(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】RFIDタグ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20220216BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20220216BHJP
B42D 25/47 20140101ALI20220216BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
G06K19/077 156
G06K19/077 144
G06K19/077 280
B42D25/305 100
B42D25/47
H01Q1/40
(21)【出願番号】P 2016215386
(22)【出願日】2016-11-02
【審査請求日】2019-08-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2016111343
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴由
(72)【発明者】
【氏名】杉村 吉康
(72)【発明者】
【氏名】馬場 俊二
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】三浦 明平
【合議体】
【審判長】田中 秀人
【審判官】須田 勝巳
【審判官】山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-030069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K19/077
B42D15/10
H01Q 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート状の基材と、
前記基材に形成されたアンテナパターンと、
前記基材に搭載されると共に、前記アンテナパターンと接続されたICチップと、
前記ICチップと前記基材とを接着する接着材と、
前記ICチップ及び前記接着材を覆うと共に、前記ICチップ及び前記接着材に対して中央部が前記基材の長さ方向にずれた位置にある、前記基材の片面
のみに1つだけの補強材と、
を備え、
前記ICチップは、前記基材の幅方向を長手方向として前記基材に搭載されて
おり、
前記基材の長さ方向において、前記ICチップ及び前記接着材は、前記補強材の中央部と前記補強材の一方の端部との間に配置されている、
RFIDタグ。
【請求項2】
前記アンテナパターンにおける前記ICチップとの接続部は、前記基材の幅方向に延び、
前記補強材は、前記接続部を覆っている、
請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記補強材の中央部は、前記ICチップ及び前記接着材に対して前記基材の長さ方向及び幅方向にずれた位置にある、
請求項1又は請求項2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記補強材は、前記基材の幅方向の両側に開放する一対の切欠きを有し、
前記一対の切欠きは、前記ICチップ及び接着材に対して前記基材の長さ方向にずれた位置に形成されると共に、互いに前記基材の長さ方向における同じ位置にある、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記補強材は、前記基材の幅方向の延びると共に、前記ICチップ及び接着材に対して前記基材の長さ方向にずれた位置に形成された溝を有する、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、RFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リーダライタ等の外部機器との間で、電波によって非接触で情報のやり取りを行うRFID(Radio Frequency Identification)タグが使用され始めている。この種のRFIDタグとしては、次のようなものがある。すなわち、可撓性を有する基材と、基材に形成されたアンテナパターンと、基材に搭載されると共にアンテナパターンと接続されたIC(Integrated Circuit)チップと、ICチップと基材とを接着する接着材とを備えたRFIDタグである。
【0003】
また、例えば、特許文献1、2に記載されているように、上記のようなRFIDのなかには、ICチップ及び接着材を覆う補強材を備えたものがある。このRFIDタグでは、補強材の中央部がICチップ及び接着材上に位置するように補強材が配置されている。なお、特許文献3~5には、RFIDタグについて各種工夫を施した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-94634号公報
【文献】特開2011-221599号公報
【文献】特開平3-52255号公報
【文献】特開2007-148672号公報
【文献】特開2010-86361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
補強材を備えたRFIDタグにおいて、RFIDタグに圧縮応力又は曲げ応力が作用すると、補強材が中央部にて折れ曲がることが想定される。したがって、補強材の中央部がICチップ及び接着材上に位置している場合には、補強材が中央部にて折れ曲がることに伴い、ICチップに曲げ応力が作用し、ICチップに割れが生じる虞がある。また、ICチップに割れが生じない場合でも、補強材が中央部にて折れ曲がることに伴い、接着材の縁(フィレット部が有る部分と無い部分との境界部であって、接着剤の際(きわ)とも言う)に応力が集中し、接着材の縁においてアンテナパターンが断線する虞がある。
【0006】
本願の開示する技術は、上記事情に鑑みて成されたものであり、一つの側面として、ICチップの割れや、接着材の縁におけるアンテナパターンの断線を抑制することができるRFIDタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する技術のRFIDタグは、基材と、アンテナパターンと、ICチップと、接着材と、補強材とを備える。基材は、可撓性を有するシート状である。アンテナパターンは、基材に形成されている。ICチップは、基材に搭載されると共に、アンテナパターンと接続されている。接着材は、ICチップと基材とを接着している。補強材は、ICチップ及び接着材を覆っている。この補強材は、ICチップ及び接着材に対して中央部が基材の長さ方向にずれた位置にある、基材の片面のみに1つだけの補強材である。ICチップは、基材の幅方向を長手方向として基材に搭載されている。基材の長さ方向において、ICチップ及び接着材は、補強材の中央部と補強材の一方の端部との間に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する技術のRFIDタグによれば、ICチップの割れや、接着材の縁におけるアンテナパターンの断線を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るRFIDタグの二面図(平面図及び側面断面図)である。
【
図2】
図1に示されるICチップの周辺部を拡大した二面図である。
【
図3】本実施形態に係るRFIDタグの製造方法のうちのラミネート工程を説明する図である。
【
図4】本実施形態に係るRFIDタグの製造方法のうちの個片化工程を説明する図である。
【
