形成する自己緊結縫合部材と、
前記第2の撚り糸に画定される自己緊結スリーブであって、前記第1の撚り糸は前記スリーブを通過するスリーブと、
前記第2の撚り糸に配置される固定ループと、
を備え
前記第1の撚り糸は、前記スリーブを通って軸方向に移動可能であり、
張力が前記自己緊結縫合部材自由端に印加されるときに、前記自己緊結縫合部材の前記スリーブは、前記第1の撚り糸に対して締まり、自己緊結縫合部材自由端の軸方向の並進を制限する、
装置。
【請求項10】
前記半月板組織周辺にひばり結びを形成するように構成される前記連続ループをさらに備える請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、外科用装置および方法、より詳細には、損傷を受けた軟組織構造を固定するための縫合装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概して、外科用装置および方法、より詳細には、損傷を受けた軟組織構造を固定するための縫合装置および方法に関する。
【0003】
外科手術中および外科手術後に、所望の位置に、および/または所望の張力で縫合糸を固定するための様々なタイプの縫合糸、縫合固定装置、および関連する方法が当該分野で知られている。多くの外科手術において、骨の一部を通して経骨穴が穿設され、外科用器具または縫合糸を通過させるための堅い穴を形成する。穿設された穴は、例えば、膝の半月板根裂傷を修復する手術に限定されないが、組織の修復のための手術が通常実行される組織修復部位に隣接する近位開口部を含む。穿設された穴は、通常、修復部位から離れた位置に遠位開口部も含む。
【0004】
外科手術中、1つ以上の縫合糸が、修復される組織に取り付けられる。縫合糸の自由端は、組織の近くに穿設された穴の開口部を通して挿入され、穴出口へと穴を通過する。縫合糸は、それから穴を出て、損傷した組織を所望の解剖学的位置へ操作するために張力がかけられる。穴出口から伸びる縫合糸の自由端は、手術後の組織上の張力を維持するためにきつく引っ張る必要がある。張力が加えられた後に、縫合糸は、所望の張力を維持するために、アンカーまたは縫合ボタンを使用して、適当な位置に保持される。本発明に関連する先行技術文献としては、例えば、米国特許出願公開第2005-187577号明細書、米国特許出願公開第2016-030035号明細書、米国特許出願公開第2007-0083236号明細書、韓国公開特許第KR10-2013-0092425号明細書、米国特許出願公開第2010-0268273号明細書を挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
張力を維持するために経骨穴の遠位端に縫合糸を結び留めるための多数のタイプの縫合糸、縫合ボタン、および縫合アンカーが、当該分野で知られている。しかしながら、このような従来の縫合糸、縫合ボタン、および縫合アンカーは、しばしば不適切であり、経時的に縫合糸に加えられた張力が意図せずに解放されることがあり得る。この張力の解放によって、組織が不適切に癒着して、関節における不快および痛みにつながって、必要な張力を再び加えるために追加の手術が必要になる可能性がある。
【0006】
例えば、従来の縫合糸に関して、半月板根の修復および膝の他の手術のためのこのような装置は、軟組織を適所に固定するために穿設された穴開口部の外側に1つ以上の結び目を必要とする不利な点がある。結び目は、軟組織と擦れることがあり、不快または炎症を引き起こす。同様に、穿設された穴出口の近くに位置する結び目も、不快および炎症を引き起こす。
【0007】
さらに、軟組織をその所望の解剖学的位置に引き下げるために、縫合糸がきつく引っ張られるとき、縫合糸には、ボタンが骨から僅かに離れることを可能にする傾向がある。結び目が、ボタン部位で縫合糸に結ばれるとき、ボタンは、骨から不注意に離れることもあり得る。ボタンと骨も間のいかなるギャップも、縫合糸の張力の損失に結果としてなり得る。
【0008】
