(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】粘着性積層フィルムおよび電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220216BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20220216BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20220216BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220216BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20220216BHJP
C09J 125/04 20060101ALI20220216BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220216BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220216BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20220216BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/24
C09J7/30
C09J7/38
C09J123/00
C09J125/04
C09J133/00
C09J175/04
C09J183/04
(21)【出願番号】P 2017117837
(22)【出願日】2017-06-15
【審査請求日】2020-03-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】林下 英司
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-049719(JP,A)
【文献】特開2007-335467(JP,A)
【文献】特開2015-103623(JP,A)
【文献】特開2016-089138(JP,A)
【文献】特開2017-084982(JP,A)
【文献】特開2015-214658(JP,A)
【文献】特開2014-200949(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/24
C09J 7/30
C09J 7/38
C09J 123/00
C09J 125/04
C09J 133/00
C09J 175/04
C09J 183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を半導体チップにダイシングする際に前記半導体基板を仮固定するために用いられる粘着性積層フィルムであって、
衝撃吸収層と、粘着性樹脂層と、を備え、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度1mm/分の条件で測定される、前記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率をM
1[MPa]とし、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度100mm/分の条件で測定される、前記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率をM
2[MPa]としたとき、
M
2/M
1が1.4以上3.0以下であり、
M
1
が20MPa以上150MPa以下であり、M
2
が100MPa以上1200MPa以下であり、
前記粘着性積層フィルムの全光線透過率が80%以上である、粘着性積層フィルム。
【請求項2】
請求項
1に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度500mm/分の条件で測定される、前記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率(M
3)が100MPa以上1200MPa以下である粘着性積層フィルム。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
前記衝撃吸収層が4-メチル-1-ペンテンと炭素数2~4のα-オレフィンとの共重合体を含む粘着性積層フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
前記衝撃吸収層の厚みが10μm以上1000μm以下である粘着性積層フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む粘着性積層フィルム。
【請求項6】
衝撃吸収層および粘着性樹脂層を備える粘着性積層フィルムと、前記粘着性樹脂層上に貼り付けられた半導体基板と、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記粘着性樹脂層上に貼り付けられた状態で、前記半導体基板をダイシングして複数の半導体チップを得る工程(B)と、
前記工程(B)の後に前記粘着性樹脂層から前記半導体チップをピックアップする工程(C)と、
を備える電子装置の製造方法であって、
前記粘着性積層フィルムとして請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の粘着性積層フィルムを用いる電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(C)では、前記粘着性樹脂層における前記半導体チップが貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する前記半導体チップ間の間隔を拡大させた状態で、前記粘着性樹脂層から前記半導体チップをピックアップする電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性積層フィルムおよび電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造工程において、半導体基板を半導体チップにダイシングする工程がある。
このダイシング工程では、例えば、半導体基板が粘着性フィルム上に貼り付けられた状態で、半導体基板をダイシングして複数の半導体チップを得る。
【0003】