図5】本実施形態に係るRFIDタグに用いられる補強材に圧縮応力が作用する場合を説明する図である。
【
図6】本実施形態に係るRFIDタグに用いられる補強材に偏心した圧縮応力が作用する場合を説明する図である。
【
図7】本実施形態に係るRFIDタグに用いられる補強材に曲げ応力が作用する場合を説明する図である。
【
図8】本実施形態に係るRFIDタグの第一変形例を示す縦断面図である。
【
図9】本実施形態に係るRFIDタグの第二変形例を示す縦断面図である。
【
図10】本実施形態に係るRFIDタグの第三変形例を示す縦断面図である。
【
図11】本実施形態に係るRFIDタグの第四変形例を示す縦断面図である。
【
図12】本実施形態に係るRFIDタグの第五変形例を示す縦断面図である。
【
図13】本実施形態に係るRFIDタグの第六変形例を示す平面図である。
【
図14】本実施形態に係るRFIDタグの第七変形例を示す平面図である。
【
図15】本実施形態に係るRFIDタグの第八変形例を示す平面図である。
【
図16】本実施形態に係るRFIDタグの第九変形例を示す平面図である。
【
図17】本実施形態に係るRFIDタグの第十変形例を示す平面図である。
【
図18】本実施形態に係るRFIDタグの第十一変形例を示す縦断面図である。
【
図19】本実施形態に係るRFIDタグの第十二変形例に関し、比較例に係るRFIDタグに下向きの曲げ荷重が作用する場合を説明する図である。
【
図20】本実施形態に係るRFIDタグの第十二変形例に関し、比較例に係るRFIDタグに上向きの曲げ荷重が作用する場合を説明する図である。
【
図21】本実施形態に係るRFIDタグの第十二変形例を示す平面図である。
【
図22】本実施形態に係るRFIDタグの第十三変形例に関し、比較例に係るRFIDタグの補強材に圧縮荷重が作用する場合を説明する図である。
【
図23】本実施形態に係るRFIDタグの第十三変形例に関し、比較例に係るRFIDタグの補強材に偏心した圧縮荷重が作用する場合を説明する図である。
【
図24】本実施形態に係るRFIDタグの第十四変形例を示す平面図である。
【
図25】本実施形態に係るRFIDタグの第十五変形例を示す平面図である。
【
図26】本実施形態に係るRFIDタグの第十六変形例を示す平面図である。
【
図27】本実施形態に係るRFIDタグの第十七変形例を示す平面図である。
【
図28】本実施形態に係るRFIDタグの第十八変形例を示す平面図である。
【
図29】本実施形態に係るRFIDタグの第十九変形例を示す平面図である。
【
図30】本実施形態に係るRFIDタグの第二十変形例を示す平面図である。
【
図31】本実施形態に係るRFIDタグの第二十一変形例を示す二面図である。
【
図32】本実施形態に係るRFIDタグの第二十一変形例におけるラミネート工程を説明する図である。
【
図33】本実施形態に係るRFIDタグの第二十二変形例を示す二面図である。
【
図34】本実施形態に係るRFIDタグの第二十三変形例を示す二面図である。
【
図35】本実施形態に係るRFIDタグの第二十四変形例を示す二面図である。
【
図36】比較例に係るRFIDタグの補強材に圧縮応力及び曲げ応力が作用する場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の開示する技術の一実施形態を説明する。なお、本願において、第十二変形例を実施形態とし、第十二変形例以外の実施形態及び変形例を参考例と読み替えるものとする。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態に係るRFIDタグ10は、基材12と、アンテナパターン14と、ICチップ16と、接着材18と、第一保護層20と、第二保護層22と、補強材24とを備える。
【0012】
基材12は、平面視で長方形のシート状(板状)である。各図において、矢印X、矢印Y、矢印Zは、基材12の長さ方向(長手方向)、幅方向(短手方向)、厚み方向をそれぞれ示している。基材12の幅方向は、基材12の平面視で基材12の長さ方向と直交する方向であり、基材12の厚み方向は、基材12の側面視で基材12の長さ方向と直交する方向である。基材12の長さ方向、幅方向、厚み方向は、RFIDタグ10の長さ方向、幅方向、厚み方向と同じである。
【0013】
アンテナパターン14は、基材12の表面に形成されており、基材12の長さ方向に延びている。このアンテナパターン14は、例えば、銀ペーストにより形成されている。本実施形態において、アンテナパターン14は、一例として、直線状であるが、屈曲や湾曲していても良い。
【0014】
ICチップ16は、基材12に搭載されている。このICチップ16は、平面視で長方形であり、基材12の長さ方向を長手方向として配置されている。このICチップ16は、基材12の長さ方向の中央部に配置されている。
図2において、より詳細に示されるように、ICチップ16は、バンプ部26を有しており、このバンプ部26にてアンテナパターン14と接続されている。
【0015】
接着材18は、導電性を有しており、ICチップ16と基材12とを接着している。この接着材18は、ICチップ16の外周部よりも外側にはみ出している。この接着材18におけるICチップ16の外周部よりも外側にはみ出した部分は、フィレット状のフィレット部28として形成されている。
【0016】
図1に示されるように、第一保護層20は、基材12の表面に重ね合わされており、上述のICチップ16、接着材18、及び、アンテナパターン14を覆っている。第二保護層22は、基材12の裏面に重ね合わされている。第一保護層20及び第二保護層22は、基材12と同じ長さ及び幅を有している。
【0017】
補強材24は、シート状(板状)であり、第一保護層20の表面に重ね合わされている。この補強材24は、平面視で長方形であり、基材12の長さ方向を長手方向として配置されている。この補強材24は、基材12よりも短い長さであり、かつ、基材12と同一の幅を有している。
【0018】
この補強材24は、基材12の長さ方向の中央側の位置に配置されており、第一保護層20の上からICチップ16及び接着材18を覆っている。本実施形態のRFIDタグ10では、ICチップ16及び接着材18に対して補強材24の中央部24A(長手方向の中央部)が基材12の長さ方向にずれた位置に位置するように、補強材24の長さ及び配置位置が設定されている。つまり、本実施形態のRFIDタグ10では、補強材24の中央部24AがICチップ16及び接着材18上に位置しないようになっている。
【0019】
また、補強材24の長さ及び配置位置が適宜設定されることにより、基材12の長さ方向において、ICチップ16及び接着材18は、補強材24の中央部24Aと補強材24の一方の端部24B(長手方向の一端部)との間に配置されている。
【0020】
上述の基材12、補強材24、第一保護層20、及び、第二保護層22は、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)やPEN(Polyethylene Naphthalate)等の樹脂材料で形成されており、いずれも可撓性を有している。接着材18は、硬化した状態では、基材12、補強材24、第一保護層20、及び、第二保護層22よりも曲げ剛性が高くなっている。基材12、補強材24、第一保護層20、及び、第二保護層22が可撓性を有することにより、RFIDタグ10は、全体的に可撓性を有している。
【0021】
次に、上述のRFIDタグ10の製造方法について説明する。
【0022】
本実施形態のRFIDタグ10の製造方法は、ラミネート工程及び個片化工程を備える。
