(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、端末、方法およびサーバ
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20180101AFI20220216BHJP
【FI】
G06Q50/22
(21)【出願番号】P 2017104926
(22)【出願日】2017-05-26
【審査請求日】2020-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】397039919
【氏名又は名称】一般財団法人日本気象協会
(73)【特許権者】
【識別番号】502265688
【氏名又は名称】株式会社JMDC
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100199277
【氏名又は名称】西守 有人
(72)【発明者】
【氏名】田口 晶彦
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 善一郎
(72)【発明者】
【氏名】真田 知世
(72)【発明者】
【氏名】小平 紀久
(72)【発明者】
【氏名】久野 芳之
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴
(72)【発明者】
【氏名】高松 良光
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/032873(WO,A2)
【文献】特開2016-081190(JP,A)
【文献】特開2016-153978(JP,A)
【文献】特開2016-048517(JP,A)
【文献】特開2002-183647(JP,A)
【文献】特開2015-144027(JP,A)
【文献】国際公開第01/090977(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0109149(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104809335(CN,A)
【文献】河井 保博,スマートな社会を支える ICT最前線,日経コミュニケーション,日本,日経BP社,2014年01月01日,第600号,pp.80-81,ISSN:0910-7215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの属性の入力を受け付ける機能と、
入力された属性をネットワークを介してサーバに送信することによって、病と気象との関係を示す異なる複数のモデルのなかから前記入力された属性に応じて選択されたモデルと、気象予測の情報と、から得られる病に関する予測情報を、前記ネットワークを介して前記サーバから取得する機能と、
前記
サーバからこれまでに取得した病に関する
過去、現在、及び将来の時点における前記予測情報
の何れかを時系列で示す
それぞれの画面を
、画面間で遷移可能にディスプレイに表示させてユーザに通知する機能と、
前記
過去の予測情報を示す画面を介して過去の時点におけるユーザの健康に関する情報を受け付け、前記現在の予測情報を示す画面を介して
現在の時点におけるユーザの健康に関する情報の入力を受け付ける機能と、
前記入力された
現在及び過去の少なくとも一方の時点におけるユーザの健康に関する情報を前記ネットワークを介して前記サーバに送信することによって、前記選択されたモデルを更新させる機能と、を端末に実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項2】
病に関する予測情報は、発症リスクを示す情報を含む請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
エリアを取得する機能をさらに前記端末に実現させ、
前記サーバから取得する機能は、さらに前記取得したエリアを前記ネットワークを介して前記サーバに送信することによって、病と気象との関係を示す異なる複数のモデルのなかから入力された属性に応じて選択されたモデルと、取得されたエリアにおける気象予測の情報と、から得られる病に関する予測情報を、前記ネットワークを介して前記サーバから取得する機能を含む請求項1または2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記画面はユーザからの指示を受け付けるための領域を含み、
前記ユーザの健康に関する情報の入力を受け付ける機能は、
前記過去の予測情報を示す画面または前記現在の予測情報を示す画面において前記領域が指定されると、前記領域に対応する過去または現在の時点におけるユーザの健康に関する情報の入力を受け付ける請求項1乃至3の何れか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
健康に関する情報は、体調を示す情報、受診に関する情報、投薬に関する情報およびユーザの発話のうちの少なくともひとつを含む請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
ユーザの属性の入力を受け付ける手段と、
入力された属性をネットワークを介してサーバに送信することによって、病と気象との関係を示す異なる複数のモデルのなかから前記入力された属性に応じて選択されたモデルと、気象予測の情報と、から得られる病に関する予測情報を、前記ネットワークを介して前記サーバから取得する手段と、
前記
サーバからこれまでに取得した病に関する
過去、現在、及び将来の時点における前記予測情報
の何れかを時系列で示す
それぞれの画面を
、画面間で遷移可能にディスプレイに表示させてユーザに通知する手段と、
前記
過去の予測情報を示す画面を介して過去の時点におけるユーザの健康に関する情報を受け付け、前記現在の予測情報を示す画面を介して
現在の時点におけるユーザの健康に関する情報の入力を受け付ける手段と、
前記入力された
現在及び過去の少なくとも一方の時点におけるユーザの健康に関する情報を前記ネットワークを介して前記サーバに送信することによって、前記選択されたモデルを更新させる手段と、を備える端末。
【請求項7】
端末において実行される方法であって、
ユーザの属性の入力を受け付けることと、
入力された属性をネットワークを介してサーバに送信することによって、病と気象との関係を示す異なる複数のモデルのなかから前記入力された属性に応じて選択されたモデルと、気象予測の情報と、から得られる病に関する予測情報を、前記ネットワークを介して前記サーバから取得することと、
前記
サーバからこれまでに取得した病に関する
