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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-15
(45)【発行日】2022-02-24
(54)【発明の名称】継手
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20220216BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/12 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017126315
(22)【出願日】2017-06-28
(65)【公開番号】P2019007306
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 武司
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-315979(JP,A)
【文献】特開2013-011088(JP,A)
【文献】特開2015-200405(JP,A)
【文献】実開平03-055720(JP,U)
【文献】特開2011-111853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12- 1/33
F16B 21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に被係合部を有する樹脂製の本管と、
前記被係合部に係合可能な係合部を有し、前記本管に着脱可能に構成された樹脂製の分岐管と、を備え、
前記被係合部と前記係合部との係合状態において前記分岐管の軸線を中心とする周方向において前記被係合部と前記係合部との相対的な位置が決められており、
前記分岐管は透明であり、
前記被係合部と前記係合部とがバヨネット構造によって相対的な位置決め可能とされ、
前記係合部にはバヨネット爪が設けられ、
前記被係合部には前記バヨネット爪が挿通可能な環状溝と、該環状溝に連接されると共に平面視において前記軸線に沿って前記本管の中心側に凹み、前記バヨネット爪が嵌まる凹部が形成され、
前記分岐管は、前記軸線に対して偏心された開口部を有し、
前記バヨネット爪および前記凹部がそれぞれ複数設けられ、
複数の前記バヨネット爪のうちの1つのバヨネット爪の前記周方向の大きさは、残りのバヨネット爪の前記周方向の大きさと異なっており、
複数の前記凹部のうちの前記1つのバヨネット爪が嵌合する凹部の前記周方向の大きさは、残りの凹部の前記周方向の大きさと異なっている継手。
【請求項2】
外周面に被係合部を有する本管と、
前記被係合部に係合可能な係合部を有し、前記本管に着脱可能に構成された分岐管と、を備え、
前記被係合部と前記係合部との係合状態において前記分岐管の軸線を中心とする周方向において前記被係合部と前記係合部との相対的な位置が決められており、
前記被係合部と前記係合部とがねじ締めによって相対的な位置決め可能とされ、
前記係合部にはねじ切りされた係合面が形成され、
前記被係合部において前記係合面に当接可能な被係合面は前記係合面に螺合可能且つ螺合完了状態において前記周方向において前記本管と前記分岐管とが決められた前記相対的な位置になるように形成されていることを特徴とする継手。
【請求項3】
前記分岐管は前記本管に接続される側とは反対側に管材を嵌合可能に構成された嵌合部を有し、前記嵌合部と前記管材との間に弾性部材を設置可能に構成された請求項1または請求項に記載の継手。
【請求項4】
前記係合状態において前記分岐管と前記本管との間に封止部材が設けられている請求項1から請求項の何れか一項に記載の継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水システム等に適用可能な継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集合住宅等の多層建築物では、各階の衛生機器等から排出される排水は、各階の衛生機器等から横枝管を介してパイプシャフト内に設けられた排水立管路に集められ、曲管路や横管路を介して下水路に排水されるようになっている。