図3に示されるように、ラミネート工程では、基材12、補強材24、第一保護層20、及び、第二保護層22が貼り合わされる。また、ラミネート工程では、ICチップ16及び接着材18に対して補強材24の中央部24Aが基材12の長さ方向にずれた位置に位置するように、補強材24の配置位置が設定される。なお、ラミネート工程の前工程においては、予めアンテナパターン14が基材12に形成されると共に、ICチップ16が接着材18により基材12に接着される。
【0023】
また、ラミネート工程では、
図4の左図に示されるように、複数のRFIDタグ分の大きさを有する一枚の基材12に、複数のRFIDタグ分のアンテナパターン14が形成されると共に、複数のRFIDタグ分のICチップ16が搭載される。また、一枚の基材12に、複数のRFIDタグ分の第一保護層20及び第二保護層22が貼り合わされると共に、第一保護層20に、複数のRFIDタグ分の補強材24が貼り合わされる。つまり、本実施形態のRFIDタグの製造方法では、複数のRFIDタグの構成部材が一括して貼り合わされる。このようなラミネート工程には、例えば、一般的なラミネータを使用することが可能である。
【0024】
続いて、
図4の左図から右図に示されるように、個片化工程では、各RFIDタグの外形部に相当する部分がハーフカット又はレーザカット等の方法でカットされる。そして、これにより、個片化された複数のRFIDタグ10が製造される。
【0025】
次に、上述のRFIDタグ10に設けられた補強材24の特性について説明する。
【0026】
図5では、補強材24が線分で示されている。
図5に示されるように、補強材24に圧縮応力σが作用する場合、補強材24の線長比がλ>100では、補強材24に座屈による屈曲が発生する。このとき、補強材24は、その中央部24Aで折れ曲がる。補強材24が中央部24Aにて折れ曲がるときの折れ曲がり線は、補強材24の平面視で圧縮方向が作用する方向と垂直な方向に延びる。
【0027】
図6の上図では、補強材24が縦断面図にて示されており、
図6の下図では、補強材24が線分で示されている。
図6に示されるように、補強材24に偏心した圧縮応力σが作用する場合、補強材24の線長比がλ≦100では、補強材24に圧縮破壊による屈曲が発生する。このとき、補強材24は、その中央部24Aで折れ曲がる。
【0028】
このように、補強材24に圧縮応力が作用する場合、補強材24が座屈又は圧縮破壊を起こすと、補強材24が中央部24Aで折れ曲る。
【0029】
図7では、補強材24が縦断面図にて示されている。
図7では、補強材24の両端部に下向きの荷重Fa、Fbが作用し、補強材24の両端部の間に上向きの荷重Fcが作用している。長さLaは、荷重Faの入力点Aから荷重Fcの入力点Cまでの長さであり、長さLbは、荷重Fbの入力点Bから荷重Fcの入力点Cまでの長さである。また、長さLは、長さLaと長さLbの合計であり、荷重Faの入力点Aから荷重Fbの入力点Bまでの長さである。
【0030】
力の釣り合いは、式(1)で示され、荷重Faの入力点A回りの回転モーメントの釣り合いは、式(2)で示される。また、荷重Fcの入力点Cにおいて補強材24に作用する曲げ応力σは、式(3)で示される。そして、式(1)~(3)を解くと、式(4)が得られる。ただし、式(4)におけるZは断面係数である。
【0031】
【0032】
ここで、引張強度又は圧縮強度の小さい方をσbとすると、σ>σbで補強材24が折れ曲がる。これにより、式(5)が得られる。
【0033】
【0034】
式(5)より、荷重Fcが最も小さくなるのは、La=L/2のときである。つまり、La=Lb=L/2で荷重Fcが最小になる。このとき、荷重Fa、Fbも最小になる。結果として、補強材24の中央部24Aに荷重が加わったときに補強材24が一番曲がり易くなる。このように、補強材24に曲げ応力が作用する場合にも、補強材24が中央部24Aで折れ曲る。
【0035】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0036】
図36には、比較例に係るRFIDタグ100が示されている。比較例に係るRFIDタグ100は、上述の本実施形態に係るRFIDタグ10に対して、補強材24の中央部24AがICチップ16及び接着材18上に位置している。
図36の左図には、基材12の長さ方向に沿って補強材24に圧縮応力が作用する場合、
図36の右図には、補強材24の両端部に曲げ応力が作用する場合がそれぞれ示されている。
【0037】
ここで、上述の補強材24の特性について説明した通り、補強材24に圧縮応力が作用する場合、及び、補強材24に曲げ応力が作用する場合のいずれの場合にも、補強材24は、その中央部24Aで折れ曲る。
【0038】
したがって、
図36に示されるように、補強材24の中央部24AがICチップ16及び接着材18上に位置している場合には、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がることに伴い、ICチップ16に曲げ応力が作用し、ICチップ16に割れが生じる虞がある。また、ICチップ16に割れが生じない場合でも、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がることに伴い、接着材18の縁(フィレット部が有る部分と無い部分との境界部)に応力が集中し、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線する虞がある。
【0039】
これに対し、
図1に示される本実施形態に係るRFIDタグ10において、補強材24は、ICチップ16及び接着材18を覆っているものの、その中央部24AがICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向にずれた位置にある。したがって、RFIDタグ10に圧縮応力又は曲げ応力が作用して補強材24が中央部24Aにて折れ曲がっても、ICチップ16に曲げ応力が作用することを抑制することができるので、ICチップ16に割れが生じることを抑制することができる。また、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がっても、接着材18の縁に応力が集中することを抑制することができるので、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線することを抑制することができる。
【0040】
しかも、補強材24の長さ及び配置位置が適宜設定されることにより、基材12の長さ方向において、ICチップ16及び接着材18は、補強材24の中央部24Aと補強材24の一方の端部24B(長手方向の一端部)との間に配置されている。そして、これにより、ICチップ16及び接着材18の全体が補強材24における中央部24Aと一方の端部24Bとの間の部分によって覆われている。したがって、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がっても、ICチップ16及び接着材18を補強材24によって補強した状態を維持することができる。
【0041】
次に、RFIDタグ10の適用例について説明する。
【0042】
本実施形態のRFIDタグ10は、リーダライタ等の外部機器との間で、電波によって非接触で情報のやり取りを行う。つまり、外部機器から発せられた電波は、アンテナパターン14で受信され、アンテナパターン14で受信された信号は、ICチップ16にて処理される。また、ICチップ16から出力された信号は、アンテナパターン14から電波として発信される。
【0043】