このようなダイシング工程に用いられる粘着性フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2016-72546号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、基材樹脂フィルムと、上記基材樹脂フィルムの少なくとも片面側に形成された放射線硬化性の粘着剤層とを有し、上記基材樹脂フィルムは、引張弾性率が1~10GPaである剛性層を少なくとも1層有し、上記粘着剤層を放射線硬化させた後における剥離角度30°での剥離力が、0.1~3.0N/25mmであることを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によれば、従来の電子装置の製造方法に関し、以下のような課題を見出した。
まず、本発明者は、従来の電子装置の製造方法において、半導体基板を半導体チップにダイシングする際に、高速回転するブレードが切削対象に接触することにより半導体チップが破損してしまう場合があることを知見した。
また、レーザー光を照射することにより、半導体基板の切断までには至らない変質領域を半導体基板に設け、次いで拡張によって半導体基板が分断されて複数の半導体チップを得るいわゆる「ステルスダイシング」法がある。ステルスダイシングの分断工程において、粘着性フィルムが応力を吸収してしまい、半導体基板の分断が不十分となる場合があることが知得された。
【0007】
さらに、本発明者の検討によれば、上述した接触に伴う半導体チップの破損を抑制するために、粘着性フィルムの剛性を高めると、半導体基板を半導体チップにダイシングする際の半導体チップの破損が抑制される一方で、今度は粘着性フィルムの伸縮性や柔軟性が低下するため、半導体チップが貼り付けられたフィルムを面内方向に拡張することが困難になり、半導体チップのピックアップが上手くできなくなってしまうことが明らかになった。
同様にステルスダイシング法においても、半導体基板の分断性を向上するために粘着性フィルムの剛性を高めると、半導体チップのピックアップが上手くできなくなってしまうことが明らかになった。
すなわち、本発明者は、従来の電子装置の製造方法には、半導体チップの破損の抑制または半導体基板の分断性の向上と、半導体チップのピックアップ性とを両立させるという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体基板を半導体チップにダイシングする際の半導体チップの破損を抑制できる、あるいは半導体基板の分断性を向上できるとともに、半導体チップを精度よくピックアップすることが可能な粘着性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、引張弾性率が特定の条件を満たす衝撃吸収層を粘着性樹脂層とともに使用することにより、半導体チップの破損の抑制または半導体基板の分断性の向上と、半導体チップのピックアップ性とを両立できることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、以下に示す粘着性積層フィルムおよび電子装置の製造方法が提供される。
【0011】
[1]
半導体基板を半導体チップにダイシングする際に上記半導体基板を仮固定するために用いられる粘着性積層フィルムであって、
衝撃吸収層と、粘着性樹脂層と、を備え、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度1mm/分の条件で測定される、上記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率をM1[MPa]とし、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度100mm/分の条件で測定される、上記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率をM2[MPa]としたとき、
M2/M1が1.4以上3.0以下であり、M
1
が20MPa以上150MPa以下であり、M
2
が100MPa以上1200MPa以下であり、
上記粘着性積層フィルムの全光線透過率が80%以上である、粘着性積層フィルム。
[2]
上記[1]に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度500mm/分の条件で測定される、上記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率(M3)が100MPa以上1200MPa以下である粘着性積層フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記衝撃吸収層が4-メチル-1-ペンテンと炭素数2~4のα-オレフィンとの共重合体を含む粘着性積層フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記衝撃吸収層の厚みが10μm以上1000μm以下である粘着性積層フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む粘着性積層フィルム。
[6]
衝撃吸収層および粘着性樹脂層を備える粘着性積層フィルムと、上記粘着性樹脂層上に貼り付けられた半導体基板と、を備える構造体を準備する工程(A)と、
上記粘着性樹脂層上に貼り付けられた状態で、上記半導体基板をダイシングして複数の半導体チップを得る工程(B)と、
上記工程(B)の後に上記粘着性樹脂層から上記半導体チップをピックアップする工程(C)と、
を備える電子装置の製造方法であって、
上記粘着性積層フィルムとして上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムを用いる電子装置の製造方法。
[7]