このように各階の衛生機器等から排出される排水を下水道に排水するための排水システム(以下、単に排水システムという)では、排水立管路を構成する立管と横枝管とを接続するために、上端部および下端部のそれぞれに立管を接続可能な本管と、該本管の側面に連結され、横枝管を接続可能な分岐管とを有する集合継手(継手)が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、床スラブ上に配置され、上階の排水管が接続される受け口を備える熱可塑性樹脂製の上胴部と、床スラブに埋設される部分で、上胴部の下端部に接続される上端接続部と、その床スラブの天井面から下方に突出して、下階の排水管が接続される下端接続部と、上端接続部と下端接続部との間にて下方に窄まる流路を形成するテーパー部と、を備える熱可塑性樹脂製の下胴部と、下胴部の内側に嵌め込まれる熱可塑性樹脂製の内装部材と、を有することを特徴とする排水管継手が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-134098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、例えば配管後に室内のリフォーム等がなされることよって衛生機器や排水システムに用いる器具が変更され、集合継手に嵌入される横枝管(横引管ともいう)のサイズや形状の仕様変更が求められる場合がある。特許文献1に記載されている排水管継手をはじめとする従来の集合継手は床スラブに埋設され、継手の本体部分が固定されている。また、従来の集合継手において、横枝管が嵌入される部分(以下、横枝嵌入部という場合がある)は本体部分と一体で形成されている、或いは横枝嵌入部が本体部分に接着剤等によって着脱不可能な状態で接続されているものが多い。従って、従来の集合継手では、横枝嵌入部のサイズや形状の変更が難しいという問題があった。このような構成では、横枝管の仕様変更のために、床スラブに埋設され集合継手を一旦取り外し、横枝嵌入部を変更した集合継手を床スラブに埋設する等の大幅な工事が必要となる。
【0006】
上述のような場合に対応するものとして、横枝嵌入部の可変構造としては、鋳鉄継手等においてフランジ構造を採用する場合がある。しかし、ねじを固定する部分の強度が必要となり、鋳鉄継手が重くなる、鋳鉄継手の収まりが悪くなる、及び作業性が低下する等の別の問題があった。
【0007】
本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、横枝嵌入部のサイズや形状を容易に変更可能な継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る継手は、外周面に被係合部を有する本管と、前記被係合部に係合可能な係合部を有し、前記本管に着脱可能に構成された分岐管と、を備え、前記被係合部と前記係合部との係合状態において前記分岐管の軸線を中心とする周方向において前記被係合部と前記係合部との相対的な位置が決められていることを特徴とする。
【0009】
上述の構成によれば、分岐管は本管に対して着脱可能に設けられ、且つ周方向において所定の相対位置で本管に連結可能とされているので、横枝管のサイズや形状に合った分岐管を付け替えることができる。また、横枝管の径が本管の被係合部の径に比べて小さい場合は、横枝管や分岐管、及び本管の内部を流下する流体(例えば、排水等)が滞らないようにする目的で、横枝管の底端部と被係合部の底端部とが略同じ高さになるように、本管に対して分岐管を偏心させて連結する場合がある。上述の構成によれば、分岐管の軸線を中心とする周方向において被係合部と前記係合部との相対的な位置が決められているので、該相対的な位置を、本管に対して分岐管が適切に偏心した位置とすることで、付け替えたときの本管に対する分岐管の向きや位置等を容易に合わせることができる。
【0010】
上述の継手では、前記被係合部と前記係合部とがバヨネット構造によって相対的な位置決め可能とされ、前記係合部にはバヨネット爪が設けられ、前記被係合部には前記バヨネット爪が挿通可能な環状溝と、該環状溝に連接されると共に平面視において前記軸線に沿って前記本管の中心側に凹み、前記バヨネット爪が嵌まる凹部が形成されていてもよい。
【0011】
上述の構成によれば、バヨネット爪を環状溝に挿入し、軸線を中心として分岐管を周方向に回転させ、バヨネット爪を凹部に嵌めることによって、分岐管を本管に対して容易に、且つ所定の相対位置で連結することができる。また、バヨネット爪を凹部から環状溝に移動させ、環状溝から外すことにより分岐管と本管との連結を解除することができる。
【0012】
上述の継手では、前記被係合部と前記係合部とがねじ締めによって相対的な位置決め可能とされ、前記係合部にはねじ切りされた係合面が形成され、前記被係合部において前記係合面に当接可能な被係合面は前記係合面に螺合可能且つ螺合完了状態において前記周方向において前記本管と前記分岐管とが決められた前記相対的な位置になるように形成されていてもよい。