この本実施形態のRFIDタグ10は、例えば、物品の管理に用いられる。この物品としては、例えば、店舗等の出入口に置かれるマットがある。この種のマットの裏面は、ゴムによって形成されることがあり、本実施形態のRFIDタグ10は、このマットの裏面のゴムの成型時にゴムに埋め込まれる。ゴムの成形後にゴムが冷却し収縮すると、RFIDタグ10に長さ方向の圧縮応力が作用する。しかしながら、本実施形態のRFIDタグ10では、圧縮応力が作用しても、上述のように、ICチップ16に割れが生じること、及び、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線することを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態のRFIDタグ10が適用される物品としては、例えば、店舗等の掃除に使用されるモップがある。このようなモップは、通常、先端に布製の拭き取り部を有する。本実施形態のRFIDタグ10は、モップの先端の拭き取り部に取り付けられる。拭き取り部で拭き取りを行う際に、拭き取り部に曲げ荷重が作用すると、RFIDタグ10の長さ方向の両端部に曲げ応力が作用する場合がある。しかしながら、本実施形態のRFIDタグ10では、曲げ応力が作用しても、上述のように、ICチップ16に割れが生じること、及び、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線することを抑制することができる。
【0045】
なお、本適用例は、本実施形態のRFIDタグ10が適用される物品の一例を示したものであり、本実施形態のRFIDタグ10は、上記以外の種々の物品に適用可能であることは勿論である。
【0046】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下の変形例において、基材12の表側に第一補強材24-1が配置され、基材12の裏側に第二補強材24-2が配置された例は、参考例である。
【0047】
(第一変形例)
図1に示されるように、上記実施形態では、基材12の表側にのみ補強材24が配置されている。しかしながら、
図8の第一変形例のように、基材12の表側に第一補強材24-1が配置され、基材12の裏側に第二補強材24-2が配置されても良い。
【0048】
なお、
図8に示される第一変形例において、第一補強材24-1及び第二補強材24-2の長手方向の長さは、同一となっている。また、この第一補強材24-1及び第二補強材24-2は、いずれもICチップ16及び接着材18を覆っている。第一補強材24-1及び第二補強材24-2は、ICチップ16及び接着材18に対して中央部24A-1、24A-2(長手方向の中央部)が基材12の長さ方向にずれた位置にある。
【0049】
この第一補強材24-1の中央部24A-1と、第二補強材24-2の中央部24A-2とは、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向の同じ側に位置している。また、基材12の長さ方向において、第一補強材24-1の中央部24A-1と、第二補強材24-2の中央部24A-2とは、互いに同じ位置にある。
【0050】
この第一変形例では、RFIDタグ10が、基材12の表側に配置された第一補強材24-1と、基材12の裏側に配置された第二補強材24-2とを備えている。したがって、ICチップ16及び接着材18を基材12の表側と裏側の両側から補強することができるので、ICチップ16に割れが生じること、及び、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線することをより効果的に抑制することができる。
【0051】
また、第一補強材24-1の中央部24A-1と、第二補強材24-2の中央部24A-2とは、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向の同じ側に位置している。したがって、RFIDタグ10に圧縮応力又は曲げ応力が作用した場合でも、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向の同じ側において、第一補強材24-1及び第二補強材24-2を折り曲げることができる。これにより、ICチップ16及び接着材18上の意図しない位置でRFIDタグ10が折れ曲がることを制限することができる。
【0052】
さらに、基材12の長さ方向において、第一補強材24-1の中央部24A-1と、第二補強材24-2の中央部24A-2とは、互いに同じ位置にある。したがって、RFIDタグ10に圧縮応力又は曲げ応力が作用した場合には、第一補強材24-1及び第二補強材24-2を互いに同じ位置で折り曲げることができる。これにより、ICチップ16及び接着材18上の意図しない位置でRFIDタグ10が折れ曲がることをより効果的に制限することができる。
【0053】
(第二変形例)
上記第一変形例では、第一補強材24-1及び第二補強材24-2の長手方向の長さが同一となっている。しかしながら、
図9の第二変形例のように、第二補強材24-2の方が第一補強材24-1よりも長手方向の長さが長くなっていても良い。
【0054】
なお、
図9に示される第二変形例では、第二補強材24-2の方が第一補強材24-1よりも長手方向の長さが長くなっているが、第一補強材24-1の方が第二補強材24-2よりも長手方向の長さが長くなっていても良い。つまり、第一補強材24-1及び第二補強材24-2は、互いに長手方向の長さが異なっていても良い。
【0055】
(第三変形例)
上記第一及び第二変形例において、第一補強材24-1の中央部24A-1と、第二補強材24-2の中央部24A-2とは、基材12の長さ方向において、互いに同じ位置にある。しかしながら、
図10の第三変形例のように、第一補強材24-1の中央部24A-1と、第二補強材24-2の中央部24A-2とは、基材12の長さ方向に位置がずれていても良い。
【0056】
このように構成されていると、第一補強材24-1が中央部24A-1で折れ曲がることを第二補強材24-2によって抑制することができる。また、第二補強材24-2が中央部24A-2で折れ曲がることを第一補強材24-1によって抑制することができる。
【0057】
(第四変形例)
図8に示されるように、上記第一変形例では、基材12の長さ方向において、第一補強材24-1の一方の端部24B-1と、第二補強材24-2の一方の端部24B-2とが、互いに同じ位置にある。また、基材12の長さ方向において、第一補強材24-1の他方の端部24C-1と、第二補強材24-2の他方の端部24C-2とは、互いに同じ位置にある。
【0058】
しかしながら、
図11の第四変形例のように、基材12の長さ方向において、第一補強材24-1の一方の端部24B-1と、第二補強材24-2の一方の端部24B-2とは、互いに位置がずれていても良い。この
図11に示される第四変形例では、一例として、第一補強材24-1の一方の端部24B-1が、第二補強材24-2の一方の端部24B-2よりも基材12の長さ方向の中央側に位置している。
【0059】
このように構成されていると、第一補強材24-1の一方の端部24B-1が第二補強材24-2の中央部24A-2と一方の端部24B-2との間の部分によって補強される。これにより、例えば、第一補強材24-1の一方の端部24B-1に曲げ応力が集中した場合でも、第一補強材24-1の一方の端部24B-1を起点にRFIDタグ10が折れ曲がることを第二補強材24-2によって抑制することができる。
【0060】
なお、上述の
図9、