さらに、半月板根の修復のための結ばれた縫合糸構成は、結び目が緩く作用すると経時的に滑るかまたは緩むことがあり得る。結ばれた縫合糸構成のこのような緩みは、組織に対する損傷、不適切な治癒、およびさらなる損傷を引き起こすことがあり得る。
【0009】
必要なことは、外科手術のための縫合構成装置および方法の改良である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、概して、裂傷または損傷した組織に牽引力を付与するための縫合構成装置および関連する方法を提供する。
【0011】
縫合構成装置は、往復縫合糸、連続ループ、および一緒に連結される自己緊結縫合部材を含む。往復縫合糸は、組織の通過穴を通して挿入するように構成される。往復縫合糸および連続ループは、通過穴を通して引っ張られて、自己緊結縫合構成は、連続ループを通過して、組織周辺で連続ループに結びを形成する。自己緊結縫合部材がきつく引っ張られると、自己緊結縫合糸の撚り糸は、自己緊結スリーブを通過する。張力が増加するにつれて、スリーブは、スリーブを通過する自己緊結縫合撚り糸に対する締め付け効果を生じさせて、縫合糸が不注意に緩むのを防止する。
【0012】
本開示の別の目的は、結び目を用いずに締めることができる縫合構成装置を提供することである。
【0013】
本開示のさらなる目的は、連続ループが組織を通過した後に取り除くことができる往復縫合糸を縫合構成装置に供給することである。
【0014】
本開示のさらに別の目的は、通過穴を拡張させて連続ループの通過を可能にする先細の往復縫合糸を縫合構成装置に供給することである。
【0015】
本開示の別の目的は、通過穴を広げて連続ループの通過を可能にするために拡張部材を有する往復縫合糸を縫合構成装置に供給することである。
【0016】
本開示の別の目的は、裂傷した組織にひばり結び(ガースヒッチ)を形成して、縫合糸材料が組織を切るのを防止するように構成される縫合構成装置を提供することである。
【0017】
本開示のさらに別の目的は、経骨穴縫合糸の固定のための様々な手術用ボタンを使用するように構成される縫合構成装置を提供することである。
【0018】
本開示のさらなる目的は、縫合糸に張力をかけるときに自己緊結スリーブが経骨穴に収容される経骨穴縫合糸の固定を使用するための縫合構成装置を提供することである。
【0019】
本発明の多数の他の目的、特徴、および利点は、添付図面を参照しながら以下の開示を読むことにより当業者にとって容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】半月板根組織損傷を含む膝の一部の実施形態の斜視図を示す。
図2】本開示による自己緊結縫合構成装置の実施形態の斜視図を示す。
図3】膝の裂傷した半月板根に取付けるために配置される自己緊結縫合構成の実施形態の斜視図を示す。
図4】膝の裂傷した半月板根に取付けるために配置される自己緊結縫合構成の実施形態の斜視図を示す。
図5】膝の裂傷した半月板根に取付けるために配置される自己緊結縫合構成の実施形態の斜視図を示す。
図6】膝の裂傷した半月板根に取付けるために配置される自己緊結縫合構成の実施形態の斜視図を示す。
図7】膝の裂傷した半月板根に取付けるために配置される自己緊結縫合構成の実施形態の斜視図を示す。
図8】膝の裂傷した半月板根に取付けるために配置される自己緊結縫合構成の実施形態の詳細な斜視図を示す。
図9a】膝の裂傷した半月板根に取付けるために配置される自己緊結縫合構成の実施形態の斜視図を示す。
図9b】膝の裂傷した半月板根に取付けるために配置される自己緊結縫合構成の実施形態の詳細な斜視図を示す。
図10】本開示による自己緊結縫合構成装置の代替実施形態の斜視図を示す。
図11】本開示による自己緊結縫合構成装置の代替実施形態の斜視図を示す。
図12】本開示による結び目のない自己緊結縫合構成装置の代替実施形態の斜視図を示す。
図13】本開示による先細の連続ループの実施形態の平面図を示す。
図14】本開示による張力をかけるために配置される自己緊結縫合構成装置を含む膝の実施形態の斜視図を示す。
図15】本開示による張力をかけるために配置される自己緊結縫合構成装置を含む膝の実施形態の斜視図を示す。