上記[6]に記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(C)では、上記粘着性樹脂層における上記半導体チップが貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する上記半導体チップ間の間隔を拡大させた状態で、上記粘着性樹脂層から上記半導体チップをピックアップする電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体基板を半導体チップにダイシングする際の半導体チップの破損を抑制できる、あるいは半導体基板の分断性を向上できるとともに、半導体チップを精度よくピックアップすることが可能な粘着性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る実施形態の粘着性積層フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の粘着性積層フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは」アクリル、メタクリル、またはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0015】
1.粘着性積層フィルム
以下、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50について説明する。
図1および2は、本発明に係る実施形態の粘着性積層フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、半導体基板を半導体チップにダイシングする際に上記半導体基板を仮固定するために用いられる粘着性積層フィルムであって、衝撃吸収層20と、粘着性樹脂層30と、を備える。
そして、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50において、JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度1mm/分の条件で測定される、衝撃吸収層20の25℃での引張弾性率をM
1[MPa]とし、JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度100mm/分の条件で測定される、衝撃吸収層20の25℃での引張弾性率をM
2[MPa]としたとき、M
2/M
1が1.2以上10以下である。
【0017】
本発明者は、半導体基板を半導体チップにダイシングする際の半導体チップの破損を抑制できる、あるいは半導体基板の分断性を向上できるとともに、半導体チップを精度よくピックアップすることが可能な粘着性フィルムを実現するために、鋭意検討を重ねた。その結果、引張弾性率が特定の条件を満たす衝撃吸収層20を粘着性樹脂層30とともに使用することにより、半導体チップの破損の抑制または半導体基板の分断性の向上と、半導体チップのピックアップ性とを両立ができることを初めて見出した。
すなわち、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、M2/M1を上記下限値以上とすることで、半導体基板を半導体チップにダイシングする際の半導体チップの破損を抑制することができる、あるいは半導体基板を拡張して半導体チップに分断する際の半導体基板の分断性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、M2/M1を上記上限値以下とすることで、半導体チップを精度よくピックアップすることができる。
【0018】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50において、上記M2/M1は1.2以上10以下であるが、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上、そして、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下である。
【0019】
本実施形態において、上記M2/M1は、例えば、(1)衝撃吸収層20を構成する各成分の種類、(2)衝撃吸収層20を構成する樹脂における各モノマーの種類や含有割合等を適切に調節することにより上記範囲内に制御することが可能である。
これらの中でも、例えば衝撃吸収層20を構成する樹脂における各モノマーの種類や含有割合等が、上記M2/M1を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは25μm以上1100μm以下であり、より好ましくは30μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上500μm以下である。
【0021】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、半導体基板を半導体チップにダイシングする際に上記半導体基板を仮固定するために用いることができる。
【0022】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。こうすることで、粘着性積層フィルム50に透明性を付与することができる。そして、粘着性積層フィルム50の全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、粘着性樹脂層30へより効果的に放射線を照射することができ、放射線照射効率を向上させることができる。なお、粘着性積層フィルム50の全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定することが可能である。
【0023】
次に、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50を構成する各層について説明する。
【0024】
<衝撃吸収層>
衝撃吸収層20は、半導体基板を半導体チップにダイシングする際に半導体基板や半導体チップに衝撃がかかるのを抑制し、半導体チップの破損を抑制することを目的として設けられる層である。
すなわち、衝撃吸収層20を設けることにより、半導体基板や半導体チップに衝撃がかかるのが抑制され、半導体基板を半導体チップにダイシングする際の半導体チップの破損を抑制できる。
【0025】
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度1mm/分の条件で測定される、衝撃吸収層20の25℃での引張弾性率(M1)は20MPa以上150MPa以下であることが好ましく、30MPa以上100MPa以下であることがより好ましい。これにより、半導体チップをより精度よくピックアップすることが可能となる。
【0026】
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度100mm/分の条件で測定される、衝撃吸収層20の25℃での引張弾性率(M2)は100MPa以上1200MPa以下であることが好ましく、110MPa以上600MPa以下であることがより好ましく、120MPa以上300MPa以下であることがさらに好ましい。これにより、半導体基板を半導体チップにダイシングする際の半導体チップの破損をより一層抑制することが可能となる。
