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特許70250644’-置換ヌクレオシド誘導体の立体選択的合成法
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  • 特許-4’-置換ヌクレオシド誘導体の立体選択的合成法 図1
  • 特許-4’-置換ヌクレオシド誘導体の立体選択的合成法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】4’-置換ヌクレオシド誘導体の立体選択的合成法
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/04 20060101AFI20220216BHJP
   C07H 1/00 20060101ALI20220216BHJP
   C07H 9/04 20060101ALI20220216BHJP
   C07H 19/00 20060101ALI20220216BHJP
   C07H 19/067 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
C07H15/04 A
C07H1/00
C07H9/04
C07H19/00
C07H19/067
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020535863
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2019031293
(87)【国際公開番号】W WO2020032152
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2018149849
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019087957
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】向後 悟
(72)【発明者】
【氏名】松浦 智子
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523337(JP,A)
【文献】特開2001-335593(JP,A)
【文献】特開平11-349596(JP,A)
【文献】特開平9-328497(JP,A)
【文献】ANGEWANDTE CHEMIE , INTERNATIONAL EDITION,2015年,vol. 54, no. 24,pages 7185 - 7188
【文献】BIOSCIENCE BIOTECHNOLOGY AND BIOCHEMISTRY,1993年,vol. 57, no. 9,pages 1433 - 1438
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1から3からなる、式(6)で表される4’-置換ヌクレオシド中間体の合成法。
工程1:式(3)化合物を出発原料とし、式(3)化合物に求核剤を作用させることで立体選択的に置換基を導入した式(4)化合物を得る工程、
工程2:式(4)化合物を加水分解して式(5)化合物を得る工程、及び
工程3:式(5)化合物を酸性条件下に保持し、式(6)で表される化合物を得る工程
【化1】
上記式中、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基を示す。
【請求項2】
下記工程1から7からなる4’-置換ヌクレオシド誘導体の合成法。
工程1:式(3)化合物を出発原料とし、式(3)化合物に求核剤を作用させることで立体選択的に置換基を導入した式(4)化合物を得る工程、
工程2:式(4)化合物を加水分解して式(5)化合物を得る工程、
工程3:式(5)化合物を酸性条件下に保持し、式(6)で表される化合物を得る工程、
工程4:式(6)化合物の水酸基に保護基R、R’を導入し、式(7)で表される化合物を得る工程、
工程5:式(7)化合物に保護基Rを導入し、式(8)化合物を得る工程、
工程6:式(8)化合物とYで表される塩基類とを縮合し式(9)化合物を得る工程、及び
工程7:式(9)化合物の加水分解反応に付し、R2を除去することにより式(10)で表される4’-置換ヌクレオシド誘導体を得る工程
【化2】
上記式中、R、R、R’、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基、Yは核酸塩基を示す。
【請求項3】
下記工程1から3からなる、式(6’)で表されるL-型の4’-置換ヌクレオシド中間体の合成法。
工程1:式(3’)化合物を出発原料とし、式(3’)化合物に求核剤を作用させることで立体選択的に置換基を導入した式(4’)化合物を得る工程、
工程2:式(4’)化合物を加水分解して式(5’)化合物を得る工程、及び
工程3:式(5’)化合物を酸性条件下に保持し、式(6’)で表される化合物を得る工程
【化3】
上記式中、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基を示す。
【請求項4】
下記工程1から7からなるL-型の4’-置換ヌクレオシド誘導体の合成法。
工程1:式(3’)化合物を出発原料とし、式(3’)化合物に求核剤を作用させることで立体選択的に置換基を導入した式(4’)化合物を得る工程、
工程2:式(4’)化合物を加水分解して式(5’)化合物を得る工程、
工程3:式(5’)化合物を酸性条件下に保持し、式(6’)で表される化合物を得る工程、
工程4:式(6’)化合物の水酸基に保護基R、R’を導入し、式(7’)で表される化合物を得る工程、
工程5:式(7’)化合物に保護基Rを導入し、式(8’)化合物を得る工程、
工程6:式(8’)化合物とYで表される塩基類とを縮合し式(9’)化合物を得る工程、及び
工程7:式(9’)化合物の加水分解反応に付し、R2を除去することにより式(10’)で表されるL-型の4’-置換ヌクレオシド誘導体を得る工程
【化4】
上記式中、R、R、R’、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基、Yは核酸塩基を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4’-置換ヌクレオシド誘導体の立体選択的な合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種修飾を施したヌクレオシド誘導体は古くから医薬品への利用が研究されており、抗腫瘍薬、抗ウイルス薬、免疫抑制薬としてすでに多くの化合物が利用されている。その中でもヌクレオシドのリボース糖の4位を特定の官能基で置換した4’-置換ヌクレオシド誘導体は、抗ウイルス剤などの分野で有用な化合物群であり、近年注目を集めている。
【0003】
例えば特許文献1によると、2’-デオキシプリンヌクレオシドにおいてプリン塩基の2位並びに6位、並びにリボース糖の4位を、各々特定の官能基に置換することによって、B型肝炎ウイルス(HBV)に対しては優れた坑ウイルス活性を示しつつも、細胞毒性は低いヌクレオシド誘導体が得られることが明らかとされている。
【0004】
また、4’-クロロメチル-2’-デオキシ-3’,5’-ジ-O-イソブチリル-2’-フルオロシチジン(またはALS-8176として知られている、特許文献2及び非特許文献1)は、呼吸器合包体ウイルス(RSV)のポリメラーゼ阻害剤として働き、ファーストインクラスの抗RSV剤として開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-057200号公報
【文献】国際出願PCT/US2013/033018号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Guangyi Wang et al., Journal of Medicinal Chemistry, vol. 58, No. 4, 2015, pp. 1862-1878
【文献】Hiroshi Meguro et al., Biosci. Biotech. Biochem., vol. 57, No. 9, 1993, pp. 1433-1438
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現状報告されている4’-置換ヌクレオシド誘導体の合成法に見られる問題点は、立体異性体を生じる工程を含んでいることである。例えば非特許文献1に記載のALS-8176の合成法では、以下に示す反応工程により合成を行っている。
【0008】
【化1】
【0009】
この合成法では、式(1)に示す化合物から式(2)に示す化合物への変換において、式(2’)で表されるようなジアステレオマーが生じてしまう。(2’)で表されるジアステレオマーを分離せずに反応を進めた場合、目的化合物のジアステレオマーを副生する。このため、目的化合物の収率の低下を生じるだけでなく、これを分離するための分離工程が必要となるが、ジアステレオマーは目的物と構造が類似しているために多くの場合分離が困難であり、精製工程が煩雑になることが問題視されていた。
【0010】
ヌクレオシドを出発原料とせず、糖部から先に構築しのちに任意の塩基と縮合する方法も報告されているが、同様の問題が生じる。たとえば、非特許文献2によれば、4’-メチルウリジンの合成において次のような4’-置換基の導入方法が開示されている。
【0011】
【化2】
【0012】
上記の反応の中には、目的の位置に保護基が導入されず副生成物を生ずる反応工程が含まれている。
すなわち、3-O-ベンジル-4-C-ヒドロキシメチル-1,2-O-イソプロピリデン-α-D-リボフラノースに1当量の水素化ナトリウムと臭化ベンジルを作用させ、選択的に5位水酸基のみをベンジル保護する工程である。当該反応においては、立体選択的な保護基の導入ができないため、反応の結果、5位ベンジル体が66%得られた一方、副生成物である6位ベンジル体が11%と5,6位ジベンジル体が10%の収率で生成してしまう。当該不純物を含んだまま次工程へと進むと、4’-置換基の導入に際して、当該副生成物から定量的に立体異性体が生成してしまう。これを防止するため、非特許文献2においては、これら目的の位置に保護基が導入されなかった副生成物を分離するために、クロマトグラフィーによる精製を要している。しかし、当該副生物もしくは立体異性体の分離は、目的物と構造が類似しているために分離が困難であり、精製工程が煩雑であるという問題があった。
【0013】