図16】張力をかけられた位置の自己緊結縫合構成装置の実施形態を示す膝の部分断面図を示す。
図17】本開示による張力をかけるために配置される自己緊結縫合構成装置を含む膝の実施形態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで図面を参照すると、自己緊結縫合構成装置および関連する方法の実施形態の様々な図が示されている。図面では、明確にするため、すべての参照番号が各図面に含まれるわけではない。さらに、方向用語、例えば「上」、「下」、「側」、「上部」、「下部」、「垂直」、「水平」などは、図面に示される方向または類似の方向にあるときの装置を指す。当業者は、装置が使用中に異なる向きをとることができることを認識するだろう。
【0022】
本開示は、膝の手術を含むがこれに限定されない外科手術で使用する自己緊結縫合構成を提供する。図1に示すように、膝110の実施形態は、内側半月板116および外側半月板118を含む脛骨112の上端部を示す。内側半月板116は、後根128および前根130を含む。外側半月板118は、後根124および前根126を含む。各根は、脛骨プラトー114に沿って局所組織付着部位で脛骨に付着する。様々なタイプの損傷が、外側半月板または内側半月板において1つ以上の根の裂傷または損傷につながることがあり得る。外側の後根124の根裂傷132の実施例を図1に示す。
【0023】
様々な図が、例示的な外側後根裂傷を示しているが、本開示の装置および方法は、前外側半月板および後外側半月板ならびに前内側半月板および後内側半月板の裂傷および損傷を含むがこれに限定されない多くの様々なタイプの損傷に適用できる。外側後半月板根裂傷への適用を示す実施例は、非限定的な実施例としてのみ提供される。
【0024】
本開示は、膝の半月板根裂傷を修復するための、自己緊結の結び目のない縫合構成装置を提供する。図2に示すように、縫合構成装置10の実施形態が示される。縫合糸材料は、周知の任意の適切な縫合糸材料を含むことができる。装置10は、先頭の往復縫合糸自由端14を形成する往復縫合糸12を含む。往復縫合糸12は、先頭の往復縫合糸自由端14の反対側のその追従端に往復縫合糸固定ループ16を含む。往復縫合糸12の先頭の往復縫合糸自由端14は、縫合糸取付手順を開始するための損傷した組織への最初の挿入のために配置される。
【0025】
図2に示す縫合構成装置10の実施形態は、一定の比率で描かれておらず、様々な縫合構成の特徴の相対的な長さ、形状、および直径は、所望の適用に基づいて相当に変更可能である。
【0026】
往復縫合糸12の隣に、環状の連続ループ22が、往復縫合糸固定ループ16に取り付けられる。連続ループ22は、往復縫合糸固定ループ16により形成される開口部を通過する連続リングを形成する。連続ループ22は、連続ループ先端24および連続ループ追従端26を含む。連続ループ先端24は、連続ループ22と往復縫合糸固定ループ16との間の係合位置を提供する。連続ループ22は、当該技術分野で周知の任意の適切な縫合糸材料も含む。連続ループ22は、縫合糸材料の撚り糸のタグ端部を一緒に接合するかまたは連結することによって形成できる。同様に、往復縫合糸固定ループ16は、固定ループを形成するために往復縫合糸12のタグ端部をそれ自体へ戻して接合するかまたは連結することによって形成できる。あるいは、連続ループ22または往復縫合糸固定ループ16は、成形プロセスにおいて各縫合部材に一体的に形成できる。
【0027】
第3の自己緊結縫合部材32が、連続ループ22を接合する縫合構成装置10に配置される。自己緊結縫合部材32、すなわち結び目のない修復縫合糸32は、連続ループ22に向かって前端に置かれる自己緊結縫合糸先端34を含む。自己緊結縫合糸先端34は、連続ループ22により形成される環状開口部を通過する。自己緊結縫合部材32は、いくつかの実施形態において、半月板根裂傷の修復手術中に患者の骨の経骨穴を通過するように構成される。
【0028】