【0013】
上述の構成によれば、係合面が被係合面に螺合するように分岐管を軸線に沿って回動させつつ本管の被係合部に嵌めることによって、分岐管を本管に対して容易に、且つ所定の相対位置で連結することができる。また、分岐管を本管との連結時とは反対向きに回動させることで分岐管と本管との連結を解除することができる。
【0014】
上述の継手では、前記分岐管は前記本管に接続される側とは反対側に管材を嵌合可能に構成された嵌合部を有し、前記嵌合部と前記管材との間に弾性部材を設置可能に構成されていてもよい。
【0015】
上述の構成によれば、樹脂管等の管材(即ち、横枝管)が分岐管に嵌入された状態で、例えば管材や分岐管の内部に流れる流体の温度等によって管材や分岐管が伸縮した場合であっても、弾性部材によって伸縮が吸収され、管材の嵌入状態を良好に維持することができる。弾性部材を分岐管に予め設置しておくことによって、長尺の管材から分岐管に接続するために必要な長さの管材を切り取り、嵌合部に嵌入するだけで、上述のように管材や分岐管の伸縮の影響を抑えて管材の嵌入状態を良好に維持することができる。
【0016】
上述の継手では、前記係合状態において前記分岐管と前記本管との間に封止部材が設けられていてもよい。
【0017】
上述の構成によれば、分岐管と本管との係合状態において止水性が高まるので、分岐管と本管との連結部分からの流体の漏れ等を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る継手によれば、横枝嵌入部のサイズや形状を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用した第一実施形態の継手及び該継手を備えた排水システムの側面図である。
図2】本発明を適用した第一実施形態の継手の一部の側面図である。
図3】本発明を適用した第一実施形態の継手の一部の斜視図である。
図4】本発明を適用した第一実施形態の継手の分岐管の斜視図である。
図5】本発明を適用した第一実施形態の継手の分岐管の変形例の斜視図である。
図6】本発明を適用した第一実施形態の係合状態における集合継手の側断面図である。
図7】本発明を適用した第二実施形態の継手の一部の斜視図である。
図8】本発明を適用した第二実施形態の継手の分岐管の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した継手用の遮音カバーおよび継手の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
【0021】
(第一実施形態)
図1及び図2に示すように、本発明を適用した一実施形態の集合継手(継手)1は、上下方向に沿って延びる本管2と、本管2の外周面2rに着脱可能に構成された二本の分岐管3と、を備えている。二本の分岐管3A,3Bのそれぞれの軸線J3A,J3Bは左右方向(即ち、横方向)に沿って同一線上に配置され、互いに本管2の軸線J2に直交している。なお、以下では、分岐管3A,3Bについて、特に区別する必要がない場合は、分岐管3と記載し、関連する構成要素についてもこの記載を援用する。
【0022】
集合継手1の本管2の下部には筒状の短管5が内嵌され、短管5の下部にはテーパー管6が外嵌されている。すなわち、集合継手1と短管5とテーパー管6によって、継手構造8が構成されている。
【0023】
図1に示すように、継手構造8は、マンション等の多層階からなる建築物(図示略)の排水システムに用いられるものである。具体的には、継手構造8は、各階の衛生機器等から排出される排水を流下させるための横枝管7と、パイプシャフト内の排水立管路を構成し、横枝管7を流下した排水を排水システムの最下部へと流下させる立管9とを接続可能に構成されている。
【0024】
集合継手1の本管2の上部には立管9(例えば、立管9A)の下部が嵌合し、テーパー管6の下部には別の立管9(例えば、立管9B)の上部が嵌合している。テーパー管6は、下方向に進むに従って縮径するように形成されている。テーパー管6の上端部の内径および外径は、短管5の外径等を勘案して適当に設定されている。また、テーパー管6の下端部の内径および外径は、立管9の外径などを勘案して適当に設定されている。
【0025】
集合継手1の分岐管3A,3Bのそれぞれには、横枝管7A,7Bの下流側の端部が嵌合している。
【0026】
継手構造8は、上下方向で隣り合う各階の間に介在するコンクリート製の床スラブSに形成された貫通孔Hに挿通されている。貫通孔Hの側壁と継手構造8との間は、モルタルMが充填されている。特に、分岐管3の下端より下方の集合継手1と短管5とテーパー管6の上部は、モルタルMの内部に埋設されている。