以上のように、4’-置換ヌクレオシド誘導体の有用性には興味が持たれるところであるが、これまで報告されている合成法では、4’-置換基の導入やその後の保護基導入に際し立体異性体を生成する工程を含むことにより、収率低下等の様々な問題を有し、必ずしも満足できる方法ではなかった(非特許文献1及び2)。よって、より簡便で立体異性体を生成しない合成法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは上記課題を解決すべく検討を行った結果、4’-置換ヌクレオシド誘導体を合成する方法として、式(6)化合物を経由することで、4’-置換基の導入に際して立体異性体を副生せず、立体異性体の副生に起因する様々な問題(例えば、収量が低い、異性体の分離が困難である、など)を克服できること見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、下記工程1から3からなる式(6)で表される、4’-置換ヌクレオシド中間体の合成法に関する。
工程1:式(3)化合物を出発原料とし、式(3)化合物に求核剤を作用させることで立体選択的に置換基を導入した式(4)化合物を得る工程、
工程2:式(4)化合物を加水分解して式(5)化合物を得る工程、及び
工程3:式(5)化合物を酸性条件下に保持し、式(6)で表される化合物を得る工程
【0016】
【化3】
【0017】
上記式中、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基を示す。
【0018】
また、本発明は、下記工程1から7からなる4’-置換ヌクレオシド誘導体の合成法に関する。
工程1:式(3)化合物を出発原料とし、式(3)化合物に求核剤を作用させることで立体選択的に置換基を導入した式(4)化合物を得る工程、
工程2:式(4)化合物を加水分解して式(5)化合物を得る工程、
工程3:式(5)化合物を酸性条件下に保持し、式(6)で表される化合物を得る工程、
工程4:式(6)化合物の水酸基に保護基R、及びR’を導入し、式(7)で表される化合物を得る工程、
工程5:式(7)化合物に保護基Rを導入し、式(8)化合物を得る工程、
工程6:式(8)化合物とYで表される塩基類とを縮合し式(9)化合物を得る工程、及び
工程7:式(9)化合物の加水分解反応に付し、R2を除去することにより式(10)で表される4’-置換ヌクレオシド誘導体を得る工程
【0019】
【化4】
上記式中、R、R、R’、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基、Yは核酸塩基を示す。
【0020】
さらに、本発明は、天然型のD-体だけでなく、非天然型のL-体の4’-置換ヌクレオシド誘導体の合成法にも本発明法を適用できることから、本発明は、下記工程1から3からなる式(6’) で表される、L-型の4’-置換ヌクレオシド中間体の合成法に関する。
工程1:式(3’)化合物を出発原料とし、式(3’)化合物に求核剤を作用させることで立体選択的に置換基を導入した式(4’)化合物を得る工程、
工程2:式(4’)化合物を加水分解して式(5’)化合物を得る工程、及び
工程3:式(5’)化合物を酸性条件下に保持し、式(6’)で表される化合物を得る工程
【0021】
【化5】
【0022】
上記式中、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基を示す。
【0023】
さらにまた、本発明は、下記工程1から7からなるL-型の4’-置換ヌクレオシド誘導体の合成法に関する。
工程1:式(3’)化合物を出発原料とし、式(3’)化合物に求核剤を作用させることで立体選択的に置換基を導入した式(4’)化合物を得る工程、
工程2:式(4’)化合物を加水分解して式(5’)化合物を得る工程、
工程3:式(5’)化合物を酸性条件下に保持し、式(6’)で表される化合物を得る工程、
工程4:式(6’)化合物の水酸基に保護基R、及びR’を導入し、式(7’)で表される化合物を得る工程、
工程5:式(7’)化合物に保護基Rを導入し、式(8’)化合物を得る工程、
工程6:式(8’)化合物とYで表される塩基類とを縮合し式(9’)化合物を得る工程、及び
工程7:式(9’)化合物の加水分解反応に付し、R2を除去することにより式(10’)で表されるL-型の4’-置換ヌクレオシド誘導体を得る工程
【0024】
【化6】
上記式中、R、R、R’、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基、Yは核酸塩基を示す。
【発明の効果】
【0025】
本発明の方法によれば、工程1における立体選択的な置換基Xの導入及び工程3における五員環へのまき直しが容易に可能となり、工程4以降の反応で、立体選択的に4’置換ヌクレオシド誘導体の合成が可能となった。本発明の反応工程の要点は、中間体として式(6)または(6’)化合物を経由するスキームを構築できたことによる。式(6)または(6’)化合物を経由することで、立体異性体を副生することなく、収率良く目的とする4’-置換ヌクレオシド誘導体を得る合成することができ、従来の方法で問題とされていた立体異性体の副生や、収率の低下や精製工程の複雑化を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシドの立体異性体であるメチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-α-L-リキソピラノシドのH-NMRスペクトルを示す。
図2図2は、実施例1にて取得したメチル 4-C-メチル-2,3-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシドの合成液のH-NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、上述したように、工程1~3からなる式(6)で表される、4’-置換ヌクレオシド中間体の合成法と、工程1~7からなる4’-置換ヌクレオシド誘導体の合成法に関するものである。反応工程をスキームで示せば、以下の通りである。なお、D-体もL-体も反応条件、使用する試薬等は同じであるため、代表してD-体を例にとり、以下説明する。
【0028】
【化7】
【0029】
上記式中、R、R、R’、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基、Yは核酸塩基を示す。
【0030】
出発原料は式(3)化合物である。Rの水酸基の保護基としては、水酸基の保護に通常使用されるものであればよく、例えばメチルエーテル、エチルエーテル、第3級ブチルエーテル、トリチルエーテル、ジメトキシトリチルエーテル、ベンジルエーテル、メトキシベンジルエーテル、アリルエーテルなどのエーテル系保護基、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルなどのシリル系保護基などを使用できる。
【0031】
式(3)化合物の具体例としては、メチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-L-リボピラノシド-4-ウロースを例示することができ、例えば(CarbohydrateResearch 118(1983)C7-C9)に従い製造することができる。
【0032】
工程1は立体選択的に置換基Xを導入する工程であり、式(3)化合物に求核剤や塩基存在下、アルキル化剤を作用させることで式(4)化合物を合成することができる。
【0033】
Xとして表される置換基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、1,3-ジチアン、ジオキソラン環やジオキサン環などが例示される。具体的に、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基などが例示され、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが例示され、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基などのヘテロアリール基などが例示される。
【0034】
これらの置換基はさらに分岐していてもよい。分岐する置換基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基などアルキル基、塩素、フッ素などのハロゲン、シアノ基、ニトロ基、トリメチルシリル基などのアルキルシリル基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基などで置換されていてもよいフェニル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基などが挙げられる。
【0035】
また、導入された置換基Xは、この後の途中工程、及び最終工程で他の置換基へと変換され得る。また、X基から変換された置換基は適宜、保護、脱保護に供すことができる。
【0036】
反応に用いる求核剤としては、有機マグネシウム試薬(グリニャール試薬)、有機リチウム試薬、有機亜鉛試薬、有機銅試薬、有機スズ試薬、有機アルミニウム試薬、有機チタン試薬、有機ケイ素化合物、有機銅アート試薬、マグネシウム-リチウムなどの各種金属試薬を利用できる。
【0037】
特にグリニャール試薬を用いる際には、グリニャール試薬の他に、さらに添加剤として、塩化亜鉛(II)、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化銅(I)、塩化銅(II)、シアン化銅(I)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、塩化セリウム(III)、過塩素酸リチウム、塩化リチウム、塩化鉄(II)、塩化ランタン(III)ビス塩化リチウム錯体、t-ブトキシカリウム、t-ブトキシリチウム、塩化アルミニウム、塩化インジウム(III)、塩化マンガン(II)などを0.1~3当量添加することで、収率が向上される。
【0038】
このような添加剤の中でも、塩化亜鉛(II)、臭化マグネシウム、塩化銅(I)、塩化セリウム(III)、テトラブチルアンモニウムブトミドを用いることが好ましく、塩化亜鉛(II)、塩化銅(I)を用いることが特に好ましい。
【0039】
テトラヒドロフランやジエチルエーテルなどから選ばれる有機溶媒中に、式(3)化合物を添加した後、-78~25℃において、15分から3時間、求核剤を作用させる。当該作用条件は、用いる置換基X、求核剤、その他試薬等の組合せにより、適宜好適な条件を選択することができる。
【0040】
各種有機金属試薬を使用する方法のほかに、塩基やフッ素アニオン源となる試薬をアルキル化剤に作用させ、発生したアルキルアニオンと反応させることでも式(4)化合物を合成することができる。
【0041】
塩基としては、アルキルリチウム、グリニャール試薬、テトラブチルアンモニウムフェノキシドなどの4級アンモニウム塩、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t-ブトキシカリウムなどの有機塩、水酸化ナトリウム、フッ化カリウムなどの無機塩基があげられる。
【0042】