さらに図2を参照すると、スリーブ40が、自己緊結縫合部材32に配置されている。いくつかの実施形態では、自己緊結縫合部材32は、環状断面形状を有する縫合部材から構成され、細長いチューブを形成する。このような縫合糸材料は、編まれたまたは編まれていない縫合糸材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、スリーブ40は、縫合糸材料の内部中空体の中に画定される。
【0029】
例えば、自己緊結縫合部材自由端36は、図2に示すように、自己緊結縫合部材本体のスリーブ部分40を通過できる。通過部分を囲む縫合本体の部分は、自己緊結縫合部材自由端36の縫合撚り糸の周りにスリーブ40を形成する。
【0030】
このように、自己緊結縫合部材自由端36と自己緊結縫合糸先端34の間の縫合撚り糸の一部は、スリーブ40の中を摺動できる。張力が縫合部材に印加されると、スリーブ40は、スリーブ40を通過する縫合撚り糸の周りを締めることができて、それによって縫合撚り糸をスリーブに対して適所に固定するかまたは係止する。スリーブ40は、スリーブを通過する縫合糸材料の撚り糸に対して締め付け効果を提供する。締め付け効果は、撚り糸が使用中不注意に緩むのを防止する。より詳しくは、使用中に、自己緊結縫合部材32がきつく引っ張られるとき、スリーブ40は、自己緊結縫合部材自由端36の軸方向の並進を制限する。したがって、縫合部材は、「自己緊結」または「結び目のない」縫合構成と呼ばれる場合がある。
【0031】
さらに図2を参照すると、自己緊結縫合部材32の別の特徴は、保持構造、例えば、自己緊結縫合糸追従端44に形成される自己緊結縫合糸固定ループ42を含む。外科手術中に、縫合ボタンまたは縫合アンカーは、自己緊結縫合固定ループ42で装置10に固着できる。自己緊結縫合部材自由端36に対する張力の印加によって、自己緊結縫合部材32は、連続ループ22を通って摺動し、通常、連続ループ22の方へ引き戻される。この運動は、張力が印加されるときに閉じる調整可能なループ38を効果的に形成する。
【0032】
半月板根裂傷の修復のために構成される縫合構成装置10の実施例を、図3に示す。装置は、3つの主要構成要素、すなわち、往復縫合糸12、連続ループ22、および自己緊結縫合部材32から成る。先頭の往復縫合糸自由端14は、半月板根124の損傷した組織を通して挿入される。先頭の往復縫合糸自由端14は、縫合糸を組織に通すための任意の適切な器具も使用して裂傷した半月板根124に挿入できる。先頭の往復縫合糸自由端14が、裂傷した半月板根組織を通過すると、通過穴134が形成されて、損傷した組織の軟組織に開口部をつくり、それを通して往復縫合糸12の縫合糸材料が摺動できる。
【0033】
いくつかの用途では、通過穴134を広げて、往復縫合糸と連続ループ22上の連続ループ先端24のその後の通過の両方の円滑な通過に適応させることが、通常望ましい。半月板根124の半月板組織は、往復縫合糸12の先細の領域を含むことによって通過穴134をさらに開くために拡張できる。例えば、図10に示すように、往復縫合糸12は、第1の往復縫合糸直径13aを有する第1の往復縫合糸部12a、および第2の往復縫合糸直径13bを有する第2の往復縫合糸部12bから成る。いくつかの実施形態では、第2の往復縫合糸直径13bは、第1の往復縫合糸直径13aより大きい。これは、往復縫合糸12に、先細の形状を提供する。さらに、図10に示すように、往復縫合糸固定ループ16は、第2の往復縫合糸部12bに隣接する第3の往復縫合糸直径13cを含む。第3の往復縫合糸直径13cは、往復縫合糸固定ループ16がループを形成する、厚みが二倍の縫合糸を含むところに形成される。第3の往復縫合糸直径13cは、第2の往復縫合糸直径13bより大きく、いくつかの実施形態において、第1の往復縫合糸直径13aよりも大きい。
【0034】
往復縫合糸12の通過穴134を通る通過の実施例を、図4に示す。使用中は、先頭の往復縫合糸自由端14は、通過穴134を通過して、折り返して組織から離れる。先頭の往復縫合糸自由端14は、組織から引き離され、それによって、連続ループ22および自己緊結縫合部材32を通過穴134の方へ引っ張る。往復縫合糸12が、通過穴134を通して引っ張られると、通過穴134は、増加する直径を有する往復縫合糸12の部分が通過穴134を通して引っ張られるにつれてさらに拡張できる。