【0027】
図2に示すように、集合継手1の本管2は、軸線J2を中心軸とする筒状の本体12と、本体12の上端に設けられた嵌合部14Aと、本体12の下端に設けられた嵌合部14Bと、本体12の側面12pに設けられた被係合部16と、を備えている。
【0028】
嵌合部14Aは、図1に示す立管9Aを内嵌可能に形成されている。一方、嵌合部14Bは、短管5を内嵌可能に形成されている。短管5は、図1に示す床スラブSの厚み等を考慮して、嵌合部14Bに所定の長さで内嵌されると共に、例えば接着剤等によって嵌合部14Bに固定されている。短管5の下端(即ち、短管5において本管2が接続されている側とは反対側の端)には、例えば接着剤等によってテーパー管6が外嵌されており、本管2と短管5とテーパー管6とは、着脱不可能な状態で連結されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、被係合部16Aは、本体12の側面12pから軸線J3Aの方向に沿って突設された突出部15Aと、突出部15Aの先端に設けられた嵌合部18Aと、を有している。被係合部16Bは、本体12の側面12pから軸線J3Bの方向に沿って突設された突出部15Bと、突出部15Bの先端に設けられた嵌合部18Bと、を有している。突出部15Bの中空部及び嵌合部18Bの中空部A18は、本管2の中空部に連通している。
【0030】
図3に示すように、嵌合部18Bは、軸線J3Bを中心軸として環状に形成されている。嵌合部18Bの内周面18nには、軸線J3Bを中心とするR3方向(周方向)に沿って三つの環状溝20が互いに間隔をあけて形成されている。環状溝20のR3方向の一端には、平面視において軸線J3Bに沿って環状溝20から嵌合部18Bの開口端縁22に延びると共に開口端縁22に開放された挿入溝24が形成されている。環状溝20のR3方向の他端には、平面視において軸線J3Bに沿って本管2の軸線J2(中心側)に向けて凹む嵌合凹部(凹部)26が形成されている。
【0031】
嵌合部18Aは、軸線J3Aを中心軸とすること以外は、嵌合部18Bと同様に構成されている。
【0032】
図4に示すように、分岐管3Bは、少なくとも図3に示す嵌合部18Bに内嵌であって、筒状に形成されている。分岐管3Bが本管2に係合した状態(以下、単に係合状態という場合がある)において本管2に近い側の分岐管3B(即ち、分岐管3Bの基端側)は、突出部15Bの形状に合わせて形成されている。
【0033】
図4に示すように、係合状態において本管2から遠い側の分岐管3B(即ち、分岐管3Bの先端側)には、分岐管3Bの先端から軸線J3Bを中心に径方向外側に拡径するフランジ部30が設けられている。フランジ部30の内径、即ちフランジ部30の中空部A30の径は、分岐管3Bに嵌入される横枝管7B(図1参照)の外径に合わせられている。軸線J3Bに沿ってフランジ部30より分岐管3Bの基端側には、嵌合部18Bに内嵌可能に形成された係合部32が設けられている。係合部32の外周面32rには、軸線J3Bを中心に径方向外側に突出するバヨネット爪34が設けられている。
【0034】
軸線J3Bを中心としてR3方向において、バヨネット爪34の数は、嵌合凹部26の数と同じである。また、バヨネット爪34のR3方向における長さは、嵌合凹部26のR3方向における幅を勘案し、バヨネット爪34が嵌合凹部26に嵌合可能な長さとされている。また、バヨネット爪34が嵌合凹部26に嵌合可能とされていることで、係合状態において被係合部16Bと係合部32との相対的な位置が決められている。即ち、第一実施形態では、被係合部16と係合部32とは、バヨネット構造(即ち、バヨネット爪34と嵌合凹部26との嵌合構造)によって相対的な位置決め可能とされている。
【0035】
図4等では、R3方向において三つのバヨネット爪34が設けられている。(三つのバヨネット爪34のうちの一つは、紙面背面側に現れるため、図示されていない。)バヨネット爪34の数は、図3に示す中空部A18の径の大きさ等を勘案して適切に設定されていることが好ましいが、例えば二以上四以下であることが好ましい。
【0036】
横枝管7(図1参照)の外径が分岐管3Bの中空部A3の径と略同じ大きさで有れば、図4のようにフランジ部30の中空部A30の中心が軸線J3Bに重なっている。特に、横枝管7(図1参照)の外径が分岐管3Bの中空部A3の径に比べて比較的小さい場合には、図5に示すように、フランジ部30には、軸線J3Bに対して偏心された開口部38が形成されている。横枝管7Bの内部を通って分岐管3Bの内部に流れる流体を遮らないようにするために、係合状態において、開口部38の中空部の下端の高さは、分岐管3Bの中空部A3の下端の高さ又は横枝管7Bの中空部の下端の高さと揃うように形成されていることが好ましい。
