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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】官能化繊維性材料
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20220216BHJP
   D06P 5/22 20060101ALI20220216BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20220216BHJP
【FI】
D06M13/463
D06P5/22 B
D06M101:06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020531561
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018046765
(87)【国際公開番号】W WO2019036508
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】62/545,616
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510132406
【氏名又は名称】エイチビーアイ ブランデッド アパレル エンタープライゼズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】HBI Branded Apparel Enterprises,LLC
【住所又は居所原語表記】1000 East Hanes Mill Road 27105 Winston-Salem NC, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】519457546
【氏名又は名称】コットン インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】COTTON INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】6399 Weston Parkway Cary, North Carolina 27513 United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】520056202
【氏名又は名称】ノースカロライナ ステート ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】NORTH CAROLINA STATE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】2701 Sullivan Drive Raleigh, North Carolina 27695-7514 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 美代子
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100215049
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン,ハロルド エス.
(72)【発明者】
【氏名】シムジク,マルゴザータ
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン,キース
(72)【発明者】
【氏名】ファレル,マシュー ジェイ.
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-281079(JP,A)
【文献】特表2015-529289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 1/00-7/00
D06M 10/00-23/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヒドロキシル基を備える繊維性材料を官能化する方法であって:
官能化された繊維性材料を得るために、前記繊維性材料を式Iの化合物と反応させるステップであって、Xは、式Iの第四級アンモニウムカチオンに対する一価の対アニオンであり、Halは、ハロゲン原子である、前記反応させるステップ;を備える、
繊維性材料を官能化する方法。
【請求項2】
Halは、Cl及びBrから選択される、
請求項1に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項3】
Xは、Cl及びBrから選択される、
請求項1に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項4】
前記繊維性材料は、セルロース系繊維性材料を備える、
請求項1に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項5】
前記セルロース系繊維性材料は、天然繊維性材料である、
請求項4に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項6】
前記天然繊維性材料は、綿を備える、
請求項5に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項7】
前記セルロース系繊維性材料は、合成繊維性材料である、
請求項4に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項8】
前記合成繊維性材料は、レーヨンを備える、
請求項7に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項9】
前記反応させるステップは、水性溶媒中で行われる、
請求項1に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項10】
前記反応させるステップは、Halが結合している炭素原子と前記繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子との間に共有結合を形成するステップを備える、
請求項1に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項11】
前記官能化された繊維性材料は、式IIの少なくとも1つの部分を備え、
aは、前記繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子への式IIの部分の結合点を表す、
請求項1に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項12】
前記反応させるステップは、塩基の存在下で行われる、
請求項1に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項13】
前記式Iの化合物に対する前記塩基のモル比は、1:1から2:1である、
請求項12に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項14】
前記塩基は、Mg(OH) 、Ba(OH) 、Ca(OH) 、K CO 、CaCO 、BaCO 、Na CO 、MgCO 、Li CO 、Cs CO 、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、CaO、MgO、NaOH、CsOH、LiOH、又はKOHからなる群から選択される少なくとも1つである、
請求項13に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項15】
前記反応させるステップは、室温で行われる、
請求項1に記載の繊維性材料を官能化する方法。
【請求項16】
複数のヒドロキシル基を備える繊維性材料であって、
前記繊維性材料の少なくとも1つのヒドロキシル基が式IIの部分で官能化され、
Xは、式IIの第四級アンモニウムカチオンに対する一価の対アニオンであり、
aは、前記繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子への式IIの部分の結合点を表す、
繊維性材料。
【請求項17】
請求項16に記載の繊維性材料を染色する方法であって:
前記繊維性材料を染料と接触させるステップ;を備える、
繊維性材料を染色する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2018年8月15日に出願され、「FUNCTIONALIZED FIBROUS MATERIAL」と題された米国特許出願第62/545,616号の利益を請求し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、カチオン化された繊維性材料、特にカチオン化されたセルロース系繊維を含有する繊維性材料に関する。
【背景技術】
【0003】
セルロース系繊維を含有する布地の染色は、多種多様な商用織物製品をもたらす重要な化学工業プロセスである。染色は、織物加工の中で最もコストのかかるステップである。典型的な染色手順は大量の水とエネルギーを使って、相当量の化学廃棄物を生ずる。更に、セルロース系繊維は水に接触すると、ヒドロキシル基のイオン化によって負電荷をわずかに発生する。これは、多くの染料分子(反応染料を含む)が負電荷を持つアニオン性基(例えば、COH又はSOH)を含有することが原因で、セルロース系繊維の染色の効率を低下させてしまう。これを克服するため、従来の染色プロセスでは、グラウバ塩などの電解質を大量に使って、染料の負電荷と、繊維表面上で生成される負電荷との間の反発力を打ち消すようにしている。グラウバ塩を用いる場合、従来の染色システムでは約60%の染料が消費される。染色後に染浴に残存する電解質は、高度に着色されて塩分を含んだ染浴の排出を通じて環境を汚染する。更に、豊富なヒドロキシルイオンは、普通に、反応染料の著しい加水分解を引き起こす。