過去、現在、及び将来の時点における前記予測情報
の何れかを時系列で示す
それぞれの画面を
、画面間で遷移可能にディスプレイに表示させてユーザに通知することと、
前記
過去の予測情報を示す画面を介して過去の時点におけるユーザの健康に関する情報の入力を受け付け、前記現在の予測情報を示す画面を介して
現在の時点におけるユーザの健康に関する情報の入力を受け付けることと、
前記入力された
現在及び過去の少なくとも一方の時点におけるユーザの健康に関する情報を前記ネットワークを介して前記サーバに送信することによって、前記選択されたモデルを更新させることと、を含む方法。
【請求項8】
病と気象との関係を示す異なる複数のモデルを保持する保持手段と、
ユーザの属性を、ネットワークを介して端末から受信する第1受信手段と、
前記保持手段に保持される複数のモデルのなかから、取得された属性に応じたモデルを選択する選択手段と、
気象予測の情報を、ネットワークを介して気象サーバから取得する取得手段と、
選択されたモデルと、取得された気象予測の情報と、から病に関する予測情報を導出する導出手段と、
導出された病に関する予測情報を、ネットワークを介して端末に送信する送信手段と、
過去及び現在の少なくとも一方の時点におけるユーザの健康に関する情報を、前記ネットワークを介して前記端末から受信する第2受信手段と、
前記受信した
過去及び現在の少なくとも一方の時点におけるユーザの健康に関する情報に基づいて、前記選択したモデルを更新する更新手段と、を備えるサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラム、端末、方法およびサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
体調と気象との関係について、低気圧が近づくと頭や足が痛くなる、雨上がりの晴れの日には花粉症がひどくなる、晴天の日には熱中症が多くなる、乾燥すると肌が荒れる、などの関係性は生活の知恵として昔から知られている。また、特定の論文やアンケートなどの主観的情報と、気象実験室などの限られた場所で取得された生体情報・環境情報と、に基づく要因を組み合わせた判別アルゴリズムを用い、広く一般大衆をターゲットとし、平均化された情報を提供することが知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1は、エリアごとに花粉の飛散状況を示す花粉情報を提供する。ユーザはこの花粉情報を参照することで、花粉症の発症リスクや重症化リスクを見積もることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】https://tenki.jp/pollen/、2017年5月18日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そもそも花粉症のない人にとっては花粉情報の重要度は低い。また、花粉症を患っている人についても、花粉への感受性の違いから同じ飛散量でも重症化する人としない人とがいる。これは、花粉症に限らず、他の病についても同様である。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、気象の情報から病の発症や重症化のリスクを、性別、年齢、服薬状況などのユーザの属性に応じて予測することで予測の精度を高めることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、コンピュータプログラムに関する。このコンピュータプログラムは、ユーザの属性の入力を受け付ける機能と、入力された属性をネットワークを介してサーバに送信することによって、病と気象との関係を示す異なる複数のモデルのなかから前記入力された属性に応じて選択されたモデルと、気象予測の情報と、から得られる病に関する予測情報を、前記ネットワークを介して前記サーバから取得する機能と、前記サーバからこれまでに取得した病に関する過去、現在、及び将来の時点における前記予測情報の何れかを時系列で示すそれぞれの画面を、画面間で遷移可能にディスプレイに表示させてユーザに通知する機能と、前記過去の予測情報を示す画面を介して過去の時点におけるユーザの健康に関する情報を受け付け、前記現在の予測情報を示す画面を介して現在の時点におけるユーザの健康に関する情報の入力を受け付ける機能と、前記入力された現在及び過去の少なくとも一方の時点におけるユーザの健康に関する情報を前記ネットワークを介して前記サーバに送信することによって、前記選択されたモデルを更新させる機能と、を端末に実現させるためのものである。
【0008】
本発明の別の態様は、サーバである。このサーバは、病と気象との関係を示す異なる複数のモデルを保持する保持手段と、ユーザの属性を、ネットワークを介して端末から受信する第1受信手段と、前記保持手段に保持される複数のモデルのなかから、取得された属性に応じたモデルを選択する選択手段と、気象予測の情報を、ネットワークを介して気象サーバから取得する取得手段と、選択されたモデルと、取得された気象予測の情報と、から病に関する予測情報を導出する導出手段と、導出された病に関する予測情報を、ネットワークを介して端末に送信する送信手段と、過去及び現在の少なくとも一方の時点におけるユーザの健康に関する情報を、前記ネットワークを介して前記端末から受信する第2受信手段と、前記受信した過去及び現在の少なくとも一方の時点におけるユーザの健康に関する情報に基づいて、前記選択したモデルを更新する更新手段と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、気象の情報から病の発症や重症化のリスクを予測する際の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る疾病予測システムのシステム構成の一例を示す模式図である。
【
図2】
図1の携帯端末のハードウエア構成図である。
【
図3】
図1の疾病予測サーバの機能および構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3のデータ取得部によって生成される医療入力データの一例を示すデータ構造図である。
【
図5】
図3のデータ取得部によって生成される気象入力データの一例を示すデータ構造図である。
【
図6】
図3のデータ解析部における重回帰分析の一例を説明するためのグラフである。
【
図7】
図3のモデル保持部の一例を示すデータ構造図である。
【
図8】
図8(a)~(d)は、リスク指数を5つのリスクレベルにカテゴライズする場合の表示例を示す模式図である。
【
図9】