フッ素アニオン源となる試薬としては、テトラアンモニウムフロリド、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化銀などのフッ化物があげられる。アルキル化剤としては、(トリフルオロメチル)トリメチルシラン、(ジフルオロメチル)トリメチルシラン、(トリメチルシリル)アセトニトリル、アセトニトリル、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、ヨードアセトニトリル、2-トリメチルシリル-1,3-ジチアン、1,3-ジチアン、ニトロメタン、クロロヨードメタンやクロロブロモメタンなどのジハロゲン化アルキルなどがあげられる。
【0043】
反応は、Xがトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基の場合、アルキル化剤に(トリフルオロメチル)トリメチルシランまたは(ジフルオロメチル)トリメチルシラン、フッ素アニオン源としてテトラブチルアンモニウムフロリド、フッ化カリウム、フッ化セシウムなどを用いることができる。これらの場合、溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トルエン、メタノールなどのアルコール系溶媒などの有機溶媒を使用することができ、0~25℃において1時間~1晩反応させる。
【0044】
Xがシアノメチル基の場合、アルキル化剤に(トリメチルシリル)アセトニトリル、フッ素アニオン源としてテトラブチルアンモニウムフロリドなど、塩基として酢酸リチウムなどを使用することができる。これらの場合、溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トルエン、メタノールなどのアルコール系溶媒などの有機溶媒を使用することができ、0~25℃において1時間~1晩反応させる。また、アセトニトリルをブチルリチウム等の強塩基と処理するか、ヨードアセトニトリルといったハロアセトニトリルをターボグリニヤール試薬等と処理することにより生じるシアノメチルアニオンも好適である。これらの場合、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、トルエン等の有機溶媒を使用することができ、-78℃~25℃において、1時間~1晩反応させる。
【0045】
Xが1,3-ジチアンの場合、アルキル化剤に2-トリメチルシリル-1,3-ジチアン、塩基としてテトラブチルアンモニウムフェノキシドを使用することができる。また、1,3-ジチアンをブチルリチウム等の強塩基で処理して生じるアニオンでもよい。これらの場合、溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トルエン、メタノールなどのアルコール系溶媒などの有機溶媒を使用することができ、0~25℃において1時間~1晩反応させる。
【0046】
Xがニトロメチル基の場合、アルキル化剤にニトロメタン、塩基に水酸化ナトリウム、フッ化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t-ブトキシカリウムなどを使用することができる。溶媒としては、メタノールなどのアルコール系溶媒やテトラヒドロフランなどの有機溶媒を使用することができ、0~25℃において1時間~1晩反応させる。
【0047】
Xがクロロメチル基の場合、アルキル化剤にクロロヨードメタンやクロロブロモメタン、ジクロロメタンなどのジハロゲン化アルキル、塩基としてメチルリチウムやsec-ブチルリチウム、n-ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、ターボグリニャール試薬などを使用することができる。テトラヒドロフランやジメチルエーテルなどの有機溶媒を使用でき、-78~0℃で30分~2時間反応させる。
【0048】
工程2は、式(4)化合物を、水、ジオキサンなどの水性溶媒中、塩酸、トリフルオロ酢酸等の酸を用いて酸性条件下、例えば80℃で24~48時間程度インキュベートすることで、式(4)化合物を加水分解し、式(5)化合物を得る工程である。
【0049】
工程3は、式(5)化合物をメタノール等のアルコール溶媒に塩化アセチルを加えることで塩化水素を発生させ調製された塩化水素アルコール溶液中、0~25℃で24~72時間程度インキュベートし、式(6)化合物を得る工程である。
【0050】
工程4は、式(6)化合物の水酸基に保護基R、及びR’を導入し、式(7)化合物を得る工程である。Rとしては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などのアシル基を使用することができる。R’としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などのアシル基、もしくは水素原子を使用することができる。
この工程において、置換基Xが嵩高い、例えばビニル基、シアノメチル基等であった場合、R’は水素原子Hとなることもあるが、後の工程に支障はない。R’が水素原子Hでない場合には、R’はRと同じ種類のアシル基である。
例えば、アセチル基を導入する場合、ピリジンに式(6)化合物、3~20当量の無水酢酸を添加し12~24時間ほど反応させることで本工程を実施できる。
【0051】
工程5は、式(7)化合物に保護基Rを導入し、式(8)化合物を得る工程である。R3としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などのアシル基を使用することができる。例えば、酢酸中、触媒量の硫酸存在下、1~20当量の無水酢酸を添加し、1~24時間作用させることで実施できる。
【0052】
’が水素原子Hであった場合、この工程5にてR’の水素原子Hが保護基Rへと変換される。
【0053】
工程6は、式(8)化合物とYで表される核酸塩基類(ピリミジン、プリン、アザピリミジン、アザプリン、デアザプリン、もしくはそれらの誘導体)とを縮合し、式(9)化合物を得る工程である。塩基の誘導体としては、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、水酸基、ヒドロキシアミノ基、アミノキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基などの置換基を有するものが挙げられ、置換基の数及び位置は特に制限されるものではない。
【0054】
置換基としてのハロゲン原子としては、塩素、フッ素、ヨウ素、臭素が例示される。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピルなどの炭素数1~7の低級アルキル基が例示される。ハロアルキル基としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ブロモエチルなどの炭素数1~7のアルキルを有するハロアルキル基が例示される。アルケニル基としては、ビニル、アリルなどの炭素数2~7のアルケニル基が例示される。ハロアルケニル基としては、ブロモビニル、クロロビニルなどの炭素数2~7のアルケニルを有するハロアルケニル基が例示される。アルキニル基としては、エチニル、プロピニルなどの炭素数2~7のアルキニル基が例示される。アルキルアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノなどの炭素数1~7のアルキルを有するアルキルアミノ基が例示される。
【0055】
縮合反応は、ルイス酸存在下、式(8)化合物とYで表される塩基類とを反応させることにより行うことができる。塩基類はシリル化したものを用いてもよく、このようなシリル化した塩基類は公知の方法、例えばヘキサメチルジシラザンとトリクロロシラン中、またはアセトニトリル、トルエン、1,2-ジクロロエタンといった有機溶媒中、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセタミドと加熱還流する方法により得ることができる。使用するルイス酸としては、四塩化スズ、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどが例示される。
【0056】
工程7は、常用されている方法でR2を脱保護する工程で、例えば式(9)化合物のアンモノリシス、加水分解反応によりR2を除去することで、式(10)化合物を得るができる。具体的には、式(9)化合物をアンモニア水中、室温で1~4時間程度反応させることにより実施できる。
【0057】
また、工程1~7においては、状況に応じて、適宜、単離・精製を行わず、連続的に工程を進めることができる。
【0058】
糖部が修飾された4’-置換ヌクレオシド誘導体を目的化合物とする場合は、上記までの工程によって取得された式(10)化合物の糖部を既知の方法にて修飾することにより、目的化合物を取得することができる。
【0059】
得られた4’-置換ヌクレオシド誘導体及び各工程の中間体は、既知の方法にて単離・精製することができる。例えば、イオン交換、吸着などの各種クロマトグラフィーや結晶化があげられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明の立体選択的な4’-置換ヌクレオシド誘導体の合成法は、非天然型であるL-体ヌクレオシドの合成にも応用可能である。すなわち、D-リキソースから得られる式(3’)で表される化合物に求核剤を作用させることで、立体選択的に置換基を導入した式(4’)で表される化合物を得て、以降上記と同様の工程を経ることによって、L-体ヌクレオシド誘導体(10’)を取得することができる。
【0061】
【化8】
【0062】
上記式中、R、R、R’、Rは水酸基の保護基、Meはメチル基、Xは置換基、Yは核酸塩基を示す。
【実施例
【0063】
[反応条件の検討]
工程1が以下の各種求核剤の使用及び反応条件によって進行し、異性体が生成しないことを確認した。
(実施例1-1)メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(R=メチル基)(CarbohydrateResearch,333mg,1.60mmol)をテトラヒドロフラン(12mL)に溶解し、塩化亜鉛(II)(21.8mg,0.160mmol)を加えた。0℃に冷却し、メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3.0mol/L,1.1mL)を加え2時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(YAMAZEN UNIVERSAL PREMIUM Silicagel 30 マイクロメートル7g,12-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(310mg,1.42mmol,89%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ4.62(1H,d),4.03(1H,d),3.97(1H,dd),3.56(1H,d),3.49-3.47(4H,m),2.48(1H,s),1.58(3H,s),1.39(3H,s),1.26(3H,s).