図10に示される第二及び第三変形例においても、第一補強材24-1の一方の端部24B-1と、第二補強材24-2の一方の端部24B-2とは、互いに位置がずれている。さらに、上述の
図9、
図10に示される第二及び第三変形例においては、第一補強材24-1の他方の端部24C-1と、第二補強材24-2の他方の端部24C-2も、互いに位置がずれている。
【0061】
このように、第一補強材24-1及び第二補強材24-2の両端部の位置が互いにずれていると、一方の補強材の両端部のうちいずれかの端部に曲げ応力が集中した場合でも、RFIDタグ10が折れ曲がることを他方の補強材によって抑制できる。
【0062】
(第五変形例)
図1に示されるように、上記実施形態では、基材12の裏側に、第二保護層22が設けられている。しかしながら、
図12の第五変形例のように、基材12の裏側には、第二保護層が設けられていなくても良い。また、
図12の第五変形例のように、補強材24は、基材12の裏面、すなわち、ICチップ16が搭載された側と反対側の面に直接重ね合わされても良い。このように、基材12の裏側から第二保護層が省かれていると、RFIDタグ10のコストを低減することができる。
【0063】
(第六変形例)
図1に示されるように、上記実施形態では、基材12の幅方向において、補強材24と基材12の寸法は同一である。しかしながら、
図13に示されるように、基材12の幅方向において、補強材24は、基材12よりも寸法が小さくても良い。このように構成されていると、補強材24の材料費を低減することができ、ひいては、RFIDタグ10のコストを低減することができる。
【0064】
(第七変形例)
図1に示されるように、上記実施形態において、アンテナパターン14におけるICチップ16との接続部を含むアンテナパターン14の全体は、基材12の長さ方向に延びている。しかしながら、
図14の第七変形例のように、アンテナパターン14におけるICチップ16との接続部40は、基材12の幅方向に延び、補強材24は、接続部40を覆っていても良い。
【0065】
このように構成されていると、RFIDタグ10に長さ方向の圧縮応力が作用した場合でも、接続部40の長手方向に圧縮応力が作用することを抑制することができる。また、RFIDタグ10の長さ方向の両端部に曲げ応力が作用した場合でも、接続部40の長手方向の両端部に曲げ応力が作用することを抑制することができる。これにより、アンテナパターン14の断線をより効果的に抑制することができる。
【0066】
(第八変形例)
図1に示されるように、上記実施形態において、ICチップ16及び接着材18は、補強材24の中央部24Aに対して基材12の長さ方向に位置がずれている。しかしながら、
図15の第八変形例のように、ICチップ16及び接着材18は、補強材24の中央部24A(長手方向及び短手方向の中央部)に対してそれぞれ基材12の長さ方向及び幅方向に位置がずれていても良い。つまり、換言すれば、補強材24の中央部24Aは、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向及び幅方向の両方にずれた位置にあっても良い。
【0067】
このように構成されていると、RFIDタグ10に幅方向の圧縮応力が作用したり、RFIDタグ10の幅方向の両端部に曲げ応力が作用したりして、補強材24が短手方向の中央部で折れ曲がっても、ICチップ16に曲げ応力が作用することを抑制できる。これにより、ICチップ16に割れが生じることを抑制することができる。また、補強材24が幅方向の中央部にて折れ曲がっても、接着材18の縁に応力が集中することを抑制することができるので、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線することを抑制することができる。
【0068】
(第九変形例)
図1に示されるように、上記実施形態において、補強材24は、基材12の長さ方向を長手方向として配置されている。しかしながら、
図16の第九変形例のように、補強材24は、基材12の幅方向を長手方向として配置されていても良い。
【0069】
このように構成されていると、補強材24の曲がり易い方向である長手方向と、RFIDタグ10の長さ方向とが直交する。これにより、RFIDタグ10に長さ方向の圧縮応力が作用したり、RFIDタグ10の長さ方向の両端部に曲げ応力が作用したりした場合でも、補強材24が中央部24A(短手方向の中央部)で折れ曲がることを抑制することができる。
【0070】
(第十変形例)
図17に示される第十変形例において、補強材24は、上記実施形態に対し、一対の切欠き42と、一対の切欠き44とを有する。いずれの一対の切欠き42、44も、基材12の幅方向の両側に開放している。一方の一対の切欠き42は、互いに基材12の長さ方向における同じ位置にあり、他方の一対の切欠き44は、互いに基材12の長さ方向における同じ位置にある。また、一方の一対の切欠き42は、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向の一方側にずれた位置に形成されている。これに対し、他方の一対の切欠き44は、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向の他方側にずれた位置に形成されている。
【0071】
このように構成されていると、RFIDタグ10に長さ方向の圧縮応力が作用したり、RFIDタグ10の長さ方向の両端部に曲げ応力が作用したりした場合には、一対の切欠き42を結ぶ線又は一対の切欠き44を結ぶ線上に応力が集中する。これにより、一対の切欠き42を結ぶ線又は一対の切欠き44を結ぶ線を起点に補強材24を折り曲げることができるので、ICチップ16及び接着材18上の意図しない位置でRFIDタグ10が折れ曲がることを制限することができる。
【0072】
また、万が一、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がった場合でも、補強材24の中央部24Aは、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向にずれた位置にある。したがって、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がっても、ICチップ16に曲げ応力が作用すること、接着材18の縁に応力が集中することを抑制することができる。これにより、ICチップ16に割れが生じることを抑制することができると共に、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線することを抑制することができる。
【0073】
なお、
図17に示される第十変形例において、補強材24には、二組の一対の切欠き42、44が形成されている。しかしながら、補強材24には、二組の一対の切欠き42、44のうちいずれか一対の切欠きのみ形成されていても良い。また、
図8の第一変形例における第一補強材24-1及び第二補強材24-2に、上述の一対の切欠き42、44がそれぞれ形成されても良い。
【0074】
(第十一変形例)
図18に示される第十一変形例において、第一補強材24-1及び第二補強材24-2は、上記第一変形例に対し、一対の溝46と、一対の溝48とを有する。いずれの溝46、48も、基材12の幅方向の両側に開放している。一方の一対の溝46は、互いに基材12の長さ方向における同じ位置にあり、他方の一対の溝48は、互いに基材12の長さ方向における同じ位置にある。また、一方の一対の溝46は、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向の一方側にずれた位置に形成されている。これに対し、他方の一対の溝48は、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向の他方側にずれた位置に形成されている。