【0027】
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度500mm/分の条件で測定される、衝撃吸収層20の25℃での引張弾性率(M3)は100MPa以上1200MPa以下であることが好ましく、110MPa以上600MPa以下であることがより好ましく、120MPa以上300MPa以下であることがさらに好ましい。これにより、半導体基板を半導体チップにダイシングする際の半導体チップの破損をより一層抑制することが可能となる。
【0028】
衝撃吸収層20は上記M2/M1が所望の数値範囲を満たすものであれば特に限定されない。
上記衝撃吸収層20を構成する樹脂としては、例えば、4-メチル-1-ペンテンと炭素数2~4のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0029】
4-メチル-1-ペンテンと炭素数2~4のα-オレフィンとの共重合体において、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位が、70~90モル%含まれていることが好ましく、75~87モル%含まれていることがより好ましく、さらに好ましくは80~86モル%である。
また、炭素数2~4のα-オレフィン由来の構成単位は、エチレン、プロピレン、1-ブテンであり、エチレンおよびプロピレンが好ましく、プロピレンがより好ましい。
4-メチル-1-ペンテンと炭素数2~4のα-オレフィンとの共重合体中に、炭素数2~4のα-オレフィン由来の構成単位は、10~30モル%含まれていることが好ましく、13~25モル%含まれていることがより好ましく、さらに好ましくは14~20モル%である。
【0030】
4-メチル-1-ペンテンと炭素数2~4のα-オレフィンとの共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)がポリスチレン換算で1×104~2×106であることが好ましく、より好ましくは1×104~1×106である。
【0031】
4-メチル-1-ペンテンと炭素数2~4のα-オレフィンとの共重合体は、例えば、国際公開第2005/121192号や国際公開第2011/055803号等に記載の方法と同様の方法により合成することができる。
【0032】
衝撃吸収層20の厚みは特に制限されないが、例えば、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0033】
<粘着性樹脂層>
粘着性樹脂層30は粘着性積層フィルム50を半導体基板に貼り付ける際に、半導体基板の表面に接触して粘着する層である。
【0034】
粘着性樹脂層30を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0035】
粘着性樹脂層30を構成する粘着剤としては、放射線により粘着力を低下させる放射線架橋型粘着剤を用いることができる。放射線架橋型粘着剤により構成された粘着性樹脂層30は、放射線の照射により架橋して粘着力が著しく減少するため、半導体チップのピックアップ工程において、粘着性樹脂層30から半導体チップをピックアップし易くなる。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
放射線架橋型粘着剤としては、紫外線架橋型粘着剤が好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル系粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアマイド、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
放射線架橋型粘着剤は、例えば、上記(メタ)アクリル系粘着剤等の粘着剤と、架橋性化合物(炭素-炭素二重結合を有する成分)と、光重合開始剤または熱重合開始剤と、を含む。
【0038】
架橋性化合物としては、例えば、分子中に炭素-炭素二重結合を有し、ラジカル重合により架橋可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマー等が挙げられる。このような架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル;エステル(メタ)アクリレートオリゴマー;2-プロペニルジ-3-ブテニルシアヌレート、2-ヒドロキシエチルビス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
なお、粘着剤が、ポリマーの側鎖に炭素-炭素二重結合を有する放射線架橋型ポリマーである場合は、架橋性化合物を加えなくてもよい。
【0039】
架橋性化合物の含有量は、粘着剤100質量部に対して5~100質量部が好ましく、10~50質量部がより好ましい。架橋性化合物の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて粘着力の調整がし易くなり、上記範囲よりも多い場合に比べて、熱や光に対する感度が高すぎることによる保存安定性の低下が起こりにくい。
【0040】
光重合開始剤としては、放射線を照射することにより開裂しラジカルを生成する化合物であればよく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
【0041】
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物誘導体やアゾ系重合開始剤等が挙げられる。加熱時に窒素が発生しない点から、好ましくは有機過酸化物誘導体である。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルおよびパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0042】
粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層30の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0043】
粘着性樹脂層30の厚みは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0044】