【0064】
立体異性体の生成については、H-NMR測定により確認した。まず、以下スキームに示す方法にて立体異性体を合成した。
【0065】
【化9】
【0066】
合成し単離した、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシドの立体異性体メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-α-L-リキソピラノシドのH-NMRスペクトルと、実施例1にて取得したメチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシドの合成液のH-NMRスペクトルとを取得し、両者を比較した。前者では観察される3.7ppm付近のピークが、後者では見られないことから、本発明を用いた実施例1にて立体異性体が生成していないことを確認した(図1及び図2参照)。
【0067】
(実施例1-2)メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解した。0℃に冷却し、メチルリチウムのジエチルエーテル溶液(1-2mol/L,0.5mL)を加え1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,20-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(29.4mg,0.135mmol,55%)を得た。
【0068】
(実施例1-3)メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、テトラヒドロフラン(0.8mL)を-78℃に冷却した。メチルリチウムのジエチルエーテル溶液(1-2mol/L,0.3mL)を加え、さらにメチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3.0mol/L,0.1mL)を加え50分間撹拌した。さらに、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)のテトラヒドロフラン(0.8mL)溶液を滴下した。2時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,20-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(46.2mg,0.212mmol,86%)を得た。
【0069】
[工程1にて用いる添加剤の検討]
以下、添加剤を加えた場合の、工程1の手順について記載する。
(実施例1-4)CeCl 添加条件下でのメチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2.3mL)に溶解し、塩化セリウム(120.8mg,0.490mmol)を加えた。0℃に冷却し、メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3.0mol/L,0.17mL)を加え2時間45分撹拌し、室温に昇温した。一晩撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(YAMAZEN UNIVERSAL PREMIUM Silicagel 30 マイクロメートル7g,12-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(40.6mg,0.186mmol,75%)を得た。
【0070】
(実施例1-5)CuCl添加条件下でのメチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2.3mL)に溶解し、塩化銅(I) (2.3mg,23.2μmol)を加えた。0℃に冷却し、メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3.0mol/L,0.17mL)を加え55分撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,20-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(42.0mg,0.192mmol,78%)を得た。
【0071】
(実施例1-6)MgBr 添加条件下でのメチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2.3mL)に溶解し、臭化マグネシウム (45.1mg,0.229mmol)を加えた。0℃に冷却し、メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3.0mol/L,0.17mL)を加え1時間15分撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,20-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(41.1mg,0.188mmol,76%)を得た。
【0072】
(実施例1-7)LiCl添加条件下でのメチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2.3mL)に溶解し、塩化リチウム (10.6mg,0.250mmol)を加えた。0℃に冷却し、メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3.0mol/L,0.17mL)を加え50分間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(YAMAZEN UNIVERSAL PREMIUM Silicagel 30 マイクロメートル7g,12-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(25.0mg,0.115mmol,47%)を得た。
【0073】
(実施例1-8)(n-Bu) NBr添加条件下でのメチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解し、テトラブチルアンモニウムブロミド(159.0mg,0.493mmol)を加えた。0℃に冷却し、メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3.0mol/L,0.17mL)を加え1時間20分撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,20-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(45.1mg,0.207mmol,84%)を得た。
【0074】
(実施例1-9)CuCN添加条件下でのメチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2.3mL)に溶解し、シアン化銅(II)(43.8mg,0.489mmol)を加えた。0℃に冷却し、メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3.0mol/L,0.17mL)を加え1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,20-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(46.6mg,0.214mmol,87%)を得た。
【0075】
[導入する4’位の置換基種の検討]
実施例1-1~1-9にて導入したメチル基以外の置換基であっても、本発明により、4’位に導入できることを確認した。
(実施例2-1)メチル 4-C-エチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=エチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解し、塩化亜鉛(II)(3.4mg,0.0249mmol)を加えた。0℃に冷却し、エチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(約1mol/L,0.5mL)を加え1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(YAMAZEN UNIVERSAL PREMIUM Silicagel30マイクロメートル7g,12-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、粗精製のメチル 4-C-エチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(23.6mg)を得た。
粗精製のメチル 4-C-エチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(23.6mg)をエタノール1mLに溶解し、0℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(27.4mg,0.724mmol)のエタノール(0.5mL)懸濁液を加え、30分間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,20-50%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-エチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(10.5mg,0.0452mmol,18%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ4.67(1H,d),4.06(1H,d),3.98(1H,dd),3.61(1H,d),3.48(1H,d),3.46(3H,s),2.41(1H,br.s),1.53-1.61(5H,m),1.38(3H,s),0.97(3H,t).
【0076】
(実施例2-2)メチル 4-C-フェニル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=フェニル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解した。0℃に冷却し、フェニルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液(約1mol/L,0.5mL)を加え1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,10-20%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-フェニル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(45.9mg,0.130mmol,53%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ7.48-7.53(2H,m),7.33-7.40(2H,m),7.24-7.31(1H,m),5.00(1H,d),4.51(1H,d),4.19(1H,dd),3.94(1H,d),3.60(2H,d),3.49(3H,s),3.09(1H,s)1.64(3H,s),1.37(3H,s).
【0077】
(実施例2-3)メチル 4-C-トリフルオロメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=トリフルオロメチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解し、トリフルオロメチルトリメチルシラン(73μL,0.493mmol)を加えた。0℃に冷却し、テトラブチルアンモニウムフロリドのテトラヒドロフラン溶液(約1mol/L,250μL,0.25mmol)を加えた。室温に昇温し、1晩撹拌した。水、酢酸エチルで分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,0-20%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-トリフルオロメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(41.1mg,0.151mmol,61%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ4.92(1H,d),4.43(1H,d),4.17(1H,dd),3.73-3.85(2H,m),3.43(3H,s),3.37(1H,d),1.61(3H,s),1.41(3H,s).
【0078】
(実施例2-4)メチル 4-C-シアノメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=シアノメチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解し、トリメチルシリルアセトニトリル(68μL,0.497mmol)を加えた。0℃に冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液(約1mol/L,250μL,0.25mmol)を加えた。室温に昇温し、1晩撹拌した。水、酢酸エチルで分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,0-20%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-シアノメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(11.6mg,47.7μmol,19%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ4.75(1H,d),4.16(1H,d),4.06(1H,dd),3.74(1H,d),3.61(1H,d),3.45(3H,s),2.64(2H,dd),1.58(3H,s),1.40(3H,s).