【発明の概要】
【0004】
第1の一般的な態様において、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化するステップは、官能化された繊維性材料を得るために、繊維性材料を式Iの化合物と反応させるステップを含む。
式I中、Xは、第四級アンモニウムカチオンに対する一価の対アニオン(カウンターアニオン)であり、Halは、ハロゲン原子である。
【0005】
第1の一般的な態様の実施は、下記の特徴のうちの1つ又は複数を含むであろう。
【0006】
Halは、Cl又はBrであってもよく、Xは、Cl又はBrであってもよい。繊維性材料は、セルロース系繊維性材料を含んでもよい。場合によっては、セルロース系繊維性材料は、綿などの天然繊維性材料を含む。特定の場合、セルロース系繊維性材料は、レーヨンなどの合成繊維性材料である。
【0007】
反応は、水などの水性溶媒中でなされてもよい。態様によっては、反応は、Halが結合している炭素原子と、繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子との間に共有結合を生じる。官能化された繊維性材料は式IIの少なくとも一つの部分を含んでもよい。
式II中、aは、繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子との結合点を表す。
【0008】
反応は、塩基の存在下でなされてもよい。場合によっては、式Iの化合物に対する塩基の比は、約1:1から約2:1である。塩基は、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリであってもよい。反応は、ほぼ室温でなされてもよい。
【0009】
第2の一般的な態様は、第1の一般的な態様のプロセスのいずれか1つによって調製される官能化された繊維性材料を含む。
【0010】
第3の一般的な態様において、繊維性材料は、複数のヒドロキシル基を有し、繊維性材料の少なくとも1つのヒドロキシル基は、式IIの部分で官能化される。
式II中、Xは、式Iの第四級アンモニウムカチオンに対する一価の対アニオンであり、aは、繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子との、式IIの部分の結合点を表す。
【0011】
第3の一般的な態様の実施は、下記の特徴のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0012】
Xは、Cl又はBrであってもよい。繊維性材料は、セルロース系繊維性材料を含んでもよい。場合によっては、セルロース系繊維性材料は、綿などの天然繊維性材料を含む。特定の場合、セルロース系繊維性材料は、レーヨンなどの合成繊維性材料である。
【0013】
繊維性材料の臭気は、検知の閾値を下回る臭気であってもよい、又は、不快度が約3又は3未満の臭気であってもよい。
【0014】
第4の一般的な態様において、繊維性材料を染色するステップは、繊維性材料を染料と接触させるステップを含む。
【0015】
第4の一般的な態様の実施は、下記の特徴のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0016】
場合によっては、染料は反応染料である。特定の場合、染料は酸性染料である。
【0017】
本願での使用のための方法及び材料について本明細書で述べるが、当該技術分野で公知であるその他の適切な方法及び材料も使用できる。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定を意図するものではない。本明細書で言及する出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は全て、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含め、本明細書が優先する。
【0018】
本願の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明及び図面並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、N-グリシジル3-(ジメチルアミノ)プロパン-1-オール(グリシドキシDMAP)の陽イオンエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI MS)スペクトルを示すプロット図である。
図2図2は、グリシドキシDMAPの分子イオン領域についての陽イオンESI MSスペクトルを示すプロット図である。
図3図3は、5%エピハロヒドリン(EPI)を用いて得られた、生成物、DMAP+HCl、及びEPIのH核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示すプロット図である。
図4図4は、5%EPIを用いて得られた、生成物、100℃で10%EPIを用いて得られた生成物、及び60℃で10%EPIを用いて得られた生成物のH NMRスペクトルを示すプロット図である。
図5図5は、EPI、100℃で20%EPIを用いて得られた生成物、及び60℃で20%EPIを用いて得られた生成物のH NMRスペクトルを示すプロットである。
図6図6は、NaOHと、3-クロロ-2-ヒドロキシ-N-(3-ヒドロキシプロピル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウムクロリド(CHPDMAP)との2:1混合物を用いた染色;NaOHと、(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(CHPTAC)との2:1混合物を用いた染色;及び事前のカチオン化なしでの染色;の後に得られた綿布地サンプルの色強度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
綿繊維などの繊維性材料のカチオン化は、繊維上に存在する正電荷を原因の少なくとも一部として、染料の固定を増やす。カチオン化された綿は、綿織物の染色に必要な化学物質の量を大幅に減らすことができる(例えば、最大50%)ので、生態的効果が高い。カチオン化は、色強度を変えたり上昇させたりすることなく、染料の使用を増やす。カチオン性繊維性材料は、従来の染色綿と比較して、高い色収率及び堅牢度特性を達成しつつ、より少ないエネルギー使用で、環境への影響を抑え、より短かい時間で染色できるので、織物業界に大きな利点をもたらす。
【0021】
実施の形態によっては、本開示は、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化する方法を提供し、本方法は、官能化された繊維性材料を得るために、繊維性材料を式Iの化合物と反応させるステップを含む。
式中、Xは、式Iの第四級アンモニウムカチオンの一価の対アニオンであり、Halはハロゲン原子である。
【0022】
実施の形態によっては、Halは、Cl、Br、又はIである。実施の形態によっては、Halは、Cl又はBrである。実施の形態によっては、Halは、Clである。
【0023】
実施の形態によっては、Xは、式Iの化合物のアンモニウムカチオンの正電荷と釣りあう任意の対アニオンである。実施の形態によっては、Xは、Cl、Br、I、F、OH、NO、HCO、HSO、又はClOである。実施の形態によっては、Xは、Cl、Br、又はIである。実施の形態によっては、Xは、Cl又はBrである。実施の形態によっては、Xは、Clである。
【0024】
実施の形態によっては、式Iの化合物は、下記の化合物のいずれか1つから選択される。
【0025】
実施の形態によっては、式Iの化合物は、下記の構造を持つ、3-クロロ-2-ヒドロキシ-N-(3-ヒドロキシプロピル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウムクロリド(CHPDMAP)である。
【0026】
実施の形態によっては、繊維性材料は、セルロース系繊維性材料を含む。このセルロース系繊維性材料は、天然繊維性材料(例えば、綿、麻、竹、大麻、ジュート、又は亜麻などの植物ベースの天然セルロース系繊維性材料)であってもよい。実施の形態によっては、セルロース系繊維性材料は、麻を含む。実施の形態によっては、セルロース系繊維性材料は、綿を含む。実施の形態によっては、綿は、漂白されている。実施の形態によっては、綿は、漂白されていない。綿は、約50%から約100%のセルロース(例えば、約60%から約99%、約70%から約95%、約75%から約95%、約80%から約95%、又は約85%から約95%のセルロース)を含んでもよい。場合によっては、綿は、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、又は約95%のセルロースを含む。ある特定の場合において、綿を含む繊維性材料の重量は、約50g/mから約200g/m、約60g/mから約180g/m、約75g/mから約165g/m、約100g/mから約160g/m、又は約125g/mから約155g/mである。更に他の場合、綿を含む繊維性材料の重量は、125g/m、約135g/m、約140g/m、約145g/m、約150g/m、約155g/m、約160g/m、又は約165g/mである。
【0027】