粘着性樹脂層30は、例えば、衝撃吸収層20上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
【0045】
<基材層>
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、
図2に示すように、衝撃吸収層20の粘着性樹脂層30とは反対側の表面上に基材層10をさらに積層させてもよい。
基材層10は、粘着性積層フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
【0046】
基材層10は、半導体基板を半導体チップにダイシングする際に加わる外力に耐えうる機械的強度があれば特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリエーテルイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、半導体基板や半導体チップの保護の観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0047】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、基材層10の機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0048】
基材層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上300μm以下、さらに好ましくは25μm以上150μm以下である。
基材層10は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0049】
<その他の層>
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、粘着性樹脂層30上に離型フィルムをさらに積層させてもよい。離型フィルムとしては、例えば、離型処理が施されたポリエステルフィルム等が挙げられる。
【0050】
<粘着性積層フィルムの製造方法>
次に、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、例えば、基材層10の一方の面に衝撃吸収層20を押出しラミネート法によって形成し、衝撃吸収層20上に粘着剤塗布液を塗布し乾燥させることによって、粘着性樹脂層30を形成することにより得ることができる。
また、基材層10と衝撃吸収層20とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層10とフィルム状の衝撃吸収層20とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0051】
2.電子装置の製造方法
次に、本実施形態に係る電子装置の製造方法について説明する。
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、例えば、以下の3つの工程を少なくとも備えている。
(A)衝撃吸収層20および粘着性樹脂層30を備える粘着性積層フィルム50と、粘着性樹脂層30上に貼り付けられた半導体基板と、を備える構造体を準備する工程
(B)粘着性樹脂層30上に貼り付けられた状態で、上記半導体基板をダイシングして複数の半導体チップを得る工程
(C)工程(B)の後に粘着性樹脂層30から半導体チップをピックアップする工程
そして、本実施形態に係る電子装置の製造方法では、粘着性積層フィルム50として、前述した本実施形態に係る粘着性積層フィルム50を使用する。
【0052】
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0053】
(工程(A))
はじめに、衝撃吸収層20および粘着性樹脂層30を備える粘着性積層フィルム50と、粘着性樹脂層30上に貼り付けられた半導体基板と、を備える構造体を準備する。
【0054】
このような構造体は、例えば、粘着性積層フィルム50の粘着性樹脂層30上に半導体基板を貼り付けることにより得ることができる。
粘着性積層フィルム50に貼り付ける半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム-ヒ素、ガリウム-リン、ガリウム-ヒ素-アルミニウム等の基板(例えば、ウェハ)が挙げられる。
また、半導体基板としては、表面に回路が形成された半導体基板を用いることが好ましい。
【0055】
粘着性積層フィルム50の貼り付けは、人の手で行なってもよいが、通常、ロール状の表面保護フィルムを取り付けた自動貼り機によって行なう。
貼り付け時の粘着性積層フィルム50および半導体基板の温度には特に制限はないが、25℃~80℃が好ましい。
また、貼り付け時の粘着性積層フィルム50と半導体基板との圧力については特に制限はないが、0.3MPa~0.5MPaが好ましい。
【0056】
(工程(B))
次に、粘着性樹脂層30上に貼り付けられた状態で、上記半導体基板をダイシングして複数の半導体チップを得る。
ここでいう「ダイシング」には、
(a)半導体基板に対してこの半導体基板の厚さと同じ深さの切れ込みを設けることによって半導体基板を分断し、複数の分断された半導体チップを得る操作(以下、「フルカットダイシング」ともいう)、および、
(b)レーザー光を照射することにより、半導体基板に対し、半導体基板の切断までには至らない変質領域を設け、複数の半導体チップを得る操作(以下、「ステルスダイシング」ともいう)が含まれる。
上記ダイシングは、ダイシングブレード(ダイシングソー)、レーザー光等を用いて行うことができる。
【0057】
ダイシングがフルカットダイシングである場合には、ダイシングによって半導体基板が複数の半導体チップに分断される。
一方、ダイシングがステルスダイシングである場合には、ダイシングのみによっては半導体基板が複数の半導体チップに分断されるまでには至らず、ダイシング後の粘着性積層フィルム50の拡張によって半導体基板が分断されて複数の分断された半導体チップが得られる。
なお、工程(B)における半導体チップには、フルカットダイシングより得られる分断された複数の半導体チップと、ステルスダイシングにより得られる分断される前の複数の半導体チップの両方を含む。
【0058】
(工程(C))
次いで、工程(B)の後に粘着性樹脂層30から半導体チップをピックアップする。