図1の疾病予測システムにおける処理の流れを示すフロー図である。
【
図12】現在のリスクレベルを示すリスク予測画面の代表画面図である。
【
図14】未来のリスクレベルを示すリスク予測画面の代表画面図である。
【
図15】過去のリスクレベルを示すリスク予測画面の代表画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において説明上重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
実施の形態では、医療データと気象データとを掛け合わせることで新しい価値を創造する。医療データと気象データとを突き合わせることで、病と気象との関係についての仮説を検証し、精度の高いモデルを開発することができる。このように開発されたモデルは、メディアやメーカや金融や自治体などの様々なフィールドにおいて、新たなサービスや価値を提供できる。例えば、開発されたモデルを用いることで、気象と病(病気)との因果関係を見える化し、病の発生エリアや時期を予測するサービスを提供できる。
【0014】
実施の形態は、提案されるモデルを用いたサービスを通じて、ヘルスリテラシーの向上を支援すると共に、行動の変容を促進することで健康社会の実現に寄与する。また、実施の形態は、提案されるモデルを用いたサービスを通じて、気象や環境が生体に及ぼす影響の研究を促進し、もって自然界と調和した社会の実現に資する。
【0015】
図1は、実施の形態に係る疾病予測システム100のシステム構成の一例を示す模式図である。疾病予測システム100は、疾病予測サーバ102と、医療データサーバ104と、気象データサーバ106と、携帯端末108と、を備える。疾病予測サーバ102、医療データサーバ104、気象データサーバ106、携帯端末108はいずれもインターネットなどのネットワーク110と接続され、ネットワーク110を介して通信する。なお、
図1は一例を示すものであって、各要素の数に制限はない。
【0016】
医療データサーバ104は、医療に関するデータを解析する企業(以下、医療データ解析企業という)により運営され、医療ビッグデータ112を保持する。ユーザは定期的に、例えば一年に一度、医療機関で健康診断(定期健康診断、人間ドック等)を受診する。ユーザは、自分が加入している健康保険組合または他の保険機関が提携している医療機関で健康診断を受ける。ユーザは、健康診断を受診した後、紙面でまたは電子的に健康診断の結果(以下、健診結果という)を受け取る。各医療機関はユーザが加入している保険者やユーザの事業主にユーザの健診結果を通知する。なお、健診結果以外にも、ユーザが医療機関で通常の診療を受けた際に生成されるレセプトデータがユーザの加入する健康保険の保険者に提供される。このように、保険者や事業主は、自己の被保険者や従業員の健診結果やレセプトデータを蓄積している。
【0017】
医療データ解析企業は、多くの保険者や事業主と契約し、契約した保険者や事業主から健診結果やレセプトデータを取り込んで匿名化処理し、医療ビッグデータ112を構築する。この取り込みは例えば定期的(例えば、月次)にまとめて行われてもよい。医療データ解析企業は、スマートフォンやタブレット端末や携帯電話などの携帯端末108を介してユーザから直接、健診結果やレセプトデータを取得してもよい。
【0018】
気象データサーバ106は、気象に関するデータを解析する企業(以下、気象データ解析企業という)により運営され、気象ビッグデータ114を保持する。気象データ解析企業は、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行う。気象データ解析企業は、風向風速、気温、日較差、湿度、日射量、放射収支量、雨量等の気象データを、エリアごと(例えば、250mメッシュ単位)、時間帯ごと(例えば、分単位)に収集し、気象ビッグデータ114を構築する。気象データサーバ106は、気象ビッグデータ114に保持される過去の気象データに基づき、所定の予測アルゴリズムにしたがい、気象予測の情報を生成する。気象予測の情報は、例えばある地点のある将来の時間帯における風向風速や気温や日較差や平年差や湿度の予測値を含む。
【0019】
疾病予測サーバ102は、医療データサーバ104から医療ビッグデータ112に保持される医療データを、気象データサーバ106から気象ビッグデータ114に保持される気象データを、それぞれ取得する。疾病予測サーバ102は、取得された医療データと気象データとを突き合わせることで、病と気象との関係を示す異なる複数のモデルを生成する。モデルはユーザの属性により異なり、例えば10代男性用のモデルと40代女性用のモデルとは異なる。モデルの生成については後述する。
【0020】
疾病予測サーバ102は、ネットワーク110を介して携帯端末108のユーザの属性を取得し、取得された属性に対応するモデルを選択する。疾病予測サーバ102は、気象データサーバ106からネットワーク110を介して気象予測の情報を取得し、取得された気象予測の情報と選択されたモデルとから病に関する予測情報を導出する。疾病予測サーバ102は、ネットワーク110を介して携帯端末108に、病に関する予測情報を送信する。
【0021】
携帯端末108のユーザは、ダウンロードサイトからネットワーク110を介して疾病予測アプリケーションプログラム(以下、疾病予測アプリという)を携帯端末108にダウンロードし、インストールする。あるいはまた、疾病予測アプリは携帯端末108にプリインストールされていてもよい。疾病予測アプリは、疾患・エリア・年齢・性別などで特定されるターゲット層へ、行動変容のきっかけとなる価値ある情報を配信する。疾病予測アプリは医療データ解析企業、気象データ解析企業、疾病予測サーバ102の管理体のいずれかにより提供されてもよい。疾病予測アプリが携帯端末108により実行されることにより、携帯端末108はネットワーク110を介して疾病予測サーバ102と通信し、各種機能を実現する。以下、携帯端末108(のCPU(Central Processing Unit)等の処理ユニット)が疾病予測アプリを実行することにより実現する機能を携帯端末108の機能として説明する。それらの機能は実際は疾病予測アプリが携帯端末108に実現させる機能である。
【0022】
図2は、
図1の携帯端末108のハードウエア構成図である。携帯端末108は疾病予測アプリをインストールして実行可能であればいかなる端末であってもよい。携帯端末108は、メモリ121と、プロセッサ122と、通信インタフェース123と、ディスプレイ124と、入力インタフェース125と、を含む。これらの要素はそれぞれバス126に接続され、バス126を介して互いに通信する。
【0023】