実施の形態によっては、セルロース系繊維性材料は、合成繊維性材料(例えば、木材パルプなどの精製セルロースから調製される合成セルロース系繊維性材料)である。合成セルロース系繊維は、レーヨン(例えば、ビスコース、モダル、テンセル、もしくはリヨセル)、又は、セルロース系繊維性材料(例えば、本明細書に記載の天然もしくは合成セルロース系繊維性材料)と、合成材料(例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリロニトリル、アクリル、もしくはナイロン)とのブレンドであってもよい。場合によっては、繊維性材料は、綿とポリエステルとのブレンド(例えば、90/10、80/20、70/30、65/35、60/40、50/50、40/60、35/65、30/70、20/80、又は10/90である綿/ポリエステルブレンド)である。特定の場合において、繊維性材料は、綿とビスコースとのブレンド(例えば、90/10、80/20、70/30、65/35、60/40、50/50、40/60、35/65、30/70、20/80、又は10/90である綿/ビスコースブレンド)である。更に他の場合、繊維性材料は、綿と麻とのブレンド(例えば、90/10、80/20、70/30、65/35、60/40、50/50、40/60、35/65、30/70、20/80、又は10/90である綿/麻ブレンド)である。
【0028】
繊維性材料は、織布材料、不織布材料、又は編布(ニット)材料の形態であってもよい。一例として、繊維性材料は、糸(ヤーン)又はフィラメントである。別の例では、繊維性材料は織られており、織布の織り方は、平織り、ポプリン、オックスフォード、ピンポイント、フィル・ア・フィル、綾織、杉綾、ドビー、フランネル、シヤーサッカ(シアサッカ)、又はサテンである。
【0029】
実施の形態によっては、反応は、塩基(例えば、有機塩基又は無機塩基)の存在下でなされる。実施の形態によっては、塩基は、Mg(OH)、Ba(OH)及びCa(OH)から選択される無機塩基である。実施の形態によっては、塩基は、金属炭酸塩(例えば、KCO、CaCO、BaCO、NaCO、MgCO、LiCO又はCsCO)などの無機塩基である。実施の形態によっては、塩基は、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムである。実施の形態によっては、塩基は、CaO又はMgOである。実施の形態によっては、塩基は、水酸化アルカリ(例えば、NaOH、CsOH、LiOH、又はKOH)である。実施の形態によっては、塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)である。
【0030】
実施の形態によっては、式Iの化合物に対する塩基のモル比は、約1:100から約100:1、約1:75から約75:1、約50:1から約1:50、約1:25から約1:25、約1:10から約10:1、約1:5から約2:1、約1:2から約4:1、又は、約1:1から約2:1である。実施の形態によっては、式Iの化合物に対する塩基のモル比は、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、又は約1:5である。実施の形態によっては、式Iの化合物に対する塩基のモル比は、約1:1である。実施の形態によっては、式Iの化合物に対する塩基のモル比は、約2:1である。
【0031】
実施の形態によっては、塩基はNaOHであり、式Iの化合物はCHPDMAPであり、CHPDMAPに対するNaOHのモル比は約1:5から約5:1、約1:4から約4:1、約1:3から約3:1、又は、約1:1から約2:1である。実施の形態によっては、CHPDMAPに対するNaOHのモル比は、約1:1である。他の実施の形態において、CHPDMAPに対するNaOHのモル比は、約2:1である。
【0032】
実施の形態によっては、反応は、溶媒中で行われる。実施の形態によっては、反応は、水性溶媒中で行われる。実施の形態によっては、反応は、非水溶媒中で行われる。実施の形態によっては、反応は、水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、及びプロピレングリコールから選択される溶媒中で行われる。実施の形態によっては、反応は、アルコールと水の混合物(例えば、20/80、30/70、50/50、70/30、又は80/20の、水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、又はプロピレングリコールとの混合物)中で行われる。実施の形態によっては、反応は、アセトン中で行われる。実施の形態によっては、反応は、水中で行われる。
【0033】
実施の形態によっては、反応は、約2分から約3日、約5分から約2日、約10分から約2日、約20分から約2日、約30分から約24時間、約45分から約20時間、約1時間から約18時間、約1.5時間から約15時間、約2時間から約12時間、約3時間から約10時間、又は約4時間から約8時間の期間行われる。実施の形態によっては、反応は、約2分、約3分、約5分、約6分、約8分、約10分、約20分、約30分、約45分、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約15時間、約18時間、約24時間、又は約48時間の間行われる。
【0034】
実施の形態によっては、反応は、高温で行われる。実施の形態によっては、反応は、周囲温度で行われる。実施の形態によっては、反応は、約15℃から約100℃、約25℃から約90℃、約30℃から約80℃、約20℃から約80℃、約25℃から約80℃、約20℃から約75℃、約20℃から約70℃、約20℃から約65℃、約20℃から約60℃、約20℃から約55℃、約20℃から約50℃、約20℃から約45℃、約20℃から約40℃、約20℃から約35℃、又は約20℃から約30℃の温度で行われる。実施の形態によっては、反応は、15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約60℃、又は約80℃で行われる。実施の形態によっては、反応は、約25℃で行われる。実施の形態によっては、反応は、室温で行われる。
【0035】
実施の形態によっては、繊維性材料は綿を含み、反応は塩基の存在下で行われ、式Iの化合物はCHPDMAPであり、塩基はNaOHであり、CHPDMAPに対するNaOHの比は、約1:1から約2:1であり、反応は溶媒中で行われ、溶媒は水であり、反応は室温で約24時間行われる。
【0036】
実施の形態によっては、反応は、Halが結合している炭素原子と繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子との間に共有結合を形成するステップを含む。実施の形態によっては、反応は、式Iの化合物中のC-Hal結合を切断し、Halが結合していた炭素原子と繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子との間に共有結合を形成するステップを含む。実施の形態によっては、反応は、式IIの少なくとも1つの部分を含む官能化された繊維性材料を生じる。
式中、Xは、本明細書で述べた通りであり、aは、繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子への式IIの部分の結合点を表す。
【0037】
実施の形態によっては、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化する方法は、パッド-バッチプロセス、排気固着プロセス、パッド-スチームプロセス、パッド-ドライ-キュアプロセス、又は当該技術分野で一般に公知である任意の他の布地処理プロセスとして実行される(例えば、先に述べたプロセスのいずれか1つを、例えば、US7,201,778に、又は、Wang他のCarbohydrate Polymers、78号(2009年)、602~608ページに記載されているように行ってもよい)。
【0038】
実施の形態によっては、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化する方法は、(i)式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)と塩基(例えば、NaOH)とを含む反応混合物を調製するステップと;(ii)本明細書で述べるような官能化された繊維性材料を得るために繊維性材料を(i)の反応混合物と接触させるステップと;を含む。実施の形態によっては、反応混合物を調製するステップ(i)は、式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)を含む溶液と塩基(例えば、NaOH)の溶液とを混合するステップを含む。実施の形態によっては、式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の溶液は、式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の濃度が、約10wt.%から約80wt.%、約20wt.%から約75wt.%、約25wt.%から約75wt.%、約30wt.%から約70wt.%、約40wt.%から約70wt.%である水溶液である、又は、式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の溶液は、式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の濃度が、約25wt.%、約30wt.%、約35wt.%、約40wt.%、約45wt.%、約50wt.%、約55wt.%、約60wt.%、若しくは約65wt.%である水溶液である。実施の形態によっては、塩基(例えば、NaOH)の溶液は、塩基(例えば、NaOH)の濃度が、約5wt.%から約50wt.%、約10wt.%から約45wt.%、約10wt.%から約40wt.%、約15wt.%から約40wt.%、又は、約15wt.%から約30%である水溶液である。実施の形態によっては、塩基(例えば、NaOH)の溶液は、塩基(例えば、NaOH)の濃度が、約5wt.%、約10wt.%、約15wt.%、約20wt.%、約25wt.%、又は30wt.%の水溶液である。実施の形態によっては、接触させるステップは、約100:1から約1:1、約90:1から約2:1、約80:1から約3:1、約70:1から約4:1、約60:1から約5:1、約50:1から約6:1、約40:1から約7:1、約30:1から約8:1、約20:1から約9:1、又は、約15:1から約10:1である液体対繊維比で行われる。実施の形態によっては、接触させるステップは、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約8:1、約10:1、約15:1、約20:1、又は約30:1の液体対繊維比で行われる。実施の形態によっては、式Iの化合物がCHPDAMPである場合、式Iの化合物の溶液と塩基の溶液とを混合するステップは、式1の化合物を形成する。