このピックアップにより、粘着性積層フィルム50から半導体チップを剥離することができる。
半導体チップのピックアップは、公知の方法で行うことができる。
【0059】
工程(C)では、粘着性樹脂層30における半導体チップが貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する半導体チップ間の間隔を拡大させた状態で、粘着性樹脂層30から半導体チップをピックアップすることが好ましい。
こうすることにより、隣接する半導体チップ間の間隔が拡大するため、粘着性樹脂層30から半導体チップをピックアップし易くなる。さらに、粘着性樹脂層30の面内方向の拡張によって生じる、半導体チップと粘着性樹脂層30とのずり応力により、半導体チップと粘着性樹脂層30との粘着力が低下するため、粘着性樹脂層30から半導体チップをピックアップし易くなる。
【0060】
(工程(D))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(C)の前に粘着性樹脂層30に対して放射線を照射し、粘着性樹脂層30を架橋させることで、半導体チップに対する粘着性樹脂層30の粘着力を低下させる工程(D)をさらに備えてもよい。
工程(D)をおこなうことで、粘着性樹脂層30から半導体チップを容易にピックアップすることができる。また、粘着性樹脂層30を構成する粘着成分により半導体チップの表面が汚染されることを抑制することができる。
放射線は、例えば、粘着性積層フィルム50の粘着性樹脂層30側の面とは反対側の面から照射される。
放射線として紫外線を用いる場合、粘着性積層フィルム50に対して照射する紫外線の線量は、100mJ/cm2以上が好ましく、350mJ/cm2以上がより好ましい。
紫外線の線量が上記下限値以上であると、粘着性樹脂層30の粘着力を十分に低下させることができ、その結果、半導体チップ表面に糊残りが発生することをより抑制することができる。
また、粘着性積層フィルム50に対して照射する紫外線の線量の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、例えば、1500mJ/cm2以下であり、好ましくは1200mJ/cm2以下である。
紫外線照射は、例えば、高圧水銀ランプやLEDを用いておこなうことができる。
【0061】
(その他の工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、上記以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、電子装置の製造方法において公知の工程を用いることができる。
【0062】
例えば、工程(C)を行った後、得られた半導体チップを回路基板に実装する工程や、ワイヤボンディング工程、封止工程等の電子装置の製造工程において一般的におこなわれている任意の工程をさらに行ってもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0064】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、実施形態の例を付記する。
1. 半導体基板を半導体チップにダイシングする際に上記半導体基板を仮固定するために用いられる粘着性積層フィルムであって、
衝撃吸収層と、粘着性樹脂層と、を備え、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度1mm/分の条件で測定される、上記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率をM
1
[MPa]とし、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度100mm/分の条件で測定される、上記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率をM
2
[MPa]としたとき、
M
2
/M
1
が1.2以上10以下であり、
上記粘着性積層フィルムの全光線透過率が80%以上である、粘着性積層フィルム。
2. 上記1.に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度1mm/分の条件で測定される、上記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率(M
1
)が20MPa以上150MPa以下である粘着性積層フィルム。
3. 上記1.または2.に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度500mm/分の条件で測定される、上記衝撃吸収層の25℃での引張弾性率(M
3
)が100MPa以上1200MPa以下である粘着性積層フィルム。
4. 上記1.乃至3.のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記衝撃吸収層が4-メチル-1-ペンテンと炭素数2~4のα-オレフィンとの共重合体を含む粘着性積層フィルム。
5. 上記1.乃至4.のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記衝撃吸収層の厚みが10μm以上1000μm以下である粘着性積層フィルム。
6. 上記1.乃至5.のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む粘着性積層フィルム。
7. 上記1.乃至6.のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記粘着性積層フィルムの全光線透過率が80%以上である粘着性積層フィルム。
8. 衝撃吸収層および粘着性樹脂層を備える粘着性積層フィルムと、上記粘着性樹脂層上に貼り付けられた半導体基板と、を備える構造体を準備する工程(A)と、
上記粘着性樹脂層上に貼り付けられた状態で、上記半導体基板をダイシングして複数の半導体チップを得る工程(B)と、
上記工程(B)の後に上記粘着性樹脂層から上記半導体チップをピックアップする工程(C)と、
を備える電子装置の製造方法であって、
上記粘着性積層フィルムとして上記1.乃至7.のいずれか一つに記載の粘着性積層フィルムを用いる電子装置の製造方法。