【0075】
このように構成されていると、RFIDタグ10に長さ方向の圧縮応力が作用したり、RFIDタグ10の長さ方向の両端部に曲げ応力が作用したりした場合には、いずれかの溝46、48に応力が集中する。これにより、いずれかの溝46、48を起点に第一補強材24-1及び第二補強材24-2を折り曲げることができるので、ICチップ16及び接着材18上の意図しない位置でRFIDタグ10が折れ曲がることを制限することができる。
【0076】
また、万が一、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がった場合でも、補強材24の中央部24Aは、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向にずれた位置にある。したがって、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がっても、ICチップ16に曲げ応力が作用すること、接着材18の縁に応力が集中することを抑制することができる。これにより、ICチップ16に割れが生じることを抑制することができると共に、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線することを抑制することができる。
【0077】
なお、
図18に示される第十一変形例において、第一補強材24-1及び第二補強材24-2には、二組の一対の溝46、48が形成されている。しかしながら、第一補強材24-1及び第二補強材24-2には、二組の一対の溝46、48のうちいずれか一対の溝のみ形成されていても良い。また、
図1に示される上記実施形態のように、基材12の表側にのみ配置された補強材24に、上述の溝46、48の少なくとも一方が形成されても良い。
【0078】
(第十二変形例)
第十二変形例では、先ず、ICチップ16の実装方向について検討する。
図19の(A)には、比較例に係るRFIDタグ100が縦断面図にて示されている。このRFIDタグ100では、補強材24の中央部24AがICチップ16及び接着材18上に位置している。
図19の(A)では、補強材24が上に凸に曲がるようにRFIDタグ100に曲げ荷重が作用している。
【0079】
このRFIDタグ100において、補強材24が上に凸に曲がった場合、ICチップ16の両端には、曲げモーメントMが作用する。この曲げモーメントMは、ICチップ16の中央部で最大となり、曲げモーメントMの最大値Mmaxは、式(6)で表される。ただし、qは、補強材24の変形によりICチップ16が受ける単位長さ当たりの力である。また、ICチップ16について、幅をb、長さをL、厚みをhとする。
【0080】
図19の(B)には、ICチップ16が斜視図にて模式的に示されている。
図19の(B)のICチップ16上で太線にて示されるように、ICチップ16に作用する曲げ応力σは、ICチップ16の中央部の表面で最大となり、この曲げ応力の最大値σmaxは、式(7)より、式(8)で表される。ただし、式(7)、(8)におけるZは断面係数である。
【0081】
【0082】
図19の(C)には、式(8)を反映したICチップ16の断面応力状態が示されている。この
図19の(C)より、Lが大きいほど(長手方向に長いほど)応力が大きくICチップ16が割れやすいことが分かる。したがって、ICチップ16は、基材12の幅方向に縦長に実装した方が良いと言える。
【0083】
図20の(A)では、補強材24が下に凸に曲がるようにRFIDタグ100に曲げ荷重が作用している。このRFIDタグ100において、補強材24が下に凸に曲がった場合、ICチップ16の両端には、曲げモーメントMが作用する。
図20の(B)には、ICチップ16が斜視図にて模式的に示されており、
図20の(C)には、ICチップ16に作用する荷重の釣り合い状態が示されている。Pは、ICチップ16の長手方向の中央部に作用する下向きの荷重、Ra、Rbは、ICチップ16の長手方向の両端部に作用する上向きの荷重である。
【0084】
荷重の釣り合いより、荷重Pは、式(9)で示される。また、回転モーメントの釣り合いより、式(10)が導き出される。Lは、荷重Raの入力点から荷重Rbの入力点までの長さであり、xは、荷重Raの入力点から荷重Pの入力点までの長さである。x=xでの曲げモーメントMは、式(11)で示される。MをLで微分すると、式(12)が導き出される。
【0085】
【0086】
式(12)において、x、Lの値にかかわらずdM/dLは単調増加する。したがって、Lが大きいほど曲げモーメントMが大きいと言える。換言すれば、Lが小さいほど曲げモーメントMが小さく、Lが小さいほど曲げ応力が小さいと言うことである。したがって、ICチップ16は、基材12の幅方向に縦長に実装した方が良いと言える。
【0087】
以上のICチップ16の実装方向についての検討より、
図21の第十二変形例では、上記実施形態に対し、ICチップ16が、基材12の幅方向を長手方向として配置されている。
【0088】
このように構成されていると、ICチップ16の曲がり易い方向である長手方向と、RFIDタグ10の長さ方向とが直交する。これにより、RFIDタグ10に長さ方向の圧縮応力が作用したり、RFIDタグ10の長さ方向の両端部に曲げ応力が作用したりした場合でも、ICチップ16が折れ曲がることを抑制することができる。
【0089】
(第十三変形例)
第十三変形例では、先ず、補強材24について座屈を起こさない寸法を検討する。
図22には、比較例に係るRFIDタグ100が斜視図にて示されている。Pは、補強材24の両端部に作用する圧縮荷重であり、式(13)で示される。σは、補強材24の長手方向に作用する圧縮応力である。以下、補強材24について、線長比をλ、長さをL、厚みをh、幅をb、ヤング率をE、断面二次モーメントをIとする。
【0090】
線長比λが式(14)であるとき、オイラーの式より圧縮荷重Pについては式(15)が導き出され、Lが式(16)を満たす場合には、補強材24は座屈を起こさない。
【0091】
【0092】
続いて、補強材24について圧縮破壊を起こさない寸法を検討する。
図23には、比較例に係るRFIDタグ100の要部が縦断面図にて示されている。Pは、補強材24の長手方向の両端部の裏面側に作用する偏心した圧縮荷重であり、上述の式(13)で示される。引張応力は、補強材24の表面中央部で最大となり、この引張応力の最大値σrは、式(17)で示される。また、圧縮応力は、補強材24の裏面中央部で最大となり、この圧縮応力の最大値σrは、式(18)で示される。
【0093】
以下、補強材24について、線長比をλ、長さをL、厚みをhとする。また、補強材24について、補強材24に作用する曲げモーメントをM、断面係数をZ、補強材24の裏面中央部に作用する圧縮応力を4σ、補強材24の表面中央部に作用する引張応力を2σ、圧縮強度をσc、引張強度をσbとする。
【0094】
線長比λが式(19)であるとき、応力が最大になる補強材24の表面中央部にて式(20)を満たす場合、すなわち、式(21)、式(22)を満たす場合には、偏心した圧縮荷重が作用しても曲げ応力により補強材24が屈曲しない。つまり、線長比λが式(19)であるとき、式(21)、式(22)を満たす場合には、補強材24は圧縮破壊を起こさない。
【0095】
【0096】
以上の補強材24についての座屈を起こさない寸法の検討及び圧縮破壊を起こさない寸法の検討より、第十三変形例では、