式中、Xは、本明細書で述べる通りであり、式1の化合物は、繊維性材料の少なくとも1つのヒドロキシル基と更に反応する。
【0039】
実施の形態によっては、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化する方法は、(i)繊維性材料を塩基(例えば、NaOH)で処理するステップと;(ii)式Iの化合物と塩基を含む反応混合物を調製するステップ(例えば、本明細書で述べるように)と;(iii)本明細書で述べるような官能化された繊維性材料を得るために、塩基で処理した繊維性材料をステップ(ii)の反応混合物と接触させるステップと;を含む。実施の形態によっては、処理するステップは、塩基の溶液(例えば、本明細書で述べるような塩基溶液のいずれか1つ)を、繊維性材料へ含浸させるステップを含む。実施の形態によっては、含浸させるステップは、約1分から約24時間、約1分から約18時間、約1分から約12時間、約1分から約6時間、約1分から約1時間、約2分から約45分、約2分から約20分、又は約2分から約15分の期間行われる。実施の形態によっては、含浸させるステップは、約1分、約2分、約3分、約5分、約7分、約10分、約12分、約15分、約20分、約30分、又は約1時間の間行われる。
【0040】
実施の形態によっては、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化するステップは、(i)繊維性材料を塩基で(例えば、本明細書で述べるような塩基の溶液で)処理するステップと;(ii)官能化された繊維性材料を得るために、塩基で処理した繊維性材料を、式Iの化合物(例えば、本明細書で述べるような式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の溶液と)と接触させるステップと;を含む。
【0041】
実施の形態によっては、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化する方法は、未反応の式Iの化合物を含まない官能化された繊維性材料を得るために、官能化された繊維性材料を洗浄する(例えば、水ですすぐ)ステップを更に含む。
【0042】
実施の形態によっては、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化するステップは、下記のスキーム1a又はスキーム1bに従って実行される。
【0043】
スキーム1a及び1bを参照すると、式Iの化合物は、繊維性材料の少なくとも1つのヒドロキシル基と反応する。反応は、式Iの化合物中のHalが結合している炭素原子と繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子との間の新しい共有結合の形成を含む。スキーム1a及び1bに図示するような官能化された構造のいずれか1つは、例えば、こうした構造の全てのヒドロキシル基が式IIの構造で官能化されるように、式Iの化合物と更に反応することができる。
【0044】
実施の形態によっては、本明細書で述べるような複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化するプロセスは、有利には、低温で(例えば、室温で)行われて、式Iの化合物の加水分解による式Iの化合物の最大固着と最小損失とが達成される(例えば、スキーム2参照)。
【0045】
スキーム2を参照すると、式Iの化合物と、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料との反応は、2段階で起きる。第1の段階では、式Iの化合物が塩基と反応して式1のグリシドキシ中間体を形成する。第2の段階では、この式1のグリシドキシ中間体が複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料と反応して本明細書で述べるような官能化された繊維性材料を形成する。高温プロセスにおいて、加水分解された中間体(2)の生成の増加が観察される。高温では、式Iの化合物が、溶媒(例えば、水)又はヒドロキシルアニオン(塩基が水酸化物である場合)のいずれかと、より高い割合で反応し、加水分解された中間体(2)の生成が増える。同時に、グリシドキシ中間体は、より高温において溶媒(例えば、水)又はヒドロキシルアニオン(塩基が水酸化物の場合)とも反応し得るので、加水分解された中間体(2)の生成の増加と、カチオン化された繊維性材料の形成の減少とに寄与する。本願のプロセスは、有利なことに、毒性のある非水溶媒の使用を回避するので流出物汚染を減らすことができる一方、式Iの化合物を無駄に廃棄しないのでカチオン化プロセスの効率を高め且つコストを削減することができる。
【0046】
実施の形態によっては、スキーム3に従って、式Iの化合物を調製してもよい。
【0047】
スキーム3を参照すると、エピハロヒドリン(3)を、3-(ジメチルアミノ)プロパン-1-オール(DMAP)と反応させて式1のグリシドキシ中間体を得てもよく、次に、これをHHalと反応させて式Iの化合物を得てもよい。
【0048】
実施の形態によっては、本願は、式Iの化合物を製造する方法を提供する。
Xは、本明細書で述べる通りであり、式Iの化合物を生成するために、式1の化合をHHalと反応させるステップを含む。
【0049】
実施の形態によっては、HHalは、HCl、HBr、及びHIのうちから選択される。実施の形態によっては、HHalは、HCl及びHBrのうちから選択される。実施の形態によっては、HHalは、HBrである。実施の形態によっては、HHalは、HClである。
【0050】
実施の形態によっては、反応させるステップは、室温で行われる。実施の形態によっては、反応させるステップは、溶媒中で行われる。実施の形態によっては、溶媒は水である。実施の形態によっては、水溶液中の式1の化合物の濃度は、約10wt.%から約80wt.%、約15wt.%から約70wt.%、約20wt.%から約60wt.%、約30wt.%から約60wt.%、又は約40wt.%から約60wt.%である。実施の形態によっては、水溶液中の化合物(1)の濃度は、約20wt.%、約30wt.%、約40wt.%、約50wt.%、約60wt.%、又は約70wt.%である。実施の形態によっては、反応させるステップは、式1の化合物の水溶液へのHHalの滴加によって行われる。実施の形態によっては、HHalの水溶液が式1の化合物の水溶液に添加され、HHal(例えば、HCl)の水溶液の濃度は、約10%から約36%、約15%から約36%、約20%から約36%、又は、約25%から約36%(例えば、約10%、約20%、約25%、約30%、又は約36%)である。実施の形態によっては、HHalの水溶液が式1の化合物の水溶液に添加され、HHal(例えば、HCl)の水溶液の濃度は、約36%である。実施の形態によっては、反応させるステップは、約1分から約1時間、約2分から約50分、約3分から約45分、約4分から約40分、約5分から約35分、又は、約10分から約30分にわたって行われる。実施の形態によっては、反応させるステップは、1分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、又は45分にわたって行われる。実施の形態によっては、反応させるステップは、pHが、約1から約6、約1から約5、又は、約2から約4で行われる。実施の形態によっては、反応させるステップは、pHが、1、2、3、4、5、又は6で行われる。実施の形態によっては、反応させるステップは、pH4で行われる。
【0051】
実施の形態によっては、式1の化合物を調整するステップでは、
Xは、本明細書で述べる通りであり、式1の化合物を得るために次式のDMAPを、
式3のエピハロヒドリンと反応させるステップを含む。
【0052】