9. 上記8.に記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(C)では、上記粘着性樹脂層における上記半導体チップが貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する上記半導体チップ間の間隔を拡大させた状態で、上記粘着性樹脂層から上記半導体チップをピックアップする電子装置の製造方法。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
粘着性積層フィルムの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0067】
<衝撃吸収層>
衝撃吸収層1:4-メチル-1-ペンテンとプロピレンとの共重合体フィルム(厚さ:100μm)
衝撃吸収層2:ポリオレフィンフィルム(プライムポリマー社製、商品名:エボリューSP2040(登録商標)、厚さ:100μm)
衝撃吸収層3:ポリブチレンテレフタレートフィルム(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ノバデュラン(登録商標)、厚さ:100μm)
【0068】
<粘着性樹脂層形成用の粘着剤>
(粘着剤1(紫外線架橋型アクリル系粘着剤))
アクリル酸エチル48質量部、アクリル酸-2-エチルヘキシル27質量部、アクリル酸メチル20質量部、メタクリル酸グリシジル5質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を混合した。これを、トルエン65質量部、酢酸エチル50質量部が入った窒素置換フラスコ中に、撹拌しながら80℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにキシレン25質量部、アクリル酸2.5質量部、およびテトラデシルベンジルアンモニウムクロライド1.5質量部を加え、空気を吹き込みながら80℃で10時間反応させ、光重合性炭素-炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
【0069】
この溶液に、共重合体(固形分)100質量部に対して紫外線重合開始剤としてベンゾイン7質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49-75S)2質量部、1分子内に光重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM-400)15質量部を添加し、粘着剤1(紫外線架橋型粘着剤塗布液)を得た。
【0070】
[実施例1]
衝撃吸収層1上に、粘着剤1の塗布液を塗布した後、乾燥させて、厚さ20μmの粘着性樹脂層を形成し、粘着性積層フィルムを得た。
得られた粘着性積層フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0071】
[実施例2]
衝撃吸収層1の厚さを200μmに変更した以外は実施例1と同様にして粘着性積層フィルムを得た。
得られた粘着性積層フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0072】
[比較例1]
衝撃吸収層を衝撃吸収層2に変更した以外は実施例1と同様にして粘着性積層フィルムを得た。
得られた粘着性積層フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0073】
[比較例2]
衝撃吸収層を衝撃吸収層3に変更した以外は実施例1と同様にして粘着性積層フィルムを得た。
得られた粘着性積層フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0074】
<評価>
(1)衝撃吸収層の25℃での引張弾性率の測定
衝撃吸収層の25℃での引張弾性率は、JIS K7161に準拠し、下記の方法で測定した。
引張試験装置(島津製作所社製、商品名:オートグラフAGS-X)を用いて、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度1mm/分、100mm/分および500mm/分の条件で衝撃吸収層の25℃での引張弾性率M1、M2およびM3をそれぞれ測定した。
【0075】
(2)半導体チップの破損性の評価
粘着性積層フィルムの粘着性樹脂層上にシリコン基板を貼り付け、次いで、ダイシング装置(ディスコ社製DFD3240)を用いて、シリコン基板(厚み:50μm)を粘着性樹脂層上に貼り付けられた状態で複数のシリコンチップ(チップサイズ:10mm×10mm)にダイシングした。次いで、下記の基準で半導体チップの破損性を評価した。
〇:シリコンチップに100μm以上の欠けが観察されなかったもの
×:シリコンチップに100μm以上の欠けが1つ以上観察されたもの
【0076】
(3)半導体チップのピックアップ性
粘着性積層フィルムの粘着性樹脂層上に貼り付けたシリコン基板(厚み:50μm)をダイシングして得られたシリコンチップ(チップサイズ:10mm×10mm)に対しピックアップ装置(パナソニックファクトリーソリューション社製MD-P300)を用いてピックアップ評価を実施した。次いで、下記の基準で半導体チップのピックアップ性を評価した。
〇:粘着性樹脂層からシリコンチップをピックアップする際にシリコンチップの破損が起きず、シリコンチップのピックアップを10個連続でできた
×:粘着性樹脂層からシリコンチップをピックアップする際にシリコンチップの破損が生じ、シリコンチップのピックアップを10個連続でできなかった
【0077】
【0078】
M2/M1が1.2以上10以下である実施例の粘着性積層フィルムは、半導体チップの破損の抑制と、半導体チップのピックアップ性とを両立できた。すなわち、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50によれば、半導体基板を半導体チップにダイシングする際の半導体チップの破損を抑制できるとともに、半導体チップを精度よくピックアップすることが可能なことが理解できる。
これに対し、比較例1の粘着性積層フィルムは、ダイシング時にシリコンチップの破損が生じた。また、比較例2の粘着性積層フィルムは、粘着性樹脂層からシリコンチップをピックアップする際にシリコンチップの破損が生じた。
すなわち、比較例1および2の粘着性積層フィルムでは、半導体チップの破損の抑制と、半導体チップのピックアップ性とを両立できないことが理解できる。
【符号の説明】
【0079】
10 基材層
20 衝撃吸収層
30 粘着性樹脂層
50 粘着性積層フィルム