【0035】
さらなる実施形態において、図11および図12に示すように、拡張部材28は、往復縫合糸12に配置できる。拡張部材28は、往復縫合糸12の直径13aと比較して増加した直径13bから成る。拡張部材28は、任意の適切な部材、例えば、増加した直径13bを有する往復縫合糸と一体化された領域も含むことができる。あるいは、拡張部材28は、拡張部材28が通過穴134を通過するときに通過穴134のサイズを拡大するために配置される往復縫合糸12に配置される卵型のビーズまたは挿入物を含む。通過穴134のこの拡張は、連続ループ22の通過によりよく適応する。
【0036】
図10および図11に示すように、いくつかの実施形態において、往復縫合糸12は、拡張部材28、および第1の往復縫合糸部12aと第2の往復縫合糸部12bから成る先細の形状を含む。図12に示すように、往復縫合糸12は、均一な直径を有する往復縫合糸12に配置される拡張部材28を含む。
【0037】
代替の実施形態において、連続ループ22を通過穴134に入れることは、図13に示すように、先細の連続ループ22を提供することによって改善できる。先細の連続ループ22は、第1の連続ループ直径23aを有する連続ループ先端24、および第2の連続ループ直径23bを有する連続ループ追従端26を含む。いくつかの実施形態では、第1の連続ループ直径23aは、第2の連続ループ直径23bより小さい。したがって、連続ループ22の先端24が、通過穴134の中に引っ張られると、より小さい直径部は、最初に入るのをより容易にする通過穴134に入る。
【0038】
図4を再度参照すると、縫合構成装置10は、膝の裂傷した外側後半月板根124への挿入のために配置される。往復縫合糸12は、通過穴134を通して配置されて、連続ループ22は、通過穴134に向かって進んでいる。先頭の往復縫合糸自由端14が、組織から離れてさらに前進するとき、わずかな張力が、自己緊結縫合部材固定ループ42および自己緊結縫合部材自由端36をわずかに引っ張ることによって、自己緊結縫合部材32に維持できる。いくつかの実施形態では、自己緊結縫合部材32が、通過穴134に向かって進むとき、繋ぎ綱52は、自己緊結縫合部材固定ループ42の張力を維持するために用いることができる。
【0039】
ここで図5を参照すると、縫合構成装置10は、連続ループ22が通過穴134を通過するまで通過穴134から離れる方向に往復縫合糸12を引っ張ることによって通過穴134を通ってさらに前進する。さらに、連続ループ22が通過穴134を通過すると、自己緊結縫合部材32の自己緊結縫合部材先端34は、通過穴134を通って組織から離れて戻るように引っ張られる。図5に示す配置において、自己緊結縫合部材32の調整可能なループ38領域の自己緊結縫合部材32の2本の撚り糸は、通過穴134を部分的に通過する。
【0040】
図5に示すように、縫合構成装置10は、縫合構成を半月板組織に連結する結びのステップの準備がもうできている。自己緊結縫合部材固定ループ42、スリーブ40、および自己緊結縫合部材自由端36は、図5に示すように、通過方向54に連続ループ22を一緒に通過できる。いくつかの実施形態では、繋ぎ綱52は、連続ループ22により形成される開口部を最初に通過し、そして繋ぎ綱52はまず通り抜けて、それによって自己緊結縫合部材固定ループ42、スリーブ40、および自由端36も通り抜ける。
【0041】
図6を参照すると、一旦自己緊結縫合部材固定ループ42および自由端36が、連続ループ22を通り抜けると、往復縫合糸12は、連続ループ22から取り除くことができる。往復縫合糸は、連続ループ22から取り除くために切断することができる。往復縫合糸12を除去した後に、自己緊結縫合部材固定ループ42、スリーブ40、および自由端36は、通過穴134から離れる方向に一緒に引っ張ることができる。この引っ張り動作は、連続ループ22を方向を逆転させて、通過穴134の方へ後進させる。連続ループ22が、通過穴134の方へ後進すると、スリーブ40は、連続ループ22を通過して、連続ループ22は、自己緊結縫合部材32の2本の撚り糸にわたって摺動して通過穴134の方へ後進する。