メモリ121は、データやプログラムを記憶するための記憶領域である。データやプログラムは、メモリ121に恒久的に記憶されてもよいし、一時的に記憶されてもよい。特にメモリ121は疾病予測アプリを記憶する。プロセッサ122は、メモリ121に記憶されているプログラム、特に疾病予測アプリを実行することにより、携帯端末108における各種機能を実現する。通信インタフェース123は、携帯端末108の外部との間でデータの送受信を行うためのインタフェースである。例えば、通信インタフェース123は、携帯電話の無線通信網にアクセスするためのインタフェースや、無線LAN(Local Area Network)にアクセスするためのインタフェース等を含む。また、通信インタフェース123は、例えば、USB(Universal Serial Bus)等の有線ネットワークのインタフェースを含んでいてもよい。ディスプレイ124は、各種情報を表示するためのデバイスであり、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどである。入力インタフェース125は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力インタフェース125は、例えば、ディスプレイ124上に設けられたタッチパネルや、各種入力キー等を含む。
【0024】
図3は、
図1の疾病予測サーバ102の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0025】
疾病予測サーバ102は、データ取得部302と、データ解析部304と、モデル保持部306と、属性受信部308と、モデル選択部310と、予測取得部312と、リスク導出部314と、送信部316と、ユーザ情報保持部318と、実績情報保持部320と、を備える。
【0026】
(モデル生成フェーズ)
モデルを生成する場合、データ取得部302は、ネットワーク110を介して医療データサーバ104からレセプトデータを取得、もしくはネットワーク110を介さずに医療データサーバ104から直接取得する。取得されるレセプトデータは医科レセプトと調剤レセプトとを含む。レセプトデータの項目は、年齢や性別などの患者情報と、診療年月や診療実日数や総点数(医療費)などのレセプト情報と、傷病名や診療開始年月や転帰などの傷病情報と、医薬品名や投与量などの医薬品情報と、実施日や診療行為(手術、放射線治療等)などの診療行為情報と、を含む。
【0027】
データ取得部302は、ネットワーク110を介して医療データサーバ104から台帳データを取得、もしくはネットワーク110を介さずに医療データサーバ104から直接取得する。台帳データは、本人家族(続柄)と、観察開始年月と、観察終了年月と、終了理由と、を含む。これにより、観察集団の設定が可能となり、母集団がより明確となる。
【0028】
データ取得部302は、ネットワーク110を介して医療データサーバ104からエリアデータを取得、もしくはネットワーク110を介さずに医療データサーバ104から直接取得する。エリアデータは、患者が受診した(したがって、レセプトが作成された)医療機関の所在地と、患者の居住地と、を含む。個人の特定が不可能な場合は、郵便番号の上三桁が用いられる。
【0029】
データ取得部302は、取得されたレセプトデータと台帳データとエリアデータとを統合し、医療入力データを生成する。医療入力データは、どの属性のユーザが、いつ、どこで、どのような病を有していたかを示す。医療入力データの項目は、例えば、年齢と、性別と、エリアと、年月日と、疾患と、重症度と、入院の有無と、手術の有無と、受診頻度と、受診診療科と、医療費と、処方薬剤と、を含む。
【0030】
図4は、データ取得部302によって生成される医療入力データの一例を示すデータ構造図である。医療入力データは、エリアを特定するエリアIDと、患者の年齢(年代)と、患者の性別と、患者の疾患と、受診日と、重症度と、発作の有無と、入院の有無と、手術の有無と、患者数と、を対応付けて保持する。エリアIDは、例えばJIS X 0401で規定される都道府県コードや全国地方公共団体コードであってもよい。重症度は1-5の五段階で表され、5が最も重傷である。重症度は、例えば処方されたまたは使用された薬剤の種類および量に基づいて決定される。例えば、
図4の一番上の行のデータは、入院および手術が必要な重症度4のアトピー性皮膚炎で、4月1日にエリア13で受診した、0~4歳の女性の患者が、5人いたことを示す。
【0031】
図3に戻り、データ取得部302は、ネットワーク110を介して気象データサーバ106から気象データを取得する。取得される気象データの項目は例えば以下を含む。
気象に関する項目:雲量、降水量、風向、風速、気温、湿度、日照時間、積雪深、降雪量、気圧。
環境に関する項目:SO
2(二酸化硫黄)、NO(一酸化窒素)、NO
2(二酸化窒素)、NO
X(窒素酸化物)、CO(一酸化炭素)、O
X(光化学オキシダント)、NMHC(非メタン炭化水素)、CH
4(メタン)、THC(全炭化水素)、SPM(浮遊粒子状物質)、PM2.5(微小粒子状物質)、SP(浮遊粉じん)、黄砂、スギ花粉、ヒノキ花粉、火山灰、UV(紫外線)。
【0032】
取得される気象データのエリアは観測地点または予測エリア(例えば、200mメッシュ)で指定される。取得される気象データの時間間隔は例えば分単位、時間単位、日単位、週単位、月単位である。データ取得部302は、取得された気象データのフォーマットを医療入力データのフォーマットに合わせることで気象入力データを生成する。
【0033】
図5は、データ取得部302によって生成される気象入力データの一例を示すデータ構造図である。気象入力データは、エリアIDと、日時(時間帯)と、気圧と、降水量と、気温と、露点温度と、蒸気圧と、湿度と、風速と、を対応付けて保持する。
【0034】
図3に戻り、データ解析部304は、データ取得部302によって生成された医療入力データと気象入力データとを統合して解析対象データを生成する。データ解析部304は統合の際に例えばエリアIDおよび時間帯(受診日、日時)をキーとする。データ解析部304は、解析対象データをユーザの属性およびエリアで細分化する。例えばデータ解析部304は、ユーザの性別および年代ならびにエリアで解析対象データを分ける。これにより、エリア1の0~4歳の女性についての解析対象データ、エリア1の0~4歳の男性についての解析対象データ、エリア1の5~9歳の女性についての解析対象データ、エリア2の0~4歳の女性についての解析対象データ等が生成される。
【0035】