【0079】
(実施例2-5)メチル 4-C-シアノメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=シアノメチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気化、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(227mg,1.12mmol)を脱水テトラヒドロフラン(11mL)に溶解し、塩化亜鉛(II)(15.2mg,1.12mmol)とブロモアセトニトリル(0.15ml、2.24mol)を加えた。-78℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムクロリド-塩化リチウム錯体のテトラヒドロフラン溶液(1.0mol/L,2.24mL)を加え0℃まで昇温後、4時間撹拌した。飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(20%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-シアノメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(187mg,0.768mmol,69%)を得た。
【0080】
(実施例2-6)メチル 4-C-シアノメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=シアノメチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気化、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(218mg,1.08mmol)を脱水テトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、塩化亜鉛(II)(14.7mg,0.108mmol)とヨードアセトニトリル(0.16ml、2.16mol)を加えた。-78℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムクロリド-塩化リチウム錯体のテトラヒドロフラン溶液(1.0mol/L,2.16mL)を加え0℃まで昇温後、4時間撹拌した。飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(20%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-シアノメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(205mg,0.842mmol,78%)を得た。
H-NMR(CDCl3,500MHz);δ4.75(1H,d),4.16(1H,d),4.07(1H,dd),3.74(1H,d),3.61(1H,d),3.46(3H,s),2.87(1H,s),2.77(2H,s),2.64(2H,dd)1.59(3H,s),1.40(3H,s).
【0081】
(実施例2-7)メチル 4-C-ニトロメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=ニトロメチル基、R =メチル基)の合成
水酸化ナトリウム(86.3mg,2.18mmol)をメタノール(1.1mL)に溶解した。0℃に冷却し、ニトロメタン(294μL,5.48mmol)を加えた。このうち250μLを、0℃に冷却し、式(3)化合物であるメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)のメタノール(125μL)溶液に滴下し、2時間半撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,10-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-ニトロメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(48.8mg,0.185mmol,75%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ4.84(1H,d),4.60(1H,d),4.42(1H,d),4.08-4.15(2H,m),3.79(2H,s),3.45(3H,s),3.01(1H,s),1.57(3H,s),1.39(3H,s).
【0082】
(実施例2-8)メチル 4-C-ビニル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=ビニル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解し、塩化亜鉛(II)(3.5mg,25.7μmol)を加えた。0℃に冷却し、ビニルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(1.0mol/L,0.5mL)を加え1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,10-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-ビニル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(39.2mg,0.170mmol,69%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ5.85(1H,dd),5.50(1H,d),5.28(1H,d),4.80(1H,d),4.16(1H,d),4.05(1H,dd),3.65(1H,d),3.49(1H,d),2.64(1H,s),1.59(3H,s),1.38(3H,s).
【0083】
(実施例2-9)メチル 4-C-クロロメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=クロロメチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(R=メチル基)(50mg,0.247mmol)をテトラヒドロフラン(1mL)に溶解し、クロロヨードメタン(54μL,0.740mmol)を加えた。-78℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムクロリド-塩化リチウム錯体のテトラヒドロフラン溶液(1mol/L,740μL,0.740mmol)を30分かけて滴下した。そのまま2時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,5-50%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-クロロメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(43.0mg,0.170mmol,69%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ4.77(1H,d),4.34(1H,d),4.07(1H,dd),3.82(1H,d),3.60(1H,d),3.55(1H,d),3.46(3H,s),2.82(1H,s),1.57(3H,s),1.40(3H,s).
【0084】
[4’-C-クロロメチル-D-ウリジンの合成]
(実施例3-1)メチル 4-C-クロロメチル-D-リボフラノシド(式(6)化合物、X=クロロメチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(R=メチル基)(250mg,1.24mmol)をジエチルエーテル(5mL)に溶解し、クロロヨードメタン(540μL,0.497mmol)を加えた。-78℃に冷却し、メチルリチウムのジエチルエーテル溶液(1-2mol/L,3.7mL)を30分かけて滴下した。そのまま1時間半撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,5-10%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-クロロメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=クロロメチル基、R=メチル基)の粗精製物を得た。
メチル 4-C-クロロメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシドの粗精製物を、2mol/Lの塩酸(5mL)と脱イオン水(10mL)に溶解し、80℃で26時間45分撹拌した。室温に冷却して水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,3-10%メタノール/クロロホルム)で粗精製した。
得られた粗精製物にメタノール(5mL)を加え、0℃に冷却した。ここに別途調製した塩酸-メタノール溶液を加え、室温に昇温して16時間40分撹拌した。炭酸ナトリウムを加えて反応を停止し、減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,0-5%メタノール/クロロホルム)で精製し、メチル 4-C-クロロメチル-D-リボフラノシド(112.5mg,0.529mmol,43%)を得た。
【0085】
(実施例3-2)メチル 2,3,5-トリ-O-アセチル-4-C-クロロメチル-D-リボフラノシド(式(7)化合物、X=クロロメチル基、R =アセチル基、R ’=アセチル基)の合成
メチル 4-C-クロロメチル-D-リボフラノシド(112.5mg,0.529mmol)をピリジン(2.5mL)に溶解し、無水酢酸(500μL,5.00mmol)を加えて16時間撹拌した。減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,10-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 2,3,5-トリ-O-アセチル-4-C-クロロメチル-D-リボフラノシド(142.0mg,0.419mmol,79%,α/β)を得た。1位の立体異性体について、以下にそれぞれのH-NMRデータを記載する。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ5.60(1H,d),5.29(1H,d),4.94(1H,s),4.33(2H,dd),3.74(2H,dd),3.39(3H,s),2.12(3H,s),2.09(3H,s),2.08(3H,s)。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ5.53(1H,d),5.13(1H,d),5.09(1H,dd),4.30(2H,dd),3.75(2H,dd),3.44(3H,s),2.17(3H,s),2.13(3H,s),2.11(3H,s).
【0086】
(実施例3-3)1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-クロロメチル-D-リボフラノシド(式(8)化合物、X=クロロメチル基、R =アセチル基、R =アセチル基)の合成
メチル 2,3,5-トリ-O-アセチル-4-C-クロロメチル-D-リボフラノシド(140.5mg,0.415mmol)を酢酸(4mL)と無水酢酸(415μL,4.15mmol)に溶解し、氷冷下、硫酸(30μL)を加えて30分間撹拌した。室温に昇温し、18時間20分撹拌した。氷を加えて反応を停止し、酢酸エチルと脱イオン水を加えて分液した。さらに有機層を飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 10g,20-30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-クロロメチル-D-リボフラノシド(147.1mg,0.409mmol,97%,α/β)を得た。1位の立体異性体について、以下にそれぞれのH-NMRデータを記載する。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ6.21(1H,d),5.59(1H,d),5.42(1H,dd),4.42(1H,d),4.32(1H,d),3.75(2H,s),2.14(3H,s),2.12(3H,s),2.11(3H,s),2.10(3H,s).
H-NMR(CDCl,500MHz);δ6.41(1H,d),5.55(1H,d),5.41(1H,dd),4.39(1H,d),4.24(1H,d),3.80(1H,d),3.68(1H,d),2.17(3H,s),2.14(3H,s),2.12(3H,s),2.05(3H,s).