実施の形態によっては、反応させるステップは、反応混合物を得るために、HHal(例えば、HCl)の水溶液をDMAPに添加するステップを含む。実施の形態によっては、HHal(例えば、HCl)の水溶液の濃度は、約10%から約36%、約15%から約36%、約20%から約36%、又は、約25%から約36%である。実施の形態によっては、HHal(例えば、HCl)の水溶液の濃度は、約10%、約20%、約25%、約30%、又は、約36%である。実施の形態によっては、HHal(例えば、HCl)の水溶液の濃度は、約36%である。実施の形態によっては、HHal溶液を添加するステップは、室温で行われる。実施の形態によっては、HHal溶液を添加するステップは、約10℃から約20℃の温度で行われる。実施の形態によっては、HHal溶液を添加するステップは、約30分間行われる。実施の形態によっては、HHal溶液を添加するステップの後に、反応混合物を約1時間撹拌するステップが続く。実施の形態によっては、エピハロヒドリンは、約1時間にわたって反応混合物に滴加される。実施の形態によっては、エピハロヒドリンを添加するステップは、約0℃から約20℃、約2℃から約15℃、約3℃から約10℃、又は、約4℃から約8℃の温度で行われる。実施の形態によっては、エピハロヒドリンを添加するステップは、約0℃、約5℃、約10℃、又は約15℃で行われる。実施の形態によっては、エピハロヒドリンを添加するステップは、約5℃(例えば、反応混合物を氷浴で冷却して)で行われる。実施の形態によっては、反応させるステップは、約1時間から約2日、約2時間から約24時間、又は、約6時間から約24時間にわたって、ほぼ室温で行われる。実施の形態によっては、反応させるステップは、約2時間、約6時間、約10時間、約18時間、約24時間、又は、一晩、ほぼ室温(例えば、約20℃)で行われる。実施の形態によっては、反応させるステップは、氷浴中での氷の融解の結果、反応混合物が約5℃からほぼ室温に温まるように行われる。実施の形態によっては、室温で反応させるステップの後に、約20℃から約80℃、約25℃から約75℃、約30℃から約70℃、又は、約35℃から約65℃の温度で、約1時間から約24時間、約2時間から約12時間、又は、約2時間から約6時間にわたって反応させるステップが続く。実施の形態によっては、室温で反応させるステップの後に、約60℃で、約2時間、約3時間、又は、約4時間反応させるステップが続く。実施の形態によっては式1の化合物は、約60℃での回転蒸発により単離(例えば、水溶性シロップとして)されてもよい。実施の形態によっては、式1の化合物は、約110℃で約1時間水を蒸発させることにより単離されてもよい。
【0053】
実施の形態によっては、式3のエピハロヒドリンは、下記の化合物のうちいずれか1つから選択されてもよい。
式中、Xは、本明細書で述べる通りである。
【0054】
実施の形態によっては、式3のエピハロヒドリンは、エピクロロヒドリン(2-(ブロモメチル)オキシラン、例えば、CAS登録番号106-89-8、67843-74-7、又は51594-55-9)、及び、エピブロモヒドリン(2-(ブロモメチル)オキシラン、例えば、CAS番号3132-64-7)のうちから選択される。
【0055】
実施の形態によっては、式3のエピハロヒドリンは、次式の化合物である。
【0056】
実施の形態によっては、式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の形態は水溶液であり、水溶液中の式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の濃度は、約10wt.%から約80wt.%、約20wt.%から約75wt.%、約25wt.%から約75wt.%、約30wt.%から約70wt.%、約40wt.%から約70wt.%、又は、約40wt.%から約60wt.%である。実施の形態によっては、式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の形態は水溶液であり、水溶液中の式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の濃度は、約25wt.%、約30wt.%、約35wt.%、約40wt.%、約45wt.%、約50wt.%、約55wt.%、約60wt.%、又は約65wt.%である。
【0057】
実施の形態によっては、本開示は、官能化された繊維性材料を得るために、繊維性材料を式III:の化合物と反応させるステップを含む、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を官能化する方法を提供しない。
式中、X及びHalは、本明細書に記載されている通りである。
【0058】
式IIIの化合物(例えば、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(CHPTAC))を用いて官能化された繊維性材料を生成すると、得られた繊維性材料は悪臭を放つ。例えば、CHPTACで官能化されて得られた繊維性材料の臭気の不快度は4から10(10段階のうちの)(例えば、不快度が約4、5、6、7、8、9、又は10)である。別の例において、CHPTACで官能化されて得られた繊維性材料の臭気の臭気強度(以下に検討するように6段階評価で)は1から5(例えば、1、2、3、4、又は5の臭気強度)である。繊維性材料を式IIIの化合物と反応させることによって生成される繊維性材料の悪臭の原因は、例えば、以下のスキーム4に示すように、トリメチルアミンの放出である。
【0059】
スキーム4を参照すると、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を、式IIIの化合物(例えば、CHPTAC)と反応させて式IVaの部分で官能化された繊維性材料を形成する。
式中、aは、繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子への、式IVaの部分の結合点を示す。式IVaの部分で官能化された繊維性材料が熱、水分、又は、両方にさらされると、式IVaの部分は分解して式IVb、式IVc、又はその両方の部分を形成し、同時に遊離トリメチルアミンを放出する。
式中、aは、繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子への、式IVaの部分の結合点を示す。トリメチルアミンの匂いは腐った魚の匂いに似ている。ほとんどの人が、トリメチルアミンの匂いを不快に感じる。
【0060】
実施の形態によっては、本願は、本明細書で述べるプロセスのいずれか1つによって調製される官能化繊維性材料を提供する。
【0061】
実施の形態によっては、本願は、複数のヒドロキシル基を有する繊維性材料を提供し、繊維性材料の少なくとも1つのヒドロキシル基が、式IIの部分で官能化される。
式中、Xは、本明細書に記載する通りであり、aは、繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子への式IIの部分の結合点を表す。
【0062】
実施の形態によっては、本開示の官能化された(例えば、カチオン化された)繊維性材料の臭気(例えば、遊離3-(ジメチルアミノ)プロパン-1-オール(DMAP)の臭気)は、検知の閾値を下回る。実施の形態によっては、本開示の官能化された繊維性材料の遊離アミンの臭気は、検知の閾値である。実施の形態によっては、本開示の官能化された繊維性材料は、実質的に無臭である。実施の形態によっては、本開示の官能化された繊維性材料の臭気は、不快度が約3(10段階のうちの)又はそれ未満である。実施の形態によっては、本開示の官能化された繊維性材料は、不快度が約2(10段階のうちの)又はそれ未満である。実施の形態によっては、本開示の官能化された繊維性材料の臭気は、不快度が約0(無臭)、約1(不快ではない)、又は約2若しくは約3である。実施の形態によっては、本開示の官能化された繊維性材料の臭気は、臭気強度が(6段階評価で)0又は1である。実施の形態によっては、本開示の官能化された繊維性材料の臭気は、臭気強度が(6段階評価で)0(無臭)である。6段階評価で臭気強度を表す体系を表1に要約する。
【0063】
臭気検知の閾値は、評価者/パネル員が、無臭サンプルと、臭気をようやく感知できるサンプルとの間の違いを特定できる(例えば、補助されることのない嗅覚によって)物質濃度である。即ち、化学物質により評価者/パネリストが感覚反応(例えば、補助されることのない嗅覚反応)を誘発されると、臭気検知の閾値で、評価者/パネリストが刺激を認知する。実施の形態によっては、臭気検知の閾値を特定するための、サンプルの調製、パネルの形成、実験手順、及びデータ加工は、例えば、国際規格ISO13301(官能評価-方法論-臭気測定のための一般的ガイダンス、三肢強制選択法(3-AFC)手順)による風味及び味覚検知の閾値に記載されているように行われ、その開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施の形態によっては、臭気検知の閾値は、例えば、Abraham他の、Chem Senses.2012年、37(3)号、207~218ページの、又は、Devos他の、Standardized human olfactory thresholds、Oxford:IRL Press at Oxford University Press;1990年に記載されているように測定されてもよく、上記の開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施の形態によっては、3-(ジメチルアミノ)プロパン-1-オール(DMAP)のサンプルの臭気検知の閾値の測定は、全パネル員が感知できるDMAPの匂いのサンプルを採取し、パネル員の少なくとも50%が、希釈したサンプルのうちのどれがDMAPの臭気を有しどのサンプルが無臭であるかをもはや識別できなくなるまでサンプルの希釈を続ける(例えば、100-、50-、10-、6-、又は、5-希釈系列で)ことによって行われる。実施の形態によっては、DMAPの臭気閾値の特定後、パネル員の少なくとも50%が、本開示の官能化された繊維性材料は、無臭(DMAPの臭気が検知の閾値を下回る)であるか、又は、検知の閾値のDMAPの臭気を有するか、を特定する。実施の形態によっては、DMAPの臭気検知の閾値は、約1ppm又はそれ未満、約0.5ppm又はそれ未満、約0.1ppm又はそれ未満、約0.09ppm又はそれ未満、約0.08ppm又はそれ未満、約0.07ppm又はそれ未満、約0.06ppm又はそれ未満、約0.05ppm又はそれ未満、約0.025ppm又はそれ未満、約0.01ppm又はそれ未満、又は約0.005ppm又はそれ未満であり、本開示の官能化された繊維性材料は、検知の閾値を下回る、又は、検知の閾値のDMAPの臭気を有する。