データ解析部304は、性別、年代およびエリア別の解析対象データのそれぞれに対して、解析対象データのうち医療入力データ由来のデータ項目を目的変数とし、気象入力データ由来のデータ項目を説明変数とする重回帰分析を行う。これにより、性別、年代、疾患およびエリアごとにモデルが生成される。例えば、重回帰分析により、あるエリアのある年代・性別のユーザのある疾患の発症リスクを示す指数を算出するために用いられる、気象入力データ由来のデータ項目および該データ項目に伴うモデル係数が決定される。データ解析部304は、生成されたモデルの情報をモデル保持部306に登録する。
【0036】
図6は、データ解析部304における重回帰分析の一例を説明するためのグラフである。
図6に示されるグラフにおいて、X軸、Y軸、Z軸はそれぞれ気温、平年差、リスク指数を表す。リスク指数は喘息の発症または発作のリスクを示し、医療入力データ由来の喘息の患者数および重症度から算出される。グラフのデータ点は、九州・沖縄地方の10歳未満の男性についての解析対象データのエントリに対応する。データ解析部304は、
図6に示されるグラフのデータ点の集合に対して、喘息のリスク指数を目的変数とし、気温および平年差を説明変数とする重回帰分析を行い、各説明変数に対するモデル係数を決定する。
【0037】
モデルでは、疾患のリスク指数Rは以下の式1により算出される。
R=a×気温+b×平年差
…(式1)
ここで、aは気温のモデル係数(以下、気温係数と称す)、bは平年差のモデル係数(以下、平年差係数と称す)、である。
【0038】
図7は、モデル保持部306の一例を示すデータ構造図である。モデル保持部306は、喘息について、性別・年代ごとおよびエリアごとに気温係数aと平年差係数bとを保持する。なお、本例では気温および平年差を説明変数とする場合について説明するが、解析の結果、他の項目、例えば日較差や湿度、が良い説明変数となる場合も考えられる。
【0039】
(モデル適用フェーズ)
図3に戻り、上述のように生成されたモデルを用いたユーザへの価値の提供を説明する。属性受信部308は、携帯端末108のユーザの属性、対象疾患およびエリアを、ネットワーク110を介して携帯端末108から受信する。受信されるユーザの属性はユーザの年代と性別とを含む。
【0040】
モデル選択部310は、モデル保持部306に保持される複数のモデルのなかから、属性受信部308によって取得された属性、疾患およびエリアに応じたモデルを選択する。例えば、モデル選択部310はモデル保持部306を参照し、取得された性別、年代、疾患およびエリアに対応するモデル係数、すなわち気温係数および平年差係数、を取得する。
【0041】
予測取得部312は、取得されたエリアにおける気象予測の情報を、ネットワーク110を介して気象データサーバ106から取得する。
【0042】
リスク導出部314は、モデル選択部310によって選択されたモデルと、予測取得部312によって取得された気象予測の情報と、から病に関する予測情報を導出する。例えば、リスク導出部314は、取得された気温係数および平年差係数ならびに取得された予想気温および予想平年差を式1に代入することで、ある疾患のリスク指数を算出する。リスク導出部314は、算出されたリスク指数を複数のレベル(以下、リスクレベルと称す)にカテゴライズする。
【0043】
図8(a)~(d)は、リスク指数を5つのリスクレベルにカテゴライズする場合の表示例を示す模式図である。
図8(a)はリスク指数の大きさを5つのテキストで表す場合を示す。
図8(b)はリスク指数の時間変化をグラフで表す場合を示す。
図8(c)はリスク指数の大きさを5つの図形(この場合、アバターおよびその数)で表す場合を示す。
図8(d)はリスク指数の地理的分布を分布図で表す場合を示す。
【0044】
あるいはまた、リスク導出部314は、リスク指数を3つのリスクレベルにカテゴライズしてもよい。この場合、リスク導出部314は例えば二つの閾値RH、RL(RH>RL)を用いる以下の判定基準によりリスク指数をカテゴライズする。
(1)リスク指数R≧RHならリスクレベル3(危険)
(2)RH>リスク指数R≧RLならリスクレベル2(注意)
(3)RL>リスク指数Rならリスクレベル1(安全)
【0045】
図3に戻り、送信部316は、リスク導出部314によって導出された病に関する予測情報を、ネットワーク110を介して携帯端末108に送信する。例えば、送信部316は、導出された将来のリスクレベルの時系列データを携帯端末108に送信する。
【0046】
以上の構成による疾病予測システム100の動作を説明する。
図9は、
図1の疾病予測システム100における処理の流れを示すフロー図である。携帯端末108は、入力インタフェース125を介してユーザから疾病予測アプリを起動するための指示を受け付けると、疾病予測アプリを起動する(S902)。例えば、携帯端末108は、ディスプレイ124に表示される疾病予測アプリのアイコンに対するタップを検出すると、疾病予測アプリを起動する。初回登録済みである場合(S904のY)、処理はステップS908に進む。初回登録済みでない場合(S906のN)、処理はステップS906に進む。
【0047】
ステップS906において、携帯端末108は疾病予測サーバ102と通信することで初回登録処理を実行する。携帯端末108は、初回登録画面(後述)を生成してディスプレイ124に表示させることで、ユーザから初回登録情報すなわちログインID、パスワード、性別、年齢、生年月日、処方薬の入力を受け付ける。携帯端末108は、入力された初回登録情報をメモリ121に登録すると共に、ネットワーク110を介して疾病予測サーバ102に送信する。疾病予測サーバ102は初回登録情報を受信し、疾病予測サーバ102のユーザ情報保持部318に登録する。初回登録処理において、携帯端末108は利用規約をディスプレイ124に表示させ、かつ、該利用規約に対するユーザの同意/非同意を受け付けてもよい。利用規約は例えば個人情報の扱いに関する規定やデータの扱いに関する規定を含む。
【0048】
ステップS908において、携帯端末108は、ログイン画面(後述)を生成してディスプレイ124に表示させることで、ユーザからログイン情報すなわちユーザIDおよびパスワードの入力を受け付ける。携帯端末108は、入力されたユーザIDおよびパスワードを、ネットワーク110を介して疾病予測サーバ102に送信する。疾病予測サーバ102は、受信したユーザIDおよびパスワードを用いてユーザ認証を行う。疾病予測サーバ102は、ユーザ認証の結果をネットワーク110を介して携帯端末108に送信する。なお、携帯端末108でユーザ認証が行われてもよい。
【0049】