【0042】
図7および図8を参照すると、連続ループ22が、通過ホール134に到達すると、連続ループ22の追従端26の一部は、通過穴134を通って後ろに通過して、根裂傷132に隣接する半月板組織周辺で連続ループ22に結びを形成する。いくつかの実施形態では、これによって、図8に見られるように、半月板組織にひばり結びが生じる。図8に示すように、ひばり結びが形成されると、自己緊結縫合部材先端34は連続ループ22の中にループ化したままである。この構成において、図8に示すように、自己緊結縫合部材32の第1の撚り糸32aは、連続ループ22の一方から伸び、自己緊結縫合部材32の第2の撚り糸32bは、連続ループ22の他方から伸びる。この配置において、縫合構成装置10は、ひばり結びによって半月板組織に緩く固着する。
【0043】
図8に見られるように通過穴134を通過する連続ループ22の2本の撚り糸によりひばり結びを形成することによって、縫合糸が組織をカットまたはスライスする可能性は、通過穴134を通過する1本の撚り糸を提供する縫合構成と比較して低下する。
【0044】
図8に示す配置から、自己緊結縫合部材32の第1および第2の撚り糸32a、32bは、調整可能なループ38の対向する側を形成する。図7に戻って参照すると、縫合構成装置10は、裂傷した半月板根組織の連続ループ22により形成されるひばり結びを含み、そして自己緊結縫合部材32は、ひばり結びから伸びる連続ループ22の部分を通ってループ化する。このように、いずれの撚り糸も一方向に引っ張られることが可能であるように、自己緊結縫合部材32の第1および第2の撚り糸32a、32bは配置されて、対応する逆の動きを他の撚り糸に引き起こす。例えば、図7に示すように、第1の撚り糸32aは、連続ループ22のひばり結びから離れてスリーブ40の方へ伸びる。第1の撚り糸32aが、第2の撚り糸32bのスリーブ40を通過すると、自己緊結縫合部材自由端36は、第1の撚り糸32aに形成される。
【0045】
特に、図8に示す構成から、縫合構成がその後締められるとき、第1および第2の撚り糸32a、32bは、連続ループ22の結ばれたループの中を摺動して、通過穴134の中を直接摺動しない。これは、縫合構成が締められるとき、第1および第2の撚り糸32a、32bが組織自体にスライスまたは切り出し効果を生じさせるのを防止する。
【0046】
図8および図9a~9bに示すように、経骨穴138が骨の中に穿設され、根半月板裂傷位置の近くに近位の穴開口部142を設ける。近位の穴開口部142は、いくつかの実施形態において外側半月板から離れて内側方向に裂傷した組織弁から外側に偏位する。脛骨プラトーの方向に裂傷した組織から離れて近位の穴開口部142を偏位させることによって、組織は、適当な解剖学的位置の方へ外側にきつく引っ張られることができる。
【0047】
穴138は、骨組織に経骨穴を穿設するための任意の適切な器具を使用しても形成できる。連続ループ22のひばり結びが、半月板組織に形成されたあと、器具の端が近位の穴開口部142から突出するように、フックのような器具が穴138の中に挿入される。次に、器具を用いて、穴138を通って自己緊結縫合部材32を把持し、連続ループ22のひばり結びから引き離す。これは、図9aおよび図9bに示す構成になり、自己緊結縫合部材32の第1および第2の撚り糸32a、32bは、近位の穴開口部142から突出して、連続ループ22のひばり結びが結ばれた部分を通ってループ化する。この配置から、縫合構成が締められるときに、第1および第2の撚り糸32a、32bは、連続ループ22の結ばれたループを通って組織自体の通過穴134を通らずに摺動する。縫合撚り糸32a、32bが損傷した組織自体の代わりに連続ループ32の結ばれたループを通って摺動するこの能力は、付着を弱めることがあり得る組織のカットまたは切り出しを防止するのに役立つ。
【0048】