【0064】
更に、サンプルをランク付けする評価者/パネリストを使って、すなわち、任意の尺度を用いて臭気の強度又は不快度のいずれかを記述する手順を使って、臭気を評価することができる。実施の形態によっては、0から10の段階が用いられ、0は無臭(又は不快な臭気ではない)を示し、10は非常に強烈な又は不快な臭気を表す。この10段階評価体系では、パネル員の少なくとも50%が、サンプルの臭気は不快ではない(又は無臭)と特定した場合の臭気の不快度は0であり、パネル員の少なくとも50%が、サンプルの臭気は最も不快であると特定した場合の臭気の不快度は10である。パネル員の少なくとも50%が、サンプルの臭気を検知できるものの、その臭気に長期間耐えられると特定した場合の不快度は1又は2である。同様に、臭気強度は、6段階評価(例えば、表1参照)で測定してもよい。パネル員の少なくとも50%が、サンプルは無臭であると特定した場合の臭気強度は0である一方、パネル員の少なくとも50%が、臭気は強烈である(たとえ短時間でも耐えられない)と特定した場合の臭気強度は5である。
【0065】
本開示は、予想外にも、遊離アミン(DMAP)の臭気が検知の閾値を下回る、又は、丁度検知の閾値であり、臭気不快度が約3(10段階のうちの)未満であり、臭気強度(6段階評価で)が0(無臭)又は1である官能化された繊維性材料を提供する。これらの結果は予想外であった。というのは、式IIの部分を有する、本開示の官能化された繊維性材料は、式IVaの部分で官能化された繊維が遊離トリメチルアミンを放出する(スキーム4に示すように)のと同じメカニズムに従い遊離アミン(DMAP)を放出し得るからである。例えば、スキーム5を参照されたい。
【0066】
DMAPの沸点(及びそれに付随する蒸気圧)は、ヒトが一般に匂いを不快と感じる物質(例えば、表2にまとめた、スチレン、キシレン、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、及び、イソ吉草酸)の沸点範囲(及び蒸気圧)に類似している。少なくともある程度の量のDMAPを含有し得る繊維性材料は、不快な匂いを持つことが予想される。それにも関わらず、本願の官能化された繊維性材料は、有利には無臭である、又は、不快度が3未満(10段階のうちの)、臭気強度が0若しくは1(6段階評価で)、又は、その両方であるDMAPの臭気を有する。
【0067】
本開示の官能化された(例えば、式IIの部分でカチオン化された)繊維性材料は、有利には染料と繊維性材料(例えば、カチオン化された綿)との間のイオン引力を増加させる。実施の形態によっては、本願の官能化された繊維は、未処理の布地よりも多くの正側のゼータ電位(ζ)を有する。実施の形態によっては、官能化された繊維のζは、約-40mVから約+5mV、約-35mVから約+4mV、約-30mVから約+2mV、約-25mVから約0mV、約-19mVから約-1mV、約-18mVから約-2mV、約-17mVから約-3mV、約-16mVから約-4mV、又は、約-15mVから約-5mVである。実施の形態によっては、ζは、pH10で測定した際に、約-20mV、約-19mV、約-18mV、約-17mV、約-16mV、約-15mV、約-14mV、約-13mV、約-12mV、約-11mV、約-10mV、約-5mV、約0mV、約+1mV、約+2mV、約+3mV、約+4mV、又は約+5mVである。
【0068】
実施の形態によっては、官能化された布地中の窒素含有量の%(例えば、水素-炭素-窒素(HCN)元素分析器を用いた元素分析により特定された)を使用して、繊維性材料のヒドロキシル基と反応した式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の量を特定してもよい。実施の形態によっては、本開示の官能化された布地のカチオン化度(窒素含有量の%)は、約0.001%から約1%、約0.005%から約0.9%、約0.01%から約0.8%、約0.02%から約0.7%、約0.03%から約0.6%、約0.05%から約0.5%、約0.06%から約0.4%、約0.07%から約0.35%、又は、約0.1%から約0.3%である。実施の形態によっては、本開示の官能化された布地のカチオン化度(窒素含有量の%)は、約0.005%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.15%、約0.2%、約0.25%、約0.3%、約0.35%、約0.5%、約0.55%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、又は約1%である。
【0069】
実施の形態によっては、式Iの化合物(例えば、CHPDMAP)の利用効率を、繊維のヒドロキシル基と反応した全ての適用された式Iの化合物の%として特定してもよい(繊維の窒素分析に基づき)。パッドバッチプロセスでは、バッチ中の窒素の総量は、溶液の濃度と式Iの化合物の分子量とに基づき常に計算することができる。処理された繊維の重量がわかれば、繊維の構造への取り込みに利用可能な全窒素の%が計算できる(例えば、繊維性材料1kg当たり式Iの化合物の総質量中の5gの窒素は、0.5%の窒素取り込みの理論収率を提供する)。固定窒素の実際の量は、上記のような元素分析によって特定してもよい。理論量で除した実際の量は、利用効率(固定%)を提供する。実施の形態によっては、本明細書で述べるプロセスは、約10%から約100%、約15%から約95%、約20%から約90%、約25%から約90%、約30%から約90%、約35%から約90%、約40%から約90%、約45%から約90%、約50%から約90%、約55%から約90%、約60%から約90%、又は、約70%から約90%のカチオン化試薬利用効率を提供する。実施の形態によっては、本明細書で述べるプロセスは、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約90%、又は約95%のカチオン化試薬利用効率を提供する。
【0070】
実施の形態によっては、本開示は、本明細書で述べる繊維性材料を染色する方法を提供し、この方法は、繊維性材料を染料と接触させるステップを含む。
【0071】
実施の形態によっては、接触させるステップは、当該技術分野で一般に公知な布地を染色する任意の方法によって行うことができる。例えば、布地は、Khatri他の、A review on developments in dyeing cotton fabrics with reactive dyes for reducing effluent pollution、Journal of Cleaner Production、2014年、1~8、及び、そこで引用される参考文献に記載されているように染色してもよく、その開示は参照により全体を本明細書に組み込む。繊維性材料、規模、及び、染料のタイプに応じ、精通する化学技術者が、適切なツール、装置、及び方法を選択し実施して、本明細書で述べる官能化された繊維性材料を首尾よく染色することができる。
【0072】
実施の形態によっては、染料は反応染料である。
【0073】
実施の形態によっては、染料は、ビニルスルホン染料、モノクロロトリアジン染料、モノフルオロクロロトリアジン染料、ジクロロトリアジン染料、ジフルオロクロロピリミジン染料、ジクロロキノキサリン染料、トリクロロピリミジン染料、又は、ビニルアミド染料である。
【0074】
実施の形態によっては、染料は酸性染料である。実施の形態によっては、本明細書で述べる酸性染料のいずれか1つは、カルボン酸-C(=O)OH、スルホン酸-S(=O)OH、及びホスホナート-P(=O)(OH)から選択される少なくとも1つの基を含む。
【0075】
実施の形態によっては、染料は、リアクティブレッドM5B、リアクティブレッド-2、リアクティブレッドM8B、リアクティブレッド-11、リアクティブマゼンタMB、リアクティブバイオレット-13、リアクティブオレンジM2R、リアクティブオレンジ-4、リアクティブオレンジM2RJ、リアクティブGol.イエローMR、リアクティブイエロー-44、リアクティブイエローMR EX H/C、リアクティブイエロー-44、リアクティブイエローM3R、リアクティブイエロー-36、リアクティブイエローM4R、リアクティブオレンジ-14、リアクティブイエローM8G、リアクティブイエロー-86、リアクティブイエローM4G、リアクティブイエロー-22、リアクティブイエローMGR、リアクティブイエロー-7、リアクティブバイオレットC4R、リアクティブバイオレット-12、リアクティブバイオレットC2R、リアクティブバイオレット-14、リアクティブブルーMR、リアクティブブルー-4、リアクティブブルー-5、リアクティブブルーM2R、リアクティブブルー-81、リアクティブブルーM2R H/C、リアクティブブルー-81、リアクティブネイビーブルーM3R、リアクティブブルー-9、リアクティブブルーM4GD H/C、リアクティブブルー-168、リアクティブTur.ブルーMGN、リアクティブブルー-140、リアクティブTur.ブルーHa5G、リアクティブブルー-71、リアクティブブルー-19、リアクティブイエローHE6G、リアクティブイエロー-135、リアクティブイエローHE4R、リアクティブイエロー-81、リアクティブイエローHE4R、リアクティブイエロー-84、リアクティブG.イエローHE4R、リアクティブイエロー-81-A、リアクティブオレンジHER、リアクティブオレンジ-84、リアクティブオレンジHE2R、リアクティブオレンジ-84-A、リアクティブレッドHE3B、リアクティブレッド-120、リアクティブレッドHE5B、リアクティブレッドHE7B、リアクティブレッド-141、リアクティブレッド-45:1、リアクティブレッドHE8B、リアクティブレッド-152、リアクティブレッド-22、リアクティブグリーンHE 4B、リアクティブグリーン-19、リアクティブグリーンHE 4BD、リアクティブグリーン-19A、リアクティブブラックHEBL、リアクティブネイビーブルーHER、リアクティブブルー-171、リアクティブネイビーブルーHE2R、リアクティブブルー-172、リアクティブブルーHERD、リアクティブブルー-160、リアクティブネイビーブルーHEGN、及び、リアクティブブルー-198からなる群から選択される。