【0037】
上述のような係合状態を容易に実現する観点から、開口部38の中空部の下端近傍のバヨネット爪34BのR3方向における長さは、バヨネット爪34B以外のバヨネット爪34AのR3方向における長さとは異なっていることが好ましい。これに合わせて、バヨネット爪34Bが嵌合する嵌合凹部26BのR3方向における幅は、バヨネット爪34Aが嵌合する嵌合凹部26Aとは異なっていることが好ましい。このような構成では、バヨネット爪34A,34Bを嵌合凹部26A,26Bに嵌合させるだけで、容易に且つ確実に開口部38の中空部の下端の高さを分岐管3Bの中空部A3の下端の高さや横枝管7Bの中空部の下端の高さと揃えることができる。
【0038】
分岐管3Aは、軸線J3Aを中心軸とすること以外は、分岐管3Bと同様に構成されている。
【0039】
図6に示すように、分岐管3の先端側(本管2に接続される側とは反対側)には、軸線J3A,J3B方向に沿って横枝管(管材)7を嵌合可能に構成された嵌合部28を有する。嵌合部28は、フランジ部30及び分岐管3の基端側に延びている。嵌合部28は、横枝管7との間に弾性部材42を設置可能に構成されている。弾性部材42は、予め嵌合部28に設置されていてもよく、横枝管7を嵌合部28に嵌める際に横枝管7の外周面に設置されてもよい。弾性部材42が予め嵌合部28に設置されていれば、横枝管7の嵌入作業時に横枝管7の外周面に弾性部材42を設ける手間が省けるので、作業効率が高まる。なお、図6では、三つのバヨネット爪34、環状溝20、挿入溝24及び嵌合凹部26のうち、一つのバヨネット爪34A、環状溝20、挿入溝24A及び嵌合凹部26Aのみ図示し、他の図示は省略する。
【0040】
弾性部材42としては、公知のパッキンやゴム輪等を用いることができるが、分岐管3と横枝管7との間を止水することができるものであれば特に限定されない。
【0041】
また、係合状態において分岐管3と本管2との間に封止部材40が設けられている。具体的には、封止部材40は、本管2の軸線J2に沿う壁面2sと該壁面に対向する分岐管3の壁面3sとの間に配置されている。封止部材40の位置は、分岐管3と本管2との間を封止できれば、上述の位置に限定されない。なお、図6では、突出部15A,15B及び嵌合部14A,14Bの図示を省略している。
【0042】
封止部材40としては、公知のパッキンを用いることができるが、止水性に優れ、分岐管3と本管2との間を封止することができるものであれば特に限定されない。
【0043】
集合継手1や短管5、テーパー管6、横枝管7及び立管9は樹脂製である。これらの部材を構成する樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、これらの部材は例えば射出成形等の方法により製造可能である。さらに、これらの部材は透明であってもよい。特に、分岐管3が透明であると横枝管の挿入状態を外部から観察できるので、好ましい。
【0044】
以上説明した第一実施形態の集合継手1によれば、分岐管3が本管2に対して着脱可能に設けられ、且つR3方向において所定の相対位置で本管2に連結可能とされているので、横枝管7のサイズや形状に合った分岐管3を手軽に付け替えることができる。また、横枝管7の径が本管2の被係合部16の径や分岐管3の基端側の径に比べて小さい場合は、横枝管7の中空部の底端と被係合部16の中空部の底端(或いは、分岐管3の基端側の中空部の底端)とが略同じ高さになるように、本管2に対して分岐管3を偏心させた状態で連結させることができる。これにより、横枝管7や分岐管3、及び本管2の内部を流下する排水等が滞らないようにすることができる。バヨネット爪34BのR3方向における長さをバヨネット爪34AのR3方向における長さと異ならせることで、分岐管3の軸線J3A,J3Bを中心とするR3方向において被係合部16と係合部32との相対的な位置が一義的に決められているので、付け替えたときの本管2に対する分岐管3の向きや位置等を適切に且つ容易に合わせることができる。
【0045】
また、第一実施形態の集合継手1によれば、挿入溝24を介してバヨネット爪34を環状溝20に挿入し、軸線J3A,J3Bを中心として分岐管3をR3方向に回転させ、バヨネット爪34を嵌合凹部26に嵌めることによって、分岐管3を本管2に対して容易に、且つ所定の相対位置で連結することができる。また、バヨネット爪34を嵌合凹部26から環状溝20に移動させ、挿入溝24を介して環状溝20から外すことにより分岐管3と本管2との連結を解除することができる。