図14に示すように、一旦自己緊結縫合部材32が穴138を通過すると、自己緊結縫合部材自由端36は骨から引き離されることができ、自己緊結縫合部材の第2の撚り糸32bが連続ループ22のひばり結びの中を摺動すると摺り運動をもたらす。縫合糸が、スリーブがフィンガートラップ型装置のようにスリーブ40を通過する自己緊結縫合部材の第1の撚り糸32aに対して締めるレベルに張力をかけられるまで、自己緊結縫合部材自由端36は、スリーブ40の中を容易に摺動する。
【0049】
縫合構成装置10に張力をかけて、裂傷した半月板根組織に対して適切な牽引力を加えるために、いくつかの応用で張力を反対に引くために自己緊結縫合部材固定ループ42に縫合ボタンまたは縫合アンカーを使用することが望ましい。例えば、図15に示すように、縫合ボタン200は、自己緊結縫合部材固定ループ42に配置される。縫合ボタン200は、当該技術分野で周知の任意の適切な縫合ボタンまたはアンカーも含むことができる。一旦縫合ボタン200が取り付けられると、自己緊結縫合部材自由端36は、骨から離れて張力で引っ張ることができて、縫合ボタン200の遠位の穴開口部144の方への摺動移動をもたらす。
【0050】
図16に示すように、縫合ボタン200が、骨112に隣接する遠位の穴開口部144から引き離されるまで、自己緊結縫合部材自由端36は、骨112の遠位の穴開口部144から離れて引っ張られる。この配置では、スリーブ40は、穴138の内部に収容されて、第1の撚り糸32aは、穴138内部の軸位置でスリーブ40を通過する。自己緊結縫合自由端36に張力がかけられると、スリーブ40は、第1の撚り糸32aに対してよりきつくて引かれて、第1の撚り糸32aが、半月板組織の方へ後ろに不注意に滑るのを防止する。
【0051】
縫合ボタン200が、遠位の穴開口部144に隣接する骨112と接触するときに、スリーブ40は、穴138内に完全に収容されて、自己緊結縫合自由端36がきつく引かれると、スリーブ40の不注意な摩耗または擦傷を防止する。縫合構成装置10の結果として生じる張力は、近位の穴開口部142の近くのその正しい解剖学的位置の方へ裂傷した半月板根組織を引っ張る。さらに、半月板根組織に形成される結びは、縫合糸材料が組織の中で裂けて経時的に縫合の印加張力を解除するのを防止するのに役立つ。一旦望ましい張力が印加されると、自己緊結縫合部材自由端36は、縫合ボタン200で切り取ることができる。複数の縫合構成は、単一の穴を通して取り付けることができる。さらに、本開示の自己緊結縫合構成10は、単一の手術で従来の結ばれた縫合構成と組み合せて使用できる。
【0052】
さらに、図17を参照すると、いくつかの実施形態において、自己緊結縫合部材32は、第2の撚り糸32bが穴138を通して引き戻されるのを防止するのに適している任意の適切なデテント構造43を含む。デテント構造43は、縫合ボタン200に係合できるか、または、代わりに、遠位の穴開口部144に隣接する骨に対して直接押圧できる。例えば、いくつかの実施形態において、デテント構造43は、自己緊結縫合部材32の一端を縫合ボタン200に固定するために結びまたはループの縫合ボタン周辺に配置できる固定ループを上記のように形成する。しかしながら、他の実施形態において、デテント構造43は、縫合ボタン200の対応するスロット、凹部、または構造に係合して自己緊結縫合部材32の一端を縫合ボタン200に固定するために必要な大きさにするか、または、代わりに、第2の撚り糸32が穴138の中へ戻るのを防止するために必要な大きさにする任意のタイプの適切なケーブル停止または張力部材端子端部も含むことができる。
【0053】
本開示の縫合構成装置のための多数の他の構成は、使用中に実現できる。縫合構成装置の開示された実施形態および構成は、実施例としてのみ示され、装置のためのすべての可能な実施形態および構成を例示することを意図するものではない。
【0054】
このように、新規かつ有用な縫合構成装置の本発明の特定の実施形態が記載されたが、このような参照が、以下の請求項に記載する以外は本発明の範囲に対する制限として解釈されることを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17