【0087】
(実施例3-4)2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-クロロメチル-D-ウリジン(式(9)化合物、X=クロロメチル基、R =アセチル基、Y=ウラシル)の合成
1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-クロロメチル-D-リボフラノース(113.5mg,0.309mmol)とウラシル(69.5mg,0.620mmol)にジクロロエタン(3mL)とBSA(458μL,1.85mmol)を加えて、3時間35分加熱還流した。0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(223μL,1.23mmol)を加え、50℃で17時間30分間撹拌した。60℃に昇温し、さらに4時間撹拌した。0℃に冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(SNAP Ultra 10g,0-2%メタノール/クロロホルム)で精製し、2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-クロロメチル-D-ウリジン(126.4mg,0.302mmol,98%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ9.12(1H,br.s),7.43(1H,d),6.21(1H,d),5.83(1H,d),5.60(1H,d),5.51(1H,dd),4.65(1H,d),4.25(1H,d),3.77(1H,d),3.68(1H,d),2.20(3H,s),2.18(3H,s),2.07(3H,s).
【0088】
(実施例3-5)4’-C-クロロメチル-D-ウリジン(式(10)化合物、X=クロロメチル基、Y=ウラシル)の合成
2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-クロロメチル-D-ウリジン(30.0mg,0.072mmol)とアンモニアのメタノール溶液(2. 0mol/L,1.8mL)を0℃で加えて、室温まで昇温し、3時間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(20%メタノール/クロロホルム)で精製し、4’-C-クロロメチル-D-ウリジンを定量的に得た。
H-NMR(Methanol-d,500MHz);δ7.94(1H,d),5.99(1H,d),5.73(1H,d),4.41(1H,dd),(1H,d),4.25(1H,d),3.80(2H,dd),3.79(2H,dd).
【0089】
[4’-置換ヌクレオシド誘導体:4’-C-メチル-D-ウリジンの合成]
(実施例4-1)メチル 4-C-メチル-D-リボフラノシド(式(6)化合物、X=メチル基)の合成
メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(473mg,2.17mmol)を1Mトリフルオロ酢酸水溶液(2.17mL)に溶解し、80℃で2時間加熱撹拌した。濃縮し、アセトニトリルで共沸した後、残差をメタノール(2.17mL)に懸濁した。氷冷下、塩化アセチル(2.17μL)を加え、室温に昇温して3時間反応させた。氷冷下、ピリジンを加えて中和し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0-4%メタノール/クロロホルム)で精製し、メチル 4-C-メチル-D-リボフラノシド(342mg,1.92mmol,88%)を1位異性体の混合物として得た。
H-NMR(MeOD,500MHz);δ4.76(1H,d),3.67(1H,s),3.62(1H,dd),3.58(1H,s),3.53(1H,dd),3.40(3H,s),3.29(1H,s),2.92(1H,s),2.82(1H,s),1.19(3H,s).
【0090】
(実施例4-2)1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-メチル-D-リボフラノシド(式(8)化合物、X=メチル基、R =アセチル基、R =アセチル基)の合成
メチル 4-C-メチル-D-リボフラノシド(342mg,1.92mmol)をピリジン(4.0mL)に溶解し、無水酢酸(1.81mL,19.2mmol)を加えて撹拌した。6時間後、濃縮し、残差を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水で洗浄した。有機層を無水炭酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。酢酸(8mL)、無水酢酸(1.81mL)に溶解し、氷冷下、硫酸(150μL)を加えた。20分後、室温に昇温して18時間撹拌した。氷水を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(10-25%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-メチル-D-リボフラノシド(504mg,1.52mmol,79%)を1位異性体の混合物として得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ6.17(1H,d),5.95(0.8H,d),5.41-5.38(3.6H,m),4.04-4.15(3.6H,m),2.13-2.09(21.6H,m),1.33(5.4H,s).
【0091】
(実施例4-3)2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-メチル-D-ウリジン(式(9)化合物、X=メチル基、R =アセチル基、Y=ウラシル)の合成
1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-メチル-D-リボフラノシド(504mg,1.52mmol)をジクロロエタンに溶解し、ウラシル(341mg,3.04mmol)、BSA(1.86mL,9.12mmol)を加え90℃で加熱還流した。1時間後、氷浴で冷却し、トリフルオロメチルスルホン酸トリメチルシリル(1.09mL,6.03mmol)を加え、50℃に加熱し、15時間反応させた。氷冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0-3%メタノール/クロロホルム)で精製し、2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-メチル-D-ウリジン(519mg,1.35mmol,89%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ8.11(1H,br.s),7.44(1H,d),7.26(1H,d),6.11(1H,d),5.78(1H,d),5.41(1H,s),4.23(1H,d),4.11(1H,d), 2.16(6H,s),2.09(3H,s),1.34(3H,s).
【0092】
(実施例4-4)4’-C-メチル-D-ウリジン(式(10)化合物、X=メチル基、Y=ウラシル)の合成
2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-メチル-D-ウリジン(519mg,1.35mmol)を25%アンモニア水(8.8mL)に溶解し、14時間撹拌した。濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0-10%メタノール/クロロホルム)で精製し、4’-C-メチル-D-ウリジン(215mg,0.833mmol)を得た。
H-NMR(MeOD,500MHz);δ8.02(1H,d),5.94(1H,d),5.71(1H,d),4.35(1H,t),4.12(1H,d),4.54(2H,s),1.22(3H,s).
【0093】
[L-体4’-置換ヌクレオシド誘導体:4’-C-メチル-L-ウリジンの合成]
(参考例1)メチル α-D-リキソピラノシドの合成
メタノール(80mL)に、氷冷下塩化アセチル(0.4mL,5.63mmol)を加えた。80℃で加熱還流し、1時間後D-リキソース(4.0g,26.6mmol)を加えた。4時間反応させた後、室温まで放冷しIRA67(OH)で中和した。メタノールで樹脂を洗い濃縮した。残渣を中圧分取装置(YMC-DispopackAT SIL 120g,8-15%メタノール/クロロホルム)で精製し、あめ状の粗精製物を得た。酢酸エチルに加熱しながら溶解し、室温に放冷して析出した結晶をろ取した。メチル α-D-リキソピラノシド(1.53g,10.2mmol,38%)を得た。
H-NMR(MeOD,500MHz);δ4.54(1H,d),3.79-3.75(1H,m),3.73(1H,t),3.65-3.63(1H,m),3.40(1H,dd),3.37(3H,s).
【0094】
(参考例2)メチル 2,3-O-イソプロピリデン-α-D-リキソピラノシドの合成
メチル α-D-リキソピラノシド(7.42g,45.2mmol)をアセトン(450mL)に懸濁し、ジメトキシプロパン(22.4mL,226mmol)とトシル酸一水和物(860mg,4.52mmol)を加え、1時間半撹拌した。炭酸水素ナトリウム(3.65g)を加えて反応を停止し濃縮した。残渣を中圧分取装置(YMC-DispopackAT SIL 120g,20-30%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、メチル 2,3-O-イソプロピリデン-α-D-リキソピラノシド(8.22g,40.3mmol,89%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ4.65(1H,d),4.25-4.24(1H,m),4.14(1H,dd),3.87-3.82(2H,m),3.47(3H,s),2.89(1H,s),1.52(3H,s),1.36(3H,s).
【0095】
(参考例3)メチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-L-リボピラノシド-4-ウロース(式(3’)化合物、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気化、塩化オキサリル(1.1mL,12.8mmol)を脱水ジクロロメタン(44mL)に溶解し、-78℃に冷却した。ジメチルスルホキシド(1.8mL,25.3mmol)を滴下し、10分間撹拌した。ここに、メチル 2,3-O-イソプロピリデン-α-D-リキソピラノシド(1.30g,6.38mmol)を脱水ジクロロメタン(19mL)に溶解して滴下し、さらに1時間撹拌した。トリエチルアミン(5.3mL,38.0mmol)を加え室温に昇温した。1時間後、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(Chromatorex Q-Pack SI30 SIZE20,12-30%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、メチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-L-リボピラノシド-4-ウロース(692mg,3.39mmol,53%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ4.79(1H,d),4.44-4.41(2H,m),4.19(2H,dd),3.47(3H,s),1.52(3H,s),1.38(3H,s).