携帯端末108は、ユーザ認証の結果が失敗を示す場合、その旨をユーザに通知し、ユーザIDおよびパスワードの再度の入力を求める。携帯端末108は、ユーザ認証の結果が成功を示す場合、携帯端末108に保持されるユーザの性別・年齢と、対象となる疾患と、携帯端末108の測位機能(例えば、GPS等)を用いて取得された携帯端末108の位置と、をネットワーク110を介して疾病予測サーバ102に送信する(S910)。なお、ステップS910で性別・年齢を送信する代わりに、ステップS906で疾病予測サーバ102のユーザ情報保持部318に登録されたユーザの性別・年齢が用いられてもよい。また、携帯端末108は、ユーザに入力させることで携帯端末108の位置を取得してもよい。
【0050】
疾病予測サーバ102はユーザの年齢・性別と対象疾患と携帯端末108の位置とを受信し、それらに対応するモデル係数をモデル保持部306のなかから選択する(S912)。疾病予測サーバ102は気象データサーバ106から気象予測の情報を取得する(S914)。疾病予測サーバ102は、選択されたモデル係数と取得された気象予測の情報とから、対象疾患の将来のリスクレベルを導出する(S916)。疾病予測サーバ102は、導出された将来のリスクレベルを、ネットワーク110を介して携帯端末108に送信する(S918)。
【0051】
携帯端末108は、受信した将来のリスクレベルを基にリスク予測画面(後述)を生成してディスプレイ124に表示させる(S920)。リスク予測画面は、対象疾患の将来のリスクレベルを時系列で示す画面である。リスク予測画面は、過去のリスクレベルを将来のリスクレベルと合わせて時系列で示す。過去のリスクレベルは、携帯端末108が過去に疾病予測サーバ102から受信し、保持しておいたリスクレベルを読み出すことで取得されてもよい。あるいはまた、疾病予測サーバ102は、選択されたモデル係数と気象データサーバ106から取得した過去の気象の情報(例えば、アメダスの観測値や地上実況)とからリスクレベルを導出し、導出された過去のリスクレベルを携帯端末108に提供してもよい。
【0052】
携帯端末108は、リスク予測画面において、ユーザから情報登録の要求を受け付ける。携帯端末108は、該要求に応じて情報登録画面(後述)を生成してディスプレイ124に表示させることで、過去または現在の時点における体調・医療情報の入力を受け付ける(S922)。体調・医療情報は、体調を示す情報、受診に関する情報および投薬に関する情報を含む。
【0053】
携帯端末108は、入力された体調・医療情報とユーザIDとが対応付けられたデータを、ネットワーク110を介して疾病予測サーバ102に送信する(S924)。疾病予測サーバ102は、受信したユーザIDと体調・医療情報とを対応付けて実績情報保持部320に登録する(S926)。疾病予測サーバ102は、実績情報保持部320に保持される情報を参照し、ユーザごとにモデルを更新する(S928)。更新されたモデルは次回のリスクレベルの導出に用いられる。
【0054】
実績情報保持部320には、過去のある時点でのユーザの体調の実績値が保持されている。一方、そのユーザに対して選択されたモデルと、過去の同じ時点における気象の情報と、から過去の同じ時点におけるリスクレベルを導出することができる。ステップS928では、このように導出されるリスクレベルと体調の実績値との乖離を小さくするように、モデル係数が調整される。この調整はユーザごとに行われるので、もともと二人のユーザに同じモデルが用いられていたとしても、その後の調整により二人のユーザのモデル係数が異なるものとなる場合がある。
【0055】
図10は、初回登録画面400の代表画面図である。初回登録画面400は、初回登録情報の入力を受け付ける初回登録情報入力領域402と、送信ボタン404と、を有する。ユーザは初回登録情報入力領域402に情報を入力し、送信ボタン404をタップする。すると、携帯端末108は、初回登録情報入力領域402に入力された情報を初回登録情報として取得し、疾病予測サーバ102に送信する。
【0056】
図11は、ログイン画面406の代表画面図である。ログイン画面406はログインIDの入力を受け付けるID領域408と、パスワードの入力を受け付けるPW領域410と、送信ボタン412と、を有する。ユーザは、ID領域408、PW領域410に情報を入力し、送信ボタン412をタップする。すると、携帯端末108は、ID領域408、PW領域410に入力された情報をそれぞれログインID、パスワードとして取得し、疾病予測サーバ102に送信する。
【0057】
図12は、現在のリスクレベルを示すリスク予測画面414の代表画面図である。リスク予測画面414は、疾患選択領域416と、ステップS910で送信される位置に対応するエリア表示領域418と、現在の日付を表示する日付表示領域420と、現在より少し後、例えば30分後、のリスクレベルを表示するリスクレベル表示領域422と、気象およびリスクレベルの時間的推移を表示する推移表示領域424と、を有する。
【0058】
疾患選択領域416には現在選択されている対象疾患(
図12の場合、ぜん息)が表示される。疾患選択領域416は他の疾患を選択可能に構成される。例えばユーザが疾患選択領域416のプルダウンマークを指定すると選択可能な疾患の一覧が表示され、ユーザはその一覧のなかから所望の疾患を選択する。携帯端末108は、選択された疾患を対象疾患として取得し、取得された新たな対象疾患についてステップS910を再度実行し、その対象疾患についての将来のリスクレベルをステップS918で取得し、取得したリスクレベルに基づいてリスク予測画面414を再構成する。
【0059】
リスクレベル表示領域422には現在より少し後の(すなわち、近い将来の)リスクレベルが表示される。ユーザはこの表示を見ることにより、近い将来の対象疾患の発症リスクや重症化リスクを把握することができる。この表示は、同じ疾患、同じエリア、同じ時刻でもユーザにより異なる。
【0060】
推移表示領域424は、設定ボタン426と、将来のリスクレベルまたは気象予測に係るコメントを表示するコメント表示領域428と、気温の時間的推移を示す温度グラフ430と、天気の変化を示す天気表示領域432と、リスクレベルの時間的推移を示す中リスク領域434および低リスク領域436と、日時を表示する日時表示領域438と、を有する。推移表示領域424では、設定ボタン426に伴って表示される矢印が現在を表し、その左側に過去の気象および過去のリスクレベルの情報が、その右側に将来の気象および将来のリスクレベルの情報が、それぞれ表示される。
【0061】
ユーザが設定ボタン426を指定(例えば、タップ)すると、携帯端末108は該指定をユーザからの情報登録の要求として受け付け、情報登録画面440をディスプレイ124に表示させる。