【0076】
実施の形態によっては、染料は、CIアシッドレッド128、CIアシッドレッド14、CIアシッドレッド114、CIアシッドオレンジ3、CIアシッドレッド97、C.I.アシッドブルー7、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドオレンジ7、及び、C.I.アシッドグリーン28から選択される。
【0077】
実施の形態によっては、本明細書で述べる方法に従い調製される染色済みの官能化された繊維性材料の染着率%(洗浄前の染色済み布地の色強度に対する、洗浄された染色済み布地の色強度の比として特定される染料固着度)は、約50%から約100%、約50%から約99%、約60%から約95%、約65%から約95%、約70%から約95%、又は、約75%から約95%である。実施の形態によっては、染料固着度は、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%である。
【0078】
実施の形態によっては、本願の方法に従い官能化される染色済み布地の染料強度増加率%(未処理布地の色強度に対する、染色済みの官能化された布地と染色済みの未処理布地の間の色強度の差の比として特定される)は、約10%から約200%、約20%から約180%、約30%から約170%、約40%から約150%、約50%から約140%、約60%から約120%、又は、約80%から約100%である。実施の形態によっては、染料強度増加率 %は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約120%、約150%、又は約200%である。
【0079】
実施の形態によっては、本明細書で述べる染色済みの官能化された繊維性材料は、衣料品(例えば、下着(例えば、肌着、ボクサーショーツ、ブリーフ、ブラ、パンティ、靴下、ブラジャ、又はキャミソール)、パンツ、ズボン、カーキズボン、ジーンズ、シャツ、ショーツ、スカート、ブラウス、Tシャツ、タンクトップ、セーター、ドレス、スーツ、ジャケット、水着、サリー、防護服、ソックス、コート、スカーフ、履物、又は帽子などの織物産業において従来より公知である任意の衣料品)の製造に有用である。織物材料から製造されることが公知である任意の他の製造品も、本願の繊維性材料から調製することができる。
【0080】
定義
本明細書で用いられる場合、用語「検知の閾値」は、評価者/パネリストが補助を伴わない嗅覚によって、希釈したサンプルと無臭サンプルとの違いを特定できる希釈レベルを指す。
【0081】
臭気は、サンプルをランク付けする評価者/パネリストを使って、すなわち、任意の尺度を用いて臭気の不快度を記述する手順を使って評価することができる。0から10の段階を用いてもよく、0は無臭又は不快ではないことを示し、10は非常に強烈又は不快な臭気を表す。本明細書で用いられる場合、用語「不快度」は、0から10の段階でサンプルのランクを指す。
【0082】
本明細書で用いられる場合、用語「水性溶媒」は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも90%、又は、少なくとも95%の水を含む液体を指す。実施の形態によっては、水性溶媒は水である。
【0083】
本明細書で用いられる場合、用語「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0084】
本明細書で用いられる場合、用語「ハロ」、「ハロゲン化物」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード基を指す。
【0085】
本明細書で用いられる場合、用語「セルロース」又は「セルロース系」は、1,4’-β-グリコシド結合(例えば、4-β-グルコピラノシル-D-グリコピラノース)によって結合された2つのD-グルコピラノースを有する二糖サブユニットで構成される複雑な多糖分子を指す。
【0086】
本明細書で用いる場合、用語「反応させる」は、当該技術分野で公知であるように用いられ、一般に、複数の化学試薬を、それらの分子レベルでの相互作用により化学的又は物理的な変換が可能になるよう方法で、一緒にすることを言う。実施の形態によっては、反応は、少なくとも2種の試薬が関与する。実施の形態によっては、合成プロセスの反応ステップは、溶媒、触媒、又はその両方などの試薬に加えて1種又は複数の物質が関与する。本明細書で述べるプロセスの反応ステップは、特定される生成物の調製に適する時間及び条件下で行うことができる。化学反応の試薬に関する用語「組み合わせる」及び「混合する」は、本明細書では、「反応させる」という用語と置換え可能に用いることができる。用語「カップリングする」も、用語「反応させる」と置換え可能であるとみなすことができるが、2つの有機フラグメントの結合を伴う反応ステップと共に用いてもよい。
【実施例
【0087】
実施例1-グリシドキシDMAP及びCHPDMAPの調製
【0088】
A.回転蒸発による水除去を伴う生成物調製
HCl(1.00mol、36%、100mL)を3-(ジメチルアミノ)プロパン-1-オール(DMAP、CAS登録番号3179-63-3)(1.00mol、103g)に、温度を10℃から20℃の間に維持した状態で0.5時間かけて滴加した。結果として得られた溶液を室温で1時間撹拌し、次いで5℃に冷却した。エピクロロヒドリン(EPI、CAS登録番号106-89-8)(1.05mol、97g)を反応混合物に1時間かけて滴加した。反応混合物を一晩撹拌し、氷融解の結果として20℃に加温した。翌日、反応混合物を60℃で4時間撹拌したが、その時間の後での溶液のpHは約5であった。60℃で回転蒸発により水を除去し、水溶性シロップを得た。生成物を計量し、必要に応じて水を添加して50%w/w溶液を得た。HCl(36%、1mL)を滴加してpH=4にし、開環生成物3-クロロ-2-ヒドロキシ-N-(3-ヒドロキシプロピル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウムクロリド(CHPDMAP)を得た。
【0089】
B.水除去を伴わない生成物調製
HCl(1.00mol、36%、100mL)をDMAP(1.00mol、103g)に、温度を10℃から20℃の間に維持した状態で0.5時間かけて滴加した。結果として得られた溶液を室温で1時間撹拌し、次いで5℃に冷却した。EPI(1.05mol、97g)を反応混合物に1時間かけて滴加した。反応混合物を一晩撹拌し、氷融解の結果として20℃に加温した。翌日、反応混合物を60℃で4時間撹拌した。生成物を計量し、必要に応じて水を添加して50%w/w溶液を得た。開環生成物3-クロロ-2-ヒドロキシ-N-(3-ヒドロキシプロピル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウムクロリド(CHPDMAP)を含有する混合物の最終pHは、約5であった。
【0090】
C.60℃の手順
HCl(1.00mol、36%、100mL)を3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(DMAP、CAS3179-63-3)(1.00mol、103g)に0.5時間かけて滴加し、温度を10℃から20℃の間に維持した。結果として得られた溶液を5℃に冷却した。エピクロロヒドリン(EPI、CAS106-89-8)(1.2mol、111g)を1時間かけて滴加した。反応混合物を2時間撹拌し、氷融解の結果として20℃に加温した。混合物を60℃に加熱し、60℃で3時間撹拌した。生成物を計量し、必要に応じて水を添加して50%w/w溶液を得た。開環生成物3-クロロ-2-ヒドロキシ-N-(3-ヒドロキシプロピル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウムクロリド(CHPDMAP)を含有する混合物の最終pHは、5前後であった。
【0091】
D.110℃の手順
HCl(1.00mol、36%、100mL)を3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(DMAP、CAS3179-63-3)(1.00mol、103g)に、温度を10℃から20℃の間に維持した状態で0.5時間かけて滴加した。結果として得られた溶液を5℃に冷却した。エピクロロヒドリン(EPI、CAS106-89-8)(1.2mol、111g)を1時間かけて滴加した。反応混合物を2時間撹拌し、氷融解の結果として20℃に加温した。混合物を60℃に加熱し、還流下2時間撹拌した。次いで凝縮器を取り外し、反応物を110℃で更に1時間撹拌した。生成物を計量し、必要に応じて水を添加して50%w/w溶液を得た。開環生成物3-クロロ-2-ヒドロキシ-N-(3-ヒドロキシプロピル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウムクロリド(CHPDMAP)を含有する混合物の最終pHは、5前後であった。