【0096】
(実施例5-1)メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-L-リボピラノシド(式(4’)化合物、X=メチル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気化、メチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-L-リボピラノシド-4-ウロース(48.2mg,0.238mmol)を脱水テトラヒドロフラン(2mL)に溶解し、塩化亜鉛(II)(3.2mg,23.5μmol)を加えた。-78℃に冷却し、メチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(3.0mol/L,160μL)を加え2時間半撹拌した。飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残渣を中圧分取装置(ZIP KP-Sil 5g,12-30%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-L-リボピラノシド(44.3mg,0.203mmol,85%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ4.62(1H,d),4.03(1H,d),3.97(1H,dd),3.56(1H,d),3.49-3.47(4H,m),2.48(1H,s),1.58(3H,s),1.39(3H,s),1.26(3H,s).
【0097】
(実施例5-2)メチル 4-C-メチル-L-リボフラノシド(式(6’)化合物、X=メチル基)の合成
メチル 4-C-メチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-L-リボフラノシド(22.0mg,0.100mmol)をトリフルオロ酢酸水溶液に溶解し、80℃で22時間半加熱還流した。濃縮し、アセトニトリルで共沸した後、残渣をメタノール(1mL)に懸濁した。氷冷下、塩化アセチル(10μL)を加え、室温に昇温して1晩反応させた。氷冷下、ピリジンを加えて中和し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0-4%メタノール/クロロホルム)で精製し、メチル 4-C-メチル-L-リボフラノシド(9.4mg,52.8μmol,53%)を得た。
H-NMR(MeOD,500MHz);δ4.78(1H,d),4.73(1H,d),4.14(1H,dd),4.03(1H,d),3.99(1H,dd),3.90(1H,d),3.48-3.37(7H,m),3.34(3H,s),1.24(3H,s),1.21(3H,s).
【0098】
(実施例5-3)1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-メチル-L-リボフラノシド(式(8’)化合物、X=メチル基、R =アセチル基、R =アセチル基)の合成
メチル 4-C-メチル-L-リボフラノシド(230mg,1.29mmol)をピリジン(2.5mL)に溶解し、無水酢酸(1mL,10.0mmol)を加えて撹拌した。6時間半後、濃縮し、残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水で洗浄した。有機層を無水炭酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。酢酸(5mL)、無水酢酸(1.4mL)に溶解し、氷冷下、硫酸(100μL)を加えた。20分後、室温に昇温して18時間撹拌した。氷水を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(10-25%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-メチル-L-リボフラノシド(366mg,1.10mmol,85%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ6.38(0.3H,d),6.17(1H,d),5.43-5.37(2.6H,m),4.15-3.98(2.6H,m),2.16-2.05(15.6H,m),1.33(0.9H,s),1.33(3H,s).
【0099】
(実施例5-4)2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-メチル-L-ウリジン(式(9’)化合物、X=メチル基、R =アセチル基、Y=ウラシル)の合成
1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-メチル-L-リボフラノシド(50mg,0.150mmol)をジクロロエタンに溶解し、ウラシル(33.6mg,0.300mmol)、BSA(222μL,0.898mmol)を加え90℃で加熱還流した。1時間後、氷浴で冷却し、トリフルオロメチルスルホン酸トリメチルシリル(108μL,0.598mmol)を加え、50℃に加熱し、22時間反応させた。氷冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0-3%メタノール/クロロホルム)で精製し、2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-メチル-L-ウリジン(47.7mg,0.124mmol,83%)を得た。
H-NMR(CDCl,500MHz);δ8.39(1H,br.s),7.44(1H,d),6.11(1H,d),5.79(1H,d),5.41(1H,dd),4.17(2H,dd),2.17(3H,s),2.16(3H,s),2.09(3H,s),1.34(3H,s).
【0100】
(実施例5-5)4’-C-メチル-L-ウリジン(式(10’)化合物、X=メチル基、Y=ウラシル)の合成
2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-メチル-L-ウリジン(29.3mg,76.2μmol)をアンモニア水(0.5mL)に溶解し、22時間撹拌した。濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0-10%メタノール/クロロホルム)で精製し、4’-C-メチル-L-ウリジン(11.6mg,44.9μmol)を得た。
H-NMR(MeOD,500MHz);δ8.02(1H,d),5.94(1H,d),5.71(1H,d),4.35(1H,t),4.12(1H,d),4.54(2H,s),1.21(3H,s).
【0101】
[4’-C-ビニル-D-ウリジンの合成]
4’位に導入する置換基がメチル基以外の官能基であっても、最終化合物まで合成可能であることを検証した。
(実施例6-1)メチル 4-C-ビニル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=ビニル基、R =メチル基)の合成
アルゴン雰囲気下、式(3)化合物としてメチル 2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド-4-ウロース(500mg, 2.47mmol)をテトラヒドロフラン(12.4mL)に溶解し、塩化亜鉛(II)(34.0mg, 0.25mmol)を加えた。0℃に冷却し、ビニルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(1.0mol/L, 4.94mL, 4.94mmol)を滴下した。そのまま2時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (5-10%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-ビニル-2,3-O-イソプロピリデン-β-L-リボピラノシド(443.6mg, 1.93mmol,78%)を得た。
H-NMR(CDCl,400MHz);δ5.85(1H,dd),5.50(1H,dd),5.28(1H,dd),4.81(1H,d),4.16(1H,d),4.05(1H,dd),3.65(1H,d),3.49(1H,d),3.46(1H,s), 2.56(1H,s),1.59(3H,s),1.38(3H,s)
【0102】
(実施例6-2)メチル 4-C-ビニル-D-リボフラノシド(式(6)化合物、X=ビニル基)の合成
メチル 4-C-ビニル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(1.19g,5.14mmol)を1mol/Lトリフルオロ酢酸水溶液(5.14mL)に溶解し、80℃で2時間加熱撹拌した。濃縮し、アセトニトリルで共沸した後、残差をメタノールに懸濁した。氷冷下、塩化アセチル(514μL)を加え、室温に昇温して2時間反応させた。氷冷下、ピリジンを加えて中和し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0-4%メタノール/クロロホルム)で精製し、メチル 4-C-ビニル-D-リボフラノシドを定量的に1位異性体の混合物として得た。
H-NMR(CDCl,400MHz);δ4.51(1H,d),3.88(1H,t),3.61(2H,ddd),3.47(3H,s),3.04-3.07(2H,m),1.72-1.79(1H,m),1.59-1.66(1H,m)
【0103】
(実施例6-3)1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-ビニル-D-リボフラノシド(式(8)化合物、X=ビニル基、R =アセチル基、R =アセチル基)の合成
メチル 4-C-ビニル-D-リボフラノシド(1.96g, 1.03mmol)をピリジン(20mL)に溶解し、無水酢酸(0.97mL, 10.3mmol)を加えて撹拌した。20時間後、濃縮し、残差を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(30% 酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 2,5-ジ-O-アセチル-4-C-ビニル-D-リボフラノシド(271mg, 0.99mmol, 96%)を1位異性体の混合物として得た。
H-NMR(CDCl,400MHz);δ5.52(1H,dd),5.28(1H,td),5.18(1H,dd),4.73(1H,d),3.83(1H,d),3.48(1H,d),3.43(3H,s),3.22(1H,sd),2.17(3H,s),2.05(3H,s)
メチル 2,5-ジ-O-アセチル-4-C-ビニル-D-リボフラノシド(198mg, 0.72mmol)を酢酸(2mL)、無水酢酸(0.69mL, 7.20mmol)に溶解し、氷冷下、硫酸(47μL)を加えた。10分後、室温に昇温して2時間撹拌した。氷水を加えて反応を停止し、EtOAcで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(30%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-ビニル-D-リボフラノシド(19.3mg, 0.56mmol, 78%)を1位異性体の混合物として得た。