図13は、情報登録画面440の代表画面図である。情報登録画面440は、例えば推移表示領域424に対してポップオーバする形で表示される。情報登録画面440は、ユーザの現在の体調が選択形式で入力される体調登録領域442と、ユーザの音声の入力をトリガするための音声登録領域444と、受診履歴を登録するための受診履歴登録領域446と、投薬の履歴を登録するための薬記録領域448と、メモの入力を受け付けるメモ領域450と、登録ボタン452と、を有する。体調登録領域442には、対象疾患(
図13の場合、ぜん息)についての体調の良し悪しが入力される。ユーザが音声登録領域444をタップすると、所定の音声入力インタフェースが起動される。携帯端末108は該インタフェースを介してユーザの発話を取得し、取得された発話から疲労度を検出する。ユーザが登録ボタン452をタップすると、携帯端末108は、体調登録領域442、受診履歴登録領域446、薬記録領域448およびメモ領域450に入力された情報および検出された疲労度を体調・医療情報として取得し、メモリ121に格納すると共に疾病予測サーバ102に送信する。
【0062】
図12に戻り、コメント表示領域428は、将来のリスクレベルに係るリスクコメント(
図12の場合、「今夜は注意」)と、気象予測に係る気象コメント(
図12の場合、「気温の降下に注意」)と、を表示する。気象コメントは、気象予測の情報に基づき生成される。リスクコメントは、将来のリスクレベルに基づき生成される。リスクコメントは、時間帯部分(
図12の場合、「今夜」)とリスク部分(
図12の場合、「注意」)とを含む。時間帯部分は、コメント表示領域428が表示される推移表示領域424上の箇所に対応する時刻または時間帯に対応する。リスク部分は、その時刻または時間帯におけるリスクレベルに対応する。例えば、リスクレベルが1~5の五段階で表される場合、リスク部分は「危険、厳重警戒、警戒、注意、安全」のなかからリスクレベルに応じて選択されたものとなる。
【0063】
推移表示領域424はリスクレベルの時間的推移を視覚的に通知する。
図12では推移表示領域424は中リスク領域434と低リスク領域436とを含む。中リスク領域434は網掛けまたは色(赤、青、緑等)付けがなされている。低リスク領域436は中リスク領域434よりも粗い網掛けまたは薄い色付けがなされているか、または無色の領域である。中リスク領域434はぜん息のリスクレベルが五段階の2、すなわち注意レベルであることを示し、低リスク領域436は該リスクレベルが1、すなわち安全レベルであることを示す。
【0064】
図14は、未来のリスクレベルを示すリスク予測画面454の代表画面図である。ユーザが
図12に示されるリスク予測画面414で左向きにスワイプすると、携帯端末108は画面を左向きに横スクロールさせて、
図14に示されるリスク予測画面454を表示させる。リスク予測画面454は、疾患選択領域416と、エリア表示領域418と、未来の日付を表示する日付表示領域456と、未来のリスクレベルを表示するリスクレベル表示領域464と、気象およびリスクレベルの時間的推移を表示する推移表示領域462と、を有する。
【0065】
リスクレベル表示領域464には未来のリスクレベルが表示される。ユーザはこの表示を見ることにより、未来の対象疾患の発症リスクや重症化リスクを把握することができる。この表示は、同じ疾患、同じエリア、同じ時刻でもユーザにより異なる。
【0066】
推移表示領域462は、設定ボタン458と、コメント表示領域428と、温度グラフ430と、天気表示領域432と、リスクレベルの時間的推移を示す高リスク領域460と、日時表示領域438と、を有する。推移表示領域462では、設定ボタン458に伴って表示される矢印が表示対象の未来の時点を表す。
【0067】
ユーザが設定ボタン458を指定すると、携帯端末108は該指定をユーザからの地点登録の要求として受け付け、地点登録画面(不図示)をディスプレイ124に表示させる。ユーザは、地点登録画面を通じて所望のエリアを指定することができる。携帯端末108は指定されたエリアについてステップS910を再度実行し、そのエリアについての将来のリスクレベルをステップS918で取得し、取得したリスクレベルに基づいてリスク予測画面454を再構成する。
【0068】
推移表示領域462はリスクレベルの時間的推移を視覚的に通知する。
図14では推移表示領域462は高リスク領域460を含む。高リスク領域460は中リスク領域434よりも密な網掛けまたは濃い色付けがなされている。高リスク領域460はぜん息のリスクレベルが五段階の3、すなわち警戒レベルであることを示す。
【0069】
図15は、過去のリスクレベルを示すリスク予測画面466の代表画面図である。ユーザが
図12に示されるリスク予測画面414で右向きにスワイプすると、携帯端末108は画面を右向きに横スクロールさせて、
図15に示されるリスク予測画面466を表示させる。リスク予測画面466は、疾患選択領域416と、エリア表示領域418と、過去の日付を表示する日付表示領域468と、過去のリスクレベルを表示するリスクレベル表示領域476と、気象およびリスクレベルの時間的推移を表示する推移表示領域470と、を有する。
【0070】
リスクレベル表示領域476には過去のリスクレベルが表示される。推移表示領域470は、設定ボタン472と、温度グラフ430と、天気表示領域432と、低リスク領域436と、日時表示領域438と、登録データ領域474と、を有する。推移表示領域470では、設定ボタン472に伴って表示される矢印が表示対象の過去の時点を表す。
【0071】
ユーザが設定ボタン472を指定すると、携帯端末108は該指定をユーザからの情報登録の要求として受け付け、情報登録画面をディスプレイ124に表示させる。この情報登録画面は、音声登録領域444がないことを除いて
図13に示される情報登録画面440と同様の構成を有する。
【0072】
登録データ領域474は、該領域が表示される推移表示領域470上の箇所に対応する時刻または時間帯に、情報登録画面を通じて体調・医療情報が登録されたことを示す。ユーザが登録データ領域474を指定すると、携帯端末108は該指定を体調・医療情報の閲覧の要求として受け付ける。携帯端末108は、メモリ121を参照して登録データ領域474に対応する体調・医療情報を読み出し、ディスプレイ124に表示させる。
【0073】
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクや半導体メモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶する半導体メモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解される。