図1に示される上記実施形態に対し、式(15)、式(16)を満たす補強材24の長さLと厚みhが適用される。又は、第十三変形例では、
図1に示される上記実施形態に対し、式(19)、式(21)、式(22)を満たす補強材24の長さLと厚みhが適用される。
【0097】
式(15)、式(16)を満たす補強材24の長さLと厚みhが適用されると、補強材24の座屈を回避することができる。一方、式(19)、式(21)、式(22)を満たす補強材24の長さLと厚みhが適用されると、補強材24の圧縮破壊を回避することができる。
【0098】
また、万が一、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がった場合でも、補強材24の中央部24Aは、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向にずれた位置にある。したがって、補強材24が中央部24Aにて折れ曲がっても、ICチップ16に曲げ応力が作用すること、接着材18の縁に応力が集中することを抑制することができる。これにより、ICチップ16に割れが生じることを抑制することができると共に、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線することを抑制することができる。
【0099】
(第十四変形例)
図24に示される第十四変形例において、アンテナパターン14は、上記実施形態に対し、補強材24の長手方向両側の端部24B、24Cから導出された導出部50を有している。また、補強材24における上述の端部24B、24Cには、補強材24の平面視で導出部50と重なる位置に切欠き状の逃げ部52が形成されている。
【0100】
このように構成されていると、RFIDタグ10が補強材24の端部24B、24Cを起点に曲げ変形した場合でも、補強材24とアンテナパターン14(導出部50)との干渉を抑制することができる。これにより、アンテナパターン14の断線を抑制することができる。
【0101】
(第十五変形例)
図25に示される第十五変形例では、上記第十四変形例に対し、アンテナパターン14における導出部50とICチップ16との間の部分54が、基材12の幅方向に延びている。導出部50は、アンテナパターン14における導出部50とICチップ16との間の部分54と繋がっている。この導出部50は、補強材24の中央部24A(短手方向の中央部)に対して基材12の幅方向にずれた位置に配置されている。また、切欠き状の逃げ部52も、導出部50に対応して、補強材24の中央部24Aに対して基材12の幅方向にずれた位置に形成されている。
【0102】
このように構成されていても、RFIDタグ10が補強材24の端部24B、24Cを起点に曲げ変形した場合には、補強材24とアンテナパターン14(導出部50)との干渉を抑制することができる。これにより、アンテナパターン14の断線を抑制することができる。
【0103】
また、導出部50が、補強材24の中央部24Aに対して基材12の幅方向にずれた位置に配置されているので、補強材24が中央部24A(短手方向の中央部)で折れ曲がっても、導出部50に捩れや折れ等が生じることを抑制することができる。したがって、このことによっても、アンテナパターン14の断線を抑制することができる。
【0104】
(第十六変形例)
図26に示される第十六変形例では、基材12の長さ方向において、基材12の中央部12Aと、補強材24の中央部24Aとは、互いに同じ位置にある。また、基材12の中央部12Aと、補強材24の中央部24Aとは、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向にずれた位置にある。
【0105】
このように構成されていると、RFIDタグ10に長さ方向の圧縮応力が作用したり、RFIDタグ10の長さ方向の両端部に曲げ応力が作用したりした場合には、基材12と補強材24とがICチップ16及び接着材18からずれた同じ位置で屈曲する。これにより、ICチップ16に割れが生じること、接着材18の縁においてアンテナパターン14が断線することをより効果的に抑制することができる。
【0106】
(その他の変形例)
上記実施形態において、補強材24は、平面視で長方形であるが、
図27に示されるように、補強材24は、平面視で円形でも良い。このように、補強材24が平面視で円形であると、例えば、基材12の長さ方向からの力F1と、基材12の長さ方向及び幅方向に対して傾斜する方向からの力F2とが補強材24に作用した場合でも、補強材24において力が分散する。これにより、補強材24の折れ曲がりを抑制することができる。
【0107】
また、補強材24は、平面視で長方形及び円形以外の形状、例えば、正方形、楕円形、多角形等でも良い。
【0108】
また、上記実施形態において、基材12は、平面視で長方形であるが、
図28に示されるように、基材12は、平面視で正方形でも良い。基材12が平面視で正方形である場合、基材12の長さ方向は、正方形の四つの辺のうち一の辺の長さ方向に相当する。
【0109】
また、
図29に示されるように、基材12は、平面視で円形でも良い。基材12が平面視で円形である場合、基材12の長さ方向は、円形の径方向に相当する。
【0110】
また、
図30に示されるように、基材12は、平面視で楕円形でも良い。基材12が平面視で楕円形である場合、基材12の長さ方向は、楕円形の長手方向に相当する。また、基材12は、平面視で上記以外の他の形状でも良い。
【0111】
また、上記実施形態では、
図1に示されるように、基材12が、第一保護層20及び第二保護層22を有するが、基材12から第一保護層20及び第二保護層22が省かれても良い。
【0112】
また、上記実施形態では、
図1に示されるように、補強材24は、第一保護層20(ラミネート層)の表面に重ね合わされている。しかしながら、
図31に示されるように、補強材24は、基材12の裏面に重ね合わされると共に、第二保護層22(ラミネート層)の内側に配置されていても良い。
【0113】
図31に示されるように、補強材24が基材12の裏面に重ね合わされると共に第二保護層22の内側に配置される場合でも、例えば、
図32に示されるように、RFIDタグ10をラミネート工程により製造することが可能である。
【0114】
このように、補強材24が第二保護層22の内側(基材12と第二保護層22との間)に配置されていると、補強材24が第二保護層22によって覆われるので、補強材24が剥がれることを抑制することができる。
【0115】
また、
図33に示されるように、基材12の幅方向において、補強材24の寸法が基材12の寸法よりも小さくされることにより、平面視にて四角形状の補強材24の四辺が共に第二保護層22の内側に収まっていても良い。
【0116】
このように、補強材24の四辺が共に第二保護層22の内側に収まっていると、補強材24全体が第二保護層22によって覆われるので、補強材24が剥がれることをより一層効果的に抑制することができる。
【0117】
また、
図31に示される変形例において、補強材24は、基材12の裏面に重ね合わされると共に、第二保護層22の内側に配置されている。しかしながら、
図34に示されるように、補強材24は、基材12の表面に重ね合わされると共に、第一保護層20の内側に配置されていても良い。
【0118】
また、
図35に示されるように、基材12の表面に第一補強材24-1が重ね合わされ、基材12の裏面に第二補強材24-2が重ね合わされても良い。そして、第一補強材24-1は、第一保護層20の内側に配置され、第二補強材24-2は、第二保護層22の内側に配置されても良い。