H-NMR(CDCl,400MHz);δ5.96(1H,d),5.62(1H,dd),5.52(2H,dd),5.03(1H,dd),4.67(1H,td),4.34(1H,d),4.22(1H,d),2.14(3H,s),2.13(3H,s),2.05(3H,s),2.02(3H,s)
【0104】
(実施例6-4)2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-ビニル-D-ウリジン(式(9)化合物、X=ビニル基、R =アセチル基、Y=ウラシル)の合成
1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-ビニル-D-リボフラノシド(116mg, 0.34mmol)を1,2-ジクロロエタンに溶解し、ウラシル(75.6mg, 0.68mmol)、BSA(0.5mL, 2.04mmol)を加え90℃で加熱還流した。1時間後、氷浴で冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.24mL, 1.36mmol)を加え、90℃に加熱還流し、16時間反応させた。氷冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(75% 酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-ビニル-D-ウリジン(83.9mg, 0.21mmol, 62%)を得た。
H-NMR(CDCl,400MHz);δ8.80(1H,br.s),7.71(1H,dd),6.13(1H,d),5.82(1H,d),5.76(1H,d),5.50(1H,d),5.40(1H,d),4.65(1H,dd),4.30(1H,d),4.22(1H,t),4.05(1H,dd),2.17(3H,s),2.12(3H,s),2.09(3H,s),2.06(3H,s)
【0105】
(実施例6-5)4’-C-ビニル-D-ウリジン(式(10)化合物、X=ビニル基、Y=ウラシル)の合成
2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-ビニル-D-ウリジン(82.0mg, 0.21mmol)を25%アンモニア水(28μL)に溶解し、室温で24時間撹拌した。濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(20%メタノール/クロロホルム)で精製し、4’-C-ビニル-D-ウリジン(53.2mg, 0.14mmol, 68%)を得た。
H-NMR(CDOD,400MHz);δ8.07(1H,d),5.99(1H,ddd),5.75(1H,d),5.44(1H,dd),5.42(1H,dd),4.30-4.36(2H,m),3.90(1H,t),3.66(1H,d),3.49(1H,d)
【0106】
[4’-C-アミノエチル-D-ウリジンの合成]
本発明の4’-置換ヌクレオシド誘導体の合成法において、合成中間体段階での置換基Xの変換が可能であることを検証した。
(実施例7-1)メチル 4-C-アミノエチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=アミノエチル基、R =メチル基)の合成
水素雰囲気下、メチル 4-C-シアノメチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(409mg, 1.68mmol)をMeOH(41mL)に溶解し、活性化されたRaney-Ni(50wt%,409mg)を加えた。90℃で加熱還流し、4時間撹拌した。反応終了後、反応液をセライト濾過し、得られたろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (メタノール:クロロホルム:トリエチルアミン=1:4:1)で精製し、メチル 4-C-アミノエチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(383mg,1.55mmol,92%)を得た。
H-NMR(CDOD,400MHz);δ4.60(1H,dd),4.23(1H,td),4.12(1H,d),3.75(1H,dd),3.43(3H,s),3.24(1H,d),1.54-1.71(2H,m),1.54(3H,s),1.35(3H,s)
【0107】
(実施例7-2)メチル 4-C-トリフルオロアセトアミドエチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(式(4)化合物、X=トリフルオロアセトアミドエチル基、R =メチル基)の合成
メチル 4-C-アミノエチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(383mg, 1.55mmol)をジクロロメタン(15.5mL)に溶解し、氷冷下、トリエチルアミン(0.33mL, 2.33mmol)、トリフルオロ酢酸エチル(0.56mL, 4.65mmol)を加えた。5分後、室温に昇温して3時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、クロロホルムで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、メチル 4-C-トリフルオロアセトアミドエチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(415mg, 1.21mmol,78%)を得た。
H-NMR(CDCl,400MHz);δ7.89(1H,br.s),4.65(1H,d),3.74(1H,d),3.60-3.65(2H,m),3.59(3H,s),3.31(1H,d),3.27(1H,d),1.62(3H,s),1.41(3H,s)
【0108】
(実施例7-3)メチル 4-C-トリフルオロアセトアミドエチル-D-リボフラノシド(式(6)化合物、X=トリフルオロアセトアミドエチル基)の合成
メチル 4-C-トリフルオロアセトアミドエチル-2,3-O-イソプロピリデン-β-D-リボピラノシド(4.15g, 1.21mmol)を1mol/Lトリフルオロ酢酸水溶液(1.37mL)に溶解し、0℃で30分間撹拌した。濃縮し、アセトニトリルで共沸した後、残差をメタノールに溶解した。氷冷下、塩化アセチル(137μL)を加え、室温に昇温して2時間反応させた。反応液を濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(10%メタノール/クロロホルム)で精製し、メチル 4-C-トリフルオロアセトアミドエチル-D-リボフラノシド(226mg,0.75mmol,62%)を1位異性体の混合物として得た。
H-NMR(CDOD,400MHz);δ4.40(1H,d),3.79(1H,dd),3.75(1H,d),3.50(1H,d),3.48(3H,s),3.45(2H,t),2.65(1H,s),1.85-1.92(1H,m),1.64-1.72(1H,m)
【0109】
(実施例7-4)1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-トリフルオロアセトアミドエチル-D-リボフラノシド(式(8)化合物、X=トリフルオロアセトアミドエチル基、R =アセチル基、R =アセチル基)の合成
メチル 4-C-トリフルオロアセトアミドエチル-D-リボフラノシド(226mg, 0.75mmol)を酢酸(0.75mL)、無水酢酸(0.71mL, 7.50mmol)に溶解し、氷冷下、硫酸(46.8μL)を加えた。10分後、室温に昇温して17時間撹拌した。氷水を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50% 酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製し、1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-トリフルオロアセトアミドエチル-D-リボフラノシド(235mg, 0.51mmol, 69%)を1位異性体の混合物として得た。
H-NMR(CDCl,400MHz);δ5.95(1H,d),5.68-5.69(1H,m),5.00(1H,dd),4.21(1H,d),3.99(1H,d),3.48-3.53(2H,m),2.40(2H,t),2.15(3H,s),2.13(3H,s),2.10(3H,s),2.09(3H,s)
【0110】
(実施例7-5)2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-トリフルオロアセトアミドエチル-D-ウリジン(式(9)化合物、X=トリフルオロアセトアミドエチル基、R =アセチル基、Y=ウラシル)の合成
1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-4-C-トリフルオロアセトアミドエチル-D-リボフラノシド(236mg, 0.51mmol)を1,2-ジクロロエタン(5.1mL)に溶解し、ウラシル(114mg, 1.02mmol)、BSA(0.75mL, 3.06mmol)を加え90℃で加熱還流した。1時間後、氷浴で冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.36mL,2.04mmol)を加え、90℃に加熱還流し、19時間反応させた。氷冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(5%メタノール/クロロホルム)で精製し、2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-トリフルオロアセトアミドエチル-D-ウリジン(224mg, 0.44mmol,86%)を得た。
H-NMR(CDCl,400MHz);δ7.33(1H,d),6.02-6.04(1H,m),5.91(1H,d),5.80(1H,t),5.29(1H,d),4.19(1H,d),4.00(1H,d),3.46-3.69(2H,m),2.49-2.66(2H,m),2.19(3H,s),2.03(3H,s),1.99(3H,s)
【0111】
(実施例7-6)4’-C-アミノエチル-D-ウリジン(式(10)化合物、X=アミノエチル基、Y=ウラシル)の合成
2’,3’,5’-トリ-O-アセチル-4’-C-トリフルオロアセトアミドエチル-D-ウリジン(224mg, 0.44mmol)を25%アンモニア水(2.23mL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。濃縮し、残渣を中圧分取装置(SNAP Ultra C18 12g,100% 脱イオン水)で精製し、4’-C-アミノエチル-D-ウリジン(104mg, 0.36mmol,82%)を得た。
H-NMR(CDOD,400MHz);δ7.58(1H,d),5.77(1H,d),5.54(1H,d),3.96(1H,dd),3.87(1H,d),3.70(1H,d),3.48-3.59(3H,m),2.00-2.03(1H,m),1.94-1.96(1H,m)
図1
図2