【0046】
また、第一実施形態の集合継手1によれば、嵌合部28と横枝管7との間に弾性部材42を設置可能に構成されているので、横枝管7が分岐管3に嵌入された状態で、例えば横枝管7や分岐管3の内部に流れる流体(例えば、風呂からの排水等)の温度等によって横枝管7や分岐管3が伸縮した場合であっても、弾性部材42によって伸縮を吸収し、横枝管7の嵌入状態を良好に維持することができる。弾性部材42を分岐管3に予め設置しておくことによって、樹脂管等から分岐管3に接続するために必要な長さ分を切り取り、分岐管3の嵌合部28に嵌入するだけで、上述のように横枝管7や分岐管3の伸縮の影響を抑えて横枝管7の嵌入状態を良好に維持することができると共に、作業効率を高めることができる。勿論、横枝管7の嵌入時に横枝管7の外周面に弾性部材42を設置してもよく、その場合でも横枝管7や分岐管3の伸縮の影響を抑えて横枝管7の嵌入状態を良好に維持し、作業効率を高めることができる。
【0047】
また、第一実施形態の集合継手1によれば、係合状態において分岐管3と本管2との間に封止部材40が設けられているので、止水性が高まり、分岐管3と本管2との連結部分からの流体の漏れ等を確実に防止することができる。
【0048】
(第二実施形態)
次いで、本発明を適用した第二実施形態の集合継手(継手)について説明する。なお、第二実施形態の集合継手及び排水システムの構成要素において、第一実施形態の集合継手1及び排水システムと同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
第二実施形態の集合継手1は、本管2と、分岐管3と、を備え、短管5及びテーパー管6と共に継手構造8を構成するものである。また、集合継手1は、図1に示す排水システムに用いられるものである。
【0050】
第二実施形態では、被係合部16と係合部32とがねじ締めによって相対的な位置決め可能とされている。図8に示すように、係合部32には、バヨネット爪34に替えて、ねじ切りされた係合面35が形成されている。係合面35は、係合部32の外周面32rで構成されている。
【0051】
図7に示すように、嵌合部18Bの内周面18nには、ねじ切りされた係合面35が螺合可能にねじ切りされた被係合面50が設けられている。被係合面50のねじ切りの長さや幅は、係合面35が被係合面50に螺合しつつ、平面視において分岐管3が最も奥(即ち、本管2の中心側)にねじ込まれた状態(螺合完了状態)において、R3方向において本管2と分岐管3とが所定の相対的な位置になるように適宜設定されている。
【0052】
以上説明した第二実施形態の集合継手1によれば、係合面35が被係合面50に螺合するように分岐管3を軸線J3A,J3Bに沿って回動させつつ本管2の嵌合部28に嵌めることによって、分岐管3を本管2に対して容易に、且つ所定の相対位置で連結することができる。また、分岐管3を本管2との連結時とは反対向きに回動させることで、分岐管3と本管2との連結を解除することができる。
【0053】
第二実施形態の集合継手1はバヨネット構造に変えてねじ留め構造を備えているので、第二実施形態の集合継手1によれば第一実施形態の集合継手1と同様の作用効果が得られる。また、第二実施形態の集合継手1において、第一実施形態の集合継手1と同様の変形例を採用してもよい。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0055】
例えば、上述の各実施形態では集合継手1として、継手構造8が備える複数の被係合部16に中空部A30を備えた分岐管3A、3Bを嵌合させているが、複数の被係合部16の少なくとも一つについて、中空部を備えない蓋部材を継手構造8の被係合部16に嵌合させ、継手構造8の被係合部16を閉塞させてもよい。
【0056】
また、上述の各実施形態では本発明に関する部分以外の継手構造の構成については簡易に示しているが、例えば継手構造8の外周の一部又は全部に耐火機能や遮音機能を有するカバーが設けられていてもよい。また、継手構造8の内部には、立管9や横枝管7の内部を流れてきた流体の流れを整流化するための構造が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…集合継手(継手)
2…本管
3,3A,3B…分岐管
16,16A,16B…被係合部
32…係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8