【0119】
なお、上述の複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜、組み合わされても良い。
【0120】
以上、本願の開示する技術の一実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0121】
次に、参考例について説明する。
【0122】
図17に示される第十変形例において、補強材24の中央部24Aは、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向にずれた位置にある。しかしながら、参考例に係るRFIDタグでは、第十変形例に対し、補強材24の中央部24AがICチップ16及び接着材18上に位置していても良い。つまり、補強材24の中央部24AがICチップ16及び接着材18上に位置する構成において、補強材24には、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向にずれた位置に一対の切欠き42、44の少なくとも一方が形成されても良い。
【0123】
同様に、補強材24の中央部24AがICチップ16及び接着材18上に位置する構成において、補強材24には、ICチップ16及び接着材18に対して基材12の長さ方向にずれた位置に
図18に示される溝46、48の少なくとも一方が形成されても良い。
【0124】
また、補強材24の中央部24AがICチップ16及び接着材18上に位置する構成において、上述の複数の変形例のうち適用可能なものが適宜適用されても良い。
【0125】
なお、上述の本願の開示する技術の一実施形態(参考例を除く)に関し、更に以下の付記を開示する。
【0126】
(付記1)
可撓性を有するシート状の基材と、
前記基材に形成されたアンテナパターンと、
前記基材に搭載されると共に、前記アンテナパターンと接続されたICチップと、
前記ICチップと前記基材とを接着する接着材と、
前記ICチップ及び前記接着材を覆うと共に、前記ICチップ及び前記接着材に対して中央部が前記基材の長さ方向にずれた位置にある補強材と、
を備えるRFIDタグ。
(付記2)
前記基材の長さ方向において、前記ICチップ及び前記接着材は、前記補強材の中央部と前記補強材の一方の端部との間に配置されている、
付記1に記載のRFIDタグ。
(付記3)
前記補強材として、前記基材の表側に配置された第一補強材と、前記基材の裏側に配置された第二補強材とを備える、
付記1又は付記2に記載のRFIDタグ。
(付記4)
前記第一補強材の中央部と、前記第二補強材の中央部とは、前記ICチップ及び前記接着材に対して前記基材の長さ方向の同じ側に位置している、
付記3に記載のRFIDタグ。
(付記5)
前記基材の長さ方向において、前記第一補強材の中央部と、前記第二補強材の中央部とは、互いに同じ位置にある、
付記4に記載のRFIDタグ。
(付記6)
前記基材の長さ方向において、前記第一補強材の中央部と、前記第二補強材の中央部とは、互いに位置がずれている、
付記4に記載のRFIDタグ。
(付記7)
前記基材の長さ方向において、前記第一補強材の一方の端部と、前記第二補強材の一方の端部とは、互いに位置がずれている、
付記4~付記6のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記8)
前記補強材は、前記基材における前記ICチップが搭載された側と反対側の面に重ね合わされている、
付記1又は付記2に記載のRFIDタグ。
(付記9)
前記アンテナパターンにおける前記ICチップとの接続部は、前記基材の幅方向に延び、
前記補強材は、前記接続部を覆っている、
付記1~付記9のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記10)
前記補強材の中央部は、前記ICチップ及び前記接着材に対して前記基材の長さ方向及び幅方向にずれた位置にある、
付記1~付記10のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記11)
前記補強材は、前記基材の幅方向を長手方向として配置されている、
付記1~付記11のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記12)
前記補強材は、前記基材の幅方向の両側に開放する一対の切欠きを有し、
前記一対の切欠きは、前記ICチップ及び接着材に対して前記基材の長さ方向にずれた位置に形成されると共に、互いに前記基材の長さ方向における同じ位置にある、
付記1~付記12のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記13)
前記補強材は、前記基材の幅方向の延びると共に、前記ICチップ及び接着材に対して前記基材の長さ方向にずれた位置に形成された溝を有する、
付記1~付記13のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記14)
前記ICチップは、前記基材の幅方向を長手方向として配置されている、
付記1~付記14のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記15)
前記補強材について、線長比をλ、長さをL、厚みをh、ヤング率をE、前記基材の長さ方向に沿って前記補強材に作用する圧縮応力をσとした場合に、式(1)、式(2)を満足する、
付記1~付記15のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記16)
前記補強材について、線長比をλ、長さをL、厚みをh、前記補強材の裏面中央部に作用する圧縮応力を4σ、前記補強材の表面中央部に作用する引張応力を2σ、圧縮強度をσ
c、引張強度をσ
bとした場合に、式(3)、式(4)、式(5)を満足する、
付記1~付記15のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記17)
前記アンテナパターンは、前記基材の長さ方向における前記補強材の端部から導出された導出部を有し、
前記補強材における前記端部には、前記補強材の平面視で前記導出部と重なる位置に切欠き状の逃げ部が形成されている、
付記1~付記17のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記18)
前記導出部は、前記補強材の中央部に対して前記基材の幅方向にずれた位置に配置されている、
付記1~付記18のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記19)
前記基材の長さ方向において、前記基材の中央部と、前記補強材の中央部とは、互いに同じ位置にある、
付記1~付記19のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
(付記20)
前記補強材は、平面視で四角形、円形、長方形、正方形、円形、及び、楕円形のいずれかである、
付記1~付記19のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【符号の説明】
【0127】
10 RFIDタグ
12 基材
14 アンテナパターン
16 ICチップ
18 接着材
20 第一保護層
22 第二保護層
24 補強材
24A 補強材の中央部
24-1 第一補強材
24-2 第二補強材
24A-1 第一補強材の中央部
24A-2 第二補強材の中央部
40 接続部
42、44 切欠き
46、48 溝
50 導出部
52 逃げ部