【0092】
図1は、グリシドキシDMAPの陽イオンESI MSスペクトルを示す。図2は、グリシドキシDMAPの分子イオン領域についての陽イオンESI MSスペクトルを示す。HR-MS分析(図1及び図2)により、反応生成物がエポキシドの形態であることを確認した。Cl35/Cl37同位体(m/z 196/198;図2参照)について期待される分子イオンピークが得られた。図3は、1)5%EPIを用いて得られた生成物(上のスペクトル);2)DMAP+HCl(中央のスペクトル);及び、3)EPI(下のスペクトル);のH NMRスペクトルを示す。図4は、1)5%EPIを用いて得られた生成物(上のスペクトル);2)100℃で10%EPIを用いて得られた生成物(中央のスペクトル);及び、3)60℃で10%EPIを用いて得られた生成物(下のスペクトル);のH NMRスペクトルを示す。図5は、1)EPI(上のスペクトル);2)100℃で20%EPIを用いて得られた生成物(中央のスペクトル);及び、3)60℃で20%EPIを用いて得られた生成物(下のスペクトル);のH NMRスペクトルを示す。
【0093】
実施例2-CHPDMAPを使用した綿の染色
綿布地サンプルを、2段階で染色した:1)室温で24時間、水酸化ナトリウムの存在下でのCHPDMAPの水溶液(2:1のNaOH:CHPDMAP)によるパッドバッチ処理を行ってカチオン化された綿布地を得て、それを洗浄して未反応CHPDMAPを除去し;2)アニオン性染料を適用して染色済み綿布地を得た。加えて、同じ布地をCHPDMAPでパディングし、170℃で2分間キュアリングし、続いてパッドバッチサンプルと同じ方法で洗浄し乾燥させた。比較のため、綿布地サンプルを、CHPDMAP処理を行うことなく、水酸化ナトリウムの存在下でCHPTACの水溶液(2:1のNaOH:CHPTAC)で処理した後、染色した。
【0094】
図6は、NaOH:CHPTACの2:1混合物を使用した染色(コールドパッドバッチ(左)及びパッド/キュア(右))、NaOH:CHPDMAPの2:1混合物を使用した染色(コールドパッドバッチ(左)及びパッド/キュア(右))、ならびに事前のカチオン化なしでの染色(コールドパッドバッチ(左)及びパッド/キュア(右))後に得られたK/S合計を示す棒グラフである。本明細書において使用した場合、「K/S合計」とは、染色済み綿布地の色の濃さ(色強度)を示し、本明細書で、Kは吸収特性を表し、Sは散乱を表す。K/Sは、color iControlソフトウェアを備えるX-Rite分光光度計を用いて測定され、K/S合計は、波長域360nmから750nmにおいて10nm間隔のK/S値を合計することにより計算された。コールドパッドバッチサンプルの場合、CHPDMAPサンプルの色強度は、CHPTACサンプルの色強度の約70%であった、パッド/キュアサンプルの場合、CHPDMAPサンプルの色強度は、CHPTACサンプルの色強度の約90%であった。CHPTAC及びCHPDMAP処理されたサンプルの色強度は、未処理サンプルよりも有意に高かった。
【0095】
他の実施の形態
本願をその詳細な説明と併せて記載したが、前述の説明は、本願の範囲の例示を意図しており、本願の範囲を限定するものではない。他の態様、利点、及び改変も、以下の特許請求の範囲に含まれる。
[第1の局面]
複数のヒドロキシル基を備える繊維性材料を官能化する方法であって:
官能化された繊維性材料を得るために、前記繊維性材料を式Iの化合物と反応させるステップであって、Xは、式Iの第四級アンモニウムカチオンに対する一価の対アニオンであり、Halは、ハロゲン原子である、前記反応させるステップ;を備える、
繊維性材料を官能化する方法。

[第2の局面]
Halは、Cl及びBrから選択される、
第1の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第3の局面]
Halは、Clである、
第1の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第4の局面]
Xは、Cl及びBrから選択される、
第1の局面乃至第3の局面のいずれかに記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第5の局面]
Xは、Clである、
第4の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第6の局面]
前記繊維性材料は、セルロース系繊維性材料を備える、
第1の局面乃至第5の局面のいずれかに記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第7の局面]
前記セルロース系繊維性材料は、天然繊維性材料である、
第6の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第8の局面]
前記天然繊維性材料は、綿を備える、
第7の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第9の局面]
前記セルロース系繊維性材料は、合成繊維性材料である、
第6の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第10の局面]
前記合成繊維性材料は、レーヨンを備える、
第9の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第11の局面]
前記反応させるステップは、水性溶媒中で行われる、
第1の局面乃至第10の局面のいずれかに記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第12の局面]
前記水性溶媒は、水である、
第11の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第13の局面]
前記反応させるステップは、Halが結合している炭素原子と前記繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子との間に共有結合を形成するステップを備える、
第1の局面乃至第12の局面のいずれかに記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第14の局面]
前記官能化された繊維性材料は、式IIの少なくとも1つの部分を備え、
aは、前記繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子への式IIの部分の結合点を表す、
第1の局面乃至第13の局面のいずれかに記載の繊維性材料を官能化する方法。

[第15の局面]
前記反応させるステップは、塩基の存在下で行われる、
第1の局面乃至第14の局面のいずれかに記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第16の局面]
前記式Iの化合物に対する前記塩基のモル比は、約1:1から約2:1である、
第15の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第17の局面]
前記塩基は、水酸化アルカリである、
第15の局面又は第16の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第18の局面]
前記水酸化アルカリは、水酸化ナトリウムである、
第17の局面に記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第19の局面]
前記反応させるステップは、ほぼ室温で行われる、
第1の局面乃至第18の局面のいずれかに記載の繊維性材料を官能化する方法。
[第20の局面]
繊維性材料であって、
第1の局面乃至第19の局面のいずれかに記載のプロセスにより調製される、官能化された、
繊維性材料。
[第21の局面]
複数のヒドロキシル基を備える繊維性材料であって、
前記繊維性材料の少なくとも1つのヒドロキシル基が式IIの部分で官能化され、
Xは、式IIの前記第四級アンモニウムカチオンに対する一価の対アニオンであり、
aは、前記繊維性材料のヒドロキシル基の酸素原子への式IIの部分の結合点を表す、
繊維性材料。

[第22の局面]
Xは、Cl及びBrから選択される、
第21の局面に記載の繊維性材料。
[第23の局面]
Xは、Clである、
第22の局面に記載の繊維性材料。
[第24の局面]
前記繊維性材料は、セルロース系繊維性材料を備える、
第21の局面乃至第23の局面のいずれかに記載の繊維性材料。
[第25の局面]
前記セルロース系繊維性材料は、天然繊維性材料である、
第24の局面に記載の繊維性材料。
[第26の局面]
前記天然繊維性材料は、綿を備える、
第25の局面に記載の繊維性材料。
[第27の局面]
前記セルロース系繊維性材料は、合成繊維性材料である、
第24の局面に記載の繊維性材料。
[第28の局面]
前記合成繊維性材料は、レーヨンを備える、
第27の局面に記載の繊維性材料。
[第29の局面]
検知の閾値を下回る臭気を有する、
第20の局面乃至第28の局面のいずれかに記載の繊維性材料。
[第30の局面]
不快度が約3又はそれ未満の臭気を有する、
第20の局面乃至第29の局面のいずれかに記載の繊維性材料。
[第31の局面]
第20の局面乃至第30の局面のいずれかに記載の繊維性材料を染色する方法であって:
前記繊維性材料を染料と接触させるステップ;を備える、
繊維性材料を染色する方法。
[第32の局面]
前記染料は、反応染料である、
第31の局面に記載の繊維性材料を染色する方法。
[第33の局面]
前記染料は、酸性染料である、
第31の局面に記載の繊維性材料を染色する方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6