【0074】
本実施の形態に係る疾病予測システム100によると、ユーザの属性に応じたモデルが選択され、選択されたモデルと気象予測の情報とから導出された将来の対象疾患のリスクレベルがそのユーザに通知される。したがって、通知されるリスクレベルはユーザの属性に応じたものとなるので、該リスクレベルの精度を高めることができる。
【0075】
子供と大人、男性と女性では疾患に対する感受性は異なる。また、本発明者等の鋭意研究によると、病と気象との間には有意な相関がある。本実施の形態ではこれら二つの事項を組み合わせ、パーソナライズされた疾病予測をユーザに提供する疾病予測アプリが実現される。
【0076】
子を持つ親であれば、親の携帯端末108に自分ではなく子供の属性を登録することにより、将来の子供のぜん息の発作や重症化のリスクを知ることができるので、予め対策をとることができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る疾病予測システム100では、疾病予測アプリは対象となる疾病をユーザが選択できるように構成される。これにより、ユーザにより気になる疾患は異なるところ、ユーザのニーズにより合った情報を提供することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る疾病予測システム100では、リスク予測画面は、情報登録の指示をユーザから受け付け可能に構成される。また、リスク予測画面は、登録された体調・医療情報を後から閲覧できるよう構成される。したがって、ユーザは自己が登録した過去の体調・医療情報を閲覧することができ、ユーザ利便性が向上する。
【0079】
また、本実施の形態に係る疾病予測システム100では、登録された体調・医療情報に基づいてユーザのモデルが調整される。したがって、そのユーザ用のモデルのさらなるパーソナライズが可能となり、リスクレベルの予測精度がさらに向上する。また、調整されたモデルの詳細、例えば説明変数の変更やモデル係数の増減等、をユーザに通知することで、ユーザに新たな気づきを提供することができる。例えば、ユーザが自分のぜん息について気温の変化が原因だと信じている場合に、モデルの調整により湿度のモデル係数が気温のモデル係数よりも大きくなったことをユーザに通知すると、ユーザは実は湿度に注意しなければならないと気付くことができる。これにより、ユーザの行動変容が促される。
【0080】
また、本実施の形態に係る疾病予測システム100では、登録された体調・医療情報はネットワーク110を介して疾病予測サーバ102に送信され、そこで蓄積される。したがって、疾病予測サーバ102の管理者は、ユーザの体調や投薬の実績を時系列で記録したデータを取得することができる。該管理者は、そのように蓄積されたデータを例えば疫学的な研究に用いたり、薬の効用等の追跡調査に用いることができる。あるいはまた、ユーザが疾患に対する所定の予防対策を取っている場合は、蓄積されたデータにより予防対策にどの程度効果があるかを検証できる。
【0081】
以上、実施の形態に係る疾病予測システム100の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解される。
【0082】
実施の形態では、疾病予測アプリが携帯端末にインストールされる場合について説明したが、これに限られず、例えば携帯端末のブラウザを介してHTMLプログラムにより実現されてもよい。あるいはまた、疾病予測アプリを記録した記録媒体が提供されてもよい。
【0083】
実施の形態では、モデルの選択と気象予測の取得とリスクの導出とを疾病予測サーバ102で行う場合について説明したが、これに限られず、それらの機能の少なくともひとつを携帯端末108に設けてもよい。この場合、モデル係数等の必要な情報は、ネットワーク110を介して疾病予測サーバ102から携帯端末108に送信される。
【0084】
実施の形態では、疾病予測サーバ102と医療データサーバ104と気象データサーバ106とがそれぞれ別体として存在する場合を説明したが、これに限られず、例えば疾病予測サーバ102の機能と医療データサーバ104の機能とを併せ持つひとつのサーバが設けられてもよいし、疾病予測サーバ102の機能と気象データサーバ106の機能とを併せ持つひとつのサーバが設けられてもよい。
【0085】
実施の形態では、将来のリスクレベルおよびその時間的推移をディスプレイ124に表示させる場合について説明したが、これに限られず、将来のリスクレベルに関する情報がユーザに通知されればよく、例えば音声や振動によりユーザに通知してもよい。
【0086】
実施の形態では、主にぜん息と気象との関係を示すモデルからぜん息の発症リスクを導出する場合について説明したが、これに限られない。例えば、大気汚染の度合いと呼吸器系疾患との関係を示すモデルや気候と皮膚疾患との関係を示すモデルや天気と精神疾患との関係を示すモデルなどを生成し、用いてもよい。あるいはまた、疾患としてぜん息だけでなく風邪やアトピー性皮膚炎や頭痛や脳卒中や脳梗塞や心筋梗塞を対象としてもよい。
【0087】
実施の形態では、対象疾患を選択可能とする場合について説明したが、これに限られず、例えば携帯端末が様々な疾患のリスクレベルを取得し、そのなかで比較的リスクレベルの高い疾患の情報をユーザに通知してもよい。同じ気象条件でもユーザの属性によって疾患のリスクレベルは異なりうる。例えば、気温が低いとき、10歳未満の男性についてはぜん息のリスクレベルが他の疾患のリスクレベルよりも高くなり80歳~89歳の女性については心筋梗塞のリスクレベルが他の疾患(ぜん息含む)のリスクレベルよりも高くなることがある。このような場合に、疾病予測アプリはユーザの属性に応じてリスクレベルが比較的高い疾患を決定し、通知することで、ユーザにより役に立つ情報を提供できる。
【0088】
実施の形態では、疾病予測サーバ102は医療データサーバ104からネットワーク110を介してレセプトデータ等の医療データを取得する場合を説明したが、これに限られない。例えば、疾病予測サーバの管理者がモデル生成時にレセプトデータをオフラインで取得し、気象データと突合してもよい。そこで作成されるモデルは静的なものであり、疾病予測サーバには作成されたモデルが格納される。なお、実施の形態のように疾病予測サーバ102がオンラインで医療データサーバ104と連携し、動的にモデルを作成する場合、定期的に自動でモデルをアップデートすることができるので好適である。
【符号の説明】
【0089】
100 疾病予測システム、 102 疾病予測サーバ、 104 医療データサーバ、 106 気象データサーバ、 108 携帯端末。